説明

チオール系光硬化性モノマーおよび光硬化型樹脂組成物

【課題】酸素による重合阻害がなく、短時間で硬化可能で、体積収縮が少なく、光開始剤の使用量の低減が可能で、且つ耐湿性能に優れたチオール系の光硬化性モノマーを提供する。
【解決手段】一般式(1);
1−(NHCOR2SH) (1)
(式中、R1は、炭素数2〜18の直鎖状、分岐状もしくは環状のn価の炭化水素基、またはn価の複素環基を示し、R2は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示す。nは、2〜8の整数である。)で表されるポリメルカプトカルボン酸アミド化合物からなるチオール系光硬化性モノマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオール系の光硬化性モノマーおよび該モノマーを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化技術は、環境負荷の低減には欠かせない技術として注目されている。ラジカル重合型光硬化系であるポリエン−ポリチオール系光硬化型樹脂組成物は、酸素によるラジカルの失活が起きても、活性なチイルラジカルが再生されるため、アクリル系材料にみられるような酸素による重合阻害がないこと、光開始剤の使用量の低減が可能であること、硬化時の体積収縮率が小さいこと、重合開始から数秒〜数分の短時間で硬化すること、非常に硬度が高い硬化物から柔軟な硬化物まで広い材料設計が可能であること、1mm以上の厚膜の硬化物も作製可能であることなどの特長から、非アクリル系光硬化材料として注目を浴びている(非特許文献1参照)。
【0003】
最近、表示素子(有機EL素子や液晶表示素子等)、特に液晶表示素子のガラス基板、プラスチックフィルム基板に対して、表示機能の多様化と種々の使用環境に対応するために、表示素子用シール剤に、より高度の信頼性が要求されている。すなわち、パネルの大型化への移行などの要求により、より高い信頼性を有し、水分等に対する物理的・化学的安定性の良好なシール剤が求められている。また、光学用接着剤としては、梅雨時期や夏季の高温多湿の時期に、接着強度の低下によるトラブルが生じ易く、その原因は吸湿による接着剤の劣化であるとされている。
【非特許文献1】「UV・EB硬化技術の現状と展望」,シーエムシー出版,2002年,p.39−50
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、酸素による重合阻害がなく、短時間で硬化可能で、体積収縮が少なく、光開始剤の使用量の低減が可能で、且つ耐湿性能に優れたチオール系の光硬化性モノマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、光硬化性モノマーの耐湿性能を改善するために、アミド結合を有するチオール系光硬化性モノマーを得るべく、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記に示すとおりのチオール系光硬化性モノマーおよび光硬化型樹脂組成物を提供するものである。
項1. 多価アミン化合物とメルカプトカルボン酸化合物とを反応させて得られるポリメルカプトカルボン酸アミド化合物からなるチオール系光硬化性モノマー。
項2. ポリメルカプトカルボン酸アミド化合物が、一般式(1);
1−(NHCOR2SH) (1)
(式中、R1は、炭素数2〜18の直鎖状、分岐状もしくは環状のn価の炭化水素基、またはn価の複素環基を示し、R2は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示す。nは、2〜8の整数である。)で表される化合物である項1に記載のチオール系光硬化性モノマー。
項3. R2が、炭素数1または2のアルキレン基を示す項2に記載のチオール系光硬化性モノマー。
項4. nが、2〜4の整数である項2または3に記載のチオール系光硬化性モノマー。
項5. ポリエン化合物および項1〜4のいずれかに記載のチオール系光硬化性モノマーを含有してなるポリエン−ポリチオール系光硬化型樹脂組成物。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明のチオール系光硬化性モノマーは、多価アミン化合物とメルカプトカルボン酸化合物とを反応させて得られる、上記一般式(1)で表されるポリメルカプトカルボン酸アミド化合物からなる。
【0009】
多価アミン化合物の価数(n)は、2〜8であり、2〜4であるのが好ましい。多価アミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐状脂肪族アルキレンジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン、メンセンジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;ベンゼントリアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン等のトリアミン;2,4,5,6−テトラアミノピリミジン等のテトラアミンを挙げることができる。
【0010】
メルカプトカルボン酸化合物の炭化水素基(上記一般式(1)におけるR2に対応)は、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1または2の2価の炭化水素基である。メルカプトカルボン酸化合物の具体例としては、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、o−メルカプト安息香酸等を挙げることができる。
【0011】
上記ポリメルカプトカルボン酸アミド化合物を製造する方法としては、例えば、一般的なアミド合成法である既知の直接加熱脱水法を用いることができる。
【0012】
この方法において、原料仕込み比率としては、多価アミン化合物(価数n)1モルに対して、メルカプトカルボン酸化合物n〜5nモルであるのが好ましい。反応温度は、100〜200℃であるのが好ましい。反応時間は、5〜20時間であるのが好ましい。
【0013】
また、この反応は脱水反応であり、反応の際に水が生成してくるので、脱水剤としてモレキュラーシーブを加えて加熱脱水するか、生成する水を溶媒との共沸によって除去する。共沸する溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0014】
反応終了後、常法により、中和、酸性化、ろ過等を行い、上記ポリメルカプトカルボン酸アミド化合物を単離することができる。
【0015】
本発明のポリエン−ポリチオール系光硬化型樹脂組成物は、ポリエン化合物および上記チオール系光硬化性モノマーを含有する。
【0016】
本発明に用いるポリエン化合物は、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有する多官能性の化合物であり、アリルアルコール誘導体、アクリル酸と多価アルコールとのエステル化合物、ウレタンアクリート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0017】
アリルアルコール誘導体の具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
アクリル酸と多価アルコールとのエステル化合物において、アクリル酸とエステル化合物を形成する多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を挙げることができる。
【0019】
本発明のポリエン−ポリチオール系光硬化型樹脂組成物におけるポリエン化合物およびチオール系光硬化性モノマーの配合割合は、ポリエン化合物中の炭素−炭素二重結合の1モル当量に対し、チオール系光硬化性モノマー中のチオールのモル当量が0.5〜2モル当量が好ましく、0.8〜1.2モル当量がより好ましい。
【0020】
本発明のポリエン−ポリチオール系光硬化型樹脂組成物には、必要に応じて光開始剤を配合してもよい。光開始剤としては、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、ベンジル、カンファーキノン、アントラキノン、ミヒラーケトン等が挙げられる。
【0021】
光開始剤の配合量は、ポリエン化合物100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0022】
本発明のポリエン−ポリチオール系光硬化型樹脂組成物は、塗料、光ディスクの張り合わせ等に用いられる接着剤、インクジェット用インキ等の印刷関連材料、有機EL素子や液晶表示素子等の表示素子用シール剤、フラットパネルディスプレイ用反射防止フィルム、光ファイバコート剤等のコーティング剤のように、広汎な用途に使用され得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明のチオール系光硬化性モノマーは、酸素による重合阻害がなく、短時間で硬化可能で、体積収縮が少なく、光開始剤の使用量の低減が可能で、且つ耐湿性能が大幅に向上している。また、該モノマーを含有する本発明のポリエン−ポリチオール系光硬化型樹脂組成物も、耐湿性能が大幅に向上している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
製造例1
(上記一般式(1)において、RおよびRがエチレン基で、nが2であるポリメルカプトカルボン酸アミド化合物;メルカプタン化合物I)
【0026】
【化1】

