説明

チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物、その調製プロセス、それを含有する充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物、ならびにそれらから製造される物品

充填剤入り加硫可能エラストマー組成物のための架橋剤として有用な、一般式:G[−C2a−S−S−C(=S)NR〔式中、Gが5から12個の炭素原子を含有し、任意選択で少なくとも一つのハロゲンを含有する、価数nの飽和した単環式の脂肪族基であるか、または価数nの飽和した単環式のシリコーン[RSiO−][RSiO−]基であり;それぞれのRが独立して水素、もしくは20個までの炭素原子の一価の炭化水素であり;下付文字aの各々が独立して整数であり、ここでaが2から6であり;nが3から6の整数であり;pが0から3の整数である〕で表わされるチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機硫黄化合物、その調製プロセス、有機硫黄化合物を架橋剤(加硫剤)および促進剤として含有する充填剤入り硫黄加硫可能組成物、ならびにそのような組成物より製造されるタイヤ、タイヤトレッド、ウェザー・ストリップ、ホース、ベルト、シール、ガスケット、靴底などのような物品に関する。
【背景技術】
【0002】
元素の硫黄は、不飽和のジエン系エラストマー(ゴム)のための加硫剤として一般的に用いられる。硫黄によって形成される架橋は、エラストマーの加硫化物の熱安定性を高めるような、主として多硫化物の架橋である。
【0003】
ジエン系ゴムのための加硫剤および促進剤として硫黄含有反応基を有する有機化合物を使用する事は知られている。これらの有機硫黄化合物は、架橋基へと化学結合する二つのみのジチオカルバマート基もしくはチオスルホナート基をしばしば含んでいる。そのような化合物によってもたらされる連携点の数の少なさはジエン系ゴムの不十分な架橋をもたらし、そして摩耗、静止摩擦および転がり抵抗の十分なバランスを示す加硫物を達成することに失敗する。例えば、二つより多くのジチオカルバマート基もしくはチオスルホナート基が架橋基へと化学結合されている場合、架橋基はエーテル架橋もしくはエステル架橋のような不安定な架橋をしばしば含むか、または架橋した(硬化した)エラストマーが機械的ストレスへと供された時に亀裂を増殖させ得るエネルギーを消散させるのに必要な柔軟性を欠く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、ウェザー・ストリップ、ホース、ベルト、シール、ガスケット、靴底、タイヤおよびタイヤ構成部品のような硫黄加硫可能エラストマーによって製造される物品の、特に摩滅および磨損のような摩耗性状を向上させつつ、一方で硬度、40℃より上の温度でのより低いtanデルタ値および5度から−15℃の温度での上昇したtanデルタ値を維持するような、硫黄加硫可能エラストマー用の架橋剤および促進剤を得る事が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、一般式:
G[−C2a−S−S−C(=S)NR (1)
のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物、およびそれらの混合物が提供され、
ここで、Gが5から12個の炭素原子を含有し、任意選択で少なくとも一つのハロゲンを含有する、価数nの飽和した単環式の脂肪族基であるか、または価数nの飽和した単環式のシリコーン[RSiO−][RSiO−]基であり;それぞれのRが独立して水素、もしくは20個までの炭素原子の一価の炭化水素であり;下付文字aの各々が独立して整数であり、ここでaが2から6であり;nが3から6の整数であり;pが0から3の整数である。
【0006】
さらに本発明によると、上述のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物は、
a) フリーラジカルの源の存在下において、ポリ−アルケニル置換シクロアルカンとチオ酸とを反応させてポリ−チオカルボキシラート置換アルキルシクロアルカンをもたらすステップ;
b) ポリチオカルボキシラート置換アルキルシクロアルカンと脱ブロック化剤とを反応させて遊離したポリ−メルカプタン−官能性アルキルシクロアルカンを生成するステップ;
c) 遊離したポリ−メルカプタン−官能性アルキルシクロアルカンとハロゲン化剤とを反応させポリスルフェニルハライド官能性シクロアルカンをもたらすステップ;ならびに
d) ポリスルフェニルハライド官能性アルキルシクロアルカンと式RNC(=S)S〔式中、Rは20個の炭素原子までの一価の炭化水素であり;Mはアルカリ金属カチオンである〕で表わされるアルカリ金属塩とを反応させ、チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を得るステップ
を含有するプロセスによって調製される。
【0007】
本発明の他の実施態様によると、硬化性充填剤入りエラストマー組成物は、
(i)少なくとも一つの硫黄加硫可能エラストマー;
(ii)少なくとも一つの微粒子充填剤;および
(iii)架橋に効果的な量の、硫黄加硫可能エラストマー(i)の架橋剤としての、少なくとも一つの一般式:
G[−C2a−S−S(=O)R] (1)
のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を含有して提供され、
ここで、Gが5から12個の炭素原子を含有し、任意選択で少なくとも一つのハロゲンを含有する、価数nの飽和した単環式の脂肪族基であるか、または価数nの飽和した単環式のシリコーン[RSiO−][RSiO−]基であり;それぞれのRが独立して水素、もしくは20個までの炭素原子の一価の炭化水素であり;下付文字aの各々が独立して整数であり、ここでaが2から6であり;nが3から6の整数であり;pが0から3の整数である。
【0008】
本発明のさらに他の態様によると、タイヤもしくはトレッドのようなタイヤの部品、ホース、ベルト、シール、ガスケットなどのような物品は、上述の硬化性充填剤入りエラストマー組成物の一定量を所望の物品の型へと入れ、そしてその後に該組成物を硬化することによって製造される。
【0009】
ここでの明細書および請求項において、以下の術語および表現は示されるように理解されるべきである。
【0010】
術語「エラストマー」は「ゴム」と同義語であり、そしてそれゆえに入れ替え可能である。
【0011】
「カップリング剤」という表現は、加硫可能エラストマーとその充填剤との間の有効な化学的および/もしくは物理的結合を確立する事の出来る薬剤を意味する。有効なカップリング剤は、例えば、カップリング剤のケイ素原子と充填剤のヒドロキシル(OH)表面基との間で表面−O−Si結合(すなわちシリカの場合のように表面がシラノールを含むときにはシロキサン)を形成するもののような、充填剤との物理的および/もしくは化学的結合を可能にする官能基と、そして、例えば、加硫(硬化)の結果としてエラストマーと物理的および/もしくは化学的に結合できる硫黄原子とを持つ。
【0012】
「充填剤」という表現は、エラストマーを伸長させるためかもしくはエラストマー架橋を強化させるためにエラストマーへと添加される物質を意味する。強化充填剤はそのモジュラスがエラストマー組成物の有機ポリマーよりも高い物質であり、そしてエラストマーに負荷がかかるときに有機ポリマーから応力を吸収可能である。充填剤は、線維、微粒子、およびシート状構造を含み、シリカート、シリカ、粘土、セラミクス、カーボンおよび珪藻土のような無機物質、ならびに有機ポリマーのような有機物質からなって良い。充填剤は、それが混合される他の物質に対して本質的に不活性であってよく、もしくはそれは他の物質と反応性であってよい。
【0013】
「微粒子充填剤」という表現は微粒子または凝集体もしくは塊を形成する微粒子の群を意味する。ここで有用な微粒子充填剤は、それらが混合される例えばシランカップリング剤のようなカップリング剤に対して本質的に不活性であってよく、またはそれらはカップリング剤と反応性であってよい。
【0014】
「担体」という術語は、そのフリー・フロー性と乾燥特性とを保ちつつ高い吸着もしくは吸着能を持ち、そして75パーセントの液体成分を保持できる多孔性ポリマーもしくは広い表面積の充填剤を意味する。ここでの有用な担体は、シランカップリング剤に対して本質的に不活性であり、そして硫黄加硫可能エラストマー組成物に対して添加されるとき、液体シランを放出もしくは脱着することができる。
【0015】
実施例以外において、もしくは他に示されていなければ、物質の量、反応条件、時間、物質の定量化された性質などを表す、明細書および請求項に述べられるすべての数字は、すべての場合において単語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。
【0016】
ここで列挙される任意の数値範囲は、その範囲中のすべてのサブ範囲(sub−range)とそのような範囲もしくはサブ範囲のさまざまな終点の任意の組み合わせとを含むことは理解されよう。
【0017】
構造的、構成的ならびに/または機能的に関連した化合物、物質もしくは基質の群に属するとして、明細書に明確にもしくは暗に開示される、ならびに/または請求項に引用される任意の化合物、物質もしくは基質は、その群の個々の要素およびそれらのすべての組み合わせを含むことはまた理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物は以下の一般式:
G[−C2a−S−S−C(=S)NR (1)
によって表わされ、
ここで、Gが5から12個の炭素原子を含有し、任意選択で少なくとも一つのハロゲンを含有する、価数nの飽和した単環式の脂肪族基であるか、または価数nの飽和した単環式のシリコーン[RSiO−][RSiO−]基であり;それぞれのRが独立して20個までの炭素原子の一価の炭化水素であり;下付文字aの各々が独立して整数であり、ここでaが2から6であり;nが3から6の整数であり;pが0から3の整数である。
【0019】
「一価の炭化水素基」という表現はそこから一つの水素原子が取り除かれた任意の炭化水素基を意味し、アルキル、アルケニル、アルキニル、環状アルキル、環状アルケニル、環状アルキニル、アリール、アラルキルおよびアレニルを含む。
【0020】
術語「アルキル」は、任意の一価の、飽和した、直鎖の、分岐のもしくは環状の炭化水素基を意味し、術語「アルケニル」は、任意の一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する任意の一価の、直鎖の、分岐のもしくは環状の炭化水素基であって、ここで基の結合の位置が炭素−炭素二重結合においてもしくは基内のどこかのいずれでもあり得るものを意味し;術語「アルキニル」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素三重結合を含有し、そして任意選択でひとつもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する、任意の一価の、直鎖の、分岐のもしくは環状の炭化水素基であって、ここで基の結合の位置が炭素−炭素三重結合において、炭素−炭素二重結合において、もしくは基内のどこかのいずれでもあり得るものを意味する。アルキルの例は、メチル、エチル、プロピルおよびイソブチルを含む。アルケニルの例は、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノボルネンおよびエチリデンノルボルネニルを含む。アルキニルの例はアセチレニル、プロパルギルおよびメチルアセチレニルを含む。
【0021】
「環状アルキル」、「環状アルケニル」および「環状アルキニル」という表現は、二環式構造、三環式構造およびより高次の環状構造、ならびにアルキル基、アルケニル基、および/もしくはアルケニル基でさらに置換された上述の環状構造を含む。代表的例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、シクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシルおよびシクロドデカトリエニルを含む。
【0022】
術語「アリール」は任意の一価の芳香族炭化水素基を意味し;術語「アラルキル」は(ここで定義されるような)任意のアルキル基であってその中の一つもしくはそれ以上の水素原子が同種の、および/もしくは異なる(ここで定義されるような)同じ数のアリール基によって置換されるものを意味し;術語「アレニル」は(ここで定義されるような)任意のアリール基であって、その中のひとつもしくはそれ以上の水素原子が同じ数の同種の、および/もしくは異なる(ここで定義されるような)アルキル基によって置換されるものを意味する。アリールの例はフェニルおよびナフタフェニルを含む。アラルキルの例はベンジルおよびフェネチルを含む。アレニルの例はトリルおよびキシリルを含む。
【0023】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物中の飽和した、単環式の脂肪族基Gの代表的でかつ非限定的な例は、三価の、四価のおよび五価のシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカンおよびシクドドデカンである。−C2a−S−S−C(=S)NR基の結合は、シクロアルキル環Gの周囲における、軸方向の、もしくは赤道面の立体化学的な構造のいずれでも起こることは理解されよう。ここでのチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物はまた、任意の一つの立体異性体における−C2a−S−S−C(=S)NR基の配置がすべて赤道面の位置であるか、軸方向の位置であるか、または赤道面の位置と軸方向の位置の両方であり得るような立体異性体の混合物を含む。ここでの立体異性体の混合物は、少なくとも50重量パーセントの、すべての−C2a−S−S−C(=S)NR基が脂環式の基Gと比較して赤道面の位置にあるような異性体を含むことが好ましく、そしてより好ましくは少なくとも80重量パーセントが、そしてもっとも好ましくは少なくとも90重量パーセントの前記立体異性体を含む。シクロアルキル環Gの周囲の立体化学は、ポリアルケニル置換シクロアルカン中間体もしくは反応物の調製において通常は決定される。例えば、シス、トランス、トランス−1,5,9−シクロドデカントリエンの熱転位からの1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの調製において、反応条件はシクロヘキシル環の周囲の立体化学に影響を与え得る。ポリアルケニル置換シクロアルカンの蒸留もしくは分離液体クロマトグラフィーのような他の分離方法もまた、所望の比率の立体化学的異性体を得るのに用いられ得る。
【0024】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物中の一価の炭化水素基Rの代表的でかつ非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、メチルベンジルなどである。
【0025】
ジチオカルバマート基とシクロアルキル環との間の二価の架橋基、−C2a−、は直鎖でも分岐でもあり得る。−C2a−基はジチオカルバマート基が末端部に存在する直鎖であることが好ましい。
【0026】
二価の架橋基の代表的でかつ非限定的な例は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびヘキシレンである。好ましい架橋基はエチレンおよびプロピレンである。
【0027】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物の代表的でかつ非限定的な例は:ジメチル−ジチオカルバミン酸S−2−[4,6−ビス−(2−ジメチルチオカルバモイルジスルファニル−エチル)−2,4,6−トリメチル−[1,3,5,2,4,6]トリオキサトリシリナン−2−イル]−エチルスルファニルエステル、ジメチル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジメチルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジフェニル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−3−{3−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−プロピル]−シクロヘキシル}−プロピルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−6−{6−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−ヘキシル]−シクロヘキシル}−ヘキシルスルファニルエステル;ジフェニル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロペンチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;80パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルと少なくとも5パーセントのジベンジルジチオカルバミン酸S−2−{2−[トランス,シス ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルとの混合物;85パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルと少なくとも5パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トランス,シス ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルとの混合物、ならびにそれらの混合物を含む。
【0028】
ここでの好ましいチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物は、ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル、ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;80パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルと少なくとも5パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トランス,シス ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルとの混合物;ならびに85パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルと少なくとも5パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トランス,シス ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルとの混合物を含む。
【0029】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物は、
a) フリーラジカルの源の存在下において、ポリ−アルケニル置換シクロアルカンとチオ酸とを反応させてポリ−チオカルボキシラート置換アルキルシクロアルカンをもたらすステップ;
b) ポリチオカルボキシラート置換アルキルシクロアルカンと脱ブロック化剤とを反応させて遊離したポリ−メルカプタン−官能性アルキルシクロアルカンを生成するステップ;
c) 遊離したポリ−メルカプタン−官能性アルキルシクロアルカンとハロゲン化剤とを反応させポリスルフェニルハライド官能性アルキルシクロアルカンをもたらすステップ;ならびに
d) ポリスルフェニルハライド官能性アルキルシクロアルカンと式RNC(=S)S〔式中、Rは20個の炭素原子までの一価の炭化水素であり;Mはアルカリ金属カチオンである〕で表わされるアルカリ金属塩とを反応させ、チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を得るステップ
を含有するプロセスによって調製できる。
【0030】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を調製する上述のプロセスは、反応ステップ(a)〜(d)に対応する化学反応式:
ステップ(a): G[−C2cCH=CH+nRC(=O)SH → G[−C2a−SC(=O)R
ステップ(b): G[−C2a−SC(=O)R + nHO−R → G[−C2a−SH] + nROC(=O)R
ステップ(c): G[−C2a−SH] + nX−X → G[−C2a−SX + nHX
ステップ(d): G[−C2a−SX + nR2NC(=S)S → G[−C2a−S−S−C(=S)NR + nM
によって表わされ、
ここで、Gが5から12個の炭素原子を含有し、任意選択で少なくとも一つのハロゲンを含有する、価数nの飽和した単環式の脂肪族基であるか、または価数nの飽和した単環式のシリコーン[RSiO−][RSiO−]基であり;それぞれのRが独立して水素もしくは20個までの炭素原子の一価の炭化水素であり;それぞれのRが独立して20個までの炭素原子の一価の炭化水素であり;それぞれのRが独立して20個までの炭素原子の一価の炭化水素もしくはMであり、ここでMはアルカリ金属カチオンであり;X1の各々は塩素、臭素もしくはヨウ素より選択されるハロゲン原子であり;Xの各々は独立してXおよびスクシンイミド基から選択され;下付文字aおよびcの各々は独立して整数であり、ここでaは2から6であり;cは0から4であり;nは3から6の整数であり;そしてpは0から3の整数である。
【0031】
チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物の異性体の混合物は、アルケニル基G[−C2cCH=CH〔式中、G、cおよびnは上に定義される〕の3から6個を含有する多価の脂環式化合物の立体化学により決定される。反応物の立体化学的構造は、ステップ(a)におけるチオカルボン酸基の添加反応によって変化しない。
【0032】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を製造するための好ましい開始物質であるトリビニルシクロヘキサンは、1,5,9−シクロドデカトリエンの熱分解によって生じる。ここでの参照によりそのすべての内容が組み込まれる、米国特許第3,011,003号および英国特許第848,637号に開示されるように、高温における、任意選択で触媒の存在下での、1,5,9−シクロドデカトリエンの転換は、トリビニルシクロヘキサン化合物を生成する。
【0033】
チオカルボン酸が、3から5個のアルケニル基を含有する多価の脂環式化合物と反応する、ステップ(a)の添加反応は、任意選択でフリーラジカル試薬の存在下において実行されても良い。好適なフリーラジカル試薬は、チオカルボン酸をチオカルボン酸ラジカル、すなわち
【化1】


