説明

ダントロレンを用いる治療

注射用低容量安全性ダントロレン製剤は、現在MH処置麻酔危機用に認可および製品化されたダントロレンを著しく超える利点をもたらす。ダントロレンをMH開始した患者に迅速に調製することができると、麻酔技師は、この複雑で進展する危機において、細心の注意を要し、かつ時間を消費するその救急薬の再構成プロセスにとらわれることなく、患者の生理学的状態の管理に専念することができる。さらに、ダントロレンの注射用安全性低容量製剤は、たとえば戦地などの、他の潜在的に生命にかかわる状態の処置において、ダントロレンを静脈注射する機会のある、麻酔学専門医ではない実施者にも広く調製することができる。注射用低容量安全性ダントロレン製剤は、他のダントロレン製剤と同様に、CPBなどの外科的処置中にこうむるもの、さらには医原的にまたは疾患によって惹起された非正常体温症状の発現中にこうむるものなど、医原的にまたは外傷性傷害により惹起された血流異常の状態につきもののポンプヘッドおよび他の神経学的、認知性および運動の機能障害の予防および治療に対する現行の試みを著しく超える利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は、ダントロレンおよびその塩、同族体および類縁物の哺乳動物、特にヒトにおける予防および治療的な使用に関する。低容量の注射に安全なダントロレン製剤は、悪性高体温症などの予防および目下認められる徴候の治療に改善をもたらし、かつ野外におけるダントロレンを実用化し、これにより、その薬学的用途を新規範囲に拡大する。さらに本発明は、CPBなどの外科的処置または関連処置中にこうむったもの、惹起された外傷性傷害(trauma)であるもの、たとえばポンプヘッド(pumphead)、さらには医原的にまたは疾患により引き起された異常体温の発現など、医原的に惹起された血流異常の状態に続く中枢神経系損傷またはおよび認知機能障害の予防および治療におけるダントロレンの使用に関する。
【0002】
定義
“血流異常(Altered blood flow)”−存在するため流速は0ではないが、明らかに正常とは異なる血流。圧の低下に現れる血流障害は、最大血圧のベースラインから10%を越える減少かまたは付随した平均動脈圧の低下であるが、95%未満の減少が、これとみなされる。拍動変化または血圧の異常上昇もまた血流異常とみなされる。
【0003】
“中枢神経系(CNS)”−脳および脊髄からなる神経系部分(中枢神経系(pars centralis systematis nervosa(NA)および中枢神経系(systema nervosum centrale(NA代用語)”(ドーランド医学辞典(Dorland's Medical Dictionary),p.1652)。
【0004】
“脳脊髄系”−脳(大脳、小脳および脳幹)および脊髄(白質および灰白質)から脊髄円錐モジュールのレベルに構成されるが、脳神経(CNI−XII)ならびに末梢神経系の要素を除く神経系部分である。
【0005】
“コロイド状”−一般的文脈において、活性化合物が一次的にミクロンまたはサブミクロンサイズ、特に平均粒径で約100ミクロン未満、本明細書において、より好ましくは平均粒径で約2ミクロン未満の個別粒子として存在するならば製剤はコロイド状である。
【0006】
“低酸素症”−神経精神病学的変化および認知機能障害の状態を誘発しうる、適切な組織内潅流にも拘らず組織に有効な酸素供給が正常な生理学的レベルを下回って低下した状態。これは貧血性低酸素症、組織中毒性低酸素症、または鬱血性低酸素症によって誘発されることがある。特定の呼吸系統の疾患症状、機械的または補助的換気、または不適切な酸素濃度(FiO不足)により誘発されたときの換気/潅流の不整合状態もまた、低酸素症を誘発することがある。
【0007】
“低マンニトール”製剤は、ダントロレンのミリグラムあたり30ミリグラム未満のマンニトールを含むダントロレン(またはその塩)の製剤を意味する。
【0008】
“低容量製剤”は、約300mgの投薬量を送達するために必要とする液量が100ml未満、好ましくは10ml未満であるダントロレン(またはその塩)の製剤を意味する。
【0009】
“神経障害”−末梢神経系における機能的障害(disturbances)および/または病理変化を意味する一般的用語。”(ドーランド医学辞典,p.1652)
【0010】
“正常体温”−ヒトおよびほとんどの哺乳動物が生存かつ発育するに好適な体温であって、通常かなり狭い温度範囲(閾値間範囲)、主として視床下部により自動調節される。ヒトにおける低体温は、一般に中核体温が36℃未満であると考えられる。ヒトは、わずかな度合であっても温度が上昇すれば、血管拡張および発汗を生じ、高体温となる。全身麻酔がかかっている時、ヒト、およびほとんどの哺乳動物は変温するとみなされ、すなわち正常体温の状態を確実に調節する能力を失い、その中核体温が周辺環境温度に向かって変動する傾向がある。
【0011】
“末梢神経系”−脳および脊髄の外側の神経および神経節からなる神経系部分(末梢神経系(pars peripherica systematis nervosa(NA)および中枢神経系(systema nervosum periphericum(NA代用語)”(ドーランド医学辞典,p.1652)。
【0012】
“注射安全性(safe for injection)”。ここでは、“注射安全性”を、試験対象またはモデル哺乳動物に適切な臨床用量で確実に静脈注射でき、その処方による生命にかかわる合併症が低発生率である処方を意味すると定義する。この低発生率とは、約10%未満の場合、好ましくは約1%未満の場合を意味する。とりわけ、処方に関連した毒性、たとえばスーパーミクロンサイズの粒子または凝集物による肺塞栓(PE)、病理学的な動脈圧異常、または重度の血管損傷などの発生率は低く抑えられるであろう。なお、本明細書において、用語“注射安全性”は、薬剤製剤を静脈注射になんら限定するものではなく、単に製剤は静脈注射しても充分安全であることを意味するものであるということが重要である。安全性の問題に関して静脈経路に焦点を合わせる理由は、製剤が、たとえば筋肉内、動脈内、皮下、腹腔内、眼内、または局所的点滴注入によるなどの他の経路の注射による投与のときでさえ、静脈への不慮の導絡のおそれは無視できず、また本質的に静脈内投与に結びつく誤った投与であっても製剤が安全であることがしばしば求められる。このため、本発明において、“静脈注射安全性”および“注射安全性”の用語は、互換性のあるものとして使用される。
【0013】
“ダントロレンの塩”−ダントロレンアニオンに対する対イオンがナトリウム(好ましい対イオン)、カリウム、アンモニウム、カルシウム、またはマグネシウムからなる群より選ばれる薬学的に許容しうるダントロレンの塩;本明細書中、ダントロレンに対して使用可能な他の可能なカチオンとして、ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N−メチルピリジニウム、テトラブチルアンモニウム、2−(2,3−ジヒドロキシ−1−プロピルアミノ)−キノリジニウム、サフラニンO、キノリジニウム、キノリジニウム、2−カルバモイル−1−メチルピリジニウム、2,3−ジメチル−1−フェニル−4−トリメチル−アンモニウム−3−ピラゾリン−5−オン、ジメチルアンモニウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、2,3−ジメチル−1−フェニル−4−トリメチル−アンモニウム−3−ピラゾリン−5−オン、2−(1−ヒドロキシ−2−メチル)プロピルトリ−メチルアンモニウム、および塩素などが挙げられる。
【0014】
“処置”,“治療”−これら各用語は、いずれも予防(予備処置)および治療処置を包含する。
【背景技術】
【0015】
異常認知機能または認知機能障害、神経精神病学的変化、および運動機能は、全身の血圧低下、大脳の潅流もしくは潅流圧の低下、および低血流状態に関係する非特異的なメカニズムに関連している。
【0016】
脳卒中、局所貧血、およびその結果として起きる再潅流損傷の場合のように、血流の局所的停止に関連した完全な血液供給の遮断および塞栓症現象は、末梢部損傷を起こすような複雑に関連する生理学的事象を起こすことが、Mangatら(特許文献1参照)に明確に定義されるとおり知られている。眼の末梢血管における局所的な血流停止およびそれに続く再潅流、および関連した視力障害は、最近の特許での特に関心の的であった。Mangatらによる特許の主題であった神経障害は、事実上すべて、たとえばドーランド医学辞典(p.1652)によって示される用語“神経障害”の標準的な定義に従う定義による末梢的である。
【0017】
しかしながら、さまざまな医原的に誘発された事象のみならず外傷性傷害は、たとえば一時的に大脳の血流が低下するなど、めったにない劇的状況では全身的に血圧を変動させ、いまや、そのような異常血流は、中枢神経系に現れ、神経精神病学的変化を誘発し、認知機能を損なわせ、運動機能および調節を変動させる傾向があることが認識され始めている。そのような変動は、自己限定的かまたは永久的な神経後遺症に帰する。このような状態は、Mangatらの特許中、該特許の方法により治療可能であるとして認識されておらず、また事実、現況の医療行為における特定の薬物治療に基く予防措置の主題ではない。また、神経網膜症に焦点を合わせたDongの特許公開公報(特許文献2参照)中、予防可能であるとして認識されているそのような異常血流状態の結果起こる脳脊髄の症状も同じである。
【0018】
CNS障害の場合、潜在的治療薬の注射による投与は、末梢系障害の処置に適用される標準的な組成物およびプロトコルを該技術分野における通常のスキルに準じて適用すれば、問題を生じる可能性がかなりあり、危険の可能性すらある。とりわけ、CNS障害の治療には、大容量の投与および血液脳関門を傷つける賦形剤は禁忌であることが多い。そのような厄介な問題は、特許文献1ではなんら確認されてないだけでなく提案もされておらず、さらにその対象を末梢組織に限定することを力説している。
【0019】
虚血性脳卒中に起因する脳脊髄損傷の予防または軽減を試みて数多くの治療薬が検討または試験されている。このようなものとしては、DP−b99、ニモジピン(nimodipine)、フルナリジン(flunarizine)、エブセレン(ebselen)、チリラザド(tirilazad)、クロメチアゾール(clomethiazole)、ダイアゼパン(diazepam)、GYKI52466、NBQX、YM90K、YM872、ZK−200775、SYM2081、AR−RI5896、アプチガネル(aptiganel)、デキストロメソルファン(dextromethorphan)、マグネシウム、メマチン(memantine)、MK−801、NPS1506、レマセミド(remacemide)、ACEA1021、GVI50526、エリプロディル(eliprodil)、イフェンプロディル(ifenprodil)、FGF、抗ICAM、Hu23F2G、ルベルゾール(lubeluzole)、ナロクソン(naloxone)、ナルメフェン(nalmefene)、シチコリン(citicoline)、Bay×3072レピノタン(repinotan)、フォスフェニトイン(fosphenytoin)、619C89、BMS−204352、セレブロリシン(cerebrolysin)、およびパイラセタム(piracetam)などが挙げられる。これらの全てとはいえないとしてもほとんどの試みは、ほとんど改善がみられないという結果であった。Sandercockら(非特許文献1)参照。
【0020】
Leeの特許(特許文献3参照)は、アミロイド前駆体タンパク(APP)により媒介された疾患、たとえばアルツハイマー病の処置、特にβ−アドレナン作動性受容体拮抗薬の使用に焦点をあわせている。Liptonの特許(特許文献4参照)は、HIV−1被覆タンパクgp120で媒介された疾患に言及している。これら特許はCNS疾患に言及しているが、心肺バイパスおよび他の外科的処置に関連するような異常血流に直接起因する−脳脊髄の健全を脅かす因子の既往のないヒトの範疇で−疾患の処置だけでなく、特に予防については教示していない。
【0021】
ダントロレンは、悪性高体温症の処置において選択される救急薬であり、そのため麻酔剤が送達されるほとんどの地域で広く入手可能である。1967年に初めて合成され、ダントロレンは、1975年に筋攣縮の処置に使い始められ、その後、MHの急場処置用として1979年にFDA認可された。より広範には、ダントロレンは、強力な筋弛緩剤および神経痙縮に対する処置が求められる他の症状において価値がある。特に重要な例としては、ダントロレンは、“エクシタシー”(N−メチル−3,4−メチレンジオキシフェニルイソプロピルアミン,CAS#42542−10−9)などの娯楽のためのドラッグの過剰摂取、熱射病、神経弛緩薬性悪性症候群、および末梢神経系への虚血性障害などの生命を脅かす症状の予防および治療に興味をもたれ使用されてきた、そして乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防において重要であろう。
【0022】
ヒダントイン−フランの誘導体、ダントロレンナトリウムは、水にほとんど溶解しない。現在上市されている製剤、ダントリウム(Dantrium)(登録商標)静注,(プロクター・アンド・ギャンブル,シンシナティ,オハイオ)は、70ml滅菌バイアル中に、20mgのダントロレンナトリウムおよび3000mgのマンニトールを含み、凍結乾燥状態で存在する。60mlの滅菌水で再構成して、3mg/mlのダントロレンおよび50mg/mlのマンニトールの最終濃度が達成される。このように、この製剤は、主にはダントロレンの難溶解性によるいくつかの望ましくない性質を示す。これら問題は、他でもよく記載されており、煩雑で、時には不正確な調製、静脈投与に好適な溶液を調製するための有効な時間および温度上昇(Grassら)、典型的に2.5〜10.0mg/kgの範囲の有効用量の送達に要する大容量の溶液(各個ごと最低600ml)などが挙げられる。Rosenberg(非特許文献2)参照。
【0023】
現況の製剤における9.5のpHは、刺激があり、体液浸出および上皮血管損傷(静脈血栓症)に続く組織壊死の潜在性を高める。現実のMH危機において現在実践されるプロトコルに従う、現在上市されているDantrium(登録商標)製剤の溶解は不完全で、ダントロレンの大きな結晶が、すでに心臓血管の状態が過度のストレス下にある患者に静脈注射されることを強く暗示している。さらに、現在上市されている製剤中の大負荷のマンニトールは、CNS合併症を誘発することがある。
【0024】
再構成に要される必要以上に長い時間と労力、またさらに挙句の不正確な投薬および可搬性の欠落を要因の背景として、現在上市されているダントロレン製剤の煩雑な調製が死因であると考えられている
【0025】
アメリカ悪性高熱症協会(MHAUS)の現勧告は、全身麻酔がかけられるすべての地域は、常時、手持ちでダントロレンナトリウム(720mg)36バイアルを所有することを明記している。たいていの手術室には、専用のMHカートに、6つのDantrium(登録商標)6パックおよびリットルの再構成用滅菌水とともに、それを調製するための60ccシリンジおよび注射針、さらに中心線キット、重炭酸ナトリウム、および抹消血管に対立するものとして中心アクセスを介して投与するために必要な他のが装備される。劇症MH危機に面して、数十バイアルのDantrium(登録商標)の再構成および注射は、とてつもなく面倒な作業であり、数人の麻酔人員の援助を求めることも多く、この時間の拘束が、しばしば注射に先立つダントロレンの不完全溶解および/または患者に不都合となる処置の遅れに帰着する。
【0026】
他者は、現在の市販品に改良を加えようとする先行試験をいくつか報告する。リン脂質被覆微結晶製剤(特許文献5参照)のダントロレンおよびダントロレンナトリウムが、正常およびMHSブタ(swine)において評価されているが、注射に安全ではないことが分かっている。Karanら(非特許文献3)参照。研究者らは、径の大きさで500nmないし6ミクロンの径範囲の均質な粒径の生成に挑戦し、さまざまな治療結果が得られ、あるブタでは、大きい粒子だけでなく自然凝集粒子によるものと確信され、結果的に肺動脈塞栓となる心血管虚脱の結果が得られた。ダントロレンナトリウムのリン脂質被覆は凝集が認められ、注射に不適合となり、また遊離酸の形態(ダントロレン)の製剤は、ブタ(pig)(標準,ダントロレン有効性の試験を受けた)におけるハロタンおよびスクシニルコリンへの曝露に先立つ予備処置として使用した場合を含み、試験された各ケースの明確な分類はできなかった。これら研究において、上記製剤による死亡率および重度合併症発生率は、試験した動物の10%をはるかに超えた。
