ダンパー装置
【課題】 建築構造用および木造構造用骨組みの剛性や強度を向上でき、施工が容易であり、等価減衰定数が大きく、エネルギー吸収効果が高く、剛性・耐力・減衰量・変形能力などに関する設計の自由度が高く、また材料および機能面からメンテナンスがフリーなダンパー装置を提供する。
【解決手段】 本ダンパー装置1は、内筒状剛性部材13の外周側に同内筒状剛性部材13を囲繞するように外筒状剛性部材12を同心状に配置するとともに、内外の剛性部材12・13間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体14を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなる。また、内外の前記剛性部材12・13が、軸方向に相対変位するのを制限するストッパー210を備えている。
【解決手段】 本ダンパー装置1は、内筒状剛性部材13の外周側に同内筒状剛性部材13を囲繞するように外筒状剛性部材12を同心状に配置するとともに、内外の剛性部材12・13間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体14を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなる。また、内外の前記剛性部材12・13が、軸方向に相対変位するのを制限するストッパー210を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建築構造物および土木構造物の振動低減用にたとえば骨組み状態で使用するほか、産業用機械、建造物などの設置状態における振動の吸収緩和部材ならびに自動車、家電製品などの振動の吸収部品としても適用可能なダンパー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記構造物用骨組みの振動低減には、従来、主として、骨組みの部材間にブレースや方杖を取り付けることによって、上記骨組みの剛性や強度を高めて、振動の低減を図っていた。しかし、従来のブレースや方杖は強度抵抗型の部材で、剛性や強度を向上する機能は備えているが、エネルギーを吸収する機能には乏しく、たとえば地震、強風による揺れや振動、および走行する車両の近傍で生じる家屋や建造物などの振動を低減する等価減衰定数(Heq)についてはブレースの場合で10%程度であり、地震などで発生する振動エネルギーを十分に吸収しきれない。また、ブレースに対し圧縮力が作用すると、図13に示すように、座屈が生じるおそれがある。
【0003】
さらに、従来より、車両自体や機械設備自体の振動低減やその他の振動エネルギー吸収にオイルダンパーが用いられているが、このオイルダンパーはオイルダンパーが介設される部材両端間の振動速度がゼロ、つまり停止状態の場合には、耐力が発生しないという問題がある。しかも、オイルダンパーは図14に示すような構造が一般的であるため、エネルギーを吸収するためには十分に長いストロークを確保する必要があるため、コンパクトな製品が製造し難く、適用範囲が制限される。また、オイルダンパーは速度や温度に対して影響を受け易いうえに、油圧の調整や油漏れのほか、ごみや埃の侵入防止のための対策およびメンテナンスが必要であり、さらに製作には精密な加工が要求される。
【0004】
また、摩擦ダンパーについても、摩擦面の摩耗・腐食やごみ・埃の侵入防止対策が必要なうえ、摩擦面の種類によっては、振動数依存性をもつものや比較的早期に焼き付きが生じるものがある。そして、従来の一般的なオイルダンパー、摩擦ダンパーおよび鋼材ダンパーなどのダンパーは、等価減衰定数(Heq)は約20〜25%であり、地震発生時などに振動エネルギーを十分に吸収できないおそれがある。
【0005】
上述したようなブレースや方杖などの部材は、地震時に骨組みに作用するエネルギーを吸収する振動減衰性能を持っていないか、持っていても低いため、設計強度を越えるような大地震の発生時には筋かい等の部材が最初に降伏し、破断あるいは損傷に至る。そして前記部材が一旦破断あるいは損傷した後は同部材による住宅全体としての本来の強度増大効果は望めなくなり、住宅全体が崩壊に至ってしまう。したがって、設計強度を越えるような大地震に対して十分な耐震性能を確保することができないだけでなく、たとえ住宅全体が崩壊しなかったとしても、破断あるいは損傷した補強用部材を交換しない限り、住宅全体を元の強度に復元させることができない。
【0006】
そこで、復元機能を有し、地震時などにおいて振動減衰性能を発揮させられる制振ダンパーや仕口ダンパーが提案されている(たとえば、特許文献1,2参照)。しかしながら、特許文献1,2に記載のものにおいても、等価減衰定数が比較的小さく、地震発生時などに振動エネルギーを十分に吸収できないおそれがあること、構造が複雑で、製作に手間がかかることなど、それぞれ改良の余地がある。
【0007】
これらの課題を解決する技術に、出願人によるダンパー装置がある(特許文献3)。このダンパー装置は、内外の筒状剛性部材と、それらの間に介在させる粘弾性エネルギー吸収体との三部材で最小限構成され、骨組みの強度を高めるとともに、内外の剛性部材間で相対的な圧縮力と引っ張り力が作用したときにエネルギー吸収体が吸収緩和して振動等を減衰させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−110399号公報(段落0011〜0015及び図1〜図3)
【特許文献2】特開2003−247269号公報(段落0016〜0025及び図1〜図3)
【特許文献3】特開2007−278411号公報(段落0030〜0034及び図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3のダンパー装置は、以下の点で課題があった。
【0010】
・過変位(過剰変位)に対するストッパー(制止機能)を有していない。
【0011】
・ダンパーの回転(ねじれ)方向に対する制御(防止)機構を有していない。
【0012】
・減衰材としてのプラグ(鉛他)の取替え機構を有していない。
【0013】
・減衰材としてのプラグ(鉛他)の設置方法が不明。
【0014】
・減衰材としてのプラグ(鉛他)の拘束機構を有していない。
【0015】
・減衰材としてのプラグ(鉛他)が有効に機能する充填率が不明。
【0016】
・トリガー機能の条件(トリガー機能の定義、設計条件等)が不明。
【0017】
・粘弾性体(ゴム)と内筒及び外筒との定着条件が不明。
【0018】
・粘弾性エネルギー吸収体の特性範囲が不明。
【0019】
・一体成型とした場合のゴム収縮に対する接着面への影響が懸念。
【0020】
・耐久性向上のための粘弾性体小口部分のシール(密閉)が必要。
【0021】
この発明は上述の点に鑑みなされたもので、建築構造用および木造構造用骨組みの剛性や強度を向上でき、施工が容易であり、等価減衰定数が大きく、エネルギー吸収効果が高く、剛性・耐力・減衰量・変形能力などに関する設計の自由度が高く、また材料および機能面からメンテナンスがフリーなダンパー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために本発明に係るダンパー装置は、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるダンパー装置であって、
内外の前記剛性部材が、軸方向に相対変位するのを制限するストッパーを備えていることを特徴とする。
【0023】
上記の構成を有する本発明のダンパー装置によれば、内外の筒状剛性部材とエネルギー吸収体との三部材で最小限構成され、軸状物であり、長さを用途に応じて任意に調整できる。そして、内筒状剛性部材と外筒状剛性部材とを建築構造物用骨組みの地震時などに相対変位の生じそうな部材間に取り付けることにより骨組みの強度を高めるとともに、内外の剛性部材間で相対的な圧縮力と引っ張り力が作用したときにエネルギー吸収体が吸収緩和して振動等を減衰させる。特に、エネルギー吸収体の粘弾性度または弾性度を調整することが可能なため、使用する建築物の骨組みや壁部の強度に容易に応じさせられる。また、たとえば柱と土台および基礎との間で外筒状剛性部材の側面を柱の側面に固定する一方、内筒状剛性部材内を貫通するボルトにより頭部を内筒状剛性部材の上端に係止させ、ボルトの下端側を土台に螺着し、さらにその下端を貫通して基礎に固着することにより、ホールドダウン金物の一部として使用する場合には、地震時に土台からの柱の抜けを阻止するとともに、柱の抜け動作の繰り返しによる振動に対しエネルギー吸収体が伸縮して吸収緩和する。
【0024】
さらに、このダンパー装置によれば、地震等による大きな振動を受けても、ストッパーにより内外の剛性部材が軸方向に過剰に相対変位するのを制限できるので、エネルギー吸収体が破断したり、内外の剛性部材から剥離したりするのを防止できる。
【0025】
本発明の請求項2に係るダンパー装置は、前記ストッパーが、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のいずれか一方に、軸方向に所定の間隔をあけて設けられる(一体に形成された)第1突起部と第2突起部と、他方に、前記第1突起部と第2突起部の間であって当該第1突起部および第2突起部とに当接可能に設けられる(接触可能な位置に一体に形成された)第3突起部とからなることを特徴とする。
【0026】
このようなダンパー装置によれば、簡単な構成で、内外の剛性部材の相対的な軸方向変位を制限することが可能である。各突起部は、相互に当接する際の衝撃に耐えるよう、溶接などの方法で内外の剛性部材に対して一体に形成することが望ましい。
【0027】
請求項3に係るダンパー装置のように、内外の前記剛性部材が軸方向に相対変位していない状態で、前記第1突起部と第3突起部との間隔、および前記第2突起部と第3突起部との間隔が、前記エネルギー吸収体の厚さの2〜4倍であることが好ましい。2倍以下の間隔では、振動を吸収緩和する能力が低く、4倍以上の間隔では、エネルギー吸収体が内外の剛性部材から剥離する恐れがあるからである。
【0028】
請求項4に係るダンパー装置は、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるダンパー装置であって、
内外の前記剛性部材が、周方向に相対回転するのを制限する回転ストッパーを備えていることを特徴とする。
【0029】
上記の構成を有するダンパー装置によれば、内外の剛性部材間に相対的な回転・ねじれが作用したときに、回転ストッパーによりその回転・ねじれを防止できる。さらに、回転ストッパーは、上記した軸方向の相対変位を制限するストッパーと併用して同一のダンパー装置に設けることも可能である。
【0030】
請求項5に係るダンパー装置は、前記回転ストッパーが、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のいずれか一方に、軸方向に沿って形成された凸条部と、他方に形成され前記凸条部が摺動可能に嵌入される長溝部とからなることを特徴とする。
【0031】
このようなダンパー装置によれば、簡単な構成で回転・ねじれを制止できるうえ、凸条部と長溝部との接触抵抗により、ダンパー装置の減衰能力が向上するという利点も有する。
【0032】
請求項6に係るダンパー装置は、前記エネルギー吸収体のせん断弾性係数が、G=0.2〜1.4N/mm2の範囲にあり、等価減衰乗数が、Heq=15〜30%の範囲にあることを特徴とする。粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体としては、この範囲のせん断弾性係数が最も実用性がある。また、等価減衰乗数については、15%以下では内外の剛性部材間で相対的な圧縮力と引っ張り力が作用したときにエネルギー吸収体が吸収緩和して振動等を減衰させることができず、また、30%以上では粘弾性部材または弾性部材の適用範囲を超えてしまうため、この範囲が望ましい。
【0033】
