説明

チオフェンカルボキサミド誘導体の製造方法

本発明は疼痛および炎症を治療するために有用なEP4アンタゴニストであるチオフェンカルボキサミド誘導体の製造方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性および慢性の疼痛、骨関節炎およびリウマトイド関節炎のようなプロスタグランジンE媒介疾患を治療するために有用なEP4アンタゴニストであるチオフェンカルボキサミド誘導体の製造方法に関する。化合物はE型プロスタグランジンの疼痛作用および炎症作用のアンタゴニストでありNSAID類およびアヘン剤とは構造的に異なっている。
【背景技術】
【0002】
3つの研究論文がプロスタノイド受容体ならびに最も一般的に使用されている選択的アゴニストおよびアンタゴニストのキャラクタリゼーションおよび治療適性を記載している:Eicosanoids:From Biotechnology to Therapeutic Applications,Folco,Samuelsson,Maclouf,and Velo eds,Plenum Press,New York,1996,chap.14,137−154;Journal of Lipid Mediators and Cell Signalling,1996,14,83−87;およびProstaglandins and Other Lipid Mediators,2002,69,557−573。
【0003】
すなわち、プロスタグランジンの選択的リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストは、プロスタグランジンEのどのサブタイプを考察するかによって、慣用の非ステロイド系抗炎症薬と同様の抗炎症性、下熱性および鎮痛性を有しており、さらに、血管ホメオスタシス、再生、胃腸機能および骨代謝に効果を有している。これらの化合物は、シクロオキシゲナーゼの無差別インヒビターであるNSAID類のメカニズムに基づく副作用のいくつかを誘発する能力が減少している。特に、化合物は、潜在的胃腸毒性の減少、潜在的腎作用の減少、出血時間の短縮効果およびアスピリン感受性喘息患者の喘息発作誘発能力の減少を示すと考えられている。
【0004】
The Journal of Clinical Investigation(2002,110,651−658)に収載の研究論文は、コラーゲン抗体注射によってマウスに誘発した慢性炎症がPGE2受容体の主としてEP4サブタイプを介して媒介されることを示唆している。特許出願公開WO 96/06822(1996年3月7日)、WO 96/11902(1996年4月25日)およびEP 752421−A1(1997年1月8日)は、化合物がプロスタグランジン媒介疾患の治療に有用であると開示している。
【0005】
EP4アンタゴニストとして有用なチオフェンカルボキサミド誘導体およびこのような化合物の製造方法は2006年8月11日出願の米国仮出願第60/837,252号に開示されている。上記参考文献に開示された合成方法は少量の材料の製造には十分であるが、安全性、低収率または長時間処理などの様々な問題があり大規模合成が難しい。本発明は発症前、臨床用および市販用の材料をキログラム規模の量で生産するために有用な効率的で経済的な方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第96/06822号
【特許文献2】国際公開第96/11902号
【特許文献3】欧州特許出願公開第752421号
【特許文献4】米国仮特許出願第60/837,252号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Eicosanoids:From Biotechnology to Therapeutic Applications,Folco,Samuelsson,Maclouf,and Velo eds,Plenum Press,New York,1996,chap.14,137−154
【非特許文献2】Journal of Lipid Mediators and Cell Signalling,1996,14,83−87
【非特許文献3】Prostaglandins and Other Lipid Mediators,2002,69,557−573
【非特許文献4】The Journal of Clinical Investigation(2002,110,651−658
【発明の概要】
【0008】
本発明は、疼痛および炎症を治療するために有用なEP4アンタゴニストであるチオフェンカルボキサミドの製造方法を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、式I
【0010】
【化1】

の化合物または医薬的に許容されるその塩を合成するための、
(a1)式5
【0011】
【化2】

の化合物をジメチルホルムアミドの存在下で第一塩素化剤と反応させて式5a
【0012】
【化3】

の酸塩化物を生成し、式5aの化合物を式7
【0013】
【化4】

の化合物とアミン塩基の存在下で反応させて式8
【0014】
【化5】

の化合物を生成させる段階と、
(b1)式8の化合物を式X−OHまたはX−(OH)[式中、Xはカリウム、セシウム、リチウム、ナトリウムおよびルビジウムから成るグループから選択され、Xはバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから成るグループから選択される。]の強塩基で加水分解し、次いで酸性化して式Iの化合物を生成させる段階と、
(c1)任意選択により、式Iの化合物を塩基と反応させて式Iの化合物の医薬的に許容される塩を生成させる段階とを含む方法を包含する。
【0015】
上記段階(a1)から(c1)には以下の量の試薬を使用するとよい(処理段階の第一試薬に対して):1から2当量の第一塩素化剤、0.01から0.1当量のジメチルホルムアミド、0.8から1.5当量の化合物7、1から2当量のアミン塩基、1から10当量の強塩基、酸性化段階で使用される1から10当量の酸および医薬的に許容される塩の形成に使用される1から1.5当量の塩基。
【0016】
“第一塩素化剤”および“第二塩素化剤”という用語は独立に、カルボン酸と反応して塩化チオニル、五塩化リンおよび塩化オキサリルのような酸塩化物を形成する試薬を意味する。本発明の1つの実施態様は、塩素化剤が塩化オキサリルである本発明の方法を包含する。
【0017】
アミン塩基はたとえば、第一級、第二級および第三級アミン、天然存在置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、たとえば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(Hunig塩基)、ジエチルアミン、トリエチルアミンおよびジプロピルアミンを意味する。本発明の1つの実施態様はアミン塩基がN,N−ジイソプロピルエチルアミンである本発明の方法を包含する。
【0018】
“酸性化”という用語は、HClのような適切な酸の付加を意味する。
【0019】
“塩基”という用語は、式Iの化合物と共に医薬的に許容される塩を形成する適切な塩基を意味する。医薬的に許容される有機の無毒性塩基から誘導された塩は、第一級、第二級および第三級アミン、天然存在置換アミンを含む置換アミン、環状アミンの塩、ならびに、塩基性イオン交換樹脂たとえばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジレエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどを含む。本発明の1つの実施態様は、塩基がジエチルアミンである本発明の方法を包含する。無機塩基から誘導された塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを含む。無機塩基から誘導された好ましい塩はナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩を含む。
【0020】
本発明はまた、
(d1)式4
【0021】
【化6】

