説明

チオフェンカルボン酸誘導体およびその製造方法、並びに殺菌剤

【課題】優れた植物病害防除作用、特にイネいもち病に対し優れた防除効果を示すとともに、有用作物に対し何ら害を及ぼさない、またはきわめて害が少ないチオフェンカルボン酸誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体である。
【化1】


[式中、RおよびRは水素原子または炭素数1〜6のハロアルキル基等を表し(但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す)、Rは水素原子等を表し、AはOR、SR、NRまたはNRNR10を表し、Rは炭素数8〜12のアルキル基等を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基等を表し、RおよびRは水素原子または炭素数8〜12のアルキル基等を表し、R、RおよびR10は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基等を表す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオフェンカルボン酸誘導体およびその製造方法、並びにそれらを有効成分とする殺菌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病害虫防除が水稲栽培に於いて果たす役割は大きく、特にイネいもち病は重要な病害として種々の殺菌剤が開発され、利用されている。しかしながら、環境問題から、安全かつ低濃度で有害菌を防除できる新しい殺菌剤が求められている。
例えば、ある種のハロアルキル基を有するチオフェンカルボン酸誘導体が殺菌活性を有することはすでに知られている(例えば、特許文献1参照)。また、2位にハロアルキル基を有するある種のチオフェン−5−カルボン酸誘導体が殺菌活性を有することは知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特表2006−521316号公報
【特許文献2】特表2001−504832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の化合物はチオフェン−5−カルボン酸の4位にトリフルオロメチル基を有する構造等の誘導体に限定されており、2−ハロアルキル−5−チオフェンカルボン酸誘導体および3−ハロアルキル−5−チオフェンカルボン酸誘導体等についての具体的な記載はない。
また、特許文献2に記載の化合物はチオフェン−5−カルボン酸の3位に置換ベンゼン環を有する構造の誘導体に限定されていると共に、殺菌活性、特にイネいもち病等や有用作物に対する防除効果において十分なものはない。
さらに、2−ハロアルキル−5−チオフェンカルボン酸および3−ハロアルキル−5−チオフェンカルボン酸等についての殺菌活性に関する記載はない。
本発明は優れた植物病害防除作用、特にイネいもち病に対し優れた防除効果を示すとともに、有用作物に対し何ら害を及ぼさない、またはきわめて害が少ないチオフェンカルボン酸誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の新規なチオフェンカルボン酸誘導体を合成し、それらの殺菌活性等について種々検討した。その結果、優れた植物病害防除作用、特にイネいもち病に対し優れた防除効果を示すとともに、有用作物に対し何ら害を及ぼさない、またはきわめて害が少ない化合物を見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(1)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体。
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。Aは、OR、SR、NRまたはNRNR10を表す。Rは、炭素数8〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。R、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、RおよびR10は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い]
【0007】
<2> Rが炭素数1〜6のハロアルキル基であり、RおよびRが水素原子である前記<1>に記載のチオフェンカルボン酸誘導体。
<3> Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基である前記<2>に記載のチオフェンカルボン酸誘導体。
<4> AがNRまたはNRNR10であって、RおよびRが水素原子である前記<3>に記載のチオフェンカルボン酸誘導体。
【0008】
<5> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法であって、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを反応させる工程を含むチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法。
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。Aは、OR、SR、NRまたはNRNR10を表す。Rは、炭素数8〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。R、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、RおよびR10は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い]
【0011】
<6> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法であって、下記一般式(4)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを反応させる工程を含むチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法。
【0012】
【化3】

【0013】
[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。Aは、OR、SR、NRまたはNRNR10を表す。Rは、炭素数8〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。R、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、RおよびR10は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。Yは脱離基を表す。]
【0014】
<7> 下記一般式(5)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体の少なくとも1種を有効成分として含有する殺菌剤。
【0015】
【化4】

【0016】
[式中、R51およびR52はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。ただし、R51およびR52の少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。R53は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。A50は、OR54、SR55、NR5657またはNR58NR5960を表し、R54およびR55はそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。R56およびR57はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、R56およびR57は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。R58、R59およびR60はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、R59およびR60は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い]
<8> 農園芸用である前記<7>に記載の殺菌剤。
【0017】
<9> 下記一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸の少なくとも1種を有効成分として含有する殺菌剤。
【0018】
【化5】

