説明

チエン駆動式搬送装置及び駆動用チエン

【課題】チエン駆動方式で物品を自動搬送する搬送装置と、搬送装置に使用する駆動用チエンを提供する。
【解決手段】流動式コンベアと、その搬送面に沿って配設されたエンドレスな駆動用チエン10との組み合わせで構成される。駆動用チエン10を構成する外側リンク1bのアタッチメント1eに爪材11を取り付け、この爪材11に対して筋交状の配置に設けた斜材リンク15の一端を爪材11の支軸13へ連結し、他端は隣接する外側リンク1bに形成されたアタッチメント1eの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結して、物品搬送用のキャリア100が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チエン駆動方式で物品を自動搬送する搬送装置と、同搬送装置に使用する駆動用チエンの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
工場や集荷場などで物品を自動搬送する搬送装置としては、搬送面をエンドレスベルトで形成したいわゆるベルトコンベアや、ホイール又はローラ若しくはベアリングボールを搬送面に多数並べた構成のコンベア(以下、ホイールコンベアと総称する。)が広く一般的に利用されている。
搬送面をエンドレスベルトで形成したベルトコンベアの場合は、モータ等を動力源としてエンドレスベルトを駆動し周回走行させる方式が多く実施されている。
搬送面をローラコンベアやホイールコンベア或いはベアリングボールで形成した場合は、多数のホイール又はローラを個別にモータで回転駆動する構成となるため、伝動機構が複雑になり、部品点数が増大し、比較的に高価な搬送装置となる。
そこでコストの引き下げを考えて前記駆動用モータを使用しない搬送装置として、通例、物品の重力作用を利用して搬送する重力方式(又は流動式とも言う。)のホイールコンベア(以下、流動式コンベアという。)が一般的に採用され広く実施されている。
しかし、流動方式コンベアを使用するには、搬送方向に必ず高低差を設定することが必要であり、水平条件下での搬送は物品が自走しないので不可である。しかも前記高低差を設定すると、搬送物品に生ずる加速度の制御、或いは同搬送物品に加わる衝撃力の緩和対策として搬送速度の制御が必要である、等々の潜在的、且つ困難な問題の解決を必要とする。
このような理由で、上記加速度の制御とか、搬送物品に加わる衝撃力の緩和対策が必要でなく、コスト面でも比較的に安価に使用できる搬送装置として、アタッチメント付きエンドレスチエンを流動コンベアと組み合わせ、両者の長所を生かした構成で用途が広いチエン駆動方式搬送装置が開発され実用に供されている。
【0003】
下記の特許文献1に開示された搬送装置は、ローラコンベアに一条のエンドレスチエンを搬送方向と平行に組み合わせて成り、前記エンドレスチエンの長手方向に一定の間隔を開けた位置に、物品を押し運ぶプッシャを取り付けた構成である。同プッシャは、物品を押す側を傾斜面に形成され、常時は前記傾斜面を圧縮バネで保持するが、物品が搬送方向の前方を押し止められると、前記の押し止め力に負けた圧縮バネの収縮にしたがい、プッシャが後方側へ倒れて、遂には物品の下面側へ潜り、物品を残してプッシャのみがエンドレスチエンと合一に前進走行する構成とされている。
【0004】
下記の特許文献2に開示された搬送装置は、搬送面に搬送方向と平行な配置で複数のローラを設置して成るローラコンベアの前記の各ローラ軸と、前記搬送面に沿って長く設置されてモータで回転される駆動軸とが個別にベルトで連結され、各ローラを共通方向へ回転駆動する構成のローラコンベアにおいて、前記ローラで形成する搬送面の途中位置に、同搬送面を突っ切って上下に出入りするストッパを設置して成り、前記ストッパを突き出させて後続の移送物品を一時的に止めることが可能に構成されている。
【0005】
更に下記の特許文献3には、チエン駆動方式で物品を搬送するコンベアと、同駆動用チエンの構成が開示されている。特に前記駆動用チエンは、その長手方向に一定の間隔を開けて物品の送り爪を配設した構成であり、当該駆動用チエンの走行にしたがい、コンベアは前記送り爪が物品を押し動かす構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭56−100410号公報
【特許文献2】実開昭60−78327号公報
【特許文献3】実開平2−139816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1〜3に開示されているように、チエン駆動方式で物品を搬送する流動式コンベア、及び同流動式コンベアに使用される駆動用チエンの構成は既に種々提案されており、駆動用チエンとして市販品も多く出回っている。
