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チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体、およびその用途
説明

チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体、およびその用途

【課題】密着性向上効果に優れるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を提供する。
【解決手段】式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。


(式中のaは1〜4の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは0または1であり、a+b+c=4である。mは1または2であり、nは0または1である。Rは−CH−CH−あるいは−CH(CH)−で表される基である。Rはメチル基、エチル基またはアセチル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性向上剤等に好適に用いられる新規なチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体、および当該チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種塗料をガラス等の無機基材に塗工する際に、密着性を向上させる目的でシランカップリング剤が塗料に添加されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−300491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シランカップリング剤の多くは炭素数1〜5個のアルキル基を主骨格とした構造であるため、沸点が低く、高温塗工が必要な塗料に対しては塗料100質量%に対して10〜20質量%といった多量に添加する必要があった。また、1分子当たりに1つのトリアルコキシシリル基しか有さないため密着性向上効果も充分とは言えず、例えばチタン、ジルコニウム等の塩や、イミダゾール等のアミン、リン酸エステル、ウレタン樹脂、チオール化合物等の密着性助剤も同時に添加することによって、初めて必要な密着性を達成できる場合も多かった。しかしながら、これら密着性助剤の配合は工程数が増加するだけではなく、塗料特性を損なわない密着性助剤種や添加量の最適化作業が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、ガラス等の無機基材への密着性向上効果に優れる新規なチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体、およびこれを用いた密着性向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体が、ガラス等の無機基材に対し優れた密着性向上効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は次の〔1〕から〔5〕である。
〔1〕下記式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化1】


(式中のaは1〜4の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは0または1であり、a+b+c=4である。mは1または2であり、nは0または1である。Rは−CH−CH−あるいは−CH(CH)−で表される基である。Rはメチル基、エチル基またはアセチル基である。)
〔2〕下記式2で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化2】


(式中のa´は1〜3の整数であり、b´は0〜2の整数であり、c´は0または1であり、a´+b´+c´=3である。a´´は0〜3の整数であり、b´´は0〜2の整数であり、c´´は0または1であり、a´´+b´´+c´´=3である。mは1または2であり、nは0または1である。Rは−CH−CH−あるいは−CH(CH)−で表される基である。Rはメチル基、エチル基またはアセチル基
〔3〕下記式3で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式4で表される多価チオール化合物とを反応させてなる、〔1〕に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化3】


(式中のRはビニル基またはアリル基である。Rはメチル基、エチル基、またはアセチル基である。)
【化4】


(式中のdは0または1であり、eは3または4であり、d+e=4である。mは1または2である。)
〔4〕下記式3で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式5で表される多価チオール化合物とを反応させてなる、〔2〕に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化5】


(式中のRはビニル基またはアリル基である。Rはメチル基、エチル基、またはアセチル基である。)
【化6】


(式中のfは2または3であり、gは0または1であり、f+g=3である。f´は2または3であり、g´は0または1であり、f´+g´=3である。mは1または2である。)
〔5〕〔1〕または〔2〕に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤。
【発明の効果】
【0007】
一般的なアルコキシシリル基含有化合物はアルキル基を主骨格としているのに対し、本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、分子内にチオエーテル結合を含有する。チオエーテル結合はCやOやNといった原子での結合と比べ、結合長や結合角が柔軟に可変であるため、チオエーテル結合を有する分子は様々な立体配座を取ることができる。それ故、チオエーテル結合を有する分子は分子構造の自由度が増し、基材に対しアルコキシシリル基が選択的に吸着・結合(密着性向上剤の配向)すると考えられる。そのため、本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、アルキル基を主骨格としたアルコキシシリル基含有化合物よりも高い密着性向上効果を発揮すると考えられる。また、一般的なアルコキシシラン誘導体が1分子当たりに1つのトリアルコキシシリル基しか有さないのに対し、本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、1分子中に複数個のアルコキシシラン基を有することが可能である。そのため分子末端に存在するアルコキシシラン基が基材との間に化学結合を形成し易い、あるいは物理吸着し易いため、優れた密着性を発揮する。本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体はチオエーテル結合を有することにより、分子構造の自由度が増すため密な分子配向を取ることができ、同分子量のアルコキシシリル基含有化合物と比べ沸点が高く、低揮発性となっている。また、チオエーテル結合に由来するS原子は、CやOやNといった原子の最外殻がL殻であるのに対し、最外殻がM殻であるため、より大きな原子半径と原子量を有する。そのため、S原子を有することにより分子間力が向上し低揮発化に繋がると考えられる。加えて、本発明は低揮発性の多価チオール化合物とアルコキシシリル基含有化合物との反応生成物であるため、一般的なアルコキシシリル基含有化合物と比べ低揮発性となる。これにより本発明は、例えば塗料に0.1〜10重量%という比較的少量添加でも密着性助剤の添加を必要とすることなく塗料に高い密着性を付与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1−1で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図2】実施例1−2で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図3】実施例1−3で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図4】実施例1−4で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図5】実施例1−5で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図6】実施例1−6で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図7】実施例2−1で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図8】実施例2−2で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図9】比較例1で得られた化合物のIRスペクトルを示すチャート。
【図10】実施例1−1で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図11】実施例1−2で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図12】実施例1−3で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図13】実施例1−4で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図14】実施例1−5で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図15】実施例1−6で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図16】実施例2−1で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図17】実施例2−2で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図18】比較例1で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式1又は下記式2で表される化合物である。
【化7】


