チェンソー
【課題】簡便にソーチェンを張ることができるチェンソーを提供すること。
【解決手段】本発明に係るチェンソー1では、ソーチェン6の張り調整を行う際、ガイドバー4の外縁部に沿って取り付けられたソーチェン6の張力を、ハンドガード40の操作により連結部24に伝わる力を調整することで適宜調整し、十分な張力でソーチェン6を張る場合であっても強いコイルばねを要するようなことがないようにし、簡便にソーチェンを張ることを可能とする。
【解決手段】本発明に係るチェンソー1では、ソーチェン6の張り調整を行う際、ガイドバー4の外縁部に沿って取り付けられたソーチェン6の張力を、ハンドガード40の操作により連結部24に伝わる力を調整することで適宜調整し、十分な張力でソーチェン6を張る場合であっても強いコイルばねを要するようなことがないようにし、簡便にソーチェンを張ることを可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェンソーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載されるように、駆動力を伝達するための回転部を有する本体と、本体に装着されて本体の前方に延出するガイドバーと、回転部及びガイドバーの外縁部に沿って取り付けられる無終端状のソーチェンと、を備えるチェンソーにおいて、ガイドバーの孔に緊張部品を嵌入させ、この緊張部品をガイドバーの延出方向(前方)に押し出すコイルばねを有するソーチェンの張り機構が知られている。
【0003】
この機構では、コイルばねの付勢力によりガイドバーをその延出方向に押し出し、ガイドバーに取り付けられたソーチェンに所定の張力を与えている。そして、押し出された状態のガイドバーを、ボルトの締結により本体に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭60−39201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の機構では、コイルばねの付勢力のみによってガイドバーを押し出すようにしているため、十分な張力でソーチェンを張るにはコイルばねを強くする必要があり、その取り扱いが困難になるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、簡便にソーチェンを張ることができるチェンソーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチェンソーは、駆動力を伝達するための回転部(2)を有する本体(3)と、本体(3)に装着されて本体(3)の前方に延出するガイドバー(4)と、回転部(2)及びガイドバー(4)の外縁部に沿って取り付けられる無終端状のソーチェン(6)と、を備えるチェンソー(1)であって、ガイドバー(4)をガイドバー(4)の延出方向(A)に案内するための案内部(15)と、ガイドバー(4)に設けられ、ガイドバー(4)を厚み方向に貫通する孔部(4c)と、孔部(4c)に進入する係止突部(23)と、係止突部(23)を、操作者により操作される操作レバー(40)に連結する連結部(24)と、を有し、ガイドバー(4)の孔部(4c)に進入した係止突部(23)と共にガイドバー(4)が、操作レバー(40)の操作に連動して、延出方向(A)であってソーチェン(6)を張る方向に移動可能とされていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るチェンソーでは、ガイドバー(4)の孔部(4c)に進入した係止突部(23)は、連結部(24)によって操作レバー(40)に連結されており、この係止突部(23)が操作レバー(40)の操作に連動して延出方向(A)に沿って移動すると共に、この係止突部(23)の移動により、ガイドバー(4)が、案内部(15)により案内されながら延出方向(A)であってソーチェン(6)を張る方向に移動する。この際、ガイドバー(4)の外縁部に沿って取り付けられたソーチェン(6)の張力は、操作レバー(40)の操作により連結部(24)に伝わる力を調整することで、適宜調整することができる。よって、十分な張力でソーチェン(6)を張る場合であっても強いコイルばねを要するようなことがなく、簡便にソーチェン(6)を張ることができる。
【0009】
ここで、連結部(24)は、操作レバー(40)に接続されたばね部材(26)を含む構成とすれば、ばね部材(26)の弾性によって、連結部(24)に伝わる力に対する緩衝作用が生じ、ソーチェン(6)の張力を略一定に調整することができる。
【0010】
また、操作レバー(40)は、操作者の手を保護するためのハンドガードである構成とすれば、ソーチェン(6)の張り調整のための専用のレバーを別途設ける必要がなく部材の共用化が図られる。
【0011】
また、回転部(2)の回転を停止するためのブレーキ機構(46)を備え、操作レバー(40)は、回動支持部(41)を中心として第1の範囲(R1)を回動することにより、回動支持部(41)とは異なる位置にある軸(48)を中心として回動するブレーキ機構(46)の回動レバー(47)に当接しブレーキ機構(46)を操作可能であると共に、操作レバー(40)は、回動支持部(41)を中心とし第1の範囲(R1)とは異なる第2の範囲(R2)では、回動支持部(41)と軸(48)との位置の相違により回動レバー(47)から位置(P)で離脱し連結部(24)に連結されることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1の範囲(R1)においてはブレーキ機構(46)によるブレーキ操作を支障なく行うことができ、また、第2の範囲(R2)においては操作レバー(40)の操作に連動してガイドバー(4)を移動させることによりソーチェン(6)の張り調整を支障なく行うことができる。
【0013】
また、連結部(24)は、その一端にU字部(26a,60a)を有する連結具(26,60)を含み、操作レバー(40)は、ピン(42)を有し、ピン(42)は、U字部(26a,60a)内に遊嵌配置されている構成とすれば、ソーチェン(6)の張り調整時以外の通常の使用時においては、U字部(26a,60a)内でピン(42)をフリーにすることができ連結部(24)による連結機能がはたらかず、鋸断作業を支障なく行うことができる。
【0014】
また、ガイドバー(4)の基部(4a)を覆うように本体(3)に取り付けられるチェンケース(7)を備え、係止突部(23)、操作レバー(40)、及び連結部(24)は、チェンケース(7)に一体のユニットとして設けられている構成とすれば、ソーチェン(6)の張り調整に係るこれらの部品の組立が容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るチェンソーによれば、簡便な操作によりソーチェン張りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るチェンソーの右側面図である。
【図2】図1のチェンソーを前方から見た図である。
【図3】図1のチェンソーを構成する本体の右側面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】図3の本体にガイドバーを仮装着した状態を示す図である。
【図6】図5の本体に更にチェンケースを装着した状態における、VI-VI線断面図である。
【図7】チェンケースを内側から見た図である。
【図8】図7のチェンケースにおいてチェンブレーキが非作動の状態を示す図である。
【図9】図7のチェンケースにおいてチェンブレーキを作動させた状態を示す図である。
【図10】チェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。
【図11】第2実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。
【図12】第3実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。
【図13】第4実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るチェンソーについて、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るチェンソーの右側面図、図2は、図1のチェンソーを前方から見た図、図3は、図1のチェンソーを構成する本体の右側面図である。
【0019】
本実施形態のチェンソー1は、操作者により操作されて木材等の対象物を切るためのものであり、駆動力を伝達するための回転部2を有するチェンソー本体(本体)3と、チェンソー本体3に装着されてチェンソー本体3の前方(図1では右側)に延出するガイドバー4と、回転部2及びガイドバー4の外縁部に沿って取り付けられる無終端状のソーチェン6と、回転部2及びガイドバー4の基部4a(図5参照)を覆うようにチェンソー本体3に取り付けられるチェンケース7と、を備えている。本実施形態の説明においては、特に断らない限り、ガイドバー4の突出方向を前、チェンケース7の取り付け側を右とする。