の化合物をメチルtert−ブチルエーテルの溶媒中でテトラメチルエチレンジアミンの存在下に約55℃以下の温度で有機リチウム試薬と反応させ、得られた混合物をCO次いで酸と反応させて式5の化合物を生成させることによって式5の化合物を製造する段階をさらに含む上記段階(a1)から(c1)に記載の方法を包含する。
【0022】
上記段階(d1)には以下の量の試薬を使用するとよい(処理段階の第一試薬に対して):1から1.2当量の有機リチウム試薬、1から1.5当量のテトラメチルエチレンジアミン、1kgの化合物4に対して5から20Lのメチルtert−ブチルエーテル、1から10当量のCOおよび1から10当量の酸。
【0023】
有機リチウム試薬は、炭素とリチウム原子との間に直接結合をもつ有機金属化合物を意味する。実例は、メチルリチウム、n−ブチルリチウムおよびt−ブチルリチウムを含む。本発明の1つの実施態様は、有機リチウム試薬がn−ブチルリチウムである本発明の方法を包含する。
【0024】
酸という用語は、塩酸および硫酸のようないずれかの適正な酸を意味する。本発明の1つの実施態様においては酸がHClである。
【0025】
本発明はまた、
(e1)式I
【0026】
【化7】

の化合物をジメチルホルムアミドの存在下で第二塩素化剤と反応させて式Ia
【0027】
【化8】

の酸塩化物を生成させ、式Iaの化合物を第一ルイス酸試薬または第一の強ブレンステッド酸の存在下で2,5−ジメチルチオフェンと反応させて式2
【0028】
【化9】

の化合物を生成させる段階、
(f1)式2の化合物を亜鉛塩触媒の存在下で臭素化剤と反応させて式3
【0029】
【化10】

の化合物を生成させる段階、および、
(g1)式3の化合物を第二ルイス酸試薬または第二の強ブレンステッド酸の存在下でシラン還元剤で還元して式4の化合物を生成させることによって式4の化合物を製造する段階をさらに含む上記の段階(a1)から(d1)に記載の方法を包含する。
【0030】
上記段階(e1)から(g1)には以下の量の試薬を使用するとよい(処理段階の第一試薬に対して):1から2当量の第二塩素化剤、0.01から0.1当量のジメチルホルムアミド、0.8から1.5当量の2,5−ジメチルチオフェン、1から2当量の第一ルイス酸試薬または第一の強ブレンステッド酸、0.5から2当量の臭素化剤、0.01から0.2当量の亜鉛塩触媒、1から10当量のシラン還元剤、1から100当量の第二ルイス酸試薬または第二の強ブレンステッド酸。
【0031】
“第一ルイス酸試薬”および“第二ルイス酸試薬”という用語は独立に、電子対受容体を意味する。このような試薬の実例は、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、臭化アルミニウム、塩化鉄(III)、五塩化ニオブ、イッテルビウム(III)トリフラート、四塩化チタンなどを含む。本発明の1つの実施態様においては第一ルイス酸試薬および第二ルイス酸試薬が四塩化チタンである。“第一の強ブレンステッド酸”および“第二の強ブレンステッド酸”という用語は独立に、別の化合物に水素イオンを供与する化合物、たとえばトリフルオロ酢酸、硫酸、フッ化水素、リン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸を意味する。
【0032】
“臭素化剤”という用語は、分子に臭素を導入できる化合物を意味する。実例は、Br、三臭化リン、塩化臭素および三臭化アルミニウムを含む。本発明の1つの実施態様においては臭素化剤がBrである。
【0033】
“亜鉛塩触媒”という用語は、ルイス酸として作用する亜鉛の塩を意味する。実例は、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛、ヨウ化亜鉛および酸化亜鉛またはそれらの混合物を含む。本発明の1つの実施態様においては亜鉛塩触媒がZnClである。
【0034】
“シラン還元剤”という用語は、カルボニル基質を還元できるシラン化合物を意味する。実例は、トリアルキルシラン、ジアルキルシランまたはトリアルコキシシランを含む。より具体的な例はジメチルシラン、ジエチルシラン、トリメトキシシランおよびトリエトキシシランを含む。本発明の1つの実施態様においてはシラン還元剤がEtSiHである。
【0035】
本発明はまた、
(h1)式6
【0036】
【化11】

の化合物を式EtMgX[式中、Xはハロゲン化物]のエチルグリニャール試薬とチタンイソプロポキシドの存在下で反応させ、次いで三ハロゲン化ホウ素と反応させて式7の化合物を生成させることによって式7の化合物を製造する段階をさらに含む上記段階(a1)から(c1)に記載の方法を包含する。
【0037】
上記段階(h1)には以下の量の試薬を使用するとよい(処理段階の第一試薬に対して):2から4当量のエチルグリニャール試薬、1から2当量のチタンイソプロポキシドおよび1から4当量の三ハロゲン化ホウ素。
【0038】
エチルグリニャール試薬の実例はエチルマグネシウムブロミドおよびエチルマグネシウムクロリドを含む。本発明の1つの実施態様においてはグリニャール試薬がEtMgBrである。
【0039】
“三ハロゲン化ホウ素”という用語はBX[式中、XはF、ClまたはBr、もしくは、エーテル付加物のようなそれらの付加物である。]を意味する。本発明の1つの実施態様においては三ハロゲン化ホウ素が三フッ化ホウ素ジエチルエーテルである。
【0040】
本発明はまた、
(i1)2,5−ジメチルチオフェンを式11
【0041】
【化12】

