説明

チアゾリルスルホニルアミド化合物

【課題】 疼痛、発熱、下部尿路症(蓄尿障害(頻尿、尿失禁)、尿排出障害)または癌の治療および/または予防剤として有用なEPアンタゴニストを提供すること。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】


(式中、環Aは水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいシクロペンタジエン、または、水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいシクロペンテンを表わし、Rは水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいC1−4アルキルを表わす。)で示される化合物、その塩またはその溶媒和物、またはそのプロドラッグは強いEP拮抗作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩またはその溶媒和物、またはそのプロドラッグに関する。
【背景技術】
【0004】
プロスタグランジンE(以下、PGEと略記する。)は、アラキドン酸カスケード中の代謝産物として知られており、細胞保護作用、子宮収縮作用、発痛作用、消化管の蠕動運動促進作用、覚醒作用、胃酸分泌抑制作用、血圧降下作用、利尿作用等を有していることが知られている。
【0005】
近年の研究の中で、PGE受容体には、それぞれ役割の異なったサブタイプが存在することが分かってきた。現時点で知られているサブタイプは、大別して4つあり、それぞれ、EP、EP、EP、EPと呼ばれている(非特許文献1参照)。
【0006】
PGEは、その生理活性が多岐にわたるため、目的とする作用以外の作用が副作用となってしまう欠点を有しているが、それぞれのサブタイプの役割を調べ、そのサブタイプのみに有効な化合物を得ることによって、この欠点を克服する研究が続けられている。
【0007】
これらのサブタイプのうち、EPサブタイプは、発痛、発熱、利尿に関与していることが知られている(非特許文献2、3および4参照)。
【0008】
また、EPアンタゴニストは、大腸粘膜異常腺窩および腸内ポリープ形成の抑制作用があり、抗ガン作用を示すことが知られている(特許文献1参照)。
【0009】
本出願人は、EPアンタゴニストとして有用な化合物を見出し、以下の特許出願を先に行なった。すなわち、国際公開第98/27053号パンフレットには、一般式(A)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、
【0012】
【化3】

は、それぞれ独立して、C5−15の炭素環等を表わし、Z1Aは、−COR1A等を表わし、Z2Aは、C1−4アルキル等を表わし、R1Aは、水酸基等を表わし、Z3Aは、単結合等を表わし、Z4Aは、SO等を表わし、Z5Aは、1−5個のR5Aで置換されていてもよい、1個または2個の酸素、硫黄または窒素原子を有する5−7員の複素環等を表わし、R5Aは、独立して、水素原子等を表わし、R2Aは、Z7A−C1−4アルキレン等を表わし、Z7Aは、O等を表わし、R3Aは、水素原子、水酸基等を表わし、R4Aは、C1−8アルキル、置換されたC1−6アルキル等を表わし、nおよびtは、独立して、1−4を表わす(関連する部分を抜粋した。)。)で示されるスルホンアミド化合物が、PGE受容体、特にEP受容体に結合することが開示されている(特許文献2参照)。
【0013】
また、国際公開第02/72564号パンフレットには、一般式(B)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R1Bは、COOH等を表わし、R2Bは、メチル等を表わし、R3BおよびR4Bは結合している炭素原子と一緒になって、シクロペンテン環を構成し、R5Bは、イソプロピル、イソブチル、2−メチル−2−プロペニル、シクロプロピルメチル、メチル、エチル、プロピルまたは2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルを表わし、Arは、メチル基が置換していてもよいチアゾリルを表わし、nは、0を表わす(関連する部分を抜粋した。)。)で示される化合物がEP拮抗作用を有することが開示されている(特許文献3参照)。
【0016】
【特許文献1】国際公開第00/69465号パンフレット
【特許文献2】国際公開第98/27053号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/72564号パンフレット
【非特許文献1】ジャーナル オブ リピッド メディエーターズ セル シグナリング(Journal of Lipid Mediators Cell Signaling),1995年,第12巻,379−391頁
【非特許文献2】ブリティッシュ ジャーナル オブ ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology),1994年,第112巻,735−40頁
【非特許文献3】ヨーロピアンジャーナル ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology),第152巻,1988年,273−279頁
【非特許文献4】ジェネラル ファーマコロジー(General Pharmacology),1992年,第23(5)巻,805−809頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、疼痛、発熱、下部尿路症(蓄尿障害(頻尿、尿失禁)、尿排出障害)または癌の治療および/または予防剤となりうる、有効かつ安全なEPアンタゴニストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、EPサブタイプ受容体に選択的に結合する一般式(I)で示される化合物が疼痛、発熱、下部尿路症(蓄尿障害(頻尿、尿失禁)、尿排出障害)または癌の治療および/または予防剤として有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
先に記述した国際公開第98/27053号パンフレット、および国際公開第02/72564号パンフレットには、本発明化合物は具体的に記載されていない。
【0020】
すなわち、本発明は、
1. 一般式(I)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、環Aは水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいシクロペンタジエン、または、水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいシクロペンテンを表わし、Rは水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいC1−4アルキルを表わす。)で示される化合物、その塩またはその溶媒和物、またはそのプロドラッグ、