【0027】
3−メルカプトプロピオン酸700.00g(6.60モル)、エチレンジアミン99.17g(1.65モル)およびトルエン340.00gを、撹拌機、窒素吹き込み管、上部に還流冷却器を付けた水分離器および温度計を取り付けた3L四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、内温を107〜112℃まで上昇させ、留出する水を捕集した。加熱開始から5時間で加熱を停止し、室温まで冷却し、上層のトルエン層をデカントにより取り除いた。水260gを加えた後に、11%炭酸ナトリウム水溶液によりpH8に調整した。三日昼夜室温にて撹拌した後に、ろ過により白色固体を得た。次いで、得られた白色固体および水1300gを2L四つ口フラスコに仕込んだ後に、20%HClによりpH3に調整し、ろ過、真空乾燥して、標題化合物45.2gを白色固体として得た(収率11.6%)。
元素分析
計算値:C40.65%,H6.82%,N11.85%,S27.13%
実測値:C40.54%,H6.80%,N11.93%,S26.91%
SH含有量(ヨード法)
計算値:27.99%
実測値:27.5%。
【0028】
製造例2
(上記一般式(1)において、Rがメタキシリデン基で、Rがエチレン基で、nが2であるポリメルカプトカルボン酸アミド化合物;メルカプタン化合物II)
【0029】
【化2】

