説明

チオモリブデン酸類似物及びそれらの使用

本発明は、新規チオモリブデン酸塩類似物、新規チオモリブデン酸塩誘導体、新規モリブデン酸塩誘導体の医薬組成物、新規モリブデン酸塩誘導体を使用して、異常血管新生、銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満症またはNF-κB調節障害に関連する疾患を治療する方法及びチオモリブデン酸塩誘導体の医薬組成物を使用して、異常血管新生、銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満症またはNF-κB調節障害に関連する疾患を治療する方法に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規チオモリブデン酸塩誘導体、新規チオモリブデン酸塩誘導体、新規モリブデン酸塩誘導体の医薬組成物を調製する方法、並びに新規モリブデン酸塩誘導体及び新規チオモリブデン酸塩誘導体の医薬組成物を使用して、異常血管新生、銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満症又はNF-κB調節障害に関連する疾患を治療する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ガンの大部分の形態は、モノクローナル抗体及び免疫毒素を使用するなどの療法に対して臨床的に耐性の固形腫瘍(Shockleyら、Ann. N.Y. Acad. Sci. 1991,vol.617:pp.367〜382)に由来する。ガンを治療するための抗血管形成療法は、固形腫瘍が持続的に増殖するためには血管形成(即ち、新たな血管の形成)が必要になるとの認識から発展してきた(Folkman, Ann. Surg. 1972, Vol.175: pp.409〜416; Folkman, Mol. Med. 1995, Vol.1 (No.2): pp.120〜122; Folkman, Breast Cancer Res. Treat. 1995, Vol.36 (No.2): pp.109〜118; Hanahanら、Cell 1996, Vol.86 (No.3): pp.353〜364)。動物モデルにおける抗血管形成療法の効率が明らかにされてきた(Millauerら、Cancer Res. 1996, Vol.56: pp.1615〜1620; Borgstromら、Prostrate 1998, Vol.35: pp.1〜10; Benjaminら、J. Clin. Invest. 1999, Vol.103: pp.159〜165; Merajverら、Proceedings of Special AACR Conference on Angiogenesis and Cancer 1998、アプストラクト #B-11、1月号 pp.22〜24)。血管形成の不在下で、固形腫瘍の内部細胞層には栄養が不十分に与えられている。更に、血管形成(即ち、異常血管新生)は多くの他の疾患(例えば、眼の血管新生疾患、筋変性、リューマチ性関節炎)に関わっている。更に最近、血管形成阻害は、動物モデルにおける脂肪組織減少及び体重の減少に直接関わっており、それは抗血管形成療法が肥満の予防に有用でありうることを示唆する(Rupnickら、Proc.Natl.Acad.Sci.2002、vol.99:pp.10730〜10735)。
【0003】
対照的に、正常な組織は特殊化した状況(例えば、傷の治癒、月経周期の間の子宮内膜の増殖など)を除いては血管新生を必要としない。従って、血管形成の必要は、腫瘍細胞と正常細胞の間での有意な違いである。重要なことは、血管形成に対する腫瘍細胞の依存性は、正常細胞と比較した場合、正常組織と腫瘍組織の間での細胞複製及び細胞死における違いよりも量的に大きく、そのことはガン治療において往々にして有効に使用されている。
【0004】
血管形成には、多くの腫瘍研究(Parkeら、Am. J. Pathol. 1988, Vol.137: pp.173〜178; Rajuら、Natl. Cancer Inst. 1982, Vol.69: pp.1183〜1188; Zicheら、Natl. Cancer Inst. 1982, 69: 475〜482; Gullino, Anticancer Res. 1986, Vol.6 (No.2): pp.153〜158)によって証明されているように、銅が必要となる。in vivoで銅の量を減らすことにより動物モデルにおいて血管形成を予防し且つそれ故に腫瘍増殖を予防する試みが当業界で報じられている(Bremら、Neurosurgery 1990, Vol.26: pp.391〜396; Bremら、Am. J. Pathol. 1990, Vol.137 (No.5): pp.1121〜1142; Yoshidaら、Neurosurgery 1995 Vol.37 (No.2): pp.287〜295)。これらの方法は、銅キレート物質及び低銅食事の療法の両方を組み込んだ。更に最近、Brewerら、国際出願番号PCT/US99/20374は、銅キレート物質(例えば、テトラチオモリブデン酸塩)は、血管形成を必要とする疾患(例えば、固形腫瘍増殖)を治療することにおいて有効でありうることを示している。
【0005】
血管形成の誘導に加えて、銅は腫瘍細胞の増殖及び生存における直接的な役割をも有しうる。多くの様々な固形ガンを伴う患者に由来する血しょう中及び腫瘍組織中の両方に銅が高いレベルで存在する(Chakravartyら、J.Cancer Res.Clin.Oncol.1984、vol.:pp.312〜315)。最近、テトラチオモリブデン酸塩は、炎症性乳ガン細胞系統SUM149においてNF-κBの発現を下方制御し、並びにその核への移動を阻害することが示されている(Panら、Cancder Res. 2002、vol.62:pp.4854〜4859)。このNF-κBシステムは腫瘍細胞生存に介在し、従って、腫瘍細胞中でのその発現の、チオモリブデン酸塩による下方制御は、腫瘍生存に対する銅キレートの直接効果を示唆する。
【0006】
従って、銅キレート物質である新規チオモリブデン酸塩化合物は、血管形成を治療及び/または予防すること並びに腫瘍細胞生存可能性を減少せしめることにおいて、銅キレート物質の可能性を十分に活用するために必要となる。かかる新規チオモリブデン酸塩化合物は、ガン、銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満症に関連する様々な疾患を治療すること並びにNF-κB経路が調節障害されている炎症性疾患などの疾患を治療することにおいて有効でありうる。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、新規チオモリブデン酸塩誘導体、新規チオモリブデン酸塩誘導体、新規モリブデン酸塩誘導体の医薬組成物を調製する方法、新規チオモリブデン酸塩誘導体及びチオモリブデン酸塩誘導体の医薬組成物を使用して、異常血管新生、銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満症又はNF-κB調節障害に関連する疾患を治療する方法を提供することによって、これら及び他の要請を満たす。
【0008】
第1観点において、本発明は、構造式(I):
【化1】

