説明

ダンプトラック

【課題】左右のブレーキの効きにタイムラグが生じないようにしつつ、複雑な防災構造を不要にできるダンプトラックを提供すること。
【解決手段】ダンプトラック1では、前輪に設けられたサービスブレーキ49,51と、作動油を各サービスブレーキ49,51に分岐して出力する分岐ブロック46とを備え、分岐ブロック46は、車幅方向の略中央に配置された排気管12に対して車幅方向にオフセットして設けられ、分岐ブロック46と各サービスブレーキとを接続する油圧ライン47,48は、車幅方向の略中央を通って配置されているとともに、分岐ブロック46から前記中央までの間で並設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックに係り、特にブレーキ機器ボックスのレイアウトの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉱山等で稼動する大型のダンプトラックの防災カバーが知られている。車体フレームに沿って設けられた油圧配管が損傷した場合に、その損傷部分から飛散する圧油がエンジンにかからないよう、エンジンと配管との間を仕切る門形フレームには、エンジンの後部を覆う防災カバーが取り付けられるのである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、そのようなダンプトラックにおいては、エンジンからの排気ガスがベッセルを通って排気される構造であり、ベッセル内に排気ガスを通すことでベッセルを暖め、ベッセル内に積載した土砂類の荷離れを向上させている。従って、エンジンからベッセルまでは、排気ガスを通すための排気管が配置されている。
【0004】
一方、ダンプトラックの制動装置としては、サービスブレーキ(フットブレーキ)のペダル操作に応じた制動油圧が分岐ブロックで左右に分配され、左右の各走行輪に装着された湿式多板ブレーキに作用する構造になっている。この際、特にフロントブレーキの油圧の配管経路において、分岐ブロックからブレーキまでの配管長さが左右で異なっていると、左右のブレーキの効き始めにタイムラグが発生し、片効きとなって車体の向きが振れてしまう。これを防止するために、フロントブレーキ用の分岐ブロックは、プラットホーム後部の車体左右中央に配置され、左右の配管長さを等しくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−68871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ダンプトラックの分岐ブロック等の油圧機器は、高温となる排気管の上部に配置されているため、特許文献1での建設機械と同様に、それらの油圧機器と油圧配管との接続部や、油圧配管同士の継ぎ目部から作動油が飛散しても、高温の排気管にかからないよう複雑な防災構造が採用されている。
【0007】
具体的に、排気管は防災カバーによって覆われる。また、分岐ブロック等の油圧機器はブレーキ機器ボックスといった箱状の部材に収容される。さらに、飛散した作動油がブレーキ機器ボックスから外部に漏れ出さないように、ブレーキ機器ボックスの隙間がゴムプレートで覆われたり、ブレーキ機器ボックスにドレンホースが設けられたり、ブレーキ機器ボックスから漏れてしまった作動油が前方や左右に流れて排気管に至らないよう、防災カバー上に囲い部分が設けられる。
【0008】
本発明の目的は、左右のブレーキの効きにタイムラグが生じないようにしつつ、複雑な防災構造を不要にできるダンプトラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係るダンプトラックは、車体フレームの車幅方向の両側に配置された走行輪と、前記両側の走行輪にそれぞれ設けられたサービスブレーキと、制動を生じさせるための作動油を前記各サービスブレーキに分岐して出力する分岐ブロックとを備え、前記分岐ブロックは、車幅方向の中央から当該車幅方向にオフセットして設けられ、前記分岐ブロックと前記各サービスブレーキとを接続する油圧ラインは、車幅方向の略中央を通って配置されているとともに、前記分岐ブロックから前記中央までの間で並設されていることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係るダンプトラックでは、前記車幅方向の一端側に設けられたキャブを備え、前記分岐ブロックは、前記キャブの背後に設けられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係るダンプトラックでは、前記サービスブレーキへの作動油の供給を調整するサービスブレーキバルブおよびリターダバルブと、前記サービスブレーキバルブからの作動油の油圧、および前記リターダバルブからの作動油の油圧のうち、高い油圧の作動油を出力するシャトルバルブとを備え、前記シャトルバルブは、前記キャブの背後に設けられ、前記シャトルバルブと前記サービスブレーキバルブおよび前記リターダバルブとを接続する油圧ラインは、前記車幅方向の略中央を通って配置され、かつ前記分岐ブロックと前記各サービスブレーキとを接続する油圧ラインに並設されていることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係るダンプトラックでは、前記シャトルバルブおよび前記分岐ブロックは、箱状のブレーキ機器ボックスに収容されていることを特徴とする。
第5発明に係るダンプトラックでは、前記ブレーキ機器ボックスには、排気ブレーキ用の電磁バルブが収容されていることを特徴とする。
第6発明に係るダンプトラックでは、前記ブレーキ機器ボックスには、ABS(Antiskid Brake System ; Antilock Brake System)用のABSキャンセルバルブおよびABSバルブが収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、分岐ブロックといったブレーキに関する油圧機器は、車幅方向の中央からオフセットしていることで、排気管や、排気ターボ過給機、エンジン等の高温機器およびこれを覆う防災カバー等の上方からずれた位置に配置されるので、そのような油圧機器から飛散した作動油が高温機器に降り掛かる心配がない。従って、防災カバー周辺では、従来のような複雑な防災構造を不要にできる。
また、分岐ブロックとサービスブレーキとを接続する油圧ラインは、車幅方向の略中央を通って並設されているため、左右のサービスブレーキに対する油圧ラインの長さを略同じにでき、各サービスブレーキでの制動力が生じるまでのタイムラグを小さくできて、ブレーキの片効きを抑制できる。
【0014】
第2発明によれば、車幅方向の一端側に配置されたキャブの下方には、走行輪などが配置されているのであり、高温となる機器や部位が存在しないから、そのようなキャブの後方側に分岐ブロックを配置することにより、分岐ブロックから万が一作動油が漏れ出しても、高温機器等に降り掛かる心配がなく、火災防止にはより有効である。
【0015】
第3発明によれば、シャトルバルブとサービスブレーキバルブおよびリターダバルブとを接続する油圧ラインについても、車幅方向の略中央を通って並設されているので、ブレーキの片効きを一層確実に防止できる。
【0016】
第4〜第6発明によれば、シャトルバルブ、分岐ブロック、排気ブレーキ用の電磁バルブ、ABSキャンセルバルブ、ABSバルブ等の油圧機器がブレーキ機器ボックスに収用されるので、これらに接続される油圧ラインも集約して配置でき、油圧ライン上での継ぎ目部分も集中配置できる。このため、そのような継ぎ目部分での防災構造としては、集約した継ぎ目部分をまとめて防災カバー等で覆えばよく、個々に防災カバー等を設置する必要がなくて、構造を一層簡素化できる。
また、それらの油圧機器がブレーキ機器ボックスで覆われるので、外観を良好にできるうえ、油圧機器の耐候性、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るダンプトラックの全体を示す斜視図。
【図2】ダンプトラックの要部であり、排気管位置を示す側面図。
【図3】ダンプトラックの要部およびフロントブレーキ用の油圧の経路を模式的に示す平面図。
【図4】ブレーキ用の油圧回路を示す図。
【図5】ダンプトラックでのブレーキ用の油圧機器の配置を示す斜視図。
【図6】ダンプトラックの要部を示す斜視図。
【図7】ダンプトラックの要部を示す平面図。
【図8】ブレーキ機器ボックスを示す斜視図。
【図9】保持ブラケットを示す斜視図。
【図10】輸送時のブレーキ機器ボックスの支持状態を示す斜視図。
【図11】本発明の変形例の油圧回路を示す図。
【図12】本発明の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、前後左右方向とは、運転者がキャブ3内の運転席に着座した状態における前後左右方向と同一方向をいう。また、左右方向と車幅方向とは同義である。
【0019】
図1は、本実施形態に係るダンプトラック1の全体を示す斜視図である。
