チオペプタイド化合物
【課題】 MRSA及びVRE等の多剤耐性菌に対しても良好な抗菌活性を有する新規化合物の提供。
【解決手段】 既知のチオペプタイド化合物QN3323−A物質の2位ならびに26位をオキシム化並びにアシル化した新規チオペプタイド化合物及びその塩は、良好な抗菌活性を有し、殊にMRSA及びVRE等の多剤耐性菌に優れた抗菌活性を有する。よって、医薬、特に抗菌剤、中でも多剤耐性菌感染症の予防・治療剤として有用である。
【解決手段】 既知のチオペプタイド化合物QN3323−A物質の2位ならびに26位をオキシム化並びにアシル化した新規チオペプタイド化合物及びその塩は、良好な抗菌活性を有し、殊にMRSA及びVRE等の多剤耐性菌に優れた抗菌活性を有する。よって、医薬、特に抗菌剤、中でも多剤耐性菌感染症の予防・治療剤として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なチオペプタイド化合物並びにそれらを有効成分として含有する医薬、殊にMRSAやVRE等の多剤耐性菌感染症治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物が生産する種々の抗生物質にはペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム等のβラクタム系抗生物質、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキタマイシン等のマクロライド抗生物質、カナマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン等のアミノグリコシド抗生物質等が良く知られている。これらの抗生物質、及びこれらを化学合成的手法により改良した化合物の中には、臨床上、非常に有効な抗菌剤として有効利用されているものが多々ある。
しかし、近年、これらの抗生物質に対して高い耐性度を有するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下、MRSAと略す)が臨床の場で多く出現し、社会的にも重大問題となっている。更に、1996年には、日本において、MRSAに対する治療薬として多用されてきたバンコマイシンに対して高い耐性度を有する腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌属、以下、VREと略す)の臨床からの分離が報告されている。他にも緑膿菌や肺炎桿菌等でも、種々の薬剤に対し高い耐性度を有する菌が出現している。これらの菌は多剤耐性菌と称され、近年、臨床の場で特に問題となってきており、多剤耐性菌に対して有効な抗生物質の開発が切望されている。
【0003】
チアゾールを環の構成成分として有する大環状化合物はチオペプタイド化合物と総称され、種々の化合物が報告されている。それらは、環の員数や環を構成する元素の違いに加え、チオシリンIのように単環式大環状構造を有する化合物や、グリコチオヘキシドα(Glycothiohexideα、J. Antibiotics 47: 894, 1994)のように三環式大環状構造を有する化合物など環構造の異なる化合物が報告されている。チオシリンI(ThiocillinI)、チオシリンII、マイクロコクシンP2(Micrococcin P2)、QN3323-A、QN3323-B及びQN3323-Y1は、下式に示されるように共通の単環式大環状構造を有する化合物であり、これらの化合物が抗MRSA活性及び抗VRE活性を有し、多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症治療剤として有用であることが報告されている(特許文献1)。
【0004】
【化4】
チオシリンI:AがCH-OH、RがH、R’がOH
チオシリンII:AがCH-OH、RがCH3、R’がOH
マイクロコクシンP2:AがC=O、RがH、R’がH
QN3323-A:AがC=O、RがH、R’がOH
QN3323-B:AがC=O、RがCH3、R’がOH
QN3323-Y1:AがCH-OH、RがH、R’がOH、但し*の二重結合がE型
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/072617号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今なお、十分な抗菌活性を有し、多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症の治療に有用な薬剤の創製が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、MRSA及びVRE等の多剤耐性菌を含む菌に対する抗菌活性を示す化合物の探索を鋭意行ったところ、上記特許文献1に報告されるQN-3323-A物質の2位並びに26位をそれぞれオキシム化並びにアシル化した誘導体が良好な抗菌活性、殊に抗MRSA活性及び抗VRE活性を有することを知見して、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記式(I)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩に関する。
【化5】
(式中の基は以下の意味を有する。
R1:置換基を有していてもよい低級アルキル、置換基を有していてもよい低級アルケニル、置換基を有していてもよい低級アルキニル、置換基を有していてもよいアリール、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
R2:-ALK-COORa、-ALK-(置換基を有していてもよいヘテロアリール)、-ALK-(置換基を有していてもよいアリール)又は-ALK-NRbRc、
ALK:低級アルキレン基、
Ra:H又は低級アルキル、
Rb及びRc:同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって、置換基を有していてもよい5乃至8員含窒素飽和環基を示す。以下同様。)
【0009】
また、本発明は、本発明化合物(I)の製造中間体として有用な、下記式(II)若しくは(III)で示されるチオペプタイド化合物又はその塩にも関する。
【化6】
【0010】
【化7】
【0011】
更に、本発明は、上記式(I)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬、抗菌剤、殊に、多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症治療剤にも関する。
【0012】
本発明の化合物(I)としては、好ましくは、以下の化合物である:
(1) R1が4-ジメチルアミノ-フェニル基、R2がカルボキシメチル基である化合物、
(2) R1が2-キノリル基、R2がカルボキシメチル基である化合物、
(3) R1が2-キノリル基、R2が2-モルホリノエチル基である化合物、
(4) R1が2-キノリル基、R2が2-ピリジルメチル基である化合物、