【0030】
3−メルカプトプロピオン酸700.00g(6.60モル)、メタキシリデンジアミン224.71g(1.65モル)およびトルエン340.00gを、撹拌機、窒素吹き込み管、上部に還流冷却器を付けた水分離器および温度計を取り付けた3L四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、内温を110〜112℃まで上昇させ、留出する水を捕集した。加熱開始から8時間で加熱を停止し、室温まで冷却し、上層のトルエン層をデカントにより取り除いた。水260gを加えた後に、11%炭酸ナトリウム水溶液によりpH8に調整した。三日昼夜室温にて撹拌した後に、ろ過により白色固体を得た。次いで、得られた白色固体および水1300gを2L四つ口フラスコに仕込んだ後に、20%HClによりpH3に調整し、ろ過、真空乾燥して、標題化合物102.1gを白色固体として得た(収率19.8%)。
元素分析
計算値:C53.82%,H6.45%,N8.97%,S20.53%
実測値:C53.88%,H6.71%,N8.82%,S20.34%
SH含有量(ヨード法)
計算値:21.17%
実測値:20.6%。
【0031】
製造例3
(上記一般式(1)において、RがC基で、Rがエチレン基で、nが3であるポリメルカプトカルボン酸アミド化合物;メルカプタン化合物III)
【0032】
【化3】

【0033】
3−メルカプトプロピオン酸700.00g(6.60モル)、ベンゼン−1,2,4−トリアミン135.5g(1.10モル)およびトルエン340.00gを、撹拌機、窒素吹き込み管、上部に還流冷却器を付けた水分離器および温度計を取り付けた3L四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、内温を95〜112℃まで上昇させ、留出する水を捕集した。加熱開始から8時間で加熱を停止し、室温まで冷却し、上層のトルエン層をデカントにより取り除いた。水260gを加えた後に、11%炭酸ナトリウム水溶液によりpH8に調整した。三日昼夜室温にて撹拌した後に、ろ過により白色固体を得た。次いで、得られた白色固体および水1300gを2L四つ口フラスコに仕込んだ後に、20%HClによりpH3に調整し、ろ過、真空乾燥して、標題化合物19.8gを白色固体として得た(収率4.6%)。
元素分析
計算値:C46.49%,H5.46%,N10.84%,S24.82%
実測値:C46.89%,H5.95%,N10.57%,S24.49%
SH含有量(ヨード法)
計算値:25.59%
実測値:24.93%。
【0034】
製造例4
(上記一般式(1)において、Rがトリアジン基で、Rがエチレン基で、nが3であるポリメルカプトカルボン酸アミド化合物;メルカプタン化合物IV)
【0035】
【化4】

【0036】
3−メルカプトプロピオン酸700.00g(6.60モル)、メラミン138.7g(1.10モル)およびトルエン340.00gを、撹拌機、窒素吹き込み管、上部に還流冷却器を付けた水分離器および温度計を取り付けた3L四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、内温を95〜112℃まで上昇させ、留出する水を捕集した。加熱開始から8時間で加熱を停止し、室温まで冷却し、上層のトルエン層をデカントにより取り除いた。水260gを加えた後に、11%炭酸ナトリウム水溶液によりpH8に調整した。三日昼夜室温にて撹拌した後に、ろ過により白色固体を得た。次いで、得られた白色固体および水1300gを2L四つ口フラスコに仕込んだ後に、20%HClによりpH3に調整し、ろ過、真空乾燥して、標題化合物22.8gを白色固体として得た(収率5.3%)。
元素分析
計算値:C36.91%,H4.65%,N21.52%,S24.63%
実測値:C36.89%,H6.05%,N21.97%,S23.99%
SH含有量(ヨード法)
計算値:25.40%
実測値:24.62%。
【0037】
実施例1〜4および比較例1
実施例1〜4として、製造例1〜4で得られたポリメルカプトカルボン酸アミド化合物(メルカプタン化合物I〜IV)について、化合物自体の耐加水分解性を下記評価方法により評価した。また、比較例1として、トリメチロールプロパントリスチオグリコール酸エステル(メルカプタン化合物V)について、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0038】
[耐加水分解性]
メルカプタン化合物I〜Vの各々10gに、0.1NのKOHエタノール溶液95質量部+イオン交換水5質量部の混合液300gを加え、室温にて7日間撹拌し、その酸価の増加を測定した。酸価の増加量より、次式で加水分解率を求めた。
加水分解率(%)=[(7日後の酸価−評価前の酸価)/メルカプタン化合物の100%加水分解時の酸価]×100
【0039】
【表1】