しかし、従来の上記コンベア用駆動チエンは、いずれも特注品というべき構成部品であり、その加工及び組み立てに係る製作に多くの手間隙を要して、高価な構成部品になるのが欠点である。また、駆動用チエンを構成する一つのリンク部材に物品搬送用の爪(プッシャ)が取り付けられ、搬送物から受ける反力を前記爪が受けて当該リンク部材が引っ張られると、チエンは上下に傾き(傾動し)、無理な作用力(負荷)が加えられる結果、チエンが切れやすいという問題点もあった。
【0008】
本発明の目的は、市販品である駆動用チエンについて若干の加工(工作)と組み立てを加えることにより、コンベア用駆動チエンとして有為な機能を発揮させることができ、同チエンのリンク部材に物品搬送用部品(キャリア)を取り付けても、駆動用スプロケットと円滑な噛み合い運動をして走行・通過させることが可能であり、搬送物品の負荷は複数のリンク部材に分散させて切れ難い構造の駆動用チエンを提案すること、そして、前記構造の駆動用チエンを流動式コンベアと組み合わせたチエン駆動方式により、簡単な構造で安価な搬送装置を提供すると共に、コンベアの搬送面上の物品は確実に適切に搬送することができ、しかも搬送物品の流れに渋滞を生ずるようなことがあっても、その渋滞現象に即応動作して渋滞を許容し(又は回避し)、無理な搬送力を加えて物品を傷つける虞がない構成の搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した従来技術の課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明に係るチエン駆動方式の搬送装置は、
ホイール又はローラ若しくはベアリングボール等を複数並べて物品の搬送面を形成して成る流動式コンベアと、前記流動式コンベアの搬送面に沿って物品搬送方向に配設されたエンドレスな駆動用チエン10との組み合わせで構成される搬送装置において、
前記駆動用チエン10を構成する外側リンク1bに形成された周回走行方向外向きに立つアタッチメント1eに、前記流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出る高さの爪材11が取り付けられており、
前記爪材11に対して筋交状の配置に設けた斜材リンク15の一端が、前記爪材11の上方位置の側面に設けた支軸13へ連結され、他端は駆動用チエン10の周回走行方向の前側又は/及び後側に隣接する外側リンク1bに形成された外向きアタッチメント1eの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結され、前記爪材11と斜材リンク15とで物品搬送用のキャリア100が構成され、
当該駆動用チエン10を一定方向へ周回走行させることにより、前記爪材11と斜材リンク15とで成る物品搬送用キャリア100が、流動式コンベアの搬送面上の物品Wを後押しして搬送させる構成であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したチエン駆動方式の搬送装置において、
物品搬送用キャリア100を構成する斜材リンク15は、流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出た爪材11の支軸13へ一端を共通に連結した二つの斜材リンク15、15を一組として構成され、同二つの斜材リンク15、15は山形状の配置として、その他端には長孔16を設けて、駆動用チエン10の周回走行方向の前後に隣接する外側リンク1b、1bのアタッチメント1eの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結した構成であることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載したチエン駆動方式の搬送装置において、
物品搬送用キャリア100を構成する斜材リンク15は、流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出た爪材11の支軸13へ一端を連結した1つで構成され、他端には長孔16を設けて、駆動用チエン10の周回走行方向の前側に隣接する外側リンク1bのアタッチメント1eの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結され、更に前記アタッチメント1eの支軸14と斜材リンク15の軸17との間に弾性体18が連結された構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載した発明に係る搬送装置用の駆動用チエンは、