へと転換することができ、そして、酸素、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドなどを含むがそれらには限定されない酸化剤とUV照射とを含む。
【0034】
G[−C2a−SC(=O)R中間体の調製において、0.95から3モル当量の、好ましくは1.0から1.25モル当量の、そしてもっとも好ましくは化学量論的な量のチオカルボン酸が用いられる。
【0035】
ペルオキシドもしくはヒドロペルオキシドのフリーラジカル試薬の効果的な量は、3から5個のアルケニル基を含有する脂環式化合物の重量に基づいて0.01から2の、そして好ましくは0.1から0.5の重量パーセントの範囲であり得る。酸素がフリーラジカルの生成源として用いられるとき、酸素の源は純粋な酸素ガス、空気または酸素と不活性ガスとの混合物であって良い。酸素と不活性ガスとの混合物は3から15重量パーセントの酸素と不活性ガスであるバランスとを含有しても良い。空気または酸素と不活性ガスとの混合物は、有機物質の存在下における純粋な酸素を取り扱う困難さから一般的に好ましくあり、そしてそれらのうちで、空気が好ましい。UV照射の源は石英窓を備える水銀ランプであってよい。
【0036】
3から6個のアルケニル基を含有する脂環式化合物の代表的でかつ非限定的な例は、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,2,4−トリプロペニルシクロヘキサン、1,3,5−トリヘキセニルシクロヘキサン、1,3,5,7−テトラビニルシクロオクタン、1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロデカン、ならびに少なくとも80重量パーセントのシス,シス,シス−1,2,4−トリビニルシクロヘキサンと少なくとも5重量パーセントのシス−トランス−シス−1,2,4−トリビニルシクロヘキサンとの混合物を含む。
【0037】
チオカルボン酸の代表的でかつ非限定的な例は、チオ酢酸、チオプロパン酸、チオブタン酸、チオヘキサン酸などを含む。
【0038】
ペルオキシドおよびヒドロペルオキシドのフリーラジカル試薬の代表的でかつ非限定的な例は、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバル酸、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサン酸、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサン酸、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−ブチルペルオキシべベンゾアート、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(tert−ブチル−ペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチル−クミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−tert−ブチルペルオキシドなどを含む。
【0039】
ステップ(a)の添加反応は、室温以下、室温もしくは高温において、大気圧以下、大気圧もしくは大気圧以上において、そして、溶媒の非存在下もしくは存在下において実施できる。好適な温度は、0℃から200℃の、そして好ましくは40℃から150℃の範囲である。反応は通常終了まで実行された。これを達成するのに必要とされる時間は、採用される特定の反応条件ならびに触媒が使用されるかどうかに依存する。5分から24時間の反応時間が通常好適である。好ましくは大気圧が用いられる。典型的な溶媒は、芳香族および脂肪族溶媒を含む炭化水素溶媒、そして塩素系溶媒を含む。
【0040】
ステップ(b)のエステル交換反応は、ステップ(a)から生じるG[−C2a−SC(=O)R中間体とアルコールとを、任意選択でアルカリ触媒の存在下において接触させることによって影響を受ける。アルコールの量は化学量論的な量から大過剰まで変化し得る。典型的には1から20当量のアルコールがエステル交換に影響を与えるべく使用される。代替的に、アシル基はアルカリ金属ヒドロキシドの存在下における鹸化反応によって除去し得る。典型的な触媒は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム・メトキシド、ナトリウム・エトキシド、カリウム・メトキシド、カリウム・エトキシドなどを含む。
【0041】
ステップ(c)のハロゲン化反応は、ステップ(b)より生じるポリ−メルカプト−脂環式化合物G[−C2a−SH]と構造X−Xのハロゲン含有酸化剤との反応によって影響を受け、ここでG、X、Xおよびnは上に定義される。ステップ(c)のハロゲン化反応は、室温以下、室温もしくは高温において、大気圧以下、大気圧もしくは大気圧以上において、そして、溶媒の非存在下もしくは存在下において実施できる。反応温度は−10℃から200℃の範囲で、そして好ましくは0℃から50℃の範囲であり得る。反応は通常終了まで実行された。反応時間は、採用される反応条件に依存する。5分から24時間の反応時間が通常好適である。ハロゲン化反応物の損失を防ぐために好ましくは大気圧が用いられる。典型的な溶媒は、芳香族および脂肪族溶媒を含む炭化水素溶媒、ならびにフッ素化溶媒および塩素系溶媒を含むハロゲン化溶媒を含む。四塩化炭素のようなペルハロゲン化溶媒は、ハロゲン化反応物と溶媒との反応を防ぐために好ましい。
【0042】
ステップ(d)で示される反応は、室温以下、室温もしくは高温において、大気圧以下、大気圧もしくは大気圧以上において、そして、溶媒の非存在下もしくは存在下において実施できる。温度は−15℃から200℃、好ましくは0℃から100℃、そしてより好ましくは15℃から30℃の範囲である。反応物のスラリーを維持するために、溶媒の存在下で反応を実施する事もまた好ましい。芳香族もしくは脂肪族の溶媒のような非プロトン性の溶媒、塩素系溶媒、ならびにエーテル、ケトンおよびエステルのような酸素化溶媒は好ましい。
【0043】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物は、硫黄加硫可能エラストマー(i)の架橋剤として特に有用である。チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物は3から6個の反応性の−S−S−C(=S)NR基を持ち、硬化反応中に反応する促進剤である。チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物はそれゆえ、ゴム分子に対して3から5個の連携点を持つ。いずれの理論によってもとらわれることはないが、6個よりも多いようなより多い数の連携点は、バルクのゴムにおいて、非常に密であり、そしてポリマー鎖もしくは充填剤に対して効率的に応力やエネルギーを伝達できない局在化した領域を生じると信じられている。この応力の伝達は脂環式環構造によって促進される。環は、環から外へ向かってそれらを向けさせている−S−S−C(=S)NR基間の平均距離を制御する。その向きは反応基を異なるポリマー鎖へと結合させることができ、それにより架橋の効率を高める。さらに、脂環式の環は柔軟性があり、舟形配座、椅子型配座およびねじれ型配座の間を交互に移行できる。高い応力のもとでは、環はエネルギーを吸収する経路を提供するような配座へと変化できる。この性質が無いと、エネルギーは結合の切断へと進み、硬化したゴム組成物における貧弱な摩耗および疲労性能を生じる。直鎖および分岐の二価のもしくは多価のアルキレン基は、−S−S−C(=S)NR基の向きにおいてはそれほど効果的でない。芳香族環は平坦でかつ硬く、そしてそれゆえにそれらの配座の変化を実行できない。特に環が1,2,4−置換シクロヘキシル基であるとき、脂環式環に関して好ましい配座は、すべての−シス構造である。配座がすべての軸方向の位置へと変化するとき、1,3−立体相互作用が起こるために、平衡状態の−S−S−C(=S)NR基は主として赤道面の位置にある。すべてのシス構造は−S−S−C(=S)NR基をそれぞれお互いに離すように配向し、−S−S−C(=S)NR基の間の平均距離を最大化する。
【0044】
ここでの硬化性充填剤入りエラストマー組成物中の硫黄加硫可能エラストマー(i)の濃度は、組成物の全重量の、10から99の、好ましくは50から95の、そしてより好ましくは60から85重量パーセントの範囲であって良い。
【0045】
本発明の硬化性充填剤入りエラストマー組成物中の微粒子充填剤(ii)の濃度は、組成物の全重量の、0.5から90の、好ましくは5から60の、そしてより好ましくは10から50重量パーセントの範囲であって良い。
【0046】
充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物中の本発明の架橋したチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物(iii)の濃度は、組成物の全重量の、0.05から30の、好ましくは0.5から10の、そしてより好ましくは2から5重量パーセントの範囲であって良い。
【0047】
充填剤は、液体のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物の担体として利用する事が出来る。担体として使用する充填剤はチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物と非反応性であるべきである。そのような充填剤の非反応性の性質は、有機溶媒を用いることでチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物がそのもともとの充填の50パーセントより多く充填剤から抽出されるような性能によって示される。抽出手順は、ここでの参照によりそのすべての内容をここに組み入れる米国特許第6,005,027号に記載される。充填剤および担体は、多孔性有機ポリマー、カーボンブラック、珪藻土およびシリカを含むがそれらには限定されない。
【0048】
本発明において有用な強化充填剤は、シランが充填剤の表面と反応性であるような充填剤を含む。そのような充填剤の代表例は、シリカ(焼成および/もしくは沈降)、チタン、アルミノシリカートおよびアルミナのようなシリカ充填剤、酸化金属、粘土、滑石などを含むがそれらには限定されない。充填剤は水和物の形状で供給されても良い。微粒子の沈降シリカは、充填剤として特に有用であり、特にシリカが反応性の表面シラノールを有するときにそうである。
【0049】
充填剤の多孔性は例えば水銀多孔度測定という既知の方法によって測定できる。この方法によると、充填剤の孔は、揮発分を除去するための熱処理の後に水銀によって浸透される。試験条件は100mgのサンプルを使用し、大気圧から2000バールの圧力において105℃で2時間以上揮発物を除去するというものである。水銀多孔度測定は、Winslow, et al. in ASTM bulletin(ASTM公報),p.39(1959)に記載された方法に従って、またはDIN 66133に従って実行し得る。測定には、カルロ−エルバ多孔度計2000(CARLO−ERBA Porosimeter 2000)を使用できる。ここでのシリカ充填剤の平均水銀多孔度比表面積は、100から300m/gの範囲であるべきである。
【0050】
そのような水銀多孔度測定による、好ましいシリカ、アルミノもしくはアルミノシリカート充填剤の細孔径分布は、その細孔の5パーセント以下が10nm未満の直径を有し、その細孔の60から90パーセントが10から100nmの直径を有し、その細孔の10から30パーセントが100から1,000nmの直径を有し、そしてその細孔の5から20パーセントが1,000nmを超える直径を有するものであるとここでは考えられる。
【0051】
好適なシリカ充填剤は、例えば電子顕微鏡によって決定される10から50nmの範囲の平均粒径を持つものを含むが、より小さなものやより大きな粒径のものもまた有用である。ここでの使用に好適な様々な市販のシリカは、たとえば、PPG IndustriesからのHI−SIL210およびHI−SIL243などのようなもの;Rhone−PoulencからのZEOSIL1165MPのようなもの;DegussaからのVN2およびVN3などのようなもの、ならびにHuberからのHUBERSIL8745のようなものを含む。
【0052】
一実施態様において、一つもしくはそれ以上の充填剤はシランカップリング剤と組み合わせられる。充填剤は、シリカ、アルミナおよび/もしくはアルミノシリカートのようなシリカ充填剤とカーボンブラック強化顔料との混合物であってよい。このように充填剤成分は15から95重量パーセンのシリカ充填剤と、カーボンブラック、例えば80から150までの範囲のCTAB値を持つものであるバランスとの混合物であってよく、そして、実例としてここでの参照によりそのすべての内容をここに組み入れる米国特許出願公開2008/0161461および2008/0161477にその構造が開示されるような、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、S−チオオクタン酸、3−トリエトキシシリルプロピルエステル、およびシリル化コアポリスルフィドの一つもしくはそれ以上を含む、0.1から20重量パーセントのシランカップリング剤を含んでもよい。他の実施態様において、シリカ充填剤対カーボンブラックの重量比は少なくとも3対1、好ましくは少なくとも10対1、そしてより好ましくは少なくとも30対1である。
【0053】
充填剤混合物は、60から95重量パーセントまでのシリカ、アルミナおよび/またはアルミノシリカートと、これに対応する、40から5重量パーセントまでのカーボンブラックと、そして0.1から20重量パーセントまでのシランカップリング剤を含有してよく、そして各成分の混合物は合計で100パーセントまでという条件である。シリカ充填剤およびカーボンブラックは、加硫ゴムの製造の際、前もって混合しても一緒に混合してもよい。
【0054】
ここでの硫黄加硫可能エラストマー(i)は、共役ジエンホモポリマーおよびコポリマーならびに少なくとも一つの共役ジエンと芳香族ビニル化合物とのコポリマーを含む。ゴム組成物の調製に好適な有機ポリマーは当分野に周知されており、「The Vanderbilt Rubber Handbook」、Ohm,R.F.、R.T.Vanderbilt Company, Inc.1990年、および「Manual For The Rubber Industry」、Kempermann,T.および、Koch,S.Jr.、BayerAG、LeverKusen、1993年を含む様々な教科書に記載される。
【0055】
