説明

チオペプタイド化合物

【課題】MRSA及びVRE等の多剤耐性菌に対しても良好な抗菌活性を有する新規化合物の提供。
【解決手段】既知のチオペプタイド化合物QN3323−Aの2位、26位、33位および48位をそれぞれ修飾した誘導体が良好な抗菌活性を有し、殊にMRSA及びVRE等の多剤耐性菌に優れた抗菌活性を有する。よって、医薬、特に抗菌剤、中でも多剤耐性菌感染症の予防・治療剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なチオペプタイド化合物およびそれらを有効成分として含有する医薬、殊にMRSAやVRE等の多剤耐性菌感染症治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物が生産する種々の抗生物質にはペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム等のβラクタム系抗生物質、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキタマイシン等のマクロライド抗生物質、カナマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン等のアミノグリコシド抗生物質等が良く知られてきた。これらの抗生物質、およびこれらを化学合成的手法により修飾した化合物の中には、臨床上、非常に有効な抗菌剤として有効利用されているものが多々ある。
しかし、近年、これらの抗生物質に対して高い耐性度を有するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下、「MRSA」と略す)が臨床の場で多く出現し、社会的にも重大問題となっている。さらに、1996年には、日本において、MRSAに対する治療薬として多用されてきたバンコマイシンに対して高い耐性度を有する腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌属、以下、「VRE」と略す)の臨床からの分離が報告されている。その他、緑膿菌や肺炎桿菌等でも、種々の薬剤に対し高い耐性度を有する菌が出現している。これらの菌は多剤耐性菌と称され、近年、臨床の場で特に問題となってきており、多剤耐性菌に対して有効な抗生物質の開発が切望されている。
【0003】
チアゾールを環の構成成分として有する大環状化合物はチオペプタイド化合物と総称され、種々の化合物が報告されている。それらは、環の員数や環を構成する元素の違いに加え、チオシリンIのように単環式大環状構造を有する化合物や、グリコチオヘキシドα(Glycothiohexideα、J. Antibiotics 47: 894, 1994)のように三環式大環状構造を有する化合物など、環構造の異なる化合物が報告されている。チオシリンI(ThiocillinI)、チオシリンII、マイクロコクシンP2(Micrococcin P2)、QN3323-A、QN3323-B及びQN3323-Y1は、下式に示されるように、共通の単環式大環状構造を有する化合物であり、これらの化合物が抗MRSA活性および抗VRE活性を有し、多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSAまたはVRE感染症治療剤として有用であることが報告されている(特許文献1)。
【0004】
【化1】

チオシリンI:AがCH-OH、RがH、R'がOH
チオシリンII:AがCH-OH、RがCH3、R'がOH
マイクロコクシンP2:AがC=O、RがH、R'がH
QN3323-A:AがC=O、RがH、R'がOH
QN3323-B:AがC=O、RがCH3、R'がOH
QN3323-Y1:AがCH-OH、RがH、R'がOH、但し*の二重結合がE型
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/072617号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
十分な抗菌活性を有する多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSAまたはVRE感染症の治療に有用な薬剤の創製が、今なお切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、MRSA及びVRE等の多剤耐性菌を含む菌に対する抗菌活性を示す化合物の探索を鋭意行ったところ、上記特許文献1に報告されるQN3323-A物質の2位、26位、33位および48位をそれぞれ修飾した誘導体が良好な抗菌活性、殊に抗MRSA活性及び抗VRE活性を有することを見出して、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の式(I)で示されるチオペプタイド化合物またはその医薬的に許容される塩に関する。
【化2】

[式中、
R1は、ヒドロキシ基、アミノ基、置換基を有していてもよい複素環式基、式:−NH−Ra
(ここで、Raは置換基を有していてもよい低級アルキル基、または置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基である)で表わされる基、または式:
【化3】

