説明

チェックメータ

【課題】 スリーブ等の被加工物の外周を4方向から中心に向かって同時かつ均等に押し潰すユニバーサルクランプを、工具として完全に使用可能な状態で、その噛合力を直接計測することのできるチェックメータを提供する。
【解決手段】 固定ヘッド(51)に装着された固定のダイス(71)と、前記固定ヘッド(51)の内側に装着され前記工具本体(20)に具備されたポンプ機構に従動するピストン(55)に係合されて連動する複数のダイス(72,73,74)により被加工物(46)を噛み締めて圧潰する液圧工具(200)の噛合力を計測するチェックメータ(100)であって、前記固定または連動するダイス(71,72,73,74)のうち対向する何れか一対のダイス(71,72)に噛み締められ前記噛合力に比例した液圧を発生する噛圧センサ部(1)と、前記噛圧センサ部(1)の発生する液圧を計測可能な圧力計(10)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線のコネクタやスリーブの圧潰(あっかい)作業に使用する液圧工具の噛合力を計測するチェックメータに関し、特に被加工物の外周を4方向から同時かつ均等に押し潰すユニバーサルクランプに用いて好適なチェックメータに関する。
【0002】
電線を敷設するなどの電設工事では、電線を接続するため、チューブ形のスリーブ等の被加工物を、その外周4方向から中心に向かって同時かつ均等に押し潰すため、圧接面が山形にとがったダイスを備えたユニバーサルクランプ(以下、「液圧工具」ともいう)が用いられている。しかし、この液圧工具の圧潰作用点において、ダイスに噛圧センサ部を直接噛み合わせ、その噛合力を直接計測することのできるチェックメータはなかった。そのため、液圧工具の液圧を圧力計で測定することにより、作動ピストンの面積から換算した噛合力を間接的に計測できるようにしたものがあった。
【0003】
図5は、液圧測定用の圧力計を接続する接続口を具備した液圧工具を水平面で一部破断した平面図である。図5に示すように、液圧を圧力計で測定することにより、液圧工具の噛合力を計測するものである。液圧工具300の圧縮ヘッド部50は、略Y字形状の固定ヘッド51と、この固定ヘッド51の内側に装着されて動作するガイド板52を具備し、このガイド板52に沿って摺動可能なスライダ53,54が取り付けられている。
【0004】
また、圧縮へッド部50は、工具本体30に一定範囲の回動が可能なように取り付けられている。この工具本体30は、基端部31にオイルタンク32の収納部を兼ねた固定ハンドル33を取り付けてあり、上部にはプランジャ34を嵌装し、このプランジャ34の上部は工具ボディ37の上部支柱37aの枢軸38に枢支された加圧ハンドル40の係止軸41に係止させてあり、この加圧ハンドル40の揺動操作により、プランジャ34の反復上下動が行えるポンプ機構に構成してある。
【0005】
そして、固定ヘッド51の基端部51aは、工具本体30に一定範囲で回動可能に取り付けられ、先端部51bにはダイス71が取り付けられている。ガイド板52は工具本体30のピストン55に取り付けられており、工具本体30の加圧ハンドル40を揺動操作すると作動油がシリンダ56に送られて、シリンダ56内に嵌装されたピストン55が動作することによりガイド板52が押し出される。
【0006】
このように構成された圧縮ヘッド部50の中心部に被加工物のスリーブ46がセットされ、このスリーブ46の中に接続しようとする電線47が挿入されており、これらの周囲を、ピストン55の動作に連動した4個のダイス71,72,73,74で噛み締めるように押圧するので、スリーブ46が圧潰され電線は接続される。
【0007】
ここで、圧縮へッド部50の動作を説明する。図5に示すように、工具本体30の固定ハンドル33を片方の手で保持し、加圧ハンドル40をもう一方の手で揺動させると、オイルタンク32の作動油が、液圧回路を経由してシリンダ56に送られ、ピストン55が押し出される。そうすると、ピストン55の先端に取り付けられているガイド板52が固定ヘッド51にガイドされて、固定ヘッド51の中心部に向かって送り出される。ガイド板52が動き出すと、可動ダイス73,74も一緒に先端方向へ動くので、スライダ53,54の先端面53b,54bが固定ヘッド51のローラ65,66に当接してダイス73,74が中心方向へ移動し、スリーブ46を押し潰すようになる。
