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チオプリン薬抵抗性およびチオプリン薬不耐性のリスクがある個体を同定する方法
説明

チオプリン薬抵抗性およびチオプリン薬不耐性のリスクがある個体を同定する方法

本発明は、チオプリン薬抵抗性またはチオプリン薬不耐性に関連するTPMT遺伝子プロモーター中の突然変異の存在を検出することに基づいて、チオプリン薬不耐性のリスクがある個体を同定するための方法およびキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチオプリン薬不耐性のリスクがある個体を同定するための方法およびキットに関する。これらの方法およびキットは、チオプリン薬抵抗性またはチオプリン薬不耐性に関連するTPMT遺伝子プロモーター中の突然変異の存在を検出することに基づく。
【背景技術】
【0002】
チオプリン薬(主としてアザチオプリンおよび6-メルカプトプリン)は幅広い疾患の処置に使用される。そのような疾患には、急性リンパ芽球性白血病、固形臓器移植に関連する合併症、自己免疫疾患、例えば慢性関節リウマチおよび炎症性腸疾患(IBD)、ならびに皮膚異常などがある。
【0003】
チオプリン薬は不活性であり、体内で活性代謝産物6-メチルメルカプトプリンリボヌクレオチド(6-MMPR)および6-チオグアニンヌクレオチド(6-TGN)に代謝される。6-TGNが有益であるのに対して、6-MMPRは毒性を持ちうる。残念なことに、個体の40%までは、チオプリン類を使った処置に対して薬物抵抗性または薬物不耐性を示す。チオプリン処置に対して抵抗性である個体の一部は、治療レベルの6-TNGを実現することができず、その代わりに6-MMPRを肝毒性レベルまで蓄積する(>5700pmol/8×108RBC)。
【0004】
チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(TPMT)は、チオプリン薬のS-メチル化を触媒する細胞質酵素である。この酵素は多型性であり、赤血球(RBC)において、白人の約0.6%は完全な欠損を、11%は中間的活性を、そして89%は正常なTPMT活性を示す(Wangら、2006)。これらの薬物による骨髄毒性のリスクを増加させるTPMT欠損は25年以上にわたって研究されており、研究の場から診断の場へと移行した遺伝薬理学の数少ない例の一つである。例えば米国特許第5,856,095号には、TPMT遺伝子中の遺伝子突然変異であって、TPMT活性の低下をもたらし、患者を標準的な用量のチオプリン薬で処置した場合の潜在的に致命的な造血毒性と直接符合し、したがってチオプリン不耐性またはチオプリン抵抗性と直接関連づけられるものが示されている。残念ながら、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性である患者の全てが、低下したTPMT活性を示すわけではない。白人の約1〜2%は極めて高いTPMT活性を示し、それが、チオプリン処置抵抗性または肝毒性をもたらしうる。今のところ、このTPMT超代謝群(ultra-metaboliser;UM)表現型について、納得できる分子的説明はない。
【0005】
チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある極めて高いTPMT活性を持つ個体を同定する手段になるアッセイまたは方法は、チオプリン治療を必要とする個体におけるそのようなリスクを確証しようと試みる医師にとって有用であるだろう。
【0006】
したがって、チオプリン抵抗性もしくはチオプリン不耐性のリスクがあるTPMT UM表現型を持つ個体を同定するための方法およびキットを提供すること、または少なくとも、有用な選択肢を公衆に提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0007】
[発明の概要]
本発明者らは、驚くべきことに、チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子中に存在する今まで認識されていなかった突然変異であって、UM表現型と関連し、チオプリン治療に対する個体の応答と関連するものを見出した。より具体的には、TPMTのプロモーター領域中の突然変異が、UM表現型と関連し、チオプリン治療を受けている個体における当該治療に対する薬物抵抗性または薬物不耐性のリスクと関連することを確認した。
【0008】
本明細書では、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、配列番号1を参照して位置を示す。ここでは、2つの特異的突然変異が、TPMTのプロモーター領域中に同定される。これらの突然変異は、通常であればモチーフGCCの一連の6連続リピートを含有している領域を変化させて、リピートを1つ喪失させるか、リピートを1つ獲得させることにより、それぞれGCC(5)またはGCC(7)を与える。1つ以上のGCCリピートの喪失または獲得をもたらすこの領域中の突然変異はどれでも、UM表現型およびチオプリン不耐性またはチオプリン抵抗性のリスクと関連するだろうと予想される。
【0009】
第1の態様において、本発明は、UM表現型およびチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連する1つ以上の突然変異の有無について、個体をスクリーニングするための方法であって、TPMT遺伝子プロモーターに関してその個体の遺伝子型状態を決定するステップを含む方法を提供する。
【0010】
突然変異は、1つ以上の追加GCCリピート配列を含むか、または1つ以上のGCCリピート配列の喪失を含みうる。好ましくは、突然変異は、単一のGCCリピートの付加を含むか[GCC(7)(配列番号4)]、または単一のGCCリピートの喪失を含む[GCC(5)(配列番号3)]。
【0011】
遺伝子型状態は、前記個体から取得されたDNAに関して、直接的方法または間接的方法によって決定することができる。
【0012】
好ましくは、DNA試料を個体から取得し、TPMTプロモーターの遺伝子型状態を、そのプロモーターのGCCリピート領域における、TPMTをコードするヌクレオチド配列(配列番号1)との少なくとも一つの相違の存在について、直接的方法または間接的方法によって評価する。
【0013】
より好ましくは、遺伝子型状態が、TPMTプロモーターのGCCリピート領域における突然変異の存在によって決定される。これは、個人ゲノム配列の一部として決定されてもよいし(この場合、形質データはゲノム配列そのものから既知形質との直接比較によって決定される)、突然変異を特異的に決定してもよい。突然変異は1つ以上のGCCリピート配列の喪失または1つ以上のGCCリピート配列の獲得からなりうる。好ましくは、突然変異は、直接的方法または間接的方法により、それぞれ配列番号3または4から選択される単一のGCCリピートの喪失または単一のGCCリピートの獲得からなる。
【0014】
もう一つの実施形態において、本発明は、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を同定する方法であって、前記個体からDNA試料を取得し、TPMTプロモーターのGCCリピート領域中の突然変異を同定することを含み、前記突然変異の存在がUM表現型およびチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連する方法を提供する。
【0015】
突然変異は、1つ以上の追加GCCリピート配列、または1つ以上のGCCリピート配列の喪失からなりうる。
【0016】
好ましくは、突然変異は、単一のGCCリピートの追加[GCC(7)(配列番号4)]、または単一のGCCリピートの喪失[GCC(5)(配列番号3)]からなる。
【0017】
さらにもう一つの態様において、本発明は、TPMTプロモーターのGCCリピートモチーフにおける突然変異の検出に使用するのに適した、単離された核酸分子を提供する。突然変異は、好ましくは、配列番号3または4からなる群より選択され、本発明の核酸分子は、配列番号1またはその相補的配列の少なくとも約15個の連続する塩基を持つヌクレオチド配列からなりうる。
【0018】
ある実施形態において、核酸分子は、本発明の突然変異を少なくとも一つは含有するヌクレオチド配列に結合する配列を持つプローブからなる。
【0019】
もう一つの実施形態において、核酸分子は、本発明の突然変異の上流または下流でTPMTプロモーターに結合する配列を持つプライマーからなる。好ましい実施形態では、プライマーが、TPMTプロモーター配列に、GCC連続リピートモチーフの上流または下流で、前記GCCリピートモチーフから1塩基まで結合する。
【0020】
突然変異は1つ以上のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含みうる。好ましくは、突然変異は、単一のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含み、それぞれGCC(5)またはGCC(7)を与える。
【0021】
