説明

チェーンの繰り出し装置

【課題】 1対のチェーンを円滑に伸張縮退させる。
【解決手段】 所定の間隔をおいて配置された駆動輪16、18それぞれに、チェーン8、10の一部を前記間隔内において噛み合わせ、チェーン8、10は、前記間隔内における駆動輪16、18と非噛み合い部分が直線状に位置し、駆動輪16、18との噛み合い部分を経て前記間隔外で前記間隔内での方向とほぼ90度曲がった方向に位置する。チェーン8、10の外側及び内側中間プレート34、36には、それぞれ係合用のピン50、52が設けられ、チェーン10の外側及び内側中間プレート46、48の両端には、係合用のピン50、52を挟持する円弧状凹部54、56が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪に巻き掛けされた1対のチェーンを進退駆動させるチェーンの繰り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のチェーンの繰り出し装置としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。特許文献1の技術では、間隔をおいて1対の駆動輪を配置し、各駆動輪にそれぞれチェーンを90度に屈曲するように巻き掛けてある。この巻き掛けは、1対のチェーンの上記間隔内にある部分が対向するように、上記の間隔の外部にある部分がそれぞれ反対方向にあるように、行われている。1対のチェーンの上記間隔内にある部分では、対向面にそれぞれ凸部が互いに噛み合うように設けられている。これら凸部が噛み合うことによって、1対のチェーンが自立する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−169693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、対向する凸部同士を噛み合わせる構成であるので、対向する凸部同士が干渉して、噛み合いが不安定な状態になりやすく、円滑にチェーンの伸張、退縮を円滑に行い難かった。
【0005】
本発明は、1対のチェーンの伸張退縮を円滑に行うことができるチェーンの繰り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のチェーンの繰り出し装置は、第1及び第2の駆動輪を有している。第1及び第2の駆動輪は、所定の間隔をおいて配置され、互いに平行な回転軸の回りに回転可能である。第1の駆動輪に第1のチェーンの一部が前記間隔内において噛み合わされ、第2の駆動輪に第2のチェーンの一部が前記間隔内において噛み合わされている。第1のチェーンは、前記間隔内における第1の駆動輪と非噛み合い部分が前記回転軸に対して直角な方向に直線状に位置し、第1の駆動輪との噛み合い部分を経て前記間隔外で前記間隔内での方向とほぼ90度曲がった方向に位置する。同様に、第2のチェーンは、前記間隔内における第1の駆動輪と非噛み合い部分が第1のチェーンと対向しかつ前記回転軸に対して直角な方向に直線状に位置し、第2の駆動輪との噛み合い部分を経て前記間隔外で前記間隔内での方向とほぼ90度曲がり、かつ第1のチェーンの間隔外の部分の方向と反対方向に位置する。少なくとも第1のチェーンの各前記リンクには、それぞれ第1のチェーンの係合用のピンが各前記リンクに対して垂直に設けられている。少なくとも第2のチェーンの前記各リンクの隣接する前記リンクと連結されている連結端部の縁部には第2のチェーンの係合用凹部がそれぞれ形成されている。各前記連結端部の縁部は、前記間隔の外部では隣接する前記連結端部の縁部とほぼ接している。各前記連結端部の縁部は、前記間隔内での第2の駆動輪との噛み合い部分では隣接する前記連結端部の縁部と離れ再び近づく。各前記連結端部の縁部は、前記間隔内での第2の駆動輪との非噛み合い部分において隣接する前記連結端部の縁部と接触して、隣接する2つの連結端部の前記第2のチェーンの係合用凹部が第1のチェーンの係合用のピンを両側から挟持する。第1及び第2のチェーンは、同一ピッチのリンクを連結して構成することが望ましく、その場合、第1のチェーンと、第2のチェーンは、第1及び第2の駆動輪の間隔内において半ピッチずらして位置させることが望ましい。この場合、第1のチェーンの係合用リンクは、第1のチェーンのリンクの長さ方向のほぼ中央に設けることが望ましい。第2のチェーンの隣接する接触縁は、第1のチェーンの係合用ピンの第2のチェーンの係合用凹部での挟持を円滑に進めるために、湾曲させることが望ましい。
【0007】