ホイール又はローラ若しくはベアリングボール等を複数並べて物品の搬送面を形成して成る流動式コンベアの前記搬送面に沿って物品搬送方向に配設され、搬送面上の物品Wを搬送するエンドレスな駆動用チエン10であって、
駆動用チエン10を構成する外側リンク1bに形成された周回走行方向外向きに立つアタッチメント1eに、前記流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出る高さの爪材11が取り付けられ、
前記爪材11の上方位置の側面に設けた支軸13へ一端を連結され、他端は駆動用チエン10の周回走行方向の前側又は/及び後側に隣接する外側リンク1bに形成されたアタッチメント1eの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結された斜材リンク15と前記爪材11とで物品搬送用のキャリア100が構成され、スプロケットホイール2へ巻き掛けて駆動される構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜3に記載した発明に係るチエン駆動方式の搬送装置は、流動式コンベアと、その搬送面上に在る物品Wを搬送する物品搬送用のキャリア100を備えたエンドレスの駆動用チエン10とを組み合わせて構成したので、軽便に、安価に動力付き搬送装置を製作でき、流動式コンベアの使用上要求される搬送方向への高低差を格別設定する必要がなく、水平条件下でも物品搬送が可能であるし、搬送物品Wに生ずる加速度の制御とか、同搬送物品Wに加わる衝撃力の緩和対策として搬送速度を制御することも一切必要でなく、使い勝手が良く至便である。
その上、本発明の上記搬送装置に適用する、請求項4に記載した発明に係る駆動用チエン10は、同チエン10を構成する外側リンク1bに形成された周回方向外向きに立つアタッチメント1eに、前記流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出る爪材11と、同爪材11の上方位置の側面に設けた支軸13へ一端を連結し、他端は同チエンの周回走行方向の前側又は/及び後側に隣接する外側リンク1bのアタッチメント1eの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結した斜材リンク15とで成る物品搬送用のキャリア100を設けた構成であり、スプロケットホイール2へ巻き掛けて駆動し周回走行させるから、同チエン10の外側リンク1bに爪材11や斜材リンク15を取り付けていても、前記スプロケットホイール2の歯はチエンローラ1cの相互間へ円滑に噛み込んで走行通過可能である。
その上、物品搬送用のキャリア100が負担する搬送物品Wの負荷は、斜材リンク15による筋交い効果で、少なくとも走行方向の前側又は/及び後側に隣接する外側リンク1b、1bに分散され軽減化されるので、結果的に駆動用チエン10は切れ難い構成となり、長寿命を発揮する。ひいては搬送装置による物品搬送作業の円滑性と安定性が得られ、この種の搬送装置を必要とする産業上の利便性に大きく貢献する。
また、本発明の駆動用チエン10を使用すると、既に使用している既存の流動式コンベアを、比較的簡単に安価に、チエン駆動方式の搬送装置に改造することが可能であり、至便である。
【0013】
本発明の搬送装置は、上記駆動用チエン10の物品搬送用のキャリア100が、チエン10の周回走行に伴い、流動式コンベアの搬送面上に在る物品Wを後押しして一定方向へ強制的に確実に搬送する。従って、物品搬送速度の制御はモータの駆動制御により自由自在に行え、加速度の制御は無用である。
しかも上記請求項1、3に記載した発明に係る搬送装置は、搬送面上の物品Wが搬送方向の前方に位置するストッパなどにより行き止まって渋滞した場合には、物品Wの渋滞抵抗力が一定以上の大きさになると、逆に物品搬送用キャリア100の方がリンク運動により折り畳み動作を生じ、物品Wを後押しする形態を自動的に解消し(図7参照)、渋滞した物品Wの下方へ潜って進む状態となる。よって、一定以上に大きな後押し力で無理矢理に搬送物品Wを押し潰したり、傷つけ又は破損させる不具合は生じないから、搬送装置による物品搬送作業の安全性と信頼性及び物品保護機能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】市販品として入手できるアタッチメント付きチエンの一例を示した斜視図である。
【図2】図1のアタッチメント付きチエンを基礎に組み立てた物品搬送用キャリアの一例を要部について示す斜視図である。
【図3】上記図2の物品搬送用キャリアを備えた駆動用チエンを用いた搬送装置で物品を搬送する状態を示した主要部の側面図である。