【0020】
回転部2は、チェンソー本体3に内蔵されたエンジンに連結されエンジンで生じた回転駆動力を伝達する略円筒形状のクラッチドラム2aと、クラッチドラム2aに設けられたスプロケット2bとを有している。ソーチェン6は、無終端状のチェーン6aに鋸刃6bを付けたものであり、このチェーン6aがスプロケット2bとガイドバー4の外周に掛け渡されている。
【0021】
このようなチェンソー1では、操作者がフロントハンドル8を左手で握ると共にリヤハンドル9の把手部9aを右手で握り、エンジンを駆動させることでスプロケット2bを回転させ、ソーチェン6を、スプロケット2b及びガイドバー4の外周により形成されている略長円形状の周回軌道を移動させることによって、道具を引くことなく対象物を切ることが可能になっている。
【0022】
図4は、図3のIV-IV線断面図である。図3及び図4に示すように、チェンソー本体3の右側面には、回転部2の前方側において、ガイドバー4の基部4a(図5参照)をチェンソー本体3に取り付けるためのガイドプレート10が設けられている。ガイドプレート10には、その上下方向の中央部の位置において、前後方向に互いに離間するガイドバー取付ボルト11(以下、単に「ボルト11」ともいう)及びボルト12が、ガイドプレート10の表面10aに対して垂直に突出するようにして並設されている。
【0023】
更に、ガイドプレート10には、ガイドバー取付ボルト11及びボルト12の並設位置よりも下側において、ガイドバー4の延出方向Aに沿って延び、所定の上下幅を有する溝(溝部)14が形成されている。
【0024】
また、溝14内の後端部(図3の左側端部)には、先端側が閉じられた略円筒形状のキャップ(突起)16が、表面10aに対して垂直を成すように配置されており、このキャップ16の基端側(底部側)で溝14内には、当該キャップ16を外方へ付勢する圧縮スプリング17が設けられている。この状態で、キャップ16の先端側は、表面10aより所定長さ外方へ突出するように構成されている。
【0025】
そして、このキャップ16は、後述するチェンケース7のボス(係止突部)23により、キャップ16の先端から基端に向けての押圧力を受けると、ガイドプレート10内に押し込まれてその先端が表面10aよりも内側に退避する(図6参照)。このように、キャップ16は、チェンソー本体3内に押込可能とされている。
【0026】
図5は、図3の本体3にガイドバー4を仮装着した状態を示す図である。図5に示すように、ガイドバー4には、ガイドバー4を厚み方向に貫通すると共にガイドバー4の延出方向Aに沿って延び、所定の上下幅を有する長孔部4bと、長孔部4bとは別に当該長孔部4bよりも下方の位置でガイドバー4を厚み方向に貫通する円形状の孔部4cとが設けられている。これらの長孔部4b及び孔部4cは、上記したボルト11,12及びキャップ16に対応する位置にそれぞれ設けられており、図5に示すガイドバー4の仮装着状態では、ボルト11,12は長孔部4bに挿入され、キャップ16は孔部4cに挿入される。
【0027】
上記構成により、キャップ16がチェンソー本体3から突出した状態となるガイドバー4の仮装着時には、当該キャップ16と、ボルト11,12とによって、ガイドバー4が3点(上下方向で見ると2点)で支持され、ガイドバー4が前方向に倒れたりガイドプレート10から脱落したりすることが防止され、仮装着時におけるガイドバー4の姿勢を安定にできる。また、キャップ16がチェンソー本体3内に押し込まれた状態では、ガイドバー4は、ボルト11,12及び長孔部4bにより案内され、ガイドプレート10上に摺接しながら延出方向Aに沿って移動できる。
【0028】
斯くの如く、ガイドバー取付ボルト11、ボルト12、及び長孔部4bにより、ガイドバー4を延出方向Aに案内するための案内部15が構成されている。
【0029】
また、図6に示すように、チェンソー本体3にチェンケース7が取り付けられ、ガイドバー取付ボルト11とナット18とが締結されることにより、ガイドバー4は、ガイドプレート10及びチェンケース7によって挟持固定される。なお、ソーチェン6を張り調整する場合には、ナット18を緩めることにより、ガイドバー4の姿勢を保持しつつガイドバー4の延出方向Aに沿う移動を許容することができる。
【0030】
図7は、図1中のチェンケース7を内側から見た図、図8は、図7のチェンケース7においてチェンブレーキが非作動の状態を示す図、図9は、図7のチェンケース7においてチェンブレーキを作動させた状態を示す図である。
【0031】
図7〜図9に示すように、チェンケース7は、チェンソー本体3の右側面に取り付けられるケース本体20を備え、当該ケース本体20の上部に回動支持部41を介して回動可能に連結され操作者の手を保護するためのハンドガード40を有している(図1、図2も参照)。
【0032】
このチェンケース7は、チェンソー1の使用中に回転部2の回転を停止するためのブレーキ機構であるチェンブレーキ46と、ソーチェン6の張力を調整するための張り調整機構であるチェン張り部21(図10参照)とを備えている。
【0033】
ハンドガード40は、チェンブレーキ46を操作する機能を有すると共に、チェン張り部21の一部である操作レバーとしての機能を有している。このハンドガード40は、回動支持部41を中心として所定の範囲を回動可能とされている。より詳しくは、ハンドガード40は、下方の回動範囲(第1の範囲)R1(図9参照)を回動することによりチェンブレーキ46を操作可能となっており、回動範囲R1とは異なる上方の回動範囲(第2の範囲)R2を回動することによりチェン張り部21を操作可能となっている。
【0034】
更に、ハンドガード40は、ハンドガード40の内側に設けられてチェンソー1の幅方向に所定長さ突出する丸棒状の第1ピン42及び第2ピン43を有している。
【0035】
第1ピン42は、図7において実線で示される通常の使用状態を基準として、ハンドガード40の前方側に配置され、第2ピン43は、第1ピン42よりも後方且つ僅かに上方に配置されている(図8参照)。第1ピン42は、チェンブレーキ46のブレーキを解除し、更には、ソーチェン6を張るためのものである。また、第2ピン43は、チェンブレーキ46のブレーキを作動させるためのものである。以下、チェンブレーキ46及びチェン張り部21について説明する。
【0036】
まず、チェンブレーキ46について説明する。図8に示すように、チェンブレーキ46は、第2ピン43又は第1ピン42からの押圧作用を受けて軸48を中心に回動させられブレーキの作動又は解除を行うためのブレーキレバー(回動レバー)47と、ブレーキレバー47の基端側にその一端が連結されたリンク50と、円筒形状のスプリング収容部51内に配置され、リンク50の他端側を押圧する圧縮コイルばねであるブレーキスプリング52と、ブレーキスプリング52の伸張に伴い回転部2(図5参照)を制動するブレーキリング53とを有している。
【0037】
ブレーキレバー47は、ハンドガード40の回動範囲R1(図9参照)において、軸48よりも上部に延びたピン当接部49が、第1ピン42及び第2ピン43の間に位置するように設けられており、ハンドガード40の下降操作に伴い第2ピン43により上方から摺接(当接)状態で押し下げられることによりブレーキを作動させ、一方、ハンドガード40の上昇操作に伴い第1ピン42により下方から摺接(当接)状態で押し上げられることによりブレーキを解除させる。
【0038】
ここで、ピン当接部49の回動中心である軸48は、第1ピン42の回動中心である回動支持部41とは異なる位置に設けられている。このような回動支持部41と軸48との位置の相違により、第1ピン42の回動軌跡とピン当接部49先端の回動軌跡とは、ブレーキレバー47のブレーキ解除位置付近で交差するようになっている(図9の位置P参照)。そのため、ハンドガード40の上昇操作によって、ピン当接部49先端より下方に位置する第1ピン42により押し上げられたブレーキレバー47は、その後、位置Pにおいて第1ピン42から離脱する構成とされている。換言すれば、ハンドガード40は、回動範囲R1ではブレーキレバー47に当接するが、第1ピン42の位置が離脱位置Pよりも上方側となる回動範囲R2では、ブレーキレバー47から離脱する構成とされている。
【0039】
ブレーキリング53は、回転部2(図5参照)のクラッチドラム2aの外周に着脱自在に巻回された部材であり、一端がブレーキスプリング52の先端側(上端側)に設けられた掛止部55に接続され、他端がケース本体20側に設けられた掛止部80に固定されている。このブレーキリング53は、図8に示すブレーキ非作動状態では、クラッチドラム2aから離隔されて回転部2の回転を許容し、図9に示すブレーキ作動状態では、ブレーキスプリング52の伸張に従いクラッチドラム2aを締め付けて回転部2を制動する。
【0040】
