チアゾロチアゾールまたはベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール電子受容体サブユニットと、電子供与体サブユニットとを含むコポリマー半導体、ならびにトランジスタおよび太陽電池へのその使用
本明細書において開示され、記載され、および/または権利請求される本発明は、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環を含む電子求引性Aサブユニットと、特定の複素環基を含む電子供与性サブユニットとを含むコポリマーを含むコポリマーに関する。このコポリマーは、トランジスタおよび太陽電池を含む有機電子デバイスを製造するのに有用である。本発明は、このコポリマーの特定の合成前駆体にも関する。このコポリマーおよびその誘導体の電子デバイスの作製方法も記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年10月28日に出願された米国仮特許出願第61,255,726号の優先権、および2010年10月1日に出願された米国仮特許出願第61/389,013号の優先権を主張するものである。この先行出願の全開示内容が、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
政府の実施許諾権に関する記載
本発明は、米国国立科学財団(National Science Foundation)の交付番号DMR−0805259および米国エネルギー省、基礎エネルギー科学局(Department of Energy,Basic Energy Sciences)の交付番号DE−FG02−07ER46467の下での米国政府の支援によってなされたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本明細書において開示され、記載され、および/または権利請求される様々な発明は、半導体有機コポリマーならびにトランジスタおよび太陽電池などの有機電子デバイスの製造を含むその使用の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
溶液処理可能な共役ポリマーおよび/またはコポリマー半導体は、有機発光ダイオード(OLED)、太陽電池および/またはトランジスタを含む広範囲にわたる柔軟かつ低コストの電子デバイスの作製への利用の可能性があるため、当該技術分野で注目を集めている。太陽放射の吸収の効率を高め、および/または固体ポリマー半導体における電荷輸送を促進するように、共役コポリマーの電子エネルギーレベルを調整するために、コポリマーサブユニットの数および種類の変更が用いられている。複素環式芳香族サブユニットの組み込みおよび/またはポリマー鎖長の最適化は、ポリマー鎖間の分子間のπスタッキング相互作用を促進することがあり、これにより、固体における少なくともいくらかの三次元または二次元の長距離秩序および/または結晶性が誘発され、得られるコポリマー、およびそれから得られる有機電子デバイスの電荷キャリア移動度および他の望ましい電子特性が改善される可能性があり得ることが示されている。しかしながら、ポリマーの関連の電子状態の相互作用の複雑性、ならびに固体における充填(packing)および他の物理的相互作用の複雑性を考えると、最終的な固体特性の予測可能性は低いままであり、プラスとマイナス両方の多くの予想外の結果が、実際に観察されることが多い。
【0005】
従来技術で公知のいくつかのこのようなポリマーおよび/またはコポリマー、特にいくつかのポリチオフェンコポリマーは、トランジスタを作製するのに用いられる際に、かなり高い正孔キャリア移動度および優れた性能を達成しており、または太陽電池において、太陽放射を電気エネルギーに変換するための効率を高めているが(3〜5%)、このような従来技術のポリマーのほとんどまたは全てには、優れた熱安定性もしくは酸化安定性、または商品として実用的な電子デバイスを作製するために必要とされる実用上の加工特性が欠けている。
【0006】
PCT公報の(特許文献1)には、チアゾロチアゾールサブユニットを含むいくつかの広範な属(genera)のコポリマー、およびそれを含む電子デバイスが開示されているが、シリレン−ビチオフェンサブユニットを含む、本明細書において記載され、権利請求されるコポリマー、またはこのようなコポリマーによって得られる予想外に優れた性能は開示も示唆もされていなかった。
【0007】
(特許文献2)には、ベンゾビスチアゾールサブユニットを含むコポリマー、およびそれらのコポリマーを含むトランジスタが記載されているが、太陽電池デバイスへのそれらのコポリマーの使用は開示も示唆もされていなかった。
【0008】
(非特許文献1)には、チアゾロチアゾールサブユニットを含む特定のコポリマー、および太陽電池デバイスへのその使用が開示されているが、シリレン−ビチオフェンサブユニットを含む、本明細書において記載され、権利請求されるコポリマー、またはこのようなコポリマーによって得られる予想外に優れた性能は開示も示唆もされていなかった。
【0009】
(非特許文献2)には、チアゾロチアゾールサブユニットを含む特定のコポリマー、ならびにトランジスタおよび太陽電池デバイスへのその使用が開示されているが、シリレン−ビチオフェンサブユニットを含む、本明細書において記載され、権利請求されるコポリマー、またはこのようなコポリマーによって得られる予想外に優れた性能は開示も示唆もされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/145482号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0230386号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jung et al(J.Phys.Chem.C 2010,114,16843−16848)
【非特許文献2】Shi et al(Chem Eur.J.2010,16,3743−3752)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それにもかかわらず、有機電子デバイス、特にトランジスタおよび太陽電池に使用するために、電子輸送または正孔輸送に必要とされる特性、ならびに改良された加工性、性能、コスト、ならびに熱安定性および酸化安定性を提供し得る、新規な改良されたポリマーおよび/またはコポリマー材料、ならびに/あるいはそれから得られる固体材料または組成物に対する必要性は、当該技術分野において依然としてまだ満たされていない。後述される様々な発明の様々な実施形態が目的とするのは、このような未解決の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書において開示される様々な発明および/またはその多くの実施形態は、少なくとも2つのチオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニットと、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾールサブユニット「A」と、さらなるサブユニット「D」とをそれ自体が含む少なくとも1つの全繰り返し単位を含む共役コポリマーに関する。本明細書に記載される本発明は、OLED、トランジスタおよび太陽電池などの、本明細書において開示され、記載されるコポリマーを含む有機電子デバイスにも関する。
【0014】
多くの実施形態において、本明細書に記載される本発明は、以下に示される式(Ia)または(Ib):
【化1】
を含むコポリマーに関し、
式中、
a)nが、2以上の正の整数であり、
b)n1が、正の整数であり、
c)各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択され、
d)Aが、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環を含む任意選択により置換される芳香族アリールまたはヘテロアリール基を含み、その例としては、以下の構造が挙げられ、
【化2】
式中、各R2が、例えば、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基などの独立して選択される置換基であり;
e)Dが、任意選択により置換される芳香族アリールまたはヘテロアリール基を含み、その例としては、以下の構造が挙げられ、
【化3】
式中、各R3またはR3’が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択することができ、R4が、C1〜C18の任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、またはフェニルである。
【0015】
式(Ia)および(Ib)で表されるコポリマーは、紫外光、可視光、および/または近赤外光の高効率の吸収をもたらす電子構造を(特に、その共役π軌道系中に)、ならびに固体における二次元または三次元の長距離秩序を促進する分子間の面間πスタッキング相互作用を強化し、正孔などの電流キャリアの高い移動度を促進する物理的構造および特性を有する共役ポリマー主鎖を有する。また、式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、予想外に高い融点ならびに熱安定性および酸化安定性を有することが分かっている。
【0016】
さらに、式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、典型的に、一般的な有機溶媒へのかなり良好な溶解性を有することで、薄膜を形成するように処理することができ、このため、例えば、トランジスタ、太陽電池、および/または有機発光ダイオード(OLED)などの有機電子デバイスを作製するための溶液処理に容易に用いられ得る。
【0017】
さらに、以下に示される式(IV)の、関連する種類の同様のコポリマーも、太陽放射を電気エネルギーに高い効率で変換する太陽電池デバイスを形成するのに用いられ得ることが予想外にも発見された。したがって、ある実施形態において、本明細書に開示されるコポリマーは、太陽放射を電気エネルギーに変換するためのデバイスであって、
a. 以下の構造:
【化4】
(式中、
i. nが、2以上の正の整数であり、
ii. n1が、1、2、3、または4であり、
iii. 各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択され;
iv. Aが、以下の構造のうちの1つを有し、
【化5】
式中、各R2が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択される)
を含む少なくとも1つのコポリマーと;
b. 少なくとも1つの電子受容体材料と
を含む組成物を含むデバイスに関する。
【0018】
上で広く概説された様々な発明の好ましい実施形態のさらなる詳細な説明が、以下に提供される詳細な説明の項において、以下に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)CHCl3中および薄膜としてのPSOTTの吸収スペクトル。(b)0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPSOTT膜のサイクリックボルタモグラムを開示する。実施例1を参照のこと。
【図2】(a)CHCl3中および薄膜としてのPSOxTTの吸収スペクトル。(b)0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPSOxTT膜のサイクリックボルタモグラム。実施例2を参照のこと。
【図3】(a)CHCl3中および薄膜としてのPBTOTTの吸収スペクトル。(b)0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPBTOTT膜のサイクリックボルタモグラムを開示する。例3を参照のこと。
【図4】(a)CHCl3中および薄膜でのPBTOxTTの光吸収スペクトル、および(b)0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPBTOxTT膜のサイクリックボルタモグラムを開示する。例4を参照のこと。
【図5】N2下における、10℃/分の加熱速度でのPBTOT−2の第1および第2のDSC加熱走査ならびに5℃/分の冷却速度での第1の冷却走査を開示する。例5を参照のこと。
【図6】PBTOT−1およびPBTOT−2の薄膜の正規化された光吸収スペクトルを開示する。例5を参照のこと。
【図7】PBTOT−1のアニールされた薄膜の光吸収スペクトルを開示する。例5を参照のこと。
【図8】(a)溶液中のPBTOT−1およびPBTOT−2の光吸収スペクトル。(b)1,2−ジクロロベンゼン中および薄膜としてのPBTOT−1およびPBTOT−2のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを開示する。例5を参照のこと。
【図9】50mV/秒の走査速度での、基準電極としてAg/NO3を用いた、アセトニトリルに溶解させた0.1MのTBAPF6中のPBTOT−1薄膜のサイクリックボルタモグラムを開示する。例5を参照のこと。
【図10】PBTOT−2薄膜のXRDスペクトル(A)および提供される充填構造のXRDスペクトル(B)、および(C)PBTOT−1薄膜のXRDスペクトルを開示する。例5を参照のこと。
【図11】ガラス基板上にスピンコートされたPBTOT−2薄膜のAFM画像を開示する。ポリマー薄膜は、1,2−ジクロロベンゼンから作製され、真空オーブン中で(60℃で3時間)乾燥された。例5を参照のこと。
【図12】PSOTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例6を参照のこと。
【図13】PSOxTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例6を参照のこと。
【図14】PBTOTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例6を参照のこと。
【図15】PBTOxTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例6を参照のこと。
【図16】空気中で保管されたPSOTT薄膜トランジスタの(a)移動度および(b)閾値電圧の安定性を開示する。実施例6を参照のこと。
【図17】PBTOT−2 OFETの出力(a)および伝達(b)特性を開示する。実施例6を参照のこと。
【図18】空気中で保管されたPBTOT−2薄膜トランジスタの(a)正孔キャリア移動度、(b)Ion/Ioff、および(c)閾値電圧の空気安定性を開示する。実施例6を参照のこと。
【図19】(a)基準としてITO/PEDOT基板を用いた、太陽電池デバイスから測定される、1:1および1:2の組成を有するPSOTT:PC71BM混合膜の光吸収スペクトル。(b)暗条件下および100mW/cm2の1.5AMの太陽光照射下での、ITO/PEDOT/PSOTT:PC71BM/LiF/Alの構造を有するPSOTT:PC71BM太陽電池の電流密度−電圧特性を開示する。実施例7を参照のこと。
【図20】(a)異なる厚さを有するPSOxTT:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトルを開示する。基準としてITO/PEDOT基板を用いて、太陽電池からスペクトルを測定した。(b)100mW/cm2の1.5AMの太陽光照射下での、異なる活性層厚さを有するPSOxTT:PC71BM(1:2)太陽電池の電流密度−電圧特性。太陽電池は、ITO/PEDOT/PSOTT:PC71BM/LiF/Alの構造を有する。全ての膜を、スピンコーティングの後、180℃のホットプレートで10分間、直接アニールした。実施例7を参照のこと。
【図21】(a)異なる乾燥条件下、すなわち、アニールなしの40分間のエージング(デバイスb1);25分間のエージングおよび120℃のアニール(デバイスb2);15分間のエージングおよび180℃のアニール(デバイスb3);180℃での直接アニール(エージングなし)(デバイス4)でのPSOxTT:PC71BM(1:1)混合膜の光吸収スペクトルを開示する。アニール時間は、全ての膜について10分間である。基準としてITO/PEDOT基板を用いて、太陽電池からスペクトルを測定した。(b)100mW/cm2の1.5AMの太陽光照射下での、デバイスb1〜b4の電流密度/電圧特性。実施例7を参照のこと。
【図22】暗条件下および100mW/cm2の1.5AMの太陽光照射下での、PBTOTT:PC71BM(1:1)太陽電池の電流密度/電圧特性を開示する。膜を、温かいCHCl3から処理し、膜を一晩エージングした後、180℃のホットプレートでアニールした。実施例7を参照のこと。
【図23】(a)異なる溶媒から処理されたPBTOxTT:PC71BM(1:2)太陽電池の電流密度/電圧特性を開示する。太陽電池は、ITO/PEDOT/PBTOxTT:PC71BM/LiF/Alの構造を有する。(b)(a)の太陽電池デバイスから測定された、PBTOxTT:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトル。ITO/PEDOT基板を基準として用いた。実施例7を参照のこと。
【図24】(a)100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPBTOT−1:PC71BM(1:1)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線。(b)ガラス/ITO/PEDOT基板上のPBTOT−1:PC71BM(1:1)混合膜の光吸収スペクトルを開示する。実施例7を参照のこと。
【図25】希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPTBSTTの吸収スペクトルを示す。実施例8を参照のこと。
【図26】PTBSTT OFETの出力(a)および伝達(b)特性を開示する。実施例8を参照のこと。
【図27】CHCl3中および薄膜としてのPSEHTT(実施例9)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。
【図28】PSEHTT OFETの出力(a)および伝達(b)電気特性を開示する。実施例9を参照のこと。
【図29】図29aは、ガラス/ITO/PEDOT基板上のPC71BM(1:2)混合膜の紫外−可視吸収スペクトルを示す。図29bは、100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPSEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線を示す。実施例9を参照のこと。
【図30】図30aは、CHCl3中および薄膜としてのPCPEHTTの紫外−可視吸収スペクトルを示す。図30bは、0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPCPEHTT膜のサイクリックボルタモグラムを示す。実施例10を参照のこと。
【図31】PCPEHTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例10を参照のこと。
【図32】図32aは、ガラス/ITO/PEDOT基板上のPCPEHTT:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトルを示す。図32bは、100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPCPEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線を示す。実施例10を参照のこと。
【図33】PCEHTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例11を参照のこと。
【図34】暗条件下および100mw/cm2の1.5AMの太陽光の下で測定されたPCEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池の電流密度−電圧(J−V)曲線を示す。実施例11を参照のこと。
【図35】希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPSDTTTの吸収スペクトルを示す。実施例13を参照のこと。
【図36】PSDTTT OFETの典型的な出力および伝達特性を示す。実施例13を参照のこと。
【図37】暗条件下および100mw/cm2の1.5AMの太陽光の下で測定されたPSDTTT:PC71BM(1:2)太陽電池の電流密度−電圧(J−V)曲線を示す。実施例13を参照のこと。
【図38】PTTEHV OFETの典型的な出力および伝達特性を示す。実施例14を参照のこと。
【図39】図39aは、ガラス/ITO/PEDOT基板上のPTTEHV:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトルを示す。図39bは、100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPTTEHV:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線を示す。実施例14を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示される様々な発明および/またはその様々な実施形態は、一般に、2つのチオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニットと、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含む電子受容体サブユニットAと、さらなる電子供与体サブユニットDとをそれ自体が含む少なくとも1つの繰り返し単位を含む共役ポリマー主鎖を有する、様々な属、亜属(subgenera)、および/または種類の複素環式芳香族コポリマーに関する。本明細書に記載される本発明は、有機発光ダイオード(OLED)、トランジスタおよび太陽電池を含む、様々なコポリマーを含む有機電子デバイスにも関する。
【0021】
多くの実施形態において、本明細書に記載される本発明は、少なくとも2つのチオフェン繰り返しサブユニットを含む、以下に示される式(Ia)に示される繰返し単位を含む、様々な属、亜属、および/または種類のコポリマーに関し、
【化6】
式中、
a)nが、2以上の正の整数であり、
b)n1が、正の整数であり、
c)各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択され、
d)A基が、任意選択により置換される芳香族アリールまたはヘテロアリール基を含み、その例としては、以下の構造が挙げられ、
【化7】
式中、各R2が、例えば、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基などの独立して選択される置換基であり;
e)Dが、任意選択により置換される芳香族アリールまたはヘテロアリール基を含み、その例としては、以下の構造が挙げられ、
【化8】
各R3が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択され、R4が、C1〜C18の任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、またはフェニルである。
【0022】
2つのシリレン−ビチオフェンサブユニット(2つのチオフェンサブユニットではなく)を含む、関連する属、亜属、および/または種類の式(Ib)のコポリマーは、以下に示される式(Ib)に示される繰返し単位を含み:
【化9】
式中、
a. nが、2以上の正の整数であり、
b. 各R1が、独立して、C1〜C18の有機基であり;
c. Aが、隣接するシリレン−ビチオフェン基の両方と共役した少なくとも1つのチアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含むC1〜C50の任意選択により置換されるヘテロアリール基であり、
d. Dが、任意であり、隣接するシリレン−ビチオフェン基の両方と共役した少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリール環基を含む任意選択により置換されるC1〜C50のアリールまたはヘテロアリール基である。
【0023】
式(Ib)のコポリマーの好ましい実施形態において、
a. nが、2以上の正の整数であり、
b. 各R1が、独立して、任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択される独立して選択されるC1〜C18の有機基であり、
c. Aが、隣接するシリレン−ビチオフェン基の両方と共役した少なくとも1つのチアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含むC1〜C50の任意選択により置換されるヘテロアリール基であり、
d. Dが、隣接するシリレン−ビチオフェン基の両方と共役した少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリール環基を含むC1〜C50の任意選択により置換されるアリールまたはヘテロアリール基である。
【0024】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、様々な亜属および/または種類のコポリマーを含み、以下のさらなる詳細な説明は、さらに説明することを意図しており、それらの亜属および種類の式(Ia)および/または(Ib)のコポリマーの一部を必ずしも限定するものではない。当業者は、明確に記載されていない多くのさらなる亜属および/または種類が明らかであり、本明細書に一般に開示される本発明の範囲内であり得ることを認識するであろう。
【0025】
式(Ia)および(Ib)によって規定されるコポリマー繰返し単位が、コポリマーの末端基が何であるかを特定しないことも理解されるべきである。その理由は、例えば、水素、任意のハロゲン、フェニル、メチル、アルキル、またはチオフェン、シリレン−ビチオフェンなどを含み得る末端基が何であるか、およびそれらの末端基が、特定のコポリマーの合成方法の具体的な詳細によってかなり変化し得るためである。
【0026】
式(Ia)および(Ib)の繰返し単位を含むコポリマーを含む、本明細書に記載されるコポリマーは、少なくとも2つの任意選択により置換されるモノまたはオリゴ−チオフェンまたはシリレン−ビチオフェン繰り返しサブユニットと、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含む少なくとも1つの「電子受容体」サブユニット「A」と、少なくとも1つの「電子供与体」繰り返しサブユニットDとを含む少なくとも3つの異なるタイプの繰り返しサブユニットを含む共役芳香族ポリマー主鎖を有する。「電子受容体」Aサブユニットおよび「電子供与体」繰り返しサブユニットDは両方とも、典型的に、任意選択により置換される共役芳香族アリールまたはヘテロアリール環の形態で存在し得る約4〜約30個の炭素原子、ならびにそれらの環に結合される無機または有機(炭素含有)またはヘテロ原子含有置換基を含む。任意の置換基は、「電子受容体」または「電子供与体」の電子特性を有するサブユニットを生成および/または分化するために、繰り返しサブユニット中の共役アリールまたはヘテロアリール環の電子特性および物理的特性を調節するために様々であり得る。
【0027】
チオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニット、電子供与体サブユニットA、および電子受容体サブユニットD、ならびにそれらの任意の置換基の組合せの結果として、光または他のエネルギーの内部の「電荷移動」吸収が生じ、これにより、光の吸収の際、コポリマーの1つのサブユニットから別のサブユニットへと電子を移動することができ、受容体サブユニットおよび/またはコポリマーの他の部分における共役され、ほとんど占有されていないLUMO軌道の自由電子、および供与体サブユニットまたはコポリマーの他の部分の共役したHOMOレベルでの対応する正孔の両方を生成する。結果として、これらの共役コポリマーの電子構造は、比較的低いエネルギーおよびポリマーの共役主鎖に沿った共役「バンド」経路を生成することができ、これにより、紫外光、可視光、および/または近赤外光範囲の「調整可能な」波長での、電子および/または正孔の高い移動度、および/または光子の吸収が生じ得る。
【0028】
固体における二次元または三次元の長距離秩序を促進する分子間のπスタッキングを強化し、正孔などの電流キャリアの高い移動度を促進するために、固体におけるコポリマーの電子特性および物理的特性を調節するように、コポリマーサブユニットおよびその任意の置換基が何であるかを「調整する」ことも可能である。
【0029】
より詳細には、式(Ia)のコポリマー、その亜属および亜種(subspecies)コポリマーは、典型的に、約5〜約30個の炭素原子を含み、以下の構造を有する、少なくとも2つの任意選択により置換される「チオフェン」または「オリゴチオフェン」繰返し単位を含み、
【化10】
式中、n1が、例えば1、2、3、4、またはそれ以上の正の整数である。多くの実施形態において、n1が1または2であり、多くの実施形態において、n1が1である。
【0030】
同様に、式(Ib)のコポリマー、ならびにその亜属および亜種コポリマーは、典型的に、約8〜約30個の炭素原子を含み、以下の構造を有する、2つの任意選択により置換される「シリレン−ビチオフェン」繰り返しサブユニットを含む。
【化11】
【0031】
R1が、チオフェンまたはシリレン−ビチオフェン繰り返しサブユニットの任意の置換基であり、典型的に、水素またはハロゲン(F、Cl、Br、またはIなど)などの無機基、あるいは1〜18個の炭素原子を好ましくは含有する有機基から独立して選択される。このような有機基(本明細書の他の箇所でも用いられる用語)は、モノマーおよびポリマーの合成の条件下、およびコポリマーを含有し得る有機電子デバイスの動作条件下で安定していることが当業者に知られている任意の有機基を含み得る。このような有機基としては、例えば、シアノ基、直鎖または分枝状アルキルまたはパーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ基の直鎖または分枝状アルコキシ、および/または直鎖または分枝状チオアルキルまたはパーフルオロチオアルキル基および/またはそれらのスルホキシドまたはスルホン誘導体、あるいはフェニル、ナフチル、ピリジル、チオフェン、フラン、ピロールなどの、小さい芳香族または複素環式芳香族が挙げられ、それらの基の水素それぞれのうちの1つまたは全てが、ハロゲンなどの任意のヘテロ原子またはヘテロ原子基、酸素またはエーテル基などの含酸素有機基、窒素またはN(CH3)2基などの二置換されたアミン基などで任意選択により置換され得る。ある実施形態において、各R1が、独立して、直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択される。ある実施形態において、各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択される。
【0032】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、典型的に、以下に示されるものを含む構造を有する隣接するチオフェンまたはシリレン−ビチオフェン環基の両方と共役した1つ以上のチアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含む少なくとも1つの任意選択により置換されるサブユニットAも含む。
【化12】
【0033】
また、以下に示されるものなどのチアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾールA環基の別の異性体を含むコポリマーも、本明細書において記載され、権利請求される本発明の範囲内である。
【化13】
【0034】
ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基サブユニット「A」は、約30個までの炭素原子を含むことが多い。
【0035】
Aベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、およびチアゾロチアゾールサブユニットは、高い電子親和力および/または高い電気化学還元電位を含む、電子求引特性または「n型」電子特性をもたらす傾向がある、比較的低いエネルギーの非局在化されたLUMO軌道を有する(例えば、C.J.Tonzola et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,13548−13558およびV.D.Parker,J.Am.Chem.Soc.1976,98,98−103を参照のこと)。ベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、およびチアゾロチアゾール基は、典型的に、コポリマーにおける高い熱安定性および酸化安定性も促進し、隣接するコポリマー分子間のπスタッキング相互作用を促進する傾向があり、それによって、固体におけるコポリマーの二次元または三次元秩序を促進する傾向がある。
【0036】
ベンゾビスチアゾールおよび/またはベンゾビスオキサゾール「A」サブユニットは、上述したチオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニットの任意のR1基と同様に規定され得る1つまたは2つの独立して選択される任意のR2置換基を含み得る。各R2置換基は、独立して、水素またはハロゲン(F、Cl、Br、またはIなど)などの無機基、または1〜18個の炭素原子を好ましくは含有する有機基から選択され得る。R2のこのような有機基(本明細書の他の箇所でも用いられる用語)は、モノマーおよびポリマーの合成の条件下、およびコポリマーを含有し得る有機電子デバイスの動作条件下で化学的に安定していることが当業者に知られている任意の有機基を含み得る。R2で使用するのに適した有機基としては、例えば、シアノ基、直鎖または分枝状アルキルまたはパーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ基の直鎖または分枝状アルコキシ、および/または直鎖または分枝状チオアルキルまたはパーフルオロチオアルキル基および/またはそれらのスルホキシドまたはスルホン誘導体、あるいはフェニル、ナフチル、ピリジル、チオフェン、フラン、ピロールなどの、小さい芳香族または複素環式芳香族が挙げられ、それらの基の水素それぞれのうちの1つまたは全てが、それ自体、ハロゲンなどの任意のヘテロ原子またはヘテロ原子基、酸素またはエーテル基などの含酸素有機基、窒素またはN(CH3)2基などの二置換されたアミン基などで任意選択により置換され得る。
【0037】
ある実施形態において、Aの各R2の任意の置換基は、独立して、直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択され得る。ある実施形態において、Aの各R2の任意の置換基は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され得る。
【0038】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、隣接するチオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニットの両方と共役した少なくとも1つの任意選択により置換されるサブユニットDも含む。多くの実施形態において、Dサブユニットは、典型的に、低いイオン化電位または低い電気化学酸化電位などの電子供与体特性を与える傾向がある比較的高いエネルギーの非局在化HOMO軌道を有する1つ以上の共役したアリールまたはヘテロアリール環を含む(例えば、城田靖彦(Y.Shirota)および景山弘(H.Kageyama)、Chem.Rev.2007,107,953−1010およびV.D.Parker,J.Am.Chem.Soc.1976,98,98−103を参照のこと)。
【0039】
Dサブユニットの例は、隣接するチオフェンまたはシロロ(silolo)−ジチオフェン基の両方と共役した以下の基の1つまたは全てを含む。
【化14】
【0040】
Dサブユニットは、典型的に、約2〜約30個の炭素原子を含む。
【0041】
(同様に電子供与体であるチオフェンまたはポリチオフェンサブユニットとともに)コポリマー中に電子供与体サブユニットDを含むことにより、得られるコポリマーの共役した物理的構造および電子構造の微調整が可能になり、得られるコポリマーの有機溶媒への溶解性、および/または固体における物理的特性を調整または調節するために、R3側鎖の構造を変更する手段も提供される。
【0042】
R3(および/またはR3’)は、D繰り返しサブユニットの任意の置換基であり、典型的に、水素またはハロゲン(F、Cl、Br、またはIなど)などの無機基、あるいは1〜18個の炭素原子を含有し得る有機基から独立して選択される。多くの実施形態において、各R3が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは、直鎖または分枝状アルキル、直鎖または分枝状アルコキシ基、および/または直鎖または分枝状チオアルキル基および/またはそれらのスルホキシドまたはスルホン誘導体、あるいはフェニル、ナフチル、ピリジル、チオフェン、ピロールなどの、小さい芳香族または複素環式芳香族などのC1〜C18の有機基から選択することができ、R4が、チエノチオフェン基D9のカルボン酸エステル基を形成するのに用いられる、C1〜C18の任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、またはフェニル置換基である。
【0043】
多くの実施形態において、Dの任意のR3またはR3’置換基は、1〜5つの直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンを含み得る。多くの実施形態において、Dの任意のR3またはR3’置換基は、独立して選択される水素、ハロゲン、シアノ、あるいは直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基を含み得る。
【0044】
式(Ia)のコポリマーに密接に関連する化合物のある実施形態において、本発明は、以下の構造:
【化15】
を含むコポリマーにも関し、式中、
a. nが、2以上の正の整数であり、
b. 各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択される。
【0045】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーならびにその亜属および種類のコポリマー繰返し単位の総数nは、2以上の正の整数、または2〜10,000、または10〜1000サブユニットである。典型的に、n(および対応するコポリマー分子量)の値が大きくなると、分子間のπスタッキングの程度および/または固体における電荷キャリア移動度が改善されるが、分子量が大きくなると、一般的な有機溶媒への溶解性を低下させることがあり、ひいては、場合によっては、ポリマーの実用上の加工性および/または有機電子微小デバイスを作製するのに必要とされる薄膜を容易にキャストする能力を低下させることがある。
【0046】
様々な属および亜属の式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、純粋な化合物として用いられ、または他の材料と配合されて、トランジスタおよび太陽電池を含む有機電子デバイスを作製するのに有用な組成物が形成され得る。
