説明

チオフェンおよびホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害薬としてのその使用

本発明は、式(I):


(式中、R、R、R、R、n、p、およびmは、明細書に記載する通りである)のチオフェン化合物を提供する。この化合物はPI3Kの阻害薬であり、それゆえ増殖性障害、炎症性障害、または心血管障害を処置するのに有用である。PI3Kは、受容体チロシンキナーゼを通じて媒介された各種の分裂促進シグナルの下流で活性化されて、次に細胞生存の延長、細胞周期進行、細胞増殖、細胞代謝、細胞遊走および血管新生を含む、多様な生物学的結果を刺激する。それゆえ、PI3K過剰活性化は、癌、炎症、および心血管疾患を含む、いくつかの過剰増殖性障害、炎症性障害、または心血管障害に関連している。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)は、ホスファチジルイノシトールをイノシトール環の3’位置でリン酸化した脂質キナーゼのファミリである。PI3KはクラスIA、IB、IIおよびIIIを含む複数の遺伝子クラスより成り、これらのクラスのいくつかは、複数のアイソフォームを含有する(非特許文献1に総説)。PI3Kが触媒ドメインおよび調節ドメインを含むヘテロダイマーとして機能するという事実が、このファミリの複雑さを増している。PI3Kファミリは、DNA−PK、ATM、ATR、mTOR、TRRAPおよびSMG1も含むホスファチジルイノシトール3−キナーゼ様キナーゼ(PIKK)として公知の脂質およびセリン/トレオニンプロテインキナーゼのより大型の基と構造的に関連している。
【0002】
PI3Kは、受容体チロシンキナーゼを通じて媒介された各種の分裂促進シグナルの下流で活性化されて、次に細胞生存の延長、細胞周期進行、細胞増殖、細胞代謝、細胞遊走および血管新生を含む、多様な生物学的結果を刺激する(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献1に総説)。それゆえ、PI3K過剰活性化は、癌、炎症、および心血管疾患を含む、いくつかの過剰増殖性障害、炎症性障害、または心血管障害に関連している。
【0003】
PI3K自体における突然変異の活性化(非特許文献3;非特許文献4に総説);RAS(非特許文献5に総説)および上流受容体チロシンキナーゼ(非特許文献6に総説)はもちろんのこと、腫瘍抑制因子PTENにおける突然変異の不活性化(非特許文献7に総説)も含む、構成的PI3Kシグナル伝達を引き起こすいくつかの遺伝子異常がある。これらの遺伝子クラスそれぞれにおける突然変異は、発癌性であることが判明しており、多様な癌で普通に見出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Engelmanら、Nature Review Genetics 7:606−619(2006)
【非特許文献2】Cantley、Science 296:1655−57(2002)
【非特許文献3】Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005)
【非特許文献4】Baderら、Nature Reviews Cancer 5:921−9(2005)
【非特許文献5】Downward Nature Reviews Cancer 3:11−22(2003)
【非特許文献6】Zwickら、Trends in Molecular Medicine 8:17−23(2002)
【非特許文献7】Cullyら、Nature Reviews Cancer 6:184−92(2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明で定義される分子はPI3Kの活性を阻害し、したがって増殖性障害、炎症性障害、または心血管障害の処置に有用であり得る。本発明で定義される分子が治療有用性を有し得る増殖性障害にPI3K経路突然変異が関連している症例は、これに限定されないが、結腸(Samuelsら、Science 304:554(2004);Karakasら、British Journal of Cancer 94:455−59(2006)に総説)、肝臓(Karakasら、British Journal of Cancer 94:455−59(2006)に総説)、腸(Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005)に総説)、胃(Samuelsら、Science 304:554(2004);Karakasら、British Journal of Cancer 94:455−59(2006)に総説)、食道(Phillipsら、International Journal of Cancer 118:2644−6(2006));膵臓(Downward Nature Reviews Cancer 3:11−22(2003)に総説);皮膚(Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005)に総説)、前立腺(Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005)に総説)、肺(Samuelsら、Science 304:554(2004);Karakasら、British Journal of Cancer 94:455−59(2006)に総説)、乳房(Samuelsら、Science 304:554(2004);Isakoffら、Can Res 65:10992−1000(2005);Karakasら、British Journal of Cancer 94:455−59(2006)に総説)、子宮内膜(Odaら、Can Res 65:10669−73(2005);Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005)に総説)、子宮頸部(Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005)に総説);卵巣(Shayestehら、Nature Genetics 21:99−102(1999);Karakasら、British Journal of Cancer 94:455−59(2006)に総説)、精巣(Moulら、Genes Chromosomes Cancer 5:109−18(1992);Di Vizioら、Oncogene 24:1882−94(2005))、血液細胞(Karakasら、British Journal of Cancer 94:455−59(2006)に総説;Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005))、膵臓(Downward Nature Reviews Cancer 3:11−22(2003)に総説)、甲状腺(Downward Nature Reviews Cancer 3:11−22(2003)に総説;Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005)に総説);脳(Samuelsら、Science 304:554(2004);Karakasら、British Journal of Cancer 94: 455−59(2006)に総説)、膀胱(Lopez−Knowlesら、Cancer Research 66:7401−7404(2006);Hennessyら、Nature Reviews Drug Discovery 4:988−1004(2005));腎臓(Downward Nature Reviews Cancer 3:11−22(2003)に総説)ならびに頭部および頸部(Engelmanら、Nature Reviews Genetics 7:606−619(2006)に総説)に由来するものを含む、様々な系統からの良性および悪性腫瘍および癌を含む。
【0006】
本発明で定義される分子が治療有用性を有し得る、PI3K経路シグナル伝達の異常を伴う障害の他のクラスは、これに限定されないが、アレルギー/アナフィラキシー(Rommelら、Nature Reviews Immunology 7:191−201(2007)に総説)、急性および慢性炎症(Ruckleら、Nature Reviews Drug Discovery 5:903−12(2006)に総説;Rommelら、Nature Reviews Immunology 7:191−201(2007)に総説)、関節リウマチ(Rommelら、Nature Reviews Immunology 7:191−201(2007)に総説);自己免疫障害(Ruckleら、Nature Reviews Drug Discovery 5:903−12(2006)に総説)、血栓症(Jacksonら、Nature Medicine 11:507−14(2005);Ruckleら、Nature Reviews Drug Discovery 5:903−12(2006)に総説)、高血圧症(Ruckleら、Nature Reviews Drug Discovery 5:903−12(2006)に総説)、心臓肥大(Proudら、Cardiovascular Research 63:403−13(2004)に総説)、および心不全(Mocanuら、British Journal of Pharmacology 150:833−8(2007)に総説)を含む、炎症性疾患および心血管疾患を含む。
【0007】
明らかに、特に増殖性障害、炎症性障害、または心血管障害の処置に対して良好な治療特性を有する新規PI3K阻害薬を提供することは有益であろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.本発明の化合物の概要:
本発明は、PI3Kの阻害薬であり、したがって増殖性障害、炎症性障害、または心血管障害の処置に有用である化合物を提供する。本発明の化合物は、式I:
【0009】
【化1】