【0008】
このように、スリーブ46を押し潰して行くと、ガイド板52を押圧するピストン55を内装したシリンダ56内の液圧が上昇する。さらに、このシリンダ56に連通する液圧回路内の液圧が上昇し、所定圧力に達するとリリーフバルブ23が開いて所定圧力を保持する。加圧ハンドル40を矢印α方向にひねり、普段は当接していない凸部25をレリーズピン24に当接させてからレリーズピン24を押すように加圧ハンドル40を操作すれば、シリンダ56に連通する高圧の液圧回路は、オイルタンク32に連通する低圧の液圧回路と接続されて圧力が開放される。そして、加圧ハンドル40はバネ26の付勢により、矢印β方向にひねり戻されて、凸部25がレリーズピン24に当接しない位置関係になり、工具使用可能な普段の状態に復帰させる。
【0009】
このように、シリンダ56内の液圧がなくなるので、シリンダ56内のピストン55が戻しバネ57により元の位置に戻ることにより、ピストン55に取り付けられたガイド板52も元の位置に戻る。そしてスライダ53,54もローラ65,66による押圧がなくなるので、戻しバネ67,68の付勢力で押され元の位置に戻る。この動作が繰り返されて、スリーブ46を確実に圧潰できるようにしたものがあった(例えば特許文献1参照)。
【0010】
図6は図5に示した工具本体の接続口を拡大した縦断面である。図5,図6において、接続口80には、接続口80を介して液圧工具300の液圧回路に連通する圧力計110の圧力検出端部111と、ネジにより接続可能な高圧継手81を備えている。したがって、この液圧工具300に圧力計110を取り付けて、その液圧工具300の液圧を計測することにより、噛合力を測定するチェックメータとして機能させている。すなわち、液圧工具300のダイスに噛圧センサ部を直接噛み合わせずに、その噛合力を、圧力計110で測定した液圧Pと、作動するピストン55の面積Sから換算した噛合力Fを計測できるようにしたものである。このとき、
噛合力F = 液圧P × ピストンの面積S
である。
【0011】
図7は、測定用治具を併用したチェックメータによるユニバーサルクランプの噛圧測定方法の説明図であり、同図(a)は、一部破断した平面図、同図(b)は、一部破断した側面図である。図7に示す液圧工具200には、図5,図6に示した接続口80が不要である代わりに、圧力計110に噛圧センサ部121を付設した構造の従来からあるチェックメータ120を用い、噛圧センサ部121を、測定用治具130のダミーヘッド部59に挿入して、ピストン55に発生した力で測定用治具に組込まれているスペーサ39を押すことにより、その噛合力を、チェックメータ120で読み取る。
【0012】
なお、測定用治具130は、測定時にのみ液圧工具200から圧縮へッド部50(図5参照)を外して、その代わりに取り付ける。液圧工具200の通常利用時に、圧縮へッド部50は、先の尖ったダイス71〜74が4方向からスリーブ46を圧潰するが、測定用治具130にはダイス71〜74の代わりに2方向から噛圧センサ部121を挟む平坦部があり、挟んだ相手を変形損傷させない構造である。
【0013】
図8は、従来のチェックメータの説明図であり、(a)は、一部縦断面した正面図、(b)は、一部縦断面した側面図であり、矢印X方向に噛圧を受けるようにセットして用いる。
図8において、シリンダの油圧室と連通する油路の先方に分岐室を設け、この分岐室の先方には圧力計を接続し、かつ、前記分岐室の一側には油路と連通する段付の油止め油路を設けてこの油路に逆止弁の鋼球を押圧するノブ付きのリリーススクリューを螺旋操作可能に配置して構成されている。(例えば特許文献2参照)。
なお、このチェックメータ120はピストンとヘッドの間に平坦部があって、その平坦部にチェックメータの噛圧センサ部を挟むことのできる工具にのみ使用できる。
【特許文献1】特許第3177828号掲載公報、段落[0007]、図1)
