説明

ダンパ装置

【課題】塗装ゾーンのエアバランスを一定の範囲に収めるダンパ装置を提供する。
【解決手段】第1ダクト723の流路を開閉する第1開閉弁611と、第2ダクト726の流路を開閉する第2開閉弁612と、を有し、第1開閉弁611と第2開閉弁612の開閉を作動させるための回転軸614を備え、回転軸614を正転方向と逆転方向に回動させることで、第1開閉弁611が第1ダクト723の流路を閉じているときは第2開閉弁612が第2ダクト726の流路を開き、第1開閉弁611が第1ダクト723の流路を開いているときは第2開閉弁612が第2ダクト726の流路を閉じるように、第1開閉弁611と第2開閉弁612の開度を調節可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関する。特に、自動車の車体などを塗装する塗装設備に用いられるダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車体などを塗装する塗装設備は、塗装ゾーンで排出される高濃度の気化した揮発性有機化合物(以下、VOCという)が大気に放出されることなく回収されている。しかし、従来では、VOCの蒸気の回収のみが単に提案されており、塗装設備内の温度調節、効率的なVOCの回収方法までは考慮されていないという不具合があった。
【0003】
このような不具合に対して、気化したVOCを効率的に回収すると共に、塗装設備の温度調節も可能とするVOC回収装置が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1によるVOC回収装置は、圧縮機、凝縮器、絞り装置、及び蒸発器が配管接続された冷媒循環閉回路を備えている。又、このVOC回収装置は、空気を流通させて室内へ導くダクトを備えている。そして、ダクトの途中に、ダクト内の空気と蒸発器内の冷媒との間で熱交換する冷却部を形成し、冷媒循環閉回路の室内冷房運転動作又は室内暖房運転動作により、ダクト内を流通する空気中のVOCを冷却部で冷却液化して回収している。
【0005】
又、特許文献1によるVOC回収装置は、冷却部よりも送風方向下流側のダクトを室内向けダクトと屋外向けダクトとに分岐して形成している。そして、冷却部からの送風経路を室内向けダクト又は屋外向けダクトに切り換えるダンパ装置をダクトに設けている。
【0006】
したがって、特許文献1によるVOC回収装置は、VOC濃度を低減させた後の空気を室内へ供給するか、又は屋外へ排出するかを自在に選択でき、VOC濃度を低減させた空気を用いて室内を冷却するかしないかを自在に選択することができる、としている。
【特許文献1】特開2006−167575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、前述した塗装設備は、塗装ゾーンで排出される排ガス中のVOCを吸着濃縮して取り除く吸着濃縮装置と、この吸着濃縮装置により吸着されたVOCを燃焼除去する蓄熱燃焼装置と、を備えている。
【0008】
このような塗装設備では、吸着濃縮装置によりVOCが取り除かれた浄化ガス、及び蓄熱燃焼装置によりVOCを燃焼除去する際に生じた高温ガスを塗装ゾーンに帰還させるリサイクルシステムの導入が計画されている。
【0009】
そして、前記浄化ガス及び前記高温ガスをダクトで流通して塗装ゾーンに帰還させるに当たり、この塗装設備では、VOCの濃度が一定値以上になったときに、又は、塗装ゾーンに帰還させる前記浄化ガス及び前記高温ガスの温度が一定値以上になったときに、ダンパ装置を切り換えて大気に放出する必要がある。塗装ゾーンのエアバランスを一定の範囲に収めるためである。
【0010】
特許文献1によるダンパ装置は、VOC濃度を低減させた後の空気を室内へ供給するか、又は屋外(つまり、大気)へ排出するかを自在に選択できるが、塗装ゾーンのエアバランスを一定の範囲に保つために、塗装ゾーンに帰還させるか、大気に放出するかを自動化することは困難である。
【0011】