2. 環Aが水酸基で置換されていてもよいシクロペンタジエン、または水酸基で置換されたシクロペンテンである前記1記載の化合物、
3. 4−[({1−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({3−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({5−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1H−インデン−6−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、および4−[({6−[sec−ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸からなる群から選択される前記1の化合物に関する。
【0023】
本明細書中、C1−4アルキルとはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル(1−メチルエチル)、ブチル、イソブチル(2−メチルプロピル)、sec−ブチル(1−メチルプロピル)またはtert−ブチル(1,1−ジメチルエチル)等を表わし、好ましくは、ブチル、イソブチルまたはsec−ブチルが挙げられる。
【0024】
環Aとしては、水酸基で置換されていてもよいシクロペンタジエン、または水酸基で置換されたシクロペンテンが好ましい。より好ましくは無置換のシクロペンタジエンまたは1個の水酸基で置換されたシクロペンテンが好ましい。
【0025】
また環Aが無置換のシクロペンテンであるときは、Rが1または2個の水酸基で置換されたC1−4アルキルが好ましい。水酸基で置換されたC1−4アルキルとしては、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルが好ましい。
【0026】
一般式(I)で示される化合物として、好ましくは、4−[({1−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({3−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({5−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1H−インデン−6−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、および4−[({6−[sec−ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸が挙げられる。
【0027】
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。
【0028】
一般式(I)で示される化合物は、公知の方法で相当する塩に変換される。塩は、水溶性のものが好ましい。適当な塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩、又は酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩;又は酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩のような有機酸塩等)等が挙げられる。
【0029】
一般式(I)で示される化合物およびそれらの塩は、溶媒和物に変換することもできる。溶媒和物は低毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)との溶媒和物が挙げられる。
【0030】
また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、生体内において酵素や胃酸等による反応により一般式(I)で示される化合物に変換する化合物をいう。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとしては、一般式(I)で示される化合物が水酸基を有する場合、該水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例、本発明化合物の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物など);一般式(I)で示される化合物のカルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(例、一般式(I)で示される化合物のカルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物など);等が挙げられる。これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163〜198頁に記載されているような、生理的条件で一般式(I)で示される化合物に変化するものであってもよい。さらに、一般式(I)で示される化合物は同位元素(例えばH、14C、35S、125I等)等で標識されていてもよい。
【0031】
[本発明化合物の製造方法]
一般式(I)で示される化合物、その塩またはその溶媒和物、またはそのプロドラッグ(以下、これらを本発明化合物と記載することがある。)は、公知の方法、例えば、国際公開第98/27053号パンフレットまたは国際公開第02/72564号パンフレットに記載された方法、またはComprehensive Organic Transformations : A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition (Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 1999)に記載された方法、または実施例に示す方法等を適宜改良し、組み合わせて用いることで製造することができる。
【0032】
[毒性]
本発明化合物の毒性は十分に低いものであるため、医薬品として安全に使用することができる。
【0033】
[医薬品への適用]
本発明化合物は、PGE受容体のサブタイプであるEP受容体に強く結合し、拮抗する。前述したようにEP受容体は、発痛、発熱、利尿・膀胱収縮に関与していることが知られている。そのため、この受容体に拮抗する一般式(I)で示される化合物、その塩またはその溶媒和物、またはそのプロドラッグは、鎮痛剤、解熱剤、下部尿路症(蓄尿障害(頻尿(神経因性膀胱、神経性膀胱、刺激膀胱、不安定膀胱、前立腺肥大に伴う頻尿など)、尿失禁)、尿排出障害(尿勢低下、尿線分割、尿線途絶、排尿遅延、腹圧排尿、終末滴下など)の治療剤として有用であると考えられる。しかも、本発明化合物は、PGEの他のサブタイプ受容体にほとんど結合しないため、PGEの他の様々な作用に関与せず、副作用のない薬剤となると考えられる。
【0034】
また、EPアンタゴニストは、大腸粘膜異常腺窩および腸内ポリープ形成の抑制作用があるため、本願化合物は抗ガン剤として有用であると考えられる。
