説明

チェッカの角度調整装置及び方法

【課題】ブラケットの角度調整が自動化可能なチェッカの角度調整装置及び方法を提供する。
【解決手段】チェッカ1の角度調整装置10は、ブラケット3を下部に位置させてチェッカ1のアーム2を保持するアーム保持機構20と、保持されたアーム2に対してブラケット3を揺動させて押し上げるブラケット押上機構30と、傾斜ガイド面51aを有するガイド部材51を所定位置に位置させるガイド設定機構50と、ブラケット3を揺動させて押し下げ、傾斜ガイド面51aにブラケット3を当接させるガイド当接機構60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェッカの角度調整装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、開いたドアを所定の開度で保持するチェッカが備わる。このチェッカは、アームと、アームの先端に揺動可能に支持されたブラケットとを有する。そして、アーム中間部に貫通され摺動可能なケースがドアに取り付けられ、アームに対して所定角度傾斜した状態でブラケットが車体に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チェッカを車両に組み付ける際に、作業者が両手でブラケットをアームに対して所定角度に傾斜させる必要がある。特に、チェッカ組付自体は自動化されており、組み付け前のブラケットの角度調整も自動化することが望ましい。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、ブラケットの角度調整が自動化可能なチェッカの角度調整装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のチェッカの角度調整装置は、アームと、該アームの先端に揺動可能に支持されたブラケットとを有するチェッカの角度調整装置であって、前記ブラケットを下部に位置させて前記アームを保持するアーム保持機構と、前記アーム保持機構で保持された前記アームに対して前記ブラケットを揺動させて押し上げるブラケット押上機構と、傾斜ガイド面を有するガイド部材を所定位置に位置させるガイド設定機構と、前記ブラケットを揺動させて押し下げ、前記所定位置に位置する前記ガイド部材の傾斜ガイド面に前記ブラケットを当接させるガイド当接機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のチェッカの角度調整装置によれば、アーム保持機構で保持されたアームに対してブラケット押上機構でブラケットを揺動させて一旦押し上げ、ガイド設定機構で所定位置にガイド部材を位置させ、その後、ガイド当接機構でブラケットを揺動させて押し下げ、ガイド部材のガイド部にブラケットを当接させる。これにより、ガイド部に当接したブラケットがアームに対して所定角度傾斜する。そして、アームに対するブラケットの当初の角度に拘わらず、ブラケットを押し下げてガイド部に当接させることが可能となる。従って、ブラケットの角度調整が自動化できる。
【0008】
また、本発明のチェッカの角度調整装置において、前記ブラケットの先端が位置する方向を判別するブラケット方向判定機構を備え、前記ガイド当接機構は複数存在し、前記ブラケット方向判定部が判定した方向に応じて、前記複数のガイド当接機構の何れかを作動させて前記ブラケットを押し下げることが好ましい。
【0009】
この場合、ブラケットの先端が位置する当初の方向に拘わらず、ブラケットの角度調整が自動化できる。そのため、作業者がブラケットの方向を所定方向に揃えた状態でチェッカを供給する必要がなくなる。
【0010】
また、本発明のチェッカの角度調整装置において、前記アームに貫通され、所定範囲内で該アームに対して摺動可能なケースを前記チェッカが有し、前記アーム保持機構は前記ケースが位置決めされた前記チェッカのアームを保持することが好ましい。
【0011】
この場合、ケースが位置決めされたチェッカのブラケットの角度調整が自動化できる。
【0012】