【特許文献2】実開昭61−97740号公報、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、スリーブ等の被加工物の外周を4方向から中心に向かって同時かつ均等に押し潰すユニバーサルクランプを、工具として完全に使用可能な状態で、その噛合力を直接計測することのできるチェックメータはなかった。前記したようにチェックメータは対応する2方向の力は測定できるが、4方向の力を同時に測定することはできない。チェックメータの噛圧センサ部に2方向から集中すべき噛合力が、4方向では分散するので測定値が狂うからであり、正確な測定値を得るためには、一直線上の2方向のみから集中した噛合力を測定する必要がある。このため、従来からあるチェックメータを生かせるように4方向を2方向のみに変換できるような測定用治具を併用した場合、工具本体から圧縮へッド部を取り外して測定用治具と交換し、噛合力を測定した後に、再び元通りに付け替えるための手間を要するので、この手間を省きたいという課題があった。
【0015】
一方、噛合力を直接計測する代わりに、ユニバーサルクランプの液圧を圧力計で測定した圧力値に作動ピストンの面積を乗じて換算することにより噛合力を計測できるようにしたものがあった。しかし、この場合、圧力計で液圧を測定するために、工具ボディに設けられた接続口が必要であるという問題があった。そのほか、液圧工具の噛合力を測定するための圧力計110を着脱する際、工具内の液圧回路に空気の混入を防止するために注意を要するという問題もあった。当然に、圧力計を工具と着脱するのに手間を要する問題もあった。したがって、工具内の液圧回路に圧力計を接続しないで済ませたいという課題があった。
【0016】
本発明は、前記課題を解決すべく創案されたもので、ユニバーサルクランプ(液圧工具)の液圧回路に圧力計を接続させることなく、したがって、圧力計を工具と着脱する接続口で発生する空気混入等の問題を無くし。かつ、測定用治具を併用することなく液圧工具のダイスにチェックメータの噛圧センサ部を直接噛み合わせて、その噛圧出力を正確かつ簡便に計測できるチェックメータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため請求項1に係る発明は、工具本体(20)に取り付けられた固定ヘッド(51)に装着された固定のダイス(71)と、前記固定ヘッド(51)の内側に装着され前記工具本体(20)に具備されたポンプ機構に従動するピストン(55)に係合されて連動する複数のダイス(72,73,74)により被加工物(46)を噛み締めて圧潰する液圧工具(200)の噛合力を計測するチェックメータ(100)であって、前記固定または連動するダイス(71,72,73,74)のうち対向する何れか一対のダイス(71,72)に噛み締められ前記噛合力に比例した液圧を発生する噛圧センサ部(1)と、前記噛圧センサ部(1)の発生する液圧を計測可能な圧力計(10)と、を備えたことを特徴とするチェックメータ(100)である。
【0018】
請求項1に係る発明によれば、液圧工具(200)の液圧回路にチェックメータとしての圧力計(10)を接続させることなく、前記噛合力に比例した液圧を発生する噛圧センサ部(1)の発生する液圧を圧力計(10)により計測する。そのため、着脱自在の接続手段および手間が不要である。したがって、液圧工具(20)の液圧回路に空気が混入するおそれもなく、液圧工具(20)の噛合力を正確かつ簡便に計測することが可能である。
【0019】
請求項2に係る発明は、前記噛圧センサ部(1)はシリンダ(2)と、前記シリンダ(2)に密嵌され前記噛合力により前記シリンダ(2)の奥部へ進入するピストン(3)と、を備え、前記シリンダ(2)およびピストン(3)の被押圧面にはそれぞれ前記ダイス(71,72)の山形状の突起に面接触が可能な凹部または線接触が可能な溝部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のチェックメータ(100)である。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、前記ダイス(71,72)から、直接に噛み締められる前記噛圧センサ部(1)が、噛合力により圧潰されるならば、測定器としての寿命が短命に終わるところを、面接触する凹部または線接触する溝部を設けたシリンダ(2)およびピストン(3)により、山形状の突起の前記ダイス(71,72)からの噛合力を受け止めるようにしたので、前記噛圧センサ部(1)は圧潰され損壊されることがなく計測器の寿命を延ばすことができる。
【0021】