【0019】
[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す]
<10> 農園芸用である前記<9>に記載の殺菌剤。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた植物病害防除作用、特にイネいもち病に対し優れた防除効果を示すとともに、有用作物に対し何ら害を及ぼさない、またはきわめて害が少ないチオフェンカルボン酸誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のチオフェンカルボン酸誘導体は下記一般式(1)で表されることを特徴とする。下記一般式(1)で表される特定の構造を有することで、優れた植物病害防除作用、特にイネいもち病に対し優れた防除効果を示すとともに、有用作物に対し何ら害を及ぼさない、またはきわめて害が少ない。
【0022】
【化6】



【0023】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。
【0024】
また、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。
【0025】
本発明においては、植物病害防除効果の観点から、Rが炭素数1〜6のハロアルキル基であって、RおよびRが水素原子であることが好ましく、Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、RおよびRが水素原子であることがより好ましく、Rが炭素数1〜3のフルオロアルキル基であって、RおよびRが水素原子であることが更に好ましい。
【0026】
Aは、OR、SR、NRまたはNRNR10を表す。
は、炭素数8〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0027】
本発明においては、植物病害防除効果の観点から、Rが炭素数1〜6のハロアルキル基であって、RおよびRが水素原子であって、Rが炭素数8〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、RおよびRが水素原子であって、Rが炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換のアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基であることがより好ましい。
【0028】
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0029】
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0030】
、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、RおよびR10は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0031】
本発明においては、植物病害防除効果の観点から、Rが炭素数1〜6のハロアルキル基であって、RおよびRが水素原子であることが好ましく、Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、RおよびRが水素原子であることがより好ましく、Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、RおよびRが水素原子であって、AがNRまたはNRNR10であって、RおよびRが水素原子であることが特に好ましい。
【0032】
本発明においては植物病害防除効果の観点から、炭素数1〜6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を、
炭素数8〜12のアルキル基としてはオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を、
炭素数1〜12のアルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基に加え、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を、
【0033】
また、炭素数1〜6のハロアルキル基としてはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、トリクロロエチル基、トリブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基等を、
炭素数1〜6のフルオロアルキル基としてはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基等を、
炭素数1〜6のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を、
炭素数1〜6のハロアルコキシ基としてはトリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、トリクロロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロプロピル基等を、
炭素数1〜6のアルキルチオ基としてはメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等を、
【0034】
炭素数1〜6のハロアルキルチオ基としてはトリフルオロメチルチオ基、トリフルオロエチルチオ基、トリクロロエチルチオ基等を、
炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基としてはメタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基等を、
炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基としてはトリフルオロメタンスルフィニル基、トリフルオロエタンスルフィニル基、トリクロロエタンスルフィニル基等を、
炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としてはメタンスルホニル基、エタンスルホニル基等を、
炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基としてはトリフルオロメタンスルホニル基、トリフルオロエタンスルホニル基、トリクロロエタンスルホニル基等を、
【0035】
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を、
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を、
炭素数2〜6のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等を、
炭素数3〜6のシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等を、
炭素数2〜6のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等を、
【0036】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を、
ヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピラジニル基、チエニル基、フラニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基等を、
炭素数2〜5のヘテロ環基としては、モルホリニル、チオモルホリニル、アジリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピロリル等をそれぞれ例示することができる。
【0037】
また、アリール基およびヘテロアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基およびトリフルオロエチル基等のハロゲン置換アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基等のアルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基およびトリフルオロエトキシ基等のハロゲン置換アルコキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基およびブチルチオ基等のアルキルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基およびトリフルオロエチルチオ基等のハロゲン置換アルキルチオ基、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、プロパンスルフィニル基およびブタンスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基、トリフルオロメタンスルフィニル基、ジフルオロメタンスルフィニル基およびトリフルオロエタンスルフィニル基等のハロゲン置換アルキルスルフィニル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基およびブタンスルホニル基等のアルキルスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ジフルオロメタンスルホニル基およびトリフルオロエタンスルホニル基等のハロゲン置換アルキルスルホニル基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基、スルホンアミド基およびブタンスルホンアミド基等のアルキルスルホンアミド基、トリフルオロメタンスルホンアミド基、ジフルオロメタンスルホンアミド基およびトリフルオロエタンスルホンアミド基等のハロゲン置換アルキルスルホンアミド基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アセチル基およびベンゾイル基等のアシル基をそれぞれ例示することができる。
【0038】
また、アシル基としては、アセチル基等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基等のアリールカルボニル基または置換されていてもよいイソキサゾールカルボニル基等のヘテロアリールカルボニル基等を、
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等を、
アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基等を、
アルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、プロパンスルホニル基等を、
アリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基等を、
アルキルアミノカルボニル基としては、メチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基等を、
アリールアミノカルボニル基としては、フェニルアミノカルボニル基等をそれぞれ例示することができる。
【0039】
本発明のチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法は、下記一般式(2)で表される化合物と下記一般式(3)で表される化合物とを反応させる工程を含む。すなわち、本発明のチオフェンカルボン酸誘導体は、下記反応式(1)で表される反応により製造することができる。
【0040】
【化7】



