説明

ダム湖の堆積物の脱水処理方法およびそのシステム

【課題】安定的かつ効率的に脱水処理を行うことができるダム湖の堆積物の脱水処理方法およびそのシステムを提供する。
【解決手段】ダム湖底の泥状堆積物を採取して脱水処理する方法であって、砂の含有比率が高い領域と、砂より小径の細粒分の含有比率が高い領域とから、砂と細粒分との比率があらかじめ決められた設定比率となるように泥状堆積物を採取し、混合して混合脱水原液を生成する採泥ステップと、混合脱水原液をスクリュウプレス3により脱水する脱水ステップと有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム湖の堆積物を安定的かつ効率的に脱水処理することができる脱水処理方法およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ダム湖の堆積物の浚渫や、トンネルの掘削などにともなって発生する水、粘土、シルト、砂、礫などの混合物(以下、「泥状物」という)を有効活用するための技術のひとつに、脱水技術がある。中でもスクリュウプレスなどの機械を用いた機械脱水は、泥状物の減容化や強度増加を図り、運搬や有効活用を行いやすいように処理する技術である。スクリュウプレスを用いて泥状物の脱水処理を行う技術として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1は、浚渫によって発生した汚泥のリサイクル処理に関する技術であって、高濃度浚渫船により浚渫した泥状物を、まずふるいにかけて礫や夾雑物を除去し、次に凝集剤と反応させてフロック(凝集泥状物)を生成させた脱水原液とした上で、スクリュウプレスにより脱水処理して排水を分離し脱水ケーキとなす。さらにこの脱水ケーキに固化剤を添加混合して粒状土となす方法を開示している。
【0004】
スクリュウプレスは一般的に、排水の透過性を有する円筒型あるいは円錐型の外筒(スクリーン)と、羽根が螺旋状に取り付けられたスクリュウ軸とから構成され、スクリュウ軸は外筒の両端面に回転自在に軸支されている。スクリュウ軸と外筒との間の空間の容積は、スクリュウ軸の軸径が脱水原液の投入口側から脱水ケーキの出口側に向かって徐々に大きくなるか、あるいは外筒の径が徐々に縮小することによって徐々に縮小する。その結果、泥状物は、羽根により出口側に送られながら徐々に強い圧力で圧搾され、その排水を外筒を通して排出しつつ、最終的に脱水ケーキとなってケーキ出口から排出される。
【特許文献1】特開2002−192200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の技術にあっては、スクリュウプレスを既定の仕様および運転条件(スクリュウ軸の回転速度など)で運転させる一方で、採取される泥状物は場所などによってその性状がまちまちであるため、泥状物から生成される脱水原液を安定的に脱水処理することができない、および効率的に行うことができないといった課題があった。
【0006】
具体的には、脱水原液中における砂の含有割合や、泥水(脱水原液から砂を除いた成分、すなわち水、粘土、シルトからなる混合物)の濃度すなわち泥水中に含まれる細粒分(粘土、シルト)の割合などがまちまちであるため、例えば、脱水原液中の砂の含有割合が多く(泥水の含有割合が低く)泥水濃度も高いときは回転速度が低すぎてスクリュウプレス内で目詰まり(脱水処理の不安定)が生じ、他方、脱水原液中の砂の含有割合が低く(泥水の含有割合が高く)泥水濃度も低いときは回転速度が高すぎて脱水が不完全(脱水処理の不効率)となる場合があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、安定的かつ効率的に脱水処理を行うことができるダム湖の堆積物の脱水処理方法およびそのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるダム湖の堆積物の脱水処理方法は、ダム湖底の泥状堆積物を採取して脱水処理する方法であって、砂の含有比率が高い領域と、砂より小径の細粒分の含有比率が高い領域とから、砂と細粒分との比率があらかじめ決められた設定比率となるように泥状堆積物を採取し、混合して混合脱水原液を生成する採泥ステップと、該混合脱水原液をスクリュウプレスにより脱水する脱水ステップと有することを特徴とするダム湖の堆積物の脱水処理方法。
