説明

チェーン

【課題】環状に形成された従来のチェーン体が使用できることで、容易に、かつ安価に作製できるチェーンを提供する。
【解決手段】環状のチェーン体20が連結されるチェーン10において、反射機能または発光機能を有する照光部30と、照光部30の入出射面を露出させた状態で照光部30とモールド成形により一体的に形成され、チェーン体20の内側の空間部50を挟んで対向する平行線部分を被覆する2つ筒状部41と、この2つの筒状部41を繋ぐことにより空間部50の一部を閉鎖するように形成され、照光部30を保持する保持部42とを備えた取付部40とを備えた。この照光部30は、入出射面が、2つの筒状部41のそれぞれの外側面に接する仮想面より内側に位置する厚みに形成されていることで、引きずっても照光部30の入出射面に傷がつきにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲が暗くても、入退場の規制や行く先を誘導することができるチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
ブランコ等を吊り下げるために用いられるチェーンとして、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に記載の遊技用鎖は、連結部を除く残余の隙間部に、対向する長辺部を跨いで、モールド加工により、ゴムまたはプラスチックを埋め込み、隙間部を閉塞する隙間閉塞部材を備えたものである。この遊技用鎖は、連結部を除く残余の隙間部に隙間閉塞部材を設けているので、指先を突っ込むという不具合の発生を抑止することができる。
しかし、特許文献1に記載の遊技用鎖では、昼間は視認が容易であるが、夜間などの周囲が暗い状況においては視認が困難である。従って、当該遊技用鎖を駐車場への入退場を規制するために用いる場合には、夜間での使用には適さない。
夜間でも視認が容易なチェーンとしては、例えば、特許文献2に記載のものがある。この特許文献2に記載にループチェーンの構造では、ヒンジ部に一体的に上下板が設けられ、その各外側面に反射部材もしくは発光部材が備えられ、その各内側面にスナップイン係合部材である雌部と雄部とが設けられた係止アダプタを、ループ(チェーン体)の両端から突出させた係合用タブの係合孔に係合させたものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−245589号公報
【特許文献2】特開2003−113903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に記載のループチェーンの構造においては、係止アダプタを取り付けるために、環状に形成されたチェーン体を、両端部から突出した係合用タブを備えた特殊な形状とする必要があり、従来から使用されているチェーン体が使用できない。従って、係合用タブが突出したチェーン体の作製には新たな製造ラインが必要である。従って、製造コストも高くなってしまう。
【0005】
そこで本発明は、環状に形成された従来のチェーン体が使用できることで、容易に、かつ安価に作製できるチェーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のチェーンは、環状のチェーン体が連結されるチェーンにおいて、反射機能または発光機能のいずれか一方、または両方を有する照光部と、前記照光部の入出射面を露出させた状態で前記照光部とモールド成形により一体的に形成され、前記チェーン体の一部を被覆することで前記チェーン体に設けられた取付部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のチェーンは、周囲が暗くチェーン体自体が視認しづらい状況であっても、入出射面を露出させた状態で照光部が取付部によりチェーン体に取り付けられているので、照光部の発光または照光部からの反射光により設置されていることが容易に判別できる。この本発明のチェーンは、モールド成形により照光部と一体的に形成された取付部が、チェーン体の一部を被覆することでチェーン体に設けられているので、環状に形成された従来のチェーン体を変更することなく、照光部をチェーン体に取り付けることができる。
【0008】
板状に形成された前記照光部は、前記入出射面が、一面および前記一面の反対側となる他面に設けられ、前記取付部は、前記照光部の一面および他面の両方の入出射面を露出させているのが望ましい。取付部が、板状に形成された照光部の両方の入出射面を露出していると、一面側だけでなく他面側からでも、照光部からの光を視認することができるので、より安全性の高いチェーンとすることができる。
【0009】
ここで、前記取付部は、前記チェーン体の内側の空間部を挟んで対向する部分を被覆する2つの筒状部と、この2つの筒状部を繋ぐことにより前記空間部の一部を閉鎖するように形成され、前記照光部を保持する保持部とを備えたものとすると、取付部がしっかりとチェーン体に保持された状態となるので、チェーンを手荒に扱っても取付部がチェーン体より脱落することがない。
