ダンシェン抽出物とサンキ抽出物を含む漢方薬、及びそれらの使用
本発明は、ダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる漢方薬、上記漢方薬を活性成分として含む医薬組成物、及びそれらの使用を開示する。前記漢方薬は、重量比(2〜6):(0.5〜2)のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる。本発明は、更に、虚血/再灌流により誘発される心臓微小循環障害と心筋障害を治療するための、上記漢方薬と、上記漢方薬を活性成分として含む医薬組成物の効果を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療分野に関し、特に、漢方薬組成物、及び心臓微小循環障害と心筋障害を寛解させる際のそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生活水準の向上とそのライフスタイルの変化に伴い、心血管疾患は、人間の健康と生活を脅かすだけでなく、医療と財務の収益に影響を与える1つの主な疾患となっている。心血管疾患で1年間に死亡する人は世界中で約1650万人存在する。中国では、その死亡者数は年間300万人に達し、全死亡者数の45%を占める。
【0003】
経皮的冠動脈形成術(PTCA)、心臓手術体外循環、冠動脈バイパス手術、複合先天性心疾患の救済と治療、弁置換術及び大血管手術等の治療方法の臨床応用は、心血管疾患患者の生活をある程度は救済してきた。しかし、手術後の虚血/再灌流(I/R)障害の発症は、心臓血管手術の長期的効果に対する主な課題となっている。その上、心拍停止後の蘇生、心血管性痙攣の解放(cardiovascular spasm relief)及び血栓溶解に起因する
I/R障害も、その救済と治療の効果に影響を与えている。その結果、心筋I/R障害の予防と寛解は、救済と治療の効果を改善し、心血管疾患の死亡率を低減するための重要な態様であると考えられる。
【0004】
心筋I/Rの初期段階では、過剰放出された過化酸物と、冠血管内皮細胞と白血球からの炎症誘発性因子、及び過剰発現した接着分子等により、白血球と血管内皮細胞との間の接着が起こる。更に、それらの過化酸物とプロテアーゼは、血管内皮細胞に接着した白血球から放出されるが、血管内皮細胞と基底膜を損傷し、結果として血漿タンパク質が漏出する。血漿タンパク質の漏出、血管から遊出した白血球、血管内皮膨潤又は微小血栓等に起因する毛管閉塞(capillary occlusion)等により誘発される血管周辺の全ての水腫は
、末梢心筋細胞のネクローシス又はアポトーシスに至る場合があり、最終的に心筋梗塞を形成する。I/Rに起因する微小循環障害の寛解は、I/R後の心筋障害を低減するための重要な態様である。その結果、心筋I/R障害を予防及び改善するための医薬を研究し開発することが急務である。
【0005】
ダンシェンス、即ち、(3,4−ジヒドロキシフェニル)乳酸は、漢方薬であるラディックス・サルビア・ミルチオリジ(Radix Salviae Militiorrhizae)(ダンシェン)中の主な水溶性成分である。我々の以前の研究では、ダンシェンスが、以下:I/Rに起因するラットの腸間膜細静脈壁における過酸化物の生成、白血球接着分子CD11b/CD18の発現、白血球と細静脈壁の間の接着、及び血漿アルブミンの漏出、を阻害する可能性があることが確認された。しかし、ダンシェンスがI/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害に影響を与えるか否かは未だ不明である。ノトギンセノシドR1は、パナックス・ノトジンセン(Panax Notoginseng)(サンキ)の主要なサポニンの1つである。我々
の以前の研究では、ノトギンセノシドR1がI/Rに起因してラットの肝臓に接着した白血球を低減することができ、肝臓の微小循環障害を寛解できることが証明された。今のところは、ノトギンセノシドR1が、I/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害に作用し得るか否かは知られていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した技術的課題を解決するために、本発明は、I/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害を予防及び寛解させるために使用できる漢方薬組成物を提供する。
【0007】
本発明は、更に、I/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害を寛解させるための医薬の調製における前述した漢方薬組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR+I/R群のラットにおける、心臓冠血管細静脈の直径の変化を説明する。
【図2】図2は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓冠血管細静脈のRBC速度の変化を説明する。
【図3A】図3は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、心臓冠血管細静脈からのFITC標識アルブミンの漏出の結果を説明する。ここで、図3Aは、各群のラットにおける、再灌流の60分後での、FITC標識血漿アルブミンの漏出の画像を表す。
【図3B】図3Bは、各群における、再灌流の60分後での、心臓冠血管の細静脈の外側のFITC標識アルブミン蛍光強度と、心臓冠血管細静脈の内側のFITC標識アルブミン蛍光強度の間の比率を表す。
【図4A】図4Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、LDPIにより測定した心臓の血流量の画像を説明する。
【図4B】図4Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、LDPIにより測定した心臓の血流量の画像を説明する。
【図5A】図5Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓の血流量の連続的な変化の画像を説明する。
【図5B】図5Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓の血流量の連続的な変化の画像を説明する。
【図6A】図6Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、心筋梗塞領域のパーセンテージ間の比較を説明する。
【図6B】図6Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での心筋切片の画像を説明する。
【図6C】図6Cは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、全心臓領域に対する心筋梗塞領域のパーセンテージを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の技術的解決策は、以下の態様により達成される:
本発明によれば、前記漢方薬組成物は、重量比(2〜6):(0.5〜2)のラディックス・サルビア・ミルチオリジ(ダンシェン)抽出物とパナックス・ノトジンセン(サンキ)抽出物からなる。
好ましくは、前記漢方薬組成物は、重量比が(1〜4):1のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる。
【0010】
好ましくは、前記漢方薬組成物は、重量比が4:1のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる。本発明に係る漢方薬組成物は、I/Rに起因するラットの心臓冠血管の細静脈中の赤血球(RBC)速度と心臓灌流流量(heart perfusion flow)を著しく寛解させることができ、I/R後の心筋梗塞領域のパーセンテージを低減させることができる。
【0011】
本発明に係るダンシェン抽出物は、好ましくは強い薬理学的効果を有する水溶性抽出物である。水溶性抽出物中の有効性分には、ダンシェンスとポリフェノール酸が包含される。ここで、前記ダンシェン抽出物は、好ましくはダンシェンス、即ち、(3,4−ジヒドロキシフェニル)乳酸であり、これはコーヒー酸の加水分解物である。ダンシェンス(5mg/kg体重(BW)/時)は、I/Rに起因するラットの心臓冠血管の細静脈中の赤血球(RBC)速度と心臓灌流流量を過渡的に寛解させることができ、I/R後の心筋梗塞領域のパーセンテージを低減させることができる。
【0012】
前記ダンシェンスは市販品であるか、又は従来法により抽出することができる。例えば、ダンシェンは超音波抽出により抽出され、その後水で抽出し、エタノールで沈殿させ、次いで得られた抽出物を、ポリアミド及び/又はマクロ孔質樹脂の吸着カラムを用いて不純物を除去することにより精製した。中国特許出願番号CN02144600、CN02133727及びCN90107488に開示されたダンシェン抽出物の調製方法を選択することもできる。
【0013】
本発明に係るサンキ抽出物は黄色粉末であり、これはメタノールと水に溶解させることができるが、エチルエーテル等には不溶性である。これは、血中脂質調節と免疫調節に対し著しい効果を有する。実施例において示すように、サンキ抽出物は、免疫適応不全(immunologic maladjustment)と異脂肪血症を患う患者に対し、有毒作用と副作用を伴うこ
となく、良好な治療の補助作用を有する。本発明に係る前記サンキ抽出物は、ノトギンセノシドR1、ジンセノシドRb1、ジンセノシドRe及びジンセノシドRg1からなる群から選択される1種以上である。好ましくは、前記サンキ抽出物はノトギンセノシドR1である。
【0014】
前記サンキ抽出物は、市場において原材料として購入することにより、又は従来法、若しくは自社開発プロセスにより得ることができ、例えば、中国特許出願番号CN1412163A及びCN200510044534.5に開示された方法を使用することができる。
【0015】
本発明によれば、前記組成物は重量比で表され、成分の重量比は製造過程で対応する比率で増加又は低下させることができ、例えば、成分の重量単位は、大規模生産の過程ではキログラム又はトンとなり、小規模生産の過程ではミリグラム(mg)となり得る。成分の重量は対応して増加又は低下させてもよいが、種々の成分間の重量比は変化がない。
【0016】
本発明は、活性成分として前記漢方薬組成物を使用することにより調製された医薬組成物も提供し、この医薬組成物は他の医薬又は健康製品となり得る。ここで、他の医薬又は健康製品は活性成分を0.1〜99.9wt%含み、残りは薬剤的に許容可能な担体である。
【0017】