の化合物と第一遷移金属塩試薬および強酸の存在下で反応させて式12
【0042】
【化13】

の化合物を生成させ、
(j1)式12の化合物を亜鉛塩触媒の存在下で臭素化剤と反応させて式4の化合物を生成させることによって式4の化合物を製造する段階を含む上記段階(a1)から(d1)に記載の方法を包含する。
【0043】
上記段階(i1)から(j1)には以下の量の試薬を使用するとよい(処理段階の第一試薬に対して):0.5から2当量の化合物11、0.1から1当量の第一遷移金属塩試薬、0.1から1当量の強酸、0.5から2当量の臭素化剤および0.01から0.2当量の亜鉛塩触媒。
【0044】
“第一遷移金属塩試薬”という用語は、ルイス酸として作用する遷移金属の塩を意味する。実例は、COCl、CuBr、CuCl、CuBr、CuCl、FeCl、Fe(OAc)、[Fe(アセチルアセトン)]、FeCl、Fe(ClO、Fe(BF、MnO、MnCl、MnSO、ZnCl、Zn(OAc)およびそれらの水和物を含む。鉄(III)塩が好ましい。本発明の1つの実施態様においては第一遷移金属試薬がFeClである。
【0045】
“強酸”という用語は、たとえばスルホン酸、好ましくはメチルスルホン酸を意味する。これは本発明の1つの実施態様である。
【0046】
“臭素化剤”および“亜鉛塩触媒”という用語は上記の定義通りである。
【0047】
本発明は、式I
【0048】
【化14】

の化合物または医薬的に許容されるその塩を合成するための、
(a2)式12
【0049】
【化15】

の化合物を式13
【0050】
【化16】

の化合物と第一遷移金属塩試薬の存在下で反応させて式8
【0051】
【化17】

の化合物を生成させる段階と、
(b2)式8の化合物を式X−OHまたはX−(OH)[式中、Xはカリウム、セシウム、リチウム、ナトリウムおよびルビジウムから成るグループから選択され、Xはバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから成るグループから選択される。]の強塩基と反応させ、次いで酸性化して式Iの化合物を生成させる段階と、
(c2)任意選択により、式Iの化合物を塩基と反応させて式Iの化合物の医薬的に許容される塩を生成させる段階とを含む方法を包含する。
【0052】
上記段階(a2)から(c2)には以下の量の試薬を使用するとよい(処理段階の第一試薬に対して):0.8から1.5当量の化合物13、0.5から2当量の第一遷移金属塩触媒、1から10当量の強塩基、酸性化段階で使用される1から10当量の酸および医薬的に許容される塩の形成段階で使用される1から1.5当量の塩基。
【0053】
“第一遷移金属塩試薬”、“酸性化”および“塩基”という用語は上記の定義通りである。
【0054】
本発明はまた、
(d2)2,5−ジメチルチオフェンを式11
【0055】
【化18】

の化合物と第一遷移金属塩試薬と強酸との存在下で反応させて式12の化合物を生成させることによって式12の化合物を製造する段階をさらに含む上記段階(a2)から(c2)の方法を包含する。
【0056】
上記段階(d2)には以下の量の試薬を使用するとよい(処理段階の第一試薬に対して):0.5から2当量の化合物11、0.1から1当量の第二遷移金属塩試薬および0.1から1当量の強酸。
【0057】
“第二遷移金属塩試薬”という用語は、“第一遷移金属塩試薬”と同じ意味であるが、その定義には従属しない。本発明の1つの実施態様においては第一遷移金属試薬がFeClである。
【0058】
“強酸”という用語は上記の定義通りである。
【0059】
本発明はまた、
(e2)式7
【0060】
【化19】

の化合物をアミン塩基の存在下でCOClと反応させて式13の化合物を生成させることによって式13の化合物を製造する段階をさらに含む上記段階(a2)から(c2)に記載の方法を包含する。
【0061】
段階(d2)には以下の量の試薬を使用するとよい(処理段階の第一試薬に対して):1から2当量のCOClおよび1から2当量のアミン塩基。
【0062】
“アミン塩基 という用語は上記の定義通りである。
【0063】
具体的な記載がない限り、すべての反応は平均的な技量をもつ当業者が以下の実施例に基づいて容易に選択できる適当な溶媒中で行われる。
【0064】
本発明はまた、式I
【0065】
【化20】

の化合物のジエチルアミン塩を包含する。
【0066】
以下の略号は以下に指定の意味を有している:
DIPEA=N,N’−ジイソプロピルエチルアミン
Et=エチル
DCE=ジクロロエタン
DMF=ジメチルホルムアミド
HATU=2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートメタナミニウム
Me=メチル
Ms=メシル
MTBE=メチル t−ブチルエーテル
NBS=N−ブロモスクシンイミド
Ph=フェニル
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
TMEDA=テトラメチルエチレンジアミン
【実施例】
【0067】
実施例A
4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}安息香酸ジエチルアミン塩
【0068】
【化21】

