説明

チオール化合物、これを含む重合性組成物、チオール化合物の製造方法

【課題】光学部品に必要な諸特性(熱的特性、機械的特性など)を有しつつ、かつ高い屈折率を与えることができるチオール化合物、これを含む重合性組成物を提供する。
【解決手段】 式(1)で示される化合物と、
メタンジチオールと、酸化剤とを反応させて得られるチオール化合物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオール化合物、これを含む重合性組成物およびチオール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無機ガラスに代わる透明性材料として、透明性有機高分子材料が使用されている。こうした材料をたとえば光学用樹脂に用いる場合、高屈折率、高アッベ数とすることが求められる。
たとえば、特許文献1,2には、特定のポリチオールと、硫黄とを反応させて、レンズ原料用ポリチオールオリゴマーを得ることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3949498号公報
【特許文献2】国際公開2008/026727号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、さらなる高屈折率を有するレンズが求められている。
【0005】
本発明は、高い屈折率を与えることができるチオール化合物、これを含む重合性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示される。
[1]式(1)で示される化合物と、メタンジチオールと、酸化剤とを反応させて得られるチオール化合物。
【0007】
【化1】

【0008】
[2]式(1)で示される化合物と、R−S−CH−SH(2)で示されるメタンジチオール誘導体と、酸化剤とを反応させて得られる化合物を、アルコール分解あるいは加水分解して得られるチオール化合物。
(上記式(2)中、Rは、炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基を示す。)
【0009】
【化2】

【0010】
[3]式(1)で示される化合物と、式(3)および、式(4)で示される化合物の少なくともいずれか一方とを含む組成物と、メタンジチオールと、酸化剤とを反応させて得られる組成物。
【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
[4]式(1)で示される化合物と、式(3)および、式(4)で示される化合物の少なくともいずれか一方とを含む組成物と、R−S−CH−SH(2)で示されるメタンジチオール誘導体と、酸化剤とを反応させた後、アルコール分解あるいは加水分解して得られる組成物。
(上記式(2)中、Rは、炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基を示す。)
【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

[5][1]または[2]に記載のチオール化合物あるいは、[3]または[4]に記載の組成物と、イソシアナート化合物とを含む重合性組成物。
[6][5]に記載の重合性組成物において、メルカプト基と、前記イソシアナート化合物のイソシアナト基のモル比(SH基/NCO基)が1.0より大きく1.5以下である重合性組成物。
[7][5]または[6]に記載の重合性組成物において、前記イソシアナート化合物が芳香環を有するイソシアナート化合物である重合性組成物。
[8][7]に記載の重合性組成物において、前記芳香環を有するイソシアナート化合物が、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′―ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアナートよりなる群から選択される1種以上である重合性組成物。
[9][1]または[2]に記載のチオール化合物あるいは、請求項3または4に記載の組成物と、エピチオ化合物とを含む重合性組成物。
[10][5]乃至[9]いずれかに記載の重合性組成物を注型重合して樹脂を得る工程を含む、樹脂の製造方法。
[11][5]乃至[9]いずれかに記載の重合性組成物を重合して得られる樹脂。
[12][11]に記載の樹脂からなる光学部品。
[13]式(1)で示される化合物と、メタンジチオールと、酸化剤とを反応させてチオール化合物を得るチオール化合物の製造方法。
【0018】
【化9】

【0019】
[14]式(1)で示される化合物と、R−S−CH−SH(2)で示されるメタンジチオール誘導体と、酸化剤とを反応させて得られる化合物を、アルコール分解あるいは加水分解してチオール化合物を得るチオール化合物の製造方法。
(上記式(2)中、Rは、炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基を示す。)
【0020】
【化10】

【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い屈折率を与えることができるチオール化合物、これを含む重合性組成物等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
はじめに、本発明の概要について説明する。
本発明のチオール化合物は、以下の(I)あるいは(II)の方法で得られるものである。
【0023】
(I)式(1)で示される化合物と、
メタンジチオールと、
酸化剤とを反応させる。
【0024】
【化11】

【0025】
(II)上記式(1)で示される化合物と、
−S−CH−SH(2)
で示されるメタンジチオール誘導体と、
酸化剤とを反応させて得られる化合物を、アルコール分解あるいは加水分解する。
(上記式(2)中、Rは、炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基を示す。)
【0026】
(I)の製造方法において、酸化剤としては、臭素、ヨウ素、酸素、硫黄、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。ここで酸化剤とは、2個のメルカプト基からジスルフィド結合を合成するための試剤である。これらの酸化剤の中でも、反応選択性、取扱い性、入手の容易さ等の観点からヨウ素を使用することが好ましい。
なお、酸化剤として硫黄を用いた場合は、それより得られる樹脂が、不均一、着色、濁り等の問題を生じる場合があるので、硫黄を除く酸化剤を使用することが好ましい。
【0027】
(I)の製造方法を詳細に説明すると、式(1)で示される化合物と、メタンジチオールとを有機溶媒中で混合する。この混合液に対し、酸化剤を滴下する。このとき、反応温度は、通常0℃〜50℃程度、好ましくは5〜20℃の範囲である。
(I)の製造方法では、式(1)で示される化合物の1つ〜4つのメルカプト基(SH基)に対し、メタンジチオールが酸化付加した化合物や式(1)で示される化合物の2量体等が混合物として生成すると考えられる。それらの中でも、式(5)で示される化合物が主として生成すると考えられる。
【0028】
【化12】