このように構成されたチェーンの繰り出し装置では、第1及び第2のチェーンが所定の間隔内において第1及び第2の駆動輪に噛み合い、その噛み合いから離れた状態で、第1のチェーンの係合用ピンは、第2のチェーンの第2の係合用凹部によって挟持されており、第1及び第2のチェーンは、安定的に噛み合い、さらに、係合用のピンと係合用凹部とで負荷を受けるので、第1及び第2のチェーンを構成しているローラ用のピンに掛かる負荷が軽減される。
【0008】
さらに、第2のチェーンの前記各リンクにも、それぞれ第2のチェーンの係合用のピンが各前記リンクに対して垂直に設けることができる。この場合、第1のチェーンにも、第2の係合部用凹部と同様に第1のチェーンの係合用凹部が形成される。このように構成すると、第1及び第2のチェーンがより安定的に噛み合うし、第1及び第2のチェーンを構成してるローラ用のピンに掛かる負荷を更に軽減することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、2つのチェーンを安定的に噛み合わせて、円滑に伸縮させることができるし、チェーンを構成しているローラ用のピンに掛かる負荷を軽減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のチェーンの繰り出し装置の主要部の拡大正面図である。
【図2】図1のチェーンの繰り出し装置のチェーンと駆動輪との関係を示す部分省略正面図である。
【図3】図1のチェーンの繰り出し装置の正面図である。
【図4】図1のチェーンの繰り出し装置の拡大縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態のチェーンの繰り出し装置では、図3に示すように、中央に配置された駆動部2の両側にそれぞれ収納部4、6が配置されている。
【0012】
収納部4には、第1のチェーン、例えばチェーン8が収容され、収納部6には、第2のチェーン、例えばチェーン10が収容されている。チェーン8、10は、収納部4、6内では収納スペースを小さくするために、収納部4、6内に設けたガイド12、14に沿ってループ状態で収納され、先端部が、駆動部2内に引き出され、駆動部2内に設けた第1及び第2の駆動輪、例えば駆動輪16、18に一部が噛み合っている。
【0013】
駆動輪16は図4に示すように回転軸17を有し、駆動輪18も図示していないが回転軸を有している。駆動輪16、18は、それらの回転軸が平行になるように、図1に示すように所定の間隔をおいて配置され、駆動輪16の回転軸17は、図示していないモータに駆動軸19を介して結合され、駆動輪16はモータによって正逆転可能である。駆動輪16の回転軸17には駆動伝達輪20が取り付けられ、この駆動伝達輪20は、図1に示すように駆動輪18の回転軸に結合されている駆動伝達輪22と噛み合っている。従って、駆動輪16、18は、モータの回転に従って互いに反対方向に駆動され、駆動輪16、18に噛み合っているチェーン8、10を同一方向に駆動する。
【0014】
チェーン8、10における駆動輪16、18に噛み合う前の部分は、ほぼ水平であって、チェーン8とチェーン10とで、互いに反対方向に位置している。図2に拡大して示すように、チェーン8は、駆動輪16に対して巻き付け角度が約90度となるように、駆動輪16、18間の間隔の下部において噛み合っており、同様にチェーン10も、駆動輪18に対して巻き付け角度が約90度となるように、駆動輪16、18間の間隔の下部において噛み合っている。従って、チェーン8、10は、駆動輪16、18によって90度に屈曲され、駆動輪16、18間の間隔において駆動輪16、18と非噛み合い状態にあるチェーン8、10の部分(駆動輪16、18の上側半分に相当する部分)は、駆動輪16、18の回転軸に対して垂直な方向に伸びている。チェーン8、10は、駆動輪16、18の回転に従って収納部4、6から繰り出され、駆動部2の上方に向かって上昇したり、下降したりする。
【0015】
チェーン8、10の駆動部2の上方に突出している先端部は、チェーン先端連結部24によって連結されている。このチェーン先端連結部24に被駆動物が取り付けられる。例えば、このチェーン繰り出し装置を昇降装置として使用する場合、チェーン先端連結部24に昇降台が取り付けられる。
【0016】
チェーン8は、図4に示すように、駆動輪16の回転軸17の長さ方向に間隔をおいて配置された2列に構成され、いずれの列も、1対の外側リンク板26、26と1対の内側リンク板28、28とを有し、外側リンク板26の両端部に内側リンク板28の両端部がピン30によって結合されている。これらピン30には、それぞれローラ32が回転自在に取り付けられている。両列の間には、外側中間プレート34、34及び内側中間プレート36、36が、外側リンク板26、26、内側リンク板28、28それぞれに対応する位置に配置され、上記のピン30によって外側リンク板26、26、内側リンク板28、28に結合されている。チェーン10も同様に構成され、外側リンク板38、38、内側リンク板40、40、ピン42、ローラ44、外側中間プレート46、46及び内側中間プレート48、48を有している。
