説明

チオ硫酸ナトリウムを含有する薬学的組成物

本発明は、薬学的に受容可能なチオ硫酸ナトリウムおよびその薬学的組成物を提供する。本発明はまた、チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプル中の、除去し得ない全有機炭素を測定するための方法を提供する。本発明はさらに、薬学的に受容可能なチオ硫酸ナトリウムを製造するための方法を提供する。本発明はなおさらに、薬学的に受容可能なチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を包含する治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、本明細書中にて参考として援用されるUS仮出願番号61/223,993(2009年7月8日出願)に優先権を主張する。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、薬学的に受容可能なチオ硫酸ナトリウム(例えばチオ硫酸ナトリウム五水和物)およびその薬学的に受容可能な組成物を提供する。本発明はまた、チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプル中の、除去し得ない全有機炭素を測定するための方法を提供する。本発明はさらに、薬学的に受容可能なチオ硫酸ナトリウムを製造するための方法を提供する。本発明はなおさらに、薬学的に受容可能なチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を包含する治療方法を提供する。
【0003】
〔背景技術〕
チオ硫酸ナトリウムは、溶液から塩素を除去すること、紙パルプを漂白すること、および鉱石から銀を抽出することのような用途を含む、多数の工業的適用を有している。チオ硫酸ナトリウムはまた、写真の固定液、遷移の着色およびプリントにおける媒染剤、ならびに医薬の成分として使用される。数千メートルトンのチオ硫酸ナトリウム五水和物が毎年生産されているといえ、数百キログラムのみが、青酸中毒の治療として最近示されているチオ硫酸ナトリウム注射物の生産のため、あるいは癜風の治療のためのチオ硫酸ナトリウム五水和物を含むローションの生産に薬学的に利用されている。チオ硫酸ナトリウム五水和物がカルシフィラキシーの治療に効果的であることがこれまでに報告されている(Ackermann et al., Archives of Dermatology 2007, 143(10): 1336-1337)。また、白金含有化学療法剤の使用と関連する、白金誘導性の中毒性内耳障害および腎毒性を防ぐための治療に有効であることが報告されている(Skinner, Current Opinions in Oncology 1995, 7(4): 310-315)。
【0004】
医薬品の製造は米国食品医薬品局(FDA)によって規制されている。1938年の米連邦食品医薬品化粧品法(the passage of the Federal Food Drug and Cosmetic Act in 1938)を通過したことに基づいて、FDAは、新たな医薬品およびその対応する活性成分が、米国連邦規制基準21(CFR211)に詳述されているような「薬学的等級」の良好な製造プラクティス(Good Manufacturing Practices)の高度な要求に従って製造されるべきであることを求めている。医薬品の処方に従来用いられていたチオ硫酸ナトリウム五水和物が比較的少量であるために、「薬学的等級」の良好な製造プラクティス(Good Manufacturing Practices)に従ってチオ硫酸ナトリウム五水和物を製造する原料供給業者がこれまでいなかった。
【0005】
製造プラクティスの規制に加えて、FDAは、新たな医薬品およびその対応する活性成分の各々についての厳格な品質規格を設けている。1938年の米連邦食品医薬品化粧品法を通過した後に市場に導入された場合、医薬品は「新しい」と分類される。この法律において指定されているように、FDAは、新たな医薬品およびその活性成分が、「薬学的等級」の良好な製造プラクティスに従って製造されるべきであることおよび適用される品質規格を満たすことを要求する。食品医薬品化粧品法が1938年に成立した際に、すでに市場に存在した医薬品は「既得薬物(grandfathered drugs)」として分類され、その医薬品およびその標示が変更されないのであればFDAの正式な承認なしで市場に残ることが許可された。その医薬品またはその標示に対する任意の変更は、その「既得薬物」をFDAが強いる規格および品質基準に供される「新たな」薬物としてしまう。生産中毒の治療に使用するためであることのみ標示された、現在入手可能な、チオ硫酸ナトリウム五水和物注射物、および癜風の治療に使用するためであることのみ標示された、チオ硫酸ナトリウム五水和物含有ローションは、「既得薬物(grandfathered medications)」である。その結果、医薬品の処方および対応する品質規格は数十年変更されることなく残っている。
【0006】
チオ硫酸ナトリウム五水和物を含有する医薬品の新たな薬物適用(New Drug Application)のレセプトを見込んで、FDAは、近年、新たな医薬品のためのチオ硫酸ナトリウム五水和物原料は、「薬学的等級」の良好な製造プラクティスに従って製造されなければならないということ、および、新たな一連の品質規格に従わなければならないことを発表した。この新たな一連の品質規格は、既存の品質規格よりもより拡張的でありかつ厳格である。現在利用可能なチオ硫酸ナトリウム原料は、この新たな一連のFDA品質基準を満たさず、そして新たな医薬品の処方に用いるに適切でない。その結果、最近のチオ硫酸ナトリウムに関する研究成果を、FDAに承認された臨床的な治療に移行するためには、「薬学的等級」の良好な製造プラクティスに従って製造され、かつ新たな一連の品質規格を満たす精製チオ硫酸ナトリウム原料について、明らかかつ未解決の必要性が存在する。
【0007】
薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を開発する際の別のハードルは、チオ硫酸ナトリウム五水和物を含有するサンプル中の、除去し得ない全有機炭素を測定するに効果的な分析方法がないことである。これはFDAに強いられる品質基準の1つである。全有機炭素を測定するための慣用的な方法は、サンプル中の有機炭素内容物を測定する前に任意の無機炭素が除去されなければならないことを要求する。これは、典型的には酸を添加することによって達成される。低pHにおいて、無機炭素および揮発性有機炭素は二酸化炭素に変換され、サンプルから除去される。次いで、このサンプルは触媒とともに燃焼チャンバに入れられ、残存している、除去し得ない(揮発しない)全有機炭素の全てがおおよそ680℃の温度で二酸化炭素に変換される。続いて、赤外線測定器を用いて、生成された二酸化炭素の量が測定される。しかし、この慣用的な方法は、チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプルを分析するために使用することができない。酸に曝露した際に、チオ硫酸ナトリウム五水和物は、分析の間に沈殿し得る硫黄に分解する。チオ硫酸ナトリウム五水和物からの塩もまた、分析の間に沈殿し得る。沈殿物は、実験室の設備を損傷し得、分析を干渉し得る。したがって、チオ硫酸ナトリウム五水和物を含有するサンプル中の、除去し得ない全有機炭素を測定するための分析方法に対する必要性もまた存在する。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、除去し得ない有機炭素(NPOC)(揮発しない有機炭素としても知られている。)を約10ppm以下含んでいるチオ硫酸ナトリウムを提供する。本発明はまた、炭素を約0.01重量%以下含んでいるチオ硫酸ナトリウムを提供する。本発明はまた、水銀を約0.05ppm以下含んでいるチオ硫酸ナトリウムを提供する。本発明はまた、セレンを約0.003重量%含んでいるチオ硫酸ナトリウムを提供する。本発明はまた、アルミニウムを約2ppm以下含んでいるチオ硫酸ナトリウムを提供する。本発明はさらに、除去し得ない有機炭素を約10ppm以下含み、炭素を約0.01重量%以下含み、水銀を約0.05ppm以下含み、セレンを約0.003重量%以下含み、アルミニウムを約2ppm以下含んでいる、チオ硫酸ナトリウムを提供する。
【0009】
本発明はまた、チオ硫酸ナトリウムおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含んでいる薬学的組成物を提供し、このチオ硫酸ナトリウムは、除去し得ない有機炭素を約10ppm以下含み、および/または、炭素を約0.01重量%以下含み、および/または、水銀を約0.05ppm以下含み、および/または、セレンを約0.003重量%以下含み、および/または、アルミニウムを約2ppm以下含んでいる。
【0010】
本発明はまた、チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプル中の、除去し得ない全有機炭素を測定するための方法を提供する。この方法は、(a)上記サンプルを、無機酸を含有する所定量の水性溶液と接触させて、水性サンプル溶液を形成する工程;(b)この水性サンプル溶液から沈殿を除去する工程;(c)上記サンプル溶液を所定量の酸化剤と接触させる工程;および(d)超臨界水酸化(SCWO)条件下にて上記サンプル溶液中の有機炭素を二酸化炭素に変換する工程を包含する。一実施形態において、上記無機酸の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約2%以上であり、あるいは上記酸化剤の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約20%以上である。
【0011】
本発明はまた、チオ硫酸ナトリウムを調製するための方法を提供する。この方法は、(a)反応混合物を得るために亜硫化ナトリウムを硫黄と接触させる工程;(b)溶液を得るために上記反応混合物を濾過する工程;(c)上記溶液を濃縮する工程;(d)上記溶液を、活性化された炭素に曝露する工程;(e)上記溶液を、活性化された炭素とともに濾過する工程;および(f)上記溶液からチオ硫酸ナトリウム五水和物を結晶化する工程を包含する。
【0012】
本発明はまた、青酸中毒に限定されない急性の中毒症を治療する方法を提供する。この方法は、急性の中毒症を有する被験体に、治療学的に有効量の本発明のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を包含する。
【0013】
本発明はまた、白金誘導性の(例えば、シスプラチンまたは他の白金含有薬剤の使用に関連する)中毒性内耳障害を治療または予防する方法を提供する。この方法は、例えば、シスプラチンまたは他の白金含有薬剤の使用に関連する、白金誘導性の中毒性内耳障害に罹患しているかもしくは罹患する危険性を有する被験体に、治療学的に有効量の本発明のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を包含する。
【0014】
本発明はまた、白金誘導性の(例えば、シスプラチンまたは他の白金含有薬剤の使用に関連する)腎毒性を治療または予防する方法を提供する。この方法は、例えば、シスプラチンまたは他の白金含有薬剤の使用に関連する、白金誘導性の腎毒性に罹患しているかもしくは罹患する危険性を有する被験体に、治療学的に有効量の本発明のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を包含する。
【0015】
本発明はまた、カルシフィラキシーを有する被験体に、治療学的に有効量の本発明のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を包含するカルシフィラキシーを治療する方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、アテローム性動脈硬化症に限定されない血管石灰化を治療する方法を提供する。この方法は、アテローム性動脈硬化症に限定されない血管石灰化を有する被験体に、治療学的に有効量の本発明のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を包含する。
【0017】
本発明はまた、皮膚科学的な疾患または皮膚に関連する状態を治療する方法を提供する。上記状態としては、皮膚の細菌感染、皮膚の真菌感染、皮膚のウイルス感染、爪の真菌感染、爪の細菌感染、爪のウイルス感染、爪床の真菌感染、爪床の細菌感染、爪床のウイルス感染、乾癬、強皮症、皮膚の炎症、爪の炎症、および爪床の炎症が挙げられるがこれらに限定されない。この方法は、皮膚科学的な疾患または皮膚に関連する状態を有する被験体に、治療学的に有効量の本発明のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を包含する。
【0018】
〔詳細な説明〕
本明細書中の開示を容易に理解するために、多くの用語を以下に定義付ける。
【0019】
概して、本明細書にて使用される命名ならびに無機化学、分析化学、有機化学、医化学および薬理学における実験手順は、当該分野にて周知でありそして一般的に使用される。他で規定されない限り、本明細書にて使用される技術用語および科学用語の全ては、概して、本明細書の開示内容の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書にて使用される用語についての複数の定義が存在する場合、他で規定されない限り本項における定義が優先される。
【0020】
用語「被験体」は、以下に挙げられる動物をいうがこれらに限定されない:霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラットまたはマウス。用語「被験体」および「患者」は、例えば、哺乳動物被験体(例えばヒト被験体)に関して本明細書にて置換可能に使用される。一実施形態において、被験体は、疾患、障害または状態に罹患しているかあるいは罹患する危険性を有しており、ここで、この疾患、障害または状態、あるいはその症状は、チオ硫酸ナトリウムの投与によって治療、予防または緩和され得る。
【0021】
用語「宿主」は、その中でウイルスが複製し得る単細胞生物または多細胞生物をいい、細胞、細胞株、および動物(例えばヒト)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0022】
「治療(treat)」、「治療すること」、「治療(treatment)」は、障害、疾患または状態、あるいはこの障害、疾患または状態に関連する症状の1つ以上の緩和または排除、あるい、はこの障害、疾患または状態のそのものの原因の緩和または根絶を含むことが意図される。
【0023】
用語「予防(prevent)」、「予防すること」、「予防(prevention)」は。障害、疾患もしくは状態および/またはその付随する症状の開始を遅延するおよび/または阻止する方法、被験体が疾患に陥ることから防ぐ方法、あるいは、被験体が障害、疾患または状態に陥る危険性を低減する方法を含むことが意図される。
【0024】
用語「治療学的に有効量」は、投与された場合に、治療されるべき障害、疾患または状態の症状の1つ以上が進行することを治療するまたは予防する、あるいはある程度緩和するに十分な、化合物(例えばチオ硫酸ナトリウム)の量を含むことが意図される。用語「治療学的に有効量」はまた、研究者、獣医学者、医者または臨床医によって探索されている、細胞、組織、系、動物またはヒトの生物学的応答または医学的応答を惹起するに十分な、化合物(例えばチオ硫酸ナトリウム)の量をいう。
