説明

チアミンラウリル硫酸塩含有液状製剤

【課題】チアミンラウリル硫酸塩を醸造酢に高濃度溶解することが可能な、抗菌力に優れた液状製剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、チアミンラウリル硫酸塩と、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種と、醸造酢とからなり、該液状製剤中に、該チアミンラウリル硫酸塩が1質量%以上の割合で含有される液状製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアミンラウリル硫酸塩含有液状製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栄養補助目的でビタミンBを使用する場合には、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩などが用いられている。しかし、チアミン塩酸塩およびチアミン硝酸塩は、分解され易いという問題点がある。
【0003】
安定性の高いビタミンBとして、チアミンラウリル硫酸塩が注目されている。このチアミンラウリル硫酸塩は、さらに抗菌効果を有し、食品の日持ち向上に寄与することから、様々な食品に利用されている(例えば、特許文献1および2)。しかし、チアミンラウリル硫酸塩は、安定性に優れる反面、水への溶解度が低いことから、利用される食品が限定されるという問題がある。さらには、チアミンラウリル硫酸塩は、他のチアミン塩類同様、独特のビタミン臭を有するという問題もある。そして、食品によっては、チアミンラウリル硫酸塩が均一に含有されずに、抗菌効果が十分に発揮されないといった問題もある。
【0004】
そこで、チアミンラウリル硫酸塩を含む液状組成物が検討されている。例えば、特許文献3には、チアミンセチル硫酸塩とチアミンラウリル硫酸塩との混合物を1〜65重量%および酢酸を20〜95重量%含む食品用殺菌剤水溶液が開示されている。特許文献4には、チアミンラウリル硫酸塩2〜30重量%、酢酸57〜90重量%、および残部水からなる水性溶液が開示されている。しかし、これらの方法でチアミン硫酸塩を高濃度溶解させるためには、実質的に高濃度(例えば、57重量%以上)の酢酸を用いることが必要であり、食品の味に影響を与えることなどの問題がある。
【0005】
特許文献5には、食酢または含酢酸水溶液に、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物、およびチアミンラウリル硫酸塩0.005〜55重量%を添加した混合液を養殖魚用飼料に用いることが開示されている。しかし、これ以外にもチアミンラウリル硫酸塩を高濃度溶解することができる組成物が望まれている。
【特許文献1】特開2000−237324号公報
【特許文献2】特開平3−67573号公報
【特許文献3】特開2005−97171号公報
【特許文献4】特開平4−311369号公報
【特許文献5】特開平7−67548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、チアミンラウリル硫酸塩を醸造酢に高濃度溶解した、抗菌力に優れた液状製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液状製剤は、チアミンラウリル硫酸塩と、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種と、醸造酢とからなる液状製剤であって、該液状製剤中に、該チアミンラウリル硫酸塩が1質量%以上の割合で含有される。
【0008】
ある実施態様においては、上記液状製剤中に、チアミンラウリル硫酸塩が1〜12質量%、およびリン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種が0.08〜14質量%含有される。
【0009】
ある実施態様においては、上記醸造酢の酸度が、8〜20%である。
【0010】
本発明のチアミンラウリル硫酸塩の醸造酢への溶解度を高める方法は、チアミンラウリル硫酸塩と、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種とを醸造酢中で共存させる工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、チアミンラウリル硫酸塩を醸造酢に高濃度溶解した液状製剤を提供する。本発明の液状製剤は、例えば、水分含量が高い食品、液状食品などにチアミンラウリル硫酸塩を均一に含有させることができるため、抗菌効果を効率的に発揮することができる。さらに、この液状製剤は、チアミンラウリル硫酸塩および醸造酢をそれぞれ単独で用いた場合には得られない優れた抗菌効果を発揮する。本発明の液状製剤は、酸度の低い醸造酢にチアミンラウリル硫酸塩を溶解することが可能であるため、食品の風味に与える影響が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、チアミンラウリル硫酸塩含有液状製剤およびチアミンラウリル硫酸塩の醸造酢への溶解度を高める方法を提供する。
【0013】
(チアミンラウリル硫酸塩含有液状製剤)