【0017】
外側中間プレート34、34、46、46と内側中間プレート36、36、48、48とは、同一の形状に形成され、図1に示すように、駆動輪16、18の間隔内にこれらから外れて外側リンク板26、26、38、38、内側リンク板28、28、40、40が位置する状態において、外側中間プレート34、34及び内側中間プレート36、36は、チェーン10側を向くように、外側リンク板26、26、内側リンク板28、28から突出している概略直方体状である。同様に外側中間プレート46、46及び内側中間プレート48、48は、チェーン8側を向くように、外側リンク板38、38、内側リンク板40、40からから突出している概略直方体状である。駆動輪16、18の間隔内にこれらから外れて外側リンク板26、26、38、38、内側リンク板28、28、40、40が位置する状態において、外側中間プレート34、34及び内側中間プレート36、36の先端部は、外側中間プレート46、46及び内側中間プレート48、48の先端部と重なりあっており、しかも、外側中間プレート46、46、内側中間プレート48、48の両端が、外側中間プレート34、34、内側中間プレート36、36の長さ方向(外側リンク板26、内側リンク板28の長さ方向)のほぼ中央に位置し、外側中間プレート34、34、内側中間プレート36、36の両端が、外側中間プレート46、46、内側中間プレート48、48の長さ方向のほぼ中央に位置するように、チェーン8、10は、半ピッチ(1ピッチはピン30間の間隔及びピン42間の間隔で同一の値である)ずらして駆動輪16、18に噛み合わされている。
【0018】
外側中間プレート34、34における長さ方向の中央における幅方向(外側リンク板26、内側リンク板28の長さ方向に垂直な方向)において中央よりも幾分先端よりの位置間に、外側中間プレート34、34に跨って、即ち駆動輪16の回転軸17に平行に係合用ピン50が取り付けられている。同様に、内側中間プレート36、36間に跨って係合用ピン52が取り付けられている。
【0019】
これら係合用ピン50、52を両側から挟持可能に、チェーン10における外側中間プレート46、48の両側縁(外側リンク板38、内側リンク板38の長さ方向に対して垂直な方向の縁)の中央よりも幾分先端側に寄った位置に、係合用凹部、例えば円弧状凹部54、56が形成されている。これら円弧状凹部54、56は、チェーン8、10が駆動輪16、18の間隔内において駆動輪16、18から外れた状態において、外側中間プレート46、内側中間プレート48の両側縁がほぼ接したときに、係合用ピン50、52をその両側(外側中間プレート46、内側中間プレート48の方向)から挟持するように形成されている。また、外側中間プレート46、内側中間プレート48の先端部の両端は、この挟持が円滑に行えるように湾曲させられている。
【0020】
同様に、チェーン10における外側中間プレート46、内側中間プレート48には係合用ピン58、60が形成され、チェーン8の外側中間プレート34、内側中間プレート36の両側縁には円弧状凹部62、64が形成されている。
【0021】
従って、チェーン8、10がモータの回転によって駆動部2に向かって走行しているときには、チェーン8の外側中間プレート34、34、内側中間プレート36、38の両側縁はほぼ接しており、円弧状凹部62、64はほぼ接してほぼ円を成している。チェーン10においても円孔状凹部54、56がほぼ円を成している。そして、チェーン8、10が駆動輪16、18に噛み合い始めると、チェーン8の外側中間プレート34、34、内側中間プレート36、38の両側縁、チェーン10の外側中間プレート46、46、内側中間プレート48の円弧状凹部54、56は、それぞれ離れていき、駆動輪16、18の回転に従って徐々に近づき、再び接するときには、係合用ピン50、52を円弧状凹部54、56が挟持し、係合用ピン58、60を円弧状凹部62、64が挟持し、両チェーン8、10を結合した状態となり、そのまま駆動部2の上方から繰り出される。この状態では、両チェーン8、10が強固に連結されているので、両者が左右にがたつくこともない。モータを逆転させると、上記の説明と逆に動作して、チェーン8、10は降下して、係合用ピン50、52の円弧状凹部54、56による挟持、係合用ピン58、60の円弧状凹部62、64による挟持がそれぞれ解除される。
【0022】