さらにもう一つの態様において、本発明は、配列番号1の配列を持ち、GCCリピートモチーフ中に突然変異を含む、単離された核酸分子を提供する。突然変異は1つ以上のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含みうる。好ましくは、突然変異は、配列番号3もしくは4、またはその機能的フラグメント、変異型もしくはアンチセンス分子を含む群から選択される。
【0022】
もう一つの選択肢として、核酸分子はペプチド核酸(PNA)を含んでもよい。核酸は、検出可能なラベル、好ましくは蛍光ラベルまたは放射性同位体ラベルを、さらに含んでもよい。あるいは、ゲノムDNA試料を蛍光または放射性同位体で標識してもよい。
【0023】
もう一つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド分子によってコードされる精製されたペプチド、ならびにそれらのペプチドに対して産生される抗体に関する。
【0024】
もう一つの態様において、本発明は、UM表現型を持ち、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を、前記個体の個人ゲノム配列の評価に基づいて同定する際の、本明細書で同定されるTPMTプロモーター中のGCC突然変異の使用を提供する。
【0025】
突然変異は、1つ以上のGCCリピート配列の喪失、または1つ以上のGCCリピート配列の獲得を含みうる。好ましくは、突然変異は、単一のGCCリピート配列の喪失または獲得を含み、配列番号3または4を含む群から選択される。
【0026】
もう一つの態様において、本発明は、UM表現型を持ち、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を、TPMTプロモーターの遺伝子型状態の評価に基づいて同定するための診断キットを提供する。
【0027】
好ましい実施形態では、キットが、本発明のプローブを含む。
【0028】
あるいは、キットは、TPMTプロモーターまたはそのアンチセンス鎖に、GCC連続リピートモチーフから1塩基の位置にあるヌクレオチドまで結合するプライマーを含む。このプライマーは前記モチーフの上流にあっても下流にあってもよい。
【0029】
さらにもう一つの態様において、本発明は、UM表現型を持ち、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を同定するための診断キットであって、GCC連続リピートモチーフ中の突然変異のそれぞれ上流および下流で、TPMTプロモーターまたはそのアンチセンス鎖のヌクレオチド配列に相補的である、第1プライマーおよび第2プライマーを含む診断キットを提供する。
【0030】
突然変異は1つ以上のGCCリピート配列の喪失、または1つ以上のGCCリピート配列の獲得を含みうる。好ましくは、突然変異は、単一のGCCリピート配列の喪失または獲得を含み、配列番号3または4を含む群から選択される。
【0031】
添付の図面に記載する配列および図を参照して、以下に本発明を説明する。
配列
配列番号1は、UCSCゲノムブラウザ(http://www.genome.ucsc.edu、March 2006 Assembly)によって生成されるTPMTプロモーターのゲノム配列である。
配列番号2は、非突然変異型GCC連続リピートモチーフ(GCC(6))を示すTPMTプロモーター由来の部分ゲノム配列である。
配列番号3は、GCC連続リピートモチーフ中の突然変異を示すTPMTプロモーター由来の部分ゲノム配列であり、この場合、突然変異はリピートひとつ分の喪失を含んでいて、GCC(5)を与える。
配列番号4は、GCC連続リピートモチーフ中の突然変異を示すTPMTプロモーター由来の部分ゲノム配列であり、この場合、突然変異はリピートひとつ分の獲得を含んでいて、GCC(7)を与える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】母集団におけるTPMT活性の三峰性分布を示す図。
【図2】アザチオプリン代謝の概略図。
【図3a】図3aはTPMTプロモーターのゲノム構成を示す。
【図3b】図3bは、他の8つの哺乳動物種の配列と整列させた野生型ヒトTPMTプロモーター配列を表し、GCCリピートモチーフの保存度を示している。
【図4】野生型TPMTプロモーター配列および本発明の突然変異を示す変異型プロモーター配列のエレクトロフェログラム。
【図5】レポーター遺伝子アッセイにおける野生型および変異型TPMTプロモーターの活性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[発明の詳細な説明]
定義
本明細書で使用する「薬物」という用語は、疾患または異常を処置または予防または管理するために、医学的背景をもって人に投与される化学物質(chemical entity)を指す。
【0034】
「治療」という用語は、ある個体の状態に有益な変化を生じさせることが意図されたプロセスを指す。有益な変化には、例えば、次に挙げる事項の一つ以上を含めることができる:機能の回復、症状の軽減、疾患、障害もしくは異常の進行の制限もしくは遅延、または個体の異常、疾患もしくは障害の悪化の予防、制限もしくは遅延。
【0035】
本発明に関して、「チオプリン治療」は、個体へのチオプリン薬の投与を伴う。チオプリン薬の限定でない例は、アザチオプリン(Imuran(登録商標)、Azamun(登録商標)、Thiprine(登録商標))および6-メルカプトプリン(Puri-Nethol(登録商標))である。
【0036】
本明細書において「チオプリン不耐性」とは、チオプリン治療を受けている個体における肝臓毒性などの有害反応を意味する。
【0037】
「チオプリン抵抗性」とは、チオプリン治療を受けている個体における所望する治療アウトカムの欠如を意味する。
【0038】
「個体」とはヒトを意味する。
【0039】
本発明における「突然変異」は、TPMT遺伝子のプロモーター配列中のGCC連続リピート配列に関する遺伝子の変異型であって、UM表現型と関連するものを意味する。
【0040】
「プライマー」は、相補的配列を持つDNAの予定された領域に特異的にハイブリダイズ(結合)する一本鎖核酸分子(オリゴヌクレオチドともいう)を指す。プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびさまざまな多型検出方法における重要な試薬である。プライマーは、PCRおよび数多くの多型検出方法で使用されるポリメラーゼ酵素に特異的開始部位を提供する。
【0041】
「遺伝子型別」または「遺伝子型状態(genotypic state)」は、ある個体のDNA中のある多型部位または突然変異部位におけるヌクレオチドの性質を決定する、一連の方法(Kwok(2001)に概説されているものを含む)を指す。
【0042】
本明細書および特許請求の範囲で使用する用語「〜を含む(comprising)」は、「少なくとも一部は〜からなる(consisting at least in part of)」を意味する。すなわち、「を含む」という文言が入っている本明細書中および特許請求の範囲中の陳述を解釈するにあたって、各陳述においてこの用語が前置きされている特徴は全て存在する必要があるが、他の特徴も存在することができる。この用語の現在形(comprise)、過去形/過去分詞(comprised)などの関連用語も、同様に解釈されるべきである。
【0043】
説明
チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(TPMT;EC 2.1.1.67)は、チオプリン薬であるアザチオプリン(AZA)および6-メルカプトプリン(6-MP)のSメチル化を触媒する細胞質酵素である。この酵素は多型性であり、赤血球(RBC)において、白人の約0.6%は完全な欠損を示し(低メチル化群(poor methylator)、PM)、11%は中間的活性を示し(中メチル化群(intermediate methylator)、IM)、そして89%は正常なTPMT活性を示す(高メチル化群(extensive methylator)、EM)(Wangら、2006)。さらに、白人の1〜2%はこの三峰性分布の範囲外にあり、超高TPMT活性を示す(超高メチル化群(ultra-high methylator)、UM)(図1)。チオプリン免疫抑制薬は比較的狭い治療域を持つので、TPMT遺伝子中の突然変異は、2つの重要な活性チオプリン代謝産物、6-メチルメルカプトプリンリボヌクレオチド(6-MMPR)およびチオグアニンヌクレオチド(6-TGN)の比を決定する上で、そしてまた、その結果として、チオプリン治療の効力および毒性を決定する上で、重要な役割を果たす(図2参照)。PMである個体は、そしてPM個体ほどではないがIMである個体も、上昇した6-TGN濃度のせいで、標準的用量のAZAおよび6-MPでの骨髄抑制のリスクが高くなる。逆に、超高TPMT活性を持つ個体では、処置抵抗性(6-TGN濃度が治療レベル未満であるため)と、上昇した6-MMPR濃度の結果として肝毒性を起こす可能性が高くなる。大半のTPMT欠乏症については、その分子的根拠が現在では確立されており、遺伝薬理学的現象が処方指針を得るために広く使用される診断検査に変換された数少ない例の一つである。対照的に、有意に上昇した酵素活性の原因は、強い家族相関からこの現象が遺伝的根拠を持ちうることは示唆されるものの、わかっていない。
【0044】
