説明

チオフェンピラゾロピリミジン化合物

本発明は、精神障害および神経内分泌系障害、神経系疾患およびメタボリックシンドロームの治療における副腎皮質刺激ホルモン放出因子1(CRF1)受容体アンタゴニストとしての式Iの化合物、その医薬組成物、ならびにかかる化合物の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神障害および神経内分泌系障害、神経系疾患およびメタボリックシンドロームの治療におけるCRF1受容体アンタゴニストとしての新規なチオフェンピラゾロピリミジン化合物、その医薬組成物およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)は、脳下垂体前葉からのプロオピオメラノコルチン(POMC)由来のペプチド分泌の主要な生理的調節因子である41アミノ酸のペプチドである。下垂体でのその内分泌の役割に加えて、CRFの免疫組織化学的局在から、このホルモンが中枢神経系の幅広い視床下部外分布を有し、脳での神経伝達物質または神経修飾物質としての役割と整合した広い範囲の自律神経的効果、電子生理的効果および行為への効果を生じることが証明された。免疫系における生理的、心理的、および免疫学的ストレス因子に対する反応を統合する面でCRFが重要な役割を果たすという証拠もある。
【0003】
CRFは、うつ病および神経不安症を含めた精神障害および神経系疾患、ならびに以下の病状、すなわちアルツハイマー病、ハンチントン病、進行性核上麻痺、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、癲癇、片頭痛、アルコール濫用および薬物濫用および関連する禁断症状、肥満、メタボリックシンドローム、先天性副腎過形成、クッシング病、高血圧、発作、過敏性大腸症候群、ストレスにより誘発される胃潰瘍、月経前症候群、性的機能不全、早産、炎症性障害、アレルギー、多発性硬化症、内臓痛、睡眠障害、下垂体部腫瘍または異所性下垂体由来の腫瘍、慢性疲労症候群および線維筋痛に関連付けられてきた。
【0004】
CRF受容体亜型(CRF1およびCRF2)が確認されており、これらは脳内に不均一に分布しており、これは機能的多様性の可能性を示唆している。例えば、広く分布した脳CRF1受容体は、環境ストレス因子への曝露に付随する情動性に強く関係する。重要なことは、CRF2受容体ではなくCRF1受容体が、不安惹起様行動の選択を媒介するように見えることである。より離散的な中隔/視床下部分布および別の内在性リガンドの入手可能性は、CRF2受容体の異なる機能的な役割を示唆する。例えば、CRF1受容体よりもCRF2受容体に対して優先的な親和性を有する新規なCRF族の神経ペプチドが、選択的なCRF1アゴニズムで観察される行動活性化の外観を生成することのなく食欲を抑制することが報告されている。他の場合には、CRF2アゴニズムは、CRF1アンタゴニストまたはCRF1遺伝子欠失について報告されている効果に類似の効果をもたらす。例えば、CRF2アゴニストが抗肥満薬として提唱されてきたが、CRF1アンタゴニストも同様に肥満に対する重要な治療法であるかも知れない。
【0005】
CRFアンタゴニストとして有用な特定のピロロ[2,3−d]ピリミジン、ピロロ[3,2−d]ピリミジン、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、およびピラゾロ[1,5−a]−1,3,5−トリアジンが特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第94/13676号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/29109号パンフレット
【特許文献3】国際公開第98/08847号パンフレット
【特許文献4】国際公開第98/03510号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、CRF1受容体アンタゴニストとして有用な新規なチオフェンピラゾロピリミジンを提供する。上記からみて、精神障害および神経内分泌系障害、神経系疾患およびメタボリックシンドロームの治療のための潜在的に有益な治療薬としてのCRF1の新しい有効かつ選択的なアンタゴニストを発見することが望ましい。さらに、大多数の市販のCNS薬および心臓脈管薬が望ましくないバイオアベイラビリティプロフィールを呈するため、公知のCRFアンタゴニスト(例えばCP154526およびNBI30775)よりも優れたバイオアベイラビリティプロフィールを有する新規化合物を発見することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、本発明は、式Iの化合物
【0009】
【化1】

(式中、
およびRは独立に水素またはC−Cアルキルであり、

【0010】
【化2】

であり、
はClまたはメチルであり、
は水素、Br、ニトロ、メトキシ、メトキシメチル、ジメチルアミノ、エトキシカルボニル,アセトアミド、アセトキシ、
【0011】
【化3】

である)
またはその薬理学的に許容できる塩に関する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、患者のうつ病もしくは大うつ病性障害、不安神経症、アルコール濫用または薬物濫用、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、過敏性大腸症候群、癲癇、発作、睡眠障害、アレルギー、片頭痛、月経前症候群(PMS)、不妊症、性的機能不全、先天性副腎過形成、クッシング病、早産、ストレスにより誘発される胃潰瘍、炎症性障害、下垂体または異所性下垂体由来の腫瘍、慢性疲労症候群、線維筋痛、内臓痛または多発性硬化症を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療上有効量の式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩を投与することを含む、方法に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、うつ病もしくは大うつ病性障害、不安神経症、アルコール濫用または薬物濫用、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、過敏性大腸症候群、癲癇、発作、睡眠障害、アレルギー、片頭痛、月経前症候群(PMS)、不妊症、性的機能不全、先天性副腎過形成、クッシング病、早産、ストレスにより誘発される胃潰瘍、炎症性障害、下垂体または異所性下垂体由来の腫瘍、慢性疲労症候群、線維筋痛、内臓痛または多発性硬化症の治療のための医薬の製造のための、式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩の使用に関する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、医薬として使用するための式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記で使用したように、そして本発明の説明全体を通して、以下の用語は、別段の記載がない限り以下の意味を有するものと理解されるものとする。
【0016】
「アルキル」は、鎖中に1〜5個の炭素原子を有する、直鎖であってもよく分枝鎖であってもよい飽和脂肪族炭化水素基を意味する。
【0017】
「薬理学的に許容できる賦形剤」とは、製剤特性を高めるための薬理学的に許容できる製剤担体、溶液、または添加剤を指す。かかる賦形剤は、その製剤の他の成分と適合するものでなければならならず、その服用者に有害であってはならない。かかる賦形剤は、当業者に周知である(例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences,第19版,Mack Publishing Company,1995を参照).
【0018】
「薬理学的に許容できる塩」とは、本発明の化合物の比較的無毒な無機および有機の酸付加塩、ならびに塩基付加塩を指す。これらの塩は、その化合物の最終の単離および精製段階でその場で調製することができる。特に酸付加塩は、遊離塩基形態の精製した化合物を適切な有機酸または無機酸と別個に反応させ、こうして生成した塩を単離することにより調製することができる(例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences,第19版,Mack Publishing Company,1995を参照)。
【0019】
「治療上有効量」または「有効量」は、研究者、獣医、医師または他の臨床医が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的反応または医学的反応、あるいはそれらに対する所望の治療効果を引き起こす、本発明の式Iの化合物または本発明の式Iの化合物を含有する医薬組成物の量を意味する。
【0020】
「治療」、「治療する」、「治療すること」などの用語は、障害の進行を遅くすることおよび回復に向かわせることの両方を含むことが意図されている。これらの用語はまた、たとえ障害または病状が実際に解消されないとしても、そしてたとえその障害または病状の進行がそれ自体で遅くならず回復に向かわないとしても、その障害または病状の1つ以上の症状を緩和すること、改善すること、軽減すること、解消すること、または低下させることも含む。「治療」と言う用語および類似の用語は、防止的(例えば予防的)治療および苦痛緩和目的の治療も含む。疾患の予防は、その疾患の症状の発症を引き延ばすかまたは遅延させることをもたらす。
【0021】
分子構造における記号
【0022】
【化4】

は、その特定の置換基についての結合位置を示す。
【0023】
任意の可変因子が任意の構成要素または式Iにおいて2回以上出現する場合、それぞれ現れるときのその定義は、他で現れるときのその定義とは独立である。また、置換基および/または可変因子の組合せは、かかる組合せが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容できる。本発明の化合物を選択する際に、当業者は、種々の置換基、すなわちR、Rなどが化学構造連結性の周知の原理に適合して選択されるべきであることを認識するであろう。
【0024】
本開示全体を通して使用する標準的な命名法の下では、指定された側鎖の末端部分が最初に記載され、次に、隣接する官能性が結合点に向かって記載される。例えば、アリールカルボニルアミノアルキル置換基はアリール−C(O)−NH−アルキル−と等価である。
【0025】
本発明は以下のような具体的な種類の発明を企図している:
(a)RおよびRが独立にエチルまたはn−プロピルである、式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;
(b)R
【0026】
【化5】

である、式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;
(c)Rがメトキシ、メトキシメチル、ジメチルアミノまたは
【0027】
【化6】

