説明

チアジアジン系化合物の製造方法

【課題】写真用カプラーや染料中間体、あるいは有機合成における中間体として有用な1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物を高収率で製造する新規な方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法において、最終工程における反応溶媒の沸点が131℃以上、300℃以下であることを特徴とする1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアジアジン系化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物は、写真用カプラーや染料中間体、あるいは有機合成における中間体として広く用いられる、1H−ピラゾロ[3,2−c]−1,2,4−トリアゾール系化合物の中間体として有用な化合物である。
【0003】
前記トリアゾール系化合物は従来説明された一般的合成法に記載された方法により、合成することができる(例えば、非特許文献1、特許文献1〜3参照)。しかしながら、第3級アルキル基やアリール基、複素環基に代表される立体障害の大きい置換基を有する前記トリアゾール系化合物の合成にこれらの方法を適用した場合、収率が低下してしまうという問題点を有していた。
【0004】
そこで、3位及び6位に第3級アルキル基を有する1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法として、アセトニトリル中でヒドラジン化合物をアシル化して反応中間体のヒドラジド化合物を得た後、アセトニトリルを減圧留去して、トルエンと酸化合物を加えて加熱還流して閉環する製造方法(例えば、特許文献4参照)や、ヒドラジンと酸化合物を沸点が130℃以下の有機溶媒中で加熱還流してアシル化後、閉環する製造方法(例えば、特許文献5、6参照)等が提案された。
【0005】
しかし、これらの方法では、原料や反応中間体のヒドラジド化合物の溶解性が低いため反応性が著しく低下し、また懸濁状態である上に反応時に発生する塩酸ガス等の影響で突沸や液面上昇の危険性が高く、特に製造適性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,540,654号明細書
【特許文献2】特開昭61−260085号公報
【特許文献3】特開昭63−231341号公報
【特許文献4】特開平7−175186号公報
【特許文献5】特開2000−143664号公報
【特許文献6】特開2002−193968号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)1974年8月、No.12443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、写真用カプラーや染料中間体、あるいは有機合成における中間体として有用な1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物を高収率で製造する新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、下記項目の各々により達成される。
【0010】
1.下記一般式(1)で表される1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法において、最終工程における反応溶媒の沸点が131℃以上、300℃以下であることを特徴とする1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基を表し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン化アルキル基を表す。)
2.前記反応溶媒の沸点が170℃以上、300℃以下であることを特徴とする前記1に記載の1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【0013】
3.前記一般式(1)において、Rで表される基がアリール基または複素環基であることを特徴とする前記1または2に記載の1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【0014】
4.下記一般式(2)で表されるヒドラジン化合物と下記一般式(3)で表される酸ハロゲン化物を反応溶媒中で反応して得られる下記一般式(4)で表される1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法において、該反応溶媒の沸点が131℃以上、300℃以下であることを特徴とする1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基を表し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン化アルキル基を表し、Aは酸を表し、nは0から3の整数を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
5.前記一般式(4)において、Rで表される基がアリール基または複素環基であることを特徴とする前記4に記載の1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、写真用カプラーや染料中間体、あるいは有機合成における中間体として有用な1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物を高収率で製造する新規な方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の詳細について説明する。
【0019】
まず、本発明に係る化合物の構造について説明する。
【0020】
