説明

ダンパー装置及び画像形成装置

【課題】簡単な構成で好ましい振動遮断効果を有するダンパー装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】回転駆動力が入力される入力部材21と、入力部材21に入力された回転駆動力を受けて回転する出力部材31と、入力部材21と出力部材31との間に介在された柱状の粘弾性部材40と、入力部材21に取り付けられており、入力された駆動力によって粘弾性部材40の一端面に押圧力を作用させる駆動側押圧部材22と、出力部材31に取り付けられており、粘弾性部材40の他端面から押圧力を受ける受動側押圧部材32と、駆動側押圧部材22を入力部材21に対して回動自在に支持する第1の支持部材23と、受動側押圧部材32を出力部材31に対して回動自在に支持する第2の支持部材33と、を備えたダンパー装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパー装置、特に、入力された回転力又は直進力を出力部材31に伝達する箇所に配置されるダンパー装置、及び、複写機やプリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式による画像形成装置において、作像プロセスに関する回転駆動には高精度な回転力の伝達が要求されている。しかし、回転駆動系には、モータやギヤの噛み合いなど、回転方向の負荷変動あるいは回転方向の振動(速度変動)が発生する要因を含んでおり、回転力伝達の高精度化を阻んでいる。一方、コスト削減の方策として、回転力伝達系の簡素化が要求されており、これを実現するためには、駆動系の上流側で発生する回転方向の振動(速度変動)を下流側に伝達しないように簡単な構成で効果的に遮断する必要がある。
【0003】
特許文献1には、動力を発生するブラシレスモータと、このブラシレスモータの動力により回転駆動される感光体ドラムと、ブラシレスモータの動力を複数個のギヤを介して感光体ドラムに伝達するギヤ列と、ギヤ間に介在され、感光体ドラムへの振動の伝達を規制する防振ゴムと、感光体ドラムに設けられ、ギヤに接続される感光体ギヤとを備えた駆動装置が記載されている。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の防振対策は構成の簡素化や効果の点で必ずしも好ましいものではなく、より効果的な防振対策が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−174932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で好ましい振動遮断効果を有するダンパー装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態であるダンパー装置は、
回転駆動力が入力される入力部材と、
前記入力部材に入力された回転駆動力を受けて回転する出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材との間に介在された柱状の粘弾性部材と、
前記入力部材に取り付けられており、入力された駆動力によって前記粘弾性部材の一端面に押圧力を作用させる駆動側押圧部材と、
前記出力部材に取り付けられており、前記粘弾性部材の他端面から押圧力を受ける受動側押圧部材と、
前記駆動側押圧部材を前記入力部材に対して回動自在に支持する第1の支持部材と、
前記受動側押圧部材を前記出力部材に対して回動自在に支持する第2の支持部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の形態である画像形成装置は、前記第1の形態であるダンパー装置を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記ダンパー装置においては、粘弾性部材が入力部材に入力された振動を吸収する。粘弾性部材の一端面に押圧力を作用させる駆動側押圧部材は第1の支持部材によって入力部材に対して回動自在に支持され、かつ、粘弾性部材の他端面から押圧力を受ける受動側押圧部材は第2の支持部材によって出力部材に対して回動自在に支持されているため、粘弾性部材はその一端面と他端面とがほぼ平行状態を保って座屈することなく収縮/伸長し、振動エネルギーを効果的に吸収する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構成で好ましい振動遮断効果を有し、回転力の高精度な伝達が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】第1実施例であるダンパー装置を示し、(A)は停止状態を示す斜視図、(B)は回転状態を示す斜視図である。
【図3】前記ダンパー装置を示し、(A)は停止状態を示す正面図、(B)は回転状態を示す正面図である。
【図4】両端に押圧部材を備えた粘弾性部材弾性を示す斜視図である。
【図5】粘弾性部材の動作を解析した説明図である。
【図6】第2実施例であるダンパー装置を示し、(A)は斜視図、(B)は半断面とした斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るダンパー装置及び画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において同じ部材、部分に関しては共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(画像形成装置の概略構成、図1参照)