【図4】上記図2、図3の物品搬送用キャリアを備えた駆動用チエンを用いた搬送装置の全体構成を示した斜視図である。
【図5】異なる構成の物品搬送用キャリアを備えた駆動用チエンを主要部について示した斜視図である。
【図6】上記図5の物品搬送用キャリアを備えた駆動用チエンによる搬送装置の物品搬送状態を示した主要部の側面図である。
【図7】同上の物品搬送用キャリアを備えた駆動用チエンによる搬送装置が物品の渋滞時に生ずる折り畳み状態の一例を示した主要部の側面図である。
【図8】異なる構成の物品搬送用キャリアを備えた駆動用チエンの実施例を主要部について示した斜視図である。
【図9】上記図8の物品搬送用キャリアを備えた駆動用チエンを用いた搬送装置の主要構造を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるチエン駆動方式の搬送装置は、ホイール又はローラ若しくはベアリングボール等を複数並べて搬送物品の搬送面を形成して成る流動式コンベアと、前記流動式コンベアの搬送面に沿って物品搬送方向に配設されたエンドレスな駆動用チエン10との組み合わせで構成する。
前記駆動用チエン10を構成する外側リンク1bに形成された周回走行方向の外向きに立つアタッチメント1eに、前記搬送面よりも上方へ突き出る高さの爪材11を取り付ける。
前記爪材11に対して筋交状の配置に設けた斜材リンク15の一端を、前記爪材11の上方位置の側面に設けた支軸13へ連結し、他端はチエン10の周回方向の前側又は/及び後側に隣接する外側リンク1bに形成された外向きのアタッチメント1eの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結し、前記爪材11と斜材リンク15とで物品搬送用のキャリア100を構成する。
当該駆動用チエン10を一定方向へ周回走行させることにより、前記爪材11と斜材リンク15とで成る物品搬送用キャリア100が、流動式コンベアの搬送面上の物品Wを後押しして搬送する構成とした。
【0016】
本発明に係る搬送装置用の駆動用チエン10は、ホイール又はローラ若しくはベアリングボールを複数並べて物品の搬送面を形成した流動式コンベアの前記搬送面に沿って物品搬送方向に配設し、搬送面上の物品Wを搬送するエンドレスチエンである。
上記の駆動用チエン10を構成する外側リンク1bに形成された外向きのアタッチメント1eに、前記流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出る爪材11を取り付ける。
前記爪材11が流動式コンベアの上方位置の側面に設けた支軸13へ斜材リンク15の一端を連結し、他端は周回走行方向の前側又は/後側に隣接する外側リンク1bのアタッチメント1eの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結した斜材リンク15と前記爪材11とで物品搬送用のキャリア100を構成し、スプロケットホイール2へ巻き掛けて駆動し走行させる構成である。
【実施例1】
【0017】
以下に、本発明によるチエン駆動方式の搬送装置及び同搬送装置に用いる搬送装置用駆動チエンを、図示した実施例1に基づいて説明する。
先ず図1は、いわゆる市販品として入手でき、本願発明の搬送装置用駆動チエン10の基礎部品として利用したアタッチメント付きチエン1の一例を示す。
このアタッチメント付きチエン1の構成は、他の一般チエンと大差がなく、両側で一対をなす等長のチエンリンクメンバ1a’、1a’が、両端の2つのチエンローラ1c、1cを挟んで構成する内側のリンク1aと、両側で一対をなす等長のチエンリンクメンバ1b’、1b’が、両端の2つの軸1dを挟んで構成する外側リンク1bとの一方の端部同士で、前記内側のリンク1aのチエンローラ1cに前記外側リンク1bの軸1dを通して屈曲自在に連結し、他方の端部を次のリンクと同様に繋いで、以下同様の構成を繰り返して連続する構造としている。
更に、外側リンク1bの一対のチエンリンクメンバ1b’、1b’にはそれぞれ、当該チエン1を図3のようにスプロケットホイール2へ巻き掛けて駆動させて走行するとき、周回方向の外向きに立つ姿勢で一対をなすアタッチメント1e、1eが一体的に設けられている。
【0018】
そこで先ず、請求項4に記載した発明に係る駆動用チエン10が、上記構成のアタッチメント付きチエン1を基礎部材に利用して、次のように構成されることを説明する。
