説明

チオウレア基含有高分子化合物、ウレア基またはチオウレア基を含有する化合物を含む有機圧電材料及び超音波探触子

【課題】有機圧電材料として圧電性が高く、且つ耐熱性に優れた新規材料、及びそれを用いた超音波探触子を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機圧電材料。
【化1】


(式中、X及びXは炭素原子または窒素原子を表す。Y及びYは水素原子または置換基を表し、n1及びn2は0〜4の整数を表す。R、R、R及びRは水素原子または置換基を表す。Q及びQは酸素原子または硫黄原子を表し、Wは単結合または酸素原子を表す。mは0以上の整数を表す。pは5以上の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオウレア基含有高分子化合物、有機圧電材料及び超音波探触子に関し、更に詳しくはウレア基またはチオウレア基を含有する化合物を含む有機圧電材料、及びそれを用いた超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロホン、スピーカー用の振動板等の音響機器、各種熱センサー、圧力センサー、赤外線検出器等の測定機器、超音波探蝕子、遺伝子やタンパク等の変異を高感度に検出する振動センサー等、熱や機械刺激を電気エネルギーに変換するために用いることができる圧電性や焦電性を持つ有機圧電材料は知られている。
【0003】
圧焦電体としては、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbOなどの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した、所謂無機圧電材料が広く利用されている。しかしながら、これら無機材質の圧電材料は弾性スティフネスが高く、機械的損失係数が高い、密度が高く誘電率も高いなどの特徴を持っている。
【0004】
一方で、ポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」と略す。)、ポリシアノビニリデン(以下「PVDCN」と略す。)等の有機圧電材料も開発されている(例えば、特許文献1参照)。この有機圧電材料は薄膜化、大面積化等の加工性に優れ、任意の形状、形態の物が作ることができ、弾性率が低い、誘電率が低い等の特徴を持つため、センサーとしての使用を考えたときに、高感度な検出を可能とする特徴を持っている。
【0005】
また、有機圧電材料は耐熱性が低く高い温度ではその圧焦電特性を失うほか、弾性スティフネスなどの物性も大きく減じるため使用できる温度域に限界があった。
【0006】
このような限界に対して、ウレア結合から構成されるポリウレア樹脂組成物はウレア結の双極子モーメントが大きく、樹脂としての温度特性に優れるため有機圧電材料として種々の検討が行われてきた。
【0007】
例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のようなジイソシアネート化合物と4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)のようなジアミン化合物を同時に蒸発させてポリ尿素膜を形成する、所謂蒸着重合法が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、これらに記載されている蒸着重合法で作製するポリウレア樹脂組成物は、生成するオリゴマーまたは高分子量体の分子量が不均一であるため、分極処理を施しながら高分子量化を行った場合、配向が十分でない状態でポリウレア樹脂組成物が形成される。このため、ウレア結合の双極子モーメントを十分に活用できず、有機圧電材料としては、更なる改善が求められていた。
【0008】
強誘電性液晶化合物を圧電材料に利用した報告があるが(例えば、特許文献4参照)、これまでの報告では分極基の種類が限られており、自発分極や圧電性が低く、また成膜性も十分ではなく、圧電材料として要求される性能を満たすものはまだ見つかっていない。
【特許文献1】特開平6−216422号公報
【特許文献2】特開平2−284485号公報
【特許文献3】特開平5−311399号公報
【特許文献4】特開平7−115230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題、状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、有機圧電材料として圧電性が高く、且つ耐熱性に優れた新規材料、及びそれを用いた超音波探触子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、下記構成により達成される。
【0011】
1.下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機圧電材料。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、X及びXは炭素原子または窒素原子を表す。Y及びYは水素原子または置換基を表し、n1及びn2は0〜4の整数を表す。R、R、R及びRは水素原子または置換基を表す。Q及びQは酸素原子または硫黄原子を表し、Wは単結合または酸素原子を表す。mは0以上の整数を表す。pは5以上の整数を表す。)
2.前記一般式(1)におけるQ及びQが硫黄原子であることを特徴とする前記1に記載の有機圧電材料。
【0014】
3.前記一般式(1)におけるWが酸素原子であり、mが4以上であることを特徴とする前記1または2に記載の有機圧電材料。
【0015】
4.超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備した超音波探触子であって、前記1〜3のいずれか1項に記載の有機圧電材料を用いた超音波振動子を超音波受信用振動子として具備したことを特徴とする超音波探触子。
【0016】
