説明

チアジアゾールまたはオキサジアゾール、およびこれらの、JAKプロテインキナーゼのインヒビターとしての使用

【課題】プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物を開発すること。
【解決手段】本発明は、式(I)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩に関する。式(I)の化合物において:WおよびXは、各々独立して、酸素または硫黄であり;Aは、窒素、CH、C−CN、またはC−(C1〜3脂肪族)であり;そしてRおよびRは、一緒になって、環を形成する。これらの化合物は、インヒビターまたはJAKキナーゼとして有用であり、特に、自己免疫疾患、神経変性障害、または血液学的異常の処置のために、有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許法第119条第(e)項の下で、米国仮出願番号60/378,185(2002年5月6日出願、発明の名称「Inhibitors of Jak Protein Kinase」、その全体が、本明細書中に参考として援用される)に対して優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含有する、薬学的に受容可能な組成物、および種々の障害を処置する際にこの組成物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
新たな治療剤の追求は、近年、疾患に関連する酵素および他の生体分子の構造のよりよい理解によって、大いに補助されている。広範な研究の課題である酵素の1つの重要なクラスは、プロテインキナーゼである。
【0004】
プロテインキナーゼは、細胞における種々のシグナル伝達プロセスの制御の原因である、構造的に関連する酵素の大きいファミリーを構成する(Hardie,G.およびHanks,S.The Protein Kinase Facts Book,I and II,Academic Press,San Diego,CA:1995を参照のこと)。プロテインキナーゼは、それらの構造および触媒機能の保存に起因して、共通の祖先遺伝子から進化したと考えられる。ほとんど全てのキナーゼが、類似の250〜300アミノ酸の触媒性ドメインを含む。キナーゼは、これらがリン酸化する基質によって、ファミリーに分類され得る(例えば、プロテイン−チロシン、プロテイン−セリン/スレオニン、脂質など)。これらのキナーゼファミリーの各々に一般に対応する配列モチーフが、同定されている(例えば、Hanks,S.K.,Hunter,T.,FASEB J.1995,9,576−596;Knightonら、Science 1991,253,407−414;Hilesら、Cell 1992,70,419−429;Kunzら、Cell 1993,73,585−596;Garcia−Bustosら、EMBO J.1994,13,2352−2361を参照のこと)。
【0005】
一般に、プロテインキナーゼは、ヌクレオシド三リン酸から、シグナル伝達経路に関連するタンパク質アクセプターへのホスホリルの移動を起こすことによって、細胞内シグナル伝達を媒介する。これらのリン酸化事象は、標的タンパク質の生物学的機能を変調または調節し得る、分子オン/オフスイッチとして働く。これらのリン酸化事象は、最終的に、種々の細胞外刺激および他の刺激に応答して誘発される。このような刺激の例としては、環境ストレスシグナルおよび化学ストレスシグナル(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線照射、細菌外毒素、およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子α(TNF−α))、および増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および線維芽細胞増殖因子(FGF))が挙げられる。細胞外刺激は、細胞の増殖、移動、分化、ホルモンの分泌、転写因子の活性化、筋肉の収縮、グルコース代謝、タンパク質合成の制御、および細胞周期の調節に関連する、1つ以上の細胞応答に影響を与え得る。
【0006】
多くの疾患は、上記のような、プロテインキナーゼによって媒介される事象によって誘発される、異常な細胞応答に関連する。これらの疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝疾患、神経学的疾患および神経変性疾患、癌、心臓血管疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病、およびホルモン関連疾患が挙げられるが、これらに限定されない。従って、治療剤として有用なプロテインキナーゼインヒビターを見出すためのかなりの努力が、医化学において存在する。
【0007】
Janusキナーゼ(JAK)は、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2からなる、チロシンキナーゼのファミリーである。JAKは、サイトカインシグナル伝達において、重要な役割を果たす。キナーゼのJAKファミリーの下流基質としては、転写の情報伝達物質と活性化物質(STAT)タンパク質が挙げられる。JAK/STATシグナル伝達は、多くの異常な免疫応答(例えば、アレルギー、喘息、自己免疫疾患(例えば、移植拒絶、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症)、ならびに固形悪性腫瘍および血液学的悪性腫瘍(例えば、白血病およびリンパ腫))の媒介に関与している。JAK/STAT経路への薬学的介入が、概説されている[Frank Mol.Med.1999,5,432−456およびSeidelら、Oncogene 2000,19,2645−2656]。
【0008】
JAK1、JAK2、およびTYK2は、遍在的に発現されるが、JAK3は、造血細胞中で主として発現される。JAK3は、通常のサイトカインレセプターγ鎖(γ)に排他的に結合し、そしてIL−2、IL−4、IL−7、IL−9、およびIL−15によって活性化される。IL−4およびIL−9によって誘導される、マウス肥満細胞の増殖および生存は、実際に、JAK3シグナル伝達およびγシグナル伝達に依存することが示された[Suzukiら、Blood 2000,96,2172−2180]。
【0009】
感作された肥満細胞の高親和性の免疫グロブリン(Ig)Eレセプターの架橋は、炎症誘発性媒介物質(多数の血管作動性サイトカインが挙げられる)の放出をもたらし、急性アレルギー反応または即時型(I型)過敏症反応を生じる[Gordonら、Nature 1990,346,274−276およびGalli,N.Engl.J.Med.1993,328,257−265]。インビトロおよびインビボでの、IgEレセプター媒介性肥満細胞応答における、JAK3の重大な役割が確立されている[Malaviyaら、Biochem.Res.Commun.1999,257,807−813]。さらに、肥満細胞の活性化によって媒介されるI型過敏症反応(アナフィラキシーを含む)の、JAK3の阻害を介しての予防もまた、報告されている[Malaviyaら、J.Biol.Chem.1999 274,27028−27038]。JAK3インヒビターでの肥満細胞の標的化は、インビトロでの肥満細胞の脱顆粒を調節し、そしてインビボで、IgEレセプター/抗原媒介性アナフィラキシー反応を予防した。
【0010】
最近の研究は、免疫抑制および同種移植片受理のためのJAK3の首尾よい標的化を記載した。この研究は、水牛心臓の、Wistar Furthレシピエントにおける同種移植片の、JAK3インヒビターの投与の際の用量依存性の生存を実証し、このことは、対宿主性移植片病における所望でない免疫応答を調節する可能性を示す[Kirken,Transpl.Proc.2001,33,3268−3270]。
【0011】
IL−4媒介性STATリン酸化は、慢性関節リウマチ(RA)の初期段階および後期段階に関与する機構として示唆されている。RAの滑膜および滑液における炎症誘発性サイトカインのアップレギュレーションは、この疾患の特徴である。IL−4/STAT経路のIL−4媒介性活性化は、Janusキナーゼ(JAK 1およびJAK 3)を介して媒介されること、およびIL−4に関連するJAKキナーゼが、RA滑膜において発現されることが実証された[Muller−Ladnerら、J.Immunol.2000,164,3894−3901]。
【0012】
家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)は、ALS患者の約10%に影響を与える、致死性の神経変性障害である。FALSマウスの生存率は、JAK3特異的インヒビターでの処置の際に、増加した。このことは、JAK3が、FALSにおいて役割を果たすことを示唆した[Trieuら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2000,267,22−25]。
【0013】
転写の情報伝達物質と活性化物質(STAT)タンパク質は、とりわけ、JAKファミリーのキナーゼによって活性化される。最近の研究からの結果は、JAKファミリーキナーゼを、白血病の処置のための特異的インヒビターで標的化することによる、JAK/STATシグナル伝達経路への介入の可能性を示唆した[Sudbeckら、Clin.Cancer Res.1999,5,1569−1582]。JAK3特異的化合物は、JAK3発現細胞株DAUDI、RAMOS、LC1−19、NALM−6、MOLT−3およびHL−60のクローン増殖を阻害することが示された。
【0014】
動物モデルにおいて、TEL/JAK2融合タンパク質は、造血細胞株において、骨髄増殖性障害、およびTEL/JAK2の導入を誘導し、STAT1、STAT3、STAT5の活性化、およびサイトカイン非依存性増殖を生じた[Schwallerら、EMBO J.1998,17,5321−5333]。
【0015】
JAK3およびTYK2の阻害は、STAT3のチロシンリン酸化を排除し、そして菌状息肉腫(皮膚T細胞リンパ腫の1つの形態)の細胞増殖を阻害した。これらの結果は、JAKファミリーキナーゼを、構成的に活性化されたJAK/STAT経路(これは、菌状息肉腫に存在する)において関連付けた[Nielsenら、Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.1997,94,6764−6769]。同様に、STAT3、STAT5、JAK1およびJAK2は、マウスT細胞リンパ腫(最初、LCK過剰発現によって特徴付けられる)において、構成的に活性化されることが実証された。従って、異常な細胞増殖におけるJAK/STAT経路をさらに示唆した[Yuら、J.Immunol.1997,159,5206−5210]。さらに、IL−6媒介性STAT3活性化は、JAKのインヒビターによってブロックされ、アポトーシスに関する骨髄腫細胞の感作をもたらした[Catlett−Falconeら、Immunity 1999,10,105−115]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物を開発する、大きな必要性が存在する。特に、これらの活性化に関連する障害の大部分に対して現在利用可能な不十分な処置を特に考慮して、JAK−3のインヒビターとして有用な化合物を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明の化合物、およびその薬学的に受容可能な組成物は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有効であることが、ここで発見された。特定の実施形態において、これらの化合物は、JAK−3プロテインキナーゼのインヒビターとして有効である。これらの化合物は、一般式I:
【0018】
【化16】