本発明の液状製剤は、チアミンラウリル硫酸塩と、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種と、醸造酢とからなり、該チアミンラウリル硫酸塩が1質量%以上の割合で含有される。本発明においては、チアミンラウリル硫酸塩を1質量%以上溶解することができ、かつ長期間保存しても析出することなく安定である。そのため、水分含量が高い食品、液状食品などに適用しても、チアミンラウリル硫酸塩による抗菌効果を効率よく発揮することが可能であり、十分な抗菌効果が得られる。
【0014】
本発明の液状製剤に用いられるチアミンラウリル硫酸塩は、水に難溶な白色粉末であり、例えば、25℃の水における溶解度は、約0.02質量%である。チアミンラウリル硫酸塩は、酸性、中性、およびアルカリ性溶液中においても、他のビタミンB塩類に比べて非常に安定である。
【0015】
本発明の液状製剤中のチアミンラウリル硫酸塩の含有量は、上述のとおり、1質量%以上、好ましくは1〜12質量%、より好ましくは2〜10質量%である。1質量%未満の場合、得られる水溶液製剤では、十分な抗菌効果が得られない。さらにより多くの添加量が必要となる結果、後述するリン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸の重合体などの他の必須成分(溶解度向上物質)を食品中に必要以上に含有させることとなり、コスト的にも不利になる。
【0016】
本発明の液状製剤においては、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種が用いられる。好ましくはリン酸塩、炭酸塩、塩基性アミノ酸、または塩基性アミノ酸の重合体である。これらは、チアミンラウリル硫酸塩の醸造酢への溶解度を増大させる目的で含有される。本明細書においては、このような化合物を溶解度向上物質という。溶解度向上物質は、単独で用いてもよく、2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記リン酸塩、炭酸塩、または有機酸塩は、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。具体的には、リン酸塩としては、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウムなどが挙げられる。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機酸塩としては、酢酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0018】
上記塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リシンなどが挙げられる。好ましくはアルギニンである。上記塩基性アミノ酸の重合体としては、ポリリシンなどが挙げられる。
【0019】
本発明の液状製剤中の上記溶解度向上物質の量は、溶解度向上物質の種類および含有されるチアミンラウリル硫酸塩の量に応じて適宜設定される。好ましくは液状製剤中に0.08〜14質量%、より好ましくは2〜10質量%の割合で含有される。
【0020】
本発明においては、チアミンラウリル硫酸塩を溶解するために醸造酢を用いる。醸造酢は、穀類、糖類(果実)、またはエチルアルコールを原料とし、微生物の作用で生成した発酵酢酸を主成分とする酸性調味料をいう。醸造酢中には、発酵酢酸の他、糖質、蛋白質、エチルアルコール、水などが含まれている。なお、醸造酢中に含まれるエチルアルコールは0.5質量%未満と微量である。醸造酢の種類は、特に制限されない。例えば、穀物酢、果実酢、米酢、りんご酢、ぶどう酢などが挙げられる。
【0021】
上記醸造酢の酸度は、好ましくは8〜20%、より好ましくは14〜20%である。本明細書において、醸造酢の酸度とは、水酸化ナトリウムによる中和滴定法により醸造酢に含まれる酸の量を酢酸量に換算した割合(質量/容量%)をいう。醸造酢中の酸度が高い場合は、上記範囲となるように水で希釈して用いることが好ましい。
【0022】
本発明の液状製剤の製造方法は、チアミンラウリル硫酸塩と、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種(溶解度向上物質)とを醸造酢中で混合させる工程を含む。例えば、チアミンラウリル硫酸塩を醸造酢に加えた後に、溶解度向上物質を加えてもよく、溶解度向上物質を含有する醸造酢に、チアミンラウリル硫酸塩を加えてもよく、あるいはチアミンラウリル硫酸塩と溶解度向上物質との混合物を醸造酢に加えてもよい。
【0023】
本発明の液状製剤は、目的に応じて、種々の食品、特に水分含量が高い食品、液状食品などの栄養強化剤または抗菌剤として使用される。このような食品としては、例えば、調味液、惣菜、菓子、麺などが挙げられる。具体的には、上記食品に液状製剤を噴霧する、食品を液状製剤に浸漬する、または液状食品に液状製剤をそのまま加えるなどにより使用される。さらには、上記食品を液状製剤とともに調理してもよい。本発明の粉末製剤の使用量は特に制限されないが、例えば、優れた抗菌効果を得る点から、好ましくは食品中にチアミンラウリル硫酸塩が0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.03〜0.5質量%の割合で含有されるように液状製剤を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の液状製剤は、長期保存においても、チアミンラウリル硫酸塩が析出せず、また分解することもなく安定に存在する。そのため、例えば、水分含量が高い食品、液状食品などにチアミンラウリル硫酸塩を均一に含有させることができ、抗菌効果を効率的に発揮することができる。本発明の液状製剤は、チアミンラウリル硫酸塩、溶解度向上物質、および醸造酢のそれぞれ単独では得られない優れた抗菌効果を有する。