5.下記一般式(2)で表される化合物。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、X及びXは炭素原子または窒素原子を表す。Y及びYは置換基を表し、n1及びn2は0〜4の整数を表す。R、R、R及びRは水素原子または置換基を表す。Wは単結合または酸素原子を表す。mは0以上の整数を表す。pは5以上の整数を表す。)
6.前記一般式(2)におけるWが酸素原子であり、mが4以上であることを特徴とする前記5に記載の化合物。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、有機圧電材料として圧電性が高く、且つ耐熱性に優れた新規材料、及びそれを用いた超音波探触子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0021】
本発明は、一般式(1)で表される化合物を有機圧電材料に使用することで、配向性が高く、圧電性に優れるだけではなく、成膜性が良好で、且つ熱的にも安定であることから、汎用性の高い有機圧電材料として有効に利用できる。
【0022】
(一般式(1)で表される化合物)
一般式(1)において、X及びXは炭素原子または窒素原子を表す。X及びXとして好ましくは炭素原子である。
【0023】
及びYは水素原子または置換基を表す。Y及びYで表される置換基の具体例としては、炭素数1〜25のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル基、パーフルオロオクチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルキニル基(プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、芳香族基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシロキシ基、オクチロオキシ基、デシロキシ基、ドデシロキシ基、オクタデシロキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。
【0024】
また、これらの基は更にこれらの基で置換されていてもよい。また、Y及びYにより、Y及びYが置換している環と縮環構造を形成してもよい。Y及びYとして、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜18のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子である。
【0025】
n1及びn2は0〜4の整数を表し、n1及びn2が2〜4であるとき、Y及びYで表される置換基は同じでも異なっていてもよい。
【0026】
、R、R及びRは水素原子または置換基を表す。R、R、R及びRはで表される置換基の具体例としては、炭素数1〜25のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、芳香族基(フェニル基、ナフチル基等)が挙げられる。
【0027】
、R、R及びRで表される置換基として、好ましくは水素原子またはメチル基、エチル基、n−ブチル基、炭素数4〜20のアルコキシ基、フェニル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、ブチロキシ基、ヘキシロキシ基、オクチロキシ基、デシロキシ基、ドデシロキシ基である。
【0028】
及びQは酸素原子または硫黄原子を表す。Q及びQとして、好ましくは硫黄原子である。
【0029】
mは0以上の整数を表す。mとして好ましくは0〜20、より好ましくは0〜12である。mが0のとき、Y及びYの内、少なくとも1つは炭素数4〜20のアルコキシ基であることが好ましく、複数のY及びYが炭素数4〜20のアルコキシ基であることが更に好ましい。mが4以上のとき、Y及びYはヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子であることが好ましい。
【0030】
pは5以上の整数を表し、好ましくは5〜5000の整数であり、より好ましくは5〜2000の整数であり、更に好ましくは5〜1000の整数である。
【0031】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
一般式(1)で表される化合物は、公知の手法により合成することができる。例えば、第5版実験科学講座(丸善、2005年)、26、高分子化学、123〜140頁、特開2002−265553号公報などに記載の方法を参照して合成することができる。
【0035】
(一般式(2)で表される化合物)
一般式(2)において、X及びXは炭素原子または窒素原子を表す。Y及びYは置換基を表し、n1及びn2は0〜4の整数を表す。R、R、R及びRは水素原子または置換基を表す。Wは単結合または酸素原子を表す。mは0以上の整数を表す。pは5以上の整数を表す。一般式(2)における、X及びX、Y及びY、n1及びn2、R、R、R及びR、W、m、pは、一般式(1)におけるそれらと同一である。
【0036】
(有機圧電材料)
本発明の有機圧電材料は、一般式(1)で表される化合物を含有する膜を形成することにより、あるいは該膜に対して更に分極処理を施すことにより、有機圧電体膜を形成することができる。
【0037】
有機圧電体膜は当該圧電体膜に応力が加わると、それに比例して当該圧電体膜の両端面に反対符号の電荷が現れる、即ち電気分極という現象を生じ、逆に該有機圧電材料を伝場に入れる(電界を加える)ことで、それに比例した歪みを生じるという性質(圧電性能)を有する。特に本発明の有機圧電材料よりなる有機圧電体膜にあっては、高分子の主鎖や側鎖の双極子モーメントの配向凍結による分極により大きな圧電効果が生じる。
【0038】