【0010】
によって表されるか、またはその製薬的に許容される塩であり、式中:
は、H、−CN、−COOR1a、または−CON(R1a)であり、
ここでR1aの各出現は独立して、水素または場合により置換されたC1−4脂肪族であり;
は、−Z−R、または−Rであり、ここで:
Zは、場合により置換されたC1−3アルキレン鎖、−O−、−N(R2a)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−C(O)−、−CO−、−C(O)NR2a−、−N(R2a)C(O)−、−N(R2a)CO−、−S(O)NR2a−、−N(R2a)S(O)−、−OC(O)N(R2a)−、−N(R2a)C(O)NR2a−、−N(R2a)S(O)N(R2a)−、または−OC(O)−から選択され、
2aは、水素または場合により置換されたC1−4脂肪族であり、および
は、C1−6脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり、
は、−V−R3c、−T−R3b、または−V−T−R3bであり、ここで:
は、−C(O)−、−NR3a−、−CO−、−C(O)NR3a−、−C(O)NR3aO−、−NR3aC(O)NR3a−、−NR3aS(O)−、または−NR3aS(O)NR3a−であり;
3aの各出現は独立して、水素またはC1−6脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
は、場合により置換されたC−Cアルキレン鎖であり、ここでアルキレン鎖は場合により、−N(R3a)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R3a)−、−S(O)N(R3a)−、−OC(O)N(R3a)−、−N(R3a)C(O)−、−N(R3a)SO−、−N(R3a)C(O)O−、−NR3aC(O)N(R3a)−、−N(R3a)S(O)N(R3a)−、−OC(O)−、もしくは−C(O)N(R3a)−O−によって割り込まれ、またはここでTは、場合により置換された3〜7員脂環式もしくはヘテロシクリル環の一部を形成し;
3bの各出現は独立して、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−N(R3a、−OR3a、−SR3a、−S(O)3a、−C(O)R3a、−C(O)OR3a、−C(O)N(R3a、−S(O)N(R3a、−OC(O)N(R3a、−N(R3a)C(O)R3a、−N(R3a)SO3a、−N(R3a)C(O)OR3a、−N(R3a)C(O)N(R3a、もしくは−N(R3a)SON(R3a、または3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
3cの各出現は独立して、水素またはC1−6脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり、または
3aおよびR3cは、それらが結合される窒素原子とひとまとめにされて、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する場合により置換された4〜7員ヘテロシクリル環を形成し;
の各出現は独立して、−R4a、−T−R4d、または−V−T−R4dであり、ここで:
4aの各出現は、価数および安定性が許す限り、独立して、フッ素、=O、=S、−CN、−NO、−R4c、−N(R4b、−OR4b、−SR4c、−S(O)4c、−C(O)R4b、−C(O)OR4b、−C(O)N(R4b、−S(O)N(R4b、−OC(O)N(R4b、−N(R4e)C(O)R4b、−N(R4e)SO4c、−N(R4e)C(O)OR4b、−N(R4e)C(O)N(R4b、もしくは−N(R4e)SON(R4bであり、またはR4bの2回の出現は、それらが結合される窒素原子とひとまとめにされて、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する場合により置換された4〜7員ヘテロシクリル環を形成し;
4bの各出現は独立して、水素またはC−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
4cの各出現は独立して、C−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
4dの各出現は独立して、水素または3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
4eの各出現は独立して、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり;
の各出現は独立して、−N(R4e)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R4e)−、−S(O)N(R4)−、−OC(O)N(R4e)−、−N(R4e)C(O)−、−N(R4e)SO−、−N(R4e)C(O)O−、−NR4eC(O)N(R4e)−、−N(R4e)SON(R4e)−、−OC(O)−、または−C(O)N(R4e)−O−であり;そして
は、場合により置換されたC−Cアルキレン鎖であり、ここでアルキレン鎖は場合により、−N(R4a)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R4a)−、−S(O)N(R4a)−、−OC(O)N(R4a)−、−N(R4a)C(O)−、−N(R4a)SO−、−N(R4a)C(O)O−、−NR4aC(O)N(R4a)−、−N(R4a)S(O)N(R4a)−、−OC(O)−、または−C(O)N(R4a)−O−によって割り込まれ、またはここでTもしくはその一部は、場合により置換された3〜7員脂環式もしくはヘテロシクリル環の一部を場合により形成し;
nは0〜6であり;
mは、0、1、または2であり;
pは、0、1、または2であり;そして
Xは、
(a)RがHであるとき、Rは、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;そして
(b)式Iの化合物が:
(i)2−チオフェンカルボン酸、3−(4−クロロフェニル)−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−;
(ii)2−チオフェンカルボン酸、3−(4−クロロフェニル)−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−;
(iii)3−チオフェンカルボニトリル、5−ベンゾイル−4−(メチルアミノ)−2−(4−モルホリニル)−;
(iv)アセトアミド、N−[2−ベンゾイル−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−3−チエニル]−2−ヨード−
(v)アセトアミド、N−[2−ベンゾイル−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−3−チエニル]−2−クロロ−;
(vi)アセトアミド、N−[2−ベンゾイル−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−3−チエニル]−2−クロロ−N−メチル−;または
(vii)2−プロペン酸(Propenoid acid)、3−[3−(4−クロロフェニル)−5−(4−モルホリニル)−2−チエニル]−、メチルエステル以外である、という条件で、O、S、C(O)、S(O)、S(O)、−CHF、−CF、または−CHOHである。
【0011】
2.化合物および定義:
本発明の化合物は、上の式Iで一般に記載される化合物を含み、本明細書で開示するクラス、サブクラス、および種によってさらに説明される。本明細書で使用する場合、別途指摘しない限り以下の定義が適用されるものとする。
【0012】
本明細書に記載する場合、本発明の化合物は、一般に上で説明される、または本発明の特定のクラス、サブクラス、および種によって例示されるような1個以上の置換基によって場合により置換され得る。「場合により置換された」という句は、「置換または非置換された」という句と互換的に使用されることが認識されるであろう。一般に、「置換された」という用語は、「場合により」という用語が先行するか否かにかかわらず、置換が安定的なまたは化学的に実現可能な化合物を生じるという条件で、指定した部分の水素ラジカルが規定した置換基のラジカルで置換されることを意味する。「置換可能な」という用語は、指定した原子に関して使用されるときに、水素ラジカルが原子に結合しており、水素原子が好適な置換基のラジカルによって置換可能であることを意味する。別途指摘しない限り、「場合により置換された」基は、基の各置換可能な位置に置換基を有し得、任意の所与の構造における1を超える位置が、指定した基から選択される1個を超える置換基によって置換され得るとき、置換基は各位置で同じでも異なっていてもよい。本発明によって考えられる置換基の組み合せは好ましくは、安定的なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらす組み合せである。
【0013】
安定的な化合物または化学的に実現可能な化合物は、水分の非存在下もしくは他の化学反応性条件下で、約−80℃〜約40℃の温度に維持されたときに少なくとも一週間は化学構造が実質的に変化を受けない化合物、または患者への治療的または予防的投与に有用であるために十分な長さにわたってその完全性を維持する化合物である。
【0014】
「1個以上の置換基」という句は、本明細書で使用する場合、安定性および化学的実現可能性の上の条件が満足されるという条件で、利用できる結合部位の数に基づいて可能である1個から最大数の置換基と同数のいくつかの置換基を指す。
【0015】
本明細書で使用する場合、「独立して選択される」という用語は、単一化合物中で与えられた変数の複数の例で、同じまたは異なる値が選択され得ることを意味する。
【0016】
本明細書で使用する場合、「窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜7員飽和、部分飽和、もしくは芳香族単環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜10員部分飽和、もしくは芳香族2環系」は、脂環式、複素環式、アリールおよびヘテロアリール環を含む。
【0017】
本明細書で使用する場合、「芳香族」という用語は、一般に下および本明細書に記載するようなアリールおよびヘテロアリール基を含む。
【0018】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書で使用する場合、場合により置換された直鎖もしくは分枝C1−12炭化水素、または完全に飽和しているか、もしくは1個以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない環式C1−12炭化水素(本明細書では「炭素環」、「脂環式」、「シクロアルキル」、もしくは「シクロアルケニル」とも呼ばれる)を意味する。例えば好適な脂肪族基は、場合により置換された直鎖、分枝または環式アルキル、アルケニル、アルキニル基およびそのハイブリッド、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニルを含む。別途指定しない限り、各種の実施形態において、脂肪族基は、1〜12個の、1〜10個の、1〜8個の、1〜6個の、1〜4個の、1〜3個の、または1〜2個の炭素原子を有する。
【0019】
「アルキル」という用語は、単独でまたはより大きい部分の一部として使用され、1〜12個の、1〜10個の、1〜8個の、1〜6個の、1〜4個の、1〜3個の、または1〜2個の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0020】
「アルケニル」という用語は、単独でまたはより大きい部分の一部として使用され、少なくとも1個の2重結合を有し、2〜12個の、2〜10個の、2〜8個の、2〜6個の、2〜4個の、または2〜3個の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0021】
「アルキニル」という用語は、単独でまたはより大きい部分の一部として使用され、少なくとも1個の3重結合を有し、2〜12個の、2〜10個の、2〜8個の、2〜6個の、2〜4個の、または2〜3個の炭素原子を有する、場合により置換された直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0022】
「脂環式」、「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」、または「炭素環式」という用語は、単独でまたはより大きい部分の一部として使用され、3〜約14個の環炭素原子を有する、場合により置換された飽和または部分不飽和環式脂肪族環系を指す。いくつかの実施形態において、脂環式基は、3〜8個または3〜6個の環炭素原子を有する、場合により置換された単環式炭化水素である。脂環式基は、制限なく、場合により置換されたシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、またはシクロオクタジエニルを含む。「脂環式」、「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」、または「炭素環式」という用語は、6〜12個の、6〜10個の、または6〜8個の環炭素原子を有する、場合により置換された架橋または縮合2環式の環も含み、ここで2環式系の任意の個々の環は3〜8個の環炭素原子を有する。
【0023】
「シクロアルキル」という用語は、約3〜約10個の環炭素原子の、場合により置換された飽和環系を指す。例示的な単環式シクロアルキル環は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルを含む。
【0024】
「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素間2重結合を含有し、約3〜約10個の炭素原子を有する、場合により置換された非芳香族単環式または多環式環系を指す。例示的な単環式シクロアルケニル環は、シクロペンチル、シクロヘキセニル、およびシクロヘプテニルを含む。
【0025】
「ハロ脂肪族」、「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」という用語は、場合によっては1個以上のハロゲン原子によって置換された脂肪族、アルキル、アルケニルまたはアルコキシ基を指す。本明細書で使用する場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。「フルオロ脂肪族」という用語は、ハロゲンがフルオロであるハロ脂肪族を指し、完全フッ素置換脂肪族基を含む。フルオロ脂肪族の例は、制限なく、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,1,2−トリフルオロエチル、1,2,2−トリフルオロエチル、およびペンタフルオロエチルを含む。
【0026】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素の1つ以上を指す(窒素、硫黄、リン、またはケイ素の任意の酸化形;任意の塩基性窒素の4級化形;または複素環式環の置換可能な窒素、例えばN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルのような)、NH(ピロリジニルのような)またはNR(N−置換ピロリジニルのような)を含む)。
【0027】
「アリール」および「アラ−」という用語、例えば「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」は、単独でまたはより大きい部分の一部として使用され、1〜3個の芳香環を含む、場合により置換されたC6−14芳香族炭化水素部分を指す。好ましくは、アリール基はC6−10アリール基である。アリール基は、制限なく、場合により置換されたフェニル、ナフチル、またはアントラセニルを含む。「アリール」および「アラ−」という用語は、本明細書で使用する場合、アリール環が1個以上の脂環式環に融合されて場合により置換された環式構造、例えばテトラヒドロナフチル、インデニル、またはインダニル環を形成する基も含む。「アリール」という用語は、「アリール基」、「アリール環」、および「芳香環」という用語と互換的に使用され得る。
【0028】
「アラルキル」または「アリールアルキル」基は、アルキル基に共有結合されたアリール基を含み、そのどちらかは独立して、場合により置換されている。好ましくは、アラルキル基は、制限なくベンジル、フェネチル、およびナフチルメチルを含む、C6−10アリールC1−6アルキルである。
【0029】
「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ−」という用語、例えば「ヘテロアラルキル」、または「ヘテロアラルコキシ」は、単独でまたはより大きい部分の一部として使用され、5〜14個の環原子、好ましくは5、6、9、または10個の環原子を有する;環配列で共有される6、10、または14個のπ電子を有する;および炭素原子に加えて、1〜5個のヘテロ原子を有する;基を指す。ヘテロアリール基は、単、2、3、または多環式であり、好ましくは単、2、または3環式、さらに好ましくは単または2環式である。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化形、および塩基性窒素の任意の4級化形を含む。例えばヘテロアリールの窒素原子は、塩基性窒素であり得、対応するN−オキシドにも場合により酸化され得る。ヘテロアリールはヒドロキシル基によって置換されるとき、その対応する互変異性体も含む。「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ−」という用語は、本明細書で使用する場合、ヘテロ芳香環が1個以上のアリール、脂環式、またはヘテロシクロ脂環式環に縮合されている基も含む。ヘテロアリール基の非制限的な例は、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフシリジニル、プテリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンを含む。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「ヘテロ芳香族」という用語と互換的に使用され得、その用語のいずれも場合により置換された環を含む。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールによって置換されたアルキル基を指し、ここでアルキル部分およびヘテロアリール部分は独立して場合により置換される。
【0030】
本明細書で使用する場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」、および「複素式環」という用語は、互換的に使用され、飽和または不飽和のどちらかであり、上で定義したように、炭素原子に加えて1個以上の、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を有する、安定な3〜8員単環式または7〜10員2環式複素環式部分を指す。複素環の環原子に関して使用するとき、「窒素」という用語は置換窒素を含む。一例として、酸素、硫黄または窒素から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和環において、窒素はN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルのような)、NH(ピロリジニルのような)、またはNR(N−置換ピロリジニルのような)であり得る。
【0031】
複素環式環は、安定な構造を生じる任意のヘテロ原子または炭素原子にてそのペンダント基に結合することが可能であり、環原子のいずれも場合により置換されることが可能である。このような飽和または部分不飽和複素環式ラジカルは、制限なく、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペリジニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびチアモルホリニルを含む。ヘテロシクリル基は、単、2、3、または多環式、好ましくは単、2、または3環式、さらに好ましくは単または2環式である。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルによって置換されたアルキル基を指し、ここでアルキルおよびヘテロシクリル部分は独立して場合により置換される。さらに複素環式環は、複素環式環が1個以上のアリール環に縮合されている基も含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、「部分不飽和」という用語は、環原子間に少なくとも1個の2重または3重結合を含む環部分を指す。「部分不飽和」という用語は、複数の不飽和部位を有する環を含むことを意図するが、本明細書で定義するように、芳香族(例えばアリールまたはヘテロアリール)部分を含むことを意図しない。
【0033】
「アルキレン」という用語は、2価アルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち−(CH−であり、ここでnは正の整数、好ましくは1〜6、1〜4、1〜3、1〜2、または2〜3である。場合により置換されるアルキレン鎖は、1個以上のメチレン水素原子が置換基によって場合により置換されるポリメチレン基である。好適な置換基は、置換脂肪族基について後述する置換基を含み、本明細書に記載する置換基も含む。アルキレン基の2個の置換基がひとまとめにされて環系を形成し得ることが認識されるであろう。ある実施形態において、2個の置換基をひとまとめにして3〜7員環を形成することができる。置換基は、同じまたは異なる原子に存在することができる。
【0034】
アルキレン鎖も官能基によって場合により割り込まれることが可能である。アルキレン鎖は、内部メチレン単位が官能基によって割り込まれたときに、官能基によって「割り込まれる」。好適な「割り込み官能基」の例は、本明細書および本明細書の請求項に記載されている。
【0035】
明瞭にする目的で、例えば上述のアルキレン鎖リンカーを含む本明細書に記載するすべての2価基は、左から右へ読み取られるものとし、変数が現れる式または構造は対応して左から右へ読み取られる。
【0036】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなど)基またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどを含む)基は、1個以上の置換基を含有し得、それゆえ「場合により置換」され得る。上および本明細書で定義する置換基に加えて、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素原子における好適な置換基は、
−ハロ、−NO、−CN、−R、−C(R)=C(R、−C≡C−R、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)N(R、−NRC(S)N(R、−N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)R、−NRCO、−NRSO、−NRSON(R、−O−C(O)R、−O−CO、−OC(O)N(R、−C(O)R、−C(S)R、−CO、−C(O)−C(O)R、−C(O)N(R、−C(S)N(R、−C(O)N(R)−OR、−C(O)N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R)−C(O)R、−C(=NR)−N(R、−C(=NR)−OR、−N(R)−N(R、−C(=NR)−N(R)−OR、−C(R)=N−OR、−P(O)(R、−P(O)(OR、−O−P(O)−OR、および−P(O)(NR)−N(Rも含み、それらから一般に選択され、ここでRは独立して、水素もしくは場合により置換された脂肪族、アリール、ヘテロアリール、脂環式、もしくはヘテロシクリル基であり、またはRの2回の独立した出現はその割り込み原子とひとまとめにされて、場合により置換された5〜7員アリール、ヘテロアリール、脂環式、またはヘテロシクリル環を形成する。各Rは、場合により置換された脂肪族、アリール、ヘテロアリール、脂環式、またはヘテロシクリル基である。
【0037】
脂肪族もしくはヘテロ脂肪族、または非芳香族炭素環式(carbycyclic)もしくは複素環式環は、1個以上の置換基を含有し得、それゆえ「場合により置換され」得る。上および本明細書で別途定義しない限り、脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基の、または非芳香族炭素環式もしくは複素環式環の飽和炭素における好適な置換基は、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素について上に挙げた置換基から選択され、さらに以下を含む:=O、=S、=C(R、=N−N(R、=N−OR、=N−NHC(O)R、=N−NHCO=N−NHSOまたは=N−Rであり、ここでRは上で定義され、各Rは独立して、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基から選択される。
【0038】
上および本明細書で定義した置換基に加えて、非芳香族複素環式環の窒素における任意の置換基も、−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)、−S(O)N(R、−C(S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−N(R)S(O)を含み、一般にそれらから選択される;ここで各Rは上で定義される。ヘテロアリールまたは非芳香族複素環式環の環窒素原子も酸化されて、対応するN−ヒドロキシまたはN−オキシド化合物を形成し得る。酸化環窒素原子を有する、このようなヘテロアリールの非制限的な例は、N−オキシドピリジルである。
【0039】
上で詳説したように、いくつかの実施形態において、Rの2回の独立した出現(または本明細書および請求項で同様に定義したその他の変数)は、その割り込み原子とひとまとめにされて、3〜13員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する3〜12員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される単環式または2環式環を形成する。
【0040】
の2回の独立した出現(または本明細書および請求項で同様に定義したその他の変数)が、その割り込み原子とひとまとめにされたときに形成される例示的な環は、これに限定されないが、以下を含む:a)同一の原子に結合され、その原子とひとまとめにされて環、例えばN(R(ここでRの両方の出現は窒素原子とひとまとめにされて、ピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、またはモルホリン−4−イル基を形成する)を形成する、Rの2回の独立した出現(または本明細書および請求項で同様に定義したその他の変数);およびb)異なる原子に結合され、これらの原子の両方とひとまとめにされて環(例えばここでフェニル基がOR
【0041】
【化2】