請求項7に係るダンパー装置は、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合し、前記エネルギー吸収体よりも高剛性の延伸性プラグを、前記内筒状剛性部材と前記外筒状剛性部材との内外の筒状壁間に跨り、かつ前記エネルギー吸収体に対し軸方向に直交する方向に貫通させて設けたダンパー装置であって、
前記延伸性プラグが、前記エネルギー吸収体の剛性に対して、少なくとも5〜10倍の剛性を有することを特徴とする。
【0034】
上記の構成を有するダンパー装置であれば、エネルギー吸収体と延伸性プラグとを組み合わせることにより、建築物構造や木造構造に適合した強度とエネルギー吸収力の両方をダンパー装置に持たせることができ、また延伸性プラグは、通常、エネルギー吸収体に対し必要な個数を挿入して取付けるので、強度とエネルギー吸収力の調整が容易に行える。さらに、延伸性プラグの剛性を、エネルギー吸収体の剛性に対して少なくとも5〜10倍としているので、延伸性プラグにトリガーとしての機能を持たせることができる。すなわち、たとえば風や輸送機関などから発生する微小な振動に対しては、延伸性プラグの剛性により内外の剛性部材間に軸方向の変位が生じることがなく、ダンパー装置は剛体としての強度を有することができる。一方、振動が大きい場合、延伸性プラグが変形して内外の剛性部材間に変位が生じ、エネルギー吸収体が作用して振動を吸収・緩和することができる。
【0035】
請求項8に記載のように、前記延伸性プラグは、取替え可能に設けられていることが好ましい。大振動により延伸性プラグに残留変形が残った場合でも、エネルギー吸収体は粘弾性体または弾性体からなるため復元力があるので、プラグのみを取替えてダンパー装置の機能を維持することができる。したがって、このようなダンパー装置によれば、低コストで長期間の使用が可能になる。
【0036】
請求項9に記載のように、前記延伸性プラグの両端部にネジ部を設けるとともに、内外の前記剛性部材の筒状壁にネジ穴をそれぞれ設け、前記延伸性プラグの一端を前記内筒状剛性部材に、他端を前記外筒状剛性部材に対してそれぞれネジ止め可能にすることが好ましい。
【0037】
このように構成すれば、プラグの交換を容易に行え、メンテナンスにかかる手間や費用を抑制することができる。
【0038】
請求項10に係るダンパー装置は、前記延伸性プラグの拘束機構を設けたことを特徴とする。
【0039】
上記の構成を有するダンパー装置によれば、延伸性プラグがエネルギー吸収体の変形とともに変形するので、ダンパー装置の減衰性能が向上する。
【0040】
請求項11に記載のように、前記拘束機構が、前記延伸性プラグの貫通口を有し、前記内筒状剛性部材に対して同心状に間隔をあけて配置される複数枚の鋼板からなることが考えられる。
【0041】
このように構成することにより、エネルギー吸収体の変形を、複数枚の鋼板を介して延伸性プラグに伝えられるので、プラグが単に曲がるのを防ぎ、減衰性を向上させることができる。
【0042】
請求項12に記載のように、前記拘束機構が、前記延伸性プラグの貫通口を有し、前記内筒状剛性部材に対して同心状に間隔をあけて配置され、前記エネルギー吸収体と積層構造をなす複数の鋼管であってもよい。
【0043】
このように構成することにより、鋼管同士の相対位置がエネルギー吸収体の内部で安定するので、エネルギー吸収体の変形が、鋼管を介してより均等に、確実に延伸性プラグに伝わる。
【0044】
また、請求項13に記載のように、前記拘束機構が、前記延伸性プラグを囲むスプリングであってもよい。
【0045】
このように構成することにより、スプリングの復元力によるプラグの復元効果も期待できる。
【0046】
請求項14に係るダンパー装置は、前記エネルギー吸収体を内外の前記剛性部材間に配置して加硫したのち、前記エネルギー吸収体に、前記延伸性プラグを前記外筒状剛性部材のネジ穴から前記内筒状剛性部材のネジ穴まで挿入可能な空洞部を設け、前記延伸性プラグの一端を当該内筒状剛性部材に、他端を当該外筒状剛性部材に、それぞれネジ止めすることにより形成したことを特徴とする。
【0047】
このように形成されたダンパー装置によれば、延伸性プラグを後付けできるため、プラグの個数や配置を自由に選択でき、使用する建築物の骨組みや壁部の強度に容易に応じさせられるという利点がある。
【0048】
請求項15に記載のように、発明に係るダンパー装置は、前記延伸性プラグの表面に非接着処理を施し、当該延伸性プラグの一端を前記内筒状剛性部材のネジ穴に、他端を前記外筒状剛性部材のネジ穴にそれぞれネジ止めしたのち、前記エネルギー吸収体を内外の当該剛性部材間に介在させて加硫することにより形成することもできる。
【0049】
このように形成されたダンパー装置によれば、加硫前に延伸性プラグを内外の剛性部材に固定するので、位置決めされた加硫が可能である。また、延伸性プラグとエネルギー吸収体の接着を防止しているので、プラグの取替えも容易に行える。
【0050】
請求項16に係るダンパー装置は、前記空洞部の容積に対する前記延伸性プラグの充填率(容積率)が、前記エネルギー吸収体の常温状態(24℃)において、90%〜120%の範囲であることを特徴とする。ここで充填率90%というのは、エネルギー吸収体と延伸性プラグとの間に10%の隙間があることをいい、120%というのは、空洞部の容積を20%広げて(エネルギー吸収体を圧縮して)プラグを挿入する状態をいう。
【0051】
ダンパー装置を使用する環境の温度範囲を−20〜60℃と想定した場合、延伸性プラグの充填率がこの範囲にあれば、エネルギー吸収体のせん断変形によるプラグの強制変形が生じ、上記した拘束機構のみの場合よりさらに高い減衰効果が得られる。90%以下の充填率では、エネルギー吸収体の変形がプラグに伝わりにくく、強制変形の効果が得られにくい。また、120%程度の充填率があれば、低温でエネルギー吸収体が収縮した場合でもプラグとの密着性が保たれ、エネルギー吸収体の変形が十分にプラグに伝わる。充填率が高くなるとプラグの挿入に困難が伴うので、これ以上の高い充填率にする必要はない。
【0052】
請求項17に係るダンパー装置は、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合し、高減衰性の延伸性プラグを、前記内筒状剛性部材と前記外筒状剛性部材との内外の筒状壁間に跨り、かつ前記エネルギー吸収体に対し軸方向に直交する方向に貫通させて設けたダンパー装置であって、
前記延伸性プラグが、当該エネルギー吸収体の剛性に対して、少なくとも5〜10倍の剛性を有することを特徴とする。
【0053】
このように構成したダンパー装置によれば、延伸性プラグで振動を吸収・緩和できるため、復元力の高い天然ゴムのような弾性体をエネルギー吸収体として使用できる。
【0054】
請求項18に記載のように、前記延伸性プラグの頭部側が、前記外筒状剛性部材のネジ穴に挿入されたキャップで覆われていると好ましい。このように構成したダンパー装置によれば、内部への雨水の浸入を防ぐことができ、延伸性プラグの劣化を抑制できる。
【0055】
さらに請求項19に記載のように、前記内筒状剛性部材および前記外筒状剛性部材が、前記エネルギー吸収体と接する面において、凹凸形状を有することが好ましい。
【0056】
エネルギー吸収体と内外の剛性部材との接着は、一般的な加硫接着とするが、このように構成したダンパー装置によれば、接着面の表面積が大きくなり、定着力が強化されるので、地震等の大振動による大変形が生じても接着面が剥離するのを防止できる。
【0057】
請求項20に係るダンパー装置は、内外の前記剛性部材間に、前記エネルギー吸収体のシール機構を備えたことを特徴とする。このように構成したダンパー装置によれば、シール機構により、内外の剛性部材間に介在させたエネルギー吸収体に雨水等が浸入するのを防止できる。
【0058】
請求項21に係るダンパー装置は、前記シール機構が、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のうちいずれか一方に全周にわたって形成された環状溝部と、他方に取付けられ前記環状溝部に嵌入される環状パッキンとからなることを特徴とする。
【0059】
パッキンのような耐久性の高い弾性体は、大変形による変位量に追従できるので、このように構成したダンパー装置によれば、シール機構が地震等の大振動でも損なわれることがなく、エネルギー吸収体への雨水等の浸入を防止できる。
【0060】
請求項22に記載のように、前記シール機構が、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のうち、いずれか一方の周面に全周にわたって一体に形成された環状シール部からなり、該環状シール部の先端周面が、他方の周面に摺動可能に当接することも考えられる。
【0061】
このように構成したダンパー装置によれば、内外の剛性部材の相対変位量がいかなる大きさであっても、シール機構が機能してエネルギー吸収体への雨水等の浸入を防止する。さらに、内外の剛性部材が相対変位して環状シール部が他方の周面に対して摺動する際、互いに当接する面に摩擦抵抗が生じるため、ダンパー装置の減衰性能が向上するという利点もある。防水性能を高めるため、環状シール部の先端周面はメタルタッチ仕上げにすることが望ましい。さらにグリスを塗布してもよい。
【0062】
請求項23に係るダンパー装置は、粘弾性部材または弾性部材を同心状に配置された内筒部材と外筒部材との間に介在させて加硫接着してエネルギー吸収リング部材を形成し、内筒状剛性部材とその外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように同心状に配置された外筒状剛性部材とを前記エネルギー吸収リング部材を介して一体的に結合してなることを特徴とする。
【0063】
このように構成したダンパー装置によれば、エネルギー吸収リング部材を部品としてあらかじめ所定の寸法に形成したのち内外の剛性部材間に一体的に結合することができるので、加硫によってエネルギー吸収体が収縮して内外の剛性部材への密着性が低下するのを避けることが可能である。
【0064】
エネルギー吸収リング部材を内外の剛性部材に結合するには、請求項24に記載のように、前記エネルギー吸収リング部材の内筒部材を前記内筒状剛性部材に、前記エネルギー吸収リング部材の外筒部材を前記外筒状剛性部材にそれぞれネジ止めにより固定することが考えられる。ネジ止めによれば、エネルギー吸収リング部材を内外の剛性部材間に確実に一体的に結合することができ、かつ、取替えることも容易に行える。
【発明の効果】
【0065】
本発明のダンパー装置は、簡単な構成で軸方向の過変位や回転方向の変位に対する制止機能を有するとともに、減衰材としてのプラグが取替え可能であり、減衰効果が向上し、エネルギー吸収体と内外の筒状剛性部材との接着性が良好で、プラグやエネルギー吸収体への雨水等の浸入が防止できることなどにより、大振動をより確実に、安定して吸収・緩和できるという効果のほか、メンテナンスが容易で、低コストで建築物に耐震対策を施すことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態としてのダンパー装置1を示す、中央断面図である。
【図2】図1のダンパー装置1の断面図で、図2(a)は、図1のA−A線における断面図、同(b)はB−B線における断面図、同(c)はC−C線における断面図、同(d)はD−D線における断面図をそれぞれ示す。
【図3】延伸性プラグ35の取り付け状態を説明する拡大図である。
【図4】別の拘束機構230を示す斜視図である。
【図5】ダンパー装置1に拘束機構230を設けた状態を示す図で、図5(a)は、延伸性プラグ35付近の中央断面図、同(b)は、同(a)におけるV−V線断面図である。
【図6】さらに別の拘束機構240をダンパー装置1に設けた状態を示す図で、図6(a)は、延伸性プラグ35付近の中央断面図、同(b)は、同(a)におけるVI−VI線断面図である。
【図7】図7(a)は延伸性プラグ35の一例を示す正面図、図7(b)〜(d)は、延伸性プラグ35の設置方法を説明する図である。