【0047】
ある実施形態において、本明細書において提供される本発明は、以下に示される式(IIa):
【化16】
で表される、式(Ia)のコポリマーの特定の亜属に関し、式中、R1およびR3が、独立して選択されるC4〜C12の直鎖または分枝状アルキルまたはアルコキシドである。
【0048】
式(IIa)の亜属内のコポリマーの種類の例は、以下の実施例1に記載されるコポリマーPSOTT、または実施例2に記載されるPSOxTTである。
【0049】
さらなる実施形態において、本明細書において提供される本発明は、以下に示される式(IIb):
【化17】
で表される、式(Ib)のコポリマーの特定の亜属に関し、式中、R1が、独立して、直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルから選択することができ、R3が、独立して選択される直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルまたはアルコキシドであり得る。
【0050】
式(IIb)の亜属内のコポリマーの種類の例は、以下の実施例8に記載されるコポリマーPTBSTTである。
【0051】
他の実施形態において、本明細書において提供される本発明は、以下に示される式(III):
【化18】
で表される、式(Ia)のコポリマーの特定の亜属に関し、式中、R1およびR3が、独立して、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドであり、R2が、水素、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドである。
【0052】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーならびにその様々な亜属および種類は、予想外に高い融点ならびに予想外に優れた熱安定性および酸化安定性を有することが分かった。また、式(I)のコポリマーは、トランジスタ(実施例6に示されるように)または太陽電池(実施例7)への利用において、固体における非常に高い電荷キャリア移動度などの予想外に優れた特性を示す。
【0053】
さらに、式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、典型的に、薄膜を形成するのに用いたり、ひいては例えば、トランジスタ、太陽電池、および/または有機発光ダイオード(OLED)などの有機電子デバイスを作製するための溶液処理に用いたりすることができるように、一般的な有機溶媒への良好な溶解性すなわち十分な溶解性を有する。
【0054】
D繰り返しサブユニットを有しないコポリマーを含むデバイス
さらに、D繰り返しサブユニットを含まない、以下に示される式(IV)の関連する種類のコポリマーを用いて、良好な効率で太陽放射を電気エネルギーに変換する太陽電池デバイスを作製することもできることが予想外に発見された。したがって、ある実施形態において、本明細書に開示される本発明は、太陽放射を電気エネルギーに変換するためのデバイスであって、
a. 以下の構造:
【化19】
(式中、
i. nが、2以上の正の整数であり得、
ii. n1が、1、2、3、または4であり得、
iii. 各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択することができ;
iv. Aが、以下の構造のうちの1つであり得、
【化20】
式中、各R2が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択される)
を含む少なくとも1つのコポリマーと;
b. 少なくとも1つの電子受容体材料と
を含む組成物を含むデバイスに関する。
【0055】
式(IV)のコポリマーにおいて、R1およびR2基、n、およびn1の定義は、上に開示した式(I)のコポリマーのものと同じであり得る。
【0056】
複合材料の電子受容体材料は、本明細書に記載されるコポリマーのLUMOエネルギーレベルより少なくとも約0.2〜0.6eVだけ負側のLUMOエネルギーレベルおよび本発明のコポリマーのHOMOエネルギーレベルより負側のHOMOエネルギーレベルを有する様々な材料であり得る。多くの実施形態において、電子受容体材料は、フラーレンまたは改質フラーレン(例えば、C61−フェニル−酪酸メチルエステル、PC61BM、またはC71−フェニル−酪酸メチルエステル、PC71BM)であり得る。他の実施形態において、電子受容体材料は、適切なLUMOおよびHOMOエネルギー(本明細書に記載されるコポリマーのLUMOエネルギーレベルより少なくとも約0.2〜0.6eVだけ負側のLUMOエネルギーレベル、および本明細書に記載されるコポリマーのHOMOエネルギーレベルより負側のHOMOエネルギーレベル)を有する別の半導体ポリマーであり得る。
【0057】
式(IV)(式中、Aがチアゾロチアゾール基であり、R1がアルキル基であり(PBTOTT)、また、式中、Aがチアゾロチアゾール基であり、R1がアルコキシ基である(PBTOxTT))の特定のコポリマーの例が、例3および4に示される。式(IV)(式中、Aがベンゾビスチアゾール基であり、R1がアルキル基である(PBTOT))のコポリマーの例が、例5に示される。実施例7は、太陽電池に用いられる有効な光吸収性組成物の成分としてのこれらのコポリマーの予想外に優れた性能についてのデータを示す。
【0058】
重合性オリゴマーの合成
本発明のポリマーを合成するのに必要な重合性コモノマーを作製するための一般的な合成スキームが以下に示され、このような一般的な合成方法の具体例が、本開示の以下の「実施例」の項にも提供される。
【0059】
2つの重合性チオフェン単位に結合される、電子受容体繰返し単位の重合可能な形態を作製するための一般的な合成スキームが、直後に示される。
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0060】
本出願人らは、以下および実施例に示されるように、本明細書に記載されるビス(シリレン−ビチオフェン)チアゾロチアゾールサブユニットを含むコポリマーを作製するのに有用な新規な重合性モノマーを作製するための方法も発明した。
【化25】
【化26】
【0061】
上の合成スキーム中でケイ素原子に結合されるR1基は、多種多様な有機置換基であり得、例えば、周知のパラジウム触媒による鈴木カップリング方法に用いられるホウ酸エステル基など、当業者に明らかであり得るように、いくつかの潜在的に重合可能な基が、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)チアゾロチアゾールの末端位置で導入され得る。それにもかかわらず、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)チアゾロチアゾールは、本明細書に記載される対応するコポリマーを作製するのに有用な新規な非自明の化合物であると考えられる。
【0062】
したがって、ある実施形態において、本出願人らによる本発明は、以下の構造
【化27】
を有するオリゴマービス(シリレン−ビチオフェン)チアゾロチアゾール化合物に関し、式中、各R1が、独立して、直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルから選択され、各Xが、独立して、水素、ハロゲン化物、SnR3、および−B(−OR)2から選択され、各Rが、独立して選択されるアルキルまたはアリールであり、またはR基が一緒になって酸素原子を架橋する任意選択により置換されるアルキレン基を形成する。
【0063】
同様に、本出願人らは、以下の合成図に示されるように、重合性ビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスチアゾール化合物を作製するための方法を発明した。
【化28】
【0064】
上の合成スキーム中でケイ素原子に結合されるR1基は、本明細書の他の箇所に記載されるように、多種多様な有機置換基であり得、例えば、周知のパラジウム触媒による鈴木カップリング方法に用いられるホウ酸エステル基など、当業者に明らかであり得るように、いくつかの潜在的に重合可能な基が、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスチアゾール化合物の末端位置で導入され得る。それにもかかわらず、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスチアゾール化合物は、本明細書に記載される対応するコポリマーを作製するのに有用な新規な非自明の化合物であると考えられる。
【0065】
したがって、ある実施形態において、本出願人らによる本発明は、以下の構造
【化29】
を有するオリゴマービス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスチアゾール化合物に関し、式中、各R1が、独立して、直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルから選択され、各R2が、独立して、水素、シアノ、直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択され;各Xが、独立して、水素、ハロゲン化物、SnR3、および−B(−OR)2から選択され、各Rが、独立して選択されるアルキルまたはアリールであり、またはR基が一緒になって酸素原子を架橋する任意選択により置換されるアルキレン基を形成する。
【0066】
また、同様に、本出願人らは、以下の合成図に示されるように、重合性ビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスオキサゾール化合物を作製するための方法を発明した。
【化30】
【0067】
上の合成スキーム中でケイ素原子に結合されるR1基は、本明細書の他の箇所に記載されるように、多種多様な有機置換基であり得、例えば、周知のパラジウム触媒による鈴木カップリング方法に用いられるホウ酸エステル基など、当業者に明らかであり得るように、いくつかの潜在的に重合可能な基が、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスオキサゾール化合物の末端位置で導入され得る。それにもかかわらず、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスオキサゾール化合物は、本明細書に記載される対応するコポリマーを作製するのに有用な新規な非自明の化合物であると考えられる。
【0068】
したがって、ある実施形態において、本出願人らによる本発明は、以下の構造
【化31】
を有するオリゴマービス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスオキサゾール化合物に関し、式中、各R1が、独立して、直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルから選択され、各R2が、独立して、水素、シアノ、直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択され、各Xが、独立して、水素、ハロゲン化物、SnR3、および−B(−OR)2から選択され、各Rが、独立して選択されるアルキルまたはアリールであり、またはR基が一緒になって酸素原子を架橋する任意選択により置換されるアルキレン基を形成する。
【0069】
重合性「D」コモノマーの合成
「D」電子供与体繰返し単位の共重合性モノマー形態を作製するための一般的な合成スキームが直後に示され、その重合性化合物の多くが従来技術において公知である。
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0070】
合成スキームとともに上に引用された参照文献は、上に引用されたモノマーの合成方法に関するそれらの開示について、参照により本明細書に援用される。
【0071】
以下に示される構造を有する重合性フルオレン−ボロン酸エステルコモノマーは、Sigma Aldrich(Milwaukee Wisconsin)から市販されている。
【化40】
【0072】
供与体/受容体コポリマーの合成
以下に示される一般的な反応スキームは、合成が一般に上述されたコオリゴマーおよび/またはコモノマーを共重合するための様々な方法を示す。このような方法の具体例が、以下の開示の実施例の項に提供される。
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【0073】
コポリマーを含む有機電子デバイス
本発明のある態様は、有機発光ダイオード(OLED)、トランジスタ、および太陽電池を含む、本明細書に記載されるコポリマーを含む新規な有機電子デバイスに関する。それらの最終使用用途の各々は、典型的に、基板上に本発明のコポリマーの膜を形成する必要がある。本発明のポリマーの有機膜は、スピンコーティング法、キャスティング法、浸漬コーティング法、インクジェット法、ドクターブレードコーティング法、スクリーン印刷法、および噴霧コーティング法などの公知の方法によって作製され得る。このような方法を使用することによって、膜に亀裂を形成せずに機械的強度、靱性、および耐久性などの優れた特性を有する有機膜を作製することが可能になる。したがって、有機膜は、光電池、FET素子、および発光素子などの有機電子デバイスに用いることができるのが好ましい。
【0074】
本発明のコポリマーの膜は、典型的に、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、またはキシレンなどの溶媒にコポリマーを溶解させることによって調製されるコーティング液体を基板上に塗布することによって作製される。コーティング方法の具体例としては、噴霧コーティング法、スピンコーティング法、ブレードコーティング法、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法、ディスペンス(dispense)法などが挙げられる。これに関して、適切な方法および適切な溶媒が、用いられるポリマーの特性を考慮して選択される。本発明のポリマーの膜が形成される基板として使用するのに適した材料としては、ガラス板、シリコン板、ITO板、およびFTO板などの無機基板、ならびにプラスチック板(例えば、PET膜、ポリイミド膜、およびポリスチレン膜)などの有機基板が挙げられ、これらの基板は、任意選択により表面処理が施されていてもよい。基板が平滑面を有するのが好ましい。
【0075】
本発明の有機薄膜トランジスタの有機膜および有機半導体層の厚さは、特に限定されない。しかしながら、厚さは、得られる膜または層が均一な薄層であるように決定される(すなわち、膜または層は、そのキャリア輸送特性に悪影響を与える間隙または孔を含まない)。有機半導体層の厚さは、一般に、1μm以下、好ましくは5〜200nmである。
【0076】
本発明のコポリマーを含むトランジスタの作製
本発明の有機薄膜トランジスタは、典型的に、トランジスタのソース電極、ドレイン電極および絶縁層を接触させつつも、本発明のコポリマーを含む有機半導体層が内部に形成されるような構成を有する。
【0077】
上で作製された有機薄膜トランジスタは、典型的に、熱アニールされる。アニールは、膜を基板に設置しながら行われ、(理論に制約されるのを望むものではないが)コポリマーの少なくとも部分的な自己秩序化(self−ordering)および/またはπスタッキングを固体において生じさせるものと考えられる。アニール温度は、ポリマーの特性に応じて決定されるが、好ましくは室温から300℃、より好ましくは50〜300℃である。多くの実施形態において、熱アニールは、少なくとも150℃、または好ましくは170℃超、または200℃超で行われる。アニール温度が低過ぎると、有機膜に残っている有機溶媒を有機膜から十分に除去することができない。これに対して、アニール温度が高過ぎると、有機膜は熱分解されるおそれがある。アニールは、真空下、あるいは窒素、アルゴンまたは空気雰囲気下で行われるのが好ましい。ある実施形態において、アニールは、ポリマーの分子運動が加速されるようにポリマーを溶解させることができる有機溶媒の蒸気を含む雰囲気中で行われ、それによって、良好な有機薄膜が作製され得る。アニール時間は、ポリマーの凝集速度に応じて適切に決定される。
【0078】
絶縁(誘電体)層が、本発明のコポリマーを含む有機薄膜トランジスタに用いられ、ゲート電極とポリマーを含む有機薄膜との間に配置される。様々な絶縁材料を絶縁層に用いることができる。絶縁材料の具体例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸鉛ジルコニウム、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、酸化ハフニウム、および三酸化イットリウムなどの無機絶縁材料;例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、非置換またはハロゲン原子で置換されたポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、およびシアノエチルプルランなどのポリマー材料などの有機絶縁材料などが挙げられる。これらの材料は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。これらの材料の中でも、高い誘電率および低い導電性を有する材料が用いられるのが好ましい。
【0079】
このような絶縁層を形成するのに適した方法としては、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、および蒸着法などの乾式法;噴霧コーティング法、スピンコーティング法、浸漬コーティング法、インクジェットコーティング法、キャストコーティング法、ブレードコーティング法、およびバーコーティング法などの湿式法などが挙げられる。
【0080】
絶縁層と有機半導体層との間の接着性を改善し、電荷輸送を促進し、ゲート電圧およびリーク電流を減少させるために、絶縁層と有機半導体層との間に有機薄膜(中間体層)を用いることができる。中間体層に使用するための材料は、材料が有機半導体層の特性に化学的に影響を与えない限り特に限定されず、例えば、有機材料の分子膜、およびポリマーの薄膜をそれに使用することができる。分子膜を作製するのに使用するための材料の具体例としては、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、およびオクタデシルホスホン酸などのカップリング剤が挙げられる。ポリマー膜を作製するのに使用するためのポリマーの具体例としては、絶縁層に使用するための上述したポリマーが挙げられる。このようなポリマー膜は、絶縁層ならびに中間体層として働き得る。
【0081】
本発明の有機薄膜トランジスタの電極(ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極など)の材料は、材料が導電性である限り、特に限定されない。材料の具体例としては、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、スズ、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、タングステン、チタン、カルシウム、およびマグネシウムなどの金属;これらの金属の合金;インジウムスズ酸化物(ITO)などの導電性金属酸化物;シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、黒鉛、カーボンナノチューブ、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、およびポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸との錯体などの、導電性がドーピングなどによって改善される無機または有機半導体が挙げられる。
【0082】
本発明のコポリマーを含む太陽電池の作製
まず、PEDOT緩衝層を、ITO被覆ガラス基板(10Ω/□、Shanghai B.Tree Tech.Consult Co.,Ltd、Shanghai、China)の上に1500rpmで60秒間スピンコートすることによって太陽電池を作製し、150℃で10分間、真空下で乾燥させた。PEDOTの厚さは約40nmであった。
【0083】
本発明のポリマーを含む太陽電池の活性層は、通常、上述したポリマーまたはコポリマーと電子受容体材料との相分離されたブレンドである混合された「ヘテロ接合」活性層を含む。電子受容体材料は、本明細書に記載されるコポリマーのLUMOエネルギーレベルより少なくとも約0.2〜0.6eVだけ負側のLUMOエネルギーレベル、および本明細書に記載されるコポリマーのHOMOエネルギーレベルより負側のHOMOエネルギーレベルを有する様々な有機材料(小分子、オリゴマー、ポリマー、またはコポリマー)を含み得る。多くの実施形態において、電子受容体材料は、フラーレンまたは改質フラーレン(例えば、C61−フェニル−酪酸メチルエステル、PC61BM、またはC71−フェニル−酪酸メチルエステル、PC71BM)であり得る。他の実施形態において、電子受容体材料は、適切なLUMOおよびHOMOエネルギー(本明細書に記載されるコポリマーのLUMOエネルギーレベルより少なくとも約0.2〜0.6eVだけ負側のLUMOエネルギーレベル、および本明細書に記載されるコポリマーのHOMOエネルギーレベルより負側のHOMOエネルギーレベル)を有する、電子求引性半導体有機小分子、オリゴマー、またはポリマーであり得る。このような電子受容体材料の例としては、例えば、ナフタレンジイミド、ペリレンジイミド、リレン(rylene)、フタルイミド、および電子求引性基を含む関連する誘導体などの、非常に電子不足の官能基を有する小分子、オリゴマー、ポリマー、またはコポリマーが挙げられる。
【0084】
本出願人らの本発明の太陽電池の多くの実施形態において、本出願人らのポリマーまたはコポリマーの1つ以上および1つ以上の受容体材料(例えばフラーレン誘導体)の溶液または分散体を含む組成物を、PEDOT層の上に、例えば1000rpmの速度で30秒間スピンコートして、1つ以上のコポリマーおよび1つ以上の電子求引性材料を含む層を形成する。ある実施形態において、溶液または分散体を、高温の溶媒を用いて塗布し、コポリマーを付着させた直後に真空下で乾燥させる。
【0085】
次に、被覆されたデバイス前駆体を、グローブボックス中、130±10℃で10分間、例えばホットプレートの上でアニールして、活性層を形成することができる。この活性層も空気中でスピンコートして、熱アニールせずに真空オーブン中で乾燥させることができる。本発明のコポリマーと電子受容体との混合物を溶解させるのに用いられる溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼンなどであり得る。コポリマー/フラーレンブレンドのための溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼンなどの単一の溶媒あるいは2種または3種の異なる溶媒の混合物であり得、第2の(第3の)溶媒は、1,8−ジヨードオクタン、1,8−ジブロモオクタン、1,8−オクタンジチオールなどであり得る。任意選択により、膜形成のための補助として、ポリマーおよび/または電子受容体の溶解性を高めるために溶媒を加熱することができる。
【0086】
熱アニールは、本発明のポリマーと電子受容体との少なくとも部分的な相分離を誘発し、光誘起電荷分離の部位であると考えられるナノメートルスケールでの「ヘテロ接合」を形成すると考えられる。
【0087】
ポリマーで被覆された基板を含む太陽電池前駆体を、冷ました後にグローブボックスから取り出し、陰極の蒸着のために熱蒸着装置(thermal evaporator)(BOC Edwards、306)に入れた。続いて、1.0nmのLiFおよび80nmのアルミニウム層からなる陰極を、8×10−7トルの真空下で活性層の上にシャドーマスクを介して蒸着した。各基板は、4mm2の活性領域を有する5つの太陽電池を含んでいた。
【実施例】
【0088】
上述した様々な発明を、以下の具体的な実施例によってさらに例示するが、これらの実施例は、本発明の開示またはそれに添付される特許請求の範囲を限定するものと決して解釈されるものではない。これに対し、本明細書を読めば、本発明の趣旨または添付の特許請求の範囲から逸脱せずに、当業者に示唆され得る本発明の様々な他の実施形態、変更、および均等物を用いることができることが明らかに理解される。
【0089】
材料
全ての市販の試薬を、Sigma−Aldrich、Across、Alfa−AesarおよびTCI America Laboratory of chemicalsから購入した。
【0090】
KBrペレットを備えたPerkin Elmer 1720 FT−IR分光光度計からFT−IRスペクトルを得た。Bruker Esquire LC/Ion Trap Mass spectrometerで質量スペクトルを記録した。1H−NMRスペクトルを、それぞれCDCl3またはC6D4Cl2またはCF3COODを溶媒として用いて、300MHz/500MHzでBruker AV300/AV500で記録した。Polymer Lab Model 120 Gel Permeation Chromatograph(DRI/High Sensitivity Refractive Index DetectorおよびPL−BV400HT Viscometer)を用いて、クロロベンゼン中60℃で、ポリスチレン標準に対してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析を行った。TA Instruments Q50 TGAを用いて、窒素ガス流れ下で10℃/分の加熱速度で熱重量分析(TGA)分析を行った。EG&G Princeton Applied Research Potentiostat/Galvanostat 273Aでサイクリックボルタンメトリーを行った。対電極および作用電極の両方として白金線電極を用いた三電極電池を使用した。銀/銀イオン(0.1MのAgNO3溶液中のAg、Bioanalytical System,Inc.)を基準電極として使用した。フェロセン/フェロセニウム(Fc/Fc+)を内部標準として使用した。Ag/Ag+を基準にして得られた電位値を飽和カロメル電極(SCE)スケールに変換した。0.1MのTBAPF6を含有するアセトニトリル中で薄膜サイクリックボルタンメトリーを行った。Perkin−ElmerモデルLambda 900紫外/可視/近赤外分光光度計で紫外−可視吸収スペクトルを記録した。Photon Technology International(PTI)Inc.のモデルQM2001−4蛍光分光計を用いてフォトルミネッセンス(PL)発光スペクトルを得た。X線回折(XRD)のために、清浄化したばかりのガラス基板上にポリマーの薄膜をドロップキャストした。Cu Kαビーム(40kV、40mA;λ=0.15418nm)を用いてBruker AXS D8 Focus回折計でXRDパターンを得た。
【0091】
実施例1−ポリ[(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)(PSOTT)の合成
【化47】
(1)2,5−ビス(3−オクチル−5−(トリメチルスタンニル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(6)
化合物6およびその二臭化物前駆体を、文献に報告されるように調製した。関連する合成方法の教示の開示について全て参照により本明細書に援用される(a)尾坂格(Osaka,I.);Sauve’,G.;Zhang,R.;Kowalewski,T.;McCullough,R.D.Adv.Mater.2007,19,4160、(b)尾坂格(Osaka,I.);Zhang,R.;Sauve’,G.;Smilgies,D−M.;Kowalewski,T.;McCullough,R.D.J.Am.Chem.Soc.2009,131,2521−2529を参照のこと。
【0092】
褐色の固体、(収率;89%)。1H NMR(300MHz、CDCl3)δ 7.06(s,2H)、3.00(t,4H,J=7.8Hz)、1.72〜1.77(m,4H)、1.31〜1.48(m,20H)、0.89〜0.91(m,6H)、0.53(s,18H)。EI:M/e 856.5。
【0093】
5,5’−ジブロモ−ジ−n−オクチルシリレン−2,2’−ビチオフェン(11)
二臭化物11およびその対応するジスタンナンモノマーを、文献に報告されるように調製した。関連する合成方法の教示の開示について参照により本明細書に援用されるLu,G.;Usta,H.;Risko,C.;Wang,L.;Facchetti,A.;Ratner,M.A.;およびMarks,T.J.J.Am.Chem.Soc.2008,130,7670−7685を参照のこと。
【0094】
黄色の液体、(収率80%)1H NMR(300MHz、CDCl3)δ=6.99(s,2H)、1.22〜1.33(m,28H)、0.84〜0.89(m,6H)。EI:M/e 576.04。
【0095】
ポリ[(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)(PSOTT)
無水クロロベンゼン(10mL)に溶解させた出発材料11(160mg、0.27mmol)および6(238mg、0.27mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(5mg、0.006mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(7mg、0.022mmol)を、3日間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。次に、残渣をクロロホルムで抽出し、蒸発させ、乾燥させたところ、金属のような外観を有する暗褐色の固体(200mg、80%)が得られた。1H NMR(CDCl3):6.91(s,br,4H)、2.91(s,br,4H)、0.88〜2.15(m,64H)。
【0096】
ポリマーPSOTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)試験により、2.26の多分散性とともに、15.46kg/molの数平均分子量が示された。
【0097】
添付の図1aおよび1bに示されるように、サイクリックボルタンメトリー(CV)によって、および紫外−可視吸光分光法からPSOTTのHOMOおよびLUMOレベルを電気化学的に推定した。図1bにおける還元および酸化の開始は、0.69および−1.55V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOおよびLUMOレベルがそれぞれ5.09および2.85eVであることが計算される。図1aは、希薄なクロロホルム溶液および薄膜におけるPSOTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が584nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、585および636nmで吸収極大を同様に示した。吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.79eVである。
【0098】
実施例2−ポリ[(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルオキシチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PSOxTT)の合成:
PSOxTTポリマーの合成をもたらす合成経路の概略を以下に示す。
【化48】
3−オクトキシチオフェン(2’):
3−メトキシチオフェン(7.28g、63.76mmol)と、1−オクタノール(20.09mL、127.53mmol)と、p−トルエンスルホン酸一水和物(1.21g、6.38mmol)と、60mLのトルエンとの混合物を、130℃の浴中で15時間、アルゴン下で加熱した。ジクロロメタン/水で抽出した後、有機層を無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル3:1ヘキサン:ジクロロメタン)によって精製したところ、無色の固体として2’(13.00g、96%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.18〜7.21(m,1H)、6.78〜6.80(m,1H)、6.25〜6.26(m,1H)、3.97(t,2H,6.6Hz)、1.76〜1.85(m,2H)、1.33〜1.48(m,10H)、0.91〜.95(m,3H)。
【0099】
2−ホルミル−3−オクトキシチオフェン(3’):
窒素雰囲気下で100mLの三つ口フラスコ中0℃で無水DMF(10mL)の撹拌された溶液に、POCl3(0.53mL、5.76mmol)を5分間にわたって滴下して添加した。添加した後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次に、2mLのDMFに溶解させた3−オクチルオキシチオフェン(1.02g、4.80mmol)を、0℃で5分間にわたって滴下して添加した。この溶液を70℃で90分間撹拌し、それを氷水に注いでから、10%のNaOH溶液(20mL)でゆっくりと中和した。得られた混合物を蒸気浴中で20分間加熱した。水層をCHCl3(3×50mL)で抽出した後、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去した後、粗混合物を、シリカゲルにおけるクロマトグラフィー(ヘキサン中10%の酢酸エチル)にかけたところ、無色の油として3’(1.0g、86%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 10.01(s,1H)、7.62(d,1H,5.4Hz)、6.84(d,1H,5.4Hz)、4.15(t,2H,6.6Hz)、1.76〜1.86(m,2H)、1.29〜1.46(m,10H)、0.89(t,3H,6.6Hz)。M/e 240.12。
【0100】
2,5−ビス(3−オクチルオキシチオフェン−2イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(4’):
ジチオオキサミド(0.21g、1.77mmol)、0.7gのフェノール、および3’(0.85g、3.54mmol)を丸底フラスコ中で組み合わせて、油浴中、還流温度で45分間加熱した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中50%のCHCl3)によって精製したところ、黄褐色の固体として4’(0.2g、20%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.31(d,2H,5.7Hz)、6.88(d,2H,5.7Hz)、4.23(t,4H,6.3Hz)、1.86〜1.95(m,4H)、1.57(m,4H)、1.31〜1.35(m,16H)、0.88〜0.90(m,6H)。m/e=562.18。
【0101】
2,5−ビス(5−ブロモ−3−オクチルオキシ−チオフェン−2イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(5’):
CHCl3/AcOH(8/4mL)に溶解させた4’(0.17g、30.06mmol)の溶液に、CHCl3/AcOH(8/4mL)に溶解させたNBS(0.12g、67.5mmol)溶液を滴下して添加し、0℃で2時間撹拌した。次に、反応溶液を室温で一日撹拌した。反応溶液を水で洗浄してから、無水Na2SO4で処理した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中40%のCHCl3)によって精製したところ、黄色の固体として5’(0.18g、82%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 6.90(s,2H)、4.19(t,4H,6.3Hz)、1.88〜1.93(m,4H)、1.33〜1.58(m,20H)、0.90〜0.92(m,6H)。m/e=720.00。
【0102】
2,5−ビス(3−オクチルオキシ−5−(トリメチルスタンニル)チオフェン−2イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(6’):
60mLのTHFに溶解させた5’(0.59g、0.82mmol)の溶液に、ヘキサン(0.82mL、2.05mmol)に溶解させたn−BuLiの2.5Mの溶液を−78℃で滴下して添加した。溶液を−78℃で2時間撹拌し、THFに溶解させた塩化トリメチルスズ(2.46mL、2.46mmol)の1.0Mの溶液を一度に添加した。溶液を室温まで温め、50mLの水および50mLの酢酸エチルを添加した。有機層を50mLの水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。有機層を蒸発させ、真空で乾燥させたところ、黄色の固体(0.6g、82%の収率)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 6.91(s,2H)、4.24(t,4H,6.3Hz)、1.90(m,4H)、1.58(m,4H)、1.31(m,16H)、0.89(m,6H)、0.41(s,18H)。m/e=888.3。
【0103】
ポリ[(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルオキシチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)]、PSOxTT:
無水クロロベンゼン(20mL)に溶解させた試薬6’、(473mg、0.27mmol)および11(307mg、0.27mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(10mg、0.01mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(13mg、0.043mmol)を、30時間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。次に、残渣をクロロホルムで抽出し、蒸発させ、乾燥させたところ、暗褐色の金属固体(390mg、75%)が得られた。1H NMR(CDCl3、δ ppm):6.91(m,4H)、4.23(s,4H)、1.96(m,4H)、1.25〜1.38(m,48H)、0.91(m,12H)。
【0104】
PSOxTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、2.01の多分散性とともに、24.26kg/molの数平均分子量が示された。
【0105】
図2(a)は、希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPSOxTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が596nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、604および649nmで吸収極大を同様に示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.73eVである。サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図2b)から、PSOxTTのHOMOおよびLUMOレベルを推定した。還元および酸化の開始は、0.60および−1.41V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOおよびLUMOレベルがそれぞれ5.0および2.99eVであることが計算される。