本発明者らは、極めて高いTPMT活性を示す患者におけるTPMTプロモータートリヌクレオチド(GCC)リピート領域中の突然変異を、初めて見出した。そのような高いTPMT活性はチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連する。
【0045】
したがって、第1の態様において、本発明は、極めて高いレベルのTPMT活性(UM表現型)およびチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連する突然変異の有無について、個体をスクリーニングするための方法を提供する。この方法は、少なくとも、TPMTプロモーターに関してその個体の遺伝子型状態を決定するステップを含む。
【0046】
遺伝子型状態は、前記個体から取得されたDNAに関して、直接的方法または間接的方法によって、決定することができる。
【0047】
TPMTプロモーターのGCC連続リピート領域は、通常、6つのGCCリピート(配列番号2)を含む。
【0048】
TPMTプロモーターのGCC連続リピート領域中に2つの突然変異が同定され、UM表現型およびチオプリン治療を受けている個体におけるチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連することが示された。これらの突然変異は、GCC(5)を与える単一のGCCリピート配列の喪失を含むか(配列番号3)、またはGCC(7)を与える単一のGCCリピート配列の獲得を含む(配列番号4)。
【0049】
しかし、1つ以上のGCCリピートの喪失または獲得をもたらす、この領域中の突然変異はいずれも、UM表現型およびチオプリン不耐性またはチオプリン抵抗性のリスクと関連するだろうと予想される。
【0050】
一部の個体では、1つ以上の多型または突然変異の存在が薬物抵抗性をもたらすことが示されており、一方、他の個体は薬物不耐性を示しうる。チオプリン不耐性とチオプリン抵抗性を両方とも示す個体もある。特異的多型または突然変異を治療アウトカムと関連づけることにより、同じ多型または突然変異を持つチオプリン不耐性および/またはチオプリン抵抗性のリスクがある個体を同定するためのリスクプロファイルを確立することができる。
【0051】
したがって、もう一つの実施形態において、本発明は、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を同定する方法であって、前記個体からDNA試料を取得し、TPMTプロモーターのGCCリピート領域中の突然変異を同定することを含み、前記突然変異の存在がUM表現型およびチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連する方法を提供する。
【0052】
突然変異は1つ以上のGCCリピート配列の喪失または獲得からなりうる。好ましくは、突然変異は、単一のGCCリピート配列の喪失(配列番号3)、または単一のGCCリピート配列の獲得(配列番号4)からなる。
【0053】
そのような突然変異を決定することにより、チオプリン治療における個体の経過に関して、記録を取ることが可能になる。したがって、同一のまたは類似するTPMT突然変異を持つ個体群から得られる結果に基づいて、チオプリン不耐性またはチオプリン抵抗性の蓋然性を、特定の突然変異と関連づける、突然変異プロファイルを確立することができる。
【0054】
そうすれば、突然変異プロファイルを使って、チオプリン治療が有効でありそうかどうかに関して、個体をより的確に評価することができる。治療が成功する蓋然性は低いことがわかった場合は、メトトレキサート、インフリキシマブおよび他の生物学的薬剤を含む、代替的処置を使用することができる。あるいは、必要であれば、個体は直ちに手術に移行してもよい。
【0055】
プロファイルを使って、チオプリン治療に関する適当な治療投薬量範囲および治療頻度範囲を、類似するまたは同一の突然変異を持つ個体で成功したさまざまな投薬量範囲および頻度範囲の治療を比較することによって決定することもできる。
【0056】
医師は、好結果をもたらすチオプリン処置の予後を裏付けるために、他のリスク要因を解析に組み入れることができる。これらのリスク要因は臨床的要因または遺伝的要因であることができ、例えばTPMT*2、TPMT*3AおよびTPMT*3CなどといったTPMT中の突然変異(Wangら、2006)、グアノシン5'一リン酸シンテターゼ(GMPS;EC 6.3.5.2)の酵素活性または遺伝子型、イノシン三リン酸ピロホスファターゼ(ITPA)の酵素活性または遺伝子型、およびイノシン5'一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH;EC 1.1.1.205)の酵素活性または遺伝子型(IMPDH1とIMPDH2の酵素活性または遺伝子型)(Robertsら、2006)を含みうる。
【0057】
ある個体の遺伝子型状態は、前記個体のTPMTプロモーター配列、具体的にはTPMTプロモーターのGCCリピート配列を、配列番号1の配列と比較することによって決定される。配列番号1のヌクレオチド配列と比較して、その個体の配列における少なくとも1つのヌクレオチドの相違の存在(直接的方法または間接的方法によって決定されるもの)は、多型または突然変異を示す。好ましくは、少なくとも1つのGCCリピートモチーフの相違の存在が、多型または突然変異を示す。これは、1つ以上のGCCリピートモチーフの獲得、または1つ以上のGCCリピートモチーフの喪失を含みうる。多数派または多型突然変異少数派へのグループ分けが可能になり、それにより、治療が成功する蓋然性を決定することが可能になる。
【0058】
特に、本発明のTPMTプロモーターGCCリピート配列中の新規突然変異は、個人ゲノム配列決定において、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を同定するために使用することができると考えられる。
【0059】
個人ゲノム配列決定は、現在はその揺籃期にあるが、近いうちに、わずかな費用で広く利用できるようになるだろう。個人ゲノム配列決定では、個体はそれぞれのゲノム配列が配列決定されて、疾患のリスクプロファイル、その身体的および生物学的特徴、ならびにその個人的血統を同定するために、それぞれの遺伝子情報を使用することができるようになるだろう。ゲノム配列は、さまざまな疾患または疾患に対する素因および生物学的特徴と関連づけられた既知の突然変異と比較される。本新規TPMTプロモーター突然変異は、疾患リスクプロファイルの編集に使用するための個人ゲノムデータベースに含めることができる。
【0060】
TPMTプロモーターは、主要転写開始部位の43bp上流に位置する、リピート数3から9まで(*V3〜*V9)の範囲の可変数タンデムリピート(variable number tandem repeat;VNTR)を含有する(Alvesら、2000)。Spire-Vayron de la Moureyreら(1999)はレポーター遺伝子アッセイを行なって、最も一般的な3つのアレル(*V4、*V5、*V6)と比較して、*V7アレルがルシフェラーゼ活性を有意に減少させ、*V8がルシフェラーゼ活性を有意に増加させることを見出した。しかし、53人の血縁関係のない白人を、それぞれのVNTR遺伝子型に従ってグループ分けしたところ、VNTR遺伝子型とRBCにおける平均TPMT活性の間に統計差は観察されなかった(Alvesら、2000)。その後の研究でもリピート数とインビボRBC TPMT活性の間に明快な関係性を確証することはできていない。せいぜい、このプロモーターVNTRは酵素活性のレベルに対してわずかな影響を持つらしいという程度である(Fessingら、1998)。したがって、今までのところ、TPMT UM状態に関する分子的説明は見つかっていない。
【0061】
本発明は、TPMTプロモーターのもう一つのリピート配列であるGCCトリヌクレオチドリピート配列中に、患者におけるUM表現型およびチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと直接関連づけられる突然変異を初めて見出した。
【0062】
UM表現型を持ちチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を同定するための一方法は、前記個体からDNA試料を取得することを含みうる。次に、TPMTプロモーターのGCCトリヌクレオチドリピート配列中の突然変異を同定するために、その試料を解析する。好ましくは、突然変異は、1つ以上のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含む。より好ましくは、突然変異は、TPMTプロモーターの配列番号3および4からなる群より選択される。試料が前記突然変異の存在を示す場合、その個体はチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連する。
【0063】
TPMTプロモーター中のさらなる突然変異の存在を決定するために当業者が利用できる周知の実験方法は数多くある。これらには、例えばPCRに基づく方法、変性高速液体クロマトグラフィーに基づく方法、DNA配列決定(個人ゲノム配列決定を含む)、ミスマッチDNAの化学的または酵素的解析、およびミスマッチDNAの電気泳動的検出が含まれる。これらの方法のいくつかの具体例をさらに詳しく後述する。