【0025】
(チアミンラウリル硫酸塩の醸造酢への溶解度を高める方法)
本発明のチアミンラウリル硫酸塩の醸造酢への溶解度を高める方法は、上記チアミンラウリル硫酸塩と、上記溶解度向上物質とを醸造酢中で共存させることを特徴とする。これによって、醸造酢中にチアミンラウリル硫酸塩を1質量%以上、好ましくは1〜12質量%、より好ましくは2〜10質量%溶解することが可能となる。
【0026】
上記チアミンラウリル硫酸塩と、上記溶解度向上物質とを醸造酢中で共存させる手段は、特に制限されない。例えば、チアミンラウリル硫酸塩を含有する醸造酢に、溶解度向上物質を加えてもよく、溶解度向上物質を含有する醸造酢に、チアミンラウリル硫酸塩を加えてもよく、あるいはチアミンラウリル硫酸塩と溶解度向上物質との混合物を醸造酢に加えてもよい。
【実施例】
【0027】
(実施例1:チアミンラウリル硫酸塩の溶解性の検討)
醸造酢(酸度20%)100gに、チアミンラウリル硫酸塩と、表1に示す溶解度向上物質とを適宜加え、チアミンラウリル硫酸塩の溶解量を調べた(調製例1〜11)。また、対照として醸造酢にチアミンラウリル硫酸塩のみを加えて溶解量を調べた(対照例)。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1の結果に示すように、溶解度向上物質を用いることによって、醸造酢中にチアミンラウリル硫酸塩を1質量%以上溶解した液状製剤が得られた。特に、アルギニンを溶解度向上物質として用いる場合、醸造酢中にチアミンラウリル硫酸塩を10質量%以上溶解することができた。他方、溶解度向上物質を用いない場合については、醸造酢100gに対して、2gのチアミンラウリル硫酸塩は溶解できるものの、3gは溶解できなかった。したがって、醸造酢中のチアミンラウリル硫酸塩の溶解量は、2質量%にとどまった(対照例)。なお、調製例において、溶解度向上物質の量を表1に記載の量より増加させた場合においても、チアミンラウリル硫酸塩の溶解量は増加しなかった。
【0030】
(実施例2:液状製剤の調製および保存安定性の評価1)
チアミンラウリル硫酸塩、溶解度向上物質、および醸造酢を表2に記載の割合で配合して、液状製剤を得た(製剤1とする)。得られた液状製剤を10℃にて1ヶ月間保存し、液状製剤中の析出物の有無を目視にて観察した。結果を表2に示す。
【0031】
(実施例3〜6)
チアミンラウリル硫酸塩、溶解度向上物質、および醸造酢を表2に記載の割合で配合して、液状製剤を得た(それぞれ製剤2〜5とする)。各粉末製剤を用いたこと以外は、実施例2と同様にして保存安定性を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0032】
(比較例1〜4)
チアミンラウリル硫酸塩、溶解度向上物質、および醸造酢のうちの1種または2種を表2に記載の割合で配合して、液状製剤を得た(それぞれ製剤6〜9とする)。各粉末製剤を用いたこと以外は、実施例2と同様にして保存安定性を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2の結果から、実施例のチアミンラウリル硫酸塩と、溶解度向上物質と、醸造酢とからなる液状製剤は、チアミンラウリル硫酸塩の濃度が1質量%以上であっても、析出物を生じず、保存安定性は良好であった。これに対して、比較例2および3の液状製剤は、溶解度向上物質が含まれていないため、チアミンラウリル硫酸塩の析出物が見られた。なお、比較例1および4は、チアミンラウリル硫酸塩を含まないため析出物はなかった。
【0035】
(実施例7:保存安定性の評価2)
実施例4で得られた製剤3および実施例6で得られた製剤5をそれぞれ30℃にて1ヶ月間保存した。保存後、チアミンラウリル硫酸塩の量をHPLCにて測定し、チアミンラウリル硫酸塩の残存率を測定した。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
表3の結果から、本発明の液状製剤(製剤3および5)は、30℃1ヶ月間保存してもチアミンラウリル硫酸塩が液状製剤中に96.0%以上残存しており、保存安定性が良好であることがわかる。
【0038】
(実施例8:抗菌効果)
(8.1)枯草菌に対する抗菌効果
滅菌済みの標準寒天培地に、実施例2で得られた製剤1の最終濃度がそれぞれ0.05、0.1、0.2、0.4、または0.8質量%となるように添加して混合し、試験用寒天平板培地を作成した。
【0039】
次いで、予め液体培地で培養した枯草菌(Bacillus subtilis)の培養液を、寒天培地あたり枯草菌が1×10cell相当量となるように上記寒天培地に塗布し、35℃にて48時間培養した。菌の生育のない培地中の製剤1の最低濃度を決定し、この濃度を菌の最小発育阻止濃度(MIC)とした。MICの値が低いほど、菌に対する抗菌効果は高い。結果を表4に示す。
【0040】
(8.2)〜(8.5)大腸菌群、耐熱性菌、酵母、または乳酸菌に対する抗菌効果
枯草菌の代わりに、大腸菌群(Escherichia coli)、耐熱性菌(Bacillus cereus)、酵母(Hansenula anomala)、または乳酸菌(Streptococcus lactis)を用いたこと以外は、上記(8.1)と同様に操作して、抗菌効果を評価した(各々8.2〜8.5とする)。なお、酵母を用いる場合は、培養温度を25℃、培養時間を72時間に設定した。チアミンラウリル硫酸塩のMICを表4に示す。