【0019】
またはその薬学的に受容可能な誘導体を有し、ここで、A、Q、W、X、R、R、およびRは、以下で定義される。
【0020】
これらの化合物、およびその薬学的に受容可能な組成物は、種々の障害(アレルギー性障害(例えば、喘息およびアトピー性皮膚炎)、自己免疫疾患(例えば、SLE狼瘡および乾癬)、ならびに器官移植に関連する状態が挙げられる)を処置するため、またはその重篤度を減少させるために有用である。
【0021】
本発明によって提供される化合物はまた、生物学的現象および病理学的現象における、キナーゼの研究;このようなキナーゼによって媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究;および新たなキナーゼインヒビターの比較可能な評価のために有用である。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
式Iの化合物:
【化1】


またはその薬学的に受容可能な塩であって、
ここで:
WおよびXは、各々独立して、酸素または硫黄であり;
Aは、窒素、CH、C−CN、またはC−(C1〜3脂肪族)であり;
およびRは、一緒になって、必要に応じて置換された、3〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、該環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、0〜3個のヘテロ原子を有し;
Qは、原子価結合、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)C(O)−、−CO−、−C(O)CO−、−SO−、または必要に応じて置換されたC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで:
Qの1つまたは2つの隣接しないメチレン単位は、必要に応じて、独立して、−O−、−S−、−NR−、−C(O)−、−CO−、−C(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRC(O)−、NRCO−、−NRC(O)NR−、−S(O)−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、または−NRSONR−によって置き換えられ;
各Rは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基であって、ここで:
同じ窒素原子に結合する2つのRは、必要に応じて、該窒素と一緒になって、必要に応じて置換された3〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、該環は、該環に結合する窒素に加えて、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有し;
は、RまたはArであり;そして
Arは、必要に応じて置換された、以下:
(a)3〜8員の単環式、または8〜10員の二環式の、飽和環、部分的に不飽和の環、またはアリール環;
(b)3〜7員の複素環式環であって、該環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜3個のヘテロ原子を有する、環;あるいは
(c)5〜6員の単環式、または8〜10員の二環式の、ヘテロアリール環であって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜4個のヘテロ原子を有する、環、から選択される環であり、
ただし、該化合物は、以下:
3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]アミド;
N−[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−2−フェノキシ−ニコチンアミド;
5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
シクロプロパンカルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
N−ヘプチル[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アセトアミド;
チオフェン−2−カルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
5−(6−エチル−チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルアミン;
5−(2−クロロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルアミン;
2−クロロ−N−[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−2−メチル−プロピオンアミド;
2−クロロ−N−[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−2−メチル−プロピオンアミド;
4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
1,3,4−チアジアゾール−2−アミン,5−[(7−メチルチエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)チオ]−;および
アセトアミド,N[5−(1H−プリン−6−イルチオ)−1,3,4−チアジアゾール−2−イル
からなる群より選択される化合物ではない、化合物。
(項目2)
およびRが、一緒になって、必要に応じて置換された、5〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、該環が、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有する、項目1に記載の化合物。
(項目3)
およびRが、一緒になって、必要に応じて置換されたベンゾ環、チエノ環、シクロヘキソ環、ピリド環、テトラヒドロピリド環、またはピリミド環を形成する、項目2に記載の化合物。
(項目4)
Qが、原子価結合、−C(O)−、−C(O)NR−、−CO−、−C(O)CO−、−SO−、または必要に応じて置換されたC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで:
Qの1つまたは2つの隣接しないメチレン単位は、必要に応じて、独立して、−O−、−S−、−NR−、−C(O)−、−CO−、または−SO−によって置き換えられている、
項目1に記載の化合物。
(項目5)
が、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基、または必要に応じて置換された、以下:
(a)3〜6員の単環式の飽和環またはアリール環;
(b)5〜6員の複素環式環であって、該環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜2個のヘテロ原子を有する、環;あるいは
(c)5〜6員の単環式、または9〜10員の二環式の、ヘテロアリール環であって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜3個のヘテロ原子を有する、環、から選択される環である、
項目1に記載の化合物。
(項目6)
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ピリジル、チエニル、フラニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチエニル、またはベンゾ[1,3]ジオキソリルからなる群より選択される、必要に応じて置換された基である、項目5に記載の化合物。
(項目7)
Wが硫黄である、項目1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
(項目8)
Xが硫黄である、項目7に記載の化合物。
(項目9)
Aが窒素である、項目8に記載の化合物。
(項目10)
AがCHである、項目8に記載の化合物。
(項目11)
以下の化合物:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】


から選択される、化合物。
(項目12)
有効量の、式Iの化合物:
【化14】


またはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含有する組成物であって、
ここで:
WおよびXは、各々独立して、酸素または硫黄であり;
Aは、窒素、CH、C−CN、またはC−(C1〜3脂肪族)であり;
およびRは、一緒になって、必要に応じて置換された、3〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、該環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、0〜3個のヘテロ原子を有し;
Qは、原子価結合、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)C(O)−、−CO−、−C(O)CO−、−SO−、または必要に応じて置換されたC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで:
Qの1つまたは2つの隣接しないメチレン単位は、必要に応じて、独立して、−O−、−S−、−NR−、−C(O)−、−CO−、−C(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRC(O)−、NRCO−、−NRC(O)NR−、−S(O)−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、または−NRSONR−によって置き換えられ;
各Rは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基であって、ここで:
同じ窒素原子に結合する2つのRは、必要に応じて、該窒素と一緒になって、必要に応じて置換された3〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、該環は、該環に結合する窒素に加えて、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有し;
は、RまたはArから選択され;そして
Arは、必要に応じて置換された、以下:
(a)3〜8員の単環式、または8〜10員の二環式の、飽和環、部分的に不飽和の環、またはアリール環;
(b)3〜7員の複素環式環であって、該環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜3個のヘテロ原子を有する、環;あるいは
(c)5〜6員の単環式、または8〜10員の二環式の、ヘテロアリール環であって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜4個のヘテロ原子を有する、環、から選択される環である、
組成物。
(項目13)
およびRが、一緒になって、必要に応じて置換された、5〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、該環が、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有する、項目12に記載の組成物。
(項目14)
Qが、原子価結合、−C(O)−、−C(O)NR−、−CO−、−C(O)CO−、−SO−、または必要に応じて置換されたC1〜4アルキリデン鎖であり、ここで:
Qの1つまたは2つの隣接しないメチレン単位は、必要に応じて、独立して、−O−、−S−、−NR−、−C(O)−、−CO−、または−SO−によって置き換えられている、
項目12に記載の組成物。
(項目15)
が、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基、または必要に応じて置換された、以下:
(a)3〜6員の単環式の飽和環またはアリール環;
(b)5〜6員の複素環式環であって、該環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜2個のヘテロ原子を有する、環;あるいは
(c)5〜6員の単環式、または9〜10員の二環式の、ヘテロアリール環であって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜3個のヘテロ原子を有する、環、から選択される環である、
項目12に記載の組成物。
(項目16)
Wが硫黄である、項目12〜15のいずれか1項に記載の組成物。
(項目17)
Xが硫黄である、項目16に記載の組成物。
(項目18)
Aが窒素である、項目16に記載の組成物。
(項目19)
AがCHである、項目16に記載の組成物。
(項目20)
抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤、神経栄養因子、または心臓血管疾患を処置するための薬剤から選択されるさらなる治療剤をさらに含有する、項目12に記載の組成物。
(項目21)
(a)患者;または
(b)生物学的サンプル、
におけるJAK−3キナーゼ活性を阻害する方法であって;
該方法は、項目12に記載の組成物、または式Iの化合物
【化15】


もしくはその薬学的に受容可能な塩を、該患者に投与する工程、または該生物学的サンプルに接触させる工程を包含し、
化合物Iにおいて:
WおよびXは、各々独立して、酸素または硫黄であり;
Aは、窒素、CH、C−CN、またはC−(C1〜3脂肪族)であり;
およびRは、一緒になって、必要に応じて置換された、3〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、該環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、0〜3個のヘテロ原子を有し;
Qは、原子価結合、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)C(O)−、−CO−、−C(O)CO−、−SO−、または必要に応じて置換されたC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで:
Qの1つまたは2つの隣接しないメチレン単位は、必要に応じて、独立して、−O−、−S−、−NR−、−C(O)−、−CO−、−C(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRC(O)−、NRCO−、−NRC(O)NR−、−S(O)−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、または−NRSONR−によって置き換えられ;
各Rは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基であって、ここで:
同じ窒素原子に結合する2つのRは、必要に応じて、該窒素と一緒になって、必要に応じて置換された3〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、該環は、該環に結合する窒素に加えて、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有し;
は、RまたはArであり;そして
Arは、必要に応じて置換された、以下:
(a)3〜8員の単環式、または8〜10員の二環式の、飽和環、部分的に不飽和の環、またはアリール環;
(b)3〜7員の複素環式環であって、該環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜3個のヘテロ原子を有する、環;あるいは
(c)5〜6員の単環式、または8〜10員の二環式の、ヘテロアリール環であって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜4個のヘテロ原子を有する、環、から選択される環である、
方法。
(項目22)
自己免疫疾患、神経変性障害、または血液学的異常を処置するか、またはその重篤度を減少させる方法であって、項目12に記載の組成物を患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目23)
前記疾患または状態が、アレルギー性反応またはI型過敏症反応、喘息、移植拒絶、対宿主性移植片病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)、白血病、またはリンパ腫である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記患者に、抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤、神経栄養因子、または心臓血管疾患を処置するための薬剤から選択されるさらなる治療剤を投与するさらなる工程を包含し、ここで:
該さらなる治療剤が、処置される疾患に適切であり;そして
該さらなる治療剤が、前記組成物と一緒に、単一の投薬形態として投与されるか、または該組成物とは別に、複数投薬形態の一部として投与される、
項目22に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
(I.本発明の化合物の一般的な記載)
本発明は、式Iの化合物:
【0023】
【化17】