【0069】
段階1 − シクロプロパン化
【0070】
【化22】

【0071】
【表1】

【0072】
機械的撹拌器と熱電対と窒素流入口とを備えた目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコに、ニトリル−エステル6(2.60Kg,1.00当量)およびトルエン(40L,15mL/g)を充填した。2−プロパノールおよびドライアイスを満たした冷却浴を使用して混合物を−25℃に冷却した。Ti(OiPr)(4.73L,1.00当量)を溶液に5分間で添加した。反応混合物の温度を−25℃から−13℃の間に維持しながらエチルマグネシウムブロミド(10.5L,2.0当量)を2時間で添加した。混合物を−20℃で30分間熟成した。反応混合物を−24℃から−8℃の間に維持しながら三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(4.09L)を40分間で添加した。混合物を−20℃で30分間熟成し、次にHLPCによって変換率を測定すると、93%であることを示した。HClを添加して反応停止させた。20L(7.5mL/g)の3NのHClを反応混合物にゆっくりと(30分間で)添加すると39℃の発熱が生じた(−16℃→+23℃に発熱)。有機層を抽出装置に移し入れ、次に残りのHCl(20L,7.5mL/g)をフラスコに加えてアミン塩を溶解させた。10分間撹拌後、水層を抽出装置に移し入れた。混合物を10分間撹拌し、次に層分離させた。水層をトルエン(13L,5mL/g)で洗浄した。水層を2×10mL/g(2×26L)および2×5mL/g(2×13L)の2−Me−THFで抽出した。集めたMe−THF層を3NのNaOH(26L,10mL/g)で洗浄し、10NのNaOH(1.6L)を使用してNaOH溶液のpHをpH9に調整した後で層分離させた。有機層をブライン(13L,5mL/g)で洗浄した。シクロプロピルアミン7のアッセイ収率を濃縮前のMe−THF層で測定すると、43.2%(1.334Kg)であることを示した。水層への損失は3.8%以下であった。
【0073】
段階2 − シクロプロピルアミン、メタンスルホン酸塩形成
【0074】
【化23】

【0075】
【表2】

【0076】
機械的撹拌器と熱電対と窒素流入口と冷却浴とを備えた目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコに、シクロプロピルアミン7(2.63Kg,1.00当量)およびTHF(32L,12mL/g)を充填した。溶液にMsOH(1.00L,1.12当量)をTHF(4.0L,1.5mL/g)溶液として2時間で添加した。最初の10分の添加後、種晶(500mg)を添加して結晶化を開始させた。溶液を室温で15時間撹拌した。懸濁液を濾過し、少量の母液ですすいだ。低温THF(2×8L,2×3mL/g)で塩を2回洗浄し、次にフリットで3時間乾燥した。塩を真空オーブンに入れ、先ず30℃で20時間次に50℃で60時間乾燥した。得られた材料の収量は3.93Kgであり、これは94.4重量%であった(収率=92.9%)。母液への損失は8.2g(0.3%)であった。
【0077】
段階3 − メタンスルホン酸塩分解
【0078】
【化24】

【0079】
【表3】

【0080】
機械的撹拌器と熱電対と窒素流入口とを備えた目視で清浄な160L容の5つ口丸底フラスコに、MsOH塩(3.85Kg,1.00当量)およびiPAc(39L,10mL/g)を充填した。溶液に2MのKPO(19L,5mL/g)を添加した。懸濁液中に固体が残存しないように溶液を室温で2時間撹拌して塩を完全に分解した。層分離させた。有機層を水(19L,5mL/g)で1回、飽和NaCl水溶液(19L,5mL/g)で1回洗浄した。iPAc溶液についてシクロプロピルアミンのアッセイ収率を点検すると2.445Kg(98.8%)であることを示した。水層への損失は0.1%以下であった。iPAc層を回転蒸発器で濃縮し10LのTHFでフラッシした。
【0081】
段階4 − 酸塩化物形成およびフリーデル−クラフツアシル化
【0082】
【化25】

【0083】
【表4】

【0084】
目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコに機械的撹拌器と還流コンデンサーと内部温度プローブと窒素流入口とを配備し、20リットルの5NのNaOHを満たしたスクラバーに接続した。フラスコにクロロベンゼン、安息香酸1および塩化オキサリルを充填し、次に内部温度が50℃に達するまで蒸気浴で加熱した。次にDMFを滴下した。
【0085】
DMFの添加によって活発なガスの発生が観察された。20分後に蒸気浴のスイッチを切ったが、反応混合物は45から50℃の内部温度を維持していた。1時間後、濁った反応混合物のアリコートをHPLCアッセイにかけると、酸1から酸塩化物1aへの変換率は96%を示した。
【0086】
内部温度が22℃に降下した後、ジメチルチオフェンを反応装置に一度に添加し、次いで塩化チタン(IV)を添加漏斗から1時間で添加した。
【0087】
塩化チタン(IV)の添加中に内部温度が最高36℃まで上昇するのが観察された。粗混合物を室温で一夜放冷した。
【0088】
目視で清浄な160容の抽出装置に1NのHClを充填した。激しく撹拌しながら粗反応混合物を抽出装置に移し入れた(内部温度プローブは反応混合物の温度が22℃から34℃に変化したことを示した)。5分間の激しい撹拌後に相分離させた。有機層(下部)を除去し、水層をヘプタンで逆抽出した。有機相を集めて、ハーフ−ブラインで洗浄し、次に20ミクロンフィルターを使用して機械的撹拌器を備えバッチ濃縮装置に接続された目視で清浄な100L容の丸底フラスコに濾過した。真空下に溶媒を除去すると、淡褐色の油が得られた。
【0089】
淡褐色の油が15.61kgになるまで材料を濃縮した後、HPLC分析用アリコートを採取した。HPLC分析は材料が52.77重量%、すなわち8.24kgのケトン2を含み、92.4%のアッセイ収率であることを示した。
【0090】
酸と触媒DMFとを最初に混合しておきガス発生速度を調節するために塩化オキサリルをゆっくりと添加するならば反応がより容易(また、特に量産の場合にはより安全)であることに注目されたい。
【0091】
段階5 − 臭素化
【0092】
【化26】