【図8】図8(a)・(b)は、もう一つの設置方法を説明する図である。
【図9】回転ストッパー320を設けたダンパー装置31を示し、図9(a)は、回転ストッパー320の断面図、同(b)は、外筒部材312の斜視図、同(c)は、内筒部材313の斜視図である。
【図10】シール機構420を設けたダンパー装置41を示し、図10(a)は、シール機構420の中央断面図、同(b)は、外筒部材412の斜視図、同(c)は、内筒部材413の斜視図である。
【図11】エネルギー吸収リング510を設けたダンパー装置51を示し、図11(a)は、エネルギー吸収リング510の断面図、同(b)は、ダンパー装置51の中央断面図である。
【図12】図12(a)は建物の過大変形を制御している状態を示す説明図、同(b)は建物の応答変位を示すグラフである。
【図13】従来の一般的なブレースに対して圧縮力と引っ張り力を作用させた時の変形を示す線図である。
【図14】従来の一般的なオイルダンパー機構を概念的に示す断面図である。
【図15】ダンパー装置追力試験の試験装置の斜視図である。
【図16】エネルギー吸収体14のせん断弾性係数Gを変化させた場合のダンパー装置1の荷重と変位を示すダンパー荷重−履歴曲線図である。
【図17】図17(a)はプラグ追力試験に用いた試験装置の上面図である。同(b)は同側面図である。同(c)は一部拡大斜視図である。
【図18】延伸性プラグ35と従来の円筒形プラグとを比較した、荷重と変形量との関係を示すプラグ荷重−履歴曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明に係るダンパー装置について実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0068】
図1は実施例1に係るダンパー装置1の軸方向の断面図であり、図2(a)〜図2(d)はそれぞれ図1のA−A線における断面図、B−B線における断面図、C−C線における断面図、D−D線における断面図、図3は、延伸性プラグ35の拡大図である。
図1および図2に示すように、ダンパー装置1は、外側に位置する円筒形状の外筒剛性部材(以下、外筒部材という)12と、この外筒部材12の内側に同心状に位置する円筒状の内筒剛性部材(以下、内筒部材という)13とが、それらの間に同心状に位置する円筒形状のエネルギー吸収体14を介して相対変位可能に一体的に結合されてなる。また、外筒部材12と内筒部材13とに跨る円柱体状の延伸性プラグ35の一対を、図2(a)に示すように、エネルギー吸収体14に対し軸方向に直交する方向に貫通させて相対向して設けている。さらに、外筒部材12と内筒部材13との軸方向の相対変位を制限するストッパー210と、ダンパー装置1のリング状開口部分1aにおけるシール機構としての環状シール部215を備えている。なお、このダンパー装置1は、たとえば小規模な戸建て木造住宅の骨組み(構造物)を構成する2つの要素(図示せず)に跨るように外筒部材12および内筒部材13の各端部をそれぞれ結合して用いられる。
【0069】
エネルギー吸収体14は、せん断弾性係数G=0.2〜1.4N/mm2で高減衰性能(等価減衰定数Heq=15〜30%)を発揮する粘弾性体が使用される。延伸性プラグ35にはトリガー特性が必要なため、エネルギー吸収体14よりも5〜10倍程度高剛性の鉛が使用される。
【0070】
なお、図15の試験装置を用いて、せん断弾性係数G=0.7、1.0、1.2、1.4N/mm2のエネルギー吸収体14をそれぞれ適用したダンパー装置1に、軸方向荷重をかけ、その時のダンパー装置1の変位を測定するダンパー追力試験を行った。その測定結果である荷重−履歴曲線を図16に示す。図16より、せん断弾性係数G=0.7の時、ダンパー装置1の剛性が最も低く、せん断弾性係数G=1.4の時、ダンパー装置1の剛性が最も高くなることがわかった。
【0071】
ストッパー210は、軸方向に並ぶリング状の突起部212・213・214からなる。突起部212は、図1・図2(c)に示すように、外筒部材12の内周面に、軸方向に直交する方向に設けている。また、突起部213および突起部214は、図1・図2(b)に示すように、内筒部材13の外周面に、突起部212の両側に所定の間隔Lをあけてそれぞれ設けている。突起部212・213・214は、内外の筒部材12・13が軸方向に相対変位したときに互いに当接し、内外の筒部材12・13の相対変位を制限することができる寸法を有する。突起部212・213・214の設置は、外筒部材12の内周面および内筒部材13の外周面にネジ切りを施すとともに、各突起部212・213・214の外周面にもネジ切りを施し、突起部213・212・214の順に、内外の筒部材12・13に回転させながら設置している。
【0072】
また、突起部212と、その両側の突起部213・214との間隔Lは、エネルギー吸収体14の厚さTの2〜4倍としている。したがって、外筒部材12と内筒部材13とは、突起部212が、突起部213または突起部214と当接する範囲内(±Lの範囲内)で相対変位可能である。突起部の設置をネジ切りとしているので、間隔L(クリアランス)の調整が自由にできるため、ダンパー装置の剛性のバラツキにより振幅(揺れ幅)の調整が可能となる。なお、すべてをネジ切りで固定せず、突起部213は内筒部材13に、突起部212は外筒部材12にそれぞれ溶接により固定し、突起部214のみを内筒部材13にネジ切りで設置することも可能である。
【0073】
環状シール部215は、ダンパー装置1のリング状開口部分1aを塞ぐように、内筒部材13の外周面に、全周にわたり一体に形成している。エネルギー吸収体14の防水作用をもたせるため、先端周面が外筒部材12の内周面に当接するよう形成し、先端周面をメタルタッチ仕上げにしている。先端周面に、グリスを塗布してもよい。
【0074】
延伸性プラグ35は、ダンパー装置の変形により塑性変形してもスムーズに取り替えられるように、図3(a)に示すように、両端にネジ部35a・35bを設け、外筒部材12と内筒部材13とにそれぞれ設けたネジ穴12a・13aにネジ止めして固定している。この固定方法により、プラグ35塑性変形して残留変形が残っても強制的にプラグ35が離脱できる。プラグ35の頭部に、回転できるように、図3(b)に示す、十文字の凹部35dを設けている。プラグ本体部分35c(ネジ部35a・b以外の部分)は、ネジ穴12aを通過するため、ネジ部35a外径より小さくする。さらに、ネジ定着部近傍の応力集中を避けるため、すなわちプラグ本体部分35cが全面にわたって塑性化するように、本体部分35cの中央に向かうにつれて径を小さくする。(範囲を絞らなくてはならない場合:この時のネジ部35a外径に対するプラグ中央部の外径は、50〜99%の範囲とする。)また、外筒部材12のネジ穴12aを利用して、延伸性プラグ35が外部に接する部分(頭部)に円柱状のキャップ37を嵌め込み、ネジ穴12aを塞いで雨水等の浸入を防いでいる。
【0075】
なお、ここで本発明の延伸性プラグ35と、従来の円筒形のプラグとを用いて、これらに荷重をかけた場合の荷重変形を測定する追力試験を行った。試験装置は図17に示すように、土台にずれ防止ブラケットとプラグ固定ブラケットとを、せん断プレートを挟み込むように固定して、プラグ固定ブラケットとせん断プレートとを貫通するようにプラグを挿通し、これらに固定する。そして、せん断プレートに軸方向荷重をかけ、その時のせん断プレートの変位量をプラグの変形量として測定した。その結果を図18に示す。
図18において、縦軸に荷重、横軸にプラグの変形量をとったグラフであり、波線が本発明の延伸性プラグ35であり、実線が従来の円筒形プラグの結果である。図18に示すとおり、プラグ形状を延伸性プラグ35のようにすることで、荷重履歴曲線が滑らかに連続し、中央部が膨らみ、エネルギー吸収性能が向上したことがわかる。
【実施例2】
【0076】
上記したとおり、図3に示すプラグ35の固定構造により、プラグ35はダンパー装置1の変形とともに塑性変形に至るが、この変形を効率的に行わせるために、つまり減衰性能を向上させるために.図4・図5のようにダンパー装置1のエネルギー吸収体14のゴム層を拘束機構230を介して円周方向全体に積層している。このようにエネルギー吸収体14において複数のゴム層を積層することにより、ダンパー装置1の変形に伴いエネルギー吸収体14、つまりゴム層全体(各ゴム層)が均一に変形し、プラグ35が全断面にわたって有効に塑性変形する。
【0077】
拘束機構230は、図4に示すように、外径の異なる円筒状の鋼管231に延伸性プラグの貫通孔232を設けたものの複数本(図では5本)を同心状に組み合わせた構造からなる。そして、図5(a)・(b)に示すように、外筒部材12と内筒部材13との間に間隔をあけて、同心状に配置している。鋼管231を、エネルギー吸収体14の全長にわたって設けて積層体に形成することにより、さらに効果的にエネルギー吸収体14の変形を延伸性プラグ35に伝達できる。
【実施例3】
【0078】
図6(a)・(b)は、さらに別の拘束機構240として、延伸性プラグ35の周囲にコイルスプリング241を配置した例を示す。コイルスプリング241は復元力も有するので、エネルギー吸収体14の変形を延伸性プラグ35に伝達するだけでなく、延伸性プラグ35に残留変位が生じにくくなり、さらにエネルギー吸収性能が向上する。
【0079】
外筒部材12および内筒部材13には、本例では骨組みを構成する木材よりも剛性の高い鋼管が使用され、エネルギー吸収体14によってダンパー装置1の全体剛性が木造骨組みの強度に近くなるよう調整される。なお、内筒部材13内には、ボルトナット等の留め具を嵌挿したり、内筒部材13内の中空部を埋めて中実部材にすることもできる。また、外筒部材12および内筒部材13の一端に止め環(図示せず)を一体に取り付け、骨組みの各要素に容易に取り付けられるようにすることができる。さらに、外筒部材12内周面および内筒部材13外周面のうち、エネルギー吸収体14を介在させる部分は、ショットブラストまたは成型により凹凸形状に仕上げ、表面積を大きくして加硫接着の強度を高めている。
【実施例4】
【0080】
延伸性プラグ35の設置は、以下の2通りの方法で行うことができる。それぞれについて、図7および図8に基づき説明する。
【0081】
第1の方法においては、エネルギー吸収体14を構成するゴムの加硫後にプラグ35を挿入する方法である.ゴム14部にプラグ形状の空洞をダミーの金型14aを配置してゴム14を装填して加硫し、加硫後に外筒部材12のネジ穴12aを通してプラグ35を挿入する。このため、図7(a)に示すように、プラグ35は上下両端部のネジ部35a・35bに比べて本体部分35cの外径を小さく形成する必要がある。また、両端のネジ部35a・35bの定着部近傍の応力集中を避けるために、つまりプラグ35の本体部分35cが全体にわたって塑性化するように、本体部分35cを両端から中央部に向かうのに伴って漸次外径が小さくなるように形成する.中央部の外径をたとえば、両端ネジ部35a・35bの外径の50〜99%ン範囲で設定する。また、外筒部材12にネジ穴12aを設けるのと同時に、内筒13にも対応する位置にネジ穴13aを設けておく。
【0082】
つまり、外筒部材12と内筒部材13との間にダミー金型14aを配置した状態で、エネルギー吸収体14を構成するゴムを装填し、加硫する(図7(b))。加硫後のゴム14部からダミー金型14aを外方へ引き抜き、エネルギー吸収体14に延伸性プラグ35を挿入する空洞部14bを形成し、ネジ穴12aからネジ穴13aまでを貫通させる(図7(c))。外筒部材12の外側から延伸性プラグ35を挿入してネジ止めし、最後にキャップ37を嵌め込む(図7(d))。空洞部14aの寸法(径)は、空洞部14aの容積に対する延伸性プラグ35の充填率が、エネルギー吸収体14の常温状態(24℃)において90〜120%となるよう設定している。
【実施例5】
【0083】