本発明によれば、賦形剤又はアジュバントのような様々な種類の担体と組み合わせて、前記生薬組成物を特定の剤形にすることができる。通常は、剤形は経口的、筋肉内、腹腔内、皮下又は静脈内に投与するのが適切である。更に、経口投与されるのに適切な剤形は、錠剤(口腔内崩壊錠等)、カプセル剤(軟カプセル剤等)、滴剤(drop pills)、顆粒剤、経口液剤、粉末剤、ペースト剤、ペレット剤、丸剤;座剤、及びそれらの速放性製剤又は徐放性製剤、乾燥粉末吸入剤、エアロゾル剤及びゲル剤であり得る。筋肉内又は静脈内への投与に適する剤形は、注射剤又は注射用凍結乾燥粉末剤等であり得る。好ましくは、前記剤形は、カプセル剤、錠剤、経口液剤、顆粒剤、丸剤、粉末剤、ペレット剤又はペースト剤等の、経口投与に適した剤形である。
【0018】
本発明によれば、前記賦形剤には、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤圧縮剤(tablet-pressing agents)、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、湿潤剤、また必要に応じて、錠剤をコーティングできるようなコーティング剤が包含される。
【0019】
適切な充填剤には、セルロース、マンニトール、ラクトース、及びその他の類似する充填剤が包含される。適切な崩壊剤には、デンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びデンプン誘導体(デンプングリコール酸ナトリウム等)が包含される。適切な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム等が包含される。適切な薬剤的に許容可能な湿潤剤には、ドデシル硫酸ナトリウムが包含される。
【0020】
通常、経口固形製剤は、混合(blending)、充填及び錠剤圧縮(tablet-pressing)等
の従来法により調製することができる。繰り返し混合することにより、充填剤を多量に有するそれらの組成物中に活性物質を均一に分配させることができる。
【0021】
本発明によれば、経口液状製剤は、例えば、水溶性又は油溶性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤若しくはエリキシル剤、又は、使用前に水若しくは他の適切な担体を用いて再構成することができる乾製品であり得る。液状製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は食用硬化油脂;乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン又はアラビアゴム;食用油、例えば、扁桃油、ヤシ油、グリセロール、プロピレングリコール又はエタノールのエステル等のバター性エステルを包含し得る非水性担体;及び保存剤、例えば、メチルパラベン、ニパソール又はソルビン酸を含有し得る。また必要に応じて、従来の芳香剤(scenting agents)又は着色剤を包含し得る。
【0022】
滴剤に関しては、適当な薬剤的に許容可能な担体を選択し添加することができる。前記担体は、糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール;アミノ酸、例えば、システイン塩酸塩、メチオニン、グリシン;ビタミンC;EDTA二ナトリウム塩、EDTAカルシウムナトリウム塩;無機塩、例えば、一価アルカリ金属の炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩又はそれらの水溶液、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、;ステアリン酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム;無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸;有機酸、例えば、酢酸;有機酸塩、例えば、乳酸ナトリウム;少糖、多糖、セルロース、及びそれらの誘導体、例えば、マルトース、グルコース、フルクトース、デキストラン、スクロース、ラクトース、シクロデキストリン(β−シクロデキストリン等)、デンプン;メルカプト酢酸;ケイ素誘導体;アルギン酸塩;ゼラチン;PVP、グリセロール;ツウィーン−80;寒天;界面活性剤;ポリエチレングリコール;リン脂質物質;カオリン;タルク粉末等から選択される。
【0023】
注射剤に関しては、調製された液状単位剤形は、活性成分としての本発明の漢方薬組成物と無菌担体を含有する。前記活性成分は、担体の種類と活性成分の濃度に応じて溶解又は懸濁させることができる。一般に、液剤は、担体中に活性成分を溶解させ、フィルタリングにより無菌化し、適切なバイアル又はアンプルに入れ、密封することにより調製される。いくつかの薬剤的に許容可能なビヒクル、例えば、局所麻酔薬、保存剤及び緩衝剤も担体に添加することができる。注射剤の安定性を改良するために、本発明の組成物をバイアルに入れた後に凍結させ、次いで真空中で処理して水を除去することができる。
【0024】
本発明に従い、I/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害を寛解させるための医薬の調製における、漢方薬組成物、その製剤又は健康製品の使用を、以下の実験例において示した。
【0025】
実験例
1. 材料及び方法
1.1 医薬及び試薬
ダンシェンスは、ロット番号09010413で、Fengshanjian Pharmaceutical Inc.(昆明、中国)より入手した。ノトギンセノシドR1は、ロット番号08090318で、Fengshanjian Pharmaceutical Inc.(昆明、中国)より入手した。いずれの医薬も暗所に4℃で保管した。実験の前には、これらを生理食塩水に溶解させて静脈内滴注に適した濃度1.25mg/mlの溶液を調製した。
【0026】
分析的に純粋なFITC−アルブミン(ウシ血清アルブミンとフルオレセインイソチオシアネートの複合体)をシグマ社(Sigma)(ロット番号:Ag771−1G)から入手
した。実験前に、これを生理食塩水を用いて10mg/mlの溶液に調製し、4℃で保管して2週間以内に使い切った。実験前には、この溶液を2mg/mlの溶液に調製し、室温で保管した。TTC(2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド)のロット番号は2836B041であり、リン酸緩衝液を用いてこれを0.375%(g/ml)の溶液に調製し、室温で保管して、1ケ月以内に使い切った。
【0027】
1.2 動物
体重250±10gのSD雄ラットを、北京大学健康科学センターの動物センター(Animal Center of Peking University Health Science Center)(動物認証番号SCXK(Jing)2006−0001)から購入した。ラットには、24±1℃と相対湿度55±5%の条件下で正常食と水を自由に与えた。全ての動物の管理は、衛生部(Ministry of the Health)が発行した実験動物の管理に関する指針(the Guide for the Care of Laboratory Animals)に従った。
【0028】
1.3 I/Rモデルの確立
20wt%ウレタン(1.25g/kg)を筋肉内に注射してラットを麻酔し、背臥位に固定した。頸部の皮膚を切開し、前頚部筋肉を分離して気管を露出させた。気管挿管を行った。以下の条件下:呼吸比1:1、呼吸頻度75回/分、及び一回呼吸量12mL/kgで加圧呼吸を行うために、挿管の別端を小動物用人工呼吸器(ALC−V8、Shanghai Aoteshai Biology Science and Technology Limited Company、上海、中国)に取り付けた。YSI REF 401 (米国、オハイオ州、イエロースプリング)で測定した直腸温度を、サーマルブランケットを用いて37〜37.5℃に維持した。胸部を滅菌し、胸骨左縁と右縁の近傍にある2番目と4番目の肋骨の間の肋間腔で開口し、心臓を露出させた。3−0縫合糸を通した3/8弱湾針を使用して、肺動脈円錐と左心耳の接合部の下1〜2mmの部位を突き通した。縫合糸を結紮した。ポリエチレン製の細管をシルク縫合糸と心筋組織との間に置き、シルク縫合糸を引っ張って虚血させた。30分後に結紮糸を解き、I/Rモデルを確立した。
【0029】
1.4 投与
偽手術群(偽群):実験の20分前に、生理食塩水を静脈内滴注(1ml/h)によ投与し、実験全体が終了するまで継続した。
I/Rモデル群(I/R群):実験の20分前に、生理食塩水を静脈内滴注(1ml/h)により投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0030】
ダンシェンス+I/R群(DLA+I/R群):実験の20分前に、ダンシェンス水溶液(生理食塩水中、1.25mg/ml)を静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/h
で投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0031】
ノトギンセノシドR1+I/R群(R1+I/R群):実験の20分前に、ノトギンセノシドR1水溶液(生理食塩水中、1.25mg/ml)を静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/hで投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0032】
ダンシェンス:R1(4:1)+I/R群(DR(4:1)+I/R群):生理食塩水に溶解させた、ダンシェンスとノトギンセノシドR1の重量比が4:1の水溶液(1.25mg/ml、即ち、溶液中において、ダンシェンスの濃度が1mg/mlであり、ノトギンセノシドR1の濃度が0.25mg/mlである)を、実験の20分前に、静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/h(即ち、全投与量において、ダンシェンスの投与量が4mg/kgBW/hであり、ノトギンセノシドR1の投与量が1mg/kgBW/hである)で投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0033】
ダンシェンス:R1(1:1)+I/R群(DR(1:1)+IR群):生理食塩水に溶解させた、ダンシェンスとノトギンセノシドR1の重量比が1:1の水溶液(1.25mg/ml、即ち、溶液中において、ダンシェンスの濃度が0.625mg/mlであり、ノトギンセノシドR1の濃度が0.625mg/mlである)を、実験の20分前に、静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/h(即ち、全投与量において、ダンシェンスの投与量が2.5mg/kgBW/hであり、ノトギンセノシドR1の投与量が2.5mg/kgBW/hである)で投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0034】