【0027】
さらに、市販製剤についてED50を0.6mg/kgを1.0mg/kgに代えるとする報告とともに、ラットでの単収縮張力試験での、リン脂質被覆のダントロレン微結晶製剤は、市販のDantrium(登録商標)製剤よりも著しく能力が劣っており、むしろ、薬物動態は著しく阻害されていたと確信すべき根拠がある。
【0028】
溶液中のダントロレンナトリウムは、時間が経つと、注射製剤には適応しない遊離酸体を析出する。このことは、適切な貯蔵寿命をもつダントロレンナトリウムの水性製剤をほぼ実現不可能にする。それでもなお、乾燥製剤について、製剤の最終投与は、通常、注射可能な液体、典型的にかつ好ましくは水中への再構成を要する。
【0029】
文献には、医薬化合物のコロイド懸濁液、たとえば注射として製薬的に適応しうるものなどの調製の方法が記載されている。一般に、結晶は、水中に再分散できるように凍結乾燥して粉末化する。このやり方は、主に経口的に投与される製剤に用いられてきた。注射できる製剤では、粉末は有効サイズで1ミクロンを超える粒子または凝集物のきわめて発生しにくい超微粉分散として再分散することが不可欠である。ただちに注射安全性の分散液に再構成するための乾燥粉末製剤を調製するための試みがなされるという特殊な例において、いくつかの試みが失敗したのは、使用したその方法のための活性薬剤化合物が不適切であったことによる。大部分の製薬的ミリング方法は水系ミリングであるため、これはとりわけ水にかなり溶ける化合物に該当する。
【0030】
ダントロレンナトリウム、現在市販されているDantrium(登録商標)の形態であるが、現況、注射用水溶液(分散とは対照的に)として再構成されるように設計されており、これら標準方法のためにはその水溶性がとてつもなく高いであろうという暗黙の前提、ならびに水不溶性コーティングの使用に照準を合わせた製剤努力に行きつく。後者(特に、Karanらによって研究されたホスファチジルコリン系コーティング)は、注射には安全ではないことが証明されており、また一般に、作用の急激な開始が回避できないためダントロレンの場合には、水不溶性コーティングは、粒子径の問題に起因する注射時の毒性を上昇させることがあるという理由により禁忌とされる。
【0031】
【特許文献1】米国特許第6,462,066号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0006124号明細書
【特許文献3】米国特許第6,187,756号明細書
【特許文献4】米国特許第5,506,231号明細書
【特許文献5】米国特許第5,091,188号明細書
【非特許文献1】Sandercock et al, Health Technology Assessment,2002, 第6(26)巻,27頁
【非特許文献2】H.Rosenberg, MHAUS, Clinical Anesthesia, 第4版
【非特許文献3】Karan et al., Anesth. Analg. 1996, 52:796
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明は、ダントロレン、またはその1つの塩、同族体または類縁物を、現在上市されている注射可能なDantrium(登録商標)製剤(ヒトへの適用には500ml〜1800mlオーダーの容量を要する)で必要とする量から大きく低減された液量で必要量を送達でき、かつそれにより、特に限定されないがこの患者を中心とするいくつかの症状の処置として、多数本のバイアルの凍結乾燥した薬剤を投与するために大容量の液体を再構成することに付随する合併症および危険を最小限化または回避する薬学的に許容しうる製剤で提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
また、この容量およびそれに付随する問題の本質的な軽減は、Mangatらの特許中に予知されてないが、たとえばその成功が迅速な手配、体外循環路の危機管理に依存している処置、および/または血管内容量の膨張がほぼまたは絶対的に禁忌であるような処置において、500−1,800mlの水溶液を再構成し、投与しなくてはならない点において、非常に重要であるとみなされるべきである。現発明の態様例では、約150ml以下の液量で500mgまでのダントロレン投薬量を送達することができ;300mgの投薬は約100ml以下、より好ましくは30ml以下、さらに好ましくは5ml以下の液量で送達することができる。後者の容量は、製剤全体が自動注射器のデバイスの標準容量に則って装填できるほど充分小さく、したがって野外および救急適用に求められる携帯性をもたらす。
【0034】
本発明のさらなる目的は、溶液であるかまたは考えられるあらゆる経路、たとえば限定はされないが確実である静脈内、筋肉内、髄腔内、および体外の流体もしくは循環路を介して安全な投与を可能にさせる充分に小さい粒子、具体的には95%超の粒子が0.8ミクロン未満、より好ましくは0.45ミクロン未満であるような粒子を含むダントロレンまたはその塩の1つの低容量製剤を提供することである。このようなサイズは、注射による肺塞栓に対抗するだけでなく、たとえば直列フィルターを用いて、少なくともいくつかの最重要細菌を排除するサイズでの濾過を可能にすることによって細菌感染に対抗する安全性のために重要である。
【0035】
本発明のさらなる目的は、救急臨床現場において、勿論非救急および予防的な環境においても、迅速にかつ確実に再構成されるダントロレンの製剤を提供することである。具体的に、この製剤は、300mgの全投薬量を、臨床現場において、一人の臨床医により1分内に再構成できるはずである。
【0036】
本発明のさらなる目的は、貯蔵期間中に遊離酸ダントロレンの出現を最小限としたダントロレンナトリウム、またはダントロレンの他の塩の乾燥粉末製剤を提供することである。
【0037】
本発明のさらなる目的は、ダントロレンのmgあたりのマンニトールが約30mg未満である低含量でマンニトールを含み、したがって神経系の合併症が起ることのある徴候においてより安全な使用を可能にする、薬学的に許容しうる低容量のダントロレンナトリウム製剤を提供することである。
【0038】
本発明のさらなる目的は、ダントロレンまたはその1つの塩の注射安全性の低容量コロイダル懸濁液の使用により、悪性高体温症および本出願で取り扱われるような他の付随した症状、たとえば特に限定されないがMDMA過摂取および熱射病の治療方法を提供することである。
【0039】
本発明のさらなる目的は、手術室におけるMHおよび付随症状の治療を改善し、有効な治療を他の環境および病因においてもより広く利用できるようにするという課題を解決する安全、低容量かつ低マンニトールのダントロレンコロイド懸濁液を提供することである。すなわち、本発明は、ダントロレン、またはその1つの塩、同族体または類縁物を、現在市場に流通している注射可能なDantrium(登録商標)製剤(ヒトへの適用には500mlないし1800mlオーダーの容量を必要とする)に必要とされる液容に対し大幅に低減された液容中での必要薬量を送達することができ、それによって、たとえば特に限定されないが本発明において照準をあわせている症状例の治療などのための投与のため、多数本数の凍結乾燥された薬剤の大液量再構成に付随する合併症および危険を軽減または回避する薬学的に許容しうる製剤で提供することを目的としている。
【0040】
本発明の別の特徴は、ダントロレンを使用しうる新規な徴候の分類を軸として展開することである。具体的には、本発明は、血圧の変動および/または著しい低下;血流の変動および/または著しい低下;脳潅流の変動および/または著しい低下;拍動流の変動および/または減弱、さらには、本質的に脳潅流つづく脳組織の酸素供給を変動させ、著しく害する頭蓋内圧の上昇;および特に約4時間を超えて続く非正常温度の状態に付随することがある、本明細書に記載されるネガティブな脳脊髄および認知障害を防止、低減または脱却する方法を提供することを目的としている。運動機能の低下を伴うまたは伴わない認知能力および機能の異常現象ならびに神経精神病学的変化は、麻酔医、心臓胸郭部外科医、およびある種の他の医療関係者の間で、“ポンプヘッド”と通称されている。具体的に、本発明では、ダントロレン、またはその1つの塩、同族体または類縁物の予防的投与は、単一のおよび複数の相乗的組合わせの細胞内および/または代謝メカニズムを介して、また細胞内カルシウムの安定化を介して、これら神経系合併症の発症を防止または制限することができることを想定している。さらに、ダントロレンは、ヒトだけでなく潜在的に獣医学的環境にも同様に、損傷に対してある程度適時に投与されれば、神経系合併症を軽減しうる好適な治療薬であろうことも期待される。
【0041】
本発明は、注射しても安全で、かつ約300mgの投薬量のために約100ml未満、好ましくは約10ml未満という少ない液量しか必要としないダントロレンおよびダントロレン塩の新規な製剤、および適応症(徴候)に照準をあわせている。この発明は、単回投与の凍結乾燥または予め分散された物質を簡便に投与するユニットを可能にするであろうことが多いに期待できる。このことは、肉体的のみならず体外的にも操作の軽減化された精確な投与を実現させるであろう。現況のDantrium(登録商標)製剤の大容量ワークアップは、ダントロレンの軍隊または救急における適用などの野外使用の実施を大きく阻むのに対し、本発明で提供される低容量製剤は、そのような野外での適用にとりわけ有用である。同様に、本発明は、病院から離れて投与を必要とする公衆衛生の状況、たとえば病気の流行、または戦時またはテロに関与した負傷などの場合などにおいても価値があるだろう。
【0042】
これら製剤は、薬学的に許容しうる液体、好ましくは水、グリセロール、プロピレングリコール、ジメチルアセタミド、エタノール、ポリエチレングリコール(たとえば、PEG300,PEG400,PEG3350)、クエン酸トリエチル、トリアセチン、モノチオグリセロール、またはこれらの混合物からなる群より選ばれる、より好ましくは水または水混和性の溶媒、特に好ましくは水中のダントロレンまたはその塩のコロイド懸濁液である。本発明は、薬学的に許容しうる液体、好ましくは注射用滅菌水を加え、機械的に撹拌、好ましくは手で振ることにより迅速に(1分未満)再構成することができるダントロレンまたはその塩の1つの乾燥粉末製剤も開示する。
【0043】
注射に安全で迅速な再構成および投与が可能なダントロレン製剤に加え、本明細書で説明される本発明の他の著しい利点は、現在上市されている製剤に対し、マンニトールが低減されているか省かれていることである。マンニトールは、血管外の流体を血管内空間に引き込む血管浸透勾配誘導剤として作用する。このことは、ある種の浮腫の治療では有益性を立証することができる。しかしながら神経系合併症を含む多くの外科的立場では、マンニトールは、広く禁忌であると認められている。このような状況下、マンニトールは血管内空間を出て、血管外となり、崩壊した血液脳障壁の領域内に集まる。血管外で、同じような浸透勾配を生じさせるが、ここで、脳組織中に無制限の流体集積が起き、脳浮腫が増大し、頭蓋内圧が上昇する一方、他の脳潅流圧を介する脳血流は減少することになる。
【0044】
また、予めナノ粒子サイズに調整された本発明のコロイド懸濁液のさらなる利点は、テタニーの活性状態における潅流性に劣る骨格筋へのダントロレンの分配を最大化できることである。MHの治療失敗のいくつかの例において、筋肉のテタニー性収縮が、大サイズ粒子のダントロレンの送達を激しく阻害し、血管内空間のどこか違うところで適切な濃度が達成される間、結合サイトに到達させなくする危機に陥ることが理論化されてきた。
【0045】
本発明の低容量、低マンニトールのダントロレンナトリウム製剤の広範な投与は、MH危機または付随事態を軽減するという意図された効果を達成することが予見される。本発明で提供される低容量化された製剤は、従来技術の製剤に比べ、より容易でかつより精確な、より迅速なやり方での投与を可能にする。現時点で、0.1〜10.0mg/kgの範囲の薬量は、年齢、事前の健康状態、および発作の種類および程度による神経系障害の起こりうる範囲に依拠して薬効を示すと予想される。好ましい範囲は、約0.5〜約4mg/kgである。
【0046】
本発明のさらなる別の特徴は、本明細書で開示される低容量製剤のみならず現存するダントロレン製剤の新規な治療および予防方法用途としての、ダントロレンの新規な適応症の開示である。本発明者は、本発明以前には理解が乏しく、治療はなおさらうまくされなかった特定の脳脊髄とりわけ認知障害の予防および治療に、ダントロレンが、唯一の適応性となる生化学的および薬学的メカニズムの驚異的な相乗作用の結合をもたらすことを認めている。このような傷害、特に特定の外科処置の余波で、その症候が、“無症状”であり手遅れになることもある傷害への注意は、予備的な医療行為において、初期の外科的適応症の副次的なものとなる。これら傷害について、“ポンプヘッド”と称されることもある認知喪失は代表例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明のコロイド状ダントロレンを作成するための材料および方法
ダントロレンまたはその1つの塩のサブミクロン結晶の注射安全性コロイド分散液は、薬学的な特許、文献、および実務における粒子サイズ低減の公知方法に準じて調製することができる。高圧ホモジェナイズ法および湿式粉砕法の2つが一般的な方法である。薬学分野における粉砕技術の代表的な検討は、たとえば米国特許第5,858,410号(引用により本明細書に組込まれる)を参照する。本発明の重要な態様は、水溶解性が充分に低いダントロレンナトリウムにも、これらの方法が実際に適用され得ることを実現することである。このことは基本的に重要であり、なぜなら、安全な使用の長い経歴をもち、現在市場に出回っているダントロレン製剤中のダントロレンのナトリウム塩だけでなく、我々の研究が、たとえばダントロレンナトリウムに比べ著しく溶解が遅くかつより問題性があり、注射剤の安全性面で重要性をもつ遊離酸の溶解を示すことでもあるためである。以下の実施例はこれら2つの一般的製造方法を示す。他の方法としては、乾燥粉砕、化学的沈殿、スプレー乾燥(たとえば、水溶液から、通常、以下で検討されるような安定剤を含む)、超音波処理、テンプレートエマルションからの溶媒除去、水溶液中への蒸発性沈殿、および圧縮した非溶媒を用いる沈殿など超臨界流体による方法などが挙げられる。
【0048】
また、微粒子のコア中に分散または溶解したダントロレンまたはその塩の1つを含有する、より複雑な微粒子を製造することができる。たとえば、サブミクロンのダントロレン結晶を、米国特許第6,482,517号(引用により本明細書に組込まれる)に準じてリオトロピック液晶中、あるいはたとえばPLGA、コラーゲン、カルボキシメチルセルロースまたは他のセルロース系ポリマー、アルブミン、カゼイン、PVPなどの生体適合性ポリマーの1つまたは複数からなる粒子またはマイクロファイバー中に埋め込む、換言すればコーティングすることができる。
【0049】
本発明に従う製剤において、ダントロレンまたはダントロレン塩または同族体の粒子径は、特に注射しても安全かどうかを決定する上で非常に重要である。また、なお本発明による凍結乾燥の乾燥粉末製剤の場合には、薬剤(ダントロレンまたはその塩、同族体または類縁物)の粒子は、乾燥製剤中にサブミクロン粒子サイズで存在するとしても、より大きな、ミリメータサイズの大きさでもよい、固体中に埋込まれていてもよく、これら後者の固体は、再構成の間に添加される液状担体(通常、水)中に予め溶解されて供される。たとえば、ダントロレンナトリウムのサブミクロン結晶は、固体またはラクトースもしくはトレハロースなどのアモルファスの糖類中に埋め込むことができ、この場合、固体粒子全体のサイズはサブミクロンよりもずっと大きくてもよい;この場合、水の添加により糖類は迅速に溶解してサブミクロン結晶が残り、静脈注射しても安全な再構成された製剤となる。
【0050】
乾燥製剤において、充分に小さい(通常、約2ミクロン未満、好ましくは約0.8ミクロン未満、より好ましくは約0.45ミクロン未満)ダントロレン粒子のサイズに加え、かつダントロレンの本発明の乾燥製剤を従来技術の乾燥形態と区別するものでもある他の重要な態様は、製剤の界面化学が再構成における分散性を保証していることである。具体的には、本明細書で論議されるような乾燥製剤における安定剤および場合によって分散剤(または、安定剤および分散剤として作用することができるPVPなどの成分)の混和は、液体、通常注射用滅菌水の添加における分散性を確保できるようになされる。対照的に、ダントロレンナトリウムの単純粉末(たとえば、シグマアルドリッチケミカル社より入手)またはダントロレン製剤への3〜130mLの水の添加、およびつづく室温での手による振盪は、Gen. Anesth., 2003,50(2)巻,p.127において、ミッチェル(Mitchell)およびライトン(Leighton)が報告するように、粒子サイズが大きくなりすぎるため、注射分散液の安全性をもたらさないことになる。さらに、これらのケースにおける安定剤の欠如は、きわめて迅速に再構成バイアル容器またはシリンジの底への沈降を開始する粒子をもたらすことになる。