吸着濃縮装置によりVOCが取り除かれた浄化ガス、及び蓄熱燃焼装置によりVOCを燃焼除去する際に生じた高温ガスを塗装ゾーンに帰還させるリサイクルシステムにおいて、塗装ゾーンのエアバランスを一定の範囲に収めるために好適なダンパ装置が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、塗装ゾーンのエアバランスを一定の範囲に収めるために好適なダンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を満たすため、浄化ガス、又は高温ガスが流通するダクトにインターロック可能なダンパ装置を設け、更に季節変動や運転状況に対応して大気への放出量を調整可能に構成することにより、これらの課題を解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たなダンパ装置を発明した。
【0014】
(1) 第1ダクトの流路を開閉する第1開閉弁と、第2ダクトの流路を開閉する第2開閉弁と、を有し、前記第1開閉弁と前記第2開閉弁の開閉を作動させるための回転軸を備え、前記回転軸を正転方向と逆転方向に回動させることで、前記第1開閉弁が前記第1ダクトの流路を閉じているときは前記第2開閉弁が前記第2ダクトの流路を開き、前記第1開閉弁が前記第1ダクトの流路を開いているときは前記第2開閉弁が前記第2ダクトの流路を閉じるように、前記第1開閉弁と前記第2開閉弁の開度を調節可能としたことを特徴とするダンパ装置。
【0015】
(1)の発明によるダンパ装置は、排気リサイクルシステムにおいて、第1ダクトと第2ダクトとの分岐部に配置されている。排気リサイクルシステムは、所定ゾーン、濃縮装置、燃焼装置、循環装置、及び高温ガスリサイクル手段を備えている。
【0016】
所定ゾーンは、VOCが発生する。濃縮装置は、所定ゾーンから排出された排気中の揮発性有機化合物を吸着して濃縮する。燃焼装置は、濃縮装置により吸着されて濃縮されたVOCを前記濃縮装置から離脱させて燃焼除去する。循環装置は、濃縮装置を通過して浄化された浄化空気を所定ゾーンへ再び導く。高温ガスリサイクル手段は、燃焼装置でVOCを燃焼除去する際に生じた高温ガスを前記所定ゾーンへ導いてリサイクルする。
【0017】
又、排気リサイクルシステムは、第1ダクトと第2ダクトを有している。第1ダクトは、浄化空気又は高温ガスが流通して浄化空気又は高温ガスを所定ゾーンへ再び導く。第2ダクトは、第1ダクトから分岐しており、浄化空気又は高温ガスを大気に放出する。第1ダクトから分岐しており、浄化ガス又は高温ガスを大気に放出する。
【0018】
弁切換装置は、第1開閉弁、第2開閉弁、及び切換手段を有している。第1開閉弁は、第1ダクトの流路を開閉する。第2開閉弁は、第2ダクトの流路を開閉する。切換手段は、第1開閉弁が第1ダクトの流路を閉じているときは第2開閉弁が第2ダクトの流路を開き、第1開閉弁が第1ダクトの流路を開いているときは第2開閉弁が第2ダクトの流路を閉じる。
【0019】
そして、切換手段は、吸着濃縮装置から排出される浄化ガスのVOCの濃度が検出されて作動すると共に、蓄熱燃焼装置から排出される高温ガスの温度が検出されて作動する。
【0020】
ここで、第1ダクトは浄化ガス又は高温ガスが流通して浄化ガス又は高温ガスを複数の塗装ゾーンに帰還させるとは、実態として、浄化ガスが流通する第1の第1ダクトと、高温ガスが流通する第2の第1ダクトと、を塗装設備が有していることを意味している。第1の第1ダクトと第2の第1ダクトは、弁切換装置を通過後は接続して、浄化ガス及び高温ガスが合流して、複数の塗装ゾーンに帰還させることが好ましい。
【0021】
同様に、第2ダクトは第1ダクトから分岐しており、浄化ガス又は高温ガスを大気に放出するとは、第1の第1ダクトから分岐する第1の第2ダクトと、第2の第1ダクトから分岐する第2の第2ダクトと、を塗装設備が有していることを意味している。
【0022】
したがって、ダンパ装置は、第1の第1ダクトと第1の第2ダクトの分岐部に配置される第1の弁切換装置と、第2の第1ダクトと第2の第2ダクトの分岐部に配置される第2の弁切換装置を備えている。第1の弁切換装置と第2の弁切換装置とは、互いに独立して機能(作動)できる。一方、第1の弁切換装置と第2の弁切換装置とは、構成を同一としているので、第1の弁切換装置と第2の弁切換装置とを同じものとして取り扱う。
【0023】