ここで、ブレーキスプリング52は、ブレーキスプリング52の押圧力とリンク50の壁56への当接により、ブレーキ非作動の状態でその位置(姿勢)を保持するようになっている。よって、ハンドガード40の下降操作又は上昇操作によってチェンブレーキ46のブレーキを作動又は解除するためには、ブレーキスプリング52の姿勢保持力を上回る程度の強い力でハンドガード40を操作すれば良い。なお、上記チェンブレーキ46では、チェンソー1使用時の跳ね返り現象である所謂キックバックが発生した場合にハンドガード40が左手により強く押し下げられ、チェンソー1が非常停止するようになっている。
【0041】
続いて、チェン張り部21について、図10も参照しながら説明する。図10は、チェンソー1のチェン張り部21によるソーチェン6の張り調整の動作概念図である。図10に示すように、チェン張り部21は、操作者により操作される操作レバーとしてのハンドガード40と、チェンケース7の内側面に設けられた内側カバー19(図6及び図7参照)の開口部25(図7参照)からチェンソー本体3に向けて突出し、ガイドバー4の孔部4c(図5参照)に進入するソーチェン張り調整用のボス23と、ボス23をハンドガード40に連結する連結部24とを有している。これらのハンドガード40、ボス23、及び連結部24は、チェンケース7に一体のユニットとして設けられている。
【0042】
ボス23は、チェンケース7の内側カバー19から所定長さだけ突出している。このボス23は、その突出長さが、図6に示すようにガイドバー4の厚みよりも長くされ、チェンケース7をチェンソー本体3に装着した状態でガイドバー4の孔部4cに進入し、更には、キャップ16が設けられた溝14内に進入するようになっている。
【0043】
連結部24は、その上端がハンドガード40の第1ピン42に接続され、所定のばね定数を有する引張コイルばねである連結スプリング(ばね部材)26と、その一端が連結スプリング26の下端に連結され軸29を中心に回動自在に設けられた第1リンク27と、第1リンク27の他端に対し連結軸31を介して回動可能に連結され、前方の端部に前述したボス23が設けられた第2リンク28とを有している。
【0044】
連結スプリング26は、ハンドガード40の操作により引っ張られて第1リンク27を図8及び図9の時計周りに回動させ,この回動により第2リンク28と共にボス23を前方に移動させるための連結具である。連結スプリング26は、その上端部(一端)において、コイルばね部分の軸線よりも後方に屈曲したU字部26aを有している(図7、図10参照)。このU字部26aは、コイルばね部分から延びる線材とU字状に折り返された線材とにより形成されており、折り返された線材の終端はコイルばね部分の上端付近まで戻ると共に当該上端からは所定距離だけ離間している。そして、このU字部26a内に、上記した第1ピン42が遊嵌配置され、U字部26a内を長手方向に往復移動可能とされている。
【0045】
図7において実線で示される通常の使用状態では、ハンドガード40の第1ピン42はU字部26a内の長手方向中央部に位置しているが、仮想線で示すように、ハンドガード40の上昇操作に伴い第1ピン42がU字部26a内を上昇し、U字部26aの長手方向上端部内側に係合する。この係合により、連結スプリング26は第1ピン42により引っ張り上げられるようになっている。このようにして、ハンドガード40は、第1ピン42により連結スプリング26に対し接続されている。
【0046】
なお、第1ピン42がU字部26aの長手方向上端部内側に係合する位置は、上述したブレーキレバー47の第1ピン42からの離脱位置P(第1ピン42の回動軌跡とピン当接部49先端の回動軌跡とが交差する位置P;図9参照)と同程度の位置とされている。すなわち、第1ピン42がブレーキレバー47から離脱する回動範囲R2では、第1ピン42とU字部26aとの係合により、ハンドガード40は連結スプリング26を引っ張り上げることが可能となっている。これによって、回動範囲R2ではハンドガード40が連結部24に連結され、ソーチェン6の張り作業時(図10の仮想線から実線への移動時)には、第1ピン42はブレーキレバー47に干渉せず、張り作業が支障なく行われる。
【0047】
連結部24を構成する第1リンク27は、その上端27aが連結スプリング26の下端に対し回転自在に連結され、軸29の位置を屈折点として前方に向けて上方に傾くように屈折している。この第1リンク27は、連結スプリング26からの引張力を受けて図10の反時計回りに回動し、第2リンク28と共にボス23を前方(図10の延出方向A)に押し出す。
【0048】
第2リンク28は、図8及び図9に示すように、ケース本体20の内側に形成された長手方向に垂直な断面が溝状のガイド部22により案内されて、ガイド部22内を前後方向に移動可能に設けられている。ガイド部22の後端及び前端には、第2リンク28の移動範囲を規制するための後方壁36及び前方壁37が形成されている。
【0049】
ここで、上記第1リンク27には、ボス23を図8に実線で示す初期位置Bに移動するためのねじりばね32が取り付けられている。より詳しくは、ねじりばね32は、その一端がケース本体20の内側に形成された係止部33に係止され、軸29の周りを下側から一又は複数巻きした上で、他端が第1リンク27の下部27bに対し前方から引っ掛けられている。
【0050】
このような構成により、チェン張り部21では、ねじりばね32により第1リンク27の下部27bが後方に付勢されて後方壁36に当接すると共に、この状態でボス23が初期位置Bに位置する。この初期位置Bは、チェンケース7をチェンソー本体3に装着する際にチェンソー本体3に設けられたキャップ16(図3、図5参照)に対面する位置となっている。そして、これらの第1リンク27、第2リンク28、ガイド部22、ねじりばね32、及び後方壁36を含んで、ボス23を初期位置Bに移動させる移動手段34が構成されている。
【0051】
従って、ボス23は、ハンドガード40に連結されてハンドガード40の動きと連動し、移動手段34による後方への付勢力に抗して、ソーチェン6を張るために必要な最低限の前進位置であるチェン最短位置Cや、このチェン最短位置Cから、前方壁37により規制される最前位置に至るまでの所定範囲の調整位置Dを移動可能とされている(図8参照)。
【0052】
以上の構成を有するチェンソー1では、ガイドバー4をチェンソー本体3に仮装着するにあたって、ガイドバー4に設けられた長孔部4b及び孔部4cの各々に、チェンソー本体3に設けられたボルト11,12及びキャップ16を挿入する。ここで、ボルト11,12及びキャップ16の位置は、長孔部4b及び孔部4cの各々に予め対応しているため、位置合わせの手間を要せず、ガイドバー4を容易に仮装着することができる。
【0053】
そして、チェンケース7を、図1に示すようにチェンソー本体3に取り付けることにより、移動手段34により初期位置Bに移動された状態のボス23が、ガイドバー4の孔部4c及びチェンソー本体3の溝14に進入し、キャップ16をチェンソー本体3内に押し込む(図6参照)。
【0054】
キャップ16は、このように、チェンソー本体3内に押し込まれることによりガイドバー4の孔部4cから退避(離脱)しているため、案内部15(ボルト11,12及び長孔部4b)によってガイドバー4を延出方向Aに案内しながらソーチェン6の張り調整を行うことができる。
【0055】
より詳しくは、ハンドガード40を回動範囲R2(図9参照)内で上方に向けて回動操作することにより、この操作に連動して連結スプリング26が引っ張られて伸張しつつ、第1リンク27を回動させ、この回動により、ガイドバー4の孔部4cに進入したボス23が溝14内を延出方向Aに移動し、このボス23の移動に伴い、ガイドバー4が延出方向Aであってソーチェン6を張る方向に移動する(図10の実線参照)。
【0056】
ここで、連結スプリング26のばね定数とソーチェン6の張り抵抗とのバランスにより、ハンドガード40を上方へ所定の回動位置まで回動させることによってソーチェン6は所望の張力に調整される。例えば、ソーチェン6の張り抵抗が大きい場合には、ハンドガード40を所定の回動位置から更に上方に向けて回動させても、連結スプリング26が伸張するのみで第1リンク27、第2リンク28、及びボス23はほとんど移動しなくなり、そのためソーチェン6の張力は誰がハンドガード40を操作しても略一定に保たれる。そして、ソーチェン6を張り終えた後、ナット18を締めてガイドバー4を挟持固定する。
【0057】
また、チェンソー1の使用時において、例えばキックバック等が発生し操作者の左手によりハンドガード40が強く押し下げられる(下方に回動させられる)と、チェンブレーキ46のブレーキレバー47が第2ピン43により押し下げられてブレーキが作動し、図9の実線で示す状態となる。
【0058】
また、ブレーキが作動した後、ハンドガード40が上方に向けて回動操作されると、ブレーキレバー47が第1ピン42により押し上げられてブレーキが解除され、図8に示す状態となる。
【0059】