【0051】
本発明におけるダントロレンまたはその塩のコロイド懸濁液は、薬学的に許容しうる液体中に懸濁または分散されたダントロレン、ダントロレン塩または関連した筋弛緩性化合物の結晶を含み、該液体は、好ましくは水、グリセロール、プロピレングリコール、ジメチルアセタミド、エタノール、ポリエチレングリコール(たとえば、PEG300、PEG400、PEG3350)、クエン酸トリエチル、トリアセチン、モノチオグリセロール、またはこれらの混合物、より好ましくは水または水混和性溶媒、特に好ましくは水からなる群より選ばれる。広くは、安定剤は、通常、結晶(またはアモルファス薬剤物質)の安定で微細な分散を達成するために必要とされ、該安定剤は、必要に応じて好ましくは下記に従い選択される。使用する安定剤としては精選タンパク質、ポリマー、および界面活性剤などが挙げられる。
【0052】
安定剤として潜在的使用されるタンパク質は、アルブミン、カゼインおよびカゼイン塩などが挙げられる。ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン(PVP)、アカシア(アラビアゴム)、カルメロースナトリウム、デキストリン、コラーゲン、ゼラチン、ヒドロシリル化ゼラチン、グリコール酸ナトリウム糊、イヌリン、およびキサンテンなどが挙げられる。適切な界面活性剤またはブロックコポリマー成分(またはこれらの混合物)としては、
a.カチオン性界面活性剤
b.アニオン性界面活性剤
c.両性イオン性界面活性剤
i. とりわけ、リン脂質
ii. 生体膜の物理化学的性質に適合するように設計されたリン脂質含有脂質混合物
e.モノグリセライド
f.PEG化界面活性剤
g.芳香環をもつ上記のうちの1つ
h.ブロックコポリマー
i. 両ブロックとも疎水性であるが、互いに非混和性
ii. 両ブロックとも親水性であるが、互いに非混和性、
iii. 1ブロックが疎水性で他のブロックが親水性、すなわち両親媒性)
i.上記の2以上の混合物。
【0053】
適切な脂質としては、リン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンまたはスフィンゴミエリンなど)、またはグリコ脂質(MGDG、ジアシルグルコピラノシルグリセロールおよびリピッドAなど)などが挙げられる。他の適切な脂質は、リン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンなどを含有)スフィンゴ脂質(スフィンゴミエリン含有)、グリコ脂質(MGDGおよびDGDGなどのガラクト脂質、ジアシルグルコピラノシルグリセロールおよびリピッドAなど)、コール酸およびデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸などの関連酸の塩、ゲンチオバイオシル(gentiobiosyl)、イソプレノイド、セラミド、プラスモロゲン(plasmologens)、セレブロシド(スルファチド含有)、ガングリオシド、シクロオペンタトリオール脂質、ジメチルアミノプロパン脂質、およびリゾレシチン、および上記から1アシル鎖を除去することにより誘導される他のリゾ脂質などである。
【0054】
他の適切なタイプの界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両イオン性、半極性、PEG化、アミンオキサイドおよびアミノ脂質などが挙げられる。
好ましい物質は、アニオン性の:オレイン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジエチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジメチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチル酢酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ウンデカン−3−硫酸ナトリウム、エチルフェニルエンデカン酸ナトリウム、IC型(鎖長nは8〜20の間、Iはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどの一価の対イオン)のカルボキシル化石鹸;
カチオン性の:鎖長8〜20で、塩素、臭素または硫酸対イオンのジメチルアンモニウムおよびトリメチルアンモニウム界面活性剤、ミリスチル−γ−ピコリニウムクロライドおよびアルキル鎖長8〜18の同族体、安息香酸ベンゾアルコニウム、8〜18の間の炭素鎖長および臭素、塩素または硫酸対イオンをもつ両端四級アンモニウムの界面活性剤;
型(アルカン炭素鎖長nが6〜20、エチレンオキサイド基mの平均数が2〜80)の非イオン性のPEG化界面活性剤、エトキシ化コレステロール;
両性イオン性物および半極性物:N,N,N-トリメチルアミノデカノイミド、8〜18のアルキル炭素鎖長をもつアミンオキサイド界面活性剤;
ドデシルジメチルアンモニオプロパン−1−硫酸塩、ドデシルジメチルアンモニオブチラート、ドデシルトリメチレンジ(アンモニウムクロライド);デシルメチルスルホンジイミン;ジメチルエイコシルアンモニオヘキサン酸塩およびアルキル鎖長8〜20のこれらの両性イオン性物および半極性物の同族体。
【0055】
好ましい界面活性剤としては、界面活性剤として使用される保存剤を包含し、注射適応性がFDA認可されたものでもあるが、ベンザルコニウムクロライド、デオキシコール酸ナトリウム、ミリスチル−γ−ピコリニウムクロライド、ポロクサマー(Poloxamer)188(プルロニック(Pluronic)F-68).プルロニックF-127、ポリオキシカストール油および同族のPEG化したカステール油たとえばクレマフォア(Cremaphore)EL、アルラトン(Arlatone)G、ソルビタンモノパルミタート、プルロニック123、および2-エチルヘキサン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0056】
他の低毒性界面活性剤および脂質としては、少なくとも水への溶解性が相対的に低いものであり、多くの投与経路が意図された製品のために本発明に好ましいとされるものであるが、アセチル化モノグリセライド、アルミニウムモノステアラート、アスコルビルパルミタート遊離酸および二価塩、ステアロイル乳酸カルシウム、セテック(cetech)−2、コレス(choleth)、デオキシコール酸および二価塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、ドキュセートカルシウム、グリセリルステアラート、ステアラミドエチルジエチルアミン、アンモニア化グリシルリジン、ラノリン非イオン性誘導体、ラウリルミリスチルジエタノールアミド、ステアリン酸マグネシウム、メチルグルセス(gluceth)−120ジオレアート、クエン酸モノグリセライド、オクトキシノール-1、オレス(oleth)−2、オレス-5、peg植物油、ペグリコール(peglicol)−5−オレアート、ペグオキソ(pegoxol)7ステアラート、ポロキソマー(poloxamer)331、ポリグリセリル−10テトラリノレアート、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシカステロール油、ポリオキシジステアラート、ポリオキシグリセリルステアラート、ポリオキシラノリン、ポリオキシ-8ステアラート、ポリオキシ150ジステアラート、ポリオキシ2アテアラート、ポリオキシ35カステロール油、ポリオキシ8ステアラート、ポリオキシ160カステロール油、ポリオキシ75ラノリン、ポリソルビタート85、ステアロイル乳酸ナトリウム、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ステア(stear)−o−ウェットc、ステア−o−ウェットm、ステアルコニウムクロライド、ステアラミドエチルジエチルアミン(バジナル(vaginal))、ステアレス(steareth)−2、ステアレス−10、ステアリン酸、クエン酸ステアリル、フマル酸ナトリウムステアリルまたは二価塩、トリデセス(trideceth)10、トリラネス(trilaneth)−4−リン酸塩、デテン(Detaine)PB、JBR−99ラムノ脂質(Jeneil Biosurfactantより)グリココール酸およびその塩、タウロケノデオキシコール酸(特にビタミンEとの組合せ)、トコフェリルジメチルアミノ酢酸塩酸、リン酸トコフェリル、コハク酸トコフェリルpeg1000、サイトフェクチンgs、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−トリメチルアンモニム−プロパン、リシンアミドまたはオルニチンアミドに連結されたコレステロール、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド、1,2−ジオレオイル−sn−3−エチルホスホコリンおよびリンまたはヒ素原子で担持されるカチオン電荷をもつ他の二重鎖脂質、トリメチルアミノエタンカルバモイルコレステロールアイオダイド、リポ酸、O,O’−ジテトラデカノイル−N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロライド(DC−6−14)、N−[(1−(2,3−ジオレイロキシ)プロピル)]−N−N−N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−メチル−4−(ジオレイル)メチルピリジニウムクロライド(セント(saint)−2)、アミノアルキル側鎖をもつ脂質性グリコシド、1,2−ジミリスチロキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド、ビス[(2−(11−フェノキシウンデカノアート)エチル]−ジメチルアンモニウムブロマイド、N−ヘキサデシル−N−10−[O−(4-アセトキシ)−フェニルウンデカノアート]エチル-ジメチルアンモニウムブロマイド、ビス[(2−(ブチロキシウンデカノアート)エチル]−ジメチルアンモニウムブロマイド、3−β−[N−(N',N''−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]−コレステロール、ヴァクスフェクチン(vaxfectin)、カルジオリピン、ドデシル−N,N−ジメチルグリシン、および肺表面活性剤(Exosurf,Survanta)などが挙げられる。
【0057】
適切なブロックコポリマーは、下記種類のポリマーから2以上の互いに非混和性のブロックで構成されるものである:ポリジエン、ポリアレン、ポリアクリルおよびポリメタクリル(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリ2置換エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどを包含)、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリフェニレン、ポリオキサイド、ポリカーボナート、ポリエステル、ポリ無水物、ポリウレタン、ポリスルフォナート、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリサルフォン、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレア、ポリカルボジイミド、ポリホスファジン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリオキサジアゾイジン、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリピロメリットイミド、ポリキノクサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリピペラジン、セルロース誘導体、アルギン酸およびその塩、キチン、キトサン、グリコーゲン、ヘパリン、ペクチン、ポリホスフォラスニトリルクロライド、ポリトリ−n−ブチルスズフルオライド、ポリホスフォリルジメチルアミド、ポリ−2,5−セレニウニレン、ポリ−4−ブチルピリジニウムブロマイド、ポリ−2−N−メチルピリジニウムアイオダイド、ポリアリルアンモニウムクロライド、およびポリ硫酸−ナトリウム−トリメチレンオキシエチレン。
【0058】
好ましいポリマーブロックは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、ポリアセチレン、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、ポリメタクリラート、ポリエチルアクリラート、ポリブチルアクリラート、ポリメチルメタクリラート、ポリプロピルメタクリラート、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリメタククリルアミド、ポリアクリルニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプリル酸ビニル、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレンスルホン酸およびその塩、ポリブロモスチレン、ポリブチレンオキサイド、ポリアクロレイン、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシテトラメチレン、ポリジメチルフルベン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリシクロペンタジエニレンビニレン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキル−p−フェニレン、ポリエチレン−アルトプロピレン、ポリノルボルネン、ポリ−5−((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルネン、ポリチオフェニレン、ヘパリン、ペクチン、キチン、キトサン、およびアルギン酸およびその塩である。
【0059】
特に好ましいブロックコポリマーは、ポリスチレン−b−ブタジエン、ポリスチレン−b−イソプレン、ポリスチレン−b−スチレンスルホン酸、ポリエチレンオキサイド−b−プロピレンオキサイド、ポリスチレン-b-ジメチルシロキサン、ポリエチレンオキサイド−b−スチレン、ポリノルボルネン−b−5−((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルネン、ポリアセチレン−b−5−((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルネン、ポリアセチレン−b−ノルボルネン、ポリエチレンオキサイド-b-ノルボルネン、ポリブチレンオキサイド−b−エチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−b−シロキサン、およびポリイソプレン−b−スチレン−b−2−ビニルピリジントリブロックコポリマーである。
【0060】
上記したとおり、著しく水溶性の高い、好ましくは約5mg/mlより水溶性の高い安定剤は5mg/mlよりも水溶性の低いものに比べ、本質的に安全である。
【0061】
再構成可能な乾燥粉末を生成させるために水系分散液から水を除去する方法は、非経口剤の技術分野において当業者に公知である。標準的製薬手順に従う水系分散液の凍結乾燥(Lyophilization)またはフリーズドドライは、注射用滅菌水の添加および振盪または渦動により再構成可能な乾燥粉末とするために、ダントロレンまたはその1つの塩、好ましくはダントロレンナトリウムのコロイド分散液に適用することができる。たとえば、米国特許第5,858,410号参照。室温で固体の安定剤の使用は、液体のものに対し、一般により良好なフリーズドライ製品をもたらすが、強烈な吸湿性の安定剤も好ましいといえない。したがって本発明のコロイド分散液のための好ましい安定剤としては、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、PVP、ベンズアルコニウムクロライド、ドキュセートナトリウム、加水分解ゼラチン、およびF−68、F−127などの“F”プルロニックなどが挙げられる。アルブミンはダントロレンに結合し、このことは薬物の正常な活性と薬物動力学を阻害することがあるので、アルブミン、特にダントロレンに比べ大量では避けるべきである。なお、本明細書中に別記するように、高度に不溶性の安定剤は、ダントロレンの薬物動力学を阻害することがあるため、あまり好ましくない。ただし、実施例4に説明するように、それらが実際に吸着を促進しうるナノ多孔質、立方晶系相などの反転したリオトロピック液晶相の形態(最後には、再構成製剤が可能)で存在する場合を除く。