(式中、
R1、R2、R3、R5、R6及びR7は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロへテロアルキル、置換されたシクロへテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアルキル又は置換されたヘテロアルキルであり;
R4及びR8は、独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロへテロアルキル、置換されたシクロへテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアルキル又は置換されたヘテロアルキルであるかあるいはNが芳香環の一部である場合不在であり;
任意に、R1とR2は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R5とR6は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R1とR2は一緒に、R2とR3は一緒に、そしてR2とR4は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R5とR6は一緒に、R6とR7は一緒に、そしてR6とR8は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R3とR7は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;そして
Y-2が(MoS4-2、(Mo2S12-2、(Mo2S9-2、(Mo2S7-2、(Mo2S8-2、(Mo2S11-2、(Mo2S6-2又は(Mo2S13-2であり;
但し、Yが(MoS4-2であり、そしてR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同一であれば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の各々は水素、メチル、エチル又はn−プロピルではない)
の化合物又はそれらの溶媒和物もしくは水和物もしくはN酸化物を提供する。
【0009】
第2の観点において、本発明は、新規チオモリブデン酸塩誘導体の医薬組成物を提供する。この医薬組成物は一般に、それらの1又は複数のチオモリブデン酸塩誘導体、水和物、溶媒和物又はN酸化物並びに医薬的に許容できる希釈剤、担体、賦形剤及びアジュバントを含んで成る。希釈剤、担体、賦形剤及びアジュバントの選択は、とりわけ他の因子でも、所望された投与の態様に依存するだろう。
【0010】
第3の観点において、本発明は異常血管新生、銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満症もしくはNF-κB調節障害を特徴と疾患を治療もしくは予防する方法を供する。この方法は一般に、かかる治療もしくは予防を必要とする患者に対して治療上有効な量の新規モリブデン酸塩誘導体及び/もしくはその医薬組成物を投与することを伴う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
定義
「本発明の化合物」とは、本明細書中に開示された構造式(I)によって包含された化合物を意味し、そして構造が本明細書中で開示されている一般式の中にある全ての特定の化合物を含む。本発明の化合物は、それらの化学構造及び/又は化学名のいずれかによって同定されて良い。化学構造と化学名が一致しない場合、化学構造が化合物を同定するための手がかりである。本発明の化合物は、1又は複数のキラル中心及び/もしくは二重結合を含んで良く、故に立体異性体の例えば、二重結合異性体(即ち、幾何異性体)として、エナンチオマー又はジアステレオマーとして存在して良い。従って、本明細書中で記載された化学構造は、例示された化合物の全ての考えられるエナンチオマー及び立体異性体、例えば立体異性体として純粋な形態(例えば、幾何学的に純粋、エナンチオマーとして純粋又はジアステレオマーとして純粋)及びエナンチオマー混合物及び立体異性体混合物などを包含する。本発明の化合物は、いくつかの互変異性形態においても存在して良い。従って、本明細書中で記載された化学構造は、例示された化合物の全ての考えられる互変異性形態を網羅する。本発明の化合物は、通常1又は複数の原子が天然で発見される原子集団とは異なる原子集団を有する同位体標識された化合物をも含む。本発明の化合物中に組み込まれて良い同位体の例としては、2H、3H、13C、14C、15C、17C、18Cなどが挙げられるが、それらに限定されない。本発明の化合物は非溶媒和形態並びに溶媒和形態、例えば、水和した形態及びN酸化物として存在して良い。一般に、水和した、溶媒和した、そしてN酸化物の形態は本発明の範囲内である。本発明の所定の化合物は多数の結晶質又は非晶質形態として存在しうる。一般に、全ての物理的形態は、本発明において熟考された使用のために同等であり、そして本発明の範囲内である。更に、本発明の化合物の部分構造が例示される場合、[]は部分構造を、残りの分子に対して加える点を示していると解されるべきである。
【0012】
「アルキル」とは、それ自身もしくは他の置換基の一部として、飽和したもしくは未飽和の、枝分かれした、直鎖状もしくは環状の一価炭化水素基を意味し、それは親アルカン、アルケンもしくはアルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導されている。典型的なアルキル基には、メチル;エチルの例えば、エタニル、エテニル、エチニル;プロピルの例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、シクロプロプ−1−エン−1−イル;シクロプロプ−2−エン−1−イル、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イルなど;ブチルの例えばブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルなどが挙げられるがそれらに限定はされない。
【0013】
用語「アルキル」とは特に、任意の程度もしくはレベルの飽和を有する基、即ち、専ら炭素-炭素結合を有する基、1又は複数の炭素−炭素二重結合を有する基、1又は複数の炭素−炭素三重結合を有する基及び炭素−炭素単、二重及び三重結合の混合を有する基を含むことを意味する。特定のレベルの飽和が意味される場合、表現「アルカニル」、「アルケニル」及び「アルキニル」が使用されている。好適に、アルキル基は1〜20個の炭素原子、一層好適には1〜10個の炭素原子、最も好適には、1〜6個の炭素原子を含んで成る。
【0014】
「アルカニル」とは、それ自身もしくは他の置換基の一部として、飽和して枝分かれした、直鎖状もしくは環状のアルキル基を意味し、それは親アルカンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導されている。典型的なアルカニル基としては、メタニル;エタニル;プロパニルの例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルなど;ブタニルの例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イルなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0015】
「アルケニル」とは、それ自身もしくは他の置換基の一部として、不飽和の枝分かれした、直鎖状もしくは環状のアルキル基を意味し、それは親アルケンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導された炭素−炭素二重結合を1つ以上有する。この基は1又は複数の二重結合についてシスもしくはトランス構造にありうる。典型的なアルケニル基としては、エテニル;プロピルの例えば、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、プロプ−2−エン−2−イル、シクロプロプ−1−エン−1−イル、シクロプロプ−2−エン−1−イル;ブテニルの例えば、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0016】
「アルキニル」とは、それ自身もしくは他の置換基の一部として、不飽和の枝分かれした、直鎖状もしくは環状のアルキル基を意味し、それは親アルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導された炭素−炭素三重結合を1つ以上有する。典型的なアルケニル基としては、エチニル;プロピニルの例えば、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イルなど;ブチニルの例えば、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0017】
「アルキルジル」とは、それ自身もしくは他の置換基の一部として、飽和したもしくは不飽和の枝分かれした、直鎖状もしくは環状の二価炭化水素基を意味し、それは親アルカン、アルケンもしくはアルキンの各2つの異なる炭素原子のそれぞれから1つの水素原子を除去することによって誘導されたかあるいは親アルカン、アルケンもしくはアルキンの1つの炭素原子から2つの水素原子を除去することによって誘導されている。この2つの一価基中心もしくは二価基中心の各価数により、同じもしくは異なる原子との結合を形成できる。典型的なアルキルジル基としては、メタンジル;エチルジルの例えば、エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル;プロピルジルの例えば、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロプ−1−エン−1,1−ジイル、プロプ−1−エン−1,2−ジイル、プロプ−2−エン−1,2−ジイル、プロプ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロプ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロプ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロプ−2−エン−1,1−ジイル、プロプ−1−イン−1,3−ジイルなど;ブチルジルの例えば、ブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル;シクロブタン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,1−ジイル、ブト−1−エン−1,2−ジイル、ブト−1−エン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,4−ジイル、2−メチル−プロプ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,4−ジイル、シクロブト−1−エン−1,2−ジイル、シクロブト−1−エン−1,3−ジイル、シクロブト−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1,4−ジイル、などが挙げられるがそれらに限定されない。特定のレベルの飽和が意図されている場合、命名、アルカニルジル、アルケニルジル及び/又はアルキニルジルが使用される。好適に、アルキルジル基は、(C1〜C20)アルキルジル、一層好適には、(C1〜C10)アルキルジル、最も好適には、(C1〜C6)アルキルジルである。基中心が末端の炭素にある飽和非環式アルカニルジル基が好適であり、例えば、メタンジル(メタノ);エタン−1,2−ジイル(エタノ);プロパン−1,3−ジイル(プロパノ);ブタン−1,4−ジイル(ブタノ)が挙げられる(下に規定されたように、アルキレノにも言及される)。
【0018】
「アルキレノ」とは、それ自身もしくは他の置換基の一部として、2つの末端1価基中心を有する直鎖状アルキルジル基を意味し、それは直鎖状の親アルカン、アルケンもしくはアルキンの2つの終末炭素原子の各々から1つの炭素原子を除去することによって誘導される。典型的なアルキレノ基としては、メタノ;エチレノの例えば、エタノ、エテノ、エチノ;プロピレノの例えばプロパノ、プロプ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロプ[1]イノなど;ブチレノの例えば、ブタノ、ブト[1]エノ、ブト[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブト[1]イノ、ブト[2]イノ、ブト[1,3]ジエノ、などが挙げられる。特異的な飽和のレベルが意図されている場合、命名の、アルカノ、アルキレノ、及び/又はアルキノが使用されている。好適に、アルキレノ基は、(C1〜C20)アルキレノ、一層好適には、(C1〜C10)アルキレノ、最も好適には、(C1〜C6)アルキレノである。好適には直鎖状飽和アルカノ基の例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノ、が挙げられるがそれらに限定されない。
【0019】
「アシル」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、基−C(O)R30(式中、R30は、本明細書中で定義したように、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロへテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル)を意味する。代表的な例としては、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0020】
「アシルアミノ」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、基−N R31C(O)R32(式中、R31及びR32は、本明細書中で定義したように、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロへテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル)を意味する。代表的な例としては、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘキシルメチルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ベンジルカルボニルアミノなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0021】
「アルコキシ」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、基−OR33(式中、R33は、本明細書中で定義したように、それぞれ独立して、アルキル又はシクロアルキル基)を意味する。代表的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0022】
「アルコキシカルボニル」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、基−C(O)OR34(式中、R34は、本明細書中で規定されたように、アルキル又はシクロアルキルを示す)。
【0023】
「アリール」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、親芳香族環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導された一価芳香族炭化水素基を意味する。典型的なアリール基としては、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルロランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから誘導された基が挙げられるがそれらに限定されない。好適に、アリール基は、6〜20個の炭素原子、一層好適には、6〜12個の炭素原子を含んで成る。
【0024】
「アリールアルキル」とは、それ自身もしくは他の置換基の一部として、炭素原子に対して、典型的には終末又はsp3炭素原子に対して結合している水素原子の1つがアリール基によって置換されている非環式アルキル基を意味する。典型的なアリールアルキル基としては、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエタン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエタン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが挙げられる。特定のアルキル成分が意図されている場合、命名、アリールアルカニル、アリールアルケニル及び/又はアリールアルキニルが使用されている。好適に、アリールアルキル基は、(C6〜C30)アリールアルキルの例えば、アリールアルキルのアルカニル、アルケニル又はアルキニル成分は(C1〜C10)であり、そしてアリール成分は(C6〜C20)であり、一層好適には、アリールアルキル基は(C6〜C20)アリールアルキルであり、例えばアリールアルカニル基の当該アルケニル又はアルキニル成分は(C1〜C8)であり当該アリール成分は(C6〜C12)である。
【0025】
「シクロアルキル」とは、それ自身もしくは他の置換基の一部として、飽和したもしくは不飽和の環状アルキル基を意味する。特定のレベルの飽和が意図されている場合、命名「シクロアルカニル」又は「シクロアルケニル」が使用されている。典型的なシクロアルキル基としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどに由来する基が挙げられるがそれらに限定されない。好適に、シクロアルキル基は、(C3〜C10)シクロアルキル、一層好適には(C3〜C7)シクロアルキルである。
【0026】
「シクロヘテロアルキル」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、飽和した又は不飽和の環状アルキル基を意味し、ここで1もしくは複数の炭素原子(及び任意の関連する水素原子)は独立して同じもしくは異なるヘテロ原子で置換されている。1又は複数の炭素原子を置換するためのヘテロ原子としては、N、P、O、S、Siなどが挙げられるがそれらに限定されない。特定のレベルの飽和が意図されている場合、命名「シクロヘテロアルカニル」又は「シクロヘテロアルケニル」が使用されている。典型的なシクロヘテロアルキル基としては、エポキシド、アジリン、チイラン、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリデン、キヌクリジンなどに由来する基が挙げられるがそれらに限定されない。
【0027】
「ヘテロアルキル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルキルジル及びヘテロアルキレノ」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、アルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アルキルジル及びアルキレノ基をそれぞれ意味し、ここで1又は複数の炭素原子(及び全ての関連する水素原子)は互いに独立して同じ又は異なるヘテロ原子基で置換されている。これらの基に含まれて良い典型的なヘテロ原子基としては、限定されないが、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR35R36、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR37R38、-PR39-、-P(O)2-、-POR40-、-O-P(O)2-、-SO-、-SO2-、-SnR41R42-などが挙げられ、ここでR35、R36、R37、R38、R39、R40、R41及びR42は独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換されたヘテロアリールアルキルである。
【0028】
ヘテロアリールとは、それ自身又は他の置換基の一部として、親芳香族環系の1つの原子から1つの水素原子を除去することによって誘導された一価芳香族基を意味する。典型的な、ヘテロアリール基としては、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられるがそれらに限定されない。好適に、ヘテロアリール基は5〜20員ヘテロアリールであり、一層好適には5〜10員ヘテロアリールである。好適なヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾール及びピラジンから誘導された基が挙げられるがそれらに限定されない。
【0029】
「ヘテロアリールアルキル」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、炭素原子、典型的に終末又はsp3炭素原子に対して結合している水素原子の1つがヘテロアリール基で置換されている非環式アルキル基を意味する。特定のアルキル成分が意図されている場合、命名、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル及び/又はヘテロアリールアルキニルが使用されている。好適な実施態様において、ヘテロアリールアルキル基は6〜30員ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル又はアルキニル成分は1〜10員であり、そしてヘテロアリール成分は5〜20員ヘテロアリール、一層好適には6〜20員ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル又はアルキニル成分は1〜8員であり、そしてヘテロアリール成分は5〜12員のヘテロアリールである。
【0030】
「親芳香族環」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、接合したπ電子システムを有する不飽和環状又は多環式環系を意味する。特異的に、定義「親芳香族環システム」の定義内に含まれているのは融合した環系であり、ここでは、1又は複数の環が芳香族であり、そして1又は複数の環が飽和もしくは不飽和であり、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレンなどが挙げられる。典型的な親芳香族環としては、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0031】
「親芳香族環系」とは、それ自身又は他の置換基の一部として、1又は複数の炭素原子(及び任意の関連した水素原子)が独立して同じ又は異なる炭素原子によって置換されている親芳香族環系を意味する。炭素原子を置換するための典型的なヘテロ原子としては、N、P、O、S、Siなどが挙げられるがそれらに限定されない。特異的に、定義「親へテロ芳香族環系」に含まれるものは、融合した環系であり、ここでは、1又は複数の環が芳香族環であり、そして1又は複数の環が飽和もしくは不飽和であり、例えば、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどが挙げられる。典型的な親芳香族環としては、アルシンドール、カルバゾール、カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフトリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0032】
「医薬的に許容できる塩」とは、本発明の化合物の塩を意味し、それは親化合物の所望の薬理活性を有する。かかる塩としては:(1)酸付加塩であって、無機酸の例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などで形成されたもの;又は有機酸の例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などによって形成されたもの;又は(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオンの例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン又はアルミニウムイオンで置換された場合に;又は有機塩基の例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミンなどと配位する場合に形成された塩が挙げられる。
【0033】
「医薬的に許容できるビヒクル」とは、希釈剤、アジュバント、賦形剤又は担体を意味し、それらと共に本発明の化合物が投与される。
【0034】
「患者」とはヒトを意味する。用語「ヒト」及び「患者」は本明細書中交互に使用されている。
【0035】
「予防すること」又は「予防」とは、獲得する疾患又は障害の危険(即ち、疾患に対して暴露されたかあるいは疾患の傾向である患者においては進行しないが、当該疾患を受けていないかあるいは更に疾患の症状を示していない患者で1以上の臨床症状を生じること)を下げることを意味する。
【0036】
「プロドラッグ」とは、活性薬物を放出するために体内での形質転換を必要とする薬物分子の誘導体を意味する。プロドラッグは、往々にして、必ずではないが、親薬物へと転換されるまでは薬理学的に不活性である。ヒドロキシル含有薬物は、例えば、スルホン酸塩、エステル又は炭酸塩プロドラッグへと転換されて良く、それはin vivoで加水分解されヒドロキシル化合物を提供して良い。アミノ含有薬物は、例えば、in vivoで加水分解されてヒドロキシ化合物を提供しうる、カルバメート、アミド、エナミン、イミン、N-フォスフォニル、N-フォスフォリル又はN-スルフェニルプロドラッグに転換されて良い。カルボン酸薬物は、in vivoで加水分解されカルボン酸化合物を供しうるエステル(シリルエステル及びチオエステル)、アミド又はヒドラジン薬物へ転換されて良い。上記のプロドラッグとは異なる官能基を有する薬物のプロドラッグは当業界で周知である。
【0037】
「プロ成分」とは、薬物分子内の官能基をマスクし当該薬物をプロドラッグへと転換するために使用された場合、保護基の形態を意味する。典型的に、プロ成分は、in vivoで酵素もしくは非酵素的手段によって回裂される1もしくは複数の結合を介して薬物に対し結合されるだろう。
【0038】
「保護基」とは、分子中の反応性官能基に対して結合した場合、当該官能基の反応性をマスク、減少又は妨げる原子の集団を意味する。保護基の例は、Greenら、“Protective Groups in Organic Chemistry”,(Wiley、第2版 1991)及びHarrisonら、“Compendium of Synthetic Organic Methods”, Vols. 1〜8(John Wiley and Sons, pp.1971〜1996)に見出されうる。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「SES」)、トリチル及び置換されたトリチル基、アリールオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられるがそれらに限定されない。代表的なヒドロキシ保護基としては、ヒドロキシ基がアシル化されているかあるいはアルキル化されているもの、例えばベンジル、及びトリエチルエーテル並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル及びアリルエーテルが挙げられるがそれらに限定されない。
【0039】
「置換された」とは1もしくは複数の水素原子が独立して、同じもしくは異なる1もしくは複数の置換基により置換されていることを意味する。典型的な置換基としては、-M、-R60、-O-、=O、-OR60、-SR60、-S-、=S、-NR60R61、=NR60、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2O-、-S(O)2OH、-S(O)2R60、-OS(O2)O-、-OS(O)2R60、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(S)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-、-C(S)OR60、-NR62C(O)NR60R61、-NR62C(S)NR60R61、-NR62C(NR63)NR60R61及び-C(NR62)NR60R61(式中、Mは独立してハロゲンである);R60、R61、R62及びR63は独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール又は置換されたヘテロアリールであり、又は任意にR60とR61はN原子と一緒にシクロヘテロアルキル又は置換されたシクロヘテロアルキル環を形成し;そしてR64及びR65は独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール又は置換されたヘテロアリール、又は任意にR64及びR65はN原子と一緒にシクロヘテロアルキル又は置換されたシクロヘテロアルキル環を形成するが、それらに限定されない。好適に、置換基としては、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-S-、=S、-NR60R61、=NR60、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2R60、-OS(O2)O-、-OS(O)2R60、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(S)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-、-NR62C(O)NR60R61、一層好適には、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-NR60R61、-CF3、-CN、-NO2、-S(O)2R60、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-、最も好適には、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-NR60R61、-CF3、-CN、-NO2、-S(O)2R60、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(O)OR60、-C(O)O-(式中、R60、R61及びR62は上に規定したとおりである)が挙げられる。
【0040】
任意の疾患もしくは障害の「治療すること」又は「治療」とは、1つの実施態様において、疾患もしくは障害を改善すること(即ち、疾患もしくはそれらの1つ以上の臨床症状の進行を妨害もしくは減らすこと)を意味する。他の実施態様において、「治療すること」又は「治療」とは、1以上の物理パラメーターを改善することを意味し、そのパラメーターは患者によって確認できないだろう。他の実施態様において、「治療」もしくは「治療すること」とは、疾患もしくは障害を、物理的(例えば、確認できる症状の安定化)、生理的(例えば、生理パラメーターの安定化)のいずれかあるいは両方によって阻害することを意味する。更なる他の実施態様において、「治療すること」もしくは「治療」とは疾患もしくは障害の開始を遅延させることを意味する。
【0041】
「治療上有効な量」とは、疾患を治療するために患者に対して化合物が投与された場合、当該疾患を治療するのに十分な化合物量を意味する。「治療上有効な量」とは、化合物、疾患及び、及びその症度並びに治療される患者の年齢、体重に依存して変わるだろう。
【0042】
参照は本発明の好適な実施態様により詳細になるだろう。本発明が好適な実施態様と共に記載される一方、それは本発明を好適な実施態様に限定することを意味しないと解されるだろう。反対に、それは、添付の請求の範囲によって規定されたように本発明の精神と範囲内に含まれて良いとして、代替、変更、及び同等を網羅することを意味するだろう。
【0043】
構造式(I)の化合物
最初の実施態様において、本発明の化合物は構造式(I):
【化2】

(式中、
R1、R2、R3、R5、R6及びR7は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロへテロアルキル、置換されたシクロへテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアルキル又は置換されたヘテロアルキルであり;
R4及びR8は、独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロへテロアルキル、置換されたシクロへテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアルキル又は置換されたヘテロアルキルであるかあるいはNが芳香環の一部である場合不在であり;
任意に、R1とR2は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R5とR6は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R1とR2は一緒に、R2とR3は一緒に、そしてR2とR4は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R5とR6は一緒に、R6とR7は一緒に、そしてR6とR8は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R3とR7は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;そして
Y-2が(MoS4-2、(Mo2S12-2、(Mo2S9-2、(Mo2S7-2、(Mo2S8-2、(Mo2S11-2、(Mo2S6-2又は(Mo2S13-2であり;
但し、Yが(MoS4-2であり、そしてR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR8が同一である場合、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は水素、メチル、エチル又はn−プロピルではない)
の化合物又はそれらの溶媒和物もしくは水和物もしくはN酸化物を提供する。
【0044】
1つの実施態様において、Yは(MoS4-2である。他の実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はアルキルではない。
【0045】
更なる他の実施態様
【化3】

である。好適にYは(MoS4-2である。
【0046】
他の1つの実施態様において、R1、R2、R3及びR4はアルキルではない。他の実施態様において、R1、R2及びR4は水素、アルカニル又は置換されたアルカニルである。好適に、R1、R2及びR4は水素、メチル又はエチルである。
【0047】
更に他の実施態様において、R1及びR2はアルカニルである。好適に、R1及びR2はメチル又はエチルである。
【0048】
更に他の実施態様において、R1はアルカニル、置換されたアルカニル、アルケニル、置換されたアルケニル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル又は置換されたシクロアルキルである。好適に、R1とR2は一緒にアルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである。一層好適に、R1とR2は一緒にアルキレノ又はヘテロアルキレノである。
【0049】
更に他の実施態様において、R1とR2は一緒に、R2とR3は一緒に、そしてR2とR4は一緒に、アルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである。好適に、R1とR2は一緒に、そしてR2とR3は一緒に、そしてR2とR4は一緒にアルキアルキレノである。好適に、R1(R2)(R3)(R4)Nは構造:
【化4】

を有する。
【0050】
更なる他の実施態様において、R3とR7は一緒に、アルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである。好適に、R3とR7は一緒に、アルキレノ又はヘテロアルキレノである。
【0051】
更なる他の実施態様において、 R1、R2及びR4は、水素、アルカニル又は置換されたアルカニルであり、そしてR3はアルキル、置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルであり又はR3とR7は一緒にアルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである。好適に、R1、R2及びR4は、メチル又はエチルであり、そしてR3はアルキル、置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル又はシクロアルキルである又はR3とR7は一緒にアルキレノ又はヘテロアルキレノである。好適に、R1、R2及びR4はメチル又はエチルであり、そしてR3はアルキル、置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル又はシクロアルキルである。
【0052】
更なる他の実施態様において、R1(R2)(R3)(R4)Nは:
【化5】

である。
【0053】
更に他の実施態様において、R1(R2)(R3)(R4)Nは:
【化6】

である。
【0054】
更に他の実施態様において、R1(R2)(R3)(R4)Nは:
【化7】

である。
【0055】
更に他の実施態様において、R1、R2及びR4は、メチル又はエチルであり、そしてR3とR7は一緒にアルキレノ又はヘテロアルキレノである。好適に、R1(R2)(R3)(R4)Nは構造:
【化8】

を有する。
【0056】
更に他の実施態様において、R1、R2及びR4は水素であり、そしてR3は置換されたアルキル、シクロアルキル又は置換されたヘテロアリールであり、又はR3とR7は一緒にアルキレノである。更に他の実施態様において、R1及びR2はアルカニルであり、そしてR3及びR4は、アルキル、置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル又はアルキレノである。好適に、R1及びR2はメチル又はエチルであり、そしてR3及びR4はアルキル、置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル又はアルキレノである。
【0057】
他の実施態様において、R1(R2)(R3)(R4)Nは:
【化9】

(式中、R9は、炭素原子を8個以上且つ18個を超えず有する直鎖状アルカニル基の混合物である)
である。
【0058】
更に他の実施態様において、R1、R2、及びR4は水素であり、そしてR3は置換されたアルキル、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル又はアルキレノである。好適に、R1(R2)(R3)(R4)Nは構造:
【化10】

を有する。
【0059】
更に他の実施態様において、R1とR2は一緒にアルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノであり、R3は、アルキル又は置換されたアルキルであり、そしてR4は水素であるかあるいは不在である。好適に、R1(R2)(R3)N又はR1(R2)(R3)(R4)Nは構造:
【化11】