【0035】
本発明化合物は、
1)その化合物が有する予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)その化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、
および/または
3)その化合物の副作用の軽減
のために他の薬剤と組み合わせて、併用剤として投与してもよい。
【0036】
本発明化合物と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明化合物を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明化合物を後に投与してもかまわず、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0037】
上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0038】
例えば、本発明化合物の頻尿に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、抗コリン薬、三環系抗うつ薬、αアゴニスト、αアンタゴニスト、GABAアゴニスト、抗利尿薬、抗男性ホルモン、黄体ホルモン、NKアンタゴニスト、βアゴニスト、P2Xアンタゴニスト、カリウムチャネルオープナー、LPA、EPアンタゴニスト、カプサイシン(レシニフェラトキシン)、5α−レダクターゼ阻害剤などが挙げられる。
【0039】
例えば、本発明化合物の疼痛に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、オピオイド、ガバペンチン(プレガバリン)、αアンタゴニスト、NMDAアンタゴニスト、TTX-resistant ナトリウムチャネルブロッカー、VR1アンタゴニスト、ノシセプチンアンタゴニスト、P2Xアンタゴニスト、IPアンタゴニスト、EPアンタゴニスト、N型カルシウムチャネルブロッカー、iNOS阻害剤などが有用である。
【0040】
本発明化合物と他の薬剤の重量比は特に限定されない。
【0041】
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。
【0042】
また、本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0043】
本発明化合物、またはそれらと他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0044】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、1回につき、1ngから100mgの範囲で、1日1回から数回経口投与されるか、または成人一人あたり、1回につき、0.1ngから10mgの範囲で、1日1回から数回非経口投与(好ましくは、静脈内投与)されるか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0045】
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
【0046】
本発明化合物、または本発明化合物と他の薬剤の併用剤を投与する際には、経口投与のための固体組成物、液体組成物およびその他の組成物および非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤等として用いられる。
【0047】
経口投与のための固体組成物には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。
【0048】
カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。
【0049】
このような固体組成物においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、少なくともひとつの不活性な希釈剤、例えばラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと混合される。組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、ラクトースのような安定化剤、グルタミン酸またはアスパラギン酸のような溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤または丸剤は必要により白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの胃溶性あるいは腸溶性物質のフィルムで被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0050】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液体組成物においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる不活性な希釈剤(例えば、精製水、エタノール)に含有される。この組成物は、不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0051】
経口投与のためのその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、それ自体公知の方法により処方されるスプレー剤が含まれる。この組成物は不活性な希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。
【0052】
本発明による非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性および/または非水性の液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含する。水性の液剤、懸濁剤としては、例えば注射用蒸留水および生理食塩水が含まれる。非水溶性の液剤、懸濁剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(登録商標)等がある。また、無菌の水性と非水性の液剤、懸濁剤および乳濁剤を混合して使用してもよい。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ラクトース)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでいてもよい。これらはバクテリア保留フィルターを通すろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、例えば凍結乾燥品の使用前に、無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することもできる。
【0053】