(5) R1が2-キノリル基、R2が2-ジメチルアミノエチル基である化合物、
(6) R1が2-キノリル基、R2が2-(4-メチルピペラジニル)エチル基である化合物、及び
(7) R1が2-キノリル基、R2が2-アミノエチル基である化合物。
【発明の効果】
【0013】
本発明化合物(I)は、抗菌活性、殊にMRSA及びVRE等の多剤耐性菌に対する抗菌活性を有する。よって、抗菌剤、殊に多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明化合物について更に説明する。
本明細書中、「低級」なる語は、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」としては、好ましくは炭素数1乃至4個のアルキル基であり、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル基及びtert−ブチル基である。「低級アルケニル」としては、好ましくは炭素数2乃至5個のアルケニル基であり、特に好ましくはビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル及び3−ブテニル基である。「低級アルキニル」としては、好ましくは炭素数2乃至5個のアルキニル基であり、特に好ましくは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル及び1−メチル−2−プロピニル基である。また、「低級アルキレン」としては、好ましくは炭素数1乃至3個のアルキレン基であり、特に好ましくは、メチレン、エチレン、及びトリメチレン基である。
【0015】
「アリール」としては、芳香族炭化水素環基を意味し、炭素数6乃至14個のアリール基が好ましく、より好ましくはフェニル及びナフチル基、特に好ましくはフェニル基である。
「ヘテロアリール」としては、「N、S及びOから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至6員単環ヘテロアリール」、並びにベンゼン環と若しくはヘテロアリール環同士が縮合した2乃至3環式ヘテロアリールが好ましい。「N、S及びOから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至6員単環ヘテロアリール」としては、N、S及びOから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至6員単環ヘテロアリールであり、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル及びトリアジニルが好ましい。2乃至3環式ヘテロアリールとしては、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、イミダゾピリジル、インドリジニル、カルバゾリル、ジベンゾフラニル及びジベンゾチエニル基が好ましい。更に好ましくは、窒素原子を1乃至3含有する単環若しくは2環式の6員ヘテロアリールであり、より好ましくは、ピリジル、ピリミジニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル及びキナゾリニル基、特に好ましくはキノリル基である。
【0016】
Rb及びRcが隣接する窒素原子と一体となって形成する「5乃至8員含窒素飽和複素環基」としては、少なくとも1つの窒素原子を有し、更にS及びOから選択されるヘテロ原子を有していてもよい単環飽和環基であり、好ましくは、ピペリジノ、モルホリノ、1−アゼパニル、1−ピペラジニル及び1−ピロリジニルが挙げられる。
「置換基を有していてもよいアリール」、「置換基を有していてもよいヘテロアリール」、「置換基を有していてもよい5乃至8員含窒素飽和環基」における置換基としては、好ましくは下記D群から選択される1〜5個の置換基である。
D群:低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環、NRdRe、ORd、COORd、ハロゲン原子、NO2及びCN(ここに、Rd及びReはH又は低級アルキル基を示す)。好ましくは、低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReである。
【0017】
「置換基を有していてもよい低級アルキル」、「置換基を有していてもよい低級アルケニル」、「置換基を有していてもよい低級アルキニル」における置換基としては、好ましくは、シクロアルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環、NRdRe、ORd、COORd、ハロゲン原子、NO2及びCNであり、更に好ましくは、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReである。
【0018】
本発明のチオペプタイド化合物(I)としては以下の化合物が好ましい。
(1)R1が、(a)低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい炭素数6乃至10個のアリール基、又は(b)低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい、窒素原子を1乃至3含有する単環若しくは2環式6員ヘテロアリール基であり、
R2が、(a)-ALK-COORa、(b)-ALK-(低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい、窒素原子を1乃至3含有する単環若しくは2環式6員ヘテロアリール)、(c)-ALK-(低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよいC6-10アリール)、又は(d)-ALK-NRbRc、(ここに、
Rb及びRcは、同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって5乃至8員含窒素飽和環基を形成し、当該5乃至8員含窒素飽和環基は、低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)である化合物。
(2)R1が、窒素原子を1乃至3含有する単環若しくは2環式6員ヘテロアリール基であり、R2が、-ALK-NRbRc、(ここに、Rb及びRcは、同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって、低級アルキル基で置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和環基)である化合物。
【0019】
(製造法)
本発明のチオペプタイド化合物(I)は、特許文献1に開示されるQN3323-A物質を原料として、その26位並びに2位をそれぞれアシル化並びにオキシム化することにより製造することができる。
【化8】
【0020】
第一工程(26位のアシル化)
