説明

ダクト装置

【課題】イオンダクトからイオンを適切に放出させ得るようにする。
【解決手段】前記イオンダクトD2は、空気ダクトD1の空気流通路16に挿入され、該空気流通路16の空気流通方向に沿って延在する案内筒部52を備える。案内筒部52におけるイオン案内方向下流端には、空気流通路16の空気流通方向下流側に向けて開口する流出口38が設けられる。案内筒部52におけるイオン案内方向上流側には、空気流通路16から該案内筒部52へ空気を取り込む通気孔60が設けられる。通気孔60は、案内筒部52と導入筒部50との屈曲部における空気流通方向上流側の壁面54に設けられ、空気流通路16と該案内筒部52の内部とを該空気流通路16の空気流通方向で連通するよう開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送り出された空気を案内する空気ダクトと、前記空気ダクトに接続され、イオン発生装置で生成されたイオンを該空気ダクトの内部に画成された空気流通路に案内するイオンダクトとを備えたダクト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調装置から送り出された空気を案内する空気ダクトに、イオン発生装置で生成されたイオンを案内するイオンダクトを接続して構成され、空調装置からの空気にイオンを混合させて室内に放出するようにしたダクト装置が、各種車両(自動車または電車等)や建物等に設置された前記空調装置において実用化されている。車両に配設されたダクト装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−126228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イオン発生装置で生成されたイオンを案内するイオンダクトを備えたダクト装置では、該イオンダクトの内壁に衝突することによりイオンが壊れることを防止するため、該イオンダクト内のイオンを含む空気の流速を低く抑えてある。このため、前記特許文献1に開示された車両用空調装置に装備されたダクト装置は、空気ダクト(運転席側空調ダクト)における湾曲部の曲がり内側に負圧発生部を設け、イオンダクト(連通ダクト)のイオン放出口を前記負圧発生部に接続して、空気ダクト内の空気流通路に形成された負圧を利用してイオンダクト内のイオンを該空気ダクト内へ放出するよう構成されている。しかしながら、引用文献1のダクト装置の構造では、空気ダクトにおける空気流通路の空気の流量が増加すると、イオンダクト内のイオンを含む空気が該イオンダクト内に停留し易く、イオンが室内へ放出され難い問題がある。しかも、空気ダクトの空気流通路を流通する空気の流量が増加して該空気ダクト内の圧力が高まると、該空気の一部がイオンダクト内へ流入して、イオンが該イオンダクト内を逆流する不都合も発生する。
【0005】
従って本発明では、イオンダクトからイオンを適切に放出させることができるダクト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明は、
空調装置から送り出された空気を案内する空気ダクトと、前記空気ダクトに接続され、イオン発生装置で生成されたイオンを該空気ダクト内の空気流通路に案内するイオンダクトとを備えたダクト装置において、
前記イオンダクトは、
前記空気ダクトの空気流通路に挿入され、該空気流通路の空気流通方向に沿って延在する案内筒部と、
前記案内筒部におけるイオン案内方向下流端に設けられ、前記空気流通路の空気流通方向下流側に向けて開口する流出口と、
前記案内筒部よりイオン案内方向上流側に設けられ、前記空気流通路から該案内筒部へ空気を取り込む通気孔とを備えたことを要旨とする。
【0007】
従って、請求項1に係る発明によれば、イオンダクトにおける案内筒部を空気ダクト内の空気流通路に挿入し、案内筒部のイオン案内方向下流端に設けられた流出口を空気流通路の下流側に向けると共に該案内筒部を空気流通路の空気流通方向に沿って延在するように設け、かつ案内筒部よりイオン案内方向上流側に通気孔を設けた。これにより、イオンダクトの案内筒部まで移動したイオンは、空気ダクトの空気流通路から通気孔を介して案内筒部内に流入した空気により該案内筒部の流出口に向けて押されるから、該空気により該イオンの放出を補助することができる。また、イオンが案内筒部内を流通する空気の流れに沿って放出されるので、該イオンが壊れ難い。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記通気孔は、空気が空気流通路から案内筒部の内部へ該空気流通路の空気流通方向に沿って通過可能に形成されたことを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、空気流通路の空気が該通気孔を通過して案内筒部内へスムーズに流入すると共に、案内筒部内へ流入した空気は該案内筒部の内部に沿って流動し、該空気の流れが乱れることによりイオンが壊れることを防止し得る。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