ダンシェンス:R1(0.25:1)+I/R群(DR(0.25:1)+IR群):生理食塩水に溶解させた、ダンシェンスとノトギンセノシドR1の重量比が0.25:1の水溶液(1.25mg/ml、即ち、溶液中において、ダンシェンスの濃度が0.25mg/mlであり、ノトギンセノシドR1の濃度が1.0mg/mlである)を、実験の20分前に、静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/h(即ち、全投与量において、ダンシェンスの投与量が1mg/kgBW/hであり、ノトギンセノシドR1の投与量が4mg/kgBW/hである)で投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0035】
1.5 心臓冠血管細静脈の直径とその中の赤血球(RBC)速度
正立顕微鏡(BX51WI、オリンパス、日本)を接続した高速カメラ(ultimate APX PHOTRON、ファーストカム、米国)を10倍対物レンズを用いて使用し、垂直光(vertical light)の下、モニター(20PF5120、フィリップス、米国)を通して30〜50μmの直径の細静脈を選択し観察した。心臓冠血管の微小循環をCDビデオレコーダー(DVR−560H、フィリップス、米国)により記録した。高速カメラを500フレーム/秒の速度に設定した。同一視野における細静脈の直径とRBC速度を、虚血前、虚血の30分後、再灌流の30分後、及び再灌流の60分後に記録した。記録を25フレーム/秒で再生し、細動脈及び細静脈の直径とRBC速度をImage−Pro Plus 5.0 ソフトウェアを用いて測定した。ラットの心臓の細動脈と細静脈中のRBC速度を「mm/s」で表し、ラットの心臓の細動脈と細静脈の直径を「μm」で表した。
【0036】
1.6 心臓冠血管細静脈からの血漿アルブミン漏出の測定
I/Rの60分後に、FITC標識血漿アルブミンを投与量50mg/kgBW/hで、大腿静脈へのボーラス注入によりゆっくりと投与した。正立蛍光顕微鏡(USS−301、ライカ、米国)の下で、励起光としての455nmの光と光源としての水銀ランプ(100W)を用いて、SITカメラにより各群の蛍光画像を記録した。細静脈と隣接する血管外間質内部のFITC蛍光強度をImage−Pro Plus 5.0 ソフトウェアを用いてそれぞれ測定した。結果を、同一視野における、細静脈内部のFITC蛍光
強度の、隣接する血管外間質内部のFITC蛍光強度に対する比率として表した。
【0037】
1.7 心臓の血流量の測定
虚血前、虚血の5分後、30分後、及び再灌流の5分後、30分後、60分後の心臓表面の血流量を、コンピューター支援のレーザードップラー灌流画像化装置(LDPI)(PeriScan PIM3、PERIMED、スウェーデン)により記録した。画像を測定し、データをLDPIwin ソフトウェアを用いて評価した。心臓の血流量の変化率をI/R前の血流量をベースラインとして計算した。
【0038】
1.8 心筋梗塞領域の計算
再灌流の60分後、ラットの心臓を取り出し(n=6、各群)、房室中隔に平行な方向に沿って、1mm厚の切片5枚に心尖から切断した。得られた切片をPBS中に溶解させたTTC(0.375g/ml)内に置き、TTCで染色するために、37℃で15分間インキュベートした。梗塞のない領域は赤で染色され、梗塞のある領域は白で染色された。digital sight(DS−5M−U1、ニコン、日本)を用いて心筋の画像を撮影し、心筋梗塞領域をImage−Pro plus 5.0 ソフトウェア(Media Cybemetrics Inc、米国)を用いて計算した。心筋梗塞領域を、全心臓領域に対する心筋梗塞領域のパーセンテージとして表した。
【0039】
1.9 統計分析
統計分析には、SPSS11.5ソフトウェアパッケージを用いた。各群のデータは、(SEとして表し、一元配置ANOVAを用いて計算した。P<0.05は、差分が統計
的有意性を有したことを表す。
【0040】
2 結果
2.1 心筋虚血/再灌流後の心臓冠血管細静脈の直径に対する効果
図1は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓冠血管細静脈の直径の連続的な変化を示す。全ての観察の過程において、偽群のラットの心臓冠血管細静脈の直径に有意な変化は検出されなかった。同様に、全ての観察の過程において、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットの心臓冠血管細静脈の直径にも有意な変化はなかった。
【0041】
2.2 心筋I/R後のラットの心臓における細静脈と細動脈のRBC速度に対する効果
図2は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓冠血管細静脈のRBC速度の連続的な変化を示す。全ての観察の過程において、偽群のラットの心臓冠血管細静脈のRBC速度に有意な変化は検出されなかった。I/R群のラットの心臓冠血管細静脈中のRBC速度は再灌流開始時に有意に低下し、観察の終了時まで減少し続けた。I/Rの30分後から、ダンシェンスはI/Rに起因するRBC速度の低下に対し有意な阻害効果を示している。しかし、この阻害効果は、再灌流の60分後までは更に向上することはなかった。ノトギンセノシドR1は、I/Rに起因するラットの心臓冠血管細静脈中のRBC速度の低下に対し有意な阻害効果を示さない。再灌流の30分後から、DRはI/Rに起因するRBC速度の低下に対し有意な阻害効果を有し、阻害効果は再灌流の60分後まで向上し続けた。
【0042】
2.3 心筋I/R後のラットの心臓の血漿アルブミン漏出に対する効果
図3Aは、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流後60分での、心臓冠血管細静脈からのアルブミンの漏出状況を示す。偽群のラットでは、冠血管の細静脈から少量のFITC標識アルブミンの漏出が観察された。I/R群のラットでは、冠血管の細静脈からのFITC標識アルブ
ミンの有意な漏出が観察できる。R1+I/R群とDLA+I/R群のラットにおいても、冠血管の細静脈からのFITC標識アルブミンの漏出が観察できる。対照的に、DR群のラットでは、冠血管の細静脈からのFITC標識アルブミンの漏出が非常に抑制される。
【0043】
図3Bは、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、心臓冠血管細静脈の外側のFITC標識アルブミン蛍光強度と、心臓冠血管細静脈の内側のFITC標識アルブミン蛍光強度の間の比率を示す。偽群のラットにおける比率と比べて、I/R群の比率は非常に増加している。FITC標識アルブミンの漏出に対する有意な阻害効果はR1とDLAにより観察されなかった。しかし、DRはラットの心臓冠血管細静脈からのFITC標識アルブミンの漏出を有意に阻害する。
【0044】
2.4 心筋I/R後の心臓の血流量に対する効果
図4Aは、レーザードップラー灌流画像化法により測定した、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットの心臓の血流量の画像を示す。偽群のラットでは、全ての観察の過程において、心臓の血流量に有意な変化は起っていない。I/R群では、開始から再灌流の60分後まで血流量が明らかに低下した。R1+I/R群とDLA+I/R群では、I/R群と比較して、再灌流の30分後と60分後に、血流量がある程度回復している。DR(4:1)+I/R群では、再灌流の5分後から血流量が明らかに回復した。
【0045】
図4Bは、レーザードップラー灌流画像化法により測定した、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群におけるラットの心臓の血流量の画像を示す。偽群のラットでは、全ての観察の過程において、心臓の血流量に有意な変化は起っていない。I/R群では、開始から再灌流の60分後まで血流量が明らかに減少している。0.25:1、1:1及び4:1の様々な比率でダンシェンスをR1と配合し、これを全投与量5mg/kgBw/hで試験する。これは、ダンシェンスとR1の任意の配合剤により、心臓の血流量を回復できることを示す。更に、ダンシェンスの比率が漸増するにつれて(即ち、比率が0.25:1〜1:1、更には4:1にまで増加した)、このような回復効果は徐々に増大する傾向を示す。ここでは、ダンシェンスとR1の比率が4:1の場合に回復効果が最も著しいと考えられる。
【0046】
図5Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓の血流量の連続的な変化を示す。偽群のラットでは、全ての観察の過程において、心臓の血流量に有意な変化は観察されなかった。I/R群では、虚血の間、血流量はベースラインの63%まで低下し、これは再灌流開始後にベースラインの73%まで回復し、再灌流の60分後にはベースラインの72%まで回復した。I/R後のラットにおける心臓の血流量の低下に対し、R1が有意な阻害効果を有することは観察されなかった。ダンシェンス(DLA)は、再灌流の5分後には、I/R後のラットにおける心臓の血流量の低下に対し有意な阻害効果を有する。しかし、DRは、再灌流の5分後から、I/R後のラットにおける心臓の血流量の低下を有意に阻害し始める。
【0047】
図5Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける心臓の血流量の連続的な変化を示す。偽群のラットでは、全ての観察の過程において、心臓の血流量に有意な変化は観察されなかった。I/R群では、虚血の間、心臓の血流量はベースラインの63%まで低下し、これは再灌流開始後にベースラインの73%まで回復し、再灌流の60分後にはベースラインの72%まで回復した。0.25:1、1:1及び4:1の様々な比率でダンシェンスをR1と配合し、これを全投与量5mg/kgBw/hで試験する。ダンシェンスの比
率が漸増するにつれて(即ち、比率が0.25:1〜1:1、更には4:1にまで増加)、I/R後のラットにおける心臓の血流量の低下に対する阻害効果が徐々に増大することが示される。ここでは、ダンシェンスとR1の比率が4:1の場合に阻害効果が最も著しいと考えられる。
【0048】
2.5 心筋I/Rに起因するラットの心筋梗塞領域に対する効果
図6Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群における、再灌流の60分後での、全心臓領域に対する心筋梗塞領域のパーセンテージを示す。偽群のラットでは、梗塞領域は観察されなかった。I/R群のラットの心臓切片からは、より大きな白く着色した梗塞領域がはっきりと観察される。対照的に、R1群の梗塞領域は僅かに減少し、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群の梗塞領域は明らかに減少することが観察される。偽群と比較すると、I/R群のラットにおける心筋梗塞領域のパーセンテージは有意に増加することが明らかに分かる。R1は、I/R後のラットにおける心筋梗塞領域パーセンテージの増加を有意に阻害しなかった。しかし、DLAとDR(4:1)は、I/Rに起因する心筋梗塞領域のパーセンテージの増加を有意に阻害することができる。