【0042】
の2回の出現によって置換され、Rのこれらの2回の出現はそれらが結合された酸素原子とひとまとめにされて、縮合6員酸素含有環:
【0043】
【化3】

【0044】
を形成する)を形成する、Rの2回の独立した出現(または本明細書および請求項で同様に定義したその他の変数)。Rの2回の出現(または本明細書および請求項で同様に定義したその他の変数)が割り込み原子とひとまとめにされたときに、多様なその他の環(例えばスピロ環および架橋環)が形成されることと、上で詳説した例が制限的であることを意図しないこととが認識されるであろう。
【0045】
別途指摘しない限り、本明細書で示す構造は、構造のすべての異性体(例えば該構造のエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または立体配座))形;例えば各不斉中心のRおよびS立体配置、(Z)および(E)2重結合異性体、ならびに(Z)および(E)配座異性体を含む。したがって本発明の化合物の、単独の立体化学異性体はもちろんのこと、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または立体配座)混合物も本発明の範囲内である。別途指摘しない限り、本発明の化合物のすべての互変異性形は、本発明の範囲内である。さらに別途指摘しない限り、本明細書に示す構造は、1個以上の同位体濃縮原子の存在のみが異なる化合物を含むことも意図される。例えば重水素もしくは3重水素による水素の置換または13C富化炭素または14C富化炭素による炭素の置換を除いて、本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0046】
開示した化合物が少なくとも1個のキラル中心を有するとき、本発明は、対応する光学異性体を含まない阻害剤の1つのエナンチオマー、阻害剤のラセミ混合物およびその対応する光学異性体に関連する1つのエナンチオマーが濃縮された混合物を含むことが理解されるべきである。混合物で1つのエナンチオマーがその光学異性体と比較して高濃度であるとき、該混合物は例えば、少なくとも50%、75%、90%、95%、99%または99.5%のエナンチオマー過剰を含有する。
【0047】
本発明のエナンチオマーは、当業者に公知の方法によって、例えば結晶化によって分離され得るジアステレオマー塩の形成;例えば結晶化、気液または液体クロマトグラフィーによって分離され得るジアステレオマー誘導体または複合体の形成;1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、例えば酵素的エステル化;またはキラル環境下での、例えばキラル支持体、例えばキラルリガンドが結合したシリカでのもしくはキラル溶媒の存在下での気液もしくは液体クロマトグラフィーによって分割され得る。所望のエナンチオマーが上述の分離手順の1つによって別の化学実体に変換される場合、所望のエナンチオマー形を遊離するためにさらなるステップが必要である。または、光学活性試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成によって、または不斉変換により1つのエナンチオマーを他のエナンチオマーに変換することによって、特定のエナンチオマーが合成され得る。
【0048】
開示された化合物が少なくとも2個のキラル中心を有するとき、本発明は、他のジアステレオマーを含まないジアステレオマー、他のジアステレオマー対を含まないジアステレオマーの対、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマー対の混合物、一つのジアステレオマーが残りのジアステレオマーと比較して濃縮されているジアステレオマーの混合物および1つのジアステレオマー対が残りのジアステレオマー対と比較して濃縮されているジアステレオマー対の混合物を含む。混合物で1つのジアステレオマーまたはジアステレオマー対が残りのジアステレオマーまたはジアステレオマー対と比較して濃縮されているとき、混合物は示したまたは引用したジアステレオマーまたはジアステレオマー対が化合物の残りのジアステレオマーまたはジアステレオマー対と比較して、例えば少なくとも50%、75%、90%、95%、99%または99.5%のモル過剰で濃縮される。
【0049】
ジアステレオマー対は、当業者に公知の方法、例えばクロマトグラフィーまたは結晶化によって分離され得、各対の個々のエナンチオマーは上述のように分離され得る。本明細書に開示する化合物の調製で使用される前駆体のジアステレオマー対をクロマトグラフィーによって分離するための具体的な手順を、本明細書の実施例に示す。
3.例示的な化合物の説明:
ある実施形態において、一般式Iの化合物では、1個以上の置換基は:
(a)XはOである;
(b)RはCNである;
(c)Rは、場合により置換された6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールである;
(d)Rは、V−R3cまたは−V−T−R3bから選択される;
(e)nは0〜2である;または
(f)Rは−R4aである、から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態において、Rは、−CON(R3a)(R3c)、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)、−COOR3c;−CON(R3a)−T−R3b、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)−T−R3b、または−COOR3c−T−R3bから選択され、ここでTは、−O−、−NHC(O)−、−C(O)NH−または−NH−の1回の出現により場合により割り込まれる、場合により置換されたC−Cアルキレンである。
【0051】
他の実施形態において、Rは、Rの1〜4回の独立した出現によって場合により置換され、ここでRは、−R7a、−T−R7d、または−V−T−R7dであり、および:
7aの各出現は独立して、ハロゲン、−CN、−NO、−R7c、−N(R7b、−OR7b、−SR7c、−S(O)7c、−C(O)R7b、−C(O)OR7b、−C(O)N(R7b、−S(O)N(R7b、−OC(O)N(R7b、−N(R7e)C(O)R7b、−N(R7e)SO7c、−N(R7e)C(O)OR7b、−N(R7e)C(O)N(R7b、もしくは−N(R7e)SON(R7bであり、またはR7bの2回の出現は、それらが結合される窒素原子とひとまとめにされて、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する場合により置換された4〜7員ヘテロシクリル環を形成し;
7bの各出現は独立して、水素またはC−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
7cの各出現は独立して、C−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
7dの各出現は独立して、水素または3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
7eの各出現は独立して、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり;
の各出現は独立して、−N(R7e)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R7e)−、−S(O)N(R7e)−、−OC(O)N(R7e)−、−N(R7e)C(O)−、−N(R7e)SO−、−N(R7e)C(O)O−、−NR7eC(O)N(R7e)−、−N(R7e)SON(R7e)−、−OC(O)−または−C(O)N(R7e)−O−であり;そして
は、場合により置換されたC−Cアルキレン鎖であり、ここでアルキレン鎖は、−N(R7a)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R7a)−、−S(O)N(R7a)−、−OC(O)N(R7a)−、−N(R7a)C(O)−、−N(R7a)SO−、−N(R7a)C(O)O−、−NR7aC(O)N(R7a)−、−N(R7a)S(O)N(R7a)−、−OC(O)−、または−C(O)N(R7a)−O−によって場合により割り込まれ、またはここでTもしくはその一部は、場合により置換された3〜7員脂環式またはヘテロシクリル環の一部を場合により形成する。
【0052】
本発明のまた他の実施形態において、一般式Iの化合物に関して、XはOであり、RはCNであり、化合物は式I−Aによって表される:
【0053】
【化4】

【0054】
ここでR、R、Rおよびnは一般に上述した通りであり、上および本明細書で述べたクラスおよびサブクラスに含まれる。
【0055】
いくつかの実施形態において、式I−Aの化合物に関して:
は、場合により置換された3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールであり;
は、V−R3cまたは−V−T−R3bから選択され;
nは0〜2であり;そして
は−R4aである。
【0056】
他の実施形態において、式I−Aの化合物に関して:
は、場合により置換された6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールであり;ここでRは、Rの1〜4回の独立した出現によって場合により置換され、ここでRは、−R7a、−T−R7d、または−V−T−R7dであり、および:
7aの各出現は独立して、ハロゲン、−CN、−NO、−R7c、−N(R7b、−OR7b、−SR7c、−S(O)7c、−C(O)R7b、−C(O)OR7b、−C(O)N(R7b、−S(O)N(R7b、−OC(O)N(R7b、−N(R7e)C(O)R7b、−N(R7e)SO7c、−N(R7e)C(O)OR7b、−N(R7e)C(O)N(R7b、または−N(R7e)SON(R7bであり;
7bの各出現は独立して、水素またはC−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり、またはR7bの2回の出現は、それらが結合された窒素原子とひとまとめにされて、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する場合により置換された4〜7員ヘテロシクリル環を形成し;
7cの各出現は独立して、C−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
7dの各出現は独立して、水素または3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
7eの各出現は独立して、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり;
の各出現は独立して、−N(R7e)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R7e)−、−S(O)N(R7e)−、−OC(O)N(R7e)−、−N(R7e)C(O)−、−N(R7e)SO−、−N(R7e)C(O)O−、−NR7eC(O)N(R7e)−、−N(R7e)SON(R7e)−、−OC(O)−または−C(O)N(R7e)−O−であり;そして
は、場合により置換されたC−Cアルキレン鎖であり、ここでアルキレン鎖は、−N(R7a)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R7a)−、−S(O)N(R7a)−、−OC(O)N(R7a)−、−N(R7a)C(O)−、−N(R7a)SO−、−N(R7a)C(O)O−、−NR7aC(O)N(R7a)−、−N(R7a)S(O)N(R7a)−、−OC(O)−、または−C(O)N(R7a)−O−によって場合により割り込まれ、またはここでTもしくはその一部は、場合により置換された3〜7員脂環式またはヘテロシクリル環の一部を場合により形成し;
は、−CON(R3a)(R3c)、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)、−COOR3c、−CON(R3a)−T−R3b、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)−T−R3b、またはCOOR3c−T−R3bから選択され、ここでTは、−O−、−NHC(O)−、−C(O)NH−または−NH−の1回の出現により場合により割り込まれる、場合により置換されたC−Cアルキレンであり、R3aは、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり、R3bは、水素、ハロゲン、OR3a、または6〜10員アリールまたは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり、およびR3cは、水素、C1−6脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールであり;そして
nは0〜2である。
【0057】
また他の実施形態において、式I−Aの化合物に関して:
は、ハロゲン、−CN、−NO、−R9c、−N(R9b、−OR9b、−SR9c、−S(O)9c、−C(O)R9b、−C(O)OR9b、−C(O)N(R9b、−S(O)N(R9b、−OC(O)N(R9b、−N(R9e)C(O)R9b、−N(R9e)SO9c、−N(R9e)C(O)OR9b、−N(R9e)C(O)N(R9b、または−N(R9e)SON(R9bの1〜3回の独立した出現によって置換されたフェニル基であり;
は、−CON(R3a)(R3c)、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)、または−COOR3cから選択され、ここでR3aは、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり、R3cは、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり;そして
nは0である。
【0058】
なお他の実施形態において、式I−Aの化合物に関して:
は、ハロ、C1−3アルキル、CN、C1−3ハロアルキル、−OC1−3アルキル、−OC1−3ハロアルキル、−NHC(O)C1−3アルキル、−NHC(O)NHC1−3アルキル、NHS(O)1−3アルキル、または−COHの1〜3回の独立した出現によって置換されたフェニル基である。
【0059】
表1は下に式Iのある例示的化合物を示す:
【0060】
【表1−1】

【0061】
【表1−2】

【0062】
【表1−3】

【0063】
【表1−4】

【0064】
【表1−5】

【0065】
【表1−6】

【0066】
【表1−7】

【0067】
【表1−8】

【0068】
【表1−9】

【0069】
【表1−10】

【0070】
【表1−11】

【0071】
【表1−12】

【0072】
4 一般合成方法および中間体:
本発明の化合物は、当業者に公知の方法によっておよび/または下に示すスキームおよび下記合成実施例の参照によって調製することができる。例示的な合成経路は、下のスキーム1〜8および実施例に示す。
【0073】
スキーム1:3置換4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミドの一般合成経路
【0074】
【化5】

【0075】
上のスキーム1は、式(vi)の化合物を調製するための一般経路を示す。スキーム1に示すように、アミドiのチオアミドiiへの変換は、THF中で好適な試薬、例えばローソン試薬を使用することによって実現できる(方法A)。チオアミドiiは、ACN中で適切な塩基、例えばDIPEAの存在下で塩化アシルと結合させて(方法B)式iiiの化合物を得ることができ、次に式iiiの化合物を好適なα−ハロアセテートエステル、例えばヨードエチルアセテートまたはブロモエチルアセテートと、マイクロ波照射を使用するワンポットプロセスで結合させて、置換チオフェンivを得る(方法C)。エステルivは、共溶媒、例えばTHFおよびMeOHを使用する水性条件下で好適な塩基、例えばNaOHを用いて加水分解させて、カルボン酸vを得ることができる(方法D)。アミドviは、DCM中で好適なカップリング剤、例えばEDCIおよびHOBTを使用して化合物vとアンモニアをカップリングすることによって得ることができる(方法E)。
【0076】
スキーム2:3置換N−[4−シアノ−5−モルホリン−4−イル−2−チエニル]尿素の一般合成経路
【0077】
【化6】

【0078】
上のスキーム2は、式(viii)の化合物を調製するための一般経路を示す。スキーム2に示すように、酸vのアジドviiへの変換は、THF中で好適な塩基、例えばTEAの存在下にて、適切なアジド源、例えばDPPAを使用することによって達成できる(方法F)。高温のジオキサン中でのアジドviiのアンモニアによる処理によって、式viiiの尿素が得られる(方法G)。
【0079】
スキーム3:3置換4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミドの代替合成経路
【0080】
【化7】

【0081】
上のスキーム3は、式(vi)の化合物を調製するための代替経路を示す。スキーム3に示すように、チオアミドiiを高温のエタノール中で好適な塩基、例えばピペリジンの存在下にてアルデヒドで処理してixを得(方法H)、ixをマイクロ波照射下にてACN中でエチルヨードアセテートおよび好適な塩基、例えばDIPEAによって処理してジヒドロチオフェンxを得る(方法I)。高温のトルエン中でのxの好適な試薬、例えばDDQによる酸化によって、チオフェンivを得(方法J)、方法DおよびEを使用してアミドviを得ることができる。
【0082】
スキーム4:3置換チオフェン−2−カルボン酸の一般合成経路
【0083】
【化8】

【0084】
上のスキーム4は、式(xiv)の化合物を調製するための一般経路を示す。スキーム4に示すように、チオアミドiiをマイクロ波照射下にてトリエチルオルトホルメートの存在下でモルホリンによって処理して、xiを得る(方法K)。xiのエチルヨードアセテートとの続いての反応によってチオフェンxiiを得(方法L)、xiiを方法Lで報告したように加水分解してxiiiを得る。低温のTHF中でのxiiiの好適なリチオ化試薬、例えばn−BuLiによる処理と、続いてのアルデヒドとの反応によって、式xivの化合物を得る(方法M)。
【0085】
スキーム5:3置換N−メチル−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミドの一般合成経路
【0086】
【化9】

【0087】
上のスキーム5は、式(xxiv)の化合物を調製するための一般経路を示す。スキーム5に示すように、xviを高温のMeOH中で好適な塩基、例えばTEAの存在下でメチルチオアセテートによって処理してxviiを得(方法N)、DCM中で好適な酸化剤、例えばm−CPBAを使用してxviiを酸化して、副生成物スルホキシドxviiiに汚染されているスルホンxixにする(方法O)。スルホンの置換を高温のTHF中でモルホリンを使用して達成して(方法P)xxを得、ACN中で適切な試薬、例えばヨウ化メチレンおよび亜硝酸アミルを使用してxxにサンドマイヤー反応を受けさせる(方法Q)。方法Dに記載した条件を使用して生成されたヨウ化物xxiの加水分解によってカルボン酸xxiiを得、DMF中で好適な試薬、例えばHATU、および適切な塩基、例えばDIPEAを使用してxxiiをメチルアミンとカップリングしてアミドxxiiiを得る(方法R)。後者の化合物のボロン酸とのスズキカップリングは、高温のDME−水混合物中での好適な塩基、例えば炭酸ナトリウムの存在下で好適な触媒、例えばPd(PPhを使用して達成され、式xxivの化合物を得る(方法S)。
【0088】
スキーム6:3置換4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミドの代替合成経路
【0089】
【化10】

【0090】
上のスキーム6は、式(vi)の化合物を調製するための代替経路を示す。スキーム6で示すように、アミンxxに適切な条件、例えばACN中の亜硝酸tert−ブチルおよびCuBrを使用して、サンドマイヤー反応を受けさせて臭化物xxvを得(方法T)、マイクロ波照射下のDME−EtOH混合物中にて好適な塩基、例えば炭酸カリウムの存在下でスズキ条件、例えばPd(PPhを使用してxxvをボロン酸とカップリングして、式xxviの化合物を得(方法U)、方法DおよびEに記載するように酸vを介してxxviをアミドviに変換する。
【0091】
スキーム7:3置換4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミドの代替合成経路
【0092】
【化11】

【0093】
上のスキーム7は、式(vi)の化合物を調製するための代替経路を示す。スキーム7に示すように、低温のTHF中にて好適な塩基、例えばn−BuLiの存在下で塩化アシルをシアノ酢酸とカップリングして、ニトリルxxviiを得(方法V)、xxviiにDMSO中での好適な塩基、例えば水素化ナトリウムを使用する二硫化炭素との反応と、続いての適切な試薬、例えばMeIによるアルキル化を受けさせて、式xxviiiの化合物を得る(方法W)。方法Nに記載するような、xxviiiのエチルチオアセテートによる処理と、方法Oに記載するような、続いての酸化によって、スルホンxxxを得る。方法Pに記載するようなスルホンxxxのモルホリンによる置換によって式ivの化合物を得、方法DおよびEを使用してivをアミドに変換する。
【0094】
スキーム8:N置換4−シアノ−3−(アリール)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミドの一般合成経路
【0095】
【化12】