26位の水酸基のアシル化は、常法により行うことができ、例えば、塩基性有機溶媒中、あるいは、塩基性触媒存在下適当な有機溶媒中、酸クロリド、酸ブロミド等の酸ハライド、或いは、対称酸無水物若しくはアシルハライド、スルホニルハライド等の種々の酸ハライドとの混合酸無水物を用いて、26位の水酸基を選択的にアシル化できる温和な反応条件を選択することによって行うことができる。具体的には、原料化合物であるQN3323-A物質を、ピリジン等の塩基性溶媒に溶解し、氷冷下でアシルクロリドを徐々に添加し、反応させることにより行うことができる。
第二工程(2位のオキシム化)
2位のオキシム化は、第一工程で得られた26位がアシル化された化合物(II)を、アルコール系溶媒及び/又はハロゲン化炭化水素系溶媒、好ましくは、メタノールと塩化メチレンの混合溶媒に溶解し、種々のヒドロキシルアミン塩酸塩とジイソプロピルエチルアミン、あるいはポリスチレン等のポリマーに担持したジイソプロピルエチルアミン(PS-DIEA)等の塩基存在下で生じるヒドロキシルアミンを反応させることによって製造することができる。オキシム化された本発明化合物は、オキシム構造に基づく異性体(E体、Z体)が存在する。所望により、当業者に公知の分離方法、例えばカラム等により各異性体に分離することができる。
【0021】
先に2位のオキシム化を行い化合物(III)を得てから、26位のアシル化を行い、化合物(I)を製造することもできる。
【化9】
【0022】
なお、原料化合物であるQN3323-A物質は、特許文献1に記載された方法により製造することができる。即ち、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305-8566))に受託番号FERM BP−7864号(寄託日2001年2月14日)として国際寄託されている本発明化合物生産能を有する菌株バチルス エスピー QN03323、もしくは、当該化合物の生産能を有するこの変異株を、栄養培地にて培養し、該化合物を蓄積させた培養物から常法によって精製することによって得られる。
【0023】
本発明化合物は、酸付加塩を形成する場合があり、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩が挙げられる。本発明化合物の塩は、通常の造塩処理を行うことにより得られる。
本発明のチオペプタイド化合物又はそれらの塩は、不斉炭素原子及び二重結合を有するので、これらに基づく光学異性体や幾何異性体等が存在する。本発明化合物はこれらの異性体の混合物又は単離されたものを包含する。更に、本発明は、チオペプタイド化合物又はそれらの塩の各種の水和物や溶媒和物及びこれらの結晶並びにその結晶多形の物質をも包含する。なお、本発明のチオペプタイド化合物(I)には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のOH等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0024】
本発明化合物(I)又はその製薬学的に許容される塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0025】
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商品名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1日当たり経口投与の場合、0.1〜1000 mg、非経口投与の場合、0.1〜500 mg程度が適当であり、これを1日に1回乃至複数回投与する。投与量は種々の条件で変動する。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に限定されるものではない。
なお、実施例の文中ならびに表中の略語は、Dat:物理化学的性状、ESI-MS:Electrospray ionization質量スペクトル、NMR:1H-NMR(DMSO-d6,TMS内部標準)、PS-DIEA:N,N-(ジイソプロピル)アミノエチルポリスチレン(ARGONAUT社製、capacity; 3.3mmol/g)、PS-PhCHO:ポリスチレンアルデヒド(ARGONAUT社製、capacity; 1.53mmol/g)、Rex:参考例化合物、及びEx:実施例化合物を、それぞれ示す。
【0027】
参考例1:
QN3323-A物質 1.9gをピリジン40mlに溶解し、氷冷下、4-ジメチルアミノベンゾイルクロリド6gを12回に分けて加えた。室温にて2時間攪拌後、メタノールを加えた。減圧濃縮後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-アセトニトリル-メタノール=20:10:1, クロロホルム-メタノール=10:1)にて精製し、QN3323-A物質の26位の水酸基が4-ジメチルアミノベンゾイルオキシ基に変換された化合物 237mgを黄色固体として得た。
参考例2:
参考例1と同様に処理して、QN3323-A物質の26位の水酸基が2-キノリルカルボニルオキシ基に変換された化合物を得た。
参考例3:
参考例1と同様に処理して、QN3323-A物質の26位の水酸基が2-ナフチルカルボニルオキシ基に変換された化合物を得た。
【0028】
上記参考例1並びに2の構造と物理化学的性状を表1に示す。
【表1】
【0029】
参考例4:
QN3323-A物質15.2gにメタノール260mlを加え、得られた懸濁液に2-ジメチルアミノエトキシルアミン塩酸塩3.5g、および、PS-DIEA(3.3mmol/g)33gより得られた2-ジメチルアミノエトキシルアミンを加え30分間攪拌した。反応液を濃縮し、残留物をクロロホルムに溶解後、重曹水、食塩水にて洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水し濃縮後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール)にて精製することにより、2位のカルボニルが2-ジメチルアミノエトキシイミノ基に変換された化合物をオキシムのE-Z体混合物として10.5g得た。
【0030】
【表2】
【0031】
実施例1:
参考例1で得られた化合物 36mgをメタノール6ml、塩化メチレン3mlの混合溶媒に溶解した。カルボキシメトキシルアミン1/2塩酸塩7mg、PS-DIEA(3.3mmol/g)21mgを加え30分間攪拌した。PS-PhCHO(1.53mmol/g)46mgを加え、さらに30分間攪拌した。反応液をろ過し、ろ液を濃縮した。残留物にジエチルエーテルを加え攪拌後、ろ過することにより、2位のカルボニルが、カルボキシメトキシイミノ基に変換された化合物をオキシムのE-Z体混合物として31mg得た(オキシムのE-Z比は約2:1)。
実施例2:
参考例2で得られた化合物 46mgより、実施例1と同様にしてオキシム化反応に付し、得られた生成物をメタノール10mlに溶解し、0.5規定塩酸水0.5mlを加えて1時間攪拌した後、濃縮した。残留物にジエチルエーテルを加え攪拌後、ろ過することによりオキシム化合物塩酸塩をオキシムのE-Z体混合物として46mg得た(オキシムのE-Z比は約2:1)。
実施例3〜14:
実施例1と同様にして、後記表3及び4に示される実施例3及び6〜14の化合物を、また、実施例2と同様にして実施例4ならびに5の化合物をそれぞれ得た。
実施例化合物の構造と物理化学的性状を表3ならびに表4に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
実施例8:
実施例5で得られた化合物 90mgを山善パラレルプレップ(クロロホルム:(90%メタノール水)=8:0-8:1)で、各異性体に分離した。TLCで上のスポットである異性体をプレパラティブTLC(クロロホルム:メタノール:水=8:1:0.1)でさらに精製し水洗乾燥後、白色粉末として34.8mgのE体を得た(NMR:図10参照)。他方は山善パラレルプレップ(クロロホルム:(90%メタノール水)=8:0-8:1)、さらにプレパラティブTLC(クロロホルム:メタノール:水=8:1:0.1)で精製して水洗乾燥後、白色粉末としてZ体9.0mgを得た(NMR:図11参照)。
【0035】
実施例9: 抗菌活性
本発明の実施例化合物、並びに比較化合物としてチオシリンIとバンコマイシン(VCM)について、スタフィロコッカス アウレウス FDA209P (Staphylococcus aureus FDA209P)、スタフィロコッカス アウレウス スミス(Staphylococcus aureus Smith)、スタフィロコッカス エピデルミディス IID866 (Staphylococcus epidermidis IID866)、ストレプトコッカス ピオゲネス Cook (Streptoccus pyogenes Cook)、エンテロコッカス フェカリス IID682 (Enterococcus faecalis IID682)及びエンテロコッカス フェシウム CAY09-1 (Enterococcus faecium CAY09-1)、並びに、耐性菌であるスタフィロコッカス アウレウス CAY27701(MRSA) (Staphylococcus aureus CAY27701), スタフィロコッカス エピデルミディス CAY7402(MRSE) (Staphylococcus epidermidis CAY7402)及びエンテロコッカス フェシウム CAY09-2 (VRE) (Enterococcus faecium CAY09-2) に対する最小発育阻止濃度(MIC)を日本化学療法学会標準法に準じて測定を行った(CHEMOTHERAPY 1981年29 (1):76 最小発育阻止濃度(MIC)測定法再改訂について)。但し、S. aureus CAY27701は32℃で培養した。測定の結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
実施例10
MRSA感染モデル(モルモット)に対する治療効果
本発明化合物のMRSA CAY21701感染モルモットを用いて、MRSA感染モデルに対する治療効果を測定した。すなわち、32℃で終夜培養したスタフィロコッカス アウレウス CAY21701(Staphylococcus aureus CAY21701)株を5%ブタムチン(東京化成)含有液体培地に懸濁し、雄性ハートレー系 4週令モルモット(日本エスエルシー、SPF)の腹腔内に感染させた(約1 x108 CFU/モルモット)。次いで、10% DMSO,10% HCO-60(日光ケミカルズ株式会社)を含有する5%ニコチン酸アミド溶液に溶解した本発明化合物を、感染1時間後に静脈内投与した。 治療後7日目の観察結果を用いて、probit法によりED50値を算出した。測定の結果を表6に示す。本発明の新規チオペプタイド化合物はバンコマイシンに比して優れた治療効果を示した。
【0038】
【表6】
以上の様に、本発明の新規チオペプタイド化合物(I)は、MRSA及びVRE等の多剤耐性菌を含む多くの菌に良好なMICを有しており、しかも殺菌力が強いことから、医薬、特に抗菌剤、中でも多剤耐性菌感染症の予防・治療剤として有用であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】参考例1で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図2】参考例2で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例2で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例3で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例4で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例5で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例6で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図9】実施例7で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例8で得られたE体の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図11】実施例8で得られたZ体の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なチオペプタイド化合物並びにそれらを有効成分として含有する医薬、殊にMRSAやVRE等の多剤耐性菌感染症治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物が生産する種々の抗生物質にはペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム等のβラクタム系抗生物質、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキタマイシン等のマクロライド抗生物質、カナマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン等のアミノグリコシド抗生物質等が良く知られている。これらの抗生物質、及びこれらを化学合成的手法により改良した化合物の中には、臨床上、非常に有効な抗菌剤として有効利用されているものが多々ある。
しかし、近年、これらの抗生物質に対して高い耐性度を有するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下、MRSAと略す)が臨床の場で多く出現し、社会的にも重大問題となっている。更に、1996年には、日本において、MRSAに対する治療薬として多用されてきたバンコマイシンに対して高い耐性度を有する腸球菌(バンコマイシン耐性腸球菌属、以下、VREと略す)の臨床からの分離が報告されている。他にも緑膿菌や肺炎桿菌等でも、種々の薬剤に対し高い耐性度を有する菌が出現している。これらの菌は多剤耐性菌と称され、近年、臨床の場で特に問題となってきており、多剤耐性菌に対して有効な抗生物質の開発が切望されている。
【0003】
