説明

チェックバルブ

【課題】 チェックバルブの高い開閉応答性を確保しながら騒音の発生を防止する。
【解決手段】 チェックバルブ48のバルブシート63およびストッパ65を樹脂製とし、チェックボール64をカーボン製あるいは樹脂製としたので、チェックボール64が金属製のものよりも軽くなって慣性が小さくなるため、チェックバルブ48の高い周波数での開閉が容易になって応答性が向上するだけでなく、チェックボール64がバルブシート63およびストッパ65に衝突したときの衝撃を緩和して騒音の防止および耐久性の向上を図ることができる。またバルブシート63およびストッパ65を保持するバルブハウジング61,62を減衰能が高い片状黒鉛鋳鉄製としたので、チェックボール64がバルブシート63およびストッパ65に衝突した衝撃を効率的に減衰させて外部への騒音の伝播を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブシートと、前記バルブシートに着座可能に対向するチェックボールと、前記チェックボールが前記バルブシートから離間する位置を規制するストッパとを備えるチェックバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
バルブボディがバルブシートに着座する位置とバルブシートから離間する位置との間を細かく振動して騒音が発生するのを防止するチェックバルブが、下記特許文献1〜3により公知である。
【0003】
特許文献1、3に記載されたものは、バルブボディの周囲の流体の流れを不均一にしてラジアル方向の荷重を発生させ、この荷重でバルブボディをハウジングの内壁に押し付けて摩擦力を発生させ、この摩擦力でバルブボディの振動を抑制して騒音の発生を防止するようになっている。
【0004】
また特許文献2に記載されたものは、バルブボディの重心位置を該バルブボディの中心線から偏心させ、重力による偏心荷重でバルブボディをハウジングの内壁に押し付けて摩擦力を発生させ、この摩擦力でバルブボディの振動を抑制して騒音の発生を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−292148号公報
【特許文献2】特開2008−223927号公報
【特許文献3】特開2010−138927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記従来のものは、バルブボディが開弁状態および閉弁状態の中間位置で細かく振動して発生する騒音を防止するものであるが、高い周波数で開弁および閉弁を繰り返す必要があるチェックバルブでは、バルブボディがバルブシートおよびストッパに交互に衝突して発生する騒音が問題となる。この場合、上記従来のものの如く、バルブボディに摩擦力を与えて振動を防止しようとすると、バルブボディの素早い移動が抑制されて高い開閉応答性を確保することが困難となる。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、チェックバルブの高い開閉応答性を確保しながら騒音の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、バルブシートと、前記バルブシートに着座可能に対向するチェックボールと、前記チェックボールが前記バルブシートから離間する位置を規制するストッパとを備えるチェックバルブにおいて、前記バルブシートおよび前記ストッパが樹脂製であり、前記チェックボールがカーボン製あるいは樹脂製であることを特徴とするチェックバルブが提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記バルブシートおよび前記ストッパを保持する保持部材が片状黒鉛鋳鉄製であることを特徴とするチェックバルブが提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記チェックバルブは液圧デューティ信号を出力する流量制御バルブに接続され、前記液圧デューティ信号の周波数で開閉することを特徴とするチェックバルブが提案される。
【0011】
尚、実施の形態の第1、第2バルブハウジング61,62は本発明の保持部材に対応する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、チェックバルブのバルブシートおよびストッパを樹脂製とし、チェックボールをカーボン製あるいは樹脂製としたので、チェックボールが金属製のものよりも軽くなって慣性が小さくなるため、チェックバルブの高い周波数での開閉が容易になって応答性が向上するだけでなく、チェックボールがバルブシートおよびストッパに衝突したときの衝撃を緩和して騒音の防止および耐久性の向上を図ることができる。