【0040】
表1の説明:
メルカプタン化合物V(トリメチロールプロパントリスチオグリコール酸エステル)
【0041】
【化5】

【0042】
実施例5〜10および比較例2〜4
実施例5〜10として、製造例1〜4で得られたポリメルカプトカルボン酸アミド化合物(メルカプタン化合物I〜IV)の各々を、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(APE、ダイソー株式会社製「ネオアリルP30M」)(実施例5〜8)またはトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、大阪有機化学工業株式会社製「ビスコートV#295」)(実施例9、10)、および光開始剤(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製「イルガキュアー184」)と、表2に示す組成(質量部)で混合し、混合物から得られる硬化物の機械的強度、耐水性、耐薬品性を下記評価方法により評価した。
【0043】
比較例2は、メルカプタン化合物としてトリメチロールプロパントリスチオグリコール酸エステル(メルカプタン化合物V)を用い、ポリエン化合物としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル(APE)を用いて同様の評価を行った。
【0044】
比較例3は、メルカプタン化合物としてトリメチロールプロパンのオキシアルキレンエーテルのジグリシジルエーテルから誘導されるポリメルカプタン(メルカプタン化合物VI)を用い、ポリエン化合物としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル(APE)を用いて同様の評価を行った。
【0045】
比較例4は、メルカプタン化合物としてトリメチロールプロパントリスチオグリコール酸エステル(メルカプタン化合物V)を用い、ポリエン化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を用いて同様の評価を行った。
【0046】
これらの評価結果を表2に示す。
【0047】
[機械的強度]
JIS K−7113に準拠し、上記混合物を1号形試験片の型で厚さ3mmに注型してUV照射機(ウシオ電機株式会社製「UVC2533」)で硬化させた後の引張強度を室温にて測定した。
UV照射条件:メタルハライドランプ「UVL−3000M2−N1」、照射距離120mm、ランプ電力80W/cm、照射時間(通過時間)40秒。
【0048】
[耐水性]
JIS K−7113に準拠し、上記機械的強度試験と同様にして作製した試験片を恒温恒湿槽で85℃、85%RHで7日間養生させた後の引張強度を室温にて測定した。
【0049】
[耐薬品性]
上記混合物を直径10mm、厚み2mmの円盤状に注型し、上記のUV硬化と同様の方法で得られた硬化物を、表2に記載の各試験水溶液に各々室温で7日間浸漬し、その質量変化を測定した。質量変化(%)は、特に示さない限り質量増を表す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2の説明:
メルカプタン化合物VI(トリメチロールプロパンのオキシアルキレンエーテルのジグリシジルエーテルから誘導されるポリメルカプタン)
【0052】
【化6】

【0053】
ポリエン化合物APE(ペンタエリスリトールトリアリルエーテル)
【0054】
【化7】

【0055】
ポリエン化合物TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
【0056】
【化8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アミン化合物とメルカプトカルボン酸化合物とを反応させて得られるポリメルカプトカルボン酸アミド化合物からなるチオール系光硬化性モノマー。
【請求項2】
ポリメルカプトカルボン酸アミド化合物が、一般式(1);
1−(NHCOR2SH) (1)
(式中、R1は、炭素数2〜18の直鎖状、分岐状もしくは環状のn価の炭化水素基、またはn価の複素環基を示し、R2は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示す。nは、2〜8の整数である。)で表される化合物である請求項1に記載のチオール系光硬化性モノマー。
【請求項3】
2が、炭素数1または2のアルキレン基を示す請求項2に記載のチオール系光硬化性モノマー。
【請求項4】
nが、2〜4の整数である請求項2または3に記載のチオール系光硬化性モノマー。
【請求項5】
ポリエン化合物および請求項1〜4のいずれかに記載のチオール系光硬化性モノマーを含有してなるポリエン−ポリチオール系光硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−70417(P2007−70417A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257141(P2005−257141)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】