を有する。
【0060】
本発明の化合物の合成
本発明の化合物は、スキーム1及び2に示されたような常用の合成法を介して獲得されて良い。本発明の化合物及びそれらの中間体を調製するために有用な出発物質は、商業上入手可能であるかあるいは周知の合成方法によって調製されて良い。例えば、チオモリブデン酸アンモニウムは、周知の化学サプライヤー(e.g., Aldrich Chemical Company, Milwaukee, WI)から入手可能である。置換されたアンモニウム塩(例えば、水酸化アンモニウム及びハロゲン化アンモニウム)は、商業的ソースから購入して良いかあるいは周知の合成法(Harrisonら、“Compendium of Synthetic Organic Methods”, Vols.1〜8 (John Wiley and Sons, 1971〜1996);“Beilstein Handbook of Organic Chemistry,”Beilstein Institute of Organic Chemistry, Frankfurt, Germany; Feiserら、“Reagents for Organic Synthesis,”Vol.1〜17, Wiley Interscience; Trostら、“Comprehensive Organic Synthesis,”Pergamon Press, 1991;“Theilheimer's Synthetic Methods of Organic Chemistry,”Vol.1〜45, Karger, 1991; 3月、“Advanced Organic Chemistry,”Wiley Interscience, 1991; Larock“Comprehensive Organic Transformations,”VCH Publishers, 1989; Paquette,“Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,”John Wiley & Sons, 1995)を使用することで容易に合成されて良い。本明細書中に記載された化合物及び/又は出発物質の合成のための他の方法は、当業界で記載されているかあるいは、当業者に明らかであろう。従って、本明細書中、スキーム1及び2に示された方法は、包括的ではなく例示的である。
【0061】
【化12】

上に示されるように、スキーム1において、水の存在下での水酸化第四級アンモニウムのチオモリブデン酸塩に対する添加は、陽イオン交換(揮発性アンモニアの除去により産物に対する平衡が導かれる)をもたらし、所望のチオモリブデン酸塩誘導体が提供される。
【0062】
【化13】