【0013】
また請求項2の構成によれば、バルブシートおよびストッパを保持する保持部材を減衰能が高い片状黒鉛鋳鉄製としたので、チェックボールがバルブシートおよびストッパに衝突した衝撃を効率的に減衰させて外部への騒音の伝播を防止することができる。
【0014】
また請求項3の構成によれば、チェックバルブは液圧デューティ信号を出力する流量制御バルブに接続されており、液圧デューティ信号の周波数で応答性良く開閉する必要があるため、その効果を有効に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液圧ハイブリッド車両の駆動力伝達系を示す図。
【図2】流量制御バルブの縦断斜視図。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】図3の4−4線断面図。
【図5】図3の5−5線断面図。
【図6】スリーブ、デストリビュータおよびロータの分解斜視図。
【図7】図4の7−7線展開図。
【図8】ポンプ・モータの駆動回路の等価回路を示す図。
【図9】ポンプ・モータの駆動回路を示す図。
【図10】チェックバルブの縦断斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図10に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1に示すように、液圧ハイブリッド車両は直列に接続されたポンプ・モータM、エンジンEおよびトランスミッションTを備える。例えばギヤモータで構成されるポンプ・モータMおよびエンジンEを接続する連結軸11には第1ギヤ12および第1クラッチ13が設けられるとともに、トランスミッションTおよび駆動輪Wを接続する出力軸14には第2クラッチ15および第2ギヤ16が設けられる。エンジンEおよびトランスミッションTを迂回するバイパス軸17には、第3クラッチ18と、前記第1ギヤ12に噛合する第3ギヤ19と、前記第2ギヤ16に噛合する第4ギヤ20とが設けられる。
【0018】
ポンプ・モータMと、タンク21と、アキュムレータ22と、流量制御バルブ23とが切換制御バルブ24を介して接続され、ポンプ・モータMはアキュムレータ22に蓄圧された液圧でモータとして作動する状態と、外部から駆動されてアキュムレータ22を蓄圧するポンプとして作動する状態とが切り換えられる。タンク21と切換制御バルブ24との間には液体を冷却するラジエータ25が設けられる。尚、ラジエータ25はアキュムレータ22と切換制御バルブ24との間に設けても良い。
【0019】
従って、第1クラッチ13を係合して第2クラッチ15および第3クラッチ18を係合解除した状態では、アキュムレータ22に蓄圧された液圧でポンプ・モータMをモータとして作動させてエンジンEを始動することができ、エンジンEを駆動してポンプ・モータMをポンプとして作動させてアキュムレータ22を蓄圧することができる。
【0020】
第3クラッチ18を係合して第1クラッチ13および第2クラッチ15を係合解除した状態では、アキュムレータ22に蓄圧された液圧でポンプ・モータMを駆動すると、その駆動力は連結軸11→第1ギヤ12→第3ギヤ19→第3クラッチ18→バイパス軸17→第4ギヤ20→第2ギヤ16→出力軸14の経路で駆動輪Wに伝達され、車両をポンプ・モータMの駆動力で発進あるいは走行させることができる。この状態でポンプ・モータMを回生制動すれば、駆動輪W側から逆伝達される駆動力でポンプ・モータMをポンプとして作動させ、アキュムレータ22を蓄圧することで車両の運動エネルギーを液圧エネルギーとして回収することができる。
【0021】
第2クラッチ15を係合して第1クラッチ13および第3クラッチを係合18を係合解除した状態では、エンジンEの駆動力は第2クラッチ15および出力軸14を経て駆動輪Wに伝達され、車両をエンジンEの駆動力で発進あるいは走行させることができる。この状態で更に第1クラッチ13を係合すれば、ポンプ・モータMをモータとして作動させてエンジンEの駆動力をポンプ・モータMの駆動力でアシストすることができ、ポンプ・モータMをポンプとして作動させてアキュムレータ22を蓄圧することができる。
【0022】