【0049】
図6Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での心筋切片の画像を示す。房室中隔に平行な方向に沿って心臓を心尖から切断することにより、1mm厚の5枚の切片が得られたことが、上から下にかけて画像中に表されている。得られた切片をPBS(0.375g/ml)中に溶解させたTTC内に入れ、TTCで染色するために37℃で15分間インキュベートした。梗塞のない領域は赤で染色され、梗塞のある領域は白で染色された。心筋の画像をdigital sight(DS−5M−U1、ニコン、日本)を用いて撮影した。偽群と比較して、I/R群のラットでは、心筋梗塞領域のパーセンテージが有意に増加する。0.25:1、1:1及び4:1の様々な比率でダンシェンスをR1と配合し、これを全投与量5mg/kgBw/hで試験した。ダンシェンスとR1の配合剤は心筋梗塞領域を低減できることが示される。更に、ダンシェンスの比率が漸増するにつれて(即ち、比率が0.25:1〜1:1、更には4:1にまで増加する)、心筋梗塞領域は徐々に縮小する。4:1の比率では心筋梗塞は殆ど観察されない。
【0050】
図6Cは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、全心臓領域に対する心筋梗塞領域のパーセンテージを示す。偽群に比べ、I/R群では、心筋梗塞領域のパーセンテージが有意に増加する。0.25:1、1:1及び4:1の様々な比率でダンシェンスをR1と配合し、これを全投与量5mg/kgBw/hで試験する。ダンシェンスとR1の配合剤は、I/Rに起因する心筋梗塞領域のパーセンテージの増加を阻害できることが示される。偽群と比較すると、DR(1:1)+I/R群では、I/Rに起因する心筋梗塞領域のパーセンテージの増加の阻害において、有意差(P<0.05)が存在する。更に、I/R群と比較すると、DR(4:1)+I/R群では、I/Rに起因する心筋梗塞領域のパーセンテージの増加の阻害において、有意差(P<0.05)が存在する。特に、ダンシェンスとR1の比率が4:1の場合に、阻害効果が最も顕著であることに留意すべきである。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は説明目的のためにのみ与えられるものであり、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【0052】
実施例1
8gのダンシェンスと2gのノトギンセノシドR1を準備し、十分に混合して本発明の漢方薬組成物を調製した。
【0053】
実施例2
2.5gのダンシェンスと2.5gのノトギンセノシドR1を準備し、十分に混合して本発明の漢方薬組成物を調製した。
【0054】
実施例3
2gのダンシェンスと0.5gのジンセノシドReを準備し、十分に混合して本発明の漢方薬組成物を調製した。
【0055】
実施例4
120gのダンシェン抽出物と10gのサンキ抽出物を準備し、十分に混合して本発明の漢方薬組成物を調製した。
【0056】
実施例5
8gのダンシェンスと2gのノトギンセノシドR1の他に、デンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びタルク粉末を準備し、従来の錠剤調製法に従い、十分に混合し、顆粒化し、圧縮して錠剤を調製した。
【0057】
実施例6
10gのダンシェンス、10gのノトギンセノシドR1、及び10gのデンプンを準備し、ここに100gのPEGを添加し、十分に混合し、融解させ、滴剤装置(drop pill machine)に入れて、滴剤を調製した。
【0058】
実施例7
2gのダンシェン抽出物と0.5gのノトギンセノシドR1を準備し、これに5wt%クロスポビドン、0.1wt%ステアリン酸マグネシウム、及び50wt%微結晶性セルロース(前記重量パーセンテージは、全原材料の全重量に対する各々の個々のビヒクルの重量のパーセンテージであった)を添加し、エタノール溶液を使用して軟質材料を調製し、顆粒化させ、60℃で風乾させて顆粒剤を得た。顆粒剤を篩にかけ、圧縮して錠剤とし、これにより口腔内崩壊錠を得た。
【0059】
実施例8
20gのダンシェン抽出物と20gのサンキ抽出物を準備し、これに全量40gのデンプン、スクロース及びステアリン酸マグネシウムを添加して顆粒剤を製造した。顆粒剤をカプセル殻に入れカプセル剤を得た。
【0060】
実施例9
2gのダンシェンス、0.5gのノトギンセノシドR1、4.5gのグルコース、0.9gのナトリウムチオサルフェート、及び1mlの蒸留水を十分に混合し、凍結乾燥させ、500個のバイアルに分離して入れて、注射用粉末剤を得た。
【0061】
実施例10
3gのダンシェン抽出物と0.5gのノトギンセノシドR1を準備し、ここに5wt%クロスポビドン、0.1wt%ステアリン酸マグネシウム、及び50wt%微結晶性セルロース(前記重量パーセンテージは、全原材料の全重量に対する各々の個々のビヒクルの重量のパーセンテージであった)を添加し、エタノール溶液を用いて軟質材料を調製し、顆粒化させ、60℃で風乾させて顆粒剤を得た。顆粒剤を篩にかけ、圧縮して錠剤とし、これにより口腔内崩壊錠を得た。
【0062】
実施例11
60gのダンシェンス、10gのノトギンセノシドR1、及び10mlのベンジル アルコールを準備し、ここに注射用蒸留水を添加して全量100mlとすることで注射剤を調製した。
【0063】
実施例12
50gのダンシェン抽出物、10gのジンセノシドRb1、3.0gのデンプン、12.5gの微結晶性セルロース、2.0gのコロイド状二酸化ケイ素、1.56gのタルク粉末、及び1.0gのステアリン酸マグネシウムを準備し、これらの成分を前述した比率で混合し、No.5の篩にかけ、十分に混合し、圧縮して錠剤とし、1000個の錠剤を得た。
【0064】
実施例13
120gのダンシェンスと20gのノトギンセノシドR1を十分に混合して漢方薬組成物を得た。1重量部の前記漢方薬組成物、6.4重量部のスクロース粉末、及び1.6重量部のデキストリンを準備し、顆粒化させ、顆粒を圧縮して塊(blocks)とし、乾燥して顆粒剤を製造した。
【0065】
実施例14
1重量部の実施例1組成物、3重量部のスクロース、1.25重量部のデキストリン、及び適当量のエタノールを使用して顆粒剤とし、得られた顆粒剤を乾燥して篩にかけ、次いでカプセル殻に入れてカプセル剤を形成した。
【0066】
実施例15
30gのダンシェン抽出物、10gのパナックス・ノトジンセン・サポニン、及び食用植物油を混合した。十分に撹拌した後、後の使用のために油剤を調製した。
【0067】
100gのゼラチン、30gのグリセロール、及び130gの水を準備した。適当量の水をゼラチンに添加してゼラチン溶液を形成させた。得られたゼラチン溶液をタンクに入れ、ここに先に得られた油剤を注入した。冷却液として流動パラフィンを用いてゼラチン溶液と油剤の混合物を滴下し、軟カプセル剤を得た。
【0068】
実施例16
25gのダンシェン抽出物と25gのノトギンセノシドR1を十分に混合して本発明の漢方薬組成物を得た。得られた組成物を適当量の炭酸水素ナトリウム、クエン酸、フマル酸、サイクラミン酸ナトリウム、PEG及びラクトースと混合し、得られた混合物を従来の錠剤調製法で処理して発泡錠を調製した。
【0069】
実施例17
120gのダンシェン抽出物と10gのジンセノシドRg1を十分に混合し、ここに1300gの炭酸カルシウムと100gのデンプンを添加して十分混合した。混合物を篩にかけ、カプセル殻に入れて10000個のカプセル剤を調製した。
【0070】
実施例18
120gのダンシェン抽出物、10gのノトギンセノシドR1、及び500gのPEG−4000を準備し、従来法に従って、混合し、滴剤を調製した。ここで、内径3.3mmと外径5.1mmの滴下管(drip tube)を選択し、上記混合物を60〜70滴/分の
速度でメチルシリコーン油に滴下した。滴剤を回収し、冷却液を濾紙で除去した。各々の剤の重量は50mgであった。
【技術分野】
【0001】
本発明は医療分野に関し、特に、漢方薬組成物、及び心臓微小循環障害と心筋障害を寛解させる際のそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生活水準の向上とそのライフスタイルの変化に伴い、心血管疾患は、人間の健康と生活を脅かすだけでなく、医療と財務の収益に影響を与える1つの主な疾患となっている。心血管疾患で1年間に死亡する人は世界中で約1650万人存在する。中国では、その死亡者数は年間300万人に達し、全死亡者数の45%を占める。
【0003】
経皮的冠動脈形成術(PTCA)、心臓手術体外循環、冠動脈バイパス手術、複合先天性心疾患の救済と治療、弁置換術及び大血管手術等の治療方法の臨床応用は、心血管疾患患者の生活をある程度は救済してきた。しかし、手術後の虚血/再灌流(I/R)障害の発症は、心臓血管手術の長期的効果に対する主な課題となっている。その上、心拍停止後の蘇生、心血管性痙攣の解放(cardiovascular spasm relief)及び血栓溶解に起因する
I/R障害も、その救済と治療の効果に影響を与えている。その結果、心筋I/R障害の予防と寛解は、救済と治療の効果を改善し、心血管疾患の死亡率を低減するための重要な態様であると考えられる。
【0004】
心筋I/Rの初期段階では、過剰放出された過化酸物と、冠血管内皮細胞と白血球からの炎症誘発性因子、及び過剰発現した接着分子等により、白血球と血管内皮細胞との間の接着が起こる。更に、それらの過化酸物とプロテアーゼは、血管内皮細胞に接着した白血球から放出されるが、血管内皮細胞と基底膜を損傷し、結果として血漿タンパク質が漏出する。血漿タンパク質の漏出、血管から遊出した白血球、血管内皮膨潤又は微小血栓等に起因する毛管閉塞(capillary occlusion)等により誘発される血管周辺の全ての水腫は
、末梢心筋細胞のネクローシス又はアポトーシスに至る場合があり、最終的に心筋梗塞を形成する。I/Rに起因する微小循環障害の寛解は、I/R後の心筋障害を低減するための重要な態様である。その結果、心筋I/R障害を予防及び改善するための医薬を研究し開発することが急務である。
【0005】
ダンシェンス、即ち、(3,4−ジヒドロキシフェニル)乳酸は、漢方薬であるラディックス・サルビア・ミルチオリジ(Radix Salviae Militiorrhizae)(ダンシェン)中の主な水溶性成分である。我々の以前の研究では、ダンシェンスが、以下:I/Rに起因するラットの腸間膜細静脈壁における過酸化物の生成、白血球接着分子CD11b/CD18の発現、白血球と細静脈壁の間の接着、及び血漿アルブミンの漏出、を阻害する可能性があることが確認された。しかし、ダンシェンスがI/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害に影響を与えるか否かは未だ不明である。ノトギンセノシドR1は、パナックス・ノトジンセン(Panax Notoginseng)(サンキ)の主要なサポニンの1つである。我々
