説明

チアゾール誘導体を含む水性組成物

【課題】澄明かつ安定で長期保存可能な、特定チアゾール誘導体を含む水性組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明は、式(I):
−NH−X−Y−Z (I)
(式中、各記号は上記で定義した通りである)
のチアゾール誘導体またはその製薬的に許容される塩および、ポリオール、糖、糖アルコール、ホウ酸またはその塩、および水からなる群から選択される添加物を含む水性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のチアゾール誘導体を含む水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管接着タンパク質−1(以降VAP−1と省略する)は、ヒト血漿中に豊富に存在するアミンオキシダーゼ(セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ、SSAO)であり、炎症部位の血管内皮および血管平滑筋中での発現が顕著な増加を示す。VAP−1の生理的な役割は最近まで解明されていないが、VAP−1遺伝子が1998年にクローン化され、また、VAP−1は、炎症性サイトカインによる発現の制御下で、接着分子としてリンパ球およびNK細胞のローリングおよびマイグレーションを制御する膜タンパク質であることが報告されている。基質となるアミンは未知であるが、生体内の任意の部位で生成したメチルアミンであると考えられる。分子中のアミンオキシダーゼ活性に起因して生じる過酸化水素およびアルデヒドが、接着活性の重要な因子であることもまた知られている。
【0003】
以下の式(A)に示すチアゾール誘導体またはその製薬的に許容される塩はVAP−1阻害剤として有用である(2004年12月23日発行の米国特許第20040259923A1号明細書。引用によりその内容を本明細書に組み入れる。):
−NH−X−Y−Z (A)
[式中、
はアシルであり;
Xは置換されていてもよいチアゾールから誘導された二価の残基であり;
Yは結合、低級アルキレン、低級アルケニレンまたは−CONH−であり;
Zは式:
【化1】

(式中、Rは式:−A−B−D−E
(式中、Aは結合、低級アルキレン、−NH−または−SO−であり;
Bは結合、低級アルキレン、−CO−または−O−であり;
Dは結合、低級アルキレン、−NH−または−CHNH−であり;
E保護されていてもよいアミノ、−N=CH
【化2】

(式中、Qは−S−または−NH−であり、;
は水素、低級アルキル、低級アルキルチオまたは−NH−R
(式中、Rは水素、−NHまたは低級アルキルである)である)である)の基である)の基である]。
【0004】
通常、注射用製剤、点眼用製剤などのような水性製剤を調製する際、溶液の浸透圧を調整するために塩化ナトリウムを加える。しかし、上記のチアゾール誘導体を含む水性組成物を調製する場合、溶液中に塩化ナトリウムが存在すると、チアゾール誘導体の溶解度が低下し誘導体が沈殿するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第20040259923A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、澄明かつ安定で長期保存可能な、特定チアゾール誘導体を含む水性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、
[1]式(I):
−NH−X−Y−Z (I)
[式中、Rはアシルであり;
Xは置換されていてもよいチアゾールから誘導された二価の残基であり;
Yは結合、低級アルキレン、低級アルケニレンまたは−CONH−であり;
Zは式:
【化3】

(式中、Rは式:−A−B−D−E
(式中、Aは結合、低級アルキレン、−NH−または−SO−であり;
Bは結合、低級アルキレン、−CO−または−O−であり;
Dは結合、低級アルキレン、−NH−または−CHNH−であり、但し、Bが−CO−または−O−である場合、Dは結合ではない;
Eは保護されていてもよいアミノ、−N=CH
【化4】

(式中、Qは−S−または−NH−であり;
は水素、低級アルキル、低級アルキルチオまたは−NH−R
(式中、Rは水素、−NHまたは低級アルキルである)である)である)の基である)の基である]
の化合物(以後、化合物(I)とも称する)またはその製薬的に許容される塩、および、ポリオール、糖、糖アルコール、ホウ酸またはその塩、水からなる群から選択される添加物を含む水性組成物。
[2]化合物(I)またはその製薬的に許容される塩のZが、式:
【化5】

[式中、Rは式:
【化6】

(式中、Gは結合、−NHCOCH−または低級アルキレンであり、Rは水素、−NHまたは低級アルキルである)
の基、−NH、−CHNH、−CHONH、−CHON=CH
【化7】