【0062】
分散剤には、ラクトース、トレハロース、ソルビトール、スクロース、デキストロース、マンニトール、などの糖類など、特に好ましくはラクトース、ソルビトール、およびマンニトールなどを加えることができる。再構成の速度および効率を改善するために崩壊剤、とりわけスーパーディスインテグラントを使用することができ、このような化合物としては、PVPおよびカルボキシメチルセルロースなどが挙げられ、これらのいずれも充分に少量で使用する場合には注射しても安全である。
【0063】
本発明で使用できるダントロレンの形態としては、ダントロレン遊離酸および薬学的に許容しうるダントロレンの塩が挙げられ、該塩におけるダントロレンアニオンに対する対イオンが、ナトリウム(好ましい対イオン)、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたはマグネシウムからなる群より選ばれ;本発明の範囲におけるダントロレンに対し、使用され得る他の可能なカチオンとしては、ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N-メチルピリジニウム、テトラブチルアンモニウム、2−(2,3−ジヒドロキシ−1−プロピルアミノ)−キノリジニウム、サフラニン(Safranine)O、キノリジニウム、キノリジニウム、2−カルバモイル−1−メチルピリジニウム、2,3−ジメチル−1−フェニル−4−トリメチル−アンモニウム−3−ピラゾリン−5−オン、ジメチルアンモニウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、2,3−ジメチル−1−フェニル−4−トリメチル−アンモニウム−3−ピラゾリン−5−オン、2−(1−ヒドロキシ−2−メチル)プロピルトリ−メチルアンモニウム、および塩素などが挙げられる。ダントロレン遊離酸も使用することができるが、その溶解過程において、遊離酸の製剤の溶解は、ナトリウム塩などの塩の場合に比べて遅く、確実性が低いということがわかっている。ダントロレンの好ましい塩は、ダントロレンナトリウムであり、この塩は現在市販されている。
【0064】
本発明によって実現される安全性および注目すべき携帯性およびより適切な包装サイズは、各外科手術室、救急室のみならず、他の特別なまたは外科的環境、さらにはあらゆる原因のMHの処置のために、また他の症状の処置のために必要を生じる非外科的および非慣習的な環境へのダントロレンのより広範な利用性を促進する。本発明のコロイド状ダントロレン製剤によって処置しうるこのような症状としては、特に制限されないが、さまざまなタイプの虚血、熱射病、“エクスタシー”などの娯楽性ドラッグの過剰摂取またはそれへの反応、神経弛緩薬性悪性症候群(NMS)、セントラルコア病(CCD)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、King-Denborough症候群、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症(MDD)、シュワルツ−ジャンペル症候群、福山型先天性筋ジストロフィー、線維筋痛、ベッカー型筋ジストロフィー、周期性四肢麻痺、先天性ミオトニア、筋小胞体アデノシントリホスファターゼ欠損症候群、バーケット氏リンパ腫、乳幼児突然死症候群(SIDS)、骨形成不全症、グリコーゲン貯蔵病理、ミトコンドリア性筋障害、ならびにアルツハイマー病、ストリキニーネに対する毒性反応、フェンシクリジン、ヘムロック、アンフェタミン、MAO阻害剤、テオフィリン、LSDおよび他の幻覚剤およびコカインに関連した小胞体における変化などが挙げられる。
【0065】
本発明は、通常、解熱処置との併用により、筋肉弛緩として、また脳骨髄温度の上昇に直面した時の神経保護薬として、発作および高熱に付随する筋収縮における潜在的利点がある。本発明は、妊娠期間中のMHの予防処置においても使用することができる。広く言えば、本発明は、特に制限されないが、たとえば携帯性、使用の容易性、投与における確実性、投与の瞬時性、不溶固形分が大量に存在しないこと、および神経系合併症直面における改善された安全性など、低容量の投与が顕著な利点となるいかなる条件においても適用することができる。
【0066】
本発明のコロイド状ダントロレンは、調製および投与に要する時間が極めて短い。この時点で、コロイド状ダントロレンは、注射用に準備された安定な懸濁液として、あるいは10ml以下の滅菌水中に再構成して注射用に懸濁液に準備するための粉末として、5mlまたは10mlバイアル瓶中3%−8%(30−80mg/ml)として利用可能となることが想定される。治療投薬量のすべては、ボーラス注入として1分未満で到達し、顕著に過剰到達しなければ、投与の推奨速度である1g/kg/minを容易に達成することができると期待される。再構成可能な粉末は、注射用滅菌水との一体化および振盪または渦動により再構成されるであろう;注射前のろ過が望ましい。本発明の再構成可能な粉末は、一人の臨床医によって、1分未満で、注射安全性の分散液に再構成することができる。
【0067】
本発明のコロイド状ダントロレンは、現在のpH9.5でのDantrium(登録商標)製品の溢出に付随した組織損傷および静脈血栓症の危険性を低減するように、より生理的なpHで調製されてもよい。本コロイド状製品の低ボーラス容量と組み合わさったこの態様は、よく推奨されているような中心静脈内よりもむしろ、細径針(24ゲージ)による末梢静脈内注射を可能にする。
【0068】
ダントロレンは、筋弛緩剤として広く知られている。したがって保護的な対策として、気管内挿管および機械的人口換気を行うべきであろう。この技術は、外科的介入のための全身麻酔の間、および外傷性傷害患者の回復処置中の過呼吸を助長するために一般的に実施されているが、現状ではダントロレンを投与することが実施不可能または禁忌であったりする場合があるであろう。ダントロレンに対し個人的に公知の有害作用のある場合には、その使用は禁忌である。
【0069】
自己注射器、とりわけ野外用のそれの中に予め装填されるか、されることができるダントロレンまたはその1つの塩の注射安全性分散液の提供は、本発明の範囲に含まれる。そのような製剤/器具の適用は、たとえば化学的または生物学的戦争兵器が脅威となるかもしれない軍隊またはテロリスト活動領域において特に重要ということができる。
【0070】
ダントロレンおよびその塩に代わるか併用される他の薬剤
ダントロレン塩に代替のまたは添加される他の薬剤は、別のコロイド製剤として、または本明細書で記載されたコロイド状ダントロレンとの併用において、有用性のある同様な保護をもたらすことができる。このことは、薬剤がダントロレンナトリウムと同様な薬理作用をもつ場合、特にMHからの回復をもたらすことが知られているとすれば、とりわけ該当する。したがって、ライアニジン(ryanidine)受容体に作用し、それを介して細胞内カルシウム放出作用する、たとえばヒダントイン基および/またはニトロフェニル基を含有する化合物などのダントロレンの薬理学的活性同族体は、本発明に含まれる活性がある、とりわけMHの徴候を低減させるかもしれないと期待される。有益な例として、たとえばアズモレンなどの特定の類縁物は、薬理学的にダントロレンに類似し、本発明において使用してもよいが、ダントロレンはアズモレンよりも好ましいであろう。なぜなら、後者は悪性高体温症(MH)の処置において限られた効能しか示さないが;対照的に、ダントロレンナトリウムはMHのための最も有効な救急薬であるためである。新規なダントロレン類縁物および化学的同族体は利用可能となろうことも予見され、また、そのような新規な薬剤が同様な薬理作用をもつという点で、特にMHの徴候を脱するという点で、当該薬剤は本発明の範囲において使用することができることが期待される。
【0071】
ダントロレンおよびその塩は好ましい薬剤であるが、ある種の他の薬剤または化合物種、特にカルシウムを細胞内的に調節することが知られている薬剤は、ダントロレンナトリウムの使用が禁忌であるような状況または条件において潜在的な利点となり得る。薬物分類としてのカルシウムチャネル阻害剤は、そのような代用品の一例である。そのようなカルシウムにおける薬物の効果がダントロレンのそれと同等であり得るならば、ダントロレンは、本明細書で着目している処置において重要とされ、かつそのような代替品では成し遂げられない他の薬理学的効果をもつと認められるべきである。
【実施例】
【0072】
実施例1
2.40g量のダントロレンナトリウム(CarboMer社合成)を、予め0.24gmのポリビニルピロリドン(PVP)を溶解したpH10緩衝液27.60gm中に加えた。その後、この混合物をマイクロフルイダイザー モデル110L(マイクロフリディック(Microfluidics)社,ベドフォード,マサチューセッツ州)にかけ、カエサー(Kaeser)エアコンプレッサーで粉末化した。圧縮圧15,000psiにおいて、各4分ずつの4サイクルでマイクロフルイダイズした。
【0073】
終了時に、40倍対物レンズをもつ位相差光学顕微鏡で観察し、その粒径は薬物結晶の高分画によるサブミクロンであることが認められた。その後、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)N4プラス光散乱粒度分析計を用いて粒径分布を測定した。平均粒径の測定値は407nm、標準偏差21nmであり、検出ダストは0.0%;これら情報とともに、極めて制御された粒径であり、かつ静脈注射に適合する粒径範囲であることがわかった。さらに、粒子上のゼータ電位を、ベックマン・コールターDELSA 440SXで測定し、平均−54mV電位と、−80ないし−25mVの間に90%超の集団が存在していることが示された。このような強いゼータ電位は、イオン性安定化を介して充分に長期間の分散安定性をもたらす。
【0074】
このプロトコルに従い調製されるダントロレン製剤については、240mg投薬量のダントロレンナトリウムがほぼ3ml容量内で送達され得る。
【0075】
実施例2
窒素充満したグローブボックス中で、0.267g量のダントロレンナトリウムを、15mlチューブに加え、加熱滅菌したグリセロール3.164gmおよびN,N-ジメチルアセタミド1.046gmで覆った。撹拌、渦動および超音波の組み合わせにより、上記ダントロレンをこの混合物中に溶解した。その後、4.495gm量のポリエチレングリコール200、および1N NaOH(0.173gm)を加えた。この混合物は、ダントロレンナトリウムがまさに溶液中に存在している(すなわち溶解した)が、次いで注射用1ml滅菌シリンジ中に装填され、生きた動物試験に成功裡に使用した。
【0076】
このプロトコルに従い調製されるダントロレン製剤については、240mg投薬量のダントロレンナトリウムがわずかに約3ml容量内で送達され得る。ジメチルアセタミドは、現在、一つの注射可能な製品中に使用されており、今まで行われた動物試験は、この製剤が本明細書で定義されるように注射安全性であることを示唆する。
【0077】
実施例3
最初に、ダントロレンナトリウム0.101gmおよび蒸留水100ml中にベンザルコニウムクロライド0.319gmを混合して調製したベンザルコニウムクロライド水溶液20mlでオーバーレイすることにより、ダントロレンナトリウムの5mg/mlコロイド分散液を調製した;したがってダントロレンナトリウムは水中溶解度(0.4mg/ml未満)を大きく超えるレベルであって、ほぼすべてが溶解ではなく分散されている。次いで、混合物を、ポリトロン(Polytron)ホモジェナイザーにより、高速で3分間ホモジェナイズし、サブミクロン粒子を得た。ベックマン・コールターのドプラー電気泳動レーザー回折散乱分析装置(DELSA)を用いるゼータ電位の測定は、+28mVのゼータ電位を示した。この電荷は、ダントロレンナトリウムは、当然、アニオン電荷であることから、ベンザルコニウムクロライドの安定化層の吸着によることが明確である。ベンザルコニウムクロライドは、安全な注射剤としてFDA認可されている。
【0078】
実施例4
この実施例では、50mg/mlの高濃度のものについて、ダントロレンナトリウムの分散された結晶上の安定化層としてリン脂質系リオトロピック液晶を使用した。これは、まず、“立方晶相”リオトロピック液晶を調製し、高PC大豆リン脂質1.595gm、α−トコフェロール1.121gmおよび蒸留水0.788gmと混合することにより、調製した。0.349gm量のダントロレンナトリウムを液晶中に磨砕した。この混合物0.999gmに、実施例3に記載のベンザルコニウムクロライド溶液20mlを加え、混合物をポリトロンホモジェナイザーにより、高速で3分間ホモジェナイズし、サブミクロン粒子を得た。この例におけるベックマン・コールターのドプラー電気泳動レーザー回折散乱分析装置(DELSA)を用いるゼータ電位の測定は、+72mVのゼータ電位を示した。先の実施例におけるような+28mVにおけるピークの形跡はなかった、このことは、ダントロレン結晶がリン脂質リッチな材料で被覆されている、換言すれば、ベンザルコニウムクロライドリッチの外層をもつことを示している。
【0079】
実施例5
新規な2つの低容量ダントロレン製剤を、ブタ伝染性悪性高体温症の救急薬として試験した。各製剤は、血流中に注射するために予め溶解する低容量コロイド懸濁液であった。ダントロレンナトリウムおよびダントロレン遊離酸の両方とも、Dantrium(登録商標)IVに対し、成人用として10ml未満の容量での1回のボーラス投与注射をただちに可能にすることができる潜在的な面倒のない代替処置物品として評価された。
【0080】
本研究の初期の目的は、悪性高体温症感染性ブタにおける悪性高体温症の危機に対する処置において、低容量コロイド懸濁液ダントロレンの効果を評価することであった。我々は、微細化したダントロレンのナトリウム塩および遊離酸の製剤は、体重に基いて算出された2.5mg/kgの処置投薬量をボーラス静脈注射すれば、MH危機を脱するであろうとの仮説を立てた。
【0081】
この研究は、初期のいずれの研究も勿論であるが、BASエバンスビル動物実験委員会(Evansville Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を得て実施された。各研究は、一試験センターの一試験官によるランダム、非盲検の比較研究で実施された。
【0082】
最初の予備研究では、2つのダントロレンナトリウムおよび遊離酸製剤を、SDラット12匹において、それぞれの安全性および効果について評価した。投与の前に、体重測定し、各ラットは側尾静脈にそれぞれ試験品のボーラス投与注射を受けた。全動物は、投与直後から30分まで継続的に、および解剖までのほぼ1,2,3,4,7および24時間時に再び観察された。
【0083】
実施例6
第2の予備研究では、10頭の非MHS国産ブタ(ヨークシャー交配種)を使用して、ダントロレンナトリウムおよび遊離酸の単剤の筋弛緩を生じ得る相対的有効投薬量を決定した。ネルソン(Nelson)およびフリューエレン(flewellen)により最初に記載された方法を、高性能の筋張力測定装置なしで追試した。全てのブタは、AALAC原理にしたがって飼育し、温度および湿度が制御され、ろ過空気が供給され、12時間毎に射光される個室中、各ランでの研究に先立って少なくとも5日間馴化させ、毎日2回、無制限に給餌した。動物は投与の6時間前に固定した。各ブタには、硫酸アトロピン(0.5mg/kg)、ケタミンHCl(20mg/kg)、キシラジン(2.5mg/kg)およびマレイン酸アセプロキサジン(0.2mg/kg)を予備投薬した。静脈内経路は適切な耳静脈の挿管を確保した。その後、各動物はチオペンタール(10.0mg/kg)を受け、つづいて気管内挿管された。
【0084】
一旦小屋に入れ、各ブタは、それぞれのダントロレンナトリウムまたは遊離酸いずれかが、投薬量を増加していく方法で投薬された。静脈内1.0mg/kgの初期投薬量を投与し、その後2分おきに0.5mg/kgボーラス投与を繰り返し、例外的に一頭のブタには、累積投薬量が10.5mg/kgとなるようにボーラス投与を付加的した。ダントロレンの弛緩効果に対する筋肉応答性として、TOFガード(Guard)を用いて前肢の四連反応(TOF)を観察した。20mVで0.5秒間隔の刺激を送った。刺激に応答する筋収縮がもはや確かめられなくなるまで、各投与レベルについて四連反応を観察した。この研究の終わりには、ペントバルビタールナトリウム溶液を静脈内送達させて麻酔しながら各ブタを安楽死させた。