以上説明した本実施形態のチェンソー1によれば、ソーチェン6の張り調整を行う際、ガイドバー4の外縁部に沿って取り付けられたソーチェン6の張力は、ハンドガード40の操作により連結部24に伝わる力を調整することで、適宜調整することができる。よって、十分な張力でソーチェン6を張る場合であっても強いコイルばねを要するようなことがなく、簡便にソーチェンを張ることができる。
【0060】
また、連結部24は、ハンドガード40に接続された連結スプリング26を含むため、連結スプリング26の弾性によって連結部24に伝わる力に対する緩衝作用が生じ、ソーチェン6の張力を略一定に調整することができる。
【0061】
また、ハンドガード40は、操作者の手を保護するためのハンドガードであるため、ソーチェン6の張り調整のための専用のレバーを別途設ける必要がなく部材の共用化が図られる。
【0062】
また、ハンドガード40は、回動支持部41を中心として回動範囲R1を回動することにより軸48を中心として回動するブレーキレバー47に当接しチェンブレーキ46を操作可能であると共に、ハンドガード40は、回動範囲R1とは異なる回動範囲R2では、回動支持部41と軸48との位置の相違によりブレーキレバー47から離脱位置Pで離脱し連結部24に連結されるため、回動範囲R1においてはチェンブレーキ46によるブレーキ操作を支障なく行うことができ、また、回動範囲R2においてはハンドガード40の操作に連動してガイドバー4を移動させることによりソーチェン6の張り調整を支障なく行うことができる。すなわち、ブレーキ操作及びソーチェン6の張り調整を各々独立して行うことができる。
【0063】
また、ハンドガード40の第1ピン42は、連結スプリング26のU字部26a又は連結具60のU字部60a内に遊嵌配置されているため、ソーチェン6の張り調整時以外の通常の使用時においては、U字部26a,60a内で第1ピン42をフリーにすることができ連結部24による連結機能がはたらかず、鋸断作業を支障なく行うことができる。
【0064】
また、ボス23、ハンドガード40、及び連結部24は、チェンケース7に一体のユニットとして設けられているため、ソーチェン6の張り調整に係るこれらの部品の組立が容易となる。
【0065】
また、連結スプリング26の弾性(ばね定数)によりソーチェン6の張力が決まるので、操作者によらず誰でも同程度の張り調整が行えると共に、ソーチェン6の張り強さのバラツキが無くなることにより安全性が向上し、ソーチェン6の張り過ぎによるガイドバー4、ソーチェン6の短寿命化を防止でき、更には、ソーチェン6の張り不足によるガイドバー4の損傷やソーチェン6の脱落を防止できる。
【0066】
また、チェン張り部21によって迅速かつ確実にソーチェン6の張り調整を行うことができると共に、ソーチェン6の初期伸びが発生する新品のソーチェン6使用時に必要となる頻繁なソーチェン6の張り調整に際しても、鋸断作業の停止時間を最小限に抑えつつ張り調整を行うことができる。
【0067】
更にまた、精密部品や歯車等を用いずにばね等の汎用技術でチェン張り部21を構成できるため、製造コストを抑えることができる。
【0068】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。図11に示す本実施形態のチェンソー1Aが図10に示した第1実施形態のチェンソー1と違う点は、チェンブレーキ46を備えていない点である。このチェンソー1Aにおいても、チェン張り部21によって、チェンソー1と同様のソーチェン6の張り調整を行うことができ、チェンソー1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0069】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。図12に示す本実施形態のチェンソー1Bが図10に示した第1実施形態のチェンソー1と違う点は、連結スプリング26に代えて樹脂製の連結具60を用いた点である。なお、この変更に伴い、連結部24及びチェン張り部21は、連結部24B及びチェン張り部21Bに変更されている。
【0070】
この連結具60は、連結スプリング26のU字部26aと同様の形状を成すU字部60aを有しており、このU字部60a内に、ハンドガード40の第1ピン42が遊嵌配置されている。チェン張り部21Bのその他の構成は、チェンソー1のチェン張り部21と同様である。
【0071】
このチェンソー1Bにおいても、チェン張り部21Bによって、チェンソー1と同様のソーチェン6の張り調整を行うことができる。なお、チェン張り部21Bの連結具60によれば、ハンドガード40を引き上げる強さ(回動位置の高さ)に応じて、ソーチェン6の張力を調整することができる。
【0072】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。図13に示す本実施形態のチェンソー1Cが図12に示した第3実施形態のチェンソー1Bと違う点は、チェンブレーキ46を備えていない点である。このチェンソー1Cにおいても、チェン張り部21Bによって、チェンソー1Bと同様のソーチェン6の張り調整を行うことができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、チェン張り部21は、チェンケース7に一体のユニットとして設けられている場合について説明したが、チェンソー本体3側に設けられていてもよい。また、連結部24は、連結スプリング26や連結具60を有する構成に限られず、リンク機構のみにより構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B,1C…チェンソー、2…回転部、3…チェンソー本体、4…ガイドバー、4a…基部、4c…孔部、6…ソーチェン、7…チェンケース、15…案内部、23…ボス(係止突部)、24,24B…連結部、26…連結スプリング(ばね部材)、26a…U字部、40…ハンドガード(操作レバー)、41…回動支持部、42…第1ピン(ピン)、46…チェンブレーキ(ブレーキ機構)、47…ブレーキレバー(回動レバー)、48…軸、60…連結具、60a…U字部、A…延出方向、P…離脱位置(位置)、R1…回動範囲(第1の範囲)、R2…回動範囲(第2の範囲)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェンソーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載されるように、駆動力を伝達するための回転部を有する本体と、本体に装着されて本体の前方に延出するガイドバーと、回転部及びガイドバーの外縁部に沿って取り付けられる無終端状のソーチェンと、を備えるチェンソーにおいて、ガイドバーの孔に緊張部品を嵌入させ、この緊張部品をガイドバーの延出方向(前方)に押し出すコイルばねを有するソーチェンの張り機構が知られている。
【0003】
この機構では、コイルばねの付勢力によりガイドバーをその延出方向に押し出し、ガイドバーに取り付けられたソーチェンに所定の張力を与えている。そして、押し出された状態のガイドバーを、ボルトの締結により本体に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭60−39201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の機構では、コイルばねの付勢力のみによってガイドバーを押し出すようにしているため、十分な張力でソーチェンを張るにはコイルばねを強くする必要があり、その取り扱いが困難になるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、簡便にソーチェンを張ることができるチェンソーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチェンソーは、駆動力を伝達するための回転部(2)を有する本体(3)と、本体(3)に装着されて本体(3)の前方に延出するガイドバー(4)と、回転部(2)及びガイドバー(4)の外縁部に沿って取り付けられる無終端状のソーチェン(6)と、を備えるチェンソー(1)であって、ガイドバー(4)をガイドバー(4)の延出方向(A)に案内するための案内部(15)と、ガイドバー(4)に設けられ、ガイドバー(4)を厚み方向に貫通する孔部(4c)と、孔部(4c)に進入する係止突部(23)と、係止突部(23)を、操作者により操作される操作レバー(40)に連結する連結部(24)と、を有し、ガイドバー(4)の孔部(4c)に進入した係止突部(23)と共にガイドバー(4)が、操作レバー(40)の操作に連動して、延出方向(A)であってソーチェン(6)を張る方向に移動可能とされていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るチェンソーでは、ガイドバー(4)の孔部(4c)に進入した係止突部(23)は、連結部(24)によって操作レバー(40)に連結されており、この係止突部(23)が操作レバー(40)の操作に連動して延出方向(A)に沿って移動すると共に、この係止突部(23)の移動により、ガイドバー(4)が、案内部(15)により案内されながら延出方向(A)であってソーチェン(6)を張る方向に移動する。この際、ガイドバー(4)の外縁部に沿って取り付けられたソーチェン(6)の張力は、操作レバー(40)の操作により連結部(24)に伝わる力を調整することで、適宜調整することができる。よって、十分な張力でソーチェン(6)を張る場合であっても強いコイルばねを要するようなことがなく、簡便にソーチェン(6)を張ることができる。