【0009】
また、前記採泥ステップにおける混合操作は、複数の採泥手段により砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから同時に泥状堆積物を採取し、混合することにより行われることを特徴とする。
【0010】
また、前記採泥ステップにおける混合操作は、1つの採泥手段により、砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから泥状堆積物を交互に採取し、混合することにより行われることを特徴とする。
【0011】
また、前記採泥ステップにおける堆積物の採取は、表層から深層に向けて順次行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるダム湖の堆積物の脱水処理システムは、ダム湖底の泥状堆積物を採取して脱水処理するシステムであって、ダム湖内に移動可能に設けられた採泥手段により、砂の含有比率が高い領域と、砂より小径の細粒分の含有比率が高い領域とから、砂と細粒分との比率があらかじめ決められた設定比率となるように泥状堆積物を採取し、混合して混合脱水原液を生成する採泥部と、該混合脱水原液を脱水するスクリュウプレスとを有することを特徴とする。
【0013】
また、前記採泥部は、泥状堆積物を採取する複数の採泥手段と、該複数の採泥手段により採取された各泥状堆積物を搬送するための複数の採泥管と、該複数の採泥管に接続され、当該複数の採泥管からの泥状堆積物が混合され、搬送される混合管とを有することを特徴とする。
【0014】
また、前記採泥部は、砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから交互に泥状堆積物を採取する1つの採泥手段と、該採泥手段により採取された上記泥状堆積物を搬送するための1本の採泥管と、該採泥管により搬送される砂の含有比率が高い領域の泥状堆積物と細粒分の含有比率が高い領域の泥状堆積物とを混合するための混合部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるダム湖の堆積物の脱水処理方法およびそのシステムにあっては、安定的かつ効率的に脱水処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明にかかるダム湖の堆積物の脱水処理方法およびそのシステムの好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかるダム湖の堆積物の脱水処理システム1は基本的には、図1および図2に示すように、採泥部2と、スクリュウプレス3とから主に構成される。なお、本明細書および特許請求の範囲などにおいて「堆積物」および「泥状堆積物」とは、河川からの流入などによってダム湖底に堆積した泥状の物質であって、水、粘土、シルト、砂、礫などを含む混合物を指す。また、「細粒分」とは、泥状堆積物に含まれる粒子のうち粘土およびシルトを指す。
【0017】
採泥部2には、2組の採泥手段100、101と、各採泥手段100、101により採取された泥状堆積物を搬送する2本の採泥管102、103と、これら2本の採泥管102、103に接続され、各採泥管102、103からの泥状堆積物を受けて搬送する1本の混合管104が設けられている。採泥手段100、101は、ダム湖D内を移動可能な2艘の浚渫船(図示省略)と各浚渫船の採泥パイプ100a、101aなどから構成され、各浚渫船の採泥パイプ100a、101aから採取された泥状堆積物は、各採泥管102、103により混合管104へと搬送される。混合管104内では、両採泥管102、103からの泥状堆積物が混合され、混合脱水原液とされた上で、後段の振動ふるい105へと搬送される。
【0018】