(式中のaは1〜4の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは0または1であり、a+b+c=4である。mは1または2であり、nは0または1である。Rは−CH−CH−あるいは−CH(CH)−で表される基である。Rはメチル基、エチル基またはアセチル基である。)
【化8】


(式中のa´は1〜3の整数であり、b´は0〜2の整数であり、c´は0または1であり、a´+b´+c´=3である。a´´は0〜3の整数であり、b´´は0〜2の整数であり、c´´は0または1であり、a´´+b´´+c´´=3である。mは1または2であり、nは0または1である。Rは−CH−CH−あるいは−CH(CH)−で表される基である。Rはメチル基、エチル基またはアセチル基である。)
【0010】
本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、式1および式2中のa、a´およびa´´で表される構造を含むことを特徴としており、a又はa´が1以上となる化学構造を有する。
【0011】
式1および式2で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は多くの樹脂に相溶するため幅広い用途に用いることが可能である。例えば、粘着剤、接着剤、封止剤、シーラントなどにおいて、樹脂成分中に式1又は式2で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を配合することで、ガラスや金属等の無機基材との密着力向上に効果がある。また、少量の添加で高い密着力を得たい場合に好適に用いられる。
<チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法>
【0012】
式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式3で表されるアルコキシシリル基含有化合物と、下記式4で表される多価チオール化合物とを反応させることにより得ることができる。一方、式2で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式3で表されるアルコキシシリル基含有化合物と、下記式5で表される多価チオール化合物とを反応させることにより得ることができる。
【化9】