【0009】
ここで、連結部(24)は、操作レバー(40)に接続されたばね部材(26)を含む構成とすれば、ばね部材(26)の弾性によって、連結部(24)に伝わる力に対する緩衝作用が生じ、ソーチェン(6)の張力を略一定に調整することができる。
【0010】
また、操作レバー(40)は、操作者の手を保護するためのハンドガードである構成とすれば、ソーチェン(6)の張り調整のための専用のレバーを別途設ける必要がなく部材の共用化が図られる。
【0011】
また、回転部(2)の回転を停止するためのブレーキ機構(46)を備え、操作レバー(40)は、回動支持部(41)を中心として第1の範囲(R1)を回動することにより、回動支持部(41)とは異なる位置にある軸(48)を中心として回動するブレーキ機構(46)の回動レバー(47)に当接しブレーキ機構(46)を操作可能であると共に、操作レバー(40)は、回動支持部(41)を中心とし第1の範囲(R1)とは異なる第2の範囲(R2)では、回動支持部(41)と軸(48)との位置の相違により回動レバー(47)から位置(P)で離脱し連結部(24)に連結されることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1の範囲(R1)においてはブレーキ機構(46)によるブレーキ操作を支障なく行うことができ、また、第2の範囲(R2)においては操作レバー(40)の操作に連動してガイドバー(4)を移動させることによりソーチェン(6)の張り調整を支障なく行うことができる。
【0013】
また、連結部(24)は、その一端にU字部(26a,60a)を有する連結具(26,60)を含み、操作レバー(40)は、ピン(42)を有し、ピン(42)は、U字部(26a,60a)内に遊嵌配置されている構成とすれば、ソーチェン(6)の張り調整時以外の通常の使用時においては、U字部(26a,60a)内でピン(42)をフリーにすることができ連結部(24)による連結機能がはたらかず、鋸断作業を支障なく行うことができる。
【0014】
また、ガイドバー(4)の基部(4a)を覆うように本体(3)に取り付けられるチェンケース(7)を備え、係止突部(23)、操作レバー(40)、及び連結部(24)は、チェンケース(7)に一体のユニットとして設けられている構成とすれば、ソーチェン(6)の張り調整に係るこれらの部品の組立が容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るチェンソーによれば、簡便な操作によりソーチェン張りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るチェンソーの右側面図である。
【図2】図1のチェンソーを前方から見た図である。
【図3】図1のチェンソーを構成する本体の右側面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】図3の本体にガイドバーを仮装着した状態を示す図である。
【図6】図5の本体に更にチェンケースを装着した状態における、VI-VI線断面図である。
【図7】チェンケースを内側から見た図である。
【図8】図7のチェンケースにおいてチェンブレーキが非作動の状態を示す図である。
【図9】図7のチェンケースにおいてチェンブレーキを作動させた状態を示す図である。
【図10】チェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。
【図11】第2実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。
【図12】第3実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。
【図13】第4実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るチェンソーについて、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るチェンソーの右側面図、図2は、図1のチェンソーを前方から見た図、図3は、図1のチェンソーを構成する本体の右側面図である。
【0019】
本実施形態のチェンソー1は、操作者により操作されて木材等の対象物を切るためのものであり、駆動力を伝達するための回転部2を有するチェンソー本体(本体)3と、チェンソー本体3に装着されてチェンソー本体3の前方(図1では右側)に延出するガイドバー4と、回転部2及びガイドバー4の外縁部に沿って取り付けられる無終端状のソーチェン6と、回転部2及びガイドバー4の基部4a(図5参照)を覆うようにチェンソー本体3に取り付けられるチェンケース7と、を備えている。本実施形態の説明においては、特に断らない限り、ガイドバー4の突出方向を前、チェンケース7の取り付け側を右とする。
【0020】
回転部2は、チェンソー本体3に内蔵されたエンジンに連結されエンジンで生じた回転駆動力を伝達する略円筒形状のクラッチドラム2aと、クラッチドラム2aに設けられたスプロケット2bとを有している。ソーチェン6は、無終端状のチェーン6aに鋸刃6bを付けたものであり、このチェーン6aがスプロケット2bとガイドバー4の外周に掛け渡されている。
【0021】
このようなチェンソー1では、操作者がフロントハンドル8を左手で握ると共にリヤハンドル9の把手部9aを右手で握り、エンジンを駆動させることでスプロケット2bを回転させ、ソーチェン6を、スプロケット2b及びガイドバー4の外周により形成されている略長円形状の周回軌道を移動させることによって、道具を引くことなく対象物を切ることが可能になっている。
【0022】
図4は、図3のIV-IV線断面図である。図3及び図4に示すように、チェンソー本体3の右側面には、回転部2の前方側において、ガイドバー4の基部4a(図5参照)をチェンソー本体3に取り付けるためのガイドプレート10が設けられている。ガイドプレート10には、その上下方向の中央部の位置において、前後方向に互いに離間するガイドバー取付ボルト11(以下、単に「ボルト11」ともいう)及びボルト12が、ガイドプレート10の表面10aに対して垂直に突出するようにして並設されている。
【0023】
更に、ガイドプレート10には、ガイドバー取付ボルト11及びボルト12の並設位置よりも下側において、ガイドバー4の延出方向Aに沿って延び、所定の上下幅を有する溝(溝部)14が形成されている。
【0024】
また、溝14内の後端部(図3の左側端部)には、先端側が閉じられた略円筒形状のキャップ(突起)16が、表面10aに対して垂直を成すように配置されており、このキャップ16の基端側(底部側)で溝14内には、当該キャップ16を外方へ付勢する圧縮スプリング17が設けられている。この状態で、キャップ16の先端側は、表面10aより所定長さ外方へ突出するように構成されている。
【0025】
そして、このキャップ16は、後述するチェンケース7のボス(係止突部)23により、キャップ16の先端から基端に向けての押圧力を受けると、ガイドプレート10内に押し込まれてその先端が表面10aよりも内側に退避する(図6参照)。このように、キャップ16は、チェンソー本体3内に押込可能とされている。
【0026】
図5は、図3の本体3にガイドバー4を仮装着した状態を示す図である。図5に示すように、ガイドバー4には、ガイドバー4を厚み方向に貫通すると共にガイドバー4の延出方向Aに沿って延び、所定の上下幅を有する長孔部4bと、長孔部4bとは別に当該長孔部4bよりも下方の位置でガイドバー4を厚み方向に貫通する円形状の孔部4cとが設けられている。これらの長孔部4b及び孔部4cは、上記したボルト11,12及びキャップ16に対応する位置にそれぞれ設けられており、図5に示すガイドバー4の仮装着状態では、ボルト11,12は長孔部4bに挿入され、キャップ16は孔部4cに挿入される。
【0027】
上記構成により、キャップ16がチェンソー本体3から突出した状態となるガイドバー4の仮装着時には、当該キャップ16と、ボルト11,12とによって、ガイドバー4が3点(上下方向で見ると2点)で支持され、ガイドバー4が前方向に倒れたりガイドプレート10から脱落したりすることが防止され、仮装着時におけるガイドバー4の姿勢を安定にできる。また、キャップ16がチェンソー本体3内に押し込まれた状態では、ガイドバー4は、ボルト11,12及び長孔部4bにより案内され、ガイドプレート10上に摺接しながら延出方向Aに沿って移動できる。