このように係合用ピン50、52、58、60が、対応する円弧状凹部54、56、62、64に挟持される構成であるので、チェーン8側の係合用ピン50、52が、チェーン10側の係合用ピン58、60と干渉することがなく、円滑に動作する。
【0023】
また、係合用ピン50、52、58、60も、チェーン先端連結部24に結合された被駆動物の重量を受けるので、チェーン8、10のピン30、42に掛かる負荷が軽減され、円滑にチェーンを昇降させることができる。
【0024】
なお、係合用ピン50、52、58、60は、駆動輪16、18に噛み合う際、図3に示すように駆動部2の下部に設けた山形の案内部66によって案内されるので、円滑にチェーン8、10が移動する。
【0025】
上記の実施形態では、チェーン8、10は2列のものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば1列のものや2列以上のものを使用することもできる。上記の実施形態では、チェーン8、10それぞれに係合用ピン50、52、58、60、円弧状凹部54、56、62、64を設けたが、チェーン8側の係合用ピン50、52、チェーン10側の円弧状凹部54、56のみを設けるか、逆にチェーン10側の係合用ピン58、60、チェーン8側の円孔状凹部62、64のみを設けることもできる。また、上記の実施形態では、チェーン8、10は、外側及び内側リンク板26、28及び外側及び内側中間プレート34、36を使用したが、これに限ったものではなく、例えば外側及び内側リンク板26、28を除去し、外側及び内側中間プレート34、36のみによってチェーン8、10を構成することもできる。上記の実施形態では、このチェーンの繰り出し装置を昇降装置として使用する例を示したが、これに限ったものではなく、例えば金型の押し引き装置や重量物を押し引きする装置として使用することもできる。また、チェーン8、10内の空間を利用して、電線を配線したり、エヤーまたは圧油用のチューブを配管したりすることもでき、チェーン8、10の先端部にアクチュエータ、エヤーシリンダや油圧シリンダ、モータ及びセンサなどを取り付けて、これらを進退させる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0026】
8 10 チェーン
16 18 駆動輪
34 46 外側中間プレート
36 48 内側中間プレート
50 52 58 60 係合用ピン
54 56 62 64 円弧状凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をおいて配置され、互いに平行な回転軸の回りに回転可能な第1及び第2の駆動輪と、
第1の駆動輪に一部が前記間隔内において噛み合わされた第1のチェーンと、
第2の駆動輪に一部が噛前記間隔内においてみ合わされた第2のチェーンとを、
具備し、
第1のチェーンは、前記間隔内における第1の駆動輪と非噛み合い部分が前記回転軸に対して直角な方向に直線状に位置し、第1の駆動輪との噛み合い部分を経て前記間隔外で前記間隔内での方向とほぼ90度曲がった方向に位置し、
第2のチェーンは、前記間隔内における第1の駆動輪と非噛み合い部分が第1のチェーンと対向しかつ前記回転軸に対して直角な方向に直線状に位置し、第2の駆動輪との噛み合い部分を経て前記間隔外で前記間隔内での方向とほぼ90度曲がり、かつ第1のチェーンの間隔外の部分の方向と反対方向に位置し、
少なくとも第1のチェーンの各前記リンクには、それぞれ第1のチェーンの係合用のピンが各前記リンクに対して垂直に設けられ、
少なくとも第2のチェーンの前記各リンクの隣接する前記リンクと連結されている連結端部の縁部には第2のチェーンの係合用凹部がそれぞれ形成され、各前記連結端部の縁部は、前記間隔の外部では隣接する前記連結端部の縁部とほぼ接し、前記間隔内での第2の駆動輪との噛み合い部分において隣接する前記連結端部の縁部と離れ再び近づき、前記間隔内における第2の駆動輪との非噛み合い部分において隣接する前記連結端部の縁部と接触して、隣接する2つの連結端部の前記第2のチェーンの係合用凹部が第1のチェーンの係合用のピンを両側から挟持する
チェーンの繰り出し装置。
【請求項2】
請求項1記載のチェーンの繰り出し装置において、
第2のチェーンの前記各リンクにも、それぞれ第2のチェーンの係合用のピンが各前記リンクに対して垂直に設けられ、
第1のチェーンの隣接する前記リンクにおける前記間隔内で互いに接する接触縁にも、前記間隔内において第2のチェーンの係合用のピンを挟持する第1のチェーンの係合用凹部が、それぞれ形成されている
チェーンの繰り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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