(ここで、
R5は、ヒドロキシ基、アミノ基または式:
【化4】

(ここで、
X1は水素であり、
X2は、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基、または式:−NRb−ALK1−Rc
(ここで、Rbは水素または低級アルキル基、ALK1は低級アルキレン基、Rcは水素、ヒドロキシ基、カルボキシ基、低級アルコキシ基、アミノ低級アルコキシ置換低級アルコキシ基、アミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、アミノ置換ジ低級アルキルアミノ基、低級アルカノイルアミノ基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、アリール基、または置換基を有していてもよい複素環基式である)で表わされる基であるか、あるいは
X1およびX2は一緒になって、オキソ基または式:=N−O−ALK2−Rd
(ここで、ALK2は低級アルキレン基、Rdはジ低級アルキルアミノ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい複素環式基である)で表わされる基を形成する)で表わされる基である)で表わされる基であり、
【0009】
R2は、水素、クロロアセチル基、または式:−CONReRf
(式中、Reは水素、または置換基を有していてもよい低級アルキル基であり、Rfは水素、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよい複素環式基、または式:−ALK3−Rg
(ここで、ALK3は置換基を有していてもよい低級アルキレン基であり、Rgはピリジルスルホニル基、シアノ基、カルボキシ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基、アルケニルカルバモイル基、置換基を有していてもよいピリミジニルアミノ基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい複素環式基である)で表わされる基であるか、あるいは
ReおよびRfはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい複素環を形成する)
で表わされる基であり、
R3は、水素またはヒドロキシプロピル基であり、
R4は、水素、低級アルコキシカルボニル基またはクロロアセチル基である、
但し、1)X1が水素であり、X2がヒドロキシ基であり、R2が水素であるとき、あるいは
2)X1とX2が一緒になってオキソ基を形成し、R2が水素であるときは、
R3が水素であるか、またはR4が低級アルコキシカルボニル基またはクロロアセチル基である。]
【0010】
さらに、本発明は、上記式(I)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩(以下、「本発明化合物(I)」と表記することがある。)を有効成分として含有することを特徴とする医薬、抗菌剤、殊に、多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症治療剤にも関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明化合物(I)は、抗菌活性、殊にMRSAおよびVRE等の多剤耐性菌に対する抗菌活性を有する。よって、抗菌剤、殊に多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSAまたはVRE感染症治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明化合物(I)についてさらに詳細に説明する。
本明細書中、「低級」なる語は、特に断わらない限り、その炭素鎖が炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状であることを意味する。
「高級」なる語は、特に断わらない限り、その炭素数が7〜20の直鎖状または分枝鎖状であることを意味する。
「低級アルケニル基」における「低級」は、その炭素鎖が炭素原子2〜6の直鎖状または分枝鎖状であることを意味する。
「アルキル基」なる語は、低級アルキル基および高級アルキル基を含む。
「アルケニル基」なる語は、低級アルケニル基および高級アルケニル基を含む。
「ハロゲン」ならびに「ハロ低級アルキル基」における「ハロ」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を挙げることができ、好ましくはフッ素、塩素および臭素である。
【0013】
「低級アルキル基」、「ジ低級アルキルアミノ基」、「ハロ低級アルキル基」および「アミノ置換ジ低級アルキルアミノ基」における「低級アルキル」としては、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチルおよびヘキシルのような炭素原子1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルである。
【0014】
「低級アルケニル」は炭素原子2〜6のアルケニル基であり、特に好ましくはビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルおよび3−ブテニルである。
「低級アルキレン」は、炭素原子1〜6の直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基であり、特に好ましくは、メチレン、エチレン、トリメチレン、メチルメチレン、イソプロピルメチルメチレンおよびブチルメチレンである。
【0015】
「高級アルキル基」は、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコデシル、エチルヘキシル、メチルヘプチル、メチルオクチル、メチルノニル、メチルデシル、エチルヘプチル、エチルオクチル、エチルノニル、エチルデシルなどの、直鎖状または分枝鎖状のものが挙げられ、中でもヘプチル基がより好ましい。
【0016】
「高級アルケニル基」は、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコデセニル、ジメチルオクテニル、ジメチルオクタジエニルなどのモノエンおよびジエンであり、中でもジメチルオクタジエニルが特に好ましい。
【0017】
「シクロ低級アルキル基」ならびに「シクロ低級アルキルオキシ基」における「シクロ低級アルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどの、炭素原子3〜6のシクロアルキル基を挙げることができ、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが特に好ましい。
「アリール基」は、芳香族炭化水素環基を意味し、炭素原子6〜14のアリール基が好ましく、より好ましくはフェニル及びナフチルである。
「アリール置換低級アルキル」とは、アリール基で置換された低級アルキルを意味する。
【0018】
「複素環式基」としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選択されるヘテロ原子を少なくとも1つ有するものであり、飽和または不飽和の単環または多環複素環式基が挙げられる。
具体的には、例えば:
1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基、例えばピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、テトラヒドロピリジルなど;
1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基、例えばピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ホモピペリジルなど;
1〜5の窒素原子を有する不飽和縮合複素環式基、例えばインドリル、イソインドリル、イソインドリニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、イミダソピリジル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリジニル、キノキサリニル、ピリジノテトラヒドロピリジル、テトラヒドロイソキノリル、インドリニル、ジヒドロピロロピリジルなど;
1〜5の窒素原子を有する飽和縮合複素環式基、例えばピロリジノピペラジニル、キヌクリジニル、ピロリジノピペリジルなど;
【0019】
酸素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基、例えばピラニル、フリルなど;
酸素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基、例えば1H−テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルなど;
1または2の硫黄原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基、例えばチエニルなど;
1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基、例えばオキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサジリニルなど;
1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基、例えばモルホリニルなど;
1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する飽和縮合複素環式基、例えばベンゾフラザニル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリルなど;
1または2の硫黄原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基、例えばチアゾリル、チアジアゾリルなど;
【0020】
1または2の硫黄原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基、例えばチアゾリジニルなど;
1または2の硫黄原子および1〜3の窒素原子を有する不飽和縮合複素環式基、例えばベンゾチアゾリル、チアゾロテトラヒドロピリジルなど;
1または2の酸素原子を有する不飽和縮合複素環式基、例えばベンゾフラニル、ベンゾジオキソリル、クロマニルなど;
が挙げられる。
【0021】
「低級アルコキシ基」、「アミノ低級アルコキシ置換低級アルコキシ基」および「低級アルコキシカルボニルアミノ基」における「低級アルコキシ」としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0022】
「置換基を有していてもよい複素環式基」、「置換基を有していてもよい低級アルキル基」、「置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基」、「置換基を有していてもよい低級アルキレン基」、「置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基」、「置換基を有していてもよいピリミジニルアミノ基」および「置換基を有していてもよいアリール基」における「置換基」としては、好ましくは、低級アルキル基、低級アルキルで置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基、低級アルキルで置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基、低級アルキルアミノ基、低級アルキルアミノ置換低級アルキルカルバモイル基、低級アルキルで置換されていてもよい1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基、オキソ基、ジ低級アルキルアミノ基、アミノ基、アリールで置換された低級アルキル基、1〜5の窒素原子を有する不飽和縮合複素環式基、シクロ低級アルキル基、ヒドロキシ基、1〜5の窒素原子を有する不飽和縮合複素環式基で置換された低級アルキル基、1〜5の窒素原子を有する不飽和縮合複素環式基、1〜5の窒素原子を有する飽和縮合複素環式基、アリール基、ハロ低級アルキル基、アリール置換アリール基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ置換低級アルコキシ基、モルホリニル置換低級アルコキ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ低級アルキル置換ピペリジル基、N−ピリミジニル-ピペラジニル基、シクロ低級アルキルオキシ基、ピリジル置換低級アルキル基、カルボキシ基、シアノ基、ピロリジニル置換低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基および低級アルコキシ置換低級アルキル基などが挙げられる。
【0023】
R1の好ましい「置換基を有していてもよい複素環式基」としては、低級アルキル基で置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、低級アルキルで置換されたピペラジニル基)、1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基で置換された1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、ピペリジルピペリジル基など)または1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基で置換された1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、ピリミジニルピペラジニル基など)が挙げられる、
【0024】
Raの好ましい「置換基を有していてもよい低級アルキル基」としては、低級アルキルアミノおよび低級アルキルアミノ置換低級アルキルカルバモイルで置換された低級アルキル基、1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基で置換された低級アルキル基(例えば、ピリジル基で置換された低級アルキル基など)、1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基で置換された低級アルキル基(例えば、モルホリニル基で置換された低級アルキル基など)が挙げられる。
【0025】
Raの好ましい「置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基」としては、低級アルキル基およびオキソ基で置換された1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、低級アルキル基およびオキソ基で置換されたピラゾリジニル基など)が挙げられる。
【0026】
X2の好ましい「置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基」としては、低級アルキルで置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、低級アルキルで置換されたピペラジニル基など)、1〜5の窒素原子を有する飽和縮合複素環式基(例えば、ピロリジノピペラジニル基など)、低級アルキル基で置換されていてもよい1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基(例えばモルホリニル基、ジ低級アルキル置換モルホリニル基など)、低級アルキル基で置換されていてもよい1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基で置換された1〜5の窒素原子を有する飽和縮合複素環式基(例えば、ジ低級アルキル置換モルホリニル基で置換されたピペリジル基など)が挙げられる。
【0027】
Rcの好ましい「置換基を有していてもよい複素環式基」としては、低級アルキル基で置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基(例えば、低級アルキルで置換されていてもよいピリジル基など)または1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基(例えば、モルホリニル基など)が挙げられる。
【0028】
Rdの好ましい「置換基を有していてもよい複素環式基」としては、1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基(例えば、ピリジル基など)、低級アルキル基で置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、低級アルキルで置換されたピペラジニル基など)または1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環式基(例えば、モルホリニル基など)が挙げられる。
【0029】
Reの好ましい「置換基を有していてもよい低級アルキル基」としては、低級アルキル基、ジ低級アルキルアミノ置換低級アルキル基(例えば、ジメチルアミノ置換低級アルキル基など)、1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基で置換された低級アルキル基(例えば、ピリジニル置換低級アルキル基など)または1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、ピペリジル置換低級アルキル基など)が挙げられる。
【0030】
Rfの好ましい「置換基を有していてもよい複素環式基」としては、アリール置換低級アルキル基で置換された1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、アリール置換低級アルキル基で置換されたピペリジル基など)、1〜5の窒素原子を有する不飽和縮合複素環式基置換低級アルキルで置換された1〜5の窒素原子を有する飽和複素環式基(例えば、キノリル置換低級アルキル基で置換されたピロリジニル基など)またはシクロ低級アルキル基で置換された1〜5の窒素原子を有する飽和複素環式基(例えば、シクロ低級アルキル基で置換されたピロリジニル基など)が挙げられる。
【0031】
ALK3の好ましい「置換基を有していてもよい低級アルキレン基」としては、低級アルキレン基(例えば、イソプロピルメチルメチレン、メチルメチレン、n-ブチルメチレンなど)、1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基で置換された低級アルキレン基(例えば、ピリジルメチルメチレン基など)、シクロ低級アルキルで置換された低級アルキレン基(例えば、シクロヘキシルメチルメチレン基など)、アリール基で置換された低級アルキレン基(例えば、ナフチルメチルメチレン基、フェニルメチルメチレン基など)またはヒドロキシで置換された低級アルキレン基(例えば、ヒドロキシエチレン基など)が挙げられる。
【0032】
Rgの好ましい「置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基」としては、アルキルカルバモイル基(例えば、ドデシルカルバモイル基など)、1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基で置換された低級アルキルカルバモイル基(例えば、ピリジルで置換された低級アルキルカルバモイル基など)またはアリール置換アリールで置換された低級アルキルカルバモイル基(例えば、ビフェニル置換低級アルキルカルバモイル基など)が挙げられる。
【0033】
Rgの好ましい「置換基を有していてもよいピリミジニルアミノ基」としては、ハロ低級アルキルで置換されたピリミジニルアミノ基(例えば、トリフルオロピリミジニルアミノ基など)が挙げられる。
Rgの好ましい「置換基を有していてもよいアリール基」としては、アルール基(例えば、フェニルなど)、アミノ基で置換されたアリール基(例えば、アミノフェニル基など)またはジ低級アルキルアミノ基で置換されたアリール基(例えば、ジ低級アルキルアミノ基で置換されたフェニル基など)が挙げられる。
【0034】
Rgの好ましい「置換基を有していてもより複素環式基」としては、
低級アルキル基で置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環式基(例えば、メチルピペリジル基、ホモピペリジル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、エチルピロリジニル基、メチルピロリジニル基、メチルピペラジニル基など)、低級アルキル、ジ低級アルキル、ハロゲン原子、低級アルコキシ、低級アルキルピペラジニル、ジ低級アルキルアミノ置換低級アルコキシ、モルホリニル置換低級アルコキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、ハロ低級アルキル、アミノ、モルホリニル、ヒドロキシ低級アルキル置換ピペリジル、ピリミジニル置換ピペラジニルまたはシクロ低級アルキルオキシで置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基(例えば、ピリジル基、メチルピリジル基、メチルピラゾリル基、ピラジニル基、メチルピラジニル基、クロロピラゾリル基、メトキシピリジル基、メチルピペラジニルピリジル基、ジメチルアミノ低級アルコキシピリジル基、モルホリニル低級アルコキシピリジル基、テトラヒドロピラニルオキシピリジル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、トリフルオロメチルピリジル基、クロロピリジル基、メチルピロリル基、ジメチルピラゾリル基、ブロモピラゾリル基、モルホリニルピリジル基、イミダゾリル基、低級アルキル置換イミダゾリル基、ヒドロキシ低級アルキル置換ピリジル基、ピリミジニルピペラジン置換ピリジル基、シクロペンチルオキシ置換ピリジル基、シクロヘキシルオキシ置換ピリジル基など)、
【0035】
低級アルキル基で置換されていてもよい1〜5の窒素原子を有する不飽和縮合複素環式基(例えば、キノリル基、メチルキノリル基など)、
酸素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基(例えば、フリル基など)、
低級アルキルまたはピリジルで置換されていてもよい1または2の硫黄原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基(例えば、チエニル基、メチルチエニル基、ピリジル置換チエニル基など)、
アリールで置換されていてもよい1または2の硫黄原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基(例えば、チアゾリル基、フェニルチアゾリル基など)、低級アルキル、低級アルコキシまたはハロゲン原子で置換されていてもよい1〜5の窒素原子を有する不飽和縮合複素環式基(例えば、インドリル基、低級アルキル置換インドリル基、低級アルコキシ置換インドリル基、ハロゲン置換インドリル基など)、
が挙げられる。
【0036】
ReおよびRfがそれらが結合している窒素原子と一緒になって形成する、置換基を有していてもよい複素環の好ましい例としては、
ヒドロキシ、ピペリジル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、ピペリジル低級アルキル、ジ低級アルキルアミノ、シアノ、カルボキシ、オキソ、低級アルキル、ピリジル低級アルキル、シクロ低級アルキル、アリール、低級アルキル、あるいはジ低級アルキルで置換されていてもよい1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環式基で置換されていてもよい、1〜4の窒素原子を有する3〜7員の飽和複素単環(例えば、ヒドロキシ置換ピペリジン、低級アルコキシ置換ピペリジン、ジ低級アルキルアミノ置換ピペリジン、ピペリジル置換ピペリジン、ピペリジル置換ピロリジン、低級アルコキシ置換ピロリジン、低級アルコキシカルボニル置換ピロリジン、ピペリジル−低級アルキル置換ピロリジン、ジ低級アルキルアミノ置換ピロリジン、シアノ置換ピロリジン、カルボキシ置換ピロリジン、オキソピペラジン、低級アルキル置換ピペラジン、ピリジル−低級アルキル置換ピペラジン、シクロ低級アルキル置換ピペラジン、アリール置換ピペリジン、ピリジル置換ピペラジン、ピリミジニル置換ピペラジン、ジメチルピリミジニル置換ピペラジン、メチルピペリジン、ホモピペリジン、ピロリジン、ピペリジン、エチルピロリジン、メチルピロリジン、メチルピペラジンなど)、
【0037】
1〜4の窒素原子を有する3〜6員の不飽和複素単環(例えば、テトラヒドロピリジンなど)、
ジ低級アルキル基で置換されていてもよい1または2の酸素原子および1〜3の窒素原子を有する3〜6員の飽和複素単環(例えば、モルホリン、ジ低級アルキル置換モルホリンなど)、
低級アルキル基で置換されていてもよい1または2の硫黄原子および1〜3の窒素原子を有する不飽和縮合複素環(例えば、チアゾロテトラヒドロピリジン、低級アルキル置換チアゾロテトラヒドロピリジンなど)、
1〜5の窒素原子を有する不飽和縮合複素環(例えば、ピリジノテトラヒドロピリジン、テトラヒドロイソキノリン、イソインドリン、ジヒドロピロロピリジンなど)
アリール低級アルキル基で置換されていてもよい1〜5の窒素原子を有する飽和縮合複素環(例えば、ピロリジノピペラジン、アリール低級アルキル基置換ピロリジノピペラジンなど)
が挙げられる。
【0038】
本発明の化合物(I)としては次の化合物が好ましい。
(1)R1が、ヒドロキシ基、アミノ基、置換基を有していてもよい複素環式基、式:−NH−Ra
(ここで、Raは置換基を有していてもよい低級アルキル基、または置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基である)で表わされる基、または式:
【化5】