次に、前記流量制御バルブ23の構造を図2〜図6に基づいて説明する。流量制御バルブ23は、ポンプ・モータMがモータとして作動するときにアキュムレータ22からポンプ・モータMに供給される液体の流量を制御し、またポンプ・モータMがポンプとして作動するときにポンプ・モータMからアキュムレータ22に供給される液体の流量を制御する。
【0023】
流量制御バルブ23は、センターハウジング31と、センターハウジング31の一端部にボルト32…で結合された第1エンドハウジング33と、センターハウジング31の他端部にボルト34…で結合された第2エンドハウジング35とで構成されるバルブハウジング36を備える。センターハウジング31の軸線L上には円形断面の大径孔31aおよび円形断面の小径孔31bが同軸に形成されており、小径孔31bの外周を囲むように環状の入力液室31cが形成されるとともに、大径孔31aの外周を囲むように環状の出力液室31dが形成される。センターハウジング31の一側面には、前記入力液室31cに連通する入力ポート31eと、前記出力液室31dに連通する出力ポート31fとが開口する。
【0024】
センターハウジング31の一端部に開口する大径孔31aに円筒状のスリーブ37が圧入により嵌合する。スリーブ37には、軸線Lを中心として各々180°の中心角を有する第1、第2出口開口37a,37bが、前記出力液室31dに臨むように形成される。第1、第2出口開口37a,37bはスリーブ37を展開した状態で矩形状であり、その位相は相互に180°ずれ、かつ軸線L方向に重ならないように離間して配置される。
【0025】
デストリビュータ38は円筒部38aと軸部38bとを備えており、円筒部38aはスリーブ37の内周に相対回転自在に嵌合し、軸部38bは第1エンドハウジング33の軸孔33aを相対回転自在に貫通する。デストリビュータ38の円筒部38aの軸線L方向の位置は、第1エンドハウジング33との間に配置されたシム39により規制される。円筒部38aには、スリーブ37の第1、第2出口開口37a,37bに重なることが可能な第1、第2連通孔群38c,38dが形成される。第1、第2連通孔群38c,38dは、千鳥状に配置された多数の円形の連通孔38e…で構成される。
【0026】
第1エンドハウジング33の軸孔33aには、デストリビュータ38の軸部38bとの間をシールするシールリング40およびメカニカルシール41が設けられており、シールリング40およびメカニカルシール41の間に形成されたドレン室33bがドレンポート33cを介して第1エンドハウジング33の外部に連通する。デストリビュータ38の軸部38bには、ロータ42の軸端をドレン室33bに連通させるドレン通路38fが形成されており、これによりロータ42に軸線L方向のスラスト力が作用することが防止される。
【0027】
ロータ42は円筒部42aと軸部42bとを備えており、開口端がプラグ43で閉塞された円筒部42aはデストリビュータ38の内周に相対回転自在に嵌合し、軸部42bは第2エンドハウジング35の軸孔35aを相対回転自在に貫通する。ロータ42の円筒部42aの軸線L方向の位置は、第2エンドハウジング35の間に配置されたシム44により規制される。円筒部42aには、デストリビュータ38の第1、第2連通孔群38c,38dにそれぞれ連通可能な第1、第2入口開口42c,42dの対が、180°の位相差をもって二対形成される。第1、第2入口開口42c,42dは軸線L方向に伸びるスリット状に形成されており、その軸線L方向の幅は第1、第2出口開口37a,37bおよび第1、第2連通孔群38c,38dの軸線L方向の幅に一致している。
【0028】
第2エンドハウジング35の軸孔35aには、ロータ42の軸部42bとの間をシールするメカニカルシール45が設けられており、センターハウジング31およびメカニカルシール45の間に形成されたドレン室35bがドレンポート35cを介して第2エンドハウジング35の外部に連通する。ロータ42の内部空間42eは、液孔42fを介してセンターハウジング31の入力液室31cに連通する。
【0029】
デストリビュータ38の軸部38bは第1電動モータ46に接続され、第1、第2連通孔群38c,38dがスリーブ37の第1、第2出口開口37a,37bと完全に重なる位置と、全く重ならない位置との間を、180°に亙って回転駆動される。ロータ42の軸部42bは第2電動モータ47に接続され、可変速度で回転駆動される。
【0030】
次に、上記構成を備えた流量制御バルブ23の作用を説明する。
【0031】