【0096】
上のスキーム8は、式(xxxii)の化合物を調製するための一般経路を示す。スキーム8に示すように、DMF中で好適な条件、例えばHBTU、NMOを使用してカルボン酸xxxiをアミンとカップリングして、式xxxiiの置換アミドを得ることができる(方法X)。
【0097】
スキーム9:N置換4−シアノ−3−(アリール)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミドの代替合成経路
【0098】
【化13】

【0099】
上のスキーム9は、式(xxxiv)の化合物を調製するための代替経路を示す。カルボン酸xxxiは樹脂結合活性化エステルxxxiiiを形成して(方法Y)、xxxiiiを置換ベンジルアミドとカップリングさせて式xxxivの置換アミドを得ることができる(方法Z)。
【0100】
スキーム10:N置換4−シアノ−3−(アリール)−5−モルホリン−4−イル−2−チエニル尿素の一般合成経路
【0101】
【化14】

【0102】
上のスキーム10は、式(xxxv)の化合物を調製するための一般経路を示す。スキーム10に示すように、カルボン酸xxxiを高温のトルエン中にてDPPA、または他の好適な試薬によって処理して中間体イソシアナートを得、次に好適な塩基、例えばTEAの存在下でアミンによって処理して、式xxxvの尿素を得る(方法AA)。
【0103】
スキーム11:4−シアノ−3−アリール−N−ヒドロキシ−5−モルホリン−4−イル−チオフェン−2−カルボキサミドの一般合成経路
【0104】
【化15】

【0105】
上のスキーム11は、式(xxxvii)の化合物を調製するための一般経路を示す。スキーム11に示すように、カルボン酸xxxiをDMF中で好適な条件、例えばHATU、iPrNEtを使用してO−(テトラヒドロピラン−2−イル)ヒドロキシルアミンとカップリングして、式xxxviの置換ヒドロキシルアミンを得ることができ(方法B)、DCM中で適切な試薬、例えばTFAを使用してxxxviを脱保護して式xxxviiのヒドロキサム酸を得ることができる(方法AC)。
【0106】
スキーム12:置換4−シアノ−3−アリール−5−(モルホリン−4−イル)チオフェン−2−カルボキサミドの代替合成経路
【0107】
【化16】

【0108】
上のスキーム12は、式(xliii)の化合物を調製するための一般経路を示す。スキーム12に示すように、アミンxviiをアセトニトリル中で亜硝酸イソアミル、または他の好適な試薬、続いてハロゲン源、例えばヨウ化メチレンによって処理して、ヨードチオフェンxxxviiiを得る(方法Q)。エステルの加水分解を水性条件にて好適な塩基、例えば水酸化ナトリウムを使用して達成して、カルボン酸xxxixを得ることができる(方法D)。アミドxlの生成は、DCM中で適切なカップリング試薬、例えばEDCIおよびHOBTを使用して、続いてのアンモニア水による処理によって実施される(方法E)。チオエーテルxlは、DCM中で好適な酸化剤、例えばmCPBAを使用してスルホンに酸化することができる(方法O)。後者の化合物に、マイクロ波照射下でDME/DMA溶媒混合物中でアリールボロン酸、Pd源、例えばPd(dba)、リガンド、例えばdpePhos、および塩基、例えばリン酸カリウムの適切な組み合せを用いたスズキカップリングを受けさせて、式xliiの高度中間体を得る(方法AD)。スルホンxliiの純粋な置換モルホリンによる高温での処理によって、式xliiiのアミドが得られる(方法AE)。
【0109】
4.使用、製剤および投与
上述のように、本発明は、PI3K酵素の阻害薬として有用である化合物を提供し、それゆえ本化合物は、PI3Kに媒介される増殖性障害、炎症性障害、または心血管障害、例えば腫瘍および/または癌性細胞増殖の処置に有用である。特に化合物は、これに限定されないが、肺および気管支、前立腺、乳房、膵臓、結腸および直腸、甲状腺、肝臓および肝内胆管、肝細胞、胃、神経膠腫/神経膠芽腫、子宮内膜、黒色腫、腎臓、および腎盂、膀胱、子宮体部(utering corpus)、子宮頸部、卵巣、多発性骨髄腫、食道、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性白血病、骨髄球性白血病、脳、口腔、および咽頭、小腸、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、および絨毛結腸線腫を含む、対象における癌の処置に有用である。
【0110】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、乳癌、膀胱癌、結腸癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肺癌、肝細胞癌、胃癌、黒色腫、甲状腺癌、子宮内膜癌、腎癌、子宮頸癌、膵臓癌、食道癌、前立腺癌、脳癌、または卵巣癌の処置に好適である。
【0111】
他の実施形態において、本発明の化合物は、これに限定されないが、アレルギー/アナフィラキシー、急性および慢性炎症、関節リウマチ;自己免疫疾患、血栓症、高血圧症、心臓肥大、および心不全を含む、炎症性障害および心血管障害の処置に好適である。
【0112】
したがって本発明の別の態様において、製薬組成物が提供され、ここでこれらの組成物は、本発明に記載するような化合物のいずれかを含み、製薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを場合により含む。ある実施形態において、これらの組成物は、1つ以上のさらなる治療剤を場合によりさらに含む。
【0113】
本発明のある化合物は、処置のために遊離形で、または適切な場合には、その製薬的に許容される誘導体として存在できることが認識されるであろう。本発明により、製薬的に許容される誘導体は、これに限定されないが、必要とする患者への投与時に、本発明に別途記載したような化合物、またはその代謝産物もしくは残基を直接または間接的に供給できる、製薬的に許容されるプロドラッグ、塩、エステル、このようなエステルの塩、またはその他の付加体または誘導体を含む。
【0114】
本明細書で使用する場合、「製薬的に許容される塩」という用語は、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずにヒトまたは下等動物の組織との接触での使用に好適であり、合理的な便益/リスク比に見合う、このような塩を指す。「製薬的に許容される塩」は、レシピエントへの投与時に、本発明の化合物またはその阻害活性代謝産物または残基を直接または間接的に提供することが可能である、本発明の化合物の任意の非毒性塩またはエステルの塩を意味する。本明細書で使用する場合、「その阻害活性代謝産物または残基」という用語は、その代謝産物または残基もPI3Kの阻害薬であることを意味する。
【0115】
製薬的に許容される塩は、当分野で周知である。例えばS.M.Bergeらは、参照により本明細書に組み入れられている、J.Pharmaceutical Sciences、1977、66、1−19で製薬的に許容される塩について詳細に記載している。本発明の化合物の製薬的に許容される塩は、好適な無機および有機酸および塩基に由来する塩を含む。製薬的に許容される非毒性酸添加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸によって、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸によって、または当分野で使用される他の方法、例えばイオン交換によって形成されるアミノ基の塩である。他の製薬的に許容される塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロヨージド塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリル酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)塩を含む。また本発明は、本明細書で開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基の4級化も想定する。このような4級化によって、水溶性もしくは油溶性または分散性生成物が得られる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。さらに製薬的に許容される塩は、適切な場合、対イオン、例えばハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩を用いて形成される、非毒性アンモニウムカチオン、4級アンモニウムカチオンおよびアミンカチオンを含む。
【0116】
上述のように、本発明の製薬的に許容される組成物は、本明細書で使用する場合、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散助剤もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、保存料、固体結合剤、潤滑剤などを所望の特定の投薬形に適合するように含む、製薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルをさらに含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.、1980)は、製薬的に許容される組成物を製剤するのに使用される各種の担体およびその調製のための公知の技法を開示している。任意の在来の担体媒体が、例えば任意の望ましくない生物学的影響をもたらすこと、またはそうでなければ製薬的に許容される組成物のその他の成分との有害な方式で相互作用することにより、本発明の化合物と適合しない場合を除き、担体媒体の使用は、本発明の範囲内に含まれると考慮される。製薬的に許容される担体として作用できる物質のいくつかの例は、これに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、トリケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバターおよび坐剤ワックス;油、例えばラッカセイ油、綿実油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;コーン油およびダイズ油;グリコール;例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝溶液を、他の非毒性適合性潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムと同様に含み、さらに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、着香剤および香料、保存料および酸化防止剤も製剤者の判断に従って組成物中に存在することができる。
【0117】
なお別の態様において、有効量の化合物、または製薬組成物をその必要がある対象に投与するステップを含む、増殖性障害、炎症性障害、または心血管障害を処置する方法が提供される。本発明のある実施形態において、「有効量」の化合物または製薬組成物は、増殖性障害、炎症性障害、もしくは心血管障害を処置するために有効な量であり、または癌を処置するのに有効な量である。他の実施形態において、「有効量」の化合物は、PI3Kの結合を抑制して、それにより生じるシグナル伝達カスケード(成長因子、受容体チロシンキナーゼ、タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ、Gタンパク質共役受容体ならびにリン脂質キナーゼおよびホスファターゼの異常活性を引き起こす)を遮断する量である。
【0118】
本発明の方法による化合物および組成物は、疾患を処置するのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。正確な必要量は、対象の人種、年齢、および全身状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与様式などに応じて、対象ごとに変わるであろう。本発明の化合物は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、好ましくは投薬単位で製剤される。「投薬単位形」という表現は本明細書で使用する場合、処置される患者に適切な薬剤の物理的に個別の単位を指す。しかし本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、正常な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の患者または生物の詳細な有効用量レベルは、処置される疾患および疾患の重症度;利用した特定の化合物の活性;利用した特定の組成物;患者の年齢、体重、全身健康状態、性別および食事;利用した特定の化合物の投与時間、投与経路、および排出速度;処置期間;利用した特定の化合物と組み合せてまたは同時に使用する薬物、および医学分野で周知の同様の因子を含む、多様な因子に依存するであろう。「患者」という用語は本明細書で使用する場合、動物、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはヒトを意味する。
【0119】
本発明の製薬的に許容される組成物は、処置される感染症の重症度に応じて、ヒトまたは他の動物に経口的に、経直腸的に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(粉剤、軟膏、または滴剤によるように)、頬側に、経口または鼻内スプレーなどとして投与することができる。ある実施形態において、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、経口的または非経口的に対象の体重の約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kgの投薬量レベルで1日1回以上投与され得る。
【0120】
経口投与のための液体投薬形は、これに限定されないが、製薬的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。活性化合物に加えて、液体投薬形は、当分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物を含有し得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はアジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、着香剤、ならびに香料も含むことができる。
【0121】
注射用調製物、例えば滅菌注射用水性または油性懸濁剤は、好適な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤され得る。滅菌注射用調製物は、例えば1,3−ブタンジオールによる液剤などの、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒による滅菌注射用液剤、懸濁剤または乳剤でもよい。利用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒は特に、水、リンゲル液(米国薬局方)および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに滅菌固定油は、溶媒または懸濁化媒体として慣習的に利用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を利用できる。さらに脂肪酸、例えばオレイン酸が注射剤の調製に使用される。
【0122】
注射用製剤は例えば、細菌保持フィルタでの濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を含むことによって、滅菌することができる。
【0123】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を低速化することがしばしば望ましい。このことは水溶性の低い結晶性またはアモルファス物質の液体懸濁剤の使用によって実現され得る。そして化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度は次に結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。または非経口投与化合物形の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることによって実現される。注射用デポー形は、生分解性ポリマー、例えばポリラクチド−ポリグリコリド中で化合物のマイクロカプセルマトリクスを形成することによって作製される。化合物の対ポリマー比および利用する特定のポリマーの性質に応じて、化合物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポー注射用製剤は、化合物を体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョンに封入することによっても調製される。
【0124】
経直腸または経膣投与用の組成物は好ましくは、本発明の化合物を、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸または膣腔で溶融して活性化合物を放出する、好適な非刺激性賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスと混合することによって調製することができる坐剤である。
【0125】
経口投与用の固体投薬形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤を含む。このような固体投薬形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性な製薬的に許容される賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸2カルシウムおよび/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアラビアゴム、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、あるケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば4級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土、ならびにi)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投薬形は緩衝剤も含み得る。
【0126】
同様の種類の固体組成物も、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤はもちろんのこと、高分子量ポリエチレングリコールなども使用する軟および硬充填ゼラチンカプセル剤で充填剤として使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体投薬形は、医薬製剤分野で周知のコーティングおよびシェル、例えば腸溶コーティングおよび他のコーティングを用いて調製することができる。固体投薬形は場合により乳白剤を含有し得、腸管のある部分において場合により遅延方式で活性成分のみを、または活性成分を優先的に放出する組成物の固体投薬形であることもできる。使用可能である包埋組成物は、ポリマー性物質およびワックスを含む。同様の種類の固体組成物も、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤はもちろんのこと、高分子量ポリエチレン(polethylene)グリコールなども使用する軟および硬充填ゼラチンカプセル剤で充填剤として使用され得る。
【0127】
活性成分は、上記のような1つ以上の賦形剤を用いたマイクロカプセル化形に含めることもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体投薬形は、医薬製剤分野で周知のコーティングおよびシェル、例えば腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび他のコーティングを用いて調製することができる。このような固体投薬形では、活性化合物は少なくとも1つの不活性希釈剤、例えばスクロース、ラクトースまたはデンプンと混合され得る。このような投薬形は、通常の慣行のように、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば打錠潤滑剤および他の打錠助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースも含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投薬形は緩衝剤も含み得る。投薬形は場合により乳白剤を含有し得、腸管のある部分において場合により遅延方式で活性成分のみを、または活性成分を優先的に放出する組成物の投薬形であることもできる。使用可能である包埋組成物は、ポリマー性物質およびワックスを含む。
【0128】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の投薬形は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉剤、液剤、スプレー剤、吸入剤またはパッチを含む。活性成分は滅菌条件下で、製薬的に許容される担体および必要に応じて任意の必要な保存料もしくは緩衝剤と混合される。眼用製剤、点耳薬、および点眼薬も、本発明の範囲内であるとして考慮される。さらに本発明は、経皮パッチの使用を考慮しており、このことは化合物の体への制御送達を提供するさらなる利点を有する。このような投薬形は、化合物を適正な媒体に溶解または分散させることによって作製できる。吸収促進剤を使用して、皮膚を通過する化合物の流量を増加させることもできる。速度は速度制御膜を供給すること、または化合物をポリマーマトリクスもしくはゲルに分散させることのどちらかによって制御することができる。
【0129】
本発明の化合物の1つ以上が障害、疾患もしくは症状を処置するための単剤療法用途に使用され得るが、本発明の化合物または組成物(治療剤)の使用が同じおよび/または他の種類の障害、疾患および症状を処置するための1つ以上の他の治療剤と組み合される併用療法においても、本発明の化合物の1つ以上が使用され得る。併用療法は、治療剤の同時または連続投与を含む。または治療剤は、患者に投与される1つの組成物中に混合することができる。
【0130】
一実施形態において、本発明の化合物は、他の治療剤、例えばPI3Kの他の阻害薬と組み合せて使用される。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、細胞毒性剤、放射線療法、および免疫療法から成る群より選択される治療剤と組み合せて投与される。他の組み合せが本発明の範囲内に残存したまま試みられることが理解される。
【0131】
本発明の別の態様は、生体サンプルまたは患者におけるPI3K活性を抑制することに関し、その方法は、式Iの化合物または前記化合物を含む組成物を、患者に投与すること、または前記生体サンプルに接触させることを含む。「生体サンプル」という用語は本明細書で使用する場合、インビボ、インビトロ、およびエクスビボ物質を一般に含み、制限なく、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物またはその抽出物から得た生検物質;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙、または他の体液もしくはその抽出物も含む。
【0132】
本発明のまた別の態様は、単一パッケージ内に別個の容器を含むキットを提供することであり、キットでは、PI3Kキナーゼが役割を果たす障害、症状および疾患を処置するために、本発明の製薬化合物、その組成物および/または塩が製薬的に許容される担体と組み合せて使用される。
【実施例】
【0133】
実験手順
I.例示的化合物の調製:
定義
AcOH 酢酸
ACN アセトニトリル
ATP アデノシン3リン酸
BCA ビシンコニン酸
BSA ウシ血清アルブミン
BOC tert−ブトキシカルボニル
m−CPBA m−クロロ過安息香酸
DCE ジクロロエタン
DCM ジクロロメタン
DDQ 2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMEM ダルベッコ変法イーグル試薬
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPPA ジフェニルホスホリルアジド
DTT ジチオスレイトール
dppf ジフェニルホスフィノフェロセン
EDCI N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロライド
EDTA エチレンジアミンテトラ酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FA ギ酸
FBS ウシ胎仔血清
h 時間
HATU N,N,N’,N’−テトラメチル−o−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU o−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HEPES N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
HRMS 高分解能マススペクトル
LAH 水素化アルミニウムリチウム
LCMS 液体クロマトグラフィーマススペクトル
m/z 質量電荷比
Me メチル
MeOH メタノール
min 分
MS マススペクトル
MTT メチルチアゾールテトラゾリウム
MWI マイクロ波照射
PBS リン酸緩衝食塩水
PKA cAMP依存性プロテインキナーゼ
rt 室温
TEA トリエチルアミン
TFFA 無水トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMB 3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン
WST (4−[3−(4−ヨードフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)−2H−5−テトラゾリオ]−1,3−ベンゼンジスルホナートナトリウム塩)
分析LC−MS法
LCMS条件
スペクトルは、以下の勾配を使用して、Hewlett−Packard HP1100にて、Phenominex Luna 5μm C18 50×4.6mmカラムで測定した:
−ギ酸(FA)による方法:0.1%ギ酸水溶液を0〜100パーセント含有するアセトニトリル(2.5ml/分で3分間測定)。
−酢酸アンモニウム(AA)法:10mM酢酸アンモニウム水溶液を0〜100含有するアセトニトリル(2.5ml/分で3分間測定)。
【0134】
(実施例1)
4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(48)の合成
【0135】
【化17】

