説明

ダクト

【課題】ダクト内圧が高いときに、内管を流通する気体によって断熱層が膨らむのを防止すること。
【解決手段】気体を流通させる内管1と、この内管1の外周に設けられる主断熱層2と、この主断熱層2と管軸方向に重なり合いを持ちつつ、内管1の端部3を被覆する筒状の端部断熱層4とでダクトを構成する。主断熱層2は、内管1本体の周囲に巻く断熱材5と、この断熱材5を覆う難燃性の外皮材6とで構成され、この外皮材6の管軸方向の両端は、内管1の外周面上に設けた端部断熱層4に粘着テープ9で固定されている。このため、ダクト内圧が高くても、内管1を流通する気体が主断熱層2に流れ込まず、この主断熱層2の膨らみを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調用のダクトに関し、特に、ダクト内圧が高い使用環境に適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
特に業務用の空調機等においては、建物内に設けたダクトに冷風等を流通させて、各部屋に設けた吹き出し口からその冷風等を供給する構成としたものがある。前記供給の際に冷風等の温度が変化するのを抑制するため、断熱層を設けたダクトを用いるのが一般的である。この断熱層として、グラスウール等の断熱材に、断熱材飛散防止用の外皮材を被せたものが用いられることが多い。
【0003】
この外皮材は、例えば特許文献1及び2に示すように、内管の外周の端部まで設けられた断熱材を巻き込むように、内管内側に折り込んだ構成とするのが一般的である(特許文献1の図2、特許文献2の図1等を参照)。この外皮材は、粘着テープ、ステープラ等を用いて前記端部に固定される。ステープラを使用する場合、内管内側に巻き込むように設けた外皮材がめくり上がらないように、この内管内外の外皮材及び内管にその針を貫通させるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−14488号公報
【特許文献2】実開平6−53895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1又は2の構成においては、外皮材の端部が内管の内側まで巻き込まれているため、特にダクト内圧が高いときに、内管内部を流動する気体が、この外皮材の端部から内管の端部に回り込むことがある。この回り込んだ気体は、断熱層(断熱材)側に到達する。また、外皮材がステープラを用いて固定されている場合、このステープラの針孔を通って、内管内部の気体が断熱層側に直接漏れ出すことがある。この断熱層は外皮材で覆われて、袋状となっているため、内管から回り込んできた、あるいは、漏れ出した気体によって断熱層が膨らんで破損等のトラブルを生じることがある。
【0006】
空気の回り込みを防止するため、断熱層を内管端部まで設けない構成とすることも考えられるが、断熱層のないこの端部において冷風による結露が生じて、その近傍を濡らすトラブルが生じ得るため、そのような構成は好ましくない。
【0007】
そこで、この発明は、ダクト内圧が高いときに、内管を流通する気体によって断熱層が膨らむのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明は、可撓性を備えた、気体を流通させる内管と、この内管の外周に設けられる主断熱層とを備えたダクトにおいて、前記主断熱層が、前記外周を被覆する断熱材と、この断熱材を被覆する外皮材とを備え、前記外皮材の管軸方向の両端が、前記内管の外周側に固定されるようにそのダクトを構成した。
【0009】
主断熱層の膨らみは、内管内側に巻き込むように設けた外皮材と内管との間から入り込んだ気体が、内管の外周面側と外皮材(表面側)との間(断熱材を設けた部分)に流れ込むことによって生じる。そこで、この外皮材の両端が前記内管の両端よりも管軸方向中央側で断熱材を被覆するようにする、すなわち、内管を流通する気体が外皮材内に入り込まないようにすることによって、主断熱層の膨らみを防止することができる。この外皮材の断熱材への固定に際しステープラを使用する際は、その針が内管の管内に貫通しないように留意する。貫通すると、その孔を通って内管を流通する気体が主断熱層に流入して、膨らみが生じるためである。
【0010】
この固定は、内管の外周面上に直接行うことができ、あるいは、この内管の外周面側に設けた部材(例えば、後述する端部断熱層)に行うことができる。また、前記外皮材の固定手段として、粘着テープや接着剤等を適宜採用することができる。
【0011】
前記構成においては、前記内管の端部を被覆する筒状の端部断熱層を、前記主断熱層よりも管軸方向端部側に、前記主断熱層との間に気体の流動が生じないように、前記主断熱層と気密的に独立して設けることができる。