【0024】
またはその薬学的に受容可能な塩に関し、ここで:
WおよびXは、各々独立して、酸素または硫黄であり;
Aは、窒素、CH、C−CN、またはC−(C1〜3脂肪族)であり;
およびRは、一緒になって、必要に応じて置換された、3〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、この環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、0〜3個のヘテロ原子を有し;
Qは、原子価結合、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)C(O)−、−CO−、−C(O)CO−、−SO−、または必要に応じて置換されたC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで:
Qの1つまたは2つの隣接しないメチレン単位は、必要に応じて、独立して、−O−、−S−、−NR−、−C(O)−、−CO−、−C(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRC(O)−、NRCO−、−NRC(O)NR−、−S(O)−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、または−NRSONR−によって置き換えられ;
各Rは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基であって、ここで:
同じ窒素原子に結合する2つのRは、必要に応じて、この窒素と一緒になって、必要に応じて置換された3〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和の環を形成し、この環は、この環に結合する窒素に加えて、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有し;
は、RまたはArであり;そして
Arは、必要に応じて置換された、以下:
(a)3〜8員の単環式、または8〜10員の二環式の、飽和環、部分的に不飽和の環、またはアリール環;
(b)3〜7員の複素環式環であって、この環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜3個のヘテロ原子を有する、環;あるいは
(c)5〜6員の単環式、または8〜10員の二環式の、ヘテロアリール環であって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜4個のヘテロ原子を有する、環、から選択される環である。
【0025】
(2.化合物および定義)
本発明の化合物は、上で一般的に記載され、そして本明細書中に開示されるクラス、サブクラス、および種によってさらに記載される、化合物を含む。本明細書中で使用される場合、他に示されない限り、以下の定義が適用されるべきである。本発明の目的で、化学元素は、元素の周期表CASバージョン、Handbook of Chemistry
and Physics、第75版に従って同定される。さらに、有機化学の一般的な原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5版、Smith,M.B.およびMarch,J.編、John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、これらの全体は、本明細書中に参考として援用される。
【0026】
本明細書中で記載される場合、本発明の化合物は、必要に応じて、上で一般的に示されるような、または本発明の特定のクラス、サブクラス、および種によって例示されるような、1つ以上の置換基で置換され得る。語句「必要に応じて置換される」は、語句「置換または非置換の」と交換可能に使用されることが理解される。一般に、用語「置換される」は、用語「必要に応じて」が先行しようとしまいと、所定の構造における水素ラジカルの、特定の置換基のラジカルでの置き換えをいう。他に示されない限り、必要に応じて置換される基は、その基の各置換可能な位置で置換基を有し得、そして任意の所定の構造における1つより多くの位置が、特定された群から選択される1つより多くの置換基で置換され得る場合、この置換基は、全ての位置において、同じであっても異なっていてもいずれでもよい。本発明によって予測される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定であるか、または化学的に可能な化合物の形成を生じる組み合わせである。用語「安定な」とは、本明細書中で使用される場合、これらの生成、検出、ならびに好ましくは、それらの回収、精製、および本明細書中に開示される1つ以上の目的のためのそれらの使用を可能にする条件に供される場合に、実質的に変化されない化合物をいう。いくつかの実施形態において、安定な化合物または化学的に可能な化合物は、40℃以下の温度に、水分または他の化学的に反応性の条件の非存在下で、少なくとも1週間維持される場合に、実質的に変化しない化合物である。
【0027】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」とは、本明細書中で使用される場合、直鎖(すなわち、非分枝)または分枝の、置換されたかまたは置換されていない、完全に飽和であるかまたは1つ以上の不飽和単位を含む、炭化水素鎖、あるいは完全に飽和であるかまたは1つ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない、単環式炭化水素または二環式炭化水素(本明細書中において、「炭素環」、「シクロ脂肪族」または「シクロアルキル」ともまた称される)であって、分子の残りの部分への1つの付着点を有するものを意味する。他に特定されない限り、脂肪族基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、脂肪族基は、1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態において、脂肪族基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態において、脂肪族基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含み、そしてなお他の実施形態において、脂肪族基は、1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、「シクロ脂肪族」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)とは、完全に飽和であるかまたは1つ以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではない、単環式のC〜C炭化水素、または二環式のC〜C12炭化水素であって、分子の残りの部分への1つの付着点を有するものをいい、ここで、この二環式環系における任意の個々の環は、3〜7のメンバーを有する。適切な脂肪族基としては、直鎖または分枝鎖の、置換または非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびこれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
用語「ヘテロ脂肪族」とは、本明細書中で使用される場合、1つまたは2つの炭素原子が、独立して、1つ以上の酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素によって置き換えられている、脂肪族基を意味する。ヘテロ脂肪族基は、置換であっても非置換であっても、分枝鎖であっても非分枝鎖であっても、環式であっても非環式であってもよく、そして「複素環」基、「ヘテロシクリル」基、「ヘテロシクロ脂肪族」基、または「複素環式」基を包含する。
【0029】
用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロ脂肪族」、または「複素環式」とは、本明細書中で使用される場合、非芳香族の、単環式環系、二環式環系、または三環式環系であって、ここで、1つ以上の環メンバーが、独立して、ヘテロ原子から選択される環系を意味する。いくつかの実施形態において、「複素環」基、「ヘテロシクリル」基、「ヘテロシクロ脂肪族」基、または「複素環式」基は、3〜14個の環メンバーを有し、ここで、1つ以上の環メンバーが、酸素、硫黄、窒素、またはリンから独立して選択されるヘテロ原子であり、そしてこの系における各環は、3〜7個の環メンバーを含む。
【0030】
用語「ヘテロ原子」とは、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素(窒素、硫黄、リン、またはケイ素の任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の四級化形態;あるいはヘテロ環式環の置換可能な窒素(例えば、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおいてのような)、NH(ピロリジニルにおいてのような)、またはNR(N置換ピロリジニルにおいてのような))を含む)のうちの1つ以上を意味する。
【0031】
用語「不飽和」とは、本明細書中で使用される場合、ある部分が、1つ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0032】
用語「アルコキシ」または「チオアルキル」とは、本明細書中で使用される場合、先に定義されたように、酸素原子(「アルコキシ」)または硫黄原子(「チオアルキル」)を介して主要な炭素鎖に付着したアルキル基をいう。
【0033】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」とは、場合に応じて、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0034】
用語「アリール」とは、単独でかまたは「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」においてのようにより大きい部分の一部として使用され、合計で5〜14個の環メンバーを有する単環式、二環式、および三環式の環系をいい、ここで、この系における少なくとも1つの環は、芳香族であり、そしてここで、この系における各環は、3〜7個の環メンバーを含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と交換可能に使用され得る。用語「アリール」はまた、本明細書中以下で定義されるような、ヘテロアリール環系をいう。
【0035】
用語「ヘテロアリール」は、単独でかまたは「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」においてのようなより大きい部分の一部として使用され、合計で5〜14個の環メンバーを有する単環式、二環式、および三環式の環系をいい、ここで、この系における少なくとも1つの環は、芳香族であり、この系における少なくとも1つの環は、1つ以上のヘテロ原子を含み、そしてここで、この系における各環は、3〜7個の環メンバーを含む。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「ヘテロ芳香族」と交換可能に使用され得る。
【0036】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどを含む)は、1つ以上の置換基を含み得る。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適切な置換基は、ハロゲン;−R;−ORo;−SR;1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ;Rで必要に応じて置換されたフェニル(Ph);Rで必要に応じて置換された−O(Ph);Rで必要に応じて置換された−(CH1〜2(Ph);Rで必要に応じて置換された−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;または−(CH0〜2NHC(O)Rから選択され、ここで、Rの各独立した存在は、水素、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族、非置換の5〜6員のヘテロアリール環または複素環式環、フェニル、−O(Ph)、または−CH(Ph)、から選択されるか、あるいは上記定義にかかわらず、同じ置換基上または異なる置換基上のRの2つの独立した存在は、各R基が結合する原子と一緒になって、窒素、酸素または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成する。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロC1〜4脂肪族から選択され、ここで、上記RのC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0037】
脂肪族基またはヘテロ脂肪族基、あるいは非芳香族複素環式環は、1つ以上の置換基を含み得る。脂肪族基またはヘテロ脂肪族基、あるいは非芳香族複素環式環の飽和炭素上の適切な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上で列挙された置換基から選択され、そしてさらに、=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、または=NRが挙げられ、ここで、各Rは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族から選択される。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、ここで、上記RのC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0038】
非芳香族複素環式環の窒素上の任意の置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)NR(R、−C(=NH)−(R、または−NRSOから選択され、ここで、Rは、水素、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された−O(Ph)、必要に応じて置換された−CH(Ph)、必要に応じて置換された−(CH1〜2(Ph);必要に応じて置換された−CH=CH(Ph);または酸素、窒素、もしくは硫黄から独立して選択される1から4個のヘテロ原子を有する、非置換の5〜6員のヘテロアリール環もしくはヘテロシクリル環であるか、あるいは上記定義にかかわらず、同じ置換基上または異なる置換基上のRの2つの独立した存在は、各R基が結合する原子と一緒になって、5〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員のシクロアルキル環を形成する。Rの脂肪族基またはフェニル基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、ここで、上記RのC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0039】
用語「アルキリデン鎖」とは、完全に飽和であるかまたは1つ以上の不飽和単位を有し得、そして分子の残りの部分に対する2つの付着点を有する、直鎖または分枝鎖の炭素鎖をいう。
【0040】
上で詳述されたように、いくつかの実施形態において、R(またはR、または本明細書中で同じように定義される任意の他の可変物)の2つの独立した存在は、各可変物が結合する原子と一緒になって、5〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、またはヘテロアリール環、あるいは窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員のシクロアルキル環を形成する。R(またはR、または本明細書中で同じように定義される任意の他の可変物)の2つの独立した存在は、各可変物が結合した原子と一緒になった場合に形成される例示的な環としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:a)同じ原子に結合し、そしてこの原子と一緒になって、環を形成する、R(またはR、または本明細書中で同じように定義される任意の他の可変物)の2つの独立した存在(例えば、N(R)であって、ここで、Rの両方の存在は、窒素原子と一緒になって、ピペリジン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、またはモルホリン−4−イル基を形成する;およびb)異なる原子に結合し、そしてこれらの原子の両方と一緒になって、環を形成する、R(またはR、または本明細書中で同じように定義される任意の他の可変物)の2つの独立した存在であって、例えば、フェニル基が、ORの2つの存在で置換され、
【0041】
【化18】