請求項3に係る発明は、前記噛圧センサ部(60)は噛圧を受ける方向Xに対して直角方向Yの外形幅Wを26mm以下の寸法にしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェックメータ(100)である。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、当該液圧工具(20)の標準的な最小開口寸法34.8mmの仕様に対応し、前記噛圧センサ部(1)の平坦面の外形幅Wを変更26mm以下の寸法にしたことにより、ダイス71と72でチェックメータ100の噛合センサ部1により噛合力を測定している時、前記ダイス(73,74)が噛合センサ部の側面に接触することが無く、一直線上の2方向のみから集中した噛合力を測定するので液圧工具の噛合力を正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように請求項1に係る発明によれば、着脱自在の接続手段および手間が不要である。したがって、液圧工具の液圧回路に空気が混入する弊害もなく、液圧工具の噛合力を正確かつ簡便に計測することが可能である。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、噛圧センサ部は圧潰され損壊されることがなく計測器の寿命を延ばすことができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、液圧工具の標準的な最小開口寸法34.8mmの仕様に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係るチェックメータの実施形態を示す一部破断した説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図1に示すように、チェックメータ100は、噛圧センサ部1とブルトン管式の圧力計10が管路等で結合されることにより構成されている。噛圧センサ部1はシリンダ2と、シリンダ2に密嵌され液圧工具200(図7参照)の噛合力に押圧されてシリンダ2の奥部へ進入するピストン3を備えており、シリンダ2内の作動油4に発生する液圧を圧力計10で計測し、圧力計10の計器盤12上の数字および目盛を指針11が指し示した圧力値を利用者が読み取る構成である。
【0027】
なお、後記する理由により、噛圧センサ部1は噛圧を受ける方向Xに対する直角方向Yの外形幅Wを26mm以下(図1(a)ではW<26mmと記載しているが、26mmも含む)の寸法にしている。
【0028】
噛圧センサ部1は、シリンダ2の一方の先端部により形成され、他方の開口には、減圧ピストン14が液密に嵌挿され、減圧ピストン14の上部を筒状のカバー22で密封され、カバー22は上部がくびれ、そのくびれ部を覆うようにスイッチ継手13が嵌着され、そのスイッチ継手13を介して圧力計10が接続されている。
【0029】
また、噛圧センサ部1と圧力計10の間は、減圧ピストン14を介して作動油4の流通は隔離されているが、圧力の伝達は可能である。なお、構成部品の嵌挿部の周面にそれぞれ形成された溝部には、Oリングおよびバックアップリング嵌着され、嵌挿部の液密を保持している。すなわち、ピストン3はOリング3bおよびバックアップリング3cによりシリンダ2との液密を保持し、シリンダ2の他方の開口に嵌挿されている減圧ピストン14は、その直径の大きい周部にはOリング14aおよびバックアップリング14bが嵌着され、その直径の小さい周部にはOリング14cおよびバックアップリング14dが嵌着されて液密を保持し、カバー22の内周面に刻設された溝部に嵌着されたOリング12aおよびバックアップリング12bによりシリンダ2の外周への嵌挿部の液密を保持している。
【0030】
また、作動油4は油圧室7aから油路8を経由して減圧ピストン14の下側にある油圧室7bにまで及ぶ。減圧ピストン14の上側にある油圧室7cと、油圧室7dの間には鋼球16がバネ17で下向きに付勢され逆止弁の機能を果たしている。そして、カバー22の外周面に、カバー22の円筒軸とは直角方向の回転軸により回動自在に螺入された戻しハンドル18(図1(a)参照)の挿入された穴の奥には、鋼球19が隘路18aを開閉可能に詰め込まれており、戻しハンドル18の所定回転により鋼球19が隘路18aを開いたならば、鋼球16による逆止弁を開放可能にするバイパス9が開通するように構成されている。
【0031】