本発明のチェッカの角度調整方法は、アームと、該アームの先端に揺動可能に支持されたブラケットとを有するチェッカの角度調整方法であって、前記ブラケットを下部に位置させて前記アームを保持するアーム保持工程と、保持された前記アームに対して前記ブラケットを揺動させて押し上げるブラケット押し上げ揺動工程と、ガイド部を有するガイド部材を所定位置に位置させるガイド設定工程と、前記ブラケットを揺動させて押し下げ、前記所定位置に位置する前記ガイド部材のガイド部に前記ブラケットを当接させるガイド当接工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のチェッカの角度調整装置によれば、アーム保持工程にて保持されたアームに対してブラケット押上工程にてブラケットを揺動させて一旦押し上げ、ガイド設定工程にて所定位置にガイド部材を位置させ、その後、ガイド当接工程にてブラケットを揺動させて押し下げ、ガイド部材のガイド部にブラケットを当接させる。これにより、ガイド部に当接したブラケットがアームに対して所定角度傾斜する。そのため、アームに対するブラケットの当初の角度に拘わらず、ブラケットを押し下げてガイド部に当接させることが可能となる。従って、ブラケットの角度調整が自動化できる。
【0014】
また、本発明のチェッカの角度調整方法において、前記ブラケット押上工程において、上端面が水平な押上部材を上昇させて、前記ブラケットを揺動させ、当該ブラケットの底面を前記押上部材の上端面に当接させて水平にした後、前記押上部材を下降させ、その後、前記ガイド当接工程において、前記ブラケットの底面を面からなる前記ガイド部に当接させることが好ましい。
【0015】
この場合、ブラケットの底面を面からなるガイド部に当接させることによりブラケットの角度調整が行われるので、角度調整を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るチェッカの角度調整装置で用いるチェッカの斜視図。
【図2】角度調整装置の側面図。
【図3】角度調整装置の上面図。
【図4】角度調整装置の正面図。
【図5】アーム保持機構でアームを保持した状態における角度調整装置の側面図。
【図6】アーム保持機構でアームを保持した状態における角度調整装置の上面図。
【図7】ブラケット押上機構でブラケットを押し上げた状態における角度調整装置の側面図。
【図8】ガイド当接機構でブラケットをガイド部材に当接させた状態における角度調整装置の側面図。
【図9】本発明の実施形態に係るチェッカの角度調整方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るチェッカ1の角度調整装置10について図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、チェッカ1は、アーム(柄)2と、アーム2の一端に揺動可能に支持されたブラケット3と、アーム2に貫通され、アーム2に対して摺動可能なケース4と、アーム2の他端に設けられたストッパ5とからなる。
【0019】
以下、アーム2に対してブラケット3が揺動する揺動軸6の軸心方向を前後方向(Y軸方向)、前後方向と直交し、アーム2の長手方向となる方向を上下方向(Z軸方向)、ブラケット3が支持された側を下側(Z軸負側)、前後方向及び上下方向と直交する方向を左右方向(X軸方向)であるとして説明する。
【0020】
ブラケット3は、略L字形に形成された左右一対の側板部3a,3aと下板部3bとが一体化してなり、断面U字形に形成されている。そして、左右の側板部3a,3aに揺動軸6が支持されている。
【0021】
図示しないが、ブラケット3の底板部3bの底面(下面)3cを車体のサイドフレームに当接させて、底板部3bに形成された開口3eを挿通させたボルトをサイドフレームに固定することにより、ブラケット3が車体に固定される。なお、底面3cには下方に突出する突起3dが形成されている。
【0022】
ケース4は、図示しないがケース4内にゴムスプリングにより付勢されアーム2に押圧される一対のシューが収容されており、アーム2に対して、左右方向回りに回動可能であり、前後方向回りに所定角度まで傾斜可能である。また、アーム2のケース4が挿通される中間部分は、ブラケット3側に徐々に狭幅となるようにテーパ状に形成されており、ケース4は、上下方向に所定範囲内でアーム2に対して摺動可能となっている。ケース4の底部周縁にはフランジ4aが設けられている。