一方、当該圧電体膜にエネルギー(熱)が加わると、それに対応して当該圧電体膜内部の自発分極の大きさが変化する。このとき、当該圧電体膜表面に自発分極を中和するように存在する表面電荷は、上記自発分極ほどにすばやくエネルギー変化に対応できないことから、短時間の間ではあるが、圧電体膜表面には自発分極の変化分だけ電荷が存在することになる。このエネルギー変化に伴う電気の発生を焦電性と言うが、特に本発明の有機圧電材料よりなる有機圧電体膜にあっては、高分子の主鎖や側鎖の双極子モーメントの配向凍結による分極により大きな焦電性能が生じる。
【0039】
(有機圧電体膜の形成方法)
有機圧電体膜の形成は、塗布によって膜を形成する方法が好ましい。塗布方法として、例えば、スピンコート法、ソルベントキャスト法、メルトキャスト法、メルトプレス法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法等が挙げられる。
【0040】
本発明において、一般式(1)で表される化合物が液晶相を示す温度範囲で、塗布または成膜することが好ましく、また形成された膜に後述する分極処理を更に行ってもよい。
【0041】
一般式(1)で表される化合物を有機圧電膜に成膜する際には、更に任意の高分子化合物を混合して成膜性を向上させてもよい。非液晶高分子化合物として、具体的には数平均分子量1500以上の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が用いられる。
【0042】
熱可塑性樹脂としては数平均分子量が1500以上、好ましくは1500〜10万のものであれば、特に制限なく用いることができる。熱可塑性樹脂の数平均分子量が1500より小さいとそのガラス転移温度が低過ぎ、有機圧電体膜の機械的安定性を低下させることがある。
【0043】
本発明に好適に用いられる熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロクロルエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル重合体または共重合体;ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル等の不飽和アルコールもしくはエーテルの重合体または共重合体;アクリル酸もしくはメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸の重合体または共重合体;ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステル、ポリフタル酸等のポリアリルエステル等のアルコール残基中に不飽和結合を持つものの重合体または共重合体;ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、マレイン酸エステルもしくはフマル酸エステルの重合体等の酸残基または酸残基とアルコール残基中に不飽和結合を持つものの重合体あるいは共重合体;アクリロニトリルもしくはメタアクリロニトリルの重合体または共重合体、ポリシアン化ビニリデン、マロノニトリルもしくはフマロニトリルの重合体または共重合体等の不飽和ニトリル重合体あるいは共重合体;ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリp−メチルスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−p−メチルスチレン共重合体、ポリビニルベンゼン、ポリハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル化合物の重合体または共重合体;ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等の複素環式化合物の重合体または共重合体;ポリカーボネート等のポリエステル縮合物、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド縮合物;無水マレイン酸、無水フマル酸及びそのイミド化物を含む重合体または共重合体;ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート等の耐熱性有機高分子等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ナイロンなどが好適に用いられる。
【0044】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤など市販されているものを含む各種のものを用いることができる。光硬化性樹脂としては、可視光やUV光、電子線などで硬化する接着剤など市販されているものを含む各種のものを用いることができる。これらの非液晶性高分子物質は、有機圧電体膜の製造法や必要とする耐久性の点から適宜選択すればよい。
【0045】
本発明に好適に用いられる熱または光硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ホットメルト型接着剤、エラストマー型接着剤を挙げることができる。
【0046】
エポキシ系接着剤の例としては、主剤としてビスフェノールA型のものが好ましい。ビスフェノールAの部分を次に示すようなビスフェノール化合物とした主剤も用いることができる。
【0047】
ポリウレタン系接着剤の例としては、イソシアネート成分として、メチレンビス(p−フェニレンジイソシアネート)、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1−クロロフェニルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−α−2−ジ−イソシアネート、4,4,4−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられ、それらと反応する成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセロール、ヘキサントリオール、キシリレンジオール、ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。