【0041】
反応式(1)中、R、R、RおよびAは、それぞれ、一般式(1)におけるR、R、RおよびAと同義である。
反応式(1)において、一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸と、一般式(3)で表される化合物とを、無溶媒もしくは溶媒中で、縮合反応させることにより、一般式(1)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体を製造できる。
【0042】
一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸は、例えば、Journal of Fluorine Chemistry (1990), 46(3), 445-449等に記載の方法により製造できる。
また、一般式(3)におけるAが、−NRまたは−NRNR10の場合は、一般式(3)で表される化合物A−Hの塩も使用できる。使用できる塩における酸としては特に制限はなく、無機酸であっても有機酸であってもよい。
【0043】
また、反応式(1)においては、縮合剤を用いて反応を行うこともできる。用いることができる縮合剤には特に制限はなく、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド等を例示することができる。
縮合剤を用いる場合、縮合剤の使用量としては一般式(2)で表される化合物に対し、1〜2モル当量であり、好ましくは1〜1.2モル当量である。
【0044】
反応式(1)において溶媒を用いる場合、溶媒としては特に制限はなく、無機溶媒であっても有機溶媒であってもよい。具体的には例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。
【0045】
反応式(1)における、一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸の使用量としては、一般式(3)で表される化合物に対して1〜2モル当量、好ましくは1〜1.2モル当量である。
また、上記反応式(1)における反応温度および反応時間は、広範囲に変化させることができる。一般的には、反応温度は−20〜200℃であり、好ましくは0〜100℃である。また、反応時間は0.01〜50時間であり、好ましくは0.1〜15時間である。
【0046】
本発明のチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法は、下記一般式(4)で表される化合物と下記一般式(3)で表される化合物とを反応させる工程を含む。すなわち、本発明のチオフェンカルボン酸誘導体は、下記反応式(2)で表される反応により製造することができる。
【0047】
【化8】



【0048】
反応式(2)中、R、R、RおよびAは、それぞれ一般式(1)におけるR、R、RおよびAと同義であり、Yは脱離基を表す。
Yで表される脱離基としては、縮合反応に通常用いられる脱離基を、本発明においても用いることができる。具体的には例えば、塩素原子に代表されるハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基に代表されるアルコキシ基、フェノキシ基に代表されるアリールオキシ基、アセチルオキシ基に代表されるアシルオキシ基、メトキシカルボニルオキシ基に代表されるアルコキシカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基に代表されるアリールカルボニルオキシ基、N−ヒドロキシコハク酸イミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールならびにイミダゾール基等を例示することができる。
【0049】
反応式(2)において、一般式(4)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを、無溶媒もしくは溶媒中で、反応させることにより、一般式(1)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体を製造できる。
【0050】
反応式(2)で表される反応は、塩基の存在下で行うことができる。
前記塩基としては特に制限はなく、無機塩基であっても有機塩基であってもよい。具体的には例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属類、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコラート類、酸化ナトリウム等のアルカリ金属酸化物類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩類、燐酸三カリウム、燐酸三ナトリウム、燐酸一水素二カリウム、燐酸一水素二ナトリウム等の燐酸塩類、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基類等を挙げることができる。
【0051】
反応式(2)において塩基を用いる場合、塩基の使用量は特に制限されるものではない。特に有機塩基類を用いた場合には、反応式(2)における溶媒として使用することもできる。
反応式(2)で表される反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒としては、前記反応式(1)で示される方法で用いられる溶媒と同様のものを使用することができる。
【0052】
反応式(2)において、一般式(4)で表される化合物の使用量としては、一般式(3)で表される化合物に対し、1〜2モル当量が好ましく、より好ましくは1〜1.2モル当量である。
また、反応式(2)における反応温度および反応時間は広範囲に変化させることができる。一般的には、反応温度は−20〜200℃が好ましく、より好ましくは0〜100℃である。また、反応時間は0.01〜50時間が好ましく、より好ましくは0.1〜15時間である。
【0053】
前記一般式(4)で表される化合物は、前記一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸を用いて常法により製造することができる。例えば、前記一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸をチオニルクロライド、オキザリルクロライド、ホスゲン、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、臭化チオニル、三臭化リン、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール等と反応させることで製造できる。
また、一般式(4)で表される化合物は、一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸と、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類と無触媒もしくは触媒の存在下で反応させるという常法によっても製造できる。
【0054】
本発明の殺菌剤は、下記一般式(5)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体の少なくとも1種を有効成分として含有する。これにより優れた植物病害防除作用、特にイネいもち病に対する優れた防除作用を示すことができる。
【0055】
【化9】