図7は図4の7−7線展開図であって、バルブハウジング36に固定されたスリーブ37と、第1電動モータ46によりスリーブ37に対して0°〜180°の範囲で相対回転するデストリビュータ38の円筒部38aと、第2電動モータ47によりスリーブ37およびデストリビュータ38に対して可変速度で相対回転するロータ42の円筒部42aとを360°に亙って円周方向に展開した状態を示しており、図7(A)はデューティ比=100%(全開)の状態、図7(B)はデューティ比=50%(半開)の状態、図7(C)はデューティ比=0%(全閉)の状態にそれぞれ対応する。
【0032】
スリーブ37の第1出口開口37aは、その中心角360°のうちの0°〜180°の範囲で開口しており、デューティ比100%の状態では、デストリビュータ38の第1連通孔群38cは、その全領域でスリーブ37の第1出口開口37aに重なっており、従ってスリーブ37の第1出口開口37aの実質開口範囲は0°〜180°となる。デューティ比50%の状態では、デストリビュータ38がスリーブ37に対して図中左から右に90°相対回転し、デストリビュータ38の第1連通孔群38cは、その全領域の半分でスリーブ37の第1出口開口37aに重なっており、従ってスリーブ37の第1出口開口37aの実質開口範囲は90°〜180°となる。デューティ比0%の状態では、デストリビュータ38がスリーブ37に対して図中左から右に180°相対回転し、デストリビュータ38の第1連通孔群38cは第1出口開口37aに全く重ならなくなり、従ってスリーブ37の第1出口開口37aの実質開口範囲はゼロとなる。
【0033】
第2電動モータ47でロータ42をスリーブ37およびデストリビュータ38に対して回転させると、ロータ42に180°の位相差で設けた2個の第1入口開口42c,42cが図中左側から右側に移動する。図7には、2個の第1入口開口42c,42cのうちの1個だけが示されている。
【0034】
ポンプ・モータMがモータとして作動するとき、センターハウジング31の入力ポート31eはアキュムレータ22に接続され、センターハウジング31の出力ポート31fはタンク21に接続される。よって、アキュムレータ22の高圧の液体は、センターハウジング31の入力ポート31e→センターハウジング31の入力液室31c→ロータ42の液孔42fの経路でロータ42の内部空間42eに供給される。そしてロータ42の内部空間42eに臨む第1入口開口42cがスリーブ37の第1出口開口37aの実質開口範囲に重なったとき、前記内部空間42eの液体はロータ42の第1入口開口42c→デストリビュータ38の第1連通孔群38c→スリーブ37の第1出口開口37a→センターハウジング31の出力液室31d→センターハウジング31の出力ポート31fの経路でタンク21に戻され、ポンプ・モータMはモータとして作動する。
【0035】
このとき、デストリビュータ38の第1、第2連通孔群38c,38dは相互に仕切られた多数の連通孔38e…で構成されているので、スリーブ37の第1、第2出口開口37a,37bに対向しない連通孔38e…を介して液体が円周方向に短絡するのを防止することができる。
【0036】
スリーブ37の内周とデストリビュータ38の外周との間を通過し、更にシールリング40を通過した液体は、第1エンドハウジング33のドレン室33bおよびドレンポート33cを介してバルブハウジング36の外部に排出される。またセンターハウジング31の小径孔31bの内周とロータ42の外周との間に漏れ出した液体は、第2エンドハウジング35のドレン室35bおよびドレンポート35cを介してバルブハウジング36の外部に排出される。
【0037】
図7(B)において、入力ポート31eおよび出力ポート31fが連通しているロード期間θ1と、入力ポート31eおよび出力ポート31fが連通していないアンロード期間θ2との和は180°であり、θ1/(θ1+θ2)がデューティ比となる。この場合には、θ1=θ2=90°であり、デューティ比=50%となる。このデューティ比は、第1電動モータ46でデストリビュータ38の回転角を0°〜180°の範囲で変化させることで0%〜100%の範囲で制御することができる。例えば、図7(A)の状態では、θ1=180°、θ2=0°であり、デューティ比=100%(全開)となる。また図7(C)の状態では、θ1=0°、θ2=180°であり、デューティ比=0%(全閉)となる。
【0038】