図2に駆動用チエン10の主要部構造を示したように、上記構成のアタッチメント付きチエン1を構成する一対の外側リンク1b、1bのそれぞれに形成された、周回走行方向の外向きに立つ姿勢の一対のアタッチメント1e、1eの間に、外向きに立つ姿勢とした爪材11の下部が、前記一対のアタッチメント1e、1eの相互間に架設した支軸12で取り付けられている。この爪材11の下部は、当該一対の外側リンク1b、1bの前後に配置されたチエンローラ1c、1cの間へ噛み込むスプロケットホイール2の歯部(図3を参照)と干渉を起こさない形状、大きさに形成されている。また、爪材11の背の高さは、後述する流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出る高さとされている。この爪材11が搬送面から突き出る高さは、搬送面上の搬送物品Wを後押しして搬送する機能に必要な高さ寸法とされている。
【0019】
上記爪材11の上方部位の両側面に支軸13が設けられ、同爪材11の片側で2本を一組とする斜材リンク15、15の一側端部が、山形状配置の頂部を重ね合わされた状態で前記支軸13へ回転可能に連結されている。片側2本を一組とする斜材リンク15、15は、前記支軸13を頂点として前後方向に対称な山形状の配置とされている。そして、各斜材リンク15、15の他端には長手方向に長孔16を設けて、チエンの周回走行方向の前後に隣接する二つの外側リンク1b、1bのアタッチメント1e、1eに設置した支軸14へ、いわゆるリンク運動(起伏動作)のスライドが自在な関係に連結して、物品搬送用のキャリア100が構成されている。つまり、斜材リンク15の他端の長手方向に長い長孔16に、アタッチメント1eに設置した支軸14がスライド可能状態に嵌め込まれ連結されている。
図2に示す実施例の場合、アタッチメント付きチエン1を構成するチエンローラ1cの両側で一対をなす外側リンク1b、1bに対して、片側で2本を一組とする山形状配置の斜材リンク15、15は両側に2組設置されており、合計4本の斜材リンク15で1個の爪材11を支持する物品搬送用のキャリア100が構成されている。
【0020】
従って、上記のように構成した物品搬送用のキャリア100は、当該駆動用チエン10をエンドレスの構成として、図3に示したようにスプロケットホイール2へ巻き掛けて駆動する構成として、流動式コンベアの搬送面上に載せた搬送物品Wを搬送するべき方向へ周回走行させる構成で搬送装置が構築される。
因みに図4は、上記のように流動式コンベアと駆動用チエン10とを組み合わせたチエン駆動方式搬送装置の実施例を示している。
即ち、図4に示す実施例の場合は、溝形のコンベアフレーム21の溝中に複数のホイール22を一列状に回転自在に並べて一つの共通な搬送面を形成したホイールコンベアユニット20を、計4ユニット(但し、ユニット数はこの例の限りではない。)用い、各ユニットを一定の間隔を開けて平行な配置でコンベアフレーム30の上面部に設置して流動式コンベアが構築されている。そして、中央側に位置する二列のホイールコンベアユニット20、20の両外側位置に、上記構成でエンドレスな2本の駆動用チエン10、10が、ホイールコンベアユニット20、20と平行に、且つ同様な搬送長さに配置され、その両端部は図3の如くスプロケットホイール2へ巻き掛けられている。
詳細な図示は省略したが、少なくとも一方のスプロケットホイール2の回転軸が、モータを動力源とする駆動機構により、2本の駆動用チエン10、10を所定の線速度で同期駆動して走行させる構成とされている。
【0021】
搬送する物品Wは、上記4列に配置されたホイールコンベアユニット20が形成する共通な一平面状の搬送面の上に載せられる。したがって、上記2本の駆動用チエン10、10が備えている上記構成の物品搬送用のキャリア100により、搬送面上の物品Wは確実に後押しされて一定方向へ搬送される。
その具体的な搬送状態の主要部分を図3に示している。つまり、駆動用チエン10の周回走行に伴い、同チエン10に付設された物品搬送用のキャリア100が流動式コンベアの搬送面上に載せられた物品Wへ追い付くと、図3で明らかなように、物品搬送用キャリア100の一部、図示例の場合は爪材11よりも走行方向前側の斜材リンク15の先端近傍が物品Wへ接した時点で後押しを開始し、流動式コンベア上を押し進められる。
本実施例1の上記物品搬送用のキャリア100は、駆動用チエン10が直線状に走行する範囲では、前後2本で一組をなす斜材リンク15、15は、支軸13を頂点とする平たい山形状の形態を維持して物品Wを後押しする。そして、端部のスプロケットホイール2と噛み合って周回する部分(図3の右端部分)では、前後2本の斜材リンク15、15はスプロケットホイール2の回転半径に倣って屈曲するにしたがい、爪材11の支軸13と各斜材リンク15、15の他端側の長孔16へ通した各支軸14、14との間隔が広がる変化を起こし、支軸14は長孔16内を先端側へスライドして前記変形動作に順応する。
【0022】