(ここで、
R5は、ヒドロキシ基、アミノ基または式:
【化6】

(ここで、
X1は水素であり、
X2は、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基、または式:−NRb−ALK1−Rc
(ここで、Rbは水素または低級アルキル基、ALK1は低級アルキレン基、Rcは水素、ヒドロキシ基、カルボキシ基、低級アルコキシ基、アミノ低級アルコキシ置換低級アルコキシ基、アミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、アミノ置換ジ低級アルキルアミノ基、低級アルカノイルアミノ基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、アリール基、または置換基を有していてもよい複素環基式である)で表わされる基であるか、あるいは
X1およびX2は一緒になって、オキソ基または式:=N−O−ALK2−Rd
(ここで、ALK2は低級アルキレン基、Rdはジ低級アルキルアミノ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい複素環式基である)で表わされる基を形成する)で表わされる基である)で表わされる基であり、
【0039】
R2が式:−CONReRf
(式中、Reは水素、または置換基を有していてもよい低級アルキル基であり、Rfは水素、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよい複素環式基、または式:−ALK3−Rg
(ここで、ALK3は置換基を有していてもよい低級アルキレン基であり、Rgはピリジルスルホニル基、シアノ基、カルボキシ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基、アルケニルカルバモイル基、置換基を有していてもよいピリミジニルアミノ基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい複素環式基である)で表わされる基であるか、あるいは
ReおよびRfはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい複素環を形成する)
で表わされる基であり、
R3が、水素またはヒドロキシプロピル基であり、
R4が、水素、低級アルコキシカルボニル基またはクロロアセチル基である
の化合物。
【0040】
(2)R1が、ヒドロキシ基、アミノ基、置換基を有していてもよい複素環式基、式:−NH−Ra
(ここで、Raは置換基を有していてもよい低級アルキル基、または置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基である)で表わされる基、または式:
【化7】