なお本実施形態にあっては、2本の採泥管102、103が集合し、1本の混合管104に接続され、泥状堆積物は混合管104の内部で混合されて振動ふるい105へと送られる構成としているが、これに限定されるものではない。すなわち例えば、採取された泥状堆積物は、各採泥手段100、101に接続された採泥管102、103により、個別にかつ直接、振動ふるい105まで送られることとしてもよい。あるいは振動ふるいをも各採泥管102、103ごとに個別に2つ設けることとしてもよい。これらの変形において、前者の場合は、振動ふるい105において領域Aおよび領域Cからの泥状堆積物が混合されることとなり、後者の場合は、貯留槽106において混合されることになる。しかしながら、本実施形態のように、各採泥管102、103を集合させ、1本の混合管104に接続する構成の方が、これらの変形に比して、ダム湖Dから振動ふるい105までの配管や振動ふるい105などの数を低減させることができ、コスト面や配管用地の確保の面から、より有利である。
【0019】
図2に示すように、ダム湖底の泥状堆積物には、礫、砂、細粒分などが含まれており、一般的にそれらの粒子は、その性状(質量、比重、粒度など)に従って複数の領域に分かれて分布している。特に粒度について見ると、やはり一般的にダム湖底の泥状堆積物は一定の粒度分布を示す。図示例にあっては、泥状堆積物の表層から準深層までは、河川の上流部、中流部、およびダム堤体Tに近い下流部の3つの領域A、B、Cに分かれて分布しており、領域Aの泥状堆積物は砂礫(礫55%、砂30%、細粒分15%)、領域Bの泥状堆積物は砂質土(礫5%、砂70%、細粒分25%)、領域Cの泥状堆積物はシルト質粘土(砂20%、細粒分80%)とそれぞれ呼ばれる粒度構成をなしている。泥状堆積物の最深層には、湖底の全域にわたって河床礫Gが分布している。
【0020】
特に、泥状堆積物中の砂と細粒分に注目すると、上流部である領域Aは砂の含有比率が高く、下流部である領域Cは細粒分の含有比率が高い。中流部の領域Bは、砂と細粒分の含有比率がともに中程度である。また領域Bについてさらに詳しく見ると、領域Bの中でも上流側は比較的砂の含有比率が高く、下流側は比較的細粒分の含有比率が高い。
【0021】
また、各領域A〜Cの泥状堆積物は、採取作業の手順などによってその堆積状態、すなわち粒度分布が崩れてしまうおそれがある。具体的には例えば、領域Aおよび領域Bの泥状堆積物領域を全く採取せずに、領域Cの泥状堆積物を深層まで採取してしまうと、重量と河川の流れの作用で領域Aおよび領域Bの泥状堆積物が領域Cの泥状堆積物を除去した部分に崩落してきてしまい、湖底の堆積物全体の粒度分布が変化してしまうので注意が必要となる。
【0022】
2つの採泥手段100、101は、ダム湖底の泥状堆積物のうち、それぞれ砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから、砂と細粒分との比率があらかじめ決められた設定比率となるように、泥状堆積物を採取する。
【0023】
図示例にあっては、前もって各領域から採取されたサンプルに基づいて、領域Bの中央部に位置する泥状堆積物中に含まれる砂と細粒分との比率をあらかじめ決められた設定比率としている。本脱水処理システム1において使用されるスクリュウプレス3の仕様(例えばスクリュウプレス3の外筒とスクリュウ軸との間の容積など)や、スクリュウプレス3の運転条件の1つであるスクリュウ軸の回転速度は、この設定比率に対し、最適となるよう決定される。また、領域Bの中央部を中心に上流側の領域と下流側の領域とから泥状堆積物を適宜な割合で採取すれば、それらが混合された混合脱水原液の粒度構成は、あらかじめ決められた設定比率に一致させることが可能である。
【0024】
振動ふるい105は、投入された混合脱水原液から礫を除去する。振動ふるい105の出口105aにはポンプP1が設けられ、礫を除去した残りの混合脱水原液はポンプP1によりサイクロン分級機107に投入されて遠心分離された後、貯留槽106に送られる。サイクロン分級機107では、遠心分離により壁面に付着した粒子を再度振動ふるい105へと戻すことによって、混合脱水原液中に残存する礫を、より確実に混合脱水原液から除去する。本図示例にあっては、径が3mm以上の粒子を礫、径が74μm以上3mm未満の粒子を砂、74μm未満の粒子を細粒と分類している。振動ふるい105により分離された礫は、土砂ピット4の礫置き場41に蓄積され、随時バックホー5およびブルドーザー6などにより運び出されて、各種用途に利用される。