図1に示すように、本画像形成装置は、タンデム方式のカラープリンタとして構成され、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各画像を形成するための作像ユニット1Y,1M,1C,1Kが中間転写ベルト10の直下に並置されている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Kは感光体ドラム2を中心に現像器3などを配置した周知の構成を有している。中間転写ベルト10は、支持ローラ11,12に無端状に張り渡され、矢印a方向に回転駆動される。各感光体ドラム2上に形成されたトナー画像は順次中間転写ベルト10上に1次転写されてカラー画像に合成される。
【0014】
用紙は給紙トレイ15に積載されており、給紙ローラ16によって1枚ずつ給紙され、タイミングローラ対17を経て中間転写ベルト10と2次転写ローラ18とのニップ部を通過することにより、前記カラー画像が中間転写ベルト10から2次転写される。その後、用紙は定着ユニット19に搬送されてトナーの加熱定着を施され、排出ローラ対5から本体上面に排出される。
【0015】
なお、画像形成装置としては、前記カラープリンタ以外にモノクロプリンタであっても、あるいは、画像読取りユニットを備えた複写機として構成されているもの、ファクシミリ機能やインターネットとの通信機能を備えた様々な態様の装置であってもよい。
【0016】
前記画像形成装置において、以下に説明するダンパー装置を効果的に用いることができる箇所は、作像ユニット(感光体ドラム2、現像器3の現像ローラ3a)の駆動機構や中間転写ベルト10を駆動するローラ11の駆動機構である。
【0017】
(第1実施例、図2〜図5参照)
第1実施例であるダンパー装置20Aは、図1及び図2に示すように、概略、矢印b方向に回転駆動力が入力される円盤状の入力部材21と、入力部材21に入力された回転駆動力を受けて矢印b方向に回転する円盤状の出力部材31と、入力部材21と出力部材31との間に介在された柱状の粘弾性部材40と、で構成されている。
【0018】
粘弾性部材40の一端面には、入力された駆動力によって該一端面に押圧力を作用させる駆動側押圧部材22が接着固定されており、該駆動側押圧部材22に形成した穴部22aには入力部材21に設けた第1の支持部材(以下、第1の軸部材23と称する)が回動自在に挿入されている。また、粘弾性部材40の他端面には、粘弾性部材40から押圧力を受ける受動側押圧部材32が接着固定されており、該受動側押圧部材32に形成した穴部32aには出力部材31に設けた第2の支持部材(以下、第2の軸部材33と称する)が回動自在に挿入されている。
【0019】
さらに、第1の軸部材23は駆動側押圧部材22から出力部材31側に突出しており、出力部材31には該突出部分を受け入れて回転方向にガイドする円弧状の長穴34が形成されている。
【0020】
粘弾性部材40は、図3に示すように、入力部材21及び出力部材31に対して円周方向に3等分された位置に配置されている。粘弾性部材40の配置個数は3個に限定するものではないが、3個を等間隔に配置することがバランスが最も良好である。
【0021】
以上の構成からなるダンパー装置20Aにおいては、停止状態では図3(A)に示すように、粘弾性部材40は自身の弾性によって伸長状態を保持している。入力部材21に矢印b方向の回転駆動力が入力されると、第1の軸部材23を介して駆動側押圧部材22が長穴34にガイドされつつ矢印b方向に移動し、粘弾性部材40の一端面に押圧力を作用させる。このとき、粘弾性部材40は収縮しつつ他端面から受動側押圧部材32に押圧力を作用させ(図3(B)参照)、受動側押圧部材32から第2の軸部材33を介して回転駆動力が出力部材31に伝達される。
【0022】
入力部材21に入力された微振動(速度変動)は粘弾性部材40の弾性によって吸収され、出力部材31に伝達されることはない。即ち、入力部材21と出力部材31との間に介在された粘弾性部材40によって振動が遮断されることになる。そして、粘弾性部材40の一端面に押圧力を作用させる駆動側押圧部材22は第1の軸部材23によって入力部材21に対して回動自在に支持され、かつ、粘弾性部材40の他端面から押圧力を受ける受動側押圧部材32は第2の軸部材33によって出力部材31に対して回動自在に支持されているため、粘弾性部材40はその一端面と他端面とが平行状態を保って収縮/伸長し、振動エネルギーを効果的に吸収する。つまり、粘弾性部材40はほぼ平行状態を保って圧縮されることでその内部応力が均一に分布し、座屈や押圧力の不均衡を生じることがない。
【0023】
ここで、ダンパー装置20Aのより詳細な具体例及び粘弾性部材40の挙動について図4及び図5を参照して説明する。
【0024】
粘弾性部材40としては、アスカーC硬度30相当でヤング率Eが0.65MPaのゴムを好適に用いることができる。押圧部材22,32としてはヤング率Eが2580MPaのPOM(ポリオキシメチレン)を好適に用いることができる。粘弾性部材40の寸法は、図4に示すように、長さLは38mm、幅W及び高さTはそれぞれ10mmが適当である。