である]の基である、[1]に記載の組成物。
[3]化合物(I)またはその製薬的に許容される塩のRが、式:
【化8】

[式中、Gは結合、−NHCOCH−または低級アルキレンであり、Rは水素または低級アルキルである]
の基、−CHNH、−CHONH、−CHON=CH
【化9】

である、[2]に記載の組成物。
[4]化合物(I)またはその製薬的に許容される塩のRがアルキルカルボニルであり、Xがメチルスルホニルベンジルで置換されていてもよいチアゾールから誘導された二価の残基である、[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]化合物(I)またはその製薬的に許容される塩において、該化合物(I)が、
N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、
N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−5−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、
N−{4−[2−(4−{[ヒドラジノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−5−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、
N−{4−[2−(4−{[ヒドラジノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、または
N−(4−{2−[4−(2−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}エチル)フェニル]エチル}−1,3−チアゾール−2−イル)アセトアミド
である、[1]に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[発明の詳細な説明]
本明細書の上記および下記の記載において、本発明の範囲に含まれるべき種々の定義の適切な例および説明を、以下に詳細に説明する。
【0009】
適切な「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。
【0010】
「低級」なる用語は、他に定めない限り、1から6個の、好ましくは1から4個の炭素原子を有する基を意図するのに用いられる。
【0011】
適切な「低級アルキル」には、1から6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、tert−ペンチルおよびヘキシルが含まれ、なかでもより好ましいものはC−Cアルキルである。
【0012】
適切な「低級アルキルチオ」には、上記低級アルキルを含む低級アルキルチオ、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、tert−ペンチルチオおよびヘキシルチオが含まれる。
【0013】
適切な「低級アルキレン」には、1から6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン、エチリデンおよびプロピリデンが含まれ、なかでもより好ましいものはC−Cアルキレンである。
【0014】
適切な「低級アルケニレン」には、2から6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケニレン、例えば、−CH=CH−、−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−、−CH−CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH=CH−CH−CH−および−CH=CH−CH=CH−CH=CH−が含まれ、なかでもより好ましいものはC−Cアルケニレンである。
【0015】
上記低級アルケニレンは、それぞれE体またはZ体であってもよい。従って、当業者は、低級アルケニレンが2個またはそれ以上の二重結合を有する場合は、低級アルケニレンが全てのE−構造およびZ−構造を含むことを理解するであろう。
【0016】
適切な「アリール」には、C−C10アリール、例えば、フェニルおよびナフチルが含まれ、なかでもより好ましいものはフェニルである。当該「アリール」は1から3個の置換基で置換されていてもよく、置換位置は特に限定されない。
【0017】
適切な「アラルキル」には、アリール部位が6から10個の炭素原子を有し(すなわち、アリール部位が上記「アリール」のC−C10アリールである)、かつアルキル部位が1から6個の炭素原子を有する(すなわち、アルキル部位が上記「低級アルキル」のC−Cアルキルである)アラルキル、例えば、ベンジル、フェネチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチルおよび5−フェニルペンチルが含まれる。
【0018】
「保護されていてもよいアミノ」は、アミノ基が、自体公知の方法、例えば、John Wiley and Sonsにより刊行されたProtective Groups in Organic Synthesis(1980年)に記載の方法などに従って、適切な保護基で保護されていてもよいことを意味する。適切な「保護基」には、tert−ブトキシカルボニル(すなわち、Boc)、後述のアシル基、置換または非置換のアリール(低級)アルキリデン(例えば、ベンジリデン、ヒドロキシベンジリデンなど)、モノ−、ジ−またはトリフェニル(低級)アルキルなどのアリール(低級)アルキル(例えば、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチルなど)などが含まれる。
【0019】
適切な「保護されていてもよいアミノ」には、アミノおよびtert−ブトキシカルボニルアミノ(すなわち、−NHBoc)が含まれる。
【0020】
適切な「複素環」には、「芳香族複素環」および「非芳香族複素環」が含まれる。
【0021】
適切な「芳香族複素環」には、炭素原子に加えて窒素、酸素および硫黄原子から選択される1から3個のヘテロ原子を含む5から10員の芳香族複素環が含まれ、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどが含まれる。
【0022】
適切な「非芳香族複素環」には、炭素原子に加えて窒素、酸素および硫黄原子から選択される1から3個のヘテロ原子を含む5から10員の非芳香族複素環が含まれ、例えば、ピロリジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキソラン、オキサゾリジン、チアゾリジン、トリアゾリジンなどが含まれる。
【0023】
適切な「アシル」には、1から20個の炭素原子を有するアシル、例えば、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニルおよびアラルキルオキシカルボニルが含まれる。
【0024】
適切な「アルキルカルボニル」には、アルキル部位が1から6個の炭素原子を有する(すなわち、アルキル部位が上記「低級アルキル」のC−Cアルキルである)アルキルカルボニル、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイルおよびヘプタノイルが含まれ、なかでもより好ましいものはC−Cアルキル−カルボニルである。
【0025】
適切な「アリールカルボニル」には、アリール部位が6から10個の炭素原子を有する(すなわち、アリール部位が上記「アリール」のC−C10アリールである)アリールカルボニル、例えば、ベンゾイルおよびナフトイルが含まれる。
【0026】
適切な「アルコキシカルボニル」には、アルコキシ部位が1から6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、tert−ペンチルオキシカルボニルおよびヘキシルオキシカルボニルが含まれ、なかでもより好ましいものはアルコキシ部位が1から4個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルである。
【0027】
適切な「アラルキルオキシカルボニル」には、アリール部位が6から10個の炭素原子を有し(すなわち、アリール部位が上記「アリール」のC−C10アリールである)、かつアルキル部位が1から6個の炭素原子を有する(すなわち、アルキル部位が上記「低級アルキル」のC−Cアルキルである)アラルキルオキシカルボニル、例えば、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル、1−ナフチルメチルオキシカルボニル、2−ナフチルメチルオキシカルボニル、3−フェニルプロピルオキシカルボニル、4−フェニルブチルオキシカルボニルおよび5−フェニルペンチルオキシカルボニルが含まれる。
【0028】
「置換されていてもよいチアゾールから誘導された二価の残基」の適切な「チアゾールから誘導された二価の残基」には、
【化10】