チアゾールを環の構成成分として有する大環状化合物はチオペプタイド化合物と総称され、種々の化合物が報告されている。それらは、環の員数や環を構成する元素の違いに加え、チオシリンIのように単環式大環状構造を有する化合物や、グリコチオヘキシドα(Glycothiohexideα、J. Antibiotics 47: 894, 1994)のように三環式大環状構造を有する化合物など環構造の異なる化合物が報告されている。チオシリンI(ThiocillinI)、チオシリンII、マイクロコクシンP2(Micrococcin P2)、QN3323-A、QN3323-B及びQN3323-Y1は、下式に示されるように共通の単環式大環状構造を有する化合物であり、これらの化合物が抗MRSA活性及び抗VRE活性を有し、多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症治療剤として有用であることが報告されている(特許文献1)。
【0004】
【化4】
チオシリンI:AがCH-OH、RがH、R’がOH
チオシリンII:AがCH-OH、RがCH3、R’がOH
マイクロコクシンP2:AがC=O、RがH、R’がH
QN3323-A:AがC=O、RがH、R’がOH
QN3323-B:AがC=O、RがCH3、R’がOH
QN3323-Y1:AがCH-OH、RがH、R’がOH、但し*の二重結合がE型
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/072617号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今なお、十分な抗菌活性を有し、多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症の治療に有用な薬剤の創製が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、MRSA及びVRE等の多剤耐性菌を含む菌に対する抗菌活性を示す化合物の探索を鋭意行ったところ、上記特許文献1に報告されるQN-3323-A物質の2位並びに26位をそれぞれオキシム化並びにアシル化した誘導体が良好な抗菌活性、殊に抗MRSA活性及び抗VRE活性を有することを知見して、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記式(I)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩に関する。
【化5】
(式中の基は以下の意味を有する。
R1:置換基を有していてもよい低級アルキル、置換基を有していてもよい低級アルケニル、置換基を有していてもよい低級アルキニル、置換基を有していてもよいアリール、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
R2:-ALK-COORa、-ALK-(置換基を有していてもよいヘテロアリール)、-ALK-(置換基を有していてもよいアリール)又は-ALK-NRbRc、
ALK:低級アルキレン基、
Ra:H又は低級アルキル、
Rb及びRc:同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって、置換基を有していてもよい5乃至8員含窒素飽和環基を示す。以下同様。)
【0009】
また、本発明は、本発明化合物(I)の製造中間体として有用な、下記式(II)若しくは(III)で示されるチオペプタイド化合物又はその塩にも関する。
【化6】
【0010】
【化7】
【0011】
更に、本発明は、上記式(I)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬、抗菌剤、殊に、多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症治療剤にも関する。
【0012】
本発明の化合物(I)としては、好ましくは、以下の化合物である:
(1) R1が4-ジメチルアミノ-フェニル基、R2がカルボキシメチル基である化合物、
(2) R1が2-キノリル基、R2がカルボキシメチル基である化合物、
(3) R1が2-キノリル基、R2が2-モルホリノエチル基である化合物、
(4) R1が2-キノリル基、R2が2-ピリジルメチル基である化合物、
(5) R1が2-キノリル基、R2が2-ジメチルアミノエチル基である化合物、
(6) R1が2-キノリル基、R2が2-(4-メチルピペラジニル)エチル基である化合物、及び
(7) R1が2-キノリル基、R2が2-アミノエチル基である化合物。
【発明の効果】
【0013】
本発明化合物(I)は、抗菌活性、殊にMRSA及びVRE等の多剤耐性菌に対する抗菌活性を有する。よって、抗菌剤、殊に多剤耐性菌感染症治療剤、特にMRSA又はVRE感染症治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明化合物について更に説明する。
本明細書中、「低級」なる語は、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」としては、好ましくは炭素数1乃至4個のアルキル基であり、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル基及びtert−ブチル基である。「低級アルケニル」としては、好ましくは炭素数2乃至5個のアルケニル基であり、特に好ましくはビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル及び3−ブテニル基である。「低級アルキニル」としては、好ましくは炭素数2乃至5個のアルキニル基であり、特に好ましくは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル及び1−メチル−2−プロピニル基である。また、「低級アルキレン」としては、好ましくは炭素数1乃至3個のアルキレン基であり、特に好ましくは、メチレン、エチレン、及びトリメチレン基である。
【0015】
「アリール」としては、芳香族炭化水素環基を意味し、炭素数6乃至14個のアリール基が好ましく、より好ましくはフェニル及びナフチル基、特に好ましくはフェニル基である。
「ヘテロアリール」としては、「N、S及びOから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至6員単環ヘテロアリール」、並びにベンゼン環と若しくはヘテロアリール環同士が縮合した2乃至3環式ヘテロアリールが好ましい。「N、S及びOから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至6員単環ヘテロアリール」としては、N、S及びOから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至6員単環ヘテロアリールであり、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル及びトリアジニルが好ましい。2乃至3環式ヘテロアリールとしては、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、イミダゾピリジル、インドリジニル、カルバゾリル、ジベンゾフラニル及びジベンゾチエニル基が好ましい。更に好ましくは、窒素原子を1乃至3含有する単環若しくは2環式の6員ヘテロアリールであり、より好ましくは、ピリジル、ピリミジニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル及びキナゾリニル基、特に好ましくはキノリル基である。