したがって、上記物品搬送用のキャリア100が付設されていても、駆動用チエン10とスプロケットホイール2との噛み合い運動は順調に進んで格別の支障を生じない。しかも物品搬送用キャリア100が搬送面上の物品Wを後押しする際に受ける搬送抵抗(又は反力)として受ける負荷は、中央に位置する爪材11を介して前後2本、両側で合計4本の斜材リンク15に分散して、前後する合計3個の外側リンク1bに分担させる。そのため前記物品Wの搬送負荷が相当大きくても、当該駆動用チエン10が前記の負荷で切断されるおそれは皆無である。相当大きな負荷が掛かる物品Wでも円滑に確実に搬送できて、チエン10が切断される事故の虞がない搬送装置として物品搬送を安定に安全に進めることが出来る。
【実施例2】
【0023】
次に図5〜図7により、上記実施例1とは物品搬送用キャリア102の構成が少し異なる駆動用チエン10、および同チエン10を駆動用に採用した搬送装置の実施例2を説明する。
本実施例2の駆動用チエン10とその物品搬送用キャリア102の構成は、図5を上記図2と対比すると明解であるとおり、外側リンク1bの上に立つ両側のアタッチメント1eの間へ通す支軸12で、外向きに立つ爪材11の下部が取り付けられている。そして、同爪材11の上方部位の側面に設けた支軸13へ、片側に1本の斜材リンク15の一端部が回転可能に連結されている。同斜材リンク15の他端部は、同他端部の長手方向に設けた長孔16へ、当該チエンの周回走行方向の前側に隣接する外側リンク1bに設けたアタッチメント1eへ通した支軸14へ嵌めて、リンク運動に必要なスライドが自在な構成で連結されている。
本実施例2の場合も、前記斜材リンク15は、チエンローラ1cの両側で一対をなす外側リンク1b、1bに両側で合計2本設置されている。そして、斜材リンク15の他端側を連結した支軸14と、及び両側で一対をなす2本の斜材リンク15、15において前記爪材11へ接近した位置に架設したバネ軸17との間に、弾性体である引っ張り用バネ18の両端がそれぞれ連結されている。このバネ18の引っ張り作用により、一対をなす斜材リンク15、15は、他端側の長孔16における爪材11寄りの端部が常時、支軸14に接して、同爪材11をチエンの周回走行方向に対して直角外向きに起立させた姿勢を保つ構成とされている。
【0024】
つまり、本実施例2の駆動用チエン10とその物品搬送用キャリア102は、駆動用チエン10の周回走行に伴い、同チエン10に付設された物品搬送用キャリア102が流動式コンベアの搬送面上に載せた搬送物品Wへ追い付くと、図6に示したように物品搬送用キャリア102の一部、図示例の場合は進行方向前側に位置する爪材11の先端近傍が物品Wへ接して後押しを開始し、流動式コンベア上を前進させる(搬送する)。
そして、上記構成の物品搬送用キャリア102が付設されていても、駆動用チエン10とスプロケットホイール2との噛み合い運動は順調に進み、格別の支障は生じない。しかも物品搬送用キャリア102が流動式コンベアの搬送面上の物品Wを後押しして搬送する機能の実効性を良く発揮する。その際、物品搬送用キャリア102が物品Wから受ける搬送抵抗と言うべき負荷は、爪材11とその両側2本の斜材リンク15、15に分担され、更に前後に位置する外側リンク1b、1bに分担させて処理する。
よって、前記物品Wの負荷が相当大きくても、当該駆動用チエン10が前記の搬送負荷で切断されるおそれは皆無である。大きな負荷が掛かる搬送物品Wでも、円滑に確実に搬送でき、チエン10の切断事故等の虞がない搬送装置として物品搬送作業を安定に安全に進めることが出来る(図6を参照)。
【0025】
しかも本実施例2の駆動用チエン10とその物品搬送用のキャリア102に関して特筆するべき特性、機能は、図7に記載したとおり、流動式コンベア上を進む物品Wが、その前方に設けられたストッパー等(図示は省略)により進行を止められ渋滞現象を起こした場合に、渋滞した物品Wの行き止まり抵抗Rの作用が発生し、上記引っ張り用バネ18の作用力が負けた時点で、爪材11は支軸12を中心に図7の反時計回り方向へ回転して倒れる。すると、支軸13により爪材11と連結された一対の斜材リンク15も、他端側の長孔16が支軸14に対してスライドして応答する追随動作をする。そうして遂には図7の右側に図示したとおり、物品搬送用キャリア102は、搬送物品Wの下へ潜り込んで搬送物品Wの下面側を通過してゆく。したがって、搬送用キャリア102が搬送する物品Wを無理矢理に押し込んで潰したり破損等させる懸念はない。
勿論、搬送物品Wの下面側を通過し去って、上記の抵抗Rの作用が解消した位置に到達すると、物品搬送用キャリア102は、バネ18の引っ張り作用により再び爪材11を引き起こして起立させ、正常形態に復元させて次の物品Wの搬送機能を働くことになる。