上に示されるように、スキーム2において、アセトニトリルの存在下での水酸化第四級アンモニウムのチオモリブデン酸塩に対する添加は、イオン交換(ハロゲン化アンモニウムの形成により産物に対する平衡が導かれる)をもたらし、所望のチオモリブデン酸塩誘導体が提供される。
【0063】
チオモリブデン酸塩誘導体であって、アンモニウム対イオンが異なる誘導体は、化合物3から、一当量の他のアンモニウム対イオンで処理することによって調製されて良い。
【0064】
本発明の化合物に関するアッセイ
当業者は、本発明の化合物の活性を測定するたに有用なin vitro及びin vivoアッセイは、包括的ではなく例示であることを理解するだろう。
【0065】
内皮細胞移動に関するアッセイ
内皮細胞移動に関して、トランスウェルは、トランスウェルあたり200μLのコラーゲン溶液を加えることによってI型コラーゲン(50μg/mL)で覆われ、37℃で1晩インキュベートされる。トランスウェルを24ウェルプレート中に集められ、そして化学誘引物質(FGF-2など)は総体積0.8mLの媒体中、下方チャンバーに加えられる。トリプシンを使用することで単層培養から剥がされたヒト臍静脈内皮細胞(「HUVEC」)などの内皮細胞を、血清フリー培地により最終濃度約106細胞/mLにされ、この細胞の懸濁0.2mLがトランスウェルの各上方チャンバーに対して加えられる。阻害物質が上方チャンバー及び下方チャンバーの両方に対して加えられ、そして湿った雰囲気中37℃で5時間に渡り、移動が進むことを可能になる。トランスウェルが、DiffQuick(登録商標)を使用して染色されたプレートから取り除かれる。移動しなかった細胞が、上方チャンバーから綿棒でこすることによって取り除かれ、そして膜が取り外され、スライド上に置かれ、そして強力な場(400×)の下で、移動した細胞の数を特定するために計測される。
【0066】
抗侵襲性活性の生物学的アッセイ
本発明の化合物及び/又は医薬組成物は、それらの抗侵襲性能力について評価される。アッセイにおいて、内皮細胞又は腫瘍細胞(例えば、PC-3ヒト前立腺ガン)などの細胞の、再構築された基底膜(Matrigel(登録商標))を通じて侵入する能力は、Matrigel(登録商標)侵襲アッセイ(Kleinmanら、Biochemistry 1986, 25: 312-318; Parishら、Int. J. Cancer 1992, Vol.52: pp.378〜383)として知られている。Matrigel(登録商標)は、IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパリン硫酸プロテオグリカンの例えば、ペルレカン(bFGFに対して結合して局在化する)、ビトロネクチン並びに形質転換増殖因子β(TGFβ、ウロキナーゼタイプのプラスミノーゲン活性化物質(μPA)、組織プラスミノーゲン活性化物質(tPA)、並びにプラスミノーゲン活性化物質阻害物質1型(PAI-1)として知られるセルピン(Chambersら、Canc.Res.1995、vol.55:pp.1578〜1585))を含む再構築された基底膜である。細胞外レセプター又は酵素を標的とする化合物に関するこのアッセイにおいて獲得された結果は、これらの化合物がin vivoで効果であることの典型的予測である(Rabbaniら、1995、Int.J.Cancer vol.63:pp.840〜845)。
【0067】
かかるアッセイはトランスウェル組織培養挿入体が使用される。侵襲性の細胞は、Matrigel(登録商標)を横切りそしてポリカーボネート膜の上方面を横切り、そして該膜の底に対して接着できる細胞として規定されている。ポリカーボネート膜(8.0μmのポアサイズ)を含むトランスウェル(Coster)はMatrigel(登録商標)(それは無菌PBS中で最終濃度75μg/mL(挿入物あたり60μLの希釈されたMatrigel(登録商標))で覆われ、そして24ウェルプレートのウェルにおかれる。膜は生物学的に安全なキャビネットにおいて一晩乾燥され、そして抗生物質を含む100μLのDMEMを加えることによってシェーカーテーブル上で1時間に渡り再度水和させられる。DMEMを各挿入物から、吸引によって除去し、そして0.8mLのDMEM/10%FBS/抗体が24ウェルプレートの各ウェルに対して加えられ、それによってトランスウェルの外側(「下方チャンバー」)が取り囲まれる。新鮮DMEM/抗体(100μL)、ヒトGlu-プラスミノーゲン(5μg/ml)、及び試験されるべき任意の阻害物質がトランスウェルの上方、内部(上方チャンバー)に対して加えられる。試験されるべき細胞はトリプシン処理され、そしてDMEM/抗生物質中で再懸濁させ、次いで、トランスウェルの上方チャンバーに対して、最終濃度800,000細胞/mLで加えられる。上方チャンバーの最終体積は、200μLに調整される。次いで、集められたプレートは湿度5%のCO2雰囲気中、72時間に渡りインキュベートされる。インキュベート後、細胞を固定化され、そしてDiffQuick(登録商標)を使用することで染色され(ギムザ染色)、そしてMatrigel(登録商標)及び膜を通して侵襲しなかった全ての細胞を取り除くために、上方チャンバーが綿棒を使用することで剥がされる。膜はトランスウェルからX-acto(登録商標)ブレードを使用することで剥がされ、スライド上に、Permount(登録商標)及びカバースリップを使用することでマウントされ、次いで、強力な場(400×)の下で計測される。侵襲された細胞の平均を、5〜10場計測から測定され、そして阻害物質濃度の関数としてプロットされる。
【0068】
抗血管形成活性の管形成アッセイ
本発明の化合物は、抗血管形成活性について、in vitroで、2つの異なるアッセイのうちの1つにおいて試験されて良い。内皮細胞の例えば、商業的に調製されて獲得されるヒト臍帯静脈内皮細胞(「HUVEC」)又はヒト微小血管内皮細胞(「HMVEC」)は、フィブリノゲン(リン酸緩衝塩類溶液(「PBS」)中5mg/mL)と1:1(v/v)の比で2×105細胞/mLの濃度で混合される。トロンビンが加えられ(5U/mlの最終濃度)、そして混合物がすぐに24ウェルプレート(0.5mL/ウェル)に対して加える。このフィブリンゲルが形成され、そしてVEGF及びbFGFが該ウェルに対して(各5ng/mlの最終濃度で)試験化合物と共に加えられる。細胞を37℃、5%CO2で4日に渡りインキュベートし、この時に各ウェル中の細胞が計測されそして丸、枝がなく細長い、1つの枝があり細長い、又は2以上の枝を伴い細長い、に分類される。結果は、各化合物濃度に関して5つの異なるウェルの平均として表されている。典型的に、血管新生阻害物質の存在下で、細胞は丸いかあるいは未分化の管状(0又は1個の枝)のいずれかのままである。このアッセイは、当業界で、in vivoでの血管形成(又は抗血管新生)効率の予測である(Minら、Cancer Res.1996、vol.56:pp.2428〜2433)として認められている。
【0069】
代わりのアッセイにおいて、内皮細胞管形成は、内皮細胞がMatrigel(登録商標)において培養されている場合に確認されている(Schnaperら、J.Cell.Physiol.1995 、vol.165:pp.107〜118)。内皮細胞(1×104細胞/ウェル)は、Matrigel(登録商標)で覆われた24ウェルプレート上に移され、そして管の形成が48時間後に定量される。阻害物質は、内皮細胞と同時に添加されるかあるいはその後の様々な時間点で加えられることによって試験される。管形成も、血管形成増殖因子の例えば、bFGFもしくはVEGF、分化刺激因子(例えば、PMA)又はそれらの組み合わせを加えることによって刺激されても良い。
【0070】
このアッセイモデルは、特定の型の基部膜を内皮細胞に対して提示することによって血管形成し、即ち、内皮細胞を移動させて分化させるマトリクスの層が最初に接触することが期待されうる。Matrigel(登録商標)(及びin situ基底膜)中で見出される成分又はそれらのタンパク質分解産物は、増殖因子を結合させることに加えて、内皮細胞管形成刺激性であっても良く、それにより、このモデルが、従来記載された(Bloodら、Biochem. Biophys. Acta 1990, Vol.1032: pp.89〜118; Odedraら、Pharmac. Ther. 1991, Vol.49: pp.111〜124)フィブリンゲル血管形成モデルに相補的になる。本発明の化合物は、両アッセイにおいて内皮細胞管形成を阻害し、それは該化合物が抗血管形成活性をも有することを示唆する。
【0071】
増殖の阻害に関するアッセイ
本発明の化合物の、内皮細胞の増殖を阻害する能力は、96ウェル形態で特定されて良い。I型コラーゲン(ゼラチン)は、プレートのウェルを覆うために使用されている(PBS中、0.1〜1mg/ml、0.1ml/ウェルで室温において30分)。該プレートの洗浄後(3×w/PBS)、ウェルあたり3-6,000個の細胞が播かれ、そして4時間に渡り(37℃/5%CO2)内皮細胞増殖培地(EGM;Clontics)又は0.1〜2%のPBSを含むM199培地において接着させられる。培地及び接着しなかった細胞が4時間の最後に取り除かれ、そしてbFGF(1〜10ng/ml)又はVEGF(1〜10ng/ml)を含む新鮮培地が各ウェルに対して加えられる。試験されるべき化合物は、最後に加えられ、そしてこのプレートは24〜48時間に渡りインキュベート(37℃/5%CO2)される。MTS(Promega)が各ウェルに対して加えられ、そして1〜4時間に渡りインキュベートせしめられる。次いで490nmでの吸光度(細胞の数に比例する)が測定され、コントロールウェルと試験化合物を含むものの間での増殖の違いが特定される。類似するアッセイシステムが、培養された接着性腫瘍細胞により設定されて良い。しかし、コラーゲンはこの形態において省かれている。腫瘍細胞(例えば、3,000〜10,000/ウェル)がプレートに播かれそして一晩接着せしめられる。次いで、血清フリー培地がこのウェルに対して加えられ、そして細胞が24時間に渡り同期化される。次いで、10%FBSを含む培地が、増殖を刺激するために各ウェルに対して加えられる。試験されるべき化合物はいくつかのウェルに含まれている。24時間後、MTSがこのプレートに対して加えられ、そしてアッセイが展開されて上記のようにして読み込まれる。本発明の化合物の、他の型の細胞、例えば、腫瘍細胞など(細胞の増殖を刺激するために使用されることはないだろうVEGF及びbFGFを除く)の増殖に対する効果を評価するために類似する方法論も使用されて良い。抗増殖活性の証拠があれば、アポトーシスの誘導は、腫瘍TACS(Genzyme)を使用することで測定されて良い。
【0072】
細胞毒性のアッセイ
本発明の化合物の細胞毒性効果は、腫瘍細胞、内皮細胞、繊維芽細胞及びマクロファージなどの様々な型の細胞を使用することで特定されて良い。
【0073】
典型的なアッセイには、96ウェルプレート中、細胞を5-10,000細胞/ウェルの密度で播くことが伴うだろう。試験されるべき化合物は様々な濃度で加えられ、そして細胞と24時間に渡りインキュベートされて良い。細胞は培地で3回洗浄される。細胞毒アッセイ(細胞の溶解を測定する)のために、Promega96ウェル細胞毒性キットが使用される。
【0074】
角膜血管形成モデル
使用されたプロトコールは本質的にVolpertら、J. Clin. Invest. 1996, Vol.98: pp.671〜679によって記載されたものと同一である。手早く、メスFischerラット(120〜140g)を麻酔にかけ、そしてHydron(登録商標)、bFGF(150nM)、を含んで成るペレット(5μM)、及び試験される化合物が、角へりから1.0〜1.5mmの角膜において作成された小さな切り口中に移植される。
【0075】
血管新生が移植の5及び7日後に評価される。7日目に、動物は麻酔され、そして管を染色するためにコロイド状炭素などが注がれた。次いで、動物は安楽死させられ、角膜がホルマリンで固定化され、そして角膜を扁平化させ、そして血管新生の程度を評価するために写真が撮られる。新生血管は、合計血管領域もしくは長さをイメージングすることによって又は単に血管をカウントすることによって定量化されて良い。
【0076】
Matrigel(登録商標)プラグアッセイ
このアッセイは、本質的に、Passanitiら、Lab Invest. 1992, Vol.67: pp.519〜528によって記載されたものと同一である。氷冷Matrigel(登録商標)(500μLなど)(Collaborative Biochemical Products Inc.,Bedford,MA)がヘパリン(50μg/ml)、FGF-2(例えば、400ng/ml)及び試験されるべき化合物と混合される。いくつかのアッセイにおいて、bFGFは、血管形成刺激物質としての腫瘍細胞と置き換えられても良い。Matrigel(登録商標)混合物は、4〜8週齢胸腺欠損マウスに対して、皮下的に、腹部中腺に近い部位で、好適には3回の注射/マウスで注射されて良い。注射されたMatrigel(登録商標)は明らかな固形ゲルを形成する。注射の部位は、各動物がポジティブコントロールプラグ(例えば、FGF-2+ヘパリン)、ネガティブコントロールプラグ(例えば、バッファー+ヘパリン)及び血管形成に対するその効果を試験される化合物を含むプラグ(例えば、FGF-2+ヘパリン+化合物)を受け入れるように選択される。全処理は、好適に3重に行われる。動物は注射後約7日又は血管形成が確認されるために最適でありうる他の時間に頚脱臼で犠牲にされる。マウスの皮膚が腹部中腺にそって剥がされ、そしてMatrigel(登録商標)プラスが回収されてすぐに高解像度で走査される。次いで、プラグは水中に分散され、そして37℃で一晩インキュベートされる。ヘモグロビン(Hb)レベルがDrabkinの溶液(Sigmaから獲得される)を使用することで、説明書に従い、特定される。プラグ中のHbの量は、それが、試料中の血液の量を反映するので、血管形成についての間接的な基準である。加えて、又は代替的に、動物には、犠牲になる前に、フルオロフォアが接合されている高分子量のデキストランを含む0.1mlのバッファー(好適にはPBS)が注射される。分散したプラグ中の蛍光の量は、蛍光計測により特定され、そしてまたプラグにおける血管形成の基準としてもはたらく。mAB抗CD31(CD31は血小板内皮細胞接着分子又は「PECDAM」である)での染色は、プラグ中での新生血管形成及び微小管密度を確かめるためにも使用されて良い。
【0077】
ニワトリ絨毛尿膜(CAM)血管形成アッセイ
このアッセイは、本質的にNguyenら、Microvascular Res. 1994、Vol.47:pp.31〜40
に記載されたようにして行われる。血管形成因子(bFGF)又は腫瘍細胞のいずれか+阻害物質を含むメッシュを8日齢ニワトリ胚のCAM上に配置し、そして試料の移植後、3〜9日に渡りCAMが確認される。血管形成は、血管を含むメッシュの平方%を特定することによって定量化される。
【0078】
腫瘍細胞を伴いMatrigel(登録商標)プラグアッセイを使用する血管形成阻害及び抗腫瘍効果のin vivo評価
このアッセイにおいて、腫瘍細胞、例えば、3LL Lewis胚ガン又はラット前立腺ガン細胞系統MatLyLuの1-5×106細胞をMatrigel(登録商標)と混合し、そして上記節5.4.7に記載のプロトコールの後にマウスの脇腹へと注射される。腫瘍細胞の塊及び強力な血管形成反応が約5〜7日後にプラグにおいて確認されて良い。化合物の、実際の腫瘍環境における抗腫瘍及び抗血管形成活性は、プラグ中にそれを含ませることによって確認されて良い。次いで、腫瘍重量、Hbレベル又は蛍光レベル(犠牲にする前に注射したデキストラン-蛍光物質接合体の)の測定がなされる。Hb又は蛍光を測定するために、プラグは最初に組織ホモジナイザーでホモジナイズされる。
【0079】
皮下腫瘍増殖の異種移植モデル
ヌードマウスにはMDA-MB-231細胞(ヒト乳ガン)及びMatrigel(登録商標)(0.2ml中1×106細胞)が該動物の右脇腹において皮下注射される。腫瘍はステージ200mm3にされ、そして試験化合物での処理が開始される。腫瘍体積は1日おきに獲得され、そして動物は処理の2週後に犠牲にされる。腫瘍は切り出されて、重量が測られ、そしてパラフィン包埋される。腫瘍の組織学的切片がH及びE、抗CD31、Ki-67、TUNEL、及びCD68染色によって分析される。
【0080】
限定はされないが、他のヒト腫瘍細胞、例えば、PC-3、CWR22R、SK-OV-3、A2780、A549、HCT116、HT29も、類似の態様で本発明の化合物の抗腫瘍活性を試験するために使用されて良い。
【0081】
転移の異種移植モデル
本発明の化合物は、実験的転移モデル(Crowleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA1993、vol.90、pp.5021〜2025)を使用することで後期転移の阻害について試験されても良い。後期転移には、腫瘍細胞の接着と溢血、局所浸潤、播種(seeding)、増殖、血管形成の段階が伴う。ヒト前立腺ガン細胞(PC-3)にはレポーター遺伝子、好適にグリーン蛍光タンパク質(GFP)がトランスフェクションされるが、酵素クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする遺伝子の代替として、ルシフェラーゼ又はLacZもヌードマウスに接種される。この方法により、これらのマーカーのいずれかを使用(GFPの蛍光検出又は酵素活性の組織化学的比色分析)し、これらの細胞の運命を追跡することが可能になる。細胞は好適に、静脈内に注射され、そして転移が約14日後に、特に肺においてのみならずリンパ節、大腿骨及び脳の領域においても確認される。これは、ヒト前立腺ガンにおいて天然に生じる転移の器官向性を模倣する。例えば、GFP発現PC-3細胞(1×106細胞/マウス)がヌードマウス(nu/nu)の尻尾の血管へと静脈内注射される。動物は、100μg/動物/日で一日一回腹腔内に与えられた試験組成物により処理される。単一転移細胞及び病巣は、視覚化されて蛍光顕微鏡によってかあるいは光学顕微鏡により組織学的に定量化される又は組織をすり潰しそして検出可能ラベルの定量的比色分析によって定量化される。
【0082】
HPRG及び機能的誘導体によるin vivo突発転移の阻害
ラット同系乳ガン系(Xingら、Int.J.Cancer 67:pp.423〜429(1996))はMat BIII ラット乳ガン細胞を使用する。例えば、0.1mlのPBS中で懸濁させた約106の腫瘍細胞がメスFischerラットの乳腺脂肪体中へと接種される。接種のときに、14日Alza浸透圧ミニポンプが、試験化合物を分散させるために腹腔内に移植される。化合物はPBS(例えば、200mMのストック)に溶かされ、滅菌ろ過され、そして該ミニポンプに配置され、4mg/kg/日での放出を達成する。コントロール動物はビヒクル(PBS)単独で受けるかあるいは、ビヒクルコントロールペプチドを該ミニポンプで受ける。動物は14日で犠牲にされる。
【0083】
実験転移の他のモデルも、本発明の化合物を評価するために使用されて良い。これらのモデルは、上記ヒト腫瘍細胞系統を、ヌードマウスの尻尾の静脈を介して静脈内注射することにより、利用するだろう。典型的に、これらのマウスは、腫瘍細胞接種後28日で犠牲にされ、そしてそれらの肺は転移の存在について評価される。
【0084】
3LL Lewis肺ガン:一次腫瘍増殖
この腫瘍細胞系統は、C57BL/6マウスにおける肺のガンとして1951年に突発的に生じた(Cancer Res. 1955, Vol.15: p39.またMalaveら、J. Nat'l. Canc. Inst. 1979, Vol.62: 83〜88も参照のこと)。それはC57BL/6マウスにおいて皮下接種によって通過されることによって増殖させられ、そして半同種異型C57BL/6×DBA/2F1マウスにおいてかあるいは同種異型C3Hマウスにおいて試験される。典型的に、6匹のマウス/群が皮下移植のため、又は10匹のマウス/群が筋内移植のために使用される。腫瘍は2〜4mmの断片として皮下接種によって移植されるかあるいは約0.5-2×106細胞の懸濁した細胞の接種物として筋内移植されるかあるいは皮下移植される。処置は移植の24時間後に始まるかあるいは腫瘍が触診により特定のサイズ(通常およそ400mg)になる迄遅らされる。試験化合物を腹腔内に毎日11に渡り投与される。
【0085】
動物はしかる後に重量測定、触診、及び腫瘍サイズが測定される。未処置のコントロール受容者における筋肉接種後12日での典型的な腫瘍重量は500〜2500mgである。典型的な中間値生存時間は18〜28日である。ポジティブコントロール化合物、例えば、1〜11日で、シクロフォスファミドが20mg/kg/注射/日が使用される。計算された結果に含まれるのは、平均動物重量、腫瘍サイズ、腫瘍重量、生存時間である。確認された治療活性について、試験組成物は二重投与アッセイにおいて試験されるべきである。
【0086】
3LL Lewis肺ガン:一次増殖及び突発性転移モデル
このモデルは、ある数の研究員によって使用されている(Gorelikら、1980, J. Nat'l. Canc. Inst. Vol.65: pp.1257〜1264; Gorelikら、1980, Rec. Results Canc. Res. Vol.75: pp.20〜28; Isakovら、Invasion Metas. 1982, Vol.2: pp.12〜32; Talmadgeら、J. Nat'l Canc. Inst. 1982, Vol.69: pp.975〜980; Hilgardら、Br. J. Cancer 1977, Vol.35: pp.78〜86)。試験マウスはオスC57BL/6マウス、2〜3月齢である。この腫瘍は、皮下、筋内又は足蹠移植の後、転移を生み出し、好適には肺における転移を生み出した。いくつかの腫瘍の系統により、一次腫瘍は抗転移効果を発揮し、そして転移段階の研究の前に最初に切り出されなければならない(米国特許第5,639,725)。
【0087】
単一細胞懸濁は、すり身にされた腫瘍組織を0.3%のトリプシン溶液で処理することによって固形腫瘍から調製される。細胞は3度PBS(pH7.4)で洗浄され、そしてPBS中で懸濁される。この方法で調製された3LL細胞の生存率は約95〜99%(トリパンブルー色素除外によって)である。0.05mLのPBS中で懸濁させた生存できる腫瘍細胞(3×104〜5×106)を、C57BL/6マウスの背部領域又は隠れた足蹠中へと皮下注射した。目に見える腫瘍が106細胞背部皮下注射の3〜4日後出現する。腫瘍出現の日及び確立された腫瘍の直径は、ノギスで2日ごとに測定される。
【0088】
処置は1週間につき、1もしくは2用量のペプチドもしくは誘導体を与え行われる。他の実施態様において、ペプチドは浸透圧ミニポンプによってデリバリーされる。
【0089】
背部腫瘍の腫瘍切り出しを伴う実験において、腫瘍が約1500mm3のサイズに到達した場合、マウスはランダムに2つの群:(1)一次腫瘍が完全に切り出されている;又は(2)偽手術が行われて腫瘍が完全に残っている、に分けられる。500〜3000mm3の腫瘍は転移の成長を阻害するが、高い生存率で且つ局所再増殖を伴わずに安全に切除されて良い最大サイズの一次腫瘍は1500mm3である。21日後、全てのマウスは犠牲にされて安楽死される。
【0090】
肺が取り出されて重量を測られる。肺はBouin溶液で固定化され、そして目に見える転移が記録される。転移の直径も、マイクロメーター含有接眼レンズが備えてある双眼立体顕微鏡を8倍の倍率で使用することで測定される。記録された直径の基づき、各転移の体積を計算することが可能である。肺あたりの転移の合計体積を特定するために、目に見える転移の平均数には、転移の平均体積が掛けられる。更に転移増殖を特定するために、125IdUrdを肺への導入を測定すること(Thakurら、J.Lab.Clin.Med.1977、vol.89:pp.217〜228)が可能である。腫瘍切除の10日後、25μgのフルオロデオキシウリジンが、腫瘍を有する腹膜中(そしてもし使用されるなら、腫瘍が切除されたマウス)へと接種される。30分後、マウスには1μCiの125IdUrd(ヨードデオキシウリジン)が与えられる。1日後、肺及び脾臓が取り出されて重量が測られ、そして125IdUrd導入の程度がガンマカウンターを使用することで測定される。
【0091】
足蹠腫瘍を有するマウスにおいて、腫瘍が直径約8〜10mmに達した場合、マウスはランダムに2つの群:(1)腫瘍を伴う脚は膝関節より上で連結後、切断される;又は(2)切断されなかった腫瘍を維持するコントロールとして完全なままのマウス、に分けられる。(腫瘍を有するマウスの腫瘍がない脚を切断することは、以後の転移に対する効果が知られておらず、麻酔、ストレス又は手術の考えられる効果を支配する)。マウスは切断後10〜14日後に殺される。転移は上記のようにして評価される。
【0092】
治療使用
本発明によれば、構造式(I)の化合物及び/又はそれらの医薬組成物は、異常な血管新生銅代謝疾患、神経変性性疾患、肥満又はNF-κB調節障害を患う患者、好適にはヒトに対して投与される。異常な血管形成としては、新たな血管、より大きな血管、一層枝分かれした血管の形成などの異常な新生血管形成及び他の、疾患のある組織又は部位に対して多量の血液を輸送する能力につながる機構などが挙げられる。
【0093】
異常な血管新生を特徴とする疾患としては、限定はされないが、ガン(例えば任意の血管新生腫瘍、好適には、固形腫瘍、例えば、限定されないが、肺、胸部、卵巣、胃、膵臓、喉頭、食道、睾丸、肝臓、耳下腺、ビラリー管、結腸、直腸、頚部、子宮、子宮内膜、腎臓、膀胱、前立腺(prostrate)、甲状腺のガン、扁平上皮細胞ガン、腺ガン、小細胞ガン、メラノーマ、グリオーマ、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫、コンドロサルコーマ))、関節炎、糖尿病、動脈硬化、動静脈の奇形、角膜移植片新生血管形成、創傷治癒の遅延、糖尿病性網膜症、年齢に関連した筋衰退、肉芽形成、熱傷、血友病関節、リューマチ性関節炎、肥厚性瘢痕、血管新生緑内障、癒着不能骨折、Osier Weber症候群、乾癬、肉芽腫、水晶体後線維増殖症、翼状片、強皮症、トラコーマ、血管接着、眼球新生血管形成、寄生虫病、手術後の肥大症、毛髪生長の阻害、筋変性(湿型及び乾型の両方)、リューマチ性関節炎及び変形性関節症が挙げられる。1つの実施態様において、異常な血管新生を特徴とする疾患は、ガン、筋変性及びリューマチ性関節炎である。
【0094】
更に、本発明によれば、構造式(I)の化合物及び/又はその医薬組成物は銅代謝疾患(例えば、Wilson病)に関連した疾患を患う患者、好適にはヒトに対して、かかる疾患を治療するために投与される。
【0095】
更になお、本発明によれば、構造式(I)の化合物は及び/又はその医薬組成物は、患者、好適にはヒトに対して、肥満を治療するために投与される。構造式(I)の化合物は、炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、TNF-β、IL-8など)、及び血管形成及び肥満関連するプラスミノーゲン活性化物質阻害物質(Loskutoffら、Ann. N.Y. Acad. Sci., 2000, Vol.902: pp.272〜281; Panら、Cancer Res., 2002, Vol.62: pp.4854〜4859; Hanadaら、Cytokine Growth Factor Rev. 2002, Vol.13: pp.413〜421; Chenら、Science 2002, Vol.296: pp.1634〜5; Miyakeら、J. Neuropathol. Exp. Neurol. Vol.59: pp.18〜28; Kochら、Science 1992, Vol.258: pp.1798〜801; Osawaら、Infect. Immun. 2002, Vol.70: pp.6294〜6301; Bajouら、Nat. Med. 1998, Vol.4: pp.923〜8)のレベルを下げるために患者に対して投与されて良い。
【0096】
更になお、本発明によれば、構造式(I)の化合物及び/又はそれらの医薬組成物は、神経変性疾患をわずらう患者、好適にはヒトに対して、当該神経変性疾患を治療するために投与されて良い。当業界では、銅のレベルの上昇が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及びプリオン病などの様々な神経変性疾患の病理学に関連することが報じられている(Llanosら、DNA Cell Biol. 2002, Vol.21: pp.259〜270; Carriら、Funct. Neurol 2001, Vol.16: pp.181〜188; Perryら、CNS Drugs 2002, Vol.16: pp.339〜352; Kowalik-Jankowskaら、Environ Health Perspect, 2002, Vol.5: pp.869〜870; Maynardら、J. Biol. Chem. 2002年9月4日;Gnjecら、Front Biosci. 2002, pp.16〜23; Strausakら、Brain Res. Bull. 2001 Vol.55: pp.175〜185; Brown, Brain Res. Bull. 2001, Vol.55: pp.165〜173; Brown, Biochem. Soc. Trans 2002, Vol.30: pp.742〜745)。
【0097】
更になお、本発明によれば、構造式(I)の化合物及び/又はそれら医薬組成物は、患者、好適にはヒトに対して、NF-κB活性の調節不良又は炎症性反応の炎症の調節不良を特徴とする疾患を治療するために投与されて良い。
【0098】