【0106】
例3−第2の電子供与体サブユニットを有しないポリマーの比較例:ポリ(2,5−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)(PBTOTT):
PSOTTおよびPSOxTTのサブユニットと同様のチアゾロチアゾールおよびアルキル置換チオフェンサブユニットを含むが、PSOTTおよびPSOxTTのジチエノシロールサブユニットなどの第2のタイプの電子供与体サブユニットを含まないコポリマーが、国際公開第2007/145482号パンフレットに報告された。それらのポリマーは、トランジスタを作製するのに有用であることが実証されたが、それらのポリマーを含む太陽電池は報告されなかった。国際公開第2007/145482号パンフレットのポリマーの代表例(すなわち、後述されるPBTOTTおよびPBTOxTT)は、PSOTTおよびPSOxTTとの比較の目的のために以下に提供され、太陽電池を作製するためのその使用が提供される。
【0107】
ポリ(2,5−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)(PBTOTT)の調製を、ジスタンナンモノマー6およびジブロモ化合物7’1と、触媒としてのPd2(dba)3およびP(o−Tol)3ならびにリガンドとのスティルカップリング反応によって、以下に示されるとおりに行った。
【化49】
【0108】
ポリ(2,5−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)PBTOTT:
無水クロロベンゼン(20mL)に溶解させた試薬7’(443mg、0.47mmol)および6(691mg、0.47mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(15mg、0.02mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(20mg、0.06mmol)を、2日間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。次に、残渣をクロロホルムで抽出し、蒸発させ、乾燥させたところ、45%の収率で暗褐色の金属固体が得られた。1H NMR(CDCl3、δ ppm):7.03(s,4H)、2.96(m,4H)、2.83(m,4H)、1.25〜1.71(m,48H)、0.90(m,12H)。
【0109】
PBTOTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、2.76の多分散性とともに、103.18kg/molの数平均分子量が示された。図3aは、希薄なクロロホルム溶液および薄膜におけるPBTOTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が534および624nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、534および564nmで吸収極大を同様に示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.82eVである。
【0110】
サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図3b)から、PBTOTTのHOMOおよびLUMOレベルを推定した。PBTOTTの酸化波は可逆的であり、酸化の開始は0.76V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOレベルが5.16eVであることが計算され、LUMOレベルは、光学バンドギャップ値から得られる3.36eVである。
【0111】
例4−ポリ(2,5−ビス(3−オクチルオキシ−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(PBTOxTT):
PBTOTTのサブユニットと同様のチアゾロチアゾールおよびアルコキシ置換チオフェンサブユニットを含むが、PSOTTおよびPSOxTTのジチエノシロールサブユニットなどの第2のタイプの電子供与体サブユニットを同様に含まない別の比較例のコポリマーが、PSOTTおよびPSOxTTとの比較のため、および太陽電池を作製するためのこれまで開示されていないその使用のために、本明細書に記載される。
【0112】
以下に示されるように、2日間還流しながら、触媒としてPd2dba3、P(o−Tol)3を用いて、無水クロロベンゼン中でジスタンナンモノマー6’とジブロモ化合物7’とをスティル型重縮合させることによって、PBTOxTTを合成した。
【化50】
【0113】
ポリ(2,5−ビス(3−オクチルオキシ−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)PBTOxTT
10mLの無水クロロベンゼンに溶解させた6’(257mg、0.47mmol)、7’(416mg、0.47mmol)、トリ−o−トリルホスフィン(11mg、0.03mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(9mg、0.01mmol)の溶液を、2日間還流させた。50℃まで冷ました後、反応混合物を、5mLのHClを含有する180mLのメタノールに注ぎ、4時間撹拌した。次に、析出された濃い紫色の固体を、メタノール、次にヘキサンを用いてソックスレー抽出した。残渣をクロロホルムで抽出したところ、30%の収率で濃い紫色/褐色の金属固体が得られた。1H NMR(CDCl3、δ ppm):6.78〜6.91(m,4H)、4.21〜4.23(m,4H)、2.79(m,4H)、1.93(m,4H)、1.26〜1.33(m,44H)、0.91(m,12H)。
【0114】
PBTOxTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、2.66の多分散性とともに、56.57kg/molの数平均分子量が示された。図4aは、希薄なクロロホルム溶液および薄膜におけるPBTOxTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が524nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、533nmで吸収極大を同様に示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.80eVである。
【0115】
サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図4b)から、PBTOxTTのHOMOおよびLUMOレベルを推定した。PBTOxTTの還元および酸化波の両方は、可逆的である。還元および酸化の開始は、0.51および−1.63V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOおよびLUMOレベルがそれぞれ4.91および2.77eVであることが計算される。
【0116】
例5−ポリ(2,6−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(PBTOT−1)
欧州特許公報の欧州特許第2085401号明細書には、ベンゾビスチアゾールおよびチオフェン繰返し単位を含むコポリマーの種類、および有機トランジスタを作製するためのその利用が開示されたが、太陽電池を作製するためのそれらのポリマーの使用は教示も示唆もされていなかった。本発明のコポリマーとの比較のため、および太陽電池を作製するためのその利用を試験するために、ベンゾビスチアゾールおよびチオフェン繰返し単位のみを含むポリマーの合成を以下に示されるように合成した。
【化51】
【0117】
ポリ(2,6−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(PBTOT−1)
12mLのクロロベンゼンに溶解させた2,6−ビス(5−ブロモ−3−オクチルチオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール(0.300mg、0.406mmol)と、4,4’−ジオクチル−5,5’−トリメチルスタンニル−2,2’−ビチオフェン(0.291mg、0.406mmol)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(7.4mg、0.00812mmol)と、トリス−o−トリホスフィン(tris−o−tolyphosphine)(9.89mg、0.0325mmol)との混合物を、84時間還流させた。反応溶液を200mLの5%の塩酸/メタノール溶液に注ぎ、5時間撹拌した。ろ過された固体を、メタノールおよびヘキサンでそれぞれ24時間、ソックスレー抽出した。PBTOT−1をクロロホルムで抽出したところ、光沢感のある緑色の固体(100mg)が得られた。1H−NMR(CDCl3):δ 8.44(s,2H)、δ 6.92(s,br,4H)、δ 3.01〜2.53(m,8H)、1.68(m,8H)、δ 1.31(m,40H)、δ 0.91(t,12H)。FT−IR(film、cm−1):2918、2845、1636、1616、1465、1409、1384、1303、1107、680。
【0118】
ポリ(2,6−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(PBTOT−2)
PBTOT−1を調製するのに用いられるのと同様の化学反応によってPBTOT−2を合成した。PBTOT−2(140mg)は、クロロホルムに不溶の画分であり、これをオルト−ジクロロベンゼンに溶解させ、メタノールから析出させると、光沢感のある緑色の固体(140mg)が得られる。
【0119】
粗ポリマーを、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によって精製した。表1に示されるように溶解性および/または分子量に基づいてPBTOTの2つの画分を単離した。PBTOT−1をクロロホルムで抽出すると、光沢感のある緑色の固体が生成され、PBTOT−2を、オルトジクロロベンゼンを用いて抽出すると、光沢感のある緑色の固体が同様に生成された。ポリスチレン標準に対するクロロベンゼン溶液中でのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を測定した。PBTOT−1は、15,400の重量平均分子量(Mw)および1.91の多分散性指数(PDI)を有する。PBTOT−1は、クロロホルム、クロロベンゼン、およびジクロロベンゼンなどの有機溶媒に溶解できる。第2の試料のPBTOT−2は、高い重量平均分子量(Mw=722,000、PDI=1.97)を有し、高温のオルト−ジクロロベンゼンおよび1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解できる。
【0120】
【表1】
【0121】
PBTOT−2は分子量が比較的高いため、ほとんどの有機溶媒への溶解性が制限される。示差走査熱量測定(DSC)により、PBTOT−2についての367℃での融解ピーク(Tm)および356℃での再結晶化(Tc)ならびにPBTOT−1についてのわずかに低い融解転移(290℃でのTmおよび265℃でのTc)が示された。図5を参照のこと。PBTOTのDSC走査においてガラス転移温度は観察されなかった。PBTOTのTmは、P3OTにおける200〜205℃の融解転移温度と比較して著しく高められた(Chen,T.−A.;Wu,X.;Rieke,R.D.;J.Am.Chem.Soc.1995,117,233を参照のこと)。
【0122】
PBTOTの薄膜の正規化された光吸収スペクトルが、図6に示される。PBTOT−1が、540nmで吸収極大(λmax)を有する一方、PBTOT−2は、551nmにおける吸収極大および600nmにおける赤方偏移ショルダー(red−shifted shoulder)、固体における強い鎖間相互作用の表示を含む明確な振動構造を有する。PBTOT−1の薄膜が150℃でアニールされる場合、低いエネルギーショルダーが580nmで現れ、これは改善された鎖間相互作用を示している(図7)。
【0123】
PBTOT−1の場合、希薄なオルト−ジクロロベンゼン溶液における吸収極大が490nmで現れ、薄膜の吸収と比較して約50nm青方偏移しており、これは、向上された平坦化および固体における改善されたπスタッキングを示している(図8a)。PBTOT−2は、希薄な高温の1,2−ジクロロベンゼンにおける537nmの吸収極大を示した。薄膜のPBTOT吸収端からの光学バンドギャップは、1.94〜1.97eVであった。これらの値は、P3OT(1.9eV)バンドギャップよりわずかに高かった。希薄な1,2−ジクロロベンゼン溶液中のPBTOT−1のフォトルミネッセンス(PL)発光スペクトルは、573nmで極大値を有する振動構造を有する一方、溶液中のPBTOT−2は、630nmで極大値を有する(図8b)。固体において、PBTOT−1およびPBTOT−2は両方とも、687〜690nmでPL極大を伴う赤色の発光を有していた(図4B)。
【0124】
PBTOT−1薄膜のサイクリックボルタンメトリーにより、準可逆的な酸化が示されたが、還元波は観察されなかった(図9)。開始酸化電位は、5.2eVの最高被占分子軌道(HOMO)に対応する0.80V(対SCE)であった。光学バンドおよび関係式LUMO=HOMO−Egoptを用いることによって、最低空分子軌道(LUMO)はおよそ3.3eVであると推定された(表1)。PBTOTのHOMOレベルは、P3OT(4.9eV)より0.3eV低い。これは、明らかに、電子不足のベンゾビスチアゾール部分をP3OT主鎖に組み込んだ結果である。PBTOTのHOMO/LUMOエネルギーレベルは、それが安定した正孔輸送材料であるはずであることを示唆している。PBTOTは、P3OTまたはP3HTのいずれより酸化的に安定である。ベンゾビスチアゾール単位が光学バンドギャップに小さい影響しか及ぼさないように見えるが、HOMOおよびLUMOレベルを0.3eVだけ偏移したのが明らかである。
【0125】
モルホロジーおよび分子充填
PBTOTの固体モルホロジーおよび分子組織を調べるために、本発明者らは、1,2−ジクロロベンゼン溶液からガラス基板上にドロップキャストされ、真空オーブン(60℃)中で一晩乾燥された薄膜においてX線回折(XRD)分析を行った。PBTOT−2膜のXRDスペクトルが、図10aに示される。回折ピークは、2θ=5.66°(100)、11.1°(200)、および16.4°(300)で観察され、これは、PBTOT−2膜における高度の結晶性を示している。
【0126】
PBTOT−1膜のXRDスペクトルもまた、2θ=5.58°(100)、および11.1°(200)におけるピークで、同様の反射を示した(図10c)。5.66°における回折ピークは、15.6Åの中間層のd100ラメラ間隔に対応し、これは、P3OTの中間層のd100ラメラ間隔(20.1Å)よりはるかに小さい[Chen,T.−A.;Wu,X.;Rieke,R.D.;J.Am.Chem.Soc.1995,117,233を参照のこと]。さらに、PBTOTの鎖間d100ラメラ間隔は、P3HTの鎖間d100ラメラ間隔(16.3Å)よりさらに小さい。アルキル鎖置換ポリマーの2つの一般的な充填形態、相互嵌合および末端間充填があることが知られている。理論に制約されるのを望むものではないが、観察される中間層の距離は、PBTOTのアルキル鎖が図10bに示されるように互いにかみ合っていることを示唆している。
【0127】
また、アニールせずにガラス基板上にスピンコートされた薄膜における原子間力顕微鏡法(AFM)によって、PBTOTの膜モルホロジーを調べた。AFM画像によって示される表面モルホロジーにおいて小塊状の構造が観察された(図11)。
【0128】
実施例6−コポリマーを用いたトランジスタ
トランジスタの作製
例1〜5のコポリマーを含む薄膜トランジスタを作製し、電荷キャリア移動度および他の電気的パラメータを評価するために試験した。従来のボトムコンタクト型、ボトムゲート型構造において薄膜トランジスタを作製した。薄いクロム接着層を有する金電極を、二酸化ケイ素で高濃度にドープされたシリコン(tox=200または300nm)基板の上にパターニングした。デバイスのチャネル幅は400または800μmであり、長さは20または40μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。1,2−ジクロロベンゼン(ODCB)中の溶液から疎水的に改質された酸化物にポリマーをスピンした(spun)。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを最初に試験した。安定性試験のために、デバイスを空気中で保管し、試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。
【0129】
図12〜15中の画像データによって示されるように、PSOTT、PSOxTT、PBTOTT、およびPBTOxTTは、典型的なp型特性を示した。測定の結果は、表2に数値形式で示される。
【0130】
【表2】
【0131】
アニール温度を150℃から200℃に上昇させることによって、PSOTTの平均正孔移動度を3.6×10−3から9.9×10−3cm2/Vsへと2〜3倍増加させた。PSOTTトランジスタの最大移動度は0.01cm2/Vsであった(図12)。したがって、残りの試験のアニール温度は一定の200℃であった。
【0132】
PSOxTT(PSOTTチアゾロチアゾール−シリレン−ビチオフェンコポリマー中のアルキルチオフェン単位と比較してアルコキシチオフェンを有する)の場合、正孔移動度は、平均で0.081cm2/Vsまで、最大で0.087cm2/Vsまで増加した(図13)。第2のタイプの電子供与性繰り返し単位を組み込んでいない、PBTOTTおよびPBTOxTTを含む薄膜トランジスタも、p型の電荷輸送を示すが、正孔移動度は、0.016〜0.033cm2/Vsの範囲であり、移動度の約25〜30%はPSOxTTについて測定された。
【0133】
PSOTT、PSOxTT、PBTOTT、およびPBTOxTTの平均閾値電圧(Vt)は、それぞれ−13.4、−16.0、4.7および−18.2Vであった。これらの4種のポリマーでは、電流変調の量が多かった。デバイスにおいて、オン/オフ比は105より高かった。電気的パラメータが表2にまとめられている。PBTOTTが他のポリマーよりジクロロベンゼンへの溶解性が低いことに留意されたい。制限された溶解性は、他と比較して薄膜の不均一性および正の閾値電圧を招くことがある。
【0134】
空気中のPSOTT薄膜トランジスタの移動度およびVtの安定性も監視し、図16にプロットした。デバイスを空気に曝した後、移動度の初期の約20%の低下があった。デバイスを空気中で48日間保管したとき、移動度はわずかに低下した。空気中の移動度の変化は、調査の期間にわたって12%未満である。閾値電圧は、より著しく影響される傾向があった。Vtの初期の変化はごくわずかであるが、平均閾値電圧は、−13から11Vへと正側に偏移した。デバイスがさらに空気に曝されるとVtの偏移が減少した。
【0135】
PBTOTを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するOFETを作製することによって、PBTOTの電荷輸送特性を調べ、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。PBTOT OFET(ならびにさらに後述される太陽電池)の典型的な出力および伝達特性が図17に示され、結果が表3にまとめられている。
【0136】
【表3】
【0137】
高分子量PBTOT−2を含むトランジスタについて、0.009cm2/V.sの平均正孔移動度(μh)および0.01cm2/V.sの最大正孔移動度が観察された。Ion/Ioff比は106より高く、閾値電圧(Vt)は−5.2Vであった(表3)。
【0138】
吸収スペクトルおよびXRDパターンで明らかであるような、PBTOTのより高い結晶性は、薄膜における良好な電荷輸送を促進する。より低分子量の画分(PBTOT−1)は、0.002cm2/V.sの正孔移動度、105のIon/Ioff比、および−19Vの閾値電圧を有していた。したがって、分子量が8から366kDaに増加されると、正孔移動度が5倍に増加される。より高分子量のポリマーにおける高められた電荷キャリア移動度および全体的により良好なOFET性能は、一つには、鎖末端から生じる欠陥の減少および鎖間相互作用の向上に起因し得る。注目すべきことに、PBTOT−2における観察された0.01cm2/V.sの正孔移動度は、立体規則性P3OT薄膜について報告される(2.0〜13.0)×10−4cm2/V.sよりはるかに高い(Babel,A.;Jenekhe,S.A.Synth.Met.2005,148,169.(b)Zen,A.;Saphiannikova,M.;Neher,D.;Asawapirom,U.;Scherf,U.Chem.Mater.2005,17,781を参照のこと)。
【0139】
周囲条件下でのPBTOT−2デバイスは、顕著な空気安定性を示した(図18)。空気中のPBTOT−2 OFETの平均正孔移動度は0.007cm2/V.sであり、これは111日間不変のままであった。オン/オフ比および閾値電圧は、それぞれ106、および−12Vで同様に非常に良好なままであった。
【0140】
実施例7−コポリマーを含む太陽電池
以下に概略を示すように、本明細書に記載されるポリマーを含む光電池を作製した:まず、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)緩衝層を、インジウム−スズ酸化物(ITO)被覆ガラス基板(10Ω/□、Shanghai B.Tree Tech.Consult Co.,Ltd、Shanghai、China)の上に、4500rpmで40秒間スピンコートすることによって太陽電池を作製し、真空下で、150℃で10分間アニールした。PEDOTの厚さは約40nmであった。
【0141】
American Dye Source Inc.から購入され、入手したままの状態で、個々の実施例に示される割合で、溶媒に溶解させて用いられる[6,6]−フェニル−C71−酪酸メチルエステル(PC71BM)と混合された本明細書に記載されるポリマーを用いて、グローブボックス中で活性層のスピンコーティングを行った。得られた「スピンコートされたままの」膜を、膜のエージングのために覆われたペトリ皿に入れてからホットプレート上でアニールするか、または熱アニールのために直接ホットプレートに入れるか、または真空下で室温で乾燥させる。次に、スピンコートされた膜を含む基板を、陰極の蒸着用の熱蒸着装置に入れた。続いて、1.0nmのLiFおよび100nmのアルミニウム層からなる陰極を、8×10−7トルの真空下で、活性層の上に、シャドーマスクを介して蒸着した。各基板は、4.00mm2の活性領域をそれぞれ有する5画素を含有していた。
【化52】
【0142】
Alpha−Step 500プロフィルメータ(KLA−Tencor、San Jose、CA)で膜厚を測定した。HP4155A半導体パラメータ分析器(横河ヒューレット・パッカード(東京)製)を用いて、太陽電池デバイスの電流−電圧特性を測定した。フィルタ付き(filtered)Xeランプからの1.5AMの太陽光の光強度を、National Renewable Energy Laboratory(NREL)で較正されたSi光ダイオードによって較正した。実験室の周囲空気下で全ての特性決定工程を行った。Perkin−ElmerモデルLambda 900紫外/可視/近赤外分光光度計で紫外−可視吸収スペクトルを記録した。ポリマー/フラーレン膜の吸収スペクトルを太陽電池デバイスから直接測定した。
【0143】
PSOTTを含む太陽電池
4.0mm2の面積を有する光電池を、PSOTT:PC71BMブレンドから作製し、空気中、100mW/cm2のAM1.5の照射下で試験した。PSOTT:PC71BMの活性層を100℃の高温の溶液からスピンコートし、スピンコーティングの直後に膜を室温で真空下で乾燥させた。o−ジクロロベンゼン(ODCB)と1,8−オクタンジチオール(ODT)との混合物(ODCB:ODT=100:2.5v:v)を、スピンコーティングの際の溶媒として用いた。混合膜の吸光度および太陽電池の電流密度−電圧特性が図19に示される。混合膜のポリマーは、585nmにおける主ピークおよび636nmにおける振動ショルダーを有する初期の膜の吸収特性と同様の吸収特性を示し(図1a)、これは、ブレンド中のポリマーの同様の構造を示している。
【0144】
1:2の組成を有するPSOTT:PC71BMブレンドは、1:1のものより優れた性能を示した。1:2の混合組成から得られる短絡電流密度(Jsc)、開回路電圧(Voc)、および曲線因子(FF)は、それぞれ11.8mA/cm2、0.66V、および0.58であり、これにより4.5%の電力変換効率(PCE)が得られる。1:1の組成から得られるPCEは、Jsc=9.88mA/cm2、Voc=0.66V、およびFF=0.59で3.87%である。PC71BM成分による380〜560nmの波長範囲における高められた吸光度(図19a)は、1:2混合膜のより高い効率を説明するものである。
【0145】
PSOxTTを含む太陽電池−膜厚依存性
PSOxTTを供与体として、およびPC71BMを受容体成分として(1:2重量比)用いて、異なる活性層厚さを有する3つのデバイス(デバイスa1〜a3)を作製した。3つのデバイスの吸収スペクトルおよびJ−V曲線が、図20aおよび20bに示される。最も薄い厚さを有するデバイスa1が、Jsc、Voc、FF、およびPCEが、それぞれ7.47mA/cm2、0.58V、0.48、および2.10%で、最良の性能を示す(表4)。
【0146】
【表4】
【0147】
組成依存性
1:2のPSOxTT:PC71BMの比率を有するデバイス(デバイスa3)および1:1の比率を有するデバイス(デバイスb4)を同一条件下で作製したところ、1:1の組成が、1:2の組成より優れた性能を示す。デバイスb4から観察されるJsc、Voc、FF、およびPCEは、それぞれ7.20mA/cm2、0.57V、0.55、および2.46%である。
【0148】
膜のエージング時間およびアニール効果
同じ条件下でスピンコートされるが異なる条件下で乾燥される(表4)PSOxTT:PC71BM=1:1の4つのデバイス(デバイスb1〜b4)を作製し、それらの性能を表4および図21bに示す。最も高い効率は、2.46%の電力変換効率で、エージングを全くしなかったデバイスにおいて得られた。膜のエージング(ゆっくりした乾燥)を示す1:2の組成においても観察される同様の結果(表4、デバイスa1およびデバイスa4)は、PSOxTTの光起電性能には逆効果を与える。これは、熱アニールが光起電性能を大きく高めるP3HT太陽電池の挙動と異なる。
【0149】
PBTOTTを含む太陽電池
1.66%の電力変換効率が、溶媒としてCHCl3を用いて作製されるPBTOTT:PC71BM(1:1)バルクヘテロ接合太陽電池において観察された。暗条件下および100mW/cm2の1.5Amの太陽光照射下でのJ−V曲線が、図22に示される。このデバイスにおいて測定されるJsc、Voc、FF、およびPCEは、それぞれ6.17mA/cm2、0.66V、および0.41である。
【0150】
PBTOTTは、分子量が高いため、室温でオルトジクロロベンゼンに不溶であり、高温のODCB溶液から作製されるデバイスは、膜の乾燥の際にポリマーの凝集のために短くなるため、高温のODCB溶液から作製されるこれらのデバイスでは電流が観察されなかった。
【0151】
PBTOT−1を含む太陽電池
PBTOT−1とPC71BMとのブレンドをベースとするバルクヘテロ接合(BHJ)太陽電池を、ITO/PEDOT:PSS/ブレンド/LiF/Alの層構造を有する光ダイオードにおいて構成した。暗条件下および100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下でのPBTOT−1:PC71BM(1:1)ブレンド太陽電池の電流密度−電圧特性が、図21bに示される。短絡電流密度(Jsc)、開回路電圧(Voc)、曲線因子(FF)、および電力変換効率(PCE)を含む関連する光起電パラメータが、上に示される表3にまとめられている。かなり大きい光電流(7.08mA/cm2)と良好な開回路電圧(0.66V)との組合せが、2.1%のPCEに変換された。
【0152】
より高い分子量の試料であるPBTOT−2は、BHJデバイスを作製するために適度な膜厚(60〜100nm)を達成するほど十分に1,2−ジクロロベンゼンに溶解しなかった。
【0153】
実施例8−式(IIb)のコポリマーの合成−PTBSTT
【化53】
【0154】
重合性チアゾロチアゾール/シリレン−ビチオフェン前駆体の合成:
【化54】
5−ホルミル−3,3’−n−オクチルシリレン−2,2’−ビチオフェン:
窒素雰囲気下で、100mLの三つ口RBフラスコ中0℃で、無水DMF(35mL)の撹拌された溶液に、POCl3(1.03mL、31.27mmol)を5分間にわたって滴下して添加した。添加した後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次に、10mLのDMFに溶解させたジチエノシロール(3.91g、26.06mmol)を、0℃で5分間にわたって滴下して添加した。この溶液を70℃で90分間撹拌し、それを氷水に注いでから、10%のNaOH溶液(20mL)でゆっくりと中和した。得られた混合物を蒸気浴中で20分間加熱した。水層をCHCl3(3×100mL)で抽出した後、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去した後、粗混合物を、シリカゲルにおけるクロマトグラフィー(ヘキサン中10%の酢酸エチル)にかけたところ、褐色の油として5−ホルミル−3,3’−n−オクチルシリレン−2,2’−ビチオフェン(1.0g、85%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 9.87(s,1H)、7.71(s,1H)、7.40(d,1H,4.8Hz)、7.12(d,1H,4.8Hz)、1.12〜1.37(m,24H)、0.84〜0.96(m,10H)。M/e 446.78。
【0155】
2,5−ビス−(7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール:
ジチオオキサミド(0.43g、3.58mmol)、1.35gのフェノール、および5−ホルミル−3,3’−n−オクチルシリレン−2,2’−ビチオフェン(3.20g、7.17mmol)を丸底フラスコ中で組み合わせて、油浴中、還流温度で45分間加熱した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中5%の酢酸エチル)によって精製したところ、赤色の固体として2,5−ビス−(7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(0.2g、20%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.52(s,2H)、7.31(d,2H,4.8Hz)、7.09(d,2H,4.8Hz)、1.27〜1.40(m,48H)、0.84〜0.97(m,20H)。m/e=975.72。
【0156】
2,5−ビス−(5−ブロモ−7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール:
CHCl3/AcOH(70/35mL)に溶解させた2,5−ビス−(7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(2.33g、2.39mmol)の溶液に、CHCl3/AcOH(70/35mL)に溶解させたNBS(0.94g、5.25mmol)溶液を滴下して添加し、0℃で2時間撹拌した。次に、反応溶液を室温で一日撹拌した。反応溶液を水で洗浄してから、無水Na2SO4で処理した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中40%のCHCl3)によって精製したところ、赤色の固体としてジブロモ化合物(2.16g、80%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.50(s,2H)、7.05(s,2H)、1.23〜1.34(m,48H)、0.84〜0.96(m,20H)。
【0157】
2,5−ビス(トリメチルスタンニル)チエノ[3,2−b]チオフェン(9):
【化55】
60mLのTHFに溶解させたチエノ[3,2−b]チオフェン(1.2g、8.56mmol)の溶液に、ヘキサン(7.25mL、18.0mmol)に溶解させたn−BuLiの2.5Mの溶液を、N2下で−50℃で滴下して添加した。溶液を−50℃で2時間撹拌し、THFに溶解させた塩化トリメチルスズ(18.9mL、18.8mmol)の1.0Mの溶液を一度に添加した。−50℃で2時間撹拌した後、溶液を室温まで温め、24時間撹拌した。得られた混合物を脱イオン水および100mLのCHCl3に注いだ。有機層を50mLの水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。有機層を蒸発させ、真空で乾燥させたところ、褐色の固体が得られた。次に、固体をEt2Oからの再結晶化によって精製したところ、無色の結晶(0.6g、82%の収率)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.26(s,2H)、0.48(s,18H)。
【0158】
ポリ[(チエノ[3,2−b]チオフェン)−2,5−ジイル−alt−(2,5−ビス(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール−2,6−ジイル)チアゾロ[4,4−d]チアゾール](PTBSTT)の合成:
【化56】
無水クロロベンゼン(40mL)に溶解させたジブロモ化合物2,5−ビス−(5−ブロモ−7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(600mg、0.53mmol)および二スズ化合物2,5−ビス(トリメチルスタンニル)チエノ[3,2−b]チオフェン(247mg、0.53mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(9.6mg、0.01mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(13mg、0.042mmol)を、2時間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、7.5mLの塩酸を含有する300mLのメタノールに注ぎ、12時間撹拌した。ろ過によって褐色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製したところ;暗褐色の金属固体(560mg、90%)が得られた。
【0159】
ポリマーPTBSTTは、室温でCHCl3に不溶であるが、高温でクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、および1,2,4−トリクロロベンゼンにわずかに溶解できる。希薄なo−ジクロロベンゼン溶液中および薄膜としてのPTBSTTの吸収スペクトルが、図25に示される。溶液中のPTBSTTの吸収スペクトルは、599nmにおける吸収極大および649nmにおけるショルダーを有していた。薄膜は、599nmおよび649nmで吸収極大を同様に示した。649nmにおけるピークは、両方の溶液および固体における強い分子間相互作用を示唆する。649nmにおける吸収ピークは、PTBSTT分子の強いπ−π相互作用に起因する。薄膜の吸収端において測定される光学バンドギャップが1.75eVであることが分かった(図25)。
【0160】
PTBSTT薄膜トランジスタの作製および特性決定:
従来のボトムコンタクト型、ボトムゲート型構造において、PTBSTTを有機半導体として用いた薄膜OFETを作製した。薄いクロム接着層を有する金電極を、二酸化ケイ素で高濃度にドープされたシリコン(tox=200または300nm)基板の上にパターニングした。デバイスのチャネル幅および長さは、それぞれ400または800μmおよび20または40μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中の溶液から疎水的に改質された酸化物にPTBSTTコポリマーをスピンし、次に、得られた薄膜OFETを、不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。
【0161】
OFETの出力および伝達特性が、図26aおよび26bに示される。PTSBTT OFETは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>105)。PTSBTTは、0.024cm2/Vsの最大正孔移動度(図2)および0.018cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PTSBTTの平均閾値電圧(Vt)は−6.4Vであった。
【0162】
実施例9−式(Ia)のコポリマーの合成−ポリ[(4,4’−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PSEHTT)
【化57】
【化58】
【0163】
3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン(9−4):
【化59】
300mLのフラスコ中の削り屑状マグネシウム(magnesium turning)(3.0g、0.12mol)と、無水THF(20mL)と、少量のヨウ素との混合物に、無水THF(35mL)に溶解させた2−エチルヘキシルブロミド(23.5g、0.12mol)の溶液を、N2下で0℃でゆっくりと添加した。1時間還流させた後、溶液を、0℃で500mLのフラスコ中に入れられた3−ブロモチオフェン(15g、0.09mol、(9−3))と、Ni(dppp)Cl2(0.51g、0.001mmol)と、無水THF(35mL)との混合物に滴下して添加した。混合物を室温で一晩撹拌した後、低温のHCl水溶液(2N)を混合物に注ぐことによって反応物を急冷した。生成物をCHCl3で抽出し、無水Mg2SO4上で乾燥させた。溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製したところ、透明の液体として(9−4)(11g、61%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):7.20〜7.22(m,1H)、6.88〜6.90(m,2H)、2.56(d,2H,J=6.9Hz)、1.49〜1.57(m,1H)、1.24〜1.33(m,8H)、0.86〜0.89(m,6H)。
【0164】
2−ブロモ−3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン(9−5):
【化60】
(9−4)(5.3g、26.9mmol)の150mLのTHF溶液に、N−ブロモスクシンイミド(4.8g、26.9mmol)を0℃で何度かに分けて(portionwise)添加し、混合物を、0℃で一晩撹拌した。有機画分を水およびCHCl3で抽出し、NaHCO3水溶液で洗浄し、無水Mg2SO4上で乾燥させた。溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製したところ、無色の液体として(9−5)(6.9g、93%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):7.18(d,1H,J=5.7Hz)、6.76(d,1H,J=5.7Hz)、2.50(d,2H,J=7.2Hz)、1.55〜1.62(m,1H)、1.25〜1.34(m,8H)、0.85〜0.90(m,6H)。