【0028】
斯くの如く、ガイドバー取付ボルト11、ボルト12、及び長孔部4bにより、ガイドバー4を延出方向Aに案内するための案内部15が構成されている。
【0029】
また、図6に示すように、チェンソー本体3にチェンケース7が取り付けられ、ガイドバー取付ボルト11とナット18とが締結されることにより、ガイドバー4は、ガイドプレート10及びチェンケース7によって挟持固定される。なお、ソーチェン6を張り調整する場合には、ナット18を緩めることにより、ガイドバー4の姿勢を保持しつつガイドバー4の延出方向Aに沿う移動を許容することができる。
【0030】
図7は、図1中のチェンケース7を内側から見た図、図8は、図7のチェンケース7においてチェンブレーキが非作動の状態を示す図、図9は、図7のチェンケース7においてチェンブレーキを作動させた状態を示す図である。
【0031】
図7〜図9に示すように、チェンケース7は、チェンソー本体3の右側面に取り付けられるケース本体20を備え、当該ケース本体20の上部に回動支持部41を介して回動可能に連結され操作者の手を保護するためのハンドガード40を有している(図1、図2も参照)。
【0032】
このチェンケース7は、チェンソー1の使用中に回転部2の回転を停止するためのブレーキ機構であるチェンブレーキ46と、ソーチェン6の張力を調整するための張り調整機構であるチェン張り部21(図10参照)とを備えている。
【0033】
ハンドガード40は、チェンブレーキ46を操作する機能を有すると共に、チェン張り部21の一部である操作レバーとしての機能を有している。このハンドガード40は、回動支持部41を中心として所定の範囲を回動可能とされている。より詳しくは、ハンドガード40は、下方の回動範囲(第1の範囲)R1(図9参照)を回動することによりチェンブレーキ46を操作可能となっており、回動範囲R1とは異なる上方の回動範囲(第2の範囲)R2を回動することによりチェン張り部21を操作可能となっている。
【0034】
更に、ハンドガード40は、ハンドガード40の内側に設けられてチェンソー1の幅方向に所定長さ突出する丸棒状の第1ピン42及び第2ピン43を有している。
【0035】
第1ピン42は、図7において実線で示される通常の使用状態を基準として、ハンドガード40の前方側に配置され、第2ピン43は、第1ピン42よりも後方且つ僅かに上方に配置されている(図8参照)。第1ピン42は、チェンブレーキ46のブレーキを解除し、更には、ソーチェン6を張るためのものである。また、第2ピン43は、チェンブレーキ46のブレーキを作動させるためのものである。以下、チェンブレーキ46及びチェン張り部21について説明する。
【0036】
まず、チェンブレーキ46について説明する。図8に示すように、チェンブレーキ46は、第2ピン43又は第1ピン42からの押圧作用を受けて軸48を中心に回動させられブレーキの作動又は解除を行うためのブレーキレバー(回動レバー)47と、ブレーキレバー47の基端側にその一端が連結されたリンク50と、円筒形状のスプリング収容部51内に配置され、リンク50の他端側を押圧する圧縮コイルばねであるブレーキスプリング52と、ブレーキスプリング52の伸張に伴い回転部2(図5参照)を制動するブレーキリング53とを有している。
【0037】
ブレーキレバー47は、ハンドガード40の回動範囲R1(図9参照)において、軸48よりも上部に延びたピン当接部49が、第1ピン42及び第2ピン43の間に位置するように設けられており、ハンドガード40の下降操作に伴い第2ピン43により上方から摺接(当接)状態で押し下げられることによりブレーキを作動させ、一方、ハンドガード40の上昇操作に伴い第1ピン42により下方から摺接(当接)状態で押し上げられることによりブレーキを解除させる。
【0038】
ここで、ピン当接部49の回動中心である軸48は、第1ピン42の回動中心である回動支持部41とは異なる位置に設けられている。このような回動支持部41と軸48との位置の相違により、第1ピン42の回動軌跡とピン当接部49先端の回動軌跡とは、ブレーキレバー47のブレーキ解除位置付近で交差するようになっている(図9の位置P参照)。そのため、ハンドガード40の上昇操作によって、ピン当接部49先端より下方に位置する第1ピン42により押し上げられたブレーキレバー47は、その後、位置Pにおいて第1ピン42から離脱する構成とされている。換言すれば、ハンドガード40は、回動範囲R1ではブレーキレバー47に当接するが、第1ピン42の位置が離脱位置Pよりも上方側となる回動範囲R2では、ブレーキレバー47から離脱する構成とされている。
【0039】
ブレーキリング53は、回転部2(図5参照)のクラッチドラム2aの外周に着脱自在に巻回された部材であり、一端がブレーキスプリング52の先端側(上端側)に設けられた掛止部55に接続され、他端がケース本体20側に設けられた掛止部80に固定されている。このブレーキリング53は、図8に示すブレーキ非作動状態では、クラッチドラム2aから離隔されて回転部2の回転を許容し、図9に示すブレーキ作動状態では、ブレーキスプリング52の伸張に従いクラッチドラム2aを締め付けて回転部2を制動する。
【0040】
ここで、ブレーキスプリング52は、ブレーキスプリング52の押圧力とリンク50の壁56への当接により、ブレーキ非作動の状態でその位置(姿勢)を保持するようになっている。よって、ハンドガード40の下降操作又は上昇操作によってチェンブレーキ46のブレーキを作動又は解除するためには、ブレーキスプリング52の姿勢保持力を上回る程度の強い力でハンドガード40を操作すれば良い。なお、上記チェンブレーキ46では、チェンソー1使用時の跳ね返り現象である所謂キックバックが発生した場合にハンドガード40が左手により強く押し下げられ、チェンソー1が非常停止するようになっている。
【0041】
続いて、チェン張り部21について、図10も参照しながら説明する。図10は、チェンソー1のチェン張り部21によるソーチェン6の張り調整の動作概念図である。図10に示すように、チェン張り部21は、操作者により操作される操作レバーとしてのハンドガード40と、チェンケース7の内側面に設けられた内側カバー19(図6及び図7参照)の開口部25(図7参照)からチェンソー本体3に向けて突出し、ガイドバー4の孔部4c(図5参照)に進入するソーチェン張り調整用のボス23と、ボス23をハンドガード40に連結する連結部24とを有している。これらのハンドガード40、ボス23、及び連結部24は、チェンケース7に一体のユニットとして設けられている。
【0042】
ボス23は、チェンケース7の内側カバー19から所定長さだけ突出している。このボス23は、その突出長さが、図6に示すようにガイドバー4の厚みよりも長くされ、チェンケース7をチェンソー本体3に装着した状態でガイドバー4の孔部4cに進入し、更には、キャップ16が設けられた溝14内に進入するようになっている。
【0043】
連結部24は、その上端がハンドガード40の第1ピン42に接続され、所定のばね定数を有する引張コイルばねである連結スプリング(ばね部材)26と、その一端が連結スプリング26の下端に連結され軸29を中心に回動自在に設けられた第1リンク27と、第1リンク27の他端に対し連結軸31を介して回動可能に連結され、前方の端部に前述したボス23が設けられた第2リンク28とを有している。
【0044】
連結スプリング26は、ハンドガード40の操作により引っ張られて第1リンク27を図8及び図9の時計周りに回動させ,この回動により第2リンク28と共にボス23を前方に移動させるための連結具である。連結スプリング26は、その上端部(一端)において、コイルばね部分の軸線よりも後方に屈曲したU字部26aを有している(図7、図10参照)。このU字部26aは、コイルばね部分から延びる線材とU字状に折り返された線材とにより形成されており、折り返された線材の終端はコイルばね部分の上端付近まで戻ると共に当該上端からは所定距離だけ離間している。そして、このU字部26a内に、上記した第1ピン42が遊嵌配置され、U字部26a内を長手方向に往復移動可能とされている。
【0045】
図7において実線で示される通常の使用状態では、ハンドガード40の第1ピン42はU字部26a内の長手方向中央部に位置しているが、仮想線で示すように、ハンドガード40の上昇操作に伴い第1ピン42がU字部26a内を上昇し、U字部26aの長手方向上端部内側に係合する。この係合により、連結スプリング26は第1ピン42により引っ張り上げられるようになっている。このようにして、ハンドガード40は、第1ピン42により連結スプリング26に対し接続されている。
【0046】