一般に、ダンパ制御は、ダンパと呼ばれる仕切り板をダクトの内部に配置して、ダンパの傾斜角度を変えてダクト内の風量を調整する。すなわち、ダクトの内部に風が流れる方向と直交するようにダンパを配置すれば、ダクト内の風量は最小になり、ダクトの内部に風が流れる方向と平行にダンパを配置すれば、ダクト内の風量は最大になり、ダンパの傾斜角度を変えてダクト内の風量を最小から最大の間に調整できる。
【0024】
通常は、つまり、塗装設備が稼働中は、第1開閉弁が第1ダクトの流路を開いており、第2開閉弁が第2ダクトの流路を閉じているので、第1ダクトは、浄化ガス及び高温ガスが複数の塗装ゾーンに帰還する閉回路を構成している。
【0025】
吸着濃縮装置から排出される浄化ガスのVOCの濃度が検出されて、所定値以上になると切換手段が作動して、第1開閉弁が第1ダクトの流路を閉じ、第2開閉弁が第2ダクトの流路を開いて正常値に復帰できる。又、蓄熱燃焼装置から排出される高温ガスの温度が検出されて、所定値以上になると切換手段が作動して、第1開閉弁が第1ダクトの流路を閉じ、第2開閉弁が第2ダクトの流路を開いて正常値に復帰できる。
【0026】
ここで、弁切換装置は、一方のダンパが一方のダクトを閉じているときは、他方のダンパが他方のダクトを開いており、一方のダンパが一方のダクトを開いているときは、他方のダンパが他方のダクトを閉じている、可逆的な動作が許可される機械的なインターロック機能を有しており、リサイクルシステムの確実性が保証される。
【0027】
(1)の発明によるダンパ装置は、空調機を介して複数の塗装ゾーンに浄化ガスを帰還させるに当たり、浄化ガス中のVOCの濃度を検出して、不適当な検出置の場合には、この浄化ガスを大気に放出し、適切な検出置の場合は、この浄化ガスを空調機に送出する。したがって、常に一定レベルのクリーンエアーをリサイクルできる。又、一定の風量を排気するように切換手段を制御することにより、塗装ゾーンのエアバランスを一定の範囲に収めることができる。
【0028】
又、(1)の発明によるダンパ装置は、蓄熱燃焼装置が発生する高温ガスを複数の塗装ゾーンに帰還させるに当たり、蓄熱燃焼装置から排出される高温ガスの温度が検出されて切換手段が作動する。例えば、蓄熱燃焼装置が立ち上がり時は、高温ガスが所定の温度に到達していないので、この高温ガスを大気に自動放出する。一方、高温ガスが所定の温度に到達した時点から、この高温ガスを複数の塗装ゾーンに帰還させてリサイクルする。
【0029】
このように、(1)の発明によるダンパ装置は、蓄熱燃焼装置から排出される高温ガスを所定の温度で熱回収(サーマルリサイクル)できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によるダンパ装置は、空調機を介して複数の塗装ゾーンに浄化ガスを帰還させるに当たり、浄化ガス中のVOCの濃度を検出して、不適当な検出置の場合には、この浄化ガスを大気に放出し、適切な検出置の場合は、この浄化ガスを空調機に送出する。したがって、常に一定レベルのクリーンエアーをリサイクルできる。又、一定の風量を排気するように切換手段を制御することにより、塗装ゾーンのエアバランスを一定の範囲に収めることができる。
【0031】
又、本発明によるダンパ装置は、蓄熱燃焼装置が発生する高温ガスを複数の塗装ゾーンに帰還させるに当たり、蓄熱燃焼装置から排出される高温ガスの温度が検出されて切換手段が作動する。本発明によるダンパ装置は、蓄熱燃焼装置から排出される高温ガスを所定の温度でサーマルリサイクルできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0033】
図1は、本発明による一実施形態のダンパ装置が用いられる塗装設備の一実施形態を示す構成図である。図2は、前記実施形態によるダンパ装置の正面図である。図3は、前記実施形態によるダンパ装置の斜視図であり、ダンパ装置の駆動にサーボモータを用いている。図4は、前記実施形態によるダンパ装置の斜視図であり、ダンパ装置の駆動にエアシリンダを用いている。
【0034】
