説明

ダッペンディッシュ

【課題】コスト軽減と再利用化を図ることが可能なダッペンディシュを提供する。
【解決手段】略平板状の基台4に薬剤調合部が具備されたダッペンディシュ2であって、前記基台4に予め受け部孔8が形成されているとともに、この受け部孔8に予め用意されたカップ状部材22が着脱自在に装着されることにより、前記薬剤調合部が構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野において、例えば、固液混練等にて調合されるペーストまたは粘性体を調製するためのダッペンディッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用接着材の調製容器としてダッペンディッシュが知られている。
このダッペンディッシュは、略皿状の基台に3個程度の薬剤調合部が形成されたもので、この薬剤調合部内において混合する所定の物質が混和されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、歯科用接着材は、硬化すれば当然ながら強固な接着力を有するので、使用後にダッペンディッシュから洗い落とすことは極めて困難である。また、患部の血液、唾液、微生物にて汚染されることが多いことから、感染の危険を防ぐ目的で、そのまま廃棄されるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、ダッペンディッシュをそのまま廃棄することは、コスト高になるとともに、資源削減の観点からも好ましくなく、ダッペンディシュの再利用化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−204747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、コスト軽減と再利用化を図ることが可能なダッペンディシュを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るダッペンディッシュは、
略平板状の基台に薬剤調合部が具備されたダッペンディシュであって、
前記基台に予め受け部孔が形成されているとともに、この受け部孔に予め用意されたカップ状部材が着脱自在に装着されることにより、前記薬剤調合部が構成されていることを特徴としている。
【0008】
このような構成のダッペンディッシュによれば、使い捨てにしなければならない部分のみを使い捨てにし、かつその他の基台部分を繰り返し使用することができる。したがって、コスト低減と省資源化を図ることができる。
【0009】
ここで、本発明では、前記カップ状部材は、フランジ部を有するとともに、裏側外周面に複数個の回り止め突起が突設されていることが好ましい。
このような構成であれば、安価にして落下防止機能を具備させることができ、さらにはカップ状部材を装着した場合の回り止め機能を具備させることができる。
【0010】
また、本発明では、前記カップ状部材における前記フランジ部の下方には、当該カップ状部材同士を重ね合わせた場合の間隙を確保するための凸条27が環状に形成されていることが好ましい。
【0011】
このような凸条27が環状に形成されていれば、カップ同士を重ねた状態から1個1個に取り外すのが容易である。
さらに、本発明では、前記基台における前記受け部孔が形成された領域以外の部分に、凹部が形成されていても良い。
【0012】
このような構成であれば、例えば、プライマー前処理剤などのように、固化する虞のない薬剤を、この凹部に取り分けることができる。
また、前記基台における前記受け部孔および前記凹部が形成された領域以外の部分に、筆を載置するための筆置き部が形成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成であれば、口腔内の歯質や補綴物に歯科用接着剤などの歯科用組成物を塗布するための用具である筆を置くことができる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明に係るダッペンディッシュによれば、時間の経過とともに固化してしまう薬剤を調合するためのカップ状部材のみを使い捨てにすることができる。また、他の基台部分を繰り返し使用可能としたため、コストの軽減および資源の削減に寄与することができる。
【0015】
また、カップ状部材にフランジ部を具備させるとともに、裏側外周面に回り止め突起を設けることにより、基台の受け部に差し込んだ場合に姿勢を安定にし、外れや落下を防止することができる。
【0016】
さらに、受け部孔を設けた以外の部分に凹部を設ければ、この凹部に、洗浄により綺麗に落とすことが可能な薬剤、脱脂綿など他の物品を適宜収容することができる。これにより、ダッペンディッシュの使い勝手を広げることができる。
【0017】
また、筆置き部が形成されていれば、歯科用接着剤などを塗布するための筆を置くことができ、医療関係者が直ちにそれを手にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明に係るダッペンディッシュの分解斜視図である。
【図2】図2は本発明に係るダッペンディッシュの基台部分の平面図である。
【図3】図3は、図1に示したダッペンディッシュのA−A線方向の断面図である。
【図4】図4は図1に示したダッペンディッシュの基台部分の下面図である。
【図5】図5(A)は図2に示したダッペンディッシュの基台の受け部に着脱自在に装着されるカップ状部材の斜視図、図5(B)は、そのカップ状部材の断面図である。
【図6】図6は図4に示したダッペンディッシュのB−B線方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るダッペンディッシュについて説明する。
図1は本発明の一実施例に係るダッペンディッシュを示したもので、図2は図1に示したダッペンディッシュの基台を示したものである。
【0020】
このダッペンディッシュ2は、略平板状の基台4を有している。この基台4には、下方に向かって、図2のA−A線方向の断面図を示す図3に明示されるようなすり鉢状の受け部6が3つ千鳥状に形成されている。そして、各受け部6の底面には、受け部孔8が形成されている。
【0021】