【0064】
これらの方法をTPMTに応用して、チオプリン薬不耐性またはチオプリン薬抵抗性の個体間蓋然性に影響を及ぼしうる、さらなる突然変異を同定することができる。例えばSyvanenおよびTaylor(2004)に概説されているように、そのような一般的方法は数多く記載されており、それらを利用することができることは、当業者には理解されるだろう。
【0065】
本発明のプライマーは、個体中のTPMTプロモーターのGCCトリヌクレオチドリピート配列における突然変異の有無を決定する際に使用することができる。特異的突然変異の有無は、当業者には理解されているとおり、さまざまな方法によって決定することができる。例えば、チェーンターミネーション法、ライゲーション法、ハイブリダイゼーション法、または質量分析法などによる。
【0066】
本方法の好ましい実施形態では、個体の単離されたTPMTプロモーター核酸配列を、そのプロモーターのGCCトリヌクレオチドリピート配列における突然変異の有無を特異的に同定する核酸プローブと接触させる。例えば、少なくとも一つの突然変異を含むプロモーターの一部分に対応する核酸配列に、選択的結合条件下で、特異的に結合する(例えばハイブリダイズする)核酸プローブを使用することができる。
【0067】
したがって、もう一つの態様において、本発明の対象は、TPMTプロモーター配列のGCCトリヌクレオチドリピート配列中の突然変異の検出に使用するのに適した、単離された核酸分子であって、配列番号1またはその相補的配列の少なくとも約15個の連続する塩基を持つヌクレオチド配列からなる核酸分子である。
【0068】
突然変異は1つ以上のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含む。好ましくは、突然変異は、GCC(5)を与える単一GCCリピートの喪失(配列番号3)またはGCC(7)を与える単一GCCリピートの獲得(配列番号4)から選択される。
【0069】
ある実施形態では、核酸分子が、本発明の突然変異を少なくとも一つは含有するヌクレオチド配列に結合する配列を持つプローブからなる。
【0070】
もう一つの実施形態では、核酸分子が、TPMTプロモーターに、突然変異の上流または下流で結合する配列を持つプライマーからなる。好ましい実施形態におけるプライマーは、TPMTプロモーター配列に、突然変異の上流または下流で、前記突然変異から1塩基まで結合する。
【0071】
さらにもう一つの態様において、本発明は、配列番号1の配列を持ち、かつGCCリピート領域中に1つ以上の突然変異を含む、単離された核酸分子を提供する。好ましくは、突然変異は、1つ以上のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含む。より好ましくは、突然変異は、配列番号3もしくは4、またはその機能的フラグメント、変異型もしくはアンチセンス分子を含む群から選択される。
【0072】
あるいは、核酸分子は、ペプチド核酸(PNA)を含んでもよい。核酸は、検出可能なラベル、例えば蛍光ラベル、放射性同位体ラベルなどを、さらに含みうる。あるいは、ゲノムDNA試料を蛍光標識するか、放射性同位体で標識してもよい。
【0073】
遺伝子配列中の突然変異の検出は、リピートヌクレオチド配列中の突然変異の検出を含めて、当技術分野で知られる方法によって達成することができる。例えば、核酸増幅にPCR、LCR、ネステッドPCRおよび他の技法を利用する、蛍光に基づく技法(Chenら、1999)など、一塩基多型(SNP)および/またはSSRマーカーの存在に関する遺伝子型別のための標準的技法を、ヌクレオチドリピートモチーフを検出するために適合させることができる。SNP遺伝子型別に利用できる具体的な方法には、例えばTaqMan遺伝子型別アッセイおよびSNPIexプラットフォーム(Applied Biosystems)、質量分析(例えばSequenomのMassARRAYシステム)、ミニシークエンシング法、リアルタイムPCR、Bio-Plexシステム(BioRad)、CEQおよびSNPstreamシステム(Beckman)、Molecular Inversion Probeアレイ技術(例えばAffymetrix Gene Chip)、BeadArray技術(例えばIllumina GoldenGateアッセイおよびInfiniumアッセイ)ならびにオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA-Karimら、2000)などがあるが、これらに限るわけではない。これらの方法または当業者が利用できる他の方法により、TPMTプロモーター中、具体的にはそのプロモーターのGCCトリヌクレオチドリピート配列中の1つ以上の突然変異を同定することができる。
【0074】
このように、ヌクレオチドリピート配列の解析には、いくつかの方法を利用することができる。リピート配列を検出するためのアッセイは、ダイレクトシークエンスアッセイ(個人ゲノム配列決定を含む)、フラグメント多型アッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイ、コンピュータに基づくデータ解析、変性高速液体クロマトグラフィーに基づく方法、および突然変異型DNAの電気泳動的検出など(ただしこれらに限るわけではない)、いくつかのカテゴリーに分類される。これらのアッセイのさまざまな変形を実施するために、プロトコールおよび市販のキットまたはサービスを利用することができる。いくつかの実施形態では、アッセイが、組み合わされて、または混成的に、実施される(例えばいくつかのアッセイに由来する試薬または技術を組み合わせて一つのアッセイにする)。以下に、本発明において有用なアッセイの限定でない例を挙げる。
【0075】
ダイレクトシークエンスアッセイ
TPMTプロモーターのGCCリピート配列中の突然変異は、ダイレクトシークエンス技法を使って決定することができる。これらのアッセイでは、DNA試料、例えば血液、唾液または口腔スワブ試料に由来するものなどを、まず、任意の適切な方法を使って患者から単離する。いくつかの実施形態では、関心対象領域を適切なベクター中にクローニングし、宿主細胞(例えば細菌)中で成長させることによって増幅する。別の実施形態では、PCRを使って、TPMTプロモーターのGCCリピート領域内のDNAを増幅する。DNAは、例えば放射性マーカーヌクレオチドを使った手作業での配列決定、または自動化された配列決定など(ただしこれらに限るわけではない)、任意の適切な方法を使って配列決定される。配列決定の結果は任意の適切な方法を使って表示される。配列を調べて、GCCリピート配列における突然変異の有無を決定する。
【0076】
PCRアッセイ
TPMTプロモーターのGCCリピート配列中の突然変異は、PCRに基づくアッセイを使って検出することもできる。PCRアッセイは、GCCリピート配列を含有するフラグメントを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーの使用を含みうる。TPMTプロモーター中に1つ以上の追加リピートが存在すると、より長いPCR産物が生成することになり、その産物は、ゲル電気泳動によって検出し、GCCリピート配列中に突然変異を持たない個体から得られるPCR産物と比較することができる。TPMTプロモーター中に存在するリピートが1つ以上少ない場合は、より短いPCR産物が生成することになり、この産物も同様に検出することができる。
【0077】
フラグメント長多型アッセイ
さらにまた、TPMTプロモーターのGCCリピート領域における突然変異の存在は、フラグメント長多型アッセイを使って検出することもできる。フラグメント長多型アッセイでは、酵素(例えば制限エンドヌクレアーゼ)を使って、一連の位置におけるDNAの切断に基づくユニークなDNAバンド形成パターンを生成させる。GCCリピート配列中に突然変異を含有する試料から得られるDNAフラグメントは、突然変異型GCCリピート配列を含有しない試料とは異なるバンド形成パターンを持つだろう。
【0078】
RFLPアッセイ
さらにまた、TPMTプロモーターのGCCリピート領域における突然変異の存在は、制限断片長多型アッセイ(RFLP)を使って検出することもできる。関心対象領域をまずPCRによって単離する。次に、そのPCR産物を、所与の突然変異型GCCリポート配列に関してユニークな長さのフラグメントを与えることがわかっている制限酵素で切断する。制限酵素消化されたPCR産物は、アガロースゲル電気泳動によって分離して、臭化エチジウム染色によって可視化することができる。フラグメントの長さを分子量標準ならびに試験試料および対照試料から生成されたフラグメントと比較して、GCCリピート配列中に突然変異を含有する試験試料を同定する。
【0079】
CFLPアッセイ
あるいは、CLEAVASEフラグメント長多型アッセイ(CFLP;Third Wave Technologies、ウィスコンシン州マディソン;および米国特許第5,888,780号)を使って、TPMTプロモーターのGCCリピート領域中の突然変異を検出することもできる。
【0080】
ハイブリダイゼーションアッセイ