第2の方法においては、あらかじめ表面に非接着被膜(図示せず)を施した延伸性プラグ35を外筒部材12と内筒部材13とにネジ止めしてキャップ37を嵌め(図8(a))、外筒部材12と内筒部材13との間にエネルギー吸収体14を装填して加硫を行うものである(図8(b))。
【実施例6】
【0084】
本発明に係るダンパー装置の別の実施例について、図9〜図11に基づき、以下に説明する。
【0085】
ダンパー装置には多くの方向から応力が作用するから、図9(d)に示すようにダンパー装置31に対する回転方向Xおよび端部のピン回転面外方向Yの外力が作用しても、ダンパー装置31はスムーズに変形しなければならない。そこで、つぎのような工夫を施している。すなわち、
図9は別の実施例に係る、回転ストッパー320を設けたダンパー装置31を示す。図9(a)は、回転ストッパー320付近の横断面図、同(b)は、外筒部材312の斜視図、同(c)は、内筒部材313の斜視図である。回転ストッパー320は、ダンパー装置31の外筒部材312の内周面に、軸方向に沿って4本形成した長溝部322と、内筒部材313の外周面に、長溝部322に摺動可能に嵌入されるよう軸方向に沿って形成した4本の凸条部323とからなる。回転ストッパー320により、外筒部材312と内筒部材313とは、相対的に回転することがないので、ダンパー装置31は、振動による相対的な回転・ねじれを制止する作用をもつ。また、ダンパー装置31が振動を受けて軸方向に変位する際、長溝部322と凸条部323との接触抵抗が生じて減衰能力(摩擦減衰)も向上する。回転ストッパー320は、ストッパー210と併用することもできる。
【実施例7】
【0086】
図10は、上記した環状シール部215とは別の構成により、エネルギー吸収体14の防水を図るシール機構420を設けたダンパー装置41を示す。図10(a)は、シール機構420の部分断面図で、同(b)は、外筒部材412の斜視図、同(c)は、内筒部材413の斜視図である。シール機構420は、外筒部材412の内周面に全周にわたって取付けたパッキン422と、内筒部材413の外周面に形成した、パッキン422が嵌入される環状溝部423とからなる。パッキン422は、外筒部材412と内筒部材413の相対変位量に追従できる、耐久性の高い弾性体を使用している。
【実施例8】
【0087】
ダンパー装置1の外筒部材12と内筒部材13間にエネルギー吸収体14を構成するゴムを装填して加圧・加硫する一体加硫では、筒体内部が密閉されているため、加硫後のゴムの収縮による接着面への影響が懸念される(収縮により接着力が低下する)。そこで、つぎのようにゴム部分、いいかえればエネルギー吸収体14をリング状に部品化(パーツか)してボルトもしくは溶接で定着するようにしている.本実施例では、溶接は熱による影響が懸念されるので、ボルトにより定着するようにしている。すなわち、
図11に、部品化したエネルギー吸収リング510を、外筒部材12と内筒部材13との間に介在させて一体に結合してなるダンパー装置51を示す。図11(a)は、部品化したエネルギー吸収リング510の断面図で、図11(b)は、エネルギー吸収リング510を2カ所に配置して固定したダンパー装置51の中央断面図である。
【0088】
エネルギー吸収リング510は、鉄製の外管512と内管513の間に、せん断弾性係数G=0.2〜1.4N/mm2で高減衰性能(等価減衰定数Heq=15〜30%)を発揮する粘弾性体514を配置したのち加硫することにより形成している。このエネルギー吸収リング510を、外筒部材12と内筒部材13との間に2本、間隔をあけて配置し、ボルト515により外筒部材12および内筒部材13に対してそれぞれ固定している。
【0089】
ダンパー装置1において、ストッパー210(図1)の間隔Lを50mm(建物の層間変形で30mm)で設定した場合、図12(a)・(b)のように想定以上の地震により層間変形が約40mm変形しようとするところを、設定の30mmに抑えることができる。これにより、建物の過大変形による損傷を防ぐことができ、ダンパーの破損も防げる。
【0090】
本発明に係るダンパー装置は、上記の複数の実施例に限られるものではなく、たとえば円筒状でなく、四角筒状など、他の断面形状をもつこともできる。また、機械系径の防振など減衰性を期待しないでよい場合は、天然ゴム等の復元力の高い弾性体をエネルギー吸収体に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、主として建築構造物および土木構造物の振動低減用のダンパー装置として利用できる。特に、そうした構造用の骨組みに使用することができる。その他、産業用機械、建造物などの設置状態における振動の吸収緩和部材ならびに自動車、家電製品などの振動の吸収部品としても利用できる。
【符号の説明】
【0092】
1・31・41・51 ダンパー装置
12・312・412 外筒剛性部材
13・313・413 内筒剛性部材
14 エネルギー吸収体
35 延伸性プラグ
37 キャップ
38 非接着被膜
210 ストッパー
220・230・240 拘束機構
320 回転ストッパー
420 シール機構
510 エネルギー吸収リング
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建築構造物および土木構造物の振動低減用にたとえば骨組み状態で使用するほか、産業用機械、建造物などの設置状態における振動の吸収緩和部材ならびに自動車、家電製品などの振動の吸収部品としても適用可能なダンパー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記構造物用骨組みの振動低減には、従来、主として、骨組みの部材間にブレースや方杖を取り付けることによって、上記骨組みの剛性や強度を高めて、振動の低減を図っていた。しかし、従来のブレースや方杖は強度抵抗型の部材で、剛性や強度を向上する機能は備えているが、エネルギーを吸収する機能には乏しく、たとえば地震、強風による揺れや振動、および走行する車両の近傍で生じる家屋や建造物などの振動を低減する等価減衰定数(Heq)についてはブレースの場合で10%程度であり、地震などで発生する振動エネルギーを十分に吸収しきれない。また、ブレースに対し圧縮力が作用すると、図13に示すように、座屈が生じるおそれがある。
【0003】
さらに、従来より、車両自体や機械設備自体の振動低減やその他の振動エネルギー吸収にオイルダンパーが用いられているが、このオイルダンパーはオイルダンパーが介設される部材両端間の振動速度がゼロ、つまり停止状態の場合には、耐力が発生しないという問題がある。しかも、オイルダンパーは図14に示すような構造が一般的であるため、エネルギーを吸収するためには十分に長いストロークを確保する必要があるため、コンパクトな製品が製造し難く、適用範囲が制限される。また、オイルダンパーは速度や温度に対して影響を受け易いうえに、油圧の調整や油漏れのほか、ごみや埃の侵入防止のための対策およびメンテナンスが必要であり、さらに製作には精密な加工が要求される。
【0004】
また、摩擦ダンパーについても、摩擦面の摩耗・腐食やごみ・埃の侵入防止対策が必要なうえ、摩擦面の種類によっては、振動数依存性をもつものや比較的早期に焼き付きが生じるものがある。そして、従来の一般的なオイルダンパー、摩擦ダンパーおよび鋼材ダンパーなどのダンパーは、等価減衰定数(Heq)は約20〜25%であり、地震発生時などに振動エネルギーを十分に吸収できないおそれがある。
【0005】
上述したようなブレースや方杖などの部材は、地震時に骨組みに作用するエネルギーを吸収する振動減衰性能を持っていないか、持っていても低いため、設計強度を越えるような大地震の発生時には筋かい等の部材が最初に降伏し、破断あるいは損傷に至る。そして前記部材が一旦破断あるいは損傷した後は同部材による住宅全体としての本来の強度増大効果は望めなくなり、住宅全体が崩壊に至ってしまう。したがって、設計強度を越えるような大地震に対して十分な耐震性能を確保することができないだけでなく、たとえ住宅全体が崩壊しなかったとしても、破断あるいは損傷した補強用部材を交換しない限り、住宅全体を元の強度に復元させることができない。
【0006】
そこで、復元機能を有し、地震時などにおいて振動減衰性能を発揮させられる制振ダンパーや仕口ダンパーが提案されている(たとえば、特許文献1,2参照)。しかしながら、特許文献1,2に記載のものにおいても、等価減衰定数が比較的小さく、地震発生時などに振動エネルギーを十分に吸収できないおそれがあること、構造が複雑で、製作に手間がかかることなど、それぞれ改良の余地がある。
【0007】
これらの課題を解決する技術に、出願人によるダンパー装置がある(特許文献3)。このダンパー装置は、内外の筒状剛性部材と、それらの間に介在させる粘弾性エネルギー吸収体との三部材で最小限構成され、骨組みの強度を高めるとともに、内外の剛性部材間で相対的な圧縮力と引っ張り力が作用したときにエネルギー吸収体が吸収緩和して振動等を減衰させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−110399号公報(段落0011〜0015及び図1〜図3)
【特許文献2】特開2003−247269号公報(段落0016〜0025及び図1〜図3)
【特許文献3】特開2007−278411号公報(段落0030〜0034及び図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3のダンパー装置は、以下の点で課題があった。
【0010】
・過変位(過剰変位)に対するストッパー(制止機能)を有していない。
【0011】
・ダンパーの回転(ねじれ)方向に対する制御(防止)機構を有していない。
【0012】
・減衰材としてのプラグ(鉛他)の取替え機構を有していない。
【0013】
・減衰材としてのプラグ(鉛他)の設置方法が不明。
【0014】
・減衰材としてのプラグ(鉛他)の拘束機構を有していない。
【0015】
・減衰材としてのプラグ(鉛他)が有効に機能する充填率が不明。
【0016】
・トリガー機能の条件(トリガー機能の定義、設計条件等)が不明。
【0017】
・粘弾性体(ゴム)と内筒及び外筒との定着条件が不明。
【0018】
・粘弾性エネルギー吸収体の特性範囲が不明。
【0019】
・一体成型とした場合のゴム収縮に対する接着面への影響が懸念。
【0020】
・耐久性向上のための粘弾性体小口部分のシール(密閉)が必要。
【0021】
この発明は上述の点に鑑みなされたもので、建築構造用および木造構造用骨組みの剛性や強度を向上でき、施工が容易であり、等価減衰定数が大きく、エネルギー吸収効果が高く、剛性・耐力・減衰量・変形能力などに関する設計の自由度が高く、また材料および機能面からメンテナンスがフリーなダンパー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために本発明に係るダンパー装置は、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるダンパー装置であって、
内外の前記剛性部材が、軸方向に相対変位するのを制限するストッパーを備えていることを特徴とする。
【0023】
上記の構成を有する本発明のダンパー装置によれば、内外の筒状剛性部材とエネルギー吸収体との三部材で最小限構成され、軸状物であり、長さを用途に応じて任意に調整できる。そして、内筒状剛性部材と外筒状剛性部材とを建築構造物用骨組みの地震時などに相対変位の生じそうな部材間に取り付けることにより骨組みの強度を高めるとともに、内外の剛性部材間で相対的な圧縮力と引っ張り力が作用したときにエネルギー吸収体が吸収緩和して振動等を減衰させる。特に、エネルギー吸収体の粘弾性度または弾性度を調整することが可能なため、使用する建築物の骨組みや壁部の強度に容易に応じさせられる。また、たとえば柱と土台および基礎との間で外筒状剛性部材の側面を柱の側面に固定する一方、内筒状剛性部材内を貫通するボルトにより頭部を内筒状剛性部材の上端に係止させ、ボルトの下端側を土台に螺着し、さらにその下端を貫通して基礎に固着することにより、ホールドダウン金物の一部として使用する場合には、地震時に土台からの柱の抜けを阻止するとともに、柱の抜け動作の繰り返しによる振動に対しエネルギー吸収体が伸縮して吸収緩和する。