【0093】
【表5】

【0094】
目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコに機械的撹拌器と添加漏斗と内部温度プローブと窒素流入口とを配備し、20リットルの5NのNaOHを満たしたスクラバーに接続した。フラスコにケトン2、クロロベンゼンおよび塩化亜鉛を充填し、次に外部氷水浴で内部温度が16℃に達するまで冷却した。添加漏斗に臭素を充填し、次に1時間で添加した。
【0095】
臭素の添加中に内部温度が最高26℃に上昇するのが観察された。添加の完了後、混合物を15分間激しく撹拌した。
【0096】
目視で清浄な160リットル容の抽出装置に1NのHClを充填した。激しく撹拌しながら粗反応混合物を抽出装置に移し入れた(内部温度プローブは反応混合物の温度が22℃から34℃に変化したことを示した)。5分間の激しい撹拌後に相分離させた。有機層(下部)を除去し、水層をヘプタンで逆抽出した。有機相を集めて、ハーフ−ブラインで洗浄し、次に機械的撹拌器を配備しバッチ濃縮装置に接続した目視で清浄な100L容の丸底フラスコに移し入れた。真空下に40Lのヘプタンフラッシによって溶媒を除去すると、淡褐色の油が得られた。
【0097】
淡褐色の油が10.29kgになるまで材料を濃縮した後、HPLC分析用アリコートを採取した。HPLC分析は材料が80.0重量%すなわち8.35kgのブロモ−ケトン3を含み、93.6%のアッセイ収率であることを示した。
【0098】
段階6 − 還元
【0099】
【化27】

【0100】
【表6】

【0101】
目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコに機械的撹拌器と添加漏斗と内部温度プローブと窒素流の入口および出口とを配備した。フラスコにブロモケトン3、トリエチルシランおよびジクロロメタンを充填し、次に外部イソプロパノール/CO浴で内部温度が−1℃に達するまで冷却した。塩化チタン(IV)を添加漏斗に充填し、次に1時間で添加した。
【0102】
塩化チタン(IV)の添加中に内部温度が最高30℃に上昇するのが観察された。添加の完了後も発熱は継続し0.5時間で内部温度が最高43℃に到達した。混合物をさらに2時間撹拌すると、撹拌中に温度が8℃に低下した。
【0103】
目視で清浄な160容の抽出装置に1NのHClを充填した。激しく撹拌しながら粗反応混合物を抽出装置に移し入れた(内部温度プローブは反応混合物の温度が22℃から34℃に変化したことを示した)。5分間の激しい撹拌後に相分離させた。有機層(下部)を除去し、水層をヘプタンで逆抽出した。有機相を集めて水洗した。
【0104】
機械的撹拌器を備えた目視で清浄な100L容の丸底フラスコに各40Lの2つの部分量に分けた粗有機相を移し入れ、4kgのシリカと共に撹拌した。1時間の撹拌後、材料をガラスフリットで濾過し、ヘプタン(5L)で洗浄した。濾過した粗有機物を次に目視で清浄な100L容の丸底フラスコに移し入れ、バッチ濃縮装置に接続した。真空下で加熱しながら40Lのトルエンフラッシ次いで40Lのヘプタンフラッシによって溶媒を除去すると、淡褐色の油が得られた。ヘプタン(40L)およびシリカゲル(8kg)を反応フラスコに添加し、材料を窒素下で72時間撹拌した。スラリーをガラスフリットで濾過し、ヘプタン(15L)で洗浄した。濾過した粗有機物を次に目視で清浄な100L容の丸底フラスコに移し入れ、バッチ濃縮装置に接続した。真空下で溶媒を除去すると淡褐色の油が得られた。
【0105】
淡褐色の油が8.31kgになるまで材料を濃縮した後、HPLC分析用アリコートを採取した。HPLC分析は、材料が36.30重量%すなわち3.02kgのブロモアルカン4であり、37.6%のアッセイ収率であることを示した。
【0106】
この段階の低収率の原因は還元生成物の重合であった。臭素化段階後の残留クロロベンゼンの量を慎重に<1%に減少させることによって望ましくない副反応を防止できた。これは、ケトン還元用の溶媒を1,2−ジクロロエタンに切り替える前に粗臭素化反応混合物をトルエンでフラッシすることによって達成された。このプロトコルを使用してこの反応を1Kgの規模で再度進めると84%収率に向上した。
【0107】
段階7 − 金属−ハロゲン交換および酸形成
【0108】
【化28】