【0042】
これらの2つのRの存在は、これらが結合する酸素原子と一緒になって、縮合した6員の酸素含有環:
【0043】
【化19】

【0044】
を形成する。R(またはR、または本明細書中で同じように定義される任意の他の可変物)の2つの独立した存在が、各可変物が結合する原子と一緒になった場合に、種々の他の環が形成され得ること、および上に詳述された例は限定を意図されないことが、理解される。
【0045】
他に言及されない限り、本明細書中に記載される構造はまた、その構造の全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(またはコンホメーション))形態を包含することを意味する;例えば、各不斉中心についてのR配置およびS配置、(Z)および(E)の二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)のコンホメーション異性体。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(またはコンホメーション)の混合物が、本発明の範囲内である。他に言及されない限り、本発明の化合物の全ての互変形態が、本発明の範囲内である。さらに、他に言及されない限り、本明細書中に記載される構造はまた、1つ以上の同位体富化された原子の存在のみが異なる化合物を包含することを意味する。例えば、ジュウテリウムもしくはトリチウムによる水素の置き換え、または13C富化炭素もしくは14C富化炭素による炭素の置換以外は本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0046】
(3.例示的な化合物の記載)
式IのRおよびRによって形成される好ましい環は、必要に応じて置換された、5〜7員の、飽和、部分的に不飽和、または完全に不飽和な、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有する環から選択される。RおよびRによって形成される、必要に応じて置換される、より好ましい環は、ベンゾ、チエノ、シクロヘキソ、ピリド、テトラヒドロピリド、またはピリミドから選択される。RおよびRによって形成される環上の好ましい置換基は、ハロゲン、R、OR、N(R、およびSRから選択され、ここで、Rは、一般的に、および本明細書中のサブセットにおいて定義される。RおよびRによって形成される環上のより好ましい置換基は、クロロ、ブロモ、フルオロ、Me、Et、CF、OH、およびOCHから選択される。
【0047】
式Iの好ましいQ基は、原子価結合、−C(O)−、−C(O)NR−、−CO−、−C(O)CO−、−SO−、またはC1〜4アルキリデン鎖から選択され、ここで、Qの1つまたは2つの隣接しないメチレン単位は、必要に応じて、独立して、−O−、−S−、−NR−、−C(O)−、−CO−、または−SO−によって置き換えられる。式Iのより好ましいQ基は、原子価結合、−C(O)−、−C(O)NH−、−CO−、−C(O)CO−、−SO−、−C(O)CHO−、−C(O)CHS−、または−C(O)NHCH−から選択される。
【0048】
式Iの好ましいR基は、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基、または必要に応じて置換された、以下:
(a)3〜6員の単環式の飽和環またはアリール環;
(b)5〜6員の複素環式環であって、この環は、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜2個のヘテロ原子を有する、環;あるいは
(c)5〜6員の単環式、または9〜10員の二環式の、ヘテロアリール環であって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される、1〜3個のヘテロ原子を有する、環、から選択される環である。
【0049】
式Iのより好ましいR基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ピリジル、チエニル、フラニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチエニル、またはベンゾ[1,3]ジオキソリルから選択される、必要に応じて置換された基である。R上の好ましい置換基は、存在する場合、R、ハロゲン、N(R、OR、またはSRから選択され、ここで、Rは、一般的に、および本明細書中のサブセットにおいて、定義される。
【0050】
1つの実施形態によれば、本発明は、式IIの化合物:
【0051】
【化20】

【0052】
またはその薬学的に受容可能な塩に関し、ここで、A、Q、X、R、R、およびRは、上で定義されたとおりである。
【0053】
式IIの好ましいQ基、R基、R基、およびR基は、式Iの化合物について上で定義されたとおりである。
【0054】
別の実施形態によれば、本発明は、式IIIの化合物:
【0055】
【化21】

【0056】
またはその薬学的に受容可能な塩に関し、ここで、Q、X、R、R、およびRは、上で定義されたとおりである。
【0057】
式IIIの好ましいQ基、R基、R基、およびR基は、式Iの化合物について上で定義されたとおりである。
【0058】
別の実施形態によれば、本発明は、式IVの化合物:
【0059】
【化22】

【0060】
またはその薬学的に受容可能な誘導体に関し、ここで、Q、X、R、R、およびRは、上で定義されたとおりである。
【0061】
式IVの好ましいQ基、R基、R基、およびR基は、式Iの化合物について上で記載されたとおりである。
【0062】
別の実施形態によれば、本発明は、Xが硫黄である、式II、III、またはIVの化合物に関する。
【0063】
別の実施形態によれば、本発明は、RおよびRがベンゾ環を形成する、式II、III、またはIVの化合物に関する。
【0064】
式Iの化合物の代表的な例が、以下で表1に示される。
【0065】
(表1.式Iの化合物の例:)
【0066】
【化23】

【0067】
【化24】

【0068】
【化25】

【0069】
【化26】

【0070】
【化27】

【0071】
【化28】

【0072】
【化29】

【0073】
【化30】

【0074】
【化31】

【0075】
【化32】

【0076】
【化33】

【0077】
【化34】

【0078】
(4.一般的な合成方法論)
本発明の化合物は、一般に、類似化合物についての当業者に公知の方法により、以下の一般スキームおよび以下の調製実施例に示されるように調製され得る。
【0079】
(スキームI)
【0080】
【化35】

【0081】
試薬および条件:(a)NaH、DMF。
【0082】
上記スキームIは、Qは、原子価結合であり、Rは水素である、式Iの化合物(3)を調製するための一般方法を示す。化合物1の脱離基Lは、スルフィド化合物2で置き換えられて、化合物3を形成し得る。種々のL脱離基が、この合成に有用であり、これらとしては、クロロおよびブロモが挙げられるがこれらに限定されない。化合物3は、当業者に公知の方法を用いて、そして、以下の合成スキームに示されるように、式Iの種々の化合物を形成する際の有用な中間体である。
【0083】
(スキームII)
【0084】
【化36】

【0085】
試薬および条件:(a)RC(O)Cl、EtN、CHCN、環流;または(b)RCOH、EtOC(O)Cl。
【0086】
上記スキームIIは、Qはカルボニル基である、式Iの化合物を調製するための方法を示す。これらの化合物は、化合物3を式RC(O)Clの酸塩化物で処理してアミド化合物4を形成することによって調製され得る。あるいは、上記工程(b)に示すように、化合物3をクロロホルメートの存在下、カルボン酸で処理してアミド化合物4を形成し得る。広範種々の脂肪族およびアリール酸塩化物試薬は、この反応に感受性(amenable)であり、種々の式Iの化合物を形成し、ここで、Rは脂肪族、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールである。
【0087】
(スキームIII)
【0088】
【化37】

【0089】
試薬および条件:(a)ROC(O)Cl、ピリジン。
【0090】
上記スキームIIIは、Qは、−CO−基である、式Iの化合物を調製するための方法を示す。これらの化合物は、化合物3を式ROC(O)Clのクロロホルメート化合物で処理し、カルバメート化合物5を形成することによって調製され得る。広範種々の脂肪族およびアリールクロロホルメート試薬はこの反応に感受性であり、式Iの種々の化合物を形成し、ここで、Rは脂肪族、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールである。
【0091】
(スキームIV)
【0092】
【化38】

【0093】
試薬および条件:a)RNCO、CHCN、環流;b)PhOCOCl、ピリジン;c)RNH、DME、加熱。
【0094】
上記スキームIVは、Qは−C(O)NH−基である、式Iの化合物を調製するための方法を示す。これらの化合物は、化合物3を式RNCOのイソシアネート化合物で処理し、尿素化合物6を形成することによって調製され得る。広範種々の脂肪族およびアリールイソシアネート試薬はこの反応に感受性であり、種々の式Iの化合物を形成し、ここで、Rは、脂肪族、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールである。
【0095】
(スキームV)
【0096】
【化39】

【0097】
試薬および条件:a)NaNO、HCl−HO;b)RSONH、KCO
【0098】
上記スキームVは、Qは、−SO−である、式Iの化合物を調製するための一般方法を示す。化合物3は、HCl−HOの存在下で硝酸ナトリウムで処理し、クロロ化合物9を形成し得る。化合物9のクロロ置換基は、スルホンアミド化合物10を形成するために、次いで、式RSONHを有する試薬で置き換えられ得る。広範種々の脂肪族およびアリールスルホンアミド試薬は、この反応に感受性であり、式Iの種々の化合物を形成し、ここでRは、脂肪族、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールである。
【0099】
(スキームVI)
【0100】
【化40】