図1において、大型のダンプトラック1は、車体フレーム2を備え、車体フレーム2前方上部の左端側には、運転者が乗り込むキャブ3が搭載され、車体フレーム2の後方上部には、例えば採掘された岩石や土砂等の積載物を積載するベッセル4が、図示しないホイストシリンダの伸縮により回動自在に設けられている。
【0020】
車体フレーム2には、前後左右に4つの走行輪5(前輪5A、後輪5B)が取り付けられている。走行輪5は、車体フレーム2の前方側に搭載されたエンジン6からの駆動力によって駆動される。
【0021】
車体フレーム2の前面には、高所に配置されたキャブ3と地上との間で昇降を行うためのラダー7が左右に設けられている。また、車体フレーム2の上部おいて、キャブ3の右隣のエリアは、エンジン6等のメンテナンスを上方から行うプラットホーム8になっており、また、プラットホーム8を含むキャブ3回りの歩行可能エリア等には手摺9が取り付けられている。
【0022】
図2には、車体フレーム2の前方側の要部の側面図が示され、図3には、その平面図が示されている。図3中では、車幅方向の中央が1点鎖線Cで示されている。
図2、図3において、車体フレーム2は、左右一対のサイドフレーム20A、およびこれらの前方に立設された四角枠状の枠型フレーム20Bを有するメインフレーム20と、メインフレーム20の前方に一体に取り付けられたフロントサポート22とを備えている。
【0023】
メインフレーム20の枠型フレーム20Bは、左右に架設された上側クロスメンバー21を備えて構成されている。また、上側クロスメンバー21の直ぐ後方側には、左側に延出した左サイドブラケット23、および右側に延出した右サイドブラケット24が設けられている。
【0024】
フロントサポート22は、各サイドフレーム20Aの延長上に位置した左右の下側サイドメンバー25と、各下側サイドメンバー25の上方に位置した円筒状の上側サイドメンバー26と、各下側サイドメンバー25の先端間に左右に架設された前側クロスメンバー27と、下側サイドメンバー25および上側サイドメンバー26の先端間に上下に架設されたラジエータサポート28とで構成される。フロントサポート22内にはエンジン6が収容され、フロントサポート22の上部には、エンジン6を覆うエンジンフード14が上側サイドメンバー26等に固定されて配置されている。
【0025】
左サイドブラケット23上には、キャブ3の背部側が左右のキャブマウント31を介して載置され、また、左側の前輪5Aの上方を覆うフェンダー11(図1、図6)の後側部分が取り付けられる。つまり、ダンプトラック1では、そのような前輪5Aの上方にキャブ3が位置しているのである。右サイドブラケット24にも、右側の前輪5Aの上方を覆うフェンダー11の後側部分が取り付けられる。
【0026】
右サイドブラケット24の内部には、エンジン6からの一対の排気管12Aに接続された排気管12が上側クロスメンバー21の後方位置から右側方に延出して配置されている。排気管12の一部は、右サイドブラケット24の開口部分24Aを通して、右サイドブラケット24の上方へ突出している。突出した排気管12の先端は、上方に向けて開口した連通開口12Bになっており、ベッセル4が降りている状態で、該ベッセル4に設けられた図示しない排気連通路の基端側の開口と連通している。
【0027】
エンジン6からの排気ガスは、一対の排気管12Aを通して排気管12の基端側に流入した後、先端側の連通開口12Bから流出し、ベッセル4の排気連通路に送り込まれてベッセル4を暖める。
このような排気管12は、排気ガスによって加熱され、高温となる。
【0028】
図3にはまた、左右の前輪5Aに設けられたサービスブレーキ49,51に対する作動油の配管経路が模式的に示されている。図4には、そのような配管経路の油圧回路が示されている。
図3、図4において、サービスブレーキバルブ(以下、ブレーキバルブと称する)33は、制動を生じさせるための作動油を前輪5Aのサービスブレーキ49,51、および後輪5Bのサービスブレーキに出力するものである。
【0029】
ブレーキバルブ33には、作動油タンク34から油圧ポンプ35で作動油が供給される。そのような作動油による油圧は、油圧ポンプ35からブレーキバルブ33までの油圧ライン36に設けられた各アキュムレータ37に蓄圧される。ブレーキを掛けるべくペダル32を操作すると、ブレーキバルブ33での入出力ポートの位置が切り換わり、アキュムレータ37に蓄圧された圧力の作動油が、油圧ライン38を介してシャトルバルブ39の一方側の入力ポートに供給される。
【0030】