前記イオンダクトは、前記案内筒部と交差する方向に延在する導入筒部が、該案内筒部のイオン案内方向上流側に連設され、
前記通気孔は、前記案内筒部と導入筒部との交差部における空気流通方向上流側の壁面に設けられたことを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、案内筒部と導入筒部との延在方向が交差しているので、通気孔を介して案内筒部内へ流入する空気が導入筒部側へ移動することが防止され、導入筒部から案内筒部へのイオンの放出が阻害されない。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
前記案内筒部は、前記流出口が前記空気ダクトの空気送出口に臨むように設けられたことを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、空気ダクトの空気送出口の向きと案内筒部の流出口の向きとが揃っているので、案内筒部の流出口から放出されたイオンは空気ダクトの空気送出口にスムーズに移動し、イオンが空気流通路の内壁に接触し難い。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
前記通気孔は、総開口面積が前記案内筒部の流通断面積より小さく設定されたことを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、通気孔の総開口面積が案内筒部の流通断面積より小さいので、該通気孔を介して該案内筒部内へ流入する空気の量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るダクト装置によれば、イオンダクトからイオンを適切に放出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例のダクト装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】実施例のダクト装置について、イオンダクトにおける案内筒部の構成を一部破断して示す説明図である。
【図3】実施例のダクト装置を図2の矢視Aから見た図である。
【図4】イオンダクトに設けられる通気孔の別形態例を示す説明図である。
【図5】イオンダクトの別形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るダクト装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本発明が対象とするダクト装置Dは、配設する場所の空間形状に合わせて様々な外形形状・サイズ等に成形されるが、実施例では単純な形状で示す。なお実施例では、ダクト装置Dを構成する空気ダクトD1に関し、空気流入口14から空気送出口15に至る空気流通方向と直交する方向において上壁10および下壁11が上下に対向して配置されており、空気流通方向と直交する方向において上壁10および下壁11を繋ぐ側壁12,13が対向する方向を「横方向」と指称する。
【実施例】
【0015】
実施例のダクト装置Dは、図1に示すように、空調装置ACから送り出された空気を案内する空気ダクトD1と、この空気ダクトD1の側壁12に接続され、イオン発生装置Mで生成されたイオンを該空気ダクトD1の内部に画成された空気流通路に案内するイオンダクトD2とを備えている。空気ダクトD1およびイオンダクトD2は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等(好ましくは帯電性が低い樹脂材料)を材質とし、ブロー成形により各々を個別に成形した後、イオンダクトD2をその先端から空気ダクトD1に挿入して接続したものである。
【0016】
空気ダクトD1は、図1および図2に示す如く、上下方向で対向する上壁10および下壁11と、横方向で対向して上壁10および下壁11に連設する側壁12,13とにより、途中に屈曲部17を有する角筒状に形成され、内部に空気流通路16が画成されている。そして空気ダクトD1は、空気流通路16の空気流通方向における一方の開口端部が、空調装置ACの空気送出部AC1に接続される空気流入口14とされると共に、空気流通方向における他方の開口端部が、図示しないエアアウトレット等に整合する空気送出口15とされている。また空気ダクトD1は、ブロー成形時に型閉めにより形成された接合リブ18,18が、各側壁12,13において空気流通方向へ延在するように形成されている。なお屈曲部17には、空気流通方向と交差する横方向の中間に、上壁10から下壁11に向けて突出して屈曲部17の曲率に沿って延在する補強リブ19が形成されている。この補強リブ19は、空気ダクトD1を補強すると共に、屈曲部17を通過する空気の流れを整えるようになっている。