【0056】
一般式(5)中、R51およびR52はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。ただし、R51およびR52の少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。
【0057】
53は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。
【0058】
50は、OR54、SR55、NR5657またはNR58NR5960を表し、
54およびR55はそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0059】
56およびR57はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、R56およびR57は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0060】
58、R59およびR60はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、R59およびR60は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0061】
本発明においては、植物病害防除効果の観点から、R51が炭素数1〜6のハロアルキル基であって、R52およびR53が水素原子であることが好ましく、R51が炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、R52およびR53が水素原子であることがより好ましく、R51が炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、R52およびR53が水素原子であって、A50がNR5657またはNR58NR5960であって、R56およびR58が水素原子であることが更に好ましい。
【0062】
一般式(5)におけるR51、R52、R53およびA50で表される各置換基の具体例、好ましい範囲としては、一般式(1)におけるR、R、RおよびAで表される各置換基の具体例、好ましい範囲と同様である。
また、一般式(5)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体は、一般式(1)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法と同様の製造方法で製造することができる。
【0063】
また、本発明の殺菌剤は、上記一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸の少なくとも1種を有効成分として含有する。これにより優れた植物病害防除作用、特にイネいもち病に対する優れた防除作用を示すことができる。
【0064】
本発明の殺菌剤の用途としては特に制限はなく、例えば、防腐・防カビ用等の工業用殺菌剤、農園芸用殺菌剤、医療用・消毒用殺菌剤等として用いることができる。特に、本発明の殺菌剤は植物病害防除作用、特にイネいもち病に対する優れた防除作用を示すことから、農園芸用殺菌剤として用いることが好ましい。
【0065】
本発明の殺菌剤は、例えば、藻菌類(Oomycetes)、子嚢菌類(Ascomycetes)、不完全菌類(Deuteromycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)、ネコブカビ(Plasmodiophoromycetes)に属する菌およびその他の病原菌に起因する野菜、果樹、稲、穀類、花卉、芝草分野を含む多種多様な植物病害に対し使用することができる。
【0066】
次に本発明の殺菌剤を用いることができる具体的な病害名(菌名)を非限定例として挙げる。
例えば、イネのいもち病(Pyricularia oryzae)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、ピシウム属菌による苗立枯病(Pythium graminicola 等)、ムギ類のうどんこ病(Erysiphe graminis f.sp.hordei; f.sp.tritici)、斑葉病(Pyrenophora graminea)、網斑病(Pyrenophora teres)、赤かび病(Gibberella zeae)、さび病(Puccinia striiformis; P. graminis; P. econdite; P. hordei)、雪腐病(Typhula sp.; Micronectriella nivalis)、裸黒穂病(Ustilago tritici; U. nuda)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、ピシウム属菌による褐色雪腐病(Pythium iwayamai 等)、
【0067】
ブドウのべと病(Plasmopara viticola)、うどんこ病(Uncinula necator)、黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、リンゴのうどんこ病(Podosphaera leucotricha)、黒星病(Venturia inaequalis)、斑点落葉病(Alternaria mali)、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、モニリア病(Sclerotinia mali)、腐らん病(Valsa mali)、ナシの黒斑病(Alternaria kikuchiana)、黒星病(Venturia nashicola)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum)、西洋ナシの疫病(Phytophthora cactorum)、モモの灰星病(Sclerotinia cinerea)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、フォモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、疫病(Phytophthora sp.)、カキの炭そ病(Gloeosporium kaki)、落葉病(Cercospora kaki; Mycosphaerella nawae)、ウリ類のべと病(Pseudoperonospora cubensis)、疫病(Phytophthora melonis、Phytophthora nicotianae、Phytophthora drechsleri)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、炭そ病(Colletotrichum lagenarium)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、