図2は噛圧センサ部を噛み合わせた圧縮ヘッド部を拡大した平面図である。図2に示すように、本発明のチェックメータ100(図1参照)を用い、その圧縮へッド部50において、ユニバーサルクランプの噛合力を直接に測定する動作について説明する。なお、ユニバーサルクランプの構成および動作に関しては、本願の背景技術として主に図5,図7に沿って説明済みなので、同一効果の部位には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
工具本体20(図7参照)に具備されたポンプ機構に従動するピストン55に係合されて連動するダイス72,73,74は、固定ハンドル33に加圧ハンドル40を両手で狭める手動操作により、圧縮へッド部50の中心部へ向かって移動する。
一方、固定ヘッド51の先端部51bに取り付けられた固定のダイス71は、移動するダイス72,73,74とともに、圧縮へッド部50の中心部へ向かう噛合力を生ずる一端を構成する。そして、被加工物であるスリーブ46の代わりにチェックメータ100の噛圧センサ部1を噛ませる。このとき、固定または連動するダイス71,72,73,74のうち対向する一対のダイス71,72にのみ噛圧センサ部1が噛み締められ、その噛合力に比例した液圧を発生する。噛圧センサ部1はシリンダ2内の作動油4をピストン3で押し出すように発生する液圧を圧力計10で計測し、液圧工具200の噛合力を計測する。
【0033】
ここで、ダイス71,72から直接に噛み締められる噛圧センサ部1が、もし、被加工物であるスリーブ46と同様に噛合力で圧潰されるならば、使用に耐えず測定器としての寿命は短命に終わる。そこで、ダイス71,72と面接触する凹部または線接触する溝部5,6を設けたシリンダ2およびピストン3により、山形突起のダイス71,72からの噛合力を受け止めるようにしたので、噛圧センサ部1は圧潰され損壊されることなく計測器として反復利用ができる。
【0034】
なお、噛圧センサ部1は、噛圧を受ける方向Xに対して直角方向Yの外形幅Wを34.8mm以下の寸法にし、例えば26mm以下に制限することが好ましい。それは、当該液圧工具200の標準的な最小開口寸法34.8mmの仕様に対応するためである。つまり、噛圧センサ部1の平坦面の外形幅Wを34.8mm以下の寸法に、そして、実用的かつ確実には26mm以下に制限することで、ダイス73,74が、噛圧センサ部1の平坦面に当接することを免れ、ダイス71と72のみが噛圧センサ部に接触し噛合力を測定することができる。
【0035】
図3は、本発明に係るチェックメータのシリンダを示す投影図であり、(a)は側面図、(b)は図(a)に示すA−A線の断面図、(c)は底面図、(d)は正面図、(e)は背面図である。
図4は、本発明に係るチェックメータのピストンを示す投影図であり、(a)は底面図、(b)は正面図である。
【0036】
図3(a)に明示されたシリンダ2の円柱状の空洞には、図4に示すピストン3が液密に嵌入されており(図1参照)、シリンダ2とピストン3により容積を規制された空間には作動油4(図1参照)が充満し、噛圧センサ部1が受けた噛圧に応じてピストン3がシリンダ2に進入するので噛圧に比例した液圧を発生することができる。
【0037】
図3(a)(c)(e)に示した溝部5には、ダイス71の山形突起が約65MPaの噛圧でシリンダ2を背後から押圧するが、この山形突起は溝部5に対してある程度の面接触または線接触により当接するためシリンダ2の当接面を圧潰することがない。
【0038】
同様に、図4(a)に示した溝部6には、ダイス72の山形突起が約65MPaの噛圧でピストン3を正面から押圧するが、山形突起は溝部5に対してある程度の面接触または線接触により当接するためピストン3の当接面を圧潰することがない。
【0039】
ここで、図1〜図5および図7を適宜に参照しながら本発明に係るチェックメータ100による液圧工具200の噛圧を測定する手順およびチェックメータ100の内部の動作を説明する。
チェックメータ100の場合、図7に示す測定用治具130は不要なので、もし測定時に装着されていれば、工具本体20から測定用治具130を外し、図2に示す圧縮ヘッド部50に取り替えて本来の使用形態にする。すなわち、図5に示す液圧工具300から接続口80をなくしたものと同じ状態にする。
【0040】