である式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;
(d)うつ病または神経不安症を治療するための式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩の使用;
(e)アルコール濫用または薬物濫用を治療するための式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩の使用;
(f)CRF1結合について500nM以下のKi値を示す式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;
(g)CRF1結合について50nM以下のKi値を示す式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;
(h)CRF1結合について5nM以下のKi値を示す式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;
(i)CRF1結合について500nM以下のKi値を示し、かつCRF2よりもCRF1に対して選択的に結合する(すなわち、より小さいKi)式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;
(j)CRF1結合について50nM以下のKi値を示し、かつCRF2よりもCRF1に対して選択的に結合する(すなわち、より小さいKi)式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;
(k)CRF1結合について5nM以下のKi値を示し、かつCRF2よりもCRF1に対して選択的に結合する(すなわち、より小さいKi)式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩;ならびに/あるいは
(l)公知のCRFアンタゴニスト(例えば、CP154526およびNBI30775)よりも優れたバイオアベイラビリティプロフィールを有する式Iの化合物またはその薬理学的に許容できる塩。
【0028】
本発明の化合物は、種々の経路によって投与される医薬組成物として処方されることが好ましい。かかる組成物は経口投与用のものであることが好ましい。かかる医薬組成物、およびかかる医薬組成物を調製するためのプロセスは当該技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaroら編集,第19版,Mack Publishing Co.,1995を参照)。
【0029】
式Iの化合物は、一般的に広い投薬量範囲にわたって有効である。例えば、1日当りの投薬量は、通常、体重1kgあたり約0.0001〜約30mgの範囲に入る。いくつかの例では、前述の範囲の下限未満の投薬量レベルで十分過ぎる場合があり、他方、ある場合にはさらにより大きい用量が有害な副作用をまったく引き起こすことなく用いられることもあり、それゆえ、上記の投薬量範囲は、本発明の範囲を決して限定することを意図したものではない。実際に投与される上記化合物の量は、治療しようとする病状、選択された投与経路、投与される実際の化合物(複数種であってもよい)、個々の患者の年齢、体重、および反応、ならびに患者の症状の重篤性を含めた関連する状況を考慮して、医師によって決定されるであろうということを理解されたい。
【0030】
式Iの化合物はCRF−1アンタゴニストであり、従って、CRF1受容体の緊張または刺激を低下させることによって治療できる病状の治療のために有用である。脳下垂体前葉からのプロオピオメラノコルチン(POMC)由来のペプチド分泌の主要な生理的調節因子である41アミノ酸のペプチドである副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)[J.Rivierら, Proc.Natl.Acad.Sci(USA)80:4851(1983);W.Valeら, Science 213:1394(1981)]は、多くの医学的病状と関連付けられている。例えば、下垂体でのその内分泌の役割に加えて、CRFの免疫組織化学的局在から、このホルモンが中枢神経系の幅広い視床下部外分布を有し、脳での神経伝達物質または神経修飾物質としての役割と整合した広い範囲の自律神経的効果、電子生理的効果および行為への効果を生じることが証明された[W.Valeら, Rec.Prog.Horm.Res.39:245(1983);G.F.Koob, Persp.Behav.Med.2:39(1985);E.B.De Souzaら, J.Neurosci.5:3189(1985)]。免疫系における生理的、心理的、および免疫学的ストレス因子に対する反応を統合する面でCRFが重要な役割を果たすという証拠もある[例えば、J.E.Blalock, Physiological Reviews 69:1(1989);J.E.Morley, Life Sci.41:527(1987)を参照]。
【0031】
CRFは、うつ病および神経不安症を含めた精神障害および神経系疾患に関連する[D.M.Nielsen, Life Sci.78:909−919;H.E.Kunzelら, J.Psychiatr.Res.37:525−533;D.R.Gehlertら, Eur.J.Pharmacol.509:145−153]。アルツハイマー病、ハンチントン病、進行性核上麻痺および筋萎縮性側索硬化症の病因および病態生理においてもCRFの役割が前提とされてきた。なぜなら、それらは中枢神経系におけるCRFニューロンの機能不全に関連するためである[総説として、E.B.De Souze, Hosp.Practice 23:59(1988)を参照]。CRFの慢性投与がドーパミン系の機能障害を生み出すことが示されており、これはパーキンソン病における役割を示唆する[E.Izzoら, Pharmacol.Biochem.Behav.81:701−708(2005)]。CRFが関与する他の神経障害としては、癲癇[T.Z.Baramら, Brain Res.770:89−95(1997)]および片頭痛[T.C.Theoharidesら, Endocrinology 136:5745−5750(1995)]が挙げられる。CRFはアルコール濫用および薬物濫用ならびに関連する禁断症状に関連付けられてきた[D.H.Overstreetら, Pharmacol.Biochem.Behav.77:405−413;Y.Shahamら, Psychopharmacology(Berl)137:184−190]。さらに、CRFが種々の内分泌障害および心血管疾患(例えば、肥満[E.TimofeevaおよびD.Richard, Neuroendocrinology 66:327−340(1997)]、メタボリックシンドローム[A.M.Wardら, Metabolism 53:720−726(2004)]、先天性副腎過形成[D.P.MerkeおよびG.B.Cutler Jr., Endocrinol.Metab.Clin.North Am.30:121−135(2001)]、クッシング病[M.Labeurら, Curr.Drug Targets Immune Endocr.Metabol.Disord.4:335−342(2004)]、高血圧[R.J.Briscoeら, Brain Res.881:204−207(2000)]、および発作[S.L.Stevensら, J.Cereb.Blood Flow Metab.23:1151−1159(2003)])において役割を果たす、という証拠がある。胃障害(例えば、過敏性大腸症候群[Y.Tacheら, Eur J.Surg.Suppl:16−22(2002)]およびストレスにより誘発される胃潰瘍[K.E.Gabryら, Mol.Psychiatry 7:474−483,433(2002)])は、CRFに関連することが示されている。加えて、CRFが、ヒトの女性の健康の種々の領域、例えば、月経前症候群[F.Facchinettiら, Psychosom.Med.56:418−422(1994)]、不妊症[L.Ghizzoniら, Endocrinology 138:4806−4811(1997)]、性的機能不全[J.E.Jonesら, Am.J.Physiol.Regul.Integr.Comp.Physiol.283:R591−597(2002)]、および早産[P.D.Wadhwaら, Am.J.Obstet.Gynecol.191:1063−1069(2004)]において役割を果たすという指摘がある。CRFが免疫系において重要な役割を果たすという証拠もある。これは、炎症性障害[A.GravanisおよびA.N.Margioris, Curr.Med.Chem.12:1503−1512(2005)]、アレルギー[L.K.Singhら, Brain Behav.Immun.13:225−239(1999)]、多発性硬化症および他の自己免疫障害[C.Benouら, J.Immunol.174:5407−5413(2005)]を治療するための治療的可能性を示す。上述のものに加えて、CRFは、内臓痛[M.Nijsenら, Neurogastroenterol.Motil.17:423−432(2005)]、睡眠障害[T.M.BuckleyおよびA.F.Schatzberg, J.Clin.Endocrinol.Metab.90:3106−3114(2005)]、下垂体部腫瘍または異所性下垂体由来の腫瘍[K.D.Dieterichら, J.Clin.Endocrinol.Metab.83:3327−3331(1998)]、慢性疲労症候群および線維筋痛[G.NeeckおよびL.J.Crofford, Rheum.Dis.Clin.North Am.26:989−1002(2000)]に関連付けられてきた。
【0032】
CRF受容体亜型(CRF1およびCRF2)が確認されており、これらは脳内に不均一に分布しており[D.T.Chalmersら, TIPS 17:166−72(1996)]、これは機能的多様性の可能性を示唆している[S.C.Heinrichsら, Regul.Peptides 71:15(1997)]。例えば、広く分布した脳CRF1受容体は、環境ストレス因子への曝露に付随する情動性に強く関係する[G.Liebschら, Regul.Peptides 59:229−39(1995);D.W.Schulz, PNAS 93:10477−82(1996)]。重要なことは、CRF2受容体ではなくCRF1受容体が、不安惹起様行動の選択を媒介するように見えることである[Heinrichsら, 1997]。より離散的な中隔/視床下部分布[D.T.Chalmersら, J.Neurosci.15(10):6340−50(1995)]および別の内在性リガンドの入手可能性[J.Vaughanら, Nature 378:287−92(1995)]は、CRF2受容体の異なる機能的な役割を示唆する[Heinrichsら, 1997]。例えば、CRF1受容体よりもCRF2受容体に対して優先的な親和性を有する新規なCRF族の神経ペプチドが、選択的なCRF1アゴニズムで観察される行動活性化の外観を生成することのなく食欲を抑制することが報告されている[H.Tezvalら, PNAS 101(25):9468−9473(2004)]。ある場合には、CRF2アゴニズムは、CRF1アンタゴニストまたはCRF1遺伝子欠失について報告されている効果に類似の効果をもたらす[S.C.Heinrichs, Trends in Pharmacological Sciences 20(8):311−5(1999)]。例えば、CRF2アゴニストが抗肥満薬として提唱されてきたが、CRF1アンタゴニストも同様に肥満に対する重要な治療法であるかも知れない[C.Contoreggiら,Neuroendocrinology 80(2):111−23(2004)]。
【0033】
(本発明の化合物の調製)
本発明の化合物のすべては、例えば以下のスキームに示す合成経路に従って化学的に調製することができる。しかしながら、以下の考察は、本発明の範囲を限定することは決して意図されていない。例えば、記載された経路の各々についての具体的な合成ステップは、式(I)のさらなる化合物を調製するために、異なる様式で組み合わせてもよいし、異なるスキームからのステップと関連させて組み合わせてもよい。各ステップの生成物は、抽出、エバポレーション、沈殿、クロマトグラフィ、濾過、粉末化、結晶化などを含めた従来の方法によって回収することができる。下記のスキームでは、すべての置換基は、別段の記載がない限り、これまで定義されたとおりであり、適切な試薬は、当該分野で周知であり、かつ認識されている。
【0034】
【化7】