ハイブリダイゼーションアッセイによるGCCリピート配列突然変異の検出も考えられる。ハイブリダイゼーションアッセイでは、相補的DNA分子(例えばオリゴヌクレオチドプローブ)にハイブリダイズするという、試料由来のDNAが持つ能力に基づいて、突然変異型配列の有無が決定される。ハイブリダイゼーションおよび検出にさまざまな技術を利用するさまざまなハイブリダイゼーションアッセイを利用することができ、それらは当業者には理解されるだろう。
【0081】
質量分析アッセイ
MassARRAYシステム(Sequenom、カリフォルニア州サンディエゴ)も、TPMTプロモーターのGCCリピート配列における突然変異の存在を検出するために使用することができる(例えば米国特許第6,043,031号を参照されたい)。
【0082】
最も単純な方法の一つはPCR解析である。本明細書に記載する突然変異体配列の配列に基づいて、突然変異を包含するTPMTプロモーター配列の領域に相補的なPCRプライマーを構築することができる。プライマーは、突然変異体配列中で突然変異している位置を包含するプロモーター中の任意の領域に相補的な、連続するヌクレオチドの配列からなる。本発明の診断方法における対照とするために、突然変異体PCRプライマーに対応する野生型配列中の領域に相補的なPCRプライマーも作製される。これらのPCRプライマーのサイズは、5塩基から数百塩基までに及ぶ。しかし、プライマーの好ましいサイズは10〜40塩基、最も好ましくは15〜32塩基の範囲にある。プライマーのサイズが小さくなるにつれて、標的とする領域に対するプライマーの特異性も低下する。したがって、たとえ5塩基長未満のプライマーが標的領域に結合するとしても、標的領域中にはなく突然変異型塩基を含有しないテンプレートポリヌクレオチドの他の領域に結合する可能性も高くなる。逆に、大きなプライマーほど特異性は高くなるが、非常に大きなフラグメントを作製し操作することは、極めて面倒になる。それでもなお、必要な場合には、本発明の方法において、大きなフラグメントを使用する。
【0083】
突然変異体アレルの保因者でありうる個々の患者のゲノムDNAの当該領域を増幅するには、当技術分野で知られる方法を使って、標的位置、すなわち配列番号1のゲノムDNA位置688〜705(その領域のGCC内)の片側または両側に対するプライマーを作製し、それをPCR反応に使用する(例えばMassachusetts General Hospital & Harvard Medical School「Current Protocols In Molecular biology」Chapter 15(Green Publishing Associates and Wiley-Interscience 1991))。
【0084】
本発明の方法では、増幅フラグメントが得られたら、患者がTPMTプロモーターの突然変異体アレルを持つかどうかを決定するために、それをいくつかの方法で解析することができる。例えば、PCR産物に蛍光dNTPを組み込んだ後に、PCRフラグメントを、例えばキャピラリー電気泳動システムなどを使ってサイズ分画することができる。フラグメントのサイズにより、突然変異が存在したかどうかが示されるだろう。あるいは、増幅されたフラグメントを配列決定し、それらの配列をTPMTの野生型ゲノムDNA配列と比較することができる。増幅されたフラグメントが本発明で述べる突然変異の一つ以上を含有する場合、その患者はおそらくUM表現型を持ち、したがって標準的な量のチオプリン薬、例えばメルカプトプリンおよびアザチオプリンで処置すると、造血毒性を発生させるリスクがあるだろう。あるいは、PCR解析とRFLP解析の組合せを使って、個体のTPMT遺伝子型を決定してもよい。
【0085】
好ましい一実施形態では、上述のように、蛍光dNTPがPCR産物に組み込まれ、可視化が、キャピラリー電気泳動により、自動DNA配列/フラグメント解析装置を使って行なわれる。本発明のもう一つの好ましい実施形態では、それぞれが突然変異部位のどちらかの側に相補的である2つの共通プライマーを使用する。共通プライマーは、突然変異部位を包含しないものであり、すなわちそれらの配列は、野生型アレルにも突然変異体アレルにも共通である。それらのプライマーは、突然変異部位を包含する比較的大きなフラグメントが増幅されるように、反対向きに伸長される。次に、この反応の産物を電気泳動装置(例えばキャピラリー電気泳動システム)でのサイズ分画によって分割するか、またはDNA配列解析に供する。
【0086】
遺伝子型別アプローチには、プライマーまたはプローブのアレル特異的ハイブリダイゼーション;多型または突然変異に接近または近接して結合したプライマーへのヌクレオチドのアレル特異的取り込み(しばしば「一塩基伸張法」または「ミニシークエンス法」と呼ばれる);およびオリゴヌクレオチドのアレル特異的ライゲーション(連結)(ライゲーション連鎖反応またはライゲーションパドロックプローブ)を必要とする方法、またはインベイシブ構造(invasive structure)特異的酵素による方法(Invaderアッセイ)が含まれる。
【0087】
遺伝子型別に使用される検出方法は、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲルでの電気泳動分離に基づくシステム、専売ポリマーを含有するキャピラリー電気泳動カラム、弁別的蛍光シグナルもしくは放射性シグナル、または反応産物の弁別的サイズもしくは質量の検出の使用を伴いうる。これらの方法は、本発明の突然変異のいずれかに隣接もしくは近接するプライマー、またはその配列内にもしくはその最も3'側の位置に本発明の突然変異のいずれかを含むプライマーを、さまざまに使用する。
【0088】
SyvanenおよびTaylor(2004)に概説されているように、当業者には、突然変異を決定するための他の方法も知られている。好ましい例の一つは、TPMTプロモーターまたは相補的配列の一部分である核酸配列の質量分析による決定を使用することである。そのような質量分析的方法は当業者に知られており、上で言及した遺伝子型別アッセイの大半は、本発明のTPMT突然変異の質量分析による検出に適合させることができる。
【0089】
上記の方法態様はキットの提供によって容易にすることができる。
【0090】
もう一つの態様において、本発明は、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体をTPMTプロモーターの遺伝子型状態の評価に基づいて同定するための診断キットを提供する。
【0091】
キットは本発明のプローブを含みうる。あるいは、本発明のプライマーを使用することができる。前記プライマーは、TPMTプロモーターまたはそのアンチセンス鎖に、本発明の突然変異から1塩基の位置にあるヌクレオチドまで結合するべきである。
【0092】
さらにもう一つの態様において、本発明は、前記少なくとも一つの突然変異の上流および下流でTPMT遺伝子のヌクレオチド配列に相補的である第1および第2プライマーを含む、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を同定するための診断キットを提供する。
【0093】
好ましくは、突然変異は、少なくとも一つのGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含む群より選択される。より好ましくは、突然変異は、配列番号3または4からなる群より選択される。
【0094】
もう一つの態様において、本発明は、個体におけるチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性の、変化した蓋然性を検出するためのキットであって、配列番号1のヌクレオチドを含むキットを提供する。
【0095】
もう一つの態様において、キットは、TPMTプロモーター配列に実質的に相補的であり、かつ本発明の少なくとも一つの突然変異のヌクレオチド配列に直接結合する単一のプライマーを含む。
【0096】
さらにもう一つの態様において、本発明は、TPMTプロモーター配列のGCCトリヌクレオチドリピート配列における突然変異の検出に使用するのに適したプライマーであって、配列番号1の少なくとも約15個の連続する塩基を持つヌクレオチド配列からなるプライマーを提供する。好ましくは、突然変異は、少なくとも一つのGCCリピートモチーフの喪失または獲得から選択される。より好ましくは、突然変異は、配列番号3または4からなる群より選択される。
【0097】
キットは、好ましくは、TPMTプロモーター配列の一部分に対応する核酸配列を含む1つ以上の特定突然変異の有無の同定に適合するか、またはそのような同定に適するように構成される。
【0098】
TPMTプロモーターのGCCリピート領域中に検出されるべき1または複数の突然変異は、チオプリン治療に対する処置応答または耐性の変動性と相関し、UM表現型を示す。
【0099】
好ましい実施形態では、キットが、チオプリン治療を必要とする患者(例えばIBDを患っている患者)におけるUM表現型およびチオプリン不耐性またはチオプリン抵抗性のリスクを示すTPMTプロモーター中の突然変異の検出に適合したまたは有用な構成要素(例えばプローブおよび/またはプライマー)を含有する。
【0100】