【0165】
3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン−2−カルバルデヒド(9−6):
【化61】
300mLのフラスコ中の削り屑状マグネシウム(0.61g、25.1mmol)と、無水THF(20mL)と、少量のヨウ素との混合物に、無水THF(35mL)に溶解させたブロモチオフェン(9−5)(6.58g、23.9mmol)の溶液を、N2下で0℃でゆっくりと添加した。1時間還流させた後、反応混合物を、N2下で室温で250mLのフラスコ中に移した。DMF(3.24mL、41.9mmol)を、反応混合物に滴下して添加した。混合物を室温で一晩撹拌した後、低温のHCl水溶液(2N)を混合物に注ぐことによって反応物を急冷した。生成物をCHCl3で抽出し、無水Mg2SO4上で乾燥させた。溶離液としてヘキサン/CHCl3(2:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製したところ、無色の油として(9−6)(3.7g、69%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):10.03(s,1H)、7.64(d,1H,J=5.1Hz)、6.98(d,1H,J=5.1Hz)、2.89(d,2H,J=7.2Hz)、1.56〜1.64(m,1H)、1.27〜1.37(m,8H)、0.86〜0.91(m,6H)。
【0166】
2,5−ビス−[3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン−2イル]−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(9−7):
【化62】
ジチオオキサミド(0.95g、7.90mmol)、2.97gのフェノール、および(9−6)(3.54g、15.79mmol)を丸底フラスコ中で組み合わせて、油浴中、還流温度で45分間加熱した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中50%のCHCl3)によって精製したところ、黄色の固体として(9−7)(0.85g、20%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):7.35(d,2H,J=5.1Hz)、6.95(d,2H,J=5.1Hz)、2.93(d,2H,J=7.2Hz)、1.75〜1.77(m,2H)、1.27〜1.43(m,18H)、0.85〜0.92(m,12H)。(ESIモード):実測値M+1、531.3。所要値(requires)530.8。
【0167】
2,5−ビス−[5−ブロモ−3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン−2イル]−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(9−8):
【化63】
CHCl3/AcOH(20/10mL)に溶解させた(9−7)(0.71g、1.34mmol)の溶液に、CHCl3/AcOH(20/10mL)に溶解させたNBS(0.53g、2.95mmol)溶液を滴下して添加し、0℃で2時間撹拌した。次に、反応溶液を、室温で24時間撹拌した。反応溶液を水で洗浄してから、無水Na2SO4で処理した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中40%のCHCl3)によって精製したところ、黄色の固体として(9−8)(0.80g、87%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):6.91(s,2H)、2.84(d,2H,J=7.5Hz)、1.73(bs,2H)、1.29〜1.43(m,18H)、0.87〜0.98(m,12H)。(ESIモード):実測値M+1、688.9。所要値688.7。
【0168】
2,5−ビス−[3−(2−エチル−ヘキシル)−5−トリメチルスタンニル−チオフェン−2イル]−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(9−1):
【化64】
40mLのTHFに溶解させた(9−8)(0.62g、0.9mmol)の溶液に、ヘキサン(0.89mL、2.23mmol)に溶解させたn−BuLiの2.5Mの溶液を−78℃で滴下して添加した。溶液を−78℃で2時間撹拌し、THFに溶解させた塩化トリメチルスズ(2.67mL、2.68mmol)の1.0Mの溶液を一度に添加した。溶液を室温まで温め、50mLの水および50mLの酢酸エチルを添加した。有機層を50mLの水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。有機層を蒸発させ、真空で乾燥させたところ、黄色の固体(0.62g、82%の収率)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):6.99(s,2H)、2.93(d,4H,J=7.2Hz)、1.77(bs,2H)、1.26〜1.37(m,16H)、0.87〜0.91(m,12H)、0.41(s,18H)。(ESIモード):実測値M+1、889.3、所要値888.5。
【0169】
ポリ[(4,4’−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PSEHTT):
【化65】
無水クロロベンゼン(53mL)に溶解させたジスタンニル化合物(9−1)(0.63g、0.73mmol)およびジブロモ化合物(9−2)(421mg、0.73mmol)および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(13mg、0.02mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(7mg、0.06mmol)を、80℃で1日加熱した。次に、加熱を50℃に下げた。反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノール、ヘキサンおよびジクロロメタンによるソックスレー抽出によってさらに精製したところ、暗褐色の固体PSEHTT(530mg、77%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):6.50〜7.45(bs,4H)、2.83(bs,4H)、0.4〜2.1(m,64H)。
【0170】
PSEHTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、3.94の多分散性指数(PDI)とともに、33.9kg/molの数平均分子量(Mn)が示された。PSEHTTは、室温でクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの一般的な有機溶媒への溶解性が高い。例えば、PSEHTTは、室温で1,2−ジクロロベンゼンに10mg/mLで溶解できる。図27は、希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPSEHTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が582および623nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、579nmにおける吸収極大および624nmにおけるショルダーを示した。膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.82eVである。サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図示せず)から、PSEHTTのHOMOレベルを推定した。酸化の開始は、0.65V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOレベルが5.05eVであることを計算することができる。
【0171】
PSEHTTを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するOFETを作製することによって、PSEHTTの電荷輸送特性を調べ、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。PBTOT OFETの典型的な出力および伝達特性が、図28aおよび28bに示される。
【0172】
PSEHTTを含むトランジスタについて、0.016cm2/V.sの平均正孔移動度(μh)が観察された。Ion/Ioff比は105より高く、閾値電圧(Vt)は−4.0Vであった。
【0173】
PSEHTTを含む太陽電池
PSEHTTおよびPC71BMの1:2ブレンドを含む光電池を、実施例7に概説されるように作製した。PSEHTT:PC71BMブレンドの高温の溶液から膜をスピンコートし、溶媒は、o−ジクロロベンゼン(ODCB)と1,8−オクタンジチオール(ODT)との混合物であった。混合膜を、室温で一定の時間、真空下で乾燥させた。ガラス/ITO/PEDOT基板上の紫外−可視吸収スペクトルPSEHTT:PC71BM(1:2)混合膜が、図29aに示される。100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPSEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線が、図29bに示される。12.60mA/cm2の電流密度、0.65Vの開回路電圧および0.61の曲線因子とともに、5.03%の電力変換効率が、PSEHTT:PC71BM太陽電池において得られる。
【0174】
実施例10−式(Ia)のコポリマーの合成−ポリ[(4,4’−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)−4H−シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PCPEHTT)
【化66】
無水クロロベンゼン(50mL)に溶解させた上記のジスタンニル化合物(9−1)(0.61g、0.71mmol)およびジブロモ化合物(10−1)(0.40mg、0.71mmol)および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(13mg、0.014mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(17mg、0.06mmol)を、3日間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げた。反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製したところ、PCPEHTT(170mg、27%)が得られた。
【0175】
PCPEHTTは、室温でクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの一般的な有機溶媒への溶解性が高い。図30aは、希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPCPEHTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が562nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、568nmで吸収極大を示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.85eVである。サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図30b)から、PCPEHTTのHOMOレベルを推定した。酸化の開始は、0.61(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOレベルが5.01eVであることが計算される。
【0176】
PCPEHTTを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200または300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するOFETを作製することによって、PSEHTTの電荷輸送特性を調べ、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400または800μmであり、長さは20または40μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。1,2−ジクロロベンゼン(ODCB)中の溶液から疎水的に改質された酸化物にポリマーをスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PCPEHTT OFETの典型的な出力および伝達特性が、図31aおよび31bに示される。
【0177】
PCPEHTTを含むトランジスタについて、0.0033cm2/V.sの平均正孔移動度(μh)が観察された。Ion/Ioff比は104より高く、閾値電圧(Vt)は−21.8Vであった。
【0178】
PCPEHTTを含む太陽電池
PCPEHTTとPC71BMとの1:2ブレンドを含む光電池を、実施例7に概説されるように作製した:ガラス/ITO/PEDOT基板上の紫外−可視吸収スペクトルPCPEHTT:PC71BM(1:2)混合膜が、図32aに示される。100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPCPEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線が、図32bに示される。PCPEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池において得られる電流密度(Jsc)、開回路電圧(V)、および曲線因子(FF)は、それぞれ6.90mA/cm2、0.785V、および0.47であり、これにより2.56%の電力変換効率が得られる。
【0179】
実施例11−式(Ia)のコポリマーの合成−ポリ[(9−[3−エチル−1−(2−エチル−ヘキシル)−ヘプチル]−9H−カルバゾール)−2,7−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PCEHTT):
【化67】
三つ口フラスコに、カルバゾールジボロン酸ジエステル11−1(0.5g、0.76mmol)、ジブロモ化合物11−2(0.52g、0.76mmol)、Aliquat 336(70mg)、およびトルエン(28mL)を添加した。2種のモノマーが溶解したら、2Mの炭酸ナトリウム水溶液(10mL)を添加した。次に、凝縮器を備えたフラスコを排気し、数回窒素で満たして、空気を完全に除去した。次に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4、(18mg、0.015mmol)を添加し、混合物をアルゴン下で、105℃で72時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷まし、有機層を分離させ、水で洗浄し、メタノール中に沈殿させた。コポリマー試料をろ過し、過剰なメタノールで洗浄し、乾燥させ、アセトンによるソックスレー抽出によって2日間精製したところ、暗褐色の固体(375mg、57%)が得られた。より高い分子量を除去するために、クロロホルムによるソックスレー抽出によってポリマーをさらに精製したところ、暗褐色の固体(106mg)が得られた。
【0180】
PCEHTTは、室温でクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの多くの一般的な有機溶媒に溶解できる。溶液における可視光の吸収極大は、506nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは赤方偏移しており、519〜660nmの広い吸収極大を示した。膜の吸収端において測定される光学バンドギャップが1.84eVであることが計算された。
【0181】
薄膜トランジスタの作製および特性決定:
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200〜300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するPCEHTTベースのトランジスタを作製し、それを試験し、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400〜1000μmであり、長さは20〜100μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。ポリマー溶液を基板上にスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PCEHTT OFETの典型的な出力および伝達特性が、図33aおよび33bに示される。
【0182】
PCEHTTは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>104)。PCEHTTは、0.0022cm2/Vsの最大正孔移動度および0.0018cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PCEHTTの平均閾値電圧(Vt)は−24.0Vであった。
【0183】
PCEHTTの太陽電池の作製および試験:
PCEHTTを供与体として、およびPC71BMを受容体成分として用いた太陽電池を作製した。PCEHTT:PC71BMブレンド(1:2 wt:wt)活性層を、PEDOT:PSS被覆ITO基板上にスピンコートした後、1nmのLiFおよび100nmのAlからなる陰極を熱蒸着装置中で蒸着することによって、太陽電池を作製した。6mg/mlのPCEHTTクロロホルム溶液を、60mg/mlのPC71BM ODCB溶液と撹拌しながら混合することによって、PCEHTT:PC71BMブレンド溶液を作製した。活性層のスピンコーティングをグローブボックス中で行い、膜を180℃で10分間アニールした。太陽電池は、9mm2の活性領域を有していた。暗条件下および照射下で測定されるPCEHTT:PC71BM(1:2 wt:wt)太陽電池の電流密度−電圧(J−V)曲線が、図34に示される。それぞれ5.96mA/cm2、0.68V、および0.42の電流密度(Jsc)、開回路電圧(V)、および曲線因子(FF)とともに、1.70%のピーク電力変換効率(PCE)が、この太陽電池において得られる。
【0184】
実施例12−式(Ia)のコポリマーの合成−ポリ(3−オクチルオキシチオフェン−2−イル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)PBDOTT:
【化68】
【0185】
合成手順:
無水クロロベンゼン(40mL)に溶解させたジスタンニル化合物12−1(0.5g、0.58mmol)およびジブロモ化合物12−2(0.35mg、0.58mmol)および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(11mg、0.06mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(14mg、0.12mmol)を、120℃で3日間加熱した。次に、加熱を50℃に下げた。反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって褐色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。
【0186】
PBDOTTは、高温(60〜180℃)でもクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの有機溶媒に溶解できない。PBDOTTは、非常に高い温度(200℃)で1,2,4−トリクロロベンゼンに部分的に溶解できる。1,2,4−トリクロロベンゼン(約10−5M)溶液における吸収極大は、542および587nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、538nmおよび583nmで吸収極大を示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.91eVである。
【0187】
薄膜トランジスタの作製および特性決定:
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200〜300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するPBDOTTベースのトランジスタを作製し、それを試験し、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400〜1000μmであり、長さは20〜100μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。ポリマー溶液を基板上にスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PBDOTTは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>104)。PBDOTTは、0.00026cm2/Vsの最大正孔移動度および0.00026cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PBDOTTの平均閾値電圧(Vt)は−3.4Vであった。
【0188】
実施例13−式(Ib)のコポリマーの合成−ポリ[(4,8−ジ(2−ブチルオクチルオキシ)ベンゾ[1,2−b;d,4−b]ジチオフェン)−2,6’−ジイル−alt−(2,5−ビス(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール−2,6−ジイル)チアゾロ[4,4−d]チアゾール](PSDTTT):
【化69】
【0189】
コモノマー13−2の合成:
以下に示されるコモノマー13−2の合成が、全体が本明細書に援用される文献、Huo,L.;Hou,J.;Chen,H.Y.;Zhang,S.;Jiang,Y.;Chen,T.L.;Yang,Y.Macromolecules 2009,42,6564に報告されている。
【化70】
【化71】
【0190】
ポリ[(4,8−ジ(2−ブチルオクチルオキシ)ベンゾ[1,2−b;d,4−b]ジチオフェン)−2,6’−ジイル−alt−(2,5−ビス(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール−2,6−ジイル)チアゾロ[4,4−d]チアゾール](PSDTTT)ポリマーの合成
【化72】
無水クロロベンゼン(23mL)に溶解させたジスタンニル化合物2(0.26g、0.30mmol)およびジブロモ化合物1(0.33mg、0.30mmol)および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(5mg、0.06mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(7mg、0.2mmol)を、80℃で36時間加熱した。次に、加熱を50℃に下げた。反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって褐色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。PSDTTTは、室温でクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの一般的な有機溶媒に溶解できる。
【0191】
PSDTTTは、可視領域における広い吸収とともに優れた膜形成特性および機械的強度を有する。図34は、希薄なクロロホルム(約10−5M)中および薄膜としてのPSDTTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が571および614nmであることが分かった。平滑な光沢感のある金色の薄膜の吸収スペクトルは、576nmおよび618nmで吸収極大を示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.77eVである。
【0192】
PSDTTTを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200〜300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するPSDTTTベースのトランジスタを作製し、それを試験し、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400〜1000μmであり、長さは20〜100μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。ポリマー溶液を基板上にスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PSDTTT OFETの典型的な出力および伝達特性が、図35aおよび35bに示される。PSDTTTは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>104)。PSDTTTは、0.0088cm2/Vsの最大正孔移動度および0.0085cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PSDTTTの平均閾値電圧(Vt)が−23.3Vであった。
【0193】
PSDTTTの太陽電池の作製および試験:
フラーレン誘導体PC71BMを受容体成分として用いたバルクヘテロ接合太陽電池を作製することによって、PSDTTTの光起電特性を評価した。ODCB中の6mg/mlのPSDTTT溶液およびODCB中の60mg/mlのPC71BM溶液を撹拌しながら混合することによって、PSDTTT:PC71BM(1:2 wt:wt)ブレンド溶液の溶液を調製した。PSDTTT:PC71BMブレンド(1:2 wt:wt)層を、PEDOT:PSS被覆ITO基板上にスピンコートした後、1nmのLiFおよび100nmのAlからなる陰極を熱蒸着装置中で蒸着することによって、太陽電池を作製した。活性層のスピンコーティングをグローブボックス中で行い、膜を180℃で10分間アニールした。太陽電池は、9mm2の活性領域を有していた。暗条件下および照射下で測定されるPSDTTT:PC71BM(1:2 wt:wt)太陽電池の電流密度−電圧(J−V)曲線が、図36に示される。それぞれ9.47mA/cm2、0.73V、および0.62の電流密度(Jsc)、開回路電圧(V)、および曲線因子(FF)とともに、4.3%のピーク電力変換効率(PCE)が、この太陽電池において得られる。
【0194】
実施例14−ポリ(2,5−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)ビニレン](PTTEHV)の合成:
【化73】
PTTEHVの合成:
無水クロロベンゼン(40mL)に溶解させた二スズ化合物14−22(426mg、0.7mmol)およびジブロモ化合物14−1(0.48mg、0.7mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(13mg、0.01mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(17mg、0.05mmol)を60℃で2時間加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、7.5mLの塩酸を含有する300mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって褐色の沈殿物を収集し、メタノール、ヘキサン、ジクロロメタンおよびクロロホルムによるソックスレー抽出によってさらに精製した。クロロホルム画分を蒸発させたところ、暗褐色の固体(115mg、38%)が得られた。
【0195】
PTTEHVは、室温でクロロホルム溶液に溶解でき、100℃でクロロベンゼンおよびジクロロベンゼンに溶解できる。希薄なCHCl3(約10−5M)の溶液における吸収極大が536nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは赤方偏移しており、579および629nmで広い吸収極大を示した。膜の吸収端において測定される光学バンドギャップが1.80eVであることが計算された。サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果から、PTTEHVのHOMOレベルを推定した。酸化および還元の開始は、1.0Vおよび−0.87V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOおよびLUMOレベルが5.4および3.5eVであることが計算される。ポリマーPCPEHTTの電気化学バンドギャップは1.87eVである。
【0196】
PTTEHVを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200〜300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するPTTEHVベースのトランジスタを作製し、それを試験し、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400〜1000μmであり、長さは20〜100μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。ポリマー溶液を基板上にスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PTTEHV OFETの典型的な出力および伝達特性が、図38aおよび38bに示される。PTTEHVは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>104)。PTTEHVは、0.0087cm2/Vsの最大正孔移動度および0.0078cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PTTEHVの平均閾値電圧(Vt)は−19.0Vであった。
【0197】
PTTEHVの太陽電池の作製および試験:
PTTEHVを供与体として、およびPC71BMを受容体成分として用いた太陽電池を作製した。PEDOT:PSS被覆ITO基板の上に、クロロホルム中のPTTEHV:PC71BM(1:2 wt:wt)ブレンド溶液から太陽電池の活性層をスピンコートした。1nmのLiFおよび100nmのAlからなる陰極を熱蒸着装置中で蒸着することによって、太陽電池デバイスを仕上げた。活性層のスピンコーティングをグローブボックス中で行い、膜を180℃で10分間アニールした。太陽電池は、9mm2の活性領域を有していた。
【0198】
図39aは、ガラス/ITO/PEDOT基板上のPTTEHV:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトルを示す。図39bは、100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPTTEHV:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線を示す。4.31mA/cm2のJsc、0.63VのVoc、および0.32のFFとともに、0.87%の電力変換効率での性能が、PTTEHV:PC71BM(1:2)バルクヘテロ接合太陽電池において観察された。
【0199】
結論
上記の明細書、実施例およびデータは、本発明の様々な組成物およびデバイスの製造および使用、ならびにそれらの製造および使用のための方法の例示的な説明を提供する。これらの開示内容を考慮して、当業者は、本明細書に開示され、権利請求される本発明の多くのさらなる実施形態が明らかであること、およびそれらが開示され、権利請求される本発明の範囲内にあることを想像できるであろう。以下に添付される特許請求の範囲は、それらの実施形態の一部を規定する。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年10月28日に出願された米国仮特許出願第61,255,726号の優先権、および2010年10月1日に出願された米国仮特許出願第61/389,013号の優先権を主張するものである。この先行出願の全開示内容が、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
政府の実施許諾権に関する記載
本発明は、米国国立科学財団(National Science Foundation)の交付番号DMR−0805259および米国エネルギー省、基礎エネルギー科学局(Department of Energy,Basic Energy Sciences)の交付番号DE−FG02−07ER46467の下での米国政府の支援によってなされたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本明細書において開示され、記載され、および/または権利請求される様々な発明は、半導体有機コポリマーならびにトランジスタおよび太陽電池などの有機電子デバイスの製造を含むその使用の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
溶液処理可能な共役ポリマーおよび/またはコポリマー半導体は、有機発光ダイオード(OLED)、太陽電池および/またはトランジスタを含む広範囲にわたる柔軟かつ低コストの電子デバイスの作製への利用の可能性があるため、当該技術分野で注目を集めている。太陽放射の吸収の効率を高め、および/または固体ポリマー半導体における電荷輸送を促進するように、共役コポリマーの電子エネルギーレベルを調整するために、コポリマーサブユニットの数および種類の変更が用いられている。複素環式芳香族サブユニットの組み込みおよび/またはポリマー鎖長の最適化は、ポリマー鎖間の分子間のπスタッキング相互作用を促進することがあり、これにより、固体における少なくともいくらかの三次元または二次元の長距離秩序および/または結晶性が誘発され、得られるコポリマー、およびそれから得られる有機電子デバイスの電荷キャリア移動度および他の望ましい電子特性が改善される可能性があり得ることが示されている。しかしながら、ポリマーの関連の電子状態の相互作用の複雑性、ならびに固体における充填(packing)および他の物理的相互作用の複雑性を考えると、最終的な固体特性の予測可能性は低いままであり、プラスとマイナス両方の多くの予想外の結果が、実際に観察されることが多い。
【0005】
従来技術で公知のいくつかのこのようなポリマーおよび/またはコポリマー、特にいくつかのポリチオフェンコポリマーは、トランジスタを作製するのに用いられる際に、かなり高い正孔キャリア移動度および優れた性能を達成しており、または太陽電池において、太陽放射を電気エネルギーに変換するための効率を高めているが(3〜5%)、このような従来技術のポリマーのほとんどまたは全てには、優れた熱安定性もしくは酸化安定性、または商品として実用的な電子デバイスを作製するために必要とされる実用上の加工特性が欠けている。
【0006】
PCT公報の(特許文献1)には、チアゾロチアゾールサブユニットを含むいくつかの広範な属(genera)のコポリマー、およびそれを含む電子デバイスが開示されているが、シリレン−ビチオフェンサブユニットを含む、本明細書において記載され、権利請求されるコポリマー、またはこのようなコポリマーによって得られる予想外に優れた性能は開示も示唆もされていなかった。
【0007】
(特許文献2)には、ベンゾビスチアゾールサブユニットを含むコポリマー、およびそれらのコポリマーを含むトランジスタが記載されているが、太陽電池デバイスへのそれらのコポリマーの使用は開示も示唆もされていなかった。
【0008】
(非特許文献1)には、チアゾロチアゾールサブユニットを含む特定のコポリマー、および太陽電池デバイスへのその使用が開示されているが、シリレン−ビチオフェンサブユニットを含む、本明細書において記載され、権利請求されるコポリマー、またはこのようなコポリマーによって得られる予想外に優れた性能は開示も示唆もされていなかった。
【0009】
(非特許文献2)には、チアゾロチアゾールサブユニットを含む特定のコポリマー、ならびにトランジスタおよび太陽電池デバイスへのその使用が開示されているが、シリレン−ビチオフェンサブユニットを含む、本明細書において記載され、権利請求されるコポリマー、またはこのようなコポリマーによって得られる予想外に優れた性能は開示も示唆もされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/145482号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0230386号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jung et al(J.Phys.Chem.C 2010,114,16843−16848)
【非特許文献2】Shi et al(Chem Eur.J.2010,16,3743−3752)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それにもかかわらず、有機電子デバイス、特にトランジスタおよび太陽電池に使用するために、電子輸送または正孔輸送に必要とされる特性、ならびに改良された加工性、性能、コスト、ならびに熱安定性および酸化安定性を提供し得る、新規な改良されたポリマーおよび/またはコポリマー材料、ならびに/あるいはそれから得られる固体材料または組成物に対する必要性は、当該技術分野において依然としてまだ満たされていない。後述される様々な発明の様々な実施形態が目的とするのは、このような未解決の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書において開示される様々な発明および/またはその多くの実施形態は、少なくとも2つのチオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニットと、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾールサブユニット「A」と、さらなるサブユニット「D」とをそれ自体が含む少なくとも1つの全繰り返し単位を含む共役コポリマーに関する。本明細書に記載される本発明は、OLED、トランジスタおよび太陽電池などの、本明細書において開示され、記載されるコポリマーを含む有機電子デバイスにも関する。
【0014】
多くの実施形態において、本明細書に記載される本発明は、以下に示される式(Ia)または(Ib):
【化1】
を含むコポリマーに関し、
式中、
a)nが、2以上の正の整数であり、
b)n1が、正の整数であり、
c)各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択され、
d)Aが、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環を含む任意選択により置換される芳香族アリールまたはヘテロアリール基を含み、その例としては、以下の構造が挙げられ、