【0035】
式(I)の化合物の形成は、スキーム1に示す反応に従って実施することができる。適切な式(I)の化合物は、R、R、R、R、およびRが式Iについて定義されたとおりである化合物である。
【0036】
ステップ1では、アセト酢酸エチルおよび5−メチル−2H−ピラゾール−3−イルアミンは還流酢酸中で縮合され、2,5−ジメチル−4H−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−オン(1)を形成する。
【0037】
式(1)のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−オンは、引き続いてステップ2で、不活性溶媒(トルエンなど)中その溶媒の還流温度でオキシ塩化リンおよびジメチルアニリンを使用して7−クロロ−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンに変換される。
【0038】
スキーム1、ステップ3では、式(3)のGrignard試薬(X=ClまたはBr)は不活性溶媒(トルエンなど)中、還流温度で式(2)のクロリドと反応し、式(4)の7−アルキルピラゾロピリミジンを与える。あるいは、式(4)の7−アルキルピラゾロピリミジンは、ステップ4に示すように、ジケトンと5−メチル−2H−ピラゾール−3−イルアミンとの縮合により得られる。この反応は、エタノール中で触媒量のピペリジンを用いて60〜80℃の温度で実施される(Novinson,T.ら, J.Med.Chem.1975,18,460)。R=Hの場合で、かつ例えばR=プロピルの場合は位置異性体の混合物が得られ、それらの位置異性体はステップ5のヨウ素化の後で分離される。
【0039】
式(4)のピラゾロピリミジンは、アセトニトリル中の過剰のN−ヨードスクシンイミドを使用して、ステップ5で式(5)のヨードピラゾロピリミジンへと官能化される。
【0040】
スキーム1、ステップ6では、式(5)のヨードピラゾロピリミジンは、Negishiクロスカップリング反応において複素環式亜鉛ハライド(RZnX)(X=ClまたはBr)と反応させる。この複素環式亜鉛ハライドは、当業者に周知の方法を使用して生成することができる。例えば、この有機亜鉛試薬は、複素環式ブロミドを亜鉛金属と反応させることにより、あるいは非ハロゲン化複素環を使用しn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、またはtert−ブチルリチウムを用いて複素環式リチウム試薬を生成し、次いでZnClを使ってリチウム−亜鉛交換を行うことにより生成される。この有機亜鉛試薬は、パラジウム触媒(例えば、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタンなど)の存在下で、不活性溶媒(THFなど)中、還流温度で約12〜36時間、式(5)のヨードピラゾロピリミジンとカップリングし、式(I)のピラゾロピリミジンを与える。
【0041】
あるいは、ステップ7では、複素環式ボロン酸(RB(OH))が使用され、式(5)のヨード化合物とSuzukiカップリング反応が行われる。このカップリング手順について、当業者が利用できる多くの反応条件が存在する。好ましい条件では、パラジウム触媒,例えばビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)とともにトルエン/エタノール/2M 炭酸ナトリウムの溶媒混合物が使用され、60℃から還流温度で約12〜36時間反応が行われる。
【0042】
容易に理解されるとおり、ヘテロアリールボロン酸は、当該分野で周知の手順を使用して、本願明細書に記載される方法と類似の方法によって調製することができる。例えば、チオフェンおよびベンゾチオフェンはN−ブロモスクシンイミドを使用して臭素化することができ、これは引き続いてアルキルリチウム試薬を使ったハロゲン−金属交換、次いでホウ酸トリメチルでの処理およびワークアップ時の加水分解を使用してボロン酸に変換できる。
【0043】
例えば式(Ic)の化合物のようなチエノピリジンは、市販のチエノ[3,2−b]ピリジン−7−オールをブロミドに変換し、次いでハロゲン−金属交換し、プロトン源(メタノール/水など)でクエンチすることにより容易に得られることを当業者は理解するであろう。引き続く臭素を用いた3位の臭素化、および続くメチルボロン酸とのSuzukiカップリングにより3−メチル−チエノ[3,2−b]ピリジンが得られ、これは上述のようにZnClを使用して式(5)のヨードピラゾロピリミジンとカップリングされる。
【0044】
【化8】

【0045】
式(7)、式(8)、または式(9)の化合物の形成は、スキーム2に示す反応に従って実施することができる。式(7)、式(8)、または式(9)の適切な化合物は、R、R、およびRが式Iについて定義されたとおりであり、「Het」が示されているように定義される化合物である。
【0046】
スキーム2、ステップ1では、式(6)のチオフェンは不活性溶媒(ジクロロメタンまたはクロロホルムなど)中でN−ブロモスクシンイミドにより臭素化される。
【0047】
ステップ2では、式(7)のブロモチオフェンは複素環式亜鉛試薬とカップリングされ、式(8)のチオフェン複素環を与える。この複素環式亜鉛試薬はブロモ複素環および亜鉛金属から形成され、その場で式(7)のブロモチオフェンと反応させる。この反応は、不活性溶媒(THFなど)中、その溶媒の還流温度で行われる。あるいは、複素環式リチウム試薬は、例えば1−メチル−1,2,4−トリアゾールに対してn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、またはtert−ブチルリチウムを使用して形成することができ、次いでこれをZnClを使ってリチウム−亜鉛交換することによって複素環式亜鉛試薬が得られる。
【0048】
スキーム2、ステップ3では、式(6)のチオフェンはニトロ化され式(9)のニトロチオフェンを与える。好ましい条件では、ジクロロメタンおよびTFAと70%硝酸との溶媒混合物が使用される。式(9)のニトロチオフェンはさらなる官能化のための中間体として働くことができるということを当業者は理解するであろう。例えば、このニトロ基を還元し、アシル化してアセトアミドを得ることができるし、アルキル化してジアルキルアミンを得ることができる。
【0049】
また、2−複素環チオフェンは当該分野で公知の方法を使用して調製することができ、次いでブロモチオフェンまたはチオフェニルボロン酸として官能化でき、次いで式(5)のヨードピラゾロピリミジンとカップリングさせるというように、式(8)の化合物を調製するために必要とされるステップは任意の順番で実施することができるということを認識されたい。
【0050】
【化9】

【0051】
式(10)の化合物の形成は、スキーム3に示す反応に従って実施することができる。適切な式(10)の化合物は、R、R、およびRが式Iについて定義されたとおりであり、R5a=−OCH、−OC(O)CH、−CHOCH、または−COCHCHである化合物である。
【0052】
容易に理解されるとおり、式(7)のブロモチオフェンは、当業者が種々の置換チオフェンへと容易に変換できる有用な中間体を代表する。例えば、チエニルGrignard試薬の形成、続く酸素での処理(Hurd,C.D.およびKreuz,K. JACS 1950,72,5543)により2−ヒドロキシオフェンが得られ、これはアシル化されアセトキシ誘導体を与える。上記Grignard試薬はまた、求電子剤(シアノギ酸エチルなど)で処理されてエトキシカルボニル置換チオフェンを与えることもできる。n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、またはtert−ブチルリチウムとのハロゲン−リチウム交換によって、チエニルリチウム試薬を与えることができる。この試薬は引き続いて求電子剤(ヨードメチルメチルエーテルのようなアルキルハライドなど)と反応させることができる。加えて、酸化銅、ヨウ化ナトリウム、およびナトリウムメトキシドで処理することにより2−メトキシチオフェンが得られる。
【0053】
本願明細書で使用する場合、「TLC」とは薄層クロマトグラフィを指し、「HPLC」とは高速液体クロマトグラフィを指し、「δ」とはテトラメチルシランから低磁場へのppmを指し、「THF」とはテトラヒドロフランを指し、「EtOAc」とは酢酸エチルを指し、「HOAc」とは酢酸を指し、「MeOH」とはメタノールを指し、「DME」とはジメトキシエタンを指す。
【実施例】
【0054】
さらに詳述することはしないが、当業者は前述の説明を使用して本発明を完全に実施できると考えられる。以下の調製例および実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供される。それらは、本発明を例示することを意図しており、本発明を限定することは決して意図していない。試薬および出発物質は、当業者には容易に入手できるものであるか、または容易に合成できるものである。実施例1〜実施例27は代表的な化合物を提供し、その調製を例示する。実施例A〜実施例Cは、本発明の化合物の生物学的特性を測定するために使用することができる種々の生物学的試験を例示する。当業者は、実施例に記載された手順から適切なバリエーションをすぐに認識するであろう。本発明の化合物の名称は、ChemDraw Ultra(登録商標)バージョン7.0.1によって提供されたものである。
【0055】
(調製例1)
2,5−ジメチル−4H−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−オン
温度を25−28℃に維持しながら、アセト酢酸エチル(128g、0.98mol)を5−メチル−2H−ピラゾール−3−イルアミン(100g、0.95mol)の酢酸溶液(500mL)に滴下した。この混合物を還流状態で10時間加熱し、室温まで冷却した。この反応液を、温度を10℃より低く保って、5℃に冷却したtert−ブチルメチルエーテル(5L)に加えた。5℃で1時間撹拌し、濾過した。生成した物質を真空中で一晩乾燥し、白色固体(158g、96%)を得た。
【0056】
(調製例2)
7−クロロ−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
トルエン(150mL)中の2,5−ジメチル−4H−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−オン(10.0g、61.3mmol)の懸濁液にN,N−ジメチルアニリン(9.7mL、76.7mmol)を加えた。オキシ塩化リン(11.2mL、122.6mmol)をこの白色懸濁液に滴下した。不活性雰囲気下で3時間還流させ、室温まで冷却し、減圧を使用してこの反応液を褐色油状物にまで濃縮した。この油状物を酢酸エチル(250mL)に溶解し、1N NaOHを用いて塩基性にした。層分離させ、この塩基性の水相をさらなる酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。この有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し褐色固体を得た。フラッシュクロマトグラフィを使用して、20%増分の段階勾配で80%ヘキサン/20%(30%THF/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(30%THF/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成物を精製し、淡緑色固体(6.65g、59%)を得た。ES/MS m/z(35Cl)182.3(M+1)
【0057】
(調製例3)
7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0058】
【化10】