【0024】
さらに、このダンパー装置によれば、地震等による大きな振動を受けても、ストッパーにより内外の剛性部材が軸方向に過剰に相対変位するのを制限できるので、エネルギー吸収体が破断したり、内外の剛性部材から剥離したりするのを防止できる。
【0025】
本発明の請求項2に係るダンパー装置は、前記ストッパーが、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のいずれか一方に、軸方向に所定の間隔をあけて設けられる(一体に形成された)第1突起部と第2突起部と、他方に、前記第1突起部と第2突起部の間であって当該第1突起部および第2突起部とに当接可能に設けられる(接触可能な位置に一体に形成された)第3突起部とからなることを特徴とする。
【0026】
このようなダンパー装置によれば、簡単な構成で、内外の剛性部材の相対的な軸方向変位を制限することが可能である。各突起部は、相互に当接する際の衝撃に耐えるよう、溶接などの方法で内外の剛性部材に対して一体に形成することが望ましい。
【0027】
請求項3に係るダンパー装置のように、内外の前記剛性部材が軸方向に相対変位していない状態で、前記第1突起部と第3突起部との間隔、および前記第2突起部と第3突起部との間隔が、前記エネルギー吸収体の厚さの2〜4倍であることが好ましい。2倍以下の間隔では、振動を吸収緩和する能力が低く、4倍以上の間隔では、エネルギー吸収体が内外の剛性部材から剥離する恐れがあるからである。
【0028】
請求項4に係るダンパー装置は、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるダンパー装置であって、
内外の前記剛性部材が、周方向に相対回転するのを制限する回転ストッパーを備えていることを特徴とする。
【0029】
上記の構成を有するダンパー装置によれば、内外の剛性部材間に相対的な回転・ねじれが作用したときに、回転ストッパーによりその回転・ねじれを防止できる。さらに、回転ストッパーは、上記した軸方向の相対変位を制限するストッパーと併用して同一のダンパー装置に設けることも可能である。
【0030】
請求項5に係るダンパー装置は、前記回転ストッパーが、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のいずれか一方に、軸方向に沿って形成された凸条部と、他方に形成され前記凸条部が摺動可能に嵌入される長溝部とからなることを特徴とする。
【0031】
このようなダンパー装置によれば、簡単な構成で回転・ねじれを制止できるうえ、凸条部と長溝部との接触抵抗により、ダンパー装置の減衰能力が向上するという利点も有する。
【0032】
請求項6に係るダンパー装置は、前記エネルギー吸収体のせん断弾性係数が、G=0.2〜1.4N/mm2の範囲にあり、等価減衰乗数が、Heq=15〜30%の範囲にあることを特徴とする。粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体としては、この範囲のせん断弾性係数が最も実用性がある。また、等価減衰乗数については、15%以下では内外の剛性部材間で相対的な圧縮力と引っ張り力が作用したときにエネルギー吸収体が吸収緩和して振動等を減衰させることができず、また、30%以上では粘弾性部材または弾性部材の適用範囲を超えてしまうため、この範囲が望ましい。
【0033】
請求項7に係るダンパー装置は、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合し、前記エネルギー吸収体よりも高剛性の延伸性プラグを、前記内筒状剛性部材と前記外筒状剛性部材との内外の筒状壁間に跨り、かつ前記エネルギー吸収体に対し軸方向に直交する方向に貫通させて設けたダンパー装置であって、
前記延伸性プラグが、前記エネルギー吸収体の剛性に対して、少なくとも5〜10倍の剛性を有することを特徴とする。
【0034】
上記の構成を有するダンパー装置であれば、エネルギー吸収体と延伸性プラグとを組み合わせることにより、建築物構造や木造構造に適合した強度とエネルギー吸収力の両方をダンパー装置に持たせることができ、また延伸性プラグは、通常、エネルギー吸収体に対し必要な個数を挿入して取付けるので、強度とエネルギー吸収力の調整が容易に行える。さらに、延伸性プラグの剛性を、エネルギー吸収体の剛性に対して少なくとも5〜10倍としているので、延伸性プラグにトリガーとしての機能を持たせることができる。すなわち、たとえば風や輸送機関などから発生する微小な振動に対しては、延伸性プラグの剛性により内外の剛性部材間に軸方向の変位が生じることがなく、ダンパー装置は剛体としての強度を有することができる。一方、振動が大きい場合、延伸性プラグが変形して内外の剛性部材間に変位が生じ、エネルギー吸収体が作用して振動を吸収・緩和することができる。
【0035】
請求項8に記載のように、前記延伸性プラグは、取替え可能に設けられていることが好ましい。大振動により延伸性プラグに残留変形が残った場合でも、エネルギー吸収体は粘弾性体または弾性体からなるため復元力があるので、プラグのみを取替えてダンパー装置の機能を維持することができる。したがって、このようなダンパー装置によれば、低コストで長期間の使用が可能になる。
【0036】
請求項9に記載のように、前記延伸性プラグの両端部にネジ部を設けるとともに、内外の前記剛性部材の筒状壁にネジ穴をそれぞれ設け、前記延伸性プラグの一端を前記内筒状剛性部材に、他端を前記外筒状剛性部材に対してそれぞれネジ止め可能にすることが好ましい。
【0037】
このように構成すれば、プラグの交換を容易に行え、メンテナンスにかかる手間や費用を抑制することができる。
【0038】
請求項10に係るダンパー装置は、前記延伸性プラグの拘束機構を設けたことを特徴とする。
【0039】
上記の構成を有するダンパー装置によれば、延伸性プラグがエネルギー吸収体の変形とともに変形するので、ダンパー装置の減衰性能が向上する。
【0040】
請求項11に記載のように、前記拘束機構が、前記延伸性プラグの貫通口を有し、前記内筒状剛性部材に対して同心状に間隔をあけて配置される複数枚の鋼板からなることが考えられる。
【0041】
このように構成することにより、エネルギー吸収体の変形を、複数枚の鋼板を介して延伸性プラグに伝えられるので、プラグが単に曲がるのを防ぎ、減衰性を向上させることができる。
【0042】
請求項12に記載のように、前記拘束機構が、前記延伸性プラグの貫通口を有し、前記内筒状剛性部材に対して同心状に間隔をあけて配置され、前記エネルギー吸収体と積層構造をなす複数の鋼管であってもよい。
【0043】
このように構成することにより、鋼管同士の相対位置がエネルギー吸収体の内部で安定するので、エネルギー吸収体の変形が、鋼管を介してより均等に、確実に延伸性プラグに伝わる。
【0044】
また、請求項13に記載のように、前記拘束機構が、前記延伸性プラグを囲むスプリングであってもよい。
【0045】
このように構成することにより、スプリングの復元力によるプラグの復元効果も期待できる。
【0046】
請求項14に係るダンパー装置は、前記エネルギー吸収体を内外の前記剛性部材間に配置して加硫したのち、前記エネルギー吸収体に、前記延伸性プラグを前記外筒状剛性部材のネジ穴から前記内筒状剛性部材のネジ穴まで挿入可能な空洞部を設け、前記延伸性プラグの一端を当該内筒状剛性部材に、他端を当該外筒状剛性部材に、それぞれネジ止めすることにより形成したことを特徴とする。
【0047】
このように形成されたダンパー装置によれば、延伸性プラグを後付けできるため、プラグの個数や配置を自由に選択でき、使用する建築物の骨組みや壁部の強度に容易に応じさせられるという利点がある。
【0048】
請求項15に記載のように、発明に係るダンパー装置は、前記延伸性プラグの表面に非接着処理を施し、当該延伸性プラグの一端を前記内筒状剛性部材のネジ穴に、他端を前記外筒状剛性部材のネジ穴にそれぞれネジ止めしたのち、前記エネルギー吸収体を内外の当該剛性部材間に介在させて加硫することにより形成することもできる。
【0049】
このように形成されたダンパー装置によれば、加硫前に延伸性プラグを内外の剛性部材に固定するので、位置決めされた加硫が可能である。また、延伸性プラグとエネルギー吸収体の接着を防止しているので、プラグの取替えも容易に行える。
【0050】
請求項16に係るダンパー装置は、前記空洞部の容積に対する前記延伸性プラグの充填率(容積率)が、前記エネルギー吸収体の常温状態(24℃)において、90%〜120%の範囲であることを特徴とする。ここで充填率90%というのは、エネルギー吸収体と延伸性プラグとの間に10%の隙間があることをいい、120%というのは、空洞部の容積を20%広げて(エネルギー吸収体を圧縮して)プラグを挿入する状態をいう。
【0051】
ダンパー装置を使用する環境の温度範囲を−20〜60℃と想定した場合、延伸性プラグの充填率がこの範囲にあれば、エネルギー吸収体のせん断変形によるプラグの強制変形が生じ、上記した拘束機構のみの場合よりさらに高い減衰効果が得られる。90%以下の充填率では、エネルギー吸収体の変形がプラグに伝わりにくく、強制変形の効果が得られにくい。また、120%程度の充填率があれば、低温でエネルギー吸収体が収縮した場合でもプラグとの密着性が保たれ、エネルギー吸収体の変形が十分にプラグに伝わる。充填率が高くなるとプラグの挿入に困難が伴うので、これ以上の高い充填率にする必要はない。
【0052】
請求項17に係るダンパー装置は、内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合し、高減衰性の延伸性プラグを、前記内筒状剛性部材と前記外筒状剛性部材との内外の筒状壁間に跨り、かつ前記エネルギー吸収体に対し軸方向に直交する方向に貫通させて設けたダンパー装置であって、
前記延伸性プラグが、当該エネルギー吸収体の剛性に対して、少なくとも5〜10倍の剛性を有することを特徴とする。
【0053】
このように構成したダンパー装置によれば、延伸性プラグで振動を吸収・緩和できるため、復元力の高い天然ゴムのような弾性体をエネルギー吸収体として使用できる。
【0054】
請求項18に記載のように、前記延伸性プラグの頭部側が、前記外筒状剛性部材のネジ穴に挿入されたキャップで覆われていると好ましい。このように構成したダンパー装置によれば、内部への雨水の浸入を防ぐことができ、延伸性プラグの劣化を抑制できる。
【0055】
さらに請求項19に記載のように、前記内筒状剛性部材および前記外筒状剛性部材が、前記エネルギー吸収体と接する面において、凹凸形状を有することが好ましい。
【0056】
エネルギー吸収体と内外の剛性部材との接着は、一般的な加硫接着とするが、このように構成したダンパー装置によれば、接着面の表面積が大きくなり、定着力が強化されるので、地震等の大振動による大変形が生じても接着面が剥離するのを防止できる。
【0057】
請求項20に係るダンパー装置は、内外の前記剛性部材間に、前記エネルギー吸収体のシール機構を備えたことを特徴とする。このように構成したダンパー装置によれば、シール機構により、内外の剛性部材間に介在させたエネルギー吸収体に雨水等が浸入するのを防止できる。
【0058】
請求項21に係るダンパー装置は、前記シール機構が、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のうちいずれか一方に全周にわたって形成された環状溝部と、他方に取付けられ前記環状溝部に嵌入される環状パッキンとからなることを特徴とする。
【0059】
パッキンのような耐久性の高い弾性体は、大変形による変位量に追従できるので、このように構成したダンパー装置によれば、シール機構が地震等の大振動でも損なわれることがなく、エネルギー吸収体への雨水等の浸入を防止できる。