【0025】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」、「薬学的に受容可能な賦形剤」、「生理学的に受容可能なキャリア」、または「生理学的に受容可能な賦形剤」は、薬学的に受容可能な材料、組成物、ビヒクル(例えば液体(水(例えば脱イオン水または滅菌水)または固体充填材)、希釈物、賦形剤、溶媒またはカプセル化材をいう。一実施形態において、薬学的な処方物の他の成分と共存し得る限り、どのような成分も「薬学的に受容可能」であり、そして、過剰な毒性、過敏、アレルギー反応、免疫原性、または、妥当な利点/危険性の割合に見合った他の問題もしくは合併症を起こすことなく、ヒトおよび動物の細胞、組織または器官との接触に使用するに好適である。以下を参照のこと:Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia, PA, 2005; Handbook of Pharmaceutical Excipients, 5th Edition, Rowe et al., Eds., The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association: 2005; and Handbook of Pharmaceutical Additives, 3rd Edition, Ash and Ash Eds., Gower Publishing Company: 2007; Pharmaceutical Preformulation and Formulation, Gibson Ed., CRC Press LLC: Boca Raton, FL, 2004。
【0026】
用語「約」または「おおよそ」は、当業者によって測定されるような特定の値についての受容可能な誤差を意味する。これは、その値がどのように測定されたかまたは決定されたかに部分的に依存する。特定の実施形態において、用語「約」または「おおよそ」は、標準偏差が1,2,3または4以内であることを意味する。特定の実施形態において、用語「約」または「おおよそ」は、所定の値または範囲の5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.05%以内であることを意味する。特定の実施形態において、用語「約」または「おおよそ」の後の値が正確であることが意図される。
【0027】
用語「活性な医薬成分」、「活性成分」および「活性物質」は、単独でか、または1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤の1つ以上と組み合わせて、状態、障害または疾患の症状の1つ以上を治療、予防または緩和するために被験体に投与される化合物をいう。本明細書にて使用される場合、「活性な医薬成分」、「活性成分」および「活性物質」は、本明細書中に記載される化合物の光学活性異性体であり得る。本明細書にて使用される場合、「活性な医薬成分」、「活性成分」および「活性物質」は、チオ硫酸ナトリウムの、無水物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物、五水和物、または他の水和物形態であり得る。
【0028】
用語「チオ硫酸ナトリウム」は、チオ硫酸ナトリウムの、無水物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物、五水和物、または他の水和物形態を含む。一実施形態において、本明細書中にて言及される「チオ硫酸ナトリウム」は、チオ硫酸ナトリウム五水和物(Na・5HO)をいう。別の実施形態において、チオ硫酸ナトリウムは薬学的等級をいう。チオ硫酸ナトリウムに関して本明細書にて使用される場合、用語「薬学的等級」は、そのチオ硫酸ナトリウムが、米国連邦規制基準21(CFR211)に詳述されているような「薬学的等級」の良好な製造プラクティス(GMP)に従って製造され、かつ本明細書中に挙げられた精製レベルの1つ以上を満たしていることを意味する。
【0029】
用語「薬物」、「治療剤」および「化学療法剤」は、状態、障害または疾患の症状の1つ以上を治療、予防または緩和するために被験体に投与される化合物またはその薬学的組成物をいう。
【0030】
用語「非溶媒(anti-solvent)」は、溶媒中での化合物の溶解度を低減させてその化合物の沈殿を生じさせるためにその溶媒に添加される液体をいう。
【0031】
用語「除去し得ない有機炭素(NPOC)」および「除去し得ない有機炭素(NVOC)」は、酸に曝露された際に材料から揮発せず、そして除去されない、有機炭素ベースの物質をいう。
【0032】
〔チオ硫酸ナトリウム〕
本発明は、精製形態のチオ硫酸ナトリウム(例えば、チオ硫酸ナトリウム五水和物(Na・5HO))を提供する。一実施形態において、本発明は、薬学的等級のチオ硫酸ナトリウムを提供する。別の実施形態において、本発明は、チオ硫酸ナトリウムを医薬用途に使用するためのFDA基準の全てのうちの1つ以上を満たすかまたは超える形態のチオ硫酸ナトリウムを提供する。別の実施形態において、本発明は、米国連邦規制基準21(CFR211)に詳述されているような良好な製造プラクティス(GMP)に従って製造される形態のチオ硫酸ナトリウムを提供する。
【0033】
一実施形態において、チオ硫酸ナトリウムは固体である。
【0034】
一実施形態において、チオ硫酸ナトリウムは無色の結晶である。
【0035】
一実施形態において、チオ硫酸ナトリウムを含む10%溶液の外観が透明でありかつ無色である。
【0036】
一実施形態において、チオ硫酸ナトリウムは無臭である。
【0037】
一実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムを含有する10%溶液におけるチオ硫酸ナトリウムの存在は、ヨウ素TSを数滴添加した後に黄色に変色することによって同定される。
【0038】
一実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるナトリウムの存在は、本明細書中にその全体が参考として援用されるMethod 191 in USP XXXII (2009)に従って確認される。
【0039】
一実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるチオスルフェートの存在は、Method 191 in USP XXXII (2009)に従って確認される。
【0040】
一実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウム五水和物は、無水ベースに対して算出したチオ硫酸ナトリウムを約99重量%以上、約100.5重量%以下含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウム五水和物における無水チオ硫酸ナトリウムの量は、USP比色分析(USP XXXII (2009))に従って測定される。
【0041】
一実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウム五水和物は、イオンクロマトグラフィによって測定した無水ベースのチオ硫酸ナトリウムを約98重量%以上、約102重量%以下含んでいる。
【0042】
一実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウム五水和物は、無水ベースに対して算出したチオ硫酸ナトリウムを約98重量%以上、約102重量%以下含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウム五水和物におけるチオ硫酸ナトリウム無水物の量はイオンクロマトグラフィによって決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウム五水和物における無水チオ硫酸ナトリウムの量は、本明細書中に記載されるような電気化学導電率検出を用いるイオンクロマトグラフィによって決定される。
【0043】
別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、10%溶液にて25℃で測定した場合に約6.0〜約8.0のpHを有する。特定の実施形態において、本発明のナトリウムのpHは、pHメータを用いて測定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムのpHはMethod 791 in USP XXXII (2009)に従って決定される。
【0044】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約32%重量%〜約37重量%の含水量を有している。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける含水量は、カール・フィッシャー法によって決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける含水量は、Method 921in USP XXXII (2009)に従って決定される。
【0045】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける重金属含量は約10ppm以下の重金属である。本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける重金属含量は、Method 231 in USP XXXII (2009)に従って決定される。
【0046】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.01重量%以下の炭酸を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける炭酸含有量は、チオ硫酸ナトリウムサンプルを酸(例えばリン酸)と接触させて炭酸を二酸化炭素に変換し、そして非分散赤外線検出器を用いて二酸化炭素の量を測定することによって決定される。
【0047】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.005重量%以下の不溶物を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける不溶物の量は、本発明のチオ硫酸ナトリウム10gを100mLの水に溶解し、その溶液を1時間にわたって煮沸し、その溶液を濾過し、熱水で洗浄し、乾燥し、デシケータ内で冷却し、そして秤量することによって決定される。
【0048】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約200ppm以下の塩化物を有している。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける塩化物の含有量は、Method 221 in USP XXXII (2009)に従って決定される。
【0049】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.002重量%以下の鉄を有している。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける鉄の含有量は、ICP発光質量分析法(ICP−MASS)を用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける鉄の含有量は、ICP発光光学発光分光法(ICP−OES)を用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける鉄の含有量は、Method 241 in USP XXXII (2009)に従って決定される。
【0050】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.001重量%以下の鉛を有している。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける鉛の含有量は、Method 251 in USP XXXII (2009)に従って決定される。
【0051】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.01重量%以下のカルシウムを有している。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるカルシウム含量は、ICP−MSを用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるカルシウム含量は、フレーム放射分光測光法(FES)を用いて決定される。
【0052】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、チオ硫酸ナトリウムを含有する水溶液(例えば、20mLの水に1gのチオ硫酸ナトリウムを溶解したもの)に、USP XXXII (2009)に従って調製したシュウ酸アンモニウム試験溶液を添加した際に濁りを生じない。
【0053】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.005重量%以下のカリウムを有している。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるカリウム含量は、ICP−MSを用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるカリウム含量はFESを用いて決定される。
【0054】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.05重量%以下の亜硫酸塩、あるいは約0.1%重量以下の亜硫酸塩を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける亜硫酸塩の含有量は、その全体が本明細書中に参考として援用されるAmerican Chemical Society, Reagent Chemicals, 10th Editionにおける亜硫酸塩の決定方法に従って決定される。
【0055】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.05重量%以下、約0.1重量%以下、約0.25重量%以下、または約0.5重量%以下の硫酸塩(例えばSO)を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける硫酸塩の含有量は、American Chemical Society, Reagent Chemicals, 10th Editionにおける硫酸塩の決定方法に従って決定される。
【0056】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.001重量%以下の硫化物を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける硫化物の含有量は、本明細書中に記載された方法を用いて硝酸鉛(II)の添加によって決定される。
【0057】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.002重量%以下の窒素化合物(例えばN)を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける窒素化合物(例えばN)の含有量は、American Chemical Society, Reagent Chemicals, 10th Editionにおける窒素化合物の決定方法に従って決定される。