(式中のRはビニル基またはアリル基である。Rはメチル基、エチル基、またはアセチル基である。)
【化10】


(式中のdは0または1であり、eは3または4であり、d+e=4である。mは1または2である。)
【化11】


(式中のfは2または3であり、gは0または1であり、f+g=3である。f´は2または3であり、g´は0または1であり、f´+g´=3である。mは1または2である。)
【0013】
式3で表されるアルコキシシリル基含有化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリアセトキシシランが挙げられる。式3においてRがメチル基、エチル基、アセチル基以外の化合物を用いた場合、得られるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体のアルコキシシリル基と基材、あるいはアルコキシルシリル基同士の反応性が低くなるため、本発明の効果である密着性向上効果を得にくくなる。
【0014】
式4で表される多価チオール化合物のうち、工業的に入手が容易な物質としてd=1、e=3、m=2のトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、d=0、e=4、m=2のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。なお、d=1、e=3、m=1の多価チオール化合物としてはトリメチロールプロパンとチオグリコール酸との反応生成物が、d=0、e=4、m=1の多価チオール化合物としてはペンタエリスリトールと3−メルカプトプロピオン酸との反応生成物が挙げられる。式4においてm≧3の化合物を使用した場合、得られるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体において疎水性かつ非極性である炭化水素数が増えることにより、チオエーテル基の基材への配向性が弱まり、本発明の効果である密着性向上効果を得にくくなる。
【0015】
式5で表される多価チオール化合物のうち、工業的に入手が容易な物質としてf=3、f´=3、g=0、g´=0、m=2のジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。なお、f=3、f´=3、g=0、g´=0、m=1の多価チオール化合物としてはジペンタエリスリトールとチオグリコール酸との反応生成物が、f=2、f´=2、g=1、g´=1、m=2の多価チオール化合物としてはジトリメチロールプロパンと3−メルカプトプロピオン酸との反応生成物が、f=2、f´=2、g=1、g´=1、m=1の多価チオール化合物としてはジトリメチロールプロパンとチオグリコール酸との反応生成物が、f=3、f´=2、g=1、g´=1、m=2もしくはf=2、f´=3、g=1、g´=1、m=2の多価チオール化合物としてはペンタエリスリトールとトリメチロールプロパンとの縮合反応物と3−メルカプトプロピオン酸との反応生成物が、f=3、f´=2、g=1、g´=1、m=1もしくはf=2、f´=3、g=1、g´=1、m=1の多価チオール化合物としてはペンタエリスリトールとトリメチロールプロパンとの縮合反応物とチオグリコール酸との反応生成物が挙げられる。式5においてm≧3の化合物を使用した場合、得られるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体において疎水性かつ非極性である炭化水素数が増えることにより、チオエーテル基の基材への配向性が弱まり、本発明の効果である密着性向上効果を得にくくなる。
【0016】
アルコキシシリル基含有化合物と多価チオール化合物とは、触媒またはラジカル発生剤の存在下で反応させることが好ましい。触媒やラジカル発生剤を添加すれば、より短時間で且つ高収率にて反応させることができるからである。
【0017】
触媒としてはアミン系の塩基触媒が好ましく、一級、二級あるいは三級アミン類、もしくはイミダゾール系化合物が使用できる。例えば、一級アミンとしてメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等、二級アミンとしてジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等、三級アミンとしてトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。イミダゾール系化合物として、例えば、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール等のイミダゾール同族体、1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール等のオキシアルキル誘導体、1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール等のニトロおよびアミノ誘導体、ベンゾイミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0018】
ラジカル発生剤としては、過酸化物もしくはアゾ化合物が好ましい。過酸化物として例えば、過酸化ジベンゾイル、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、ジラウロイルペルオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。アゾ化合物としては例えば、アゾビス(イソ−ブチロニトリル)および2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)などが挙げられる。
【0019】
アルコキシシリル基含有化合物と多価チオール化合物とを反応させると、アルコキシシリル基含有化合物の二重結合と多価チオール化合物のチオール基とが、下記式6で表される反応式で反応する。なお、式6においてXは水素原子、Yはアルコキシシリル基含有化合物の二重結合に結合するX以外の残基を表し、Zは多価チオール化合物のチオール基に結合する残基を表す。
【化12】

【0020】
式6に示すように、アルコキシシリル基含有化合物の二重結合を形成する2つの炭素のどちらもチオールのSと結合する。2つの生成物の生成比率は反応条件により異なり、例えばアミンなどの塩基触媒を反応系に添加した場合には、生成物(1)が多く生成し、ラジカル発生剤を反応系に添加した場合には生成物(2)が多く生成する傾向にある。多くの場合、製造後のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は生成物(1)と(2)の混合物となっている。
【0021】
また、チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を製造するにあたり、多価チオール化合物はチオール基を複数有しているため、下記式7のように多価チオール化合物のチオール基のうち一部がアルコキシシリル基含有化合物と反応した生成物を得ることができる。なお、Vは多価チオール化合物のチオール基に結合する残基を表す。
【化13】