【0025】
貯留槽106には攪拌機108が設けられており、貯留槽106では、サイクロン分級機107からの混合脱水原液を受けてこれを貯留する間、攪拌機108により攪拌し、その粒度分布を均一にした上で、後段に送る。
【0026】
また、貯留槽106には、凝集泥水返送手段109が接続されており、後述する凝集泥水生成部7から凝集泥水が返送されてくる。凝集泥水は細粒分と水との混合物であり、その量は振動ふるい105側から投入される混合脱水原液に比して微量であるが、返送されてくる凝集泥水が比較的多い場合には、貯留槽106に接続された希釈水供給手段110から希釈水が供給され、混合脱水原液中に含まれる砂と細粒分の比率があらかじめ決められた設定比率の範囲内に収まるよう調整される。このような、貯留槽106内の混合脱水原液の希釈に関する各部の動作は、希釈制御部111によって制御される。図示例にあっては、この希釈制御部111は、制御部112の一部として構成されている。また、貯留槽106には比重測定器113が接続されており、これらの希釈は当該混合脱水原液の比重に基づき実行される。
【0027】
また、貯留槽106には、貯留槽106内の混合脱水原液の量を調節するため、原液返送手段114と、原液量制御部115とが設けられている。原液量制御部115は、図示例にあっては、制御部112の一部として構成されている。すなわち図示例にあっては、制御部112は上述の希釈制御部111と原液量制御部115とを含んでいる。原液返送手段114は、貯留槽106の吐出管116から分岐させ、振動ふるい105の受け入れ口105bまで接続された原液返送管114aと、原液返送管114aの中途に設けられた開閉制御可能なバルブV1と、貯留槽106に設けられ、貯留槽106内の混合脱水原液の量を測定する原液量測定器114bなどから構成され、貯留槽106内の原液量が、希釈水の供給などによって基準値を超えてしまうような場合には、この原液返送手段114により適宜な量の混合脱水原液を振動ふるい105へと返送する。
【0028】
具体的には、まず原液量測定器114bにおいて測定された原液量測定値が原液量制御部115へと出力され、原液量制御部115で原液量測定値が基準値以上に達したと判断された場合、原液量制御部115はバルブV1を開放するとともに、後述する原液搬送管8の中途に設けられたバルブV2を閉止させた上で、貯留槽106の吐出ポンプP2を作動させる。その結果、貯留槽106内の混合脱水原液が振動ふるい105への受け入れ口105bへと返送される。原液量制御部115は、あらかじめ決められた期間、混合脱水原液を返送した後自動的に返送を終了する。あるいは、原液量測定器114bから出力される原液量測定値があらかじめ決められた一定値まで低下したことをもって返送を終了することとしてもよい。
【0029】
このような、貯留槽106内の混合脱水原液を返送する原液返送手段114と、原液量制御部を設けることによって、貯留槽106内の混合脱水原液が溢れたりすることがなく、適切に一定量以内に抑えられるとともに、貯留槽106内の混合脱水原液を再度、本脱水処理システム1内に循環させることによって、返送された混合脱水原液中に若干残存する礫を、より確実にかつ効率よく除去することができる。
【0030】
また、貯留槽106の吐出管116には、後段へ混合脱水原液を送るための原液搬送管8が接続されている。原液搬送管8は後述するパドル型反応器9に接続されており、その中途には開閉制御可能なバルブV2が設けられている。貯留槽106から混合脱水原液をパドル型反応器9へと搬送する場合には、上述の原液量制御部115において、バルブV2を開放するとともに、原液返送手段114のバルブV1を閉止させた上で、吐出ポンプP2を作動させる。
【0031】
パドル型反応器9では、送られた混合脱水原液にアニオンやカチオンなどの適宜な1種ないし複数種の凝集剤10を反応させてフロックを生成させ、混合脱水原液中の粒子がスクリュウプレス3の外筒から排出されにくいよう調整する。
【0032】