更に、所定の実施態様において、本発明の化合物及び/もしくはそれらの医薬組成物は、患者、好適にはヒトに対して、異常な血管新生銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満もしくはNF-κB調節障害を特徴とする様々な疾患もしくは障害に対する予防的手段として投与される。従って、構造式(I)の化合物及び/又はそれらの医薬組成物は、ある疾患又は障害及び現在治療されている他の疾患(例えば、ガンを治療する間にWilsonb病、又はアルツハイマー病)を予防するために使用されても良い。
【0099】
本発明の構造式(I)の化合物及び/又は式(I)の化合物の医薬組成物の、異常な血管形成、銅代謝疾患、神経変性性疾患、肥満もしくはNF-κB調節障害を特徴とする様々な疾患もしくは障害を治療もしくは予防することにおける適合性は、当業界及び本明細書中で記載された方法によって特定されて良い。従って、構造式(I)の化合物及び/又はそれらの医薬組成物をアッセイして使用し、異常な血管新生銅代謝疾患、銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満又はNF-κB調節障害を治療もしくは予防することは当業者の能力の範囲内である。
【0100】
治療/予防投与
本発明の化合物及び/又はそれらの医薬組成物は、ヒト医薬において有利に使用されて良い。上節5.5において先に記載されたように、構造式(I)の化合物及び/又はそれらの医薬組成物は、異常な血管新生銅代謝疾患、神経変性疾患、肥満又はNF-κB調節障害を特徴とする様々な疾患の治療もしくは予防のために有用である。
【0101】
上記疾患もしくは障害を治療もしくは予防するために使用される場合、本発明の化合物及び/又はそれらの医薬組成物は、単独でもしくは他の剤との組み合わせにおいて投与もしくは適用されて良い。本発明の化合物及び/又はそれらの医薬組成物は、単独であるいは、本発明の他の化合物など、他の医薬活性剤(例えば、他の抗ガン剤、他の抗血管形成剤、他のキレート物質の例えば、銅、ペニシリンなど、及び他の抗肥満剤)との組み合わせにおいて投与されても良い。
【0102】
本発明は、治療上有効な量の本発明の医薬組成物及び/又は化合物による治療を必要とする患者に対して投与することよる治療及び予防の方法を供する。患者は、動物、一層好適には、ホニュウ動物そして一層好適には、ヒトである。
【0103】
本発明の化合物及び/又は本発明の医薬組成物であって、本発明の1又は複数の化合物を含んで成る組成物は、好適に経口投与される。本発明の化合物及び/又は本発明の医薬組成物は任意の他の都合良い経路、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜裏層(例えば、口粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介する吸収によって投与されても良い。投与は全身的又は局所的でありうる。本発明の化合物及び/又は医薬組成物を投与するために使用されて良い様々な投与システム(例えば、リポソーム、微細粒子、マイクロカプセル、カプセルなどへの封入)が知られている。投与の方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、脊髄内、膣内、経皮、直腸内、吸入によって、又は局所的に、特に耳、鼻、目もしくは皮膚に対する投与が挙げられるがそれらに限定されない。好適な投与の態様は実施者の裁量により、そしてある部分では医療状態の部位に依存するだろう。大部分の場合、投与は本発明の化合物及び/又は医薬組成物の血中への放出をもたらすだろう。
【0104】
特定の実施態様において、本発明の1もしくは複数の化合物及び/もしくはそれらの医薬組成物が治療を必要とする領域に対して局所的に投与されうることが望ましい。このことは、例えば、そして限定的ではなく、手術中の局所注入、局所適用(例えば、手術後の創傷ドレッシングとの連携において)、注射によって、カテーテルによって、座薬によって、又は移植によって達成されて良く、当該移植片は、多孔質、非多孔質、又はゼラチン状物質、例えば、シアラスト膜(sialastic membrane)などの膜、又は繊維である。ある実施態様において、投与はガン又は関節炎の部位(又は前者の部位)に直接注射されて良い。
【0105】
所定の実施態様において、本発明の1もしくは複数の化合物及び/もしくはそれらの医薬組成物が、任意の適切な経路、例えば、脳室内、鞘内及び上皮注射によって中枢神経系へと導入されることが望ましい。脳室内注射は、脳室内カテーテル、例えば、リザーバーのOmmayaリザーバーなどに対して取り付けられるカテーテルによって促進されうる。
【0106】
本発明の化合物及び/又は医薬組成物は、吸入によって肺に対して直接投与されて良い。吸入による投与について、本発明の化合物及び/又は医薬組成物は多くの異なる装置によって肺へと都合よくデリバリーされうる。例えば、適切な低沸点推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は任意の他の適切なガス)が入っている小型容器を使用する定量吸入器(「MDI」)が、本発明の化合物を肺に対して直接デリバリーするために使用されて良い。
【0107】
代替的に、乾燥粉末吸入器(「DPI」)装置が本発明の化合物及び/又は医薬組成物を肺に対して投与するために使用されて良い。DPI装置は典型的に、容器内で乾燥粉末の雲(これは次いで患者によって吸入される)を作るためにガスを爆発させるなどの機構を使用する。DPI装置も当業界で周知である。一般的な変更版は、多投与DPI(「MDDPI」)システムであり、それは1回超の治療用量のデリバリーを可能にする。MDDPI装置は、AstraZeneca, Glaxo Wellcome, IVAX, Schering Plough, SkyePharma and Vecturaなどの会社から入手可能である。例えば、吸入器(inhaler)もしくは吸入器(insufflator)において使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジは、本発明の化合物と適切な粉末基剤の例えば、これらのシステムのためのラクトースもしくはデンプンの粉末混合物を含み処方されて良い。
【0108】
本発明の化合物及び/もしくはそれらの医薬組成物を肺に対して投与するために使用されて良い他のタイプの装置は、例えば、Aradigm Corporationによって供給される液体スプレー装置である。液体スプレーシステムは、液体薬物製剤をエアロゾル化するために非常に小さいノズル穴を使用しこのエアロゾルは次いで、肺に対して直接吸入されうる。
【0109】
ある実施態様において、ネブライザーが本発明の化合物及び/又は医薬組成物を肺に対して投与するために使用されている。ネブライザーは、容易に吸入されうる微細粒子を形成するために、例えば、超音波エネルギーを使用することによって液体薬物製剤からエアロゾルを生み出す(本明細書中参照によって組み込まれている、Verschoyleら、British. J. Cancer, 1999, 80, Suppl. 2, 96, を参照のこと)。ネブライザーの例としては、Sheffield/Systemic Pulmonary Delivery Ltd(Armerら、米国特許第5,954,047号;van der Lindenら、米国特許第5,950,619号;van der Lindenら、米国特許第5,970,974号を参照のこと)、Aventis and Batelle Pulmonary Therapeuticsによって提供された装置が挙げられる。
【0110】
他の実施態様において、電気流体力学(「EHD」)装置が本発明の化合物及び/又はそれらの医薬組成物を肺に対して投与するために使用されて良い。EHDエアロゾル装置は液体薬物溶液又は懸濁をエアロゾル化するために電気エネルギーを使用する(Noakesら、米国特許第4,765,539号を参照のこと)。製剤の電気化学的特性は、本発明の化合物及び/又は医薬組成物が肺に対してEHDエアロゾル装置により投与される場合に最適にするための重要なパラメーターであり、そしてかかる最適化は当業界で慣習的に行われている。EHDエアロゾル装置は、既存の肺デリバリー技術よりも一層効率的に薬物を肺に対してデリバリーする。
【0111】
他の実施態様において、本発明の化合物及び/もしくはそれらの医薬組成物は、ベシクル、特にリポソームにおいてデリバリーされて良い(Langer, 1990, Science, Vol.249: pp.1527〜1533; Treatら、“Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,”Lopez-Berestein and Fidler (著者), Liss, New York, pp.353〜365 (1989) を参照のこと;一般に“Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,”Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp.353〜365 (1989) を参照のこと)。
【0112】
他の実施態様において、本発明の化合物及び/もしくはそれらの医薬組成物は持続放出システム、好適には、経口持続放出システムを介してデリバリーされて良い。他の実施態様において、ポンプが使用されうる(上記、Langer; Sefton, 1987, CRC Crit Ref Biomed Eng. Vol.14: p.201; Saudekら、1989, N.Engl. J Med. Vol.321: p.574)。
【0113】
他の実施態様において、ポリマー性物質が使用されて良い(“Medical Applications of Controlled Release,”Langer and Wise (著書), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);“Controlled Drug Bioavailability,”Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983, J Macromol. Sci. Rev. Macromol Chem. Vol.23: p.61を参照のこと;Levyら、1985, Science Vol.228: p.190; Duringら、1989, Ann. Neurol.Vol.25: p.351; Howardら、1989, J.Neurosurg. Vol.71: p.105も参照のこと)。他の実施態様において、ポリマー性物質は経口持続放出デリバリーのために使用されている。好適なポリマーとしては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース(最も好適にはヒドロキシプロピルメチルセルロース)が挙げられる。他の好適なセルロースエーテル記載されている(Alderman, Int. J.Pharm. Tech. & Prod. Mfr., 1984, Vol.5 (No.3) pp.1〜9)。薬物放出に影響を与える因子は当業者に公知であり、そして記載されている(Bamba et al., Int. J.Pharm., 1979, Vol.2, p.307)。
【0114】
他の実施態様において、腸溶コートされた製剤が経口持続放出投与のために使用されて良い。好適なコーティング物質としては、pH依存溶解度(即ち、pHにより調節される放出)を伴うポリマー、飲み込み、溶解もしくは浸潤の、低速もしくはpH依存速度(即ち、時間により調節される放出)を伴うポリマー、酵素によって分解される(即ち、酵素により調節される放出)ポリマー及び圧が上昇することで破壊される(即ち、圧力により調節される放出)硬い層を形成するポリマーが挙げられる。
【0115】
更に他の実施態様において、浸透圧デリバリーシステム(Vermaら、Drug.Dev.Ind.Pharm.,2000,vol.26:pp.695〜708)が経口持続放出投与のために使用されている。他の実施態様において、OROS(登録商標)浸透圧装置(Theeuwesら、米国特許第3,845,770号;Theeuwesら、米国特許第3,916,889号)が経口持続放出デリバリー装置のために使用されている。
【0116】
更に他の実施態様において、持続放出システムは、本発明の化合物及び/又は医薬組成物の標的の近傍に配置されて良く、従って、全身用量の一部のみが必要となる(Goodson、”Medical Applications of Controlled Release”Vol.2、pp.115〜138(1984)を参照のこと)。Langer、1990、Science Vol.249:pp.1527〜1533において論じられた他の持続放出システムも使用されて良い。
【0117】
本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物は、治療上有効な量の本発明の1又は複数の化合物を、好適には、精製された形態において、患者に対して適切に投与するための形態を供するために、適量の医薬的に許容できるビヒクルと一緒に含んで成る。患者に対して投与される場合、本発明の化合物及び医薬的に許容できるビヒクルは好適に滅菌されている。本発明の化合物が静脈内に投与される場合は、水が好適なビヒクルである。塩類溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も液体ビヒクル、特に注射可能溶液のためのビヒクルとして使用されて良い。適切な医薬ビヒクルとしては、賦形剤の例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、コムギコ、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。本発明の医薬組成物は、もし所望されれば、少量の湿潤もしくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含んでも良い。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤も使用されて良い。
【0118】
本発明の化合物を含んで成る医薬組成物は、常用の、混合、溶解、顆粒化、ドラジェー調製、すり潰し、エマルション化、封入化、捕捉、又は凍結乾燥法によって製造されて良い。医薬組成物は、常用の態様において、本発明の化合物を医薬的に使用されて良い製剤へと加工することを促す、1又は複数の生理学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤又は補助剤を使用することで処方されて良い。適切な製剤は、選定の投与経路に依存する。
【0119】
本発明の医薬組成物は、溶液、懸濁、エマルション、錠剤、ピル、ペレット、カプセル、液体を含むカプセル、粉末、持続放出製剤、座薬、エマルション、エアロゾル、スプレー、懸濁、又は任意の他の使用に適した形態をとって良い。1つの実施態様において、医薬的に許容できるビヒクルはカプセルである(Grosswaldら、米国特許第5,698,155号を参照のこと)。適切な医薬ビヒクルの他の例は当業界で記載されている(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Philadelphia College of Pharmacy and Science、第20版、2000を参照のこと)。
【0120】
局所投与のために、本発明の化合物は、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁など当業者に周知のように処方されて良い。
【0121】
全身製剤としては、注射、例えば、皮下、静脈、筋内、鞘内又は腹腔内注射によって投与されるために設計されたもの並びに経皮、経粘膜、経口又は肺投与のために設計されたものを含む。全身製剤は気道粘膜の粘膜毛様体クリアランスを高めるかあるいは粘膜粘度を下げる更なる活性剤との組み合わせにおいて使用されて良い。これらの活性剤としては、Naチャネル遮断薬、抗生物質、N-アセチルシステイン、ヘモシステイン及びリン脂質が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0122】
ある実施態様において、本発明の化合物は、人間に対して静脈投与するために適合された医薬組成物として、慣用の手順に従って処方されている。典型的に、静脈投与するための本発明の化合物は、滅菌等張水性バッファーにおける溶液である。注射のために、本発明の化合物は、水溶液、好適には生理学的に許容できる、Hanks溶液、Ringer溶液などの
バッファー、又は生理食塩緩衝液において処方されて良い。この溶液は、懸濁化、安定化及び/又は分散剤などの処方剤を含みうる。必要な場合、医薬組成物は安定化剤をも含んで良い。静脈投与のための医薬組成物は、任意に、注射の部位における痛みを和らげるためにリグノカインなどの局所麻酔をも含む。一般に、成分は個別もしくは単位投与形態と一緒に混合されて、例えば、凍結乾燥粉末もしくはアンプルなどのハーメチックシールされた容器もしくは活性剤の量を示す小袋における水を含まない濃縮物として供給されて良い。本発明の化合物が注入によって投与される場合、それは、例えば、無菌医薬等級の水又は塩類溶液が入っている注入ボトルで分散されて良い。本発明の化合物が注入によって投与される場合、注射のための滅菌水又は塩類溶液のアンプルは、成分が投与前に混合されるように提供されて良い。
【0123】
経粘膜投与のために、浸潤されるべきバリアーに対して適切な浸透剤が製剤中で使用されている。かかる浸透剤は一般に当業界で公知である。
【0124】
経口デリバリーのために医薬組成物は、錠剤、ロゼンジ、水性又は油性懸濁、顆粒、粉末、エマルション、カプセル、シロップ、又はエリキシルなどの形態であって良い。傾向的に投与される医薬組成物は、1又は複数の任意の剤、例えば、甘味剤の例えば、フルクトース、アスパルテーム又はサッカリン;香味剤の例えば、ペパーミント、ウィンターグリーンの油、又はさくらんぼ着色剤並びに防腐剤を、医薬的に口当たりの良い製剤にするために含んで良い。更に、錠剤又はピル形態において、組成物は、胃腸管での分解及び吸収を遅らせ、長時間に渡り持続的な作用を提供するためにコーティングされて良い。浸透圧により活性を駆動する化合物を取り囲む選択的半透膜も本発明の化合物を経口投与するために適している。これら後者のプラットフォームにおいて、カプセルを取り囲む環境に由来する流体は、該化合物を駆動することによって吸収する。液体は膨張して開口部を介して剤又は剤成分を移動させる。これらのデリバリープラットフォームは、即時放出製剤のスパイク特性とは対照的に、本質的に0次デリバリープロファイルを供することができる。時間遅延物質の例えば、グリセロールモノステアレート又はグリセロールステアレートも使用されて良い。経口組成物は、標準的なビヒクルのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含んで良い。かかるビヒクルは好適に医薬等級である。
【0125】
経口液体製剤、例えば、懸濁、エリキシル及び溶液のために、適切な担体、賦形剤又は希釈剤としては、塩類溶液、アルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)油、アルコール、弱酸性バッファー(pH4〜6)(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、約5.0mM〜50.0mMにおける)などを含む。更に、香味剤、防腐剤、着色剤、胆汁塩、アシルカルニチンなども加えられて良い。
【0126】
頬投与のために、常用の態様において処方された医薬組成物は、錠剤、ロゼンジなどの形態をとって良い。
【0127】
ネブライザー及び液体スプレー装置及びEHDエアロゾル装置と共に使用するために適した液体薬物製剤は、典型的に本発明の化合物を医薬的に許容できるビヒクルと共に含む。好適に、医薬的に許容できるヒヒクルは、液体の例えば、アルコール、水、ポリエチレングリコール又はペルフルオロカーボンである。任意に、他の物質も本発明の化合物の溶液又は懸濁の特性を変えるために加えられて良い。好適に、この物質は、液体の例えば、アルコール、グリコール、ポリグリコール又は脂肪酸である。エアロゾル装置中で使用するために適した液体薬物溶液又は懸濁を処方するための他の方法は当業者に公知である(例えば、Biesalski、米国特許第5,112,598号;Biesalski、米国特許第5,556,611号を参照のこと)。
【0128】
本発明の化合物は、ココアバターもしくは他のグリセリドなど常用の座薬基剤を含む座薬もしくは持続浣腸などの腸もしくは膣医薬組成物において処方されても良い。
【0129】
先に記載された製剤に加えて、本発明の化合物はデポット調製物としても処方されて良い。かかる長期作用製剤は、移植(例えば、皮下又は筋内)又は筋内注射によって投与されて良い。従って、例えば、本発明の化合物は、適切なポリマー物質もしくは疎水性物質(例えば、許容できる油中のエマルションとして)もしくはイオン交換樹脂により、又は、控えめに溶ける誘導体として、例えば、控えめに溶ける塩として処方されて良い。
【0130】
本発明の化合物が酸性である場合、それは上記任意の製剤中、遊離酸、医薬的に許容できる塩、溶媒和物又は水和物として含まれて良い。医薬的に許容できる塩は、実質的に遊離酸の活性を維持し、塩基との反応によって調製されて良く、そして対応する遊離酸形態よりも水性及び他のプロトン性溶媒において一層可溶性である傾向がある。
【0131】
治療用量
本発明の化合物もしくはその医薬的組成物は、一般に目的を達成するために有効な量で使用されるだろう。異常な血管新生、銅代謝疾患、神経変性疾患及び肥満を治療もしくは予防するために使用するために、構造式(I)の化合物及び/又はそれらの医薬組成物は、治療上有効な量で投与もしくは適用されている。
【0132】
本明細書中で開示された特定の疾患もしくは症状の治療において有効であろう本発明の化合物の量は、疾患もしくは症状の性質に依存するだろうし、そして先に記載されたように当業者に公知の標準的な技術によって投与されて良い。加えて、in vitro又はin vivoアッセイも任意に、最適な投与範囲を同定する助けとして使用されて良い。投与される本発明の化合物の量は、当然、他の因子のなかでも、治療される対象者、該対象者の体重、病気の症度、投与の態様及び処方する医者の判断に依存するだろう。
【0133】
例えば、投与量は、単回投与によって、多用途又は持続放出によって、医薬組成物においてデリバリーされて良い。1つの実施態様において、本発明の化合物は、経口持続放出投与によってデリバリーされる。好適に、この実施態様において、本発明の化合物は、1日2回(一層好適には、1日1回)投与される。投与は断続的に繰り返されて良く、単独でかあるいは他の薬物との組み合わせにおいて供されて良く、そして疾患状態又は障害の有効な治療に必要とされる限り続けられて良い。
【0134】
経口投与のための、適切な投与量範囲は、薬物の潜在性に依存するが、一般に、本発明の化合物約0.001mg〜約200mg/kg体重である。投与量範囲は当業者に公知の方法によって容易に決定されて良い。
【0135】
静脈内(I.V.)投与のための適切な投与範囲は、約0.01mg〜約100mg/kg体重である。鼻腔内投与のための適切な投与範囲は、約0.01mg〜約1mg/kg体重である。座薬は一般に、本発明の化合物を約0.01mg〜約50mg/kg体重含み、そして活性成分を約0.5重量%〜約10重量%の範囲で含む。内皮、筋内、腹腔内、皮下、硬膜外、舌下又は脊髄内投与のための推奨投与量は、約0.001mg〜約200mg/kg体重である。有効投与量は、in vitro又は動物モデル試験系から導かれた投与量反応曲線から外挿されて良い。かかる動物モデル及び系は当業界で公知である。
【0136】
本発明の化合物は、好適にin vitro及びin vivoで、所望の治療又は予防活性を評価するために、ヒトにおける使用前に評価される。例えば、in vitroアッセイは、本発明の特定の化合物の投与又は本発明の化合物の組み合わせの投与のどちらが、ひきつけを減らすために好ましいかを特定するために使用されて良い。本発明の化合物は、動物モデル系を使用することで有効且つ安全であることも証明されて良い。
【0137】
好適に、本明細書中に記載の本発明の化合物の治療上有効な投与量は、有意な毒性を引き起こさずに治療上の利点を供するだろう。本発明の化合物の毒性は、標準的な医薬手順を使用することで特定されて良く、そして当業者によって容易に確認されるだろう。毒性と治療効果の間の投与量比は、治療上の指標である。本発明の化合物は好適に、疾患及び障害を治療することにおいて特に高い治療指標を示すだろう。本明細書中に記載された本発明の化合物の投与量は、好適に、毒性をほとんど伴わないかあるいは伴わない有効な投与量を含む循環する濃度の範囲であろう。
【0138】
併用療法
本発明の所定の実施態様において、本発明の化合物及び/又は医薬組成物は、1以上の他の治療剤との併用療法において使用されて良い。本発明の化合物及び/又は医薬組成物と治療剤は、相加的に、又は一層好適には、相乗的に働く。好適な実施態様において、本発明の化合物又は本発明の医薬組成物は、他の治療剤の投与と同時に投与されており、他の治療剤は、本発明の化合物と同じ医薬組成物の一部でありうるかあるいは異なる医薬組成物の一部でありうる。他の実施態様において、本発明の化合物の医薬組成物は、他の治療剤の投与の前又は同時に投与される。
【0139】
特に、他の実施態様において、本発明の化合物及び/又は医薬組成物は、他の化学治療剤との併用療法において使用されて良い。その化学治療剤とは、(例えばアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド、メコロレタミン、メルファレン、クロラムブチル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホン酸塩(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア、トリアジン)抗体謝剤(例えば、葉酸類似物、ピリミジン類似物(例えば、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シトシンアラビノシド、など)、プリン類似物(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、など)、天然酸物(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、タートイポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトルマイシン、マイトマイシン、C,L−アスパラギナーゼ、インターフェロンα)、白金配位錯体(例えば、cis−プラチナ、カルボプラチンなど)、ミトキサントロン、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ホルモン及びアンタゴニスト(例えば、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、ジエチルスチルベストール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、テストステロンプロピオネート、フルオキシメステロン、フルタミド、ループロリドなど)、抗血管新生剤又は阻害物質(例えば、アンジオスタチン、レチノイン酸及びパクリタキセル、エストラジオール誘導体、チアゾロピリミジン誘導体など)、アポトーシス誘導剤(例えば、アポトーシスを阻害するガン遺伝子を遮断するアンチセンスヌクレオチド、腫瘍抑制剤、TRAIL、TRAILポリペプチド、Fas−関連因子、1インターロイキン−1β−転換酵素、ホスホチロシン阻害物質、RXRレチノイドレセプターアゴニスト、カルボスチリル誘導体など)、キレート物質(ペニシラミン、亜鉛、トリエンチンなど)及び他の抗肥満症剤である。
【0140】
治療キット
本発明は、本発明の化合物又は医薬組成物を含んで成る治療キットを提供する。治療キットは他の化合物(例えば、化学療法剤、天然産物、ホルモンもしくはアンタゴニスト、抗血管形成剤もしくは阻害物質、アポトーシス誘導剤もしくはキレート物質)又はこれら他の化合物の医薬組成物を含んで成りうる。
【0141】
治療キットは、他の成分(他の化合物又はこれら他の化合物の医薬組成物)の有無で本発明の化合物もしくは医薬組成物が入っている単一容器を有するかあるいは各成分のための個別の容器を有して良い。好適に、本発明の治療キットは、第二の化合物(好適には、化学療法剤、天然の産物、ホルモン又はアンタゴニスト、抗血管新生剤又は阻害物質、アポトーシス誘導剤又はキレート物質)又はその医薬組成物の共投与との組み合わせにおいて使用するためにパッケージングされた本発明の化合物及び/又は医薬組成物を含む。患者に対して投与する前にキットの成分は予め複合されているかあるいは各成分は個別の容器中にあって良い。
【0142】
本発明のキットは、1又は複数の液体溶液、好適には水溶液、一層好適には無菌水溶液である。本発明のキットの成分は、固体として投与されても良く、それは、好適には他の個別の容器中に提供されている適切な溶媒の添加によって液体へと転換されて良い。
【0143】
治療キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ又は任意の他の、固体もしくは液体を封鎖するための手段であって良い。通常、1超の成分がある場合、キットは第二のバイアルかあるいは他の容器を含み、それにより個別投与が可能になる。キットは医薬的に許容できる液体のための他の容器をも含む。
【0144】
好適に、治療キットは、該キットの成分の投与を可能にする装置(例えば、1又は複数の針、シリンジ、点眼装置、ピペットなど)を含むだろう。
【実施例】
【0145】