【0017】
また空気ダクトD1は、屈曲部17の曲がり方向の内側に位置する側壁12において、屈曲部17と空気送出口15との中間に、前記イオンダクトD2の下流端部分の挿通を許容する円形の装着口20が形成されている。また、下壁11において、曲がり方向の内側の接合リブ18における屈曲部17に対応する部分には、水平外方へ延出した取付板部21が該接合リブ18に一体的に形成されており、この取付板部21にはイオンダクトD2の取付片42がカシメ固定されるようになっている。
【0018】
イオンダクトD2は、図1に示すように、空気ダクトD1との連結位置およびイオン発生装置Mの配設位置を前提として、複数のダクト部を連結することで複雑に屈曲した形状に構成されている。すなわちイオンダクトD2は、イオン発生装置Mに接続された第1ダクト部30と、この第1ダクト部30に連結された第2ダクト部32と、この第2ダクト部32に連結された第3ダクト部34とから構成され、第1ダクト部30におけるイオン発生装置Mとの接続側の開口端部がイオン流入口36とされ、第3ダクト部34の先端側の開口端部がイオン流出口(流出口)38とされている。
【0019】
第1ダクト部30は、図1に示すように略L字形に屈曲した円筒状に形成され、イオン発生装置Mに接続される側が太径に形成されて、イオン発生装置Mに設けられたイオン放出部72に外嵌合されている。第2ダクト部32は、図1に示すように略ヘ字形に屈曲した円筒状に形成され、第1ダクト部30に連結される側が太径に形成されて、該第1ダクト部30の端部に外嵌合されている。第2ダクト部32における第3ダクト部34側の直線部分は、ゴムスポンジ等を材質とする筒状(管状)の吸音部材Uを収容する収納部40となっており、内径が該吸音部材Uの肉厚分だけ大きく形成されている。これによりイオンダクトD2は、イオン発生装置Mにおいて発生する作動音を吸音部材Uで吸収して、該作動音が空気ダクトD1内へ漏出するのを防止するよう構成されている。また、第2ダクト部32の外側には、空気ダクトD1の前記取付板部21に固定される取付片42が一体的に形成されている。
【0020】
第3ダクト部34は、図1および図2に示すように、中間部分の2箇所で逆向きに屈曲して2つのエルボ部分を有する所謂ダブルエルボ形の円筒状に形成され、第2ダクト部32に連結される側が太径に形成されて、該第2ダクト部32に外嵌合されている。この第3ダクト部34は、両屈曲部分間の中間部において空気ダクトD1の側壁12で支持され、空気ダクトD1の空気流通路16内に位置する下流側の屈曲部より上流側(第2ダクト部32側)が導入筒部50とされると共に、該屈曲部より下流側(イオン流出口38側)が案内筒部52とされる。すなわち第3ダクト部34は、導入筒部50および案内筒部52が一体的に形成され、空気ダクトD1の側壁12に形成された装着口20に案内筒部52から挿入することで該空気ダクトD1に固定されている。なお、各図における符号Gは、弾力性を有するリング状のグロメットであって、該グロメットGはイオンダクトD2の第3ダクト部34と空気ダクトD1との隙間をシールする。
【0021】
そして、空気ダクトD1にイオンダクトD2が連結された状態では、図1〜図3に示すように、導入筒部50における空気ダクトD1の空気流通路16内に挿入された部分は、内部に画成されたイオン流通空間58のイオン案内方向が、該空気流通路16の空気流通方向と交差する方向に延在する。また、導入筒部50に連設された案内筒部52は、内部に画成されたイオン流通空間58のイオン案内方向が空気流通路16の空気流通方向に沿って延在すると共に、空気流通路16の空気流通方向下流側に向いた姿勢となっており、該案内筒部52のイオン案内方向下流端に前記イオン流出口38が位置している。なお、案内筒部52は空気ダクトD1の空気送出口15に臨む位置まで延在しており、イオン流出口38は該空気送出口15に近接している。
【0022】