最初に、本発明の実施形態によるダンパ装置が用いられる塗装設備の構成を説明する。図1に示された塗装設備100は、被塗装物として自動車の車体を塗装している。そして、塗装設備100は、塗装システム110、吸着濃縮装置200、蓄熱燃焼装置300、及びリサイクルシステム130を備えている。
【0035】
図1において、塗装システム110は、複数の塗装ゾーン111・111を備えている。吸着濃縮装置200は、塗装システム110から排出された排ガス中のVOCを吸着して濃縮する。蓄熱燃焼装置300は、吸着濃縮装置200により吸着されて濃縮されたVOCを燃焼除去する。吸着濃縮装置200と蓄熱燃焼装置300とは、塗装システム110から排出された排気中に含まれるVOCを除去するVOC除去システム120を構成している。
【0036】
図1において、リサイクルシステム130は、吸着濃縮装置200を通過して浄化された浄化ガス、及び蓄熱燃焼装置300によりVOCを燃焼除去する際に生じた高温ガスを複数の塗装ゾーン111・111に帰還させる。
【0037】
複数の塗装ゾーン111・111は、被塗装物の搬送方向に沿って配置されている。塗装システム110は、空気供給装置112、空気供給路113、及び乾燥炉114を更に備えている。空気供給装置112は、複数の塗装ゾーン111に空気を空調して供給している。空気供給路113は、空調された空気が流通する。乾燥炉114は、後述するフィルタ装置400に内蔵されたフィルタを乾燥するための空気が送られる。
【0038】
塗装ゾーン111は、空気供給路113を通じて空気供給装置112から供給された空気を拡散させて速度を下げ、圧力を高める静圧室111Aを備えている。又、塗装ゾーン111は、静圧室111Aの下面を一旦塞ぎ、空気を下向きの流れにして下方へ吐出させる上部整流板111Bを備えている。
【0039】
又、塗装ゾーン111は、上部整流板111Bの下方に位置する塗装室111Cを備えている。塗装室111Cの内部には、被塗装物を塗装する塗装ロボット111Dが配置されている。塗装室111Cの下方には、排気供給路115が配置されている。
【0040】
塗装ゾーン111では、被塗装物に対して、塗装ロボット111Dにより塗装が施される。空気供給装置112から塗装ゾーン111に供給された空気は、排気ファン(図示せず)によって排気供給路115から排出される。
【0041】
VOC除去システム120は、フィルタ装置400と活性炭フィルタ装置500を備えている。フィルタ装置400は、排気供給路115から排出された排気が通過する。活性炭フィルタ装置500は、フィルタ装置400の下流に設けられており、フィルタ装置400を通過した排気が通過する。
【0042】
吸着濃縮装置200は、活性炭フィルタ装置500の下流に設けられており、活性炭フィルタ装置500を通過した排気中に含まれるVOCを吸着して濃縮する。蓄熱燃焼装置300は、吸着濃縮装置200で吸着されて濃縮されたVOCを燃焼除去する。
【0043】
フィルタ装置400は、塗装システム110から排出された排気の流路上に配置されており、複数の塗装ゾーン111及び乾燥炉114から排出された排気中に含まれる塗料ミストや塗装かすなどを除去する。
【0044】
活性炭フィルタ装置500は、塗装システム110から排出された排気中に含まれるVOCの一部を吸着したり、この吸着したVOCの一部を放出したりして、活性炭フィルタ装置500の下流側に設けられた吸着濃縮装置200に供給される排気中のVOC濃度を調整する。
【0045】
図1において、第1ダクト735は、吸着濃縮装置200を通過して浄化された浄化ガスが流通して複数の塗装ゾーン111・111に帰還させる。第2ダクト736は、第1ダクト735から分岐しており、浄化ガスを大気に放出できる。そして、第1のダンパ装置である第1の弁切換装置(以下、ダンパ装置という)610は、第1ダクト735と第2ダクト736の分岐部に配置されている。
【0046】
一方、図1において、第1ダクト723は、蓄熱燃焼装置300によりVOCを燃焼除去する際に生じた高温ガスが流通して複数の塗装ゾーン111・111に帰還させる。第2ダクト726は、第1ダクト723から分岐しており、高温ガスを大気に放出できる。そして、第2のダンパ装置である第2の弁切換装置(以下、ダンパ装置という)620は、第1ダクト723と第2ダクト726の分岐部に配置されている。