【0023】
図示しないが、ケース4の底面をドアのインナパネルに当接させて、フランジ4aに形成された開口4b,4bを挿通させたボルトをそれぞれインナパネルに固定することにより、ケース4がドアに固定される。
【0024】
図2から図4に示すように、角度調整装置10は、アーム保持機構20、ブラケット押上機構30、ブラケット方向判定機構40、ガイド設定機構50、及びガイド当接機構60を備えている。さらに、図示しないが、角度調整装置10は、これら機構20〜60を制御する制御装置も備えている。なお、機構20〜60及び制御装置は、簡略化のため図示を省略した装置架台に配置されている。また、図4ではチェッカ押上機構30及びガイド設定機構50が省略されている。
【0025】
アーム保持機構20は、ケース4を位置決めして配置するケース配置部材21を備えている。ケース配置部材21は、装置架台に固定されており、ケース4の底部のフランジ4aの形状に対応させた上面視略矩形状の凹部21aが形成されている。そして、凹部21aの上縁には、上方に向かい傾斜するガイド面21bが形成されている。さらに、ケース配置部材21には、ブラケット3が挿通可能な貫通穴21cが、凹部21aと連通して形成されている。
【0026】
チェッカ1のケース4が凹部21aに載置されることにより、ケース4の位置決めされて配置される(図5及び図6参照)。そして、この状態では、ブラケット3が貫通穴21cの下方に吊下げられた状態となる。このとき、ブラケット3が存在する空間Sがブラケット挿入部として機能する。
【0027】
さらに、アーム保持機構20は、ケース4が位置決めされたチェッカ1のアーム2の位置決めを行い、且つその状態でアーム2を保持する。アーム保持機構20は、アーム2の上下方向と前後方向の位置決めを行い、アーム2を前後方向から保持する第1のアーム保持機構22と、アーム2の少なくとも左右方向の位置決めを行い、アーム2を左右外側から保持する第2のアーム保持機構23とを備える。なお、図3及び図4では第1のアーム保持機構22が、図2では第2のアーム保持機構23がそれぞれ省略されている。
【0028】
第1のアーム保持機構22は、前後方向からアーム2を把持する一対の把持部材24,24と、把持部材24,24をそれぞれ駆動動作させるアクチュエータ25,25とからなる。
【0029】
把持部材24,24は、それぞれの先端にアーム2と当接する当接部24a,24aが設けられており、ケース配置部材21の前後上端部に前後方向に揺動可能に支持されている。アクチュエータ25,25は、それぞれ装置架台に配置された直動式のシリンダであり、各シリンダ25のロッド25aは上下方向に進退動作する。そして、各ロッド25aの先端に案内軸25bが固定されており、この案内軸25bが把持部材24に形成された長円形状の案内穴24bに挿通されている。
【0030】
図5を参照して、前後のシリンダ25,25のロッド25a,25aが上方向に同期して伸長することにより、前後の把持部材24,24が同期して内方に向かって回転する。これに伴い、傾斜したアーム2が前後方向から把持部材24,24の当接部24a,24aに当接されて立ち上がり、アーム2が前後の把持部材24,24に挟まれてケース4に対して真っ直ぐに起立する。
【0031】
また、前後の把持部材24,24は、アーム2に対して前後から下方に押し下げる力を作用させるので、アーム2がケース4に対して下方に摺動可能限度まで摺動して、アーム2のケース4に対する上下方向の位置決めがなされる。このように、第1のアーム保持機構22は、アーム2の前後及び上下方向の位置決めを行い、且つアーム2を前後から把持して保持する。アームを前後外側から把持する。
【0032】
なお、第1のアーム保持機構22は、ケース4をケース配置部材21の凹部21aに配置する機能も有する。チェッカ1を角度調整装置10に配するときに、ケース4がケース配置部材21のガイド面21bや上面に引っ掛かっていた場合、把持部材24,24がアーム2を直立させる過程において、ケース4がガイド面21bにガイドされて凹部21aに落ち込み、ケース4が凹部21aに載置される。