【0109】
【表7】

【0110】
目視で清浄な50L容の5つ口丸底フラスコに機械的撹拌器と添加漏斗と内部温度プローブと窒素流の入口および出口とを配備した。フラスコにブロモアルカン4、テトラメチレンジアミンおよびMTBEを充填し、次に外部イソプロパノール/CO浴で内部温度が−65℃に達するまで冷却した。添加漏斗にnBuLiを充填し、次に1時間で添加した。
【0111】
nBuLiの添加中に内部温度が最高で−58℃に上昇するのが観察された。混合物をさらに0.5時間撹拌すると、撹拌中に温度が−62℃に低下した。
【0112】
気体状COを反応混合物に1.5時間吹込んだ。16ゲージ、100cm長さの針を使用して、試薬が反応混合物の表面よりも下方に送達されたことを確認した。
【0113】
COの添加中に内部温度が最高で−54℃に上昇するのが観察された。1.5時間後、内部温度は−60℃に低下し、粗混合物からアリコートを採取した。HPLC分析は、〜85%のCO取込み(還元に対して)を示した。
【0114】
内部温度が−25℃になるまで冷却浴を温水浴で置換し、次に反応装置に1NのHClを添加した。5分間激しく撹拌した後で、2相溶液を激しく撹拌しながら目視で清浄な100L容の抽出装置に移し入れた。5分間の激しい撹拌後に相分離させた。水層(下部)を除去し、有機層を集めた。水層をMTBE(6L)で逆抽出した。有機相を集めて激しく撹拌しながら0.5NのKOH(13.0L)で5分間処理した。層分離の後、水層を集めた。有機相を0.5NのKOH(6.5 L)で逆抽出し、水層を集めた。有機相を除去した後、集めた水層を、MTBE(23L)が充填されている抽出装置に戻した。6NのHCl(1.25L)を添加して2相溶液をpH〜1まで酸性化し、2相溶液を10分間激しく撹拌した。
【0115】
層分離の後、有機層を集めてハーフ−ブライン(13L)で洗浄した。粗有機材料を回転蒸発器でヘプタン(10L)によってフラッシしながら真空下に濃縮すると、黄色固体(〜4.5kg)が得られた。
【0116】
機械的撹拌器と内部温度プローブと窒素流の入口および出口とを備えた目視で清浄な25L容の5つ口丸底フラスコに、未精製の固体を充填した。フラスコに未精製の酸6およびヘプタンを充填し、次に外部氷/水浴で内部温度が2℃に達するまで冷却した。スラリーを6時間激しく撹拌し、次に低温ヘプタン(1.25L)で洗浄しながらガラスフリットで濾過した。フィルターケーキを窒素下でハウス真空によって一夜乾燥した。淡黄色固体を真空オーブンに移し、50℃で24時間乾燥した。
【0117】
合計1.22kgの乾燥黄色固体を収集した。HPLC分析は材料が87重量%すなわち1.06kgの酸5を含み、79%のアッセイ収率であることを示した。
【0118】
段階8 − アミド化/加水分解
【0119】
【化29】

【0120】
【表8】

【0121】
機械的撹拌器と熱電対と窒素導入口と冷却浴とNaOHスクラバーとを備えた目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコにチオフェン酸5(2.95Kg,91重量%=2.68Kg,1.00当量)およびTHF(16L,6mL/g)を充填した。DMF(6.64mL,l%mol)を添加した。塩化オキサリル(897mL,1.20当量)を室温で30分を要して溶液に添加した。塩化オキサリルの添加中に10℃の発熱が観察された(温度は17℃から27℃に上昇した)。混合物を室温で2時間熟成し(変換率99.9%)、次にバッチ濃縮装置を使用して溶媒と余剰の塩化オキサリルを除去した。残渣をTHF(20L)でフラッシした。残渣をTHF(27L,10mL/g)に溶解し、溶液を30℃に冷却した。ジイソプロピルエチルアミン(2.24L,1.50当量)を溶液に添加した。シクロプロピルアミン7(1.88Kg,1.15当量)をTHF溶液(5L,2mL/g)として30分で溶液に添加した。20℃の発熱が観察された(温度が7℃から27℃に上昇した)。混合物を30分間熟成した。アミド−エステルへの変換率は99.8%であった。溶液にMeOH(4mL/g,10.7L)および4NのLiOH(7.47L,3.5当量)を添加した。14℃の発熱が観察された(温度が17℃から31℃に上昇した)。混合物を55℃に加熱し、この温度で1.5時間維持した。アミド−酸への変換率は99.5%であった。混合物を22℃に冷却し、2NのHCl(19L,7mL/g)を添加して反応停止させた。バッチ濃縮装置を使用して有機溶媒を除去し、20LのMe−THFでフラッシした。残渣(HCl中の懸濁液の形態)をMe−THF(54L,20mL/g)に溶解した。2相混合物を抽出装置に移し入れ、層分離させた。Me−THF(13L,5mL/g)を用いて水層を逆抽出した。集めた有機層を水(13L,5mL/g)で洗浄した。濃縮前の有機層中の化合物9のアッセイ収率を測定すると、88.0%(3.56Kg)であると示された。水層への損失は0.1%以下であった。
【0122】
段階9 − EtNH塩形成
【0123】
【化30】

【0124】
【表9】

【0125】
アミド化/加水分解の順次処理で得られたMe−THF溶液をSolka Flocパッド(1.20Kg)に通し、4LのTHFでリンスした。機械的撹拌器と熱電対と窒素導入口と加熱蒸気浴とバッチ濃縮装置とを備えた目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコに濾液を移し入れた。減圧下で溶媒を除去し、残渣をTHF(30L)でフラッシした。残渣をTHF(21L,6mL/g)に懸濁させ、EtNH(1.18L,1.52当量)を懸濁液に添加した。6℃の発熱が観察された(温度が21℃から27℃に上昇した)。塩はTHFに溶解した。混合物を室温で1時間熟成し、冷水を使用して溶液を22℃に冷却した。実施例A種晶(30.0g)を添加し、混合物を1時間熟成した。MTBE(25L)を2時間で添加し、次に懸濁液を室温で13時間熟成した。混合物を3℃に冷却し、追加量のMTBE(13L,4mL/g)を1時間で添加した。母液への損失を点検すると〜22%であることを示した。MTBE(2×7L,2×2mL/g)を1時間で添加し、混合物を1.5時間熟成し、次に混合物を濾過した。ケーキを1×7LのMTBE/THF(2/1)および2×7LのMTBEですすいだ。濾過の完了に5時間を要した。ケーキを窒素下にフリットで62時間乾燥した。化合物Aを60℃の真空オーブンで20時間乾燥した。実施例Aの収量(収率)はベージュ色固体として3.76Kg(92%)であった。HPLCによる材料の純度は97.8APCであった。H NMRは〜モル3%のMTBEの存在を示した。
【0126】
段階10 − 精製
【0127】
【化31】