【0085】
この研究で得られたデータを分析した。上記ナトリウムおよび遊離酸各製剤と同族のED95は、実施例7に示されるように、体重に対する投薬量が2.5mg/kgと決定され、MHSブタにおける研究が進められた。
【0086】
実施例7
ブタのハロタン/スクシニルコリン誘発悪性高体温症の処置における2つの低容量、高濃度コロイド状ダントロレン製剤の効果の研究において、DNA分析によりハロタン感受性対立遺伝子(すなわち11遺伝子型)がホモであると示された9頭のブタを研究した。研究期間の初日、ブタをランダムに以下の群に振り分けた。
【0087】
【表1】

【0088】
各ブタには、硫酸アトロピン(0.05mg/kg)、ケタミンHCl(20mg/kg)、キシラジンHCl(2.5mg/kg)およびマレイン酸アセプロマジン(0.2mg/kg)をIM注射して麻酔した。チオペンタールナトリウム(10mg/kg)および静脈内輸液(0.9%生理食塩水;ほぼ4.0mL/kg/hr)を、カテーテルを介して耳静脈内に投与した。動物を気管内挿管し、人口換気を開始した。気管内挿管された動物は換気により充分な酸素供給を確保した。麻酔した動物は、呼気終末二酸化炭素(ETCO2)、動脈内血圧、末梢血酸素飽和度(SpO2)、心電図、および中核体温を観察した。
【0089】
安定化した後、ハロタン2%(ほぼ2MAC)の投与を開始した。ハロタン投与のほぼ15分後、スクシニルコリン(2mg/kg)を、カテーテルを介して耳静脈内に投与した。動物を気管内挿管し、人口換気を開始した。MH危機の確定診断は、以下のパラメータの少なくとも2つの存在が記録されることにより決定した:ETCO2>70torr、直腸温度の上昇>3℃、動脈血pHが7.25以下および/または顕著な筋硬直。MHハロタンの開始につづくドキュメンテーションは中断した。ブタは、静脈内投与により、処置なし(コントロール)か、試験薬(DFAまたはDS)のいずれかを、先の正常ブタにおける研究で確立されたED95(2.5mg/kg)と等価の投薬量で受けた。MH危機の進行または回復を、開始してから最初の20分間、ほぼ1分間隔で、その後中断(つづくなら)するまで2分間隔で評価した。神経筋遮断薬を、TOFガードを用いて、前肢の一本における四連反応(TOF)痙攣を測定することにより観察した。TOFのための刺激は、各パルスが0.5秒ずつずれた四連反応パルスとして送った。しかしながら、痙攣応答は強い筋硬直に隠されてしまい、TOFの信頼性の高い測定はできなかった。処置後、生存ブタ(DFAおよびDS)は麻酔を醒まさせ、処置後ほぼ120時間で安楽死させた。
【0090】
すべてのブタは、誘発剤、ハロタンおよびスクシニルコリンに曝露した後、MHを発現した。MH症状の出現の典型的な徴候としては、中核温度の上昇、ETCO2>70mmHgの高炭酸症、動脈血pHの一貫した低下を反映したアシドーシス状態、顕著な筋硬直、重度の頻拍および著しい低血圧などが挙げられた。筋硬直、頻拍および著しい低血圧の群は、脈圧低下による徴候としての潅流低下の状態をもたらす。MH危機が観察されたと決定された後、ブタは、静脈内投与により、処置なし(コントロール)か、試験薬(DFAまたはDS)のいずれかを受けた。コントロールブタは、MH症状の出現が、自然に消退していないと決定された後、安楽死させた。DFAまたはDSを用いた処置後、すべての動物におけるMH危機は、ただちに進行が止まった。ブタは、呼吸器が取外され、抜管され、各自のケージに返された後、ほぼ120時間の回復期間が与えられた。各自のケージに戻った後12〜24時間観察したところ、処置を受けたどの動物も、認知的、神経学的、または神経筋の機能障害の徴候がなかった。処置したブタのすべては、最終屠殺時に異常がないことが、主任研究員によって判断された。
【0091】
実施例8
実施例7におけるブタは、各自のケージに戻った後12〜24時間観察したところ、処置を受けたどの動物も、認知的、神経学的、または神経筋の機能障害の徴候がなかった。
【0092】
筋肉運動の衰えを伴うまたは伴わない認知能力および機能の異常ならびに神経精神病学的変化の現象は、麻酔医、心臓胸郭部外科医、およびある種の他の医療関係者の間で“ポンプヘッド”と通称されている。ポンプヘッドはMHに関連していない。しかしながら、発明者は、MHの患者の血流速度がゼロではないが、明らかに正常とは異なる血流異常があることに注目する。圧の低下に現れる血流障害は、最大血圧のベースラインから10%を越える減少か、または付随した平均動脈圧の低下であるが、95%未満の減少が、これとみなされる。脈変動または血圧の異常上昇もまた血流異常とみなされる。観察された結果をみると、実施例7で記載するような好ましい低容量、高濃度の形態で、あるいは別の、臨床で一般に使用される、Dantrium(登録商標)静注(P&G製薬)のための専門的製品標識中に記載された標準形態での、ダントロレン、またはその1つの塩、同族体または類縁物の予防的投与はポンプヘッドの症状を予防または制限することができると、本研究者は想定している。理論的裏付けはないが、ダントロレンは、細胞内カルシウムの安定化および他の付随作用に関連して働く、単一およびいくつかの細胞内および/または代謝メカニズムの相乗的組合わせを介して、ポンプヘッドの神経系合併症に予防的に働きかけるであろう。またダントロレンは、襲撃に対してある程度適時に投与されれば神経系合併症を軽減しうる治療に適切であるともいえる。
【0093】
心臓胸郭部手術外科医は、長い間、遮断された冠動脈のための心臓切開、弁再建、大動脈弓および動脈瘤の修復、さらには心肺バイパスを要する他の手術を行ってきた。成功した手術の転帰はよくある一方、心肺バイパスを要する処置に付随する記憶、集中力、注意力、および感情の欠損も多い。神経認知欠損の発生率はとてつもなく高い。公表された報告は、全CPB患者のまさに50%超が、手術後にある種の認識欠損を経験している。合計でほぼ35%のバイパス後患者は、継続して6週間の欠損を示し、24%はバイパス後1年間欠損を病んだ。報告されたCPBに原因すると考えられる神経認知欠損の発生率は、バイパス後5年でほぼ54%である。CPBに付随した神経認知欠損の実際の内容および病因論は、完全に理解されてはいないが、いくつかの制御された有望な研究においてよく研究されてきている。
【0094】
医原性損傷、たとえば心肺バイパスから生じる“ポンプヘッド”の場合などから誘発される神経認知欠損、または外傷性事故は、複雑で多面的な損傷を示す。何人かの研究者は、神経細胞損傷が、低酸素症、虚血、低糖値、または不適切な血圧または不適切な血流または脈動圧などのあいまいな症状への応答で生じることがあることを示唆してきた。論文は、さまざまな要因の原因および効果および神経細胞損傷または神経細胞死との潜在的関与を個別的に提示するといえる。たとえば、既定量の“冷たい”大脳組織はエネルギー要求が低く、そのため、体温における同既定量に比べ、酸素およびグルコース消費が少ないことは事実として知られている。心肺バイパス中に大脳組織を冷却することの1つの主な理由が、この組織の代謝要求を低減させるためであることも事実である。冷却細胞は、CPB時、血液、酸素、グルコースおよび他の栄養素の次善の供給のみならず、代謝能力および生理的排出物の低減を、よりよく存続しつづけるという概念である。さらに、冷却された“神経細胞保護”状態からの再温暖化時、個別細胞の生理学的要求は、酸素および栄養素の供給を、CPBの正常流下で送達されるよりもよく超過することは事実に近い。しかしながら、神経認知欠損(ポンプヘッド)の発生に潜む根本的なメカニズムは明らかになっておらず、またその最善の処置方法も明らかではない。
【0095】
他の研究者は、神経細胞損傷または死の潜在的原因として、特定のイオンチャネルまたは受容体;たとえばNMDA、非NMDAイオンチャネル、ナトリウムチャネル、カルシムチャネルおよびその他と関連付けてきた。さらに他の者は、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、カイナック酸、およびその他の毒性剤となりうる物質の存在または堆積を挙げてきた。
【0096】
多くの潜在的受容体媒介の生化学的メカニズムは、ポンプヘッドの中心的起源を説明しうるものとして文献中で論議されてきた。本質的に、種々の論理の見解は、それぞれそこで優遇するメカニズムがあり、通常、特定受容体か、さらに特定受容体の特定サブユニットを中心とし、Chenardの米国特許出願公開第2002/0072485号およびChenardによる他のケース、またはKozachukの米国特許出願公開第2003/0045450号にみられる。
【0097】
それゆえ、1つの論理の見解は、細胞外領域から細胞内にカルシウムイオンの流入を媒介することができる、N−メチル−D−アスパルタート(NMDA)受容体に焦点を当てている。この論理の見解は、Chenardの出願によって体系化されたものであるが、脳へのグルコースおよび/または酸素の供給不足による神経細胞の損傷に対する効果的な保護手段は、NMDA拮抗薬による、適切なサブユニット選択性の単なる処理である。しかしながら、これは、細胞内カルシウムイオンの比較的わずかな増加が小胞体からのカルシウム放出のトリガーとなりうることさえ意味するカルシウム誘発のカルシウム放出(CICR)の理論を含む理由であって、そのような単純な試みは失敗としかいえないであろうという理由、を見つけだすにはまさに容易な事項である。MakarewietzらのJ. Neurochem., 85(suppl.2):20を参照。本発明者は、これを、無傷のryanodine受容体メカニズム、すなわちカルシウムイオン流入に対するNMDA-Rメカニズムの不完全遮断かまたは他の経路に対して、カルシウムイオンのための豊富な細胞内ソース−ER−の結果として認識している。要するに、CICRメカニズムの観点において、NMDA-Rメカニズムのほぼ完全な遮断は、細胞内カルシウムイオン放出の開始を阻害することが求められであろうし、もし完璧に遮断されたとしても、細胞内貯蔵からのカルシウム誘発のカルシウム放出のための他の経路は、どのような場合でも遮断される必要があろう。
【0098】
他の論理の見解は、細胞内に駆るイオンの流入を媒介することもできるが非NMDA受容体であるグルタマート受容体に焦点を当てている。たとえば、Bokesch,Am. Soc. Anesth. Newsletter, 1996,第60(8)巻参照。上記の関連では、CICR、これはカルシウム放出を開始するための他の並列的なメカニズムがまさに存在するといえ、NMDA-R拮抗薬を介して遮蔽され得ない。
【0099】
さらに他の論理の見解は、神経細胞のアポトーシスに関連してカイニン酸(KA)媒介メカニズムに焦点を当てている。すなわち、カイニン誘発神経細胞損傷は、NMDA受容体拮抗薬MK801によってでも膜L型カルシウムチャネル拮抗薬ニフェジピンによってでもはなく、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾール-4-プロピオン酸(AMPA)受容体拮抗薬CNQXによって防止される。Li SY,Ni JH,Xu DSおよびJia HT,Neurosci Lett. 2003年12月4日;352(2):105-8参照。換言すれば、NMDA論理の見解との対比において、これらの著者は、単なるNMDA拮抗薬の適用では治療しえない神経細胞損傷のカルシウムイオン放出メカニズムの証拠を見出した。
【0100】
最近、神経細胞損傷および認知欠損に寄与するカスケード状態のどの過程も標的にする薬が開発下にある。たとえば、グルタマート放出阻害剤、NMDA受容体拮抗薬、ナトリウムおよびカルシウムチャネル遮断薬、遊離ラジカル捕捉剤、アポトーシス阻害剤などが挙げられる。Ca2+媒介メカニズムの傘下ではあっても、神経細胞損傷および認知欠損が血流変化および体内または神経温度の変化を伴って生じることによる多重的メカニズムを認め焦点を当てたものは見当たらず、したがって、多くのこれらメカニズムは一斉に遮断されるべきであるという結論も認められず、この結論を受けて解明される薬理学的診療の要求もない。具体的に、ダントロレンの重要な治療能力および多くのこれらメカニズムに対する同様な薬理学的活性が、これまで認められてきたとはいえない。本発明は、“ポンプヘッド”および付随傷害の薬理学的な予防および治療は、細胞内カルシウムの初期調節剤としてダントロレンを使用すべきであることに重点を置く;しかしながらダントロレン(またはその塩、類縁物および同族体、これらはryanodine受容体拮抗薬である)以外で治療指数の低下および/または次善の予防または治療となるものを広くなんでも用いる、ダントロレンと他の薬剤との組あわせは、本発明の範囲内である。
【0101】
ダントロレンが小胞体から細胞内カルシウム貯蔵の放出を遮断することは、よく理解されている。しかしながら、ダントロレンは、神経細胞損傷および認知機能に影響を及ぼす少なくとも3つの付加的なメカニズムの効果的な阻害剤であることが、別々のグループからの別々の発表として直接的にまたは非直接的に示されてきた。FrandsenおよびA Schousboe(Journal of Neurochemistry,第60巻,1202-1211)による細胞培養研究からは、ダントロレンがグルタナートおよびNMDA両方により誘発される毒性を阻害することを証明する。さらに、細胞培養中、FrandsenおよびA Schousboeは、ダントロレンが、Ca2+流入とは独立に細胞内貯蔵からCa2+放出を刺激するキスクアラート(QA)の毒性をも阻害することも示した。さらには、ルーマニア研究者による2002年の公表(Popescuら、J. Cell. Mol. Med.6(4):555)は、ダントロレンがカイニン酸媒介アポトーシスメカニズムを阻害することを示した。
【0102】
本発明者は、心肺バイパスおよび他の医原性脳脊髄障害の場合と同様に神経保護が要求される異常な血流の筋書きとの関連において、ダントロレン投与が少なくとも4つの相乗的予防作用をもたらすことを最初に認めた。すなわち本発明者は、麻酔および体外的換気を用いる手術、たとえばCPB後にいくらかの患者が経験するか、あるいは低血圧症または低体温症を誘発させた場合の神経認知および運動の欠損は、1つの事象または因子が、一つで主要な原因因子ではないとしても一群の要因の結果であり、ダントロレンは、このような周囲環境での広範な防止をもたらす方法において、今のところ多重メカニズムの処置に唯一能力をもつことを認めている。
【0103】
末梢神経系、または視神経などの頭蓋神経の研究から導かれた結論は、一般に、ポンプヘッドおよび脳脊髄組織の事象において、広く疑問の余地のある値である。脳卒中などの病歴のある手術患者は、脳卒中歴のない患者に比べておそらくポンプヘッドを苦しないという事実があることを強調する。78回臨床および科学会議(フロリダ州タンパ)p.123に発表されたWarner,Int. Anesth. Res. Soc.2004レビューコースレクチャーを参照。この理解のための1つの基本は、脳脊髄神経組織との対比として、頭蓋神経の生理にある。
【0104】
具体的には、12対の頭蓋神経、CN I(嗅神経)およびII(視神経)を除き、脳幹に由来し;中脳、橋(pons)および延髄で構成される。頭蓋神経は、一般的に、感覚、運動または混合(感覚および運動の両方)のカテゴリーに分けられる。頭蓋神経は、脳幹上に位置する核小体と、側面に位置する感覚核小体と、より中心に位置する運動および混合核小体とに由来する。感覚核小体は、末梢からのその感覚信号を受けるが、感覚受容器細胞体は核小体自身中には決して存在しない。むしろ、それらは、ガングリオン中、CNSのすぐ外側に位置している。
【0105】
頭蓋神経は、PNS要素として、かなり小孔の動脈を介して、その長さにわたって血流を供する、専用の動脈血供給によって付随される傾向がある。典型的に、頭蓋神経は、側副血流の重要な源を一切欠く。一例として、視神経は、1.5mmの平均径をもち、約30mmの眼窩内長さをもち、その全長にわたり専用血管を保持する。眼動脈は、内部頸動脈の末梢端から生じ、視神経とともに眼の後面に向かって延在する。後第三の視神経は、
前交通および前小脳動脈から生じる血管によって供され、一方、前3分の2の神経は網膜中心動脈から供される。この動脈路の閉塞は、神経細胞を含むこの器官の組織への血流の減少または全停止となる。このような虚血事象の効果の特異的な例は、一過性黒内障として知られる症状が証拠である。ここで、網膜中心動脈は、栓塞(または複数の栓塞)により部分的または全体的に閉塞されると、一過性(または長期継続)片眼性失明をするか、他の視野認識の障害を生じる。
【0106】