【0047】
次に、本発明の実施形態によるダンパ装置の構成を説明する。なお、第1のダンパ装置610と第2のダンパ装置620とは、構成を同一としているので、第1のダンパ装置610を代表して説明する。
【0048】
図2を参照すると、ダンパ装置610は、第1開閉弁611、第2開閉弁612、及び切換手段613を有している。第1開閉弁611は、第1ダクト735の流路を開閉する。第2開閉弁612は、第2ダクト736の流路を開閉する。切換手段613は、第1開閉弁611が第1ダクト735の流路を閉じているときは第2開閉弁612が第2ダクト736の流路を開き、第1開閉弁611が第1ダクト735の流路を開いているときは第2開閉弁612が第2ダクト736の流路を閉じる。
【0049】
図1を参照すると、切換手段613は、吸着濃縮装置200から排出される浄化ガスのVOCの濃度が検出されて作動すると共に、蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスの温度が検出されて作動する。
【0050】
図2を参照すると、第1開閉弁611は、第1梃子クランク611aを有している。第1梃子クランク611aの一端部を回動すると、第1開閉弁611を回動できる。又、第2開閉弁612は、第2梃子クランク612aを有している。第2梃子クランク612aの一端部を回動すると第2開閉弁612を回動できる。
【0051】
図2を参照すると、切換手段613は、回転軸614、回動手段615(図3及び図4参照)、揺動円板616、第1リンク棒617、及び第2リンク棒618を有している。回転軸614は、第1ダクト735の浄化ガス(又は第1ダクト723の高温ガス)の流通方向と略直交する向きに、第1ダクト735を横断している。回動手段615は、第1ダクト735の外部に配置されており、回転軸614を回動させる(図3及び図4参照)。
【0052】
図2を参照すると、揺動円板616は、回転軸614と同軸に取り付けられている。又、揺動円板616は、中心から所定の角度に開角する円周上の2点に回転結合点C1・C2を設けている。
【0053】
図2を参照すると、第1リンク棒617は、一方の回転結合点C1に一端部が回転結合し、第1梃子クランク611aの一端部に他端部が回転結合している。第2リンク棒618は、他方の回転結合点C2に一端部が回転結合し、第2梃子クランク612aの一端部に他端部が回転結合している。
【0054】
図2を参照すると、ダンパ装置610は、第1梃子クランク611a、第1リンク棒617、及び揺動円板616が第1の梃子クランク機構K1を構成している。第1の梃子クランク機構K1は、最短リンクである第1梃子クランク611aと対偶をなすリンク(本発明の実施形態の場合、第1ダクト735の隔壁が相当する)が固定リンクの場合に成り立っている。第1の梃子クランク機構K1は、揺動円板616を所定の角度に往復角運動をすると、第1リンク棒617に運動が伝達されて、第1梃子クランク611aを揺動できる。すなわち、第1開閉弁611を所定の角度に傾動できる。
【0055】
又、図2を参照すると、ダンパ装置610は、第2梃子クランク612a、第2リンク棒618、及び揺動円板616が第2の梃子クランク機構K2を構成している。第2の梃子クランク機構K2は、最短リンクである第2梃子クランク612aと対偶をなすリンク(本発明の実施形態の場合、第1ダクト735の隔壁が相当する)が固定リンクの場合に成り立っている。第2の梃子クランク機構K2は、揺動円板616を所定の角度に往復角運動をすると、第2リンク棒618に運動が伝達されて、第2梃子クランク612aを揺動できる。すなわち、第2開閉弁612を所定の角度に傾動できる。
【0056】
図2を参照すると、通常時は、第1梃子クランク611aが第1ダクト735の浄化ガス(又は、第1ダクト723の高温ガス)の流通方向と略直交する向き配置され、第1開閉弁611が第1ダクト735を開いている。一方、第2梃子クランク612aが第2ダクト736の浄化ガス(又は、第1ダクト723の高温ガス)の流通方向と平行する向き配置され、第2開閉弁612が第2ダクト736を閉じている。
【0057】