非経口投与のためのその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、軟膏、塗布剤、直腸内投与のための坐剤および膣坐剤等が含まれる。
【発明の効果】
【0054】
本発明化合物は強いEP拮抗作用を有するため、疼痛、発熱、下部尿路症(蓄尿障害(頻尿、尿失禁)、尿排出障害)または癌の治療および/または予防剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表わす。
【0057】
NMRデータは特に記載しない限り、H−NMRのデータである。
【0058】
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
【0059】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、ACD/Name(登録商標)またはACD/Nameバッチ(登録商標)を用いるか、または、IUPAC命名法に準じて命名したものである。例えば、
【0060】
【化6】

【0061】
で示される化合物は、4−[({1−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸と命名された。
実施例1:メチル 4−[({6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチルベンゾエート(化合物1a)およびメチル 4−[({6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチルベンゾエート(化合物1b)
国際公開第02/72564号パンフレットに記載された方法によって製造したメチル 4−[({6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチルベンゾエート(25.0 g)のアセトン(375 mL)溶液を11℃に氷冷し、ジョーンズ試薬(2.6 mol/L, 75.0 mL)を20℃以下でゆっくり滴加した。滴加開始から6時間後に氷冷し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を、水で2回、水および飽和食塩水の混合液、重曹水および飽和食塩水の混合液、および飽和食塩水で順次洗浄し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:kanto 60N, トルエン:酢酸エチル=10:1→5:1→3:1)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(化合物1a(11.7 g)および化合物1b(4.1 g))を得た。
化合物1a
NMR (CDCl3) :δ 7.92-7.87 (m, 2H), 7.85 (d, J = 2.8 Hz), 7.58 (s, 1H), 7.48 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.98 (s, 1H), 5.20-4.95 (m, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.64-3.50 (m, 2H), 3.14-3.04 (m, 2H), 2.72-2.64 (m, 2H), 2.40 (s, 3H), 1.63 (m, 1H), 0.88 (d, J = 5.6 Hz, 6H)。
化合物1b
NMR (CDCl3) :δ 7.89-7.84 (m, 2H), 7.68 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.57 (s, 1H), 7.35 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.28 (s, 1H), 7.22 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.10-4.70 (brs, 2H), 3.94 (s, 3H), 3.80-3.50 (brs, 2H), 3.16-3.08 (m, 2H), 2.74 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 2.32 (s, 3H), 1.71 (m, 1H), 0.93 (brs, 6H)。
実施例2:メチル 4−[({1−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチルベンゾエート(化合物2)
アルゴン雰囲気下、化合物1a(4.00 g)のテトラヒドロフラン(40 mL)−メタノール(20 mL)溶液を氷冷し、5℃で水素化ホウ素ナトリウム(286 mg)を加えた。反応溶液を2℃で1時間撹拌した。反応溶液に1 mol/L塩酸を15℃以下で滴加し、pHを3〜4付近に調整した。反応溶液に、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を10%食塩水で2回洗浄し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:kanto 60N,トルエン:酢酸エチル=2:1→1:1)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(4.21 g)を得た。
MS(ESI, Pos., 20 v): 553 (M+Na)+, 513 (M-H2O+H)+, 414 (M-SO2C3H2NS+MeOH)+, 383 (M-SO2C3H2NS+H)+
NMR (CDCl3) :δ 7.88-7.83 (m, 2H), 7.73 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.29-7.18 (m, 2H), 6.79 (s, 1H), 5.20 (brs, 1H), 5.00-4.70 (m, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.75-3.45 (m, 2H), 3.05 (m, 1H), 2.80 (m, 1H), 2.50 (m, 1H), 2.33 (s, 3H), 1.97 (m, 1H), 1.80 (brs, 1H), 1.70 (m, 1H), 0.93 (d, J = 12.8 Hz, 6H)。
実施例3:4−[({1−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(化合物3)