【0128】
【表10】

【0129】
実施例A(3.67Kg)の塩をMe−THF(30L)と1NのHCl(20L,6NのHCl溶液から調製)との混合物に添加し、懸濁液を室温で完全に溶解するまで(35分間)撹拌した。層分離させ、有機層を2回水洗した(20Lおよび10L)。機械的撹拌器と熱電対と窒素導入口と加熱蒸気浴とバッチ濃縮装置とを備えた目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコに有機層を移し入れた。減圧下で溶媒を除去し、残渣をTHF(20L)でフラッシした。
【0130】
残渣をTHF(60L)に溶解し、蒸気浴を使用して溶液を60℃に加温した。(L)−リシン(1.20Kg,1.09当量)の水(9.5L)溶液を2分間で添加し、次いでEtOH(1.26L)を添加した。混合物を冷水および氷で40分を要して22℃に冷却した。混合物を室温で15時間熟成し、次に濾過し、3×3LのTHFですすぎ、フリットで1時間乾燥した。
【0131】
化合物9のリシン塩をMe−THF(30L)と1NのHCl(20L,12Nおよび6NのHCl溶液から調製)との混合物に添加し、懸濁液を室温で完全に溶解するまで(40分間)撹拌した。層分離させ、有機層を2回水洗した(20Lおよび10L)。機械的撹拌器と熱電対と窒素導入口と加熱蒸気浴とバッチ濃縮装置とを備えた目視で清浄な100L容の5つ口丸底フラスコにインラインフィルターを介して有機層を移し入れた。減圧下で溶媒を除去し、残渣をTHF(20L)でフラッシした。
【0132】
残渣をTHF(14L,6mL/g)に懸濁させ、EtNH(624mL,0.90当量)を懸濁液に添加した。混合物を22℃で30分間熟成し、次に実施例A種晶(24.0g)を添加し、混合物を1時間熟成した。MTBE(24L)を2時間で添加し、次に懸濁液を室温で1時間熟成した。MTBE(5L,2mL/g)を30分間で添加した。混合物を30分間熟成し、次に混合物を濾過した。ケーキを1×7LのMTBE/THF(2/1)および2×5LのMTBEですすいだ。濾過の完了には4時間を要した。ケーキを窒素下にフリットで8時間乾燥した。実施例Aの塩を真空オーブンに入れ60℃で20時間乾燥した。実施例Aの収量はベージュ色固体として2.78Kg(75%)であった。HPLCによる材料の純度は98.7APCであった。H NMRは〜1.7モル%の残留THFの存在を示した。
【0133】
代替実施例A
【0134】
【化32】

【0135】
段階1 − 4−トリフルオロメトベンジルアルコールによるフリーデル−クラフツアルキル化
【0136】
【化33】

【0137】
【表11】

【0138】
ベンジルアルコールをDCE(1.2mL)に溶解し、2,5−ジメチルチオフェンを添加し、次いでMsOHおよびFeClを添加した。混合物を55℃に加温し、16時間熟成した。NHCl溶液を添加して反応停止させた。混合物をMTBEで抽出し、有機層をMTBEで1回逆抽出し、有機層を集めて、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。アッセイ収量は(HPLC標準に対して)278mg(70%)であった。
【0139】
段階2 − イソシアナート形成
【0140】
【化34】

【0141】
【表12】

【0142】
ホスゲンをDCM(40mL)に希釈し、0℃に冷却し、シクロプロピルアミンおよびEtNのDCM(10mL)溶液を60分間で添加した。混合物を室温に加温し、10分間熟成した。混合物を1NのHClおよびブラインで洗浄し、次にMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10→30%のEtOAc/ヘキサン)によって精製すると3.67gのイソシアナートが得られた。
【0143】
段階3 − 12のフリーデル−クラフツアミド化によるエステル8の形成
【0144】
【化35】

【0145】
【表13】

【0146】
チオフェンフラグメントをDCE(1.5mL)に溶解し、イソシアナート、次いでFeClを添加した。70℃で15分間加温後、混合物を飽和NHClと2−MeTHFとに分配した。有機層をブラインで洗浄した。有機層をアッセイにかけると、83mgの所望生成物(66%)が得られた。
【0147】
実施例Aはエステル8から上述の手順で合成できる。
【0148】
2006年8月11日出願の米国暫定出願No.60/837,252に記載された式Iの化合物の一般的製造方法をスキーム3に示す。
【0149】
【化36】