【0012】
この端部断熱層は、主としてダクト同士の接続部における結露の防止を図るためのものである。この接続部は、内管本体の長さと比較して十分短いのが一般的である。すなわち、気体の流通に伴って膨らみの問題が生じるのは、主に内管本体を被覆する主断熱層であって、この主断熱層の膨らみさえ防止すれば、端部断熱層が若干膨らんだとしても、膨らむ領域が短いことから膨らみの大きさはそれほど大きくならず、使用上問題にならないことが多い。そこで、端部断熱層と主断熱層との間の気体の流動を防止して、少なくとも主断熱層に気体が流れ込まないようにすることで、主断熱層の膨らみに起因する問題を回避することができる。
【0013】
前記主断熱層を内管の両端まで延長して、端部断熱層の作用を持たせることも考えられる。しかしながら、可撓性を備えた内管の両端と、外皮材の両端との軸方向位置を一致させて、その両端同士を固定する作業は煩雑で、作業時間を要するため好ましくない。そこで、端部断熱層を主断熱層とは独立した構成とすることによって、確実に内管端部の断熱を図りつつ、両断熱層の固定作業の効率を大幅に向上することができる。
【0014】
また前記各構成においては、前記端部断熱層が、独立気泡を内包した断熱材を備えたものとすることができる。
【0015】
この独立気泡の断熱材は、その中を気体が流通できないため、端部断熱層と主断熱層との間の気体の流動を確実に阻止することができる。さらに、グラスウール等の断熱材と異なり、飛散防止用の外皮材を用いる必要が無い。このように、外皮材を用いないことにより、気体の流入に起因する端部断熱層の膨らみは生じない。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、内管を被覆する主断熱層の外皮材の端部を、この内管の外周側に固定するようにした。このようにすることによって、内管を流通する気体が主断熱層内に流れ込んで、この主断熱層がこの気体によって膨らむのを防止することができる。この膨らみを防止することによって、主断熱層の外皮材が周辺部材に接触して破損する等のトラブルを極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明に係るダクトの第一実施形態を示し、(a)は断面図、(b)は斜視図
【図2】本願発明に係るダクトの第二実施形態を示し、(a)は断面図、(b)は斜視図
【図3】ダクトの第三実施形態を示し、(a)は断面図、(b)は斜視図
【図4】ダクトの第四実施形態を示し、(a)は断面図、(b)は斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明に係るダクトの第一実施形態を図1(a)及び(b)に示す。このダクトは、気体を流通させる内管1と、この内管1の外周に設けられる主断熱層2と、この主断熱層2と管軸方向に数mmから数cm程度の重なり合いを持ちつつ、内管1の端部3を被覆する筒状の端部断熱層4とから構成される。
【0019】
内管1は、アルミニウム箔(厚さ約9μm)とPETフィルムとを貼り合わせた帯状部材を、その帯状の幅方向両端が若干重なるように螺旋状に巻き、その重複部に金属線材(図示せず)をその螺旋方向に沿うように挟み込んで接着したものとすることができる。このように可撓性のある帯状部材を使用することによって、ダクトの設置場所に合うようにフレキシブルにこのダクトを屈曲させることができる。また、金属線材を挟み込むことによって、内管1の径方向強度が向上し、高いダクト内圧に耐えることができる。
【0020】
この内管1の素材は、その内部を流通させる気体の透過性を持たず、かつ、ある程度の強度を有するものであれば特に限定されず、例えば、PETフィルム等の樹脂製薄膜材や、アルミニウム箔等の金属箔で構成することも可能である。これらの素材は比較的薄肉なので、後述する外皮材等を内管の端部に固定する際にステープラを用いることができる。このため、この外皮材等の固定作業を容易に行うことができる。また、前記重複部を接着して固定する代わりに、この重複部と前記金属線材とを断面コの字形の螺旋状金属部材に嵌め込んで、内管を形成することもできる。
【0021】
主断熱層2は、内管1本体の周囲に巻く断熱材5と、この断熱材5を覆う難燃性の外皮材6とで構成される。この実施形態では、断熱材5としてグラスウールを、外皮材6としてポリエチレン製のシートを用いているが、もちろんこれに限定されず、他の素材のものを使用することもできる。この断熱材5と外皮材6の軸方向の端部は、ほぼ同じ位置にある。
【0022】