一般式(1)において、Rは水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基)、アシルアミノ基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、トリフルオロメチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基)、シアノ基、ハロゲン化アルキル基(例えば、フッ化メチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、パーフルオロプロピル基)を表す。
【0021】
は更に置換基を有していてもよく、該置換基としてはRで挙げた置換基の他、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基)、スルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、ヘキシルスルホニルアミノ基、デシルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基)、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)等が挙げられる。
【0022】
はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン化アルキル基を表し、具体的にはそれぞれ上記Rと同義のものである。Rは更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、Rで表される各基に置換可能な基として挙げたのと同様の基が挙げられる。
【0023】
のうち、特にアリール基、複素環基では反応性が向上し、従来公知の方法よりも大幅に反応時間を短縮することが可能である。
【0024】
一般式(2)、(4)において、Rはアルキル基、シクロアルキル基を表し、具体的には一般式(1)のRと同義のものが挙げられる。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン化アルキル基を表し、具体的には一般式(1)のRと同義のものが挙げられる。
【0025】
一般式(2)において、Aは酸を表す。酸としては、一般式(2)で表される化合物が塩を形成できるものであれば何でもよく、具体例としては、塩酸、臭化水素酸等のハロゲン化水素酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、ピクリン酸、フッ化ホウ素酸、過塩素酸等が挙げられる。これらのうち、塩酸、臭化水素酸が好ましく、更に好ましくは塩酸である。nは0〜3の整数を表し、好ましくはnは1である。一般式(3)においてXはハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子である。
【0026】
以下に一般式(1)、(4)で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
以下に一般式(2)で表される化合物の代表的具体例を示す。
【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
以下に一般式(3)で表される化合物の代表的具体例を示す。
【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
次に本発明に用いられる反応溶媒について説明する。
【0039】
本発明の一般式(1)の製造方法において、反応溶媒として、沸点が常圧で131℃以上、300℃以下の有機溶媒が用いられる。
【0040】
該当する溶媒は炭化水素系溶媒としては、例えば、p−キシレン(沸点138℃)、m−キシレン(沸点139℃)、o−キシレン(沸点144℃)、メシチレン(沸点165℃)、シュードクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)(沸点169℃)、デカン(沸点174℃)、テトラリン(沸点207℃)、ドデカン(沸点215℃)、テトラデカン(沸点254℃)、ヘキサデカン(沸点287℃)等が挙げられる。
【0041】
ハロゲン系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン(沸点132℃)、1,4−ジクロロブタン(沸点155℃)、1,3−ジクロロベンゼン(沸点172℃)、1,2−ジクロロベンゼン(沸点180℃)、1,2,4−トリクロロベンゼン(沸点213℃)、等が挙げられる。
【0042】
アルコール系溶媒としては、例えば、1−ヘキサノール(沸点157℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、1−オクタノール(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、エチレングリコール(沸点198℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点245℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点249℃)等が挙げられる。
【0043】
スルホキシド系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)(沸点189℃)、テトラメチレンスルホキシド(沸点235−237℃)等が挙げられる。
【0044】
ニトリル系溶媒としては、例えば、ヘキサンニトリル(沸点160℃)、ベンゾニトリル(沸点188−191℃)、オクタンニトリル(沸点200℃)、デカンニトリル(沸点237℃)等が挙げられる。
【0045】
ケトン系溶媒としては、例えば、ジプロピルケトン(沸点143℃)、シクロヘキサノン(沸点156℃)、ジイソブチルケトン(沸点168℃)、メチルヘキシルケトン(沸点173℃)、アセトフェノン(沸点202℃)、メチルオクチルケトン(沸点211℃)、ブチロフェノン(沸点220−222℃)、ベンジルエチルケトン(沸点226℃)、ベンジルアセトン(沸点235−237℃)等が挙げられる。
【0046】
エステル系溶媒としては、例えば、吉草酸エチル(沸点146℃)、酢酸ペンチル(沸点149℃)、酢酸ヘキシル(沸点171℃)、安息香酸メチル(沸点200℃)、安息香酸エチル(沸点213℃)等が挙げられる。
【0047】