一方、3つのうち中央に形成された受け部6の両側に、半球状の凹部10,10がそれぞれ形成されている。さらに、これら半球状の2つの凹部10、10の手前側には、断面略U字状の筆置き部12が形成されている。
【0022】
上記基台4はポリプロピレンなどにより形成されたもので、図3及び図4に示したように、その平板状の上面4aの周囲に短側壁13と長側壁14とが延出され、下面側は開口して形成されている。また、これら短側壁13と長側壁14とには、図4に示したように、中央に形成されたすり鉢状の受け部6に向かって補強用のリブ16が形成されている。さらに、図4および図6に示したように、基台4の裏面角部には、段付き孔18が形成され、この段付き孔18内にゴム製の滑り止め部材20が圧入されている。
【0023】
図1に戻って、上記基台4に形成されたすり鉢状の3つの受け部6内には、予め用意されたカップ状部材22が着脱自在に装着される。
このカップ状部材22は、上記受け部6のすり鉢形状に対応して形成されたもので、図5(A)、(B)に示したように、その開口部に大径なフランジ24を有し、かつ胴部の外周面に複数個(実施例では3個)の回り止め突起26が略等間隔で形成されている。この回り止め突起26を設けた胴部の径は、受け部孔8の内径より僅かに大きく設定されている。
【0024】
なお、カップ状部材22の開口端側のフランジ24より若干下がった位置の外周面には、図5(B)に示したように、カップ同士を重ねた場合の位置決め固定に有効な凸条27が環状に形成されている。このように、凸条27をカップ状部材22のフランジ24より若干下がった位置に環状に設ければ、カップ状部材22同士を重ねた場合に、上下のフランジ22,22間の間隙を確保し軽く合わされるので、重ねた状態から一つ一つのカップに分離することが容易である。
【0025】
このようなカップ状部材22が基台4の受け部孔8内に収容されると、受け部孔8の内周縁部に回り止め突起26が係止される。これにより、カップ状部材22が基台4から簡単に外れたりすることはなく、装着時の姿勢を安定にすることができる。また、作業中に基台4から不用意に外れたりすることがない。
【0026】
また、このようにカップ状部材22が装着されることにより、基台4の上面4aに薬剤調合部が構成される。
上記基台4に形成された2つの凹部10は、カップ状部材22よりやや小さく形成されているが、大きさ、形状など限定されない。しかしながら、洗浄性を考慮すれば、半球状であることが好ましい。
【0027】
上記断面略U字状の筆置き部12は、歯科用接着剤などを塗布するための道具である筆28を載置するためのもので、手前側に直線的に形成されている。また、その中央領域は、作業者の指先が容易に入るように、若干幅広で、かつ深さが周囲よりも深く形成されている。
【0028】
これにより、医療関係者が筆28を手に取るときの作業性が確保される。
本発明に係るダッペンディッシュは上記のように形成されているが、以下に作用について説明する。
【0029】
先ず、基台4とは別体で形成されたカップ状部材22は尻つぼみ形状で上方が開口して形成されているため、多段に重ねて保管あるいは運搬することができる。したがって、非使用時には、基台4上であるいは他のテーブルなどの上に重ねて管理することができる。そして、使用時には、所望とするカップ状部材22を基台4の上にそれぞれ装着する。
【0030】
歯科用接着剤など、使用後に固化する虞のある組成物を混錬する場合は、筆28を手にとってカップ状部材22の内部で調合すれば良い。また、プライマー前処理剤など固化する虞のない物品を扱う場合は、基台4と一体に形成された凹部10内に収容すれば良い。
【0031】
作業が完了した場合には、カップ状部材22のみを使い捨てとし、使用後のカップ状部材22は、この基台4から取り外して破棄すればよい。また、他の基台部分は、洗浄すれば繰り返し使用することができる。これにより、ダッペンディッシュの多くの部分を再利用することが可能とできる。
【0032】
このように本発明では、接着剤が固化してしまった場合にこれまで破棄するしかなかったダッペンディッシュの多くの部分を繰り返し利用することができる。したがって、コスト低減に寄与するとともに、省資源化に寄与する。
【符号の説明】
【0033】
2 ダッペンディッシュ
4 基台
6 受け部
8 受け部孔
10 凹部
12 筆載置部
20 滑り止め部材
22 カップ状部材
24 フランジ部
26 回り止め部材
27 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板状の基台に薬剤調合部が具備されたダッペンディシュであって、
前記基台に予め受け部孔が形成されているとともに、この受け部孔に予め用意されたカップ状部材が着脱自在に装着されることにより、前記薬剤調合部が構成されていることを特徴とするダッペンディッシュ。
【請求項2】
前記カップ状部材は、フランジ部を有するとともに、裏側外周面に複数個の回り止め突起が突設されていることを特徴とする請求項1に記載のダッペンディッシュ。
【請求項3】
前記カップ状部材における前記フランジ部の下方には、当該カップ状部材同士を重ね合わせた場合の間隙を確保するための凸条が環状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のダッペンディッシュ。
【請求項4】
前記基台における前記受け部孔が形成された領域以外の部分に、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダッペンディシュ。
【請求項5】
前記基台における前記受け部孔および前記凹部が形成された領域以外の部分に、筆置き部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のダッペンディッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−72618(P2011−72618A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228157(P2009−228157)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(592093578)サンメディカル株式会社 (61)