化合物2(2.20 g)のメタノール(22 mL)溶液に、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(4.2 mL,8.3 mmol)を加え、1時間30分還流した。反応終了後、反応溶液を氷冷し、酢酸エチル、1 mol/L塩酸(8.4 mL)および水道水(22 mL)を加えた(水層pH=3〜4)。水層をさらに酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせて10%食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣にアセトンおよび水を加え、70℃で加熱溶解後、水を加えた。放冷後、得られた結晶をろ過し、アセトン:水=1:1で洗浄し、乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(1.55 g)を得た。
MS(ESI, Neg., 20 v): 515 (M-H)-
NMR (DMSO-d6) :δ 7.99 (d,J = 3.2 Hz, 1H), 7.86 (brs, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.60-7.20 (m, 1H), 7.25 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.11 (brs, 1H), 7.03 (s, 1H), 5.20 (brs, 1H), 5.10-4.70 (m, 3H), 3.60-3.30 (m, 2H), 2.90 (m, 1H), 2.70 (m, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.29 (s, 3H), 1.78 (brs, 1H), 1.55 (m, 1H), 0.83 (d, J = 8.0 Hz, 6H)。
実施例4:4−[({3−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(化合物4)
化合物1aの代わりに化合物1bを用いて、実施例2→実施例3と同様の操作に付すことにより、以下の物性値を有する標題化合物(1.89 g)を得た。
MS(ESI, Neg., 20 v): 515 (M-H)-
NMR (DMSO-d6) :δ 8.00 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.74 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.26 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.10 (s, 1H), 7.02 (s, 1H), 5.30 (brs, 1H), 5.00 (brs, 2H), 4.82 (brs, 1H), 3.55-3.38 (m, 2H), 2.80 (m, 1H), 2.65 (m, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.30 (s, 3H), 1.78 (brs, 1H), 1.54 (m, 1H), 0.82 (brs, 6H)。
実施例5:メチル 3−メチル−4−[({6−[(2−オキソプロピル)(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]ベンゾエート(化合物5)
国際公開第02/72564号パンフレットに記載された方法によって製造したメチル 3−メチル−4−[({6−[(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]ベンゾエート(5.00 g)および炭酸カリウム(3.01 g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液にクロロアセトン(1.31 g)を加え、室温で5時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル、テトラヒドロフランおよび水の混合溶媒で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣にメタノールを加え撹拌し、水をゆっくりと適加した。反応溶液を室温で1時間撹拌後、結晶をろ取し、メタノール(20 mL)および水(10 mL)の混合溶媒で洗浄し、乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(4.69 g)を得た。
NMR (CDCl3) :δ 7.90-7.82 (m, 2H), 7.68 (d, J = 2.8 Hz, 1 H), 7.44 (s, 1H), 7.36 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.77 (s, 1H), 4.80 (s, 2H), 4.54 (brs, 2H), 3.94 (s, 3H), 2.92-2.80 (m, 4H), 2.31 (s, 3H), 2.24 (s, 3H), 2.12-2.00 (m, 2H)。
実施例6:メチル 4−[({6−[(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチルベンゾエート(化合物6)
化合物5(4.50 g)のテトラヒドロフラン(90 mL)溶液を−78℃で冷却し、メチルマグネシウムクロリド(MeMgCl)(3 mol/Lテトラヒドロフラン溶液,14.6 mL)をゆっくり滴加して、−78℃で1時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(150 mL)中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣に酢酸エチルを加え溶解し、ヘキサン(20 mL)を加えて20分撹拌した。結晶の析出を確認した後、さらに30分撹拌した。溶液にヘキサン(80 mL)を加え、1時間撹拌した。得られた結晶をろ取し、乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(3.93 g)を得た。
NMR (CDCl3) :δ 7.92-7.88 (m, 2H), 7.85 (d, J = 3.2 Hz, 1H) , 7.48 (d, J = 3.2 Hz, 1H) , 7.44 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.85 (s, 1H), 6.84 (s, 1H), 5.03 (d, J = 12.0 Hz, 1H) , 4.94 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 3.99 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H), 3.72 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 2.92-2.80 (m, 2H) , 2.80-2.70 (m, 2H), 2.40 (s, 3H) , 2.12-1.98 (m, 2H), 1.23 (s, 3H) , 1.19 (s, 3H)。
実施例7:4−[({6−[(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(化合物7)