【0048】
非液晶性高分子物質の量は、一般式(1)で表される化合物に対して2〜40質量%、好ましくは2〜20質量%とする。非液晶性高分子物質の量が2質量%未満では、液晶層の成膜性が低下したり、また、機械的強度が不足することがある。一方、40質量%を超えると不要な光散乱を生じることがあり、有機圧電体膜の性能を低下させることがある。
【0049】
また、一般式(1)で表される化合物を他の強誘電性高分子と混合させて使用してもよい。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン/三フッ化エチレン共重合体P(VDF/TrFE)、フッ化ビニリデン/四フッ化エチレン共重合体P(VDF/TeFE)、シアン化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体P(VDCN/VA)、フッ化ビニル/三フッ化エチレン共重合体P(VF/TrFE)、フッ化ビニル/三フッ化エチレン共重合体P(VF/TrFE)に第三成分としてフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、ヘキサフルオロアセトン及びヘキサフルオロプロピレンなどを加えた共重合体、ナイロン7あるいはナイロン11、脂肪族系ポリウレア、脂肪族系ポリウレタン等のアミド系高分子等を用いることができる。
【0050】
(分極処理)
本発明に係る分極処理における分極処理方法としては、従来公知の種々の方法が適用され得る。例えば、コロナ放電処理法による場合には、コロナ放電処理は市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0051】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましいが、高電圧電源の電圧としては−1〜−20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては1〜10cmが好ましく、印加電圧は0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。
【0052】
電極としては、従来から用いられている針状電極、線状電極(ワイヤー電極)、網状電極が好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0053】
また、コロナ放電中に加熱を行うので、本発明により作製した基板が接触している電極の下部に絶縁体を介して、ヒーターを設置する必要がある。
【0054】
なお、本発明において塗布溶液の溶媒が残留している状態で、分極処理としてコロナ放電処理をする場合には、引火爆発などの危険性を避けるために溶媒の揮発成分が除去されるように十分換気しながら行うことが安全上必要である。
【0055】
(基板)
基板としては、本発明に係る有機圧電体膜の用途、使用方法等により基板の選択は異なる。ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板またはフィルムでもよいし、これらの素材の表面をアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素等で覆ったものでもよい。また、アルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素単体、希土類のハロゲン化物の単結晶の板またはフィルムでも構わない。
【0056】
更に複層圧電素子の上に形成してもよい。圧電素子を積相する複層の使用方法においては、セラミック圧電素子の上に本発明に係る有機圧電体膜を電極を介して重畳層する方法がある。セラミック圧電素子としてはPZTが使用されているが、近年は鉛を含まないものが推奨されている。
【0057】
PZTは、Pb(Zr1−XTi)O(0.47≦X≦1)の式の範囲以内であることが好ましく、脱鉛としては、天然または人工の水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブサンタンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO)等である。各種セラミック材料は、その使用性能において組成を適宜選択することができる。
【0058】
(超音波振動子)
本発明に係る超音波振動子は、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電体膜を用いたことを特徴とする。当該超音波振動子は、超音波送信用振動子と超音波送信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)に用いられる超音波受信用振動子とすることが好ましい。
【0059】
なお、一般に、超音波振動子は膜状の圧電材料からなる層(または膜)(「圧電体膜」、または「圧電体層」ともいう。)を挟んで一対の電極を配設して構成され、複数の振動子を例えば1次元配列して超音波探触子が構成される。
【0060】
そして、複数の振動子が配列された長軸方向の所定数の振動子を口径として設定し、その口径に属する複数の振動子を駆動して被検体内の計測部位に超音波ビームを収束させて照射すると共に、その口径に属する複数の振動子により被検体から発する超音波の反射エコー等を受信して電気信号に変換する機能を有している。
【0061】
以下、本発明に係る超音波受信用振動子と超音波送信用振動子それぞれについて詳細に説明する。
【0062】
〈超音波受信用振動子〉
本発明に係る超音波受信用振動子は、超音波医用画像診断装置用探触子に用いられる振動子であって、それを構成する圧電材料として、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電体膜を用いたことを特徴とする。
【0063】