【0068】
トマトの疫病(Phytophthora infestans)、苗立枯病(Pythium vezans、Rhizoctonia solani)、輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvam)、根腐病(Pythium myriotylum、Pythium dissotocum)、ナスのうどんこ病(Erysiphe cichoracoarum)、疫病(Phytophthora infestans)、褐色腐敗病(Phytophthora capsici)、アブラナ科野菜の黒斑病(Alternaria japonica)、白斑病(Cerocosporella barassicae)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、べと病(Peronospora brassicae)、ネギの白色疫病(Phytophthora porri)、さび病(Puccinia allii)、
【0069】
ダイズの茎疫病(Phytophthora megasperma)、べと病(Peronospora manshurica)、紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseololum)、インゲンの炭そ病(Colletotrichum lindemuthianum)、ラッカセイの黒渋病(Mycosphaerella personatum)、褐斑病(Cercospora arachidicola)、エンドウのうどんこ病(Erysiphe pisi)、べと病(Peronospora pisi)、ジャガイモの疫病(Phytophthora infestans)、夏疫病(Alternaria solani)、チャの網もち病(Exobasidium reticulatum)、白星病(Elsinoe leucospila)、タバコの赤星病(Alternaria longipes)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、炭そ病(Colletotrichum tabacum)、
【0070】
テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、べと病(Peronospora schachtii)、バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、べと病(Peronospora sparsa)、疫病(Phytophthora megasperma)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa)、キクの褐斑病(Septoria chrysanthemi-indici)、白さび病(Puccinia horiana)、疫病(Phytophthora cactorum)、イチゴのうどんこ病(Sphaerotheca humuli)、疫病(Phytophthora nicotianae)、果実腐敗病(Pythium ultimum)、キュウリ、トマト、イチゴ、ブドウ等の灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、
【0071】
シバのブラウンパッチ病(Rhizoctonia solani)、ダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)、カーブラリア葉枯病(Curvularia geniculata)、さび病 (Puccinia zoysiae)、ヘルミントスポリウム葉枯病(Cochiliobolus sp.)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、いもち病(Pyricularia oryzae)、立枯病(Gaeumannomyces graminis)、炭そ病(Colletotrichum graminicola)、雪腐褐色小粒菌核病(Typhula incarnata)、雪腐黒色小粒菌核病(Typhula ishikariensis)、雪腐大粒菌核病(Sclerotinia borealis)、フェアリーリング(Marasmius oreades, 等.)、ピシウム病(Pythium aphanidermatum 等)等が挙げられる。
【0072】
中でも、一般式(1)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体は、特にイネのいもち病(Pyricularia oryzae)等に対し優れた防除効果を示す。
【0073】
本発明の殺菌剤は一般式(5)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体または一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸の少なくとも1種を含有する。本発明の殺菌剤の使用形態としては特に制限はなく、例えば、植物体の地上部に対しての薬剤処理、台木および種子に対しての薬剤処理、土壌処理等による適用が可能である。
【0074】
本発明の殺菌剤は単独で使用することも、他の殺菌剤や殺虫剤、除草剤植物成長調節剤等の農薬、土壌改良剤または肥効性物質と混合して使用することができ、これらとの混合製剤として使用することも可能である。