これに対して、油圧ポンプ35からの油圧ライン36からは油圧ライン41が分岐しており、リターダ用比例制御バルブ(以下、リターダバルブと称する)42に接続されている。リターダバルブ42は、リターダ信号が入力されていない状態では、シャトルバルブ39の他方の入力ポートへの油圧ライン43と作動油タンク34へのドレン44とを連通させ、リターダ信号が入力すると、そのリターダ信号の大きさに応じて油圧ライン41からの作動油を、油圧ライン43を通してシャトルバルブ39に供給する。
【0031】
シャトルバルブ39は、油圧ライン38を通して供給されるブレーキバルブ33からの油圧と、油圧ライン43を通して供給されるリターダバルブ42からの油圧とのうち、高い方の油圧を選択し、この油圧の作動油を出力ポートから油圧ライン45を通して分岐ブロック46に出力する。
【0032】
なお、図2〜図4では、前輪5A用の構成に関して図示されている。つまり、後輪5B用に関して、ブレーキバルブ33から下流側の構成、および後輪5B用のリターダバルブ42から下流側の構成については、前輪5A側の構成と同じであり、前輪5A側の構成を説明することで理解できるため、図示を省略してある。
【0033】
分岐ブロック46は、油圧ライン45からの作動油を油圧ライン47,48に分岐させるものである。油圧ライン47は、スラックアジャスタ47Sを介して左側の前輪5A用のサービスブレーキ49に接続される。油圧ライン48は、スラックアジャスタ48Sを介して右側の前輪5A用のサービスブレーキ51に接続される。分岐ブロック46および前記シャトルバルブ39は、キャブ3の背後に載置されたブレーキ機器ボックス70内に収容されている。
【0034】
ここで、図5には、ブレーキ用の油圧機器の配置が示されている。
図5に示すように、ペダル32を有したブレーキバルブ33は、キャブ3内部のフロア部分に設けられている。作動油タンク34は、右側のサイドフレーム20Aの下方側に配置されている。また、エンジン6の後方にはトランスミッション10が配置され、トランスミッション10の前側にはPTO(動力取出装置)が設けられ、このPTOに油圧ポンプ35が取り付けられている。つまり、油圧ポンプ35は、エンジン6とトランスミッション10との間に配置されている。サービスブレーキ49,51用のアキュムレータ37は、枠型フレーム20Bの左側方に取り付けられている。リターダバルブ42は、右側のサイドフレーム20Aに取り付けられている。
【0035】
図5に示すステアリングコラムには、リターダレバー18が設けられている。リターダレバー18の操作量に応じたリターダ信号が図示略のコントローラにて生成され、リターダバルブ42のソレノイドに出力され、リターダバルブ42の開度が制御される。このことにより、リターダレバー18の操作量に見合ったリターダブレーキの制動力を生じさせることが可能である。
【0036】
図6、図7は、ダンプトラック1の要部を示す斜視図および平面図である。
図6、図7において、エンジンフード14の後方には、上側クロスメンバー21の上面が位置している。また、上側クロスメンバー21の後方側には、排気管12を上方および背後から覆う逆L字状の防災カバー15が設けられている。防災カバー15の上面、上側クロスメンバー21の上面、およびエンジンフード14の上面は略面一でフラットであり、この部分でプラットホーム8が形成されている。プラットホーム8の前記上側クロスメンバー21に対応した位置には、内部にバッテリが内蔵されたバッテリボックス16(図7では図示省略)が所定高さだけ間を空けて上方に設置されている。
【0037】
従来では、防災カバー15の上部にブレーキ機器ボックスが取り付けられていたが、本実施形態では、キャブ3後部において、左サイドブラケット23上にブレーキ機器ボックス70が取り付けられている。左サイドブラケット23の直下には、前輪5Aが存在するだけであり、排気管12のような高温になる機器等が存在しない。このため、万一内部の機器から作動油が飛散しても、飛散した作動油が排気管12に降り掛かる心配がなく、ブレーキ機器ボックス70の周囲での複雑な防災構造をも不要にできる。また、万一油漏れが生じても、その油が配管を伝って排気管12にかかるおそれがないため、ブレーキ機器ボックス70に対しては複雑なシール構造が要求されない。
【0038】
ブレーキ機器ボックス70の内部には、シャトルバルブ39および分岐ブロック46が設置されている。シャトルバルブ39には、図2〜図4でも説明したが、油圧ライン38,43の一端が接続され、分岐ブロック46には、油圧ライン47,48の一端が接続されている。これらの油圧ライン38,43,47,48は、バッテリボックス16の下方の空間を利用して左右方向に沿って配置され、車幅方向の略中央(図7中の1点鎖線C参照)を通って後方側に延出し、キャブ3後方に取り付けられたブレーキ機器ボックス70内のシャトルバルブ39あるいは分岐ブロック46に接続される。