還流冷却器を取り付けたオーブン乾燥したフラスコに、不活性雰囲気下で触媒量のヨウ素およびRieke(登録商標)マグネシウム(1.0M THF溶液、52mL、52mmol)を入れた。45℃に加熱し、3−ブロモペンタン(5.3mL、42.9mmol)をこの反応液に加えた。温度は、Grignard反応が開始するにつれて急上昇した。この反応液を50℃でさらに4時間撹拌し、室温まで冷却した。マグネシウム金属を沈降させ、アルゴンの陽圧でこのGrignard試薬を無水トルエン(50mL)中の7−クロロ−2,5−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(5.19g、28.6mmol)が入っているフラスコにカニューレで移動させた。加熱して、不活性雰囲気下で48時間還流させた。反応液を室温まで冷却し、水でクエンチした。この反応液を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(50mL)を加えた。層分離させ、水相を酢酸エチル(75mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、20%増分の段階勾配で80%ペンタン/20%(30%THF/ペンタン)から0%ペンタン/100%(30%THF/ペンタン)を用いて溶出して精製し、黄色油状物(2.59g、42%)を得た。ES/MS m/z 218.1(M+1)
【0059】
市販のGrignard試薬を使用して、または上記のようにしてGrignard試薬を調製して、基本的に調製例3に記載したようにして、以下の化合物を調製した。
【0060】
【表1】

【0061】
(調製例6)
7−ブチル−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
5−メチル−2H−ピラゾール−3−イルアミン(217mg、2.17mmol)、ノナン−2,4−ジオン(339mg、2.39mmol)およびピペリジン(1滴)をエタノール(10mL)に加え、80℃で一晩加熱した。室温まで冷却し、乾固するまで濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(0−20%酢酸エチルを含むヘキサン)によって精製し、2つの異性体の混合物(2g)を得た。
【0062】
(調製例7)
7−(1−エチル−プロピル)−3−ヨード−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0063】
【化11】

7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(2.14g、9.84mmol)を無水アセトニトリル(25mL)に溶解させ、N−ヨードスクシンイミド(3.0g、13.3mmol)を10分間隔で6回(各回に0.5gずつ)に分けて加えた。この反応液を4時間撹拌した。アセトニトリルを留去し、生成した油状物をジクロロメタン(100mL)で希釈した。この橙色溶液を飽和塩化アンモニウム溶液(2×50mL)で洗浄した。有機相を集め、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、暗赤色油状物を得た。フラッシュクロマトグラフィを使用して、50%増分の段階勾配で100%ペンタン/0%(20%酢酸エチル/ペンタン)から0%ペンタン/100%(20%酢酸エチル/ペンタン)を用いて溶出して精製し、橙色油状物(3.28g、97%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):6.44(s,1H),3.59(m,1H),2.61(s,3H),2.49(s,3H),1.86−1.76(m,4H),0.85(t,J=7.5Hz,6H)。
【0064】
基本的に調製例7に記載したようにして以下の化合物を調製した。
【0065】
【表2】


ワークアップ:有機層をNa水溶液で洗浄した。調製例6からの異性体の混合物に対して反応を行った。シリカゲル上でこの2つの異性体を分離した(0−20%EtOAc/ヘキサン)。
【0066】
(実施例1)
3−(3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0067】
【化12】

Reike(登録商標)亜鉛(5g/100mL THF、20mL、15.0mmol)を無水THF(10mL)に懸濁させ、2−ブロモ−3−クロロチオフェン(1.98g、10.0mmol)を加えた。オイルバス(85℃)中、不活性雰囲気下で3時間この混合物を還流させた。この反応液を室温まで冷却し、残存する亜鉛金属を遠心分離した。アルゴンの陽圧下で、カリューレによってこの試薬溶液を新しい容器に移し、7−(1−エチル−プロピル)−3−ヨード−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(1.72g、5.0mmol)を加えた。この溶液をアルゴンの陽圧によって10〜15分間脱気し、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン(0.225g、0.275mmol)を加えた。不活性雰囲気下で、還流温度で一晩撹拌した。この反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチル(75mL)で希釈した。層分離させ、水層部分を酢酸エチル(50mL)で抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(15%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(15%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、黄色固体(1.35g、40%)を得た。ES/MS m/z(35Cl)334.4(M+1)
【0068】
基本的に実施例1に記載したようにして以下の化合物を調製した。
【0069】
【表3】

【0070】
(実施例4)
3−(3−メチル−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
オーブン乾燥したフラスコに3−メチル−2−チエニル亜鉛ブロミド(11.0mL、5.5mmol)、無水THF(6.0mL)および7−(1−エチル−プロピル)−3−ヨード−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.536g、1.56mmol)を入れた。アルゴンの陽圧で10〜15分間脱気し、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン(0.12g、0.15mmol)を加えた。オイルバス(100℃)中、不活性雰囲気下で一晩還流させた。この反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチル(75mL)で希釈した。層分離させ、水層部分を酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ペンタン/0%(25%酢酸エチル/ペンタン)から0%ペンタン/100%(25%酢酸エチル/ペンタン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、白色フォーム状物を得た。ヘキサンで粉末化し、濾過した(0.432g、8%)。H NMR(400MHz,CDCl):7.26(d,J=4.8,MHz,1H),6.96(d,J=5.3Hz,1H),6.42(s,1H),3.64−3.60(m,1H),2.53(s,3H),2.43(s,3H),2.14(s,3H),1.87−1.79(m,4H),0.88(t,J=7.0Hz,6H)。
【0071】
(実施例5)
3−(5−ブロモ−3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0072】
【化13】

3−(3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(1.16g、3.5mmol)をジクロロメタン(15mL)に溶解させ、N−ブロモスクシンイミド(0.69g、3.85mmol)を一度に加えた。不活性雰囲気下で2時間撹拌し、この反応が完結していることをTLCを用いて確認した。この反応液をジクロロメタン(50mL)で希釈し、水(75mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、黄色固体(1.56g、定量的収率)を得た。H NMR(400MHz,DMSO):7.39(s,1H),6.88(s,1H),3.48−3.44(m,1H),2.45(s,3H),2.39(s,3H),1.80−1.73(m,4H),0.76(t,J=7.0Hz,6H)。
【0073】
基本的に実施例5に記載したようにして以下の化合物を調製した。
【0074】
【表4】


ヘキサン/酢酸エチルを用いて溶出するカラムクロマトグラフィによって精製した。
【0075】
(実施例9)
3−[3−クロロ−5−(2−メチル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−チオフェン−2−イル]−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0076】
【化14】

Reike(登録商標)亜鉛(5g/100mL THF、5.5mL、4.2mmol)を無水THF(5mL)に懸濁させ、1−メチル−5−ブロモ−1,2,4−トリアゾール(0.4g、2.5mmol)を加えた。オイルバス(85℃)中、不活性雰囲気下で3時間還流させた。この反応液を室温まで冷却し、残存する亜鉛金属を遠心分離した。アルゴンの陽圧下で、カリューレによってこの試薬溶液を新しい容器に移し、3−(5−ブロモ−3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.64g、1.45mmol)を加えた。この溶液をアルゴンの陽圧で10−15分間脱気し、ジクロロ[1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン(0.136g、0.167mmol)を加えた。不活性雰囲気下で一晩還流させた。この反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチル(75mL)で希釈した。層分離させ、水層部分を酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(30%THF/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(30%THF/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、黄色固体(0.298g、50%)を得た。ES/MS m/z(35Cl)415.0(M+1)
【0077】
市販の6−メチル−2−ピリジル亜鉛ブロミドを使用して、基本的に実施例9に記載したようにして、以下の化合物を調製した。
【0078】
【表5】