本発明の一実施態様において、硫黄加硫可能エラストマーは溶液重合スチレン−ブタジエンゴム(SSBR)であり、例えば、5から50パーセントの、より好ましくは9から36パーセントのスチレン含量を持つものである。本発明の他の実施態様において、硫黄加硫可能エラストマーはエマルション重合スチレン−ブタジエンゴム(ESBR)、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレンコポリマーおよびターポリマー(EP、EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ポリブタジエン(BR)など、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0056】
好適な共役ジエンエラストマーは、イソプレンおよび1,3−ブタジエンを含むがそれらに限定されず、好適なビニル芳香族エラストマーはスチレンおよびアルファメチルスチレンを含むがそれらに限定されない。有用なポリブタジエンは、典型的には約90重量パーセントの単位をシス−1,4−ブタジエンの形状で含有するものを含む。
【0057】
硫黄加硫可能エラストマー(i)は、例えば、シス−1,4−ポリイソプレンゴム(天然および/もしくは合成)、エマルション重合調製スチレン/ブタジエンコポリマーゴム、有機溶液重合調製スチレン/ブタジエンゴム、3,4−ポリイソプレンゴム、イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーゴム、シス−1,4−ポリブタジエン、中程度のビニルポリブタジエンゴム(35−50パーセントのビニル)、高ビニルのポリブタジエンゴム(50−75パーセントのビニル)、スチレン/イソプレンコポリマー、エマルション重合調製のスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルターポリマーゴムならびにブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムの少なくとも一つより選択できる。ある用途においては、20から28パーセントの結合スチレンという比較的標準的なスチレン含量を持つエマルション重合調製スチレン/ブタジエン(ESBR)、または30から45パーセントという中程度から比較的高い結合スチレン含量を持つESBRを用いてもよい。
【0058】
ターポリマー中に2から40重量パーセント結合アクロニトリルを含むエマルション重合調製スチレン/ブタジエン/アクロニトリルターポリマーゴムもまた本発明における使用のためのジエン系ゴムとして考えられている。
【0059】
硬化した、すなわち、加硫したここでのエラストマー組成物は、満足できる高いモジュラス、例えば8MPaより大きい100パーセント伸びでのモジュラスと、高い引き裂き抵抗、例えば25Nより大きい引き裂き抵抗とを示すために十分な量の充填剤(ii)を含む。本発明の一実施態様において、充填剤の合計重量は、100部当たり(phr)5部という低いものから100部までであって良い。他の実施態様において、充填剤の合計重量は25から85phrであり、そして他の実施態様において少なくとも一つの沈降シリカが充填剤として利用される。シリカは、40から600m/gの、好ましくは50から300m/gの窒素ガスを用いて測定されたBET表面積を有することにより特徴づけられ得る。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society,Volume60,page304(1930)に記載されている。シリカは、100から350の、そして好ましくは150から300のジブチルフタラート(DBP)の吸収値を有することによっても特徴づけられる。さらにシリカ、ならびに前述のアルミナおよびアルミノシリカートは、100から220のCTAB表面積を有してよい。CTAB表面積は、約9のpHを持つセチルトリメチルアンモニウムブロミドによって測定される外部表面積である。この方法はASTM D3849に記載される。
【0060】
実際的に、硫化エラストマー物品は、硫黄加硫可能エラストマー(i)、充填剤(ii)および硫黄含有脂環式架橋剤(iii)を段階的な様式によって熱機械的に混合して硬化性のエラストマーを提供し、その後に物品を提供するために組成物を成型し、そして硬化することが続くことによって典型的には調製される。第一に、硫黄加硫可能エラストマーと、典型的に硫黄含有脂環式架橋剤、硫黄および硫黄加硫促進剤(集合的に、硬化剤)を除いた他の成分との上述の混合のために、エラストマーと様々なエラストマー配合成分とは、適切なミキサー中における、少なくとも1回の、そしてしばしば(シリカ充填剤入り低い転がり抵抗のタイヤの場合)2回もしくはそれ以上の予備的な混合段階において混合される。そのような予備的混合は、非硬化発現混合(non−productive mixing)、または非硬化発現混合の工程もしくは段階と呼ばれる。そのような予備的混合は、140℃から200℃の、そしてある組成物では150から170℃の温度で通常は実施される。そのような予備的混合段階に続いて、しばしば硬化発現混合段階と呼ばれる最終混合段階において、硬化剤と、場合によると一つもしくはそれ以上の追加的な成分とが、しばしばスコーチ(scorching)と呼ばれる硫黄加硫可能ゴムの時期尚早の硬化を防ぐかまたは遅らせるために、例えば50℃から130℃の低い温度でゴム化合物または組成物と混合される。ゴム化合物もしくはゴム組成物とも呼ばれるゴム混合物は、しばしば中間的なミル混合のプロセスの後でもしくはプロセスの途中で、前述の種々の混合工程の間に、例えば約50℃もしくはそれ以下の温度に典型的には冷却される。充填剤入り硬化性エラストマー組成物の成型および硬化が望まれる場合、所望の量の組成物が適切な形態の型へと導入され、そして130℃から200℃の温度において、ここでの硫黄含有脂環式架橋剤および促進剤の硫黄含有基と組成物中に存在するであろう任意の他の遊離の硫黄源との反応を通じてゴムの加硫が達成される。
【0061】
熱機械的混合は、それによって、ゴムミキサー中の高いせん断条件下で、高いせん断のミキサー中のゴム化合物の混合、又はゴム化合物それ自身およびゴム配合成分の混合の結果として起こるせん断力および付随する摩擦で温度が自発的に上昇し、すなわちそれが加熱する現象を指す。いくつかの化学反応は混合および硬化プロセスの様々な工程で起こるだろう。
【0062】
例えば、Sのようなものであるがそれには限定しない元素硫黄の形状のような一つもしくはそれ以上の他の硫黄源も利用可能である。硫黄の供与体は、140℃から190℃の範囲の温度において遊離のもしくは元素の硫黄を遊離させる硫黄含有化合物であるとここでは考えられる。そのような硫黄供与体は、少なくともそのポリスルフィド架橋基に2つの結合した硫黄原子を有するポリスルフィド加硫促進剤およびオルガノシランポリスルフィドを含む。ここでの硬化性組成物中の遊離の硫黄源の量は、硫黄含有脂環式架橋剤および促進剤の添加と比較的独立した選択事項として、調節もしくは調製することが出来る。
【0063】
本発明の一実施態様において、ゴム組成物は、ゴムの100重量部の共役ジエンホモポリマーおよびコポリマー、ならびに少なくとも一つの共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物のコポリマーから選択される少なくとも一つの硫黄加硫可能ゴムと、5から100phr、そして好ましくは25から80phrの、少なくとも一つの充填剤と、5phrまでの硬化剤と、ならびに0.05から25phrの少なくとも一つの架橋剤および促進剤としての本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物とを含有できる。
【0064】
他の実施態様において、充填剤組成物は、充填剤組成物の全重量に基づいて1から85重量パーセントのカーボンブラックと、ゴム組成物の全重量に基づいて0.5から10重量部の架橋剤および促進剤としての少なくとも一つの本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物とを含有できる。
【0065】
ゴム組成物は、もし必要ならば120℃から200℃の温度までの2から20分間の第一の熱機械的混合段階において、ゴム、充填剤およびシランカップリング剤、またはゴムならびにシランカップリング剤の全部もしくは一部分によって予め処理された充填剤を最初に混合することによって調製できる。硫黄含有脂環式架橋剤および他の硬化剤がもし存在するなら、後に続く50℃から100℃の温度で1から30分間の熱機械的混合段階において添加できる。温度はその後、130℃から200℃まで上昇し、硬化は5から60分間で達成される。
【0066】
本発明の他の実施態様において、プロセスはタイヤもしくは硫黄加硫可能ゴムと本発明によって調製されたゴム組成物からなるトレッドとの組立品を調製し、組立品を130℃から200℃の範囲の温度で加硫する追加のステップを含有してもよい。
【0067】
例えば、シランカップリング剤のようなカップリング剤、活性化剤、遅延剤および促進剤を含む硫黄化合物のような硬化助剤、オイルのような加工助剤、可塑剤、粘着樹脂、シリカ、他の充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤、素練り促進剤、例えばカーボンブラックのような強化物質などを含む他の任意選択の成分を、本発明のゴム組成物へと添加できる。そのような添加剤は意図する使用もしくは使用すると選択された硫黄加硫可能物質に基づいて選択され、そしてそのような選択は当業者の知識の範囲内であり、当業者に知られるそのような添加剤の必要とされる量においてである。
【0068】
加硫は追加の硫黄加硫剤の存在下で実施されても良い。好適な硫黄加硫剤の例は、例えば元素の硫黄(遊離の硫黄)もしくは例えばアミノジスルフィド、ポリマーポリジスルフィドもしくは硫黄オレフィン付加物のような硫黄供与加硫剤を含み、それらは典型的には最終の硬化発現のゴム組成物混合ステップにおいて添加される。0.4から3phrの範囲の量で、またはある状況では8phrまでの量で、一実施態様において1.5から2.5phrの範囲の量で、そして他の実施態様において2から2.5phrの範囲の量で、当分野において一般的な硫黄加硫剤が、硬化発現の混合段階において用いられるか、または添加される。
【0069】
加硫促進剤、つまり追加の硫黄供与体、例えばベンゾチアゾール、アルキルチウラムジスルフィド、グアニジン誘導体、およびチオカルバマートもここで使用してよい。それらの促進剤の代表的な具体例は、メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、ベンゾチアゾールジスルフィド、ジフェニルグアニジン、ジチオカルバミン酸亜鉛、アルキルフェノールジスルフィド、ブチルキサントゲン酸亜鉛、N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N,N−ジフェニルチオ尿素、ジチオカルバミルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、亜鉛−2−メルカプトールイミダゾール、ジチオビス(N−メチルピペラジン)、ジチオビス(N−ベータ−ヒドロキシエチルピペラジン)ならびにジチオビス(ジベンジルアミン)を含む。他の硫黄供与体は、例えばチウラムおよびモルホリン誘導体を含む。そのような供与体の代表的な具体例は、ジモルホリンジスルフィド、ジモルホリンテトラスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンゾチアジル−2,N−ジチオモルホリド、チオプラスト、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィドおよびジスルフィドカプロラクタムを含む。
【0070】
促進剤は、加硫に必要な時間および/または温度を制御し、そして硫化物の性能を改善するために使用される。一実施態様において、単一の促進剤システム、つまり一次促進剤を使用してよい。汎用的には、一次促進剤は、0.5から4、そして好ましくは0.8から1.5phrの範囲の合計量で使用される。硫化物の性能を活性化しそして改善するために、一次促進剤と二次促進剤の組み合わせを使用でき、二次促進剤は、より少ない量(例えば0.05から約3phr)で使用される。遅延作用の促進剤および加硫遅延剤も使用してよい。適切な促進剤の型は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバマート、およびキサントゲン酸塩を含む。一実施態様において、一次促進剤はスルフェンアミドである。二次促進剤が使用される場合、その二次促進剤はグアニジン化合物、ジチオカルバマート化合物またはチウラム化合物であってよい。
【0071】
粘着付与剤樹脂の典型的な量は、もし使用するなら、0.5から10phr、そして好ましくは1から5phrである。加工助剤の典型的な量は1から50phrである。好適な加工助剤は、芳香族、ナフテン系および/もしくはパラフィン系の加工オイルを含む。酸化防止剤の典型的な量は1から5phrである。代表的な抗酸化剤は、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ならびに、例えば「Vanderbilt Rubber Handbook」(1978),pages344−346において同定される他のものを含む。オゾン劣化防止剤の典型的な量は1から5phrである。例えばステアリン酸のような脂肪酸の典型的な量は、もし使用されるなら、0.5から3phrまでである。酸化亜鉛の典型的な量は2から5phrまでである。例えば微結晶ワックス(microcrystalline wax)のようなワックスの典型的な量は1から5phrである。例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドのような素練り促進剤の典型的な量は0.1から1phrである。
【0072】
本発明のゴム組成物は、例えば、タイヤ、ウェザー・ストリップ、ホース、ベルト、シール、ガスケット、靴底などの製造のような様々な目的に使用できる。本発明の一実施態様において、ここに記載されるゴム組成物はタイヤのトレッドの製造に特に有用であるが、タイヤの他のすべての部品にも同様に利用できる。タイヤは、当業者に周知の様々な任意の方法によって、組み立てられ、成形され、成型され、そして硬化される。
【0073】
提供される実施例は、ここでのチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物の合成および充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物への架橋剤および促進剤としてのそれらの使用を例示する。
【実施例】
【0074】
実施例1
この実施例は、その構造が:
【化2】


であるジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルを80重量パーセント含有する異性体混合物の調製を例示する。
【0075】
チオ酢酸(1,974グラム、25.9モル)が5リットルの丸底フラスコへと充填された。フリットチューブを用いて空気がチオ酢酸へと泡立てながら入れられた。約80重量パーセントのシス,シス立体化学異性体と約20重量パーセントのトランス,シス立体化学異性体を含有する1,2,4−トリビニルシクロヘキサン(1,303グラム、8.0モル)が添加漏斗を用いて2.5時間にわたって滴下された(1,2,4−トリビニルシクロヘキサン異性体混合物は分留によって調製された。)。発熱が観察された。温度はアイスバスを用いて32℃に維持された。4時間後、アイスバスは取り除かれ、反応混合物はさらなる16時間、反応混合物中に空気を泡立てながら通しつつ攪拌された。過剰のチオ酢酸は真空下でおおよそ100℃において液体を蒸発させることによって除去された。収量は定量でき、3,137グラムの産物を産生した。GC分析により反応が完了した事を確かめた。
【0076】
アシル基はエステル交換反応により除去された。S,S,S−[2,2,2−(1,2,4−シクロヘキサントリイル)トリエチル]トリチオアセタート中間体(3,090グラム、7.9モル)が5リットルの丸底フラスコへと充填された。エタノール(1,070グラム、23.3モル)およびナトリウム・エトキシド(68.6グラム)が攪拌しながら添加された。混合物は還流条件で4時間熱せられ、生成するエチルアセタートは大気圧において蒸留して除去された。追加の量のエタノール(672グラム、15.6モル)が添加され、混合物は一晩還流された。エタノールとエチルアセタートは蒸留によって除去された。エタノールの添加とエタノールおよびエチルアセタートの除去とはさらに2回繰り返された。1,2,4−トリス(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン中間体(1,884グラム)は淡黄色の濁った液体であった。
【0077】
メルカプタンの塩素化はN−クロロスクシンイミドを用いて実施された。1,2,4−トリス(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン(100グラム、0.37モル)および四塩化炭素(50ミリリットル)の溶液が、窒素ガスでパージされた3リットルの丸底フラスコ中のN−クロロスクシンイミド(157グラム、1,176モル)と四塩化炭素(1.0リットル)のスラリーへと、90分にわたってゆっくりと添加された。溶液の温度は25℃未満に維持された。混合物はさらに1.5時間攪拌され、そしてCeliteのろ過池を通してろ過された。固体は四塩化炭素(100ミリリットル)によって2回洗浄され、そしてろ過物は合わせられた。ろ過物はその後、四塩化炭素(500ミリリットル)中のジベンジル−ジチオカルバミン酸、ナトリウム塩(346グラム、1.17モル)のスラリーへと1.5時間にわたって、温度を25度未満に維持しつつ添加された。混合物は、追加の2時間拡販され、Celiteを通してろ過され、そして固体はクロロホルム(100ミリリットル)によって洗浄され、ろ過物は合わせられた。ろ過物は75℃から80℃において、133.3Pa(1 mmHg)で蒸発され、ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル(349グラム、87%収量)が得られた。
【0078】
比較例1
この例は、その構造が:
【化3】