【0029】
また、(II)の製造方法を詳細に説明すると、式(1)で示される化合物と式(2)で示されるメタンジチオール誘導体とを有機溶媒中で混合する。この混合液に対し、酸化剤を滴下する。このとき、反応温度は、通常0℃〜50℃程度、好ましくは5〜20℃の範囲である。
(II)の製造方法では、式(1)で示される化合物の1つ〜4つのSH基に対し、メタンジチオール誘導体が酸化付加した化合物や式(1)で示される化合物の2量体等が混合物として生成すると考えられる。それらの中でも、式(6)で示される化合物が主として生成すると考えられる。
【0030】
【化13】

【0031】
(式(6)中のRは、式(2)のRと同じである。)
ここで、式(2)で示される化合物は、Rが炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基であればよい。なかでも、取扱い性、入手の容易さ、式(5)で示される化合物への変換反応における反応性の観点から、Rはアセチル基であることが好ましい。
また、酸化剤としては、(I)の製造方法で使用されるものを使用することができる。
【0032】
その後、式(6)で示される化合物をアルコール分解あるいは加水分解することで、式(5)で示される化合物が得られる。例えば、Rがアセチル基の場合、たとえば、酸性条件下60℃の温度条件でメタノールによるアルコール分解反応により、式(5)で示される化合物が得られる。
【0033】
ここで、上記式(1)で示される化合物は、特開2004−2820号に記載の方法にて製造できるが、式(1)で示される化合物と、以下の式(3)、式(4)で示される化合物の少なくともいずれか一方と、まざった混合物として得られることがある。
【0034】
【化14】