が含まれる。
【0029】
「チアゾール」は1から3個の置換基を有していてもよく、置換位置は特に限定されない。
【0030】
上記「置換されていてもよいチアゾール」の適切な「置換基」には、例えば、
(1)上記で定義したハロゲン;
(2)上記で定義したアルコキシカルボニル、例えば、エトキシカルボニル;
(3)置換されていてもよいアリール(当該アリールは、上記で定義した通りであり、置換位置は特に限定されない)、例えば、フェニルおよび4−(メチルスルホニル)フェニル;
(4)式:−CONR[式中、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、ここで、当該低級アルキル、アリールおよびアラルキルは、上記で定義した通りである]の基、例えば、N−メチルアミノカルボニル、N−フェニルアミノカルボニル、N,N−ジメチルアミノカルボニルおよびN−ベンジルアミノカルボニル;
(5)式:−CONH−(CH−アリール[式中、kは0から6の整数であり;当該アリールは上記で定義した通りであり、−NO、−SO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−CFおよび−O−アリール(式中、当該アリールは上記で定義した通りである)からなる群から選択される1から5個の置換基を有していてもよく、置換位置は特に限定されない]の基;
(6)式:−CONH−(CH−複素環[式中、mは0から6の整数であり;当該複素環は上記で定義した通り(例えばピリジン)である]の基;
(7)式:−CO−複素環[式中、当該複素環は上記で定義した通り(例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、チオモルホリン)であり、当該複素環は、−CO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−CO−O−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−SO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、オキソ(すなわち、=O)および式:−CONR(式中、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、当該低級アルキル、アリールおよびアラルキルは上記で定義した通りである)の基からなる群から選択される1から5個の置換基を有していてもよく、置換位置は特に限定されない]の基;
(8)式:−(CH−アリール[式中、nは1から6の整数であり;当該アリールは上記で定義した通りであり、−S−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−SO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−CO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−NHCO−O−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)および式:−CONR(式中、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルおよびRは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、当該低級アルキル、アリールおよびアラルキルは上記で定義した通りである)の基からなる群から選択される1から5個の置換基を有していてもよく、置換位置は特に限定されない]の基;
(9)式:−(CH−複素環[式中、oは0から6の整数であり;当該複素環は上記で定義した通り(例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン)であり、オキソ(すなわち=O)、−CO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−CO−O−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−SO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)、−CO−(複素環)(式中、当該複素環は上記で定義した通り(例えばピロリジン、ピペラジンおよびモルホリン)であり、低級アルキルおよびハロゲン(当該低級アルキルおよびハロゲンは上記で定義した通りである)からなる群から選択される1から5個の置換基を有していてもよく、置換位置は特に限定されない)および式:−CONR(式中、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、当該低級アルキル、アリールおよびアラルキルは上記で定義した通りである)の基からなる群から選択される1から5個の置換基を有していてもよく、置換位置は特に限定されない]の基;
(10)式:−(CH−NR[式中、pは0から6の整数であり;Rは水素、アシル、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、Rは水素、アシル、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、当該アシル、低級アルキル、アリールおよびアラルキルは上記で定義した通りであり、当該低級アルキルは、式:−CONR(式中、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、当該低級アルキル、アリールおよびアラルキルは上記で定義した通りである)の基からなる群から選択される1から5個の置換基を有していてもよく、置換位置は特に限定されない]の基;
(11)式:−CON(Hまたは低級アルキル)−(CHR−T[式中、qは0から6の整数であり;当該低級アルキルは上記で定義した通りであり;Rは水素、上記で定義したアラルキルまたは上記で定義したアルキルであり、−OHおよび−CONHからなる群から選択される1から3個の置換基で置換されていてもよく、置換位置は特に限定されない;Tは水素、式:−CONR(式中、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、当該低級アルキル、アリールおよびアラルキルは上記で定義した通りである)の基、−NH−CO−R(式中、Rは上記で定義した低級アルキルまたは上記で定義したアラルキルである)の基、−NH−SO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)の基、−SO−(低級アルキル)(式中、当該低級アルキルは上記で定義した通りである)の基、−複素環(式中、当該複素環は上記で定義した通り(例えば、ピリジン、ピロリジンおよびモルホリン)であり、オキソ(すなわち=O)などの1から3個の置換基を有していてもよく、置換位置は特に限定されない)の基、または−CO−(複素環)(式中、当該複素環は上記に定義した通り(例えば、ピペリジンおよびモルホリン)である)の基である]の基;および
(12)式:−(CH−CO−NR[式中、rは1から6までの整数であり;Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、Rは水素、低級アルキル、アリールまたはアラルキルであり、当該低級アルキル、アリールおよびアラルキルは上記で定義した通りである]の基
が含まれる。
【0031】
アリールまたは複素環上の置換位置は、その任意の適切な位置であるが、特に限定されない。
上記「置換されていてもよいチアゾール」の好ましい「置換基」は、メチルスルホニルベンジルである。
化合物(I)のフェニル上のRの置換位置は、特に限定されない。Zが式:
【化11】