本発明は更に以下の例を参照することによって規定され、その例は詳細に本発明の化合物の調製及び生物活性をアッセイするための方法を記載する。当業者には、多くの変更、物質と方法の両方が本発明の範囲を逸脱することなく行われることが明らかだろう。
【0146】
実施例1:テトラチオモリブデン酸塩誘導体の合成のための一般手順
商業的に入手可能な水酸化第四級アンモニウム(2当量)の水性溶液をアンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(1当量)に対して加え、しかる後に、全ての固形物質が溶ける迄脱イオン水を加えた。この溶液をロータリーエバポレーターに真空(約5〜10torr)下20℃で2時間に渡り置いて、そして水を、必要に応じ、定体積を維持するために置換した。この手順により沈殿がもたらされれば、固体をろ過により回収し、イソプロパノール、エタノール、及びジエチルエーテルで洗浄し、そして真空デシケーター中、P2O5の存在下、高真空下で24時間に渡り乾燥させた。もし溶液が透明なままであれば、反応混合物を最初にろ過して小量の固体不純物を取り除き、そして産物を該ろ過物からイソプロパノールで沈殿させた。固体をろ過により回収し、イソプロパノール、エタノール、及びジエチルエーテルで洗浄し、次いで真空デシケーター中、P2O5の存在下、高真空下で24時間に渡り乾燥させた。
【0147】
実施例2:テトラチオモリブデン酸塩誘導体の合成のための一般手順
固体状第四級アンモニウムハロゲン化物(2当量)を無水アセトニトリル(5ml/mmolのTM)中のアンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(1当量)の懸濁に対して加え、生じる混合物を窒素の下、室温で18時間に渡り撹拌した。この手順により沈殿がもたらされれば、固体をろ過により回収し、水、イソプロパノール、エタノール、及びジエチルエーテルで洗浄し、そして真空デシケーター中、P2O5の存在下、高真空下で24時間に渡り乾燥させた。もし溶液が透明なままであれば、反応混合物を最初にろ過し、そしてろ過物をin vacuoで濃縮した。生じる固体を水中で懸濁し、そしてろ過し、そして固体をイソプロパノール、エタノール、及びジエチルエーテルで洗浄し、次いで真空デシケーター中、P2O5の存在下、高真空下で24時間に渡り乾燥させた。
【0148】
実施例3:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(トリエチルメチルアンモニウム)
この化合物をアンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(994mg、3.82mmol)、及び水酸化トリエチルメチルアンモニウム(5.12g、7.69mmol)の20重量%水溶液から実施例1の手順に従い調製し、そして、1.05g(60%)の表題化合物を赤橙色の固体として提供した。
IR (KBr, cm-1) 472; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ3.27 (q, J=7.3Hz, 12H), 2.89 (s, 6H), 1.19 (tt, J=7.3, 1.8Hz, 18H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ55.1 (6C), 46.1 (2C), 7.7 (6C); ES MS m/z (トリエチルメチルアンモニウム)+ 116.3; UV (H2O) 468nm (ε=12000)。分析:計算値 C14H36MoN2S4:C, 36.82; H, 7.95; N, 6.13。実測値:C, 37.07; H, 7.88; N, 6.24。
【0149】
実施例4:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(トリエチルフェニルアンモニウム)
この化合物をアンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(1.00g、3.85mmol)、及びトリエチルメチルアンモニウム水酸化物(15.1g、7.71mmol)の10重量%水溶液から実施例1の手順に従い調製し、そして388mg(17%)の表題化合物を橙色の固体として提供した。
IR (KBr, cm-1) 470; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ7.91 (q, J=8.2Hz, 4H), 7.69-7.55 (m, 6H), 3.89 (q, J=6.9Hz, 12H), 1.04 (t, J=6.9Hz, 18H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ141.9 (2C), 130.5 (4C), 130.1 (2C), 122.7 (4C), 55.3 (6C), 8.0 (6C); ES MS m/z (トリエチルフェニルアンモニウム)+ 178.2; UV (H2O) 468nm (ε=12300)。分析:計算値 C24H40MoN2S4:C, 49.63; H, 6.94; N, 4.82; S, 22.08。実測値:C, 49.39; H, 7.23; N, 5.15; S, 22.41。
【0150】
実施例5:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(コリン)
本願において、ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩はビス[2−(ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]テトラチオモリブデン酸塩と同じ化学構造を有する。この化合物をアンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(1.08g、4.15mmol)及びコリン水酸化物(2.01g、8.29mmol)の50重量%水溶液から実施例1の手順に従い調製して、1.30g(73%)の表題化合物を赤橙色の固体として提供した。
IR (KBr, cm-1) 3389, 474; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ5.21 (t, J=4.6Hz, 2H), 3.87-3.79 (m, 4H), 3.43 (t, J=4.6Hz, 4H), 3.13 (s, 18H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ67.1 (2C), 55.5 (2C), 53.3 (6C); ES MS m/z (コリン)+ 104.2; UV (H2O) 468nm (ε=12900)。分析:計算値 C10H28MoN2O2S4:C, 27.77; H, 6.52; N, 6.48; S, 29.65; Mo, 22.18。実測値:C, 27.63; H, 6.84; N, 6.39; S, 29.86; Mo,22.23。
【0151】
実施例6:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(アセチルコリン)
この化合物を塩化アセチルコリン(723mg、4.03mmol)及びアンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(500mg、1.92mmol)から実施例2の手順に従い調製して、390mg(39%)の表題化合物を赤橙色の固体として提供した。
IR (KBr, cm-1) 1747, 1728, 482, 469, 461; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ4.47-4.41 (m, 4H), 3.72-3.69 (m, 4H), 3.16 (s, 18H), 2.07 (s, 6H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ170.1 (2C), 63.9 (2C), 58.0 (2C), 53.1 (6C), 20.9 (2C); ES MS m/z (アセチルコリン)+ 146.4; UV (H2O) 468nm (ε=13300)。分析:計算値 C14H32MoN2O4S4:C, 32.55; H, 6.24; N, 5.42; S, 24.82。実測値:C, 32.66; H, 6.23; N, 5.51; S, 24.97。
【0152】
実施例7:テトラチオモリブデン酸塩、ビス[2−(メトキシ)エチルトリメチルアンモニウム]
この化合物をアンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(5g、19.2mmol)及び2−(メトキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(6.199g、40.3mmol、下の、合成に関するこの例を参照のこと)からアセトニトリル(125ml)の懸濁を撹拌することで調製した。この懸濁を2時間に渡り撹拌し、その間に微細な明るい赤色の粉末が形成された。沈殿をガラスフリット(flit)上でろ過し、そしてアセトニトリルを蒸発させて、1.76g(20%)の表題化合物を赤橙色の固体として提供して真空中で乾燥させた。
分析:計算値 C14H32MoN2O4S4:C, 31.293; H, 7.003; N, 6.082。実測値:C, 30.85; H, 6.89; N, 6.11。
【0153】
2−(メトキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリドを、1−クロロ−2−メトキシエタン(3.636g、38.5mmol、下の合成に関するこの例を参照のこと)を25mlの丸底フラスコ中でトリメチルアミン(水中40%、7.77ml、50mmol)と組み合わせることによって調製した。この混合物を24時間に渡り還流温度で加熱し、室温に冷却し、そして15mlのジエチルエーテルで3回洗浄した。溶媒を水層から蒸発させ、塊状の白色固体を残し、それをイソプロパノールで洗浄し、そして真空下で乾燥させ、4.136g(70%)の化合物を提供した。
【0154】
1−クロロ−2−メトキシエタンを、窒素雰囲気下、20mlのクロロホルムと2−メトキシエタノール(5.4ml、69mmol)で組み合わせることによって調製した。塩化チオニル(5.0ml、69mmol)とピリジン(5.5ml、69mmol)をシリンジで連続して加え、室温で1時間に渡り撹拌し、そして更に1時間還流させた。反応成分を冷却して、水で急冷し、25mlの1M HClで2度洗浄し、そして溶媒を蒸発させた。この反応産物をシリカゲル上でろ過し、そしてアセトンで溶出させ、5.94g(91%)の明るい茶色の成分を提供した。
【0155】
ビス[2−(メトキシ)エチルトリメチルアンモニウム]テトラチオモリブデン酸塩の本発明の例に従う合成の機構は下記のとおりである。
【化14】