【0033】
第2のアーム保持機構23は、左右方向からアーム2を把持する一対の把持部材26,26と、把持部材26,26をそれぞれ駆動動作させるアクチュエータ27,27とからなる。
【0034】
把持部材26,26は、それぞれの先端にアーム2と当接する当接部26a,26aが設けられており、ケース配置部材21の左右上端部に形成された矩形状の切欠き21d,21dにより左右方向に案内される。各当接部26aの端面中央には、上下方向に延びるV字状の切欠き26bが形成されている。アクチュエータ27,27は、それぞれ装置架台に配置された直動式のシリンダであり、このシリンダ27,27のロッド27a,27aは左右方向に進退動作する。そして、各ロッド27aの先端に把持部材26がブラケット27bを介して固定されている。
【0035】
図6を参照して、左右のシリンダ27,27のロッド27a,27aが左右方向内方に同期して伸長することにより、左右の把持部材26,26が同期して内方に摺動する。これに伴い、アーム2が左右の切欠き26b,26bに当接されて挟まれた状態となる。このように、第2のアーム保持機構23は、アーム2の左右及び前後方向の位置決めを行い、且つアーム2を左右から把持して保持する。
【0036】
ブラケット押上機構30は、アーム保持機構20に保持されたアーム2に対してブラケット3を揺動させて押し上げる。ブラケット押上機構30は、ブラケット3に押し付ける押上部材31と、押上部材31を駆動動作させるアクチュエータ32とからなる。
【0037】
押上部材31は、その上端面31aが水平であり、その前後方向中央部に開口31bが形成されている。アクチュエータ32は、装置架台に配置された直動式のシリンダであり、シリンダ32のロッド32aは上下方向に進退動作する。そして、ロッド32aの先端に押上部材31が設けられている。ここでは、ロッド32aの上端に固定されたブラケット32bの上部に押上部材31が固定されている。
【0038】
図6を参照して、シリンダ32のロッド32aが上方向に伸長することにより、押上部材31が上昇する。これに伴い、当初任意の角度に傾斜したブラケット3が、押上部材31に当接されて押し上がる。押上部材31の上端面31aと当接されたブラケット3の底面3cが水平となるまで、押上部材31を上昇させる。
【0039】
ブラケット方向判定機構40は、ブラケット3の先端が位置する方向を判別する。ケース4は左右及び前後対称に構成されており、ケース配置部材21に配置された状態では、ブラケット3が左右何れかの方向に突出するものであるか判別できない。そこで、ブラケット方向判定機構40は、ブラケット3の先端が左右何れに位置するかを判別する。
【0040】
ブラケット方向判定機構40は、2組の光センサ41,41からなる。各光センサ41は、可視光や赤外線等の光を出光する出光部41aと、出光部41aと対向して配置され、受光した光量に応じて信号を生成する受光部41bとから構成される。出光部41aから出光された光がブラケット3で遮断されるとき、受光部41bでその光が受光されず、出光部41aから出光された光がブラケット2で遮断されないとき、受光部41bがその光を受光する。
【0041】
光センサ41,41は、ブラケット押上機構30により底面3cが水平となったブラケット3の先端が揺動軸6より左右それぞれの側にある場合に、出光した光がブラケット3で遮断される位置に出光部41a,41aが配置される。
【0042】
ガイド設定機構50は、ガイド部材51を所定位置に位置させる。ガイド設定機構50は、ブラケット3を所定角度にガイドするガイド部材51と、ガイド部材51を駆動動作させるアクチュエータ52とを備える。
【0043】
ガイド部材51は、その左右上端部に所定角度に傾斜したテーパ状の傾斜ガイド面51a,51aがガイド部として形成されており、左右対称となっている。各傾斜ガイド面51aの傾斜角度は、アーム2に対するブラケット3の設定傾斜角度であり、例えば50度である。アクチュエータ52は、シリンダ32のロッド32aの先端に固定された直動式のシリンダであり、シリンダ52のロッド52aは上下方向に進退動作する。そして、ロッド52aの先端にガイド部材51が固定されている。