【0079】
(実施例11)
3−(3−クロロ−5−メトキシ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
オーブン乾燥したフラスコに3−(5−ブロモ−3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.46g、1.1mmol)、酸化銅(0.045g、0.56mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.020g、0.11mmol)、25%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(10mL)および無水メタノール(10mL)を入れた。オイルバス(90℃)中で、この反応液を不活性雰囲気下で週末にわたって還流させた。この反応液を氷水でクエンチし、エーテル(3×100mL)で抽出した。有機部分を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(35%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(35%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、白色フォーム状物(0.086g、21%)を得た。ES/MS m/z(35Cl)363.7(M+1)
【0080】
(実施例12)
酢酸 4−クロロ−5−[7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]エステル
臭化イソプロピル(0.25mL、2.7mmol)を、Reike(登録商標)マグネシウム(1.0M THF溶液、2.7mL、2.7mmol)および無水THF(3mL)中の3−(5−ブロモ−3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.74、1.8mmol)の懸濁液に加えた。不活性雰囲気下で1時間還流させ、この反応液を室温まで冷却した。陽圧下、室温で90分間、この発熱性反応液に酸素を吹き込んだ。この反応液を飽和塩化アンモニウム(30mL)でクエンチし、酢酸エチル(2×100mL)で抽出し、減圧下で濃縮した。この油状物をエーテル(150mL)に溶解させ、0.1N 水酸化ナトリウム(3×75mL)で洗浄し、この塩基性の水相をエーテル(50mL)で逆抽出した。この水相を飽和塩化アンモニウムで酸性にし、ジクロロメタン(4×75mL)で抽出した。ジクロロメタン部分を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。この粗油状物(0.138g、0.39mmol)をトリエチルアミン(0.23mL、1.6mmol)および塩化アセチル(0.034mL、0.47mmol)を含むジクロロメタン(2mL)に溶解させた。不活性雰囲気下で1時間撹拌し、ジクロロメタン(50mL)で希釈し、水(50mL)で洗浄した。この有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(25%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(25%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、白色フォーム状物(0.084g、21%)を得た。ES/MS m/z(35Cl)392.0(M+1)
【0081】
(実施例13)
3−(3−クロロ−5−メトキシメチル−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
オーブン乾燥したフラスコに3−(5−ブロモ−3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.41、1.0mmol)および無水THF(5mL)を入れた。不活性雰囲気下で−70℃まで冷却し、n−ブチルリチウム(2.5M ヘキサン溶液、0.42mL、1.05mmol)を加えた。この黄色反応液は暗赤色に変わった。ヨードメチルメチルエーテル(0.09mL、1.10mmol)を加え、この反応液を室温まで戻した。この反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(75mL)およびブライン(75mL)で洗浄した。この有機部分を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で橙色油状物になるまで濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(20%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(20%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、黄色固体(0.107g、28%)を得た。ES/MS m/z(35Cl)378.3(M+1)
【0082】
(実施例14)
4−クロロ−5−[7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]−チオフェン−2−カルボン酸 エチルエステル
無水THF(5mL)中の3−(5−ブロモ−3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.62g、1.5mmol)の混合物を不活性雰囲気下で0℃まで冷却し、エチルマグネシウムクロリド(2M THF溶液、0.83mL、1.65mmol)を加えた。この反応液を5分間撹拌し、室温まで加温し、さらに15分間撹拌し、次いでこの反応液の温度を0℃まで下げた。無水THF(1mL)で希釈したシアノギ酸エチル(0.16mL、1.58mmol)を加えた。この反応液を室温まで加温し、1時間撹拌した。この反応液を飽和炭酸水素ナトリウム(20mL)でクエンチし、エーテル(2×75mL)で抽出した。有機部分を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(20%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(20%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出して精製した。この生成物を真空下で乾燥し、白色固体(0.114g、19%)を得た。ES/MS m/z(35Cl)406.3(M+1)
【0083】
(調製例11)
2−(5−ブロモ−4−メチル−チオフェン−2−イル)−6−メチル−ピリジン
2.0M リチウムジイソプロピルアミド(9.76mL、19.52mmol)を2−ブロモ−3−メチル−チオフェン(2.0mL、17.75mmol)およびTHF(30mL)の−78℃の溶液に加えた。45分後ZnCl(0.5M THF溶液、39.0mL、19.50mmol)を加え、この溶液を30分間撹拌した。2−ブロモ−6−メチル−ピリジン(2.4mL、21.29mmol)およびPd(PPh(0.50g、0.44mmol)を加えた。この溶液を周囲温度まで加温し、2時間撹拌した。この反応液を飽和NHCl溶液(20mL)で洗浄した。水層をCHCl(30mL)で洗浄した。有機層を合わせ、飽和NHCl溶液(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(10%−20%EtOAc/ヘキサン勾配)によってこの生成した残渣を精製し、標題の化合物(2.34g、49%)を得た。LC−ES/MS m/z(79Br/81Br)267.7/269.5(M+H)
【0084】
(調製例12)
3−メチル−5−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−チオフェン−2−ボロン酸
2−(5−ブロモ−4−メチル−チオフェン−2−イル)−6−メチル−ピリジン(37.6g、0.14mol)およびホウ酸トリイソプロピル(34.2g、0.182mol、42.3mL)を窒素雰囲気下でトルエン(100mL)およびTHF(160mL)に溶解させた。この溶液を−40℃まで冷却した。n−ブチルリチウム(2.5M ヘキサン溶液、70mL、0.175mol)を、滴下ロートを使用して、40分間かけてゆっくり加えた。溶液内の温度は−40℃から−35℃まで変化した。添加終了後、この混合物を−40℃で2時間撹拌した。この反応液を0℃まで加温し、THF(40mL)、次いで2N HCl水溶液(120mL)を加えて白色固体を形成させた。pH=7になりすべての塩が溶解するまで1N NaOHを加えた。有機層を分離し、水層をジエチルエーテル(3×)で抽出した。有機層を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。THFをこの残渣に加え、次いでヘキサンを加えた。生成した黄色沈殿物を濾過し、沈殿ステップを数回繰り返し、標題の化合物(19.7g、60%)を得た。H NMR(CDOD):δ 2.47(bs,3H),2.61(s,3H),7.20(d,J=7.7Hz,1H),7.60(bs,1H),7.64(bd,J=7.7Hz,1H),7.75(t,J=7.7Hz,1H)。
【0085】
(実施例15)
7−(1−エチル−プロピル−2,5−ジメチル−3−[3−メチル−5−(6−メチル−ピリジン−2−イル)チオフェン−2−イル]−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0086】
【化15】

オーブン乾燥したフラスコに2−(5−ボロン酸−4−メチル−チオフェン−2−イル)−6−メチル−ピリジン(0.29g、1.24mmol)、無水トルエン(4mL)、無水エタノール(1mL)、2M 炭酸ナトリウム(1.1mL、2.2mmol)および7−(1−エチル−プロピル)−3−ヨード−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.25g、0.73mmol)を入れた。アルゴンの陽圧で30分間この混合物を脱気し、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.10g、0.086mmol)を加えた。オイルバス(100℃)中、この反応液を不活性雰囲気下で一晩還流させた。この反応液を室温まで冷却し、酢酸エチル(75mL)および水(25mL)で希釈した。層分離させ、水層部分を酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(25%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(25%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、オフホワイトのフォーム状物(0.215g、73%)を得た。ES/MS m/z 405.4(M+1)
【0087】
(調製例13)
7−ブロモ−チエノ[3,2−b]ピリジン
チエノ[3,2−b]ピリジン−7−オール(5.00g、33mmol)およびオキシ臭化リン(50g、174mmol)を一緒に110℃で3時間加熱した。この熱反応混合物を氷および5N NaOHの混合物に注ぎ込み、CHClで抽出した。有機部分をNaSOで乾燥し、エバポレーションした。この生成した粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィカラム(ヘキサン:EtOAC=3:1)を使用して精製し、標題の化合物(4.19g、59%)を得た。ES/MS m/z(81Br)215(M+)。
【0088】
(調製例14)
チエノ[3,2−b]ピリジン
7−ブロモ−チエノ[3,2−b]ピリジン(3.69g、17mmol)を無水THF(20mL)に溶解させ、−78℃まで冷却した。n−BuLi(1.6M ヘキサン溶液、21.2mL、34mmol)を−78℃でこの混合物にゆっくり加え、−78℃で20分間撹拌した。MeOH/HO=1/1(20mL)を加え、室温で1時間撹拌した。この反応混合物をCHClで抽出した。この有機部分を飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、エバポレーションした。シリカゲルクロマトグラフィを使用して、100%ヘキサンからヘキサン:酢酸エチル=10:1を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、標題の化合物(1.44g、62%)を得た。ES/MS m/z 136(M+1)
【0089】
(調製例15)
3−ブロモ−チエノ[3,2−b]ピリジン
CHCl(60mL)中でチエノ[3,2−b]ピリジン(3.45g、25.6mmol)、炭酸水素ナトリウム(2.15g、25.6mmol)、KHPO(6.69g、38.4mmol)およびMgSO(4.01g、33.3mmol)を混合した。この混合物を還流状態で撹拌し、Br(1.57mL、30.7mmol)をゆっくり加えた。この反応混合物を還流状態で一晩撹拌した。さらに臭素(0.7mL)を加え、この反応液を還流状態で4時間撹拌した。室温まで冷却し、水を加え、そしてCHClで抽出した。この有機部分を飽和Na溶液および飽和ブラインで洗浄した。NaSOで乾燥し、エバポレーションした。この生成物をヘキサン/CHClから再結晶して、標題の化合物(3.94g、72%)を得た。ES/MS m/z(81Br)215(M+)。
【0090】
(調製例16)
3−メチル−チエノ[3,2−b]ピリジン
DME/水/EtOH=7/3/1(4mL)中に3−ブロモ−チエノ[3,2−b]ピリジン(214mg、1.0mmol)およびメチルボロン酸(180mg、3.0mmol)が入っている3つのマイクロ波処理できる反応バイアルを調製した。2M NaCO(1.5mL、3.0mmol)を加え、窒素ガスを15分間吹き込んだ。Pd(PPh(58mg、0.05mmol)を加え、このバイアルを封管した。マイクロ波中で、このバイアルを130℃で30分間加熱した。すべてのこの反応混合物を合わせ、水およびCHClを加え、抽出した。CHCl層を分離し、NaSOで乾燥し、濾過し、エバポレーションした。シリカゲルクロマトグラフィを使用して、ヘキサン:酢酸エチル:MeOH中の2M NH=20:4:1を用いて溶出してこの生成物を精製し、標題の化合物(193mg、43%)を得た。ES/MS m/z 150(M+1)
【0091】
(実施例16)
7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−3−(3−メチル−チエノ[3,2−b]ピリジン−2−イル)−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0092】
【化16】