なお、超音波受信用振動子に用いる有機圧電材料ないし有機圧電体膜は、厚み共振周波数における比誘電率が10〜50であることが好ましい。比誘電率の調整は、当該有機圧電材料を構成する化合物が有する前記置換基R、CF基、CN基のような極性官能基の数量、組成、重合度等の調整、及び上記の分極処理によって行うことができる。
【0064】
〈超音波送信用振動子〉
本発明に係る超音波送信用振動子は、上記受信用振動子との関係で適切な比誘電率を有する圧電体材料により構成されることが好ましい。また、耐熱性、耐電圧性に優れた圧電材料を用いることが好ましい。
【0065】
超音波送信用振動子構成用材料としては、公知の種々の有機圧電材料及び無機圧電材料を用いることができる。
【0066】
有機圧電材料としては、上記超音波受信用振動子構成用有機圧電材料と同様の高分子材料を用いることできる。
【0067】
無機材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、またはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)等を用いることができる。なお、PZTはPb(Zr1−nTi)O(0.47≦n≦1)が好ましい。
【0068】
(電極)
本発明に係る圧電(体)振動子は、圧電体膜(層)の両面上または片面上に電極を形成し、その圧電体膜を分極処理することによって作製されるものである。当該電極は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などを主体とした電極材料を用いて形成する。
【0069】
電極の形成に際しては、まず、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属及びそれらの合金からなる金属材料、更には必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する。これらの電極形成は、スパッタ法以外でも微粉末の金属粉末と低融点ガラスを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。
【0070】
更に圧電体膜の両面に形成した電極間に、所定の電圧を供給し、圧電体膜を分極することで圧電素子が得られる。
【0071】
(超音波探触子)
本発明の超音波探触子は、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波画像診断装置用探触子(プローブ)であり、受信用振動子として、本発明に係る上記超音波受信用振動子を用いることを特徴とする。
【0072】
本発明においては、超音波の送受信の両方を一つの振動子で担ってもよいが、より好ましくは送信用と受信用で振動子は分けて探触子内に構成される。送信用振動子を構成する圧電材料としては、従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
【0073】
本発明の超音波探触子においては、送信用振動子の上もしくは並列に本発明に係る超音波受信用振動子を配置することができる。
【0074】
より好ましい実施形態としては、超音波送信用振動子の上に本発明に係る超音波受信用振動子を積層する構造が良く、その際には、本発明に係る超音波受信用振動子は他の高分子材料(支持体として上記の比誘電率が比較的低い高分子(樹脂)フィルム、例えば、ポリエステルフィルム)の上に添合した形で送信用振動子の上に積層してもよい。その際の受信用振動子と他の高分子材料と合わせた膜厚は、探触子の設計上好ましい受信周波数帯域に合わせることが好ましい。実用的な超音波医用画像診断装置及び生体情報収集に現実的な周波数帯から鑑みると、その膜厚は40〜150μmであることが好ましい。
【0075】
なお、当該探触子には、バッキング層、音響整合層、音響レンズなどを設けてもよい。また、多数の圧電材料を有する振動子を2次元に並べた探触子とすることもできる。複数の2次元配列した探触子を順次走査して、画像化するスキャナーとして構成させることもできる。
【0076】
(超音波医用画像診断装置)
本発明の上記超音波探触子は、種々の態様の超音波診断装置に用いることができる。例えば、図1に示すような超音波医用画像診断装置において好適に使用することができる。
【0077】
図1は、本発明の実施形態の超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図である。この超音波医用画像診断装置は患者などの被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波をエコー信号として受信する圧電体振動子が配列されている超音波探触子(プローブ)を備えている。また、当該超音波探触子に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、当該超音波探触子の各圧電体振動子が受信したエコー信号を受信する送受信回路と、送受信回路の送受信制御を行う送受信制御回路とを備えている。
【0078】
更に、送受信回路が受信したエコー信号を被検体の超音波画像データに変換する画像データ変換回路を備えている。また、当該画像データ変換回路によって変換された超音波画像データでモニタを制御して表示する表示制御回路と、超音波医用画像診断装置全体の制御を行う制御回路とを備えている。
【0079】
制御回路には、送受信制御回路、画像データ変換回路、表示制御回路が接続されており、制御回路はこれら各部の動作を制御している。そして、超音波探触子の各圧電体振動子に電気信号を印加して被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波探触子で受信する。
【0080】
なお、上記送受信回路が「電気信号を発生する手段」に相当し、画像データ変換回路が「画像処理手段」に相当する。
【0081】