【0044】
シリンダ51のロッド51aが上方向に所定ストローク伸長することにより、ガイド部材51が所定位置に位置される。
【0045】
図7を参照して、ガイド当接機構60は、ブラケット3を揺動させて押し下げ、ブラケット3を傾斜ガイド面51aに当接させる。ガイド当接機構60は、先端が左側に位置するブラケット3に当接して押し下げる左当接体61と、先端が右側に位置するブラケット3に当接して押し下げる右当接体62と、それぞれの当接体61,62を駆動動作させるアクチュエータ63,64とからなる。
【0046】
各当接体61,62は、それぞれ円柱状に形成されている。アクチュエータ63,64は、装置架台に配置された回転式のエアシリンダであり、シリンダ63,64のそれぞれのロッド63a,64aは回転動作する。そして、ロッド63a,64aの先端に、それぞれ当接体61,62が固定されている。ロッド63a,64aは、それぞれシリンダ63,64に固定されたブラケット63b,64bに軸支されている。なお、図2では、ブラケット63b,64bは省略されている。
【0047】
ブラケット3の先端が左側に位置するとき、左のシリンダ63のロッド63aを時計回りに回転させることにより、左当接体61がブラケット3を押し下げて、ブラケット3の底面3cを左の傾斜ガイド面51cに当接させる。一方、ブラケット3の先端が右側に位置するとき、右のシリンダ64のロッド64aを反時計回りに回転させることにより、右当接体62がブラケット3を押し下げて、ブラケット3の底面3cを右の傾斜ガイド面51cに当接させる。これにより、ブラケット3はアーム2に対して所定設定角度に傾斜する。
【0048】
制御装置は、CPU、ROM、RAM、I/O等から構成されており、図示しないスタートボタンに接続されている。制御装置は、スタートボタンが押下されると、シリンダ25,27,32,52に制御信号を出力する。また、制御装置は、光センサ41,41から信号が入力され、この入力信号に基づいて、シリンダ63,64の何れかに制御信号を出力する。
【0049】
以下、角度調整装置10を用いて、本発明の実施形態に係るチェッカ1の角度調整方法について説明する。なお、以下の処理は、制御装置により実行される。
【0050】
図9に示すように、まず、ブラケット3の角度が種々異なる状態で箱に収容されたチェッカ1を1本、作業者又はロボットが取り出し、ブラケット3をケース配置部材21の上部付近に位置させて配置する(S1)。そして、作業者はスタートボタンを押下する(S2)。
【0051】
スタートボタンが押下されると(S2:YES)は、アーム保持機構20がアーム2の位置決めを行い、且つその状態でアーム2を保持するアーム保持工程(S3)が行われる。
【0052】
具体的には、前後のシリンダ25,25のロッド25a,25aを上方向に所定ストロークだけ同期して伸長させ、前後の把持部材24,24を同期して内方に向かって回転させる。これに伴い、傾斜したアーム2が前後方向から把持部材24,24に当接されて立ち上がる。アーム2は、前後の把持部材24,24に挟まれて真っ直ぐに起立し、前後及び上下方向が位置決めされる。把持部材24,24がアーム2を直立させる過程において、ケース4がガイド面21bにガイドされて凹部21aに落ち込み、ケース4が凹部2aに載置されて位置決めされ、ブラケット3が貫通穴21cの下方の空間Sに吊下げられる。
【0053】
そして、左右のシリンダ27,27のロッド27a,27aを左右方向内方に所定ストロークだけ同期して伸長させ、左右の把持部材27,27を同期して内方に摺動させる。これに伴い、アーム2は、左右の切欠き26b,26bに当接されて挟まれ、左右方向が位置決めされる。これにより、図5及び図6に示す状態となる。
【0054】
次に、アーム保持機構20に保持されたアーム2に対してブラケット3を揺動させて押し上げるブラケット押上工程が行われる(S4)。
【0055】