【0025】
前記材料及び前記寸法の粘弾性部材40及び押圧部材22,32を用い、第1及び第2の軸部材23,33と穴部22a,32aとの摩擦力をゼロに設定して(第1及び第2の軸部材23,33と穴部22a,32aとの間に潤滑剤、好ましくはグリースを介在させた状態を想定)、出力部材31を固定した状態で入力部材21に回転駆動力を与えてシミュレートしたところ、図5(B1)に示すように、粘弾性部材40は一端面と他端面とが平行状態を保持して収縮/伸長し、座屈は生じなかった。図5(B2)に示すように、粘弾性部材40の偏芯量は0であり、収縮時における腹部Sの応力は0.25MPaであった。
【0026】
一方、第1及び第2の軸部材23,33と穴部22a,32aを固定した状態で前記と同様に入力部材21に回転駆動力を与えてシミュレートしたところ、図5(A1)に示すように、粘弾性部材40は比較的大きく湾曲した。図5(A2)に示すように、粘弾性部材40の偏芯量Hは3.45mmであり、収縮時における腹部Sの応力は0.3MPaであった。また、第1及び第2の軸部材23,33と穴部22a,32aとの間に潤滑剤を介在させないである程度の摩擦力が生じている状態として入力部材21に回転駆動力を与えてシミュレートしたところ、図5(C1)に示すように、粘弾性部材40に僅かな湾曲を生じた。図5(C2)に示すように、粘弾性部材40の偏芯量Hは1.68mmであり、収縮時における腹部Sの応力は0.28MPaであった。
【0027】
以上の解析結果から明らかなように、第1及び第2の軸部材23,33は穴部22a,32aに回動自在に挿入されており、両者の間に摩擦力がほとんど生じないか、僅かに生じている程度が好ましい。図5(A1),(A2)に示したように、第1及び第2の軸部材23,33と穴部22a,32aとを固定してしまうと、粘弾性部材40が大きく湾曲し、座屈を生じるおそれがある。
【0028】
(第2実施例、図6参照)
第2実施例であるダンパー装置20Bは、図6に示すように、第1の軸部材23をガイドする長穴34を省略したものである。他の構成は前記第1実施例と同様である。即ち、前記長穴34はダンパー装置として必ずしも必要なものではない。
【0029】
入力部材21や出力部材31は回転を高精度に伝達するための高精度ギヤである場合が考えられる。このような高精度ギヤを樹脂成形する場合に長穴34を設けると、成形時に生じる“ひけ”で精度が低下する。これを回避するために本第2実施例では長穴34を設けないこととした。
【0030】
(他の実施例)
なお、本発明に係るダンパー装置及び画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明は、ダンパー装置、画像形成装置に有用であり、特に、簡単な構成で好ましい振動遮断効果を有する点で優れている。
【符号の説明】
【0032】
20A,20B…ダンパー装置
21…入力部材
22…駆動側押圧部材
22a…穴部
23…第1の軸部材
31…出力部材
32…受動側押圧部材
32a…穴部
33…第2の軸部材
40…粘弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力が入力される入力部材と、
前記入力部材に入力された回転駆動力を受けて回転する出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材との間に介在された柱状の粘弾性部材と、
前記入力部材に取り付けられており、入力された駆動力によって前記粘弾性部材の一端面に押圧力を作用させる駆動側押圧部材と、
前記出力部材に取り付けられており、前記粘弾性部材の他端面から押圧力を受ける受動側押圧部材と、
前記駆動側押圧部材を前記入力部材に対して回動自在に支持する第1の支持部材と、
前記受動側押圧部材を前記出力部材に対して回動自在に支持する第2の支持部材と、
を備えたことを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
前記粘弾性部材は柱状の一端面が前記駆動側押圧部材に接着固定され、他端面が前記受動側押圧部材に接着固定されていること、を特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
第1の支持部材は前記入力部材に設けた第1の軸部材であり、第2の支持部材は前記出力部材に設けた第2の軸部材であり、
第1の軸部材は前記駆動側押圧部材に形成した穴部に回動自在に挿入され、第2の軸部材は前記受動側押圧部材に形成した穴部に回動自在に挿入されていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
第1及び第2の軸部材と前記穴部との間に潤滑剤が介在されていること、を特徴とする請求項3に記載のダンパー装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のダンパー装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251582(P2012−251582A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123379(P2011−123379)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】