である、3−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル−プロピオン酸ビス−2,2−(3−ジフェニルチオカルバモイルスルファニル−プロピオニルオキシメチル)−ブチルエステルの調製を例示する。
【0079】
四塩化炭素(10ミリリットル)中トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオナート)(4.0グラム、0.010モル)の溶液が、マグネチックスターラーバー、窒素注入口、側管付き滴下ロートおよびサーモカップルを備えた3口丸底フラスコ中のN−クロロスクシンイミド(4.15グラム、0.031モル)と四塩化炭素(30ミリリットル)とのスラリーへと滴下された。発熱反応はアイスバスを用いて27℃未満に調節された。混合物は追加の5時間、室温で攪拌された。反応混合物はスクシンイミド副産物を取り除くためにろ過され、トリメチロールプロパントリス(3−スルフェニルクロロプロピオナート)の黄色い溶液を得た。H NMR(CDCl)δ:4.09(s,6H)、3.37(m,6H)、2.89(t,J=6.5Hz,6H);1.52(q,J=6.5Hz,2H);0.96(t,J=7.4Hz,3H)。13C NMR(CDCl):170.8、64.2、41.4、36.7、33.7、23.3、7・8ppm。
【0080】
固体のジベンジル−ジチオカルバミン酸、ナトリウム塩(9.6グラム、32ミリモル)がトリメチロールプロパントリス(3−スルフェニルクロロプロピオナート)の溶液へと5分間にわたって添加された。混合物の温度はアイスバスを用いて30℃未満に維持された。添加が完了した後、混合物は室温にされ、そして追加の16時間、室温で攪拌された。反応混合物はろ過され、そして濃縮され、3−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル−プロピオン酸ビス−2,2−(3−ジフェニルチオカルバモイルスルファニル−プロピオニルオキシメチル)−ブチルエステル(9.3グラム、75%収量)が粘性の黄色いオイルとして得られた。H NMR(CDCl)δ:7.3(m,30H)、5.4(br s,6H)、5.0(br s,6H)、4.09,(s,6H);3.17(t,J=7.0Hz,6H);2.77(t,J=7.0Hz,6H);1.51(q,J=7.1Hz,2H)、0.91(t,J=7.1Hz,3H)。13C NMR(CDCl):200.3、135.5/134.7、129.49/129.31、128.5、127.6、64.5、59.1/54.7、41.1、33.9、23.4、7.9ppm。
【0081】
比較例2
この例は、その構造が:
【化4】