の基である場合、当該基上の置換位置は、特に限定されない。
【化12】

が特に好ましい。
【0032】
化合物(I)に含まれるアミノ(すなわち、−NH)、イミノ(すなわち、=NHまたは−NH−)などにおける窒素原子は、いずれも、当業者に公知の方法、例えば、John Wiley and Sonsにより刊行されたProtective Groups in Organic Synthesis(1980年)に記載の方法などに従って保護されてもよい。
【0033】
化合物(I)が構造中に不斉炭素原子を有する場合、当業者は、化合物(I)が全ての立体異性体を包含することを理解するであろう。
【0034】
上記化合物のうち、化合物(I)が好ましく、
N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド(構造1を参照)、
N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−5−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド(構造46を参照)、
N−{4−[2−(4−{[ヒドラジノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−5−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド(構造48を参照)、
N−{4−[2−(4−{[ヒドラジノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド(構造56を参照)および
N−(4−{2−[4−(2−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}エチル)フェニル]エチル}−1,3−チアゾール−2−イル)アセトアミド(構造107を参照)がより好ましく、N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}−フェニル)エチル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミドおよびその誘導体が特に好ましい。
【0035】
「誘導体」なる用語は、元の化合物から誘導される全ての化合物を包含することを意図する。
【0036】
本発明の化合物(I)の製薬的に許容される塩は、非毒性であり、無機または有機塩基との塩、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩およびアミン塩(例えばトリエチルアミン塩、N−ベンジル−N−メチルアミン塩など)などで例示される、製薬的に許容される通常の塩である。
【0037】
化合物(I)は、製薬的に許容される酸付加塩として処方することもできる。医薬組成物に用いるための製薬的に許容される酸付加塩の例には、鉱酸(例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸)から誘導される塩、および有機酸(例えば酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸およびアリールスルホン酸(例えばp−トルエンスルホン酸))から誘導される塩が含まれる。
【0038】
式(I)で表される化合物(I)の製薬的に許容される塩としては、(モノ−、ジ−またはトリ−)塩酸塩およびヨウ化水素酸塩、特に塩酸塩のような製薬的に許容される酸付加塩が好ましい。
【0039】
上記化合物(I)は、市販のものであってもよいし、または公知の参考文献に基づいて製造することもできる。
【0040】
本発明の組成物は、本発明の方法に従って、任意の適切な経路により投与することができる。適切な投与経路には、全身投与(例えば経口投与または注射投与)、局所投与、眼周囲投与(例えばテノン嚢下投与)、結膜下投与、眼内投与、硝子体内投与、眼房内投与、網膜下投与、脈絡膜上投与および眼球後投与が含まれる。VAP−1阻害剤の投与様式は、VAP−1関連疾患の治療が予防的または治療的のいずれであるかにある程度依存する。
【0041】
本発明の組成物は、好ましくは、哺乳動物、特にヒトのような被検体が、VAP−1関連疾患のリスクを有すると判断された後に速やかに投与される(予防的治療)か、あるいは当該被検体がVAP−1関連疾患を発症し始めた後に速やかに投与される(療法的治療)。治療は、用いられる個々のVAP−1阻害剤、投与されるVAP−1阻害剤の量、投与の経路、原因、および必要に応じてVAP−1関連疾患の自覚の程度にある程度依存するであろう。
【0042】
当業者は、本発明の方法において有用なVAP−1阻害剤を投与する適切な方法を利用できることを理解するであろう。特定のVAP−1阻害剤を投与するのに1つ以上の経路を用いることができるが、ある経路は、別の経路よりも迅速でより効果的な反応を提供し得る。従って、記載された投与の経路は単なる例示であり、決してこれらに限定されるものではない。