【0039】
具体的に油圧ライン38は、一端がシャトルバルブ39に接続された可撓性を有するホース38Aと、ホース38Aの他端に一端が接続された金属製のチューブ38Bとを備えて構成される。これらホース38Aおよびチューブ38Bは、左サイドブラケット23の基端側に位置した第1継ぎ部61で接続されている。チューブ38Bの一端側は、逆L字形の保持ブラケット62にUボルトにより保持され、中央部分は、車幅方向の中央を通ってバッテリボックス16の支持台17下面に取り付けられた別の保持ブラケット63にUボルトで保持され、バッテリボックス16の下方で左側に折曲し、他端側が別のチューブ38Cに第2継ぎ部64にて接続される。チューブ38Cは、油圧ライン38の一部を構成しており、最終的にキャブ3のフロアに設けられたブレーキバルブ33に接続される。
【0040】
同様に、油圧ライン43は、一端がシャトルバルブ39に接続された可撓性を有するホース43Aと、ホース43Aの他端に一端が接続された金属製のチューブ43Bとを備えて構成され、互いが第1継ぎ部61で接続されている。チューブ43Bの一端側は、保持ブラケット62に保持され、中央部分は、車幅方向の中央を通って保持ブラケット63にUボルトで保持され、バッテリボックス16の下方で右側に折曲し、他端側が別のチューブ43Cに第3継ぎ部65にて接続される。チューブ43Cは、油圧ライン43の一部を構成しており、最終的にブレーキバルブ33に対して車幅方向の略反対側に配置されたリターダバルブ42(図3、図4)に接続される。
【0041】
さらに、分岐ブロック46に接続された油圧ライン47,48は、一端が分岐ブロック46に接続された可撓性を有するホース47A,48Aと、ホース47A,48Aの他端に一端が接続された金属製のチューブ47B、48Bとを備えて構成され、互いが第1継ぎ部61で接続されている。チューブ47B,48Bの一端側は、保持ブラケット62に保持され、中央部分は、車幅方向の中央を通って保持ブラケット63にUボルトで保持される。
【0042】
そして、チューブ47Bの中央部分は、バッテリボックス16の下方で左側に折曲し、他端側が別のチューブ47Cに第2継ぎ部64にて接続される。チューブ47Cは、油圧ライン47の一部を構成しており、最終的に左側の前輪5A用のサービスブレーキ49(図3、図4)に接続される。
これに対してチューブ48Bの中央部分は、バッテリボックス16の下方で右側に折曲し、他端側が別のチューブ48Cに第3継ぎ部65にて接続される。チューブ48Cは、油圧ライン48の一部を構成しており、最終的に右側の前輪5A用のサービスブレーキ51(図3、図4)に接続される。
【0043】
ここで、油圧ライン38,43,47,48が車幅方向の中央を通ることで、これらを構成するチューブ38B,43B,47B,48Bは、並べて配置され、共通の保持ブラケット62,63に取り付けられる。また、チューブ38B,43B,47B,48Bは、防災カバー15の上方、すなわち高温となる排気管12の上方近傍を通ることになるが、それらのチューブ38B,43B,47B,48Bは、途中で継ぎ目の無い連続したチューブによって形成されているため、防災カバー15の上方で作動油が漏れ出すような部位が存在しない。そして、第1〜第3継ぎ部61,64,65は、防災カバー15上から前後左右いずれかにずれて位置しており、そのような第1〜第3継ぎ目部61,64,65から万が一作動油が飛散しても、防災カバー15に降り掛かり難くなっている。
【0044】
特に、第1継ぎ部61は、保持ブラケット62に取り付けられた飛散防止カバー66によって覆われることから、作動油は万一噴出したとしても、飛散防止カバー66に衝突することで、高温となる部品が存在しない下方に滴下するようになり、防災カバー15側に飛散することはない。また、第2、第3継ぎ部64,65においても、その直上は支持台17で覆われており、支持台17が飛散防止カバーとして機能するうえ、第2、第3継ぎ部64,65の車体中央側にそれぞれ立設された遮蔽板19により、作動油が防災カバー15側に飛散するのを抑制している。
【0045】
また、油圧ライン38,43,47,48が車幅方向の中央を通ることにより、油圧ライン47,48の長さを略同じにでき、左右のブレーキの効き具合にタイムラグが生じないようにできて、片効きによる車体の振れを防止できる。