(ここで、
R5は、ヒドロキシ基、アミノ基または式:
【化8】

(ここで、
X1は水素であり、
X2は、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基、または式:−NRb−ALK1−Rc
(ここで、Rbは水素または低級アルキル基、ALK1は低級アルキレン基、Rcは水素、ヒドロキシ基、カルボキシ基、低級アルコキシ基、アミノ低級アルコキシ置換低級アルコキシ基、アミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、アミノ置換ジ低級アルキルアミノ基、低級アルカノイルアミノ基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、アリール基、または置換基を有していてもよい複素環基式である)で表わされる基であるか、あるいは
X1およびX2は一緒になって、オキソ基または式:=N−O−ALK2−Rd
(ここで、ALK2は低級アルキレン基、Rdはジ低級アルキルアミノ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい複素環式基である)で表わされる基を形成する)で表わされる基である)で表わされる基であり、
【0041】
R2が式:−CONReRf
(式中、Reは水素、または置換基を有していてもよい低級アルキル基であり、Rfは水素、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよい複素環式基、または式:−ALK3−Rg
(ここで、ALK3は置換基を有していてもよい低級アルキレン基であり、Rgはピリジルスルホニル基、シアノ基、カルボキシ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基、アルケニルカルバモイル基、置換基を有していてもよいピリミジニルアミノ基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい複素環式基である)で表わされる基であるか、あるいは
ReおよびRfはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい複素環を形成する)
で表わされる基であり、
R3がヒドロキシプロピル基であり、
R4が水素である
の化合物。
【0042】
(製造法)
本発明の化合物(I)は、特許文献1に開示されるQN3323-A物質を原料として、その2位、26位、33位および/または48位部分を変換することにより製造することができる。
その方法の反応式を以下に示すが、これらの方法に限定されるものではない。
【0043】
【化9−1】

【化9−2】

【化9−3】

【化9−4】

【0044】
なお、これらの反応は当業者に周知の慣用の方法により行なうことができ、具体的な反応条件(反応試薬、反応溶媒、反応温度、反応時間等)は、実施例に示したものに限定されず、実施例を参照して適宜選定する事ができる。
【0045】
原料化合物であるQN3323-A物質は、特許文献1に記載された方法により製造することができる。即ち、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305-8566))に受託番号FERM BP−7864号(寄託日2001年2月14日)として国際寄託されている、菌株バチルス エスピー QN03323、もしくは、当該化合物の生産能を有するこの変異株を、栄養培地にて培養し、該化合物を蓄積させた培養物から常法によって精製することによって得られる。
【0046】
上記の方法に従って得られる本発明の化合物は、粉末化、再結晶、カラムクロマトグラフィー、再沈殿などの慣用の方法で分離・精製できる。
【0047】
本発明の化合物は、置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合があり、かかる塩が製薬学的に許容される塩である限りにおいて本発明に包含される。かかる塩として具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩は、通常の造塩処理を行うことにより得られる。
【0048】
本発明のチオペプタイド化合物およびそれらの塩は、不斉炭素原子及び二重結合を有するので、これらに基づく光学異性体や幾何異性体等の形態で存在するが、本発明の化合物はこれらの異性体およびそれらの混合物を包含する。
また、本明細書中の構造式のオキシム部分で、式:
【化10】