なお、第1ピン42がU字部26aの長手方向上端部内側に係合する位置は、上述したブレーキレバー47の第1ピン42からの離脱位置P(第1ピン42の回動軌跡とピン当接部49先端の回動軌跡とが交差する位置P;図9参照)と同程度の位置とされている。すなわち、第1ピン42がブレーキレバー47から離脱する回動範囲R2では、第1ピン42とU字部26aとの係合により、ハンドガード40は連結スプリング26を引っ張り上げることが可能となっている。これによって、回動範囲R2ではハンドガード40が連結部24に連結され、ソーチェン6の張り作業時(図10の仮想線から実線への移動時)には、第1ピン42はブレーキレバー47に干渉せず、張り作業が支障なく行われる。
【0047】
連結部24を構成する第1リンク27は、その上端27aが連結スプリング26の下端に対し回転自在に連結され、軸29の位置を屈折点として前方に向けて上方に傾くように屈折している。この第1リンク27は、連結スプリング26からの引張力を受けて図10の反時計回りに回動し、第2リンク28と共にボス23を前方(図10の延出方向A)に押し出す。
【0048】
第2リンク28は、図8及び図9に示すように、ケース本体20の内側に形成された長手方向に垂直な断面が溝状のガイド部22により案内されて、ガイド部22内を前後方向に移動可能に設けられている。ガイド部22の後端及び前端には、第2リンク28の移動範囲を規制するための後方壁36及び前方壁37が形成されている。
【0049】
ここで、上記第1リンク27には、ボス23を図8に実線で示す初期位置Bに移動するためのねじりばね32が取り付けられている。より詳しくは、ねじりばね32は、その一端がケース本体20の内側に形成された係止部33に係止され、軸29の周りを下側から一又は複数巻きした上で、他端が第1リンク27の下部27bに対し前方から引っ掛けられている。
【0050】
このような構成により、チェン張り部21では、ねじりばね32により第1リンク27の下部27bが後方に付勢されて後方壁36に当接すると共に、この状態でボス23が初期位置Bに位置する。この初期位置Bは、チェンケース7をチェンソー本体3に装着する際にチェンソー本体3に設けられたキャップ16(図3、図5参照)に対面する位置となっている。そして、これらの第1リンク27、第2リンク28、ガイド部22、ねじりばね32、及び後方壁36を含んで、ボス23を初期位置Bに移動させる移動手段34が構成されている。
【0051】
従って、ボス23は、ハンドガード40に連結されてハンドガード40の動きと連動し、移動手段34による後方への付勢力に抗して、ソーチェン6を張るために必要な最低限の前進位置であるチェン最短位置Cや、このチェン最短位置Cから、前方壁37により規制される最前位置に至るまでの所定範囲の調整位置Dを移動可能とされている(図8参照)。
【0052】
以上の構成を有するチェンソー1では、ガイドバー4をチェンソー本体3に仮装着するにあたって、ガイドバー4に設けられた長孔部4b及び孔部4cの各々に、チェンソー本体3に設けられたボルト11,12及びキャップ16を挿入する。ここで、ボルト11,12及びキャップ16の位置は、長孔部4b及び孔部4cの各々に予め対応しているため、位置合わせの手間を要せず、ガイドバー4を容易に仮装着することができる。
【0053】
そして、チェンケース7を、図1に示すようにチェンソー本体3に取り付けることにより、移動手段34により初期位置Bに移動された状態のボス23が、ガイドバー4の孔部4c及びチェンソー本体3の溝14に進入し、キャップ16をチェンソー本体3内に押し込む(図6参照)。
【0054】
キャップ16は、このように、チェンソー本体3内に押し込まれることによりガイドバー4の孔部4cから退避(離脱)しているため、案内部15(ボルト11,12及び長孔部4b)によってガイドバー4を延出方向Aに案内しながらソーチェン6の張り調整を行うことができる。
【0055】
より詳しくは、ハンドガード40を回動範囲R2(図9参照)内で上方に向けて回動操作することにより、この操作に連動して連結スプリング26が引っ張られて伸張しつつ、第1リンク27を回動させ、この回動により、ガイドバー4の孔部4cに進入したボス23が溝14内を延出方向Aに移動し、このボス23の移動に伴い、ガイドバー4が延出方向Aであってソーチェン6を張る方向に移動する(図10の実線参照)。
【0056】
ここで、連結スプリング26のばね定数とソーチェン6の張り抵抗とのバランスにより、ハンドガード40を上方へ所定の回動位置まで回動させることによってソーチェン6は所望の張力に調整される。例えば、ソーチェン6の張り抵抗が大きい場合には、ハンドガード40を所定の回動位置から更に上方に向けて回動させても、連結スプリング26が伸張するのみで第1リンク27、第2リンク28、及びボス23はほとんど移動しなくなり、そのためソーチェン6の張力は誰がハンドガード40を操作しても略一定に保たれる。そして、ソーチェン6を張り終えた後、ナット18を締めてガイドバー4を挟持固定する。
【0057】
また、チェンソー1の使用時において、例えばキックバック等が発生し操作者の左手によりハンドガード40が強く押し下げられる(下方に回動させられる)と、チェンブレーキ46のブレーキレバー47が第2ピン43により押し下げられてブレーキが作動し、図9の実線で示す状態となる。
【0058】
また、ブレーキが作動した後、ハンドガード40が上方に向けて回動操作されると、ブレーキレバー47が第1ピン42により押し上げられてブレーキが解除され、図8に示す状態となる。
【0059】
以上説明した本実施形態のチェンソー1によれば、ソーチェン6の張り調整を行う際、ガイドバー4の外縁部に沿って取り付けられたソーチェン6の張力は、ハンドガード40の操作により連結部24に伝わる力を調整することで、適宜調整することができる。よって、十分な張力でソーチェン6を張る場合であっても強いコイルばねを要するようなことがなく、簡便にソーチェンを張ることができる。
【0060】
また、連結部24は、ハンドガード40に接続された連結スプリング26を含むため、連結スプリング26の弾性によって連結部24に伝わる力に対する緩衝作用が生じ、ソーチェン6の張力を略一定に調整することができる。
【0061】
また、ハンドガード40は、操作者の手を保護するためのハンドガードであるため、ソーチェン6の張り調整のための専用のレバーを別途設ける必要がなく部材の共用化が図られる。
【0062】
また、ハンドガード40は、回動支持部41を中心として回動範囲R1を回動することにより軸48を中心として回動するブレーキレバー47に当接しチェンブレーキ46を操作可能であると共に、ハンドガード40は、回動範囲R1とは異なる回動範囲R2では、回動支持部41と軸48との位置の相違によりブレーキレバー47から離脱位置Pで離脱し連結部24に連結されるため、回動範囲R1においてはチェンブレーキ46によるブレーキ操作を支障なく行うことができ、また、回動範囲R2においてはハンドガード40の操作に連動してガイドバー4を移動させることによりソーチェン6の張り調整を支障なく行うことができる。すなわち、ブレーキ操作及びソーチェン6の張り調整を各々独立して行うことができる。
【0063】
また、ハンドガード40の第1ピン42は、連結スプリング26のU字部26a又は連結具60のU字部60a内に遊嵌配置されているため、ソーチェン6の張り調整時以外の通常の使用時においては、U字部26a,60a内で第1ピン42をフリーにすることができ連結部24による連結機能がはたらかず、鋸断作業を支障なく行うことができる。
【0064】
また、ボス23、ハンドガード40、及び連結部24は、チェンケース7に一体のユニットとして設けられているため、ソーチェン6の張り調整に係るこれらの部品の組立が容易となる。
【0065】
また、連結スプリング26の弾性(ばね定数)によりソーチェン6の張力が決まるので、操作者によらず誰でも同程度の張り調整が行えると共に、ソーチェン6の張り強さのバラツキが無くなることにより安全性が向上し、ソーチェン6の張り過ぎによるガイドバー4、ソーチェン6の短寿命化を防止でき、更には、ソーチェン6の張り不足によるガイドバー4の損傷やソーチェン6の脱落を防止できる。
【0066】
また、チェン張り部21によって迅速かつ確実にソーチェン6の張り調整を行うことができると共に、ソーチェン6の初期伸びが発生する新品のソーチェン6使用時に必要となる頻繁なソーチェン6の張り調整に際しても、鋸断作業の停止時間を最小限に抑えつつ張り調整を行うことができる。
【0067】
更にまた、精密部品や歯車等を用いずにばね等の汎用技術でチェン張り部21を構成できるため、製造コストを抑えることができる。
【0068】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。図11に示す本実施形態のチェンソー1Aが図10に示した第1実施形態のチェンソー1と違う点は、チェンブレーキ46を備えていない点である。このチェンソー1Aにおいても、チェン張り部21によって、チェンソー1と同様のソーチェン6の張り調整を行うことができ、チェンソー1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0069】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。図12に示す本実施形態のチェンソー1Bが図10に示した第1実施形態のチェンソー1と違う点は、連結スプリング26に代えて樹脂製の連結具60を用いた点である。なお、この変更に伴い、連結部24及びチェン張り部21は、連結部24B及びチェン張り部21Bに変更されている。