以下、図5に示した符号を主に用いて説明すると、液圧工具300または液圧工具200において、被加工物であるスリーブ46および電線47と置換するように噛圧センサ部1をダイス71,72の間に噛み合わせる。図7(b)は従来例であるが、本発明に係るチェックメータ100であっても、液圧工具300または液圧工具200に対して図7(b)に示す組み付け要領で測定ができる。ただし、測定用治具130を使わないことは前記したとおりである。
【0041】
液圧工具300または液圧工具200において、固定ハンドル33に加圧ハンドル40を引き寄せて、プランジャ34を主とするポンプ機構により発生させた液圧をシリンダ56に圧入し、ピストン55の押圧によりガイド板52およびその中心部に突設されたダイス72が先端方向へと送り出され、ダイス72と対向する位置にあるダイス71との間に噛み合わせた噛圧センサ部1には噛合力に比例した液圧が発生する。
【0042】
このとき、ダイス71の山形突起が約65MPaの噛圧でシリンダ2の溝部5を背後から押圧し、ダイス72の山形突起が同じ噛圧でピストン1の溝部6をチェックメータ100の前方(使用者側)から押圧している。なお、スライダ53,54にそれぞれ突設されたダイス73,74は最小開口34.8mmまで閉じるので、横幅Wが26mm以下の寸法に形成されている噛圧センサ部1には干渉せず、圧潰、損傷することもない。
【0043】
噛圧センサ部1内部の油圧室7aでは噛圧に相当する約65MPaの液圧が作動油4に生じ、この高圧の作動油4は油路8を通って油圧室7bに入り、減圧ピストン14を押し上げる。減圧ピストン14の上下にはr′/rの比率で半径差が設定してあるので、
減圧比 = 1/面積比 =(πr)2/(πr′)2 = (r/r′)2 となる。
例えば、減圧ピストン14の半径は上面が下面の2倍だとすれば1/4に減圧された約65/4MPa=約16MPaの圧力が油圧室7cに伝達される。そして、油圧室7cから油圧室7dまでの間に介在する逆止弁としての鋼球16は付与された圧力により、バネ17の付勢力に抗して持ち上げられ、油圧室7cから油圧室7dへと作動油4を通して約16MPaの圧力を圧力計10に付与し、これを圧力計10の計器盤12では表示比率4倍にして65MPaと表示する。
【0044】
表示後も、逆止弁の効果により圧力計10の指針11は、65MPaとの表示を維持するので、液圧工具のピストン55を戻しチェックメータを工具から外しても静止状態の指針11を計器盤12上で容易かつ確実に読み取ることが可能である。その後、使用者が戻しハンドル18を、ネジ込みが緩む方向に回動すると、鋼球19による隘路18aの封鎖が解除され、圧力計10に圧入されていた作動油4が、バイパス9を通して油圧室7dから油圧室7cへと戻ることにより、圧力計10はオフセットされ、図1(a)の示す噛圧0となる。このとき、バネ15の下向き付勢により減圧ピストン14が押し下げられるので、油圧室7bの作動油4は油路8を通って油圧室7aへと戻され、ピストン3を突出させる方へと押し戻す。ピストン3の周面に刻設されたガイド溝3aに係合するボルト21との位置規制作用により、ピストン3は回転せず、溝部6の縦方向が維持されるような回り止め効果がある。
【0045】
以上のような手順でチェックメータ100による液圧工具300の噛圧の測定を繰り返す。この一連の測定作業においては、図5および図6に示した接続口80を設ける必要がないほか、その接続口80に圧力計110を着脱する手間と、その着脱作業に伴って液圧回路へ空気が混入するトラブルを生じることもない。また、図7に示した測定用治具130も不要であり、工具を通常の使用が可能である状態にするために装着する圧縮ヘッド部50と換装する手間も不要である。
【0046】
なお、以上の説明においては、チェックメータ100の測定対象に関し、手動式液圧工具を例示して説明したが、本発明のチェックメータ100は、手動式液圧工具に限定されるものではなく、電動ポンプ式液圧工具にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るチェックメータの実施形態を示す一部破断した説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】噛圧センサ部を噛み合わせた圧縮ヘッド部を拡大した平面図である。