ところで、上述した流量制御バルブ23の第1入口開口42c、第1連通孔群38cおよび第1出口開口37aは、ロータ42の回転角が0°〜180°の範囲でデューティ波形を出力し、ロータ42の回転角が180°〜360°の範囲でデューティ波形を出力することができないが、第1入口開口42cに隣接する第2入口開口42dと、第1連通孔群38cおよび第1出口開口37aに対して位相が180°ずれた第2連通孔群38dおよび第2出口開口37bとが、ロータ42の回転角が180°〜360°の範囲で同じデューティ波形を出力するため、流量制御バルブ23はロータ42の1回転につき2回のデューティ波形を出力する。よって第2電動モータ47によるロータ42の回転数をNとすると、流量制御バルブ23が出力するデューティ波形の周波数は2Nとなり、第2電動モータ47の回転数を低く抑えながら高いデューティ周波数を得ることができる。
【0039】
以上のように本実施の形態によれば、アキュムレータ22からポンプ・モータMに供給する液体の流量を流量制御バルブ23によってデューティ制御するので、液体の流量を絞り弁によって制御する場合に比べて、熱損失を低減して高い効率を得ることができる。その際に、ロータ42の回転数を調整して最適のデューティ周波数を選択することで、更に高い効率を得ることができる。しかも入力液室31cおよび出力液室31dの液圧はデストリビュータ38およびロータ42に軸線L方向のスラスト荷重を発生させないため、デストリビュータ38およびロータ42をスラスト荷重に耐えるように支持する必要がなくなり、構造を簡素化して重量およびコストを削減することができる。
【0040】
またスリーブ37の第1、第2出口開口37a,37bはそれぞれ180°の中心角を有しているため、それらが軸線L方向にオーバーラップすると第1、第2出口開口37a,37bが相互に連通してスリーブ37が二部材に分割されてしまうが、それらを軸線L方向にずらして配置したことでスリーブ37を一部材で構成することが可能となる。同様に、デストリビュータ38の第1、第2連通孔群38c,38dはそれぞれ180°の中心角を有しているため、それらが軸線L方向にオーバーラップすると第1、第2連通孔群38c,38dが相互重なってデストリビュータ38の剛性が低下してしまうが、それらを軸線L方向にずらして配置したことでデストリビュータ38の剛性を確保することが可能となる。
【0041】
以上、ポンプ・モータMをモータとして作動させる場合について説明したが、ポンプ・モータMをポンプとして作動させる場合にも、流量制御バルブ23は同様にして液体の流量をPWM制御する。
【0042】
次に、ポンプ・モータMの作動をモータおよびポンプに切り換える液圧制御回路の構造を説明する。
【0043】
図8は液圧制御回路の等価回路を示すもので、切換制御バルブ24は四つのポートPa,Pb,Pc,Pdと、遮断弁24aと、切換弁24bとを備える。ポートPaはアキュムレータ22に接続され、ポートPbはタンク21に接続され、ポートPcはポンプ・モータMに接続され、ポートPdはチェックバルブ48の下流側に接続される。ポートPaとポートPdとの間には前記遮断弁24aが配置され、ポートPcは前記切換弁24bを介してポートPa,PdまたはポートPbに選択的に接続される。またチェックバルブ48の上流側は、ポンプ・モータMに接続されるとともに、前記流量制御バルブ23を介してポートPbおよびタンク21に接続される。
【0044】
図9は、前記図8の等価回路の切換制御バルブ24を具体化した液圧回路であり、切換制御バルブ24はバルブハウジング49に摺動自在に嵌合するスプール50と、このスプール50を駆動する2個のソレノイド51,52と、スプール50を中立位置に付勢するリターンスプリング53,54とで構成される。
【0045】
図8および図9(A)に示すように、ポンプ・モータMをモータとして作動させるとき、ソレノイド51が励磁してソレノイド52が消磁することでスプール50が図中上方に移動し、遮断弁24aが開弁して切換弁24bが駆動・中立側に切り換えられる。その結果、流量制御バルブ23のデューティ比が100%のとき、アキュムレータ22の液体はポートPa→遮断弁24a→切換弁24b→ポートPc→ポンプ・モータM→流量制御バルブ23→タンク21の経路で流れ、ポンプ・モータMを駆動することができる。
【0046】
流量制御バルブ23のデューティ比が0%のとき、ポンプ・モータMを通過した液体は流量制御バルブ23に阻止されてタンク21に流入することができないため、アキュムレータ22の液体はポートPa→遮断弁24a→切換弁24b→ポートPc→ポンプ・モータM→チェックバルブ48→ポートPd→切換弁24bの経路で閉じたアンロード回路を循環する。このときアンロード回路を流れる液体はアキュムレータ22の高圧液体であるため(高圧アンロード)、キャビテーションの発生を効果的に抑制することができる。
【0047】