さらに、油圧ライン38,43,47,48の各チューブ8B,43B,47B,48Bが並べて配置されていることで、それらを共通の保持ブラケット62,63を用いてまとめて固定でき、組立作業も容易にできる。
【0046】
図8には、ブレーキ機器ボックス70が示されている。
図8において、ブレーキ機器ボックス70は、板金製であり、左サイドブラケット23に固定されるボックス本体71と、ボックス本体71を覆うカバー72とを備えている。
【0047】
ボックス本体71は、平面視で略矩形の底部73、底部73の近接し合う2辺に沿って立設した短辺側壁部74、長辺側壁部75を備えている。
底部73には、4つのボルト挿通孔76が設けられ、これらに挿通されるボルトにより、ボックス本体71が左サイドブラケット23に固定される。また、底部73には、4つの別のボルト挿通孔77が設けられており、これらのボルト挿通孔77に裏面側から挿通されるボルトにより、シャトルバルブ39および分岐ブロック46が底部73に取り付けられる。
【0048】
また、底部73には、短辺側壁部74と対向する側に延出部78が設けられ、延出部78には、一段高い位置にホース保持部79が設けられている。ホース保持部79には、ボルト挿通孔81が設けられ、ホース38A,43A,47A,48Aを保持するクランプがボルト止めされる。
【0049】
さらに、底部73には、6つの取付ボス82が設けられている。これらのうち4つの取付ボス82Aには、要求に応じて設けられる排気ブレーキの油圧アクチュエータ用の電磁バルブ100がマウントされる。残り2つの取付ボス82Bには、電磁バルブ100に接続される油圧ホースを保持するためのクランプがボルト止めされる。
【0050】
短辺側壁部74には、一対のコネクタブラケット83および取付ボス84が設けられ、長辺側壁部75には一対のボルト挿通孔85が設けられている。
排気ブレーキの電磁バルブ100が設置されていない場合でも、電磁バルブ100用の信号ケーブル86(図6、図7)はボックス本体71内に引き込まれており、その信号ケーブル86の先端に設けられた雄側のコネクタがコネクタブラケット83に取り付けられ、各コネクタには、めくら用の部材が挿入される。排気ブレーキの搭載要求があり、ボックス本体71内に電磁バルブ100が設置された場合には、信号ケーブル86の雄側のコネクタに、電磁バルブ100から延びた信号ケーブルの雌側のコネクタが接続される。
取付ボス84およびボルト挿通孔85には、そのような信号ケーブル86を保持するクランプがボルト止めされる。
【0051】
カバー72は、天井部87、短辺側壁部88、および長辺側壁部89を備え、上方および水平方向からの4本のボルトでボックス本体71に固定される。カバー72の天井部87、短辺側壁部88、および長辺側壁部89はそれぞれ、ボックス本体71の底部73、短辺側壁部74、および長辺側壁部75に対向し、ブレーキ機器ボックス70が全体として箱状に形成される。ただし、カバー72の短辺側壁部88には開口部91が設けられており、開口部91を通してホース38A,43A,47A,48Aおよび信号ケーブル86が配置される。
【0052】
図9には、逆L字状の保持ブラケット62が示されている。
図9において、保持ブラケット62は、鉛直方向に長い鉛直部92、およびその上端から水平に延出した水平部93を有している。
【0053】
鉛直部92には、複数(本実施形態では6個)のボルト挿通孔94が設けられている。これらのうち、下部側の鉛直方向に沿った一対のボルト挿通孔94Aは、保持ブラケット62自身をメインフレーム20に設けられた矩形状の取付ボス95にボルト止めするために用いられる。
ボルト挿通孔94Aに隣接した一対のボルト挿通孔94Bは、図10に示す後述の支持ブラケット112を取り付けるために用いられる。
【0054】
上部側の水平方向に沿った一対のボルト挿通孔94Cは、2点鎖線で示す保持ブラケット110を追加して固定するために用いられる。保持ブラケット110には、ブレーキ機器ボックス70内に排気ブレーキ用の電磁バルブ100(図8)が設置された場合、電磁バルブ100に接続されるホースがUボルトによって保持される。鉛直部92の裏面には、ボルト挿通孔94B,94Cに対応して裏ナット96が設けられる。
【0055】
水平部93にも、複数(本実施形態では10個)のボルト挿通孔97が設けられている。そのうち、8つのボルト挿通孔97Aは、チューブ38B,43B,47B,48BをUボルトで保持するためのものであり、Uボルトの雄ねじ部分が下方から挿通される。このようなUボルト用のボルト挿通孔は、符合を付しての図示を省略するが、保持ブラケット110にも設けられる。また、残る一対のボルト挿通孔97Bは、前述した飛散防止カバー66を取り付けるために用いられる。従って、水平部93の裏面には、ボルト挿通孔97Bに対応した裏ナット98が設けられる。