具体的には、シリンダ32のロッド32aを所定ストロークだけ伸長させて、押上部材31の上端面31aと当接するブラケット3の底面3cが水平になるまで、押上部材31を上昇させる。その後、シリンダ32のロッド32aを短縮させて、押上部材31を初期位置まで下降させる。このとき、押上部材31でブラケット3を支持しなくとも、自重によりブラケット3が揺動して下がることはない、もしくは短時間では僅かしか下がらない。
【0056】
次に、ブラケット3の先端が位置する方向を判別するブラケット方向判別工程が行われる(S5)。具体的には、両方の光センサ41,41の出光部41a,41aが光を発光し、受光部41b,41bが受光された光量に基づき出力した信号からブラケット3の先端が位置する方向を判別する。
【0057】
次に、ガイド部材51を所定位置に位置させるガイド設定工程が行われる(S6)。具体的には、シリンダ52のロッド52aが所定ストロークだけ伸長して、ガイド部材51が所定位置に位置する。
【0058】
次に、ブラケット3を揺動させて押し下げ、ブラケット3を傾斜ガイド面51aに当接させるガイド当接工程が行われる(S7)。
【0059】
具体的には、S5でブラケット3の先端が左側に位置すると判定された場合、左のシリンダ63のロッド63aが時計回りに回転して、左当接体61がブラケット3を押し下げ、ブラケット3の底面3cを左の傾斜ガイド面51aに当接する。一方、S5でブラケット3の先端が右側に位置すると判定された場合、右のシリンダ64のロッド64aが反時計回りに回転して、右当接体62がブラケット3を押し下げ、ブラケット3の底面3cを右の傾斜ガイド面51aに当接する。これにより、ブラケット3はアーム2に対して所定設定角度だけ傾斜した状態となる。
【0060】
その後、チェッカ角度調整装置10を初期状態に戻しチェッカ1を解除する解除工程が行われる(S8)。
【0061】
具体的には、まず、S5で回転させたシリンダ63(64)のロッド63a(64a)をS5とは逆回転させて、当接体61(62)を初期位置に戻す。そして、シリンダ52のロッド52aを短縮させて、ガイド部材51を初期位置に戻す。左右のシリンダ27,27のロッド27a,27aを短縮させて、左右の把持部材27,27を初期位置に戻す。さらに、前後のシリンダ25,25のロッド25a,25aを短縮させて、前後の把持部材24,24を初期位置に戻す。
【0062】
その後、チェッカ角度調整装置10からチェッカ1を作業者又はロボットが取り出す(S9)。角度調整されたチェッカ1は、車両に組み付けられる。
【0063】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る角度調整装置10を用いたチェッカ1の角度調整方法によれば、アーム保持機構20に保持されたアーム2に対してブラケット押上機構30でブラケット3を揺動させて一旦押し上げ(S4)、ガイド設定機構50で所定位置にガイド部材51を位置させる(S6)。その後、ガイド当接機構60でブラケット3を揺動させて押し下げてガイド部材51の傾斜ガイド面51aにブラケット3の底面3cを当接させる(S7)。
【0064】
そのため、アーム2に対するブラケット3の当初の角度に拘わらず、ブラケット3を押し下げて傾斜ガイド面51aに当接させ、ブラケット3の底面3cの角度を傾斜ガイド面51aの角度に倣わすことが可能となる。従って、チェッカ1のブラケット3の角度調整が自動化できる。
【0065】
また、ブラケット3の先端が位置する方向をブラケット方向判定機構40で判別するので(S5)、ブラケット3の先端が位置する当初の方向に拘わらず、ブラケット3の角度調整ができる。そのため、作業者又はロボットがブラケット3の方向を所定方向に揃えた状態で角度調整装置10にチェッカ1を供給する必要がない。
【0066】
また、把持部材24,24、ガイド部材51等を交換し、シリンダ25,27,32,52のストローク及びシリンダ63,64の回転角度を変更することにより、種々の異なるチェッカ1のブラケット3の角度調整を行うことが可能となるので、汎用性に優れている。
【0067】