スクリュウプレス3は、排水の透過性を有する円筒型あるいは円錐型の外筒(スクリーン)と、羽根が螺旋状に取り付けられたスクリュウ軸とから構成され、スクリュウ軸は外筒の両端面に回転自在に軸支されている。スクリュウ軸と外筒との間の空間の容積は、スクリュウ軸の軸径が混合脱水原液の投入口31側から脱水ケーキの出口32側に向かって徐々に大きくなるか、あるいは外筒の径が徐々に縮小することによって徐々に縮小する。その結果、混合脱水原液は、羽根により出口32側に送られながら徐々に強い圧力で圧搾され、その排水を外筒を通して排出しつつ、最終的に脱水ケーキとなってケーキ出口32から排出される。
【0033】
スクリュウプレス3の後段には、凝集泥水生成部7としてのシックナー7a、およびベルトコンベアー11を介してスラッジ置き場12が設けられている。スラッジ置き場12には脱水ケーキが蓄積される。
【0034】
シックナー7aでは、スクリュウプレス3の外筒から排出された排水を受け入れ、ポリ塩化ナトリウム(PAC)や有機高分子系凝集剤などの適宜な1種ないし複数種の凝集剤13により凝集処理を施す。その結果、排水中に若干残存する粘土やシリカなどの細粒分が凝集沈殿するので、この沈殿を含む液体(以下、凝集泥水という)をシックナー7a下部の吐出口7bから取り出す。図示例にあっては、シックナーの吐出口7bは凝集泥水返送手段109に接続されていて、凝集泥水は、貯留槽106に返送される。なお、シックナー7aにおける凝集処理の残余分である上澄み液は、ダム湖Dに戻すなど適宜放流される。
【0035】
このような、凝集泥水生成部7および凝集泥水返送手段109を設けることによって、スクリュウプレス3からの排水を再度、本脱水処理システム1内に循環させることができ、排水中に若干残存する粒子をより確実に、かつ効率よく除去することができる。
【0036】
次に、このようなダム湖の堆積物の脱水処理方法について、上記脱水処理システム1を例にとって説明する。採泥ステップではまず、ダム湖Dにおいて2つの採泥手段100、101により同時に湖底の泥状堆積物が採取される。図示例にあっては、特に泥状堆積物の粒度分布に着目し、図2に矢印で示すように、一方の採泥手段100では砂の含有比率が最も高い領域Aにおいて、他方の採泥手段101では細粒分の含有比率が最も高い領域Cにおいて、泥状堆積物の採取を開始する。さらに詳しくは、一方の採泥手段100では領域Aの最上流地点から、他方の採泥手段101では領域Cの最下流地点から採取を開始し、その後、各採泥手段100、101をともに砂と細粒分の含有比率が中程度である領域Bの、特に中央部に向かって、連続的に移動させつつ採取する。
【0037】
さらに、本実施形態にあっては、最初に領域Aおよび領域Cの泥状堆積物を全て採取してしまうのではなく、表層から深層に向けて順次行う。具体的には、まず表層の泥状堆積物につき、一方の採泥手段100により領域A→領域Bと、他方の採泥手段101により領域C→領域Bと移動しつつ採取する。その後、中層の泥状堆積物につき、表層の場合とは逆方向に、一方の採泥手段100では領域B→領域Aと、他方の採泥手段101では領域B→領域Cと移動しつつ採取する。最後に深層の泥状物につき、両採泥手段とも表層の場合と同じ方向に移動しつつ採取する。本実施形態にあっては、最深層の河床礫Gは採取しない。なお、必ずしも本実施形態のように表層、中層、深層と3層に分ける分け方に限定されるわけはなく、より多くの層に分けた上で順次表層から深層に向けて採取することとしてもよい。
【0038】
採泥ステップでは、次いで、2つの採泥手段100、101により採取された泥状堆積物が、各採泥管102、103から混合管104へと送られ、混合管104の内部で混合され、混合脱水原液とされた上で、振動ふるい105の受け入れ口105bに投入され、礫が除去される。礫が除去された混合脱水原液は、サイクロン分級機107において遠心分離され、分離された粒子を再度振動ふるい105に戻した上で、貯留槽106に送られる。
【0039】
次いで、貯留槽106に投入された混合脱水原液は、攪拌機108により粒度が均一に揃うよう攪拌される。貯留槽106には随時、凝集泥水返送手段109により凝集泥水生成部7から凝集泥水が返送される。混合脱水原液の希釈が必要な場合には、希釈制御部111により希釈水供給手段110のポンプP3が作動させられ希釈水が供給される。また、貯留槽106内の混合脱水原液量が基準値を超え、多くなりすぎてしまいそうな場合には、原液返送手段114により適宜な量の泥水が振動ふるい105に返送されるよう、原液両制御部115により制御される。