【0058】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約10ppm以下、約100ppm以下、約500ppm以下、約1000ppm以下、または5000ppm以下の、揮発性有機不純物を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、揮発性有機不純物または特定の溶媒(例えばエタノール)を、ICH Q3C(R3)に記載されている特定の制限値以下含んでいる。ICH Q3C(R3)の開示はその全体が本明細書中に参考として援用される。特定の実施形態において、揮発性有機不純物の含有量は、Method 467 in USP XXXII (2009)に従って決定される。
【0059】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約60ppb以下、約2.5ppm以下、約8ppm以下、約10ppm以下、約20ppm以下、約25ppm以下、または約50ppm以下の総NPOCを含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約12ppm以下の総NPOCを含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける総NPOCは、本明細書中に記載された方法を用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける総NPOCは、(a)チオ硫酸ナトリウムを、無機酸を含有する所定量の水性溶液と接触させて水性サンプル溶液を形成する工程;(b)上記水性サンプル溶液から沈殿を除去する工程;(c)上記サンプル溶液を所定量の酸化剤と接触させる工程;および、(超臨界水酸化(SCWO)条件下にて上記サンプル溶液中の有機炭素を二酸化炭素に変換する工程を包含する。
【0060】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.05ppm以下の水銀を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける水銀の含有量は、ICP−MSを用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける水銀の含有量は、ICP−OESを用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける水銀の含有量は、Method 261 in USP XXXII (2009)に従って決定される。
【0061】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約2ppm以下のアルミニウムを含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるアルミニウムの含有量は、ICP−MSを用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるアルミニウムの含有量は、ICP−OESを用いて決定される。本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるアルミニウムの含有量は、Method 206 in USP XXXII (2009) に従って決定される。
【0062】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約3ppm以下の砒素を含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける砒素の含有量は、ICP−MSを用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける砒素の含有量は、ICP−OESを用いて決定される。本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける砒素の含有量は、Method 211 in USP XXXII (2009) に従って決定される。
【0063】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.003重量%のセレンを含んでいる。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるセレンの含有量は、ICP−MSを用いて決定される。特定の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるセレンの含有量は、ICP−OESを用いて決定される。本発明のチオ硫酸ナトリウムにおけるセレンの含有量は、Method 291 in USP XXXII (2009) に従って決定される。
【0064】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける微生物負荷の総菌数は、約100コロニー形成単位/グラム(CFU/g)以下である。本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける微生物負荷の総菌数は、Method 61 in USP XXXII (2009) に従って決定される。
【0065】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける酵母および菌の総数は、約20CFU/g以下である。本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける酵母および菌の総数は、Method 61 in USP XXXII (2009) に従って決定される。
【0066】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、約0.02エンドトキシン単位/ミリグラム(EU/mg)以下、約0.1EU/mg以下、または約0.25EU/mg以下の細菌性外毒素を含んでいる。本発明のチオ硫酸ナトリウムにおける細菌性外毒素の量は、Method 85 in USP XXXII (2009) に従って決定される。
【0067】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、0.01重量%以下の固化防止剤の残余を含んでいる。
【0068】
なお別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、以下の1つ以上によって特徴付けられる:
USP比色分析法に従って決定した無水ベースで約99重量%以上、約100.5重量%以下のチオ硫酸ナトリウムを含んでいる;
イオンクロマトグラフィ法に従って決定した無水ベースで約98重量%以上、約102重量%以下のチオ硫酸ナトリウムを含んでいる;
10%溶液にて25℃で約6〜約8のpHを有している;
約32%重量%〜約37重量%の含水量を有している;
外観が無色の結晶である;
10%溶液として透明かつ無色の外観を有している;
無臭である;
ナトリウムについて同定試験が陽性である;
チオ硫酸について同定試験が陽性である;
シュウ酸アンモニウムTSと混合した際に濁りを生じない;
重金属の含有量が約10ppm以下である;
約0.01重量%以下の炭酸を含んでいる;
約0.005重量%以下の不溶物を含んでいる;
約200ppm以下の塩化物を含んでいる;
約0.001重量%以下の硫化物を含んでいる;
約0.05重量%以下、または約0.1重量%以下の亜硫酸塩を含んでいる;
約0.05重量%以下、約0.1重量%以下、約0.25重量%以下、または約0.5重量%以下の硫酸塩を含んでいる;
約0.002重量%以下の鉄を含んでいる;
約0.01重量%以下のカルシウムを含んでいる;
約0.005重量%以下のカリウムを含んでいる;
約10ppm以下、約100ppm以下、約500ppm以下、約1000ppm以下、または約5000ppm以下の、揮発性有機不純物を含んでいる;
60ppb以下、約2.5ppm以下、約8ppm以下、約10ppm以下、約20ppm以下、約25ppm以下、または約50ppm以下の総NPOCを含んでいる;
約0.05ppm以下の水銀を含んでいる;
約2ppm以下のアルミニウムを含んでいる;
約3ppm以下の砒素を含んでいる;
0.001重量%の鉛を含んでいる;
約0.002重量%の窒素化合物(例えばN)を含んでいる;
約0.003重量%のセレンを含んでいる;
0.01重量%以下の固化防止剤の残余を含んでいる;
微生物負荷の総菌数が約100CFU/g以下である;
酵母および菌の総数が約20CFU/g以下である;および
約0.02EU/mg以下、約0.1EU/mg以下、約0.25EU/mg以下の細菌性外毒素を含んでいる。
【0069】
さらに別の実施形態において、本発明のチオ硫酸ナトリウムは、以下の1つ以上によって特徴付けられる;
USP比色分析法に従って決定した無水ベースで約99重量%以上、約100.5重量%以下のチオ硫酸ナトリウムを含んでいる;
イオンクロマトグラフィ法に従って決定した無水ベースで約98重量%以上、約102重量%以下のチオ硫酸ナトリウムを含んでいる;
10%溶液にて25℃で約6〜約8のpHを有している;
約32%重量%〜約37重量%の含水量を有している;
外観が無色の結晶である;
10%溶液として透明かつ無色の外観を有している;
無臭である;
ナトリウムについて同定試験が陽性である;
チオ硫酸について同定試験が陽性である;
シュウ酸アンモニウムTSと混合した際に濁りを生じない;
重金属の含有量が約10ppm以下である;
約0.01重量%以下の炭酸を含んでいる;
約0.005重量%以下の不溶物を含んでいる;
約200ppm以下の塩化物を含んでいる;
約0.001重量%以下の硫化物を含んでいる;
約0.05重量%以下、または約0.1重量%以下の亜硫酸塩を含んでいる;
約0.05重量%以下、約0.1重量%以下、約0.25重量%以下、または約0.5重量%以下の硫酸塩を含んでいる;
約0.002重量%以下の鉄を含んでいる;
約0.01重量%以下のカルシウムを含んでいる;
約0.005重量%以下のカリウムを含んでいる;
約10ppm以下、約100ppm以下、約500ppm以下、約1000ppm以下、または約5000ppm以下の、揮発性有機不純物を含んでいる;
60ppb以下、約2.5ppm以下、約8ppm以下、約10ppm以下、約20ppm以下、約25ppm以下、または約50ppm以下の総NPOCを含んでいる;
約0.05ppm以下の水銀を含んでいる;
約2ppm以下のアルミニウムを含んでいる;
約3ppm以下の砒素を含んでいる;
0.001重量%の鉛を含んでいる;
約0.002重量%の窒素化合物(例えばN)を含んでいる;
約0.003重量%のセレンを含んでいる;
微生物負荷の総菌数が約100CFU/g以下である;
酵母および菌の総数が約20CFU/g以下である;および
約0.02EU/mg以下、約0.1EU/mg以下、約0.25EU/mg以下の細菌性外毒素を含んでいる。
【0070】
特定の実施形態において、チオ硫酸ナトリウムが、特定量の特定材料を「以下含んでいる」(特定量「以下」の特定材料を「含んでいる」)と記載されている場合、チオ硫酸ナトリウムは検出可能な量のその材料を含んでいない。
【0071】
〔チオ硫酸ナトリウムの調製〕
一実施形態において、本発明は、チオ硫酸ナトリウムを調製する方法を提供する。この方法は、(a)反応混合物を得るために亜硫化ナトリウムを硫黄と接触させる工程;(b)溶液を得るために上記反応混合物を濾過する工程;(c)上記溶液を濃縮する工程;(d)上記溶液を、活性化された炭素に曝露する工程;(e)上記溶液を、活性化された炭素とともに濾過する工程;および(f)上記溶液からチオ硫酸ナトリウム五水和物を結晶化する工程を包含する。
【0072】
本発明の方法において使用するに好適な溶媒としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:水(水、精製水、超純水、脱イオン水および注射用水を含むがこれらに限定されない。)、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、1−プロパノール、2−メチルエタノール、2−エチルメタノール、エチレングリコール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、およびこれらの混合物。一実施形態において、溶媒は水性である。別の実施形態において、溶媒は水である。なお別の実施形態において、水と、水に混和し得る溶媒との混合物である。水に混和し得る溶媒としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、1−プロパノール、2−メチルエタノール、2−エチルメタノール、エチレングリコール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、およびこれらの混合物。
一実施形態において、溶媒は水である。
【0073】
一実施形態において、上記接触させる工程における亜硫化ナトリウムに対する硫黄のモル比は、約0.5〜約5、約1〜約4、約1〜約3、約1〜約2、または約1.2〜約1.6である。一実施形態において、亜硫化ナトリウムに対する硫黄のモル比は、約1.5である。
【0074】
一実施形態において、上記接触させる工程における亜硫化ナトリウムの濃度は、約0.1〜100M、約1〜10M、約1〜5M、約1〜4M、約1〜3M、約1〜2M、約1.2〜1.8M、または約1.3〜1.6Mである。一実施形態において、上記接触させる工程における亜硫化ナトリウムの濃度は、約1.3M〜約1.5Mである。
【0075】
特定の実施形態において、上記接触させる工程は、以下の温度範囲にて行われる:約40〜150℃、約70〜120℃、約90〜110℃、約90〜100℃、または約95〜150℃。一実施形態において、上記接触させる工程における温度は、約90℃〜約100℃である。別の実施形態において、上記接触させる工程における温度は、約95℃〜約100℃である。さらに別の実施形態において、上記接触させる工程における温度は、約97℃である。
【0076】
特定の実施形態において、上記接触させる工程は、予め決定された以下のpHにて行われる:13以上、12以上、11以上、10以上、9以上、8以上、または7以上。特定の実施形態において、予め決定されたpHは以下である:約6〜11、約6.5〜10.5、約7〜10、約7〜9、約7〜8.5、または約7〜8。特定の実施形態において、上記接触させる工程における反応混合物に塩基が添加されて予め決定されたpHに調整される。特定の実施形態において、塩基は無機塩基である。特定の実施形態において、塩基は水酸化ナトリウムである。
【0077】
特定の実施形態において、上記濾過する工程は、以下の温度範囲で行われる:約5〜約100℃、約10〜約50℃、約15〜約40℃、約20〜約30℃、または約20〜約35℃。特定の実施形態において、上記濾過する工程は、室温(約21℃)にて行われる。
【0078】
特定の実施形態において、濃縮する工程は溶媒の蒸発によって行われ、濃縮された溶液を精製するために、濾過された溶液を濃縮することを含む。特定の実施形態において、濾過された溶液は、以下の範囲の特定の重力にまで濃縮される:約1.20〜約1.70、約1.30〜約1.60、約1.40〜約1.50、または約1.40〜約1.45。特定の実施形態において、上記濃縮する工程は、以下の温度範囲にて行われる:約5〜100℃、約20〜80℃、約30〜70℃、約40〜60℃、または約45〜55℃。特定の実施形態において、上記濃縮する工程は、約50℃にて行われる。特定の実施形態において、上記濃縮する工程は減圧下にて行われる。特定の実施形態において、上記濃縮する工程は、以下の圧力下にて行われる:約100〜約755mmHg、約300〜約755mmHg、約500〜約755mmHg、約600〜約740mmHg、または約700〜約730mmHg。特定の実施形態において、上記濃縮する工程は約700〜約730mmHgにて行われる。