の記載は、E,Z 混合を表わす。
さらに、本発明は、チオペプタイド化合物又はそれらの塩の各種の水和物や溶媒和物を包含し、さらにこれらの結晶および結晶多形をも包含する。
なお、本発明のチオペプタイド化合物(I)には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解によりまたは生理学的条件下で本発明のOH等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0049】
本発明化合物(I)又はその製薬学的に許容される塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は、通常、製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与形態は、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。該組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、医薬的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0050】
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商品名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1日当たり経口投与の場合、0.1〜1000 mg、非経口投与の場合、0.1〜500 mg程度が適当であり、これを1日に1回〜複数回投与する。投与量は種々の条件で変動する。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例の文中ならびに表中の略語は、それぞれ以下の意味を表わす。
ESI-MS:Electrospray ionization質量スペクトル
NMR:1H-NMR(DMSO-d6,TMS内部標準)
PS-DIEA:N,N-(ジイソプロピル)アミノエチルポリスチレン(ARGONAUT社製、capacity; 3.3mmol/g)
PS-PhCHO:ポリスチレンアルデヒド(ARGONAUT社製、capacity; 1.53mmol/g)
Ex:実施例化合物。
【0052】
以下の実施例および製造例中では以下の略号が用いられる。
DIBOCまたはBoc2Oまたはジボック :二炭酸ジ-t-ブチル
DMAP :ジメチルアミノピリジン
HOBt :1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DMF :ジメチルホルムアミド
DMSO :ジメチルスルホキシド
MeOH :メタノール
MeCN :アセトニトリル
WSC・HCl :1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)
カルボジイミド塩酸塩
TFA :トリフルオロ酢酸
DIPEA :ジイソプロピルエチルアミン
NMP :N-メチルピロリドン
NaH :水素化ナトリウム
NaOH :水酸化ナトリウム
Pd/C :パラジウム炭素
HPLC :高速液体クロマトグラフィー
BEMP :2-t-ブチルアミノ-2-ジメチルアミノ
-1,3-ジメチルパーハイドロ-1,3,2-ジアザ
-ホスホリン
FAB(+) :FAB-MS [M+H]+
ESI(+) :ESI-MS [M+H]+
EI(+) :EI [M]+
【0053】
製造例1
3-フルオロピリジン-2-カルボニトリル(969 mg)、2-ピペリジン-4-イルエタノール(1.12 g)、DIPEA(1.50 ml)、NMP(1.0 ml)の混合物をマイクロウェーブ反応装置を用いて、150℃で10分間反応を行なった。 反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。 有機層を5%クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 1/1)で精製し、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-イル]ピリジン-2-カルボニトリルを1.35 g得た。
FAB(+): 232.2
【0054】
製造例2
後記の製造例14で得られた化合物(732 mg)、10% Pd/C(389 mg)、メタノール(60 ml)の混合物を水素雰囲気化、室温で2時間攪拌した。 反応混合物をセライト濾過し、ろ液に4 M 塩化水素-ジオキサン(3.2 ml)を加えた。溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルから結晶化を行い、1-[3-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ピリジン-2-イル]メタンアミン 3塩酸塩を667 mg得た。
FAB(+): 238.0
【0055】
製造例3
製造例1で得られた化合物(1.35 g)から製造例2と同様に処理して、2-{1-[2-(アミノメチル)ピリジン-3-イル]ピペリジン-4-イル}エタノール 2塩酸塩を1.41 g得た。
FAB(+): 236.2
【0056】
製造例4
後記の製造例9で得られた化合物(712 mg)から製造例2と同様に処理して、1-[3-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル]メタンアミン 3塩酸塩を1.08 g得た。
FAB(+): 207.2
【0057】
製造例5
後記の製造例10で得られた化合物(790 mg)から製造例2と同様に処理して、1-[3-(4-ピリミジン-2-イルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル]メタンアミン 3塩酸塩を536 mg得た。
FAB(+): 271.0
【0058】
製造例6
後記の製造例11で得られた化合物(905 mg)から製造例2と同様に処理して、1-[3-(シクロペンチルオキシ)ピリジン-2-イル]メタンアミン 2塩酸塩を678 mg得た。
FAB(+): 193.1
【0059】
製造例7
後記の製造例12で得られた化合物(1.23 g)から製造例2と同様に処理して、1-[3-(シクロヘキシルオキシ)ピリジン-2-イル]メタンアミン 2塩酸塩を1.04 g得た。
FAB(+): 207.2
【0060】
製造例8
後記の製造例13で得られた化合物(731 mg)から製造例2と同様に処理して、2-[[2-(アミノメチル)ピリジン-3-イル]オキシ]-N,N-ジメチルエタンアミン 3塩酸塩を1.04 g得た。
FAB(+): 196.1
【0061】
製造例9
3-フルオロピリジン-2-カルボニトリル(522 mg)、 1-メチルピペラジン(516 mg)、DIPEA(0.9 ml)、NMP(1.0 ml)の混合物をマイクロウェーブ反応装置を用いて、150℃で10分間反応を行なった。 反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 40/1)で精製し、3-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-カルボニトリルを754 mg得た。
FAB(+): 203.2
【0062】
製造例10
3-フルオロピリジン-2-カルボニトリル(556 mg)、2-ピペラジン-1-イルピリミジン(828 mg)、DIPEA(0.9 ml)、NMP(1.0 ml)の混合物をマイクロウェーブ反応装置を用いて、150℃で10分間反応を行なった。 反応混合物に水を加え、析出した固体を濾取した。これを水で洗浄し、乾燥することにより、3-(4-ピリミジン-2-イルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-カルボニトリルを790 mg得た。
EI(+): 267.1
【0063】
製造例11
3-フルオロピリジン-2-カルボニトリル(832 mg)、シクロペンタノール(904 mg)、NaH(450 mg)、DMF(10 ml)の混合物を室温で1時間攪拌した。 反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 4/1)で精製し、3-(シクロペンチルオキシ)ピリジン-2-カルボニトリルを925 mg得た。
EI(+): 189.1
【0064】
製造例12
3-フルオロピリジン-2-カルボニトリル(877 mg)とシクロヘキサノール(1.46 g)から製造例11と同様に処理して、3-(シクロヘキシルオキシ)ピリジン-2-カルボニトリルを1.51 g得た。
EI(+): 203.1
【0065】
製造例13
3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニトリル(2.18 g)、2-クロロ-N,N-ジメチルエタンアミン 塩酸塩(3.23 g)、炭酸カリウム(6.02 g)、DMF(5.5 ml)の混合物を80℃で12時間攪拌した。 反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 20/1)で精製し、3-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]ピリジン-2-カルボニトリル を765 mg得た。
FAB(+): 192.2
【0066】
製造例14
3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニトリル(1.07 g)、4-(2-クロロエチル)モルホリン 塩酸塩(2.11 g)、炭酸カリウム(2.96 g)、DMF(8.6 ml)の混合物をマイクロウェーブ反応装置を用いて、100℃で10分間反応を行なった。 反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 20/1)で精製することにより、3-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ピリジン-2-カルボニトリル を1.42 g得た。
ESI(+): 234.6
【0067】
製造例15
3-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-2-カルボン酸エチル(3.021 g)を29%アンモニア水(100 ml)に溶解し、室温で3日間放置した。 濃縮後、残渣を水で洗浄すると無色固体の3-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-2-カルボキサミドが2.156 g得られた。
ESI(+): 203.2
【0068】
製造例16
製造例15で得られた化合物(1.087 g)をオキシ塩化リン(21.5 ml)中で3時間加熱還流した。 室温まで放冷後、氷にあけ、そのまま30分間攪拌した。 クロロホルムで抽出することにより、褐色油状の4-クロロ-3-メチルキノリン-2-カルボニトリルが得られた。次の反応にそのまま用いた。
ESI(+): 203.3
【0069】
製造例17
製造例16で得られた化合物を10%パラジウム炭素存在下、MeOH中で、水素雰囲気の下で接触還元することにより、1-(3-メチルキノリン-2-イル)メタンアミンおよび1-(4-クロロ-3-メチルキノリン-2-イル)メタンアミンの混合物が得られた。
ESI(+): 173.3, 207.2
【0070】
製造例18
2-アセチル-3-メチルピラジン(559 mg)にMeOH(6.4 ml)中、炭酸水素ナトリウム(450 mg)存在下、ヒドロキシルアミン塩酸塩(350 mg)を加え、室温にて1晩攪拌した。 溶媒を留去した後、クロロホルムを加えて食塩水で洗浄した。 無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濃縮すると粗1-(3-メチルピラジン-2-イル)エタノン オキシム(EZ混合)が421 mg得られた。 これを次の反応にはそのまま用いた。
EI(+): 151.0
【0071】
製造例19
製造例18で得られた化合物(410 mg)をTFA(5 ml)に溶解し、亜鉛末(1 g)を少しずつ加えた。 亜鉛を加え終えたら反応液を濃縮し、1N NaOH水溶液を加え、ジクロロメタンにて抽出した。 無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濃縮すると黄色油状の1-(3-メチルピラジン-2-イル)エタンアミンが113 mg得られた。
ESI(+): 137.2
【0072】
製造例20
N-(t-ブトキシカルボニル)-L-ノルロイシン(301.5 mg)とHOBt(323.9 mg)、ピコリルアミン(0.23 ml)をDMF(2.5 ml)に溶解し、氷冷下WSC・HCl(404.2 mg)を加えた。 その後、氷浴を取り外し、反応温度を室温まで昇温し、5時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、次いで飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 65/35〜35/65)で精製し、N2-(t-ブトキシカルボニル)-N-(ピリジン-2-イルメチル)-L-ノルロイシンアミド(401 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 344.