【0043】
本発明によれば、ヒトを含む動物、特にヒトのような投与被検体に投与される本発明の組成物の用量は、合理的な期間にわたって被検体に所望の反応を及ぼすのに十分であるべきである。当業者は、用量は、用いられる個々のVAP−1阻害剤の強度、年齢、種、症状または疾患の状態および被検体の体重ならびにVAP−1関連疾患の程度を含む種々の要因に依存することを理解するであろう。用量の多さはまた、投与の経路、タイミングおよび回数、ならびに個々のVAP−1阻害剤および所望の生理学的効果に伴い得る有害な副作用の存在、性質および程度にも依存するであろう。当業者は、種々の症状または疾患の状態は、複数回の投与を必要とする長期の治療を必要とし得ることを理解するであろう。
【0044】
適切な用量および投与計画は、当業者に公知の通常の範囲で見出される技術により決定することができる。一般的には、治療は、化合物の最適用量よりも少ない用量から開始する。その後、この状況下で最適な効果が得られるまで、用量を少しずつ増加させる。
【0045】
一般に、化合物(I)は、約1μg/kg/日から約300mg/kg/日の用量、好ましくは、約0.1mg/kg/日から約10mg/kg/日の用量で、1日当たり単回投与または2から4回の投与でもしくは持続的に投与することができる。
【0046】
本明細書および請求の範囲において、「水性組成物」は澄明な水溶液を意味する。本発明の水性組成物は、点眼液剤、点鼻液剤、点耳液剤、吸入液剤、噴霧剤、内服液剤、注射液剤(静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射または眼内注射用)として提供され得る。本発明の水性組成物に含まれる添加物、すなわちポリオール、糖、糖アルコール、ホウ酸またはその塩からなる群から選択される添加物は、化合物(I)の溶解度に影響しないので、長期保存可能な安定した水性製剤を提供可能である。
【0047】
本発明において、当該添加物は、水溶液の浸透圧を調整するのに有用であることが知られた添加物である。本発明で用いられる添加物の例には、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびポリビニルアルコールなどのポリオール;ブドウ糖、ソルビトール、マンニトールおよびキシリトールなどの糖または糖アルコール;ホウ酸およびその塩が含まれ得る。これらの添加物は、所望の処方に応じて、単独で、あるいは2またはそれ以上の当該添加物と組み合わせて用いることができる。特に好ましい添加物には、グリセリン、マンニトール、ホウ酸またはその塩が含まれる。
【0048】
本発明の水性組成物内の添加物濃度は、組成物の浸透圧が適切に調整されるような濃度に決定すればよい。当業者は、チアゾール誘導体の種類、チアゾール誘導体の量ならびに添加物の種類および分子量に基づいて添加物濃度を決定できる。通常、添加物の量は、組成物の全体積に対して0.001から10w/v%、好ましくは0.01から5w/v%程度である。
【0049】
本発明の水性組成物は、本発明のチアゾール誘導体または化合物(I)の溶解度に影響しない限りにおいて、緩衝剤、保存剤、安定化剤および増粘剤などの、医薬組成物の製造に一般に用いられる他の添加物をさらに含んでもよい。そのような添加物の例には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノールおよびパラオキシ安息香酸エステルなどの保存剤;ポビドンおよびメチルセルロースなどの増粘剤が含まれる。
【0050】
本発明の水性組成物は、化合物(I)とは異なる薬学的に活性な化合物をさらに含むことができる、または同時投与することができる。「同時投与」は、上述のVAP−1阻害剤の投与の前に、同時に(例えば、同一の製剤中にまたは別の製剤としてVAP−1阻害剤または化合物(I)のチアゾール誘導体と組み合わせて)またはVAP−1阻害剤の投与後に投与することを意味する。例えば、コルチコステロイド、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンもしくはトリアムシノロンアセチニドまたは非コルチコステロイド抗炎症性化合物(例えばイブプロフェンまたはフルビプロフェン)を同時投与することができる。同様に、ビタミンおよびミネラル(例えば亜鉛、抗酸化剤(例えばカロテノイド(例えばキサントフィルカロテノイド様ゼアキサンチンまたはルテイン)))ならびに微量栄養を共に製剤化することができる、または同時投与することができる。
【0051】
さらに、本発明の水性組成物は、VAP−1関連疾患の治療剤または予防剤のような医薬の製造に有用である。
【0052】
本発明の好ましい化合物(I)のチアゾール誘導体の例を以下の表に列挙する。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【表13】