【0041】
(実施例9〜12)
製剤1の代わりに、実施例3〜6で得られた製剤2〜5をそれぞれ用いたこと以外は、実施例8と同様にして、各微生物に対する抗菌効果を評価した。結果を表4に併せて示す。
【0042】
(比較例5〜9)
製剤1の代わりに、比較例1〜4で得られた製剤6〜9および醸造酢100質量部に対してチアミンラウリル硫酸塩3質量部を加えた液状製剤(製剤10)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、各微生物に対する抗菌効果を評価した。結果を表4に併せて示す。
【0043】
【表4】

【0044】
表4に示すように、実施例で得られたチアミンラウリル硫酸塩と、溶解度向上物質と、醸造酢とからなる液状製剤(製剤1〜5)を用いる場合は、比較例で得られたチアミンラウリル硫酸塩、溶解度向上物質、および醸造酢のうちのいずれかを含まない製剤(製剤6〜10)を用いた場合に比べて低濃度で優れた抗菌効果を示した。
【0045】
(実施例13:液状製剤の食品中における抗菌効果1)
実施例2で得られた液状製剤1を1.0質量%含有する水溶液を調製した。生米100質量部に対して上記水溶液を140質量部の割合で加えて炊飯して味飯を得た。味飯の抗菌効果を以下のようにして評価した(試験例1とする)。
【0046】
得られた味飯を常温まで冷却した後、予め液体培地で培養した枯草菌(Bacillus subtilis)の培養液を枯草菌が1×10cell相当量となるように接種し、よく攪拌して30℃にて保存した。保存後0時間、24時間、および48時間経過時の菌数を、標準寒天培地を用いた希釈法にて計測した。結果を表5に示す。
【0047】
上記とは別に、実施例6で得られた液状製剤5を用いたこと以外は、上記の液状製剤1を用いた場合と同様にして、味飯を得、抗菌効果を評価した(これを試験例2とする)。結果を表5に示す。
【0048】
他方、比較例1で得られた製剤6を用いたこと、あるいは製剤を用いなかったこと以外は、上記の液状製剤1を用いた場合と同様にして、味飯を得、抗菌効果を評価した(これらをそれぞれ比較試験例1および2とする)。結果を表5に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
表5に示すように、チアミンラウリル硫酸塩と、溶解度向上物質と、醸造酢とからなる液状製剤(製剤1および5)を用いる場合は、醸造酢のみの製剤6を用いる場合、あるいは製剤を用いない場合に比べて、枯草菌に対する抗菌効果に優れていた。
【0051】
(実施例14:液状製剤の食品中における抗菌効果2)
枯草菌の代わりに、乳酸菌を用いたこと以外は、実施例13と同様にして抗菌効果を評価した(それぞれ試験例3〜4および比較試験例3〜4)。結果を表6に示す。
【0052】
【表6】

【0053】
表6に示すように、チアミンラウリル硫酸塩と、溶解度向上物質と、醸造酢とからなる液状製剤(製剤1および5)を用いる場合は、醸造酢のみの製剤6を用いる場合、あるいは製剤を用いない場合に比べて、乳酸菌に対する抗菌効果に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の液状製剤は、チアミンラウリル硫酸塩と、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種と、醸造酢とからなり、該チアミンラウリル硫酸塩が1質量%以上の割合で含有される。本発明の液状製剤は、例えば、水分含量が高い食品、液状食品などにチアミンラウリル硫酸塩を均一に含有させることができるため、抗菌効果を効率的に発揮することができる。さらに、この液状製剤は、チアミンラウリル硫酸塩および醸造酢をそれぞれ単独で用いた場合には得られない優れた抗菌効果を発揮する。本発明の抗菌剤は、食品などに利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チアミンラウリル硫酸塩と、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種と、醸造酢とからなる液状製剤であって、
該液状製剤中に、該チアミンラウリル硫酸塩が1質量%以上の割合で含有される、液状製剤。
【請求項2】
前記液状製剤中に、チアミンラウリル硫酸塩が1〜12質量%、およびリン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種が0.08〜14質量%含有される、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項3】
前記醸造酢の酸度が、8〜20%である、請求項1または2に記載の液状製剤。
【請求項4】
チアミンラウリル硫酸塩の醸造酢への溶解度を高める方法であって、
チアミンラウリル硫酸塩と、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩基性アミノ酸、および塩基性アミノ酸の重合体からなる群より選択される少なくとも1種とを醸造酢中で共存させる工程を含む、方法。

【公開番号】特開2007−295898(P2007−295898A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128716(P2006−128716)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】