【0136】
ステップ1:3−モルホリン−4−イル−3−チオキソプロパンニトリル
無水THF(45mL)中の3−モルホリン−4−イル−3−オキソプロパンニトリル(3.0g、19.5mmol)溶液に、ローソン試薬(4.2g、10.3mmol)を添加した。反応混合物を室温にて16時間撹拌して、次に少量まで濃縮した。固体が沈殿しこれを濾過した。固体をジエチルエーテルで洗浄して、3−モルホリン−4−イル−3−チオキソプロパンニトリル(2.3g、70%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 171.2. H NMR(400 MHz,CDCl)d:4.27−4.29(m,2H),4.00(s,2H)および3.81−3.83(m,6H)。
【0137】
ステップ2および3:エチル4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(78)
無水ACN(1.2mL)中の3−モルホリン−4−イル−3−チオキソプロパンニトリル(0.150g、0.88mmol)溶液を0℃まで冷却した。この冷却溶液に、2,4−ジクロロベンゾイルクロライド(0.149mL、1.06mmol)およびDIPEA(0.161mL、0.93mmol)を添加した。混合物を室温にて窒素下で15分間撹拌してから、ヨード酢酸エチル(0.110mL、0.93mmol)およびDIPEA(0.161mL、0.93mmol)を添加した。反応混合物を140℃にて10分間マイクロ波照射に付した。混合物を冷却して、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、エチル4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(78)(0.1g、28%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 411.09. H NMR(400 MHz,CDCl)d:7.49( d,1H),7.33(dd,1H),7.20(d,1H),4.08−4.16(m,2H),3.85−3.89(m,4H),3.63−3.66(m,4H)および1.12(t,3H)。
【0138】
ステップ4:4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(62)
THF/MeOH/水(2:1:2)(5mL)中のエチル4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(0.060g、0.15mmol)溶液に、水酸化ナトリウム(0.061g、1.5mmol)を添加した。反応混合物を室温にて20時間撹拌して、濃縮した。残渣を1N HClによって酸性化して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して、濃縮し、4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(62)(0.034g、62%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 382.9. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.75(d,1H),7.50(dd,1H),7.39(d,1H),3.74−79(m,4H)および3.55−61(m,4H)。
【0139】
ステップ5:4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(48)
4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.050g、0.13mmol)、HOBT(0.037g、0.274mmol)およびEDCI(50mg、0.261mmol)をDCM(6.5mL)に懸濁させた。30分後、試薬が溶解した。得られた溶液に、濃アンモニア水溶液(0.26mL、6.5mmol)を添加して、溶液を室温にて一晩激しく撹拌した。反応混合物を濃縮して、残渣を1N HClによって希釈し、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、飽和NaHCOおよびブラインで洗浄して、MgSOで乾燥させて、濾過し、濃縮して褐色固体を得た。固体をヘキサンおよび冷EtOAcによって粉砕して、4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(48)(0.024g、49%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 382,ES− 380. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.78(s,1H),7.54(d,2H),7.43(d,2H),3.77−3.79(m,4H)および3.52−3.55(m,4H)。
【0140】
次の表の化合物を実施例1の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0141】
【数1】

【0142】
(実施例2)
N−[4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イル−2−チエニル]尿素(28)の合成
【0143】
【化18】

【0144】
ステップ1:4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボニルアジド
無水THF(15mL)中の4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.38g、0.99mmol)およびTEA(0.414mL、2.97mmol)溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(0.341mL、1.58mmol)を窒素下で1度に添加した。反応混合物を室温にて一晩撹拌して、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボニルアジド(0.318g、79%)を得た。
【0145】
ステップ2:N−[4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イル−2−チエニル]尿素(28)
ジオキサン(2.45mL、1.22mmol)中の4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボニルアジド(0.050g、0.122mmol)および0.5Mアンモニア溶液の混合物を70℃にて窒素下で2時間加熱した。混合物を濃縮して、残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、N−[4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イル−2−チエニル]尿素(28)(0.035g、73%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 397,ES− 395. H NMR(400 MHz,d6−DMSO)d:8.48(s,1H),7.81(s,1H),7.55(d,1H),7.41(d,1H),6.18(s,2H)および3.73−3.75(m,4H)。
【0146】
次の表の化合物を実施例2の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0147】
【数2】

【0148】
(実施例3)
4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(66)の合成
【0149】
【化19】

【0150】
ステップ1:3−(4−メトキシフェニル)−2−(モルホリン−4−イルカルボノチオイル)アクリロニトリル
10%ピペラジン/エタノール(5.5mL)中の3−モルホリン−4−イル−3−チオキソプロパンニトリル(0.122g、0.72mmol)およびp−アニスアルデヒド(0.1mL、0.86mmol)溶液を50℃にて窒素下で3.5時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、残渣を10%クエン酸溶液で希釈し、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、飽和NaHCOおよびブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、3−(4−メトキシフェニル)−2−(モルホリン−4−イルカルボノチオイル)アクリロニトリルを得た。粗生成物は立体異性体の混合物であり、次のステップで直接使用した。LCMS:(AA) ES+ 289.
ステップ2:エチル4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イル−2,3−ジヒドロチオフェン−2−カルボキシラート
3−(4−メトキシフェニル)−2−(モルホリン−4−イルカルボノチオイル)アクリロニトリル(ステップ1より)、ヨード酢酸エチル(0.25mL、2.1mmol)およびDIPEA(0.5mL、2.9mmol)の混合物をACN(2mL)に溶解させて、これを150℃にて10分間マイクロ波照射に付した。混合物を冷却して、濃縮した。残渣を5%亜硫酸水素ナトリウム溶液で希釈し、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、飽和NaHCOおよびブラインで洗浄して、MgSOで乾燥させて、濾過して、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、エチル4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イル−2,3−ジヒドロチオフェン−2−カルボキシラート(2ステップで0.168g、63%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 375,ES− 373.
ステップ3:エチル4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート
トルエン(5mL)中のエチル4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イル−2,3−ジヒドロチオフェン−2−カルボキシラート(0.168g、0.45mmol)溶液に、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.102g、0.45mmol)を添加した。混合物を90℃にて90分間撹拌して、冷却してから、トルエンで溶離させてセライトで濾過した。濾液を濃縮して、残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製した。得られた橙色固体を酢酸エチル/40−60石油エーテルから再結晶して、エチル4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(0.11g、66%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 373. H NMR(400 MHz,d6−DMSO)d:7.28−7.31(m,2H),6.96 −7.00(m,2H),4.06(q,2H),3.81(s,3H),3.76−3.79(m,4H),3.59−3.61(m,4H)および1.08(t,3H)。
【0151】
ステップ4:4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(77)
THF/MeOH/水(1:1:1)(6mL)中のエチル4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(0.077g、0.21mmol)懸濁物に、水酸化ナトリウム(0.2g、5mmol)を添加した。反応混合物を50℃にて6時間撹拌して、濃縮した。残渣を1N HClによってpH1〜2まで酸性化して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して、濃縮し、4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(77)(0.061g、86%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 345. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.27−7.31(m,2H),6.95−6.99(m,2H),3.80(s,3H),3.76−3.78(m,4H)および3.56−3.58(m,4H)。
【0152】
ステップ5:4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(66)
4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.035g、0.10mmol)、HOBT(0.028g、0.18mmol)およびEDCI(38mg、0.20mmol)をDCM(5mL)に懸濁させた。50分後、試薬が溶解した。得られた溶液に、濃アンモニア水溶液(0.2mL、5mmol)を添加して、溶液を室温にて2時間激しく撹拌した。反応混合物を濃縮して、残渣を1N HClによって希釈し、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、飽和NaHCOおよびブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して、濃縮して、4−シアノ−3−(4−メトキシフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(66)(0.028g、80%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 344. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.32−7.35(m,2H),7.06−7.09(m,2H),3.82(s,3H),3.76−3.78(m,4H)および3.52−3.54(m,4H)。
【0153】
次の表の化合物を実施例3の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0154】
【数3】

【0155】
(実施例4)
3−[(2−クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(61)の合成
【0156】
【化20】

【0157】
ステップ1:3−モルホリン−4−イル−2−(モルホリン−4−イルカルボノチオイル)アクリロニトリル
トリエチルオルトホルメート(0.245mL、1.48mmol)中の3−モルホリン−4−イル−3−チオキソプロパンニトリル(0.1g、0.59mmol)溶液に、モルホリン(0.064mL、0.73mmol)を添加した。反応混合物にを150℃にて10分間マイクロ波照射に付した。生成物が沈殿するまで、反応混合物を少量まで濃縮した。沈殿物を濾過して、MeOHおよびイソヘキサンで洗浄し、3−モルホリン−4−イル−2−(モルホリン−4−イルカルボノチオイル)アクリロニトリル(0.13g、83%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 268.2. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:3.96(m,4H)および3.67−3.78(m,12H)。
【0158】
ステップ2:エチル4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート
ACN(0.55mL)中の3−モルホリン−4−イル−2−(モルホリン−4−イルカルボノチオイル)アクリロニトリル(0.07g、0.26mmol)、ヨード酢酸エチル(0.034mL、0.29mmol)およびDIPEA(0.091mL、0.52mmol)の混合物を120℃にて10分間マイクロ波照射に付した。冷却時に生成した結晶を濾過して、冷MeOHおよびジエチルエーテルで洗浄して、エチル4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(0.06g、87%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 267.1. H NMR(400 MHz,CDCl)d:7.62(s,1H),4.30(q,2H),3.85−3.87(m,4H),3.58−3.60(m,4H)および1.34(t,3H)。
【0159】
ステップ3:4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸
THF/MeOH/水(3:1:1)(5mL)中のエチル4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(0.06g、0.23mmol)溶液に、水酸化ナトリウム(0.095g、2.3mmol)を添加した。反応混合物を室温にて20時間撹拌して、濃縮した。残渣を1N HClによってpH1〜2まで酸性化して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して、濃縮し、4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.048g、88%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 239.1. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.67(s,1H),3.72−3.75(m,4H)および3.52−3.55(m,4H)。
【0160】
ステップ4:3−[(2−クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(61)
無水THF(1.5mL)中の4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.1g、0.42mmol)溶液を−70℃まで冷却した。この冷却溶液に、ヘキサン(0.672mL、1.68mmol)中2.5M n−ブチルリチウム溶液を窒素下にて滴加した。得られた溶液を−70℃にて2時間撹拌して、2−クロロベンズアルデヒド(0.142mL、1.26mmol)を添加した。反応混合物を−70℃にてさらに2時間撹拌して、水によって反応停止させた。混合物を少量まで濃縮して、水性残渣をEtOAcで洗浄した。水溶液を分離して、1N HClによって酸性化して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せてブラインで洗浄して、MgSOで乾燥させて、濾過して、濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィーによって精製して、3−[(2−クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(61)(0.03g、19%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 319.0. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d: 7.39−7.41(m,1H),7.31−7.33(m,1H),7.23−7.27(m,2H),6.19(s,1H),5.74(s,1H),3.70−3.72( m,4H)および3.38−3.40(m,4H)。
【0161】
次の表の化合物を実施例4の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0162】
【数4】