【0022】
式7におけるアルコキシシリル基含有化合物の付加個数が式1および式2で表されるA、A´およびA´´に相当する。多くの場合、製造後のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は付加反応した置換基の数が異なる物質の混合物となっている。
【0023】
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法としては、5℃以上の温度で反応させることができるが、短時間(例えば5時間以内)で反応させるためには、アミンなどの塩基触媒やラジカル発生剤を反応系に添加し、60〜80℃で反応させることがより好ましい。
【0024】
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法においては、無溶剤でも反応を進行させることができるが、低温で反応させる場合など、粘度を下げたい場合には溶剤を加えて反応させることもできる。その際には、アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しない溶剤、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類または芳香族類が好ましい。
【0025】
アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しないアルコール類としては、反応温度に対し適当な沸点を有するものが好ましく、特に沸点が50〜180℃のものが好ましい。その理由は、沸点が上記範囲よりも低い場合には、工業化した場合の製造が困難になるためであり、上記範囲よりも高い場合には、溶剤の除去が必要な場合に溶剤留去が困難になるためである。またアルコール類としてより好ましいのは、メタノール、エタノールである。なぜならば、反応溶剤であるアルコール類と上記式3で示すアルコキシシリル基含有化合物とが反応中にエステル交換反応を起こす可能性があり、目的生成物の収率が低下する恐れがあるからである。そのため、上記式3においてRがメチル基の化合物を用いた場合には反応溶剤としてメタノールを、Rがエチル基の化合物を用いた場合には反応溶剤としてエタノールを使用することが好ましい。また、Rがアセチル基の化合物を用いた場合には、アルコール溶剤を使用することで目的生成物の収率が低下することからアルコール以外の溶剤を使用することが好ましい。
【0026】
アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しないケトン類としては、反応温度に対し適当な沸点を有するものが好ましく、特に沸点が50〜180℃のものが好ましい。その理由は、沸点が上記範囲よりも低い場合には、工業化した場合の製造が困難になるためであり、上記範囲よりも高い場合には、溶剤の除去が必要な場合に溶剤留去が困難になるためである。例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどがある。
【0027】
アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しないエステル類としては、反応温度に対し適当な沸点を有するものが好ましく、特に沸点が50〜180℃のものが好ましい。その理由は、沸点が上記範囲よりも低い場合には、工業化した場合の製造が困難になるためであり、上記範囲よりも高い場合には、溶剤の除去が必要な場合に溶剤留去が困難になるためである。例えば酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル等がある。
【0028】
<密着性向上剤>
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、特にガラスや金属等の無機基材に対して高い密着性向上性能を有していることから、ガラスや金属等の無機基材への密着性向上剤として用いることができる。チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、モノマーなどの二重結合を有する化合物等に配合することによって、高い密着性向上効果を発揮することができる。さらに、式1および式2で表される化合物であり、b、b´又はb´´が0でないチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体はチオール基を有するため、エポキシ基、二重結合、イソシアネート基と反応する。このため、チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体をエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、二重結合を有する化合物に添加することにより、さらに高い密着性効果を発揮することができる。チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤は、有効成分として樹脂に対し好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%添加すると高い密着性を発揮することができる。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明する。本実施例および比較例で用いた試薬は、次の通りである。
<アルコキシシリル基を有する化合物:A成分>
(A−1)
ビニルトリメトキシシラン。その構造を下記式8に示す。
【化14】


(A−2)
ビニルトリエトキシシラン。その構造を下記式9に示す。
【化15】


(A−3)
ビニルトリアセトキシシラン。その構造を下記式10に示す。
【化16】


(A−4)
アリルトリメトキシシラン。その構造を下記式11に示す。
【化17】

【0030】
<チオール化合物:B成分>
(B−1)
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)
その構造を下記式12に示す(粘度0.1Pa・s)。
【化18】


(B−2)
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
その構造を下記式13に示す。(粘度0.4Pa・s)
【化19】


(B−3)
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)
その構造を下記式14に示す。(粘度2.5Pa・s)
【化20】


(β−1)
比較例用として、メチル−3−メルカプトプロピオネート(粘度1.5mPa・s)。その構造を下記式15に示す。
【化21】

【0031】
セパラブルの4つ口フラスコに温度計と還流管を備え、内部を窒素雰囲気にした。この4つ口フラスコに、下記表1に示す組成に従いA成分とB成分を仕込み、触媒を使用せずに90℃で8時間反応させてチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を得た。実施例1−1〜1−6、2−1、2−2及び比較例1のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の25℃における粘度も表1に示す。なお、粘度は東機産業(株)製のR型粘度計を用いて測定した。
【表1】

【0032】
<赤外線吸収スペクトル分析(IR)>
実施例1−1〜1−6、2−1、2−2及び比較例1のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体について、下記条件にて赤外線吸収スペクトル分析を行った。その結果を図1〜8に示すと共に、代表的なピークを以下に示す。
機種;日本分光(株)製 FT/IR-600
セル;KBr上に展開、分解;4cm−1、積算回数;16回
【0033】
<核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)>
実施例1−1〜1−6、2−1、2−2及び比較例1のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体について、下記条件にて核磁気共鳴スペクトル分析を行った。その結果を図9〜16に示すと共に、各NMRスペクトルにおけるピークの帰属を下記に示す。
機種;日本ブルカー(株)製、400MHz−Advance400、
条件;積算回数16回
溶媒;重クロロホルム
【0034】
(実施例1−1)
<IR>
2943cm−1:53%T、2841cm−1:62%T、1738cm−1:15%T、1466cm−1:66%T、1415cm−1:66%T、1388cm−1:63%T、1356cm−1:55%T、1192cm−1:28%T、1086cm−1:25%T、825cm−1:56%T
<NMR>
【化22】