の以前の研究では、ノトギンセノシドR1がI/Rに起因してラットの肝臓に接着した白血球を低減することができ、肝臓の微小循環障害を寛解できることが証明された。今のところは、ノトギンセノシドR1が、I/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害に作用し得るか否かは知られていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した技術的課題を解決するために、本発明は、I/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害を予防及び寛解させるために使用できる漢方薬組成物を提供する。
【0007】
本発明は、更に、I/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害を寛解させるための医薬の調製における前述した漢方薬組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR+I/R群のラットにおける、心臓冠血管細静脈の直径の変化を説明する。
【図2】図2は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓冠血管細静脈のRBC速度の変化を説明する。
【図3A】図3は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、心臓冠血管細静脈からのFITC標識アルブミンの漏出の結果を説明する。ここで、図3Aは、各群のラットにおける、再灌流の60分後での、FITC標識血漿アルブミンの漏出の画像を表す。
【図3B】図3Bは、各群における、再灌流の60分後での、心臓冠血管の細静脈の外側のFITC標識アルブミン蛍光強度と、心臓冠血管細静脈の内側のFITC標識アルブミン蛍光強度の間の比率を表す。
【図4A】図4Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、LDPIにより測定した心臓の血流量の画像を説明する。
【図4B】図4Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、LDPIにより測定した心臓の血流量の画像を説明する。
【図5A】図5Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓の血流量の連続的な変化の画像を説明する。
【図5B】図5Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓の血流量の連続的な変化の画像を説明する。
【図6A】図6Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、心筋梗塞領域のパーセンテージ間の比較を説明する。
【図6B】図6Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での心筋切片の画像を説明する。
【図6C】図6Cは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、全心臓領域に対する心筋梗塞領域のパーセンテージを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の技術的解決策は、以下の態様により達成される:
本発明によれば、前記漢方薬組成物は、重量比(2〜6):(0.5〜2)のラディックス・サルビア・ミルチオリジ(ダンシェン)抽出物とパナックス・ノトジンセン(サンキ)抽出物からなる。
好ましくは、前記漢方薬組成物は、重量比が(1〜4):1のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる。
【0010】
好ましくは、前記漢方薬組成物は、重量比が4:1のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる。本発明に係る漢方薬組成物は、I/Rに起因するラットの心臓冠血管の細静脈中の赤血球(RBC)速度と心臓灌流流量(heart perfusion flow)を著しく寛解させることができ、I/R後の心筋梗塞領域のパーセンテージを低減させることができる。
【0011】
本発明に係るダンシェン抽出物は、好ましくは強い薬理学的効果を有する水溶性抽出物である。水溶性抽出物中の有効性分には、ダンシェンスとポリフェノール酸が包含される。ここで、前記ダンシェン抽出物は、好ましくはダンシェンス、即ち、(3,4−ジヒドロキシフェニル)乳酸であり、これはコーヒー酸の加水分解物である。ダンシェンス(5mg/kg体重(BW)/時)は、I/Rに起因するラットの心臓冠血管の細静脈中の赤血球(RBC)速度と心臓灌流流量を過渡的に寛解させることができ、I/R後の心筋梗塞領域のパーセンテージを低減させることができる。
【0012】
前記ダンシェンスは市販品であるか、又は従来法により抽出することができる。例えば、ダンシェンは超音波抽出により抽出され、その後水で抽出し、エタノールで沈殿させ、次いで得られた抽出物を、ポリアミド及び/又はマクロ孔質樹脂の吸着カラムを用いて不純物を除去することにより精製した。中国特許出願番号CN02144600、CN02133727及びCN90107488に開示されたダンシェン抽出物の調製方法を選択することもできる。
【0013】
本発明に係るサンキ抽出物は黄色粉末であり、これはメタノールと水に溶解させることができるが、エチルエーテル等には不溶性である。これは、血中脂質調節と免疫調節に対し著しい効果を有する。実施例において示すように、サンキ抽出物は、免疫適応不全(immunologic maladjustment)と異脂肪血症を患う患者に対し、有毒作用と副作用を伴うこ
となく、良好な治療の補助作用を有する。本発明に係る前記サンキ抽出物は、ノトギンセノシドR1、ジンセノシドRb1、ジンセノシドRe及びジンセノシドRg1からなる群から選択される1種以上である。好ましくは、前記サンキ抽出物はノトギンセノシドR1である。
【0014】
前記サンキ抽出物は、市場において原材料として購入することにより、又は従来法、若しくは自社開発プロセスにより得ることができ、例えば、中国特許出願番号CN1412163A及びCN200510044534.5に開示された方法を使用することができる。
【0015】
本発明によれば、前記組成物は重量比で表され、成分の重量比は製造過程で対応する比率で増加又は低下させることができ、例えば、成分の重量単位は、大規模生産の過程ではキログラム又はトンとなり、小規模生産の過程ではミリグラム(mg)となり得る。成分の重量は対応して増加又は低下させてもよいが、種々の成分間の重量比は変化がない。
【0016】
本発明は、活性成分として前記漢方薬組成物を使用することにより調製された医薬組成物も提供し、この医薬組成物は他の医薬又は健康製品となり得る。ここで、他の医薬又は健康製品は活性成分を0.1〜99.9wt%含み、残りは薬剤的に許容可能な担体である。
【0017】
本発明によれば、賦形剤又はアジュバントのような様々な種類の担体と組み合わせて、前記生薬組成物を特定の剤形にすることができる。通常は、剤形は経口的、筋肉内、腹腔内、皮下又は静脈内に投与するのが適切である。更に、経口投与されるのに適切な剤形は、錠剤(口腔内崩壊錠等)、カプセル剤(軟カプセル剤等)、滴剤(drop pills)、顆粒剤、経口液剤、粉末剤、ペースト剤、ペレット剤、丸剤;座剤、及びそれらの速放性製剤又は徐放性製剤、乾燥粉末吸入剤、エアロゾル剤及びゲル剤であり得る。筋肉内又は静脈内への投与に適する剤形は、注射剤又は注射用凍結乾燥粉末剤等であり得る。好ましくは、前記剤形は、カプセル剤、錠剤、経口液剤、顆粒剤、丸剤、粉末剤、ペレット剤又はペースト剤等の、経口投与に適した剤形である。
【0018】
本発明によれば、前記賦形剤には、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤圧縮剤(tablet-pressing agents)、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、湿潤剤、また必要に応じて、錠剤をコーティングできるようなコーティング剤が包含される。
【0019】
適切な充填剤には、セルロース、マンニトール、ラクトース、及びその他の類似する充填剤が包含される。適切な崩壊剤には、デンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びデンプン誘導体(デンプングリコール酸ナトリウム等)が包含される。適切な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム等が包含される。適切な薬剤的に許容可能な湿潤剤には、ドデシル硫酸ナトリウムが包含される。
【0020】
通常、経口固形製剤は、混合(blending)、充填及び錠剤圧縮(tablet-pressing)等
の従来法により調製することができる。繰り返し混合することにより、充填剤を多量に有するそれらの組成物中に活性物質を均一に分配させることができる。
【0021】
本発明によれば、経口液状製剤は、例えば、水溶性又は油溶性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤若しくはエリキシル剤、又は、使用前に水若しくは他の適切な担体を用いて再構成することができる乾製品であり得る。液状製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は食用硬化油脂;乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン又はアラビアゴム;食用油、例えば、扁桃油、ヤシ油、グリセロール、プロピレングリコール又はエタノールのエステル等のバター性エステルを包含し得る非水性担体;及び保存剤、例えば、メチルパラベン、ニパソール又はソルビン酸を含有し得る。また必要に応じて、従来の芳香剤(scenting agents)又は着色剤を包含し得る。
【0022】