【0079】
特定の実施形態において、上記濃縮された溶液は、重量比ベースで約0.020%〜0.251%の活性化された炭素と、約50℃で約30〜47分間にわたって混合される。特定の実施形態において、活性化された炭素の工程は、重量比ベースで0.025%以上の活性化された炭素を用いて、約50℃で30分間以上にわたって行われる。
【0080】
特定の実施形態において、活性化された炭素を含む溶液は、約20〜55℃、または約40〜55℃で再度濾過される。特定の実施形態において、再度濾過する工程は、約50℃にて行われる。
【0081】
特定の実施形態において、チオ硫酸ナトリウム五水和物は、慣用的な方法(冷却(cooling)、冷却(chilling)、溶媒蒸発、抗溶媒(anti-solvent)の添加、または抗溶媒への逆添加)を用いて、濃縮され、再度濾過された溶液から結晶化される。
【0082】
結晶化を加速するために、結晶化する工程は、濾過された溶液をシードすることをさらに含み得る。結晶化する工程はまた、分離する工程を含み得、ここで、慣用的な方法(ろ過および遠心分離)によって沈殿が分離され得、引き続いて、溶媒を用いた洗浄、次いで乾燥が行われる。
【0083】
スプレードライ法、ローラードライ法、凍結乾燥、および溶融結晶化を含む、当該分野における他の方法もまた、薬学的に受容可能な本発明のチオ硫酸ナトリウムを調製するために適用可能である。
【0084】
〔方法の特徴付け:チオ硫酸ナトリウムにおける除去し得ない総有機炭素の決定〕
本発明は、チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプル中の、除去し得ない全有機炭素を測定するための方法を提供する。この方法は、(a)水性サンプル溶液を形成するために、上記サンプルを、無機酸を含有する所定量の水性溶液と接触させる工程;(b)この水性サンプル溶液から沈殿を除去する工程;(c)上記サンプル溶液を所定量の酸化剤と接触させる工程;および(d)超臨界水酸化(SCWO)条件下にて上記サンプル溶液中の有機炭素を二酸化炭素に変換する工程を包含する。一実施形態において、上記無機酸の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約2%以上であり、あるいは上記酸化剤の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約20%以上である。
【0085】
一実施形態において、無機酸はリン酸である。別の実施形態において、無機酸は6N リン酸である。さらに別の実施形態において、上記無機酸の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約2%以上であり、約50%以下である。さらに別の実施形態において、上記無機酸の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%である。さらに別の実施形態において、上記無機酸の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約6%である。なお別の実施形態において、無機酸は6N リン酸であり、上記無機酸の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約6%である。
【0086】
水性サンプル溶液中の沈殿は、もし存在するのであれば、当業者に公知の方法によって上記サンプル溶液から容易に除去することができる。特定の実施形態において、沈殿は、濾過によってサンプル溶液から除去される。特定の実施形態において、沈殿は、遠心分離によってサンプル溶液から除去される。
【0087】
一実施形態において、酸化剤は過硫酸ナトリウムである。別の実施形態において、酸化剤は、30%過硫酸ナトリウム溶液である。さらに別の実施形態において、酸化剤の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約20%以上であり約90%以下である。さらに別の実施形態において、酸化剤の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、または約90%である。さらに別の実施形態において、酸化剤の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約45%である。なお別の実施形態において、酸化剤は、30%過硫酸ナトリウム溶液であり、酸化剤の最終容量は上記サンプル溶液の最終容量の約45%である。
【0088】
特定の実施形態において、チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプル中の有機炭素は、例えば、以下に開示される当該分野において公知の任意のSCWOプロセスに従って酸化される:米国特許第2,944,396号、同第4,543,190号、同第5,387,398号、同第5,405,533号、同第5,501,799号、同第5,560,822号、同第5,804,066号、同第6,054,057号、同第6,056,883号、同第6,238,568号、同第6,519,926号、同第6,576,185号、同第6,709,602号、および同第6,773,581号(これらの各々の開示はその全体が参考として本明細書中に援用される。)。特定の実施形態において、SCWOプロセスは、InnovOx laboratory TOC Analyzer (GE Analytical Instruments, Inc., Boulder, CO.)にて行われる。SCWOプロセスは、水の熱力学的な臨界点(すなわち375℃および218atm)付近またはそれ以上での条件下でのみ図の独特な特性を利用している。超臨界水酸化条件下での圧力の増加は、チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプル中の有機炭素を二酸化炭素に変換することによって、酸化プロセスの効率を劇的に増加させる。
【0089】
特定の実施形態において、チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプル溶液は、5.0gのチオ硫酸ナトリウムを含むサンプルを水に添加して100mL溶液を作製することによって調製される。特定の実施形態において、この方法に使用される水は、総有機炭素が0.10ppm以下である。
【0090】
特定の実施形態において、本方法は、酸化の後に形成する二酸化炭素の量を測定する工程を含む。特定の実施形態において、二酸化炭素は、赤外線検出器を用いて定量される。特定の実施形態において、二酸化炭素は、非分散赤外線検出器を用いて定量される。
【0091】
〔薬学的組成物〕
ここでは、薬学的組成物は、有効成分としてチオ硫酸ナトリウムを単独で、又は薬学的に受容可能な媒体、キャリア、希釈剤、賦形剤、又はそれらの混合物とともに含む。
【0092】
チオ硫酸ナトリウムは、単独で、又は1あるいはそれ以上の他の有効成分とともに投与され得る。チオ硫酸ナトリウムを含む本薬学的組成物は、経口、非経口(腸管外の)、及び局所投与のための種々の投薬形態で剤型化され得る。本薬学的組成物は、遅効性、持続性、長期性、持続性、拍動性、制御性、加速性及び速効性、標的化された、プログラム化された放出性能の、及び胃で保持される剤型を含む放出型の剤型として形成し得る。これらの剤型は、当業者に知られた従来手法及び技術にしたがって調製できる(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, supra; Modified-Release Drug Deliver Technology, Rathbone et al., Eds., Drugs and the Pharmaceutical Science, Marcel Dekker, Inc.: New York, NY, 2003; Vol. 126参照)。
【0093】
1つの実施態様として、上記薬学的組成物は、上記チオ硫酸ナトリウムと、1又はそれ以上の薬学的に受容可能な賦形剤又はキャリアとを含む経口投与用の剤型とし得る。
【0094】
他の実施態様として、上記薬学的組成物は、上記チオ硫酸ナトリウムと、1又はそれ以上の薬学的に受容可能な賦形剤又はキャリアとを含む非経口投与用の剤型とし得る。
【0095】
また他の実施態様として、上記薬学的組成物は、上記チオ硫酸ナトリウムと、1又はそれ以上の薬学的に受容可能な賦形剤又はキャリアとを含む局所投与用(肺投与を含む)の剤型とし得る。
【0096】
また1つの実施態様として、上記薬学的組成物は、上記チオ硫酸ナトリウムと、水を含む。他の態様として、上記薬学的組成物は、約1mL〜約1000mL、約1mL〜約750mL、約1mL〜約500mL、約1mL〜約250mL、約1mL〜約100mL、約1mL〜約50mL、約1mL〜約25mLの水の中に、約1g〜約100g、約1g〜約75g、約1g〜約50g、約1g〜約25g、約1g〜約12.5gのチオ硫酸ナトリウムを含むものである。他の態様では、上記薬学的組成物は、約25mL、約50mL、約100mL、約250mL、約500mL、約750mL、又は約1000mL以上の水の中に、約5g、約10g、約12.5g、約15g、約20g、約25g、約30g、約50g、約75g、又は約100g以上のチオ硫酸ナトリウムを含むものである。
【0097】
また、1つの態様として、上記薬学的組成物は、チオ硫酸ナトリウム、1以上の等張性剤、及び1以上のpH調整剤を含む。他の態様として、上記薬学的組成物は、チオ硫酸ナトリウム、1以上の等張性剤、1以上の緩衝剤、又は1以上のpH調整剤を含む。特に、上記薬学的組成物は、チオ硫酸ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸及び水酸化ナトリウムを含む。また特に、上記薬学的組成物は、チオ硫酸ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、水酸化ナトリウム及び水を含む(例えば注射液のための水)。
【0098】
1つの態様として、上記薬学的組成物は、チオ硫酸ナトリウム及びサリチル酸を含む。他の態様として、上記薬学的組成物は、溶液中に、約5〜約50%、約10〜約40%、約15〜約30%、又は約20〜約25%のチオ硫酸ナトリウムと、約0.1〜約2%、約0.1〜約1.5%、約0.5〜約1.5%、約0.5〜約1.25%、又は約0.5〜約1%のサリチル酸を含む。他の態様として、上記薬学的組成物は、溶液中に、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%以上のチオ硫酸ナトリウムと、約0.5%、約0.75%、約1%、約1.25%、約1.5%、又は約2%のサリチル酸を含む。
【0099】
上記薬学的組成物は、単位剤型(unit-dosage form)又は複数剤型(multiple-dosage form)で提供され得る。単位剤型は、ヒトや動物への投与に適した物理的な不連続単位、及び公知の技術により個別に包装される。各単位投与量は、必要とされる医薬学的なキャリア又は賦形剤とともに、所望の効果を奏するために十分な、予め規定された量の有効成分を含む。単位剤型の例として、アンプル、注射器、及び個別包装されたタブレットやカプセルを挙げることができる。単位剤型は、一画分又は複数で投与され得る。複数剤型は、分離された単位剤型で投与するための1つの容器に包装された同一の単位剤型を複数備えるものである。例えば、バイアル、タブレットやカプセルの瓶、又はバイント又はガロンの瓶を例示できる。
【0100】
上記薬学的組成物は、1度又は時間をあけて複数回投与され得る。正確な投与量及び処置の所要時間は、処置対象の患者の年齢、体重及び体調に伴って変化し、また試験方法又はin vivo 又は in vitro 試験、または診断データからの推定によって、決定され得ることを理解される。さらに、特定の個体、特定の投与計画は、個別の必要性や、投与する人や剤の投与を監督する人の専門的な判断に従って、時間の経過にともない調整されるべきであることも理解される。
【0101】
<A.経口投与>
上記薬学的組成物は、経口投与用として固体、半固体、又は液体剤型で提供され得る。使用において、経口投与は、口内、舌、舌下に投与され得る。好ましい経口投与の剤型は、限定されないが、タブレット、カプセル、ピル、トローチ、甘味入り錠剤(lozenges)、芳香製剤(pastilles)、カプセル(cachets)、ペレット、薬用チューインガム、顆粒、原末(bulk powders)、発泡性又は非発泡性の粉末あるいは顆粒、溶液、乳液、懸濁液、溶液、ウェハー、スプリンクルズ(sprinkles)、エリキシル剤(elixirs)、及びシロップ剤を含む。上記有効成分に加えて、上記薬学的組成物は、限定されないが、結合剤、フィラー、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、潤滑剤、滑り剤(glidants)、着色剤、色素移染阻害剤(dye-migration inhibitors)、甘味剤、及び香味添加量を含む、1以上の薬学的に受容可能なキャリア又は賦形剤を含み得る。
【0102】
結合剤又は造粒剤(granulators)は、タブレットに、圧縮後も原型を保つための凝集性を付与する。好ましい結合剤又は造粒剤(granulators)は、限定されないが、コーンスターチ、ポテトスターチ、及びゼラチン化前スターチ(pre-gelatinized、例えば、STARCH 1500)等のスターチ;スクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜、及びラクトース糖の糖;アカシア、アルギン酸、アルギン酸塩、ヤハズツノマタ(Irish moss)抽出物、パンワー(panwar)ガム、ガッチ(ghatti)ガム、イサブゴル皮の粘液(mucilage of isabgol husks)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム(Veegum)、カラマツアラボガラクタン(larch arabogalactan)、トラガカントゴム(tragacanth)粉末、及びグアールガム糖の天然及び人工の増粘剤;エチルセルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース;AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corp., Marcus Hook, PA)等の微結晶性セルロース、及びこれらの混合物を含む。好ましいフィラーは、限定されないが、タルク、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末化セルロース、デキストレート(dextrates)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、スターチ、ゼラチン化前スターチ(pre-gelatinized starch)、及びこれらの混合物を含む。結合剤又はフィラーは、上記薬学的組成物中、約50〜約99重量%存在し得る。
【0103】
好ましい希釈剤は、限定されないが、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、トライスターチ、及び糖粉末を含む。マンニトール、ラクトース、ソルビトール、スクロース、及びイノシトール糖の希釈剤は、十分量存在する場合、圧縮されたタブレットに、咀嚼により口内で崩壊する性能を付与できる。このような圧縮タブレットは、チュアブルタブレットとして使用し得る。