【化2】
式中、各R2が、例えば、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基などの独立して選択される置換基であり;
e)Dが、任意選択により置換される芳香族アリールまたはヘテロアリール基を含み、その例としては、以下の構造が挙げられ、
【化3】
式中、各R3またはR3’が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択することができ、R4が、C1〜C18の任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、またはフェニルである。
【0015】
式(Ia)および(Ib)で表されるコポリマーは、紫外光、可視光、および/または近赤外光の高効率の吸収をもたらす電子構造を(特に、その共役π軌道系中に)、ならびに固体における二次元または三次元の長距離秩序を促進する分子間の面間πスタッキング相互作用を強化し、正孔などの電流キャリアの高い移動度を促進する物理的構造および特性を有する共役ポリマー主鎖を有する。また、式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、予想外に高い融点ならびに熱安定性および酸化安定性を有することが分かっている。
【0016】
さらに、式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、典型的に、一般的な有機溶媒へのかなり良好な溶解性を有することで、薄膜を形成するように処理することができ、このため、例えば、トランジスタ、太陽電池、および/または有機発光ダイオード(OLED)などの有機電子デバイスを作製するための溶液処理に容易に用いられ得る。
【0017】
さらに、以下に示される式(IV)の、関連する種類の同様のコポリマーも、太陽放射を電気エネルギーに高い効率で変換する太陽電池デバイスを形成するのに用いられ得ることが予想外にも発見された。したがって、ある実施形態において、本明細書に開示されるコポリマーは、太陽放射を電気エネルギーに変換するためのデバイスであって、
a. 以下の構造:
【化4】
(式中、
i. nが、2以上の正の整数であり、
ii. n1が、1、2、3、または4であり、
iii. 各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択され;
iv. Aが、以下の構造のうちの1つを有し、
【化5】
式中、各R2が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択される)
を含む少なくとも1つのコポリマーと;
b. 少なくとも1つの電子受容体材料と
を含む組成物を含むデバイスに関する。
【0018】
上で広く概説された様々な発明の好ましい実施形態のさらなる詳細な説明が、以下に提供される詳細な説明の項において、以下に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)CHCl3中および薄膜としてのPSOTTの吸収スペクトル。(b)0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPSOTT膜のサイクリックボルタモグラムを開示する。実施例1を参照のこと。
【図2】(a)CHCl3中および薄膜としてのPSOxTTの吸収スペクトル。(b)0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPSOxTT膜のサイクリックボルタモグラム。実施例2を参照のこと。
【図3】(a)CHCl3中および薄膜としてのPBTOTTの吸収スペクトル。(b)0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPBTOTT膜のサイクリックボルタモグラムを開示する。例3を参照のこと。
【図4】(a)CHCl3中および薄膜でのPBTOxTTの光吸収スペクトル、および(b)0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPBTOxTT膜のサイクリックボルタモグラムを開示する。例4を参照のこと。
【図5】N2下における、10℃/分の加熱速度でのPBTOT−2の第1および第2のDSC加熱走査ならびに5℃/分の冷却速度での第1の冷却走査を開示する。例5を参照のこと。
【図6】PBTOT−1およびPBTOT−2の薄膜の正規化された光吸収スペクトルを開示する。例5を参照のこと。
【図7】PBTOT−1のアニールされた薄膜の光吸収スペクトルを開示する。例5を参照のこと。
【図8】(a)溶液中のPBTOT−1およびPBTOT−2の光吸収スペクトル。(b)1,2−ジクロロベンゼン中および薄膜としてのPBTOT−1およびPBTOT−2のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを開示する。例5を参照のこと。
【図9】50mV/秒の走査速度での、基準電極としてAg/NO3を用いた、アセトニトリルに溶解させた0.1MのTBAPF6中のPBTOT−1薄膜のサイクリックボルタモグラムを開示する。例5を参照のこと。
【図10】PBTOT−2薄膜のXRDスペクトル(A)および提供される充填構造のXRDスペクトル(B)、および(C)PBTOT−1薄膜のXRDスペクトルを開示する。例5を参照のこと。
【図11】ガラス基板上にスピンコートされたPBTOT−2薄膜のAFM画像を開示する。ポリマー薄膜は、1,2−ジクロロベンゼンから作製され、真空オーブン中で(60℃で3時間)乾燥された。例5を参照のこと。
【図12】PSOTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例6を参照のこと。
【図13】PSOxTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例6を参照のこと。
【図14】PBTOTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例6を参照のこと。
【図15】PBTOxTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例6を参照のこと。
【図16】空気中で保管されたPSOTT薄膜トランジスタの(a)移動度および(b)閾値電圧の安定性を開示する。実施例6を参照のこと。
【図17】PBTOT−2 OFETの出力(a)および伝達(b)特性を開示する。実施例6を参照のこと。
【図18】空気中で保管されたPBTOT−2薄膜トランジスタの(a)正孔キャリア移動度、(b)Ion/Ioff、および(c)閾値電圧の空気安定性を開示する。実施例6を参照のこと。
【図19】(a)基準としてITO/PEDOT基板を用いた、太陽電池デバイスから測定される、1:1および1:2の組成を有するPSOTT:PC71BM混合膜の光吸収スペクトル。(b)暗条件下および100mW/cm2の1.5AMの太陽光照射下での、ITO/PEDOT/PSOTT:PC71BM/LiF/Alの構造を有するPSOTT:PC71BM太陽電池の電流密度−電圧特性を開示する。実施例7を参照のこと。
【図20】(a)異なる厚さを有するPSOxTT:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトルを開示する。基準としてITO/PEDOT基板を用いて、太陽電池からスペクトルを測定した。(b)100mW/cm2の1.5AMの太陽光照射下での、異なる活性層厚さを有するPSOxTT:PC71BM(1:2)太陽電池の電流密度−電圧特性。太陽電池は、ITO/PEDOT/PSOTT:PC71BM/LiF/Alの構造を有する。全ての膜を、スピンコーティングの後、180℃のホットプレートで10分間、直接アニールした。実施例7を参照のこと。
【図21】(a)異なる乾燥条件下、すなわち、アニールなしの40分間のエージング(デバイスb1);25分間のエージングおよび120℃のアニール(デバイスb2);15分間のエージングおよび180℃のアニール(デバイスb3);180℃での直接アニール(エージングなし)(デバイス4)でのPSOxTT:PC71BM(1:1)混合膜の光吸収スペクトルを開示する。アニール時間は、全ての膜について10分間である。基準としてITO/PEDOT基板を用いて、太陽電池からスペクトルを測定した。(b)100mW/cm2の1.5AMの太陽光照射下での、デバイスb1〜b4の電流密度/電圧特性。実施例7を参照のこと。
【図22】暗条件下および100mW/cm2の1.5AMの太陽光照射下での、PBTOTT:PC71BM(1:1)太陽電池の電流密度/電圧特性を開示する。膜を、温かいCHCl3から処理し、膜を一晩エージングした後、180℃のホットプレートでアニールした。実施例7を参照のこと。
【図23】(a)異なる溶媒から処理されたPBTOxTT:PC71BM(1:2)太陽電池の電流密度/電圧特性を開示する。太陽電池は、ITO/PEDOT/PBTOxTT:PC71BM/LiF/Alの構造を有する。(b)(a)の太陽電池デバイスから測定された、PBTOxTT:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトル。ITO/PEDOT基板を基準として用いた。実施例7を参照のこと。
【図24】(a)100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPBTOT−1:PC71BM(1:1)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線。(b)ガラス/ITO/PEDOT基板上のPBTOT−1:PC71BM(1:1)混合膜の光吸収スペクトルを開示する。実施例7を参照のこと。
【図25】希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPTBSTTの吸収スペクトルを示す。実施例8を参照のこと。
【図26】PTBSTT OFETの出力(a)および伝達(b)特性を開示する。実施例8を参照のこと。
【図27】CHCl3中および薄膜としてのPSEHTT(実施例9)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。
【図28】PSEHTT OFETの出力(a)および伝達(b)電気特性を開示する。実施例9を参照のこと。
【図29】図29aは、ガラス/ITO/PEDOT基板上のPC71BM(1:2)混合膜の紫外−可視吸収スペクトルを示す。図29bは、100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPSEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線を示す。実施例9を参照のこと。
【図30】図30aは、CHCl3中および薄膜としてのPCPEHTTの紫外−可視吸収スペクトルを示す。図30bは、0.1モル/LのBu4NPF6、CH3CN溶液中の白金電極におけるPCPEHTT膜のサイクリックボルタモグラムを示す。実施例10を参照のこと。
【図31】PCPEHTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例10を参照のこと。
【図32】図32aは、ガラス/ITO/PEDOT基板上のPCPEHTT:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトルを示す。図32bは、100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPCPEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線を示す。実施例10を参照のこと。
【図33】PCEHTT薄膜トランジスタの電気特性を示す。実施例11を参照のこと。
【図34】暗条件下および100mw/cm2の1.5AMの太陽光の下で測定されたPCEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池の電流密度−電圧(J−V)曲線を示す。実施例11を参照のこと。
【図35】希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPSDTTTの吸収スペクトルを示す。実施例13を参照のこと。
【図36】PSDTTT OFETの典型的な出力および伝達特性を示す。実施例13を参照のこと。
【図37】暗条件下および100mw/cm2の1.5AMの太陽光の下で測定されたPSDTTT:PC71BM(1:2)太陽電池の電流密度−電圧(J−V)曲線を示す。実施例13を参照のこと。
【図38】PTTEHV OFETの典型的な出力および伝達特性を示す。実施例14を参照のこと。
【図39】図39aは、ガラス/ITO/PEDOT基板上のPTTEHV:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトルを示す。図39bは、100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPTTEHV:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線を示す。実施例14を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示される様々な発明および/またはその様々な実施形態は、一般に、2つのチオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニットと、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含む電子受容体サブユニットAと、さらなる電子供与体サブユニットDとをそれ自体が含む少なくとも1つの繰り返し単位を含む共役ポリマー主鎖を有する、様々な属、亜属(subgenera)、および/または種類の複素環式芳香族コポリマーに関する。本明細書に記載される本発明は、有機発光ダイオード(OLED)、トランジスタおよび太陽電池を含む、様々なコポリマーを含む有機電子デバイスにも関する。
【0021】
多くの実施形態において、本明細書に記載される本発明は、少なくとも2つのチオフェン繰り返しサブユニットを含む、以下に示される式(Ia)に示される繰返し単位を含む、様々な属、亜属、および/または種類のコポリマーに関し、
【化6】
式中、
a)nが、2以上の正の整数であり、
b)n1が、正の整数であり、
c)各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択され、
d)A基が、任意選択により置換される芳香族アリールまたはヘテロアリール基を含み、その例としては、以下の構造が挙げられ、
【化7】
式中、各R2が、例えば、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基などの独立して選択される置換基であり;
e)Dが、任意選択により置換される芳香族アリールまたはヘテロアリール基を含み、その例としては、以下の構造が挙げられ、
【化8】
各R3が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択され、R4が、C1〜C18の任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、またはフェニルである。
【0022】
2つのシリレン−ビチオフェンサブユニット(2つのチオフェンサブユニットではなく)を含む、関連する属、亜属、および/または種類の式(Ib)のコポリマーは、以下に示される式(Ib)に示される繰返し単位を含み:
【化9】
式中、
a. nが、2以上の正の整数であり、
b. 各R1が、独立して、C1〜C18の有機基であり;
c. Aが、隣接するシリレン−ビチオフェン基の両方と共役した少なくとも1つのチアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含むC1〜C50の任意選択により置換されるヘテロアリール基であり、
d. Dが、任意であり、隣接するシリレン−ビチオフェン基の両方と共役した少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリール環基を含む任意選択により置換されるC1〜C50のアリールまたはヘテロアリール基である。
【0023】
式(Ib)のコポリマーの好ましい実施形態において、
a. nが、2以上の正の整数であり、
b. 各R1が、独立して、任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択される独立して選択されるC1〜C18の有機基であり、
c. Aが、隣接するシリレン−ビチオフェン基の両方と共役した少なくとも1つのチアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含むC1〜C50の任意選択により置換されるヘテロアリール基であり、
d. Dが、隣接するシリレン−ビチオフェン基の両方と共役した少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリール環基を含むC1〜C50の任意選択により置換されるアリールまたはヘテロアリール基である。
【0024】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、様々な亜属および/または種類のコポリマーを含み、以下のさらなる詳細な説明は、さらに説明することを意図しており、それらの亜属および種類の式(Ia)および/または(Ib)のコポリマーの一部を必ずしも限定するものではない。当業者は、明確に記載されていない多くのさらなる亜属および/または種類が明らかであり、本明細書に一般に開示される本発明の範囲内であり得ることを認識するであろう。
【0025】
式(Ia)および(Ib)によって規定されるコポリマー繰返し単位が、コポリマーの末端基が何であるかを特定しないことも理解されるべきである。その理由は、例えば、水素、任意のハロゲン、フェニル、メチル、アルキル、またはチオフェン、シリレン−ビチオフェンなどを含み得る末端基が何であるか、およびそれらの末端基が、特定のコポリマーの合成方法の具体的な詳細によってかなり変化し得るためである。
【0026】
式(Ia)および(Ib)の繰返し単位を含むコポリマーを含む、本明細書に記載されるコポリマーは、少なくとも2つの任意選択により置換されるモノまたはオリゴ−チオフェンまたはシリレン−ビチオフェン繰り返しサブユニットと、チアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含む少なくとも1つの「電子受容体」サブユニット「A」と、少なくとも1つの「電子供与体」繰り返しサブユニットDとを含む少なくとも3つの異なるタイプの繰り返しサブユニットを含む共役芳香族ポリマー主鎖を有する。「電子受容体」Aサブユニットおよび「電子供与体」繰り返しサブユニットDは両方とも、典型的に、任意選択により置換される共役芳香族アリールまたはヘテロアリール環の形態で存在し得る約4〜約30個の炭素原子、ならびにそれらの環に結合される無機または有機(炭素含有)またはヘテロ原子含有置換基を含む。任意の置換基は、「電子受容体」または「電子供与体」の電子特性を有するサブユニットを生成および/または分化するために、繰り返しサブユニット中の共役アリールまたはヘテロアリール環の電子特性および物理的特性を調節するために様々であり得る。
【0027】
チオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニット、電子供与体サブユニットA、および電子受容体サブユニットD、ならびにそれらの任意の置換基の組合せの結果として、光または他のエネルギーの内部の「電荷移動」吸収が生じ、これにより、光の吸収の際、コポリマーの1つのサブユニットから別のサブユニットへと電子を移動することができ、受容体サブユニットおよび/またはコポリマーの他の部分における共役され、ほとんど占有されていないLUMO軌道の自由電子、および供与体サブユニットまたはコポリマーの他の部分の共役したHOMOレベルでの対応する正孔の両方を生成する。結果として、これらの共役コポリマーの電子構造は、比較的低いエネルギーおよびポリマーの共役主鎖に沿った共役「バンド」経路を生成することができ、これにより、紫外光、可視光、および/または近赤外光範囲の「調整可能な」波長での、電子および/または正孔の高い移動度、および/または光子の吸収が生じ得る。
【0028】
固体における二次元または三次元の長距離秩序を促進する分子間のπスタッキングを強化し、正孔などの電流キャリアの高い移動度を促進するために、固体におけるコポリマーの電子特性および物理的特性を調節するように、コポリマーサブユニットおよびその任意の置換基が何であるかを「調整する」ことも可能である。
【0029】
より詳細には、式(Ia)のコポリマー、その亜属および亜種(subspecies)コポリマーは、典型的に、約5〜約30個の炭素原子を含み、以下の構造を有する、少なくとも2つの任意選択により置換される「チオフェン」または「オリゴチオフェン」繰返し単位を含み、
【化10】
式中、n1が、例えば1、2、3、4、またはそれ以上の正の整数である。多くの実施形態において、n1が1または2であり、多くの実施形態において、n1が1である。
【0030】
同様に、式(Ib)のコポリマー、ならびにその亜属および亜種コポリマーは、典型的に、約8〜約30個の炭素原子を含み、以下の構造を有する、2つの任意選択により置換される「シリレン−ビチオフェン」繰り返しサブユニットを含む。
【化11】
【0031】
R1が、チオフェンまたはシリレン−ビチオフェン繰り返しサブユニットの任意の置換基であり、典型的に、水素またはハロゲン(F、Cl、Br、またはIなど)などの無機基、あるいは1〜18個の炭素原子を好ましくは含有する有機基から独立して選択される。このような有機基(本明細書の他の箇所でも用いられる用語)は、モノマーおよびポリマーの合成の条件下、およびコポリマーを含有し得る有機電子デバイスの動作条件下で安定していることが当業者に知られている任意の有機基を含み得る。このような有機基としては、例えば、シアノ基、直鎖または分枝状アルキルまたはパーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ基の直鎖または分枝状アルコキシ、および/または直鎖または分枝状チオアルキルまたはパーフルオロチオアルキル基および/またはそれらのスルホキシドまたはスルホン誘導体、あるいはフェニル、ナフチル、ピリジル、チオフェン、フラン、ピロールなどの、小さい芳香族または複素環式芳香族が挙げられ、それらの基の水素それぞれのうちの1つまたは全てが、ハロゲンなどの任意のヘテロ原子またはヘテロ原子基、酸素またはエーテル基などの含酸素有機基、窒素またはN(CH3)2基などの二置換されたアミン基などで任意選択により置換され得る。ある実施形態において、各R1が、独立して、直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択される。ある実施形態において、各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択される。
【0032】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、典型的に、以下に示されるものを含む構造を有する隣接するチオフェンまたはシリレン−ビチオフェン環基の両方と共役した1つ以上のチアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基を含む少なくとも1つの任意選択により置換されるサブユニットAも含む。
【化12】
【0033】
また、以下に示されるものなどのチアゾロチアゾール、ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾールA環基の別の異性体を含むコポリマーも、本明細書において記載され、権利請求される本発明の範囲内である。
【化13】
【0034】
ベンゾビスチアゾール、またはベンゾビスオキサゾール環基サブユニット「A」は、約30個までの炭素原子を含むことが多い。
【0035】
Aベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、およびチアゾロチアゾールサブユニットは、高い電子親和力および/または高い電気化学還元電位を含む、電子求引特性または「n型」電子特性をもたらす傾向がある、比較的低いエネルギーの非局在化されたLUMO軌道を有する(例えば、C.J.Tonzola et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,13548−13558およびV.D.Parker,J.Am.Chem.Soc.1976,98,98−103を参照のこと)。ベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、およびチアゾロチアゾール基は、典型的に、コポリマーにおける高い熱安定性および酸化安定性も促進し、隣接するコポリマー分子間のπスタッキング相互作用を促進する傾向があり、それによって、固体におけるコポリマーの二次元または三次元秩序を促進する傾向がある。
【0036】
ベンゾビスチアゾールおよび/またはベンゾビスオキサゾール「A」サブユニットは、上述したチオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニットの任意のR1基と同様に規定され得る1つまたは2つの独立して選択される任意のR2置換基を含み得る。各R2置換基は、独立して、水素またはハロゲン(F、Cl、Br、またはIなど)などの無機基、または1〜18個の炭素原子を好ましくは含有する有機基から選択され得る。R2のこのような有機基(本明細書の他の箇所でも用いられる用語)は、モノマーおよびポリマーの合成の条件下、およびコポリマーを含有し得る有機電子デバイスの動作条件下で化学的に安定していることが当業者に知られている任意の有機基を含み得る。R2で使用するのに適した有機基としては、例えば、シアノ基、直鎖または分枝状アルキルまたはパーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ基の直鎖または分枝状アルコキシ、および/または直鎖または分枝状チオアルキルまたはパーフルオロチオアルキル基および/またはそれらのスルホキシドまたはスルホン誘導体、あるいはフェニル、ナフチル、ピリジル、チオフェン、フラン、ピロールなどの、小さい芳香族または複素環式芳香族が挙げられ、それらの基の水素それぞれのうちの1つまたは全てが、それ自体、ハロゲンなどの任意のヘテロ原子またはヘテロ原子基、酸素またはエーテル基などの含酸素有機基、窒素またはN(CH3)2基などの二置換されたアミン基などで任意選択により置換され得る。
【0037】
ある実施形態において、Aの各R2の任意の置換基は、独立して、直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択され得る。ある実施形態において、Aの各R2の任意の置換基は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され得る。
【0038】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、隣接するチオフェンまたはシリレン−ビチオフェンサブユニットの両方と共役した少なくとも1つの任意選択により置換されるサブユニットDも含む。多くの実施形態において、Dサブユニットは、典型的に、低いイオン化電位または低い電気化学酸化電位などの電子供与体特性を与える傾向がある比較的高いエネルギーの非局在化HOMO軌道を有する1つ以上の共役したアリールまたはヘテロアリール環を含む(例えば、城田靖彦(Y.Shirota)および景山弘(H.Kageyama)、Chem.Rev.2007,107,953−1010およびV.D.Parker,J.Am.Chem.Soc.1976,98,98−103を参照のこと)。
【0039】
Dサブユニットの例は、隣接するチオフェンまたはシロロ(silolo)−ジチオフェン基の両方と共役した以下の基の1つまたは全てを含む。
【化14】
【0040】
Dサブユニットは、典型的に、約2〜約30個の炭素原子を含む。
【0041】
(同様に電子供与体であるチオフェンまたはポリチオフェンサブユニットとともに)コポリマー中に電子供与体サブユニットDを含むことにより、得られるコポリマーの共役した物理的構造および電子構造の微調整が可能になり、得られるコポリマーの有機溶媒への溶解性、および/または固体における物理的特性を調整または調節するために、R3側鎖の構造を変更する手段も提供される。
【0042】
R3(および/またはR3’)は、D繰り返しサブユニットの任意の置換基であり、典型的に、水素またはハロゲン(F、Cl、Br、またはIなど)などの無機基、あるいは1〜18個の炭素原子を含有し得る有機基から独立して選択される。多くの実施形態において、各R3が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは、直鎖または分枝状アルキル、直鎖または分枝状アルコキシ基、および/または直鎖または分枝状チオアルキル基および/またはそれらのスルホキシドまたはスルホン誘導体、あるいはフェニル、ナフチル、ピリジル、チオフェン、ピロールなどの、小さい芳香族または複素環式芳香族などのC1〜C18の有機基から選択することができ、R4が、チエノチオフェン基D9のカルボン酸エステル基を形成するのに用いられる、C1〜C18の任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、またはフェニル置換基である。
【0043】
多くの実施形態において、Dの任意のR3またはR3’置換基は、1〜5つの直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンを含み得る。多くの実施形態において、Dの任意のR3またはR3’置換基は、独立して選択される水素、ハロゲン、シアノ、あるいは直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基を含み得る。
【0044】
式(Ia)のコポリマーに密接に関連する化合物のある実施形態において、本発明は、以下の構造:
【化15】
を含むコポリマーにも関し、式中、
a. nが、2以上の正の整数であり、
b. 各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択される。
【0045】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーならびにその亜属および種類のコポリマー繰返し単位の総数nは、2以上の正の整数、または2〜10,000、または10〜1000サブユニットである。典型的に、n(および対応するコポリマー分子量)の値が大きくなると、分子間のπスタッキングの程度および/または固体における電荷キャリア移動度が改善されるが、分子量が大きくなると、一般的な有機溶媒への溶解性を低下させることがあり、ひいては、場合によっては、ポリマーの実用上の加工性および/または有機電子微小デバイスを作製するのに必要とされる薄膜を容易にキャストする能力を低下させることがある。
【0046】
様々な属および亜属の式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、純粋な化合物として用いられ、または他の材料と配合されて、トランジスタおよび太陽電池を含む有機電子デバイスを作製するのに有用な組成物が形成され得る。
【0047】
ある実施形態において、本明細書において提供される本発明は、以下に示される式(IIa):
【化16】
で表される、式(Ia)のコポリマーの特定の亜属に関し、式中、R1およびR3が、独立して選択されるC4〜C12の直鎖または分枝状アルキルまたはアルコキシドである。
【0048】
式(IIa)の亜属内のコポリマーの種類の例は、以下の実施例1に記載されるコポリマーPSOTT、または実施例2に記載されるPSOxTTである。
【0049】
さらなる実施形態において、本明細書において提供される本発明は、以下に示される式(IIb):
【化17】
で表される、式(Ib)のコポリマーの特定の亜属に関し、式中、R1が、独立して、直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルから選択することができ、R3が、独立して選択される直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルまたはアルコキシドであり得る。
【0050】
式(IIb)の亜属内のコポリマーの種類の例は、以下の実施例8に記載されるコポリマーPTBSTTである。
【0051】
他の実施形態において、本明細書において提供される本発明は、以下に示される式(III):
【化18】
で表される、式(Ia)のコポリマーの特定の亜属に関し、式中、R1およびR3が、独立して、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドであり、R2が、水素、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドである。
【0052】
式(Ia)および(Ib)のコポリマーならびにその様々な亜属および種類は、予想外に高い融点ならびに予想外に優れた熱安定性および酸化安定性を有することが分かった。また、式(I)のコポリマーは、トランジスタ(実施例6に示されるように)または太陽電池(実施例7)への利用において、固体における非常に高い電荷キャリア移動度などの予想外に優れた特性を示す。
【0053】
さらに、式(Ia)および(Ib)のコポリマーは、典型的に、薄膜を形成するのに用いたり、ひいては例えば、トランジスタ、太陽電池、および/または有機発光ダイオード(OLED)などの有機電子デバイスを作製するための溶液処理に用いたりすることができるように、一般的な有機溶媒への良好な溶解性すなわち十分な溶解性を有する。
【0054】
D繰り返しサブユニットを有しないコポリマーを含むデバイス
さらに、D繰り返しサブユニットを含まない、以下に示される式(IV)の関連する種類のコポリマーを用いて、良好な効率で太陽放射を電気エネルギーに変換する太陽電池デバイスを作製することもできることが予想外に発見された。したがって、ある実施形態において、本明細書に開示される本発明は、太陽放射を電気エネルギーに変換するためのデバイスであって、
a. 以下の構造:
【化19】
(式中、
i. nが、2以上の正の整数であり得、
ii. n1が、1、2、3、または4であり得、
iii. 各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択することができ;
iv. Aが、以下の構造のうちの1つであり得、
【化20】
式中、各R2が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、またはC1〜C18の有機基から選択される)
を含む少なくとも1つのコポリマーと;
b. 少なくとも1つの電子受容体材料と
を含む組成物を含むデバイスに関する。
【0055】
式(IV)のコポリマーにおいて、R1およびR2基、n、およびn1の定義は、上に開示した式(I)のコポリマーのものと同じであり得る。
【0056】
複合材料の電子受容体材料は、本明細書に記載されるコポリマーのLUMOエネルギーレベルより少なくとも約0.2〜0.6eVだけ負側のLUMOエネルギーレベルおよび本発明のコポリマーのHOMOエネルギーレベルより負側のHOMOエネルギーレベルを有する様々な材料であり得る。多くの実施形態において、電子受容体材料は、フラーレンまたは改質フラーレン(例えば、C61−フェニル−酪酸メチルエステル、PC61BM、またはC71−フェニル−酪酸メチルエステル、PC71BM)であり得る。他の実施形態において、電子受容体材料は、適切なLUMOおよびHOMOエネルギー(本明細書に記載されるコポリマーのLUMOエネルギーレベルより少なくとも約0.2〜0.6eVだけ負側のLUMOエネルギーレベル、および本明細書に記載されるコポリマーのHOMOエネルギーレベルより負側のHOMOエネルギーレベル)を有する別の半導体ポリマーであり得る。
【0057】
式(IV)(式中、Aがチアゾロチアゾール基であり、R1がアルキル基であり(PBTOTT)、また、式中、Aがチアゾロチアゾール基であり、R1がアルコキシ基である(PBTOxTT))の特定のコポリマーの例が、例3および4に示される。式(IV)(式中、Aがベンゾビスチアゾール基であり、R1がアルキル基である(PBTOT))のコポリマーの例が、例5に示される。実施例7は、太陽電池に用いられる有効な光吸収性組成物の成分としてのこれらのコポリマーの予想外に優れた性能についてのデータを示す。
【0058】
重合性オリゴマーの合成
本発明のポリマーを合成するのに必要な重合性コモノマーを作製するための一般的な合成スキームが以下に示され、このような一般的な合成方法の具体例が、本開示の以下の「実施例」の項にも提供される。
【0059】
2つの重合性チオフェン単位に結合される、電子受容体繰返し単位の重合可能な形態を作製するための一般的な合成スキームが、直後に示される。
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0060】
本出願人らは、以下および実施例に示されるように、本明細書に記載されるビス(シリレン−ビチオフェン)チアゾロチアゾールサブユニットを含むコポリマーを作製するのに有用な新規な重合性モノマーを作製するための方法も発明した。
【化25】
【化26】
【0061】
上の合成スキーム中でケイ素原子に結合されるR1基は、多種多様な有機置換基であり得、例えば、周知のパラジウム触媒による鈴木カップリング方法に用いられるホウ酸エステル基など、当業者に明らかであり得るように、いくつかの潜在的に重合可能な基が、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)チアゾロチアゾールの末端位置で導入され得る。それにもかかわらず、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)チアゾロチアゾールは、本明細書に記載される対応するコポリマーを作製するのに有用な新規な非自明の化合物であると考えられる。
【0062】
したがって、ある実施形態において、本出願人らによる本発明は、以下の構造
【化27】
を有するオリゴマービス(シリレン−ビチオフェン)チアゾロチアゾール化合物に関し、式中、各R1が、独立して、直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルから選択され、各Xが、独立して、水素、ハロゲン化物、SnR3、および−B(−OR)2から選択され、各Rが、独立して選択されるアルキルまたはアリールであり、またはR基が一緒になって酸素原子を架橋する任意選択により置換されるアルキレン基を形成する。
【0063】
同様に、本出願人らは、以下の合成図に示されるように、重合性ビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスチアゾール化合物を作製するための方法を発明した。
【化28】
【0064】
上の合成スキーム中でケイ素原子に結合されるR1基は、本明細書の他の箇所に記載されるように、多種多様な有機置換基であり得、例えば、周知のパラジウム触媒による鈴木カップリング方法に用いられるホウ酸エステル基など、当業者に明らかであり得るように、いくつかの潜在的に重合可能な基が、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスチアゾール化合物の末端位置で導入され得る。それにもかかわらず、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスチアゾール化合物は、本明細書に記載される対応するコポリマーを作製するのに有用な新規な非自明の化合物であると考えられる。