【0035】
【化15】

【0036】
この場合、上記式(1)で示される化合物を単離せずに、式(1)の化合物と、式(3)、式(4)で示される化合物の少なくともいずれか一方とを含む組成物を使用して、上記(I)、(II)の製造方法を実施してもよい。
【0037】
具体的には、
(III)式(1)で示される化合物および、式(3)、式(4)で示される化合物の少なくともいずれか一方とを含む組成物と、
メタンジチオールと、
酸化剤とを反応させる。
【0038】
(IV)一般式(1)で示される化合物および、式(3)、式(4)で示される化合物の少なくともいずれか一方とを含む組成物と、
−S−CH−SH(2)
で示されるメタンジチオール誘導体と、
酸化剤とを反応させて得られる組成物を、アルコール分解あるいは加水分解する。
(上記式(2)中、Rは、炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基を示す。)
【0039】
なお、化合物の単離操作を省く観点から、式(1)、(3)、(4)の各チオール化合物を有する組成物を原料として使用することが好ましい。
(III)、(IV)の製造方法における酸化剤、反応温度は、(I)の場合と同様である。
また、(IV)の製造方法における(2)で示される化合物は、(II)の場合と同様である。
(III)、(IV)の製造方法では、上記式(5)に加え、以下の式(7)、(8)の少なくともいずれか一方のチオール化合物を含む組成物を得ることができると考えられる。
【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
本発明では、以上の各製造方法(I)〜(IV)において、R−(S−S−CHSH)nで示されるジスルフィド結合を有する化合物を得ることができると考えられる。Rは、脂肪族あるいは脂環族であり、Sを含む有機基である。
【0043】
以上のような製造方法(I)、(II)で得られる化合物、あるいは、製造方法(III)、(IV)で得られる組成物を使用することで、高い屈折率を有する光学部品を得ることができる。
【0044】
(重合性組成物)
次に、重合性組成物について説明する。本実施形態の重合性組成物は製造方法(I)、(II)で得られる化合物、あるいは、製造方法(III)、(IV)で得られる組成物を含む。
重合性組成物中に含まれる重合性化合物の総重量に占める、チオール化合物の含有量は、特に限定するものではないが、屈折率、機械物性の観点から、50重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。
【0045】
本発明における重合性組成物は、他の成分として、たとえば、イソシアナート化合物をさらに含んでもよい。こうすることにより、重合性組成物を重合して得られる樹脂の機械物性および色相をより一層向上させることができる。
また、重合性組成物は、エピチオ化合物を含有していてもよい。エピチオ化合物を有することで、重合性組成物を重合して得られる樹脂の屈折率、アッベ数をさらに向上させることができる。
【0046】
以下、各成分について、具体例を挙げて説明する。
(イソシアナート化合物)
本発明において使用されるイソシアナート化合物は、分子内に1つ以上のイソシアナト基(NCO基)を含有する化合物である。イソシアナート化合物を加えることにより機械物性等がさらに改良される場合がある。
【0047】
ここで用いられるイソシアナート化合物の好ましいものの具体例としては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、sec−ブチルイソシアネート、tert−ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ヘプチルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、3−ペンチルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、2,3−ジメチルシクロヘキシルイソシアネート、2−メトキシフェニルイソシアネートシアネート、4−メトキシフェニルイソシアネート、α−メチルベンジルイソシアネート、フェニルエチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、o−、m−、p−トリルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、イソシアナトメチルビシクロヘプタン等の単官能イソシアナート化合物、及び
ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、o−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、等の脂肪族ポリイソシアナート化合物及び
イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,2−ジメチルジシクロヘキシルメタンイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアナート化合物、
及び
フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ビベンジル−4,4−ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、3,3−ジメトキシビフェニル−4,4−ジイソシアネート、フェニルイソシアナトエチルイソシアネート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアネート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアナート化合物、及び
ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン等の含硫脂肪族ポリイソシアナート化合物、及び
ジフェニルスルフィド−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアネート、3,3−ジメトキシ−4,4−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、4,4−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3−ジイソシアネート、ジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソシアネート、2,2−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6−ジイソシアネート、4,4−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5−ジイソシアネート、3,3−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソシアネート、4,4−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3−ジイソシアネート等の含硫芳香族ポリイソシアナート化合物、及び
2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオラン等の含硫複素環ポリイソシアナート化合物等を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0048】
これらの化合物の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等を使用してもよい。これらイソシアナート化合物は単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0049】
なかでも、高屈折率化の観点から、芳香環を有するイソシアナート化合物であることが好ましい。さらには、芳香環に直接イソシアネート基が接続されたものであることがより好ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′―ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
なお、樹脂の屈折率を高める観点から、フェニレンジイソシアネートがより好ましく、さらに樹脂の透明性を高めるため、フェニレンジイソシアネートは、m−フェニレンジイソシアネートを含んでいることが好ましい。
【0050】