更に、イオンダクトD2は、図2および図3に示すように、案内筒部52よりイオン案内方向上流側に、空気ダクトD1の空気流通路16から該案内筒部52のイオン流通空間58内へ空気が取り込まれるのを許容する通気孔60が設けられている。すなわち通気孔60は、案内筒部52のイオン案内方向上流側に連設された前記導入筒部50との間の屈曲部(交差部)において、空気流通路16の空気流通方向上流側に壁面54に臨み、かつ空気流通路16と案内筒部52のイオン流通空間58とを該空気流通路16の空気流通方向で連通するように設けられている。換言すると通気孔60は、空気流通路16の空気流通方向上流側で、かつ案内筒部52のイオン案内方向上流側の延長線上において、空気が空気流通路から案内筒部の内部へ該空気流通路の空気流通方向に沿って通過可能に形成されている。従って、空気流通路16内の空気は、通気孔60を通過して案内筒部52内へスムーズに流入すると共に、通気孔60を介して案内筒部52内へ取り込まれた空気は、該案内筒部52のイオン流通空間58に沿って下流側に移動して、イオン流出口38から空気流通路16へ流出するようになっている。
【0023】
そして、通気孔60の総開口面積S1は、案内筒部52の流通断面積(イオン流通空間58におけるイオン流通方向と直交する方向での断面積)S2より小さく設定されている。なお、通気孔60の総開口面積S1は、本願発明者が実施した後述の実験結果から、案内筒部52の流通断面積S2の2.25〜9.00%の範囲内で設定すると良い。このように、通気孔60の総開口面積S1を案内筒部52の流通断面積S2より小さく設定することで、通気孔60を介して該案内筒部52内へ流入する空気の流入量が制御され、案内筒部52内における該空気の流速を最適に設定し得る。
【0024】
すなわち実施例のダクト装置Dは、空調装置ACから空気流通路16へ送出された空気の一部を通気孔60から案内筒部52内に取り込むことで、イオン発生装置MからイオンダクトD2内へ放出されて導入筒部50に移動したイオンを、案内筒部52内に取り込まれた空気でイオン流出口38へ押すようにすることで、該イオンがイオン流出口38を介して空気ダクトD1内へ放出されることを補助するよう構成したものである。しかも、前記通気孔60の総開口面積S1を前述のように設定することで、案内筒部52内に取り込まれた空気の流速が最適化され、案内筒部52内のイオンが壊れることなくイオン流出口38を介して放出されるよう構成したものである。
【0025】
イオン発生装置Mは、既に実用化されている既存のものが採用され、図1に示すように、直方体状に形成されたケース70内に、イオンを生成するためのユニットが内装されている。前記ケース70における長手方向の一方の端部には、生成したイオンを放出すると共に前記イオンダクトD2の一端が連結されるイオン放出部72が設けられている。また、ケース70における長手方向の外面には、空気ダクトD1の外面に取付けられたブラケット76,76に当該イオン発生装置Mを固定するための固定プレート74が設けられている。なお固定プレート74は、例えば車両のインストルメントパネル等、イオン発生装置Mに隣接する構造体に取付けられたブラケットに固定されることもある。
【0026】
従って、実施例のダクト装置Dによれば、イオンダクトD2における案内筒部52を空気ダクトD1内の空気流通路16に挿入し、案内筒部52のイオン案内方向下流端に設けられたイオン流出口38を空気流通路16の下流側に向けると共に該案内筒部52を空気流通路16の空気流通方向に沿って延在するように設け、かつ案内筒部52よりイオン案内方向上流側に通気孔60を設けた。これにより、イオンダクトD2の案内筒部52まで移動したイオンは、空気ダクトD1の空気流通路36から通気孔60を介して案内筒部52内に流入した空気により該案内筒部52のイオン流通空間58に沿ってイオン流出口38に向けて押され、該空気により該イオンの放出を補助することができる。そして、通気孔60から取り込まれた空気が案内筒部52内を流通することで、導入筒部50内のイオンが該空気に引き寄せられるようになり、更にイオンの放出が促進される。また、イオンが案内筒部52内を流通する空気の流れに沿って放出されるので、該案内筒部52内で該イオンが壊れ難い。従ってイオンは、イオンダクトD2から空気ダクトD1内へ適切に放出された後、該空気ダクトD1内を流通する空気と共に室内へ放出され、空調装置ACによる空調に際して好適なイオン効果が得られるようになし得る。
【0027】
また、実施例のダクト装置Dでは、案内筒部52の内部に臨む通気孔60が、空気が空気流通路から案内筒部の内部へ該空気流通路の空気流通方向に沿って通過可能に形成されているので、空気流通路16の空気が該通気孔60を通過して案内筒部52内へスムーズに流入すると共に、案内筒部52内へ流入した空気はイオン流通空間58に沿って流動し、該イオン流通空間58で空気の流れが乱れることによりイオンが壊れることを防止し得る。しかも、案内筒部52と導入筒部50との延在方向が交差していると共に、導入筒部50と案内筒部52との間の屈曲部において該案内筒部52の上流側に通気孔60が位置しているので、該通気孔60を介して案内筒部52内へ流入する空気が導入筒部50側へ移動することが防止され、導入筒部50から案内筒部52へのイオンの放出が阻害されない。
【0028】