【0065】
したがって、ある実施形態において、本出願人らによる本発明は、以下の構造
【化29】
を有するオリゴマービス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスチアゾール化合物に関し、式中、各R1が、独立して、直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルから選択され、各R2が、独立して、水素、シアノ、直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択され;各Xが、独立して、水素、ハロゲン化物、SnR3、および−B(−OR)2から選択され、各Rが、独立して選択されるアルキルまたはアリールであり、またはR基が一緒になって酸素原子を架橋する任意選択により置換されるアルキレン基を形成する。
【0066】
また、同様に、本出願人らは、以下の合成図に示されるように、重合性ビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスオキサゾール化合物を作製するための方法を発明した。
【化30】
【0067】
上の合成スキーム中でケイ素原子に結合されるR1基は、本明細書の他の箇所に記載されるように、多種多様な有機置換基であり得、例えば、周知のパラジウム触媒による鈴木カップリング方法に用いられるホウ酸エステル基など、当業者に明らかであり得るように、いくつかの潜在的に重合可能な基が、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスオキサゾール化合物の末端位置で導入され得る。それにもかかわらず、示されるビス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスオキサゾール化合物は、本明細書に記載される対応するコポリマーを作製するのに有用な新規な非自明の化合物であると考えられる。
【0068】
したがって、ある実施形態において、本出願人らによる本発明は、以下の構造
【化31】
を有するオリゴマービス(シリレン−ビチオフェン)ベンゾビスオキサゾール化合物に関し、式中、各R1が、独立して、直鎖または分枝状のC4〜C12のアルキルから選択され、各R2が、独立して、水素、シアノ、直鎖または分枝状アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、パーフルオロアルコキシ、チオアルキル、パーフルオロチオアルキル、アルキルスルホキシド、パーフルオロスルホキシド、アルキルスルホン、またはパーフルオロアルキルスルホンから選択され、各Xが、独立して、水素、ハロゲン化物、SnR3、および−B(−OR)2から選択され、各Rが、独立して選択されるアルキルまたはアリールであり、またはR基が一緒になって酸素原子を架橋する任意選択により置換されるアルキレン基を形成する。
【0069】
重合性「D」コモノマーの合成
「D」電子供与体繰返し単位の共重合性モノマー形態を作製するための一般的な合成スキームが直後に示され、その重合性化合物の多くが従来技術において公知である。
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0070】
合成スキームとともに上に引用された参照文献は、上に引用されたモノマーの合成方法に関するそれらの開示について、参照により本明細書に援用される。
【0071】
以下に示される構造を有する重合性フルオレン−ボロン酸エステルコモノマーは、Sigma Aldrich(Milwaukee Wisconsin)から市販されている。
【化40】
【0072】
供与体/受容体コポリマーの合成
以下に示される一般的な反応スキームは、合成が一般に上述されたコオリゴマーおよび/またはコモノマーを共重合するための様々な方法を示す。このような方法の具体例が、以下の開示の実施例の項に提供される。
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【0073】
コポリマーを含む有機電子デバイス
本発明のある態様は、有機発光ダイオード(OLED)、トランジスタ、および太陽電池を含む、本明細書に記載されるコポリマーを含む新規な有機電子デバイスに関する。それらの最終使用用途の各々は、典型的に、基板上に本発明のコポリマーの膜を形成する必要がある。本発明のポリマーの有機膜は、スピンコーティング法、キャスティング法、浸漬コーティング法、インクジェット法、ドクターブレードコーティング法、スクリーン印刷法、および噴霧コーティング法などの公知の方法によって作製され得る。このような方法を使用することによって、膜に亀裂を形成せずに機械的強度、靱性、および耐久性などの優れた特性を有する有機膜を作製することが可能になる。したがって、有機膜は、光電池、FET素子、および発光素子などの有機電子デバイスに用いることができるのが好ましい。
【0074】
本発明のコポリマーの膜は、典型的に、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、またはキシレンなどの溶媒にコポリマーを溶解させることによって調製されるコーティング液体を基板上に塗布することによって作製される。コーティング方法の具体例としては、噴霧コーティング法、スピンコーティング法、ブレードコーティング法、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法、ディスペンス(dispense)法などが挙げられる。これに関して、適切な方法および適切な溶媒が、用いられるポリマーの特性を考慮して選択される。本発明のポリマーの膜が形成される基板として使用するのに適した材料としては、ガラス板、シリコン板、ITO板、およびFTO板などの無機基板、ならびにプラスチック板(例えば、PET膜、ポリイミド膜、およびポリスチレン膜)などの有機基板が挙げられ、これらの基板は、任意選択により表面処理が施されていてもよい。基板が平滑面を有するのが好ましい。
【0075】
本発明の有機薄膜トランジスタの有機膜および有機半導体層の厚さは、特に限定されない。しかしながら、厚さは、得られる膜または層が均一な薄層であるように決定される(すなわち、膜または層は、そのキャリア輸送特性に悪影響を与える間隙または孔を含まない)。有機半導体層の厚さは、一般に、1μm以下、好ましくは5〜200nmである。
【0076】
本発明のコポリマーを含むトランジスタの作製
本発明の有機薄膜トランジスタは、典型的に、トランジスタのソース電極、ドレイン電極および絶縁層を接触させつつも、本発明のコポリマーを含む有機半導体層が内部に形成されるような構成を有する。
【0077】
上で作製された有機薄膜トランジスタは、典型的に、熱アニールされる。アニールは、膜を基板に設置しながら行われ、(理論に制約されるのを望むものではないが)コポリマーの少なくとも部分的な自己秩序化(self−ordering)および/またはπスタッキングを固体において生じさせるものと考えられる。アニール温度は、ポリマーの特性に応じて決定されるが、好ましくは室温から300℃、より好ましくは50〜300℃である。多くの実施形態において、熱アニールは、少なくとも150℃、または好ましくは170℃超、または200℃超で行われる。アニール温度が低過ぎると、有機膜に残っている有機溶媒を有機膜から十分に除去することができない。これに対して、アニール温度が高過ぎると、有機膜は熱分解されるおそれがある。アニールは、真空下、あるいは窒素、アルゴンまたは空気雰囲気下で行われるのが好ましい。ある実施形態において、アニールは、ポリマーの分子運動が加速されるようにポリマーを溶解させることができる有機溶媒の蒸気を含む雰囲気中で行われ、それによって、良好な有機薄膜が作製され得る。アニール時間は、ポリマーの凝集速度に応じて適切に決定される。
【0078】
絶縁(誘電体)層が、本発明のコポリマーを含む有機薄膜トランジスタに用いられ、ゲート電極とポリマーを含む有機薄膜との間に配置される。様々な絶縁材料を絶縁層に用いることができる。絶縁材料の具体例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸鉛ジルコニウム、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、酸化ハフニウム、および三酸化イットリウムなどの無機絶縁材料;例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、非置換またはハロゲン原子で置換されたポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、およびシアノエチルプルランなどのポリマー材料などの有機絶縁材料などが挙げられる。これらの材料は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。これらの材料の中でも、高い誘電率および低い導電性を有する材料が用いられるのが好ましい。
【0079】
このような絶縁層を形成するのに適した方法としては、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、および蒸着法などの乾式法;噴霧コーティング法、スピンコーティング法、浸漬コーティング法、インクジェットコーティング法、キャストコーティング法、ブレードコーティング法、およびバーコーティング法などの湿式法などが挙げられる。
【0080】
絶縁層と有機半導体層との間の接着性を改善し、電荷輸送を促進し、ゲート電圧およびリーク電流を減少させるために、絶縁層と有機半導体層との間に有機薄膜(中間体層)を用いることができる。中間体層に使用するための材料は、材料が有機半導体層の特性に化学的に影響を与えない限り特に限定されず、例えば、有機材料の分子膜、およびポリマーの薄膜をそれに使用することができる。分子膜を作製するのに使用するための材料の具体例としては、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、およびオクタデシルホスホン酸などのカップリング剤が挙げられる。ポリマー膜を作製するのに使用するためのポリマーの具体例としては、絶縁層に使用するための上述したポリマーが挙げられる。このようなポリマー膜は、絶縁層ならびに中間体層として働き得る。
【0081】
本発明の有機薄膜トランジスタの電極(ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極など)の材料は、材料が導電性である限り、特に限定されない。材料の具体例としては、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、スズ、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、タングステン、チタン、カルシウム、およびマグネシウムなどの金属;これらの金属の合金;インジウムスズ酸化物(ITO)などの導電性金属酸化物;シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、黒鉛、カーボンナノチューブ、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、およびポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸との錯体などの、導電性がドーピングなどによって改善される無機または有機半導体が挙げられる。
【0082】
本発明のコポリマーを含む太陽電池の作製
まず、PEDOT緩衝層を、ITO被覆ガラス基板(10Ω/□、Shanghai B.Tree Tech.Consult Co.,Ltd、Shanghai、China)の上に1500rpmで60秒間スピンコートすることによって太陽電池を作製し、150℃で10分間、真空下で乾燥させた。PEDOTの厚さは約40nmであった。
【0083】
本発明のポリマーを含む太陽電池の活性層は、通常、上述したポリマーまたはコポリマーと電子受容体材料との相分離されたブレンドである混合された「ヘテロ接合」活性層を含む。電子受容体材料は、本明細書に記載されるコポリマーのLUMOエネルギーレベルより少なくとも約0.2〜0.6eVだけ負側のLUMOエネルギーレベル、および本明細書に記載されるコポリマーのHOMOエネルギーレベルより負側のHOMOエネルギーレベルを有する様々な有機材料(小分子、オリゴマー、ポリマー、またはコポリマー)を含み得る。多くの実施形態において、電子受容体材料は、フラーレンまたは改質フラーレン(例えば、C61−フェニル−酪酸メチルエステル、PC61BM、またはC71−フェニル−酪酸メチルエステル、PC71BM)であり得る。他の実施形態において、電子受容体材料は、適切なLUMOおよびHOMOエネルギー(本明細書に記載されるコポリマーのLUMOエネルギーレベルより少なくとも約0.2〜0.6eVだけ負側のLUMOエネルギーレベル、および本明細書に記載されるコポリマーのHOMOエネルギーレベルより負側のHOMOエネルギーレベル)を有する、電子求引性半導体有機小分子、オリゴマー、またはポリマーであり得る。このような電子受容体材料の例としては、例えば、ナフタレンジイミド、ペリレンジイミド、リレン(rylene)、フタルイミド、および電子求引性基を含む関連する誘導体などの、非常に電子不足の官能基を有する小分子、オリゴマー、ポリマー、またはコポリマーが挙げられる。
【0084】
本出願人らの本発明の太陽電池の多くの実施形態において、本出願人らのポリマーまたはコポリマーの1つ以上および1つ以上の受容体材料(例えばフラーレン誘導体)の溶液または分散体を含む組成物を、PEDOT層の上に、例えば1000rpmの速度で30秒間スピンコートして、1つ以上のコポリマーおよび1つ以上の電子求引性材料を含む層を形成する。ある実施形態において、溶液または分散体を、高温の溶媒を用いて塗布し、コポリマーを付着させた直後に真空下で乾燥させる。
【0085】
次に、被覆されたデバイス前駆体を、グローブボックス中、130±10℃で10分間、例えばホットプレートの上でアニールして、活性層を形成することができる。この活性層も空気中でスピンコートして、熱アニールせずに真空オーブン中で乾燥させることができる。本発明のコポリマーと電子受容体との混合物を溶解させるのに用いられる溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼンなどであり得る。コポリマー/フラーレンブレンドのための溶媒は、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼンなどの単一の溶媒あるいは2種または3種の異なる溶媒の混合物であり得、第2の(第3の)溶媒は、1,8−ジヨードオクタン、1,8−ジブロモオクタン、1,8−オクタンジチオールなどであり得る。任意選択により、膜形成のための補助として、ポリマーおよび/または電子受容体の溶解性を高めるために溶媒を加熱することができる。
【0086】
熱アニールは、本発明のポリマーと電子受容体との少なくとも部分的な相分離を誘発し、光誘起電荷分離の部位であると考えられるナノメートルスケールでの「ヘテロ接合」を形成すると考えられる。
【0087】
ポリマーで被覆された基板を含む太陽電池前駆体を、冷ました後にグローブボックスから取り出し、陰極の蒸着のために熱蒸着装置(thermal evaporator)(BOC Edwards、306)に入れた。続いて、1.0nmのLiFおよび80nmのアルミニウム層からなる陰極を、8×10−7トルの真空下で活性層の上にシャドーマスクを介して蒸着した。各基板は、4mm2の活性領域を有する5つの太陽電池を含んでいた。
【実施例】
【0088】
上述した様々な発明を、以下の具体的な実施例によってさらに例示するが、これらの実施例は、本発明の開示またはそれに添付される特許請求の範囲を限定するものと決して解釈されるものではない。これに対し、本明細書を読めば、本発明の趣旨または添付の特許請求の範囲から逸脱せずに、当業者に示唆され得る本発明の様々な他の実施形態、変更、および均等物を用いることができることが明らかに理解される。
【0089】
材料
全ての市販の試薬を、Sigma−Aldrich、Across、Alfa−AesarおよびTCI America Laboratory of chemicalsから購入した。
【0090】
KBrペレットを備えたPerkin Elmer 1720 FT−IR分光光度計からFT−IRスペクトルを得た。Bruker Esquire LC/Ion Trap Mass spectrometerで質量スペクトルを記録した。1H−NMRスペクトルを、それぞれCDCl3またはC6D4Cl2またはCF3COODを溶媒として用いて、300MHz/500MHzでBruker AV300/AV500で記録した。Polymer Lab Model 120 Gel Permeation Chromatograph(DRI/High Sensitivity Refractive Index DetectorおよびPL−BV400HT Viscometer)を用いて、クロロベンゼン中60℃で、ポリスチレン標準に対してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析を行った。TA Instruments Q50 TGAを用いて、窒素ガス流れ下で10℃/分の加熱速度で熱重量分析(TGA)分析を行った。EG&G Princeton Applied Research Potentiostat/Galvanostat 273Aでサイクリックボルタンメトリーを行った。対電極および作用電極の両方として白金線電極を用いた三電極電池を使用した。銀/銀イオン(0.1MのAgNO3溶液中のAg、Bioanalytical System,Inc.)を基準電極として使用した。フェロセン/フェロセニウム(Fc/Fc+)を内部標準として使用した。Ag/Ag+を基準にして得られた電位値を飽和カロメル電極(SCE)スケールに変換した。0.1MのTBAPF6を含有するアセトニトリル中で薄膜サイクリックボルタンメトリーを行った。Perkin−ElmerモデルLambda 900紫外/可視/近赤外分光光度計で紫外−可視吸収スペクトルを記録した。Photon Technology International(PTI)Inc.のモデルQM2001−4蛍光分光計を用いてフォトルミネッセンス(PL)発光スペクトルを得た。X線回折(XRD)のために、清浄化したばかりのガラス基板上にポリマーの薄膜をドロップキャストした。Cu Kαビーム(40kV、40mA;λ=0.15418nm)を用いてBruker AXS D8 Focus回折計でXRDパターンを得た。
【0091】
実施例1−ポリ[(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)(PSOTT)の合成
【化47】
(1)2,5−ビス(3−オクチル−5−(トリメチルスタンニル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(6)
化合物6およびその二臭化物前駆体を、文献に報告されるように調製した。関連する合成方法の教示の開示について全て参照により本明細書に援用される(a)尾坂格(Osaka,I.);Sauve’,G.;Zhang,R.;Kowalewski,T.;McCullough,R.D.Adv.Mater.2007,19,4160、(b)尾坂格(Osaka,I.);Zhang,R.;Sauve’,G.;Smilgies,D−M.;Kowalewski,T.;McCullough,R.D.J.Am.Chem.Soc.2009,131,2521−2529を参照のこと。
【0092】
褐色の固体、(収率;89%)。1H NMR(300MHz、CDCl3)δ 7.06(s,2H)、3.00(t,4H,J=7.8Hz)、1.72〜1.77(m,4H)、1.31〜1.48(m,20H)、0.89〜0.91(m,6H)、0.53(s,18H)。EI:M/e 856.5。
【0093】
5,5’−ジブロモ−ジ−n−オクチルシリレン−2,2’−ビチオフェン(11)
二臭化物11およびその対応するジスタンナンモノマーを、文献に報告されるように調製した。関連する合成方法の教示の開示について参照により本明細書に援用されるLu,G.;Usta,H.;Risko,C.;Wang,L.;Facchetti,A.;Ratner,M.A.;およびMarks,T.J.J.Am.Chem.Soc.2008,130,7670−7685を参照のこと。
【0094】
黄色の液体、(収率80%)1H NMR(300MHz、CDCl3)δ=6.99(s,2H)、1.22〜1.33(m,28H)、0.84〜0.89(m,6H)。EI:M/e 576.04。
【0095】
ポリ[(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)(PSOTT)
無水クロロベンゼン(10mL)に溶解させた出発材料11(160mg、0.27mmol)および6(238mg、0.27mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(5mg、0.006mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(7mg、0.022mmol)を、3日間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。次に、残渣をクロロホルムで抽出し、蒸発させ、乾燥させたところ、金属のような外観を有する暗褐色の固体(200mg、80%)が得られた。1H NMR(CDCl3):6.91(s,br,4H)、2.91(s,br,4H)、0.88〜2.15(m,64H)。
【0096】
ポリマーPSOTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)試験により、2.26の多分散性とともに、15.46kg/molの数平均分子量が示された。
【0097】
添付の図1aおよび1bに示されるように、サイクリックボルタンメトリー(CV)によって、および紫外−可視吸光分光法からPSOTTのHOMOおよびLUMOレベルを電気化学的に推定した。図1bにおける還元および酸化の開始は、0.69および−1.55V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOおよびLUMOレベルがそれぞれ5.09および2.85eVであることが計算される。図1aは、希薄なクロロホルム溶液および薄膜におけるPSOTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が584nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、585および636nmで吸収極大を同様に示した。吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.79eVである。
【0098】
実施例2−ポリ[(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルオキシチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PSOxTT)の合成:
PSOxTTポリマーの合成をもたらす合成経路の概略を以下に示す。
【化48】
3−オクトキシチオフェン(2’):
3−メトキシチオフェン(7.28g、63.76mmol)と、1−オクタノール(20.09mL、127.53mmol)と、p−トルエンスルホン酸一水和物(1.21g、6.38mmol)と、60mLのトルエンとの混合物を、130℃の浴中で15時間、アルゴン下で加熱した。ジクロロメタン/水で抽出した後、有機層を無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル3:1ヘキサン:ジクロロメタン)によって精製したところ、無色の固体として2’(13.00g、96%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.18〜7.21(m,1H)、6.78〜6.80(m,1H)、6.25〜6.26(m,1H)、3.97(t,2H,6.6Hz)、1.76〜1.85(m,2H)、1.33〜1.48(m,10H)、0.91〜.95(m,3H)。
【0099】
2−ホルミル−3−オクトキシチオフェン(3’):
窒素雰囲気下で100mLの三つ口フラスコ中0℃で無水DMF(10mL)の撹拌された溶液に、POCl3(0.53mL、5.76mmol)を5分間にわたって滴下して添加した。添加した後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次に、2mLのDMFに溶解させた3−オクチルオキシチオフェン(1.02g、4.80mmol)を、0℃で5分間にわたって滴下して添加した。この溶液を70℃で90分間撹拌し、それを氷水に注いでから、10%のNaOH溶液(20mL)でゆっくりと中和した。得られた混合物を蒸気浴中で20分間加熱した。水層をCHCl3(3×50mL)で抽出した後、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去した後、粗混合物を、シリカゲルにおけるクロマトグラフィー(ヘキサン中10%の酢酸エチル)にかけたところ、無色の油として3’(1.0g、86%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 10.01(s,1H)、7.62(d,1H,5.4Hz)、6.84(d,1H,5.4Hz)、4.15(t,2H,6.6Hz)、1.76〜1.86(m,2H)、1.29〜1.46(m,10H)、0.89(t,3H,6.6Hz)。M/e 240.12。
【0100】
2,5−ビス(3−オクチルオキシチオフェン−2イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(4’):
ジチオオキサミド(0.21g、1.77mmol)、0.7gのフェノール、および3’(0.85g、3.54mmol)を丸底フラスコ中で組み合わせて、油浴中、還流温度で45分間加熱した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中50%のCHCl3)によって精製したところ、黄褐色の固体として4’(0.2g、20%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.31(d,2H,5.7Hz)、6.88(d,2H,5.7Hz)、4.23(t,4H,6.3Hz)、1.86〜1.95(m,4H)、1.57(m,4H)、1.31〜1.35(m,16H)、0.88〜0.90(m,6H)。m/e=562.18。
【0101】
2,5−ビス(5−ブロモ−3−オクチルオキシ−チオフェン−2イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(5’):
CHCl3/AcOH(8/4mL)に溶解させた4’(0.17g、30.06mmol)の溶液に、CHCl3/AcOH(8/4mL)に溶解させたNBS(0.12g、67.5mmol)溶液を滴下して添加し、0℃で2時間撹拌した。次に、反応溶液を室温で一日撹拌した。反応溶液を水で洗浄してから、無水Na2SO4で処理した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中40%のCHCl3)によって精製したところ、黄色の固体として5’(0.18g、82%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 6.90(s,2H)、4.19(t,4H,6.3Hz)、1.88〜1.93(m,4H)、1.33〜1.58(m,20H)、0.90〜0.92(m,6H)。m/e=720.00。
【0102】
2,5−ビス(3−オクチルオキシ−5−(トリメチルスタンニル)チオフェン−2イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(6’):
60mLのTHFに溶解させた5’(0.59g、0.82mmol)の溶液に、ヘキサン(0.82mL、2.05mmol)に溶解させたn−BuLiの2.5Mの溶液を−78℃で滴下して添加した。溶液を−78℃で2時間撹拌し、THFに溶解させた塩化トリメチルスズ(2.46mL、2.46mmol)の1.0Mの溶液を一度に添加した。溶液を室温まで温め、50mLの水および50mLの酢酸エチルを添加した。有機層を50mLの水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。有機層を蒸発させ、真空で乾燥させたところ、黄色の固体(0.6g、82%の収率)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 6.91(s,2H)、4.24(t,4H,6.3Hz)、1.90(m,4H)、1.58(m,4H)、1.31(m,16H)、0.89(m,6H)、0.41(s,18H)。m/e=888.3。
【0103】
ポリ[(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルオキシチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)]、PSOxTT:
無水クロロベンゼン(20mL)に溶解させた試薬6’、(473mg、0.27mmol)および11(307mg、0.27mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(10mg、0.01mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(13mg、0.043mmol)を、30時間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。次に、残渣をクロロホルムで抽出し、蒸発させ、乾燥させたところ、暗褐色の金属固体(390mg、75%)が得られた。1H NMR(CDCl3、δ ppm):6.91(m,4H)、4.23(s,4H)、1.96(m,4H)、1.25〜1.38(m,48H)、0.91(m,12H)。
【0104】
PSOxTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、2.01の多分散性とともに、24.26kg/molの数平均分子量が示された。
【0105】
図2(a)は、希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPSOxTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が596nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、604および649nmで吸収極大を同様に示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.73eVである。サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図2b)から、PSOxTTのHOMOおよびLUMOレベルを推定した。還元および酸化の開始は、0.60および−1.41V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOおよびLUMOレベルがそれぞれ5.0および2.99eVであることが計算される。
【0106】
例3−第2の電子供与体サブユニットを有しないポリマーの比較例:ポリ(2,5−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)(PBTOTT):
PSOTTおよびPSOxTTのサブユニットと同様のチアゾロチアゾールおよびアルキル置換チオフェンサブユニットを含むが、PSOTTおよびPSOxTTのジチエノシロールサブユニットなどの第2のタイプの電子供与体サブユニットを含まないコポリマーが、国際公開第2007/145482号パンフレットに報告された。それらのポリマーは、トランジスタを作製するのに有用であることが実証されたが、それらのポリマーを含む太陽電池は報告されなかった。国際公開第2007/145482号パンフレットのポリマーの代表例(すなわち、後述されるPBTOTTおよびPBTOxTT)は、PSOTTおよびPSOxTTとの比較の目的のために以下に提供され、太陽電池を作製するためのその使用が提供される。
【0107】
ポリ(2,5−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)(PBTOTT)の調製を、ジスタンナンモノマー6およびジブロモ化合物7’1と、触媒としてのPd2(dba)3およびP(o−Tol)3ならびにリガンドとのスティルカップリング反応によって、以下に示されるとおりに行った。
【化49】
【0108】
ポリ(2,5−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)PBTOTT:
無水クロロベンゼン(20mL)に溶解させた試薬7’(443mg、0.47mmol)および6(691mg、0.47mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(15mg、0.02mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(20mg、0.06mmol)を、2日間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。次に、残渣をクロロホルムで抽出し、蒸発させ、乾燥させたところ、45%の収率で暗褐色の金属固体が得られた。1H NMR(CDCl3、δ ppm):7.03(s,4H)、2.96(m,4H)、2.83(m,4H)、1.25〜1.71(m,48H)、0.90(m,12H)。
【0109】
PBTOTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、2.76の多分散性とともに、103.18kg/molの数平均分子量が示された。図3aは、希薄なクロロホルム溶液および薄膜におけるPBTOTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が534および624nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、534および564nmで吸収極大を同様に示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.82eVである。
【0110】
サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図3b)から、PBTOTTのHOMOおよびLUMOレベルを推定した。PBTOTTの酸化波は可逆的であり、酸化の開始は0.76V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOレベルが5.16eVであることが計算され、LUMOレベルは、光学バンドギャップ値から得られる3.36eVである。
【0111】
例4−ポリ(2,5−ビス(3−オクチルオキシ−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(PBTOxTT):
PBTOTTのサブユニットと同様のチアゾロチアゾールおよびアルコキシ置換チオフェンサブユニットを含むが、PSOTTおよびPSOxTTのジチエノシロールサブユニットなどの第2のタイプの電子供与体サブユニットを同様に含まない別の比較例のコポリマーが、PSOTTおよびPSOxTTとの比較のため、および太陽電池を作製するためのこれまで開示されていないその使用のために、本明細書に記載される。
【0112】
以下に示されるように、2日間還流しながら、触媒としてPd2dba3、P(o−Tol)3を用いて、無水クロロベンゼン中でジスタンナンモノマー6’とジブロモ化合物7’とをスティル型重縮合させることによって、PBTOxTTを合成した。
【化50】
【0113】
ポリ(2,5−ビス(3−オクチルオキシ−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)PBTOxTT
10mLの無水クロロベンゼンに溶解させた6’(257mg、0.47mmol)、7’(416mg、0.47mmol)、トリ−o−トリルホスフィン(11mg、0.03mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(9mg、0.01mmol)の溶液を、2日間還流させた。50℃まで冷ました後、反応混合物を、5mLのHClを含有する180mLのメタノールに注ぎ、4時間撹拌した。次に、析出された濃い紫色の固体を、メタノール、次にヘキサンを用いてソックスレー抽出した。残渣をクロロホルムで抽出したところ、30%の収率で濃い紫色/褐色の金属固体が得られた。1H NMR(CDCl3、δ ppm):6.78〜6.91(m,4H)、4.21〜4.23(m,4H)、2.79(m,4H)、1.93(m,4H)、1.26〜1.33(m,44H)、0.91(m,12H)。
【0114】
PBTOxTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、2.66の多分散性とともに、56.57kg/molの数平均分子量が示された。図4aは、希薄なクロロホルム溶液および薄膜におけるPBTOxTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が524nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、533nmで吸収極大を同様に示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.80eVである。
【0115】
サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図4b)から、PBTOxTTのHOMOおよびLUMOレベルを推定した。PBTOxTTの還元および酸化波の両方は、可逆的である。還元および酸化の開始は、0.51および−1.63V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOおよびLUMOレベルがそれぞれ4.91および2.77eVであることが計算される。
【0116】
例5−ポリ(2,6−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(PBTOT−1)
欧州特許公報の欧州特許第2085401号明細書には、ベンゾビスチアゾールおよびチオフェン繰返し単位を含むコポリマーの種類、および有機トランジスタを作製するためのその利用が開示されたが、太陽電池を作製するためのそれらのポリマーの使用は教示も示唆もされていなかった。本発明のコポリマーとの比較のため、および太陽電池を作製するためのその利用を試験するために、ベンゾビスチアゾールおよびチオフェン繰返し単位のみを含むポリマーの合成を以下に示されるように合成した。
【化51】
【0117】
ポリ(2,6−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(PBTOT−1)