【0073】
製造例21
N-(t-ブトキシカルボニル)-L-アラニン(500 mg)から、製造例20と同様の方法にて、N2-(t-ブトキシカルボニル)-N-(ピリジン-2-イルメチル)-L-アラニンアミド(528.4 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 302.
【0074】
製造例22
N-(t-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニン(500 mg)から製造例20と同様の方法にて、N2-(t-ブトキシカルボニル)-N-(ピリジン-2-イルメチル)-L-フェニルアラニンアミド(569.4 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 378.
【0075】
製造例23
N-(t-ブトキシカルボニル)-L-ロイシンハイドレート(300 mg)から製造例20と同様の方法にて、N2-(t-ブトキシカルボニル)-N-(ピリジン-2-イルメチル)-L-ロイシンアミド(348.8 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 344.
【0076】
製造例24
N-t-ブトキシカルボニル-3-シクロヘキシル-D-アラニン(200 mg)から製造例20と同様の方法にて、N2-(t-ブトキシカルボニル)-N-(ピリジン-2-イルメチル)-3-シクロヘキシル-D-アラニンアミド(243.7 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 384.
【0077】
製造例25
N-(t-ブトキシカルボニル)-3-(2-ナフチル) -D-アラニン(200 mg)から製造例20と同様の方法にて、N2-(t-ブトキシカルボニル)-N-(ピリジン-2-イルメチル)-3-(2-ナフチル) -D-アラニンアミド(247.1 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 428.
【0078】
製造例26
N-(t-ブトキシカルボニル)-3-(2-ピリジル)-D-アラニン(400 mg)から製造例20と同様の方法にて、t-ブチル[(1S)-2-[[(2E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン -1-イル]アミノ]-2-オキソ-1-(ピリジン-2-イルメチル)エチル]カルバマート(600.4 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 424.
【0079】
製造例27
N-(t-ブトキシカルボニル)-3-(2-ピリジル)-D-アラニン(200 mg)から製造例20と同様の方法にて、t-ブチル [(1S)-2-[(ビフェニル-4-イルメチル)アミノ]-2-オキソ-1-(ピリジン-2-イルメチル)エチル]カルバマート(294.1 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 454.
【0080】
製造例28
N-(t-ブトキシカルボニル)-D-フェニルアラニン(500 mg)から製造例20と同様の方法にて、N2-(t-ブトキシカルボニル)-N-(ピリジン-2-イルメチル)-D-フェニルアラニンアミド(597.4 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 378.
【0081】
製造例29
塩化水素の酢酸エチル溶液(3 mol/l, 7 ml)に製造例20で得た化合物(395.0 mg)の酢酸エチル溶液(2 ml)をゆっくりと加えた。 15分攪拌した後、析出した白色沈殿が完全に溶けるまでメタノールを加え、更に30分攪拌した。 反応混合物を減圧化濃縮してN-(ピリジン-2-イルメチル)-L-ノルロイシンアミド塩酸塩(358.5 mg)を得た。
ESI(+): 222.
【0082】
製造例30
製造例22で得た化合物(200 mg)から製造例29と同様の方法にて、N-(ピリジン-2-イルメチル)-L-フェニルアラニンアミド塩酸塩(177.1 mg)を得た。
ESI(+): 256.
【0083】
製造例31
製造例28で得た化合物(200 mg)から製造例29と同様の方法により、N-(ピリジン-2-イルメチル)-D-フェニルアラニンアミド塩酸塩(156.8 mg)を得た。
ESI(+): 256.
【0084】
製造例32
製造例21で得た化合物(525 mg)をトリフルオロ酢酸(3 ml)に溶解し、室温にて一時間攪拌した。 反応混合物を減圧下濃縮し、残渣にメタノール(1 ml)と塩化水素の酢酸エチル溶液(3 M、2 ml)を加えて溶解させた後、大過剰ジイソプロピルエーテルで希釈して、得られた白色沈殿N-(ピリジン-2-イルメチル)-L-アラニンアミド塩酸塩を濾別し、減圧化乾燥した。
ESI(+): 180.
【0085】
製造例33
塩化水素の酢酸エチル溶液(3 mol/l, 7 ml)に製造例23で得た化合物(250.0 mg)の酢酸エチル溶液(2 ml)をゆっくりと加えた。 15分攪拌した後、析出した白色沈殿が完全に溶けるまでメタノールを加え、更に30分攪拌した。 反応混合物を減圧化濃縮して、飽和炭酸カリウム水溶液を加え、塩化メチレンで抽出した。 有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮し、N-(ピリジン-2-イルメチル)-L-ロイシンアミド(160 mg)を得た。
ESI(+): 222.
【0086】
製造例34
製造例24で得た化合物(139 mg)をトリフルオロ酢酸(1 ml)に溶解し、室温にて30分攪拌した。 反応混合物を塩化メチレンで希釈したのち、飽和炭酸カリウム水溶液で洗浄した。 無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮し、3-シクロヘキシル-N-(ピリジン-2-イルメチル)-D-アラニンアミド(90 mg)を得た。
ESI(+): 262.
【0087】
製造例35
製造例25で得た化合物(144.4 mg)から、製造例34と同様の方法で、(2R)-2-アミノ-3-(2-ナフチル)-N-(ピリジン-2-イルメチル)プロパンアミド(103.1 mg)を得た。
ESI(+): 306.
【0088】
製造例36
後記の製造例43で得た化合物(340.6 mg)から、製造例34と同様の方法で、N-ヘプチル-3-ピリジン-2-イル-L-アラニンアミド(245.2 mg)を得た。
ESI(+): 264.
【0089】
製造例37
後記の製造例44で得た化合物(287.1 mg)から、製造例34と同様の方法で、N−ドデシル−3−ピリジン-2-イル-L-アラニンアミド(220.4 mg)を得た。
ESI(+): 334.
【0090】
製造例38
製造例26で得た化合物(123.6 mg)から、製造例34と同様の方法で、N-[(2E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル]-3-ピリジン-2-イル-L-アラニンアミド(92.5 mg)を得た。
ESI(+): 302.
【0091】
製造例39
製造例27で得た化合物(270.3 mg)から、製造例34と同様の方法で、N-(ビフェニル-4-イルメチル)-3-ピリジン-2-イル-L-アラニンアミド(203.8 mg)を得た。
ESI(+): 332.
【0092】
製造例40
QN3323-A(50 g)をジメチルホルムアミド(250 ml)に溶解し、室温下、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA;26.343 g)を15分ごと4回に分けて加えた。 室温にて15分間攪拌後、氷水(1000 ml)を加え酢酸エチル(1000 ml)で3回抽出した。 有機層を集めたのち、水(500 ml)で2回洗浄した。 有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。 残留物をテトラヒドロフラン(500 ml)に溶解し、室温下、0.1 M テトラ-n-ブチルアンモニウムフロリド(TBAF)−テトラヒドロフラン溶液(55 ml)を1時間30分かけて滴下しながら加えた。 反応液に飽和食塩水(1000 ml)加えクロロホルム(1000 ml)で抽出した。 有機層を飽和食塩水(500 ml)で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮することによってQN3323-Aの26位の水酸基がトリメチルシリルオキシ基に変換された粗化合物(45.75 g)を黄色固体として得た。 このものはこれ以上の精製はせず、次の反応へ用いた。
ESI-MS [M+2Na]2+/2: 637.5
【0093】
製造例41
製造例40で得られた化合物(45.74 g)、および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP;457 mg)を塩化メチレン(457 ml)に溶解した。 室温下、この溶液に塩化メチレン80mlに溶解したジ-tert-ブチル ジカルボナート(DIBOC;6.5 g)を1時間かけて滴下しながら加えた。 反応液を塩化メチレン(100 ml)で希釈し、0.1 M 塩酸(100 ml)、希重曹水(洗浄時にpH = 7となるように調製;100 ml)および飽和食塩水(100 ml)で洗浄した。 有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することによって製造例40の目的物の48位の水酸基がt-ブトキシカルボニル(Boc)基で変換された粗化合物(42.22 g)を淡黄色固体として得た。このものはこれ以上の精製はせず、次の反応に用いた。
ESI-MS [M+2Na]2+/2: 688
【0094】
製造例42
後記の実施例16の化合物(1.0 g)を塩化メチレン(10 ml)に溶解し、氷冷下、4-メチルモルホリン(0.175 ml)及びクロロぎ酸 p-ニトロフェニル(320 mg)を加えた。 室温下3時間攪拌後、酢酸エチル(100 ml)で希釈後、1 M 塩酸(50 ml×2回)、希重曹水、および飽和食塩水で洗浄した。 無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム-アセトン-メタノール = 20:5:1)にて精製することにより、実施例16の目的物の26位の水酸基がパラニトロフェニルカーボネート化された化合物(0.895 g)を淡黄色固体として得た。
ESI-MS [M+Na]+: 1445
【0095】
製造例43
N-(t-ブトキシカルボニル)-3-(2-ピリジル)-D-アラニン(300 mg)から製造例20と同様の方法にて、t-ブチル[(1S)-2-(ヘプチルアミノ)-2-オキソ-1-(ピリジン-2-イルメチル)エチル]カルバマート (362.1 mg)を得た。
ESI-MS [M+Na]+: 386.
【0096】
製造例44
N-(t-ブトキシカルボニル)-3-(2-ピリジル)-D-アラニン(200 mg)から製造例20と同様の方法にて、t-ブチル[(1S)-2-(ドデシルアミノ)-2-オキソ-1-(ピリジン-2-イルメチル)エチル]カルバマート(297.8 mg)を得た。
ESI-MS [M+H]+: 434.
【0097】
製造例45
製造例42で得た化合物(100 mg)を塩化メチレン(1 mL)に溶解し、グリシン-t-ブチルエステル塩酸塩(50 mg)とジイソプロピルエチルアミン(0.05 mL)を順次を加え、室温で一時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、1 M 水酸化ナトリウム水溶液、1 M 塩酸、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/アセトン/メタノール = 90/8/2〜70/25/5)で精製し、製造例42の目的物の26位がグリシン-t-ブチルエステルカルバマート化された化合物(97.6 mg)を得た。
【0098】
実施例1
製造例42で得られた化合物(100 mg)を室温下、塩化メチレン(1 ml)に溶解後N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.066 ml)、および、1-[3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルオキシ)ピリジン-2-イル]メタンアミン 二塩酸塩(53 mg)を加えた。 1時間攪拌した後、クロロホルム(50 ml)で希釈し、飽和食塩水で洗浄した。 無水硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、残留物をトリフルオロ酢酸(1 ml)と作用させた。室温下15分攪拌の後、メタノール(7 ml)で希釈し、逆相(C18)HPLC(0.2% ギ酸含有アセトニトリル/0.2% ギ酸含有水 = 20/80〜100/0)にて精製後、再度ODSカラムクロマトグラフィーに付して、ぎ酸を除去したのち、凍結乾燥することにより、目的物(36.66 mg)を白色アモルファスとして得た。