スルホン系溶媒としては、例えば、ジプロピルスルホン(沸点270℃)、スルホラン(沸点285℃)、ジブチルスルホン(沸点287−295℃)等が挙げられる。
【0048】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル(沸点142℃)、アニソール(沸点154℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)、アミルエーテル(沸点186℃)、ジヘキシルエーテル(沸点186℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点212℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点215℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点256℃)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点261℃)、ジオクチルエーテル(沸点286℃)等が挙げられる。
【0049】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(沸点153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(沸点165℃)、N,N−ジエチルアセトアミド(沸点177℃)、N−メチルピロリドン(NMP)(沸点202℃)、ホルムアミド(沸点210℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)(沸点225℃)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)(沸点232℃)等が挙げられる。
【0050】
これらのうち、原料や反応中間体の溶解性の点で好ましくは沸点が170℃以上、300℃以下の溶媒であり、より好ましくは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリドン(NMP)、スルホランである。
【0051】
本発明の反応に用いる反応溶媒の使用量は、一般式(1)、(4)で表されるチアジアジン化合物の理論収量に対して好ましくは0.05〜20倍であり、より好ましくは0.1〜10倍である。
【0052】
本発明の前記一般式(1)、(4)で表される化合物の製造方法として、好ましくは前記一般式(2)で表されるヒドラジン化合物と前記一般式(3)で表される酸ハロゲン化物を用いる方法が好ましい。
【0053】
前記一般式(3)で表される酸ハロゲン化物の使用量は、前記一般式(2)で表されるヒドラジン化合物に対し0.1〜20当量が好ましく、より好ましくは0.2〜5.0当量であり、特に好ましくは0.5〜3.0当量である。
【0054】
次に反応温度について説明する。本発明の反応では、まずヒドラジン化合物と酸ハロゲン化物が反応して一般式(5)で表される中間体のアシル化合物を生成し、更にワンポットで一般式(5)が脱水閉環して一般式(4)で表される化合物が生成する。
【0055】
【化12】

【0056】
第一のアシル化は、使用する溶媒の融点以上沸点以下の任意の温度で実施することが可能であるが、第二の閉環は高温でないと進行しない。
【0057】
低温では原料及び中間体の溶解度が著しく低下し、還流温度では溶媒の沸騰に加えて、反応で発生する塩酸等のハロゲン化水素ガスの影響により、反応液中から激しく発泡が起こり、反応液面が上昇して反応容器外へ噴出してしまう可能性が高い、及び原料や生成物の分解が生じるという理由により、本発明の反応は室温以上反応液の還流温度より低い温度で実施することが好ましい。
【0058】
具体的には30℃以上、110℃以下で実施することが好ましい。なお、高温では一般式(2)のヒドラジン化合物が分解しやすいため、第一のアシル化は50℃以下で反応し、高速液体クロマトグラフィー等で原料のヒドラジン化合物が検出されなくなってから、反応温度を更に上げて閉環を完結させると収率の点でより好ましい。
【0059】
本発明における反応は冷却管を設置すれば常圧で実施してもよく、発生するハロゲン化水素ガスを反応系外から効率良く除去するために、系内をわずかに減圧状態にして実施してもよい。
【0060】
また、反応を加速するために、一般式(2)におけるAで表される酸と同様の酸を別途添加してもよい。酸として好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、トルエンスルホン酸であり、より好ましくは塩酸である。酸は一般式(2)で表されるヒドラジン化合物に対し0.01〜100当量用いることが好ましく、好ましくは0.1〜10当量であり、特に好ましくは0.5〜5当量である。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の具体的実施例を記載するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0062】
実施例1(化合物(23)の合成)
化合物((2)−1)22.3g(0.1mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)67mlを300ml4頭フラスコ中で室温下撹拌しながら、滴下ロートを用いて化合物((3)−25)18.76g(0.11mol)を30分かけて滴下した。滴下中に固体は完溶した。滴下終了後、反応液を内温100℃に上げて加熱撹拌した。加熱中の反応溶液は特に発泡や液面上昇は見られず、スムーズに反応を実施することができた。
【0063】
反応終了は反応液を高速液体クロマトグラフィーにより分析し、反応中間体が検出されなくなった時点とした。反応終了後、放冷し、30℃以下になったところで12.5%水酸化ナトリウム水溶液73.0gを加え、30分撹拌した。析出した結晶をろ過し、トルエン及び水で洗浄後乾燥し、化合物(23)28.5gを得た(収率94%)。生成物の構造はMASS及びNMRスペクトルで確認した。
【0064】
実施例2〜17