12mLのクロロベンゼンに溶解させた2,6−ビス(5−ブロモ−3−オクチルチオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール(0.300mg、0.406mmol)と、4,4’−ジオクチル−5,5’−トリメチルスタンニル−2,2’−ビチオフェン(0.291mg、0.406mmol)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(7.4mg、0.00812mmol)と、トリス−o−トリホスフィン(tris−o−tolyphosphine)(9.89mg、0.0325mmol)との混合物を、84時間還流させた。反応溶液を200mLの5%の塩酸/メタノール溶液に注ぎ、5時間撹拌した。ろ過された固体を、メタノールおよびヘキサンでそれぞれ24時間、ソックスレー抽出した。PBTOT−1をクロロホルムで抽出したところ、光沢感のある緑色の固体(100mg)が得られた。1H−NMR(CDCl3):δ 8.44(s,2H)、δ 6.92(s,br,4H)、δ 3.01〜2.53(m,8H)、1.68(m,8H)、δ 1.31(m,40H)、δ 0.91(t,12H)。FT−IR(film、cm−1):2918、2845、1636、1616、1465、1409、1384、1303、1107、680。
【0118】
ポリ(2,6−ビス(3−オクチル−5−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−d;4,5−d’]ビスチアゾール)(PBTOT−2)
PBTOT−1を調製するのに用いられるのと同様の化学反応によってPBTOT−2を合成した。PBTOT−2(140mg)は、クロロホルムに不溶の画分であり、これをオルト−ジクロロベンゼンに溶解させ、メタノールから析出させると、光沢感のある緑色の固体(140mg)が得られる。
【0119】
粗ポリマーを、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によって精製した。表1に示されるように溶解性および/または分子量に基づいてPBTOTの2つの画分を単離した。PBTOT−1をクロロホルムで抽出すると、光沢感のある緑色の固体が生成され、PBTOT−2を、オルトジクロロベンゼンを用いて抽出すると、光沢感のある緑色の固体が同様に生成された。ポリスチレン標準に対するクロロベンゼン溶液中でのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を測定した。PBTOT−1は、15,400の重量平均分子量(Mw)および1.91の多分散性指数(PDI)を有する。PBTOT−1は、クロロホルム、クロロベンゼン、およびジクロロベンゼンなどの有機溶媒に溶解できる。第2の試料のPBTOT−2は、高い重量平均分子量(Mw=722,000、PDI=1.97)を有し、高温のオルト−ジクロロベンゼンおよび1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解できる。
【0120】
【表1】
【0121】
PBTOT−2は分子量が比較的高いため、ほとんどの有機溶媒への溶解性が制限される。示差走査熱量測定(DSC)により、PBTOT−2についての367℃での融解ピーク(Tm)および356℃での再結晶化(Tc)ならびにPBTOT−1についてのわずかに低い融解転移(290℃でのTmおよび265℃でのTc)が示された。図5を参照のこと。PBTOTのDSC走査においてガラス転移温度は観察されなかった。PBTOTのTmは、P3OTにおける200〜205℃の融解転移温度と比較して著しく高められた(Chen,T.−A.;Wu,X.;Rieke,R.D.;J.Am.Chem.Soc.1995,117,233を参照のこと)。
【0122】
PBTOTの薄膜の正規化された光吸収スペクトルが、図6に示される。PBTOT−1が、540nmで吸収極大(λmax)を有する一方、PBTOT−2は、551nmにおける吸収極大および600nmにおける赤方偏移ショルダー(red−shifted shoulder)、固体における強い鎖間相互作用の表示を含む明確な振動構造を有する。PBTOT−1の薄膜が150℃でアニールされる場合、低いエネルギーショルダーが580nmで現れ、これは改善された鎖間相互作用を示している(図7)。
【0123】
PBTOT−1の場合、希薄なオルト−ジクロロベンゼン溶液における吸収極大が490nmで現れ、薄膜の吸収と比較して約50nm青方偏移しており、これは、向上された平坦化および固体における改善されたπスタッキングを示している(図8a)。PBTOT−2は、希薄な高温の1,2−ジクロロベンゼンにおける537nmの吸収極大を示した。薄膜のPBTOT吸収端からの光学バンドギャップは、1.94〜1.97eVであった。これらの値は、P3OT(1.9eV)バンドギャップよりわずかに高かった。希薄な1,2−ジクロロベンゼン溶液中のPBTOT−1のフォトルミネッセンス(PL)発光スペクトルは、573nmで極大値を有する振動構造を有する一方、溶液中のPBTOT−2は、630nmで極大値を有する(図8b)。固体において、PBTOT−1およびPBTOT−2は両方とも、687〜690nmでPL極大を伴う赤色の発光を有していた(図4B)。
【0124】
PBTOT−1薄膜のサイクリックボルタンメトリーにより、準可逆的な酸化が示されたが、還元波は観察されなかった(図9)。開始酸化電位は、5.2eVの最高被占分子軌道(HOMO)に対応する0.80V(対SCE)であった。光学バンドおよび関係式LUMO=HOMO−Egoptを用いることによって、最低空分子軌道(LUMO)はおよそ3.3eVであると推定された(表1)。PBTOTのHOMOレベルは、P3OT(4.9eV)より0.3eV低い。これは、明らかに、電子不足のベンゾビスチアゾール部分をP3OT主鎖に組み込んだ結果である。PBTOTのHOMO/LUMOエネルギーレベルは、それが安定した正孔輸送材料であるはずであることを示唆している。PBTOTは、P3OTまたはP3HTのいずれより酸化的に安定である。ベンゾビスチアゾール単位が光学バンドギャップに小さい影響しか及ぼさないように見えるが、HOMOおよびLUMOレベルを0.3eVだけ偏移したのが明らかである。
【0125】
モルホロジーおよび分子充填
PBTOTの固体モルホロジーおよび分子組織を調べるために、本発明者らは、1,2−ジクロロベンゼン溶液からガラス基板上にドロップキャストされ、真空オーブン(60℃)中で一晩乾燥された薄膜においてX線回折(XRD)分析を行った。PBTOT−2膜のXRDスペクトルが、図10aに示される。回折ピークは、2θ=5.66°(100)、11.1°(200)、および16.4°(300)で観察され、これは、PBTOT−2膜における高度の結晶性を示している。
【0126】
PBTOT−1膜のXRDスペクトルもまた、2θ=5.58°(100)、および11.1°(200)におけるピークで、同様の反射を示した(図10c)。5.66°における回折ピークは、15.6Åの中間層のd100ラメラ間隔に対応し、これは、P3OTの中間層のd100ラメラ間隔(20.1Å)よりはるかに小さい[Chen,T.−A.;Wu,X.;Rieke,R.D.;J.Am.Chem.Soc.1995,117,233を参照のこと]。さらに、PBTOTの鎖間d100ラメラ間隔は、P3HTの鎖間d100ラメラ間隔(16.3Å)よりさらに小さい。アルキル鎖置換ポリマーの2つの一般的な充填形態、相互嵌合および末端間充填があることが知られている。理論に制約されるのを望むものではないが、観察される中間層の距離は、PBTOTのアルキル鎖が図10bに示されるように互いにかみ合っていることを示唆している。
【0127】
また、アニールせずにガラス基板上にスピンコートされた薄膜における原子間力顕微鏡法(AFM)によって、PBTOTの膜モルホロジーを調べた。AFM画像によって示される表面モルホロジーにおいて小塊状の構造が観察された(図11)。
【0128】
実施例6−コポリマーを用いたトランジスタ
トランジスタの作製
例1〜5のコポリマーを含む薄膜トランジスタを作製し、電荷キャリア移動度および他の電気的パラメータを評価するために試験した。従来のボトムコンタクト型、ボトムゲート型構造において薄膜トランジスタを作製した。薄いクロム接着層を有する金電極を、二酸化ケイ素で高濃度にドープされたシリコン(tox=200または300nm)基板の上にパターニングした。デバイスのチャネル幅は400または800μmであり、長さは20または40μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。1,2−ジクロロベンゼン(ODCB)中の溶液から疎水的に改質された酸化物にポリマーをスピンした(spun)。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを最初に試験した。安定性試験のために、デバイスを空気中で保管し、試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。
【0129】
図12〜15中の画像データによって示されるように、PSOTT、PSOxTT、PBTOTT、およびPBTOxTTは、典型的なp型特性を示した。測定の結果は、表2に数値形式で示される。
【0130】
【表2】
【0131】
アニール温度を150℃から200℃に上昇させることによって、PSOTTの平均正孔移動度を3.6×10−3から9.9×10−3cm2/Vsへと2〜3倍増加させた。PSOTTトランジスタの最大移動度は0.01cm2/Vsであった(図12)。したがって、残りの試験のアニール温度は一定の200℃であった。
【0132】
PSOxTT(PSOTTチアゾロチアゾール−シリレン−ビチオフェンコポリマー中のアルキルチオフェン単位と比較してアルコキシチオフェンを有する)の場合、正孔移動度は、平均で0.081cm2/Vsまで、最大で0.087cm2/Vsまで増加した(図13)。第2のタイプの電子供与性繰り返し単位を組み込んでいない、PBTOTTおよびPBTOxTTを含む薄膜トランジスタも、p型の電荷輸送を示すが、正孔移動度は、0.016〜0.033cm2/Vsの範囲であり、移動度の約25〜30%はPSOxTTについて測定された。
【0133】
PSOTT、PSOxTT、PBTOTT、およびPBTOxTTの平均閾値電圧(Vt)は、それぞれ−13.4、−16.0、4.7および−18.2Vであった。これらの4種のポリマーでは、電流変調の量が多かった。デバイスにおいて、オン/オフ比は105より高かった。電気的パラメータが表2にまとめられている。PBTOTTが他のポリマーよりジクロロベンゼンへの溶解性が低いことに留意されたい。制限された溶解性は、他と比較して薄膜の不均一性および正の閾値電圧を招くことがある。
【0134】
空気中のPSOTT薄膜トランジスタの移動度およびVtの安定性も監視し、図16にプロットした。デバイスを空気に曝した後、移動度の初期の約20%の低下があった。デバイスを空気中で48日間保管したとき、移動度はわずかに低下した。空気中の移動度の変化は、調査の期間にわたって12%未満である。閾値電圧は、より著しく影響される傾向があった。Vtの初期の変化はごくわずかであるが、平均閾値電圧は、−13から11Vへと正側に偏移した。デバイスがさらに空気に曝されるとVtの偏移が減少した。
【0135】
PBTOTを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するOFETを作製することによって、PBTOTの電荷輸送特性を調べ、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。PBTOT OFET(ならびにさらに後述される太陽電池)の典型的な出力および伝達特性が図17に示され、結果が表3にまとめられている。
【0136】
【表3】
【0137】
高分子量PBTOT−2を含むトランジスタについて、0.009cm2/V.sの平均正孔移動度(μh)および0.01cm2/V.sの最大正孔移動度が観察された。Ion/Ioff比は106より高く、閾値電圧(Vt)は−5.2Vであった(表3)。
【0138】
吸収スペクトルおよびXRDパターンで明らかであるような、PBTOTのより高い結晶性は、薄膜における良好な電荷輸送を促進する。より低分子量の画分(PBTOT−1)は、0.002cm2/V.sの正孔移動度、105のIon/Ioff比、および−19Vの閾値電圧を有していた。したがって、分子量が8から366kDaに増加されると、正孔移動度が5倍に増加される。より高分子量のポリマーにおける高められた電荷キャリア移動度および全体的により良好なOFET性能は、一つには、鎖末端から生じる欠陥の減少および鎖間相互作用の向上に起因し得る。注目すべきことに、PBTOT−2における観察された0.01cm2/V.sの正孔移動度は、立体規則性P3OT薄膜について報告される(2.0〜13.0)×10−4cm2/V.sよりはるかに高い(Babel,A.;Jenekhe,S.A.Synth.Met.2005,148,169.(b)Zen,A.;Saphiannikova,M.;Neher,D.;Asawapirom,U.;Scherf,U.Chem.Mater.2005,17,781を参照のこと)。
【0139】
周囲条件下でのPBTOT−2デバイスは、顕著な空気安定性を示した(図18)。空気中のPBTOT−2 OFETの平均正孔移動度は0.007cm2/V.sであり、これは111日間不変のままであった。オン/オフ比および閾値電圧は、それぞれ106、および−12Vで同様に非常に良好なままであった。
【0140】
実施例7−コポリマーを含む太陽電池
以下に概略を示すように、本明細書に記載されるポリマーを含む光電池を作製した:まず、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)緩衝層を、インジウム−スズ酸化物(ITO)被覆ガラス基板(10Ω/□、Shanghai B.Tree Tech.Consult Co.,Ltd、Shanghai、China)の上に、4500rpmで40秒間スピンコートすることによって太陽電池を作製し、真空下で、150℃で10分間アニールした。PEDOTの厚さは約40nmであった。
【0141】
American Dye Source Inc.から購入され、入手したままの状態で、個々の実施例に示される割合で、溶媒に溶解させて用いられる[6,6]−フェニル−C71−酪酸メチルエステル(PC71BM)と混合された本明細書に記載されるポリマーを用いて、グローブボックス中で活性層のスピンコーティングを行った。得られた「スピンコートされたままの」膜を、膜のエージングのために覆われたペトリ皿に入れてからホットプレート上でアニールするか、または熱アニールのために直接ホットプレートに入れるか、または真空下で室温で乾燥させる。次に、スピンコートされた膜を含む基板を、陰極の蒸着用の熱蒸着装置に入れた。続いて、1.0nmのLiFおよび100nmのアルミニウム層からなる陰極を、8×10−7トルの真空下で、活性層の上に、シャドーマスクを介して蒸着した。各基板は、4.00mm2の活性領域をそれぞれ有する5画素を含有していた。
【化52】
【0142】
Alpha−Step 500プロフィルメータ(KLA−Tencor、San Jose、CA)で膜厚を測定した。HP4155A半導体パラメータ分析器(横河ヒューレット・パッカード(東京)製)を用いて、太陽電池デバイスの電流−電圧特性を測定した。フィルタ付き(filtered)Xeランプからの1.5AMの太陽光の光強度を、National Renewable Energy Laboratory(NREL)で較正されたSi光ダイオードによって較正した。実験室の周囲空気下で全ての特性決定工程を行った。Perkin−ElmerモデルLambda 900紫外/可視/近赤外分光光度計で紫外−可視吸収スペクトルを記録した。ポリマー/フラーレン膜の吸収スペクトルを太陽電池デバイスから直接測定した。
【0143】
PSOTTを含む太陽電池
4.0mm2の面積を有する光電池を、PSOTT:PC71BMブレンドから作製し、空気中、100mW/cm2のAM1.5の照射下で試験した。PSOTT:PC71BMの活性層を100℃の高温の溶液からスピンコートし、スピンコーティングの直後に膜を室温で真空下で乾燥させた。o−ジクロロベンゼン(ODCB)と1,8−オクタンジチオール(ODT)との混合物(ODCB:ODT=100:2.5v:v)を、スピンコーティングの際の溶媒として用いた。混合膜の吸光度および太陽電池の電流密度−電圧特性が図19に示される。混合膜のポリマーは、585nmにおける主ピークおよび636nmにおける振動ショルダーを有する初期の膜の吸収特性と同様の吸収特性を示し(図1a)、これは、ブレンド中のポリマーの同様の構造を示している。
【0144】
1:2の組成を有するPSOTT:PC71BMブレンドは、1:1のものより優れた性能を示した。1:2の混合組成から得られる短絡電流密度(Jsc)、開回路電圧(Voc)、および曲線因子(FF)は、それぞれ11.8mA/cm2、0.66V、および0.58であり、これにより4.5%の電力変換効率(PCE)が得られる。1:1の組成から得られるPCEは、Jsc=9.88mA/cm2、Voc=0.66V、およびFF=0.59で3.87%である。PC71BM成分による380〜560nmの波長範囲における高められた吸光度(図19a)は、1:2混合膜のより高い効率を説明するものである。
【0145】
PSOxTTを含む太陽電池−膜厚依存性
PSOxTTを供与体として、およびPC71BMを受容体成分として(1:2重量比)用いて、異なる活性層厚さを有する3つのデバイス(デバイスa1〜a3)を作製した。3つのデバイスの吸収スペクトルおよびJ−V曲線が、図20aおよび20bに示される。最も薄い厚さを有するデバイスa1が、Jsc、Voc、FF、およびPCEが、それぞれ7.47mA/cm2、0.58V、0.48、および2.10%で、最良の性能を示す(表4)。
【0146】
【表4】
【0147】
組成依存性
1:2のPSOxTT:PC71BMの比率を有するデバイス(デバイスa3)および1:1の比率を有するデバイス(デバイスb4)を同一条件下で作製したところ、1:1の組成が、1:2の組成より優れた性能を示す。デバイスb4から観察されるJsc、Voc、FF、およびPCEは、それぞれ7.20mA/cm2、0.57V、0.55、および2.46%である。
【0148】
膜のエージング時間およびアニール効果
同じ条件下でスピンコートされるが異なる条件下で乾燥される(表4)PSOxTT:PC71BM=1:1の4つのデバイス(デバイスb1〜b4)を作製し、それらの性能を表4および図21bに示す。最も高い効率は、2.46%の電力変換効率で、エージングを全くしなかったデバイスにおいて得られた。膜のエージング(ゆっくりした乾燥)を示す1:2の組成においても観察される同様の結果(表4、デバイスa1およびデバイスa4)は、PSOxTTの光起電性能には逆効果を与える。これは、熱アニールが光起電性能を大きく高めるP3HT太陽電池の挙動と異なる。
【0149】
PBTOTTを含む太陽電池
1.66%の電力変換効率が、溶媒としてCHCl3を用いて作製されるPBTOTT:PC71BM(1:1)バルクヘテロ接合太陽電池において観察された。暗条件下および100mW/cm2の1.5Amの太陽光照射下でのJ−V曲線が、図22に示される。このデバイスにおいて測定されるJsc、Voc、FF、およびPCEは、それぞれ6.17mA/cm2、0.66V、および0.41である。
【0150】
PBTOTTは、分子量が高いため、室温でオルトジクロロベンゼンに不溶であり、高温のODCB溶液から作製されるデバイスは、膜の乾燥の際にポリマーの凝集のために短くなるため、高温のODCB溶液から作製されるこれらのデバイスでは電流が観察されなかった。
【0151】
PBTOT−1を含む太陽電池
PBTOT−1とPC71BMとのブレンドをベースとするバルクヘテロ接合(BHJ)太陽電池を、ITO/PEDOT:PSS/ブレンド/LiF/Alの層構造を有する光ダイオードにおいて構成した。暗条件下および100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下でのPBTOT−1:PC71BM(1:1)ブレンド太陽電池の電流密度−電圧特性が、図21bに示される。短絡電流密度(Jsc)、開回路電圧(Voc)、曲線因子(FF)、および電力変換効率(PCE)を含む関連する光起電パラメータが、上に示される表3にまとめられている。かなり大きい光電流(7.08mA/cm2)と良好な開回路電圧(0.66V)との組合せが、2.1%のPCEに変換された。
【0152】
より高い分子量の試料であるPBTOT−2は、BHJデバイスを作製するために適度な膜厚(60〜100nm)を達成するほど十分に1,2−ジクロロベンゼンに溶解しなかった。
【0153】
実施例8−式(IIb)のコポリマーの合成−PTBSTT
【化53】
【0154】
重合性チアゾロチアゾール/シリレン−ビチオフェン前駆体の合成:
【化54】
5−ホルミル−3,3’−n−オクチルシリレン−2,2’−ビチオフェン:
窒素雰囲気下で、100mLの三つ口RBフラスコ中0℃で、無水DMF(35mL)の撹拌された溶液に、POCl3(1.03mL、31.27mmol)を5分間にわたって滴下して添加した。添加した後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次に、10mLのDMFに溶解させたジチエノシロール(3.91g、26.06mmol)を、0℃で5分間にわたって滴下して添加した。この溶液を70℃で90分間撹拌し、それを氷水に注いでから、10%のNaOH溶液(20mL)でゆっくりと中和した。得られた混合物を蒸気浴中で20分間加熱した。水層をCHCl3(3×100mL)で抽出した後、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を除去した後、粗混合物を、シリカゲルにおけるクロマトグラフィー(ヘキサン中10%の酢酸エチル)にかけたところ、褐色の油として5−ホルミル−3,3’−n−オクチルシリレン−2,2’−ビチオフェン(1.0g、85%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 9.87(s,1H)、7.71(s,1H)、7.40(d,1H,4.8Hz)、7.12(d,1H,4.8Hz)、1.12〜1.37(m,24H)、0.84〜0.96(m,10H)。M/e 446.78。
【0155】
2,5−ビス−(7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール:
ジチオオキサミド(0.43g、3.58mmol)、1.35gのフェノール、および5−ホルミル−3,3’−n−オクチルシリレン−2,2’−ビチオフェン(3.20g、7.17mmol)を丸底フラスコ中で組み合わせて、油浴中、還流温度で45分間加熱した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中5%の酢酸エチル)によって精製したところ、赤色の固体として2,5−ビス−(7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(0.2g、20%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.52(s,2H)、7.31(d,2H,4.8Hz)、7.09(d,2H,4.8Hz)、1.27〜1.40(m,48H)、0.84〜0.97(m,20H)。m/e=975.72。
【0156】
2,5−ビス−(5−ブロモ−7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール:
CHCl3/AcOH(70/35mL)に溶解させた2,5−ビス−(7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(2.33g、2.39mmol)の溶液に、CHCl3/AcOH(70/35mL)に溶解させたNBS(0.94g、5.25mmol)溶液を滴下して添加し、0℃で2時間撹拌した。次に、反応溶液を室温で一日撹拌した。反応溶液を水で洗浄してから、無水Na2SO4で処理した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中40%のCHCl3)によって精製したところ、赤色の固体としてジブロモ化合物(2.16g、80%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.50(s,2H)、7.05(s,2H)、1.23〜1.34(m,48H)、0.84〜0.96(m,20H)。
【0157】
2,5−ビス(トリメチルスタンニル)チエノ[3,2−b]チオフェン(9):
【化55】
60mLのTHFに溶解させたチエノ[3,2−b]チオフェン(1.2g、8.56mmol)の溶液に、ヘキサン(7.25mL、18.0mmol)に溶解させたn−BuLiの2.5Mの溶液を、N2下で−50℃で滴下して添加した。溶液を−50℃で2時間撹拌し、THFに溶解させた塩化トリメチルスズ(18.9mL、18.8mmol)の1.0Mの溶液を一度に添加した。−50℃で2時間撹拌した後、溶液を室温まで温め、24時間撹拌した。得られた混合物を脱イオン水および100mLのCHCl3に注いだ。有機層を50mLの水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。有機層を蒸発させ、真空で乾燥させたところ、褐色の固体が得られた。次に、固体をEt2Oからの再結晶化によって精製したところ、無色の結晶(0.6g、82%の収率)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):δ 7.26(s,2H)、0.48(s,18H)。
【0158】
ポリ[(チエノ[3,2−b]チオフェン)−2,5−ジイル−alt−(2,5−ビス(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール−2,6−ジイル)チアゾロ[4,4−d]チアゾール](PTBSTT)の合成:
【化56】
無水クロロベンゼン(40mL)に溶解させたジブロモ化合物2,5−ビス−(5−ブロモ−7,7−ジオクチル−7H−3,4−ジチア−7−シラ−シクロペンタ[a]ペンタレン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(600mg、0.53mmol)および二スズ化合物2,5−ビス(トリメチルスタンニル)チエノ[3,2−b]チオフェン(247mg、0.53mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(9.6mg、0.01mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(13mg、0.042mmol)を、2時間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、7.5mLの塩酸を含有する300mLのメタノールに注ぎ、12時間撹拌した。ろ過によって褐色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製したところ;暗褐色の金属固体(560mg、90%)が得られた。
【0159】
ポリマーPTBSTTは、室温でCHCl3に不溶であるが、高温でクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、および1,2,4−トリクロロベンゼンにわずかに溶解できる。希薄なo−ジクロロベンゼン溶液中および薄膜としてのPTBSTTの吸収スペクトルが、図25に示される。溶液中のPTBSTTの吸収スペクトルは、599nmにおける吸収極大および649nmにおけるショルダーを有していた。薄膜は、599nmおよび649nmで吸収極大を同様に示した。649nmにおけるピークは、両方の溶液および固体における強い分子間相互作用を示唆する。649nmにおける吸収ピークは、PTBSTT分子の強いπ−π相互作用に起因する。薄膜の吸収端において測定される光学バンドギャップが1.75eVであることが分かった(図25)。
【0160】
PTBSTT薄膜トランジスタの作製および特性決定:
従来のボトムコンタクト型、ボトムゲート型構造において、PTBSTTを有機半導体として用いた薄膜OFETを作製した。薄いクロム接着層を有する金電極を、二酸化ケイ素で高濃度にドープされたシリコン(tox=200または300nm)基板の上にパターニングした。デバイスのチャネル幅および長さは、それぞれ400または800μmおよび20または40μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中の溶液から疎水的に改質された酸化物にPTBSTTコポリマーをスピンし、次に、得られた薄膜OFETを、不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。
【0161】
OFETの出力および伝達特性が、図26aおよび26bに示される。PTSBTT OFETは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>105)。PTSBTTは、0.024cm2/Vsの最大正孔移動度(図2)および0.018cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PTSBTTの平均閾値電圧(Vt)は−6.4Vであった。
【0162】
実施例9−式(Ia)のコポリマーの合成−ポリ[(4,4’−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PSEHTT)
【化57】
【化58】
【0163】
3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン(9−4):
【化59】
300mLのフラスコ中の削り屑状マグネシウム(magnesium turning)(3.0g、0.12mol)と、無水THF(20mL)と、少量のヨウ素との混合物に、無水THF(35mL)に溶解させた2−エチルヘキシルブロミド(23.5g、0.12mol)の溶液を、N2下で0℃でゆっくりと添加した。1時間還流させた後、溶液を、0℃で500mLのフラスコ中に入れられた3−ブロモチオフェン(15g、0.09mol、(9−3))と、Ni(dppp)Cl2(0.51g、0.001mmol)と、無水THF(35mL)との混合物に滴下して添加した。混合物を室温で一晩撹拌した後、低温のHCl水溶液(2N)を混合物に注ぐことによって反応物を急冷した。生成物をCHCl3で抽出し、無水Mg2SO4上で乾燥させた。溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製したところ、透明の液体として(9−4)(11g、61%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):7.20〜7.22(m,1H)、6.88〜6.90(m,2H)、2.56(d,2H,J=6.9Hz)、1.49〜1.57(m,1H)、1.24〜1.33(m,8H)、0.86〜0.89(m,6H)。
【0164】
2−ブロモ−3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン(9−5):
【化60】
(9−4)(5.3g、26.9mmol)の150mLのTHF溶液に、N−ブロモスクシンイミド(4.8g、26.9mmol)を0℃で何度かに分けて(portionwise)添加し、混合物を、0℃で一晩撹拌した。有機画分を水およびCHCl3で抽出し、NaHCO3水溶液で洗浄し、無水Mg2SO4上で乾燥させた。溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製したところ、無色の液体として(9−5)(6.9g、93%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):7.18(d,1H,J=5.7Hz)、6.76(d,1H,J=5.7Hz)、2.50(d,2H,J=7.2Hz)、1.55〜1.62(m,1H)、1.25〜1.34(m,8H)、0.85〜0.90(m,6H)。
【0165】
3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン−2−カルバルデヒド(9−6):
【化61】
300mLのフラスコ中の削り屑状マグネシウム(0.61g、25.1mmol)と、無水THF(20mL)と、少量のヨウ素との混合物に、無水THF(35mL)に溶解させたブロモチオフェン(9−5)(6.58g、23.9mmol)の溶液を、N2下で0℃でゆっくりと添加した。1時間還流させた後、反応混合物を、N2下で室温で250mLのフラスコ中に移した。DMF(3.24mL、41.9mmol)を、反応混合物に滴下して添加した。混合物を室温で一晩撹拌した後、低温のHCl水溶液(2N)を混合物に注ぐことによって反応物を急冷した。生成物をCHCl3で抽出し、無水Mg2SO4上で乾燥させた。溶離液としてヘキサン/CHCl3(2:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製したところ、無色の油として(9−6)(3.7g、69%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):10.03(s,1H)、7.64(d,1H,J=5.1Hz)、6.98(d,1H,J=5.1Hz)、2.89(d,2H,J=7.2Hz)、1.56〜1.64(m,1H)、1.27〜1.37(m,8H)、0.86〜0.91(m,6H)。
【0166】
2,5−ビス−[3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン−2イル]−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(9−7):
【化62】
ジチオオキサミド(0.95g、7.90mmol)、2.97gのフェノール、および(9−6)(3.54g、15.79mmol)を丸底フラスコ中で組み合わせて、油浴中、還流温度で45分間加熱した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中50%のCHCl3)によって精製したところ、黄色の固体として(9−7)(0.85g、20%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):7.35(d,2H,J=5.1Hz)、6.95(d,2H,J=5.1Hz)、2.93(d,2H,J=7.2Hz)、1.75〜1.77(m,2H)、1.27〜1.43(m,18H)、0.85〜0.92(m,12H)。(ESIモード):実測値M+1、531.3。所要値(requires)530.8。
【0167】
2,5−ビス−[5−ブロモ−3−(2−エチル−ヘキシル)−チオフェン−2イル]−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(9−8):
【化63】
CHCl3/AcOH(20/10mL)に溶解させた(9−7)(0.71g、1.34mmol)の溶液に、CHCl3/AcOH(20/10mL)に溶解させたNBS(0.53g、2.95mmol)溶液を滴下して添加し、0℃で2時間撹拌した。次に、反応溶液を、室温で24時間撹拌した。反応溶液を水で洗浄してから、無水Na2SO4で処理した。粗生成物をシリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中40%のCHCl3)によって精製したところ、黄色の固体として(9−8)(0.80g、87%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):6.91(s,2H)、2.84(d,2H,J=7.5Hz)、1.73(bs,2H)、1.29〜1.43(m,18H)、0.87〜0.98(m,12H)。(ESIモード):実測値M+1、688.9。所要値688.7。
【0168】
2,5−ビス−[3−(2−エチル−ヘキシル)−5−トリメチルスタンニル−チオフェン−2イル]−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(9−1):
【化64】
40mLのTHFに溶解させた(9−8)(0.62g、0.9mmol)の溶液に、ヘキサン(0.89mL、2.23mmol)に溶解させたn−BuLiの2.5Mの溶液を−78℃で滴下して添加した。溶液を−78℃で2時間撹拌し、THFに溶解させた塩化トリメチルスズ(2.67mL、2.68mmol)の1.0Mの溶液を一度に添加した。溶液を室温まで温め、50mLの水および50mLの酢酸エチルを添加した。有機層を50mLの水で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。有機層を蒸発させ、真空で乾燥させたところ、黄色の固体(0.62g、82%の収率)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):6.99(s,2H)、2.93(d,4H,J=7.2Hz)、1.77(bs,2H)、1.26〜1.37(m,16H)、0.87〜0.91(m,12H)、0.41(s,18H)。(ESIモード):実測値M+1、889.3、所要値888.5。
【0169】
ポリ[(4,4’−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PSEHTT):
【化65】
無水クロロベンゼン(53mL)に溶解させたジスタンニル化合物(9−1)(0.63g、0.73mmol)およびジブロモ化合物(9−2)(421mg、0.73mmol)および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(13mg、0.02mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(7mg、0.06mmol)を、80℃で1日加熱した。次に、加熱を50℃に下げた。反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノール、ヘキサンおよびジクロロメタンによるソックスレー抽出によってさらに精製したところ、暗褐色の固体PSEHTT(530mg、77%)が得られた。1H NMR(CDCl3、300MHz、ppm):6.50〜7.45(bs,4H)、2.83(bs,4H)、0.4〜2.1(m,64H)。
【0170】
PSEHTTのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、3.94の多分散性指数(PDI)とともに、33.9kg/molの数平均分子量(Mn)が示された。PSEHTTは、室温でクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの一般的な有機溶媒への溶解性が高い。例えば、PSEHTTは、室温で1,2−ジクロロベンゼンに10mg/mLで溶解できる。図27は、希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPSEHTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が582および623nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、579nmにおける吸収極大および624nmにおけるショルダーを示した。膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.82eVである。サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図示せず)から、PSEHTTのHOMOレベルを推定した。酸化の開始は、0.65V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOレベルが5.05eVであることを計算することができる。