【0101】
試薬および条件:(a)NaH、DMF。
【0102】
上記スキームVIは、Qは原子価結合である、本発明の化合物(8)を調製するための代替的な方法を示す。化合物1の脱離基Lは、スルフィド化合物7で置き換えられて化合物8を形成し得る。種々のL脱離基は、この合成に有用であり、これらとしては、クロロおよびブロモが挙げられるがこれらに限定されない。広範種々の脂肪族およびアリールスルホンアミド試薬は、この反応に感受性であり、式Iの種々の化合物を形成し、ここで、Rは、脂肪族、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールである。
【0103】
特定の例示的な実施形態が示され、上述および本明細書中に示され、そして記載されているが、本発明の化合物は、適切な出発物質を用い、当業者に一般に利用可能な方法により、上記の一般的に記載した方法に従って調製され得ることが理解される。
【0104】
(5.使用、処方および投与)
(薬学的に受容可能な組成物)
上記のように、本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターである化合物を提供し、従って、本発明は、以下の疾患、障害および状態の処置に有用である:アレルギー性障害(例えば、喘息およびアトピー性皮膚炎)、自己免疫疾患(例えば、SLE狼蒼および乾癬)、および臓器移植に関する状態が挙げられるがこれらに限定されない。
【0105】
従って、本発明の別の局面において、薬学的に受容可能な組成物が提供され、これらの化合物は、本明細書中に記載されるような化合物のいずれかを含み、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含む。特定の実施形態において、これらの組成物は、必要に応じて、1つ以上のさらなる治療剤を含む。
【0106】
本発明の特定の化合物は、市販されている(Maybridge plc,Trevillett,Tintagel,Cornwall PL34 OHW,England)。しかし、これらの化合物は、JAKキナーゼのインヒビターとして知られておらず、また、任意の薬学的用途を有するものとして、または、薬学的に受容可能な組成物の成分としても知られていない。市販の本発明の化合物は、以下から選択される:
3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
N−[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−2−フェノキシ−ニコチンアミド;
5−メチル−2−フェニル−2H−[1,2,3]チアゾール−4−カルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
シクロプロパンカルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
N−ヘプチル[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アセトアミド;
チオフェン−2−カルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
5−(6−エチル−チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルアミン;
5−(2−クロロ−チエノ[2,3−b]ピリジン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルアミン;
2−クロロ−N−[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−2−メチルプロピオンアミド;
2−クロロ−N−[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−2−メチルプロピオンアミド;
4−ヒドロキシ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−キノリン−3−カルボン酸[5−(7−クロロ−キノリン−4−イルスルファニル)−[1,3,4]チアジアゾール−2−イル]−アミド;
1,3,4−チアジアゾール−2−アミン,5−[(7−メチルチエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)チオ]−;および
アセトアミド,N[5−(1H−プリン−6−イルチオ)−1,3,4−チアジアゾール−2−イル。
【0107】
本発明の化合物のうちの特定のものが、処置のための遊離形態で、または適切な場合には、それらの薬学的に受容可能な誘導体として存在し得ることが理解される。本発明によると、薬学的に受容可能な誘導体としては、薬学的に受容可能な塩、エステル、これらのエステルの塩、または、必要としている患者に投与する場合に、本明細書に別に記載される化合物、あるいはその代謝物または残留物を直接的または間接的に提供し得る、任意の他の付加物または誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に受容可能な塩」とは、健全な医療判断の範囲において、ヒトまたはより下等な動物の組織と接触する使用に適切であり、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などを有さない、そして妥当な効用/危険比を有するふさわしい塩をいう。「薬学的に受容可能な塩」は、レシピエントに投与される場合に、本発明の化合物、あるいはその阻害的に活性な代謝物または残留物を、直接的または間接的に提供し得る、本発明の化合物の任意の無毒性の塩またはエステルの塩を意味する。本明細書で使用する場合、用語「それらの阻害的に活性な代謝物または残留物」は、その代謝物または残留物もまた、JAK−3キナーゼのインヒビターであることを意味する。
【0109】
薬学的に受容可能な塩は、当該分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Scineces,1977,66,1−19(本明細書に参考として援用される)において薬学的に受容可能な塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩は、適切な無機または有機の酸または塩基から得られる塩を含む。薬学的に受容可能な無毒性の酸付加塩の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸)と形成されるか、または当該分野で使用される他の方法(例えば、イオン交換)によって形成される、アミノ基の塩である。他の薬学的に受容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミスル硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(pamoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基から生じる塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書に開示される化合物の任意の塩基性の窒素含有基の4級化を予想する。水溶性または油溶性あるいは分散可能な生成物が、このような4級化によって得られ得る。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に受容可能な塩としては、適切な場合に、対イオン(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネートおよびアリールスルホネート)を使用して形成される、無毒性のアンモニウムカチオン、4級アンモニウムカチオン、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0110】
上述のように、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、さらに、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含み、本明細書で使用される場合、所望される特定の投薬形態に適合するような、任意の全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散物補助剤または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、濃化剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑沢剤などが挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的に受容可能な組成物を処方する際に使用される種々のキャリアおよびその調製のための公知技術を開示する。任意の従来のキャリア媒体が、本発明の化合物と不適合である(例えば、薬学的に受容可能な組成物の任意の他の成分と有害な様式で任意の望ましくない生物学的影響を生じるかまたはそれ以外で相互作用することによって)ことを除いて、その使用は、本発明の範囲内であることが意図される。薬学的に受容可能なキャリアとして役立ち得る材料のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、ホスフェート)、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、トリケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバターおよび坐剤ワックス);オイル(例えば、ピーナッツ油、綿実油);紅花油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油および大豆油;グリコール;例えば、ポリプロピレングルコールまたはポリエチレングリコール;エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性適合性滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)が挙げられるがこれらに限定されず、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味料および芳香剤、保存剤および酸化防止剤もまた、処方者の判断に従って、組成物中に存在し得る。
【0111】
(化合物および薬学的に受容可能な組成物の使用)
なお別の局面において、アレルギー障害(例えば、喘息およびアトピー性皮膚炎)、自己免疫疾患(例えば、SLE狼瘡および乾癬)および器官移植に関連する状態の処置または重篤度を軽減するための方法が提供され、必要な被験体に、有効量の化合物または化合物を含む薬学的に受容可能な組成物を投与する工程を包含する。本発明の特定の実施形態において、化合物または薬学的に受容可能な組成物の「有効量」は、アレルギー障害(例えば、喘息およびアトピー性皮膚炎)、自己免疫疾患(例えば、SLE狼瘡および乾癬)および器官移植に関連する状態の処置に有効な量である。
【0112】
本発明の方法に従って、化合物および組成物は、アレルギー障害(例えば、喘息およびアトピー性皮膚炎)、自己免疫疾患(例えば、SLE狼瘡および乾癬)および器官移植に関連する状態を処置または重篤度を軽減させるために有効な任意の量および任意の投与経路を使用して、投与され得る。
【0113】
必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および一般的な状態、感染の重篤度、特定の薬剤、その投与様式などに依存して、被験体間で変化する。本発明の化合物は、好ましくは、投与の容易さおよび投薬の均一性のための投薬単位形態で処方される。本明細書中で使用される場合、表現「投薬単位形態」とは、処置される患者に適切な薬剤の物理的に別個の単位をいう。しかし、本発明の化合物および組成物の合計の毎日の使用量が、正しい医療的判断の範囲内で、主治医によって決定されることが理解される。任意の特定の患者または生物についての特定の有効用量レベルは、処置される障害および障害の重篤度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康、性別および食餌;投与の時間、投与の経路、および使用される特定の化合物の排出速度;処置の持続期間;使用される特定の化合物とともにまたは同時に使用される薬物、ならびに医学の分野で周知の同様な因子を含む種々の因子に依存する。本明細書中で使用される場合、用語「患者」は、動物、好ましくは、哺乳動物、および最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0114】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、ヒトおよび他の動物に、経口的、直腸的、非経口的、嚢内的に、膣内的、腹腔内的、局所的(散剤、軟膏、またはドロップによって)、頬的に、経口または経鼻スプレーなどとして、処置される感染の重篤度に依存して、投与され得る。特定の実施形態において、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日1回以上で、1日当たり被験体の体重の約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは、約1mg/kg〜約25mg/kgの投薬量で、経口的にまたは非経口的に投与され得る。
【0115】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物に加えて、液体投薬形態は、当該分野で一般的に使用される不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ひまし油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびその混合物)を含み得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味料および芳香剤のようなアジュバントを含み得る。
【0116】
注射可能な調製物(例えば、滅菌注射可能な水性または油性懸濁液)は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の技術に従って処方され得る。滅菌注射可能調製物はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非毒性非経口性受容可能希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液、懸濁液またはエマルジョンであり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来のように使用される。この目的のために、任意の刺激のない(bland)固定油が、使用され得、合成モノグリセリドまたはジグリセリドが挙げられる。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射可能調製物で使用される。
【0117】
注射可能処方物は、例えば、細菌保持フィルターを通る濾過によって、または使用の前に、滅菌水または他の滅菌注射可能媒体中で溶解または分散され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。
【0118】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅延させることがしばしば所望である。これは、乏しい水溶解性を有する結晶性または非結晶性材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次いで、化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、この溶解速度は、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された化合物形態の遅延吸収は、オイルビヒクル中に化合物を溶解または懸濁させることによって達成される。注射可能貯蔵形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中の化合物のマイクロカプセルマトリクスを形成することによって、作製される。ポリマーに対する化合物の比率および使用される特定のポリマーの性質に依存して、化合物放出の速度は、制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。貯蔵注射可能調製物はまた、身体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物をとらえることによって調製される。
【0119】
直腸投与または膣投与のための組成物は、好ましくは、本発明の化合物を適切な非刺激性賦形剤またはキャリア(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックス(室温で固体であるが、体温で液体であり、従って、直腸または膣の腔で溶解し、活性化合物を放出する)を混合することによって調製され得る坐剤である。
【0120】
経口投与のための固体投薬形態としては、カプセル、錠剤、丸剤、散剤および顆粒が挙げられる。このような固体投薬形態において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性な薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)および/またはa)充填剤または増量剤(デンプン、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア)、c)湿潤剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特手のシリケート、および炭酸ナトリウム)、e)溶液遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、第4級アンモニウム化合物、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおおびグリセロールモノステアレート)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ)、およびi)滑沢剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物)と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、投薬形態はまた、緩衝剤を含み得る。
【0121】
類似の型の固体組成物はまた、賦形剤(例えば、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなど)を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中に充填剤として使用され得る。錠剤、糖衣剤、カプセル、丸剤、および顆粒の固体投薬形態は、コーティングおよびシェル(例えば、腸溶コーティングおよび薬学処方分野で周知の他のコーティング)を用いて調製され得る。これらは、必要に応じて、不透明化剤を含み得、そしてまた、これらが活性成分のみを、または好ましくは、腸管の特定の部分で、必要に応じて、遅延様式で放出する組成物であり得る。使用され得る埋め込み組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。類似の型の固体組成物はまた、賦形剤(ラクトースまたは乳糖)および高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中で充填剤として使用され得る。
【0122】
活性化合物はまた、上記のように、1つ以上の賦形剤を用いるマイクロカプセル化形態であり得る。錠剤、糖衣剤、丸剤、および顆粒の固体投薬形態は、コーティングおよびシェル(例えば、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび薬学処方分野で周知の他のコーティング)を用いて調製され得る。このような固体投薬形態において、活性化合物は、スクロース、ラクトースまたはデンプンのような少なくとも1つの不活性希釈剤と混合され得る。このような投薬形態はまた、通常の実施のように、不活性希釈剤以外のさらなる物質(例えば、錠剤滑沢剤および他の錠剤補助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロース))を含み得る。カプセル、錠剤および丸剤の場合において、投薬形態はまた、緩衝剤を含み得る。これらは、必要に応じて、不透過剤を含み得、そしてまた、これらが活性成分のみを、または好ましくは、腸管の特定の部分で、必要に応じて、遅延様式で放出する組成物であり得る。使用され得る埋め込み組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0123】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与ための投薬形態としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分は、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび任意の必要な保存剤または緩衝剤と、滅菌状態で混合される。眼科処方物、点耳剤、および目薬はまた、本発明の範囲内であるとして意図される。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を意図し、これは、身体に対する化合物の制御送達を提供するというさらなる利点を有する。このような投薬形態は、適切な媒体中で化合物を溶解または分散させることによって作製され得る。吸収促進剤はまた、皮膚を横切る化合物のフラックスを増加させるために使用され得る。速度は、速度制御膜を提供することによって、またはポリマーマトリックスまたはゲル中に化合物を分散させることによってのいずれかで、制御され得る。
【0124】
上に一般的に記載されるように、本発明の化合物が、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用である。1つの実施形態において、本発明の化合物および組成物は、JAK−3のインヒビターであり、従って、任意の特定の理論によって制御されることを意図しないが、化合物および組成物は、1つ以上のJAK−3の活性が疾患、状態または障害に関係する疾患、状態または障害を処置またはその重篤度を減少するために特に有用である。JAK−3の活性が特定の疾患、状態または障害に関与する場合、この疾患、状態、または障害はまた、「JAK−3媒介疾患」または疾患症状と呼ばれ得る。従って、別の局面において、本発明は、1つ以上のJAK−3の活性が疾患状態に関係する疾患、状態または障害を処置またはその重篤度を減少するための方法を提供する。
【0125】
JAK−3のインヒビターとして本発明において使用される化合物の活性は、インビトロで、インビボまたは細胞株においてアッセイされ得る。インビトロアッセイとしては、活性化されたJAK−3のリン酸化活性またはATPase活性のいずれかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。代替のインビトロアッセイは、JAK−3に結合するインヒビターの能力を定量する。インヒビター結合は、結合の前にインヒビターを放射標識することによって、インヒビター/JAK−3複合体を単離することによって、および結合される放射標識の量を決定することによって測定され得る。あるいは、インヒビター結合は、新たなインヒビターが、公知の放射性リガンドに結合されるJAK−3とともにインキュベーションする競合実験を実行することによって決定される。
【0126】
用語「測定可能に阻害する」とは、本明細書中で使用される場合、この組成物およびJAK−3キナーゼを含むサンプルと、このような組成物の非存在下でJAK−3を含む等価なサンプルとの間のJAK−3の活性の測定可能な変化を意味する。
【0127】
用語「JAK媒介疾患」とは、本明細書中で使用される場合、JAKファミリーキナーゼ(特に、JAK−3)が、ある役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害な状態を意味する。このような状態としては、限定しないが、免疫応答(例えば、アレルギーまたはI型過敏性反応)、喘息、自己免疫疾患(例えば、移植片拒絶、対宿主移植片病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、および多発性硬化症)、神経変性障害(例えば、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)、ならびに固形および血液学的悪性疾患(例えば、白血病およびリンパ腫)が挙げられる。
【0128】
本発明の化合物および薬学的に受容可能な組成物が、併用療法で使用され得、すなわち、化合物および薬学的に受容可能な組成物が、1つ以上の所望の治療または医学的手順と同時に、前にまたは後に、投与され得る。組み合わせレジメンで使用する治療(治療または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療および/または手順の適合性ならびに達成される所望の治療効果の適合性を考慮する。使用される治療剤が、同じ障害に対する所望の効果を達成し得る(例えば、本発明の化合物が、同じ障害を処置するために使用される別の薬剤と同時に投与され得る)か、またはこれらは、異なる効果(例えば、任意の副作用の制御)を達成し得ることが理解される。本明細書中で使用されるように、特定の疾患、または状態を処置または予防するために通常に投与されるさらなる治療剤は、「処置される疾患または状態に適切」として公知である。
【0129】
例えば、化学療法剤または他の抗増殖剤は、増殖疾患および癌を処置するために、本発明の化合物と組み合わされ得る。公知の化学療法剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本発明の抗癌剤とともに使用され得る他の治療または抗癌剤としては、外科手術、放射線療法(数個の例として、ガンマ線、中性子線放射線療法、電子ビーム放射線療法、陽子線療法、ブラキ治療、および全身放射性同位体)、内分泌療法、生物学的応答改変剤(数個挙げると、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子(TNF))、高温療法および低温療法、任意の有害な影響を減少させる薬剤(例えば、制吐剤)、ならびに他の認められた化学療法剤(アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、抗代謝物(メトトレキサート)、プリンアンタゴニスチトおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ゲムシタビン)、紡錘体阻害剤(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)、GleevecTM、アドリアマイシン、デキサメタゾン、およびシクロホスファミドが挙げられる。最新の癌療法のより包括的な考察について、http://www.nci.nih.gov/、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmのFDA認証された腫瘍学薬剤のリスト、およびThe Merck Manual,Seventeeth Ed.1999(この全体の内容が、本明細書によって参考として援用される)を参照のこと。
【0130】
本発明のインヒビターとの薬剤の他の例はまた、制限されることなく、以下と組み合わされ得る:Aricept(登録商標)およびExcelon(登録商標)のようなアルツハイマー病についての処置;L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン(entacapone)、ロピンロル(ropinrole)、プラミペキソール(pramipexole)、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル(trihexephendyl)、およびアマンタジンのようなパーキンソン病についての処置;βインターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、およびミトキサントロンのような多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤;アルブテロールおよびSingulair(登録商標)のような喘息のための処置;ザイプレキサ(zyprexa)、リスペルダル(risperdal)、セロキエル(seroquel)、およびハロペリドールのような分裂病を処置するための薬剤;コルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミドのような抗炎症剤;シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノレートモフェチル(mofetil)、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジンのような免疫調節剤および免疫抑制剤;アセチルコリンエステラーゼインヒビター、MAOインヒビター、インターフェロン、抗痙攣剤、イオンチャネルブロッカー、リルゾール(riluzole)、および抗パーキンソン病剤のような神経栄養因子;βブロッカー、ACEインヒビター、利尿剤、ニトレート、カルシウムチャネルブロッカー、およびスタチンのような心臓血管疾患を処置するための薬剤;コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス剤のような肝臓疾患を処置するための薬剤;コルチコステロイド、抗白血病剤、および成長因子のような血液障害を処置するための薬剤;ならびにγグロブリンのような免疫欠損障害を処置するための薬剤が挙げられる。
【0131】
本発明の組成物に存在するさらなる治療剤の量は、活性剤のみとしてその治療剤を含む組成物で通常投与される量以下である。好ましくは、本発明で開示される組成物におけるさらなる治療剤の量は、治療活性剤のみとしてその薬剤を含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0132】
本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な組成物はまた、補綴材、人工弁、脈管移植片、ステントおよびカテーテルのような移植可能医療デバイスをコーティングするための組成物内に組み込まれ得る。従って、本発明は、別の局面において、一般的に上記される本発明の化合物、および本明細書中のクラスおよびサブクラス、ならびに移植可能なデバイスをコーティングするのに適切なキャリアを含む移植可能なデバイスをコーティングするための組成物を含む。なお別の局面において、本発明は、一般的に上記される本発明の化合物、および本明細書中のクラスおよびサブクラス、ならびに移植可能なデバイスをコーティングするのに適切なキャリアを含む組成物でコーティングされる移植可能デバイスを含む。
【0133】
脈管ステントは、例えば、再狭窄(損傷後の脈管壁の再び狭まること)を克服するために使用されている。しかし、ステントまたは他の移植可能なデバイスを使用する患者は、血塊形成または血小板活性化の危険がある。これらの望ましくない効果は、キナーゼインヒビターを含む薬学的に受容可能な組成物でデバイスを予めコーティングすることによって、予防または緩和され得る。コーティングされるデバイスの適切なコーティングおよび一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載される。コーティングは、代表的に、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテート、およびその混合物のような生体適合性ポリマー材料である。コーティングは、必要に応じて、フルオロシリコーン、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール、リン脂質またはこれらの組み合わせの適切なトップコートによってさらにカバーされて、組成物の制御可能な放出特徴を与え得る。
【0134】
本発明の別の局面は、生物学的サンプルまたは患者中のJAK−3の活性を阻害することに関し、この方法は、患者に投与する工程、またはこの生物学的サンプルを式Iの化合物またはこの化合物を含む組成物と接触させる工程を包含する。用語「生物学的サンプル」は、本明細書中に使用される場合、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られる生検材料またはその抽出物;ならびに血液、唾液、尿、糞、精液、涙、または他の身体流体またはその抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
生物学的サンプル中のJAK−3キナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の種々の目的で有用である。このような目的の例としては、血液輸液、器官移植、生物学的試料保存、および生物学的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0136】
(合成実施例)
(A)一般)
H NMRスペクトルをBruker DPX 400機器を用いて400MHzで記録した。13C NMRスペクトルを、同じ機器を用いて100NHzで記録した。LC/MSデータを、Micromass ZQまたはプラットホーム機器を用いて大気圧化学イオン化(atmospheric pressure chemical ionisation)で得た。HPLC分析を、40℃に維持したPhenomenex C18(2)Lunaカラム(30×4.6mm)で実施した。サンプルを1mg/mLの適切な濃度を有するアセトニトリル中の溶液として調製した。1〜5μLをこのシステムに注入した。化合物を、2mL/分の流速で、以下の勾配を用いて溶出した。
【0137】
0分、80% HO−20%MeCN、
2.5分、0% HO−100%MeCN、
3.5分、0% HO−100%MeCN。
【0138】
溶出した混合物を、次いで、開始条件に戻し、カラムを1分間再平衡した。ダイオードアレイ検出器で検出し、214および254についてのクロマトグラムを抽出した。全ての場合において、溶出時間は、2つの波長について同一であった。
【0139】
全ての試薬は市販されており、直接用いた。DMFを、4Åのモレキュラーシーブ(Fisher Scientific)で乾燥させた。カラムクロマトグラフィーは、Silica Gel 60(Fluka)を用いた。TLCを、予めコートされたプラスチックシートPolygram SIL G/UV254(Macherey−Nagel)を用いて行った。
【0140】
(B)例示的な化合物の合成)
一般に、以下の実施例に示されるように、
【0141】
【化41】