【0010】
前記照光部は、前記入出射面が、前記2つの筒状部のそれぞれの外側面に接する仮想面より内側に位置する厚みに形成されていると、チェーンを引きずったり、外部から物がチェーン体に当たったりしても、入出射面に傷がつきにくい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチェーンは、モールド成形により照光部と一体的に形成された取付部が、チェーン体の一部を被覆することでチェーン体に設けられているので、容易に、かつ安価に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態1に係るチェーンを、図1〜3に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るチェーンを示す図である。図2は、図1におけるA−A線断面図である。図3は、照光部の説明するための図であり、(A)は照光部の再帰反射部を裏側から見た図、(B)は照光部の分解断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態1に係るチェーン10は、連結されることで長尺となるチェーン体20と、板状に形成された照光部30と、この照光部30をチェーン体20に取り付ける取付部40とを備えている。
【0014】
チェーン体20は、金属製で、二つの等しい長さの平行線と二つの円弧からなる角丸長方形状に形成されている。このチェーン体20は、特別な突起部や切欠部などがない従来のチェーン体を使用することができる。
【0015】
図2および図3に示すように、照光部30は、発光機能を有する蓄光部31と、反射機能を有する再帰反射部32,32とを備えている。蓄光部31は、自然光、人工の光などから光エネルギーを吸収し光として放出することで、照射された光がなくなった後も発光し続ける残光性を有する粒状の蓄光材を樹脂に含有させ、板状に形成したものである。なお、本実施の形態1では、蓄光部31を樹脂に蓄光材を含有させたものとしているが、樹脂板の表裏両面に蓄光材を塗布することで、板状の蓄光部31としてもよい。
【0016】
再帰反射部32は、光透過性を有する樹脂により形成されている。再帰反射部32は、おもて面として露出した入出射面32aは平坦面に形成されているのに対し、周囲壁部32bの内側が四角錐状の凹凸面32cに形成されている。入出射面32aが平坦面に形成され、裏側が四角錐状の凹凸面32cに形成されていることで、入出射面32aから入射した光が四角錐状の凹凸面32cにてほぼ全反射し折り返すように入出射面32aから出射させることができる。
【0017】
しかし、再帰反射部32は外部からの光を全て反射する訳ではなく、一部の光は、再帰反射部32から漏れ、蓄光部31へ到達させることができる。蓄光部31はこの漏れた光を蓄光する。蓄光部31からの光は凹凸面32cの傾斜面により多少屈折するが、屈折した光は再帰反射部32内を通過して入出射面32aから出射する。従って、照光部30により夜間などの周囲が暗い状況であっても、車両のヘッドライトの光を反射した反射光や、蓄積された光によりチェーン10の位置を視認することができる。
【0018】
周囲壁部32bの外側面は、入出射面32a側から蓄光部31側へ向かうに従って広がる傾斜面に形成されている。
再帰反射部32の周囲壁部32bの頭頂面には、再帰反射部32の裏側を向かい合わせて重ねたときに蓄光部31の厚み程度の隙間ができるように段差部32dが形成されている。これにより、蓄光部31は、重ね合わせた再帰反射部32,32内に位置ずれすることなく収納される。
【0019】
図1および図2に示すように、取付部40は、照光部30の入出射面32aを露出した状態で、照光部30とモールド成形により一体的に形成されたものである。取付部40は、チェーン体20の平行線部分をそれぞれ被覆する筒状部41,41と、この筒状部41,41を接続しつつ、照光部30を保持する保持部42とにより、チェーン体20の内側の空間部50を跨ぐように形成されている。本実施の形態の取付部40は、ポリカーボネートやポリエチレンなどの樹脂製や、ゴム製とすることが可能である。
【0020】
筒状部41は、取付部40自体がモールド成形により形成されているので、チェーン体20との間に隙間の無い状態である。保持部42は、照光部30の入出射面32a,32aを露出しているので、周囲壁部32bおよび蓄光部31の周囲面のみで照光部30を保持している。
【0021】
しかし、周囲壁部32bは、外側面が入出射面32a側から蓄光部31側へ向かうに従って広がる傾斜面に形成されていることで、照光部30の入出射面32a側より中央部が幅広くなっているので、照光部30が保持部42から脱落することはない。