UM表現型および関連するチオプリン不耐性またはチオプリン抵抗性のリスクを示す複数の突然変異の検出を可能とするのに適合したまたは有用な構成要素を含有するキットを提供することも望ましいだろう。そのような追加構成要素には、例えば1または複数の緩衝剤、例えば増幅緩衝剤およびハイブリダイゼーション緩衝剤(これは液状または乾燥型であることができる)、DNAポリメラーゼ、例えばPCRを行なうのに適したポリメラーゼ(例えば耐熱性DNAポリメラーゼ)、DNAリガーゼ、例えばリガーゼ連鎖反応を行なうのに適したDNAリガーゼ、専用プローブ(例えばパドロックプローブ)、およびデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、ジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)またはリボヌクレオチド三リン酸を、独立して含めることができる。
【0101】
好ましくは、キットは、TPMTプロモーターに特異的にハイブリダイズするであろういくつかのオリゴヌクレオチドを含む。これらのオリゴヌクレオチドは、ヒトゲノムDNAからPCRを使ってTPMTヌクレオチドを特異的に増幅することを可能にするだろう。最も好ましくは、これらのオリゴヌクレオチドは、多型アレルの弁別を可能にするプライマー、プローブまたはライゲーション基質として作用することにより、TPMT遺伝子の特異的遺伝子型別も可能にするだろう。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドは、出発DNAの事前増幅に依存しない成長著しい方法、例えばInvaderアッセイやライゲーションに基づく検出方法などにおける使用に適しうる。好ましくは、オリゴヌクレオチドまたは他のキット構成要素は、検出可能なラベル、例えば蛍光ラベル、酵素ラベル、光散乱ラベル、質量ラベル、または他のラベルを含むだろう。
【0102】
キットは、適宜、使用説明書も含むことができ、そこには、TPMT UM表現型と相関し、チオプリン不耐性またはチオプリン抵抗性のリスクと関連する、突然変異の一覧表を含めることができる。
【0103】
好ましくは、キットの構成要素は、表示した突然変異のそれぞれの異なるアレルを持つ個体に由来するゲノムDNAを構成する「対照」DNAの試料、またはそれらの突然変異に相当する配列を含有する組換えプラスミドもしくはPCR産物を含みうる。これは、異なる実験室で応用された場合の、アッセイの品質管理を可能にするだろう。
【0104】
人のTPMT遺伝子型を決定するための診断アッセイも、本発明の対象である。例えば、白血球、口腔内壁の粘膜掻爬検体、唾液、上皮細胞、膵臓組織、肝臓などといったDNA含有組織を、個体から取得する。その個体のゲノムDNAをこの組織から、フェノール/クロロホルム抽出などの当技術分野で知られる方法によって単離する。本発明のPCRプライマーを合成する。プライマーは好ましくは10〜40塩基長、最も好ましくは15〜31塩基長である。プライマーを加え、標準的なPCR手法を使って、TPMTフラグメントを増幅する。次に、増幅された配列を上述のさまざまな方法(これには、長さまたは質量の解析、配列決定、突然変異特異的増幅、またはそのような方法の組合せ、およびそれらの結果に基づいてなされる診断が含まれる)で解析する。
【0105】
本発明は、概して、本願明細書において個別にまたは集合的に言及しまたは示した部分、要素および特徴、ならびに任意の二つ以上の前記部分、要素または特徴のありとあらゆる組合せにあると言うこともでき、本発明が関係する技術分野において等価物が知られている具体的完全体(integer)が本明細書で言及される場合、そのような既知の等価物は、個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれるとみなされる。
【0106】
本発明の本質は上記の説明にあり、以下に挙げる構成は予想される構成の一例に過ぎない。
【実施例1】
【0107】
分類不能型大腸炎を持つ50歳白人男性(患者A)のRBC TPMT活性を、放射化学的アッセイ(Weinshilboumら、1999)を使って決定したところ、25.6単位/ml RBCと高いことがわかった(これを図1において「指針症例」という)。まず最初に、2003年にクライストチャーチ(ニュージーランド)において、臨床サービスとしてTPMT表現型別が提案され(Siesら、2005)、それ以来、2000人を超える個体が試験を受けてきた。表現型別アッセイによって決定されるTPMT活性の正常範囲は9.3〜17.6単位/ml RBCである(図1)。それまでに記録された最も高い活性は22.5単位/ml RBCだった(Siesら、2005)。患者AはTPMT活性を誘導することが知られている投薬は何も受けていなかったので、彼のUM状態はTPMTプロモーター内の突然変異によるものであると考えられる。この仮説を検証するために、この患者と、UM表現型(18.4〜22.5単位/ml RBC)を持つ他の9個体において、TPMTプロモーターを配列決定した。
【0108】
NaCl法(Lahiriら、1991)を使って患者Aの末梢血5mlからゲノムDNAを抽出した。TPMTのプロモーターおよび5'UTRを、1225bpフラグメントとして増幅した。PCRは、200μMのdNTP類、0.5μMの各プライマー、1.5mM MgCl2、1UのDNA Taqポリメラーゼ(Roche)、1×Q-Solution(Qiagen)および100ng のgDNAを含有する25μlの総液量で行なった。サーマルサイクリング条件は、95℃で15分の後、94℃で1分、62℃で30秒、72℃で2分を35サイクル、そして72℃で4分の最終伸長とした。5μlの各PCRを1%LEアガロースでチェックした。別途、5μlを、Exo-SAP-IT(登録商標)(USB Corporation、米国オハイオ州クリーブランド)を使って、製造者の指示に従って精製し、BigDye(登録商標)ケミストリー(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州)を使って、ABI3730 Genetic Analyzerで配列決定した。
【0109】
図3aにゲノムTPMTプロモーター配列を示す。フォワードプライマー配列およびリバースプライマー配列に下線を付し、NcoI認識部位を作出するために改変したリバースプライマー中の塩基を太字で示す。垂直の矢印は、それぞれHindIIIおよびNcoIの切断部位を示す。TFSearchウェブベースソフトウェアを使ってプロモーター内の転写因子結合部位を同定した。>90.0のスコアを持つことがわかった部位を太字および下線で示す。GCCトリヌクレオチドリピートと、下流の可変数タンデムリピート(variable number of tandem repeat;VNTR)要素とを、枠で囲む(後者は破線で囲む)。VNTR要素内の各リピートは、14bpのコアコンセンサス配列を持つ17〜18bpの不完全単位からなる。最も一般的なVNTRアレルは、4つまたは5つのリピートからなる(VNTR*4およびVNTR*5)(Spire-Vayron de la Moureyreら、1999)。患者AはVNTR*V4アレルについてホモ接合だった。TPMTの主要転写開始部位(位置+1)を矢印で示し、エキソン1に網掛けする。
【0110】
DNA配列決定により、患者Aは、TPMT転写開始部位の324bp上流に位置する通常は6個のリピートを含有するトリヌクレオチドリピート中の追加GCCモチーフについて、ヘテロ接合であることが明らかになった(図3aおよび4)。このトリヌクレオチドリピート変異型は、Ensembl(http://www.ensembl.org/index.html)にもdbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=snp&cmd=search&term=)にも報告されていない。さらに9人の現地UM患者(範囲:18.4〜22.5単位/ml RBC)、正常なTPMT活性を持つ50人の患者(範囲:12.5〜16.5単位/ml RBC)、および200人の白人対照のプロモーターをスクリーニングして、GCC(7)が、上昇したTPMT活性と特異的に関連する一般的な多型または変異型であるかどうかを決定した。59人のIBD患者がGCC(6)についてホモ接合であったのに対し、200人の対照のうち5人はGCC(7)変異型についてヘテロ接合であったことから、GCC(7)は患者の極端なTPMT活性に関連する稀な突然変異でありうることが示唆された。患者Aに匹敵するTPMT RBC活性(範囲:55〜65nmol 6-MTG×g-1Hb×h-1、正常範囲26〜50)を持つさらに3人の患者が、ガイ・セントトーマス病院(Guy's and St Thomas Hospital)(英国ロンドン)から確保された。これらの患者は酵素分布の99パーセンタイル以内のTPMT活性を示した。しかし彼らは全員、若いRBC集団をもたらし、したがって上昇したTPTM活性をもたらしうるような、医学的状態(例えば自己免疫性溶血性貧血)および薬(例えばエリスロポエチン)とは関わりがなかった。DNA配列決定により、これらの患者の一人(患者B;RBC活性65nmol 6-MTG×g-1Hb×h-1)は、同じGCCリピート要素中の異なる変異型GCC(5)について、ヘテロ接合であることがわかった(図4)。他の2人のUK患者は、どちらも野生型GCC(6)アレルについてホモ接合だった(図4)。この研究における患者は全て、VNTR*V4アレルまたはVNTR*V5アレルについて、ヘテロ接合またはホモ接合だった。さらにまた、上昇したTPMT活性の潜在的説明になりうるTPMT中の追加配列変異は、どのUMにも見出されなかった。