流量制御バルブ23のデューティ比が0%よりも大きく100%よりも小さいとき、流量制御バルブ23が開弁しているデューティON期間はポンプ・モータMが駆動力を発生するロード状態になり、流量制御バルブ23が閉弁しているデューティOFF期間はポンプ・モータMが駆動力を発生しないアンロード状態になる。
【0048】
図8および図9(B)に示すように、ポンプ・モータMをモータとしてもポンプとしても作動させないとき(中立状態)、ソレノイド51およびソレノイド52が共に消磁することでスプール50が中立位置となり、遮断弁24aが閉弁して切換弁24bが駆動・中立側に切り換えられる。その結果、ポンプ・モータM→チェックバルブ48→ポートPd→切換弁24b→ポートPc→ポンプ・モータMの閉じたアンロード回路が構成され、ポンプ・モータMは無負荷で回転する。
【0049】
図8および図9(C)に示すように、ポンプ・モータMをポンプとして作動させるとき、ソレノイド51が消磁してソレノイド52が励磁することでスプール50が図中下方に移動し、遮断弁24aが開弁して切換弁24bが回生側に切り換えられる。その結果、流量制御バルブ23のデューティ比が0%のとき、ポンプ・モータMで加圧された液体は流量制御バルブ23を通過することができないため、タンク21の液体はポートPb→切換弁24b→ポートPc→ポンプ・モータM→チェックバルブ48→ポートPd→遮断弁24a→ポートPa→アキュムレータ22の経路で流れ、アキュムレータ22を蓄圧することができる。
【0050】
流量制御バルブ23のデューティ比が100%のとき、ポンプ・モータMを通過した液体は流量制御バルブ23を無負荷で通過できるため、タンク21の液体はポートPb→切換弁24b→ポートPc→ポンプ・モータM→流量制御バルブ23→ポートPbの経路で閉じたアンロード回路を循環する。このときアンロード回路を流れる液体はタンク21の低圧液体であるため(低圧アンロード)、液体のリーク防止するとともに、ポンプ・モータMおよび流量制御バルブ23の動作抵抗を低減することができる。
【0051】
流量制御バルブ23のデューティ比が0%よりも大きく100%よりも小さいとき、流量制御バルブ23が閉弁しているデューティOFF期間はポンプ・モータMが液圧を発生するロード状態になり、流量制御バルブ23が開弁しているデューティON期間はポンプ・モータMが液圧を発生しないアンロード状態になる。
【0052】
本実施の形態では、ポンプ・モータMを液圧ハイブリッド車両用の駆動源として用いているので、ポンプ・モータMがモータとして作動するとき(駆動時)もポンプとして作動するとき(回生制動時)も回転方向は同一であるが、切換制御バルブ24でタンク21およびアキュムレータ22の接続関係を反転することで、ポンプ・モータMの回転方向を反転する機構を必要とせずに、ポンプ・モータMの駆動および回生制動を支障なく行わせることができる。また1個の切換制御バルブ24でポンプ・モータMの駆動、回生、中立の切り換えを行うことができるだけでなく、ポンプ・モータMの駆動時には高圧アンロード回路を自動的に構成し、ポンプ・モータMの回生制動時には低圧アンロード回路を自動的に構成することができる。
【0053】
次に、図10に基づいてチェックバルブ48の構造を説明する。
【0054】
チェックバルブ48は一体に結合された第1バルブハウジング61および第2バルブハウジング62を備えており、第1、第2バルブハウジング61,62の間に円環状のバルブシート63が挟持される。第1バルブハウジング61にはバルブシート63の一側面から延びて流量制御バルブ23およびポンプ・モータMに連なるL字状の入口側通路61aが形成されるとともに、第2バルブハウジング62にはバルブシート63の他側面に臨むチェックボール収納空間62aと、このチェックボール収納空間62aをアキュムレータ22に接続する5個の出口側通路62b…とが形成される。チェックボール収納空間62aにはチェックボール64が移動可能に収納されており、5個の出口側通路62b…の中央にチェックボール64の背部に当接可能なストッパ65が装着される。
【0055】
バルブシート63およびストッパ65は軽量で衝撃吸収性性能に優れた樹脂製であり、チェックボール64は軽量で衝撃吸収性性能に優れたカーボン製あるいは樹脂製である。またバルブシート63およびストッパ65を保持する第1、第2バルブハウジング61,62は、減衰能に優れた片状黒鉛鋳鉄製とされる。
【0056】