【0016】
Rb及びRcが隣接する窒素原子と一体となって形成する「5乃至8員含窒素飽和複素環基」としては、少なくとも1つの窒素原子を有し、更にS及びOから選択されるヘテロ原子を有していてもよい単環飽和環基であり、好ましくは、ピペリジノ、モルホリノ、1−アゼパニル、1−ピペラジニル及び1−ピロリジニルが挙げられる。
「置換基を有していてもよいアリール」、「置換基を有していてもよいヘテロアリール」、「置換基を有していてもよい5乃至8員含窒素飽和環基」における置換基としては、好ましくは下記D群から選択される1〜5個の置換基である。
D群:低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環、NRdRe、ORd、COORd、ハロゲン原子、NO2及びCN(ここに、Rd及びReはH又は低級アルキル基を示す)。好ましくは、低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReである。
【0017】
「置換基を有していてもよい低級アルキル」、「置換基を有していてもよい低級アルケニル」、「置換基を有していてもよい低級アルキニル」における置換基としては、好ましくは、シクロアルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環、NRdRe、ORd、COORd、ハロゲン原子、NO2及びCNであり、更に好ましくは、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReである。
【0018】
本発明のチオペプタイド化合物(I)としては以下の化合物が好ましい。
(1)R1が、(a)低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい炭素数6乃至10個のアリール基、又は(b)低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい、窒素原子を1乃至3含有する単環若しくは2環式6員ヘテロアリール基であり、
R2が、(a)-ALK-COORa、(b)-ALK-(低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい、窒素原子を1乃至3含有する単環若しくは2環式6員ヘテロアリール)、(c)-ALK-(低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよいC6-10アリール)、又は(d)-ALK-NRbRc、(ここに、
Rb及びRcは、同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって5乃至8員含窒素飽和環基を形成し、当該5乃至8員含窒素飽和環基は、低級アルキル、低級アルキルで置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和複素環及びNRdReからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)である化合物。
(2)R1が、窒素原子を1乃至3含有する単環若しくは2環式6員ヘテロアリール基であり、R2が、-ALK-NRbRc、(ここに、Rb及びRcは、同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって、低級アルキル基で置換されていてもよい5乃至8員含窒素飽和環基)である化合物。
【0019】
(製造法)
本発明のチオペプタイド化合物(I)は、特許文献1に開示されるQN3323-A物質を原料として、その26位並びに2位をそれぞれアシル化並びにオキシム化することにより製造することができる。
【化8】
【0020】
第一工程(26位のアシル化)
26位の水酸基のアシル化は、常法により行うことができ、例えば、塩基性有機溶媒中、あるいは、塩基性触媒存在下適当な有機溶媒中、酸クロリド、酸ブロミド等の酸ハライド、或いは、対称酸無水物若しくはアシルハライド、スルホニルハライド等の種々の酸ハライドとの混合酸無水物を用いて、26位の水酸基を選択的にアシル化できる温和な反応条件を選択することによって行うことができる。具体的には、原料化合物であるQN3323-A物質を、ピリジン等の塩基性溶媒に溶解し、氷冷下でアシルクロリドを徐々に添加し、反応させることにより行うことができる。
第二工程(2位のオキシム化)
2位のオキシム化は、第一工程で得られた26位がアシル化された化合物(II)を、アルコール系溶媒及び/又はハロゲン化炭化水素系溶媒、好ましくは、メタノールと塩化メチレンの混合溶媒に溶解し、種々のヒドロキシルアミン塩酸塩とジイソプロピルエチルアミン、あるいはポリスチレン等のポリマーに担持したジイソプロピルエチルアミン(PS-DIEA)等の塩基存在下で生じるヒドロキシルアミンを反応させることによって製造することができる。オキシム化された本発明化合物は、オキシム構造に基づく異性体(E体、Z体)が存在する。所望により、当業者に公知の分離方法、例えばカラム等により各異性体に分離することができる。
【0021】
先に2位のオキシム化を行い化合物(III)を得てから、26位のアシル化を行い、化合物(I)を製造することもできる。
【化9】
【0022】
なお、原料化合物であるQN3323-A物質は、特許文献1に記載された方法により製造することができる。即ち、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305-8566))に受託番号FERM BP−7864号(寄託日2001年2月14日)として国際寄託されている本発明化合物生産能を有する菌株バチルス エスピー QN03323、もしくは、当該化合物の生産能を有するこの変異株を、栄養培地にて培養し、該化合物を蓄積させた培養物から常法によって精製することによって得られる。
【0023】
本発明化合物は、酸付加塩を形成する場合があり、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩が挙げられる。本発明化合物の塩は、通常の造塩処理を行うことにより得られる。
本発明のチオペプタイド化合物又はそれらの塩は、不斉炭素原子及び二重結合を有するので、これらに基づく光学異性体や幾何異性体等が存在する。本発明化合物はこれらの異性体の混合物又は単離されたものを包含する。更に、本発明は、チオペプタイド化合物又はそれらの塩の各種の水和物や溶媒和物及びこれらの結晶並びにその結晶多形の物質をも包含する。なお、本発明のチオペプタイド化合物(I)には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のOH等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0024】