【0040】
次いで、混合脱水原液は貯留槽106から原液搬送管8を介して、パドル型反応器9に投入される。パドル型反応器9では、混合脱水原液が凝集剤10と反応させられ、フロックが生成される。
【0041】
次いで、フロックが生成された混合脱水原液を、スクリュウプレス3に投入し、脱水ステップが行われる。スクリュウプレス3では、投入された混合脱水原液が、スクリュウ軸の回転により圧搾されつつケーキ出口32側に送られ、ケーキ出口32から脱水ケーキが排出される。
【0042】
また、脱水ステップにおいて、スクリュウプレス3の外筒から排出された排水は、凝集泥水生成部7としてのシックナー7aに送られる。シックナー7aでは上述の排水に凝集剤13を添加混合し凝集処理を施す。その結果、排水中に残存していた細粒分が凝集沈殿し、この沈殿を含む液体(凝集泥水)がシックナー7aの吐出口7bから取り出され、吐出口7bに接続された凝集泥水返送手段109により、貯留槽106に送られる。
【0043】
以上説明した本実施形態にかかるダム湖の堆積物の脱水処理方法およびそのシステムにあっては、採泥部2での採泥ステップで、ダム湖D内に移動可能に設けられた採泥手段100、101により、ダム湖底の泥状堆積物を、砂の含有比率が高い領域(領域Aと、領域Bの上流側半分まで)と細粒分の含有比率が高い領域(領域Cと、領域Bの下流側半分)とから、砂と細粒分との比率があらかじめ決められた設定比率となるように採取し、混合して混合脱水原液を生成した上で、スクリュウプレスでの脱水ステップで脱水することとした。その結果、スクリュウプレス3の仕様や回転速度に対し最適な砂と細粒分の含有比率を有する混合脱水原液を脱水処理することによって、スクリュウプレス3で目詰まりが発生したり、脱水が不完全となったりすることなく、安定的かつ効率的に脱水処理を行うことができる。
【0044】
特に、本実施形態にあっては、採泥ステップにおける泥状堆積物の混合操作は、2つの採泥手段100、101により同時に、砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから泥状堆積物を採取し、混合することにより行われるので、例えば1つの採泥手段のみを用いて、砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから交互に採取し、混合する場合と比較すれば、泥状堆積物の採泥ステップを含む全脱水処理過程をより速く、例えば約2倍の速さで行うことができる。
【0045】
また、採泥ステップにおける泥状堆積物の採取は、泥状堆積物を表層→中層→深層というように、表層から深層に向けて順次行うこととしたので、ある領域から泥状堆積物を採取した時点で他の領域が崩落してしまい、湖底における堆積物全体の粒度分布が変化してしまい、それ以降の採取箇所を適切に位置決めすることができなくなるようなおそれがない。その結果、一定の粒度分布を有する泥状堆積物を計画的に採取することが可能となり、より一層、安定的かつ効率的に脱水処理を行うことができる。
【0046】
なお、上記実施形態にあっては、採泥部2での採泥ステップにおいて、2つの採泥手段100、101を用いることとしたが、これに限定されるものではなく、より多くの採泥手段を用いることとしてもよい。その場合でも上記実施形態と同様の作用・効果を奏することは勿論であるとともに、より一層、泥状堆積物の採泥ステップを含む全脱水処理過程を速く行うすることができる。またこの場合、各採泥手段により採取された泥状堆積物は、各採泥手段に接続された採泥管を介し、それぞれ個別の配管により振動ふるいや貯留槽まで送られて混合されることとしてもよいが、各採泥管が集合し、1本あるいは少数の混合管に接続され、その内部で泥状堆積物が混合されて搬送されることとすれば、ダム湖Dから振動ふるいまでの配管などの数を低減させることができ、コスト面や配管用地の確保の面からより有利となる。
【0047】