端部断熱層4として、ポリエチレン製の断熱シートを用いている。この実施形態においては、この断熱シートのサイズは、管軸方向の幅が75mm、厚さが3mmであるが、この端部断熱層4の素材、幅及び厚さは、内管1の形状や、流通する気体の温度等を考慮して適宜変更することができる。この端部断熱層4には独立気泡が内包されていて、その中を空気が流動することができないので、この端部断熱層4を介して主断熱層2に気体が流入することはない。また、この端部断熱層4自体で所定の形状を保ち、主断熱層2に用いるグラスウールのように飛散することが無いため、この端部断熱層4全体を覆う外皮材を用いる必要が無い。この端部断熱層4によって、内管1に冷風を流通させた際に、ダクト同士の接続部において結露が生じるのを防止することができる。
【0023】
この端部断熱層4は、内管1の端部を伸ばした状態で、前記断熱シートを貼着することによって構成され、他のダクトと接続する際の接続部として機能する。
【0024】
断熱シート4の内管開口部側には、この端部断熱層4と内管端部3の先端を巻き込むように難燃性の外皮材7が設けられ、この端部断熱層4の先端を保護している。端部断熱層4と、この端部断熱層4に設けられた外皮材7は、内管1の端部3にステープラの針8
で直接固定されている。この場合、その針孔から内管1を流通する気体が漏れ出し得るが、主断熱層2と端部断熱層4は気密的に独立しているため、この漏れ出た気体が主断熱層2に流入することはない。
【0025】
主断熱層2の両端部及び端部断熱層4には、3本の粘着テープ9、10、11が順次巻き付けられて、断熱材5がその端部から飛散するのを防止するとともに、この主断熱層2と端部断熱層4とが、相対的に管軸方向にずれないようにしている。この主断熱層2の中央部(端部3以外の部分)においては、主断熱層2(断熱材5)と内管1は固定されておらず、その管軸方向に自在にスライドできるため、ダクトの屈曲性は確保されている。この粘着テープ9、10、11の代わりに、内管1に孔をあけることなく主断熱層2をこの内管1に固定する手段(接着剤等)を適宜採用することができる。なお、図1(b)においては、主断熱層2及び端部断熱層4の構成を明確に示すため、粘着テープ9、10、11の記載は省略している。また、この粘着テープ9、10、11の本数は、必要に応じて適宜増減することができる。
【0026】
このダクトを他のダクトや空調機等の機器と接続する際は、他のダクト等に接続した後に端部断熱層4の上から締付バンドを巻いて締め付け、ダクトが不用意に抜けないようにしっかりと固定する。この締付バンドの上からさらにビスをねじ込んで、その固定を一層確実にするのがより好ましい。なお、このビスが、主断熱層2の外皮材6を突き破らないようにするように留意する。この突き破りが生じると、内管1を流通する気体が主断熱層2に漏れ出すからである。
【0027】
この発明に係るダクトの第二実施形態を図2(a)及び(b)に示す。このダクトは、内管1本体に主断熱層2を設けるとともに、内管1の端部3に端部断熱層4を設けた点で第一実施形態に係るダクトと同じであるが、端部断熱層(断熱シート)4を内管1の端部3の内側に巻き込むように設けた点において異なっている。このように内側に巻き込むことによって、内管1の端部3を保護する外皮材が不要となって、この外皮材をステープラの針で固定する作業を省略することができる。なお、図2(b)においては、主断熱層2及び端部断熱層4の構成を明確に示すため、粘着テープ9、10の記載は省略している。
【0028】
上記の第一及び第二実施形態においては、主断熱層2の断熱材5に外皮材6を被せて、この外皮材6に粘着テープ9を貼り付けて断熱材5が飛散しないようにしたが、この外皮材6の管軸方向の両端を、断熱材5を巻き込むようにして、この断熱材5と内管1との間側に折り込むようにすることもできる。この場合は、断熱材5の端部と外皮材6とを、ステープラを用いて固定するのが便宜である。ただし、この針が、内管1に刺さらないように留意する必要がある。針が内管1に刺さると、この針孔を通って、内管1を流通する気体が主断熱層2に漏れ出すからである。
【0029】
ダクトの第三実施形態を図3(a)及び(b)に示す。このダクトは、気体を流通させる内管1と、この内管1の外周に設けられる主断熱層2と、この主断熱層2の内管端部3側に連設される端部断熱層4とを備えたものである。内管1は、第一実施形態等で用いたのと同じものを採用できる。
【0030】
主断熱層2は、内管1本体の周囲に巻く断熱材5と、この断熱材5を覆う外皮材6とで構成される。端部断熱層4は、断熱材5と、この断熱材5を包む外皮材6とで構成される。この実施形態では、両断熱層2、4の外皮材6は連続した一枚のシート状のものであって、端部断熱層4側には管軸中心対称に2箇所の切れ込み12、12が形成されている。この切れ込み12を形成することによって、両断熱層2、4の境目の折り返し部において、ダクトの接続時は端部断熱層4を内管端部3と反対側に容易に折り返す一方で、ダクトの接続後はこの端部断熱層4を内管端部3側に折り返すことができる。このように端部断熱層4を自在に折り返し得るようにすれば、端部断熱層4がダクト接続の際に妨げとならない。しかも、確実にこの内管端部3を断熱して結露の発生を防止することができる。また、主断熱層2及び端部断熱層4のいずれも内管1とは気密的に独立しているため、この内管1を流通する気体が主断熱層2に流入する恐れはない。