滴剤に関しては、適当な薬剤的に許容可能な担体を選択し添加することができる。前記担体は、糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール;アミノ酸、例えば、システイン塩酸塩、メチオニン、グリシン;ビタミンC;EDTA二ナトリウム塩、EDTAカルシウムナトリウム塩;無機塩、例えば、一価アルカリ金属の炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩又はそれらの水溶液、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、;ステアリン酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム;無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸;有機酸、例えば、酢酸;有機酸塩、例えば、乳酸ナトリウム;少糖、多糖、セルロース、及びそれらの誘導体、例えば、マルトース、グルコース、フルクトース、デキストラン、スクロース、ラクトース、シクロデキストリン(β−シクロデキストリン等)、デンプン;メルカプト酢酸;ケイ素誘導体;アルギン酸塩;ゼラチン;PVP、グリセロール;ツウィーン−80;寒天;界面活性剤;ポリエチレングリコール;リン脂質物質;カオリン;タルク粉末等から選択される。
【0023】
注射剤に関しては、調製された液状単位剤形は、活性成分としての本発明の漢方薬組成物と無菌担体を含有する。前記活性成分は、担体の種類と活性成分の濃度に応じて溶解又は懸濁させることができる。一般に、液剤は、担体中に活性成分を溶解させ、フィルタリングにより無菌化し、適切なバイアル又はアンプルに入れ、密封することにより調製される。いくつかの薬剤的に許容可能なビヒクル、例えば、局所麻酔薬、保存剤及び緩衝剤も担体に添加することができる。注射剤の安定性を改良するために、本発明の組成物をバイアルに入れた後に凍結させ、次いで真空中で処理して水を除去することができる。
【0024】
本発明に従い、I/Rに起因する心臓微小循環障害と心筋障害を寛解させるための医薬の調製における、漢方薬組成物、その製剤又は健康製品の使用を、以下の実験例において示した。
【0025】
実験例
1. 材料及び方法
1.1 医薬及び試薬
ダンシェンスは、ロット番号09010413で、Fengshanjian Pharmaceutical Inc.(昆明、中国)より入手した。ノトギンセノシドR1は、ロット番号08090318で、Fengshanjian Pharmaceutical Inc.(昆明、中国)より入手した。いずれの医薬も暗所に4℃で保管した。実験の前には、これらを生理食塩水に溶解させて静脈内滴注に適した濃度1.25mg/mlの溶液を調製した。
【0026】
分析的に純粋なFITC−アルブミン(ウシ血清アルブミンとフルオレセインイソチオシアネートの複合体)をシグマ社(Sigma)(ロット番号:Ag771−1G)から入手
した。実験前に、これを生理食塩水を用いて10mg/mlの溶液に調製し、4℃で保管して2週間以内に使い切った。実験前には、この溶液を2mg/mlの溶液に調製し、室温で保管した。TTC(2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド)のロット番号は2836B041であり、リン酸緩衝液を用いてこれを0.375%(g/ml)の溶液に調製し、室温で保管して、1ケ月以内に使い切った。
【0027】
1.2 動物
体重250±10gのSD雄ラットを、北京大学健康科学センターの動物センター(Animal Center of Peking University Health Science Center)(動物認証番号SCXK(Jing)2006−0001)から購入した。ラットには、24±1℃と相対湿度55±5%の条件下で正常食と水を自由に与えた。全ての動物の管理は、衛生部(Ministry of the Health)が発行した実験動物の管理に関する指針(the Guide for the Care of Laboratory Animals)に従った。
【0028】
1.3 I/Rモデルの確立
20wt%ウレタン(1.25g/kg)を筋肉内に注射してラットを麻酔し、背臥位に固定した。頸部の皮膚を切開し、前頚部筋肉を分離して気管を露出させた。気管挿管を行った。以下の条件下:呼吸比1:1、呼吸頻度75回/分、及び一回呼吸量12mL/kgで加圧呼吸を行うために、挿管の別端を小動物用人工呼吸器(ALC−V8、Shanghai Aoteshai Biology Science and Technology Limited Company、上海、中国)に取り付けた。YSI REF 401 (米国、オハイオ州、イエロースプリング)で測定した直腸温度を、サーマルブランケットを用いて37〜37.5℃に維持した。胸部を滅菌し、胸骨左縁と右縁の近傍にある2番目と4番目の肋骨の間の肋間腔で開口し、心臓を露出させた。3−0縫合糸を通した3/8弱湾針を使用して、肺動脈円錐と左心耳の接合部の下1〜2mmの部位を突き通した。縫合糸を結紮した。ポリエチレン製の細管をシルク縫合糸と心筋組織との間に置き、シルク縫合糸を引っ張って虚血させた。30分後に結紮糸を解き、I/Rモデルを確立した。
【0029】
1.4 投与
偽手術群(偽群):実験の20分前に、生理食塩水を静脈内滴注(1ml/h)によ投与し、実験全体が終了するまで継続した。
I/Rモデル群(I/R群):実験の20分前に、生理食塩水を静脈内滴注(1ml/h)により投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0030】
ダンシェンス+I/R群(DLA+I/R群):実験の20分前に、ダンシェンス水溶液(生理食塩水中、1.25mg/ml)を静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/h
で投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0031】
ノトギンセノシドR1+I/R群(R1+I/R群):実験の20分前に、ノトギンセノシドR1水溶液(生理食塩水中、1.25mg/ml)を静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/hで投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0032】
ダンシェンス:R1(4:1)+I/R群(DR(4:1)+I/R群):生理食塩水に溶解させた、ダンシェンスとノトギンセノシドR1の重量比が4:1の水溶液(1.25mg/ml、即ち、溶液中において、ダンシェンスの濃度が1mg/mlであり、ノトギンセノシドR1の濃度が0.25mg/mlである)を、実験の20分前に、静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/h(即ち、全投与量において、ダンシェンスの投与量が4mg/kgBW/hであり、ノトギンセノシドR1の投与量が1mg/kgBW/hである)で投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0033】
ダンシェンス:R1(1:1)+I/R群(DR(1:1)+IR群):生理食塩水に溶解させた、ダンシェンスとノトギンセノシドR1の重量比が1:1の水溶液(1.25mg/ml、即ち、溶液中において、ダンシェンスの濃度が0.625mg/mlであり、ノトギンセノシドR1の濃度が0.625mg/mlである)を、実験の20分前に、静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/h(即ち、全投与量において、ダンシェンスの投与量が2.5mg/kgBW/hであり、ノトギンセノシドR1の投与量が2.5mg/kgBW/hである)で投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0034】
ダンシェンス:R1(0.25:1)+I/R群(DR(0.25:1)+IR群):生理食塩水に溶解させた、ダンシェンスとノトギンセノシドR1の重量比が0.25:1の水溶液(1.25mg/ml、即ち、溶液中において、ダンシェンスの濃度が0.25mg/mlであり、ノトギンセノシドR1の濃度が1.0mg/mlである)を、実験の20分前に、静脈内滴注により投与量5mg/kgBW/h(即ち、全投与量において、ダンシェンスの投与量が1mg/kgBW/hであり、ノトギンセノシドR1の投与量が4mg/kgBW/hである)で投与し、実験全体が終了するまで継続した。
【0035】
1.5 心臓冠血管細静脈の直径とその中の赤血球(RBC)速度
正立顕微鏡(BX51WI、オリンパス、日本)を接続した高速カメラ(ultimate APX PHOTRON、ファーストカム、米国)を10倍対物レンズを用いて使用し、垂直光(vertical light)の下、モニター(20PF5120、フィリップス、米国)を通して30〜50μmの直径の細静脈を選択し観察した。心臓冠血管の微小循環をCDビデオレコーダー(DVR−560H、フィリップス、米国)により記録した。高速カメラを500フレーム/秒の速度に設定した。同一視野における細静脈の直径とRBC速度を、虚血前、虚血の30分後、再灌流の30分後、及び再灌流の60分後に記録した。記録を25フレーム/秒で再生し、細動脈及び細静脈の直径とRBC速度をImage−Pro Plus 5.0 ソフトウェアを用いて測定した。ラットの心臓の細動脈と細静脈中のRBC速度を「mm/s」で表し、ラットの心臓の細動脈と細静脈の直径を「μm」で表した。
【0036】
1.6 心臓冠血管細静脈からの血漿アルブミン漏出の測定
I/Rの60分後に、FITC標識血漿アルブミンを投与量50mg/kgBW/hで、大腿静脈へのボーラス注入によりゆっくりと投与した。正立蛍光顕微鏡(USS−301、ライカ、米国)の下で、励起光としての455nmの光と光源としての水銀ランプ(100W)を用いて、SITカメラにより各群の蛍光画像を記録した。細静脈と隣接する血管外間質内部のFITC蛍光強度をImage−Pro Plus 5.0 ソフトウェアを用いてそれぞれ測定した。結果を、同一視野における、細静脈内部のFITC蛍光
強度の、隣接する血管外間質内部のFITC蛍光強度に対する比率として表した。
【0037】
1.7 心臓の血流量の測定
虚血前、虚血の5分後、30分後、及び再灌流の5分後、30分後、60分後の心臓表面の血流量を、コンピューター支援のレーザードップラー灌流画像化装置(LDPI)(PeriScan PIM3、PERIMED、スウェーデン)により記録した。画像を測定し、データをLDPIwin ソフトウェアを用いて評価した。心臓の血流量の変化率をI/R前の血流量をベースラインとして計算した。
【0038】
1.8 心筋梗塞領域の計算
再灌流の60分後、ラットの心臓を取り出し(n=6、各群)、房室中隔に平行な方向に沿って、1mm厚の切片5枚に心尖から切断した。得られた切片をPBS中に溶解させたTTC(0.375g/ml)内に置き、TTCで染色するために、37℃で15分間インキュベートした。梗塞のない領域は赤で染色され、梗塞のある領域は白で染色された。digital sight(DS−5M−U1、ニコン、日本)を用いて心筋の画像を撮影し、心筋梗塞領域をImage−Pro plus 5.0 ソフトウェア(Media Cybemetrics Inc、米国)を用いて計算した。心筋梗塞領域を、全心臓領域に対する心筋梗塞領域のパーセンテージとして表した。
【0039】
1.9 統計分析