【0111】
プロモーターGCC(5)およびGCC(7)アレルとTPMT UM活性との間に見出された関連をさらに評価するために、チオプリン処置を受けている患者を、マンチェスター(英国)のセントメリー病院臨床遺伝学部門(Department of Clinical Genetics、St Mary's Hospital)から、さらに確保した。いずれもTPMT UM表現型(>50nmol/g Hb/時)を持つ、13人の炎症性腸疾患患者または慢性関節リウマチ患者から、解析用のDNAを得た。これら13人の患者のうち3人はGCC(7)突然変異についてヘテロ接合であることが判明し、UM表現型を持つ患者におけるTPMT GCCトリヌクレオチド突然変異の不均衡な出現率がさらに確認された。
【0112】
このトリヌクレオチドリピート要素の保存度を決定するために、野生型ヒトTPMTプロモーター配列を、他の21の哺乳動物種に由来する配列と整列させた(図3(b))。整列はEnsembl(http://www.ensembl.org/index.html)を使って行なった。リピート要素の証拠を多少なりとも示した配列を、ヒトTPMT配列とのホモロジーが高い順に表示する。各配列について、トリヌクレオチド要素を太字かつ下線付で示す。ホモロジーゼロの領域は破線で示す。
【0113】
ヒトTPMTプロモーター配列の整列により、21種のうち9種はトリヌクレオチドリピート要素の証拠を示すことが明らかになった(図3b)。(GCC)6アレルがチンパンジー(P. troglodytes)、ハリネズミ(E. europeaus)、およびウシ(B. taurus)に認められたのに対し、他の6種はそれより少ないリピート数を示した。調べた哺乳動物はいずれも(GCC)5または(GCC)7アレルを持たなかった。
【0114】
トリヌクレオチドリピート領域における変異の潜在的な機能的効果を評価するために、患者Aおよび患者Bの野生型および変異型TPMTプロモーターを増幅し、制限部位Hind IIIおよびNco Iを使って、プロモーターレスpGL3-Basicベクター(Promega Corporation、米国ウィスコンシン州マディソン)中にクローニングした。そのコンストラクトを直接DNA配列決定によって確認し、EndoFree(登録商標)プラスミドキット(Qiagen)を使って精製した。トランスフェクションの24時間前に24ウェル組織培養プレートに、40〜80%のコンフルエンシーが確保されるように、COS-7細胞(5×104細胞/ウェル)を播種した。各ウェルは、10%ウシ胎仔血清ならびに100ng/mlのペニシリンおよびストレプトマイシンを補足した500μlのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を含有した。トランスフェクション前またはトランスフェクション後の細胞を37℃、5%CO2でインキュベートした。トランスフェクションは、Effectene(登録商標)トランスフェクション試薬(Qiagen)を使用し、製造者の指示に従って行なった。レプリケート間の転写効率の変動を管理するために、プロモーターコンストラクトを、ウミシイタケ(Renilla)ベクターpRL-TK(Promega)と同時トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、パッシブ・ライシス・バッファー(Passive Lysis Buffer)(Promega)中でCOS-7細胞を溶解し、Dual-Luciferase(登録商標)レポーターアッセイシステム(Promega)を使って、ホタルルシフェラーゼ活性とウミシイタケルシフェラーゼ活性を逐次測定した。プロモーターレスpGL3-basicベクターを各トランスフェクション実験における陰性対照として使用した(対照の平均ルシフェラーゼ活性:0.13±0.07)。発現量の差を分散分析およびテューキーの多重比較検定を使って評価し、P<0.05であれば統計的に有意であるとみなした。トランスフェクション効率について標準化するために、コンストラクトのプロモーター活性を、ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対するホタルルシフェラーゼ活性の比として表した。コンストラクトは、3回の別個のトランスフェクションで、それぞれ3重に試験した。コンストラクトの平均標準化ホタルルシフェラーゼ活性は、トランスフェクション全体で、GCC(7)では13.2±0.10、GCC(5)では12.3±0.12、そして野生型GCC(6)では8.0±0.26だった。変異型コンストラクトと野生型コンストラクトの間の基礎転写活性の差は、高度に有意だった(テューキーの多重比較検定、p≦0.001)。さらにまた、GCC(5)とGCC(7)の間に観察された発現量の差も有意だった(図5)。
【0115】
トリヌクレオチドリピート変異がTPMT発現量を増加させる分子機序は不明である。ウェブベースのプログラムTFSearch(http://www.cbrc.jp/research/db/TFSEARCH.html)およびMatInspector(http://www.genomatix.de/)を使って転写因子結合部位を検索したところ、これら2つのトリヌクレオチドリピート多型(GCC(5)およびGCC(7))が転写因子結合部位を作り出したり破壊したりするわけではないことがわかった(図3a)。理論に束縛されることは望まないが、トリヌクレオチドリピート変異は既知の転写因子部位を変化させないようではあるものの、近接する転写因子結合部位間の間隔の変化が強化された転写につながった可能性はある。この現象には先例がないわけではない。プロテインC遺伝子転写の研究により、プロモーターの-21位に工学的に3bpを挿入すると、野生型プロモーターと比較して、転写活性は2.5倍増加することが、CATレポーターアッセイで証明された(Spekら、1999)。同様に、Saxenaら(2006)は、MCL-1(骨髄性細胞白血病-1)遺伝子の主要転写開始部位の190bp上流における新規な6〜18bpの多型的挿入を報告している。4つの細胞株におけるルシフェラーゼレポーターアッセイにより、これらの挿入は、MCL-1活性の1.8〜2.5倍の増加を引き起こすことが証明された。本変異の場合と同様に、工学的な3bpの挿入も、MCL-1多型も、転写因子結合部位を生じさせたり、破壊したりしたわけではなかった。Spekら(1999)は、工学的挿入で観察された転写の増加は、近接する転写因子間の立体障害の解除によるものであり、それが結果として、より高い結合部位の占有と、より多くの遺伝子発現を可能にしたのだろうと推測した。
【0116】
現在までに、低下したTPMT酵素活性に関連する22の対立遺伝子変異型(TPMT*2〜TPMT*23)が同定されている(Wangら、2006;Lindquistら、2007;Schaeffelerら、2006)。これに対し、UM活性に関する分子的説明は見出されていない。
【0117】
本発明は、TPMTプロモーターのインビトロ基礎発現量を増加させるトリヌクレオチドリピート領域中の2つの新規突然変異を同定し、特徴づけた。これらのデータは、このプロモータートリヌクレオチドリピート領域における、6という野生型の数からのリピート単位数の逸脱が、ルーチン表現型別に際して同定される極端なTPMT UMの一部分についての説明になりうることを、さらに示唆している。本発明者らが知る限り、このリピート要素中の変異は、これまで誰も記録していない。対照的に、このトリヌクレオチドリピートの>200bp下流に位置するTPMT VNTRはかなりの注目を集めており(Spire-Vayron de la Moureyreら、1999;Krynetskiら、1997;Alvesら、2000)、広範囲にわたるインビトロ研究にもかかわらず(Spire-Veyron de la Moureyreら、1999;Alvesら 2001;Yanら 2000)、これらのアレルはTPMT発現に対して「調節的(modulatory)」効果しかもたないようである。TPMTプロモーターVNTRのチオプリン遺伝薬理学との関連性が不明瞭であるのに対し、ここで発見された突然変異は、インビトロでの発現量に対して明確な効果を持つようである。
【0118】
これらの患者はチオプリン不耐性またはチオプリン抵抗性および関連する重大な副作用、例えば肝毒性のリスクがあるので、そのような患者の同定は著しく有益であるだろう。
【0119】
本発明の範囲を上述の例だけに限定するつもりはない。当業者には理解されるであろうが、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく、数多くの変形が考えられる。
【0120】
参考文献
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Krynetski EY, Fessing MY, Yates CR, Sun D, Schuetz JD, Evans WE. Promoter and intronic sequences of the human thiopurine S-methyltransferase (TPMT) gene isolated from a human PAC1 genomic library. Pharm Res 1997; 14:1672-8.