【0150】
この経路を大規模合成に使用するためには多くの問題が存在した。第一の問題は、ジブロモチオフェン中間体14の形成が低収率であり、静置すると分解することであった。チオフェン環の3位および4位を適正に官能化するために別々の2つの低温段階が必要であった。本発明では最初の部分で低温条件を使用することなくブロミド4を生成するフリーデル−クラフツアシル化/臭素化/ケトン還元の工程を用いることによって14の使用を回避する。第二の問題は、1,4−ジシアノベンゼンからシクロプロピルアミンを調製するために使用される3段階工程の低効率、低収率である(3段階で10%)。これは、メチルシアノベンゾエート6から単一段階でアミンを調製することによって収率42%に改善された。式Iの化合物の従来の製造方法に伴う第三の問題は金属ハロゲン交換/カルボキシル化の工程である。このプロトコルにはEtOとTHFとの混合物を溶媒として使用する必要があり、EtOの易燃性が量産の際の問題になる。本発明の方法においては、1当量のTMEDAを反応混合物に添加したときにMTBE中で変換が効率的に行われた。最後に、従来経路のアミド化段階は採算に合わない高額のHATU試薬を使用していた。本発明は5から誘導された酸塩化物を経由して進行する経済的に実行性のあるカップリングプロトコルを含む。
【0151】
また、式Iの遊離酸は生体内効率がよくないことにも注目されたい。Na、KおよびNH塩が製造されたが、結晶性が弱く薬剤動態の改善が得られないことが知見された。EtNHおよびL−リシン塩は浸漬を倍加することが知見された。L−リシン塩はEtNH塩に比較して劣った物理的安定プロフィルを有していた。
【0152】
上述の式Iの化合物の第一の製造方法(実施例A)は式Iの化合物を多キログラムの量で製造するために使用できたが、より効率的な方法を開発する機会はまだ残っていた。本発明の別の実施態様は、実施例Aのアシル化の代りにアルキル化フリーデル−クラフツ反応を行うFeCl媒介ベンジル化方法の使用を含んでおり(代替実施例A,段階1)、TiCl/EtSiH媒介ケトン還元の必要性が削除される。この方法は従来から2,5−ジメチルチオフェンに関して証明されており(Iovel,L;Mertins,K.;Kishel,J.;Zapf,A.;Beller,M.Angew.Chem.,Int.Ed.2006,44,3913−3917)、このような電子欠陥ベンジルアルコールをベンジル化剤として使用することに成功した最初の例である。本発明はまた、強酸(特にMsOH)の添加を含み、これまでに開示されたことのない促進効果が得られた。式Iの化合物の第一の製造方法(実施例A)を中断し、12の臭素化によって4を生成した。あるいは、12をFeClの存在下でイソシアナート13によって直接アミド化することもできる。式Iの化合物のこの第二の製造方法は合計5つの段階を含み、4つの段階は極めて長い直線的工程である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

の化合物または医薬的に許容されるその塩を合成するための方法であって、
(a1)式5
【化2】

の化合物をジメチルホルムアミドの存在下で第一塩素化剤と反応させて式5a
【化3】

の酸塩化物を生成し、ならびに式5aの化合物を式7
【化4】

の化合物とアミン塩基の存在下で反応させて式8
【化5】

の化合物を生成させる段階、
(b1)式8の化合物を式X−OHまたはX−(OH)[式中、Xはカリウム、セシウム、リチウム、ナトリウムおよびルビジウムから成るグループから選択され、ならびにXはバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから成るグループから選択される。]の強塩基で加水分解し、次いで酸性化して式Iの化合物を生成させる段階、および
(c1)任意選択により、式Iの化合物を塩基と反応させて式Iの化合物の医薬的に許容される塩を生成させる段階
を含む方法。
【請求項2】
さらに、
(d1)式4
【化6】

の化合物をメチルtert−ブチルエーテルの溶媒中でテトラメチルエチレンジアミンの存在下に約55℃以下の温度で有機リチウム試薬と反応させ、ならびに得られた混合物をCO次いで酸と反応させて式5の化合物を生成させること
によって式5の化合物を製造する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
(e1)式I
【化7】

の化合物をジメチルホルムアミドの存在下で第二塩素化剤と反応させて式Ia
【化8】

の酸塩化物を生成させ、ならびに式Iaの化合物を第一ルイス酸試薬または第一の強ブレンステッド酸の存在下で2,5−ジメチルチオフェンと反応させて式2
【化9】

の化合物を生成させる段階、
(f1)式2の化合物を亜鉛塩触媒の存在下で臭素化剤と反応させて式3
【化10】

の化合物を生成させる段階、および、
(g1)式3の化合物を第二ルイス酸試薬または第二の強ブレンステッド酸の存在下でシラン還元剤で還元して式4の化合物を生成させること
によって式4の化合物を製造する段階を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、
(h1)式6
【化11】

の化合物を式EtMgX[式中、Xはハロゲン化物である。]のエチルグリニャール試薬とチタンイソプロポキシドの存在下で反応させ、次いで三ハロゲン化ホウ素と反応させて式7の化合物を生成させること
によって式7の化合物を製造する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、
(i1)2,5−ジメチルチオフェンを式11
【化12】

の化合物と第一遷移金属塩試薬および強酸の存在下で反応させて式12
【化13】

の化合物を生成させ、ならびに
(j1)式12の化合物を亜鉛塩触媒の存在下で臭素化剤と反応させて式4の化合物を生成させること
によって式4の化合物を製造する段階を含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
式I
【化14】

の化合物または医薬的に許容されるその塩を合成するための方法であって、
(a2)式12
【化15】

の化合物を式13
【化16】

の化合物と第一遷移金属塩試薬の存在下で反応させて式8
【化17】

の化合物を生成させる段階、
(b2)式8の化合物を式X−OHまたはX−(OH)[式中、Xはカリウム、セシウム、リチウム、ナトリウムおよびルビジウムから成るグループから選択され、Xはバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムから成るグループから選択される。]の強塩基と反応させ、次いで酸性化して式Iの化合物を生成させる段階、および
(c2)任意選択により、式Iの化合物を塩基と反応させて式Iの化合物の医薬的に許容される塩を生成させる段階
を含む方法。
【請求項7】
さらに、
(d2)2,5−ジメチルチオフェンを式11
【化18】

の化合物と第一遷移金属塩試薬と強酸との存在下で反応させて式12の化合物を生成させること
によって式12の化合物を製造する段階を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに、
(e2)式7
【化19】

の化合物をアミン塩基の存在下でCOClと反応させて式13の化合物を生成させること
によって式13の化合物を製造する段階を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
式I
【化20】

の化合物のジエチルアミン塩。

【公表番号】特表2010−535765(P2010−535765A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519964(P2010−519964)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/009389
【国際公開番号】WO2009/020588
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】