また、上記実施形態にあっては、採泥部2での採泥ステップにおいて、2つの採泥手段100、101を移動させながら連続的に泥状堆積物を採取することとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、ダム湖Dが比較的狭い場合などは、各領域A、B、Cも比較的、小面積であるので、まず一方の採泥手段100を領域Aの中央付近に固定して泥状堆積物を採取し、同時に他方の採泥手段101を領域Cの中央付近に固定して泥状堆積物を採取し、次にどちらか一方の採泥手段、あるいは両方の採泥手段100、101を領域Bの中央付近に固定して泥状堆積物を採取するという手順でもよい。この場合、前もって各領域から採取されたサンプルに基づいて、領域Bの泥状堆積物の平均的な粒度構成をあらかじめ決められた設定比率としており、また、領域Aと領域Cとから適宜な割合で泥状堆積物を採取すれば、それらが混合された混合脱水原液の粒度構成は、あらかじめ決められた設定比率に一致させることが可能である。また、このような採取方法の場合にも、上記実施形態と同様に、3領域からの泥状堆積物の採取を表層から深層に向けて順次行うことが好ましい。
【0048】
図3には、上記実施形態の変形例が示されており、この変形例にあっては、脱水処理システム1の採泥部2は、砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから交互に泥状堆積物を採取する1つの採泥手段150と、採泥手段150により採取された泥状堆積物を搬送するための1本の採泥管151と、採泥管151により搬送される砂の含有比率が高い領域の泥状堆積物と細粒分の含有比率が高い領域の泥状堆積物とを混合するための混合部とを有する。具体的には、貯留槽31が混合部を構成する。
【0049】
より具体的には、1艘の浚渫船(図示省略)とその採泥パイプ150aからなる採泥手段150により、図3に丸付き数字で1→2→3と示すように、最初に砂の含有比率が高い領域Aの泥状堆積物を採取し、次に細粒分の含有比率が高い領域Cの泥状堆積物を採取するというように、砂の含有比率が高い領域Aと細粒分の含有比率が高い領域Cとから交互に採取し、最後に砂と細粒分の含有比率がともに中程度である領域Bの泥状堆積物を採取する。
【0050】
本図示例にあっても、前もって各領域から採取されたサンプルに基づいて、領域Bの泥状堆積物の平均的な粒度構成をあらかじめ決められた設定比率としており、また、領域Aと領域Cとから適宜な割合で泥状堆積物を採取すれば、それらが混合された混合脱水原液の粒度構成は、あらかじめ決められた設定比率に一致させることが可能である。
【0051】
この変形例にあっては、脱水処理システム1は、採泥管151が1本で済むとともに、混合管は不要である。また、採取された泥状堆積物の混合は混合部としての貯留槽106において行われる。すなわち、採泥手段150により採取された泥状堆積物は、採泥管151から直接、振動ふるい105、そして貯留槽106へと送られる。
【0052】
まず、貯留槽106にはダム湖Dの領域Aから採取された泥状堆積物が蓄積され、次いで領域Cから採取された泥状堆積物が投入され、両者が貯留槽106内で混合されて混合脱水原液が生成される。次いで、ダム湖Dでは採泥手段150を領域Bへと移動させ、その間に貯留槽106では混合脱水原液が攪拌機108により攪拌された後、後段へと送られる。次いで、ダム湖Dでは領域Bから泥状堆積物を採取し、この泥状堆積物は採泥管151を介し振動ふるい105、そして貯留槽106へと送られ、こちらは単独で攪拌された後、後段へと送られる。この変形例の場合にも、上記実施形態と同様に、3領域からの泥状堆積物の採取を表層から深層に向けて順次行うことが好ましい。
【0053】
この変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用・効果を奏することは勿論である。特に本変形例にあっては、浚渫船などの採泥手段が一つで済むため、コスト面などにおいてより一層有利となる。
【0054】