ここで、重合性組成物において、高屈折率化の観点から、メルカプト基と前記イソシアナート化合物のイソシアナト基のモル比(SH基/NCO基)が1.0より大きいことが好ましい。また、耐熱性の観点から、前記モル比は、1.5以下であることが好ましい。
好ましくは、前記モル比は、1.05以上、1.3以下である。
メルカプト基とイソシアナト基のモル比(SH基/NCO基)とは、本発明の重合性組成物を構成するイソシアナート化合物に含まれるイソシアナト基の総モル数と、本発明の重合性組成物を構成するチオール化合物に含まれるメルカプト基の総モル数との比である。
なお、2種以上のイソシアナート化合物を含む場合には、2種以上のイソシアナート化合物が有するイソシアナト基のモル数を加算する。また、上述した(I)〜(IV)の製造方法により得られるチオール化合物および組成物以外の「他の(ポリ)チオール類」を含む場合には、重合性組成物に含まれる総メルカプト基の総モル数をいう。
ポリチオール化合物が、混合物である場合には、公知の滴定によって求められるチオール類1g中のメルカプト基のミリ等量数(meq/g、以下SHV値という)で求めることができる。
【0051】
(エピチオ化合物)
エピチオ化合物として、具体的には、ビス(1,2−エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2−エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(エピチオエチルチオ)メタン、ビス(エピチオエチルチオ)ベンゼン、ビス[4−(エピチオエチルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(エピチオエチルチオ)フェニル]メタン等のエピチオエチルチオ化合物;
ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルホン、4,4'−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、メルカプトプロピレンスルフィド、メルカプトブテンスルフィド、エピチオクロルヒドリン等のエピチオ基を1つ有する化合物;
ビス(2,3−エピチオプロピル)エーテル、ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物;
1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物;および、
1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]スルホン、4,4'−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ビフェニル等の芳香族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物等を挙げることができるが、例示化合物のみに限定されるものではない。
【0052】
これら例示化合物のうち好ましい化合物としては、ビス(1,2−エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2−エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)メタンおよびビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドであり、より好ましい化合物としてはビス(1,2−エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2−エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィドおよびビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドである。また、より一層好ましい化合物は、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィドおよびビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドである。
ここで、重合性組成物において、エピチオ化合物の総重量と、チオール化合物の総重量(上述した(I)〜(IV)の製造方法により得られるチオール化合物および組成物以外の「他の(ポリ)チオール類」を含む場合には他の(ポリ)チオール類」を含む総重量)とを合わせた値を100とした場合、高屈折率化の観点から、チオール化合物の含有量(重量%)は、1.0%以上、30%以下であり、好ましくは、2.0%以上、20%以下、さらに好ましくは5.0%以上、15%以下である。前記範囲であれば、耐熱性、色相を確実に良好とすることができる。
【0053】
なお、本実施形態の重合性組成物は、上述したイソシアナート化合物、エピチオ化合物の双方を有していてもよく、また、エポキシ化合物や、チエタン化合物を有していてもよい。
【0054】
また、本発明の重合性組成物は、必要に応じて、ブルーイング剤を含んでもよい。ブルーイング剤は、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂の色相を調整する機能を有する。ブルーイング剤は、さらに具体的には、青色から紫色を示す物質を含む。
【0055】
本発明の重合性組成物に用いられるブルーイング剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、染料、蛍光増白剤、蛍光顔料、無機顔料等が挙げられるが、ブルーイング剤として使用できるものの中から光学部品に要求される物性や樹脂色相などに合わせて適宜選択される。これらのブルーイング剤は、それぞれ単独で用いても、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
これらのブルーイング剤のうち、重合性組成物への溶解性の観点および得られる樹脂の透明性の観点からは、染料が好ましい。染料の中でも、ブルー系染料およびバイオレット系の染料から選ばれる1種または2種以上の染料を含む染料であることが好ましいが、場合によっては他の色の染料を混合して用いてもよい。たとえば、ブルー系やバイオレット系のほかに、グレー系やブラウン系やレッド系、オレンジ系の染料も使用することができる。こうしたブルーイング剤の組み合わせの具体例として、ブルー系染料とレッド系染料との組み合わせ、およびバイオレット系染料とレッド系染料の組み合わせ等が挙げられる。
【0057】
吸収波長の観点からは、好ましくは、極大吸収波長が520nm以上600nm以下の染料であり、さらに好ましくは極大吸収波長が540nm以上580nm以下の染料が挙げられる。
また、化合物の構造の観点からは、アントラキノン系染料が好ましい。
【0058】
染料として、具体的には、「PS Blue RR」、「PS Violet RC」、「PET Blue 2000」、「PS Brilliant Red HEY」、「MLP RED V-1」(それぞれ、ダイスタージャパン社の商品名)等が挙げられる。
【0059】
ブルーイング剤の使用量は、モノマーの種類、各種添加剤の使用の有無、使用する添加剤の種類や量、重合方法、重合条件によっても異なるが、一般にはモノマーの全体使用量、つまり重合組成物中に含まれる重合性化合物の総重量に対して0.001ppm以上500ppm以下の割合で、好ましくは0.005ppm以上100ppm以下の割合で、さらに好ましくは0.01ppm以上10ppm以下の割合で使用される。ブルーイング剤の添加量が多すぎると、光学部品全体が青くなりすぎて好ましくない場合があり、また少なすぎると、色相改善効果が十分に発揮されず好ましくない場合がある。
【0060】
ブルーイング剤の添加方法については、特に限定されるものではなく、あらかじめモノマー系に添加しておくことが望ましい。その方法として、モノマーに溶解させておく方法、あるいは、高濃度のブルーイング剤を含有したマスター溶液を調製しておき、そのマスター溶液を使用するモノマーや他の添加剤で希釈して添加する方法など、様々な方法が採用できる。
【0061】
本発明における重合性組成物は、ハンドリング性に支障のない程度の粘度を有する。ここで粘度は、例えば、B型粘度計で測定される調合時の温度におけるモノマー混合物の粘度で評価することができる。組成物の調合直後の粘度から、減圧下での脱泡処理やその他の工程を経てすべてのモノマーを注入し終わるまでの間の粘度が重要であり、ハンドリング性が良好であるという観点から、例えば目安として組成物の調合直後の粘度が100mPa・s以下、好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは30mPa・s以下である。また、後述する注型重合にて光学材料を成形する場合には、注入時の粘度が、注入時の温度での測定値として、200mPa・s以下が好ましく、特に中心厚が非常に薄いレンズの製造のためには、更なる低粘度、例えば100mPa・s以下がより好ましい。調合時および注入時の温度は、添加されるモノマー成分に応じて適宜選択される。