である、3−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル−プロピオン酸3−(3−ジフェニルチオカルバモイルスルファニル−プロピオニルオキシ)−ビス−2,2−(3−ジフェニルチオカルバモイルスルファニル−プロピオニルオキシメチル)−プロピルエステルの調製を例示する。
【0082】
四塩化炭素(10ミリリットル)およびクロロホルム(10ミリリットル)中の3−メルカプト−プロピオン酸3−(3−メルカプト−プロピオニルオキシ)−ビス−2,2−(3−メルカプト−プロピオニルオキシメチル)−プロピルエステル(3.0グラム、0.0061モル)が、マグネチックスターラーバー、窒素注入口、側管付き滴下ロートおよびサーモカップルを備えた3口丸底フラスコ中のN−クロロスクシンイミド(3.64グラム、0.027モル)と四塩化炭素(30ミリリットル)のスラリーへと添加された。温度はアイスバスを用いて30℃未満へと維持された。混合物はさらなる3.5時間室温で攪拌された。反応混合物はスクシンイミド副産物を除去するためにろ過され、ペンタエリスリトールテトラキス(3−スルフェニルクロロプロピオナート)の黄色い溶液が得られた。H NMR(CDCl)δ:4.22(s,8H)、3.37(m,6H)、3.38(t,J=6.7Hz,8H);2.91(t,J=6.7Hz,8H)。13CNMR(CDCl):171.0、62.6、42.7、36.6、33.6ppm。
【0083】
固体のジベンジル−ジチオカルバミン酸、ナトリウム塩(8.0グラム、0.027モル)がペンタエリスリトールテトラキス(3−スルフェニルクロロプロピオナート)の溶液へと5分間にわたって添加された。温度はアイスバスを用いて23℃未満に維持された。混合物は室温にされ、そしてさらなる24時間攪拌された。反応混合物はろ過され、50ミリリットルの1規定の塩酸で2回洗浄され、そして50ミリリットルの蒸留水で4回洗浄され、無水硫酸マグネシウム上で乾燥された。ろ過の後、溶液は蒸発され、粘性の黄色いオイル(3.35グラム、35%収量)が得られた。H NMR(CDCl)δ:7.4(m,40H)、5.4(br,s,8H)、5.0(br s,8H)、4.17,(s,8H);3.14(t,J=6.8Hz,8H);2.76(t,J=6.8Hz,8H)。13C NMR(CDCl):199.8、171.4、135.5/134.7、129.5/129.3、128.5、127.5、62.8、59.1/54.8、42.3、33.7、33.6ppm。
【0084】
比較例3および4ならびに実施例2
下の表1に記載されるような見本の低い転がり抵抗の乗用車タイヤトレッド配合物と混合手順とが本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を評価するのに用いられた。混合は、103立方インチ(1690立方センチメートル)のチャンバ容量を持つ「B」BANBURY(登録商標)(Farrell Corp.)ミキサー内で以下のように行われた。ゴムの混合は2段階で実施された。ミキサーを80rpmで冷却水を71℃にしてミキサーの電源が入れられた。ゴムのポリマーがミキサーへと添加され、30秒間ラムダウン(ram down)混合された。シリカならびにシランカップリング剤、硬化剤およびオイルを除く表1のマスターバッチ中の他の成分がミキサーへと添加され、そして60秒間ラムダウン混合された。ミキサーの速度は35rpmへと減ぜられ、その後、マスターバッチのシランとオイルがミキサーへと添加され、そして60秒間ラムダウン混合された。ミキサー投入口はダストダウン(dust down)され、成分は温度が149℃に達するまでラムダウン混合された。成分はその後、さらなる3分30秒間混合された。ミキサーのスピードは152℃と157℃との間の温度を維持するように調節された。ゴムはダンプされ(ミキサーより取り出され)、シートが約85℃から88℃に設定されたロールミル上において形成され、そして、室温まで冷まされた。
【0085】
第二の段階において、マスターバッチはミキサーへと再充填された。ミキサーの速度は80rpmであり、冷却水は71℃に設定され、バッチ圧は6MPaに設定された。マスターバッチは30秒間ラムダウン混合され、マスターバッチの温度はその後に149℃へと上げられ、ミキサーの速度は32rpmに減ぜられ、ゴムは3分20秒間、152℃と157℃の間の温度において混合された。混合の後、ゴムはミキサーよりダンプされ、チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物と硬化剤とが添加され、そして混合され、シートが約85℃から88℃に設定されたロールミル上において形成され、そして、室温まで冷まされた。
【0086】
ゴム組成物の測定および試験
ゴム組成物の特性評価のために用いられた測定および試験は以下に記載される。ゴム組成物は下に示すように硬化の前後で特性評価された。
【0087】
組成物のレオロジー特性は、Monsanto R−100 Oscillating Disk RheometerとMonsant M1400 Mooney Viscometerによって測定された。力学的性質を測定するための試料は、149℃で(t90+1)分間硬化した6mmのプラークから切り出した。プラークの形状の硬化したゴム組成物の硬化と試験はASTM標準に従って実施された。さらに、微小ひずみ動的試験がRheometrics Dynamic Analyzer(ARES−Rheometrics Inc.)上で実施された。Payne効果ひずみ掃引(strain sweep)は、10Hzで60℃において、せん断ひずみ振幅が0.01%から約25%までの動的ひずみ振幅で実行された。動的パラメータ、G’initial、ΔG’、G’’max、tanδmaxは、微小ひずみでゴム組成物の非線形応答から抽出した。幾つかの場合において、tanδの定常値は35%のひずみ振幅(60℃で)において15分間の動的な振動の後に測定された。動的性質の温度依存性も、10Hzの周波数での微小ひずみ振幅(1または2%)で約−80℃から+80℃まで測定した。
【0088】
具体的な硬化手順および測定手順は以下のようであった:
硬化手順/測定 試験標準
ムーニー粘度およびスコーチ ASTM D1646
振動円板レオメトリー ASTM D2084
試験プラークの硬化 ASTM D3182
応力−歪み特性 ASTM D412
発熱性 ASTM D623
【0089】
【表1】