【実施例】
【0053】
本発明を以下に示した実施例によりさらに説明する。しかし、実施例は決して本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0054】
[試験例1]
化合物A:
【化13】

化合物B:
【化14】

化合物C:
【化15】

【0055】
化合物Aに蒸留水(注射グレード)を加えて攪拌し、化合物Aの飽和水溶液(3.55 mg/mL、約pH 7)を調製した。
【0056】
化合物Bに蒸留水(注射グレード)を加え、塩酸を加えながら攪拌し、化合物Bの飽和水溶液(1.12 mg/mL、約pH 3)を調製した。
【0057】
化合物Cに蒸留水(注射グレード)を加え、塩酸を加えながら攪拌し、化合物Cの飽和水溶液(10.73 mg/mL、約pH 7)を調製した。
【0058】
調製した化合物A、B、Cそれぞれの飽和水溶液に、塩化ナトリウムの0.4%NaCl溶液となる量を加え、該混合物を攪拌した。調製した混合物の析出および溶解度、すなわち、溶液または上清中の化合物AからCの濃度(mg/mL)について調べた。
【0059】
同様に、化合物AからCの飽和水溶液に塩化ナトリウムの0.85%溶液となる量を加え、析出および溶解度を調べた。
【0060】
結果を以下の表1に示す。
【表14】

【0061】
[試験例2]
試験例1と同様に調製した化合物Cの飽和溶液に、グリセリンの2.5%溶液となる量を加え、混合物を攪拌した。同様に、3.5%溶液となる量のマンニトール、2%溶液となる量のホウ酸、0.2%溶液となる量の塩化カリウム、1%溶液となる量のリン酸水素二ナトリウムおよび1%溶液となる量のクエン酸ナトリウムをそれぞれ、化合物Cの飽和水溶液に加えた。析出および溶解度、すなわち、溶液または上清中の化合物Cの濃度変化を調べた。
【表15】