本発明化合物(I)又はその製薬学的に許容される塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0025】
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商品名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人1日当たり経口投与の場合、0.1〜1000 mg、非経口投与の場合、0.1〜500 mg程度が適当であり、これを1日に1回乃至複数回投与する。投与量は種々の条件で変動する。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に限定されるものではない。
なお、実施例の文中ならびに表中の略語は、Dat:物理化学的性状、ESI-MS:Electrospray ionization質量スペクトル、NMR:1H-NMR(DMSO-d6,TMS内部標準)、PS-DIEA:N,N-(ジイソプロピル)アミノエチルポリスチレン(ARGONAUT社製、capacity; 3.3mmol/g)、PS-PhCHO:ポリスチレンアルデヒド(ARGONAUT社製、capacity; 1.53mmol/g)、Rex:参考例化合物、及びEx:実施例化合物を、それぞれ示す。
【0027】
参考例1:
QN3323-A物質 1.9gをピリジン40mlに溶解し、氷冷下、4-ジメチルアミノベンゾイルクロリド6gを12回に分けて加えた。室温にて2時間攪拌後、メタノールを加えた。減圧濃縮後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-アセトニトリル-メタノール=20:10:1, クロロホルム-メタノール=10:1)にて精製し、QN3323-A物質の26位の水酸基が4-ジメチルアミノベンゾイルオキシ基に変換された化合物 237mgを黄色固体として得た。
参考例2:
参考例1と同様に処理して、QN3323-A物質の26位の水酸基が2-キノリルカルボニルオキシ基に変換された化合物を得た。
参考例3:
参考例1と同様に処理して、QN3323-A物質の26位の水酸基が2-ナフチルカルボニルオキシ基に変換された化合物を得た。
【0028】
上記参考例1並びに2の構造と物理化学的性状を表1に示す。
【表1】
【0029】
参考例4:
QN3323-A物質15.2gにメタノール260mlを加え、得られた懸濁液に2-ジメチルアミノエトキシルアミン塩酸塩3.5g、および、PS-DIEA(3.3mmol/g)33gより得られた2-ジメチルアミノエトキシルアミンを加え30分間攪拌した。反応液を濃縮し、残留物をクロロホルムに溶解後、重曹水、食塩水にて洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水し濃縮後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール)にて精製することにより、2位のカルボニルが2-ジメチルアミノエトキシイミノ基に変換された化合物をオキシムのE-Z体混合物として10.5g得た。
【0030】
【表2】
【0031】
実施例1:
参考例1で得られた化合物 36mgをメタノール6ml、塩化メチレン3mlの混合溶媒に溶解した。カルボキシメトキシルアミン1/2塩酸塩7mg、PS-DIEA(3.3mmol/g)21mgを加え30分間攪拌した。PS-PhCHO(1.53mmol/g)46mgを加え、さらに30分間攪拌した。反応液をろ過し、ろ液を濃縮した。残留物にジエチルエーテルを加え攪拌後、ろ過することにより、2位のカルボニルが、カルボキシメトキシイミノ基に変換された化合物をオキシムのE-Z体混合物として31mg得た(オキシムのE-Z比は約2:1)。
実施例2:
参考例2で得られた化合物 46mgより、実施例1と同様にしてオキシム化反応に付し、得られた生成物をメタノール10mlに溶解し、0.5規定塩酸水0.5mlを加えて1時間攪拌した後、濃縮した。残留物にジエチルエーテルを加え攪拌後、ろ過することによりオキシム化合物塩酸塩をオキシムのE-Z体混合物として46mg得た(オキシムのE-Z比は約2:1)。
実施例3〜14:
実施例1と同様にして、後記表3及び4に示される実施例3及び6〜14の化合物を、また、実施例2と同様にして実施例4ならびに5の化合物をそれぞれ得た。
実施例化合物の構造と物理化学的性状を表3ならびに表4に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
実施例8:
実施例5で得られた化合物 90mgを山善パラレルプレップ(クロロホルム:(90%メタノール水)=8:0-8:1)で、各異性体に分離した。TLCで上のスポットである異性体をプレパラティブTLC(クロロホルム:メタノール:水=8:1:0.1)でさらに精製し水洗乾燥後、白色粉末として34.8mgのE体を得た(NMR:図10参照)。他方は山善パラレルプレップ(クロロホルム:(90%メタノール水)=8:0-8:1)、さらにプレパラティブTLC(クロロホルム:メタノール:水=8:1:0.1)で精製して水洗乾燥後、白色粉末としてZ体9.0mgを得た(NMR:図11参照)。
【0035】
実施例9: 抗菌活性
本発明の実施例化合物、並びに比較化合物としてチオシリンIとバンコマイシン(VCM)について、スタフィロコッカス アウレウス FDA209P (Staphylococcus aureus FDA209P)、スタフィロコッカス アウレウス スミス(Staphylococcus aureus Smith)、スタフィロコッカス エピデルミディス IID866 (Staphylococcus epidermidis IID866)、ストレプトコッカス ピオゲネス Cook (Streptoccus pyogenes Cook)、エンテロコッカス フェカリス IID682 (Enterococcus faecalis IID682)及びエンテロコッカス フェシウム CAY09-1 (Enterococcus faecium CAY09-1)、並びに、耐性菌であるスタフィロコッカス アウレウス CAY27701(MRSA) (Staphylococcus aureus CAY27701), スタフィロコッカス エピデルミディス CAY7402(MRSE) (Staphylococcus epidermidis CAY7402)及びエンテロコッカス フェシウム CAY09-2 (VRE) (Enterococcus faecium CAY09-2) に対する最小発育阻止濃度(MIC)を日本化学療法学会標準法に準じて測定を行った(CHEMOTHERAPY 1981年29 (1):76 最小発育阻止濃度(MIC)測定法再改訂について)。但し、S. aureus CAY27701は32℃で培養した。測定の結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