頭蓋神経との対比において、多くの脊髄の感覚および運動束は、その血液供給を、豊富な側副循環をもつ多重血管を介して受け取る傾向がある。頸部および胸部領域にわたり、脊髄は、その血流の大部分を、一本の前脊髄動脈および2本の後脊髄動脈ならびに肋間動脈からの分枝から側副供給および下行胸および腰動脈を介して受けとる。脊髄への血流供給の本質は、一過性塞栓現象からの虚血の可能性を低減する。
【0107】
脊髄および動脈圧迫に伴う外傷の場合、または動脈瘤修復中の外科的大動脈遮断の場合には、脳脊髄への不充分な血流を生じ、ある神経細胞損傷をみちびくことがある。これは、アダムキービッツ(動脈小根マグナ)動脈を介して底部側第三脊髄へに血流がコンプロマイズされる間の手術において特に明らかである。経過的な術後損傷および術後対麻痺の事象は、それぞれ11%および6%であると報告されている。高い方の値は、遮断時間が30分を超過時で報告されている。伝統的な欠損は、運動機能および“ピンプリック(pinprick)”感覚の欠損を伴い、自己受容および振動感覚の保護を伴う、前脊髄動脈症候群のものである。
【0108】
上記に対する非正常体温の状態の役割と関係は重要である。異常体温の状態は、医療施術者により容易に誘発される。低体温の非正常体温状態は、故意に、心肺バイパスにおけるように、または非故意に、体熱の消失に対して保護すべき適切な保護手段が用いられないところの両方で、全身麻酔下で、ただちに誘発され得る。
【0109】
多くの潜在的合併症は、血液損失量の増加、感染および心筋ストレスの増加に伴う凝固機能の変化を含む、意図的ではない手術中の低体温に付随する。このように麻酔の通常業務は、多くが、大部分の操作手順の間、正常体温の保持を遂行するために発展してきた。
【0110】
今日、心肺バイパス施術中の超低体温循環停止の場合を除き、手術中の低体温を改善する結果を示すわずかな証拠が存在する。16〜18℃の範囲の中核温度で、1時間までの長さの完全な循環停止は、成人脳になんらかの保護を与える;患者は神経学的に回復することが期待されるが、必ずしも神経認知的に無傷ではない。別に、温度が典型的に32℃〜34℃の範囲である軽度ないし中程度の状態が、CPB中いくつかのランダム試行が評価され、患者になんらかの利益があれば、示された。CPBの間、神経保護技術として、軽度から中程度の低体温症を用いることの問題は、中核温度の低下だけでなく、通常高温血を脳脊髄系に送達する迅速な再温暖化サイクルも求められ、高温血が供されれば潜在的な利点はすべて無効にするため、評価が難しいことである。
【0111】
軽度から中程度の低体温症は、集中治療室にいる外傷性脳損傷をもつ患者を処置するための潜在的な治療策略として、大きな期待をもってランダム試行において評価された。この研究において、低体温症に帰する利点はなく、事実、老齢の患者はランダムに低体温群に割り当てられた時多くの合併症に苦しんだ。
【0112】
高体温症である非正常体温状態は、急性脳損傷に共通の続発症である。動物研究では、さまざまな急性脳損傷の間または後、正常からわずかに1℃違う範囲に温度は、神経学的転帰が明らかに悪化した。高体温症の存在は、急性脳損傷における乏しい神経学的および神経認知的転帰の確かな予後指標とみなされてきた。我々は、高体温症の神経学的または神経認知的転帰に結びつきが、なにも利益、理論などをもたらさないことと理解する。
【0113】
NMDAおよび非NMDA受容体について、脳脊髄系の冷却か再温暖化、または冷却および再温暖化両方の周期的組合わせは、これら潜在的に有害な受容体メカニズムを発現させることになるといえる。また温度の変動は、冷却および再温暖化手順の過程中いつ与えられたものでも、脳脊髄系の特定の需要バランズを外れる酸素およびグルコースなどの栄養源の不均衡に原因するともいえる。
【0114】
CPBおよび付随損傷における神経学的認知傷害の予防および治療のための、単一の、安全な薬剤、すなわちダントロレンまたはその塩または同族体の1つの適用は、想像される組み合わせ方法を越える根本的な利点をもつ。ダントロレンナトリウムの安全記録および治療指数は、きわめて好都合であることから始まる。本発明の範囲中、治療薬物(または混合物)の“治療指数”は商A/Bと定義され、AおよびBは以下のように定義される:Aは、ラットへの腹腔内投与時の薬物のLD50(死亡率50%をもたらす投薬量)であり、Bは、5mg/kgカイニン酸が与えられたラットの皮質において、腹腔内投与時(i.p.)アポトーシス核の50%低減をもたらす投薬量であり、Popescuら[J. Cell. Mol. Med.6(4):555(2002)]中に記載されたプロトコルに従う。
【0115】
A量としては、780mg/kgとすることが示されており(Fournier, P, 1982,ダントロレンIVの毒物学,薬理学,薬理化学的調査書類,リヨン,Laboratorie Obercal)、B値は、上記したPopescu論文にしたがえば10mg/kgであり、本発明で定義されるダントロレンの治療指数は、78として算出される。10を超える、特に約50を超える治療指数は、本発明の説明中、特に薬物相互作用がすでに複雑であって、投与した薬物量と致死量との間に大きな安全領域(少なくとも1ケタ)が当然として強く望まれる外科処置の説明において、重要であるとして記載されている。たとえば、ダントロレンは、7.5mg/kg程度の高投与時でさえも心肺機能低下を起こさない。このような機能低下は、組合わせによる薬物のどれかによって引き起こされるとすれば、心肺バイパス手術の説明中では、当然、潜在的に有害とされる。カイン類(リドカイン、バピバカインなど)の心臓毒性、および低い治療指数はよく知られているため、これは確実に、局所麻酔(ナトリウムチャネル調節)などを示唆した組合わせに該当する場合である。投与ダントロレンは、カルシウムチャネルブロッカーとの組合わせた時、極めてまれに、重度の心肺副作用を起こす。対比して、Jensen(米国特許出願公開第2003/0092730号)に記載される組合わせで使用される薬物、たとえば、“...CNS機能低下、さらには他の認知および/または神経精神病学的副作用を生じさせる...可能性がある”トピラマート(topiramate)(Topamax)などが挙げられる。(2001米医薬品便覧,2394ページ)。
【0116】
CPBまたは付随状況による認知欠損−ポンプヘッド−の予防は、先在疾患の治療によって多くの基本的方法が異なる。悪性高体温症を伴う場合のように、損傷の危険性を高める優勢遺伝または他の因子はなにも知られていない。予防段階は、先在神経疾患なしと解釈されるため、このような段階は、納得しうる利益/危険比の規格にしたがうための高度な安全性が必須である。先在症状の診察に由来する明らかで確実な増加は存在しない。また医療行為の現在の傾向において、予防は、通常治療に次ぐ役割を果たす。
【0117】
低容量/高濃度ダントロレン製剤の神経保護効果は、Mackensenら(Anesthesiology.2001年12月;95(6):1485−91)らによって記載されたラットにおけるCPB回復モデルを用いてみることができる。たとえば、3群のラットに、ローラーポンプおよび膜型人口肺を用いて、60分の正常温度(37.5℃)非拍動心肺バイパス(CPB)を課す。第1群のラット(n=10)は処置を受けない。第2群のラット(n=10)は、低容量ダントロレンIV,2.5mg/kgで予備処置する。第3群のラット(n=10)は、低容量ダントロレンIV,5.0mg/kgで予備処置する。第4グループ(第4群)は、擬似手術コントロールの役目を果たす(n=10)。
【0118】
神経学的転帰を、CPB後1,3および12日に、標準化された機能試験により評価する。モリス水迷路(視覚空間学習および記憶の指標)における水中プラットフォームを見つけ出す時間(または潜時)で定義される神経学的転帰は、CPB後3〜12日から毎日評価する。この研究下、神経学的転帰は、3つの測定区間すべてにおいて、第1群は、第2,3および4群よりも劣るにちがいない。また第1群は、第2,3および4群に比べて水迷路潜時も長いにちがいなく、これはCPB後神経認知機能障害が著しいことを意味する。この研究は、齧歯目モデルにおけるダントロレン予備処置が、2.5mg/kgおよび5.0mg/kgのいずれでも、CPB付随の神経学的および神経認知の機能障害を弱めると解釈すべきであろう。
【0119】
ダントロレンの神経保護効果は、この動物モデルにおける保護を示す前述の薬剤、キセノン(Maら、Anesthesiology.2003年3月;98(3):690−8)のそれと比較してもよい。この比較では、外科手術につづき、ラットをランダムに各群10匹ずつの4群に分けられよう:(第1群)擬似ラットは挿管されるが非拍動心肺バイパス(CPB)は受けないであろう;(第2群)CPBラットは、30%O2,65%N2および5%CO2の混合ガスを受け取る膜型人口肺を用いて、60分のCPBが課せられるであろう;(第3群)CPB+ダントロレンラットは、第2群と同じ混合ガスを用いる60分のCPB施術に先立ちダントロレン(10.0mg/kgIV)を15分間受け;そして(第4群)CPB+キセノンラットは、30%O2,60%キセノン,5%N2および5%CO2の混合ガスを受け取る人口肺を用いて60分のCPB施術するに先立ち、ダントロレン(10.0mg/kgIV)を15分間受ける。CPB後、ラットは12日間回復させ、その間標準化された神経学的および神経認知の試験を行う(モリス水迷路)。この研究では、術後1および3日時の神経学的転帰は、擬似、CPB+ダントロレンおよびCPB+キセノン群のすべてが、CPB群に比べて著しく良好であろう。CPB群に比べると、擬似、CPB+ダントロレンおよびCPB+キセノン群は、術後3および4日時の神経学的転帰が良好であろう。第12日目まで、CPB+ダントロレンおよびCPB+キセノン群ではCPB群に比べて著しく良好な神経学的転帰を維持するであろう。この研究は、CPB誘発の神経学的および神経認知の機能障害の軽減において、キセノンとの比較におけるダントロレン(10.0mg/kg)の効果を示すであろう。
【0120】
ヒトにおける神経保護効果、たとえばポンプヘッドの予防または軽減における効果は、冠状動脈血管再生下の患者20人について、心肺バイパス中、ダントロレン処置かまたは非処置コントロール群かにランダムに分ける研究によって示すことができるであろう。手術に先だって、各患者は、4つの広いカテゴリー;注意力および集中力;暗記力;アブストラクションおよび視覚状況判断;および数字(数)記憶における認知機能を測定するために設計された9つの標準試験のバッテリーが与えられるであろう。患者は、術後24時間および6週間、再び同じ試験が実施されるであろう。各評価は、患者の研究群分類について情報のない、同一の研究者によって実施されるであろう。
【0121】
手術時、各患者は、変形心臓病患者/麻酔技術を用いるプロトコルに準じて、全身麻酔が導入されるであろう。薬剤はすべて、可能時に、体重に基づく投薬量(mg/kg)で投与されるであろう。バイパスの前および後ともに、適切な血および拍動の圧に保持するために、揮発性麻酔薬は、気管内チューブを介して麻酔専門医によって投与および調節され、潅流技師は、バイパス中、圧を保持して適切な組織潅流とするであろう。手術を行うための標準化プロトコルは、この研究で対象となる各患者について設計され、適用されるであろう。プロトコルは、手術の特徴および各局面;たとえば大静脈/動脈挿管、膜型人工肺を用いる心肺バイパスのイニシエーションおよび維持;心臓麻痺のイニシエーションおよび維持;標準観察,導入および冷却および再温暖化手順の維持;および許容量の筋収縮/昇圧剤および輸液療法を含む、心肺バイパスからの分離準備および実際分離の推奨型手順などに応じて展開される。
【0122】
第1群(ダントロレン)にランダム分類された患者は、全身麻酔の気管内への挿管および安定化がうまくいった後で胸骨切開に先立って、中枢神経経路により5%(50mg/ml)コロイド状ダントロレンを1.0mg/kg受けるであろう。(薬量の範囲は、ほぼ0.1〜10mg/kgであるが、この特別な試みのために、各患者に1.0mg/kgの薬量が投与され、この量は神経保護効果をもたらすと確信される。)すべてのダントロレンの投与は、約30秒を超えて投与されるであろう。この研究の二重盲検試験を確かめるために、低容量、高濃度コロイド状ダントロレン(5%)または対応量のプラセボコントロール溶液を、研究進行者により適切な時に注射されるであろう。麻酔および手術スタッフは、処置割り当てについてブラインドである。施術完了後、患者は標準的なCPB後“ファーストトラック”処置プロトコルにより処置され、麻酔後心臓ケアユニット(Cardiac Post Anesthesia Care Unit)に出現時または到着6時間以内に、手術室内で気管内から抜管される。
【0123】
抜管後約24時間および6週間の患者は、手術前に行われたと同じような順序および様式で9つの標準試験の同じバッテリーが与えられるであろう。解釈の不一致の可能性を低減するため、各時間間隔における評価を同一の盲検研究者によって実施されるであろう。このような研究において、コロイド状ダントロレン処置患者の示す神経認知機能の障害は、非処置患者よりも著しく少ないであろう。術後24時間評価および6週間追跡評価は著しいことが見出されるであろう。さらに、ダントロレン療法受容患者は、注意力および集中力を評価するように設定された試験において、コントロール患者よりも試験は著しく良好であろう。この場合も先と同様に、結果は、両方とも術後評価期間は同じとする。本研究は、ダントロレン,1.0mg/kgは、ヒトにおけるCPB誘発神経学的および神経認知機能の障害を軽減することを示すであろう。
【0124】
本発明では、ダントロレンおよびその塩、類縁物および同族体を、これまではこの薬剤により治療可能として認められていない、またその事象のための薬剤が他になにもない、いくつかの条件における神経学的および脳脊髄損傷の予防への使用を提案する。本発明は、低い全身性血流状態または脳潅流圧低下を誘発するいくつかの特定因子に関連して適用し、かつ予防手段としてのダントロレンの使用を提案する。これらとしては、制限する必要はないが、以下の例が挙げられよう:
【0125】
1)胸部および冠状動脈バイパスグラフト手術(CPB),ならびに最小血流(正常のほぼ90%)が発生される新生児、小児および成人患者における大動脈弓修復/交換などの複雑な再建的心臓切開処置を可能にする超低体温循環停止などの他の実現化技術のための心肺バイパスにおいて一般に用いられる人工肺および潅流システム。
神経学的合併症は、冠状動脈バイパスグラフト(CABG)および他の関連胸部手術のためのCPB履歴をもつ者のうち54%の高さで報告されている[Warner,op. cit.]。神経精神病学的変化は、微妙なものから深刻な認知機能障害、人格変化、精神錯乱、記憶喪失、および器質脳症候群まで幅広い。いくらかの患者は、一過性および/または永続的な運動機能の障害を経験する。
【0126】
永続的欠損を持続する患者の概算は、2%ないし50%以上の範囲である。神経精神病学的損傷の危険は、CPB時間の合計長さが長いほど増加する傾向にある。しかしながら、短めのCPBは、必ずしも危険回避とはいえず、神経精神病学的および認知の変化を生ずることも知られている。人工肺および潅流を使用(オフポンプ技術)せずに実施したCABGの場合には、患者は、“ポンプヘッド”に付随する兆候および症状を経験したと報告されている。これは、一つには、冠状動脈グラフト配置および縫合に適合する条件を創出するために確立された調整(誘発)された低血圧(心臓性ストーク容量および心臓出力の低下)および/または誘発された徐脈(心拍数低下)の期間によると確信される。
【0127】
正常な心臓周期は、動脈血管の拍動である全身的血流となる。動脈樹は径を漸減しつづけ、組織および末端器官ベッド中の全身性毛細血管に到達すると、拍動流は徐々に、層流としても知られている連続流に変化する。CPBは全身性血圧を低下させ、平均動脈圧(MAP)を低下させるのみならず、通常の心臓収縮および緩和の周期によって正常に発せされる特定かつ独立の心臓の収縮および拡張圧をもたらす血流の拍動波形パターンを低下させる。
【0128】
CPBおよび他の人工肺/潅流システム(橈骨動脈の動脈圧追跡によって読む)によって発生される“理想”全身性動脈圧をめぐって論議が続く間、心臓センターおよび潅流技師の多くは、通常、50から80mmHgの間の平均動脈圧を発生することになる2.0〜2.5L/min/m2(ほぼ50〜60ml/kg/min)のCPB流速発生を典型的に推奨、実施する。
【0129】
2)制限されないが、たとえば膜型人工肺(ECMO)、脳外科的手術に通常用いられる誘発および/または調節された低血圧の誘発および維持に付随した状態、血管外科手術および“オフポンプ”冠動脈バイパスグラフト手術などの、血流における体外的介入を用いるCPB以外の外科的処置。