【0022】
そして、照光部30は、反射面および発光面となる入出射面32aが、2つの筒状部41のそれぞれの外側面に接する仮想面S1,S2(一点鎖線)より内側に位置する厚みに形成されている。このように形成されていることで、チェーン10を引きずったり、外部から物がチェーン体20に当たったりしても、照光部30の入出射面32aに傷がつきにくい。
【0023】
また、照光部30の入出射面32aは、保持部42の表面より突出した位置にある。これは、取付部40をモールド成形する際に、上金型と下金型の照光部30に対応するそれぞれの位置に、照光部30が嵌る凹部を設けているためである。この凹部に照光部30をセットし、樹脂を金型のキャビティに充填することで、照光部30がチェーン体20の空間部50の中央から位置ずれした状態で成形されてしまうことを防止している。
【0024】
このように構成される本実施の形態1に係るチェーン10は、取付部40がモールド成形により照光部30と一体的に形成され、筒状部41によりチェーン体20の平行線部分を被覆することでチェーン体20に設けられているので、従来のチェーン体20がそのまま形状を変更することなく使用することができ、1回のモールド成形により照光部30を取付部40と一体的とすることができる。従って、チェーン10は、容易に作製でき、安価とすることができる。
【0025】
周囲が暗い状態でも視認が可能なチェーンとしては、照光部30を設けずに、取付部である樹脂成形品に蓄光材を直接混入させたものが考えられる。しかし、このようなチェーンでは、樹脂が光透過性を有していないと、成形品の表面に露出した蓄光材のみが発光に寄与するだけなので発光効率が低い。また、光透過性を有する樹脂である場合には、樹脂の性能として、チェーンを屋外に設置するに要する耐侯性が満足できない。
本実施の形態1に係るチェーン10では、反射機能および/または発光機能を有する照光部30と、耐侯性が十分確保できる樹脂を選定することで成形された取付部40とで形成されているので、夜間でも十分な視認性を確保しつつ、屋外での長期使用にも耐えることができる。
【0026】
また、取付部40は、板状に形成された照光部30の両方の入出射面32a,32aを露出させているので、照光部30の入出射面32a,32aが、隣接する照光部30の入出射面32a,32aと、角度が90°ずれた位置となる。
【0027】
つまり、複数のチェーン体20を連結したチェーン10を、入退場を規制したい場所に設置すると、ほぼ全方向からいずれかの照光部30の入出射面32aを観察することができる。従って、チェーン10は、高い安全性を図ることができる。
【0028】
次に、本発明の実施の形態2に係るチェーンを図4に基づいて説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係るチェーンを示す図である。なお、図4においては、図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0029】
図4に示す本実施の形態2に係るチェーン10aは、チェーン体20の平行部分の一方のみに取付部40aの筒状部41を被覆させ、保持部42をチェーン体20の空間部50とは反対方向となる外側に向かって突出させたことを特徴とするものである。
このように、取付部40aが、チェーン体20から突出していることで、チェーン10は観察者にチェーン体20のみを連結したチェーンと異なる印象を与えることができるので、チェーン体20から突出した取付部40aに保持された照光部30を観察者に注視させることができる。従って、チェーン10aは、より高い安全性を図ることができる。
【0030】
次に、本発明の実施の形態3に係るチェーンを図5に基づいて説明する。図5は、本発明の実施の形態3に係るチェーンを示す図である。なお、図5においては、図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0031】
図5に示す本実施の形態3に係るチェーン10bは、実施の形態1に係るチェーン10と同じ部材を用いているが、隣接する2つのチェーン体20,20との連結を、空間部50のうち取付部40によって2つに区切られた一方の空間部50で行っていることを特徴とするものである。
このように、チェーン体20を連結することで、図4に示すチェーン10aと同様の効果が得られると共に、チェーン10bを引きずったり、外部から物がチェーン体20に当たったりしても、図5に示す照光部30の入出射面32aに傷がつきにくい。
【0032】
なお、本実施の形態1〜3の照光部30では、図2に示すように再帰反射部32の裏側全面に三角錐を形成した凹凸面32cとしているが、例えば、図6に示すように、照光部60では、再帰反射部61の裏側面に、四角錐状の凸部61aと、平坦面とした隙間61bとを交互に形成することにより、入出射面32aから入射した光は凸部61aで再帰反射し、隙間61bを通過した光は蓄光部31へ到達し蓄光される。つまり、再帰反射部61は、図2に示す照光部30の再帰反射部32より反射度合いが低下するが、光透過の度合いが高いので、蓄光部31で蓄光量を増加させることができる。