オーブン乾燥したシュレンク型フラスコに3−メチルチエノ[3,2−b]ピリジン(0.213g、1.42mmol)および無水THF(5mL)を入れ、不活性雰囲気下で−78℃に冷却した。n−ブチルリチウム(2.5M ヘキサン、0.72mL、1.78mmol)を加え、低温で30分間撹拌した。無水塩化亜鉛(0.58g、4.26mmol)を一度に加え、低温で15分間撹拌した。この反応液を室温まで上げ、さらに30分間撹拌した。この反応液を無水THF(5mL)で希釈し、7−(1−エチル−プロピル)−3−ヨード−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.406g、0.08mmol)を加えた。アルゴンの陽圧で15分間脱気し、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン(0.093g、0.114mmol)を加えた。オイルバス(90℃)中、不活性雰囲気下でこの反応液を一晩還流させた。この反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチル(75mL)で希釈した。層分離させ、水層部分を酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(15%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(15%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出して精製し、白色フォーム状物(0.059g、14%)を得た。ES/MS m/z 365.0(M+1)
【0093】
(実施例17)
3−[3−メチル−5−(2−メチル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−チオフェン−2−イル]−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
オーブン乾燥したフラスコに1−メチル−1,2,4−トリアゾール(0.320、3.81mmol)、無水THF(10mL)を入れ、不活性雰囲気下で−78℃まで冷却した。n−ブチルリチウム(2.5M ヘキサン、1.52mL、3.81mmol)を加え、低温で30分間撹拌した。無水塩化亜鉛(1.06g、7.75mmol)を一度に加え、低温で15分間撹拌した。この反応液を室温まで加温し、さらに30分間撹拌した。無水THF(5mL)中の3−(5−ブロモ−3−メチル−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.50g、1.27mmol)をこの反応液に加えた。アルゴンの陽圧で15分間脱気し、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン(0.147g、0.127mmol)を加えた。オイルバス(90℃)中、不活性雰囲気下でこの反応液を一晩還流させた。この反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチル(75mL)で希釈した。層分離させ、水層部分を酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(40%THF/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(40%THF/ヘキサン)を用いて溶出して精製した。生成物をヘキサン/エーテル(3:1)で粉末化し白色固体(0.371g、74%)を得た。ES/MS m/z 395.0(M+1)
【0094】
(実施例18)
3−(5−ニトロ−3−メチル−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
3−(3−メチル−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.419g、1.33mmol)をジクロロメタン(2.5mL)に溶解させ、不活性雰囲気下で撹拌し、氷浴中で0℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(5mL)を加えた。濃硝酸(70%)(0.132g、1.47mmol)をこの反応液に滴下した。この溶液は、黄色から暗緑色へと色が変化した。氷浴中、不活性雰囲気下で1時間撹拌し、この反応が完結していることをTLCを用いて確認した。この反応液をジクロロメタン(80mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウムでクエンチした。層分離させ、塩基性の水層をジクロロメタン(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(30%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(30%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、黄色固体(0.363g、76%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.81(s,1H),6.51(s,1H),3.62−3.58(m,1H),2.56(s,3H),2.48(s,3H),2.18(s,3H),1.88−1.70(m,4H),0.88(t,J=7.5Hz,6H)。
【0095】
(実施例19)
N−{5−[7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]−4−メチル−チオフェン−2−イル}アセトアミド
3−(5−ニトロ−3−メチル−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.33g、0.92mmol)を、10%パラジウム炭素(0.10g)を含むTHF(10mL)に溶解させ、真空/水素雰囲気フラッシュ(3×)により脱気し、水素雰囲気下(55psi)(約379kPa)、室温で3時間撹拌した。この反応が完結していることをTLCを用いて確認した。この反応液をTHF(50mL)で希釈し、珪藻土を通して濾過し、次いで橙色粗油状物(0.328g)まで濃縮した。この油状物をジクロロメタン(4mL)および1.0M NaOH(1mL)に溶解させた。塩化アセチル(0.038mL、0.52mmol)をこの反応液に加え、封鎖した反応容器中で、週末にわたって室温で撹拌した。この反応液をジクロロメタン(100mL)で希釈し、水で洗浄した。有機相を集め、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で赤色油状物まで濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(15%酢酸エチル/10% 7N アンモニア性メタノール/75%ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(15%酢酸エチル/10% 7N アンモニア性メタノール/75%ヘキサン)を用いて溶出してこの油状物を精製し、褐色フォーム状物(0.048g、26%)を得た。ES/MS m/z 371.0(M+1)
【0096】
(実施例20)
3−[3−クロロ−5−(2−メチル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−チオフェン−2−イル]−7−(1−プロピル−ブチル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0097】
【化17】

オーブン乾燥したフラスコに1−メチル−1,2,4−トリアゾール(0.120、1.43mmol)および無水THF(5mL)を入れ、不活性雰囲気下で−78℃まで冷却した。n−ブチルリチウム(2.5M ヘキサン、0.60mL、1.43mmol)を加え、低温で30分間撹拌した。無水塩化亜鉛(0.400g、2.90mmol)を一度に加え、低温で15分間撹拌した。この反応液を室温まで加温し、さらに30分間撹拌した。無水THF(5mL)中の3−(5−ブロモ−3−クロロ−チオフェン−2−イル)−7−(1−プロピル−ブチル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5a]ピリミジン(0.500g、1.27mmol)をこの反応液に加えた。アルゴンの陽圧で15分間脱気し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.060g、0.052mmol)を加えた。オイルバス(90℃)中、不活性雰囲気下で一晩還流させた。この反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチル(75mL)で希釈した。層分離させ、水層部分を酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。20%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(25%THF/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(25%THF/ヘキサン)を用いて溶出するフラッシュクロマトグラフィを使用して、この生成した残渣を精製し、黄色固体(0.140g、66%)を得た。ES/MS m/z (35Cl)441.7(M+1)
【0098】
基本的に実施例20に記載したようにして以下の化合物を調製した。
【0099】
【表6】

【0100】
(調製例17)
2−ブロモ−5−フルオロ−3−メチルベンゾ[b]チオフェン
アセトニトリル(350mL)中の機械的に撹拌した5−フルオロ−3−メチルベンゾ[b]チオフェン(50.32g、0.303mol)溶液をN−ブロモスクシンイミド(56.32g、0.318mol、1.05当量)で処理した。初期の吸熱のため、この反応液の温度は17℃まで低下した。その後、発熱が起こりこの反応液の温度は10分間かけて40℃まで上昇し、この時点で、氷水浴を使用することによりこの反応液を18〜20℃まで冷却した。この反応液を室温でさらに35分間撹拌し、生成したスラリーを水(350mL)でゆっくり希釈した。このスラリーを10分間撹拌した。この生成物を濾過し、50:50のアセトニトリル:水(100mL)で洗浄し、乾燥して無色の結晶性固体(65.56g、88%)を得た。
【0101】
(実施例22)
3−(5−フルオロ−3−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−7−イソプロピル−2,5−ジメチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0102】
【化18】

オーブン乾燥したフラスコに2−ブロモ−5−フルオロ−3−メチル−ベンゾ[b]チオフェン(0.490、2.00mmol)および無水THF(5mL)を入れ、不活性雰囲気下で−50℃まで冷却した。n−ブチルリチウム(2.5M ヘキサン、0.80mL、2.0mmol)を滴下し、30分間撹拌した。無水塩化亜鉛(0.550g、4.00mmol)を一度に加え、30分間低温で撹拌した。この反応液を室温まで加温し、さらに30分間撹拌した。無水THF(5mL)中の7−イソプロピル−3−ヨード−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5a]ピリミジン(0.316g、1.00mmol)を加えた。アルゴンの陽圧で15分間脱気し、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン(0.082g、0.1mmol)を加えた。オイルバス(90℃)中、不活性雰囲気下で一晩還流させた。この反応液を室温まで冷却し、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチル(75mL)で希釈した。層分離させ、水層部分を酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用し、20%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(20%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(20%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出して、この生成した残渣を精製し、オフホワイトのフォーム状物(0.206g、58%)を得た。ES/MS m/z 354.0(M+1)
【0103】
基本的に実施例22に記載したようにして以下の化合物を調製した。
【0104】
【表7】