化合物6(3.50 g)の1,4−ジオキサン(35 mL)−メタノール(18 mL)懸濁液に、2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(9.90 mL)を滴加し、室温で17時間撹拌した。反応溶液に2 mol/L塩酸(9.90 mL)を加え、酢酸エチルおよび水で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をエタノールに溶解し、水(40 mL)を加え約20分間撹拌した。結晶の析出を確認した後、さらに水(30 mL)を加えた。室温で1時間撹拌し、ろ取して得られた結晶を乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(2.82 g)を得た。
MS(ESI, Neg., 20 v): 515 (M-H)-
NMR (CDCl3) :δ 8.02-7.92 (m, 2H), 7.87 (d, J = 3.2 Hz, 1H) , 7.52-7.44 (m, 2H), 6.88-6.82 (m, 2H), 5.06 (d, J = 12.4 Hz, 1H) , 4.97 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.01 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 3.75 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 2.92-2.80 (m, 2H) , 2.80-2.70 (m, 2H), 2.42 (s, 3H) , 2.14-1.98 (m, 2H), 1.26 (s, 3H) , 1.19 (s, 3H)。
実施例8:4−[({5−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1H−インデン−6−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(化合物8)
化合物3(3.10 g)の酢酸(60 mL)溶液を130℃に昇温した。3時間後、放冷し、反応溶液を酢酸エチルおよび氷水で抽出した。水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、水で4回洗浄し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:kanto 60N, クロロホルム:メタノール=100:3)で精製した。得られた残渣にアセトンおよび水を加えて70℃で溶解し、水を滴加した。室温付近まで放冷後、溶液をろ過し、アセトン:水=1:1の混合溶液で洗浄し、乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(1.88 g)を得た。
MS(ESI, Neg., 20 v): 497 (M-H)-
NMR (CDCl3) :δ 7.95 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 7.75 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.08 (s, 1H), 6.79 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 6.47 (dt, J = 5.6 Hz, 1.8 Hz, 1H), 5.05-4.75 (m, 2H), 3.83-3.52 (m, 2H), 3.37 (s, 2H), 2.36 (s, 3H), 1.74 (m, 1H), 0.96 (d, J = 21.6 Hz, 6H)。
実施例9:4−[({6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(化合物9)
化合物3の代わりに化合物4を用いて、実施例8と同様の操作に付すことにより、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
MS(ESI, Neg., 20 v): 497 (M-H)-
NMR (CDCl3) :δ 7.95 (d, J = 9.6 Hz, 2H), 7.72 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.42 (s, 1H), 7.36 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.94 (s, 1H), 6.80 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 6.66 (dt, J = 5.6 Hz, 1.8Hz, 1H), 5.05-4.75 (m, 2H), 3.84-3.52 (m, 2H), 3.38 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 2.36 (s, 3H), 1.75 (m, 1H), 0.96 (dd, J = 34.4 Hz, 5.2 Hz, 6H)。
実施例10:メチル 4−[({6−[ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチルベンゾエート(化合物10)
国際公開第02/72564号パンフレットに記載された方法によって製造したメチル 3−メチル−4−[({6−[(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]ベンゾエート(1.00 g,)のN,N−ジメチルホルムアミド(2 mL)溶液に、炭酸カリウム(603 mg)およびブチルブロミド(597 mg)を加え、90℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をろ過し、少量のN,N−ジメチルホルムアミドで洗浄した。ろ液にメタノールおよび水を順次加え、結晶を析出させた。得られた結晶をろ取し、乾燥して、標題化合物(0.990 g)を得た。この化合物は精製することなく、次の反応に用いた。
実施例11:4−[({6−[ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(化合物11)
化合物10(500 mg)のメタノール溶液(5 mL)に2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.97 mL)を加え、70℃で1時間撹拌した。反応溶液に60℃で、6 mol/L塩酸(0.32 mL)を加えた。室温まで放冷した後、得られた結晶をろ取し、乾燥して標題化合物(442 mg)を得た。
MS(APCI, Neg., 20 v): 499 (M-H)-