また、実施例のダクト装置Dでは、イオンダクトD2における案内筒部52が空気ダクトD1の空気送出口15に臨む位置まで延在し、該案内筒部52のイオン案内方向下流端に設けたイオン流出口38が該空気送出口15に近接しているので、該空気ダクトD1の空気送出口15と該案内筒部52のイオン流出口38との向きが揃っている。これにより、案内筒部52のイオン流出口38から放出されたイオンが、空気ダクトD1の空気送出口15に向けてスムーズに移動するから、該イオンが空気流通路16の内壁に接触し難くなり、該イオンが空気流通路16の内壁に接触して壊れることを防止し得る。更に、通気孔60の総開口面積S1が案内筒部52の流通断面積S2より小さく設定されているので、該通気孔60を介して該案内筒部52内へ流入する空気の流入量を制御することができ、案内筒部52のイオン流通空間58における該空気の流速の最適化が図られて、イオンダクトD2からイオンを適切に放出することが可能である。
【0029】
更に、実施例のダクト装置Dは、空気ダクトD1に対して案内筒部52を差し込んで挿入するようになっているので、該空気ダクトD1に対するイオンダクトD2の取付けを簡易に行ない得る。また、イオンダクトD2に吸音部材Uを設けたので、イオン発生装置Mの作動音が、空気ダクトD1の空気送出口15に向いたイオン流出口38を介して漏れることを防止し得る。
【0030】
(実験例)
本願のダクト装置Dは、前述した如く、イオンダクトD2における案内筒部52を空気ダクトD1の空気流通路16内に挿入して、案内筒部52のイオン案内方向下流端に設けられたイオン流出口38を空気流通路16の下流側に向けると共に該案内筒部52を空気流通路16の空気流通方向に沿って延在するように設け、かつ該案内筒部52よりイオン案内方向上流側に設けた通気孔60から空気流通路16内の空気の一部を該案内筒部52内に流通させるよう構成することで、案内筒部52のイオン流通空間58を流通する空気を利用してイオンダクトD2内のイオンを空気ダクトD1内へ放出するのを補助するものである。そこで本願発明者は、通気孔60の有無によるイオンの放出態様を検証する実験(実験1)と、通気孔60の総開口面積S1の違いによるイオンの放出態様を検証する実験(実験2)とを行なった。
【0031】
(実験1)
実験1では、空調装置ACから送出される空気の風量を変化させた際に、通気孔60の有無によりイオンの放出数がどのように変化するかを確認した。なお、実験条件は以下のようであり、イオン測定器として微分型電気移動度計測器(DMA)を使用した。
<実験1の条件>
・空気ダクトD1内の空気風量(m/h):
・5種類(40.2、54.8、63.6、75.0、127.2)
・案内筒部52:
・円筒形
・イオン流通空間58の断面積:78.54mm(内径:10mm)
・通気孔60:
・円形
・開口面積:1.77mm(内径:1.5mm)
・実験環境:
・気温:23℃
・湿度:39%
【0032】
【表1】

【0033】
表1は、前記実験1の実験結果を示したものである。この実験結果によれば、何れの風量においても、通気孔60を設けた方がイオン放出数が多くなった。従って、前記通気孔60を設けることがイオン放出に効果があることが確認できた。
【0034】
(実験2)
実験2では、空調装置ACから送り出される空気の流量が一定の場合において、通気孔60の開口面積を変化させて、イオンの放出数がどのように変化するかを確認した。なお、実験条件は以下のようであり、イオン測定器として微分型電気移動度計測器(DMA)を使用した。
<実験2の条件>
・空気ダクトD1内の空気風量(m/h):63.6
・案内筒部52:
・円筒形
・イオン流通空間58の断面積:78.54mm(内径:10mm)
・通気孔60:
・円形
・開口面積(mm):
7種類(0.79、1.77、3.14、4.91、7.07、9.62,12.56)
・実験環境:
・気温:23℃
・湿度:39%
【0035】
【表2】

【0036】
表2は、前記実験2の実験結果を示したものである。この実験結果によれば、通気孔60の総開口面積S1が案内筒部52の流通断面積S2の2.25〜9.00%の範囲が、総開口面積S1が案内筒部52の流通断面積S2の2.25%より小さい場合および9.00%より大きい場合に比べて、イオン放出数が多いことが確認された。
【0037】
(変更例)
(1)空気ダクトD1におけるイオンダクトD2が挿通される位置は、屈曲部17の曲がり内側となる側壁12に限定されず、図5に示すように、空気ダクトD1の曲がり外側となる側壁13や、上壁10または下壁11であってもよい。