統計分析には、SPSS11.5ソフトウェアパッケージを用いた。各群のデータは、(SEとして表し、一元配置ANOVAを用いて計算した。P<0.05は、差分が統計
的有意性を有したことを表す。
【0040】
2 結果
2.1 心筋虚血/再灌流後の心臓冠血管細静脈の直径に対する効果
図1は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓冠血管細静脈の直径の連続的な変化を示す。全ての観察の過程において、偽群のラットの心臓冠血管細静脈の直径に有意な変化は検出されなかった。同様に、全ての観察の過程において、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットの心臓冠血管細静脈の直径にも有意な変化はなかった。
【0041】
2.2 心筋I/R後のラットの心臓における細静脈と細動脈のRBC速度に対する効果
図2は、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓冠血管細静脈のRBC速度の連続的な変化を示す。全ての観察の過程において、偽群のラットの心臓冠血管細静脈のRBC速度に有意な変化は検出されなかった。I/R群のラットの心臓冠血管細静脈中のRBC速度は再灌流開始時に有意に低下し、観察の終了時まで減少し続けた。I/Rの30分後から、ダンシェンスはI/Rに起因するRBC速度の低下に対し有意な阻害効果を示している。しかし、この阻害効果は、再灌流の60分後までは更に向上することはなかった。ノトギンセノシドR1は、I/Rに起因するラットの心臓冠血管細静脈中のRBC速度の低下に対し有意な阻害効果を示さない。再灌流の30分後から、DRはI/Rに起因するRBC速度の低下に対し有意な阻害効果を有し、阻害効果は再灌流の60分後まで向上し続けた。
【0042】
2.3 心筋I/R後のラットの心臓の血漿アルブミン漏出に対する効果
図3Aは、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流後60分での、心臓冠血管細静脈からのアルブミンの漏出状況を示す。偽群のラットでは、冠血管の細静脈から少量のFITC標識アルブミンの漏出が観察された。I/R群のラットでは、冠血管の細静脈からのFITC標識アルブ
ミンの有意な漏出が観察できる。R1+I/R群とDLA+I/R群のラットにおいても、冠血管の細静脈からのFITC標識アルブミンの漏出が観察できる。対照的に、DR群のラットでは、冠血管の細静脈からのFITC標識アルブミンの漏出が非常に抑制される。
【0043】
図3Bは、偽群、I/R群、R1+I/R群、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、心臓冠血管細静脈の外側のFITC標識アルブミン蛍光強度と、心臓冠血管細静脈の内側のFITC標識アルブミン蛍光強度の間の比率を示す。偽群のラットにおける比率と比べて、I/R群の比率は非常に増加している。FITC標識アルブミンの漏出に対する有意な阻害効果はR1とDLAにより観察されなかった。しかし、DRはラットの心臓冠血管細静脈からのFITC標識アルブミンの漏出を有意に阻害する。
【0044】
2.4 心筋I/R後の心臓の血流量に対する効果
図4Aは、レーザードップラー灌流画像化法により測定した、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットの心臓の血流量の画像を示す。偽群のラットでは、全ての観察の過程において、心臓の血流量に有意な変化は起っていない。I/R群では、開始から再灌流の60分後まで血流量が明らかに低下した。R1+I/R群とDLA+I/R群では、I/R群と比較して、再灌流の30分後と60分後に、血流量がある程度回復している。DR(4:1)+I/R群では、再灌流の5分後から血流量が明らかに回復した。
【0045】
図4Bは、レーザードップラー灌流画像化法により測定した、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群におけるラットの心臓の血流量の画像を示す。偽群のラットでは、全ての観察の過程において、心臓の血流量に有意な変化は起っていない。I/R群では、開始から再灌流の60分後まで血流量が明らかに減少している。0.25:1、1:1及び4:1の様々な比率でダンシェンスをR1と配合し、これを全投与量5mg/kgBw/hで試験する。これは、ダンシェンスとR1の任意の配合剤により、心臓の血流量を回復できることを示す。更に、ダンシェンスの比率が漸増するにつれて(即ち、比率が0.25:1〜1:1、更には4:1にまで増加した)、このような回復効果は徐々に増大する傾向を示す。ここでは、ダンシェンスとR1の比率が4:1の場合に回復効果が最も著しいと考えられる。
【0046】
図5Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、心臓の血流量の連続的な変化を示す。偽群のラットでは、全ての観察の過程において、心臓の血流量に有意な変化は観察されなかった。I/R群では、虚血の間、血流量はベースラインの63%まで低下し、これは再灌流開始後にベースラインの73%まで回復し、再灌流の60分後にはベースラインの72%まで回復した。I/R後のラットにおける心臓の血流量の低下に対し、R1が有意な阻害効果を有することは観察されなかった。ダンシェンス(DLA)は、再灌流の5分後には、I/R後のラットにおける心臓の血流量の低下に対し有意な阻害効果を有する。しかし、DRは、再灌流の5分後から、I/R後のラットにおける心臓の血流量の低下を有意に阻害し始める。
【0047】
図5Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける心臓の血流量の連続的な変化を示す。偽群のラットでは、全ての観察の過程において、心臓の血流量に有意な変化は観察されなかった。I/R群では、虚血の間、心臓の血流量はベースラインの63%まで低下し、これは再灌流開始後にベースラインの73%まで回復し、再灌流の60分後にはベースラインの72%まで回復した。0.25:1、1:1及び4:1の様々な比率でダンシェンスをR1と配合し、これを全投与量5mg/kgBw/hで試験する。ダンシェンスの比
率が漸増するにつれて(即ち、比率が0.25:1〜1:1、更には4:1にまで増加)、I/R後のラットにおける心臓の血流量の低下に対する阻害効果が徐々に増大することが示される。ここでは、ダンシェンスとR1の比率が4:1の場合に阻害効果が最も著しいと考えられる。
【0048】
2.5 心筋I/Rに起因するラットの心筋梗塞領域に対する効果
図6Aは、偽群、I/R群、DLA+I/R群、R1+I/R群及びDR(4:1)+I/R群における、再灌流の60分後での、全心臓領域に対する心筋梗塞領域のパーセンテージを示す。偽群のラットでは、梗塞領域は観察されなかった。I/R群のラットの心臓切片からは、より大きな白く着色した梗塞領域がはっきりと観察される。対照的に、R1群の梗塞領域は僅かに減少し、DLA+I/R群及びDR(4:1)+I/R群の梗塞領域は明らかに減少することが観察される。偽群と比較すると、I/R群のラットにおける心筋梗塞領域のパーセンテージは有意に増加することが明らかに分かる。R1は、I/R後のラットにおける心筋梗塞領域パーセンテージの増加を有意に阻害しなかった。しかし、DLAとDR(4:1)は、I/Rに起因する心筋梗塞領域のパーセンテージの増加を有意に阻害することができる。
【0049】
図6Bは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での心筋切片の画像を示す。房室中隔に平行な方向に沿って心臓を心尖から切断することにより、1mm厚の5枚の切片が得られたことが、上から下にかけて画像中に表されている。得られた切片をPBS(0.375g/ml)中に溶解させたTTC内に入れ、TTCで染色するために37℃で15分間インキュベートした。梗塞のない領域は赤で染色され、梗塞のある領域は白で染色された。心筋の画像をdigital sight(DS−5M−U1、ニコン、日本)を用いて撮影した。偽群と比較して、I/R群のラットでは、心筋梗塞領域のパーセンテージが有意に増加する。0.25:1、1:1及び4:1の様々な比率でダンシェンスをR1と配合し、これを全投与量5mg/kgBw/hで試験した。ダンシェンスとR1の配合剤は心筋梗塞領域を低減できることが示される。更に、ダンシェンスの比率が漸増するにつれて(即ち、比率が0.25:1〜1:1、更には4:1にまで増加する)、心筋梗塞領域は徐々に縮小する。4:1の比率では心筋梗塞は殆ど観察されない。
【0050】
図6Cは、偽群、I/R群、DR(0.25:1)+I/R群、DR(1:1)+I/R群及びDR(4:1)+I/R群のラットにおける、再灌流の60分後での、全心臓領域に対する心筋梗塞領域のパーセンテージを示す。偽群に比べ、I/R群では、心筋梗塞領域のパーセンテージが有意に増加する。0.25:1、1:1及び4:1の様々な比率でダンシェンスをR1と配合し、これを全投与量5mg/kgBw/hで試験する。ダンシェンスとR1の配合剤は、I/Rに起因する心筋梗塞領域のパーセンテージの増加を阻害できることが示される。偽群と比較すると、DR(1:1)+I/R群では、I/Rに起因する心筋梗塞領域のパーセンテージの増加の阻害において、有意差(P<0.05)が存在する。更に、I/R群と比較すると、DR(4:1)+I/R群では、I/Rに起因する心筋梗塞領域のパーセンテージの増加の阻害において、有意差(P<0.05)が存在する。特に、ダンシェンスとR1の比率が4:1の場合に、阻害効果が最も顕著であることに留意すべきである。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は説明目的のためにのみ与えられるものであり、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【0052】
実施例1
8gのダンシェンスと2gのノトギンセノシドR1を準備し、十分に混合して本発明の漢方薬組成物を調製した。
【0053】
実施例2
2.5gのダンシェンスと2.5gのノトギンセノシドR1を準備し、十分に混合して本発明の漢方薬組成物を調製した。
【0054】
実施例3
2gのダンシェンスと0.5gのジンセノシドReを準備し、十分に混合して本発明の漢方薬組成物を調製した。
【0055】
実施例4
120gのダンシェン抽出物と10gのサンキ抽出物を準備し、十分に混合して本発明の漢方薬組成物を調製した。
【0056】
実施例5
8gのダンシェンスと2gのノトギンセノシドR1の他に、デンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びタルク粉末を準備し、従来の錠剤調製法に従い、十分に混合し、顆粒化し、圧縮して錠剤を調製した。
【0057】
実施例6
10gのダンシェンス、10gのノトギンセノシドR1、及び10gのデンプンを準備し、ここに100gのPEGを添加し、十分に混合し、融解させ、滴剤装置(drop pill machine)に入れて、滴剤を調製した。