【図3】本発明に係るチェックメータのシリンダを示す投影図であり、(a)は側面図、(b)は図(a)に示すA−A線の断面図、(c)は底面図、(d)は正面図、(e)は背面図である。
【図4】本発明に係るチェックメータのピストンを示す投影図であり、(a)は底面図、(b)は正面図である。
【図5】液圧測定用の圧力計を接続する接続口を具備したユニバーサルクランプ(液圧工具)の水平面で一部を破断した平面図である。
【図6】図5に示した接続口を拡大した縦断面である。
【図7】測定用治具を併用したチェックメータによる液圧工具の噛圧測定方法の説明図であり、(a)は一部破断した平面図、(b)は一部破断した側面図である。
【図8】従来のチェックメータの説明図であり、(a)は一部縦断面した正面図、(b)は一部縦断面した側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 噛圧センサ部
2,56 シリンダ
3,55 ピストン
3a ガイド溝
3b,12a,14a,14c Oリング
3c,12b,14b,14d バックアップリング
4 作動油
5,6 溝部
7a,7b,7c,7d 油圧室
8,48 油路
9 バイパス
10 圧力計
11 指針
12 計器盤
13 スイッチ継手
14 減圧ピストン
15,17,26 バネ
16,19 鋼球
18 戻しハンドル
18a 隘路
20,30 工具本体
21 ボルト
22 カバー
23 リリーフバルブ
24 レリーズピン
25 凸部
31 基端部
32 オイルタンク
33 固定ハンドル
34 プランジャ
35 プランジャ室
37 工具ボディ
37a 上部支柱
37b ピン
38 枢軸
39 スペーサ
40 加圧ハンドル
41 係止軸
46 スリーブ
47 電線
50 圧縮ヘッド部
51 固定ヘッド
51a 基端部
51b 先端部
52 ガイド板
53,54 スライダ
53b,54b 先端面
57,67,68 戻しバネ
59 ダミーヘッド部
65,66 ローラ
71,72,73,74 ダイス
80 接続口
81 高圧継手
100 チェックメータ
110 圧力計
111 圧力検出端部
121 噛圧センサ部
130 測定用治具
200,300 液圧工具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体(20)に取り付けられた固定ヘッド(51)に装着された固定のダイス(71)と、前記固定ヘッド(51)の内側に装着され前記工具本体(20)に具備されたポンプ機構に従動するピストン(55)に係合されて連動する複数のダイス(72,73,74)により被加工物を噛み締めて圧潰する液圧工具(200)の噛合力を計測するチェックメータ(100)であって、
前記固定または連動するダイス(71,72,73,74)のうち対向する何れか一対のダイス(71,72)に噛み締められ前記噛合力に比例した液圧を発生する噛圧センサ部(1)と、
前記噛圧センサ部(1)の発生する液圧を計測可能な圧力計(10)と、を備えたことを特徴とするチェックメータ(100)。
【請求項2】
前記噛圧センサ部(1)はシリンダ(2)と、前記シリンダ(2)に密嵌され前記噛合力により前記シリンダ(2)の奥部へ進入するピストン(3)と、を備え、
前記シリンダ(2)およびピストン(3)の被押圧面にはそれぞれ前記ダイス(71,72)の山形状の突起に面接触が可能な凹部または線接触が可能な溝部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のチェックメータ(100)。
【請求項3】
前記噛圧センサ部(1)は噛圧を受ける方向Xに対して直角方向Yの外形幅Wを26mm以下の寸法にしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェックメータ(100)。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−47068(P2006−47068A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227272(P2004−227272)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000148243)株式会社泉精器製作所 (77)
【Fターム(参考)】