【0163】
(実施例5)
3−(4−クロロフェニル)−4−シアノ−N−メチル−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(69)の合成
【0164】
【化21】

【0165】
ステップ1:メチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート
MeOH(600mL)中の[ビス(メチルスルファニル)メチレン]マロニトリル(40g、230mmol)、メチルチオグリコレート(21mL、230mmol)およびTEA(24mL、173mmol)の混合物を還流下で2時間撹拌した。反応混合物を一晩冷却して、沈殿を濾過して、冷MeOH(×3)で洗浄して、メチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート(52.4g、99%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 229.2. H NMR(400 MHz,d6−DMSO)d: 3.74(s,3H)および2.70(s,3H)。
【0166】
ステップ2:メチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルフィニル)チオフェン−2−カルボキシラートおよびメチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキシラート
DCM(450mL)中のメチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート(40g、180mmol)およびm−CPBA(120g、700mmol)懸濁物を還流下で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却して、沈殿を濾過し、DCM、飽和NaHCO、水で洗浄して、真空下で乾燥させて、メチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルフィニル)チオフェン−2−カルボキシラートおよびメチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキシラートの混合物(35g)を得、これを次のステップで使用した。LCMS:(FA) ES+ 245.1(ピーク1)および261.0(ピーク2)。 H NMR(400 MHz,d−DMSO)d: 7.05(s,2H),6.95(s,2H),3.79(s,3H),3.75(s,3H),3.45(s,3H)および3.03(s,3H)。
【0167】
ステップ3:メチル3−アミノ−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート
THF(350mL)中のメチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルフィニル)チオフェン−2−カルボキシラート/メチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキシラート(35g、134mmol)およびモルホリン(70.4mL)の混合物を還流下で3時間撹拌した。反応混合物を一晩冷却させて、濃縮して油を得て、これをジエチルエーテルで粉砕した。沈殿が生成すると、これを濾過して、飽和NaHCOおよび水で洗浄して、メチル3−アミノ−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(35.7g、99%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 268.0. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d: 6.65(s,2H),3.69−3.81(m,4H),3.70(s,3H)および3.50−3.62(m,4H)。
【0168】
ステップ4:メチル4−シアノ−3−ヨード−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート
ACN(110mL)中のメチル3−アミノ−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(3.4g、12.6mmol)溶液に、ジヨードメタン(10.5mL、130.2mmol)および亜硝酸アミル(1.1mL、77.7mmol)を添加した。反応混合物を80℃にて4日間撹拌して、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、メチル4−シアノ−3−ヨード−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(2.2g、46%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 379.0. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d: 3.76(s,3H),3.72−3.75(m,4H)および3.56−3.61(m,4H)。
【0169】
ステップ5:4−シアノ−3−ヨード−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸
THF(110mL)中のメチル4−シアノ−3−ヨード−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(1.5g、40.1mmol)溶液に、1.0M水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を添加した。反応混合物を室温にて一晩撹拌して、次に沈降させた。2層を分離して、水溶液をEtOAcで洗浄して、1N HClによって酸性化した。沈殿が生成すると、これを濾過して、4−シアノ−3−ヨード−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(1.2g、82%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 365.0,ES− 363.1. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:3.71−3.78(m,4H)および3.51−3.58(m,4H)。
【0170】
ステップ6:4−シアノ−3−ヨード−N−メチル−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド
DMF(195mL)中の4−シアノ−3−ヨード−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(7.1g、19.4mmol)溶液に、HATU(8.9g、23.4mmol)およびDIPEA(4.1mL、23.3mmol)を添加した。反応混合物を室温にて1時間撹拌して、THF(19.4mL、38.8mmol)中の2Mメチルアミン溶液を添加した。反応混合物を室温にて30分間撹拌して、水を添加した。沈殿が生成すると、これを濾過して、乾燥させ、4−シアノ−3−ヨード−N−メチル−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(6.4g、87%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 378.0,ES− 376.1. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.92(m,1H),3.72−3.76(m,4H),3.47−3.51(m,4H)および2.73(d,3H)。
【0171】
ステップ7:3−(4−クロロフェニル)−4−シアノ−N−メチル−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(69)
1,2−ジメトキシエタン(0.71mL)および水(0.37mL)中の4−シアノ−3−ヨード−N−メチル−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(0.055g、0.14mmol)、4−クロロフェニルボロン酸(0.046g、0.29mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.017g、0.014mmol)および炭酸ナトリウム(0.046g、0.44mmol)の混合物を80℃にて一晩撹拌した。反応混合物を水によって反応停止させて、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せてブラインで洗浄して、MgSOで乾燥させて、濾過して、濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィーによって精製して、3−(4−クロロフェニル)−4−シアノ−N−メチル−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(69)(0.030g、57%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 362.2,ES− 360.2. H NMR(300 MHz,d−DMSO)d:7.52(d,2H),7.36(d,2H),3.74−3.79(m,4H),3.48−3.53(m,4H)および2.54(d,3H)。
【0172】
次の表の化合物を実施例5の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0173】
【数5】

【0174】
(実施例6)
4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(35)の合成
【0175】
【化22】

【0176】
ステップ1:メチル3−ブロモ−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート
無水ACN(30mL)中のメチル3−アミノ−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(2.0g、7.5mmol)溶液を0℃まで冷却した。この冷却溶液に、亜硝酸t−ブチル(1.3mL、11.3mmol)を添加した。混合物を0℃にて10分間撹拌して、次にACN(10mL)中の臭化銅(II)(2.0g、9.0mmol)溶液を0℃にて添加した。得られた黒色溶液を室温にて2時間撹拌して、完全に変色するまで2N HClで酸性化した。混合物を2N NaOHで中和して、少量まで濃縮し、水溶液をEtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、水およびブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させて、濾過して、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、MeOHによって粉砕し、メチル3−ブロモ−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(1.16g、47%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 331.9.
ステップ2:メチル4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート
1,2−ジメトキシエタン/EtOH(8/2)(2mL)中のメチル3−ブロモ−4−シアノ−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(0.040g、0.12mmol)、p−トリルボロン酸(0.020g、0.14mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.004g、0.004)、2M KCO水溶液(0.120mL、0.24mmol)の混合物を110℃にて10分間マイクロ波照射に付した。反応混合物を濃縮して;残渣を水で希釈して、DCMによって抽出した。有機溶液を合せてブラインで洗浄して、MgSOで乾燥させて、濾過して、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、冷MeOHによって粉砕し、メチル4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(0.030g、83%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 343.1. H NMR(400 MHz,CDCl3)d:7.24−7.27(m,4H),3.87−3.89(m,4H),3.69(s,3H),3.60−3.62(m,4H)および2.39(s,3H)。
【0177】
ステップ3:4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(4)
THF/MeOH/水(2/1/1)(3mL)中の4メチル4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(0.060g、0.18mmol)溶液に、水酸化ナトリウム(0.072g、1.8mmol)を添加した。反応混合物を50℃にて3時間撹拌して、濃縮した。残渣を2N HClによって酸性化して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せてブラインで洗浄して、MgSOで乾燥させて、濾過して、濃縮した。粗生成物をジエチルエーテルおよびヘキサンで粉砕して、4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(4)(0.055g、93%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 329.0. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.20−7.23(m,4H),3.76−3.79(m,4H),3.56−3.59(m,4H)および2.35(s,3H)。
【0178】
ステップ4:4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(35)
DCM(1mL)中の4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.030g、0.091mmol)、HOBT(0.024g、0.18mmol)およびEDCI(0.035g、0.18mmol)溶液に、濃アンモニア水(0.158mL、4.5mmol)を添加した。反応混合物を室温にて3時間撹拌して、濃縮した。残渣を0.1N HClによって希釈して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、飽和NaHCO、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して、濃縮して、4−シアノ−3−(4−メチルフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(35)(0.024g、80%)を得た。LCMS:(AA) ES+ 328.2. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.45−7.47(m,2H),7.40−7.42(m,2H),3.88−3.90(m,4H),3.64−3.66(m,4H)および2.62(s,3H)。
【0179】
次の表の化合物を実施例6の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0180】
【数6】

【0181】
(実施例7)
4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(84)の合成
【0182】
【化23】

【0183】
ステップ1:3−(3,4−ジクロロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル
アルゴン雰囲気下で−78℃まで冷却したTHF(240mL)中のシアノ酢酸(4.07g、47.8mmol)溶液に、ヘキサン(59.8mL)中の1.6M n−ブチルリチウムを添加した。反応混合物を−78℃にて10分間撹拌して、次に0℃まで加温した。反応混合物を−78℃まで再冷却した。混合物にTHF(30mL)中の3,4−ジクロロベンゾイルクロライド(5.01g、23.9mmol)を滴加した。反応混合物を室温まで加温した。反応混合物を1N HClによって希釈して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、飽和NaHCO、ブラインで洗浄して、MgSOで乾燥させて、濾過して、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、3−(3,4−ジクロロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル(3.9g、76%)を得た。LCMS:(FA) ES− 212.0. H NMR(400 MHz,CDCl)d:8.01(d,1H),7.75(dd,1H),7.63(d,1H)および4.05(s,2H)。
【0184】
ステップ2:2−(3,4−ジクロロベンゾイル)−3,3−ビス(メチルスルファニル)アクリロニトリル
アルゴン雰囲気下、15℃のDMSO(50mL)中の3−(3,4−ジクロロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル(3.3g、15.4mmol)および二硫化炭素(0.927mL、15.4mmol)溶液に、水素化ナトリウム(0.856g、033.9mmol)を激しく撹拌しながら添加した。反応混合物をこの温度で10分間撹拌して、次に室温まで加温した。反応混合物にヨウ化メチル(1.92mL、30.8mmol)を添加して、混合物を室温にて30分間撹拌した。反応混合物を水によって希釈して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せてブラインで洗浄して、MgSO4で乾燥させて、濾過して、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、2−(3,4−ジクロロベンゾイル)−3,3−ビス(メチルスルファニル)アクリロニトリル(2.9g、59%)を得た。LCMS:(FA) ES− 318.1. H NMR(400 MHz,CDCl)d:7.95(d,1H),7.73(dd,1H),7.56(d,1H),2.82(s,3H)および2.55(s,3H)。
【0185】
ステップ3:エチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート
EtOH(31mL)中の2−(3,4−ジクロロベンゾイル)−3,3−ビス(メチルスルファニル)アクリロニトリル(2.28g、7.16mmol)撹拌懸濁物に、エチルチオグリコラート(0.864mL、7.88mmol)およびTEA(1.1mL、7.88mmol)を添加した。反応混合物を還流に達するまで加熱して、次に冷却させた。固体が生成した。室温にて一晩撹拌した後、固体を濾過して、冷EtOH(100mL)で洗浄して、エチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート(2.38g、89%)を得た。H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.82(d,1H),7.75(d,1H),7.47(dd,1H),4.14(q,2H),2.82(s,3H)および1.11(t,3H)。
【0186】
ステップ4:エチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキシラート
DCM(10mL)中のエチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート(2.67g、7.17mmol)0℃の撹拌スラリに、m−CPBA(4.95g、21.5mmol)にゆっくりと添加した。反応混合物を室温まで加温して、20時間撹拌した。反応混合物をDCM(25mL)によって希釈して、10% NaHSO、水、飽和NaHCO、およびブラインで連続して洗浄した。有機溶液をNaSOで乾燥させ、濾過して、濃縮し、エチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキシラート(1.8g、61%)を得た。H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.90(d,1H),7.81(d,1H),7.55(dd,1H),4.21(q,2H),3.60(s,3H)および1.14(t,3H)。
【0187】
ステップ5:エチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート
THF(40mL)中のエチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキシラート(1.77g、4.38mmol)およびモルホリン(1.91mL、21.9mmol)溶液を室温にてアルゴン雰囲気下で3日間撹拌した。沈殿が生成すると、これを濾過して、エチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(1.14g、63%)を得た。H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:7.67−7.74(m,2H),7.37(dd,1H),4.06(q,2H),3.74−3.78(m,4H),3.59−3.63(m,4H)および1.06(t,3H)。
【0188】
ステップ6:4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(75)
THF(20mL)中のエチル4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキシラート(1.04g、2.53mmol)スラリに、1.0M水酸化ナトリウム水溶液(20mL)を添加した。反応混合物を80℃にて一晩撹拌して、濃縮した。残渣を1N HClによって希釈すると、沈殿が生成した。沈殿を濾過して、乾燥させ、4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(75)(0.88g、91%)を得た。LCMS:(FA) ES− 381.2. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:13.00(s,1H),7.65−7.72(m,2H),7.36(d,1H),3.73−3.79(m,4H)および3.55−3.61(m,4H)。
【0189】
ステップ7:4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(84)
DCM(5mL)中の4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.198g、0.517mmol)懸濁物に、ECDI(0.198g、1.03mmol)およびHOBT(0.140g、1.03mmol)を添加した。反応混合物を室温にて30分間撹拌して、次に水酸化アンモニウム(1mL、20mmol)を添加した。反応混合物を4時間撹拌して、濃縮した。残渣を水によって希釈して、EtOAcによって抽出した。有機溶液を合せて、飽和NaHCO、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して、濃縮して、4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(84)(0.195g、99%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 382.2,ES− 380.1. H NMR(300 MHz,d−DMSO)d:7.73(d,1H),7.64(d,1H),7.36(dd,1H),3.73−3.79(m,4H)および3.49−3.54(m,4H)。
【0190】
次の表の化合物を実施例7の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0191】
【数7】

【0192】
(実施例8)
4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−N−(1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−5−イル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(85)の合成
【0193】
【化24】

【0194】
4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.030g、0.07mmol)、HBTU(0.080g、0.21mmol)、N−メチルモルホリン(0.023mL、0.21mmol)およびDMF(1mL)を、1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−5−アミン(0.023g、0.21mmol)を含有する密閉反応管に添加した。反応混合物を一晩振とうして、濃縮した。残渣をTHF/クロロホルム(1:3)(4mL)に溶解させて、飽和NaHCO(2mL)で洗浄した。有機溶液を分離して、濃縮した。粗生成物をDMSO(1.5mL)に溶解させ、逆相クロマトグラフィーによって精製して、4−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)−N−(1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−5−イル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(85)(0.003g、10%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 476.4.
次の表の化合物を実施例8の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0195】
【数8】