【0104】
好ましい崩壊剤は、限定されないが、アガー;ベントナイト;メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース;木製品(wood products);天然スポンジ;カチオン交換樹脂:アルギン酸;グアーガム及びビーガムHV等の増粘剤;シトラスパルプ;クロスカルメロース(croscarmellose)等の架橋セルロース;クロスポビドン(crospovidone)等の架橋ポリマー;架橋スターチ;炭酸カルシウム;スターチグリコール酸ナトリウム等の微結晶性セルロース;ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium);コーンスターチ、ポテトスターチ、タピオカスターチ、及びゼラチン化前スターチ等のスターチ;粘土;アライン(aligns);及びこれらの混合物を含む。上記薬学的組成物における崩壊剤の量は、組成によって変化し、当業者にとって容易に認識できる。上記薬学的組成物は、約0.5〜15重量%、又は1〜5重量%の崩壊剤を含み得る。
【0105】
好ましい潤滑剤は、限定されないが、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;ミネラルオイル;軽ミネラルオイル;グリセリン;ソルビトール;マンニトール;グリセロールベヘネート(glycerol behenate)及びポリエチレングリコール(PEG)等のグリコール;ステアリン酸;ラウリル硫酸ナトリウム;タルク;ピーナッツオイル、綿実油、サンフラワーオイル、ゴマ油、オリーブオイル、コーン油、及び大豆油を含む水添ベジタブルオイル;ステアリン酸亜鉛;オレイン酸エチル;ラウリル酸エチル;アガー;スターチ;石松子(lycopodium);AEROSIL(登録商標)200(W.R. Grace Co., Baltimore, MD)及びCAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co. of Boston, MA)等のシリカ又はシリカゲル;及びこれらの混合物を含む。上記薬学的組成物は、約0.1〜5重量%の潤滑剤を含み得る。
【0106】
好ましい滑り剤(glidants)は、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co. of Boston, MA)、及びアスベスト非含有タルクを含む。着色剤は、許可あるいは認可された、水溶性のFD&C染料、及び不溶性のFD&C染料の水酸化アルミナ懸濁液、及び色レーキ(color lake)、及びその混合物を含む。色レーキは、水溶性色素の重金属含水酸化物へ吸着させて、色素を不溶化させたものである。香料添加料は、フルーツ等の植物から抽出された天然のフレーバー、及びペパーミントやサリチル酸メチル等の心地よい味を付与する人工剤の混合物を含む。甘味料は、スクロース、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、及びサッカリンやアスパルテーム等の人工甘味料を含む。好ましい乳化剤は、ゼラチン、アカシア、トラガカント(tragacanth)、ベントナイト、及びポリオキシエチレンソルビタンモノレート(TWEEN(登録商標) 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノレート80(TWEEN(登録商標) 80)、及びオレイン酸トリエタノールアミン等の界面活性剤を含む。懸濁及び分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカント、ビーガム、アカシア、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む。保存料は、グリセリン、メチル及びプロピルパラベン、ベンゾイックアッド(benzoic add)、安息香酸ナトリウム及びアルコールを含む。湿潤剤は、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ジエチレングリコールモノラウレート、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルを含む。溶剤は、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、及びシロップを含む。乳液に使用される非水系液体の例としては、ミネラルオイル及び綿実油を挙げることができる。有機酸は、クエン酸及び酒石酸を含む。二酸化炭素源は、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含む。
【0107】
多くのキャリアや賦形剤は、同じ組成であっても種々の機能を発揮することを理解されるべきである。
【0108】
上記薬学的組成物は、圧縮したタブレット、タブレット粉末、チュアブル飴、急速溶解タブレット、多重圧縮タブレット、又は腸溶コーティングタブレット、糖コーティング、又はフィルムコーティングタブレットを含む。腸溶コーティングタブレットは、胃における酸性環境から有効成分を保護するために、胃酸に耐性があるが、腸で溶解又は分解する基材でコーティングした圧縮したタブレットである。腸溶コーティングは、限定されないが、脂肪酸、脂肪、サリチル酸フェニル、ワックス、セラック、アンモニアセラック、及び酢酸フタル酸セルロースを含む。糖コーティングタブレットは、糖コーティングによって周りを囲われた圧縮タブレットであり、好ましくない味や香りをカバーしたり、酸化からタブレットを保護する点で利点がある。フィルムコーティングタブレットは、水溶性の材料からなる薄層又はフィルムでカバーした圧縮タブレットである。フィルムコーティングは、限定されないが、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、及び酢酸フタル酸セルロースを含む。フィルムコーティングは、糖コーティングと同様の性能を付与する。多重圧縮タブレットは、1以上の圧縮サイクルにより形成された圧縮タブレットであり、層状タブレット、及び圧縮コート又はドライコートされたタブレットを含む。
【0109】
タブレットの剤型は、粉体、結晶、又は顆粒状の有効成分を、単独又は1以上の、上述した結合剤、崩壊剤、放出制御ポリマー、潤滑剤、希釈剤、及び/又は、着色剤を含むキャリアあるいは賦形剤とともに製造できる。香味添加剤や甘味料は、特に、チュアブルタブレットや甘味料入りの飴(lozenges)を形成する際には特に有用である。
【0110】
上記薬学的組成物は、ゼラチン、メチルセルロース、スターチ、又はアルギン酸カルシウムから製造し得るソフト又はハードカプセルで提供され得る。ハードゼラチンカプセルは、一方が他方をスリッピングオーバーし、有効成分を完全に包含させるための、2つのセクションから構成される、ドライフィルドカプセル(DFC)として知られる。ソフト弾性カプセル(SEC)は、グリセリン、ソルビトール、又は類似のポリオールを添加し、可塑化したソフトで、ゼラチンシェルのような球状シェルである。ソフトゼラチンシェルは、微生物の生育を阻害するための防腐剤を含み得る。好ましい防腐剤は、上述のとおり、メチル及びプロピルパラベン、ソルビン酸を含む。液体、半固体、及び固体の剤型は、カプセル内に包含され得る。好ましい液体及び半固体の剤型は、プロピレンカーボネート、ベジタブルオイル、又はトリグリセライドに溶解させた溶液及び懸濁させた懸濁液を含む。上記溶液を含むカプセルは、米国特許4,328,245、4,409,239、及び4,410,545に記載の方法で調製できる。カプセルは、また有効成分を修飾したり不溶性を維持したりするために、当業者に知られたコーティングを行い得る。
【0111】
上記薬学的組成物は、乳液、溶液、懸濁液、エリキシル(elixirs)、及びシロップを含む液体及び半固体の剤型で提供され得る。乳液は、二層式、つまり一方の液体が他方の液体全体に微粒子を形成して分散している、オイルインウォーター又はウォーターインオイルであってもよい。乳液は、薬学的に受容可能な非水系の液体又は溶媒、乳化剤、及び防腐剤を含み得る。懸濁液は、薬学的に受容可能な懸濁化剤及び防腐剤を含み得る。水性アルコール溶液は、薬学的に受容可能な、低級アルキルアルデヒトのジ(低級アルキル)アセタール(例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタール);及びプロピレングリコールやエタノールのような1以上の水酸基を有する、水と混和し得る溶媒を含み得る。エリキシルは、透明で、加糖された、水性アルコール溶液である。シロップは、例えば、主クロース等の糖の濃縮された水性溶液であり、防腐剤を含み得る。液体の剤型として、例えば、ポリエチレングリコールの溶液は、十分量の薬学的に受容可能な液体キャリア、例えば水、で所望の投与に適するように希釈され得る。
【0112】
他の有用な液体及び半個体の剤型は、限定されないが、有効成分と、1,2−ジメトキシメタン、ジアルキル化モノ−又はポリアルキレングリコール、ジグリン(diglyme)、トリグリン(triglyme)、テトラグリン(tetraglyme)、ポリエチレングリコール−350−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−550−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−750−ジメチルエーテルであって、ポリエチレングリコールの平均分子量が350、550、及び750であるものとを含む。これらの組成物は、さらに、1以上の抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオジプロピオン酸、及びこれらのエステル、及びジチオカルバミン酸塩を含み得る。
【0113】
経口投与のための上記薬学的組成物は、まあリポソーム、ミセル、ミクロスフェア、又はナノシステム(nanosystems)の形態とし得る。ミセルの剤型は、米国特許6,350,458に記載の方法で調製し得る。
【0114】
上記薬学的組成物は、液体の剤型へ再構成するために、非発泡性又は発泡性の顆粒及び粉体とし得る。非発泡性の顆粒又は粉体に用いられる薬学的に受容可能なキャリア及び賦形剤は、希釈剤、甘味料、及び湿潤剤を含み得る。発泡性の顆粒又は粉体に用いられる薬学的に受容可能なキャリア及び賦形剤は、有機酸及び二酸化炭素源を含み得る。
【0115】
着色剤及び香味添加剤は、上述した全ての剤型で利用し得る。
【0116】
上記薬学的組成物は、遅効性、持続性、パルス状、制御された、標的化された、及びプログラムされた放出形態を含む、即効(immediate)又は改質された放出型の剤型とし得る。
【0117】
上記薬学的組成物は、他の有効成分であって、所望の治療効果を妨げないもの、又は所望の効果を補助する基材とともに調製してもよい。
【0118】
<B.非経口的投与>
上記薬学的組成物は、局所又は全身性投与のための注射、点滴、又は皮下注入(implantation)として投与し得る。非経口的投与は、静脈、動脈、腹腔内、鞘内(intrathecal)、心室内(intraventricular)、子宮内、胸骨内(intrasternal)、頭蓋内、筋肉内、骨液内(intrasynovial)、膀胱内、及び皮下へ投与することを含む。
【0119】
上記薬学的組成物は、好ましい非経口投与のための剤型、例えば、溶液、懸濁液、乳液、ミセル、リポソーム、マイクロスフェア、ナノシステム、及び注射の際に液体にて溶液又は懸濁液とするのに適した固体形状とし得る。このような剤型は、薬理学における当業者に知られた従来の手法にしたがって実施し得る(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, supra参照)。
【0120】
非経口投与のための上記薬学的組成物は、1以上の薬学的に受容可能なキャリア及び賦形剤を含み、限定されないが、水性媒体、水と混和し得る媒体、非水性媒体、微生物の生育を抑制するための抗菌剤又は防腐剤、安定化剤、溶解エンハンサー(solubility enhancers)、等張剤(例えば、限定されないが、塩化カリウム、マンニトール、塩化ナトリウム、デキストラン及びグルコース)、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁化及び分散剤、湿潤又は乳化剤、錯化剤、金属封止又はキレート剤、凍結防止剤、保護剤(lyoprotectants)、増粘剤、pH調整剤(例えば、限定されないが、ホウ酸等の酸、または水酸化ナトリウム等の塩基を含む)、及び不活性ガスを含み得る。
【0121】
好ましい水性媒体は、限定されないが、水、塩、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液(Ringers injection)、アイソトニックデキストロース注射液(isotonic dextrose injection)、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸加リンガー溶液を含み得る。非水系の媒体は、限定されないが、植物由来の不揮発性油、ひまし油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、水添ベジタブル油、水添大豆油、及びココナッツ油の中鎖トリグリセリド、及びパーム種油を含み得る。水に混和し得る媒体は、限定されないが、エタノール、1,3−ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300、及びポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N−メチル−1,2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドを含み得る。
【0122】
好ましい抗菌剤又は防腐剤は、限定されないが、フェノール、クレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピル−パラ−ヒドロキシ安息香酸塩、チメロサール、塩化ベンザルコニウム(例えば、塩化ベンゼトニウム)、メチル−及びプロピルパラベン、及びソルビン酸を含み得る。好ましい等張剤は、限定されないが、塩化ナトリウム、グリセリン、デキストロースを含み得る。好ましい緩衝剤は、限定されないが、リン酸及びクエン酸を含み得る。好ましい抗酸化剤は、重亜硫酸塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む。好ましい局所麻酔剤は、限定されないが、塩酸プロカインを含む。好ましい懸濁化又は分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む。好ましい乳化剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート80、及びトリエタノールアミンオレートを含む。好ましい金属封止又はキレート剤は、限定されないが、EDTAを含む。好ましいpH調整剤は、限定されないが、塩化ナトリウム、塩酸、クエン酸、乳酸を含む。好ましい錯化剤は、限定されないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル7−β−シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標), CyDex, Lenexa, KS)を含む。
【0123】
上記薬学的組成物は、単独又は複数の剤型で構成されていてもよい。単独の剤型は、アンプル、バイアル、またはシュリンジに包装される。非経口投与のための複数の剤型は、静菌性又は静真菌性の濃度で、抗菌剤を含む必要がある。全ての非経口投与の組成物は、公知の手法で滅菌される必要がある。