【0105】
(調製例18)
ボロン酸、5−フルオロ−3−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル
乾燥したフラスコで、5−フルオロ−3−メチル−ベンゾ[b]チオフェン(312mg、1.88mmol)を無水THF(4mL)と混合した。−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウム(1.6N ヘキサン溶液、1.18mL、1.90mmol)を加えた。−78℃で1.5時間撹拌し、次いでホウ酸トリメチル(0.23mL、2.02mmol)を加えた。3時間撹拌し、この浴を−20℃まで上げた。この反応液が酸性(pH=4)になるまで5N 塩化水素を加えた。水で希釈し、酢酸エチル(3×)で抽出した。有機部分を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、エバポレーションした。塩化メチレン中で粉末化し、白色固体(258mg、65%)を得た。ES/MS m/z 209(M−1)
【0106】
(実施例25)
7−ブチル−3−(5−フルオロ−3−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(31mg、0.03mmol)および7−ブチル−3−ヨード−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(174mg、0.53mmol)を脱気した無水THF(10mL)に加えた。この混合物を10分間撹拌した。2−ボロン酸−5−フルオロ−3−メチル−ベンゾ[b]チオフェン(111mg、0.53mmol)および炭酸ナトリウム水溶液(5mLの水の中に112mg、1.06mmol)を加えた。この混合物を70℃で24時間加熱した。室温まで冷却した。エーテルで希釈し、次いで水およびブラインで洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。アセトニトリル/水/TFAを用いて溶出するHPLCによりこの残渣を精製し、標題の化合物(55mg、28%)を得た。ES/MS m/z 368(M+1)
【0107】
(調製例19)
4−クロロ−チオフェン−2−カルボニトリル
22L反応フラスコに冷却浴、空気撹拌機、ガス添加管、および温度計プローブを取り付けた。このフラスコに窒素をパージし、次いでAlCl(1025g、7.69mol)およびCHCl(6.6L、16.5倍量)を入れた。この混合物を0〜5℃に冷却し、温度を10℃以下に保ちながら、滴下ロートを使用して10〜15分間かけて2−チオフェンカルボニトリル(400g、3.66mol)を滴下した。この混合物に、10℃以下で1.25時間にわたって液面下にClガス(300g、4.23mol、1.16当量)を導入した。この反応の進行をGCによってモニタリングした。この反応混合物の一部分を6N HClの中へとクエンチし、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥し、濾過し、濾液を注入した。
【0108】
GC分析によりこの反応が完結していることが分かった時点で((出発物質:生成物:ジクロロ化合物)の比がGCの面積%で約(1:5.8:1)となったときにこの反応は完結していると考えた)、温度を20℃以下に保ちながら、滴下ロートを使用して1.5時間にわたって6N HCl(8.0L)を滴下した。このHCl添加は非常に発熱的であり、ガスが発生した。この反応液を分液ロートに移し、層分離させた。水層をCHCl(4.0L)で抽出し、クロロホルム層を合わせ、水(6.0L)で洗浄した。有機部分をNaSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、淡黄色の半固体(575g、109%)を得た。GC(60℃〜280℃温度勾配)面積%分析は、約68%の生成物(tret=6.5分)が含まれており、主要な不純物は未反応の出発物質(tret=5.1分)およびジクロロ化生成物(tret=7.4分)であることを示した。GC方法:カラム:DB1;T注入=300℃;T最初=60℃、t=2.0分;T最終=280℃、速度=18℃/分。
【0109】
(調製例20)
4−クロロ−2−チオフェンカルボキサミド
12L反応フラスコに冷却浴、空気撹拌機、および温度計プローブを取り付け、KOH(288.6g、5.143mol)および水(6.04L)を入れて溶液を形成した。この溶液は約31℃まで発熱した。この溶液を約28℃まで冷却し、この混合物に4−クロロ−2−チオフェンカルボニトリル(671.3g、4.675mol)を加えた(少量の固体は溶解しなかった)。EtOH(675mL)を加え、この時点で徐々に発熱が起こり、1〜1.5時間にわたって約38℃まで発熱が続いた。この反応液を周囲温度で一晩撹拌した。この反応合物を真空下で濾過し、水で洗浄し、乾燥し、粗生成物を得た。この固体をEtOAc(10.0L)に溶解させ、NaSOおよび活性炭で1〜2時間処理し、濾過し、EtOAcで洗浄した。固体が沈殿し始めるまで、この濾液を45℃でロータリーエバポレータで濃縮した。真空を開放し、温度を60〜65℃まで上昇させ、この固体を再溶解させた。60℃で撹拌しながら、ヘプタン(3.5L)をゆっくり加え、固体を沈殿させた。60℃で15〜20分間撹拌し、次いでこの混合物を30〜40℃まで冷却し、濾過した。この固体をヘプタン(2×0.75L)で洗浄し、乾燥して、標題の化合物を白色固体(235.4g、31%)として得た。濾液から第2の収量(67.8g、9%)を得た。
【0110】
(調製例21)
4−クロロ−N−ジメチルアミノメチレン−2−チオフェンカルボキサミド
5L反応フラスコに加熱マントル、空気撹拌機、ディーン−スターク装置、および温度計プローブを取り付けた。4−クロロ−2−チオフェンカルボキサミド(300g、1.856mol)およびジメチルホルムアミドジメチルアセタール(872mL)を入れ、スラリーを形成させた。留出分(ほとんどがMeOH)を集めながら、この混合物を徐々に96℃まで加熱した。加熱マントルを取り除き、25℃以下まで冷却した。滴下ロートを使用して水(3.0L)を加え、温度を35℃以下に保った。この反応混合物をEtOAc(3.0L、1.5L)で抽出した。有機層を合わせ、水(1.5L)で洗浄した。この有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、粗生成物(400g)を得た。
【0111】
この生成物を50〜60℃でEtOAc(320 mL、0.8倍量)に溶解させた。温度を徐々に70℃まで上昇させながら、ヘプタン(1700mL、4.25倍量)をゆっくり加えた。この濁った溶液に種晶を加え、沈殿を開始させた。生成した混合物を室温で一晩撹拌し、濾過し、ヘプタンで洗浄した。この固体を乾燥し、標題の化合物を白色固体(329.8g、82%)として得た。
【0112】
(調製例22)
5−(4−クロロ−チオフェン−2−イル)−1−メチル−H−[1,2,4]トリアゾール
3L反応フラスコに冷却浴、空気撹拌機、および温度計プローブを取り付け、4−クロロ−N−ジメチルアミノメチレン−2−チオフェンカルボキサミド(155g、0.715mol)およびHOAc(1500mL)を入れ、溶液を形成させた。温度を30℃以下に保つために氷水冷却浴を使用して、滴下ロートを用いて15〜20分間かけてメチルヒドラジン(33.2g、0.721mol)を滴下し、淡黄色スラリーを形成させた。この反応液を徐々に90℃まで加熱し、90℃で30分間保持した。GCによりこの混合物を分析し、それからこの反応液を約70℃まで冷却し、濃厚な油状物/スラリーまで濃縮した。水(1.67L)をゆっくりと加えて固体を沈殿させ、この混合物を30℃未満まで冷却し、濾過し、水(1.67L)で洗浄した。この湿った固体(125.8g)を暖めたt−ブチルメチルエーテル(1.64L)に溶解させ、NaSOで乾燥し、濾過し、乾固するまで濃縮し、標題の化合物を淡黄色固体(85.8g、60%)として得た。
【0113】
(調製例23)
5−(5−ブロモ−4−クロロ−チオフェン−2−イル)−1−メチル−H−[1,2,4]トリアゾール
3L反応フラスコに冷却浴、空気撹拌機、および温度計プローブを取り付け、5−(4−クロロ−チオフェン−2−イル)−1−メチル−1H−[1,2,4]トリアゾール(105.3g、0.527mol)、アセトニトリル(1053mL)およびHOAc(105mL)を入れ、溶液を形成させた。N−ブロモスクシンイミド(103.2g、0.580mol)を、温度を31℃以下に維持しながら30〜60分間かけて少しずつ加えた。1時間撹拌し、この時点でGC分析を行ったところ、反応が完結していることがわかった。この反応混合物を水(2.1L、20倍量)に注ぎ込み、30分間撹拌し、濾過し、水(2×1L)で洗浄した。この生成物を真空オーブン中で45℃で一晩乾燥し、標題の化合物を淡黄色固体(123.0g、84%)として得た。
【0114】
(実施例26)
7−ブチル−3−[3−クロロ−5−(2−メチル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−チオフェン−2−イル]−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0115】
【化19】