【0090】
表1のトレッドの配合物の成分の市販物の供給源は以下のとおりである:スチレンブタジエンゴム:LanxessからのBuna VSL5025(非油展);シリカ:RhodiaからのZeosil1165MP;カーボンブラック(N−330);プロセスオイル:Sun OilからのSundex8125;ZnO:ZincCorpからのKadox720C;ステアリン酸:Witco、CromptonからのIndustreneR;6PPD:(UniroyalからのFlexzone 7P);TMQ:CromptonからのNaugardQ;ワックス:Uniroyal、CromptonからのSunproof Improved;硫黄:HarwickからのRubbermakers Sulfer104;TBBS:UniroyalからのDelac NS;TBzTD:Uniroyal,CromptonからのBenzyl Ttuex;DBTCH:LanxessからのVulcuren;シラン:Momentive Performance MaterialsからのSilquest A−1289シラン。
【0091】
【表2】

【0092】
これらの実験結果は本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を用いて配合されたゴム組成物が、それらの添加物を含まない同一のゴム組成物と比較して、性能が改善されていることを示す。例えば、摩擦の性能(摩耗)が、比較例3(添加なし)と比較した時に9パーセント、そしてVulcuren添加物(比較例4)と比較した時に11パーセント改善している。
【0093】
比較例5および6および17ならびに実施例3
本発明の硫黄含有化合物の性能が冬用乗用車トレッド組成物で示され他。配合は表3に示され、結果は表4に示される。
【0094】
【表3】

【0095】
表3のトレッドの配合物の成分の市販物の供給源は以下のとおりである:天然ゴム:(SMR−L);スチレンブタジエンゴム:LanxessからのBuna VSL5025(非油展);シリカ:RhodiaからのZeosil1165MP;カーボンブラック(N−330);プロセスオイル:Sun OilからのSundex8125;ZnO:ZincCorpからのKadox720C;ステアリン酸:Witco、CromptonからのIndustreneR;6PPD:(UniroyalからのFlexzone 7P);ワックス:Uniroyal、CromptonからのSunproof Improved;TMQ:CromptonからのNaugardQ;TBBS:UniroyalからのDelac NS;TBzTD:Uniroyal,CromptonからのBenzyl Ttuex;DBTCH:LanxessからのVulcuren;シラン:Momentive Performance MaterialsからのSilquest A−1289シラン。
【0096】
【表4】

【0097】
添加物を含有しないゴム組成物と比較して、引っ張り強度、破断エネルギー密度および伸びにおいて改善が見られた。例えば、チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を含有するゴム組成物(実施例3)の引っ張り強度および破断エネルギー密度は、添加物を含有牛内ゴム組成物と比較して、7パーセントおよび25パーセント高かった。
【0098】
表1のゴム化合物は、2600立方センチメートルのチャンバ容量を備える装備された「OOC」BANBURY(登録商標)ミキサー内で混合された。ゴムの混合は3段階で実施された。ミキサーを80rpmで冷却水を71℃にしてミキサーの電源が入れられた。ゴムのポリマーがミキサーへと添加され、30秒間ラムダウン混合された。充填剤とシランがミキサーへと添加され、30秒間ラムダウン混合された。表5のゴム化合物のオイルを除く他の成分がミキサーへと添加され60秒間ラムダウン混合された。ミキサーの速度は65rpmへと減ぜられ、そしてオイルがミキサーへと添加され60秒間ラムダウン混合された。ミキサーの投入口はダストダウンされ、成分は温度が150℃に達するまでラムダウン混合された。成分はさらに追加で3分30秒間混合された。ミキサーの速度は温度を150℃と155℃の間に保つために調整された。ゴムはダンプされ(ミキサーから取り出され)、シートが約85℃から90℃に設定されたロールミル上において形成され、そして、室温まで冷まされた。
【0099】
第2の段階において、第1の段階のゴム化合物はミキサーへと再充填された。ミキサーの速度は80rpmであり、冷却水は71℃に設定され、そしてラム圧は171.8kPa(25psi)に設定された。温度を150℃に上昇させつつ第1の段階で調製されたゴム化合物が150秒間ラムダウン混合され、そしてその後ミキサーは50rpmまで減速された。150℃と155℃の間の温度でゴムが40秒間混合された。混合の後、ゴムはダンプされ(ミキサーから取り出され)、そしてシートが約85℃から90℃に設定されたロールミル上において形成された。ゴムは室温まで冷まされた。
【0100】
第3の段階において、ミキサーの速度は50rpmへと設定され、冷却水は71℃に設定され、そしてラム圧は171.8kPa(25psi)に設定された。第2の段階のゴム化合物と硬化剤とが、最終混合物の温度を115℃に上昇させつつ190秒間ラムダウン混合された。混合のあと、ゴムはダンプされ(ミキサーから取り出され)、シートが約85℃から90℃に設定されたロールミル上において形成され、そしてその後室温まで冷まされた。硬化の条件は160℃で20分間であった。
【0101】
表5に列記される混合物からなる205/55/R16サイズの空気式タイヤが製造された。該タイヤがアスファルト上の湿潤ブレーキ(低μ)およびコンクリート上の湿潤ブレーキ(高μ)、アクアプレーン、転がり抵抗の試験に用いられた。摩耗が測定された。
【0102】
本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物の性能が乗用車のトレッド組成物中で示された。配合は表5に示され、そして結果は表6に提示される。試験手順は以下のASTMおよびDIN法に記載される:

ムーニースコーチ ASTM D1646
ムーニー粘度 ASTM D1646
レオメトリー(MDR2000) DIN 53 259
保存モジュラス、損失モジュラス
引っ張りおよび伸び DIN 53 504−R1
ショアA硬度 DIN 53 505
リバウンド DIN 53 512 ASTM D1054
DIN 摩耗 DIN 53 516
【0103】
タイヤの結果が表7に示される。
【0104】
【表5】

【0105】
表3のトレッドの配合物の成分の市販物の供給源は以下のとおりである:天然ゴム:(SMR−L);スチレンブタジエンゴム:LanxessからのBuna VSL5025(非油展);シリカ:RhodiaからのZeosil1165MP;カーボンブラック(N−330);プロセスオイル:Sun OilからのSundex8125;ZnO:ZincCorpからのKadox720C;ステアリン酸:Witco、CromptonからのIndustreneR;6PPD:(UniroyalからのFlexzone 7P);ワックス:Uniroyal、CromptonからのSunproof Improved;TMQ:CromptonからのNaugardQ;TBBS:UniroyalからのDelac NS;DBTCH:LanxessからのVulcuren;シラン:Momentive Performance MaterialsからのSilquest A−1289シラン。
【0106】
【表6】

【0107】
【表7】

【0108】
タイヤとレッドはタイヤ摩耗において8パーセントの改善を示しつつ、ABSブレーキ、乾燥ブレーキ、乾燥ハンドリングおよび転がり抵抗を保持していた。
【0109】
上述の実施例において言及されるゴム組成物は、乗用車のタイヤ組成物として記載されていたが、それらのゴム組成物は他の産業用ゴム製品においても好適であると予想できる。
【0110】
実施例5
下の表8に記載されるような見本の靴底の配合物および混合手順が、本発明のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物の代表的な例を評価するのに用いられた。混合は、103立方インチ(1690立方センチメートル)のチャンバ容量を持つ「B」BANBURY(登録商標)(Farrell Corp.)ミキサー内で下のように行われた。ゴムの混合は2段階で実施された。第1の段階は、硬化剤なしでマスターバッチを調製する。ミキサーは速度数字2で冷却水を最大限にして電源を入れられた。ゴムのポリマーはミキサーに添加され、30秒間ラムダウン混合された。シリカの半分がミキサーへと添加され、30秒間ラムダウン混合された。シリカの半分とオイルとがミキサーへと添加され、30秒間ラムダウン混合された。硬化剤を除くゴム化合物の残りすべての成分がミキサーへと添加され30秒間ラムダウン混合された。ミキサーはダストダウンされ、15秒間ラムダウン混合され、そしてミキサー速度が数字3まで増加され、さらに15秒間ラムダウン混合された。ゴムはダンプされ(ミキサーから取り出され)、シートが約49℃から55℃に設定されたロールミル上において形成され、そして、室温まで冷まされた。
【0111】
第2の段階において最終混合物が調製された。第1の段階において調製されたゴム化合物は約49℃から55℃のロールミル上に再び充填され、そして硬化剤のパッケージが添加された。硬化剤のパッケージが混合され、それぞれの側において6回切断された。シートは設定されたロールミル上で形成され、そして室温へと冷まされた。
【0112】
【表8】