図8において、ポンプ・モータMがモータとして作動する駆動時には、流量制御バルブ23が開弁するデューティON時にチェックバルブ48は閉弁し、流量制御バルブ23が閉弁するデューティOFF時にチェックバルブ48は開弁する。ポンプ・モータMがポンプとして作動する回生時には、流量制御バルブ23が閉弁するデューティOFF時にチェックバルブ48は開弁し、流量制御バルブ23が開弁するデューティON時にチェックバルブ48は閉弁する。このように、チェックバルブ48は流量制御バルブ23により発生する液圧のデューティ周波数に応じた周波数で開閉する。
【0057】
図10において、出口側通路62b…が入口側通路61aよりも高圧になるとチェックバルブ48は閉弁し、チェックボール収納空間62aに収納されたチェックボール64がストッパ65から離間してバルブシート63に着座する。逆に入口側通路61aが出口側通路62b…よりも高圧になるとチェックバルブ48が開弁し、チェックボール収納空間62aに収納されたチェックボール64がバルブシート63から離間してストッパ65に当接する。
【0058】
従って、チェックボール64は短い時間間隔でバルブシート63およびストッパ65に交互に衝突することになるが、バルブシート63およびストッパ65が金属よりも衝撃吸収性能に優れた樹脂製であり、かつチェックボール54が金属よりも衝撃吸収性能に優れたカーボン製あるいは樹脂製であるため、チェックボール64がバルブシート63およびストッパ65に衝突する際の騒音を効果的に低減するとともに、摩耗に対する耐久性を高めることができる。
【0059】
またチェックボール64は鉄よりも軽量なカーボン製あるいは樹脂製であるため、チェックボール64の慣性を小さくして容易に往復移動できるようにし、チェックバルブ48の開閉応答性を高めることができる。しかもバルブシート63およびストッパ65を支持する第1、第2バルブハウジング61,62は減衰能が高い片状黒鉛鋳鉄製であるため、チェックボール64がバルブシート63およびストッパ65に衝突して発生した衝撃が伝播し難くすることで、騒音の発生を更に低減することができる。
【0060】
尚、チェックボール64だけをカーボン製あるいは樹脂製とし、バルブシート63およびストッパ65を鉄製とするとチェックボール6の耐久性が問題となるが、バルブシート63およびストッパ65を樹脂製とすることで上記問題が解決される。また第1、第2バルブハウジング61,62だけでなく、バルブシート63およびストッパ65を共に減衰能が高い片状黒鉛鋳鉄製とすると、バルブシート63およびストッパ65の割れや欠けが問題となるが、バルブシート63およびストッパ65を樹脂製とすることで上記問題が解決される。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0062】
例えば、実施の形態では本発明のチェックバルブ48を液圧ハイブリッド車両のポンプ・モータMの液圧回路に適用しているが、その用途は任意である。
【符号の説明】
【0063】
23 流量制御バルブ
48 チェックバルブ
61 第1バルブハウジング(保持部材)
62 第2バルブハウジング(保持部材)
63 バルブシート
64 チェックボール
65 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブシート(63)と、前記バルブシート(63)に着座可能に対向するチェックボール(64)と、前記チェックボール(64)が前記バルブシート(63)から離間する位置を規制するストッパ(65)とを備えるチェックバルブにおいて、
前記バルブシート(63)および前記ストッパ(65)が樹脂製であり、前記チェックボール(64)がカーボン製あるいは樹脂製であることを特徴とするチェックバルブ。
【請求項2】
前記バルブシート(63)および前記ストッパ(65)を保持する保持部材(61,62)が片状黒鉛鋳鉄製であることを特徴とする、請求項1に記載のチェックバルブ。
【請求項3】
前記チェックバルブ(48)は液圧デューティ信号を出力する流量制御バルブ(23)に接続され、前記液圧デューティ信号の周波数で開閉することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のチェックバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−52636(P2012−52636A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197514(P2010−197514)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】