【0058】
実施例7
2gのダンシェン抽出物と0.5gのノトギンセノシドR1を準備し、これに5wt%クロスポビドン、0.1wt%ステアリン酸マグネシウム、及び50wt%微結晶性セルロース(前記重量パーセンテージは、全原材料の全重量に対する各々の個々のビヒクルの重量のパーセンテージであった)を添加し、エタノール溶液を使用して軟質材料を調製し、顆粒化させ、60℃で風乾させて顆粒剤を得た。顆粒剤を篩にかけ、圧縮して錠剤とし、これにより口腔内崩壊錠を得た。
【0059】
実施例8
20gのダンシェン抽出物と20gのサンキ抽出物を準備し、これに全量40gのデンプン、スクロース及びステアリン酸マグネシウムを添加して顆粒剤を製造した。顆粒剤をカプセル殻に入れカプセル剤を得た。
【0060】
実施例9
2gのダンシェンス、0.5gのノトギンセノシドR1、4.5gのグルコース、0.9gのナトリウムチオサルフェート、及び1mlの蒸留水を十分に混合し、凍結乾燥させ、500個のバイアルに分離して入れて、注射用粉末剤を得た。
【0061】
実施例10
3gのダンシェン抽出物と0.5gのノトギンセノシドR1を準備し、ここに5wt%クロスポビドン、0.1wt%ステアリン酸マグネシウム、及び50wt%微結晶性セルロース(前記重量パーセンテージは、全原材料の全重量に対する各々の個々のビヒクルの重量のパーセンテージであった)を添加し、エタノール溶液を用いて軟質材料を調製し、顆粒化させ、60℃で風乾させて顆粒剤を得た。顆粒剤を篩にかけ、圧縮して錠剤とし、これにより口腔内崩壊錠を得た。
【0062】
実施例11
60gのダンシェンス、10gのノトギンセノシドR1、及び10mlのベンジル アルコールを準備し、ここに注射用蒸留水を添加して全量100mlとすることで注射剤を調製した。
【0063】
実施例12
50gのダンシェン抽出物、10gのジンセノシドRb1、3.0gのデンプン、12.5gの微結晶性セルロース、2.0gのコロイド状二酸化ケイ素、1.56gのタルク粉末、及び1.0gのステアリン酸マグネシウムを準備し、これらの成分を前述した比率で混合し、No.5の篩にかけ、十分に混合し、圧縮して錠剤とし、1000個の錠剤を得た。
【0064】
実施例13
120gのダンシェンスと20gのノトギンセノシドR1を十分に混合して漢方薬組成物を得た。1重量部の前記漢方薬組成物、6.4重量部のスクロース粉末、及び1.6重量部のデキストリンを準備し、顆粒化させ、顆粒を圧縮して塊(blocks)とし、乾燥して顆粒剤を製造した。
【0065】
実施例14
1重量部の実施例1組成物、3重量部のスクロース、1.25重量部のデキストリン、及び適当量のエタノールを使用して顆粒剤とし、得られた顆粒剤を乾燥して篩にかけ、次いでカプセル殻に入れてカプセル剤を形成した。
【0066】
実施例15
30gのダンシェン抽出物、10gのパナックス・ノトジンセン・サポニン、及び食用植物油を混合した。十分に撹拌した後、後の使用のために油剤を調製した。
【0067】
100gのゼラチン、30gのグリセロール、及び130gの水を準備した。適当量の水をゼラチンに添加してゼラチン溶液を形成させた。得られたゼラチン溶液をタンクに入れ、ここに先に得られた油剤を注入した。冷却液として流動パラフィンを用いてゼラチン溶液と油剤の混合物を滴下し、軟カプセル剤を得た。
【0068】
実施例16
25gのダンシェン抽出物と25gのノトギンセノシドR1を十分に混合して本発明の漢方薬組成物を得た。得られた組成物を適当量の炭酸水素ナトリウム、クエン酸、フマル酸、サイクラミン酸ナトリウム、PEG及びラクトースと混合し、得られた混合物を従来の錠剤調製法で処理して発泡錠を調製した。
【0069】
実施例17
120gのダンシェン抽出物と10gのジンセノシドRg1を十分に混合し、ここに1300gの炭酸カルシウムと100gのデンプンを添加して十分混合した。混合物を篩にかけ、カプセル殻に入れて10000個のカプセル剤を調製した。
【0070】
実施例18
120gのダンシェン抽出物、10gのノトギンセノシドR1、及び500gのPEG−4000を準備し、従来法に従って、混合し、滴剤を調製した。ここで、内径3.3mmと外径5.1mmの滴下管(drip tube)を選択し、上記混合物を60〜70滴/分の
速度でメチルシリコーン油に滴下した。滴剤を回収し、冷却液を濾紙で除去した。各々の剤の重量は50mgであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量比が(2〜6):(0.5〜2)のダンシェン(Danshen)抽出物とサンキ(Sanqi)抽出物からなる漢方薬組成物;好ましくは、重量比が(1〜4):1のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる前記漢方薬組成物;より好ましくは、重量比が4:1のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる前記漢方薬組成物。
【請求項2】
前記ダンシェン抽出物が水溶性抽出物であり、好ましくは前記ダンシェン抽出物がダンシェンス(Danshensu)である請求項1記載の漢方薬組成物。
【請求項3】
前記サンキ抽出物が、ノトギンセノシドR1、ジンセノシドRb1、ジンセノシドRe及びジンセノシドRg1からなる群から選択される1種以上であり;好ましくは、前記サンキ抽出物がノトギンセノシドR1である請求項1又は2記載の漢方薬組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物を活性成分として含む医薬組成物であって、活性成分を0.1〜99.9wt%含み、残りは薬剤的に許容可能な担体である医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤、滴剤、顆粒剤、経口液剤、粉末剤、ペースト剤、ペレット剤、丸剤、座剤、乾燥粉末吸入剤、エアロゾル剤、ゲル剤、注射剤又は注射用凍結乾燥粉末剤であり;好ましくは前記錠剤は口腔内崩壊錠又は発泡錠であり、前記カプセル剤は軟カプセル剤である請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
虚血/再灌流に起因する心臓微小循環障害を寛解させるための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項7】
虚血/再灌流に起因する心筋障害及び/又は心筋梗塞を治療するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
介入療法の前又は後に心筋障害を治療するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項9】
アルブミンの漏出を伴う微小循環障害を阻害するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
細静脈からのアルブミン漏出を阻害するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項1】
重量比が(2〜6):(0.5〜2)のダンシェン(Danshen)抽出物とサンキ(Sanqi)抽出物からなる漢方薬組成物;好ましくは、重量比が(1〜4):1のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる前記漢方薬組成物;より好ましくは、重量比が4:1のダンシェン抽出物とサンキ抽出物からなる前記漢方薬組成物。
【請求項2】
前記ダンシェン抽出物が水溶性抽出物であり、好ましくは前記ダンシェン抽出物がダンシェンス(Danshensu)である請求項1記載の漢方薬組成物。
【請求項3】
前記サンキ抽出物が、ノトギンセノシドR1、ジンセノシドRb1、ジンセノシドRe及びジンセノシドRg1からなる群から選択される1種以上であり;好ましくは、前記サンキ抽出物がノトギンセノシドR1である請求項1又は2記載の漢方薬組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物を活性成分として含む医薬組成物であって、活性成分を0.1〜99.9wt%含み、残りは薬剤的に許容可能な担体である医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤、滴剤、顆粒剤、経口液剤、粉末剤、ペースト剤、ペレット剤、丸剤、座剤、乾燥粉末吸入剤、エアロゾル剤、ゲル剤、注射剤又は注射用凍結乾燥粉末剤であり;好ましくは前記錠剤は口腔内崩壊錠又は発泡錠であり、前記カプセル剤は軟カプセル剤である請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
虚血/再灌流に起因する心臓微小循環障害を寛解させるための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項7】
虚血/再灌流に起因する心筋障害及び/又は心筋梗塞を治療するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
介入療法の前又は後に心筋障害を治療するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項9】
アルブミンの漏出を伴う微小循環障害を阻害するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
細静脈からのアルブミン漏出を阻害するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漢方薬組成物と請求項4又は5に記載の医薬組成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【公表番号】特表2013−514283(P2013−514283A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543459(P2012−543459)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/CN2010/079928
【国際公開番号】WO2011/072619
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(509346243)テースリー ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/CN2010/079928
【国際公開番号】WO2011/072619
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(509346243)テースリー ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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