【0099】
実施例2
QN3323-A(2.303 g)を塩化メチレン(40 ml)に溶解し、DMAP(1.059 g)を加えた後、氷冷した。 そこへクロロギ酸 p-ニトロフェニル(515 mg)を加え、氷冷下1時間攪拌した。 塩化メチレン(2 ml)に溶解した2-アミノメチルピリジン(215 mg)を加え室温で1晩攪拌した。 反応液に0.3 M 塩酸を加えることにより生じた沈殿をろ取した。 沈殿に希重曹水を加え、クロロホルム可溶分を抽出した。 食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥、濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-アンモニア水 = 20:1:0.1〜10:1:0.1)で精製することにより目的物を214 mg得た。
【0100】
実施例3
実施例1-74で得られた化合物(38.5 mg)をMeOH(4 ml)、塩化メチレン(1 ml)の混合溶媒に溶解し、ジメチルアミノエチルヒドロキシルアミン塩酸塩(15 mg)を加え、PS-DIEA(3.3 mmol/g;100 mg)を加えた。 1時間室温で攪拌した後、溶媒を留去しクロロホルムを加え、食塩水にて洗浄した。 無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濃縮すると目的とする無色固体が32.3 mg得られた。
【0101】
実施例4
QN3323-A(50 mg)とN,N-ジメチル-1,2-エタンジアミン(0.007 ml)と酢酸(0.005 ml)をDMF(0.5 ml)とメタノール(1.5 ml)に溶解し、水素化シアノホウ素ナトリウム(5.0 mg)を加え室温で16時間攪拌した。 反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウムと水を加え、逆相(C18)カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル:水 = 20:80- 80:20)にて粗精製した。 減圧下濃縮し、残渣をメタノール(5.0 ml)に溶解し、逆相(C18)HPLC(ギ酸:アセトニトリル:水 = 0.2:20:80 − 0.2:100:0)にて精製した。得られた目的物を含む分画に1 M 塩酸を加えて減圧下でアセトニトリルを除去した。残渣を凍結乾燥し目的物(26.6 mg)を得た。
【0102】
実施例5
実施例1-2で得られた化合物(500 mg)とN,N-ジメチル-1,2-エタンジアミン(0.007 ml)と酢酸(0.005 ml)を塩化メチレン(15 ml)とメタノール(5 ml)に溶解し、水素化シアノホウ素ナトリウム(72.0 mg)を加え室温で3時間攪拌した。 反応混合物をジクロロメタン(150 ml)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(2×50 ml)及び塩水(50 ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。 残渣を逆相(C18)HPLC(メタノール:アセトニトリル:水 = 35:35:30)にて精製した。得られた目的物を含む画分を減圧下でメタノールおよびアセトニトリルを除去した。残渣に1 M 塩酸を加え凍結乾燥し、目的物(291 mg)を得た。
【0103】
実施例6
QN3323-A(100 mg)をN-メチルピロリドン(1 ml)と水(0.002 ml)に溶解し、炭酸カリウム(100 mg)を加え100oCで1時間攪拌した。反応混合物をメタノール(3 ml)で希釈し、逆相(C18)HPLC(ギ酸:アセトニトリル:水 = 0.2:30:70- 0.2:100:0)にて精製し、減圧下でアセトニトリルを除去した。得られた懸濁液をろ過し、残渣を水、酢酸エチルで洗浄後、乾燥して目的物(62 mg)を得た。
【0104】
実施例7
チオシリンI(50 mg)のTHF(0.5 ml)懸濁液にp-トルエンスルホン酸を加え50度で10時間攪拌した。 混合液を室温に冷却し、DIBOC(47 mg)を加え、次いで飽和炭酸水素ナトリウム(0.5 ml)を加えた。混合液を1時間攪拌し、2 M 水酸化ナトリウム(0.5 ml)を加え一晩攪拌した。混合液を水に希釈し逆相(C18)カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル:水 = 10:90 − 90:10)にて精製した。得られた残渣をTHF(3 ml)で希釈し、2 M 水酸化ナトリウム(2 ml)を加えた。混合液を2時間攪拌し、1 M 塩酸で中和した後、アセトニトリル(1 ml)、メタノール(1 ml)及び水(10 ml)に希釈し、逆相(C18)カラムクロマトグラフィー(アセトニトリル:水 = 10:90 − 80:20)にて精製し、減圧下でアセトニトリルを除去した。残渣を凍結乾燥し、目的物(6.4 mg)を得た。
【0105】
実施例8
QN3323-A(100 mg)と炭酸カリウム(60 mg)をTHF(1.8 ml)と水(0.2 ml)に懸濁し、ヨウ素(44 mg)を加え室温で16時間攪拌した。反応混合物に飽和チオ硫酸ナトリウム(1 ml)を加え、メタノール(10 ml)及び水(40 ml)で希釈し、逆相(C18)カラムクロマトグラフィー(ギ酸:アセトニトリル:水 = 0.2:20:80 − 0.2:80:20)にて精製し、減圧下でアセトニトリルを除去した。残渣を凍結乾燥し、目的物(32 mg)を得た。
【0106】
実施例9
QN3323-A(100 mg)をDMSO(1 ml)と水(0.01 ml)に溶解し、15oCに冷却した。混合溶液に2-t-ブチルアミノ-2-ジメチルアミノ-1,3-ジメチルパーハイドロ-1,3,2-ジアザ-ホスホリン(0.06 ml)を加え15oCで3時間攪拌した。混合液を水 (500 mL)で希釈し、逆相(C18)カラムクロマトグラフィー(水(300 ml)、アセトニトリル:水 = 20:80、アセトニトリル:pH 7 標準緩衝溶液 = 20:80 − 50:50)にて精製した。得られた目的物を含む分画を水(1 l)で希釈し、逆相(C18)カラムクロマトグラフィー(水(300 ml)、塩酸:アセトニトリル:水 = 0.1:80:10)にて処理後、減圧下でアセトニトリルを除去した。残渣を凍結乾燥し、目的物(26 mg)を得た。
【0107】
実施例10
QN3323-A(50 mg)をエタノール(2 ml)に懸濁し、ヒドラジン・一水和物(0.05 ml)を加え、室温で16時間攪拌した。反応混合物をエタノール(5 ml)で希釈し、逆相(C18)HPLC(ギ酸:アセトニトリル:水 = 0.2:20:80 − 0.2:100:0)にて精製した。得られた目的物を含む分画を水(200 ml)で希釈し、逆相(C18)カラムクロマトグラフィー(水(300 ml)、1 M 塩酸:アセトニトリル:水 = 0.2:80:20)にて処理後、減圧下でアセトニトリルを除去した。残渣を凍結乾燥し、目的物(13 mg)を得た。
【0108】
実施例11
実施例9で得られた物質(20 mg)をNMP(0.2 ml)に溶解し、DIPEA、3−アミノメチルピリジン(0.015 ml)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(5.5 mg)及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(7.5 mg)を加え室温で16時間攪拌した。反応混合物をメタノール(3 ml)で希釈し、逆相(C18)HPLC(ギ酸:アセトニトリル:水 = 0.2:20:80 − 0.2:100:0)にて精製した。得られた目的物を含む分画を水(200 ml)で希釈し、逆相(C18)カラムクロマトグラフィー(水(300 ml)、1 M 塩酸:アセトニトリル:水 = 0.1:80:20)で処理後、減圧下でアセトニトリルを除去した。残渣を凍結乾燥し、目的物(12 mg)を得た。
【0109】
実施例12
QN3323-A(100 mg)とジイソプロピルエチルアミン(0.08 ml)とDMAP(15.8 mg)をクロロホルム(1 ml)に溶解し、クロロ酢酸無水物(68.2 mg)を加え室温で30分攪拌した。反応混合物に水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層は1 M 塩酸、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (クロロホルム/アセトン/メタノール = 90/8/2〜70/25/5)にて精製し、QN3323-Aの26位と48位の水酸基がクロロアセチル化された化合物(35.1 mg)を得た。
【0110】
実施例13
次の実施例14で得た目的物A(50 mg)とHOBt(16.1 mg)、ピコリルアミン(0.05 ml)をDMF(0.5 ml)に溶解し、室温でWSC・HCl(22.8 mg)を加えた。 その後、5時間攪拌した。反応混合物をメタノール(6.5 ml)で希釈し、逆相(C18)HPLC(0.2% ギ酸含有アセトニトリル/0.2% ギ酸含有水 = 20/80〜100/0)にて精製後、再度逆相(C18)カラムクロマトグラフィーに付してギ酸を除去したのち、塩酸を加えて凍結乾燥して、目的物(11.1 mg)を得た。
【0111】
実施例14
製造例45で得た化合物(210 mg)をTFA(0.5 ml)に溶解し、室温で15分間静置した。 反応混合物をメタノール(6.5 ml)で希釈し、逆相(C18)HPLC(0.2% ギ酸含有アセトニトリル/0.2% ギ酸含有水 = 20/80〜100/0)にて精製後、必要なそれぞれの画分を再度逆相(C18)カラムクロマトグラフィーに付してギ酸を除去したのち、凍結乾燥して目的物A(71.4 mg)と目的物B(71.3 mg)をそれぞれ得た。
【0112】
実施例15
50 mMトリス塩酸バッファー(pH 9.0)にQN3323-AのDMSO溶液を終濃度4 mg/mlで添加し、Pfu Protease S(タカラバイオ)を5 U/mlとなるように加え、95℃で96時間インキュベートした。 350 mlの反応液を等量の酢酸エチルで2回抽出し、酢酸エチル層を減圧濃縮した。 得られた抽出物をSymmetry Shield RP18(ウォーターズ、19 φ×300 mm)を用いて40%アセトニトリル、5 ml/minの条件にてHPLCにて精製し、100 mgの目的物を精製取得した。
【0113】
実施例16
製造例41で得られた化合物(42.2 g)をテトラヒドロフラン(THF;422 ml)に溶解し、室温下0.1 M テトラ-n-ブチルアンモニウム フルオリド−THF溶液(134.8 ml)を1時間かけて滴下しながら加えた。 反応液に飽和食塩水(500 ml)を加え、クロロホルム(300 ml)で抽出した後、有機層を順次0.1 M 塩酸(300 ml)、飽和食塩水(300 ml)に洗浄時pH=7となるように重曹水を加えたもの、および飽和食塩水(300 ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム-アセトン-メタノール = 15:5:1)にて精製することにより、製造例41の目的物の26位トリメチルシリル(TMS)基が脱保護された化合物(25.44 g)を淡黄色固体として得た。
【0114】
実施例17
QN3323-A(5 g)をクロロホルム(100 ml)に溶解し、DMAP(300 mg)を加え、氷水にて溶液を冷却した。 この溶液中にジ-tert-ブチル ジカルボナート(1.25 g)を加えた後、反応温度を室温まで昇温して20分攪拌した。 反応混合物に水を加え、水層をクロロホルムにて抽出し、得られた有機層を1 M 塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄した。 無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/アセトン/メタノール = 90/8/2〜70/25/5)にて精製し、QN3323-Aの48位の水酸基がt-ブトキシカルボニル(Boc)基で変換された化合物(4.787 g)を得た。
【0115】
以下の表に示す実施例中、実施例1-1〜1-141の化合物は前記実施例1と同様に、実施例2-1の化合物は前記実施例2と同様にして、実施例3-1〜3-18の化合物は前記実施例3と同様にして、実施例4-1および4-2の化合物は前記実施例4と同様にして、実施例5-1〜5-28の化合物は前記実施例5と同様にして、実施例6-1および6-2の化合物は前記実施例6と同様にして、および実施例11-1〜11-5の化合物は前記実施例11と同様にして合成した。
なお、表1-1〜1-10において、実施例2および2-1の化合物は、表1-1に示す構造式の*印の位置の絶対配置が、表中のほかの化合物とは異なる。さらに、表2-2中の実施例3-13の化合物および表2-3中の実施例3-14および3-15の化合物は、実施例2の化合物を原料としており、その*印の位置の絶対配置が実施例2の化合物と同じである。
実施例化合物の構造を次の表1〜7に示す。また、これらの物理化学的データを表8に示す。
【0116】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【表2−5】