【0196】
(実施例9)
N−(4−ブロモベンジル)−4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボキサミド(45)の合成
【0197】
【化25】

【0198】
担持量130mmol/g(100mg、130umol)のテトラフルオロフェノール樹脂(TFP)を無水DMF(1.2mL)中で膨潤させて、4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.125g、0.325mmol)、DIC(33mg、41mg、0.325mmol)およびDMAP(40mg、0.325mmol)によって処理した。懸濁物を周囲温度にて24時間撹拌して、次に濾過して、DMF(3×3mL)およびDCM(3×3mL)で洗浄し、真空下で乾燥させた。IR 2212,1744 cm−1
樹脂を2つの等分割量に分けて、無水THFで膨潤させ、適切なベンジルアミン1当量(0.06mmol)で処理して、60℃にて3時間反応させた。冷却後、THF溶液を樹脂からデカントして、メタノールで洗浄したトス酸担持ポリマーの500mgカートリッジで濾過した。次にカートリッジをDCM、MeOHおよびEtOAcで洗浄して、濾液を蒸発させて、1級アミン出発物質を含まない純生成物;45(16mg、45%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 550,552.
化合物22を実施例9の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0199】
【数9】

【0200】
(実施例10)
N−[4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イル−2−チエニル]−N−(2−ヒドロキシエチル)尿素(86)の合成
【0201】
【化26】

【0202】
4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.030g、0.08mmol)をマイクロ波管内に秤量して、次に密閉した。トルエン(1ml)、TEA(0.014mL、0.100mmol)およびジフェニルホスホリルアジド(0.020mL、0.091mmol)を管に添加した。反応混合物を室温にて30分間振とうして、次に80℃にて2時間加熱した。2−アミノエタノール(0.0061ml、0.1mmol)および無水THF(1mL)およびTEA(0.014mL、0.100mmol)を事前に混合して、次に反応混合物に添加した。反応物を80℃にてさらに60分間加熱して、次に室温まで冷却して、一晩振とうした。溶媒をGenevac HT12で蒸発させて、残渣をAgilent 1100シリーズLC/MSD(FA)で精製して、N−[4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イル−2−チエニル]−N−(2−ヒドロキシエチル)尿素(86)を得た。LCMS:(FA) ES+ 441.3.
次の表の化合物を実施例10の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0203】
【数10】

【0204】
(実施例11)
4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−N−ヒドロキシ−5−モルホリン−4−イル−チオフェン−2−カルボキサミド(24)の合成
【0205】
【化27】

【0206】
ステップ1:4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イル−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)チオフェン−2−カルボキサミド
4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イルチオフェン−2−カルボン酸(0.080g、0.21mmol)、HATU(0.095g、0.25mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(0.073mL、0.42mmol)をDMF(2mL)に溶解させて、30分間撹拌した。O−テトラヒドロピラン−2−イル)ヒドロキシルアミン(0.049g、0.42mmol)を添加して、混合物を室温にて撹拌した。30分後、LCMSは完全な変換を示した。水(5mL)の添加によって反応を停止させて、沈殿を濾過して、水(2mL)およびヘキサン(5mL)で洗浄し、乾燥させて、表題混合物(0.055g、55%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 482.
ステップ2:4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−N−ヒドロキシ−5−モルホリン−4−イル−チオフェン−2−カルボキサミド(24)
4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−モルホリン−4−イル−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)チオフェン−2−カルボキサミド(0.050g、0.10mmol)をDCM(3mL)に溶解させて、TFA(0.24mL、3.11mmol)を添加した。溶液を室温にて一晩撹拌した。溶媒を蒸発させて、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM〜DCM中10% MeOHによって20分間にわたって溶離)によって精製して、表題化合物24(0.030g、67%)を得た。LCMS:(FA) ES+ 398.
(実施例12)
4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−[2−(ヒドロキシメチル)モルホリン−4−イル]チオフェン−2−カルボキサミド(87)の合成
【0207】
【化28】

【0208】
ステップ1:メチル4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート
アセトニトリル(20mL)中のメチル3−アミノ−4−シアノ−5−(メチルチオ)チオフェン−2−カルボキシラート(4.0g、17.5mmol)懸濁物に、ジヨードメタン(4.94mL、61.3mmol)を添加した。反応混合物を38℃にて加熱した。硝酸イソアミル(5.13g、43.8mmol)を5分間にわたって滴加した。硝酸イソアミルの添加後、反応混合物を室温まで冷却して、2時間撹拌した。反応混合物を氷浴で冷却して、ヘキサン(20mL)を添加した。得られた沈殿を濾過して、90%ヘキサンのアセトニトリル(10mL)による溶液、ジエチルエーテル(10mL)中の75%ヘキサンおよび100%ヘキサン(20mL)によって洗浄して、メチル4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート(3.4g、57%)を薄橙色固体として得た。H NMR(400 MHz,CDCl)d:3.91(s,3H),2.70(s,3H)
ステップ2:4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボン酸
テトラヒドロフラン(80mL)および水(16mL)中のメチル4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキシラート(3.40g、10mmol)溶液に、1.00M水酸化ナトリウム水溶液(30mL)を添加した。溶液を一晩撹拌した。反応混合物を1N塩化水素水溶液(50mL)によって反応停止させて、水(400mL)で希釈した。得られた沈殿を濾過して、水(2×100mL)で洗浄して、真空乾燥器で乾燥させて、4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボン酸(2.6g、79%)を白色固体として得た。LCMS:(FA) ES+ 326. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:14.1−13.8(bs,1H),2.75(s,3H)。
【0209】
ステップ3:4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキサミド
塩化メチレン(30mL)中の4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボン酸(2.85g、7.93mmol)懸濁物に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロライド(3.28g、17.1mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(2.27g、16.8mmol)を添加した。反応混合物を室温にて2時間撹拌して、水酸化アンモニウム(15.4mL)を添加し、2相混合物を室温にて2時間撹拌した。水(100mL)、メタノール(50mL)、塩化メチレン(200mL)を添加した。有機層を除去した。水層を20%メタノールの塩化メチレン(100mL)による溶液によって5回抽出した。合せた有機抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させて、濾過して、濃縮して、表題化合物を暗赤色油(1.47g、57%)として得た。LCMS:(FA) ES+ 325.
ステップ4:4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキサミド
塩化メチレン(60mL)、テトラヒドロフラン(20mL)、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解させた4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルファニル)チオフェン−2−カルボキサミド(1.46g、4.50mmol)の溶液に、m−クロロ過安息香酸(5.05g、22.5mmol)を添加して、混合物を室温にて一晩撹拌した。塩化メチレンを真空下で除去した。残った残渣を酢酸エチル(200mL)によって希釈して、1.00M水酸化ナトリウム水溶液(50mL)によって3回洗浄した。有機相を除去して、水相を酢酸エチル(100mL)によって5回抽出した。合せた有機抽出物を1.00M水酸化ナトリウム水溶液(50mL)によって2回洗浄した。有機抽出物を真空下で濃縮した。残渣を水(100mL)に懸濁させると、沈殿が生成した。沈殿を濾過して、水(40mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄して、真空乾燥器で乾燥させて、表題化合物を白色固体(1.00g、62%)として得た。LCMS:(FA) ES+ 357. H NMR(400 MHz,d−DMSO)d:8.16(s,2H),3.56(s,3H)。
【0210】
ステップ5:4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキサミド
4−シアノ−3−ヨード−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキサミド(0.500g、1.40mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0.040g、0.0700mmol)、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(0.057g、0.100mmol)、およびリン酸カリウム(0.596g、2.81mmol)を1,2−ジメトキシエタン(10.0mL)およびN,N−ジメチルアセトアミド(5mL)に懸濁させた。懸濁物にアルゴンを通気して、反応混合物に150℃(300ワット)にてマイクロ波を3時間照射した。反応混合物を真空下で濃縮して、カラムクロマトグラフィーを実施して、表題化合物(0.080g、14%)をベージュ色泡として得た。H NMR(400 MHz,d−メタノール)d:7.71−7.69(m,1H),7.52−7.50(m,2 H),3.46(s,3H)。
【0211】
ステップ6:4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−[2−(ヒドロキシメチル)モルホリン−4−イル]チオフェン−2−カルボキサミド(87)
4−シアノ−3−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(メチルスルホニル)チオフェン−2−カルボキサミド(0.013g、0.0346mmol)を2−ヒドロキシメチルモルホリン(0.300g、2.56mmol)に溶解させて、溶液を60℃にて一晩加熱した。残渣を真空下で濃縮して、カラムクロマトグラフィーを実施して、表題化合物87(0.010g、66%)を白色固体として得た。LCMS:(FA) ES+ 412,414,416. H NMR(400 MHz,d−メタノール)d:7.68(s,1H),7.50(d,1H),7.40(d,1H),4.08−3.92(m,3H),3.88−3.56(m,4 H),3.16−3.04(m,2H)。
【0212】
化合物71を実施例12の方法に類似の方法で、適切な出発物質から調製した:
【0213】
【数11】

【0214】
II.生物学的データ:
(実施例1)
PI3K酵素アッセイ
PI3K酵素の発現および精製
活性ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)酵素はMillennium Pharmaceuticalsにて、アミノ末端His−tagged p110αおよびp85α発現構築物を含有するバキュロウイルスに同時感染したSF9昆虫細胞(Invitrogen)から精製した。
【0215】
PI3K酵素均一時間分解蛍光(HTRF(登録商標))アッセイ
PI3K酵素HTRF(登録商標)アッセイは、ビオチン−PI(3,4,5)P、ユウロピウム(Europhium)標識抗GSTモノクローナル抗体、GSTタグGRP1プレクストリン相同(PH)ドメイン、およびストレプトアビジン−APC(アロフィコシアニン)から成るエネルギー移動複合体を利用する。複合体でのユウロピウムの励起によって、安定的な時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)シグナルが生じる。PI3Kの生成物である、ホスファチジルイノシトール3,4,5 3リン酸(PI(3,4,5)Pは、GRP1 PHドメインへの結合でビオチン−PI(3,4,5)Pと競合することによってエネルギー移動複合体を妨害して、蛍光シグナルの低下を引き起こす。反応でのPI3Kの阻害薬は、蛍光シグナルの低下を防止する。
【0216】
PI3K酵素(325pM)を、384ウェルプレートにおける最終体積20.5μLの、25μM ATPおよび試験化合物0.5μL(100% DMSO中)を複数の濃度で含有するアッセイ緩衝液(50mM HEPES pH7.0、5mM DTT、150mM NaCl、10mM β−グリセロホスフェート、5mM MgCl、0.25mMコール酸ナトリウム、0.001% CHAPS)中の、di−C8 PI(4,5)P基質(3.5μM、CellSignals,Inc.)によって22〜23℃にて30分間インキュベートした。反応は、EDTA(90mM)およびビオチン−PI(3,4,5)P(150nM、Echelon Bioscience)を含有する検出緩衝液(50mM HEPES pH7.0、5 mM DTT、1mM NaCl、10% Tween−20)5mLを各ウェルに添加することによって停止させた。GST融合GRP1 PHドメインタンパク質(210nM、Millennium Pharmaceuticals)、抗GSTユウロピウムタグクリプテート抗体(2.25nM、CisBio)、ストレプトアビジン−XL(90nM、CisBio)およびフッ化カリウム(240mM)を含有する検出緩衝液5mLを各ウェルに添加して、1時間インキュベートした。次に各ウェルの蛍光シグナルをLJL_Analyst(Molecular Devices)で測定した。DMSO処理(0%阻害)およびEDTA処理(100%阻害)対照に対して試験化合物処理試料の蛍光シグナルを計算することによって濃度応答曲線を作成して、これらの曲線から50%阻害を生じる濃度(IC50値)を決定した。
【0217】
(実施例2)
PI3K細胞アッセイ
フォークヘッド再分布アッセイ
フォークヘッド再分布アッセイ(BioImage)を使用して、細胞におけるPI3Kの阻害を評価することができる。U2OS骨肉腫細胞中で発現されたEGFP融合Foxo1A(Foxo1A−EGFP)は、PI3K経路が活発にシグナル伝達するときに、細胞質に局在する。経路シグナル伝達の不活性化によって、タンパク質の細胞質から核への転位が引き起こされる。したがって核内のFoxo1A−EGFPの蛍光強度を定量することによって、経路阻害を測定することができる。
【0218】
Foxo1A−EGFP(6500細胞/ウェル)を構成的に発現するU2OS細胞を、細胞培養培地(10%ウシ胎仔血清(HyClone)および1%ペニシリン−ストレプトアビジン(Invitrogen)を含有するDMEM(Invitrogen)100mL中の96ウェルディッシュ(BD Falcon OPTILUX black clear bottom)の内側60ウェルにプレーティングして、湿潤チャンバ内で37℃にて一晩培養した。細胞培養培地を除去して、細胞を低血清培地(0.933%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン−ストレプトアビジンを含有するDMEM)100μLですすぎ、湿潤チャンバ内で37℃にて、低血清培地75mL中で1時間インキュベートした。1%ペニシリン−ストレプトアビジンを含有するDMEMに懸濁させた複数の濃度の試験化合物(25μL)を細胞に添加して、湿潤チャンバ内で37℃にて1時間インキュベートした。培地を除去して、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)中の4%パラホルムアルデヒド100μL中で10分間固定して、次にPBS 100μLで洗浄した。RNAアーゼを含有するPBS(1:10,000、Sigma)によって1:5000で希釈したDRAQ5ミックス(100μL、Alexis Biochemicals)を細胞に30分間にわたって添加した。次にOpera Imager(Evotec)を使用してプレートを撮像して(ウェル当り16フィールド)、Acapellaソフトウェア(Evotec)を使用して核内のFoxo1A−EGFP蛍光強度(DRAQ5陽性)を定量した。試験化合物処理試料のFoxo−1A EGFPの核蛍光強度を計算することによって濃度応答曲線を作成して、これらの曲線から正の対照に対して50%阻害を生じる濃度(IC50値)を決定した。
【0219】
(実施例3)
抗増殖アッセイ
ATPliteアッセイ
ATPLite(商標)(Perkin−Elmer)アッセイは、ATP依存性酵素ホタルルシフェラーゼから生成される発光シグナルの発生を通じて、細胞アデノシン3リン酸(ATP)を測定する。発光シグナル強度は細胞増殖の尺度、したがってPI3K阻害薬の抗増殖効果として使用可能である。
【0220】
試験化合物(100% DMSO中4μL)をハンクス緩衝食塩溶液75μL(Invitrogen)で希釈した。次に希釈試験化合物(8μL)を384ウェルTC処理黒色/透明プレート(Falcon)に添加した。10%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン−ストレプトアビジンを含有するMcCoy’s 5a変法培地(Invitrogen)中で維持したHCT−116細胞(American Type Culture Collection)を、ウェル当り1000細胞添加した。10%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン−ストレプトアビジンを含有するRPMI 1640中で維持したH460細胞(American Type Culture Collection)を、ウェル当り1500細胞添加した。次に細胞を化合物によって湿潤チャンバ内で37℃にて72時間インキュベートした。次にプレートを細胞培養チャンバから取り出して、30分間にわたって室温と平衡にした。細胞培養培地は25μLを残してすべてを各ウェルから除去して、ATPlite試薬25μl(Perkin Elmer)を各ウェルに添加した。LEADSeeker発光カウンタ(GE Healthcare Life Sciences)にATPlite試薬を添加した5分以内に、発光を測定した。DMSO処理対照に対する試験化合物処理試料の発光低下を計算することによって濃度応答曲線を作成して、これらの曲線から増殖阻害(IC50)値を決定した。
【0221】
上で詳説したように、本発明の化合物はPI3Kを阻害する。ある実施形態において、本発明の化合物はIC50<5.0μMを有する。他の実施形態において、本発明の化合物はIC50<1.0μMを有する。本発明のまた他の実施形態において、本発明の化合物はIC50<0.1μMを有する。
【0222】
我々は本発明のいくつかの実施形態について述べてきたが、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために、我々の基本実施例が改変され得ることが明らかである。したがって本発明の範囲が、例証として示されている特定の実施形態によってよりもむしろ、添付請求項によって定義されるべきであることが認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化29】