【0062】
本発明の重合性組成物を硬化成形する際には、必要に応じ、公知の成形法における手法と同様に、ジブチル錫ジクロリド、ジメチル錫ジクロリドなどの触媒、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、酸性リン酸エステルなどの内部離型剤、光安定剤、酸化防止剤、ラジカル反応開始剤などの反応開始剤、鎖延長剤、架橋剤、着色防止剤、油溶染料、充填剤などの物質を添加してもよい。
【0063】
本発明の重合性組成物がイソシアネート化合物を含有する場合、反応触媒や離型剤、その他添加剤を混合して注入液を調製する際、触媒や離型剤その他の添加剤の添加は、イソシアネート化合物およびチオール化合物への溶解性にも左右されるが、あらかじめイソシアネート化合物に添加溶解させるか、また、チオール化合物に添加溶解させるかあるいはイソシアネート化合物およびチオール化合物の混合物に添加溶解させてもよい。あるいは、使用するイソシアネート化合物またはチオール化合物の一部に溶解させてマスター液を調製した後、これを添加しても構わない。添加順序については、これら例示の方法に限定されず、操作性、安全性、便宜性等を踏まえ、適宜選ばれる。
【0064】
混合は、通常、混合可能な温度で行われ、添加されるモノマー成分の融点に応じて適宜選択される。混合物のポットライフの観点から、低温にすると好ましい場合がある。また、触媒や離型剤などの添加剤が、イソシアネート化合物およびチオール化合物に対して良好な溶解性を示さない場合は、あらかじめ加温して、イソシアネート化合物、チオール化合物やその混合物に溶解させる場合もある。
【0065】
更に、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等での濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0066】
レンズの成形にあたっては、本発明の重合性組成物が注入されたレンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて数時間から数十時間かけて加熱して硬化成型する。
【0067】
重合硬化の温度は、混合物の組成、触媒の種類、モールドの形状等によって条件が異なるため限定できないが、およそ、−50〜200℃の温度で1〜100時間かけて行われる。
【0068】
通常、25℃から60℃の範囲の温度で開始し、その後徐々に80℃から130℃の範囲にまで昇温させ、その温度で1時間から4時間加熱するのが一般的である。
【0069】
硬化成形終了後、レンズ注型用鋳型から取り出すことで、プラスチックレンズを得ることができる。
【0070】
本実施形態の光学材料から得られるプラスチックレンズは、重合による歪みを緩和することを目的として、離型したレンズを加熱してアニール処理を施すことが望ましい。アニール温度は通常80〜150℃の範囲、好ましくは100〜130℃の範囲、更に好ましくは110〜130℃の範囲である。アニール時間は、通常0.5〜5時間の範囲、好ましくは1〜4時間の範囲である。
【0071】
本実施形態の光学材料から得られるプラスチックレンズは、必要に応じ、片面又は両面にコーティング層を施して用いられる。コーティング層としては、プライマー層、ハードコート層、反射防止膜層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層は、それぞれ単独で使用しても複数のコーティング層を多層化して使用してもよい。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても異なるコーティング層を施してもよい。
【0072】
これらのコーティング層には、それぞれ、紫外線からレンズや目を守る目的で紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐光性を向上させる目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高める目的で公知の添加剤を併用してもよい。塗布性の改善を目的として各種レベリング剤を使用してもよい。
【0073】
プライマー層は、一般的には、ハードコート層の密着性やプラスチックレンズの耐衝撃性の向上を目的に、レンズ基材(本発明の重合性組成物から得られる光学材料)とハードコート層との間に形成され、その膜厚は、通常、0.1〜10μm程度である。
【0074】
プライマー層は、例えば、塗布法や乾式法にて形成される。塗布法では、プライマー組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、固化させることによりプライマー層が形成される。乾式法では、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じて、レンズの表面をアルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行ってもよい。
【0075】
プライマー組成物としては、固化したプライマー層がレンズ基材(本発明の重合性組成物から得られる光学材料)と密着性の高い素材が好ましく、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラニン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は、無溶剤での使用も可能であるが、組成物の粘度を調整する等の目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。
【0076】
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等の機能を与えることを目的としたコーティング層であり、その膜厚は、通常、0.3〜30μm程度である。
【0077】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。ハードコート層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じて、被覆表面(レンズ基材あるいはプライマー層)を、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行ってもよい。
【0078】
ハードコート組成物としては、一般的には、硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,InおよびTi等の酸化物微粒子(複合酸化物微粒子を含む)の混合物が使用されることが多い。更にこれらの他に、アミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物等を使用してもよい。ハードコート組成物は、無溶剤での使用も可能であるが、レンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。
【0079】
反射防止層は、必要に応じて、通常、ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系と有機系があり、無機系の場合は、一般的には、SiO、TiO等の無機酸化物を用いて真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、CVD法等の乾式法により形成されることが多い。有機系の場合は、一般的には、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用いて湿式により形成されることが多い。
【0080】
反射防止層は単層であっても多層であってもよいが、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、通常は、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、例えば、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、ZrO、Ta等の膜が、低屈折率膜としては、SiO膜等が挙げられる。膜厚は、通常、50〜150nm程度である。
【0081】