したがって、上記引っ張り用バネ18の強さは、平常時はキャリア102の起立状態を保ち、物品Wを後押しする搬送機能を実効あらしめる強さで、しかも搬送する物品Wが渋滞現象で受ける抵抗Rの大きさによっては、同キャリア102の爪材11等が回転して伏せる動作を可能にする強度に設計して実施される。
【0026】
なお、上記実施例1及び2における物品搬送用キャリア100、102の構成は、斜材リンク15が、駆動用チエン10を構成するチエンローラ1cを挟む外側リンク1bに沿って1本ずつ両側で2本を一対として構成しているが、これには限らない。
流動式コンベアの搬送面上を進む物品Wの形状や搬送負荷の大きさ、特に言えば搬送負荷が小さい場合には、片側1本のみ(但し、図2に示す実施例1の場合は片側で前後する2本)の斜材リンク15のみで、物品搬送用キャリア100、102を構成して実施することができる。
走行方向の前後に斜材リンク15を設ける理由は、チエン駆動用モータの正転、逆転を意識せずに、搬送方向に拘わらずに搬送装置を構築できるので好都合だからである。勿論、駆動モータの回転方向が常に一方向で決まっていれば、前後どちらか一方のみの斜材リンクで構築して良い場合もある。
【実施例3】
【0027】
最後に図8と図9により、物品搬送用キャリア103の構成が更に異なる駆動用チエン10及び同チエン10を駆動用に採用した搬送装置の実施例3を説明する。
本実施例3の駆動用チエン10とその物品搬送用のキャリア103の構成は、図8に詳記したとおりで、実施例1との共通点が多い。
即ち、本実施例3の場合は、上記構成のアタッチメント付きチエン10を2本一組として用意し、両チエン10、10は、一定の間隔Lを開けて平行に同じ長さで2列に配置する。そして、図9に示したように共通の回転軸42へ並列に取り付けた2個のチエンスプロケット42、42へ巻き掛けて同期速度で走行するように駆動する構成とされる。
アタッチメント1eは、上記チエンスプロケット42に沿ってエンドレスに周回走行する態様において、周回軌道の外向きに起立する態様で使用される。
【0028】
その上で、物品搬送用キャリア103の構成は、図8に示したように、上記平行な2列に配置された2本のアタッチメント付きチエン1、1を構成する、チエンローラ1cを間に挟む一対の外側リンク1b、1bのそれぞれに形成された、周回軌道の外向きに立つアタッチメント1eのうち、前記2列をなす2本のアタッチメント付きチエン1、1が前記間隔Lをあけて相対峙する関係とされた内側で向き合ったアタッチメント1e、1eの間に、先ずは前記2列のチエン間隔Lに相当する幅寸を有し、周回走行するチエンの外向きにほぼ直角に起立する姿勢とした矩形板状爪材11’の下部が、前記内側で向き合ったアタッチメント1e、1eの相互間に渡された支軸12へ通して取り付けられている。
したがって、本実施例3の矩形板状爪材11’の存在は、各アタッチメント付きチエン1、1のチエンローラ1cへ噛み込むスプロケットホイール2の歯部(図3を参照)とは一切干渉を起こさない構成である。矩形板状爪材11’の背の高さは、やはり流動式コンベアの搬送面よりも上方へ一定の高さ、具体的には搬送面上の物品Wを後押しして搬送する機能に必要な高さとされている。
【0029】
上記矩形板状爪材11’の上方部位の両側面に支軸13が設けられ、この矩形板状爪材11’の片側で2本を一組とする斜材リンク15、15の一端部が、山形の頂点を重ね合わされた状態で、前記支軸13へ回転可能に連結されている。前記片側2本を一組とする斜材リンク15、15は、前記支軸13を頂点として前後方向に対称な山形状の配置とされている。そして、各斜材リンク15、15の他端に長手方向に長孔16を設けて、チエン10の周回走行方向の前後に隣接する二つの外側リンク1b、1bの外向きのアタッチメント1e、1eに設置した支軸14へ、前記長孔16を嵌めていわゆるリンク運動(起伏動作)のスライドが自在な関係に連結して、物品搬送用のキャリア103が構成されている。
図8に示す実施例3の場合も、片側で2本を一組とする山形状配置の斜材リンク15、15は両側に2組設置され、合計4本の斜材リンク15で1個の矩形板状爪材11’を支持する構成で物品搬送用のキャリア103が構築されている。
【0030】
上記構成の物品搬送用キャリア103を設けた、2列で一組をなす駆動用チエン10、10をエンドレスの構成とし、図9に示したように共通な回転軸41へ並列に取り付けた2個のスプロケットホイール42、42へ巻き掛けて駆動し走行させる構成で、流動式コンベアのフレーム40へ組み付け、もって、同流動式コンベア40の搬送面上に載せた物品Wを、搬送するべき方向へ周回走行させる構成の搬送装置が構築されている。