a:3.5〜3.7ppm、b:0.9〜1.0ppm、c、d、e:2.5〜2.9ppm、f:3.9〜4.1ppm、g:1.4〜1.6ppm、h:0.9〜1.0ppm、i:1.6〜1.7ppm
【0035】
(実施例1−2)
<IR>
2974cm−1:53%T、2889cm−1:70%T、1739cm−1:30%T、1466cm−1:80%T、1415cm−1:76%T、1388cm−1:66%T、1356cm−1:67%T、1165cm−1:44%T、1080cm−1:41%T、781cm−1:67%T
<NMR>
【化23】


a:1.1〜1.4ppm、b:4.0〜4.2ppm、c:0.8〜1.0ppm、d、e、f:2.5〜2.9ppm、g:4.0〜4.2ppm、h:1.4〜1.6ppm、i:0.8〜1.0ppm、j:1.6〜1.7ppm
【0036】
(実施例1−3)
<IR>
2970cm−1:76%T、2889cm−1:78%T、1732cm−1:58%T、1466cm−1:84%T、1415cm−1:76%T、1387cm−1:75%T、1360cm−1:74%T、1151cm−1:68%T、1016cm−1:70%T、775cm−1:81%T
<NMR>
【化24】


a:2.0〜2.3ppm、b:0.8〜1.0ppm、c、d、e:2.5〜2.9ppm、f:4.0〜4.2ppm、g:1.4〜1.6ppm、h:0.8〜1.0ppm、h:4.1〜4.3ppm、i:1.6〜1.7ppm
【0037】
(実施例1−4)
<IR>
2945cm−1:63%T、2841cm−1:65%T、1739cm−1:41%T、1466cm−1:80%T、1417cm−1:82%T、1387cm−1:83%T、1352cm−1:78%T、1192cm−1:47%T、1086cm−1:35%T、816cm−1:75%T
<NMR>
【化25】


a:3.5〜3.7ppm、b:1.6〜1.8ppm、c:0.6〜0.7ppm、d、e、f:2.5〜2.9ppm、g:4.0〜4.2ppm、h:1.4〜1.6ppm、i:0.8〜0.9ppm、i:1.6〜1.8ppm
【0038】
(実施例1−5)
<IR>
2943cm−1:53%T、2841cm−1:62%T、1738cm−1:15%T、1466cm−1:66%T、1415cm−1:66%T、1388cm−1:63%T、1356cm−1:55%T、1192cm−1:28%T、1086cm−1:25%T、825cm−1:59%T
<NMR>
【化26】


a:3.5〜3.7ppm、b:0.8〜1.1ppm、c、d、e:2.5〜2.9ppm、f:4.0〜4.2ppm、g:1.4〜1.6ppm、h:0.8〜1.1ppm
(実施例1−6)
<IR>
2945cm−1:76%T、2841cm−1:82%T、1739cm−1:42%T、171cm−1:83%T、1414cm−1:79%T、1390cm−1:78%T、1356cm−1:71%T、1192cm−1:54%T、1084cm−1:57%T、806cm−1:77%T
<NMR>
【化27】


a:3.5〜3.7ppm、b:0.9〜1.1ppm、c、d、e:2.5〜2.9ppm、f:4.1〜4.3ppm、g:1.6〜1.8ppm
【0039】
(実施例2−1)
<IR>
2945cm−1:72%T、2841cm−1:80%T、1738cm−1:31%T、1469cm−1:77%T、1415cm−1:73%T、1388cm−1:70%T、1353cm−1:43%T、1192cm−1:46%T、1084cm−1:54%T、825cm−1:78%T
<NMR>
【化28】


a:3.5〜3.7ppm、b:0.9〜1.0ppm、c、d、e:2.5〜3.0ppm、f:4.1〜4.3ppm、g:1.6〜1.8ppm、h:4.1〜4.3ppm
【0040】
(実施例2−2)
<IR>
2945cm−1:67%T、2841cm−1:69%T、1739cm−1:50%T、1466cm−1:83%T、1415cm−1:83%T、1387cm−1:85%T、1352cm−1:80%T、1192cm−1:55%T、1086cm−1:46%T、825cm−1:64%T
<NMR>
【化29】