さらに、本実施形態の光学材料からなるプラスチックレンズは、必要に応じ、裏面研磨、帯電防止処理、染色処理、調光処理等を施してもよい。
【0082】
本発明の重合性組成物を重合することにより得られる樹脂は、高屈折率を有しており、たとえば、プラスチックレンズなどの光学部品に用いられる樹脂として有用である。
【0083】
光学部品としては、たとえば、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズなどの各種プラスチックレンズ;
発光ダイオード(LED)用封止材;
光導波路;
光学レンズや光導波路の接合に用いる光学用接着剤;
光学レンズなどに用いる反射防止膜;
基板、導光板、フィルム、シートなどの液晶表示装置部材に用いる透明性コーティングまたは透明性基板などが挙げられる。
【実施例】
【0084】
実施例および比較例において製造した樹脂の光学物性(屈折率、アッベ数)、耐熱性、色相、強度は以下の試験方法により評価した。
・屈折率(ne),アッベ数(νe):プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
・耐熱性 : TMAペネトレーション法(50 g荷重、ピン先0.5mmφ、昇温速度10℃/min)により測定した。熱膨張時のTMA曲線の接線と落込み時のTMA曲線の接線との交点の温度を熱変形開始温度とした。
・曲げ試験:島津製作所製AUTOGRAPH AGS-Jにより測定した。厚さ3.0mm、長さ75mm、幅25.0mmの樹脂試験片を用いて、試験片中央に下降速度1.2mm/minにて荷重を負荷させた時の最大点応力(N/mm2)を測定した。
・引張り強度試験(穴開け引っ張り試験):島津製作所製AUTOGRAPH AGS-Jを用いて、レンズ径45mm、厚さ2.5mmに調整された樹脂平板に、ツーポイントフレーム加工を想定して、ドリルにて2箇所に直径1.6mmの穴をあけ、1.6mmの金属製シャフトを穴に通し、サンプルの両端を固定治具に取り付けた後、5mm/minの速度で引張り、最大点の試験力を測定し、得られた最大点試験力を樹脂厚で割った値(kgf/mm)を算出した。
・ SHV : 化合物1g当たりに含まれるメルカプト基のミリ当量数(meq/g)
【0085】
[製造例1]
特開2004-2820号公報の製造例2記載の方法に準拠して、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分として含むポリチオール組成物Aを合成した。
攪拌羽根、温度計、蒸留塔、窒素導入用キャピラリーを設置した2リットル底抜きコック付きフラスコに、1,1,3,3-テトラメトキシプロパン164.2 g(1 mol)、アセチルチオメチルチオール488.8 g(4 mol)およびパラトルエンスルホン酸7.6 g(0.04 mol)を加え、1kPa以下の真空度を保ち且つ攪拌しながら40℃に加熱した。メタノールの留出が停止するまで18時間程加熱を続けた。冷却後、真空を解除し、蒸留塔の代わりにコンデンサーを取り付けた後、メタノール400mlとクロロホルム400mlおよび36%塩酸200mlを加え、60℃に加熱してアルコリシスを行い、目的化合物である1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分として含むポリチオール組成物Aを合成した。
適量の水およびクロロホルムを加えて分液させ、クロロホルム層を数回水洗した。脱溶媒してクロロホルムおよび低沸分を除いた後、3μmテフロン(登録商標)フィルターで濾過後340.0 gのポリチオール組成物Aを得た。1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンの分析結果は以下の通りである。さらに、ポリチオール組成物AのLC分析により、ポチオール化合物成分が2成分検出された(クロマトグラム面積比でそれぞれ9.8%、9.8%)。これらの成分を分取LCによって精製し分析したところ、それぞれ4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンであった。以下に分析結果を示す。
また、ポリチオール組成物A(上記副生物2成分を含む)のSHVを以下の方法により測定した。ポリチオール組成物A 95.1 mgのクロロホルム30ml、メタノール30ml混合溶媒溶液に0.05mol/Lヨウ素溶液を徐々に滴下した。9.7mlを滴下した時点で、滴下したヨウ素の褐色が消失しなくなり、この点を当量点としてポリチオール組成物Aに含まれるSH基の量を算出した結果、9.64meq/gであった。
i)1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン
1H-NMR δ(CDCl3) : 2.18(t, 4H)、2.49(t, 2H)、3.78-3.90(m, 8H)、4.64(t, 2H)
13C-NMR δ(CDCl3) : 26.7, 41.3, 48.7
FT-IR : 538cm-1
MS : m/z=356(M+
ii)4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン
1H-NMR δ(CDCl3) : 2.02(t, 2H)、2.56(t, 2H)、3.77-3.91(m, 8H)、3.97(s, 2H)、4.66(t, 2H)
13C-NMR δ(CDCl3) : 27.1, 28.8, 38.1, 44.6
FT-IR : 2538cm-1
MS : m/z=276(M+
iii)2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン
1H-NMR δ(CDCl3) : 2.03(t, 2H)、2.13-2.21(m, 1H)、2.75-2.80(m, 1H)、3.79-3.84(m, 1H)、3.90-3.96(m, 3H)、4.32-4.35(m, 2H)
13C-NMR δ(CDCl3) : 27.2, 32.3, 38.9, 46.2
FT-IR : 2538cm-1
MS : m/z=276(M+
【0086】
[実施例1]
製造例1記載の方法にて合成したポリチオール組成物A 102.99 g(SH基含有量1.0mol)とメタンジチオール40.09 g(0.5mol)をクロロホルム1000mlとメタノール100mlの混合溶媒に懸濁した。0.5mol/Lヨウ素水溶液1000ml(ヨウ素含有量0.5mol)を25℃で1時間かけて滴下した後、15分間撹拌した。分液操作により水相を除去し、クロロホルム相を200 gの蒸留水で洗浄した。さらにクロロホルム相を35%塩酸200 gにより洗浄した。引き続き、蒸留水200 gで3回洗浄して、クロロホルム相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥脱水した。無水硫酸マグネシウムを濾別して得られた溶液からクロロホルムを減圧留去してポリチオール組成物B(淡黄色微濁粘調液体)123.1 gを得た(収率87%)。SHVは、6.67 meq/gであった。
実施例1では、ポリチオール組成物Aに含まれる各チオール化合物(1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン)それぞれが、メタンジチオールと酸化付加反応して、複数種類のチオール化合物を生成していると推測される。
【0087】
[実施例2]
製造例1記載の方法にて合成したポリチオール組成物A 102.7 g(SH基含有量1.0mol)とメタンジチオール40.09 g(0.5mol)をクロロホルム1000mlとメタノール100mlの混合溶媒に懸濁した。0.5mol/Lヨウ素水溶液1000ml(ヨウ素含有量0.5mol)を25℃で1時間かけて滴下した後、15分間撹拌した。分液操作により水相を除去し、クロロホルム相を200 gの蒸留水で洗浄した。さらにクロロホルム相を35%塩酸200 gにより洗浄した。引き続き、蒸留水200 gで3回洗浄して、クロロホルム相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥脱水した。無水硫酸マグネシウムを濾別、クロロホルムを減圧留去後、3μmPTFE製フィルターで濾過を行いポリチオール組成物C(淡黄色粘調液体)100.3 gを得た(収率71%)。SHVは、6.74 meq/gであった。
実施例2では、ポリチオール組成物Aに含まれる各チオール化合物(1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン)それぞれが、メタンジチオールと酸化付加反応して、複数種類のチオール化合物を生成していると推測される。
【0088】
[実施例3]