また本発明の殺菌剤におけるチオフェンカルボン酸誘導体およびチオフェンカルボン酸の含有方法には特に制限はなく、チオフェンカルボン酸誘導体およびチオフェンカルボン酸をそのまま含有しても、固体または液体の希釈剤を包含する担体と混合した組成物中に含有してもよい。本発明においては、チオフェンカルボン酸誘導体およびチオフェンカルボン酸を前記組成物として含有することが好ましい。ここで言う担体とは処理すべき部位への有効成分の到達を助け、また有効成分化合物の貯蔵、輸送および取り扱いを容易にするために配合される合成または天然の無機または有機物質を意味する。
【0075】
本発明において適当な固体担体としては、モンモリロナイト、カオリナイトおよびベントナイト等の粘土類、珪藻土、白土、タルク、バーミュキュライト、石膏、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、硫安等の無機物質、大豆粉、小麦粉等の植物性有機物質および尿素等があげられる。
また、適当な液体担体としては、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素類、ケロシン、鉱油などのパラフィン系炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒および水等があげられる。
【0076】
本発明の殺菌剤は種々の補助剤を、更に含有することができる。補助剤は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、殺菌剤効力の増強や、製剤の剤型、適用場面等を考慮して種々の補助剤を選択することができる。これらの補助剤はそれぞれ単独に、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
補助剤の具体例としては、乳化、分散、拡展、湿潤、結合および安定化などを目的とした補助剤として、例えば、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩およびポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレンアルキルチオエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマー等の非イオン性界面活性剤;ステアリン酸カルシウム、ワックス等の滑剤、イソプロピルヒドロジエンホスフェート等の安定剤;その他メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アラビアゴム等があげられる。しかし、これらの補助剤の成分は以上のものに限定されるものではない。
【0078】
本発明の殺菌剤における一般式(5)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体および一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸の含有量は、通常、粉剤では0.5〜20重量%、乳剤では0.5〜50重量%、水和剤では0.5〜90重量%、粒剤では0.1〜20重量%およびフロアブル製剤では0.5〜90重量%とすることができるが、これらの含有量に限定されるものではない。
【0079】
一方、それぞれの剤型における担体の含有量としては、通常、粉剤では60〜99重量%、乳剤では40〜95重量%、水和剤では10〜90重量%、粒剤では80〜99重量%およびフロアブル製剤では10〜90重量%とすることができる。また、補助剤の含有量としては、通常、粉剤では0.1〜20重量%、乳剤では1〜20重量%、水和剤では0.1〜20重量%、粒剤では0.1〜20重量%およびフロアブル製剤では0.1〜20重量%である。尚、これら担体の含有量、補助剤の含有量は限定されるものではなく、製剤の物理化学性、適用場面などを考慮して適宜調節することができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0081】
(実施例1)
<N−シクロヘキシル−2−(トリフルオロメチル)チオフェン−5−カルボキサミド(化合物番号157)の合成>
2−(トリフルオロメチル)チオフェン−5−カルボン酸1.0gにチオニルクロライド10mL加え、2時間加熱還流した。過剰のチオニルクロライドを留去した後、ベンゼンを加えて減圧下で低沸点物を留去した。
残分およびシクロヘキシルアミン0.62gをジクロロメタン20mLに溶解させ、氷冷下にてトリエチルアミン1.03gのジクロロメタン溶液5mLを滴下した。氷冷下で30分、その後室温で4時間撹拌した。反応液を水200mLに注ぎ、ジクロロメタン300mLで2回抽出した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン)で精製し、標記化合物1.2gを薄茶固体として得た。
【0082】
実施例2
<N−(2−ブロモピリジン−6−イル)−2−(トリフルオロメチル)チオフェン−5−カルボキサミド(化合物番号202)の合成>
2−(トリフルオロメチル)チオフェン−5−カルボン酸1.0gおよび2−アミノ−6−ブロモピリジン1.06gをテトラヒドロフラン20mLに溶解させ、氷冷下にて1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩0.98gを加えた。室温で4時間撹拌した後、ジクロロメタン200mLを加えて、水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン)で精製し、標記化合物1.5gを薄茶固体として得た。
【0083】
以下に実施例1〜2と同様にして製造できる本発明の化合物の具体例を、一般式(6)〜一般式(9)で表される化合物番号1〜416として以下に示す。また一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸の具体例を化合物番号417〜457として以下に示す。更にそのうちのいくつか化合物の物性値を表1〜表3に示す。
なお、下記具体例中におけるMeはメチル基を、Etはエチル基を、i−Prはイソプロピル基を、c−Hexはシクロヘキシル基を、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基を、vinylはビニル基を、allylはアリル基を、propargylはプロパルギル基を、Acはアセチル基を、Bzはベンゾイル基を、Naphはナフチル基をそれぞれ表すものとする。
【0084】
【化10】