【0142】
は、
【0143】
【化42】

【0144】
を表し、
【0145】
【化43】

【0146】
は、
【0147】
【化44】

【0148】
を表し、そして、Rは(以下の一般スキームで用いられる場合)、一般に、そして本明細書中の一部で定義されるようなRを表す。上記の環が、本明細書中に一般に記載され、例示されるように置換され得ることが理解される。
【0149】
(5−アミノ−[1,3,5]チアジアゾール−2−チオールとクロロ複素環式化合物の縮合の一般手順)
【0150】
【化45】

【0151】
5−アミノ−チアジアゾール−2−チオール(1.1mmol)のDMF(8ml)溶液に、NaH(1.2mmol)を少しずつ室温で添加した。添加が完了した後、混合物を室温で20分間攪拌した。次いで、クロロ複素環化合物(1.1mmol)を、少しずつ添加し、混合物を80〜90℃(油浴温度)で18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却させ、水(20〜40ml)を添加した。沈殿物をろ過により分離し、冷水で数回、次いで、EtOで洗浄し、乾燥させて、生成物(25〜96%収率)を得た。
【0152】
(アミドの調製の一般手順)
(手順A)
【0153】
【化46】

【0154】
アミン(0.3mmol)のMeCN(9ml)懸濁液に、NEt(0.45mmol)を滴下した。次いで、混合物を0℃まで冷却し、酸塩化物(0.36mmol)を滴下した。0℃で20分間攪拌した後、混合物を室温まで温め、次いで、80℃(油浴温度)で18時間加熱した。反応の間に生成物が結晶化し、ろ過により温溶液から分離して、冷EtOで洗浄して、乾燥させた。生成物が結晶化しない場合、溶媒を減圧下でエバポレートし、固体残留物を水(約5ml)中に懸濁させた。溶けない物質をろ過により分離して、水で数回、次いで、EtOで洗浄し、乾燥させて、生成物(40〜96%収率)を得た。
【0155】
(手順B)
【0156】
【化47】

【0157】
アミン(0.34mmol)のTHF(15ml)懸濁液に、酸(0.37mmol)を添加し、続いて、NEt(0.41mmol)を添加した。次いで、混合物を0℃まで冷却し、HBTU(0.37mmol)を少しずつ添加した。0℃で40分間攪拌した後、混合物を室温まで温め、次いで、50〜60℃(油浴温度)で18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却させ、水(約40ml)を添加した。沈殿物をろ過により分離し、水で数回、EtOで洗浄し、次いで乾燥させて、生成物(43〜56%収率)を得た。
【0158】
(手順C)
【0159】
【化48】

【0160】
酸(0.39mmol)のTHF(15ml)懸濁液に、アミン(0.43mmol)を添加し、その後、EDCI(0.78mmol)を添加した。混合物を、窒素雰囲気下、60℃で18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却させ、水(約40ml)を添加した。沈殿物をろ過により分離し、少量の水、EtOで洗浄し、乾燥させて生成物(58〜69%収率)を得た。
【0161】
(アミドの精製)
【0162】
【化49】

【0163】
生成物がアミドと開始アミンの混合物である場合、以下の手順を用いてさらに精製する。
【0164】
混合物(0.15mmol)(H NMRに基づいて約15%のアミンを含む)をDMF(2mL)に溶解した。この溶液に、メチルイソシアネートポリスチレン(3等量)を添加し、混合物を50〜60℃で18時間振盪した。室温まで冷却した後、混合物をろ過し、樹脂を温DMF(3×約2ml)で洗浄した。溶媒を減圧下でエバポレートし、固形残留物をEtOで洗浄し、乾燥して生成物を得た。
【0165】
(カルバメート誘導体の調製の一般手順)
【0166】
【化50】