実施例10
MRSA感染モデル(モルモット)に対する治療効果
本発明化合物のMRSA CAY21701感染モルモットを用いて、MRSA感染モデルに対する治療効果を測定した。すなわち、32℃で終夜培養したスタフィロコッカス アウレウス CAY21701(Staphylococcus aureus CAY21701)株を5%ブタムチン(東京化成)含有液体培地に懸濁し、雄性ハートレー系 4週令モルモット(日本エスエルシー、SPF)の腹腔内に感染させた(約1 x108 CFU/モルモット)。次いで、10% DMSO,10% HCO-60(日光ケミカルズ株式会社)を含有する5%ニコチン酸アミド溶液に溶解した本発明化合物を、感染1時間後に静脈内投与した。 治療後7日目の観察結果を用いて、probit法によりED50値を算出した。測定の結果を表6に示す。本発明の新規チオペプタイド化合物はバンコマイシンに比して優れた治療効果を示した。
【0038】
【表6】
以上の様に、本発明の新規チオペプタイド化合物(I)は、MRSA及びVRE等の多剤耐性菌を含む多くの菌に良好なMICを有しており、しかも殺菌力が強いことから、医薬、特に抗菌剤、中でも多剤耐性菌感染症の予防・治療剤として有用であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】参考例1で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図2】参考例2で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例2で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例3で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例4で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例5で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例6で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図9】実施例7で得られた化合物の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例8で得られたE体の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図11】実施例8で得られたZ体の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中の基は以下の意味を有する。
R1:置換基を有していてもよい低級アルキル、置換基を有していてもよい低級アルケニル、置換基を有していてもよい低級アルキニル、置換基を有していてもよいアリール、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
R2:-ALK-COORa、-ALK-(置換基を有していてもよいヘテロアリール)、-ALK-(置換基を有していてもよいアリール)又は-ALK-NRbRc、
ALK:低級アルキレン基、
Ra:H又は低級アルキル、
Rb及びRc:同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって、置換基を有していてもよい5乃至8員含窒素飽和環基を示す。)
【請求項2】
下記式(II)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化2】
(式中、R1は置換基を有していてもよい低級アルキル、置換基を有していてもよい低級アルケニル、置換基を有していてもよい低級アルキニル、置換基を有していてもよいアリール、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)
【請求項3】
下記式(III)で示されるチオペプタイド化合物又はその塩。
【化3】
(式中の基は以下の意味を有する。
R2:-ALK-COORa、-ALK-(置換基を有していてもよいヘテロアリール)、-ALK-(置換基を有していてもよいアリール)又は-ALK-NRbRc、
ALK:低級アルキレン基、
Ra:H又は低級アルキル、
Rb及びRc:同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって、置換基を有していてもよい5乃至8員含窒素飽和環基を示す。)
【請求項1】
下記式(I)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中の基は以下の意味を有する。
R1:置換基を有していてもよい低級アルキル、置換基を有していてもよい低級アルケニル、置換基を有していてもよい低級アルキニル、置換基を有していてもよいアリール、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
R2:-ALK-COORa、-ALK-(置換基を有していてもよいヘテロアリール)、-ALK-(置換基を有していてもよいアリール)又は-ALK-NRbRc、
ALK:低級アルキレン基、
Ra:H又は低級アルキル、
Rb及びRc:同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって、置換基を有していてもよい5乃至8員含窒素飽和環基を示す。)
【請求項2】
下記式(II)で示されるチオペプタイド化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化2】
(式中、R1は置換基を有していてもよい低級アルキル、置換基を有していてもよい低級アルケニル、置換基を有していてもよい低級アルキニル、置換基を有していてもよいアリール、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)
【請求項3】
下記式(III)で示されるチオペプタイド化合物又はその塩。
【化3】
(式中の基は以下の意味を有する。
R2:-ALK-COORa、-ALK-(置換基を有していてもよいヘテロアリール)、-ALK-(置換基を有していてもよいアリール)又は-ALK-NRbRc、
ALK:低級アルキレン基、
Ra:H又は低級アルキル、
Rb及びRc:同一又は異なって、H又は低級アルキルであるか、又は隣接する窒素原子と一体となって、置換基を有していてもよい5乃至8員含窒素飽和環基を示す。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−18991(P2009−18991A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310384(P2005−310384)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]