神経精神病学的変化、異常認知機能、および運動機能障害は、単にCPBにより起る圧および流速の低下に付随するものではないため、ダントロレン処置および/または予備的処置は、本発明において他の症状の場合における予防として認められる。膜型人工肺(ECMO)は、比較的新しい処置様式であり、より慣習的機械的かまたは補助的な換気技術に肺が持ちこたえることができない患者、典型的に新生児に人工肺の妥協方法を供する。この特別な患者群は、脳、認知および運動機能障害の非常に高いリスクを体験する。
【0130】
3)血管内循環血液量低下に付随する特定の外傷性症状、特にショックおよび外傷性傷害および頭蓋内圧(ICP)の上昇、脳血流(CBF)の低下および脳潅流圧(CPP)の変動に付随する特殊な損傷。
重要なことは、この発明によるものとしてダントロレンによって治療可能な症状として、中枢神経系の外傷性傷害、特に頭部損傷を生じる事故が挙げられる。閉鎖したか開頭の外傷性傷害において、脳は典型的に損傷をいくつかのレベルで連鎖様式で維持する。これらの損傷は、しばしば脳出欠事故または進行した脳水腫に帰する頭蓋内圧の上昇に付随する。頭蓋内圧(ICP)の上昇(水腫または出血による)時、自動調節された脳血流は、局所的または全身的いずれも、より一層悪化する。動脈高血圧は、先天的生理学的反射作用の結果として起き、脳水腫およびICP上昇を一層悪化させる。
【0131】
脳潅流圧は、脳のレベルでの平均動脈圧と、中心静脈圧かまたは頭蓋内圧との差として定義され、どちらが大きくてもよい。圧は適切なCPP、脳潅流および脳血流を持ちこたえるために約60mmHgに保たれるべきであることが広く認められている。適切な潅流圧を保持することは、多くの頭部損傷の状況においては、不可能ではないとしても難しいといえる。脳損傷、特にCPP変化およびICP上昇から妥協した脳血流に付随する損傷は、しばしば神経精神病学的異常のみならず認知および運動機能の障害に付随する。さらに、脳脊髄損傷の長期間効果が、ダントロレン、またはその1つの塩、類縁物または同族体の投与によって軽減またはなんらかの形で改善され得るのは、上記したと同様に、潅流によって確立された局所的症状によることが予見される。
【0132】
本発明は、CPB時のみならず再温暖化期間および見込まれる高体温過剰修正の間、見込まれる神経保護策として用いられるかまたは深層循環停止の機能として誘発された低体温技術に起因する非正常体温、および変温性麻酔患者のみらなず外因性または内因性作用に起因する時たまの高体温に起因する低体温、制限されるものではないがたとえば敗血症、甲状腺機能低下症、出血性脳損傷、過度の再温暖化試行、および劇症感染症などとの関係に適用することもできる
【0133】
最近上市されたダントロレン製剤は、多くの臨床的症状(しかし野外状況にはほぼ稀)の場合であるとして、大容量の投与が禁止ではなく、このような製剤中に存在するマンニトールは強い禁忌を示さず、この実施例における中心である“ポンプヘッド”およびそれに付随する適応症に適用可能に供されているかもしれない。経口および注射用Dantrium(登録商標)製剤(プロクター・アンド・ギャンブル)は予防的に使用することができ、特に注射用Dantrium(登録商標)製剤は、予防的および治療的いずれにも適用可能である。
【0134】
ダントロレン塩の薬理学的に許容しうる製剤は、危険にさらすことが知られている内科的または外科的介入のなんらかの形態を介して、または潜在的に危うくするなんらかの形態を介して、身体的かつ生理学的状態、ベースライン神経精神病学的状態および個人別の認知機能を導入するに先立って熟練した専門家によって予防的処置として投与することができると容易に想像することができる。さらには、そのような製剤を用いる治療は、損失が上記のような多くの因子に起因するかもしれない時、治療を適切な時期に始めれば、神経精神病学における変化または異常認知能力の治療に利益をもたらすであることも期待される。
【0135】
このダントロレンナトリウム製剤の広範な投与は、意図された効果を得ようことが、特にダントロレンの高い治療指数の観点において予見される。本発明で提供される低容量製剤は、より容易でより精確な投与を、より迅速な方法で可能にする。
【0136】
年齢、健康の先在状態、および神経損傷の可能な程度に応じて、または損傷の種類および程度に応じて、0.1〜10.0mg/kgの範囲の薬量を1回または複数回に分けた投与は、効果を証明する。好ましい範囲は、1回または総薬量として、約0.5〜約4mg/kgである。根本的な生理学的損傷の特徴または継続期間に応じて、多数回の投薬または投薬予定の拡張が適用されてもよい。
【0137】
ダントロレン塩に加え、他の薬剤が、神経精神病学的変化および認知機能障害に対し、特に該薬剤が、ダントロレンナトリウムと同様な薬理学的挙動をもつ場合に、とりわけMHを緩和させることが知られているものであれば、同様な保護をもたらすことができる。すなわち、ライアニジン(ryanidine)受容体に作用し、それを介して細胞内カルシウム放出作用する、たとえばヒダントイン基および/またはニトロフェニル基またはニトロフラニル基を含有する化合物などのダントロレンの薬理学的活性同族体は、本発明に含まれる活性があり、とりわけMHの徴候を低減させるかもしれないと期待される。
【0138】
有益な例として、たとえばアズモレンなどの特定の類縁物は、薬理学的にダントロレンに類似し、本発明において使用してもよいが、ダントロレンはアズモレンよりも好ましいであろう。なぜなら、後者は悪性高体温症(MH)の処置において限られた効能しか示さないが;対照的に、ダントロレンナトリウムはMHのための最も有効な救急薬であるためである。新規なダントロレン類縁物および化学的同族体は利用可能となろうも予見され、また、そのような新規な薬剤が同様な薬理作用をもつという点で、特にMHの徴候を脱するという点で、当該薬剤は本発明の範囲において使用することができることが期待される。
【0139】
本発明は、ダントロレンナトリウムを、現況のDantrium(登録商標)製剤(ヒトへの適用には1/2ないし1リットルオーダーの容量を要する)に必要とする量よりも1または態様によっては2桁オーダー小さい液量で必要量を送達でき、かつそれにより、特に限定されないが、特に悪性高体温症およびポンプヘッドなどの患者を中心とするいくつかの症状の処置のために、大容量液体の投与に付随する合併症および危険を最小限化または回避する、薬学的に許容しうる製剤で提供する。容量およびそれに付随する問題の本質的なこの低減は、Mangatらの特許中に予知されてないが、たとえば、その成功が、迅速な手配、体外循環路の危機管理に依存している処置において、1リットルの水溶液を投与しなくてはならない時、外科チームに面倒な追加が課せられる点において、かなり重要なことであるとみなされるべきである。
【0140】
さらには、現行製品I.V.ダントロレン製剤のバイアル数ダースの再構成に必要な全時間は、本発明で注目の多くのCNS傷害、特に緊急事態の処置の試みにおいて大きく反作用し得る。本発明の態様例では、500mgまでのダントロレン薬量をすべてのケースで50ml未満の液量で送達することができ;300mgの薬量は30ml未満、より好ましくは10ml未満、さらに好ましくは5ml以下の液量で送達することができる。後者の容量は、製剤全体が自動注射器のデバイスの標準容量に則って装填できるほど充分小さい。
【0141】
本発明の態様例は、この実施例に限定はされないが、たとえば溶液であるか、または
安全に静脈内注射することができる充分に小さい粒子、具体的には0.8ミクロン未満、より好ましくは0.45ミクロン未満(つまり、標準的0.45ミクロンフィルターを通過することができるもの)の粒子が95%超えるような粒子を含むダントロレンナトリウム低容量製剤を提供することである。勿論、筋肉内、髄腔内、眼内、体外などの他の経路も、このような低容量の投与によって実施することができる。
【0142】
ダントロレンおよびその塩の低容量製剤は、いくつかの方法によって調製することができる。薬理学的に許容しうる溶媒N,N-ジメチルアセタミドは、ヒドロキシ含有溶媒(または複数)との併用で、強力な溶解性マトリックスを生じ、これはポリエチレングリコール(PEG)、および塩基および界面活性剤などの適切な調整剤で調節することができる。別に、ダントロレンまたはその1つの塩などの小粒子は、たとえば実施例1,3および4に記載するように、ホモジェナイズ技術により分散することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダントロレンまたは1もしくは複数のその塩またはその類縁物を含有する薬物;および
前記薬物が液状担体に溶解または分散され、3〜150mLの液状担体が約500mgの薬物を供する濃度で前記薬物を存在させた該液状担体を含む、哺乳動物に投与のための、ダントロレンまたはその塩またはその類縁物の注射安全性低容量製剤。
【請求項2】
前記薬物がダントロレンをその遊離酸の形態で含有する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項3】
前記薬物が、ダントロレンアニオンに対する対イオンがカリウム、ナトリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれるその塩形態でダントロレンを含有する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項4】
前記薬物が、ダントロレンアニオンに対する対イオンがベンジルトリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N−メチルピリジニウム、テトラブチルアンモニウム、2−(2,3−ジヒドロキシ−1−プロピルアミノ)−キノリジニウム、サフラニンO、キノリジニウム、キノリジニウム、2−カルバモイル−1−メチルピリジニウム、2,3−ジメチル−1−フェニル−4−トリメチル−アンモニウム−3−ピラゾリン−5−オン、ジメチルアンモニウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、2,3−ジメチル−1−フェニル−4−トリメチル−アンモニウム−3−ピラゾリン−5−オン、2−(1−ヒドロキシ−2−メチル)プロピルトリ−メチルアンモニウム、および塩素からなる群より選ばれるその塩形態でダントロレンを含有する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項5】
前記ダントロレンまたは1もしくは複数のその塩またはその類縁物が、前記薬物中で細胞内カルシウムの初期調節剤として存在する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項6】
前記薬物が5〜30mLの液状担体が約300mgの薬物を供する濃度で存在する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項7】
前記薬物および前記液状担体がコロイド分散液中に共存する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項8】
前記液状担体が、水、水混和性溶媒、グリセロール、プロピレングリコール、ジメチルアセタミド、エタノール、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、モノチオグリセロール、またはこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項7に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項9】
前記ポリエチレングリコールが、PEG300、PEG400、およびPEG3350からなる群より選ばれる請求項8に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項10】
前記液状担体が、水、水混和性溶媒、グリセロール、プロピレングリコール、ジメチルアセタミド、エタノール、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、モノチオグリセロール、またはこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項11】
界面活性剤をさらに含む請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項12】
安定剤をさらに含む請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項13】
前記薬物および前記液状担体が溶液中に共存する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項14】
前記薬物がダントロレンの結晶またはその塩またはその類縁物を含有する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項15】
前記薬物がナトリウムチャネル阻害薬を含有する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項16】
前記薬物がカルシウムチャネル阻害薬を含有する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項17】
前記薬物がNMDA受容体拮抗薬を含有する請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項18】
静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、眼内、および体外の流体もしくは循環路からなる群より選ばれる経路による安全な投与のために調製された請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項19】
前記液状担体中の薬物粒子の少なくとも95%が、直径0.8ミクロン以下である請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項20】
前記液状担体中の薬物粒子の少なくとも95%が、直径0.45ミクロン以下である請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項21】
前記液状担体中、直径2ミクロンより大きい薬物粒子はない請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項22】
ダントロレンのmgあたりマンニトールを30mg以下で含む請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項23】
液状担体と併合した時に、3〜150mLの液状担体が約500mgの薬物を供する濃度で存在する前記薬物を含む溶液または懸濁液を形成するような物理的性質を有するダントロレンまたはその塩またはその類縁物を含有する薬物を含む、
液状担体の添加でダントロレンまたはその塩またはその類縁物の注射安全性低容量製剤となる、哺乳動物に投与するためのダントロレンの乾燥粉末製剤。
【請求項24】
前記物理的性質が0.8ミクロンの薬剤粒子径および分散性を保証する界面化学を含む請求項23に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項25】
前記ダントロレンのmgあたり30mg以下のマンニトールを含む請求項23に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項26】
前記薬物がダントロレンナトリウムを含有する請求項23に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項27】
前記薬物がナトリウムチャネル阻害薬を含有する請求項23に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項28】
前記薬物がカルシウムチャネル阻害薬を含有する請求項23に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項29】
前記薬物がNMDA受容体拮抗薬を含有する請求項23に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項30】
ダントロレンまたはその塩またはその類縁物を含有する薬物と、液状担体とを含み、前記薬物が前記液状担体に溶解または分散され、3〜150mLの液状担体が約500mgの投薬量を供する濃度で前記薬物が存在する、疾患または症状の予防または治療に有効量のダントロレンまたはその塩またはその類縁物の注射安全性低容量製剤を必要に応じて患者に投与する工程を含む、
ryanidine受容体関与が原因とされる哺乳動物における疾患または症状の予防または治療の方法。