NMR(DMSO-d6) :δ 7.98 (d, J = 3.1 Hz, 1 H), 7.88 (d, J = 3.1 Hz, 1 H), 7.75 (m, 2 H), 7.27 (d, J = 7.9 Hz, 1 H), 7.08 (s, 1 H), 6.98 (s, 1 H), 4.92 (m, 2 H), 3.63 (m, 2 H), 2.85 (t, J = 7.3 Hz, 2 H), 2.77 (t, J = 7.3 Hz, 2 H), 2.29 (s, 3 H), 2.01 (tt, J = 7.4, 7.4 Hz, 2 H), 1.35 (m, 2 H), 1.24 (m, 2 H), 0.76 (t, J = 7.2 Hz, 3 H)。
実施例12:メチル 4−[({6−[sec−ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチルベンゾエート(化合物12)
国際公開第02/72564号パンフレットに記載された方法によって製造したメチル 3−メチル−4−[({6−[(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]ベンゾエート(2.30 g)のN,N−ジメチルホルムアミド(6.9 mL)溶液に、炭酸カリウム(1.04 g)およびsec-ブチルブロミド(2.06 g)を加え、80℃まで昇温し、1時間撹拌した。原料残存が認められたことから、反応溶液にヨウ化ナトリウム(1.50 g)を加え、同温度で2時間撹拌した。さらに、反応溶液にsec-ブチルブロミド(1.03 g)を加え、2時間撹拌した。またさらに、反応溶液にsec-ブチルブロミド(1.03 g)を加え、80℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミド(4 mL)で洗浄し、メタノール(5 mL)および水(10 mL)を加えて結晶を析出させ、24℃で30分撹拌した。ろ取した結晶を、メタノール:水=1:1の混合溶液で洗浄し、乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物(2.44 g)を得た。
NMR(DMSO-d6): δ 8.10 (m, 1H), 8.02 (m, 1H), 7.78 (m, 2H), 7.54 (d, J = 7.6 Hz, 0.5 H), 7.51 (d, J = 8.0 Hz, 0.5H), 7.10 (s, 1H), 6.89 (s, 0.5H), 6.76 (s, 0.5H), 5.08 (s, 1H), 5.03 (s, 1H), 4.10 (m, 1H), 3.85 (s, 3H), 2.90-2.80 (m, 2H), 2.80-2.65 (m, 2H), 2.38 (s, 1.5H), 2.34 (s, 1.5H), 2.10-1.95 (m, 2H), 1.65-1.42 (m, 1H), 1.30-1.05 (m, 1H), 1.02-0.97 (m, 3H), 0.74-0.69 (m, 3H)。
実施例13:4−[({6−[sec−ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(化合物13)
化合物12(2.00 g)のメタノール(20 mL)溶液に、2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(4 mL)を加え、70℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に2 mol/L塩酸(4 mL)を加えてpH3に調整した。反応溶液を20℃まで冷却し、30分撹拌した。得られた結晶をろ過して、メタノール:水道水=1:1の混合溶液で洗浄し、乾燥して、粗結晶(1.80 g)を得た。得られた粗結晶を、アセトン(30 mL)および水(2 mL)に、70℃で加熱溶解した。反応溶液に、水(16 mL)を加えて結晶を析出させ、室温まで冷却し、30分撹拌した。ろ過して得られた結晶に対して、同様の精製操作を3回繰り返し、以下の物性値を有する標題化合物(1.27 g)を得た。
LC-MS(ESI, Neg., 20 v): 499 (M-H)-
NMR (DMSO-d6) :δ 8.09 (m, 1 H), 8.01 (m, 1 H), . 7.78 (d, J = 5.49 Hz, 1 H), 7.74 (d, J =7.87 Hz, 1 H), 7.49 (dd, J = 14.0, 8.0 Hz, 1 H), 7.10 (s, 1 H), 6.82 (d, J = 53.7 Hz, 1 H) , 5.04 (d, J = 19.2 Hz, 2 H), 4.12 (m, 1 H), 2.78 (m, 4 H), 2.34 (d, J = 16.1 Hz, 3 H), 2.01 (m, 2 H), 1.52 (m, 1 H), 1.16 (m, 1 H), 0.99 (dd, J = 13.7, 6.8 Hz, 3 H), 0.71 (m, 3 H)。
[薬理実験例]
(i)プロスタノイドレセプターサブタイプ発現細胞を用いた受容体結合実験
スギモト(Sugimoto)らの方法(J. Biol. Chem., 267, 6463-6466(1992))に準じて、マウスEPを発現したCHO細胞を調製し、膜標品とする。
【0062】
調製した膜画分(0.5mg/ml)、H−PGEを含む反応液(200μl)を室温で1時間インキュベートする。反応を氷冷バッファー(3ml)で停止し、減圧下吸引ろ過して結合したH−PGEをガラスフィルター(GF/B)にトラップし、結合放射活性を液体シンチレーターで測定する。
【0063】
Kd値とBmax値は、スキャッチャードプロット(Scatchard plots)から求める[Ann. N.Y. Acad. Sci., 51, 660(1949)]。非特異的結合は過剰量(2.5μM)の非標識PGEの存在下での結合として求める。本発明化合物によるH−PGE結合阻害作用の測定は、H−PGEを2.5nM、本発明化合物を各種濃度で添加して行う。なお、反応にはすべて次のバッファーを用いる。
・バッファー:リン酸カリウム(pH6.0,10mM),EDTA(1mM),MgCl(10mM),NaCl(0.1M)。
【0064】
各化合物の阻害定数Ki(μM)は次式により求める。
【0065】
【数1】

【0066】
式中、[C]は反応系に用いたH−PGE濃度を表わす。
(ii)BSA(牛血清アルブミン)存在下におけるプロスタノイドレセプターサブタイプEP発現細胞を用いた受容体拮抗活性の測定実験
マウスEP受容体発現細胞を96穴プレートに10細胞/ウェルとなるよう播種し、10%牛胎児血清(FBS)/α修飾イーグル培地(αMEM)を用いて、5%CO、37℃のインキュベーター内で2日間培養した。各ウェルをリン酸バッファー(PBS(−))で洗浄し、ロードバッファーを加え、1時間インキュベーションした。ロードバッファーを除去し、測定用バッファーを添加し、プレートを室温下、暗所に1時間静置した後、測定用バッファーで調製した本発明化合物(20μl)およびPGE(20μl)を添加し、薬剤蛍光スクリーニングシステム(FDSS−3000、浜松ホトニクス)を用いて細胞内カルシウム濃度を測定した。カルシウム濃度測定は、2波長の励起光の交互照射による、500nmの蛍光強度測定により行なった。