【0033】
また、図7に示すように、照光部70では、再帰反射部の代わりに、四角錐状の凸部がないカバー部71で蓄光部31を挟むように形成することで発光機能のみを備えたものである。このように照光部70を形成すると、照射された光を反射することはできないが、蓄光部31での蓄光量を最大とすることができる。なお、図7に示す照光部70では反射機能は備えていないため、蓄光部31を板厚に形成し、モールド成形された取付部からの脱落防止のために蓄光部の周囲面に凸部を形成すれば、カバー部71を省略することも可能である。
また、図3に示す照光部30において、蓄光部31を省略して再帰反射部32のみを重ね合わせたものとすることで反射機能のみの照光部とすることも可能である。
【0034】
本実施の形態1〜3では、蓄光材を含有した樹脂で蓄光部31を形成することで照光部に発光機能を持たせているが、大型のチェーン体であれば空間部が大きく確保することができるので、照光部内部にLEDとLEDを発光させる電池などを設けることで自発光する照光部としてもよい。
【0035】
更に、本実施の形態1〜3では、チェーン体20が角丸長方形状に形成されているが、取付部が、照光部とモールド成形により一体的に形成され、チェーン体の一部を被覆することでチェーン体に設けられていれば、本発明のチェーンを容易に作製することができるので、矩形状でも円形状でも、または異形状でも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、周囲が暗くなって、規制されていることや案内されていることが視認しづらい状況となる場所に設置されるチェーンに最適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1に係るチェーンを示す図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】照光部の説明するための図であり、(A)は再帰反射部を裏側から見た図、(B)は照光部の分解断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るチェーンを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係るチェーンを示す図である。
【図6】照光部の変形例を示す図であり、(A)は再帰反射部を裏側から見た図、(B)は照光部の分解断面図である。
【図7】照光部の他の変形例を示す分解断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10,10a,10b チェーン
20 チェーン体
30,60,70 照光部
31 蓄光部
32,61 再帰反射部
32a 入出射面
32b 周囲壁部
32c 凹凸面
32d 段差部
40,40a 取付部
41 筒状部
42 保持部
50 空間部
61a 凸部
61b 隙間
71 カバー部
S1,S2 仮想面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のチェーン体が連結されるチェーンにおいて、
反射機能または発光機能のいずれか一方、または両方を有する照光部と、
前記照光部の入出射面を露出させた状態で前記照光部とモールド成形により一体的に形成され、前記チェーン体の一部を被覆することで前記チェーン体に設けられた取付部とを備えたことを特徴とするチェーン。
【請求項2】
板状に形成された前記照光部は、前記入出射面が、一面および前記一面の反対側となる他面に設けられ、
前記取付部は、前記照光部の一面および他面の両方の入出射面を露出させている請求項1記載のチェーン。
【請求項3】
前記取付部は、前記チェーン体の内側の空間部を挟んで対向する部分を被覆する2つの筒状部と、この2つの筒状部を繋ぐことにより前記空間部の一部を閉鎖するように形成され、前記照光部を保持する保持部とを備えた請求項1または2記載のチェーン。
【請求項4】
前記照光部は、前記入出射面が、前記2つの筒状部のそれぞれの外側面に接する仮想面より内側に位置する厚みに形成されている請求項3記載のチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−74565(P2009−74565A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241466(P2007−241466)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(504081981)株式会社 カワベ (2)