【0124】
一つの態様において、上記薬学的組成物は、すぐに使用可能な滅菌溶液として提供され得る。他の態様にでは、上記薬学的組成物は、滅菌された乾燥した水溶性製品として提供され得、使用に際して、媒体に再構成される凍結乾燥粉末及び皮下注射用錠剤を含む。他の態様では、上記薬学的組成物は、すぐに使用可能な滅菌された懸濁液として調製される。他の態様として、上記薬学的組成物は、使用に際して媒体を再構成するための、乾燥した非水溶性製品として提供される。他の態様では、上記薬学的組成物は、すぐに使用可能な、滅菌された乳液として提供され得る。
【0125】
上記薬学的組成物は、即効又は改質された放出型の剤型として提供され得、遅効性、持続性、パルス状、制御された、標的化された、及びプログラム化された放出型を含む。
【0126】
上記薬学的組成物は、注射用のデポー製剤(implanted depot)として投与するための、懸濁、固体、半固体、又はチキソトロピック液体として調製され得る。他の態様では、上記薬学的組成物は、体液に不要でありかつ薬学的組成物から有効成分の分散を許容する外部ポリマー膜によって囲まれた固体内部マトリクスに分散される。
【0127】
好ましい内部マトリックスは、ポリメタクリル酸メチル、ポリブチルメタクリレート、可塑化性又は非可塑性のポリ塩化ビニル、可塑性ナイロン、可塑性ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカルボネート共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのハイドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、及び架橋部分水酸化ポリビニルアセテート等の親水性ポリマーを含む。
【0128】
好ましい外部ポリマー膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、塩化ポリビニル、塩化ビニルとビニルアセテートの共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、アイオノマー(ionomer)ポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/ビニルアセテート/ビニルアルコール三元重合体(terpolymer)、及びエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体を含み得る。
【0129】
<C.局所投与>
上記薬学的組成物は、皮膚、口(orifices)、粘膜への局所的な投与を行い得る。上記局所投与は、皮膚(内)、結膜内、歯冠内、眼内、目、耳、経皮的、鼻、膣、尿道、呼吸器、及び直腸への投与を含み得る。
【0130】
上記薬学的組成物は、局所又は全身への効果のための局所投与のために適する、あらゆる剤型とし得、乳液、溶液、懸濁液、クリーム、ジェル、ハイドロゲル、軟膏、打粉(dusting powders)、化粧(dressings)、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ、ペースト、フォーム、フィルム、エアロゾル、洗浄剤(irrigations)、スプレー、座薬、包帯、皮膚パッチを含む。上記薬学的組成物の局所投与は、リポソーム、ミセル、マイクロスフェア、ナノシステム、及びこれらの混合物を含み得る。
【0131】
局所投与に好ましく使用される薬学的に受容可能なキャリア及び賦形剤は、限定されないが、水性媒体、水に混和する媒体、非水性媒体、微生物の生育を抑制する抗菌剤又は防腐剤、安定化剤、溶解性エンハンサー(solubility enhancers)、等張剤(isotonic agents)、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、及び分散剤、湿潤又は乳化剤、錯化剤、金属封止又はキレート剤、浸透促進剤(penetration enhancers)、凍結防止剤、保護剤(lyoprotectants)、増粘剤、及び不活性ガスを含む。
【0132】
上記薬学的組成物は、エレクトロポレーション、イオン浸透療法(iontophoresis)、音声療法(phonophoresis)、超音波療法(sonophoresis)、又はPOWDERJECT(商標) (Chiron Corp., Emeryville, CA)、や BIOJECT(商標) (Bioject Medical Technologies Inc., Tualatin, OR)のようなマイクロニードルあるいはニードルフリー注射で、局所的に投与され得る。
【0133】
上記薬学的組成物は、軟膏、クリーム、又はジェルの形態で提供され得る。好ましい軟膏媒体は、ラード、安息香ラード、オリーブ油、綿実油、その他のオイル、白色ワセリンを含む油性又は炭化水素の媒体を含み;親水性ワセリン、ヒロドキシステアリン硫酸、及び脱水ラノリン等の乳化又は吸収媒体(emulsifiable or absorption vehicles);親水軟膏のようなウォーターリムーバブル媒体;種々の分子量のポリエチレングリコールを含む水溶性軟膏;油中水型(W/O)乳化又は水中油型(O/W)乳化であって、セチルアルコール、グリセリルモノステアレート、ラノリン、及びステアリン酸を含む乳化ヘヒクルであり得る(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, supra参照)。これらの媒体は、皮膚を軟化するが、一般的に抗酸化剤及び防腐剤を必要とする。
【0134】
好ましいクリーム基材は、水中油型又は油中水型であり得る。クリーム媒体は、水で洗い流せ、かつ油相、乳化剤及び水相を含み得る。油相は、「内」相とも呼ばれ、一般的にワセリン及びセチル又はステアリルアルコールのような脂肪酸アルコールを含む。水相は、通常、必須ではないが、体積で油相を超え、また一般的に湿潤剤を含む。クリームにおける乳化剤は、ノニオン、アニオン、カチオン、両性の界面活性剤が利用できる。
【0135】
ジェルは、半固体、懸濁系である。一層ジェルは、実質的に液体キャリア全体に均一に分散した有機高分子を含む。好ましいゲル化剤は、カルボマー、カルボキシポリアルキレン、CARBOPOL(登録商標)のような架橋アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリビニルアルコールのような親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びメチルセルロース等のセルロース系ポリマー;トラガカント、キサンタンガム等のガム類;アルギン酸ナトリウム;及びゼラチンを含み得る。均一なゲルを調製するために、アルコール又はグリセリン等の分散剤を加えてもよく、又は粉砕、機械的混合、及び/又は攪拌によって、ゲル化剤を分散させることもできる。
【0136】
上記薬学的組成物は、座薬、ペッサリー、ブージー剤、湿布又はハップ、ペースト、粉末、化粧、クリーム、膏薬(plasters)、避妊薬、軟膏、溶液、乳液、懸濁液、タンポン、ジェル、フォーム、スプレー、又は浣腸の形態で直腸、尿道口、膣、又は膣周囲へ投与し得る。これらの剤型は、従来の手法を用いて製造できる(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, supra参照)。
【0137】
直腸、尿道口、及び膣用の座薬は、身体の穴へ挿入するために固体基材であり、常温で固体であるが体温で融解又は軟化し、有効成分を穴内部へ放出するものである。直腸及び膣用の座薬に使用される薬学的に受容可能なキャリアは、体温付近で融点を付与する硬化剤等の基材又は媒体;及び重亜硫酸塩やメタ重亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤を含む。好ましい媒体は、限定されないが、ココアバター(カカオ脂)、グリセリン−ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、鯨油、パラフィン、白色及び黄色ワックス、及び脂肪酸のモノ−、ジ−及びトリグリセライドの最適な混合物、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸等のハイドロゲル;グリセリンゼラチンを含む。種々の媒体の組合せを利用できる。直腸及び膣用の座薬は、圧縮法又は成形で得ることができる。直腸及び膣用の座薬の一般的な重量は、約2〜3gである。
【0138】
上記薬学的組成物は、溶液、懸濁液、軟膏、乳液、ゲル形成溶液、溶液のための粉末、ゲル、眼球への挿入(ocular inserts)、及びインプラントの形態で、眼(ophthalmically)に対しても投与し得る。
【0139】
上記薬学的組成物は、鼻腔内又は気道への吸引によって投与し得る。上記薬学的組成物は、エアロゾル又は溶液の形態で提供され得、これらエアロゾル又は溶液は、圧力容器、ポンプ、スプレー、電気流体力学を用いて微細ミストを生成するためのアトマイザーのようなアトマイザー、又は噴霧器、単独または適切な推進剤と組み合わせて、薬剤送達に使用される。推進剤としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを挙げることができる。上記薬学的組成物は、吸入法のための乾燥粉末として提供され得、単独又は挿入キャリアである、ラクトース又はリン脂質;及び点鼻剤等を組み合わせて使用される。鼻腔内への投与のために、粉末は、キトサン又はシクロデキストリンを含む生体粘着剤(bioadhesive agent)を含み得る。
【0140】
圧力容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、又は噴霧器における使用のための溶液又は懸濁液は、エタノール、水性エタノール、又は好ましい他の分散剤、安定化剤、又は有効成分の持続性の放出のための、溶媒としての推進剤(propellant);及び/又は、ソルビタントリオレート、オレイン酸、又はオリゴ乳酸等の界面活性剤を含むように構成し得る。
【0141】
上記薬学的組成物は、吸入法による送達のために適した大きさに微細化し得る。例えば、約50μm以下、又は10μm以下である。上記サイズの粒子は、スパイラルジェットミル法、流動層ジェットミル法、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理法、高圧ホモジナイゼーション法、又はスプレードライ法等の公知の手法を利用して調製し得る。
【0142】
吸入器又は散布器における使用のためのカプセル、発疱剤、及び薬包(cartridges)は、上記薬学的組成物の粉体混合物;ラクトースやスターチといった好ましい粉体基材;及びl-ロイシン、マンニトール、又はステアリン酸マグネシウム等の動作変更剤(performance modifier)を含むように構成し得る。ラクトースは、無水物であってもよく、一水和物であってもよい。他の好ましい賦形剤又はキャリアは、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、及びトレハロースを含む。吸入/鼻腔内投与のための上記薬学的組成物は、さらに、好ましいフレーバー、例えば、メントール及びレボメントール(levomenthol)、又はサッカリン又はサッカリンナトリウム等の甘味料を含み得る。
【0143】
局所投与のための上記薬学的組成物は、即効放出又は改質された放出、例えば、遅効性、持続性、パルス状、制御された、標的化された、及びプログラムされた放出のために構成し得る。
【0144】
<D.改質された放出(Modified Release)>
上記薬学的組成物は、改質された放出の剤型とし得る。ここで、「改質された放出(modified release)」とは、有効成分の放出の速度(rate)又は場所が、同一ルートで投与された即効放出のための剤型(immediate dosage form)と異なる剤型のことである。改質された放出の剤型は、遅効性、持続性(extended-, prolonged-, sustained-)、パルス状、制御された、加速された及び速攻性の、標的化された、プログラムされた放出、及び胃内部に保持される剤型を含む。改質された放出のための剤型における上記薬学的組成物は、当業者に知られた種々のデバイスや方法を利用でき、例えば、限定されないが、マトリックス徐放性デバイス、浸透圧徐放性デバイス、複数微粒子徐放性デバイス(multiparticulate controlled release devices)、イオン交換樹脂、腸溶コーティング、多層コーティング、マイクロスフェア、リポソーム、及びこれらの組合せを挙げることができる。有効成分の放出速度は、粒子サイズや有効成分の多型を変更することで、改質できる。
【0145】
改質された放出の例としては、限定されないが、米国特許Nos.: 3,845,770; 3,916,899; 3,536,809; 3,598,123; 4,008,719; 5,674,533; 5,059,595; 5,591,767; 5,120,548; 5,073,543; 5,639,476; 5,354,556; 5,639,480; 5,733,566; 5,739,108; 5,891,474; 5,922,356; 5,972,891; 5,980,945; 5,993,855; 6,045,830; 6,087,324; 6,113,943; 6,197,350; 6,248,363; 6,264,970; 6,267,981; 6,376,461; 6,419,961; 6,589,548; 6,613,358; 及び 6,699,500を挙げることができる。
【0146】
[1.マトリックス徐放性デバイス(Matrix Controlled Release Devices)]
改質された放出の剤型における上記薬学的組成物は、当業者に知られた技術のマトリックス徐放性デバイスを用いて製造し得る(Takada et al in "Encyclopedia of Controlled Drug Delivery," Vol. 2, Mathiowitz Ed., Wiley, 1999参照)。
【0147】
一つの態様として、改質された放出の剤型における上記薬学的組成物は、水膨潤性、崩壊性、又は可溶性ポリマーである崩壊性(erodible)マトリックスデバイス、例えば、人口ポリマー、及び多糖類やタンパク質等の天然由来ポリマー及び誘導体を含むものを用いて形成できる。
【0148】
崩壊性マトリックスの形成に使用できる材料は、限定されないが、キチン、キトサン、デキストラン、及びプルラン;寒天ゴム、アラビアゴム、カラヤゴム、イナゴマメガム(locust bean gum)、タラガカントゴム、カラギーナン、ガッチゴム(gum ghatti)、グアーガム、キサンタンガム、及び硬化性グルカン(scleroglucan);デキストリン及びマルトデキストリン等のスターチ;ペクチン等の親水性コロイド;レシチン等のリン脂質;アルギン酸塩;プロピレングリコールアルギン酸;ゼラチン;コラーゲン;及びエチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリット酸塩(HPMCAT)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリビニルアセテート;脂肪酸グリセリンエステル;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;エタクリン酸又はメタクリル酸の共重合体(EUDRAGIT(登録商標), Rohm America, Inc., Piscataway, NJ);ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート);ポリラクチド;L−グルタミン酸及びエチル−L−グルタミン酸塩の共重合体;分解性乳酸−グリコール酸共重合体;ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシブチル酸;ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2−ジメチルアミノエチル)メタクリレート、及び(トリメチルアミノエチル)塩化メタクリレートのホモポリマー及び共重合体等のその他のアクリル酸誘導体を含む。