【0067】
なお、EP拮抗作用は、PGE(100nM)による細胞内カルシウム濃度上昇の抑制率(%)で計算した。
・ロードバッファー:10%牛胎児血清(FBS)/α修飾イーグル培地、Fura2/AM(5μM)、インドメタシン(20μM)、プロベネシド(2.5mM)。
・測定用バッファー:0.1%(W/V)牛血清アルブミン(BSA)含有ハンクスバランス塩溶液(HBSS)、インドメタシン(2μM)、プロベネシド(2.5mM)、HEPES−Buffer Solution(10mM)。
【0068】
測定結果を以下に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
本発明化合物のIC50値は20nM以下であり、非常に強いEP拮抗活性を有することが確認された。
(iii)サルプロストン誘発のラット膀胱圧上昇抑制実験
ウレタン麻酔下のウイスター系雌性ラットの両尿管を結紮し、腎臓側を切断する。膀胱頂部にカテーテルを挿入し、圧トランスデューサーおよびインフュージョンポンプに接続する。クエン酸緩衝液(pH3.5)を膀胱内に一定の速度で注入することにより、繰り返される排尿反射を記録する。ジクロフェナック(5mg/kg)とサルプロストン(300μg/kg)を皮下投与することで、排尿時の膀胱内圧の上昇を惹起する。この上昇作用は、EPアゴニストでは惹起されないため、EP受容体の活性化で生じると考えられる。この膀胱内圧上昇に対する本発明化合物の抑制作用を十二指腸内投与(2ml/kg)後、60分間測定する。
(iv)サルプロストン誘発のラット排尿量・回数増加の抑制実験
CD(SD)IGS系雄性ラットを用いて、排尿量測定装置(ニューロサイエンス)を使用することにより、排尿回数および排尿量を測定する。
【0071】
本発明化合物(4ml/kg)を経口投与し、30分後にサルプロストン(200μg/4ml/kg)を皮下投与する。排尿回数および排尿量は、サルプロストン投与後から投与3時間後まで測定する。
【0072】
各化合物の阻害率(%)は、次式により求める。
【0073】
【数2】

【0074】
(v)膀胱内へのアデノシン三リン酸(以下、ATPとする。)注入による尿排出障害動物モデルにおける評価
雄性カニクイザルを塩酸ケタミン(15〜20mg/kg)で麻酔した後、固定台上に保定する。膀胱カテーテルの先端に三方活栓を介して圧トランスデューサーを接続し、ひずみ圧力用アンプ・レコーダを用いて膀胱内圧を記録する。三方活栓の他端は、インフュージョンポンプに装着した膀胱内注入用シリンジに接続し、もう一端は生理食塩液を満たした延長チューブと接続し、残尿の排出に使用する。
【0075】
生理食塩液を1.5〜7.0mL/分の速度で膀胱内注入し、排尿直後に灌流を停止して、残尿を除去する操作を繰り返す(以下、同工程をシングルシストメトリーとする。)。生理食塩液によるシングルシストメトリーを2回以上繰り返した後、ATP(0.01〜1.0mmol/L)溶液によるシングルシストメトリーを2回以上繰り返す。さらに、本発明化合物を皮下投与した後、ATP溶液によるシングルシストメトリーを行う。ATP灌流前、ATP灌流後ならびに本発明化合物投与およびATP灌流後のシングルシストメトリー時の尿流率(排尿時間当たりの排尿量(mL/秒))および残尿率(排尿量当たりの残尿量の割合(%))をそれぞれ算出する。
[製剤例]
製剤例1
4−[({1−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(5.0g)、カルボキシメチルセルロース カルシウム(20g)、ステアリン酸マグネシウム(10g)および微結晶セルロース(920g)を常法により混合したのち、打錠して、1錠中に0.5mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得た。
製剤例2
4−[({1−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸(2.0g)、マンニット(500g)および蒸留水(10L)を常法により混合したのち、溶液を常法により滅菌し、1mLづつバイアルに充填し、常法により凍結乾燥し、1バイアル中0.2mgの活性成分を含有するバイアル1万本を得た。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明化合物は強いEP拮抗作用を有するため、疼痛、発熱、下部尿路症(蓄尿障害(頻尿、尿失禁)、尿排出障害)または癌の治療および/または予防剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、環Aは水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいシクロペンタジエン、または、水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいシクロペンテンを表わし、Rは水酸基またはオキソ基で置換されていてもよいC1−4アルキルを表わす。)
で示される化合物、その塩またはその溶媒和物、またはそのプロドラッグ。
【請求項2】
環Aが水酸基で置換されていてもよいシクロペンタジエン、または水酸基で置換されたシクロペンテンである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
4−[({1−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({3−ヒドロキシ−6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({5−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1H−インデン−6−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[イソブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、4−[({6−[ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸、および4−[({6−[sec−ブチル(1,3−チアゾール−2−イルスルホニル)アミノ]−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−イル}オキシ)メチル]−3−メチル安息香酸からなる群から選択される請求項1記載の化合物。

【公開番号】特開2008−214224(P2008−214224A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51810(P2007−51810)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】