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Lindquist M, Skoglund K, Karlgren A, Soderkvist P, Peterson C, Kidhall I, et al. Explaining TPMT genotype/phenotype discrepancy by haplogyping of TPMT*3A and identification of a novel sequence variant, TPMT*23. Pharmacogenet Genomics 2007; 17:891-895.
Schaeffeler E, Eichelbaum M, Reinisch W, Zanger UM, Schwab M. Three novel thiopurine S-methyltransferase allelic variants (TPMT*20, *21, *22)-association with decreased enzyme function. Hum Mutat 2006; 27:976.
Chen, X. et al., Genome Res. 9(5): 492-98 (1999)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UM表現型およびチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連する1つ以上の突然変異の有無について、個体をスクリーニングするための方法であって、TPMT遺伝子プロモーターに関してその個体の遺伝子型状態を決定するステップを含む方法。
【請求項2】
前記個体から取得されたDNAに関して、遺伝子型状態が直接的方法または間接的方法によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DNA試料を個体から取得し、TPMTプロモーターの遺伝子型状態を、そのプロモーターのGCCリピート領域における、TPMTをコードするヌクレオチド配列(配列番号1)との少なくとも一つの相違の存在について、直接的方法または間接的方法によって評価する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
遺伝子型状態が、TPMTプロモーターのGCCリピート領域における突然変異の存在によって決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
突然変異が1つ以上のGCCリピート配列の喪失または1つ以上のGCCリピート配列の獲得からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
突然変異が、それぞれ配列番号3または4から選択される単一のGCCリピートの喪失または単一のGCCリピートの獲得からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記個体の遺伝子型状態が個人ゲノム配列決定によって決定される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を同定する方法であって、前記個体からDNA試料を取得し、TPMTプロモーターのGCCリピート領域中の突然変異を同定することを含み、前記突然変異の存在がUM表現型およびチオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクと関連する方法。
【請求項9】
突然変異が1つ以上の追加GCCリピート配列または1つ以上のGCCリピート配列の喪失からなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
突然変異が単一のGCCリピートの付加[GCC(7)(配列番号4)]または単一のGCCリピートの喪失[GCC(5)(配列番号3)]からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
個人ゲノム配列決定を含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
UM表現型を持ち、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を、その個体の個人ゲノム配列に基づいて同定するための、請求項3、5および6のいずれか一項に記載されているTPMTプロモーター中のGCC突然変異を含む配列の使用。
【請求項13】
突然変異が1つ以上の追加GCCリピート配列または1つ以上のGCCリピート配列の喪失からなる、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
突然変異が単一のGCCリピートの付加[GCC(7)(配列番号4)]または単一のGCCリピートの喪失[GCC(5)(配列番号3)]からなる請求項12に記載の使用。
【請求項15】
TPMTプロモーターのGCCリピートモチーフにおける突然変異の検出に使用するのに適した単離された核酸分子。
【請求項16】
突然変異が配列番号3または4からなる群より選択され、核酸分子が配列番号1またはその相補的配列の少なくとも約15個の連続する塩基を持つヌクレオチド配列からなる、請求項15に記載の単離された核酸。
【請求項17】
本発明の突然変異を少なくとも一つは含有するヌクレオチド配列に結合する配列を持つプローブからなる、請求項15または16に記載の核酸分子。
【請求項18】
請求項5に記載されている突然変異の上流または下流でTPMTプロモーターに結合する配列を持つプライマーからなる、請求項15または16に記載の核酸分子。
【請求項19】
プライマーがTPMTプロモーター配列に、GCC連続リピートモチーフの上流または下流で、前記GCCリピートモチーフから1塩基まで結合する、請求項18に記載の核酸。
【請求項20】
突然変異が1つ以上のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含む、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項21】
突然変異が単一のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含んで、それぞれGCC(5)またはGCC(7)を与える、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項22】
配列番号1の配列を持ち、かつGCCリピートモチーフ中に突然変異を含む、単離された核酸分子。
【請求項23】
突然変異が1つ以上のGCCリピートモチーフの喪失または獲得を含む、請求項22に記載の核酸分子。
【請求項24】
突然変異が配列番号3もしくは4またはその機能的フラグメント、変異型もしくはアンチセンス分子を含む群から選択される、請求項23に記載の核酸分子。
【請求項25】
UM表現型を持ち、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を、TPMTプロモーターの遺伝子型状態の評価に基づいて同定するための診断キット。
【請求項26】
請求項17に記載のプローブを含む、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
TPMTプロモーターまたはそのアンチセンス鎖に、GCC連続リピートモチーフから1塩基の位置にあるヌクレオチドまで結合するプライマーを含む、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
プライマーが前記モチーフの上流または下流にある、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
UM表現型を持ち、チオプリン抵抗性またはチオプリン不耐性のリスクがある個体を同定するための診断キットであって、GCC連続リピートモチーフ中の突然変異のそれぞれ上流および下流でTPMTプロモーターまたはそのアンチセンス鎖のヌクレオチド配列に相補的である第1プライマーおよび第2プライマーを含むキット。
【請求項30】
突然変異が1つ以上のGCCリピート配列の喪失または1つ以上のGCCリピート配列の獲得を含む、請求項29に記載の診断キット。
【請求項31】
突然変異が単一のGCCリピート配列の喪失または獲得を含み、それぞれ配列番号3または4を含む群から選択される、請求項30に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−535501(P2010−535501A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519885(P2010−519885)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/NZ2008/000197
【国際公開番号】WO2009/020403
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(500240379)ユニバーシティ オブ オタゴ (5)
【Fターム(参考)】