本実施例3の場合、搬送する物品Wの搬送抵抗として矩形板状爪材11’へ作用する負荷は、結局、両側2本の駆動用チエン10、10へ分担させる構成であるから、同チエンが切断される危険性は更に半減され、負荷が大きい搬送物品Wでも一層安定して確実な搬送作業の実現に寄与する。
【0031】
なお、本実施例3の変形応用例として、物品搬送用のキャリア103の構成を、上記図5〜図7に記載した実施例2と同様に、矩形板状爪材11’の支軸13に一端を支持された片側1本の斜材リンク15の他端を、チエン進行方向前側に隣接する外側リンク1bの支軸14へリンク運動のスライドが自在に連結した、両側で2本の構成で実施することも同様に可能である。
【0032】
以上に本発明を図示した実施例1〜3に基づいて説明したが、勿論、本発明は上記実施例の構成に限定されるものではない。本発明の要旨、及び技術思想を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用、変形として種々な態様で実施され得ることを、念のため申し添える。
【符号の説明】
【0033】
1 アタッチメント付きチエン
10 駆動用チエン
1b 外側リンク
1c チエンローラ
1e アタッチメント
11 爪材
12、13、14 支軸
15 斜材リンク
100、102、103 物品搬送用キャリア
W 搬送物品
11’ 矩形板状爪材
18 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール又はローラ若しくはベアリングボール等を複数並べて搬送物品の搬送面を形成して成る流動式コンベアと、前記流動式コンベアの搬送面に沿って物品搬送方向に配設されたエンドレスな駆動用チエンとの組み合わせで構成される搬送装置において、
前記駆動用チエンを構成する外側リンクに形成された周回走行方向外向きに立つアタッチメントに、前記流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出る高さの爪材が取り付けられており、
前記爪材に対して筋交状の配置に設けた斜材リンクの一端が、前記爪材の上方位置の側面に設けた支軸へ連結され、他端は駆動用チエンの周回走行方向の前側又は/及び後側に隣接する外側リンクに形成された外向きアタッチメントの支軸へリンク運動のスライドが自在に連結され、前記爪材と斜材リンクとで物品搬送用のキャリアが構成され、
当該駆動用チエンを一定方向へ周回走行させることにより、前記爪材と斜材リンクとで構成した物品搬送用キャリアが、搬送面上の物品を後押しして搬送させる構成であることを特徴とする、チエン駆動方式の搬送装置。
【請求項2】
物品搬送用キャリアを構成する斜材リンクは、流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出た爪材の支軸へ一端を共通に連結した二つの斜材リンクを一組として構成され、同二つの斜材リンクは山形状の配置として、その他端には長孔を設けて、駆動用チエンの周回走行方向の前後に隣接する外側リンクのアタッチメントの支軸へリンク運動のスライドが自在に連結した構成であることを特徴とする、請求項1に記載したチエン駆動方式の搬送装置。
【請求項3】
物品搬送用キャリアを構成する斜材リンクは、流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出た爪材の支軸へ一端を連結した一つで構成され、他端には長孔を設けて駆動用チエンの周回走行方向の前側に隣接する外側リンクのアタッチメントの支軸へリンク運動のスライドが自在に連結され、更に前記アタッチメントの支軸と斜材リンクの軸との間に弾性体が連結された構成であることを特徴とする、請求項1に記載したチエン駆動方式の搬送装置。
【請求項4】
ホイール又はローラ若しくはベアリングボール等を複数並べて搬送物品の搬送面を形成して成る流動式コンベアの前記搬送面に沿って物品搬送方向に配設され、搬送面上の物品を搬送するエンドレスな駆動用チエンであって、
駆動用チエンを構成する外側リンクに形成された周回走行方向外向きに立つアタッチメントに、前記流動式コンベアの搬送面よりも上方へ突き出る高さの爪材が取り付けられ、
前記爪材の上方位置の側面に設けた支軸へ一端が連結され、他端は駆動用チエンの周回走行方向の前側又は/及び後側に隣接する外側リンクに形成されたアタッチメントの支軸へリンク運動のスライドが自在に連結された斜材リンクと、前記爪材とで物品搬送用のキャリアが構成され、スプロケットホイールへ巻き掛けて駆動される構成であることを特徴とする、搬送装置用の駆動用チエン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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