上記のような超音波診断装置によれば、圧電特性及び耐熱性に優れ、且つ高周波、広帯域に適した超音波探触子の特徴を生かして、従来技術と比較して画質とその再現・安定性が向上した超音波像を得ることができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0083】
なお、実施例において得られた重合体の物性値は、以下の方法により測定した。平均分子量測定はGPCを使用し、得られた不飽和単量体重合体をDMFに溶解し、検出器としてウォーターズ製GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製 Shodex LF−804)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した。溶媒としてLiBr、0.1Mを含むジメチルホルムアミド(以下、DMF)を用い、溶媒流量0.8ml/分とした。分析する重合体サンプル約20mgをLiBr、0.1Mを含むDMF4mlに溶解することによりサンプル調製を行い、80μlをカラムに注入した。カラム温度は40℃に設定した。検出器としてRI(示差屈折率)検出器を使用した。重合体の分子量は、ポリスチレン換算で表記した。
【0084】
合成例1:化合物2の合成
【0085】
【化5】

【0086】
300mlフラスコに、2−ヘキシロキシ−1,4−ジイソシアナトベンゼン9.6gとジメチルホルムアミド50mlを入れ、氷水浴により冷却した。溶液が5℃になったら、2−ヘキシロキシ−p−フェニレンジアミン7.7gを加え、5℃で15分間かき混ぜた。更に室温で3時間かき混ぜた後、水100mlとメタノール50mlの混合溶媒中に注入し、精製を行った。得られた白色結晶を減圧下で乾燥し、化合物2を16.4g(収率95%)得た。GPC測定による重量平均分子量Mwは、28,000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn=2.8であった。
【0087】
合成例2:化合物27の合成
【0088】
【化6】

【0089】
300mlフラスコに、1,4−ジチオイソシアナトベンゼン9.6gとジメチルホルムアミド80mlを入れ、氷水浴により冷却した。溶液が5℃になったら、5−(3−アミノヘキシロキシ)−2−アミノピリジン10.5gを加え、5℃で30分間かき混ぜた。更に室温で5時間かき混ぜた後、メタノール100mlに注入し、精製を行った。得られた白色結晶を減圧下で乾燥し、化合物27を19.2g(収率96%)得た。GPC測定による重量平均分子量Mwは、22,000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn=2.5であった。
【0090】
合成例3:化合物31の合成
【0091】
【化7】

【0092】
300mlフラスコに、1,4−ジチオイソシアナトベンゼン9.6gとジメチルホルムアミド100mlを入れ、氷水浴により冷却した。溶液が5℃になったら、4−(8−アミノオクチロキシ)−1−アミノベンゼン11.8gを加え、5℃で30分間かき混ぜた。更に室温で3時間かき混ぜた後、メタノール100mlに注入し、精製を行った。得られた白色結晶を減圧下で乾燥し、化合物31を20.7g(収率98%)得た。GPC測定による重量平均分子量Mwは、22,000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn=2.0であった。
【0093】
合成例4:化合物42の合成
【0094】
【化8】

【0095】
300mlフラスコに、2−フルオロ−1,4−ジチオイソシアナトベンゼン10.5gとジメチルホルムアミド80mlを入れ、氷水浴により冷却した。溶液が5℃になったら、4−(12−アミノドデシロキシ)−1−アミノ−2−フルオロベンゼン15.5gを加え、5℃で30分間かき混ぜた。更に室温で4時間かき混ぜた後、メタノール100mlに注入し、精製を行った。得られた白色結晶を減圧下で乾燥し、化合物42を25.2g(収率97%)得た。GPC測定による重量平均分子量Mwは、21,000、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn=2.2であった。
【0096】
実施例1
(有機圧電体膜の作製)
一般式(1)で表される化合物をジメチルホルムアミドに溶解した後、ガラス板上に約100μmの厚みになるようにキャスト成膜を行い、減圧下で100℃で12時間乾燥させた。この膜をガラス板から剥離した後、約40μmの厚みにプレス処理し、有機圧電体膜−1〜11に対応する膜を作製した。有機圧電体膜−12、13及び14に対応する膜については、一般式(1)で表される化合物をジメチルホルムアミドに溶解させる際にポリスチレンまたはPVDFを合わせて溶解し、上記と同様にキャスト成膜後にプレス処理により作製した。
【0097】
上記有機圧電体膜−1〜14に対応する膜をホットプレート上に固定し、有機圧電体膜の上部から1.5cm離してタングステン針を設置し、これに4.0kVの電圧を印加してコロナ放電による分極処理を行って有機圧電体膜−1〜14を作製した。なお、前記有機圧電体膜の温度は、前記コロナ放電処理中120℃に保持された。
【0098】
同様にして、一般式(1)で表される化合物の代わりに下記に示す比較−A、比較−B、及び比較−Cを用いて、比較有機圧電体膜−A〜Cを作製した。
【0099】
【化9】

【0100】
(有機圧電体膜の評価)
上記で得られた有機圧電体膜−1〜14及び比較有機圧電体膜−A〜Cについて、共振法により室温及び100℃まで加熱した状態で圧電e特性の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、圧電e特性は、比較有機圧電体膜−Cについて室温で測定した値を100%とした相対値として示す。表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る化合物により形成された有機圧電体膜の圧電e特性は、比較例に比べ優れており、分極基の配向性が高いことが分かる。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例2