【0113】
表8の靴底の配合物の成分の市販物の供給源は以下のとおりである:シス−ブタジエンゴム:Goodyear Corporationからのブタジエン1207;天然ゴム:(SMR−L);ニトリルゴム:BayerからのPerbunan NT2445;シリカ:PPGからのHiSil233;Dow Corporationからのジエチレングリコール;BHT:Asia Pacificからのブチル化ヒドロキシトルエン;ZnO:ZincCorpからのKadox720C;ステアリン酸:Witco、CromptonからのIndustreneR;ワックス:Witco CorporationからのSunolite 240;活性化剤:Rhein−ChemieからのRhenofit2555;ディスペンサー:Rhein−ChemieからのAflux12;ホモジナイザー:Rhein−ChemieからのPhenosin N260;硫黄:Rhein−ChemieからのRhenogran S−80;MBTS:FlexsysからのThiofide;MBT:FlexsysからのThiotax MBT;TMTM:Rhein−ChemieからのRhenogran TMTM;シラン:Momentive Performance MaterialsからのSilquest A−1289シラン。
【0114】
本発明の他の実施形態は、ここに開示された本明細書への理解もしくは本発明の実施から当業者には明白であろう。明細書および実施例は例示にすぎないと考えられるべきであり、そして本発明の真の範囲および精神は以下の請求項によって定義されるということが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
G[−C2a−S−S−C(=S)NR (1)
〔式中、Gが5から12個の炭素原子を含有し、任意選択で少なくとも一つのハロゲンを含有する、価数nの飽和した単環式の脂肪族基であるか、または価数nの飽和した単環式のシリコーン[RSiO−][RSiO−]基であり;それぞれのRが独立して水素、もしくは20個までの炭素原子の一価の炭化水素であり;下付文字aの各々が独立して整数であり、ここでaが2から6であり;nが3から6の整数であり;pが0から3の整数である〕
のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物。
【請求項2】
Gが、任意選択で少なくとも一つの塩素を含有する、シクロペンタン、シクロヘキサンもしくはシクロヘプタン基である、請求項1に記載のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物。
【請求項3】
−C2a−S−S−C(=S)NR基がG基と比較して赤道面の位置にあるような異性体が混合物の少なくとも50重量パーセントを占めるような、請求項1に記載のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物の立体化学の混合物。
【請求項4】
それぞれのRが独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリルおよびメチルベンジルからなる群より選択される、請求項1に記載のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物。
【請求項5】
ジメチル−ジチオカルバミン酸S−2−[4,6−ビス−(2−ジメチルチオカルバモイルジスルファニル−エチル)−2,4,6−トリメチル−[1,3,5,2,4,6]トリオキサトリシリナン−2−イル]−エチルスルファニルエステル、ジメチル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジメチルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジフェニル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−3−{3−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−プロピル]−シクロヘキシル}−プロピルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−6−{6−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−ヘキシル]−シクロヘキシル}−ヘキシルスルファニルエステル;ジフェニル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロペンチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;80パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルと少なくとも5パーセントのジベンジルジチオカルバミン酸S−2−{2−[トランス,シス ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルとの混合物;85パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルと少なくとも5パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トランス,シス ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルとの混合物、ならびにそれらの混合物からなる群の少なくとも1種である、請求項1に記載のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物。
【請求項6】
請求項1に記載のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物およびそれらの混合物を調製するためのプロセスであって、
a) フリーラジカルの源の存在下において、ポリ−アルケニル置換シクロアルカンとチオ酸とを反応させてポリ−チオカルボキシラート置換アルキルシクロアルカンをもたらすステップ;
b) ポリチオカルボキシラート置換アルキルシクロアルカンと脱ブロック化剤とを反応させて遊離したポリ−メルカプタン−官能性アルキルシクロアルカンを生成するステップ;
c) 遊離したポリ−メルカプタン−官能性アルキルシクロアルカンとハロゲン化剤とを反応させポリスルフェニルハライド官能性シクロアルカンをもたらすステップ;ならびに
d) ポリスルフェニルハライド官能性アルキルシクロアルカンと式RNC(=S)S〔式中、Rは20個の炭素原子までの一価の炭化水素であり;Mはアルカリ金属カチオンである〕で表わされるアルカリ金属塩とを反応させ、チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物を得るステップ
を含有するプロセス。
【請求項7】
充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物であって、
(i)少なくとも一つの硫黄加硫可能エラストマー;
(ii)少なくとも一つの微粒子充填剤;および
(iii)架橋に効果的な量の、硫黄加硫可能エラストマー(i)の架橋剤としての、少なくとも一つの請求項1に記載のチオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物
を含有する、充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項8】
硫黄加硫可能エラストマー(i)が、シス−1,4−ポリイソプレンゴム、エマルション重合調製スチレン/ブタジエンコポリマーゴム、有機溶液重合調製スチレン/ブタジエンゴム、3,4−ポリイソプレンゴム、イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーゴム、シス−1,4−ポリブタジエンゴム、中程度のビニルポリブタジエンゴム、高ビニルのポリブタジエンゴム、スチレン/イソプレンコポリマー、エマルション重合調製のスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルターポリマーゴム、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴム、20から28パーセントの結合スチレンというスチレン含量を持つエマルション重合調製スチレン/ブタジエン(ESBR)、ならびに30から45パーセントという結合スチレン含量を持つESBRからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項9】
微粒子充填剤(ii)がシランを担持する不活性の多孔性充填剤およびシランと反応性の充填剤からなる群より選択される少なくとも1種であり、ここで充填剤が、硫黄加硫可能エラストマー(i)と反応性である官能性を持つ少なくとも一つのシランと混合されている、請求項7に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項10】
不活性の多孔性充填剤がカーボンであり、シランと反応性である充填剤がシリカである、請求項9に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項11】
シランがシリル化コアポリスルフィドである、請求項9に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項12】
シランがシリル化コアポリスルフィドである、請求項10に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項13】
チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物(iii)中のGが、任意選択で少なくとも1個の塩素を含有しているシクロペンタン、シクロヘキサンもしくはシクロヘプタン基である、請求項7に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項14】
チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物(iii)が、−C2a−S−S−C(=S)NR基がG基と比較して赤道面の位置にあるような異性体が混合物の少なくとも50重量パーセントを占めるような立体化学の混合物である、請求項7に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項15】
チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物(iii)中のそれぞれのRが独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリルおよびメチルベンジルからなる群より選択される、請求項7に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項16】
チオカルバモイルジスルファニル官能性脂環式化合物(iii)が、ジメチル−ジチオカルバミン酸S−2−[4,6−ビス−(2−ジメチルチオカルバモイルジスルファニル−エチル)−2,4,6−トリメチル−[1,3,5,2,4,6]トリオキサトリシリナン−2−イル]−エチルスルファニルエステル、ジメチル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジメチルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジフェニル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロオクチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−3−{3−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−プロピル]−シクロヘキシル}−プロピルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−6−{6−[トリス−(3,5,7−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−ヘキシル]−シクロヘキシル}−ヘキシルスルファニルエステル;ジフェニル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[ビス−(2,4−ジフェニルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロペンチル}−エチルスルファニルエステル;ジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステル;80パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルと少なくとも5パーセントのジベンジルジチオカルバミン酸S−2−{2−[トランス,シス ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルとの混合物;85パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[シス,シス−ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルと少なくとも5パーセントのジベンジル−ジチオカルバミン酸S−2−{2−[トランス,シス ビス−(2,4−ジベンジルチオカルバモイルジスルファニル)−エチル]−シクロヘキシル}−エチルスルファニルエステルとの混合物、ならびにそれらの混合物からなる群の少なくとも1種である、請求項7に記載の充填剤入り硫黄加硫可能エラストマー組成物。
【請求項17】
請求項7に記載の組成物を硬化したもの。
【請求項18】
ウェザー・ストリップ、ホース、ベルト、シール、ガスケットもしくは靴底として提供される、請求項17に記載の組成物を硬化したもの。


【公表番号】特表2012−507559(P2012−507559A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534790(P2011−534790)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/062664
【国際公開番号】WO2010/051396
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】