またはその製薬的に許容される塩(式中:
は、H、−CN、−COOR1a、または−CON(R1aであり、
ここでR1aの各出現は独立して、水素または場合により置換されたC1−4脂肪族であり;
は、−Z−R、または−Rであり、ここで:
Zは、場合により置換されたC1−3アルキレン鎖、−O−、−N(R2a)−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−CO−、−C(O)NR2a−、−N(R2a)C(O)−、−N(R2a)CO−、−S(O)NR2a−、−N(R2a)S(O)−、−OC(O)N(R2a)−、−N(R2a)C(O)NR2a−、−N(R2a)S(O)N(R2a)−、または−OC(O)−から選択され、
2aは、水素または場合により置換されたC1−4脂肪族であり、および
は、C1−6脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり、
は、−V−R3c、−T−R3b、または−V−T−R3bであり、ここで:
は、−C(O)−、−NR3a−、−CO−、−C(O)NR3a−、−C(O)NR3aO−、−NR3aC(O)NR3a−、−NR3aS(O)−、または−NR3aS(O)NR3a−であり;
3aの各出現は独立して、水素またはC1−6脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される場合により置換された基であり;
は、場合により置換されたC−Cアルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖は場合により、−N(R3a)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R3a)−、−S(O)N(R3a)−、−OC(O)N(R3a)−、−N(R3a)C(O)−、−N(R3a)SO−、−N(R3a)C(O)O−、−NR3aC(O)N(R3a)−、−N(R3a)S(O)N(R3a)−、−OC(O)−、もしくは−C(O)N(R3a)−O−によって割り込まれ、またはここでTは、場合により置換された3〜7員脂環式もしくはヘテロシクリル環の一部を形成し;
3bの各出現は独立して、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−N(R3a、−OR3a、−SR3a、−S(O)3a、−C(O)R3a、−C(O)OR3a、−C(O)N(R3a、−S(O)N(R3a、−OC(O)N(R3a、−N(R3a)C(O)R3a、−N(R3a)SO3a、−N(R3a)C(O)OR3a、−N(R3a)C(O)N(R3a、もしくは−N(R3a)SON(R3a、または3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
3cの各出現は独立して、水素またはC1−6脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり、または
3aおよびR3cは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する、場合により置換された4〜7員ヘテロシクリル環を形成し;
の各出現は独立して、−R4a、−T−R4d、または−V−T−R4dであり、ここで:
4aの各出現は、価数および安定性が許す限り、独立して、フッ素、=O、=S、−CN、−NO、−R4c、−N(R4b、−OR4b、−SR4c、−S(O)4c、−C(O)R4b、−C(O)OR4b、−C(O)N(R4b、−S(O)N(R4b、−OC(O)N(R4b、−N(R4e)C(O)R4b、−N(R4e)SO4c、−N(R4e)C(O)OR4b、−N(R4e)C(O)N(R4b、もしくは−N(R4e)SON(R4bであり、またはR4bの2回の出現は、それらが結合される窒素原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する、場合により置換された4〜7員ヘテロシクリル環を形成し;
4bの各出現は独立して、水素またはC−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
4cの各出現は独立して、C−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
4dの各出現は独立して、水素または3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
4eの各出現は独立して、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり;
の各出現は独立して、−N(R4e)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R4e)−、−S(O)N(R4e)−、−OC(O)N(R4e)−、−N(R4e)C(O)−、−N(R4e)SO−、−N(R4e)C(O)O−、−NR4eC(O)N(R4e)−、−N(R4e)SON(R4e)−、−OC(O)−、または−C(O)N(R4e)−O−であり;そして
は、場合により置換されたC−Cアルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖は場合により、−N(R4a)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R4a)−、−S(O)N(R4a)−、−OC(O)N(R4a)−、−N(R4a)C(O)−、−N(R4a)SO−、−N(R4a)C(O)O−、−NR4aC(O)N(R4a)−、−N(R4a)S(O)N(R4a)−、−OC(O)−、または−C(O)N(R4a)−O−によって割り込まれ、またはここでTもしくはその一部は、場合により置換された3〜7員脂環式もしくはヘテロシクリル環の一部を場合により形成し;
nは0〜6であり;
mは、0、1、または2であり;
pは、0、1、または2であり;そして
Xは、
(a)RがHであるとき、Rは、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;そして
(b)式Iの化合物が:
(i)2−チオフェンカルボン酸、3−(4−クロロフェニル)−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−;
(ii)2−チオフェンカルボン酸、3−(4−クロロフェニル)−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−;
(iii)3−チオフェンカルボニトリル、5−ベンゾイル−4−(メチルアミノ)−2−(4−モルホリニル)−;
(iv)アセトアミド、N−[2−ベンゾイル−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−3−チエニル]−2−ヨード−
(v)アセトアミド、N−[2−ベンゾイル−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−3−チエニル]−2−クロロ−;
(vi)アセトアミド、N−[2−ベンゾイル−4−シアノ−5−(4−モルホリニル)−3−チエニル]−2−クロロ−N−メチル−;または
(vii)2−プロペン酸(Propenoid acid)、3−[3−(4−クロロフェニル)−5−(4−モルホリニル)−2−チエニル]−、メチルエステル以外である、という条件で、O、S、C(O)、S(O)、S(O)、−CHF、−CF、または−CHOHである)。
【請求項2】
1個以上の置換基が:
(a)XはOである;
(b)RはCNである;
(c)Rは、場合により置換された6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールである;
(d)Rは、V−R3cまたは−V−T−R3bから選択される;
(e)nは0〜2である;または
(f)Rは−R4aである、から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、−CON(R3a)(R3c)、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)、−COOR3c;−CON(R3a)−T−R3b、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)−T−R3b、または−COOR3c−T−R3bから選択され、ここでTは、−O−、−NHC(O)−、−C(O)NH−または−NH−の1回の出現により場合により割り込まれる、場合により置換されたC−Cアルキレンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、Rの1〜4回の独立した出現によって場合により置換され、ここでRが、−R7a、−T−R7d、または−V−T−R7dであり、および:
7aの各出現が独立して、ハロゲン、−CN、−NO、−R7c、−N(R7b、−OR7b、−SR7c、−S(O)7c、−C(O)R7b、−C(O)OR7b、−C(O)N(R7b、−S(O)N(R7b、−OC(O)N(R7b、−N(R7e)C(O)R7b、−N(R7e)SO7c、−N(R7e)C(O)OR7b、−N(R7e)C(O)N(R7b、もしくは−N(R7e)SON(R7bであり、またはR7bの2回の出現は、それらが結合される窒素原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する、場合により置換された4〜7員ヘテロシクリル環を形成し;
7bの各出現が独立して、水素またはC−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
7cの各出現が独立して、C−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
7dの各出現が独立して、水素または3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
7eの各出現が独立して、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり;
の各出現が独立して、−N(R7e)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R7e)−、−S(O)N(R7e)−、−OC(O)N(R7e)−、−N(R7e)C(O)−、−N(R7e)SO−、−N(R7e)C(O)O−、−NR7eC(O)N(R7e)−、−N(R7e)SON(R7e)−、−OC(O)−または−C(O)N(R7e)−O−であり;そして
が、場合により置換されたC−Cアルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖が、−N(R7a)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R7a)−、−S(O)N(R7a)−、−OC(O)N(R7a)−、−N(R7a)C(O)−、−N(R7a)SO−、−N(R7a)C(O)O−、−NR7aC(O)N(R7a)−、−N(R7a)S(O)N(R7a)−、−OC(O)−、または−C(O)N(R7a)−O−によって場合により割り込まれ、またはここでTもしくはその一部は、場合により置換された3〜7員脂環式またはヘテロシクリル環の一部を場合により形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
XがOであり、RがCNであり、化合物が式I−Aによって表される、請求項1に記載の化合物:
【化30】



【請求項6】
が、場合により置換された3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールであり;
が、V−R3cまたは−V−T−R3bから選択され;
nが0〜2であり;そして
が−R4aである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、場合により置換された6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリール環であり;ここでRが、Rの1〜4回の独立した出現によって場合により置換され、ここでRは、−R7a、−T−R7d、または−V−T−R7dであり、および:
7aの各出現が独立して、ハロゲン、−CN、−NO、−R7c、−N(R7b、−OR7b、−SR7c、−S(O)7c、−C(O)R7b、−C(O)OR7b、−C(O)N(R7b、−S(O)N(R7b、−OC(O)N(R7b、−N(R7e)C(O)R7b、−N(R7e)SO7c、−N(R7e)C(O)OR7b、−N(R7e)C(O)N(R7b、または−N(R7e)SON(R7bであり;
7bの各出現が独立して、水素またはC−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり、またはR7bの2回の出現は、それらが結合された窒素原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0〜1個のさらなるヘテロ原子を有する、場合により置換された4〜7員ヘテロシクリル環を形成し;
7cの各出現が独立して、C−C脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
7dの各出現が独立して、水素または3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり;
7eの各出現が独立して、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり;
の各出現が独立して、−N(R7e)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R7e)−、−S(O)N(R7e)−、−OC(O)N(R7e)−、−N(R7e)C(O)−、−N(R7e)SO−、−N(R7e)C(O)O−、−NR7eC(O)N(R7e)−、−N(R7e)SON(R7e)−、−OC(O)−または−C(O)N(R7e)−O−であり;そして
が、場合により置換されたC−Cアルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖は、−N(R7a)−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N(R7a)−、−S(O)N(R7a)−、−OC(O)N(R7a)−、−N(R7a)C(O)−、−N(R7a)SO−、−N(R7a)C(O)O−、−NR7aC(O)N(R7a)−、−N(R7a)S(O)N(R7a)−、−OC(O)−、もしくは−C(O)N(R7a)−O−によって場合により割り込まれ、またはここでTもしくはその一部は、場合により置換された3〜7員脂環式またはヘテロシクリル環の一部を場合により形成し;
が、−CON(R3a)(R3c)、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)、−COOR3c、−CON(R3a)−T−R3b、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)−T−R3b、またはCOOR3c−T−R3bから選択され、ここでTが、−O−、−NHC(O)−、−C(O)NH−または−NH−の1回の出現により場合により割り込まれる、場合により置換されたC−Cアルキレンであり、R3aが、水素または場合により置換されたC1−6脂肪族基であり、R3bが、水素、ハロゲン、OR3a、または6〜10員アリールまたは窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールから選択される、場合により置換された基であり、およびR3cが、水素、C1−6脂肪族、3〜10員脂環式、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する4〜10員ヘテロシクリル、6〜10員アリール、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜5個のヘテロ原子を有する5〜10員ヘテロアリールであり;そして
nが0〜2である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、ハロゲン、−CN、−NO、−R9c、−N(R9b、−OR9b、−SR9c、−S(O)9c、−C(O)R9b、−C(O)OR9b、−C(O)N(R9b、−S(O)N(R9b、−OC(O)N(R9b、−N(R9e)C(O)R9b、−N(R9e)SO9c、−N(R9e)C(O)OR9b、−N(R9e)C(O)N(R9b、または−N(R9e)SON(R9bの1〜3回の独立した出現によって置換されたフェニル基であり;
が、−CON(R3a)(R3c)、−NR3aC(O)N(R3a)(R3c)、または−COOR3cから選択され、ここでR3aが、水素または場合により置換されたC−C脂肪族基であり、R3cは、水素または場合により置換されたC−C脂肪族基であり;そして
nが0である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が、ハロ、C1−3アルキル、CN、C1−3ハロアルキル、−OC1−3アルキル、−OC1−3ハロアルキル、−NHC(O)C1−3アルキル、−NHC(O)NHC1−3アルキル、NHS(O)1−3アルキル、または−COHの1〜3回の独立した出現によって置換されたフェニル基である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
化合物が:
【化31】


【化32】


【化33】


【化34】


【化35】


【化36】


【化37】


【化38】


【化39】


【化40】


【化41】


【化42】


【化43】


から成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物および製薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項12】
患者の増殖性障害を処置する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を該患者に投与する工程を含む方法。
【請求項13】
前記増殖性障害が乳癌、膀胱癌、結腸癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肺癌、肝細胞癌、胃癌、黒色腫、甲状腺癌、子宮内膜癌、腎癌、子宮頸癌、膵臓癌、食道癌、前立腺癌、脳の癌、または卵巣癌である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
患者の炎症性障害または心血管障害を処置する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を該患者に投与する工程を含む方法。
【請求項15】
前記炎症性障害または心血管障害がアレルギー/アナフィラキシー、急性および慢性炎症、関節リウマチ;自己免疫疾患、血栓症、高血圧症、心臓肥大、および心不全から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者のPI3K活性を阻害するための方法であって、該患者のPI3K活性を阻害するのに有効な量の請求項1に記載の化合物を含む組成物を投与する工程を含む方法。

【公表番号】特表2011−510080(P2011−510080A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544359(P2010−544359)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/000513
【国際公開番号】WO2009/094224
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】