【0060】
請求項22に記載のように、前記シール機構が、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のうち、いずれか一方の周面に全周にわたって一体に形成された環状シール部からなり、該環状シール部の先端周面が、他方の周面に摺動可能に当接することも考えられる。
【0061】
このように構成したダンパー装置によれば、内外の剛性部材の相対変位量がいかなる大きさであっても、シール機構が機能してエネルギー吸収体への雨水等の浸入を防止する。さらに、内外の剛性部材が相対変位して環状シール部が他方の周面に対して摺動する際、互いに当接する面に摩擦抵抗が生じるため、ダンパー装置の減衰性能が向上するという利点もある。防水性能を高めるため、環状シール部の先端周面はメタルタッチ仕上げにすることが望ましい。さらにグリスを塗布してもよい。
【0062】
請求項23に係るダンパー装置は、粘弾性部材または弾性部材を同心状に配置された内筒部材と外筒部材との間に介在させて加硫接着してエネルギー吸収リング部材を形成し、内筒状剛性部材とその外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように同心状に配置された外筒状剛性部材とを前記エネルギー吸収リング部材を介して一体的に結合してなることを特徴とする。
【0063】
このように構成したダンパー装置によれば、エネルギー吸収リング部材を部品としてあらかじめ所定の寸法に形成したのち内外の剛性部材間に一体的に結合することができるので、加硫によってエネルギー吸収体が収縮して内外の剛性部材への密着性が低下するのを避けることが可能である。
【0064】
エネルギー吸収リング部材を内外の剛性部材に結合するには、請求項24に記載のように、前記エネルギー吸収リング部材の内筒部材を前記内筒状剛性部材に、前記エネルギー吸収リング部材の外筒部材を前記外筒状剛性部材にそれぞれネジ止めにより固定することが考えられる。ネジ止めによれば、エネルギー吸収リング部材を内外の剛性部材間に確実に一体的に結合することができ、かつ、取替えることも容易に行える。
【発明の効果】
【0065】
本発明のダンパー装置は、簡単な構成で軸方向の過変位や回転方向の変位に対する制止機能を有するとともに、減衰材としてのプラグが取替え可能であり、減衰効果が向上し、エネルギー吸収体と内外の筒状剛性部材との接着性が良好で、プラグやエネルギー吸収体への雨水等の浸入が防止できることなどにより、大振動をより確実に、安定して吸収・緩和できるという効果のほか、メンテナンスが容易で、低コストで建築物に耐震対策を施すことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態としてのダンパー装置1を示す、中央断面図である。
【図2】図1のダンパー装置1の断面図で、図2(a)は、図1のA−A線における断面図、同(b)はB−B線における断面図、同(c)はC−C線における断面図、同(d)はD−D線における断面図をそれぞれ示す。
【図3】延伸性プラグ35の取り付け状態を説明する拡大図である。
【図4】別の拘束機構230を示す斜視図である。
【図5】ダンパー装置1に拘束機構230を設けた状態を示す図で、図5(a)は、延伸性プラグ35付近の中央断面図、同(b)は、同(a)におけるV−V線断面図である。
【図6】さらに別の拘束機構240をダンパー装置1に設けた状態を示す図で、図6(a)は、延伸性プラグ35付近の中央断面図、同(b)は、同(a)におけるVI−VI線断面図である。
【図7】図7(a)は延伸性プラグ35の一例を示す正面図、図7(b)〜(d)は、延伸性プラグ35の設置方法を説明する図である。
【図8】図8(a)・(b)は、もう一つの設置方法を説明する図である。
【図9】回転ストッパー320を設けたダンパー装置31を示し、図9(a)は、回転ストッパー320の断面図、同(b)は、外筒部材312の斜視図、同(c)は、内筒部材313の斜視図である。
【図10】シール機構420を設けたダンパー装置41を示し、図10(a)は、シール機構420の中央断面図、同(b)は、外筒部材412の斜視図、同(c)は、内筒部材413の斜視図である。
【図11】エネルギー吸収リング510を設けたダンパー装置51を示し、図11(a)は、エネルギー吸収リング510の断面図、同(b)は、ダンパー装置51の中央断面図である。
【図12】図12(a)は建物の過大変形を制御している状態を示す説明図、同(b)は建物の応答変位を示すグラフである。
【図13】従来の一般的なブレースに対して圧縮力と引っ張り力を作用させた時の変形を示す線図である。
【図14】従来の一般的なオイルダンパー機構を概念的に示す断面図である。
【図15】ダンパー装置追力試験の試験装置の斜視図である。
【図16】エネルギー吸収体14のせん断弾性係数Gを変化させた場合のダンパー装置1の荷重と変位を示すダンパー荷重−履歴曲線図である。
【図17】図17(a)はプラグ追力試験に用いた試験装置の上面図である。同(b)は同側面図である。同(c)は一部拡大斜視図である。
【図18】延伸性プラグ35と従来の円筒形プラグとを比較した、荷重と変形量との関係を示すプラグ荷重−履歴曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明に係るダンパー装置について実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0068】
図1は実施例1に係るダンパー装置1の軸方向の断面図であり、図2(a)〜図2(d)はそれぞれ図1のA−A線における断面図、B−B線における断面図、C−C線における断面図、D−D線における断面図、図3は、延伸性プラグ35の拡大図である。
図1および図2に示すように、ダンパー装置1は、外側に位置する円筒形状の外筒剛性部材(以下、外筒部材という)12と、この外筒部材12の内側に同心状に位置する円筒状の内筒剛性部材(以下、内筒部材という)13とが、それらの間に同心状に位置する円筒形状のエネルギー吸収体14を介して相対変位可能に一体的に結合されてなる。また、外筒部材12と内筒部材13とに跨る円柱体状の延伸性プラグ35の一対を、図2(a)に示すように、エネルギー吸収体14に対し軸方向に直交する方向に貫通させて相対向して設けている。さらに、外筒部材12と内筒部材13との軸方向の相対変位を制限するストッパー210と、ダンパー装置1のリング状開口部分1aにおけるシール機構としての環状シール部215を備えている。なお、このダンパー装置1は、たとえば小規模な戸建て木造住宅の骨組み(構造物)を構成する2つの要素(図示せず)に跨るように外筒部材12および内筒部材13の各端部をそれぞれ結合して用いられる。
【0069】
エネルギー吸収体14は、せん断弾性係数G=0.2〜1.4N/mm2で高減衰性能(等価減衰定数Heq=15〜30%)を発揮する粘弾性体が使用される。延伸性プラグ35にはトリガー特性が必要なため、エネルギー吸収体14よりも5〜10倍程度高剛性の鉛が使用される。
【0070】
なお、図15の試験装置を用いて、せん断弾性係数G=0.7、1.0、1.2、1.4N/mm2のエネルギー吸収体14をそれぞれ適用したダンパー装置1に、軸方向荷重をかけ、その時のダンパー装置1の変位を測定するダンパー追力試験を行った。その測定結果である荷重−履歴曲線を図16に示す。図16より、せん断弾性係数G=0.7の時、ダンパー装置1の剛性が最も低く、せん断弾性係数G=1.4の時、ダンパー装置1の剛性が最も高くなることがわかった。
【0071】
ストッパー210は、軸方向に並ぶリング状の突起部212・213・214からなる。突起部212は、図1・図2(c)に示すように、外筒部材12の内周面に、軸方向に直交する方向に設けている。また、突起部213および突起部214は、図1・図2(b)に示すように、内筒部材13の外周面に、突起部212の両側に所定の間隔Lをあけてそれぞれ設けている。突起部212・213・214は、内外の筒部材12・13が軸方向に相対変位したときに互いに当接し、内外の筒部材12・13の相対変位を制限することができる寸法を有する。突起部212・213・214の設置は、外筒部材12の内周面および内筒部材13の外周面にネジ切りを施すとともに、各突起部212・213・214の外周面にもネジ切りを施し、突起部213・212・214の順に、内外の筒部材12・13に回転させながら設置している。
【0072】
また、突起部212と、その両側の突起部213・214との間隔Lは、エネルギー吸収体14の厚さTの2〜4倍としている。したがって、外筒部材12と内筒部材13とは、突起部212が、突起部213または突起部214と当接する範囲内(±Lの範囲内)で相対変位可能である。突起部の設置をネジ切りとしているので、間隔L(クリアランス)の調整が自由にできるため、ダンパー装置の剛性のバラツキにより振幅(揺れ幅)の調整が可能となる。なお、すべてをネジ切りで固定せず、突起部213は内筒部材13に、突起部212は外筒部材12にそれぞれ溶接により固定し、突起部214のみを内筒部材13にネジ切りで設置することも可能である。
【0073】
環状シール部215は、ダンパー装置1のリング状開口部分1aを塞ぐように、内筒部材13の外周面に、全周にわたり一体に形成している。エネルギー吸収体14の防水作用をもたせるため、先端周面が外筒部材12の内周面に当接するよう形成し、先端周面をメタルタッチ仕上げにしている。先端周面に、グリスを塗布してもよい。
【0074】
延伸性プラグ35は、ダンパー装置の変形により塑性変形してもスムーズに取り替えられるように、図3(a)に示すように、両端にネジ部35a・35bを設け、外筒部材12と内筒部材13とにそれぞれ設けたネジ穴12a・13aにネジ止めして固定している。この固定方法により、プラグ35塑性変形して残留変形が残っても強制的にプラグ35が離脱できる。プラグ35の頭部に、回転できるように、図3(b)に示す、十文字の凹部35dを設けている。プラグ本体部分35c(ネジ部35a・b以外の部分)は、ネジ穴12aを通過するため、ネジ部35a外径より小さくする。さらに、ネジ定着部近傍の応力集中を避けるため、すなわちプラグ本体部分35cが全面にわたって塑性化するように、本体部分35cの中央に向かうにつれて径を小さくする。(範囲を絞らなくてはならない場合:この時のネジ部35a外径に対するプラグ中央部の外径は、50〜99%の範囲とする。)また、外筒部材12のネジ穴12aを利用して、延伸性プラグ35が外部に接する部分(頭部)に円柱状のキャップ37を嵌め込み、ネジ穴12aを塞いで雨水等の浸入を防いでいる。
【0075】
なお、ここで本発明の延伸性プラグ35と、従来の円筒形のプラグとを用いて、これらに荷重をかけた場合の荷重変形を測定する追力試験を行った。試験装置は図17に示すように、土台にずれ防止ブラケットとプラグ固定ブラケットとを、せん断プレートを挟み込むように固定して、プラグ固定ブラケットとせん断プレートとを貫通するようにプラグを挿通し、これらに固定する。そして、せん断プレートに軸方向荷重をかけ、その時のせん断プレートの変位量をプラグの変形量として測定した。その結果を図18に示す。
図18において、縦軸に荷重、横軸にプラグの変形量をとったグラフであり、波線が本発明の延伸性プラグ35であり、実線が従来の円筒形プラグの結果である。図18に示すとおり、プラグ形状を延伸性プラグ35のようにすることで、荷重履歴曲線が滑らかに連続し、中央部が膨らみ、エネルギー吸収性能が向上したことがわかる。
【実施例2】
【0076】
上記したとおり、図3に示すプラグ35の固定構造により、プラグ35はダンパー装置1の変形とともに塑性変形に至るが、この変形を効率的に行わせるために、つまり減衰性能を向上させるために.図4・図5のようにダンパー装置1のエネルギー吸収体14のゴム層を拘束機構230を介して円周方向全体に積層している。このようにエネルギー吸収体14において複数のゴム層を積層することにより、ダンパー装置1の変形に伴いエネルギー吸収体14、つまりゴム層全体(各ゴム層)が均一に変形し、プラグ35が全断面にわたって有効に塑性変形する。