製造例1記載の方法にて合成したポリチオール組成物A 7.38 g(SH基含有量71.1 mol)とメタンジチオール2.85 g(35.5 mol)をクロロホルム200 mlとメタノール200 mlの混合溶媒に懸濁した。0.5mol/Lヨウ素水溶液71.1 ml(ヨウ素含有量35.5 mmol)を25から30℃の範囲で30分間かけて滴下した後、30分間撹拌した。蒸留水70mlを添加した後、分液操作により水相を除去し、クロロホルム相を100 gの蒸留水で4回洗浄した。続いて、クロロホルム相を無水硫酸マグネシウムにより乾燥脱水した後、無水硫酸マグネシウムを濾別して得られた溶液からクロロホルムを減圧留去してポリチオール組成物D(淡黄色微濁粘調液体)8.43 gを得た(収率83%)。SHVは、5.80 meq/gであった。
実施例3では、ポリチオール組成物Aに含まれる各チオール化合物(1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン)それぞれが、メタンジチオールと酸化付加反応して、複数種類のチオール化合物を生成していると推測される。
【0089】
[実施例4]
トリレン-2,4-ジイソシアネート11.02 g、硬化触媒としてジブチル錫ジクロリド6mgを20℃にて混合溶解させた。続いて、実施例1記載の方法により合成したポリチオール組成物B 18.98 gを添加した。この懸濁液を60℃にて20分加熱撹拌し、均一溶液とした(モノマー混合物中のメルカプト基とイソシアナト基のモル比は、SH/NCO=1.0)。10分間減圧脱気を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、60℃〜120℃まで26時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で4時間アニールを行った。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0090】
[実施例5〜8]
実施例5〜8では、表1記載のモノマー組成およびSH基/NCO基モル比とした以外は、実施例4と同様の方法で樹脂を得た。
具体的には、実施例5では、実施例4と同様のポリチオール組成物Bを使用し、実施例4と同様の方法で樹脂化を行った。
実施例6、7では、ポリチオール組成物Bにかえて実施例2で得られたポリチオール組成物Cを使用した。また、トリレン-2,4-ジイソシアネートにかえて4,4'-シ゛フェニルメタンシ゛イソシアネートを使用し、実施例4と同様の方法で樹脂化を行った。
実施例8では、ポリチオール組成物Bかえて実施例3で製造したポリチオール組成物Dを使用した。また、トリレン-2,4-ジイソシアネートにかえてm-キシリレンシ゛イソシアナートを使用し、実施例4と同様の方法で樹脂化を行った。
樹脂物性を表1に示す。
【0091】
[実施例9]
ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド 9.0 g、紫外線吸収剤(商品名:Tinuvin PS)99 mgを20℃にて混合溶解して均一溶液とした。この溶液に実施例2記載の方法により合成したポリチオール組成物C 0.90 gを添加、混合溶解させた。続いて、この溶液にジシクロヘキシルメチルアミン9.0 mgおよびジメチルシクロヘキシルアミン1.8 mgを添加、混合溶解させ、10分間減圧脱気を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、30℃〜80℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂をさらに100℃で3時間アニール処理を行った。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0092】
[比較例1]
トリレン-2,4-ジイソシアネート 18.23 g、製造例1記載の方法にて合成したポリチオール組成物A 21.77 g、硬化触媒としてジブチル錫ジクロリド8mg、内部離型剤(商品名:ZelecUN 、STEPAN社製)20 mg、紫外線吸収剤(商品名:viosorb-583、共同薬品株式会社製)20 mgを混合して、60℃にて10分間加熱撹拌して均一なモノマー混合溶液とした(モノマー混合物中のメルカプト基とイソシアナト基のモル比は、SH/NCO=1.0)。このモノマー混合物を10分間減圧脱気した後、3μmPTFE製フィルターで濾過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入し、60℃〜120℃まで20時間かけて徐々に昇温して重合させた。重合終了後、ガラスモールド型を離型させて樹脂を得た。得られた樹脂をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。樹脂物性を表1に示す。
【0093】
[比較例2〜3]
比較例1記載の方法と同様にして、表1記載のモノマー組成およびSH基/NCO基モル比で樹脂化を行なった。
比較例2では、トリレン-2,4-ジイソシアネートと、ポリチオール組成物Aとの含有量を表1に示したようにした点以外は、比較例1と同じである。
比較例3では、トリレン-2,4-ジイソシアネートを使用せずに、4,4'-シ゛フェニルメタンシ゛イソシアネートを使用した。また、4,4'-シ゛フェニルメタンシ゛イソシアネートと、ポリチオール組成物Aとの含有量を表1に示したようにした。他の点は、比較例1と同じである。
樹脂物性を表1に示す。
【0094】
[比較例4]
m-キシリレンジイソシアナート 23.77 gに、ジブチル錫ジクロリド10mg、内部離型剤(商品名:ZelecUN、STEPAN社製)60 mg、紫外線吸収剤(商品名:viosorb-583、共同薬品株式会社製)25 mgを20℃にて混合溶解して均一溶液とした。この均一溶液に、製造例1記載の方法にて合成したポリチオール組成物A 26.23 gを添加し20℃で混合溶解させてモノマー混合溶液とした(モノマー混合物中のメルカプト基とイソシアナト基のモル比は、SH/NCO=1.0)。このモノマー混合物を1時間減圧脱気した後、1μmPTFE製フィルターで濾過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入し、40℃〜100℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合させた。重合終了後、ガラスモールドを離型させて樹脂を得た。得られた樹脂をさらに100℃で4時間アニール処理を行った。得られた樹脂物性を表1に示す。
【0095】
[比較例5]
ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド 63.6 g、紫外線吸収剤(商品名:Tinuvin PS)0.7 gを20℃にて混合溶解して均一溶液とした。この溶液にFSH(4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン)6.4 gを添加、混合溶解させた後、3μmPTFE製フィルターで濾過を行なった。続いて、この溶液にジシクロヘキシルメチルアミン64 mgおよびジメチルシクロヘキシルアミン13 mgを添加、混合溶解させた後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、30℃〜80℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂をさらに120℃で3時間アニール処理を行った。得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0096】
穴開け引張り試験のデータを表2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
実施例4〜9では、高屈折率な樹脂を得ることができた。さらに実施例4、5、6、7では強度も良好な樹脂を得ることができた。
比較例1、2は、それぞれ実施例4、5に対してチオール化合物を変えた系であるが、屈折率が低下する結果となった。比較例3は、実施例6に対してチオール化合物を変えた系であるが、同様に屈折率が低下する結果となった。比較例4は、実施例8に対してチオール化合物を変えた系であるが、同様に屈折率が低下する結果となった。比較例5は、実施例9に対してチオール化合物を変えた系であるが、同様に屈折率が低下する結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される化合物と、
メタンジチオールと、
酸化剤とを反応させて得られるチオール化合物。
【化1】