(2)イオンダクトD2の第3ダクト部31は、実施例のように屈曲したものに限定されず、図5に示すように、空気ダクトD1の屈曲部17に対して側壁13から挿入する場合には直管であってもよい。このような直管の第3ダクト部34では、図5に記載した2点鎖線より下流側部分が空気ダクトD1の空気流通方向に延在する案内筒部52であり、該2点鎖線より上流側部分が導入筒部50である。従って通気孔60は、案内筒部52よりイオン案内方向上流側の導入筒部50に設けることで、該通気孔60に対して空気が斜めに接近するようになるから、空気流通路16から案内筒部52へ空気を取り込むことが可能である。
(3)実施例のイオンダクトD2では、イオンダクトD2における空気ダクトD1内へ挿入される案内筒部52が導入筒部50と一体に形成された形態を例示したが、この案内筒部52を導入筒部50と別体に構成して、案内筒部52と導入筒部50とを側壁12を挟んで空気ダクトD1の内外から連結する形態としてもよい。
(4)イオンダクトD2は、円筒状に限定されず、楕円筒状や、四角筒状等の多角形筒状に構成されたものであってもよい。
(5)通気孔60は、空気が空気流通路16からイオンダクトD2の案内筒部52内へ該空気流通路16の空気流通方向に沿って通過可能に形成されていればよい。例えば図4に示すように、通気孔60は、案内壁部52の厚み方向に貫通形成されて、その貫通方向が空気流通方向と交差していても、該通気孔60における空気流通方向上流側の開口縁とイオンダクトD2の外面とがなす角縁60Aが、該通気孔60における空気流通方向下流側の開口縁と該イオンダクトD2の内面とがなす角縁60Bに対し、空気流通方向で重ならないよう設定することで、通気孔60が空気流通方向に通じる。このように通気孔60を構成することで、空気が空気流通路16から案内筒部52の内部へ該空気流通路16の空気流通方向に沿って通過可能であるから、前記実施例の通気孔60と同等の作用効果が得られる。
(6)案内筒部52に設けられる通気孔60は、円形に限定されず、総開口面積S1が前記範囲内であれば、楕円形、多角形、細長のスリット形等であってもよい。
(7)実施例では、1つの通気孔60を形成した場合を例示したが、該通気孔60は複数形成するようにしてもよい。このように複数の通気孔60を設ける場合には、全ての通気孔60の開口面積の合わせた総開口面積が前記範囲内となるようにすればよい。
(8)空気ダクトD1におけるイオンダクトD2が挿通される位置は、屈曲部17の曲がり内側となる側壁12に限定されず、空気ダクトD1の曲がり外側となる側壁13や、上壁10または下壁11であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
15 空気送出口,16 空気流通路,38 イオン流出口(流出口),50 導入筒部,
52 案内筒部,54 壁面,58 イオン流通空間,60 通気孔,D1 空気ダクト,
D2 イオンダクト,M イオン発生装置,S1 総開口面積(通気孔60の),
S2 流通断面積(案内筒部52の),AC 空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置から送り出された空気を案内する空気ダクトと、前記空気ダクトに接続され、イオン発生装置で生成されたイオンを該空気ダクト内の空気流通路に案内するイオンダクトとを備えたダクト装置において、
前記イオンダクトは、
前記空気ダクトの空気流通路に挿入され、該空気流通路の空気流通方向に沿って延在する案内筒部と、
前記案内筒部におけるイオン案内方向下流端に設けられ、前記空気流通路の空気流通方向下流側に向けて開口する流出口と、
前記案内筒部よりイオン案内方向上流側に設けられ、前記空気流通路から該案内筒部へ空気を取り込む通気孔とを備えた
ことを特徴とするダクト装置。
【請求項2】
前記通気孔は、空気が空気流通路から案内筒部の内部へ該空気流通路の空気流通方向に沿って通過可能に形成された請求項1記載のダクト装置。
【請求項3】
前記イオンダクトは、前記案内筒部と交差する方向に延在する導入筒部が、該案内筒部のイオン案内方向上流側に連設され、
前記通気孔は、前記案内筒部と導入筒部との交差部における空気流通方向上流側の壁面に設けられた請求項1または2記載のダクト装置。
【請求項4】
前記案内筒部は、前記流出口が前記空気ダクトの空気送出口に臨むように設けられた請求項1〜3の何れか一項に記載のダクト装置。
【請求項5】
前記通気孔は、総開口面積が前記案内筒部の流通断面積より小さく設定された請求項1〜4の何れか一項に記載のダクト装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−180017(P2012−180017A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44498(P2011−44498)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】