【0171】
PSEHTTを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するOFETを作製することによって、PSEHTTの電荷輸送特性を調べ、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。PBTOT OFETの典型的な出力および伝達特性が、図28aおよび28bに示される。
【0172】
PSEHTTを含むトランジスタについて、0.016cm2/V.sの平均正孔移動度(μh)が観察された。Ion/Ioff比は105より高く、閾値電圧(Vt)は−4.0Vであった。
【0173】
PSEHTTを含む太陽電池
PSEHTTおよびPC71BMの1:2ブレンドを含む光電池を、実施例7に概説されるように作製した。PSEHTT:PC71BMブレンドの高温の溶液から膜をスピンコートし、溶媒は、o−ジクロロベンゼン(ODCB)と1,8−オクタンジチオール(ODT)との混合物であった。混合膜を、室温で一定の時間、真空下で乾燥させた。ガラス/ITO/PEDOT基板上の紫外−可視吸収スペクトルPSEHTT:PC71BM(1:2)混合膜が、図29aに示される。100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPSEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線が、図29bに示される。12.60mA/cm2の電流密度、0.65Vの開回路電圧および0.61の曲線因子とともに、5.03%の電力変換効率が、PSEHTT:PC71BM太陽電池において得られる。
【0174】
実施例10−式(Ia)のコポリマーの合成−ポリ[(4,4’−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)−4H−シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PCPEHTT)
【化66】
無水クロロベンゼン(50mL)に溶解させた上記のジスタンニル化合物(9−1)(0.61g、0.71mmol)およびジブロモ化合物(10−1)(0.40mg、0.71mmol)および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(13mg、0.014mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(17mg、0.06mmol)を、3日間、還流で加熱した。次に、加熱を50℃に下げた。反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって黒色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製したところ、PCPEHTT(170mg、27%)が得られた。
【0175】
PCPEHTTは、室温でクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの一般的な有機溶媒への溶解性が高い。図30aは、希薄なクロロホルム溶液中および薄膜としてのPCPEHTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が562nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、568nmで吸収極大を示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.85eVである。サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果(図30b)から、PCPEHTTのHOMOレベルを推定した。酸化の開始は、0.61(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOレベルが5.01eVであることが計算される。
【0176】
PCPEHTTを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200または300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するOFETを作製することによって、PSEHTTの電荷輸送特性を調べ、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400または800μmであり、長さは20または40μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。1,2−ジクロロベンゼン(ODCB)中の溶液から疎水的に改質された酸化物にポリマーをスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PCPEHTT OFETの典型的な出力および伝達特性が、図31aおよび31bに示される。
【0177】
PCPEHTTを含むトランジスタについて、0.0033cm2/V.sの平均正孔移動度(μh)が観察された。Ion/Ioff比は104より高く、閾値電圧(Vt)は−21.8Vであった。
【0178】
PCPEHTTを含む太陽電池
PCPEHTTとPC71BMとの1:2ブレンドを含む光電池を、実施例7に概説されるように作製した:ガラス/ITO/PEDOT基板上の紫外−可視吸収スペクトルPCPEHTT:PC71BM(1:2)混合膜が、図32aに示される。100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPCPEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線が、図32bに示される。PCPEHTT:PC71BM(1:2)太陽電池において得られる電流密度(Jsc)、開回路電圧(V)、および曲線因子(FF)は、それぞれ6.90mA/cm2、0.785V、および0.47であり、これにより2.56%の電力変換効率が得られる。
【0179】
実施例11−式(Ia)のコポリマーの合成−ポリ[(9−[3−エチル−1−(2−エチル−ヘキシル)−ヘプチル]−9H−カルバゾール)−2,7−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)](PCEHTT):
【化67】
三つ口フラスコに、カルバゾールジボロン酸ジエステル11−1(0.5g、0.76mmol)、ジブロモ化合物11−2(0.52g、0.76mmol)、Aliquat 336(70mg)、およびトルエン(28mL)を添加した。2種のモノマーが溶解したら、2Mの炭酸ナトリウム水溶液(10mL)を添加した。次に、凝縮器を備えたフラスコを排気し、数回窒素で満たして、空気を完全に除去した。次に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4、(18mg、0.015mmol)を添加し、混合物をアルゴン下で、105℃で72時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷まし、有機層を分離させ、水で洗浄し、メタノール中に沈殿させた。コポリマー試料をろ過し、過剰なメタノールで洗浄し、乾燥させ、アセトンによるソックスレー抽出によって2日間精製したところ、暗褐色の固体(375mg、57%)が得られた。より高い分子量を除去するために、クロロホルムによるソックスレー抽出によってポリマーをさらに精製したところ、暗褐色の固体(106mg)が得られた。
【0180】
PCEHTTは、室温でクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの多くの一般的な有機溶媒に溶解できる。溶液における可視光の吸収極大は、506nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは赤方偏移しており、519〜660nmの広い吸収極大を示した。膜の吸収端において測定される光学バンドギャップが1.84eVであることが計算された。
【0181】
薄膜トランジスタの作製および特性決定:
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200〜300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するPCEHTTベースのトランジスタを作製し、それを試験し、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400〜1000μmであり、長さは20〜100μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。ポリマー溶液を基板上にスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PCEHTT OFETの典型的な出力および伝達特性が、図33aおよび33bに示される。
【0182】
PCEHTTは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>104)。PCEHTTは、0.0022cm2/Vsの最大正孔移動度および0.0018cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PCEHTTの平均閾値電圧(Vt)は−24.0Vであった。
【0183】
PCEHTTの太陽電池の作製および試験:
PCEHTTを供与体として、およびPC71BMを受容体成分として用いた太陽電池を作製した。PCEHTT:PC71BMブレンド(1:2 wt:wt)活性層を、PEDOT:PSS被覆ITO基板上にスピンコートした後、1nmのLiFおよび100nmのAlからなる陰極を熱蒸着装置中で蒸着することによって、太陽電池を作製した。6mg/mlのPCEHTTクロロホルム溶液を、60mg/mlのPC71BM ODCB溶液と撹拌しながら混合することによって、PCEHTT:PC71BMブレンド溶液を作製した。活性層のスピンコーティングをグローブボックス中で行い、膜を180℃で10分間アニールした。太陽電池は、9mm2の活性領域を有していた。暗条件下および照射下で測定されるPCEHTT:PC71BM(1:2 wt:wt)太陽電池の電流密度−電圧(J−V)曲線が、図34に示される。それぞれ5.96mA/cm2、0.68V、および0.42の電流密度(Jsc)、開回路電圧(V)、および曲線因子(FF)とともに、1.70%のピーク電力変換効率(PCE)が、この太陽電池において得られる。
【0184】
実施例12−式(Ia)のコポリマーの合成−ポリ(3−オクチルオキシチオフェン−2−イル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)−2,6−ジイル−alt−(2,5−ビス(3−オクチルチオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)PBDOTT:
【化68】
【0185】
合成手順:
無水クロロベンゼン(40mL)に溶解させたジスタンニル化合物12−1(0.5g、0.58mmol)およびジブロモ化合物12−2(0.35mg、0.58mmol)および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(11mg、0.06mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(14mg、0.12mmol)を、120℃で3日間加熱した。次に、加熱を50℃に下げた。反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって褐色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。
【0186】
PBDOTTは、高温(60〜180℃)でもクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの有機溶媒に溶解できない。PBDOTTは、非常に高い温度(200℃)で1,2,4−トリクロロベンゼンに部分的に溶解できる。1,2,4−トリクロロベンゼン(約10−5M)溶液における吸収極大は、542および587nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは、538nmおよび583nmで吸収極大を示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.91eVである。
【0187】
薄膜トランジスタの作製および特性決定:
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200〜300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するPBDOTTベースのトランジスタを作製し、それを試験し、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400〜1000μmであり、長さは20〜100μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。ポリマー溶液を基板上にスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PBDOTTは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>104)。PBDOTTは、0.00026cm2/Vsの最大正孔移動度および0.00026cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PBDOTTの平均閾値電圧(Vt)は−3.4Vであった。
【0188】
実施例13−式(Ib)のコポリマーの合成−ポリ[(4,8−ジ(2−ブチルオクチルオキシ)ベンゾ[1,2−b;d,4−b]ジチオフェン)−2,6’−ジイル−alt−(2,5−ビス(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール−2,6−ジイル)チアゾロ[4,4−d]チアゾール](PSDTTT):
【化69】
【0189】
コモノマー13−2の合成:
以下に示されるコモノマー13−2の合成が、全体が本明細書に援用される文献、Huo,L.;Hou,J.;Chen,H.Y.;Zhang,S.;Jiang,Y.;Chen,T.L.;Yang,Y.Macromolecules 2009,42,6564に報告されている。
【化70】
【化71】
【0190】
ポリ[(4,8−ジ(2−ブチルオクチルオキシ)ベンゾ[1,2−b;d,4−b]ジチオフェン)−2,6’−ジイル−alt−(2,5−ビス(4,4’−ビス(2−オクチル)ジチエノ[3,2−b:”,3’−d]シロール−2,6−ジイル)チアゾロ[4,4−d]チアゾール](PSDTTT)ポリマーの合成
【化72】
無水クロロベンゼン(23mL)に溶解させたジスタンニル化合物2(0.26g、0.30mmol)およびジブロモ化合物1(0.33mg、0.30mmol)および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(5mg、0.06mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(7mg、0.2mmol)を、80℃で36時間加熱した。次に、加熱を50℃に下げた。反応混合物を、5mLの塩酸を含有する200mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって褐色の沈殿物を収集し、メタノールおよびヘキサンによるソックスレー抽出によってさらに精製した。PSDTTTは、室温でクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの一般的な有機溶媒に溶解できる。
【0191】
PSDTTTは、可視領域における広い吸収とともに優れた膜形成特性および機械的強度を有する。図34は、希薄なクロロホルム(約10−5M)中および薄膜としてのPSDTTTの吸収スペクトルを示す。溶液の吸収極大が571および614nmであることが分かった。平滑な光沢感のある金色の薄膜の吸収スペクトルは、576nmおよび618nmで吸収極大を示した。薄膜の吸収端から測定される光学バンドギャップは、1.77eVである。
【0192】
PSDTTTを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200〜300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するPSDTTTベースのトランジスタを作製し、それを試験し、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400〜1000μmであり、長さは20〜100μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。ポリマー溶液を基板上にスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PSDTTT OFETの典型的な出力および伝達特性が、図35aおよび35bに示される。PSDTTTは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>104)。PSDTTTは、0.0088cm2/Vsの最大正孔移動度および0.0085cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PSDTTTの平均閾値電圧(Vt)が−23.3Vであった。
【0193】
PSDTTTの太陽電池の作製および試験:
フラーレン誘導体PC71BMを受容体成分として用いたバルクヘテロ接合太陽電池を作製することによって、PSDTTTの光起電特性を評価した。ODCB中の6mg/mlのPSDTTT溶液およびODCB中の60mg/mlのPC71BM溶液を撹拌しながら混合することによって、PSDTTT:PC71BM(1:2 wt:wt)ブレンド溶液の溶液を調製した。PSDTTT:PC71BMブレンド(1:2 wt:wt)層を、PEDOT:PSS被覆ITO基板上にスピンコートした後、1nmのLiFおよび100nmのAlからなる陰極を熱蒸着装置中で蒸着することによって、太陽電池を作製した。活性層のスピンコーティングをグローブボックス中で行い、膜を180℃で10分間アニールした。太陽電池は、9mm2の活性領域を有していた。暗条件下および照射下で測定されるPSDTTT:PC71BM(1:2 wt:wt)太陽電池の電流密度−電圧(J−V)曲線が、図36に示される。それぞれ9.47mA/cm2、0.73V、および0.62の電流密度(Jsc)、開回路電圧(V)、および曲線因子(FF)とともに、4.3%のピーク電力変換効率(PCE)が、この太陽電池において得られる。
【0194】
実施例14−ポリ(2,5−ビス(3−(2−エチル−ヘキシル)チオフェン−2イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)ビニレン](PTTEHV)の合成:
【化73】
PTTEHVの合成:
無水クロロベンゼン(40mL)に溶解させた二スズ化合物14−22(426mg、0.7mmol)およびジブロモ化合物14−1(0.48mg、0.7mmol)、および触媒トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(13mg、0.01mmol)およびトリ−o−トリルホスフィン(17mg、0.05mmol)を60℃で2時間加熱した。次に、加熱を50℃に下げ;反応混合物を、7.5mLの塩酸を含有する300mLのメタノールに注ぎ、5時間撹拌した。ろ過によって褐色の沈殿物を収集し、メタノール、ヘキサン、ジクロロメタンおよびクロロホルムによるソックスレー抽出によってさらに精製した。クロロホルム画分を蒸発させたところ、暗褐色の固体(115mg、38%)が得られた。
【0195】
PTTEHVは、室温でクロロホルム溶液に溶解でき、100℃でクロロベンゼンおよびジクロロベンゼンに溶解できる。希薄なCHCl3(約10−5M)の溶液における吸収極大が536nmであることが分かった。薄膜の吸収スペクトルは赤方偏移しており、579および629nmで広い吸収極大を示した。膜の吸収端において測定される光学バンドギャップが1.80eVであることが計算された。サイクリックボルタンメトリー(CV)の結果から、PTTEHVのHOMOレベルを推定した。酸化および還元の開始は、1.0Vおよび−0.87V(対SCE)であり、これにより、ポリマーのHOMOおよびLUMOレベルが5.4および3.5eVであることが計算される。ポリマーPCPEHTTの電気化学バンドギャップは1.87eVである。
【0196】
PTTEHVを含むトランジスタ
シリコン(ゲート)および二酸化ケイ素(誘電体、tox=200〜300nm)基板の上に、従来のボトムコンタクト型およびボトムゲート型構造を有するPTTEHVベースのトランジスタを作製し、それを試験し、金ソース/ドレイン電極をパターニングした。デバイスのチャネル幅は400〜1000μmであり、長さは20〜100μmであった。二酸化ケイ素の表面を清浄化し、オクチルトリクロロシラン(OTS8)で処理した。ポリマー溶液を基板上にスピンした。次に、薄膜を不活性雰囲気下で、200℃で10分間アニールした。窒素で満たしたドライボックス中でデバイスを試験した。飽和領域における金属−酸化物半導体電界効果トランジスタのための標準式:Ids=(μCoW/2L)(Vg−Vt)2を用いて電気的パラメータを計算した。PTTEHV OFETの典型的な出力および伝達特性が、図38aおよび38bに示される。PTTEHVは、大きな電流変調を有するp型特性を示した(Ion/Ioff>104)。PTTEHVは、0.0087cm2/Vsの最大正孔移動度および0.0078cm2/Vsの平均正孔移動度を有していた。PTTEHVの平均閾値電圧(Vt)は−19.0Vであった。
【0197】
PTTEHVの太陽電池の作製および試験:
PTTEHVを供与体として、およびPC71BMを受容体成分として用いた太陽電池を作製した。PEDOT:PSS被覆ITO基板の上に、クロロホルム中のPTTEHV:PC71BM(1:2 wt:wt)ブレンド溶液から太陽電池の活性層をスピンコートした。1nmのLiFおよび100nmのAlからなる陰極を熱蒸着装置中で蒸着することによって、太陽電池デバイスを仕上げた。活性層のスピンコーティングをグローブボックス中で行い、膜を180℃で10分間アニールした。太陽電池は、9mm2の活性領域を有していた。
【0198】
図39aは、ガラス/ITO/PEDOT基板上のPTTEHV:PC71BM(1:2)混合膜の光吸収スペクトルを示す。図39bは、100mW/cm2のAM1.5の太陽光照射下および暗条件下でのPTTEHV:PC71BM(1:2)太陽電池デバイスの電流密度−電圧曲線を示す。4.31mA/cm2のJsc、0.63VのVoc、および0.32のFFとともに、0.87%の電力変換効率での性能が、PTTEHV:PC71BM(1:2)バルクヘテロ接合太陽電池において観察された。
【0199】
結論
上記の明細書、実施例およびデータは、本発明の様々な組成物およびデバイスの製造および使用、ならびにそれらの製造および使用のための方法の例示的な説明を提供する。これらの開示内容を考慮して、当業者は、本明細書に開示され、権利請求される本発明の多くのさらなる実施形態が明らかであること、およびそれらが開示され、権利請求される本発明の範囲内にあることを想像できるであろう。以下に添付される特許請求の範囲は、それらの実施形態の一部を規定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】
(式中、
a)nが、2以上の正の整数であり、
b)n1が、1、2、3、または4であり、
c)各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され;
d)Aが、以下の構造のうちの1つを有し、
【化2】
式中、各R2が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され;
e)Dが、以下の構造のうちの1つを有し、
【化3】
式中、各R3が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され、R4が、C1〜C18の任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、またはフェニルである)
を含むコポリマー。
【請求項2】
Aが、以下の構造:
【化4】
を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
Aが、以下の構造:
【化5】
を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
Dが、以下の構造:
【化6】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
Dが、以下の構造:
【化7】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
Dが、以下の構造:
【化8】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
Dが、以下の構造:
【化9】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
Dが、以下の構造:
【化10】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
Dが、以下の構造:
【化11】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項10】
Dが、以下の構造:
【化12】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項11】
Dが、以下の構造:
【化13】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項12】
Dが、以下の構造:
【化14】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項13】
R1、R3およびR4の各々が、独立して、n−アルキル、n−アルコキシ、またはn−チオアルキルから選択されるC4〜C12の有機基から選択され、各R2が、独立して、水素、フッ化物、シアノ、あるいはn−アルキル、n−アルコキシ、またはn−チオアルキルから選択されるC4〜C12の有機基から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項14】
以下の構造:
【化15】
(式中、R1およびR3が、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドである)
を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項15】
以下の構造:
【化16】
(式中、R1およびR3が、C4〜C12の分枝状アルキルである)
を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項16】
以下の構造:
【化17】
(式中、R1およびR3が、C4〜C12の分枝状アルキルである)
を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項17】
以下の構造:
【化18】
(式中、R1およびR3が、独立して、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドであり、R2が、水素、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドである)
を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の1つ以上のコポリマーを含む電子デバイス。
【請求項19】
トランジスタである、請求項18に記載の電子デバイス。
【請求項20】
少なくとも約150℃の温度で熱アニールされた、請求項19に記載のトランジスタ。
【請求項21】
太陽電池である、請求項18に記載の電子デバイス。
【請求項22】
前記1つ以上のコポリマーを含む活性層であって、高温の溶媒から塗布され、前記コポリマーを付着させた直後に真空下で乾燥される活性層を含む、請求項21に記載の太陽電池。
【請求項23】
請求項1〜17の少なくとも1つのポリマーと、1つ以上の電子求引性材料とを含む組成物。
【請求項24】
前記電子求引性材料が、フェニル−[6,6]−C−61−酪酸メチルエステル(PC61BM)およびフェニル−[6,6]−C−71−酪酸メチルエステル(PC71BM)から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
太陽放射を電気エネルギーに変換するためのデバイスであって、
a)以下の構造:
【化19】
(式中、
i)nが、2以上の正の整数であり、
ii)n1が、1、2、3、または4であり、
iii)各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され;
iv)Aが、以下の構造のうちの1つを有し、
【化20】
式中、各R2が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択される)
を含む少なくとも1つのコポリマーと;
b)少なくとも1つの電子受容体材料と
を含む組成物を含むデバイス。
【請求項26】
Aが、以下の構造:
【化21】
を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
Aが、以下の構造:
【化22】
を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
Aが、以下の構造:
【化23】
を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
前記電子受容体材料が、炭素の同素体の誘導体である、請求項25〜28のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記電子受容体材料が、フラーレン化合物の誘導体である、請求項25〜28のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記電子受容体材料が、PC61BMまたはPC71BMである、請求項25〜28のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項1】
以下の構造:
【化1】
(式中、
a)nが、2以上の正の整数であり、
b)n1が、1、2、3、または4であり、
c)各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され;
d)Aが、以下の構造のうちの1つを有し、
【化2】
式中、各R2が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され;
e)Dが、以下の構造のうちの1つを有し、
【化3】
式中、各R3が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され、R4が、C1〜C18の任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、またはフェニルである)
を含むコポリマー。
【請求項2】
Aが、以下の構造:
【化4】
を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
Aが、以下の構造:
【化5】
を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
Dが、以下の構造:
【化6】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
Dが、以下の構造:
【化7】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
Dが、以下の構造:
【化8】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
Dが、以下の構造:
【化9】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
Dが、以下の構造:
【化10】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
Dが、以下の構造:
【化11】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項10】
Dが、以下の構造:
【化12】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項11】
Dが、以下の構造:
【化13】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項12】
Dが、以下の構造:
【化14】
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項13】
R1、R3およびR4の各々が、独立して、n−アルキル、n−アルコキシ、またはn−チオアルキルから選択されるC4〜C12の有機基から選択され、各R2が、独立して、水素、フッ化物、シアノ、あるいはn−アルキル、n−アルコキシ、またはn−チオアルキルから選択されるC4〜C12の有機基から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項14】
以下の構造:
【化15】
(式中、R1およびR3が、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドである)
を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項15】
以下の構造:
【化16】
(式中、R1およびR3が、C4〜C12の分枝状アルキルである)
を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項16】
以下の構造:
【化17】
(式中、R1およびR3が、C4〜C12の分枝状アルキルである)
を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項17】
以下の構造:
【化18】
(式中、R1およびR3が、独立して、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドであり、R2が、水素、C4〜C12のn−アルキルまたはn−アルコキシドである)
を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の1つ以上のコポリマーを含む電子デバイス。
【請求項19】
トランジスタである、請求項18に記載の電子デバイス。
【請求項20】
少なくとも約150℃の温度で熱アニールされた、請求項19に記載のトランジスタ。
【請求項21】
太陽電池である、請求項18に記載の電子デバイス。
【請求項22】
前記1つ以上のコポリマーを含む活性層であって、高温の溶媒から塗布され、前記コポリマーを付着させた直後に真空下で乾燥される活性層を含む、請求項21に記載の太陽電池。
【請求項23】
請求項1〜17の少なくとも1つのポリマーと、1つ以上の電子求引性材料とを含む組成物。
【請求項24】
前記電子求引性材料が、フェニル−[6,6]−C−61−酪酸メチルエステル(PC61BM)およびフェニル−[6,6]−C−71−酪酸メチルエステル(PC71BM)から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
太陽放射を電気エネルギーに変換するためのデバイスであって、
a)以下の構造:
【化19】
(式中、
i)nが、2以上の正の整数であり、
ii)n1が、1、2、3、または4であり、
iii)各R1が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択され;
iv)Aが、以下の構造のうちの1つを有し、
【化20】
式中、各R2が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、あるいは任意選択により置換される直鎖または分枝状アルキル、アルコキシ、またはチオアルキルから選択されるC1〜C18の有機基から選択される)
を含む少なくとも1つのコポリマーと;
b)少なくとも1つの電子受容体材料と
を含む組成物を含むデバイス。
【請求項26】
Aが、以下の構造:
【化21】
を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
Aが、以下の構造:
【化22】
を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
Aが、以下の構造:
【化23】
を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
前記電子受容体材料が、炭素の同素体の誘導体である、請求項25〜28のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記電子受容体材料が、フラーレン化合物の誘導体である、請求項25〜28のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記電子受容体材料が、PC61BMまたはPC71BMである、請求項25〜28のいずれか一項に記載のデバイス。
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図15a】
【図15b】
【図17a】
【図17b】
【図26a】
【図26b】
【図28a】
【図28b】
【図31a】
【図31b】
【図33a】
【図33b】
【図36a】
【図36b】
【図38a】
【図38b】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図29】
【図30】
【図32】
【図34】
【図35】
【図37】
【図39】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図15a】
【図15b】
【図17a】
【図17b】
【図26a】
【図26b】
【図28a】
【図28b】
【図31a】
【図31b】
【図33a】
【図33b】
【図36a】
【図36b】
【図38a】
【図38b】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図29】
【図30】
【図32】
【図34】
【図35】
【図37】
【図39】
【公表番号】特表2013−509474(P2013−509474A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535790(P2012−535790)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066179
【国際公開番号】WO2011/051292
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066179
【国際公開番号】WO2011/051292
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】
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