【0077】
拘束機構230は、図4に示すように、外径の異なる円筒状の鋼管231に延伸性プラグの貫通孔232を設けたものの複数本(図では5本)を同心状に組み合わせた構造からなる。そして、図5(a)・(b)に示すように、外筒部材12と内筒部材13との間に間隔をあけて、同心状に配置している。鋼管231を、エネルギー吸収体14の全長にわたって設けて積層体に形成することにより、さらに効果的にエネルギー吸収体14の変形を延伸性プラグ35に伝達できる。
【実施例3】
【0078】
図6(a)・(b)は、さらに別の拘束機構240として、延伸性プラグ35の周囲にコイルスプリング241を配置した例を示す。コイルスプリング241は復元力も有するので、エネルギー吸収体14の変形を延伸性プラグ35に伝達するだけでなく、延伸性プラグ35に残留変位が生じにくくなり、さらにエネルギー吸収性能が向上する。
【0079】
外筒部材12および内筒部材13には、本例では骨組みを構成する木材よりも剛性の高い鋼管が使用され、エネルギー吸収体14によってダンパー装置1の全体剛性が木造骨組みの強度に近くなるよう調整される。なお、内筒部材13内には、ボルトナット等の留め具を嵌挿したり、内筒部材13内の中空部を埋めて中実部材にすることもできる。また、外筒部材12および内筒部材13の一端に止め環(図示せず)を一体に取り付け、骨組みの各要素に容易に取り付けられるようにすることができる。さらに、外筒部材12内周面および内筒部材13外周面のうち、エネルギー吸収体14を介在させる部分は、ショットブラストまたは成型により凹凸形状に仕上げ、表面積を大きくして加硫接着の強度を高めている。
【実施例4】
【0080】
延伸性プラグ35の設置は、以下の2通りの方法で行うことができる。それぞれについて、図7および図8に基づき説明する。
【0081】
第1の方法においては、エネルギー吸収体14を構成するゴムの加硫後にプラグ35を挿入する方法である.ゴム14部にプラグ形状の空洞をダミーの金型14aを配置してゴム14を装填して加硫し、加硫後に外筒部材12のネジ穴12aを通してプラグ35を挿入する。このため、図7(a)に示すように、プラグ35は上下両端部のネジ部35a・35bに比べて本体部分35cの外径を小さく形成する必要がある。また、両端のネジ部35a・35bの定着部近傍の応力集中を避けるために、つまりプラグ35の本体部分35cが全体にわたって塑性化するように、本体部分35cを両端から中央部に向かうのに伴って漸次外径が小さくなるように形成する.中央部の外径をたとえば、両端ネジ部35a・35bの外径の50〜99%ン範囲で設定する。また、外筒部材12にネジ穴12aを設けるのと同時に、内筒13にも対応する位置にネジ穴13aを設けておく。
【0082】
つまり、外筒部材12と内筒部材13との間にダミー金型14aを配置した状態で、エネルギー吸収体14を構成するゴムを装填し、加硫する(図7(b))。加硫後のゴム14部からダミー金型14aを外方へ引き抜き、エネルギー吸収体14に延伸性プラグ35を挿入する空洞部14bを形成し、ネジ穴12aからネジ穴13aまでを貫通させる(図7(c))。外筒部材12の外側から延伸性プラグ35を挿入してネジ止めし、最後にキャップ37を嵌め込む(図7(d))。空洞部14aの寸法(径)は、空洞部14aの容積に対する延伸性プラグ35の充填率が、エネルギー吸収体14の常温状態(24℃)において90〜120%となるよう設定している。
【実施例5】
【0083】
第2の方法においては、あらかじめ表面に非接着被膜(図示せず)を施した延伸性プラグ35を外筒部材12と内筒部材13とにネジ止めしてキャップ37を嵌め(図8(a))、外筒部材12と内筒部材13との間にエネルギー吸収体14を装填して加硫を行うものである(図8(b))。
【実施例6】
【0084】
本発明に係るダンパー装置の別の実施例について、図9〜図11に基づき、以下に説明する。
【0085】
ダンパー装置には多くの方向から応力が作用するから、図9(d)に示すようにダンパー装置31に対する回転方向Xおよび端部のピン回転面外方向Yの外力が作用しても、ダンパー装置31はスムーズに変形しなければならない。そこで、つぎのような工夫を施している。すなわち、
図9は別の実施例に係る、回転ストッパー320を設けたダンパー装置31を示す。図9(a)は、回転ストッパー320付近の横断面図、同(b)は、外筒部材312の斜視図、同(c)は、内筒部材313の斜視図である。回転ストッパー320は、ダンパー装置31の外筒部材312の内周面に、軸方向に沿って4本形成した長溝部322と、内筒部材313の外周面に、長溝部322に摺動可能に嵌入されるよう軸方向に沿って形成した4本の凸条部323とからなる。回転ストッパー320により、外筒部材312と内筒部材313とは、相対的に回転することがないので、ダンパー装置31は、振動による相対的な回転・ねじれを制止する作用をもつ。また、ダンパー装置31が振動を受けて軸方向に変位する際、長溝部322と凸条部323との接触抵抗が生じて減衰能力(摩擦減衰)も向上する。回転ストッパー320は、ストッパー210と併用することもできる。
【実施例7】
【0086】
図10は、上記した環状シール部215とは別の構成により、エネルギー吸収体14の防水を図るシール機構420を設けたダンパー装置41を示す。図10(a)は、シール機構420の部分断面図で、同(b)は、外筒部材412の斜視図、同(c)は、内筒部材413の斜視図である。シール機構420は、外筒部材412の内周面に全周にわたって取付けたパッキン422と、内筒部材413の外周面に形成した、パッキン422が嵌入される環状溝部423とからなる。パッキン422は、外筒部材412と内筒部材413の相対変位量に追従できる、耐久性の高い弾性体を使用している。
【実施例8】
【0087】
ダンパー装置1の外筒部材12と内筒部材13間にエネルギー吸収体14を構成するゴムを装填して加圧・加硫する一体加硫では、筒体内部が密閉されているため、加硫後のゴムの収縮による接着面への影響が懸念される(収縮により接着力が低下する)。そこで、つぎのようにゴム部分、いいかえればエネルギー吸収体14をリング状に部品化(パーツか)してボルトもしくは溶接で定着するようにしている.本実施例では、溶接は熱による影響が懸念されるので、ボルトにより定着するようにしている。すなわち、
図11に、部品化したエネルギー吸収リング510を、外筒部材12と内筒部材13との間に介在させて一体に結合してなるダンパー装置51を示す。図11(a)は、部品化したエネルギー吸収リング510の断面図で、図11(b)は、エネルギー吸収リング510を2カ所に配置して固定したダンパー装置51の中央断面図である。
【0088】
エネルギー吸収リング510は、鉄製の外管512と内管513の間に、せん断弾性係数G=0.2〜1.4N/mm2で高減衰性能(等価減衰定数Heq=15〜30%)を発揮する粘弾性体514を配置したのち加硫することにより形成している。このエネルギー吸収リング510を、外筒部材12と内筒部材13との間に2本、間隔をあけて配置し、ボルト515により外筒部材12および内筒部材13に対してそれぞれ固定している。
【0089】
ダンパー装置1において、ストッパー210(図1)の間隔Lを50mm(建物の層間変形で30mm)で設定した場合、図12(a)・(b)のように想定以上の地震により層間変形が約40mm変形しようとするところを、設定の30mmに抑えることができる。これにより、建物の過大変形による損傷を防ぐことができ、ダンパーの破損も防げる。
【0090】
本発明に係るダンパー装置は、上記の複数の実施例に限られるものではなく、たとえば円筒状でなく、四角筒状など、他の断面形状をもつこともできる。また、機械系径の防振など減衰性を期待しないでよい場合は、天然ゴム等の復元力の高い弾性体をエネルギー吸収体に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、主として建築構造物および土木構造物の振動低減用のダンパー装置として利用できる。特に、そうした構造用の骨組みに使用することができる。その他、産業用機械、建造物などの設置状態における振動の吸収緩和部材ならびに自動車、家電製品などの振動の吸収部品としても利用できる。
【符号の説明】
【0092】
1・31・41・51 ダンパー装置
12・312・412 外筒剛性部材
13・313・413 内筒剛性部材
14 エネルギー吸収体
35 延伸性プラグ
37 キャップ
38 非接着被膜
210 ストッパー
220・230・240 拘束機構
320 回転ストッパー
420 シール機構
510 エネルギー吸収リング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるダンパー装置であって、
内外の前記剛性部材が、軸方向に相対変位するのを制限するストッパーを備えていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
前記ストッパーが、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のいずれか一方に、軸方向に所定の間隔をあけて設けられる第1突起部と第2突起部と、他方に、前記第1突起部と第2突起部の間であって当該第1突起部および第2突起部とに当接可能に設けられる第3突起部とからなることを特徴とする請求項1記載のダンパー装置。
【請求項3】
内外の前記剛性部材が軸方向に相対変位していない状態で、前記第1突起部と第3突起部との間隔、および前記第2突起部と第3突起部との間隔が、前記エネルギー吸収体の厚さの2〜4倍であることを特徴とする請求項2記載のダンパー装置。
【請求項4】
内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるダンパー装置であって、
内外の前記剛性部材が、周方向に相対回転するのを制限する回転ストッパーを備えていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項5】
前記回転ストッパーが、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のいずれか一方に、軸方向に沿って形成された凸条部と、他方に形成され前記凸条部が摺動可能に嵌入される長溝部とからなることを特徴とする請求項4記載のダンパー装置。
【請求項6】
前記エネルギー吸収体のせん断弾性係数が、G=0.2〜1.4N/mm2の範囲にあり、等価減衰乗数が、Heq=15〜30%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項7】
内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合し、
前記エネルギー吸収体よりも高剛性の延伸性プラグを、前記内筒状剛性部材と前記外筒状剛性部材との内外の筒状壁間に跨り、かつ前記エネルギー吸収体に対し軸方向に直交する方向に貫通させて設けたダンパー装置であって、
前記延伸性プラグが、前記エネルギー吸収体の剛性に対して、少なくとも5〜10倍の剛性を有することを特徴とするダンパー装置。
【請求項8】
前記延伸性プラグが、取替え可能に設けられていることを特徴とする請求項7記載のダンパー装置。
【請求項9】
前記延伸性プラグの両端部にネジ部を設けるとともに、内外の前記剛性部材の筒状壁にネジ穴をそれぞれ設け、前記延伸性プラグの一端を前記内筒状剛性部材に、他端を前記外筒状剛性部材に対してそれぞれネジ止め可能にしたことを特徴とする請求項8記載のダンパー装置。
【請求項10】
前記延伸性プラグの拘束機構を設けたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項11】
前記拘束機構が、前記延伸性プラグの貫通口を有し、前記内筒状剛性部材に対して同心状に間隔をあけて配置される複数枚の鋼板からなることを特徴とする請求項10記載のダンパー装置。