【0156】
実施例8:テトラチオモリブデン酸塩、ビス[アルキルジメチル(フェニルメチル)アンモニウム]
この化合物をアンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(1.00g、3.84mmol)及び塩化ベンザルコニウム(2.90g、8.07mmol)から実施例6の手順に従い調製し、そして2.75g(82%)の表題化合物を、高粘度の赤色油として提供した。
IR (フィルム, cm-1) 471; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ7.58-7.46 (m, 10H), 4.54 (s, 4H), 3.24-3.20 (m, 4H), 2.95 (s, 12H), 1.83-1.71 (m, 4H), 1.30-1.21 (m, 40H), 0.88-0.81 (m, 6H); ES MS m/z [ドデシルジメチル (フェニルメチル) アンモニウム]+ 304.7, [テトラデシルジメチル (フェニルメチル) アンモニウム]+ 332.7; UV (DMSO) 473.5nm (ε=10100)。
【0157】
実施例9:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(1−エチル−3−メチル−1H−イミダゾリウム)
この化合物をテトラチオモリブデン酸塩、ビス(アンモニウム)(1.00g、3.84mmol)及び1−エチル−3−メチル−1H−イミダゾリウムクロリド(1.18g、8.06mmol)から、以下の変更を伴い、実施例2の手順に従い調製した。その変更とは、この混合物をろ過して、そのろ過物をin vacuoで濃縮し、そして生じる固体をろ過して、EtOH、及びエチルエーテルで濯ぎ、そして高真空デシケーター中、24時間に渡り乾燥し、表題の化合物(0.419g、24%)をえび茶色の固体として提供した。
IR (KBr ペレット、cm-1) 3064, 1566, 1167, 465; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ9.24 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.69 (s, 1H), 4.20 (q, J=7.3Hz), 3.86 (s, 3H), 1.40 (t, J=7.3Hz); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ136.9, 123.5, 121.8, 44.1, 35.7, 15.3; MS m/z (C6H11N2)+ 111.2; UV (H2O) 468nm (ε=11016)。分析:計算値 C12H22N4MoS4: C, 32.28; H, 4.97; N, 12.55; S, 28.72。実測値:C, 31.88; H, 4.87; N, 12.56; S, 28.79。
【0158】
実施例10:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(フェニルトリメチルアンモニウム)
この化合物をテトラチオモリブデン酸塩、ビス(アンモニウム)(1.00g、3.84mmol)及びフェニルトリメチルアンモニウムクロリド(1.38g、8.06mmol)から、実施例2の手順に従い調製し、表題の化合物(0.859g、45%)を橙色固体として提供した。
IR (KBr ペレット、cm-1) 3032, 3005, 1485, 1458, 473; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ7.98 (m, 4H), 7.61 (m, 6H), 3.62 (s, 18H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ147.2, 130.0, 129.9, 120.5, 56.3; MS m/z (C9H14N)+ 136.2; UV (H2O) 468nm (ε=12900)。分析:計算値 C18H28N2MoS4: C, 43.53; H, 5.68; N, 5.64; S, 25.83。実測値:C, 43.66; H, 5.98; N, 5.76; S, 25.73。
【0159】
実施例11:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)
この化合物をテトラチオモリブデン酸塩、ビス(アンモニウム)(0.500g、1.92mmol)及びベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(1.60gの40%水溶液、3.84mmol)から、実施例1の手順に従い調製し、表題の化合物(0.869g、91%)を赤色固体として提供した。
Mp 179-181℃ (変性); IR (KBr ペレット、cm-1) 2995, 1483, 1454, 474; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ7.52 (m, 10H), 4.56 (s, 4H), 3.04 (s, 18H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ132.9, 130.2, 128.9, 128.4, 67.7, 51.7; MS m/z (C10H16N)+ 150.3; UV (H2O) 468nm (ε=12008)。分析:計算値 C20H32N2MoS4: C, 45.78; H, 6.15; N, 5.34; S, 24.44。実測値:C, 45.67; H, 6.15; N, 5.62; S, 24.41。
【0160】
実施例12:テトラチオモリブデン酸塩、ペンタン−1,5−ビス(トリメチルアンモニウム)
CH3CN(2mL)中のテトラチオモリブデン酸塩、ビス(アンモニウム)(0.100g、0.226mmol)の懸濁に対して、水(2mL)中に溶かしたペンタン−1,5−ビス(トリメチルアンモニウム)ヨージド(0.054g、0.205mmol)の溶液を加えた。室温で5時間に渡り撹拌した後、茶色み掛かった赤色の固体をろ過して、水中に懸濁させ、再度ろ過し、そしてEtOH、iPrOH及びEt2Oで洗浄した。高真空デシケーター中で一晩乾燥させた後、赤色固体を獲得し表題の化合物(0.051g、60%)を与えた。
IR (KBr ペレット、cm-1) 2997, 472; 1H NMR (300MHz, MeOH-d5) δ3.22 (m, 4H), 2.98 (s, 18H), 1.70 (m, 4H), 1.31 (2H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ79.4, 64.9, 52.2, 21.6; UV (H2O) 468nm (ε=12025)。分析:計算値 C11H28N2MoS4: C, 32.03; H, 6.84; N, 6.79; S, 31.09。実測値:C, 32.40; H, 6.74; N, 6.80; S, 30.87。
【0161】
実施例13:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(2−ヒドロキシイミノメチル−1−フェニル−ピリジニウム)
この化合物をテトラチオモリブデン酸塩、ビス(アンモニウム)(1.00g、3.84mmol)及び2−ヒドロキシイミノメチル−1−メチル−ピリジニウムクロリド(1.39g、8.06mmol)から、以下の変更を伴い、実施例2の手順に従い調製した。その変更とは、水(10ml)を加えてハロゲン化アンモニウムを溶かした。表題の化合物(1.20g、66%)を赤色の固体として提供した。
IR (KBr ペレット、cm-1) 1002, 477; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ9.05 (app d, 1H), 8.67 (s, 1H), 8.54 (app t, 1H), 8.08 (app d, 1H), 8.04 (app t, 1H), 4.39 (s, 3H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ147.6, 147.1, 145.1, 142.0, 127.4, 124.9, 46.3; MS m/z (C7H9N2O)+ 137.1; UV (H2O) 468nm (ε=12092)。
【0162】
実施例14:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(1,1−ジメチルピロリジニウム)
この化合物をアンモニウムテトラチオリブデン酸塩(0.644g、2.47mmol)及び1,1−ジメチルピロリジニウムヨージド(1.18g、5.19mmol)から、実施例2の手順に従い調製し、橙色固体を提供した。
IR (KBr, cm-1) 471; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ2.09 (m, 4H), 3.10 (s, 6H), 3.47 (t, J=6Hz, 4H); 13C (75MHz, DMSO-d6) δ21.44, 50.86, 64.68; ES MS m/z (1,1-ジメチルピロリジニウム)+ 100; UV (H2O) 468nm (ε=14130)。分析:計算値 C12H28N2MoS4: C, 33.94; H, 6.64; N, 6.59; S, 30.21。実測値:C, 33.68; H, 6.97; N, 6.58; S, 30.06。
【0163】
実施例15:テトラチオモリブデン酸塩、エチレンビスアンモニウム
塩化アンモニウム(0.411g、7.68mmol)及びエチレンジアミン(0.230g、3.84mmol)を50mLの水に溶かした。この溶液に対して、アンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(1.0g、3.84mmol)を加えて、この混合物を3時間に渡り撹拌した。形成されたレンガ赤色の固体をろ過によって回収(233mg)し、イソプロパノール及びEt2Oで濯ぎ、そして真空デシケーター中真空下24時間に渡りP2O5の存在下で乾燥させた。親液体をそれらの本来の体積の約1/3に濃縮し、そして新たに形成された結晶を再度ろ過によって獲得し、そして濯いだ(387mg)。表題の化合物の総回収率は620mg(56.8%)であった。
IR (KBr, cm-1) 474; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ3.08 (s, 4H); 7.79 (br s, 4H); 13C (75MHz, DMSO-d6) δ37.08; ES MS m/z (エチレンビスアンモニウム)+ 60.5; UV (H2O) 468nm (ε=12310)。分析:計算値 C2H10MoN2S4: C, 8.39; H, 3.52; N, 9.78; S, 44.80。実測値:C, 8.75; H, 3.28; N, 10.05; S, 44.99。
【0164】
実施例16:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(1,4−ジメチルピリジニウム)
この化合物をアンモニウムテトラチオリブデン酸塩(0.50g、1.92mmol)及び1,4−ジメチルピロリジニウムヨージド(0.95g、4.03mmol)から、実施例2の手順に従い調製し、203mg(24%)の表題化合物を橙色固体として提供した。
IR (KBr, cm-1) 469; 1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ2.49 (s, 3H), 4.30 (s, 3H), 7.93, (d, J=6Hz, 2H), 8.85 (d, J=6Hz, 2H); 13C (75MHz, DMSO-d6) δ21.31, 47.03, 127.94 (2C), 144.77, 157.93; ES MS m/z ビス (1,4-ジメチルピリジニウム)+ 108.2; UV (H2O) 468nm (ε=13480)。分析:計算値 C14H20N2MoS4: C, 38.17; H, 4.57; N, 6.35; S, 29.11。実測値:C, 38.27; H, 4.24; N, 6.36; S, 28.89。
【0165】
実施例17:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(フェニルトリメチルアンモニウム)
この化合物を実施例1の手順に従い調製した。
IR (cm-1) 470; 1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ7.99-7.97 (d, J=8.4Hz, 4H), 7.66-7.56 (m, 6H), 3.62 (s, 18H); UV (H2O) 468nm (ε=13151)。分析:計算値 C18H28MoN2S4: C, 43.53; H, 5.68; N, 5.64; S, 25.83。実測値:C, 42.72; H, 5.20; N, 5.27; S, 27.54。
【0166】
実施例18:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(ビニルトリメチルアンモニウム)
この化合物を実施例1の手順に従い調製した。
IR (cm-1) 470; 1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ6.62-6.56 (m, 2H), 5.76 (d, J=15.2Hz, 2H), 5.54 (m, 2H), 3.24 (s, 18H); UV (H2O) 468nm (ε=18012)。
【0167】
実施例19:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(シクロプロピルメチルトリメチルアンモニウム)
この化合物を実施例2の手順に従い調製した。
IR (cm-1) 474; 1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ3.24 (d, J=7.2Hz, 4H), 3.11 (s, 18H), 1.16 (m, 2H), 0.72-0.69 (m, 4H), 0.42-0.38 (m, 4H); UV (H2O) 468nm (ε=14239)。
【0168】
実施例20:テトラチオモリブデン酸塩、ビス(ベンジルフェニルジメチルアンモニウム)
この化合物を実施例2の手順に従い調製した。
IR (cm-1) 470; 1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ7.76-6.60 (m), 5.00 (s), 2.87 (s); UV (H2O) 468nm (ε=15606)。
【0169】
実施例21:テトラチオモリブデン酸塩、ヘキサンー1,6−ビス(トリメチルアンモニウム)
この化合物を実施例2の手順に従い調製した。
IR (cm-1) 478; UV (DMSO) 468nm (ε=12666)。
【0170】
実施例22:テトラチオモリブデン酸塩、ビス[(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]
水酸化コリン(水中50重量%、2.56mL、11.3mmol)を2.5mLの脱イオン水中、アンモニウムモリブデン酸塩テトラハイドレートの溶液(1.0g、5.66mmolのMo)に対して加えた。硫化水素ガスを、室温で50分に渡りこの溶液中に曝気し、その間に溶液の色が茶色から赤に変わった。窒素ガスをこの溶液全体に10分に渡り曝気し、溶解したSHガスと溶媒の反応混合物を追い出し、そして溶媒を減圧下で取り除いた。赤色固体を脱イオン水中に溶かし(3×25mL)し、そして溶媒を繰り返して減圧下で除去し、溶解したアンモニアを除去した。組成の産物を20mLの脱イオン水中に溶かしてろ過した。イソプロパノールを水層に対して加えることによって産物を、沈殿させた。固体をろ過によって回収してエタノール(3×)及びジエチルエーテル(3×)で洗浄し、組成の表題化合物(2.218g、90%)を生み出した。脱イオン水及びイソプロパノールからの再結晶化、並びにエタノール(3×)及びジエチルエーテル(3×)での洗浄により表題の化合物(1.565g、62%)を板状の赤色結晶として供給した。
1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ5.23 (br t, J=4.7Hz, 2H), 3.85 (br s, 4H), 3.46-3.43 (m, 4H), 3.14 (s, 18H)。
【0171】
実施例23:テトラチオモリブデン酸塩、ビス[(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]
硫化水素ガスを水酸化コリン(水中50重量%、5.2mL、23mmol)及び水酸化アンモニウム(水中30重量%、8.2mL、70mmol)の溶液中に、風袋圧容器中6分に渡り曝気した。溶液中に溶けた硫化水素の量は2.5gだった。脱イオン水(2.5mL)中に溶かしたアンモニウムモリブデン酸塩テトラハイドレート(2.01g、11.4mmol)を圧力容器に対して加え、そしてその側面を脱イオン水(0.5mL)で洗浄した。反応混合物を密封し、そして室温で2時間と45分に渡り撹拌し、その間に赤色溶液中で結晶が形成された。この混合物を丸底フラスコへと移し、脱イオン水を固体が溶けるまで加えた。溶媒を減圧下で除去し、残留物を脱イオン水中で溶解させ、そして濃縮段階を繰り返した。生じる赤色残留物を脱イオン水及びイソプロパノールから再結晶化し、そして赤色の板をイソプロパノールで一度、エタノールで一度、ジエチルエーテルで一度洗浄し、そして真空デシケーター中、五酸化リンの存在下23時間に渡り乾燥させ、3.05g(62%)の表題の化合物を獲得した。
1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ5.21 (t, J=4.6Hz, 2H), 3.87-3.79 (m, 4H), 3.43 (t, J=4.6Hz, 4H), 3.13 (s, 18H); 13C NMR (75MHz, DMSO-d6) δ67.1 (2C), 55.5 (2C), 53.3 (6C); MS m/z (コリン)+ 104.2; UV (H2O) 468nm (ε=12400)。分析:計算値 C10H28MoN2O2S4: C, 27.77; H, 6.52; N, 6.48; S, 29.65。実測値:C, 27.76; H, 6.59; N, 6.85; S, 29.52。
【0172】
実施例24:テトラチオモリブデン酸塩、ビス[(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]
脱イオン水(200mL)を水酸化コリン(水中50重量%、38.2mL、14.7mmol)に対して加え、しかる後に、アンモニウムテトラチオモリブデン酸塩(19.1g、7.35mmol)を加え、そしてこのフラスコを全固形物が溶ける迄回転させた。この溶液を槽を伴うロータリーエバポレーターに真空(約5〜10torr)下20℃で110分に渡り置いて、そして水を、必要に応じ、定体積を維持するために置換した。この反応混合物をろ過して小量の固体不純物を取り除き、そして産物を該ろ過物からイソプロパノール(1L)で沈殿させた。固体をろ過により回収し、イソプロパノール、エタノール、及びジエチルエーテルで洗浄し、次いで、高真空下で24時間に渡り乾燥させて28.32g(89%)の所望の産物を橙色粉末として供給した。粗製の産物を脱イオン水及びイソプロパノールから再結晶化させ、赤色板を提供し、それをイソプロパノールで一度、エタノールで一度、ジエチルエーテルで一度洗浄し、そして真空デシケーター中、五酸化リンの存在下24時間に渡り乾燥させ、20.76g(65%)の表題の化合物を獲得した。
1H NMR (300MHz, DMSO-d6) δ5.23 (t, J=4.8Hz, 2H), 3.89-3.81 (m, 4H), 3.44 (t, J=4.8Hz, 4H), 3.14 (s, 18H)。分析:計算値 C10H28MoN2O2S4: C, 27.77; H, 6.52; N, 6.48; S, 29.65。実測値:C, 27.91; H, 6.21; N, 6.26; S, 29.70。
【0173】
実施例25:テトラチオモリブデン酸塩、ビス[(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム]
500mlのErlenmyerフラスコにおいて、[NH42[MoS4](100g、0.380mol)を200mLの蒸留水中で懸濁させた。この懸濁に対して、メタノール(250mL)中の水酸化コリン45重量%溶液(商業上入手できる)を加えた。添加することにより、多量の明るい赤の沈殿が形成された。窒素の流れの下、懸濁を、全固体が溶ける迄激しく撹拌しながら(約1時間)40℃へと加熱した。深い赤色の溶液を減圧下、4時間に渡り維持し、その間に赤色結晶質固体が沈殿した。懸濁を氷浴中で30分に渡り冷却し、そしてろ過した。産物をイソプロピルアルコールで、洗浄物が透明になるまで洗浄し、次いで、ジエチルエーテルで洗浄し、そして最後に真空下で乾燥し、138gの高結晶質産物(収率83%)を獲得した。
【0174】
実施例26:コリンテトラチオモリブデン酸塩のX線構造決定
(コリン)2MoS4の赤色結晶に関する回折データを、SiemensSMARTエリア回折計(Simens AG,Wittelsbacheplaz2,D−80333、Munich,Federal Republic of Germany)を使用することで158(2)Kで回収した。単斜P格子をセル:a=18.6066(1)、b=12.7061(1)、c=17.7621(2)、及びβ=117.540(1)(空間群P21/c)で獲得した。結晶構造を、直接法によって解析し、そして2[MoS4]及び4塩化物陽イオンを非対称単位において示した。単位セル中の全非水素原子の最小二乗調整及び収束の後の最終R因子は0.06であった。単位セルにおける原子のセル座標は以下のとおりである。
【0175】
【表1】