【0070】
この連結具60は、連結スプリング26のU字部26aと同様の形状を成すU字部60aを有しており、このU字部60a内に、ハンドガード40の第1ピン42が遊嵌配置されている。チェン張り部21Bのその他の構成は、チェンソー1のチェン張り部21と同様である。
【0071】
このチェンソー1Bにおいても、チェン張り部21Bによって、チェンソー1と同様のソーチェン6の張り調整を行うことができる。なお、チェン張り部21Bの連結具60によれば、ハンドガード40を引き上げる強さ(回動位置の高さ)に応じて、ソーチェン6の張力を調整することができる。
【0072】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態に係るチェンソーのチェン張り部によるソーチェンの張り調整の動作概念図である。図13に示す本実施形態のチェンソー1Cが図12に示した第3実施形態のチェンソー1Bと違う点は、チェンブレーキ46を備えていない点である。このチェンソー1Cにおいても、チェン張り部21Bによって、チェンソー1Bと同様のソーチェン6の張り調整を行うことができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、チェン張り部21は、チェンケース7に一体のユニットとして設けられている場合について説明したが、チェンソー本体3側に設けられていてもよい。また、連結部24は、連結スプリング26や連結具60を有する構成に限られず、リンク機構のみにより構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B,1C…チェンソー、2…回転部、3…チェンソー本体、4…ガイドバー、4a…基部、4c…孔部、6…ソーチェン、7…チェンケース、15…案内部、23…ボス(係止突部)、24,24B…連結部、26…連結スプリング(ばね部材)、26a…U字部、40…ハンドガード(操作レバー)、41…回動支持部、42…第1ピン(ピン)、46…チェンブレーキ(ブレーキ機構)、47…ブレーキレバー(回動レバー)、48…軸、60…連結具、60a…U字部、A…延出方向、P…離脱位置(位置)、R1…回動範囲(第1の範囲)、R2…回動範囲(第2の範囲)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を伝達するための回転部(2)を有する本体(3)と、前記本体(3)に装着されて前記本体(3)の前方に延出するガイドバー(4)と、前記回転部(2)及び前記ガイドバー(4)の外縁部に沿って取り付けられる無終端状のソーチェン(6)と、を備えるチェンソー(1)であって、
前記ガイドバー(4)を前記ガイドバー(4)の延出方向(A)に案内するための案内部(15)と、
前記ガイドバー(4)に設けられ、前記ガイドバー(4)を厚み方向に貫通する孔部(4c)と、
前記孔部(4c)に進入する係止突部(23)と、
前記係止突部(23)を、操作者により操作される操作レバー(40)に連結する連結部(24)と、を有し、
前記ガイドバー(4)の前記孔部(4c)に進入した前記係止突部(23)と共に前記ガイドバー(4)が、前記操作レバー(40)の操作に連動して、前記延出方向(A)であってソーチェン(6)を張る方向に移動可能とされていることを特徴とするチェンソー。
【請求項2】
前記連結部(24)は、操作レバー(40)に接続されたばね部材(26)を含むことを特徴とする請求項1記載のチェンソー。
【請求項3】
前記操作レバー(40)は、操作者の手を保護するためのハンドガードであることを特徴とする請求項1又は2記載のチェンソー。
【請求項4】
前記回転部(2)の回転を停止するためのブレーキ機構(46)を備え、
前記操作レバー(40)は、回動支持部(41)を中心として第1の範囲(R1)を回動することにより、前記回動支持部(41)とは異なる位置にある軸(48)を中心として回動する前記ブレーキ機構(46)の回動レバー(47)に当接し前記ブレーキ機構(46)を操作可能であると共に、
前記操作レバー(40)は、前記回動支持部(41)を中心とし前記第1の範囲(R1)とは異なる第2の範囲(R2)では、回動支持部(41)と軸(48)との位置の相違により回動レバー(47)から位置(P)で離脱し前記連結部(24)に連結されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のチェンソー。
【請求項5】
前記連結部(24)は、その一端にU字部(26a,60a)を有する連結具(26,60)を含み、
前記操作レバー(40)は、ピン(42)を有し、
前記ピン(42)は、前記U字部(26a,60a)内に遊嵌配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のチェンソー。
【請求項6】
前記ガイドバー(4)の基部(4a)を覆うように前記本体(3)に取り付けられるチェンケース(7)を備え、
前記係止突部(23)、前記操作レバー(40)、及び前記連結部(24)は、前記チェンケース(7)に一体のユニットとして設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のチェンソー。
【請求項1】
駆動力を伝達するための回転部(2)を有する本体(3)と、前記本体(3)に装着されて前記本体(3)の前方に延出するガイドバー(4)と、前記回転部(2)及び前記ガイドバー(4)の外縁部に沿って取り付けられる無終端状のソーチェン(6)と、を備えるチェンソー(1)であって、
前記ガイドバー(4)を前記ガイドバー(4)の延出方向(A)に案内するための案内部(15)と、
前記ガイドバー(4)に設けられ、前記ガイドバー(4)を厚み方向に貫通する孔部(4c)と、
前記孔部(4c)に進入する係止突部(23)と、
前記係止突部(23)を、操作者により操作される操作レバー(40)に連結する連結部(24)と、を有し、
前記ガイドバー(4)の前記孔部(4c)に進入した前記係止突部(23)と共に前記ガイドバー(4)が、前記操作レバー(40)の操作に連動して、前記延出方向(A)であってソーチェン(6)を張る方向に移動可能とされていることを特徴とするチェンソー。
【請求項2】
前記連結部(24)は、操作レバー(40)に接続されたばね部材(26)を含むことを特徴とする請求項1記載のチェンソー。
【請求項3】
前記操作レバー(40)は、操作者の手を保護するためのハンドガードであることを特徴とする請求項1又は2記載のチェンソー。
【請求項4】
前記回転部(2)の回転を停止するためのブレーキ機構(46)を備え、
前記操作レバー(40)は、回動支持部(41)を中心として第1の範囲(R1)を回動することにより、前記回動支持部(41)とは異なる位置にある軸(48)を中心として回動する前記ブレーキ機構(46)の回動レバー(47)に当接し前記ブレーキ機構(46)を操作可能であると共に、
前記操作レバー(40)は、前記回動支持部(41)を中心とし前記第1の範囲(R1)とは異なる第2の範囲(R2)では、回動支持部(41)と軸(48)との位置の相違により回動レバー(47)から位置(P)で離脱し前記連結部(24)に連結されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のチェンソー。
【請求項5】
前記連結部(24)は、その一端にU字部(26a,60a)を有する連結具(26,60)を含み、
前記操作レバー(40)は、ピン(42)を有し、
前記ピン(42)は、前記U字部(26a,60a)内に遊嵌配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のチェンソー。
【請求項6】
前記ガイドバー(4)の基部(4a)を覆うように前記本体(3)に取り付けられるチェンケース(7)を備え、
前記係止突部(23)、前記操作レバー(40)、及び前記連結部(24)は、前記チェンケース(7)に一体のユニットとして設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のチェンソー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−152750(P2011−152750A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16777(P2010−16777)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】
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