(式中のRはそれぞれ独立して下記式24、25で表される1価の基である。)
【化30】


【化31】


a、b:2.5〜2.9ppm、c、d:4.0〜4.1ppm、e:3.5〜3.7ppm、f:0.8〜1.0ppm、g:2.5〜2.9ppm、h:1.4〜1.6ppm、i:0.8〜1.0ppm
【0041】
(比較例1)
<IR>
3460cm−1:91%T、2947cm−1:25%T、2481cm−1:31%T、2360cm−1:95%T、1738cm−1:11%T、1439cm−1:39%T、1360cm−1:45%T、1194cm−1:15%T、1086cm−1:10%T、980cm−1:57%T、822cm−1:23%T、677cm−1:88%T
<NMR>
【化32】


a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.5〜2.8ppm、f:1.1〜1.3ppm、j:3.6〜3.7ppm
【0042】
図1〜8の結果からも明らかなように、C=C結合に由来する1600〜1700cm−1のピークが観測されないことから、A−1、A−2、A−3、A−4がB−1、B−2、B−3およびβ−1と反応していることがわかる。
図9〜16の結果からも明らかなように、C=C結合に由来する5.5〜6.5ppmのピークが観測されないことから、A−1、A−2、A−3、A−4がB−1、B−2、B−3およびβ−1と反応していることがわかる。
【0043】
<密着性評価>
次に、実施例1−1〜1−6、2−1、2−2及び比較例1のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を密着性向上剤として用いた場合の密着性を評価した。以降、実施例1−1〜1−6、2−1、2−2及び比較例1より得られたチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を合成品1−1〜1−6、2−1、2−2及び比較品1と呼称する。さらに密着性向上剤未使用の場合についても、密着性を評価した。
密着性の評価対象としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂〔東都化成(株)製、YDPN638〕を使用した。当該エポキシ樹脂98質量%に触媒〔イミダゾール型触媒:(株)アデカ製、EH−4344S〕を2質量%混合した混合物(E−1とする)へ、合成品1−1〜1−6、2−1、2−2及び比較品1を密着性向上剤として下記表2の配合量に従って配合した。当該組成物を無アルカリガラス〔日本電気硝子(株)製、OA−10〕にバーコーターで塗布し、150℃、1時間の条件で硬化させて樹脂成形物としての硬化膜を得た。このようにして得られた実施例3−1〜3−16、比較例3−1、及び3−2の硬化膜を温度121℃、相対湿度(RH)100%で24時間処理した後、JIS K5600−5−6に規定される塗膜の機械的性質−付着性(クロスカット法)試験法で評価を行った。これらの結果を表2に示す。なお、評価基準は次の通りである。
○:全く剥離が無い ×:少しでも剥離が発生している
【表2】

【0044】
表2に示した結果より、合成品1−1〜1−6および2−1、2−2を密着性向上剤として使用した実施例3−1〜3−8では全く剥離は見られず、密着性が良好であった。また、密着性向上剤添加量を減らした実施例3−9〜3−16においても全く剥離は見られず密着性が良好であった。その一方、比較例3−1では本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体以外の化合物を用いたことから剥離が生じて密着性は不良であった。また、比較例3−2では密着性向上剤を使用していないことから、剥離が生じて密着性は不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化1】


(式中のaは1〜4の整数であり、bは0〜3の整数であり、cは0または1であり、a+b+c=4である。mは1または2であり、nは0または1である。Rは−CH−CH−あるいは−CH(CH)−で表される基である。Rはメチル基、エチル基またはアセチル基である。)
【請求項2】
下記式2で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化2】


(式中のa´は1〜3の整数であり、b´は0〜2の整数であり、c´は0または1であり、a´+b´+c´=3である。a´´は0〜3の整数であり、b´´は0〜2の整数であり、c´´は0または1であり、a´´+b´´+c´´=3である。mは1または2であり、nは0または1である。Rは−CH−CH−あるいは−CH(CH)−で表される基である。Rはメチル基、エチル基またはアセチル基である。)
【請求項3】
下記式3で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式4で表される多価チオール化合物とを反応させてなる、請求項1に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化3】


(式中のRはビニル基またはアリル基である。Rはメチル基、エチル基、またはアセチル基である。)
【化4】


(式中のdは0または1であり、eは3または4であり、d+e=4である。mは1または2である。)
【請求項4】
下記式3で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式5で表される多価チオール化合物とを反応させてなる、請求項2に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化5】


(式中のRはビニル基またはアリル基である。Rはメチル基、エチル基、またはアセチル基である。)
【化6】


(式中のfは2または3であり、gは0または1であり、f+g=3である。f´は2または3であり、g´は0または1であり、f´+g´=3である。mは1または2である。)
【請求項5】
請求項1または2に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−197233(P2012−197233A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61134(P2011−61134)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】