【0056】
図10には、支持ブラケット112が示されている。
支持ブラケット112は、ブレーキ機器ボックス70を片持ち状態で車体フレーム2のメインフレーム20(に取り付けられた保持ブラケット62)に支持させる部材である。ダンプトラック1を輸送する場合には、輸送制限の関係でキャブ3が左サイドブラケット23ごと車体フレーム2から一旦取り外され、半完成の状態でトレーラ等によって輸送され、輸送先で再度組み付けられる。
【0057】
キャブ3が車体フレーム2から取り外されると、左サイドブラケット23上に固定されていたブレーキ機器ボックス70をも取り外す必要がある。この際、取り外されたブレーキ機器ボックス70をホース38A,43A,47A,48Aが繋がれたまま、ぶらつかせておくことができないため、支持ブラケット112を介して支持させるのである。
【0058】
輸送時にブレーキ機器ボックス70をそのまま左サイドブラケット23に取り付けておくと、代わりにホース38A,43A,47A,48Aなどをブレーキ機器ボックス70内のシャトルバルブ39や分岐ブロック46から抜いておく必要があり、輸送後に再び接続したり、抜き取った際に端部を塞いだりする作業に手間がかかり、作業性が悪い。そこで、ブレーキ機器ボックス70をそのまま左サイドブラケット23から取り外して、支持ブラケット112で支持させることとし、作業の効率化が図られている。
ホース38A,43A,47A,48Aは、可撓性を有しているため、ブレーキ機器ボックス70の位置をずらしても、問題なく追従できる。
【0059】
支持ブラケット112の先端には、ブレーキ機器ボックス70にもともとあるボルト挿通孔76を利用することで、ブレーキ機器ボックス70が容易に取り付けられ、また、その基端は前述したように、保持ブラケット62にボルトにより固定される。
再度キャブ3が組み付けられると、ブレーキ機器ボックス70も支持ブラケット112から外されてキャブ3後部の左サイドブラケット23上に取り付けられるので、支持ブラケット112は不要となり、適宜処分される。
【0060】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、図11には、ABSが搭載された仕様の油圧回路が示されている。
ABS仕様のダンプトラック1では、シャトルバルブ39の出力側の油圧ライン45にABSキャンセルバルブ121が設けられている。油圧ライン45は、ABSキャンセルバルブ121の出力側で油圧ライン45Aおよび油圧ライン45Bに分かれており、油圧ライン45Aは分岐ブロック46Aに接続され、油圧ライン45Bは分岐ブロック46Bに接続されている。
【0061】
分岐ブロック46Aで分岐された一対の油圧ライン471,481はそれぞれ、シャトルバルブ122,123および油圧ライン47,48を通してスラックアジャスタ47S,48Sに接続される。そして、油圧ライン471,482には、ABSバルブ124,125が設けられている。
【0062】
一方、分岐ブロック46Bで分岐された油圧ライン472、482はそれぞれ、シャトルバルブ122,123および油圧ライン47,48を通してスラックアジャスタ47S,48Sに接続される。しかし、油圧ライン472,482には、ABSバルブは設けられていない。
【0063】
つまり、図11に図示してある状態では、ABSキャンセルバルブ121がオフ状態であり、シャトルバルブ39からの作動油が油圧ライン45Aを通して供給され、ABSバルブ124,125の作用により、ABSを効かせることができる。
反対に、ABSキャンセルバルブ121によりABSをキャンセルさせると、シャトルバルブ39からの作動油が油圧ライン45Bを通して供給されることになり、前述した実施形態と同じ状態となる。
【0064】
そして、ABSキャンセルバルブ121、一対の分岐ブロック46A,46B、シャトルバルブ122,123、およびABSバルブ124,125などは、ブレーキ機器ボックス70内に収容されている。従って、このようなブレーキ機器ボックス70は、図12に示すように、前記実施形態で説明したブレーキ機器ボックス70よりも大きな収容容積を有し、外形形状も大きくなっている。
他の構成は、前記実施形態と同じであり、図10、図12でも、前記実施形態でと同じ機能部材、部位等には、同一符合を付してある。
【0065】