【請求項31】
前記投与が、静脈内、髄腔内、腹腔内、筋肉内、皮下、および体外の流体および/または循環路からなる群より選ばれる経路により達成される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記疾患または症状がポンプヘッドである請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患または症状が病因を問わない悪性高体温症である請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患または症状が熱射病である請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患または症状がMDMA(“エクスタシー”)である請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患または症状が、虚血、娯楽性ドラッグの過剰摂取またはそれへの反応、神経弛緩薬性悪性症候群(NMS)、セントラルコア病(CCD)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、King-Denborough症候群、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症(MDD)、シュワルツ−ジャンペル症候群、福山型先天性筋ジストロフィー、線維筋痛、ベッカー型筋ジストロフィー、周期性四肢麻痺、先天性ミオトニア、筋小胞体アデノシントリホスファターゼ欠損症候群、バーケット氏リンパ腫、乳幼児突然死症候群(SIDS)、骨形成不全症、グリコーゲン貯蔵病理、ミトコンドリア性筋障害、ならびにアルツハイマー病、ストリキニーネに対する毒性反応、フェンシクリジン、ヘムロック、アンフェタミン、MAO阻害剤、テオフィリン、LSDおよび他の幻覚剤およびコカインに関連した小胞体における変化からなる群より選ばれる請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記薬物が、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体拮抗薬、N−メチル−D−アスパルタート(NMDA)受容体拮抗薬、カイナイト受容体拮抗薬、フリーラジカル捕捉剤、プロテインキナーゼ阻害剤、カルシウムチャネル阻害薬、およびカリウムチャネル阻害薬からなる群より選ばれるダントロレンまたはその塩またはその類縁物以外の第二の薬物を含む請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記注射安全性低容量製剤が、5〜30mLの液状担体が約300mgの投薬量を供する濃度で存在する前記薬物を含有する請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記注射安全性低容量製剤が、コロイド懸濁液中に共存する前記薬物および前記液状担体を含有する請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記注射安全性低容量製剤を乾燥粉末から調製する工程をさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項41】
ダントロレンまたはその塩またはその類縁物を含有する薬物と、液状担体とを含み、前記薬物が前記液状担体に溶解または分散され、3〜150mLの液状担体が約500mgの投薬量を供する濃度で前記薬物が存在する、疾患または症状の予防または治療に有効量のダントロレンまたはその塩またはその類縁物の注射安全性低容量製剤を必要に応じて患者に投与する工程を含む、
脳脊髄損傷;認知、運動または神経系の合併症、弊害または機能障害;血圧の変動および/または低下;血流の変動および/または低下;脳潅流の変動および/または低下;拍動流の変動および/または低下;および脳潅流つづく脳組織の酸素供給を変化または害する頭蓋内圧の上昇からなる群より選ばれる哺乳動物における疾患または症状の予防または治療の方法。
【請求項42】
前記疾患または症状がポンプヘッドである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記疾患または症状が、脳脊髄温度の上昇である請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ダントロレンまたはその塩またはその類縁物を含有する薬物と、液状担体とを含み、前記薬物が前記液状担体に溶解または分散され、3〜150mLの液状担体が約500mgの投薬量を供する濃度で前記薬物が存在する、疾患または症状の予防または治療に有効量のダントロレンまたはその塩またはその類縁物の注射安全性低容量製剤を必要に応じて患者に投与する工程を含む、
血管内循環血液量の低下および頭部損傷に関連して血流異常またはショックおよび外傷性傷害を生じさせることのある外科的処置を受けている患者の予防または治療の方法。
【請求項45】
前記疾患または症状がポンプヘッドである請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記外科的処置が、胸部および冠動脈バイパスグラフト手術(CPB)のための心肺バイパスに用いられる外部酸素供給および潅流システムからなる群より選ばれる請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記外科的処置が、正常のほぼ90%の最小血流が生じられる新生児、小児および成人患者における複雑な再建的心臓切開処置を可能にする超低体温循環停止を含む技術である請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記技術が大動脈弓の修復および/または交換である請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記外科的処置が、膜型人工肺(ECMO)、脳外科的手術に通常用いられる誘発および/または調節された低血圧の誘発および維持に付随した状態、血管外科手術および“オフポンプ”冠動脈バイパスグラフト手術からなる群より選ばれる請求項44に記載の方法。
【請求項50】
異常血流が、頭蓋内圧(ICP)の上昇、脳血流(CBF)の低下および脳潅流圧(CPP)の変動に付随する請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記投与が、静脈内、髄腔内、腹腔内、筋肉内、皮下、および体外の流体および/または循環路からなる群より選ばれる経路を介して達成される請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記薬物が、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体拮抗薬、N-メチル-D-アスパルタート(NMDA)受容体拮抗薬、カイナイト受容体拮抗薬、フリーラジカル捕捉剤、プロテインキナーゼ阻害剤、カルシウムチャネル阻害薬、ナトリウムチャネル阻害薬およびカリウムチャネル阻害薬からなる群より選ばれるダントロレンまたはその塩またはその類縁物以外の第二の薬物を含む請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記注射安全性低容量製剤が、5〜30mLの液状担体が約300mgの投薬量を供する濃度で存在する前記薬物を含有する請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記注射安全性低容量製剤が、コロイド懸濁液中に共存する前記薬物および前記液状担体を含有する請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記注射安全性低容量製剤を乾燥粉末から調製する工程をさらに含む請求項44に記載の方法。
【請求項56】
ラットへの腹腔内投与時の薬物のLD50(死亡率50%をもたらす薬量)をAとし、5mg/kgカイニン酸が与えられたラットの皮質において、腹腔内投与時にアポトーシス核の50%低減をもたらす投薬量をBとし、治療指数を商A/Bと定義する時、該治療指数が約50超である化合物であって、ダントロレンまたはその塩またはその類縁物を含有する薬物と、液状担体とを含み、該薬物は前記液状担体に溶解または分散され、該薬物は3〜150mLの液状担体あたり約500mgの該薬物の投薬量を供する濃度で存在する、ダントロレンまたはその塩またはその類縁物の注射安全性低容量製剤中に存在する前記化合物を該当患者に投与する工程を含む、
脳脊髄損傷;認知、運動または神経系の合併症、弊害または機能障害;血圧の変動および/または低下;血流の変動および/または低下;脳潅流の変動および/または低下;拍動流の変動および/または低下;および脳潅流つづく脳組織の酸素供給を変化または害する頭蓋内圧の上昇からなる群より選ばれる哺乳動物における一定の疾患または症状における薬理学的介入方法。
【請求項57】
ラットへの腹腔内投与時の薬物のLD50(死亡率50%をもたらす投薬量)をAとし、5mg/kgカイニン酸が与えられたラットの皮質において、腹腔内投与時にアポトーシス核の50%低減をもたらす投薬量をBとし、治療指数を商A/Bと定義する時、該治療指数が約50超である各化合物であって、ダントロレンまたはその塩またはその類縁物を含有する薬物と、液状担体とを含み、該薬物は前記液状担体に溶解または分散され、該薬物は3〜150mLの液状担体あたり約500mgの該薬物の投薬量を供する濃度で存在する、ダントロレンまたはその塩またはその類縁物の注射安全性低容量製剤中に存在する1または複数の前記化合物を該当患者に投与する工程を含む、
脳脊髄損傷;認知、運動または神経系の合併症、弊害または機能障害;血圧の変動および/または低下;血流の変動および/または低下;脳潅流の変動および/または低下;拍動流の変動および/または低下;および脳潅流つづく脳組織の酸素供給を変化または害する頭蓋内圧の上昇からなる群より選ばれる哺乳動物における一定の疾患または症状における薬理学的介入方法。
【請求項58】
ダントロレンまたはその塩またはその類縁物を患者の必要に応じて患者に投与する工程を含む、
血圧の変動および/または著しい低下;血流の変動および/または著しい低下;脳潅流の変動および/または著しい低下;拍動流の変動および/または減弱、さらには、本質的に脳潅流つづく脳組織の酸素供給を変動させ、著しく害する頭蓋内圧の上昇に付随する、哺乳動物における脳脊髄損傷および/または認知、運動または神経系の合併症、弊害または機能障害の予防または治療の方法。
【請求項59】
前記ダントロレンまたはその塩またはその類縁物が、ダントロレンまたはその塩またはその類縁物を含有する薬物と、液状担体とを含み、前記薬物が前記液状担体に溶解または分散され、3〜150mLの液状担体が約500mgの投薬量を供する濃度で前記薬物が存在する、ダントロレンまたはその塩またはその類縁物の注射安全性低容量製剤中に存在する請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記注射安全性低容量製剤が、5〜30mLの液状担体が約300mgの投薬量を供する濃度で存在する前記液状担体を含有する請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記注射安全性低容量製剤が、コロイド懸濁液中に共存する前記薬物および前記液状担体を含有する請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記注射安全性低容量製剤を乾燥粉末から調製する工程をさらに含む請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記ダントロレンまたはその塩またはその類縁物の液状製剤を乾燥粉末から調製する工程をさらに含む請求項58に記載の方法。
【請求項64】
前記患者に血流変動を伴う外科的処置を実施する工程をさらに含む請求項58に記載の方法。
【請求項65】
前記投与工程が、ポンプヘッドの治療または防止に充分な量の前記ダントロレンまたはその塩またはその類縁物を供する請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記外科的処置が、胸部および冠動脈バイパスグラフト手術(CPB)のための心肺バイパスに用いられる外部酸素供給および潅流システムからなる群より選ばれる請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記外科的処置が、正常のほぼ90%の最小血流が生じられる新生児、小児および成人患者における再建的心臓切開処置を可能にする技術からなる群より選ばれる請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記外科的処置が大動脈弓の修復/交換である請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記外科的処置が、膜型人工肺(ECMO)、脳外科的手術に用いられる誘発および/または調節された低血圧の誘発および維持に付随した状態、血管外科手術および“オフポンプ”冠動脈バイパスグラフト手術からなる群より選ばれる請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記異常血流が、血管内循環血液量の低下および頭部損傷に付随したショックおよび外傷性傷害からなる群より選ばれる症状に付随する請求項58に記載の方法。
【請求項71】
前記症状が、頭蓋内圧(ICP)の上昇、脳血流(CBF)の低下および脳潅流圧(CPP)の変動に付随する請求項70に記載の方法。
【請求項72】
充分量のダントロレンを患者の必要に応じて患者に投与する工程を含む、異常体温状態に原因して付随される哺乳動物における脳脊髄損傷および/または認知、運動または神経系の機能障害の予防または治療の方法。
【請求項73】
症状または疾患が、敗血症、甲状腺機能低下症、出血性脳損傷、過度の再温暖化試行、および劇症感染症からなる群より選ばれる請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記薬物が、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体拮抗薬、N−メチル−D−アスパルタート(NMDA)受容体拮抗薬、カイナイト受容体拮抗薬、フリーラジカル捕捉剤、プロテインキナーゼ阻害剤、カルシウムチャネル阻害薬、ナトリウムチャネル阻害薬、およびカリウムチャネル阻害薬からなる群より選ばれるダントロレンまたはその塩またはその類縁物以外の第二の薬物を含む請求項40に記載の方法。
【請求項75】
前記薬物がα−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体拮抗薬を含む請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項76】
前記薬物がカイナイト受容体拮抗薬を含む請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項77】
前記薬物がフリーラジカル捕捉剤を含む請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項78】
前記薬物がプロテインキナーゼ阻害剤を含む請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項79】
前記疾患または症状が、解熱処置を必要とする発作および筋収縮系の高体温、筋弛緩、および脳脊髄温度の上昇による神経防護作用に伴う請求項30に記載の方法。
【請求項80】
前記疾患または症状が、脳脊髄細胞での揮発麻酔剤のryandine作動薬効果に伴う請求項30に記載の方法。
【請求項81】
前記薬物がナトリウムチャネル阻害薬を含む請求項1に記載の注射安全性低容量製剤。
【請求項82】
ポンプヘッドを防止または軽減するために充分量のダントロレンまたはその塩またはその類縁物を患者の必要に応じて患者に投与する工程を含む、哺乳動物におけるポンプヘッドの予防または治療方法。

【公表番号】特表2007−525439(P2007−525439A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508935(P2006−508935)
【出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/006135
【国際公開番号】WO2005/013919
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(503195241)
【Fターム(参考)】