そして、揺動円板616を一方の方向に所定の角度に回動すると、第1梃子クランク611aの一端部は第1リンク棒617に引きずられて、第1開閉弁611が第1ダクト735を閉じることができる。一方、揺動円板616を一方の方向に所定の角度に回動すると、第2梃子クランク612aの一端部は第2リンク棒618に押されて、第2開閉弁612が第2ダクト736を開くことができる。
【0058】
反対に、揺動円板616を他方の方向に所定の角度に回動すると、第1梃子クランク611aの一端部は第1リンク棒617に押されて、第1開閉弁611が第1ダクトを開くことができる。一方、揺動円板616を他方の方向に所定の角度に回動すると、第2梃子クランク612aの一端部は第2リンク棒618に引きずられて、第2開閉弁612が第2ダクト736を閉じることができる。
【0059】
図2を参照すると、揺動円板616は、二つの回転結合点C1・C2を等間隔に設けている。第1リンク棒617及び第2リンク棒618は、それらの長さが固定されているので、例えば、第2リンク棒618の一端部を別の回転結合点C2に付け替えて、第2開閉弁612の開口率を微調整できる。
【0060】
図3及び図4を参照すると、ダンパ装置610は、第1開閉弁611、第2開閉弁612、及び揺動円板616を4つに分割配置している。ダンパ装置610は、第1の梃子クランク機構K1及び第2の梃子クランク機構K2を4つに分割配置しているということもできる。ダンパ装置610は、第1開閉弁611、第2開閉弁612、及び揺動円板616を分割配置しているので、第1開閉弁611及び第2開閉弁612の開口率を更に微調整できる。
【0061】
図3を参照すると、回動手段615は、出力軸が回転軸614の一端部と連結するサーボモータ615mからなっている。
【0062】
サーボモータ615mに油圧サーボモータを用いれば、リサイクルシステムの確実性が保証されるメカニカルなダンパ装置を実現できる。サーボモータ615mで揺動円板616を角度制御することにより、常に一定量のガスを排気して、塗装ゾーン111のエアバランスの乱れを防止できる(図1参照)。
【0063】
図4を参照すると、回動手段615は、ピストンロッド615rのストロークを可変可能なポジショニングエアシリンダ615cからなっている。回転軸614の一端部は、回転軸614を回動させるクランク棒614cを有している。そして、進退するピストンロッド615rの先端部がクランク棒614cの先端部と連結している。
【0064】
図4において、ダンパ装置610は、ピストンロッド615rのストロークが揺動円板616の回動角度に変換される。揺動円板616を駆動するアクチュエータとしてエアシリンダを用いることにより、メカニカルなダンパ装置を実現できる。ポジショニングエアシリンダは、ピストンロッドのストロークを細分化できるという利点がある。
【0065】
次に、本発明の実施形態によるダンパ装置の作用を説明する。
【0066】
図1及び図2を参照すると、通常は、つまり、塗装設備100が稼働中は、第1開閉弁611が第1ダクト735・723の流路を開いており、第2開閉弁612が第2ダクト736・726の流路を閉じているので、第1ダクト735・723は、浄化ガス及び高温ガスが複数の塗装ゾーン111・111に帰還する閉回路を構成している。
【0067】
図1及び図2を参照すると、吸着濃縮装置200から排出される浄化ガスのVOCの濃度が検出器S1で検出されて、所定値以上になると切換手段613が作動して、第1開閉弁611が第1ダクト735の流路を閉じ、第2開閉弁612が第2ダクト736の流路を開いて正常値に復帰できる。なお、検出器S1は、図示された場所に限定されない、インターロック機能が作用する適正な場所に配置されることが好ましい。
【0068】
又、図1及び図2を参照すると、蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスの温度が検出器S2で検出されて、所定値以上になると切換手段613が作動して、第1開閉弁611が第1ダクト723の流路を閉じ、第2開閉弁612が第2ダクト726の流路を開いて正常値に復帰できる。なお、検出器S2は、図示された場所に限定されない、インターロック機能が作用する適正な場所に配置されることが好ましい。