【0176】
実施例27:類似物に関する化学安定性データ
【表2】

【0177】
テトラチオモリブデン酸塩とコリンテトラチオモリブデン酸塩をIn Vivo 3LL Lewis 肺ガンで比較する生物データ:一次腫瘍増殖
使用した腫瘍モデルはC57BL/6マウスの3LL JFであった。この腫瘍細胞系統は、C57BL/6マウスにおける肺ガンとして1951年に突発的に生じた(Cancer Res.Vol.15:p.39、1955。Malaveら、J.Natl.Canc.Inst.Vol.62:pp.83〜88(1979)をも参照のこと)。それをC57BL/6マウスにおいて皮下接種によって通過させることによって増殖させ、そして半同種異型C57BL/6×DBA/2F1マウスにおいてかあるいは同種異型C3Hマウスにおいて試験する。典型的に、6匹のマウス/群を皮下移植のため、又は10匹のマウス/群を筋内移植のために使用する。腫瘍を2〜4mmの断片として皮下接種によって移植するかあるいは約0.5-2×106細胞の懸濁した細胞の接種物として筋内移植するかあるいは皮下移植する。処置を移植の24時間後に始めるかあるいは腫瘍が触診により特定のサイズ(通常およそ100mg)になる迄遅らせる。試験化合物を腹腔内に毎日11〜25日に渡り投与する。
【0178】
動物をしかる後に重量測定、触診、及び腫瘍サイズ測定する。未処置のコントロール受容者における筋肉接種後12日での筋内投与後の典型的な腫瘍重量は500〜2500mgであり、典型的な中間値生存時間は18〜28日である。ポジティブコントロール化合物、例えば、シクロフォスファミドを170mg/kg/注射/日で6日に渡り与える。計算した結果に含まれるのは、平均動物重量、腫瘍サイズ、腫瘍重量、生存時間である。治療活性を確認するために、試験組成物を二重投与アッセイにおいて試験するべきである。メスC57/BLマウスには1×106個のLewis肺ガン(3LL)細胞を背中の中央部に皮下注射した。テトラチオモリブデン酸塩及びコリンチオモリブデン酸塩による処置を腫瘍接種の後日開始した(50mg/kg栄養補給)。シクロフォスファミド(腫瘍接種の3日後に皮下的に開始して6日ごとに170mg/kg与えた)をコントロールとして使用した。腫瘍体積及び動物重量を週2回/測定して、コントロール群の腫瘍の体積が平均2000mm3に達した場合に安楽死させた。コントロール群(C)に対する処理群(T)の腫瘍体積の比(T/C)を特定した。最終心臓出血を達成し、そして赤血球濃度(ヘマクリット、HCT)を分析した。
【0179】
【表3】

【0180】
実施例29:ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩は内皮細胞の増殖を阻害する
ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩は、図1に示したように、投与量依存態様でHUVECの増殖を阻害し、そして細胞毒を示さない。外因性の銅を加えなかったが、このアッセイを10%血清の存在下で行った。この血清は銅を結合するタンパク質を含み、そして血清は銅含量に対して約1〜2μMであった。銅はbFGFの、そのレセプターに対する結合において役割を果たし(Patstoneら、J .Biol.Chem.1996、Vol.271(No.1):pp.3343〜6);従って、ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩は、増殖誘導の機構に対する直接的な衝撃をも有しうる。ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩をコンフルエントHUVEC(T-75で)と75時間に渡りインキュベートすること、及びアッセイの最後で細胞を直接計測することで、ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩は、表1から分かるように、コンフルエントな安定内皮細胞に対して効果がほとんど又はまったくない。
【0181】
【表4】

【0182】
実施例30:ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩は内皮細胞のアポトーシスを引き起こさない
内皮細胞を様々な投与量のビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩と72時間(典型的な増殖アッセイの経過時間)に渡りインキュベートし、活性化したカスパーゼ3のレベルを測定した。図2から分かるように、ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩とのインキュベートは内皮細胞において、測定できるレベルの活性化されカスパーゼ3をもたらさない。コントロールとして、我々は、同じ密度のHUVECを10μMのカンプトテンシン(公知のアポトーシス誘導物質)とインキュベートした。従って、ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩とインキュベートしたHUVECは、正常な増殖条件化で増殖する細胞と類似レベルの活性化されたカスパーゼ3を示す。
【0183】
実施例31:ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩はMatrigelプラグアッセイにおいて抗血管形成性である
実施例35で記載したin vivo Matrigelアッセイは、通常、血管新生を測定するために使用されている。栄養供給によって経口的に投与したビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩は、図3に示すように、in vivo MatrigelアッセイにおいてbFGFにより誘導される血管形成を阻害する。
【0184】
実施例32:ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩はコンフルエント内皮細胞からのIL-8分泌を下方制御する
図4に示されるように、ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩は、コンフルエント内皮細胞から分泌されるIL-8の量を下げ、並びにプロ血管形成サイトカン(proangiogenic cytokine)であり、全ての公知のタイプの移動性免疫細胞に対して化学走性である。
【0185】
実施例33:ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩は活性化された単球からのIL-8発現を下方制御する
活性化されていない単球はIL-8を発現しないが、Thp-1細胞のPMA活性化はIL-8の転写と翻訳の両方を誘導する。図5には、ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩が、活性化された単球からのIL-8の測定可能な発現/分泌を下方制御できることを示す。
【0186】
実施例34:ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩はマウスKCの血しょうレベルの減少を生じる
マウスはIL-8を発現しないが、相同物のマウスKCなどを発現する。マウスKCは実際にヒトIL-8よりも、ヒトGROαに対して高い相同性を有するが、そのレセプターはIL-8レセプターに対して高い相同性を有する。マウスKCの発現は、TNFαによって誘導される。ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩を、腫瘍を保持する(腫瘍保持マウスはそれらの血しょう中に測定可能なマウスKCを有する)C57/B16マウスに対して栄養供給によって投与した(50mg/kg毎日)。血しょう試料を動物から治療21日目に採取し、そしてマウスKCについてアッセイした。これらのデータの統計解析により、図6で示したように、2つの群のマウス平均KC値の間には有意(p<0.1)に差があった。
【0187】
実施例35:Matrigelプラグアッセイ
このアッセイは、本質的に、Passanitiら、Lab Invest.Vol.67:pp.519〜528(1982)によって記載されたものと同一である。氷冷Matrigel(登録商標)(例えば500μL)(Collaborative Biochemical Products Inc.,Bedford,MA)をヘパリン(50μg/ml)、FGF-2(例えば、400ng/ml)及び試験されるべき化合物と混合する。いくつかのアッセイにおいて、bFGFは、血管形成刺激物質としての腫瘍細胞と置き換えても良い。Matrigel(登録商標)混合物を、4〜8週齢胸腺欠損ヌードマウス中へと、皮下的に、腹部中腺に近い部位で、好適には、3回の注射/マウスで注射して良い。注射したMatrigel(登録商標)は明らかな固形腫瘍を形成する。注射の部位を、各動物が、ポジティブコントロールプラグ(例えば、FGF-2+ヘパリン)、ネガティブコントロールプラグ(例えば、バッファー+ヘパリン)及び血管形成に対するその効果を試験される化合物を含むプラグ(例えば、FGF-2+ヘパリン+化合物)、を受け入れるように選択する。全処置を、好適に3重に行う。動物を注射後約7日又は血管形成を確認するために最適でありうる他の時間に頚部脱臼で犠牲にする。マウスの皮膚を腹部中腺に沿って剥がし、そしてMatrigel(登録商標)プラグを回収してすぐに高解像度で走査する。次いで、プラグを水中に分散させ、そして37℃で一晩インキュベートする。ヘモグロビン(Hb)レベルを、Drabkinの溶液(Sigmaから入手する)を使用することで、説明書に従い特定する。プラグ中のHbの量は、それが、試料中の血液の量を反映するので、血管新生についての間接的な基準である。加えて、又は代替的に、動物には犠牲になる前に、フルオロフォアが接合されている高分子量のデキストランを含む0.1mlのバッファー(好適にはPBS)を注射して良い。分散したプラグ中の蛍光の量を、蛍光計測により特定し、そしてそれはまたプラグにおける血管形成の基準としてもはたらく。mAb抗CD31(CD31は血小板内皮細胞接着分子又は「PECDAM」である)での染色を、プラグ中での新生管形成及び微小管密度を確かめるためにも使用して良い。
【0188】
最後に、本発明の実施するための代替的な方法があることに留意されたい。従って、本発明の実施態様は、例示的であり限定的ではなく、そして本発明は、本明細書中に与えられた詳細に限定されないが、添付のクレームの範囲内で変更されて良く且つ同等でありうる。本明細書中で引用された全ての刊行物及び特許は本明細書中に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩の内皮細胞生産に対する効果を示す。
【図2】ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩が、内皮細胞のアポトーシスを誘導しないことを示す。
【図3】マトリゲルプラグアッセイにおいて、ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩が抗血管新生性であることを示す。
【図4】ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩が、コンフルエント内皮細胞からのIL-8分泌を下方制御することを示す。
【図5】ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩が、活性化した単核球からのIL-8発現を下方制御することを示す。
【図6】ビス(コリン)テトラチオモリブデン酸塩が、マウスKCの血しょうレベルでの減少を生じることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):
【化1】

(式中、
R1、R2、R3、R5、R6及びR7は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロへテロアルキル、置換されたシクロへテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアルキル又は置換されたヘテロアルキルであり;
R4及びR8は、独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロへテロアルキル、置換されたシクロへテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアルキル又は置換されたヘテロアルキルであるかあるいはNが芳香環の一部である場合不在であり;
任意に、R1とR2は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R5とR6は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R1とR2は一緒に、R2とR3は一緒に、そしてR2とR4は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R5とR6は一緒に、R6とR7は一緒に、そしてR6とR8は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;
任意に、R3とR7は一緒にアルキルジル、置換されたアルキルジル、ヘテロアルキルジル又は置換されたヘテロアルキルジルであり;そして
Y-2は(MoS4-2、(Mo2S12-2、(Mo2S9-2、(Mo2S7-2、(Mo2S8-2、(Mo2S11-2、(Mo2S6-2又は(Mo2S13-2であり;
但し、もしYが(MoS4-2であり、そしてR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が同一であれば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の各々は水素、メチル、エチル又はn−プロピルではない)
又はそれらの溶媒和物もしくは水和物もしくはN酸化物。
【請求項2】
Yが(MoS4-2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化2】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Yが(MoS4-2である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R1、R2、R3及びR4の1つ以上がアルキルではない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の1つ以上がアルキルではない、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
R1、R2及びR4が水素、アルカニル又は置換されたアルカニルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R1、R2及びR4が水素、メチル又はエチルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R1及びR2がアルカニルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R1及びR2がメチル又はエチルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
R1がアルカニル、置換されたアルカニル、アルケニル、置換されたアルケニル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル又は置換されたシクロアルキルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
R1とR2が一緒にアルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
R1とR2が一緒にアルキレノ、ヘテロアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
R1とR2が一緒に、R2とR3が一緒に、そしてR2とR4が一緒にアルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
R1とR2が一緒に、そしてR2とR3が一緒に、そしてR2とR4が一緒に、アルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化3】

を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
R3とR7が一緒にアルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
R3とR7が一緒にアルキレノ又はヘテロアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
R1、R2及びR4が水素、アルカニル又は置換されたアルカニルであり、そしてR3がアルキル、置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルであるかあるいはR3とR7が一緒にアルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
R1、R2及びR4がメチル又はエチルであり、そしてR3はアルキル、置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルであるかあるいはR3とR7が一緒にアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
R1、R2及びR4がメチル又はエチルであり、そしてR3はアルキル、置換されたアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル又はシクロアルキルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化4】

を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化5】

を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化6】

を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化7】

を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
R1、R2及びR4がメチル又はエチルであり、そしてR3及びR7が一緒にアルキレノ又はヘテロアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化8】

を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
R1、R2及びR4が水素であり、そしてR3は置換されたアルキル、シクロアルキルもしくは置換されヘテロアリールであるかあるいはR3とR7が一緒にアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
R1及びR2がアルカニルであり、そしてR3及びR4が水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル又はアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
R1及びR2はメチル又はエチルであり、そしてR3及びR4は水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル又はアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化9】

(式中、R9は、炭素原子を8個以上で18個を超えず有する直鎖アルカニル基の混合物である)
を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
R1、R2及びR4は水素であり、そしてR3は、置換されたアルキル、置換されヘテロアリール、シクロアルキル又はアルキレノである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化10】

を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
R1とR2が一緒にアルキレノ、置換されたアルキレノ、ヘテロアルキレノ又は置換されたヘテロアルキレノであり、そしてR3は、アルキル又は置換されたアルキルであり、そしてR4が水素又は不在である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
R1(R2)(R3)N又は R1(R2)(R3)(R4)Nが構造:
【化11】

を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項36】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物及び医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤又はアジュバントを含んで成る、医薬組成物。
【請求項37】
患者におけるガンを治療又は予防するための方法であって、かかる処置を必要とする該患者に対して治療上有効な量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【請求項38】
患者におけるガンを治療又は予防するための方法であって、かかる処置を必要とする当該患者に対して治療上有効な量の請求項36に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る方法。
【請求項39】
ガンの治療を必要とする患者に対して治療上有効な量の他の抗ガン剤又は他の抗ガン剤に医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤もしくはアジュバントを含んで成る医薬組成物を投与することを更に含んで成る請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ガンの治療を必要とする患者に対して治療上有効な量の他の抗ガン剤又は他の抗ガン剤及び医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤もしくはアジュバントを含んで成る医薬組成物を投与することを更に含んで成る請求項38に記載の方法。
【請求項41】
ガンの治療を必要とする患者に対して治療上有効な量の亜鉛又は亜鉛を含んで成る医薬組成物を投与することを更に含んで成る請求項37に記載の方法。
【請求項42】
ガンの治療を必要とする患者に対して治療上有効な量の亜鉛又は亜鉛及び医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤もしくはアジュバントを含んで成る医薬組成物を投与することを更に含んで成る請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記ガンが、乳ガン、腎ガン、脳のガン、結腸ガン、前立腺ガン、軟骨肉腫又は血管肉腫である、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
患者における湿式黄斑変性(wet type macular degeneration)又はリューマチ性関節炎を予防もしくは治療するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【請求項45】
患者における湿式黄斑変性又はリューマチ性関節炎を予防もしくは治療するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の請求項36に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る方法。
【請求項46】
患者における異常な血管新生を治療又は予防するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【請求項47】
患者における異常な血管新生を予防又は治療するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の請求項36に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る方法。
【請求項48】
患者の過剰銅レベルを予防もしくは治療するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【請求項49】
患者の過剰銅レベルを予防もしくは治療するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の請求項36に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る方法。
【請求項50】
患者の肥満症を予防もしくは治療するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【請求項51】
患者の肥満症を予防もしくは治療するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の請求項36に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る方法。
【請求項52】
肥満症の処置を必要とする患者に対して治療上有効な量の他の抗肥満症剤又は他の抗肥満症剤及び医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤もしくはアジュバントを含んで成る医薬組成物を投与することを更に含んで成る請求項50に記載の方法。
【請求項53】
肥満症の処置を必要とする患者に対して治療上有効な量の他の抗肥満症剤又は他の抗肥満症剤及び医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤もしくはアジュバントを含んで成る医薬組成物を投与することを更に含んで成る請求51に記載の方法。
【請求項54】
患者の神経変性疾患を治療又は予防するための方法であって、かかる処置を必要とする当該患者に対して治療上有効な量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【請求項55】
患者の神経変性疾患を治療又は予防するための方法であって、かかる処置を必要とする当該患者に対して治療上有効な量の請求項36に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る方法。
【請求項56】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症又はプリオン病である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症又はプリオン病である、請求項55に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−506466(P2006−506466A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505545(P2005−505545)
【出願日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/023031
【国際公開番号】WO2004/009034
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(505026387)アテニュオン,リミティド ライアビリティー カンパニー (1)
【出願人】(500047572)ザ、リージェンツ、オブ、ザ、ユニバーシティ、オブ、ミシガン (12)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
【Fターム(参考)】