【0085】
【化11】



【0086】
【化12】



【0087】
【化13】



【0088】
【化14】



【0089】
【化15】



【0090】
【化16】



【0091】
【化17】



【0092】
【化18】



【0093】
【化19】



【0094】
【化20】



【0095】
【化21】



【0096】
【化22】



【0097】
【化23】



【0098】
【化24】

【0099】
【化25】

【0100】
【化26】

【0101】
【化27】



【0102】
【化28】



【0103】
【化29】

【0104】
【化30】



【0105】
【化31】



【0106】
【化32】



【0107】
【表1】



【0108】
【表2】



【0109】
【表3】



【0110】
[製剤例および試験例]
次に本発明に係わる殺菌剤の製剤例および殺菌活性試験例を示す。尚、「部」および「%}は質量基準である。
【0111】
(製剤例1) <粒剤>
化合物番号(161)の本発明化合物30部、ベントナイト22部、タルク45部、ソルポール5060(界面活性剤:東邦化学(株)商品名)3部および少量の消泡剤を均一に混錬し、バスケット造粒機にて造粒した後乾燥させて粒剤100部を得た。
【0112】
(製剤例2) <粒剤>
化合物番号(202)の本発明化合物15部、ベントナイト60部、タルク21部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1部、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル1部およびリグニンスルホン酸ソーダ2部を混合した後、適量の水を加えて均一に混錬し、バスケット造粒機にて造粒した後乾燥させて粒剤100部を得た。
【0113】
(製剤例3) <水和剤>
化合物番号(179)の本発明化合物50部、炭酸カルシウム40部、ソルポール5039(アニオン性界面活性剤とホワイトカーボンの混合物:東邦化学(株)商品名)5部およびホワイトカーボン5部を均一に混合粉砕して水和剤とした。
【0114】
(製剤例4) <水和剤>
化合物番号(157)の本発明化合物30部、カオリナイト63部、ソルポール5039(アニオン性界面活性剤とホワイトカーボンの混合物:東邦化学(株)商品名)5部およびホワイトカーボン2部を均一に混合粉砕して水和剤とした。
【0115】
(製剤例5) <乳剤>
化合物番号(14)の本発明化合物20部、キシレン55部、N,N−ジメチルホルムアミド20部、ソルポール2680(界面活性剤)5部を均一に混合して乳剤とした。
【0116】
(製剤例6) <フロアブル剤>
化合物番号(74)の本発明化合物40部、ソルポール3353(非イオン性界面活性剤:東邦化学(株)商品名)5部、ザンサンガムの1%水溶液5部、水40部、エチレングリコール10部のうち有効成分以外の成分を均一に溶解し、ついで本発明化合物を加え、よく攪拌した後、サンドミルにて湿式粉砕し、フロアブル剤を得た。
【0117】
(製剤例7) <粉剤>
化合物番号(185)の本発明化合物5部、クレー95部を均一に混和し、粉剤を得た。
【0118】
(試験例1)
<イネいもち病防除効果試験(散布試験)>
イネポット(品種:コシヒカリ;2葉期)に製剤例4に準じて、本発明化合物の濃度が250ppmに調製した水和剤の希釈液で散布し風乾させた。人工気象室(設定条件:22℃、12時間暗光サイクル)に植物を入れ、いもち病胞子懸濁液を噴霧接種した。気象室内を高湿に保ち、接種7日後に調査を行った。防除価を次式により算出した。
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
【0119】
その結果、以下の化合物が防除価80以上を示した。
化合物番号:163、191、201、212、216.
【0120】
(試験例2)
<イネいもち病防除効果試験(初期活性試験)>
イネポット(品種:コシヒカリ;3葉期)に製剤例4に準じて、本発明化合物の水和剤および下記比較例化合物(A、B)を用いて調製した水和剤の希釈液をそれぞれ所定薬量(10アール当たりの有効成分が30g)となるように灌注処理した。薬剤処理3週間後、イネいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧接種し、温度25℃で高湿度の条件下に1週間置き病斑数を調査した。防除価を次式により算出し、以下の評価基準で評価した。結果を表4に示した。
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
−評価基準−
A:80以上
B:50以上80未満
C:50未満
【0121】
【化33】