このような大きいブレーキ機器ボックス70も、前記実施形態と同様に、キャブ3の後方に設置されており、防災カバー15上からずれて配置されているため、本発明の目的を達成できる。
また、このブレーキ機器ボックス70内にも、排気ブレーキ用の電磁バルブ100を収容してもよいし、輸送時には、左サイドブラケット23からブレーキ機器ボックス70を外して支持ブラケット112によりメインフレーム20等に支持させてもよい。
【0066】
前記実施形態では、高温機器として排気管について説明したが、高温機器としては、エンジン本体であってもよく、排気タービン過給機等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、前記実施形態で説明したリジット型のダンプに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1…ダンプトラック、3…キャブ、5,5A…走行輪、12…高温機器である排気管、20…メインフレーム、33…サービスブレーキバルブ、38,43,45,45A,45B,47,48,471,472,481,482…油圧ライン、39…シャトルバルブ、42…リターダバルブ、46,46A,46B…分岐ブロック、49,51…サービスブレーキ、70…ブレーキ機器ボックス、100…電磁バルブ、112…支持ブラケット、121…ABSキャンセルバルブ、124,125…ABSバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの車幅方向の両側に配置された走行輪と、
前記両側の走行輪にそれぞれ設けられたサービスブレーキと、
制動を生じさせるための作動油を前記各サービスブレーキに分岐して出力する分岐ブロックとを備え、
前記分岐ブロックは、車幅方向の中央から当該車幅方向にオフセットして設けられ、
前記分岐ブロックと前記各サービスブレーキとを接続する油圧ラインは、車幅方向の略中央を通って配置されているとともに、前記分岐ブロックから前記中央までの間で並設されている
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプトラックにおいて、
前記車幅方向の一端側に設けられたキャブを備え、
前記分岐ブロックは、前記キャブの背後に設けられている
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項3】
請求項2に記載のダンプトラックにおいて、
前記サービスブレーキへの作動油の供給を調整するサービスブレーキバルブおよびリターダバルブと、
前記サービスブレーキバルブからの作動油の油圧、および前記リターダバルブからの作動油の油圧のうち、高い油圧の作動油を出力するシャトルバルブとを備え、
前記シャトルバルブは、前記キャブの背後に設けられ、
前記シャトルバルブと前記サービスブレーキバルブおよび前記リターダバルブとを接続する油圧ラインは、前記車幅方向の略中央を通って配置され、かつ前記分岐ブロックと前記各サービスブレーキとを接続する油圧ラインに並設されている
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項4】
請求項3に記載のダンプトラックにおいて、
前記シャトルバルブおよび前記分岐ブロックは、箱状のブレーキ機器ボックスに収容されている
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項5】
請求項4に記載のダンプトラックにおいて、
前記ブレーキ機器ボックスには、排気ブレーキ用の電磁バルブが収容されている
ことを特徴とするダンプトラック。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のダンプトラックにおいて、
前記ブレーキ機器ボックスには、ABS用のABSキャンセルバルブおよびABSバルブが収容されている
ことを特徴とするダンプトラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−254757(P2012−254757A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130032(P2011−130032)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【特許番号】特許第5010042号(P5010042)
【特許公報発行日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】