5−(5−ブロモ−4−クロロ−チオフェン−2−イル)−1−メチル−1H−[1,2,4]トリアゾール(169mg、0.61mmol)を無水THF(5mL)に加えた。−78℃まで冷却した。tert−ブチルリチウム(0.81mL、1.37mmol、1.7Mペンタン溶液)を加えた。45分間撹拌し、次いで塩化亜鉛(1.5mL、1.76mmol、0.5M THF溶液)をゆっくり加えた。5分間撹拌し、室温まで加温し、15分間撹拌した。ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(62mg、0.12mmol)および7−ブチル−3−ヨード−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(200mg、0.61mmol)を加えた。加熱して一晩還流させた。この反応液をセライト(登録商標)を通して濾過し、乾固するまで濃縮した。0〜50%酢酸エチルを含むヘキサンを用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィを使用して精製し、標題の化合物(36mg、15%)を得た。ES/MS m/z(35Cl)401(M+1)
【0116】
(実施例27)
{5−[7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−イル]−4−メチル−チオフェン−2−イル}−ジメチル−アミン塩酸塩
3−(5−ニトロ−3−メチル−チオフェン−2−イル)−7−(1−エチル−プロピル)−2,5−ジメチル−ピラゾロ[1,5a]ピリミジン(0.36g、1.0mmol)を、10%パラジウム炭素(0.20g)を含むTHF(5mL)に溶解させ、真空/水素雰囲気フラッシュ(3×)によって脱気し、水素雰囲気下(55psi)(約379kPa)で室温で3時間撹拌した。この反応が完結していることをTLCを用いて確認した。この反応液をTHF(50mL)で希釈し、セライト(登録商標)で濾過した。水素化ナトリウム(0.10g、2.25mmol)を60%オイル懸濁液として加え、室温で20分間撹拌した。ヨードメタン(0.140mL、2.25mmol)をこの反応液に加え、密閉した反応容器中で50℃で一晩撹拌した。この反応液を水でクエンチし、酢酸エチル(100mL)で希釈した。この有機部分を水、飽和塩化アンモニウム、およびブラインで洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で油状物まで濃縮した。フラッシュクロマトグラフィを使用して、10%増分の段階勾配で100%ヘキサン/0%(25%酢酸エチル/ヘキサン)から0%ヘキサン/100%(25%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出してこの生成した残渣を精製し、フォーム状物(0.145g、41%)を得た。この生成物(0.13g、0.365mmol)をメタノール(3mL)に溶解させ、4.0M HCl−ジオキサン(3mL)を加えた。この反応液を30分間撹拌し、この反応液に窒素の陽圧を吹き込んだ。真空オーブン中で乾燥し、白色固体(0.125g)を得た。ES/MS m/z 357.2(M+1)
【0117】
(実施例A)
(生体外結合を使用する生体内効力評価)
生体内効力を評価するために、生体外結合を使用して本発明の化合物を評価した。D.R.Gehlertら, EJP 509:145−153(2005)に提供された手順を使用して、化合物を経口経路によってラットに投与した。Gehlertらによって記載されたようにして、小脳への125I−ソーバジンの結合を生体外で評価した。例えば、実施例20は、10mg/kgで74%阻害をもたらした。
【0118】
(実施例B)
(CRF1フィルター結合法)
結合試験を展開するために充分な受容体密度を有する組換え細胞株を生成するという点でのプラスミドベースのヒトCRF1発現の限界は、スタンフォードからライセンス供与されたPhoenixレトロウイルス発現系を用いて克服した。安定なHEK−hCRF1細胞株を使用して膜を調製し、結合反応(200μl)を、以下のとおりに設定した:50μlの125I−ソーバジン(0.2nMの最終濃度)、50μlの化合物および100μlのCRF1膜(25μg/反応)。この反応液を室温で2時間インキュベーションし、前処理したFB Milliporeガラス繊維フィルタープレート(96ウェル)を通して濾過することによって停止させた。このプレートを氷冷した試験緩衝液(50mM トリス、12.5mM NaCl、1mM EDTA、10mM MgCl2、0.05% BSA、pH7.2)で2回洗浄し、一晩風乾し、MicroBetaカウンタ中で100μl Microscint40を用いてカウントした。非特異的結合(NSB)を、0.5μM非標識ソーバジンの存在下で測定した。通常は3回の測定を行い、平均のデータ点をGraph Pad Prismによってプロットした。
【0119】
この試験を使用すると、(他の実施例のための中間体として使用したため試験しなかった実施例2、 3、6、7、および8を除いて)本発明の例示した化合物は、ローラー/接着細胞において500nM以下のKi(阻害定数)で125I−ソーバジン(4nM)の結合を阻害した。例えば、実施例20は4.4nMのKiを示した。
【0120】
(実施例C)
(CRF2フィルター結合法)
結合試験を展開するために充分な受容体密度を有する組換え細胞株を生成するという点についてのプラスミドベースのヒトのCRF2発現の限界は、スタンフォードからライセンス供与されたPhoenixレトロウイルス発現系を用いて克服した。安定なHEK−hCRF2細胞株を使用して膜を調製し、結合反応(200μl)を、以下のとおりに設定した:50μlの125I−ソーバジン(0.2nMの最終濃度)、50μlの化合物および100μlのCRF2膜(25μg/反応)。この反応液を室温で2時間インキュベーションし、前処理したFB Milliporeガラス繊維フィルタープレート(96ウェル)を通して濾過することによって停止させた。このプレートを氷冷した試験緩衝液(50mM トリス、12.5mM NaCl、1mM EDTA、10mM MgCl2、0.05% BSA、pH7.2)で2回洗浄し、一晩風乾し、MicroBetaカウンタ中で100μl Microscint40を用いてカウントした。非特異的結合(NSB)を、0.5μM非標識ソーバジンの存在下で測定した。あるいは、化合物をシンチレーション近接アッセイを使用して評価した。この試験法を、以下のように設定した:50μlの125I−ソーバジン(0.2nM 最終濃度)、50μlの化合物または非標識ソーバジン(NSB)、ならびに250μgのコムギ胚芽凝集素(WGA)SPAビーズおよびCRF2膜(1.5μg/反応)を含む100μl。プレートを4〜5時間室温でインキュベーションし、200×gで10分間遠心分離した。結合した放射活性を、Wallac Triluxシンチレーションカウンタを用いて評価した。通常は3回の測定を行って結合を評価し、平均のデータ点をGraph Pad Prismによってプロットした。最初に固定した濃度で化合物をスクリーニングし、十分な活性が認められると、引き続いて濃度−応答曲線を作成した。
【0121】
本発明の化合物は、好ましいことに、(CRF1よりも)CRF2受容体に対して弱い親和性を示した。例えば、実施例20は、50μMの濃度で39%阻害を示した。
【0122】
(実施例D)
(バイオアベイラビリティおよび薬物動態特性)
分布容積(Vdist)は、体内の薬物量を血中または血漿中の薬物濃度に関連付ける。分布容積とは、血中または血漿中と同じ濃度で薬物の全量を体内に含むのに必要とされるであろう流体の体積を指す:Vdist=体内の薬物量/血中または血漿中の薬物濃度(GoodmanおよびGillmanの文献)。10mg用量および10mg/Lの血漿濃度に対しては、分布容積は1リットルになる。分布容積は、その薬物が血管外組織中に存在する程度を反映する。大きい分布容積は、ある化合物が血漿タンパク質結合よりも組織成分に結合しようとする傾向があることを反映する。臨床の場面では、Vdistは定常状態濃度を実現するための負荷用量を決定するのに使用することができる。
【0123】
分布容積について試験するために、雄性Sprague Dawleyラット(N=3)に、1回の1mg/kgの静脈内投与で化合物投与した。複数個の血漿試料を、投与後0.08〜24時間の時点で採取した。この血漿試料をLC/MS/MSによって分析し、血漿濃度を測定した。血漿中の薬物動態計算を行って、Vdistおよび血漿クリアランス(Clp)を含めた薬物動態パラメータを決定した。
【0124】
本発明の化合物は、好ましいことに、CP154526(Schulzら, Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),93:10477(1996))およびNBI30775(Chenら, Drug Development Research,65:216(2005))などの他のCRFアンタゴニストよりも好適なバイオアベイラビリティプロフィールを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
およびRは独立に水素またはC−Cアルキルであり、

【化2】

であり、
はClまたはメチルであり、
は水素、Br、ニトロ、メトキシ、メトキシメチル、ジメチルアミノ、エトキシカルボニル、アセトアミド、アセトキシ、
【化3】

である]
の化合物またはその薬理学的に許容できる塩。
【請求項2】
およびRが独立にエチルまたはn−プロピルである、請求項1に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩。
【請求項3】

【化4】

である、請求項1または2に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩。
【請求項4】
がメトキシ、メトキシメチル、ジメチルアミノまたは
【化5】

である、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩と薬理学的に許容できる賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項6】
患者のうつ病、不安神経症、アルコール濫用または薬物濫用、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、過敏性大腸症候群、癲癇、発作、睡眠障害、アレルギー、片頭痛、月経前症候群、不妊症、性的機能不全、先天性副腎過形成、クッシング病、早産、ストレスにより誘発される胃潰瘍、炎症性障害、下垂体または異所性下垂体由来の腫瘍、慢性疲労症候群、線維筋痛、内臓痛または多発性硬化症を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療上有効量の請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩を投与することを含む、方法。
【請求項7】
患者の不安神経症またはうつ病を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療上有効量の請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩を投与することを含む、方法。
【請求項8】
患者のアルコール濫用または薬物濫用を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療上有効量の請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩を投与することを含む、方法。
【請求項9】
うつ病、不安神経症、アルコール濫用または薬物濫用、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、過敏性大腸症候群、癲癇、発作、睡眠障害、アレルギー、片頭痛、月経前症候群、不妊症、性的機能不全、先天性副腎過形成、クッシング病、早産、ストレスにより誘発される胃潰瘍、炎症性障害、下垂体または異所性下垂体由来の腫瘍、慢性疲労症候群、線維筋痛、内臓痛または多発性硬化症の治療のための医薬の製造のための、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩の使用。
【請求項10】
不安神経症またはうつ病の治療のための医薬の製造のための、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩の使用。
【請求項11】
アルコール濫用または薬物濫用の治療のための医薬の製造のための、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩の使用。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容できる塩。

【公表番号】特表2010−504343(P2010−504343A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529307(P2009−529307)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/078352
【国際公開番号】WO2008/036541
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】