【0031】
切れ込み12の開口部は粘着テープで密封されていて、端部断熱層4内部の断熱材5が、その開口部から飛散しないようになっている。この切れ込み12の長さは、この端部断熱層4をスムーズに折り返すことができる程度に、ダクトの口径等に対応して適宜決定する。
【0032】
ダクトの第四実施形態を図4(a)及び(b)に示す。このダクトは、気体を流通させる内管1と、この内管1の外周に設けられる主断熱層2と、この主断熱層2の内管端部3側に連設される端部断熱層4とを備えたものである。内管1は第一実施形態等で用いたものと同じものを採用できる。この内管1の端部3には、他のダクトや空調機等の機器と接続するためのフランジ部材13が嵌め込まれている。
【0033】
主断熱層2は、内管1本体の周囲に巻く断熱材5と、この断熱材5を覆う外皮材6とで構成される。端部断熱層4は、断熱材5と、この断熱材5を包む外皮材6とで構成される
この実施形態では両断熱層2、4の外皮材6は連続した一枚のシート状のものであって、両断熱層2、4の境目の部分を折り返すようにし、この境目の折り返し部をフランジ部材13に設けた固定バンド14で固定する。
【0034】
この端部断熱層4は閉じた袋状となっていて、袋状の奥側に断熱材5が設けられている一方で、固定バンド14側には断熱材5が入っていないスライド部15が連設されている。このスライド部15、及び、断熱材5が入っている端部断熱層4のそれぞれの軸方向長さはほぼ同じである。
【0035】
ダクト等への接続時は端部断熱層4を主断熱層2側にスライドさせる一方で、ダクトの接続後はこの端部断熱層4を内管端部3側にスライドさせる。このように構成することにより、端部断熱層4がダクト接続の際に妨げにならず、確実に接続部を断熱して結露の発生を防止することができる。しかも、端部断熱層4にスライド部15を連設したことにより、この端部断熱層4のスライドをスムーズに行うことができる。また、主断熱層2及び端部断熱層4のいずれも内管1とは気密的に独立しているため、この内管1を流通する気体が主断熱層2に流入する恐れはない。
【0036】
折り返し部を固定するために、固定バンド14の代わりに粘着テープ等の固定手段を適宜使用することができる。
【0037】
この構成においては、主断熱層2と端部断熱層4が、連続した一枚のシートで構成された態様について示したが、両断熱層2、4を独立した二つの部材とし、端部断熱層4の一部を固定バンド14で固定して、この端部断熱層4を管軸方向にスライドし得るようにすることもできる。
【0038】
上記の各実施形態においては、内管1として、可撓性を備えたフレキシブルに屈曲できるタイプのものについて説明したが、屈曲不能なタイプのダクトにも適用できる。上述したように、ダクトには主断熱層2が設けられるのが一般的であり、この主断熱層2の膨らみの問題は、屈曲不能なタイプのダクトにも生じ得るためである。
【符号の説明】
【0039】
1 内管
2 主断熱層
3 (内管の)端部
4 端部断熱層
5 断熱材
6、7 外皮材
8 針
9、10、11 粘着テープ
12 切れ込み
13 フランジ部材
14 固定バンド
15 スライド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を備えた、気体を流通させる内管(1)と、この内管(1)の外周に設けられる主断熱層(2)とを備えたダクトにおいて、
前記主断熱層(2)が、前記外周を被覆する断熱材(5)と、この断熱材(5)を被覆する外皮材(6)とを備え、前記外皮材(6)の管軸方向の両端が、前記内管(1)の外周側に固定されていることを特徴とするダクト。
【請求項2】
前記内管(1)の端部を被覆する筒状の端部断熱層(4)を、前記主断熱層(2)よりも管軸方向端部側に、前記主断熱層(2)との間に気体の流動が生じないように、前記主断熱層(2)と気密的に独立して設けたことを特徴とする請求項1に記載のダクト。
【請求項3】
前記端部断熱層(4)が、独立気泡を内包した断熱材を備えたことを特徴とする請求項2に記載のダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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