【0069】
本発明の実施形態によるダンパ装置は、一方のダンパが一方のダクトを閉じているときは、他方のダンパが他方のダクトを開いており、一方のダンパが一方のダクトを開いているときは、他方のダンパが他方のダクトを閉じている、可逆的な動作が許可される機械的なインターロック機能を有しており、リサイクルシステムの確実性が保証される。
【0070】
図1を参照すると、本発明の実施形態によるダンパ装置610は、図示しない空調機を介して複数の塗装ゾーン111・111に吸着濃縮装置200の浄化ガスを帰還させるに当たり、浄化ガス中のVOCの濃度を検出して、不適当な検出置の場合には、この浄化ガスを大気に放出し、適切な検出置の場合は、この浄化ガスを空調機に送出する。したがって、常に一定レベルのクリーンエアーをリサイクルできる。又、一定の風量を排気するように切換手段613を制御することにより、塗装ゾーン111のエアバランスを一定の範囲に収めることができる。
【0071】
又、図1を参照すると、本発明の実施形態によるダンパ装置620は、蓄熱燃焼装置300が発生する高温ガスを複数の塗装ゾーン111・111に帰還させるに当たり、蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスの温度が検出されて切換手段613が作動する。例えば、蓄熱燃焼装置300が立ち上がり時は、高温ガスが所定の温度に到達していないので、この高温ガスを大気に自動放出する。一方、高温ガスが所定の温度に到達した時点から、この高温ガスを複数の塗装ゾーン111・111に帰還させてリサイクルする。
【0072】
このように、本発明の実施形態によるダンパ装置620は、蓄熱燃焼装置300から排出される高温ガスを所定の温度で熱回収(サーマルリサイクル)できる。
【0073】
図2から図4を参照すると、本発明の実施形態によるダンパ装置は、一方のダンパが一方のダクトを閉じているときは、他方のダンパが他方のダクトを開いており、一方のダンパが一方のダクトを開いているときは、他方のダンパが他方のダクトを閉じている、可逆的な動作が許可される機械的なインターロック機能を有しており、リサイクルシステムの確実性が保証されるメカニカルなダンパ装置を実現している。電気的に制御されるダンパ装置と比較して、メカニカルなダンパ装置は、一般に、誤動作が少ないとされている。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明による一実施形態のダンパ装置が用いられる塗装設備の一実施形態を示す構成図である。
【図2】前記実施形態によるダンパ装置の正面図である。
【図3】前記実施形態によるダンパ装置の斜視図であり、ダンパ装置の駆動にサーボモータを用いている。
【図4】前記実施形態によるダンパ装置の斜視図であり、ダンパ装置の駆動にエアシリンダを用いている。
【符号の説明】
【0075】
610・620 ダンパ装置
611 第1開閉弁
612 第2開閉弁
614 回転軸
723・735 第1ダクト
726・736 第2ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ダクトの流路を開閉する第1開閉弁と、第2ダクトの流路を開閉する第2開閉弁と、を有し、
前記第1開閉弁と前記第2開閉弁の開閉を作動させるための回転軸を備え、
前記回転軸を正転方向と逆転方向に回動させることで、
前記第1開閉弁が前記第1ダクトの流路を閉じているときは前記第2開閉弁が前記第2ダクトの流路を開き、
前記第1開閉弁が前記第1ダクトの流路を開いているときは前記第2開閉弁が前記第2ダクトの流路を閉じるように、前記第1開閉弁と前記第2開閉弁の開度を調節可能としたことを特徴とするダンパ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−54179(P2010−54179A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222802(P2008−222802)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】