【請求項12】
前記拘束機構が、前記延伸性プラグの貫通口を有し、前記内筒状剛性部材に対して同心状に間隔をあけて配置され、前記エネルギー吸収体と積層構造をなす複数の鋼管であることを特徴とする請求項10記載のダンパー装置。
【請求項13】
前記拘束機構が、前記延伸性プラグを囲むスプリングであることを特徴とする請求項10記載のダンパー装置。
【請求項14】
前記エネルギー吸収体を内外の前記剛性部材間に配置して加硫したのち、前記エネルギー吸収体に、前記延伸性プラグを前記外筒状剛性部材のネジ穴から前記内筒状剛性部材のネジ穴まで挿入可能な空洞部を設け、前記延伸性プラグの一端を当該内筒状剛性部材に、他端を当該外筒状剛性部材に、それぞれネジ止めすることにより形成したことを特徴とする請求項9記載のダンパー装置。
【請求項15】
前記延伸性プラグの表面に非接着処理を施し、当該延伸性プラグの一端を前記内筒状剛性部材のネジ穴に、他端を前記外筒状剛性部材のネジ穴にそれぞれネジ止めしたのち、前記エネルギー吸収体を内外の当該剛性部材間に介在させて加硫することにより形成したことを特徴とする請求項9記載のダンパー装置。
【請求項16】
前記空洞部の容積に対する前記延伸性プラグの充填率が、前記エネルギー吸収体の常温状態において、90%〜120%の範囲であることを特徴とする請求項14記載のダンパー装置。
【請求項17】
内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合し、
高減衰性の延伸性プラグを、前記内筒状剛性部材と前記外筒状剛性部材との内外の筒状壁間に跨り、かつ前記エネルギー吸収体に対し軸方向に直交する方向に貫通させて設けたダンパー装置であって、
前記延伸性プラグが、当該エネルギー吸収体の剛性に対して、少なくとも5〜10倍の剛性を有することを特徴とするダンパー装置。
【請求項18】
前記延伸性プラグの頭部側が、前記外筒状剛性部材のネジ穴に挿入されたキャップで覆われていることを特徴とする請求項7〜17のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項19】
前記内筒状剛性部材および前記外筒状剛性部材が、前記エネルギー吸収体と接する面において、凹凸形状を有することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項20】
内外の前記剛性部材間に、前記エネルギー吸収体のシール機構を備えたことを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項21】
前記シール機構が、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のうちいずれか一方に全周にわたって形成された環状溝部と、他方に取付けられ前記環状溝部に嵌入される環状パッキンとからなることを特徴とする請求項20記載のダンパー装置。
【請求項22】
前記シール機構が、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のうち、いずれか一方の周面に全周にわたって一体に形成された環状シール部からなり、該環状シール部の先端周面が、他方の周面に摺動可能に当接することを特徴とする請求項20記載のダンパー装置。
【請求項23】
粘弾性部材または弾性部材を同心状に配置された内筒部材と外筒部材との間に介在させて加硫接着してエネルギー吸収リング部材を形成し、内筒状剛性部材とその外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように同心状に配置された外筒状剛性部材とを前記エネルギー吸収リング部材を介して一体的に結合してなることを特徴とするダンパー装置。
【請求項24】
前記エネルギー吸収リング部材の内筒部材を前記内筒状剛性部材に、前記エネルギー吸収リング部材の外筒部材を前記外筒状剛性部材にそれぞれネジ止めにより固定したことを特徴とする請求項23記載のダンパー装置。
【請求項1】
内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるダンパー装置であって、
内外の前記剛性部材が、軸方向に相対変位するのを制限するストッパーを備えていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
前記ストッパーが、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のいずれか一方に、軸方向に所定の間隔をあけて設けられる第1突起部と第2突起部と、他方に、前記第1突起部と第2突起部の間であって当該第1突起部および第2突起部とに当接可能に設けられる第3突起部とからなることを特徴とする請求項1記載のダンパー装置。
【請求項3】
内外の前記剛性部材が軸方向に相対変位していない状態で、前記第1突起部と第3突起部との間隔、および前記第2突起部と第3突起部との間隔が、前記エネルギー吸収体の厚さの2〜4倍であることを特徴とする請求項2記載のダンパー装置。
【請求項4】
内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合してなるダンパー装置であって、
内外の前記剛性部材が、周方向に相対回転するのを制限する回転ストッパーを備えていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項5】
前記回転ストッパーが、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のいずれか一方に、軸方向に沿って形成された凸条部と、他方に形成され前記凸条部が摺動可能に嵌入される長溝部とからなることを特徴とする請求項4記載のダンパー装置。
【請求項6】
前記エネルギー吸収体のせん断弾性係数が、G=0.2〜1.4N/mm2の範囲にあり、等価減衰乗数が、Heq=15〜30%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項7】
内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合し、
前記エネルギー吸収体よりも高剛性の延伸性プラグを、前記内筒状剛性部材と前記外筒状剛性部材との内外の筒状壁間に跨り、かつ前記エネルギー吸収体に対し軸方向に直交する方向に貫通させて設けたダンパー装置であって、
前記延伸性プラグが、前記エネルギー吸収体の剛性に対して、少なくとも5〜10倍の剛性を有することを特徴とするダンパー装置。
【請求項8】
前記延伸性プラグが、取替え可能に設けられていることを特徴とする請求項7記載のダンパー装置。
【請求項9】
前記延伸性プラグの両端部にネジ部を設けるとともに、内外の前記剛性部材の筒状壁にネジ穴をそれぞれ設け、前記延伸性プラグの一端を前記内筒状剛性部材に、他端を前記外筒状剛性部材に対してそれぞれネジ止め可能にしたことを特徴とする請求項8記載のダンパー装置。
【請求項10】
前記延伸性プラグの拘束機構を設けたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項11】
前記拘束機構が、前記延伸性プラグの貫通口を有し、前記内筒状剛性部材に対して同心状に間隔をあけて配置される複数枚の鋼板からなることを特徴とする請求項10記載のダンパー装置。
【請求項12】
前記拘束機構が、前記延伸性プラグの貫通口を有し、前記内筒状剛性部材に対して同心状に間隔をあけて配置され、前記エネルギー吸収体と積層構造をなす複数の鋼管であることを特徴とする請求項10記載のダンパー装置。
【請求項13】
前記拘束機構が、前記延伸性プラグを囲むスプリングであることを特徴とする請求項10記載のダンパー装置。
【請求項14】
前記エネルギー吸収体を内外の前記剛性部材間に配置して加硫したのち、前記エネルギー吸収体に、前記延伸性プラグを前記外筒状剛性部材のネジ穴から前記内筒状剛性部材のネジ穴まで挿入可能な空洞部を設け、前記延伸性プラグの一端を当該内筒状剛性部材に、他端を当該外筒状剛性部材に、それぞれネジ止めすることにより形成したことを特徴とする請求項9記載のダンパー装置。
【請求項15】
前記延伸性プラグの表面に非接着処理を施し、当該延伸性プラグの一端を前記内筒状剛性部材のネジ穴に、他端を前記外筒状剛性部材のネジ穴にそれぞれネジ止めしたのち、前記エネルギー吸収体を内外の当該剛性部材間に介在させて加硫することにより形成したことを特徴とする請求項9記載のダンパー装置。
【請求項16】
前記空洞部の容積に対する前記延伸性プラグの充填率が、前記エネルギー吸収体の常温状態において、90%〜120%の範囲であることを特徴とする請求項14記載のダンパー装置。
【請求項17】
内筒状剛性部材の外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように外筒状剛性部材を同心状に配置するとともに、内外の前記剛性部材間に粘弾性部材または弾性部材からなるエネルギー吸収体を介在させて相対変位可能に一体的に結合し、
高減衰性の延伸性プラグを、前記内筒状剛性部材と前記外筒状剛性部材との内外の筒状壁間に跨り、かつ前記エネルギー吸収体に対し軸方向に直交する方向に貫通させて設けたダンパー装置であって、
前記延伸性プラグが、当該エネルギー吸収体の剛性に対して、少なくとも5〜10倍の剛性を有することを特徴とするダンパー装置。
【請求項18】
前記延伸性プラグの頭部側が、前記外筒状剛性部材のネジ穴に挿入されたキャップで覆われていることを特徴とする請求項7〜17のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項19】
前記内筒状剛性部材および前記外筒状剛性部材が、前記エネルギー吸収体と接する面において、凹凸形状を有することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項20】
内外の前記剛性部材間に、前記エネルギー吸収体のシール機構を備えたことを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【請求項21】
前記シール機構が、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のうちいずれか一方に全周にわたって形成された環状溝部と、他方に取付けられ前記環状溝部に嵌入される環状パッキンとからなることを特徴とする請求項20記載のダンパー装置。
【請求項22】
前記シール機構が、前記内筒状剛性部材の外周面または前記外筒状剛性部材の内周面のうち、いずれか一方の周面に全周にわたって一体に形成された環状シール部からなり、該環状シール部の先端周面が、他方の周面に摺動可能に当接することを特徴とする請求項20記載のダンパー装置。
【請求項23】
粘弾性部材または弾性部材を同心状に配置された内筒部材と外筒部材との間に介在させて加硫接着してエネルギー吸収リング部材を形成し、内筒状剛性部材とその外周側に同内筒状剛性部材を囲繞するように同心状に配置された外筒状剛性部材とを前記エネルギー吸収リング部材を介して一体的に結合してなることを特徴とするダンパー装置。
【請求項24】
前記エネルギー吸収リング部材の内筒部材を前記内筒状剛性部材に、前記エネルギー吸収リング部材の外筒部材を前記外筒状剛性部材にそれぞれネジ止めにより固定したことを特徴とする請求項23記載のダンパー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−255850(P2010−255850A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75134(P2010−75134)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】
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