【0122】
【表4】



【0123】
(試験例3)
<イネいもち病防除効果試験(育苗箱試験)>
イネ育苗箱(30cm×60cm×3cm)に育成したイネ苗(品種:コシヒカリ;2葉期)に製剤例1に準じて本発明化合物および上記比較例化合物(A、B)を用いて調製した粒剤をそれぞれ箱当たり50gになるように処理した。3日後、5000分の1アールのワグネルポットに移植し温室内で育てた。移植30日目にイネいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧接種し、温度25℃で高湿度の条件下に1週間置き病斑数を調査した。防除価は次式により算出し、下記基準で評価した。結果を表5に示した。
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
−評価基準−
A:80以上
B:50以上80未満
C:50未満
【0124】
【表5】



【0125】
(試験例4)
<キュウリべと病防除効果試験(散布試験)>
キュウリポット(品種:相模半白 2.0葉期)に製剤例4に準じて、250ppmに調製した水和剤の希釈液で散布し風乾させた。温室内に設置した湿室に移しキュウリべと病菌の遊走子懸濁液を噴霧接種した。接種7日後に調査を行った。防除価を次式により算出した。
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
【0126】
その結果、以下の化合物が防除価80以上を示した。
化合物番号:147、162、163、188、212、214、216.
【0127】
(試験例5)
<キュウリうどんこ病防除効果試験(散布試験)>
キュウリうどんこ(品種:相模半白 1葉期)に製剤例4に準じて、250ppmに調製した水和剤の希釈液で散布し風乾させた。あらかじめ発病させておいたキュウリの発病葉上のうどんこ病菌を絵筆で均一に払い落として接種し、7日後に調査を実施した。防除価を次式により算出した。
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
【0128】
その結果、以下の化合物が防除価80以上を示した。
化合物番号:147.
【0129】
(試験例6)
<コムギ赤さび病防除効果試験(散布試験)>
コムギポット(品種:相模半白 1.5葉期)に製剤例4に準じて、250ppmに調製した水和剤の希釈液で散布し風乾させた。あらかじめ罹病植物より回収したコムギ赤さび病胞子を噴霧接種し、4℃の暗所に2日間置いた後、18℃の人工気象室に移動し、8日後に調査を実施した。防除価を次式により算出した。
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
【0130】
その結果、以下の化合物が防除価80以上を示した。
化合物番号:213.
【0131】
以上の結果から、本発明のチオフェンカルボン酸誘導体を含有する殺菌剤は優れた植物病害防除作用を示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体。
【化1】


[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。
Aは、OR、SR、NRまたはNRNR10を表す。
は、炭素数8〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、RおよびR10は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い]
【請求項2】
が炭素数1〜6のハロアルキル基であり、RおよびRが水素原子である請求項1に記載のチオフェンカルボン酸誘導体。
【請求項3】
が炭素数1〜6のフルオロアルキル基である請求項2に記載のチオフェンカルボン酸誘導体。
【請求項4】
AがNRまたはNRNR10であって、RおよびRが水素原子である請求項3に記載のチオフェンカルボン酸誘導体。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法であって、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを反応させる工程を含むチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法。
【化2】



[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。
Aは、OR、SR、NRまたはNRNR10を表す。
は、炭素数8〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、RおよびR10は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い]
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法であって、下記一般式(4)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを反応させる工程を含むチオフェンカルボン酸誘導体の製造方法。
【化3】



[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。
Aは、OR、SR、NRまたはNRNR10を表す。
は、炭素数8〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、RおよびR10は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
Yは脱離基を表す。]
【請求項7】
下記一般式(5)で表されるチオフェンカルボン酸誘導体の少なくとも1種を有効成分として含有する殺菌剤。
【化4】



[式中、R51およびR52はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。ただし、R51およびR52の少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。
53は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。
50は、OR54、SR55、NR5657またはNR58NR5960を表し、
54およびR55はそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
56およびR57はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基を表す。ここで、R56およびR57は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
58、R59およびR60はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を表す。ここで、R59およびR60は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い]
【請求項8】
農園芸用である請求項7に記載の殺菌剤。
【請求項9】
下記一般式(2)で表されるチオフェンカルボン酸の少なくとも1種を有効成分として含有する殺菌剤。
【化5】



[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す。但し、RおよびRの少なくとも1つは炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基を表す]
【請求項10】
農園芸用である請求項9に記載の殺菌剤。

【公開番号】特開2009−78991(P2009−78991A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247964(P2007−247964)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】