【0062】
[試験例3]
化合物Cに、グリセリンおよび蒸留水を加え、塩酸を加えながら攪拌し、水溶液(化合物Cの濃度:0.3%、グリセリンの濃度:2.5%、約pH 6)を調製した。同様に、化合物Cおよび表3に示した添加物を含む水溶液を調製した。
【0063】
調製した溶液をLDPE製容器中40℃で保存し、溶液中の化合物Cの濃度を経時的に調べた。結果を以下の表3に示す。
【表16】

【0064】
[試験例4]
化合物D
【化16】

【0065】
化合物Dにグリセリンおよび蒸留水を加えて攪拌し、澄明な水溶液(化合物Dの濃度:0.3%、グリセリンの濃度:2.5%、約pH 6)を調製した。同様に、同濃度の化合物Dおよび表4に示した添加物を含む水溶液を調製した。
【0066】
調製した溶液をLDPE製容器中40℃で保存し、溶液中の化合物Dの濃度を経時的に調べた。結果を表4に示す。
【表17】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、式(I):
−NH−X−Y−Z (I)
(式中、各記号は上記で定義した通りである)
のチアゾール誘導体またはその製薬的に許容される塩およびポリオール、糖、糖アルコール、ホウ酸またはその塩および水からなる群から選択される添加物を含む、水性組成物を提供する。
【0068】
本発明の水性組成物は非常に安定であり、従って長期間安定に保存可能な水性製剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
−NH−X−Y−Z (I)
[式中、Rはアシルであり;
Xは置換されていてもよいチアゾールから誘導された二価の残基であり;
Yは結合、低級アルキレン、低級アルケニレンまたは−CONH−であり;
Zは式:
【化1】

(式中、Rは式:−A−B−D−E
(式中、Aは結合、低級アルキレン、−NH−または−SO−であり;
Bは結合、低級アルキレン、−CO−または−O−であり;
Dは結合、低級アルキレン、−NH−または−CHNH−であり、但し、Bが−CO−または−O−である場合、Dは結合ではない;
Eは保護されていてもよいアミノ、−N=CH
【化2】

(式中、Qは−S−または−NH−であり;
は水素、低級アルキル、低級アルキルチオまたは−NH−R
(式中、Rは水素、−NHまたは低級アルキルである)である)である)の基である)の基である]
のチアゾール誘導体またはその製薬的に許容される塩、および、ポリオール、糖、糖アルコール、ホウ酸またはその塩、および水からなる群から選択される添加物を含む水性組成物。
【請求項2】
式(I)のチアゾール誘導体またはその製薬的に許容される塩のZが、式:
【化3】

[式中、Rは式:
【化4】

(式中、Gは結合、−NHCOCH−または低級アルキレンであり、Rは水素、−NHまたは低級アルキルである)
の基、−NH、−CHNH、−CHONH、−CHON=CH
【化5】

である]
の基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)のチアゾール誘導体またはその製薬的に許容される塩のRが、式:
【化6】

[式中、Gは結合、−NHCOCH−または低級アルキレンであり、Rは水素または低級アルキルである]
の基、−CHNH、−CHONH、−CHON=CH
【化7】

である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)のチアゾール誘導体またはその製薬的に許容される塩のRがアルキルカルボニルであり、Xがメチルスルホニルベンジルで置換されていてもよいチアゾールから誘導された二価の残基である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
チアゾール誘導体またはその製薬的に許容される塩において、該チアゾール誘導体が、
N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、
N−{4−[2−(4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−5−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、
N−{4−[2−(4−{[ヒドラジノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−5−[4−(メチルスルホニル)ベンジル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、
N−{4−[2−(4−{[ヒドラジノ(イミノ)メチル]アミノ}フェニル)エチル]−1,3−チアゾール−2−イル}アセトアミド、または
N−(4−{2−[4−(2−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}エチル)フェニル]エチル}−1,3−チアゾール−2−イル)アセトアミド
である、請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2012−1555(P2012−1555A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194023(P2011−194023)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【分割の表示】特願2006−529411(P2006−529411)の分割
【原出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(592060271)株式会社アールテック・ウエノ (22)
【Fターム(参考)】