超音波探触子の作製と評価
(送信用圧振動子の作製)
成分原料であるCaCO、La、BiとTiO、及び副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が(Ca97La03)Bi01Ti15となるように秤量した。次に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い、仮焼物を作製した。次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。微粉砕においては、微粉砕を行う時間及び粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。次に、上記の成形体を焼成した。最終焼結体の厚さは20μmの焼結体を得た。なお、焼成温度はそれぞれ1100℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。
【0103】
(受信用振動子の作製)
実施例1において作製した有機圧電体膜−7の基板の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けた後、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加しながら200℃まで5℃/minの速度で昇温させ、200℃で15分間保持した後に、電圧を印加したまま室温まで徐冷してポーリング処理を施した。分極処理を施した有機圧電体膜−7と厚さ50μmのポリエステルフィルムをエポキシ系接着剤にて貼り合わせた積層した受信用振動子を作製した。
【0104】
(超音波探触子の作製)
次に、常法に従って、上記の送信用振動子の上に受信用振動子を積層し、且つバッキング層と音響整合層を設置し超音波探触子を作製した。なお、比較例として、上記受信用振動子の代わりに比較有機圧電体膜−Aを用い、上記超音波探触子と同様の探触子を作製した。
【0105】
(超音波探触子の評価)
次いで、上記2種の超音波探触子について受信感度と絶縁破壊強度の測定をして評価した。
【0106】
なお、受信感度については、5MHzの基本周波数fを発信させ、受信2次高調波fとして10MHz、3次高調波として15MHz、4次高調波として20MHzの受信相対感度を求めた。受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado(0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)を使用した。
【0107】
絶縁破壊強度の測定は、負荷電力Pを5倍にして10時間試験した後、負荷電力を基準に戻して、相対受信感度を評価した。感度の低下が負荷試験前の1%以内のときを良、1%を超え10%未満を可、10%以上を不良として評価した。
【0108】
上記評価において、本発明に係る受信用圧振動子を具備した超音波探触子は、比較例に対して約1.3倍の相対受信感度を有しており、且つ絶縁破壊強度は良好であることを確認した。即ち、本発明に係る超音波探触子は、図1に示したような超音波医用画像診断装置に用いる探触子にも好適に使用できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施形態の超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0110】
1 受信用振動子(膜)
2 支持体
3 送信用振動子(膜)
4 バッキング層
5 電極
6 音響レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機圧電材料。
【化1】

(式中、X及びXは炭素原子または窒素原子を表す。Y及びYは水素原子または置換基を表し、n1及びn2は0〜4の整数を表す。R、R、R及びRは水素原子または置換基を表す。Q及びQは酸素原子または硫黄原子を表し、Wは単結合または酸素原子を表す。mは0以上の整数を表す。pは5以上の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるQ及びQが硫黄原子であることを特徴とする請求項1に記載の有機圧電材料。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるWが酸素原子であり、mが4以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機圧電材料。
【請求項4】
超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備した超音波探触子であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機圧電材料を用いた超音波振動子を超音波受信用振動子として具備したことを特徴とする超音波探触子。
【請求項5】
下記一般式(2)で表される化合物。
【化2】

(式中、X及びXは炭素原子または窒素原子を表す。Y及びYは置換基を表し、n1及びn2は0〜4の整数を表す。R、R、R及びRは水素原子または置換基を表す。Wは単結合または酸素原子を表す。mは0以上の整数を表す。pは5以上の整数を表す。)
【請求項6】
前記一般式(2)におけるWが酸素原子であり、mが4以上であることを特徴とする請求項5に記載の化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−138339(P2010−138339A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318165(P2008−318165)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】