【0149】
他の態様では、上記薬学的組成物は、非崩壊性マトリックスデバイスで形成されてもよい。有効成分は、不活性のマトリックス内に溶解又は分散され、主として投与後、不活性マトリックスを通して分散によって放出される。非崩壊性マトリックスデバイスとして用いられる好ましい材料は、限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、塩素化ポリエチレン、塩化ポリビニル、メチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン/pウロピレン共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、塩化ビニルとビニルアセテートの共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/ビニルアセテート/ビニルアルコール共重合体、及びエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体、塩化ポリビニル、可塑性ナイロン、可塑性ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネート共重合体等の不溶性プラスチック、及びエチルセルロース、セルロースアセテート、クロスポビドン(crospovidone)、及び架橋部分水酸化ポリビニルアセテート等の親水性ポリマー、カルナウバ蝋、微結晶性ワックス、及びトリグリセライド等の脂質化合物を含む。
【0150】
マトリックス徐放性系では、所望の放出速度は、制御可能であり、例えば、採用したポリマーのタイプ、ポリマー粘度、ポリマー及び/又は有効成分の粒子サイズ、組成物中の有効成分とポリマー、その他、賦形剤やキャリアの割合等によって、制御可能である。
【0151】
改質された放出のための剤型における上記薬学的組成物は、当業者に知られた技術により調製でき、例えば、直接圧縮法、圧縮後の乾式又は湿式造粒法、圧縮後の融解造粒法等により調製できる。
【0152】
[2.浸透圧徐放性デバイス(Osmotic Controlled Release Devices)]
改質された放出のための剤型における上記薬学的組成物は、浸透圧徐放性デバイスを用いて製造し得る。例えば、一成分系、二成分系、非対称性膜技術(AMT)、及び押出コアシステム(extruding core system;ECS)により製造し得る。一般的に、上記デバイスは、少なくとも2つの成分を含む:(a)有効成分を含むコア;及び(b)少なくとも1つの放出口を有する半透膜であって、コアを包むもの。上記半透膜は、周囲の水性環境からコアへの水の流入を制御し、放出口を通じての放出による薬剤の放出を行う。
【0153】
有効成分に加えて、浸透圧デバイスのコアは、デバイスのコアへ周囲から水を移動させる原動力を生み出すための浸透物質を含み得る。浸透物質の一例として、「オスモポリマー」や「ハイドロゲル」と呼ばれる水膨潤性の親水性ポリマーであって、限定されないが、例えば、親水性ビニル及びアクリルポリマー、アルギン酸カルシウム等の多糖類、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル)酸、ポリ(メタクリル)酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルメタクリレート及びビニルアセテート等の疎水性モノマーを含むPVA/PVP共重合体、高分子PEOブロック含有の親水性ポリウレタン、クロスカルメロースナトリウム、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びカルボキシエチルセルロース(CEC)、アルギン酸ナトリム、ポリカルボフィル(polycarbophil)、ゼラチン、キサンタンガム、及びスターチグリコレートナトリウムを挙げることができる。
【0154】
浸透物質の他の例としては、水を吸収でき周囲のコーティングのバリアを横断して浸透圧勾配に影響を与えるオスモジェン(osmogens)を挙げることができる。好ましいオスモジェンは、限定されないが、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、及び硫酸ナトリウム等の無機塩;デキストロース、フルクトース、グルコース、イノシトール、ラクトース、マルトース、マンニトール、ラフィノース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、及びキシリトール等の糖;アルコルビン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、p−トルエンスルホン酸、コハク酸、及び酒石酸等の有機酸;尿素;及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0155】
異なる溶解速度の浸透物質は、有効成分が剤型からどの程度の速度で初期送達されるかに影響を及ぼすために用いられる。例えば、MANNOGEM(商標) EZ (SPI Pharma, Lewes, DE)のようなアモルファス糖は、最初の2〜3時間で所望の薬効を素早く与えるための早期送達、そして徐々にかつ継続的に、所望の焼く稿を持続された期間にわたって、維持するために必要な量の放出を行しめるために使用し得る。この場合、有効成分は、当該有効成分が代謝及び排出される量を補う速度で放出される。
【0156】
上記コアは、幅広い種類の他の賦形剤及びキャリアを、剤型の性能や安定性や処理を促進するために使用し得る。
【0157】
半透膜を形成するために使用できる材料は、種々のグレードのアクリル、ビニル、エーテル、ポリアミド、ポリエステル、及びセルロース誘導体であって、生理的なpHで水浸透性及び水不溶性、又は架橋のような化学修飾によって水不溶性に変化可能なものが含まれる。例えば、コーティングを形成するために有用な好ましいポリマーとしては、可塑性、非可塑性、及び強化されたセルロースアセテート(CA)、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、CAプロピネート、硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート(CAB)、CAカルバミン酸エチル、CAP、CAカルバミン酸メチル、CAコハク酸塩、セルロースアセテートトリメリット酸塩(CAT)、CAジメチルアミノアセテート、CAカルボン酸エチル、CAクロロアセテート、CAシュウ酸エチル、CA硫酸メチル、CA硫酸ブチル、CAp−トルエンスルホン酸塩、アガーアセテート、アミローストリアセテート、βグルタンアセテート、βグルカントリアセテート、アセトアルデヒドジメチルアセテート、イナゴマメゴムのトリアセテート、ヒドロキシエチレンビニルアセテート、EC、PEG,PPG,PEG/PPG共重合体、PVP、HEC、HPC、CMC、CMEC、HPMC,HPMCP、HPMCAS、HPMCAT、ポリ(アクリル)酸及びエステル及びポリ−(メタクリル)酸及びエステル及びこれらの共重合体、スターチ、デキストラン、デキストリン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアルケン、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハロゲン、ポリビニルエステル、及びエーテル、天然ワックス、及び合成ワックスを挙げることができる。
【0158】
半透膜は、疎水性マイクロポーラス膜とし得る。上記膜の穴は、実質的にガスで満たされており、水性溶媒で濡れないが、水蒸気を透過するものであり、例えば、米国特許5,798,119に記載される。上記疎水性でかつ水蒸気透過性の膜は、一般的に、ポリアルケン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハロゲン、フッ化ポリビニリデン、ポリビニルエステル及びエーテル、天然ワックス及び合成ワックス等の疎水性膜で構成される。
【0159】
上記半透膜の送達口はコーティング後に、機械的又はレーザドリルにより形成し得る。送達口は、in situで、水溶性材料の栓の溶解、又はコア内部のくぼみを覆う膜の薄い部分を裂くことにより形成し得る。加えて、送達口は、例えば、米国特許5,612,059 及び 5,698,220に記載の非対称膜の場合、コーティング処理の間にも形成し得る。
【0160】
放出される有効成分の全体量と放出速度は、実質的に、半透膜の厚みと多孔率、コアの構成、及び送達口の数、サイズ及び位置により制御し得る。
【0161】
浸透圧徐放性の剤型における上記薬学的組成物は、さらに、従来の賦形剤又はキャリアを、性能や製造工程を向上させるために使用し得る。
【0162】
浸透圧徐放性の剤型は、当業者に知られた従来の方法及び技術にしたがって調製し得る(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, supra; Santus and Baker, J. Controlled Release 1995, 35, 1-21; Verma et al., Drug Development and Industrial Pharmacy 2000, 26, 695-708; Verma et al., J. Controlled Release 2002, 79, 7-27参照)。
【0163】
ある態様では、上記薬学的組成物は、有効成分と薬学的に受容可能な賦形剤やキャリアとを含むコアを覆う非対称の浸透膜を備える、AMT徐放性の剤型として形成できる(米国特許 5,612,059 及び WO 2002/17918参照)。AMT徐放性の剤型は、当業者に知られた公知の方法及び技術、例えば、直接圧縮、乾式又は湿式造粒法、及びディップコーティング法により調製し得る。
【0164】
また、ある態様では、上記薬学的組成物は、有効成分、ヒドロキシセルロース、及び他の薬学的に受容可能な賦形剤又はキャリアを有するコアを覆う浸透膜を備える、ESC徐放性の剤型とし得る。
【0165】
[3.多粒子徐放性デバイス(Multiparticulate Controlled Release Devices)]
改質された放出の剤型における上記薬学的組成物は、多粒子徐放性デバイスとして形成し得る。上記多粒子徐放性デバイスは、直径約10μm〜約3mm、約50μm〜約2.5mm、又は約100μm〜約1mm多数の粒子、顆粒、又はペレットを含む。上記多粒子は、当業者に知られた方法、例えば、湿式又は乾式造粒法、押出/球面化(extrusion/spheronization)、ローラー圧縮法、溶融凝結法(melt-congealing)、及びコア種へのスプレーコーティング法によって得られる(例えば、Multiparticulate Oral Drug Delivery; Marcel Dekker: 1994; and Pharmaceutical Pelletization Technology; Marcel Dekker: 1989.参照)。
【0166】
他の賦形剤又はキャリアは、多粒子を形成するのを助けるために上記薬学的組成物と混合し得る。結果得られた粒子は、それら自体が多粒子デバイスを構成するか、又は種々のフィルム形成材料、例えば腸溶性ポリマー、水膨潤性、及び水溶性ポリマーによってコートされ得る。上記多粒子は、さらに、カプセルやタブレットとして形成し得る。
【0167】
[4.標的化送達(Targeted Delivery)]
上記薬学的組成物は、また特定の組織、受容体、又は処置すべき他の身体の部位へ標的化されるよう形成し得、リポソーム−、再封された赤血球−、及び抗体に基づくデリバリーシステムを含み得る。例えば、限定されないが、米国特許6,316,652; 6,274,552; 6,271,359; 6,253,872; 6,139,865; 6,131,570; 6,120,751; 6,071,495; 6,060,082; 6,048,736; 6,039,975; 6,004,534; 5,985,307; 5,972,366; 5,900,252; 5,840,674; 5,759,542; 及び5,709,874参照できる。
【0168】
〔使用方法〕
一つの態様において、診断された又は推測されたシアン化物中毒を処置する方法は、シアン化物中毒あるいはそのリスクをもつ患者へ、治療効果がある量のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を含むものである。ある態様では、対象は哺乳類であり、他の態様では対象はヒトである。
【0169】
一つの態様では、例えば、シスプラチン又は他の白金含有薬剤の使用に関連する白金誘導性の中毒性難聴の治療又は予防方法であり、シスプラチン又は他の白金含有薬剤の使用に関連する白金誘導性の中毒性難聴の患者又はリスクをもつ患者へ、治療効果を奏する量のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を含む。ある態様では、対象は哺乳類であり、他の態様では対象はヒトである。
【0170】
他の態様では、シスプラチン又は他の白金含有薬剤の使用に関連する白金誘導性のネホトトキシティ(nephtotoxicity)の治療又は予防方法であり、シスプラチン又は他の白金含有薬剤の使用に関連する白金誘導性のネホトトキシティ(nephtotoxicity)の患者又はリスクのある患者へ、治療効果を奏する量のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を含む。ある態様では、対象は哺乳類であり、他の態様では対象はヒトである。
【0171】
他の態様では、限定されないが、アテローム性動脈硬化症を含む血管石灰化(vascular calcification)の治療又は予防方法であり、限定されないが、アテローム性動脈硬化症を含む血管石灰化(vascular calcification)の患者又はリスクをもつ患者へ、治療効果を奏する量のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を含む。ある態様では、対象は哺乳類であり、他の態様では対象はヒトである。
【0172】
ある態様では、カルシフィラキシスに関連する障害の処置方法であり、カルシフィラキシスに関連する障害の患者へ、治療効果を奏する量のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を含む。ある態様では、対象は哺乳類であり、他の態様では対象はヒトである。
【0173】
他の態様では、限定されないが、癜風、皮膚への細菌感染症、皮膚への真菌感染症、皮膚へのウイルス感染症、ツメへの真菌感染症、ツメへの細菌感染症、ツメへのウイルス感染症、ネイルベッド(nailbeds)への真菌感染症、ネイルベッドへの細菌感染症、ネイルベッドへのウイルス感染症、乾癬、強皮症、皮膚の炎症、ツメの炎症、ネイルベッドの炎症を含む皮膚病又は皮膚に関連する障害への処置方法であり、皮膚病又は皮膚に関連する障害の患者へ、治療効果を奏する量のチオ硫酸ナトリウムを投与する工程を含む。
【0174】