なお、ダム湖の湖底の泥状堆積物を構成する粒子の性状、特にその粒度は、必ずしも上記実施形態および変形例のように、3領域に分かれて分布するものではなく、また必ずしも河川の上流、中流、下流に単純に対応して分布するものでもないが、泥状堆積物の粒度分布が本実施形態と異なる場合であっても、砂や細粒分などがある一定の粒度分布を示す場合であれば、本発明の脱水処理方法および脱水処理システムは同様に適用可能であり、上記実施形態および変形例と同様の作用・効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明にかかるダム湖の堆積物の脱水処理方法を実施するための脱水処理システムの好適な一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1の脱水処理システムの、ダム湖における泥状堆積物の状態およびその採取を示す説明図である。
【図3】本発明にかかるダム湖の堆積物の脱水処理方法を実施するための脱水処理システムの変形例であって、図2に相当する、ダム湖における採取を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 脱水処理システム
2 採泥部
3 スクリュウプレス
100、101、150 採泥手段
102、103、151 採泥管
104 混合管
D ダム湖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム湖底の泥状堆積物を採取して脱水処理する方法であって、
砂の含有比率が高い領域と、砂より小径の細粒分の含有比率が高い領域とから、砂と細粒分との比率があらかじめ決められた設定比率となるように泥状堆積物を採取し、混合して混合脱水原液を生成する採泥ステップと、
該混合脱水原液をスクリュウプレスにより脱水する脱水ステップと有することを特徴とするダム湖の堆積物の脱水処理方法。
【請求項2】
前記採泥ステップにおける混合操作は、複数の採泥手段により砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから同時に泥状堆積物を採取し、混合することにより行われることを特徴とする請求項1に記載のダム湖の堆積物の脱水処理方法。
【請求項3】
前記採泥ステップにおける混合操作は、1つの採泥手段により、砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから泥状堆積物を交互に採取し、混合することにより行われることを特徴とする請求項1に記載のダム湖の堆積物の脱水処理方法。
【請求項4】
前記採泥ステップにおける堆積物の採取は、表層から深層に向けて順次行うことを特徴とする請求項1〜4いずれかの項に記載のダム湖の堆積物の脱水処理方法。
【請求項5】
ダム湖底の泥状堆積物を採取して脱水処理するシステムであって、
ダム湖内に移動可能に設けられた採泥手段により、砂の含有比率が高い領域と、砂より小径の細粒分の含有比率が高い領域とから、砂と細粒分との比率があらかじめ決められた設定比率となるように泥状堆積物を採取し、混合して混合脱水原液を生成する採泥部と、
該混合脱水原液を脱水するスクリュウプレスとを有することを特徴とするダム湖の堆積物の脱水処理システム。
【請求項6】
前記採泥部は、泥状堆積物を採取する複数の採泥手段と、該複数の採泥手段により採取された各泥状堆積物を搬送するための複数の採泥管と、該複数の採泥管に接続され、当該複数の採泥管からの泥状堆積物が混合され、搬送される混合管とを有することを特徴とする請求項5に記載のダム湖の堆積物の脱水処理システム。
【請求項7】
前記採泥部は、砂の含有比率が高い領域と細粒分の含有比率が高い領域とから交互に泥状堆積物を採取する1つの採泥手段と、該採泥手段により採取された上記泥状堆積物を搬送するための1本の採泥管と、該採泥管により搬送される砂の含有比率が高い領域の泥状堆積物と細粒分の含有比率が高い領域の泥状堆積物とを混合するための混合部とを有することを特徴とする請求項5に記載のダム湖の堆積物の脱水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−181558(P2006−181558A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381456(P2004−381456)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】