【0167】
0℃に冷却したアミン(0.26mmol)の乾燥ピリジン中混合物に、クロロカルバメート(0.33mmol)を滴下した。混合物を室温まで温め、さらに48時間攪拌した。次いで、水(5ml)を添加し、ろ過により沈殿物を回収し、水とEtOで洗浄し、乾燥させて、生成物(41〜72%収率)を得た。
【0168】
開始アニリンが生成物中に存在する場合、メチルイソシアネートポリスチレンを用いて、上記の方法によりこの生成物を精製した。
【0169】
(尿素誘導体の調製の一般手順)
(手順A)
【0170】
【化51】

【0171】
アミン(0.22mmol)のMeCN(10ml)懸濁液に、イソシアネート(0.29mmol)を添加し、混合物を70〜75℃(油浴温度)で18時間加熱した。反応の間に生成物が沈殿し、ろ過により温反応混合物から分離し、EtOで洗浄して、乾燥させた(35〜67%収率)。
【0172】
(手順B)
【0173】
【化52】

【0174】
カルバメート(0.15mmol)のDME(10ml)懸濁液に、アミン(0.19mmol)を添加し、次いで、混合物を約80℃(油浴温度)で18時間加熱した。溶媒をエバポレートし、固形残留物をEtOで数回洗浄して、生成物(14〜63%収率)を得た。
【0175】
(4−(5−クロロ−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)キノリンの合成)
【0176】
【化53】

【0177】
−10℃まで冷却したアミン(4.93mmol)の濃HCl(20ml)溶液に、温度を0℃未満に保ちつつ、HO(4ml)に溶解したNaNO(14.8mmol)を滴下した。反応混合物を同じ温度でさらに3時間攪拌し、次いで、室温まで温めさせた。HO(20ml)を添加し、混合物を固体KCOで中和し、抽出した(EtOAc)。抽出物を乾燥させ(MgSO)、溶媒を減圧下でエバポレートし、残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル、1:1v/v)により精製して、生成物(53〜95%収率)を得た。
【0178】
(4−(5−アミノ−[1,3,4]チアゾール−2−イルスルファニル)キノリン誘導体の調製の一般手順)
【0179】
【化54】

【0180】
塩化物(0.72mmol)のNMP(5ml)溶液に、NEt(0.8mmol)を添加し、続いて、アミン(0.72mmol)を添加した。混合物を、窒素雰囲気下、70℃(ステムブロック温度(stem block temperature))で72時間加熱した。次いで、溶媒を減圧下でエバポレートし、残留物をEtOAc/HO(20ml、1:1v/v)の間で分配した。有機層を分離し、水層を抽出した(EtOAc)。合わせた有機層を乾燥し(MgSO)、溶媒を減圧下でエバポレートし、残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/EtOAc 1:1v/v)により精製して生成物を得た。
【0181】
(スルホンアミド誘導体の調製の一般手順)
【0182】
【化55】

【0183】
塩化物(0.12mmol)のDMF(2ml)溶液に、スルホンアミド(0.14mmol)を添加し、その後、KCO(0.24mmol)を添加し、混合物を70℃(油浴温度)で72時間加熱した。溶媒を減圧下でエバポレートし、残留物をEtOAc/HO(20ml、1:1v/v)間で分配した。水層を分離し、pH2まで酸性化し(2M HCl)、次いで抽出した(EtOAc)。抽出物を乾燥し(MgSO)、溶媒を減圧下でエバポレートして生成物(8〜56%収率)を得た。
【0184】
(N−置換5−アミノチアジアゾール−2−チオールと4,7−ジクロロ−キノリンの縮合の一般手順)
【0185】
【化56】

【0186】
窒素雰囲気下、室温で、N−置換5−アミノチアジアゾール−2−チオール(1.1mmol)のDMF(8ml)溶液に、NaH(1.2mmol)を少しずつ添加し、次いで、混合物を20分間攪拌した。次いで、クロロ複素環化合物(1.1mmol)を少しずつ添加し、混合物を70℃(油浴温度)で3〜18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却させ、水(20〜40ml)を添加した。沈殿した生成物をろ過により分離し、冷水で数回、次いでEtOで洗浄し、乾燥させて生成物(10〜95%収率)を得た。
【0187】
(5−(7−クロロ−キノリン−4−イルオキシ)−[1,3,4]チアジアゾール−2−カルボン酸エチルエステルの合成)
【0188】
【化57】

【0189】
7−クロロ−4−ヒドロキシキノリン(0.093mg、0.5mmol)のDMF(6ml)溶液に、室温でNaH(0.22mg、0.5mmol)を少しずつ添加し、混合物を室温で20分間攪拌した。次いで、2−クロロ−[1,3,4]チアジアゾール誘導体(0.097mg、0.5mmol)を少しずつ添加し、混合物を70〜80℃(油浴温度)で18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却させ、水(15〜30ml)を添加した。沈殿物をろ過により分離し、冷水で数回、次いで、EtOで洗浄し、乾燥させて、生成物(0.081mg、47%収率)を得た。
【0190】
((7−クロロ−キノリン−4−イルオキシ)−[1,3,4]チアジアゾール−2−カルボン酸(フラン−2−イルメチル)−アミドの合成)
【0191】
【化58】

【0192】
アミン(0.035mg、0.036mmol)のDME(4ml)溶液にエステル(0.042mg、12.0mmol)を添加した。混合物を80℃で18時間加熱した。溶媒をエバポレートし、残留物をEtOで粉砕して生成物(0.035mg、75%)を得た。
【0193】
(複素環チオールと複素環臭化物の縮合の一般手順)
【0194】
【化59】

【0195】
窒素雰囲気下、0℃で、MeOH(15ml)中の臭素誘導体(16mmol)およびチオール(16mmol)の懸濁液に、NaOMe(19.2mmol)を少しずつ添加した。混合物を0℃で10分間攪拌し、室温まで温め、次いで、45〜50℃で4〜18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却させ、溶媒を減圧下でエバポレートし、残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtO)により精製して、生成物を得た。
【0196】
(複素環ニトロ化合物からの複素環アミンの合成)
【0197】
【化60】

【0198】
2−ニトロチオフェン誘導体(0.1g、0.3mmol)のAcOH(3ml)溶液に、活性化Fe(0.22g、3.9mmol)を添加した。混合物を80℃(油浴温度)で10分間加熱し、室温まで冷却させて、次いで、セライトでろ過した。セライトケークをHOで洗浄した。ろ液を抽出し(EtOAc)、水層を塩基性化して(NaCO)、そして抽出した(EtOAc)。合わせた有機層をNaOH溶液(2M)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、そして、溶媒を減圧下で除去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtO)により精製し、生成物を得た。
【0199】
(チオフェン−2−カルボン酸アミドの合成)
【0200】
【化61】

【0201】
これらの化合物を、アミドの調製の一般手順(手順A)に従って作製した。粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtO)により精製し、生成物(18〜62%収率)を得た。
【0202】
(5−クロロ−[1,3,4]−チアジアゾール−2−カルボン酸(7−クロロ−キノリン−4−イル)−アミドの合成)
【0203】
【化62】

【0204】
4−アミノ−7−クロロ−キノリン(0.1g、0.56mmol)のDMF(6ml)溶液に、室温でNaH(0.023g、0.58mmol)を少しずつ添加し、混合物を20分間攪拌した。次いで、5−クロロ−[1,3,4]チアジアゾール誘導体(0.108g、0.56mmol)を少しずつ添加し、混合物を80℃(油浴温度)で18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却させ、水(15ml)を添加した。沈殿物をろ過により分離し、EtOで洗浄し、乾燥させて、生成物(0.08g、60%収率)を得た。
【0205】
本発明の例示的な化合物についてのLCMSデータを、以下の表2に示す:
【0206】
【表2−1】

【0207】
【表2−2】

【0208】
【表2−3】

【0209】
【表2−4】

【0210】
【表2−5】

【0211】
【表2−6】

【0212】
【表2−7】

【0213】
【表2−8】

【0214】
【表2−9】

【0215】
【表2−10】

【0216】
【表2−11】

【0217】
【表2−12】

【0218】
【表2−13】

【0219】
(JAK阻害アッセイ)
JAKの化合物阻害を、以下の様式で、G.R.Brownら、Bioorg.Med.Chem.Lett.2000,vol.10,575−579頁に記載された方法により評価した。予め4℃でポリ(Glu,Ala,Tyr)6:3:1でコーティングし、次いで、リン酸緩衝化生理食塩水0.05%およびTween(PBST)で洗浄したMaxisorbプレートに、2μM ATP、5mM MgClおよび化合物のDMSO溶液を添加した。反応をJAK酵素で開始し、プレートを30℃で60分間インキュベートした。次いで、プレートをPBSTで洗浄し、100μLのHRP結合体化4G10抗体を添加し、このプレートを30℃で90分間インキュベートした。プレートを再度PBSTで洗浄し、100μLのTMB溶液を添加し、このプレートを30℃で30分間インキュベートした。硫酸(1Mを100μL)を添加して反応を停止し、プレートを450nmで読み取って、分析のための光学密度を得、IC50値を決定した。
【0220】
本発明の特定の化合物(表1に示されるものを含む)を、JAK阻害について上記アッセイで試験し、2μM未満のIC50を有することを見出した。
【0221】
本発明の特定の他の化合物(表1に示されるものを含む)を、JAK阻害について上記アッセイで試験し、2〜5μMの間のIC50を有することを見出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2010−159306(P2010−159306A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101525(P2010−101525)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2004−563181(P2004−563181)の分割
【原出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】