【請求項2】
式(1)で示される化合物と、
−S−CH−SH(2)
で示されるメタンジチオール誘導体と、
酸化剤とを反応させて得られる化合物を、アルコール分解あるいは加水分解して得られるチオール化合物。
(上記式(2)中、Rは、炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基を示す。)
【化2】

【請求項3】
式(1)で示される化合物と、
式(3)および、式(4)で示される化合物の少なくともいずれか一方とを含む組成物と、
メタンジチオールと、
酸化剤とを反応させて得られる組成物。
【化3】

【化4】

【化5】

【請求項4】
式(1)で示される化合物と、
式(3)および、式(4)で示される化合物の少なくともいずれか一方とを含む組成物と、
−S−CH−SH(2)
で示されるメタンジチオール誘導体と、
酸化剤とを反応させた後、アルコール分解あるいは加水分解して得られる組成物。
(上記式(2)中、Rは、炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基を示す。)
【化6】

【化7】

【化8】

【請求項5】
請求項1または2に記載のチオール化合物あるいは、請求項3または4に記載の組成物と、
イソシアナート化合物とを含む重合性組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の重合性組成物において、
メルカプト基と、
前記イソシアナート化合物のイソシアナト基のモル比(SH基/NCO基)が1.0より大きく1.5以下である重合性組成物。
【請求項7】
請求項5または6に記載の重合性組成物において、
前記イソシアナート化合物が芳香環を有するイソシアナート化合物である重合性組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の重合性組成物において、
前記芳香環を有するイソシアナート化合物が、
トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′―ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアナートよりなる群から選択される1種以上である重合性組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載のチオール化合物あるいは、請求項3または4に記載の組成物と、
エピチオ化合物とを含む重合性組成物。
【請求項10】
請求項5乃至9いずれかに記載の重合性組成物を注型重合して樹脂を得る工程を含む、樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項5乃至9いずれかに記載の重合性組成物を重合して得られる樹脂。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂からなる光学部品。
【請求項13】
式(1)で示される化合物と、
メタンジチオールと、
酸化剤とを反応させてチオール化合物を得るチオール化合物の製造方法。
【化9】

【請求項14】
式(1)で示される化合物と、
−S−CH−SH(2)
で示されるメタンジチオール誘導体と、
酸化剤とを反応させて得られる化合物を、アルコール分解あるいは加水分解してチオール化合物を得るチオール化合物の製造方法。
(上記式(2)中、Rは、炭素数1以上、6以下のアルキル基、あるいは、炭素数2以上、6以下のアシル基を示す。)
【化10】


【公開番号】特開2010−83773(P2010−83773A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252060(P2008−252060)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】