【表2−6】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8−1】

【表8−2】

【表8−3】

【表8−4】

【表8−5】

【表8−6】

【表8−7】

【表8−8】

【表8−9】

【表8−10】

【表8−11】

【表8−12】

【表8−13】

【表8−14】

【表8−15】

【表8−16】

【0117】
実施例18:抗菌活性
本発明の実施例化合物、並びに比較化合物としてバンコマイシン(VCM)について、スタフィロコッカス アウレウス ATCC33591 (Staphylococcus aureus ATCC33591)、メチシリン耐性菌であるスタフィロコッカス アウレウス 22039 (MRSA) (Staphylococcus aureus 22039)、バンコマイシン中程度耐性菌であるスタフィロコッカス アウレウスATCC700699 (Staphylococcus aureus ATCC700699)及びバンコマイシン耐性菌であるエンテロコッカス フェシウム FP1872 (VRE) (Enterococcus faecium FP1872)に対する最小発育阻止濃度(MIC)をClinical and Laboratory Standards Institute (旧National Committee for Clinial Laboratory Standards)のM7-A7に準拠して測定した。測定の結果を表9に示す。
【0118】
【表9】

【0119】
実施例19: 増殖曲線に及ぼす抗菌薬の影響
オキサシリン4 μg/mL含有Trypticase-Soy agarで前培養したスタフィロコッカス アウレウス 22039 (MRSA) (Staphylococcus aureus 22039)をTrypticase-Soy brothに接種し、35℃で培養した。対数増殖期まで振盪培養した後、32×MIC濃度の本発明化合物を作用させ、6時間後の生菌数を測定した。
【0120】
実施例20: マウス全身感染モデルに対する治療効果
マウスを易感染状態にするために、cyclophosphamideの200 mg/kgを感染4日前に腹腔内投与した。スタフィロコッカス アウレウス 22039 (MRSA) (Staphylococcus aureus 22039)をICR系4週令マウス(日本SLC、SPF)の腹腔内に感染させ(約1 x103 CFU/マウス)、次いで生食に溶解した本発明化合物を、感染1時間、6時間後に静脈内投与した。腎内生菌数を比較して効果を測定した。
【0121】
以上の様に、本発明化合物(I)は、MRSA及びVRE等の多剤耐性菌を含む多くの菌に良好なMICを有しており、しかも殺菌力が強いことから、医薬、特に抗菌剤、中でも多剤耐性菌感染症の予防・治療剤として有用であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明化合物(I)は、抗菌活性、殊にMRSA及びVRE等の多剤耐性菌に対する抗菌活性を有する。よって、抗菌剤、殊に多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症治療剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

[式中、
R1は、ヒドロキシ基、アミノ基、置換基を有していてもよい複素環式基、式:−NH−Ra
(ここで、Raは置換基を有していてもよい低級アルキル基、または置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基である)で表わされる基、または式:
【化2】

(ここで、
R5は、ヒドロキシ基、アミノ基または式:
【化3】

(ここで、
X1は水素であり、
X2は、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環式基、または式:−NRb−ALK1−Rc
(ここで、Rbは水素または低級アルキル基、ALK1は低級アルキレン基、Rcは水素、ヒドロキシ基、カルボキシ基、低級アルコキシ基、アミノ低級アルコキシ置換低級アルコキシ基、アミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、アミノ置換ジ低級アルキルアミノ基、低級アルカノイルアミノ基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、アリール基、または置換基を有していてもよい複素環基式である)で表わされる基であるか、あるいは
X1およびX2は一緒になって、オキソ基または式:=N−O−ALK2−Rd
(ここで、ALK2は低級アルキレン基、Rdはジ低級アルキルアミノ基、カルボキシ基、置換基を有していてもよい複素環式基である)で表わされる基を形成する)で表わされる基である)で表わされる基であり、
R2は、水素、クロロアセチル基、または式:−CONReRf
(式中、Reは水素、または置換基を有していてもよい低級アルキル基であり、Rfは水素、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよい複素環式基、または式:−ALK3−Rg
(ここで、ALK3は置換基を有していてもよい低級アルキレン基であり、Rgはピリジルスルホニル基、シアノ基、カルボキシ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、低級アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基、アルケニルカルバモイル基、置換基を有していてもよいピリミジニルアミノ基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい複素環式基である)で表わされる基であるか、あるいは
ReおよびRfはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい複素環を形成する)
で表わされる基であり、
R3は、水素またはヒドロキシプロピル基であり、
R4は、水素、低級アルコキシカルボニル基またはクロロアセチル基である、
但し、1)X1が水素であり、X2がヒドロキシ基であり、R2が水素であるとき、あるいは
2)X1とX2が一緒になってオキソ基を形成し、R2が水素であるときは、
R3が水素であるか、またはR4が低級アルコキシカルボニル基またはクロロアセチル基である]
で表わされる化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
R2が式:−CONReRf
で表わされる基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R3がヒドロキシプロピル基であり、R4が水素である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項5】
抗菌剤である請求項4に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2008−115165(P2008−115165A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261069(P2007−261069)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(592086318)壽製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】