なお、以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、実施形態では、ブラケット押上機構30は底面3cが水平になるまでブラケット3を押し上げる場合(S4)について説明した。しかし、ブラケット方向判定機構40でブラケット3の方向が判定可能であれば、底面3cが水平になるまでブラケット3を押し上げなくてもよい。
【0068】
また、実施形態では、ガイド部材51のガイド部が傾斜ガイド面51aである場合について説明した。しかし、ガイド部の形状は面状に限定されず、ガイド部が当接するブラケット3の形状に応じて適宜定めればよい。
【0069】
また、実施形態では、押上部材31とガイド部材51とが別個である場合について説明した。しかし、押上部材31とガイド部材51を共通化して、これを共通したアクチュエータで駆動動作させてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…チェッカ、 2…アーム、 3…ブラケット、 3c…底面、 4…ケース、 10…角度調整装置、 20…アーム保持機構、 21…ケース配置部材、 22…第1のアーム保持機構、 23…第2のアーム保持機構、 30…ブラケット押上機構、 31…押上部材、 31a…上端面、 40…ブラケット方向判定機構、 50…ガイド設定機構、 51…ガイド部材、 51a…傾斜ガイド面(ガイド部)、 60…ガイド当接機構。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、該アームの先端に揺動可能に支持されたブラケットとを有するチェッカの角度調整装置であって、
前記ブラケットを下部に位置させて前記アームを保持するアーム保持機構と、
前記アーム保持機構で保持された前記アームに対して前記ブラケットを揺動させて押し上げるブラケット押上機構と、
ガイド部を有するガイド部材を所定位置に位置させるガイド設定機構と、
前記ブラケットを揺動させて押し下げ、前記所定位置に位置する前記ガイド部材のガイド部に前記ブラケットを当接させるガイド当接機構とを備えることを特徴とするチェッカの角度調整装置。
【請求項2】
前記ブラケットの先端が位置する方向を判別するブラケット方向判定機構を備え、
前記ガイド当接機構は複数存在し、前記ブラケット方向判定部が判定した方向に応じて、前記複数のガイド当接機構の何れかを作動させて前記ブラケットを押し下げることを特徴とする請求項1に記載のチェッカの角度調整装置。
【請求項3】
前記アームに貫通され、所定範囲内で該アームに対して摺動可能なケースを前記チェッカが有し、前記アーム保持機構は前記ケースが位置決めされた前記チェッカのアームを保持することを特徴とする請求項1又は2に記載のチェッカの角度調整装置。
【請求項4】
アームと、該アームの先端に揺動可能に支持されたブラケットとを有するチェッカの角度調整方法であって、
前記ブラケットを下部に位置させて前記アームを保持するアーム保持工程と、
保持された前記アームに対して前記ブラケットを揺動させて押し上げるブラケット押し上げ揺動工程と、
ガイド部を有するガイド部材を所定位置に位置させるガイド設定工程と、
前記ブラケットを揺動させて押し下げ、前記所定位置に位置する前記ガイド部材のガイド部に前記ブラケットを当接させるガイド当接工程とを備えることを特徴とするチェッカの角度調整方法。
【請求項5】
前記ブラケット押上工程において、上端面が水平な押上部材を上昇させて、前記ブラケットを揺動させ、当該ブラケットの底面を前記押上部材の上端面に当接させて水平にした後、前記押上部材を下降させ、その後、前記ガイド当接工程において、前記ブラケットの底面を面からなる前記ガイド部に当接させることを特徴とする請求項4に記載のチェッカの角度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−252307(P2011−252307A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126229(P2010−126229)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】