実施例1において、原料、反応溶媒、反応時間を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。生成物と収率、加熱中の反応液の状態は表1の通りである。
【0065】
なお、加熱中の反応液の状態の評価方法は以下の通りである。
【0066】
A:突沸、液面状態変化なし
B:発泡、突沸が起こるが、反応に支障なし
C:発泡、突沸が激しく液面上昇、反応液が噴出しそうになり、反応を中断せざるを得なくなる。
【0067】
実施例18
実施例1において、反応溶媒をキシレンとし、反応液の加熱温度を還流温度(内温138℃)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。原料、生成物と収率、加熱中の反応液の状態は表1の通りである。
【0068】
実施例19、20
実施例1において、滴下ロートで酸ハロゲン化物を30分かけて滴下するまでは実施例1と同様の操作を行った。滴下終了後、反応液を45〜50℃で加熱撹拌し、反応液を高速液体クロマトグラフィーにより分析して、原料の化合物((2)−1)が検出されなくなったことを確認してから反応液の内温を100℃に上げて、更に加熱撹拌した。反応終了後は実施例1と同様の操作を行った。原料、生成物と反応時間、収率、加熱中の反応液の状態は表1の通りである。
【0069】
比較例1
実施例1において、アセトニトリルを反応溶媒として、反応温度を還流温度(内温78−79℃)とした以外は実施例1と同様の操作を行った。但し、化合物((3)−25)滴下後、反応温度を還流温度(78〜79℃)まで上げたところ、反応液が析出と発泡により突沸し、冷却管の途中まで反応液面が上昇してしまい、これ以上の液面上昇を防ぐために還流温度より1〜2℃下げて発泡を抑えて反応を行わざるを得なくなった。
【0070】
反応が進んで、固体の析出量が減少した約4時間後より還流温度まで加熱しても発泡しなくなった。還流再開以降、反応完結まで8時間加熱還流した。反応終了後は実施例1と同様の操作を行い、化合物(23)24.2gを得た(収率80%)。
【0071】
比較例2、3
実施例1においてトルエンを反応溶媒とし、反応温度を還流温度(内温約113℃)とした他は実施例1と同様の反応を行ったが、8時間反応を行っても反応液の高速液体クロマトグラフィーによる分析において、一般式(5)に相当する反応中間体及び目的物は各々単面1%以下の検出率であり、反応は進行しなかった。
【0072】
比較例4、5
比較例2において原料を表1の通りに変更した以外は、比較例2と同様の操作を実施した。但し、滴下終了後、加熱を開始したところ還流温度に達する前に激しく発泡し、還流反応終了まで発泡が続いた。比較例5においては、酸性条件で加熱しているため、化合物(5)と(6)の混合物として得られた。
【0073】
比較例6
比較例5において、反応温度を100℃に変更した以外は、比較例5と同様の操作を実施した。発泡はやや抑えられて反応液面が上昇することはなかったが、反応完結までに7時間を要し、収率も85%に低下した。
【0074】
実施した反応の結果を下表に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1の通り、沸点が131℃以上の溶媒を用いて実施した本発明の反応では、突沸が抑えられ、液面上昇や反応液噴出が見られず製造適性があり、短時間、高収率で目的の1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法において、最終工程における反応溶媒の沸点が131℃以上、300℃以下であることを特徴とする1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【化1】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基を表し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン化アルキル基を表す。)
【請求項2】
前記反応溶媒の沸点が170℃以上、300℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Rで表される基がアリール基または複素環基であることを特徴とする請求項1または2に記載の1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(2)で表されるヒドラジン化合物と下記一般式(3)で表される酸ハロゲン化物を反応溶媒中で反応して得られる下記一般式(4)で表される1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法において、該反応溶媒の沸点が131℃以上、300℃以下であることを特徴とする1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。
【化2】

(式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基を表し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン化アルキル基を表し、Aは酸を表し、nは0から3の整数を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【請求項5】
前記一般式(4)において、Rで表される基がアリール基または複素環基であることを特徴とする請求項4に記載の1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]−1,3,4−チアジアジン系化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−37725(P2011−37725A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183953(P2009−183953)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【出願人】(592158512)コニカミノルタケミカル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】