処置される障害、疾患、疾病と、患者の状態によって、チオ硫酸ナトリウムは、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、脳室内(ICV)、イントラシステマル(intracistemal)への注射又は点滴、皮下への注射、又はインプラント)、吸入、鼻、膣、直腸、舌下、又は局所(例えば、経皮的又は局所的)等の経路で投与し得、また最適な投与経路のために、好ましい投与単位で、単独又は薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント及び媒体とともに形成し得る。
【0175】
薬剤における投与量は、1,2,3,4,5,6、又はそれ以上のサブドーズ(sub-doses)の形態であって、一日あたり投与するのに適した間隔を開けて、適宜設定できる。投与量又はサブドーズは、投与量単位あたり、約10ng〜約1000g、約10mg〜約100g、約500mg〜約50g、約1g〜約25g、又は約5g〜約12.5gの有効成分を含む投与単位の形態で投与し得、また患者の状態が要求すれば、投与量は変更でき、継続的な点滴として投与し得る。
【0176】
ある態様では、好ましい投与量レベルは、約0.001〜約100g/患者の体重1kgあたり(g/kg per day)、約0.01〜約50mg/kg per day、約0.01〜約25mg/kg per day、又は約0.05〜約10mg/kg per dayであって、一度または複数回に分けて投与し得る。好ましい投与量レベルは、約0.01〜約100mg/kg per day、約0.05〜約50mg/kg per day、又は約0.1〜約10mg/kg per dayである。この範囲内において、投与量は、約0.01〜約0.1、約0.1〜約1.0、約1.0〜約10、又は約10〜約50mg/kg per dayである。
【0177】
〔組合せ治療〕
チオ硫酸ナトリウムは、組み合わせて、又は疾患及び障害の治療及び/又は予防に有用な他の治療薬と組み合わせて使用できる。
【0178】
ここで、「組み合わせて(in combination)」とは、1以上の治療法(例えば、1以上の予防薬及び/又は治療薬)の利用を含む。しかし、用語「組み合わせて」の使用は、疾患や疾病を持つ患者に投与される治療法(例えば、予防薬及び/又は治療薬)の順序に限定されない。第一の治療法(例えば、化合物等の予防薬及び/又は治療薬)は、先立って(例えば、5分、15分、30分、45分、1h、2h、4h、6h、12h、24h、48h、72h、96h、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)に投与され、付随して、又は連続して、(例えば、5分、15分、30分、45分、1h、2h、4h、6h、12h、24h、48h、72h、96h、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に、第二の治療法(例えば、予防薬及び/又は治療薬)が患者に投与される。3つの治療を行う場合も本発明に含まれる。
【0179】
用語「共働作用(synergistic)」は、チオ硫酸ナトリウムと、その治療法の付加的な効果以上の効果を奏する、処置、予防又は疾患の管理に現在用いられている他の治療法(例えば、予防薬及び/又は治療薬)との組合せを含む。組合せ治療法(例えば、予防薬及び/又は治療薬の組合せ)は、疾患を有する患者への1以上の治療薬の投与量を減らす、及び/又は、薬剤の投与回数を減らし得る。治療薬(例えば、予防薬及び/又は治療薬)の投与量を低減すること、及び/又は、より少ない回数の投与は、疾患の予防や治療における効果を減じることなく、患者の上記薬剤の投与に関連する毒性を減らすことができる。加えて、共働効果は、疾患の予防や治療における薬剤の効果を高めることもできる。最後に、治療法の組合せ(例えば、予防薬及び/又は治療薬の組合せ)の共働効果は、単独の治療に関連する副作用を回避したり減じたりできる。
【0180】
チオ硫酸ナトリウムは、他の薬剤と組み合わせて、又は他の薬剤に代替して使用し得る。組合せ治療法では、2以上の薬剤の有効な投与量が、共に投与される。一方、代替又は連続的な治療法においては、各薬剤の有効な投与量が連続してまたは順次投与される。投与量は、薬剤の吸収、不活性化及び排出速度と同様に、当業者に知られた他の要因に基づき決定される。投与量の値は、緩和すべき障害の深刻さに応じても変化する。また、特定の患者に対して、特定の投与計画やスケジュールは、個人の必要性や薬剤を投与又は監督する人物の専門的な判断にしたがって、長期にわたって調整されるべきものでもあることが理解される。
【0181】
上記組成物は、他のクラスの組成物と組み合わせて投与し得、例えば、限定されないが、硝酸ナトリウム等の血管拡張剤;サリチル酸等の角質溶解剤;ホスホラミドン等のエンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤;イフェトロバン(ifetroban)のようなトロンボキサン受容体アンタゴニスト;カリウムチャネルオープナー;ヒルジン等のトロンビンインヒビター;PDGF活性の調整剤等の成長因子阻害剤;血小板活性化因子(PAF)アンタゴニスト;GPIIb/IIIaブロッカー(例えば、アブシキシマブ(abciximab)、エプチギバタイド(eptifibatide)、及びトリオフィバン(tirofiban))、P2Y(AC)アンタゴニスト(例えば、クロピドグレル(clopidogrel)、チクロフィジン(ticlopidine)及びCS−747)、及びアスピリン等の抗−血小板剤;ワルファリン等の抗凝血剤;エノザパリン(enoxaparin)等の点分子量ヘパリン;VIIa因子阻害剤及びXa因子阻害剤;レニンインヒビター;ニュートラルエンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;オマパトリラット(omapatrilat)及びゲマパトリラット(gemopatrilat)等のバソペプチダーゼ阻害剤(デュアルNEP−ACE阻害剤);プラバスタチン、ロバスタチン、アトロバスタチン、シンバスタチン、NK−104(a.k.a. イタバスタチン、ニスバスタチン又はニスバスタチン)、及びZD-4522(ロスバスタチン、アタバスタチン、又はビサスタチンとして知られる)等のHMG CoAレダクターゼ阻害剤;スクアレンシンセターゼ阻害剤;ファイブレイト(fibrates);クエストラン等の胆汁酸金属封止剤(bile acid sequestrants);ACAT阻害剤等の抗−アテローム剤(anti-atherosclerotic agents);MTP阻害剤;amlodipine besylate等のカルシウムチャネル阻害剤;カリウムチャネル活性化剤;アルファ−アドレナリン剤(alpha-adrenergic agents);カルベジロール及びメトプロロール等のベータ−アドレナリン剤(beta-adrenergic agents);抗不整脈薬;クロルチアジド、ヒドロクロルチアジド、フルメトロン、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメサイアザイド、メチルコラントレン、クロロ蟻酸トリクロロメチル、ポリチアジド、ベンゾチアゾール、エタクリン酸、チクリナフェン、クロルタリドン、フロセナイド(furosenide)、ムゾリミン(muzolimine)、ブメタニド、トリアムテレン、アミロリド、及びスピロノラクトン等の利尿薬;組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、組換えtPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、及びAPSAC(anisoylated plasminogen streptokinase activator complex)等の血栓溶解剤;ビグアナイド剤(例えば、メトホルミン)、グルコシダーゼ阻害剤(例えば、acarbose)、インシュリン、メグリチナイド(meglitinides)(例えば、repaglinide)、スルホニル尿素(例えば、glimepiride, glyburide, 及び glipizide)、チオゾリジネジオン(thiozolidinediones)(例えば、troglitazone, rosiglitazone, 及び pioglitazone)、PPAR−γアゴニスト等の抗糖尿病薬;スピロノラクトン、eplerenone等の無機質コルチコイド受容体アンタゴニスト;成長ホルモン分泌促進薬;aP2阻害剤;PDE III阻害剤(例えば、cilostazol)、PDE V阻害剤(例えば、sildenafil, tadalafil, 及び vardenafil)等のホスホジエステラーゼ阻害薬;プロテインチロシンキナーゼ阻害剤;抗炎症薬;メトトレキセート、FK506(タクロリムス)、mycophenolate mofetil等の抗増殖性物質;化学療法薬;免疫抑制剤;抗癌剤及び細胞障害性剤(例えば、ナイトロジェン・マスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、エチレニミン、及びトリアジン等のアルキル化剤);葉酸アンタゴニスト、プリンアナログ、ピリミジンアナログ等の代謝拮抗剤;アントラサイクリン、ブレオマイシン、ミトマイシン、ダクチノマイシン、及びプリカマイシン(plicamycin)等の抗生物質;L−アルパラギナーゼ等の酵素;ファルネシル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤;糖質コルチコイド(例えば、コルチゾン)、エストロゲン/アンチエストロゲン、アンドロゲン/アンチアンドロゲン、プロゲスチン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト、及びoctreotide acetate等のホルモン剤;ecteinascidins等の微小管崩壊剤(microtubule-disruptor agents);pacitaxel, docetaxel, 及び epothilones A-F等の微小管安定化剤;ビンカ・アルカロイド、epipodophyllotoxins、及びtaxanes等の植物由来物質;等のトポイソメラーゼ阻害剤;プレニル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤;シクロスポリン;プレドニゾン、デキサメタゾン等のステロイド;アザチオプリン、シクロフォスファミド等の細胞毒;tenidap等のTNF−α阻害剤;etanercept, rapamycin, 及び leflunimide等の抗TNF抗体又は可溶化TNF受容体;celecoxib 及び rofecoxib等のシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤;ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、mitotane、hexamethylmelamine、金化合物、シスプラチン、サトラプラチン、カルボプラチン等の白金等位錯体等のその他薬剤;を含み得る。
【0182】
チオ硫酸ナトリウムは、当業者に公知の包装材料を用いて、製品として提供され得る。米国特許 5,323,907; 5,052,558; 5,033,252参照。例えば、医薬学的な包装材料としては、限定されないが、プラスチックの包み、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、及び選択された剤型と投与及び処理のために好ましい包装材料を挙げることができる。
【0183】
医療従事者によって使用されるキットは、患者への有効成分の十分量の投与を簡略化してくれる。ある態様では、キットは、容器、チオ硫酸ナトリウムの剤型を含む。
【0184】
ある態様では、キットは、チオ硫酸ナトリウムの剤型を含む容器であって、当該容器には、1以上の薬剤が含まれる。
【0185】
キットは、さらに、有効成分の投与に使用されるデバイスを含み得る。例えば、限定されないが、注射器、針なし点滴ドリップ袋、パッチ、及び吸入器を挙げることができる。キットは、有効成分の投与のためにコンドームを含み得る。
【0186】
キットは、さらに、薬学的に受容可能な媒体であって、1以上の有効成分を投与するのに使用できるものを含み得る。例えば、有効成分が固体であって非経口の投与のために再構成される必要がある場合、キットは、有効成分を溶解させ非経口投与に好ましい無菌で無粒子の溶液を形成するのに好ましい媒体の封止された容器を備え得る。薬学的に受容可能な媒体としては、限定されないが、以下のものが含まれる。限定されないが、点滴USPに使用される水、塩化ナトリウム点滴、リンガー点滴、デキストロース点滴、デキストロース及び塩化ナトリウム点滴、及び乳酸加リンガー液等の水性媒体、;限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール等の水と混和し得る媒体;限定されないが、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、イソプロピル・ミリステート、安息香酸ベンジル等の非水性の媒体。
【0187】
本開示は、以下の限定されない実施例によって、さらに理解し得る。
【0188】
〔実施例〕
本明細書において用いられる場合、本明細書での工程にて用いられる記号および慣用法、概略および実施例は、特定の略語が特別に規定されるかどうかに関わらず、例えば、the Journal of the American Chemical SocietyまたはThe Journal of Biological Chemistryのような、同時期の科学文献に用いられているものと一致している。特に、限定はされないが、下記の略語が実施例中および本明細書を通じて用いられ得る:g(グラム)、mg(ミリグラム、mL(ミリリットル)、μL(マイクロリットル);mM(ミリモル);μM(マイクロモル);mmol(ミリモル);eq.(平衡);hrまたはhrs(時間);min(分)。
【0189】
下記の実施例の全てにおいて、当業者に既知の標準の実験および精製方法が利用され得る。他に表示されていなければ、全ての温度は℃(セルシウス度)で表される。他に示されていなければ、全ての反応は室温で行われた。下記の実施例で説明されている方法論は特定の実施例の使用を通じて利用可能な化学を実証することを目的としており、開示の範囲を示すものではない。
【0190】
〔実施例1:薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物の調製〕
窒素下では、57キログラムの硫黄および脱イオン水(799.1キログラム)がオリコンロスコンビネーション(Oricon Ross combination) pH電極を用いて不活性化された500ガロン反応器装置に充填された。スラリーは攪拌され、161.4キログラムの亜硝酸ナトリウムが反応器に充填された。反応器は4時間の間95〜100℃の間で加熱された。4時間後の反応器内のスラリーのpHは7.3であった。反応器は20+/−5℃に冷却された。冷却されたスラリーのpHは6.6であった。300グラムの水酸化ナトリウム50重量%溶液は反応器内のスラリーのpHを7.4に上げるために反応器内容物に添加された。反応器の内容物はエステラ(Estella)濾紙を通して濾過された。結果として得られた濾過物は特定の引力1.40で50〜100℃の真空下で滅菌された。50+/−5℃の溶液の温度を維持しながら、300gの活性炭が溶液に添加された。溶液は1時間および3分間の間攪拌され、続いて袋状濾紙により濾過され、活性炭を除去された。濾過された溶液は20+/−5℃に冷却され、15グラムのチオ硫酸ナトリウム五水和物の結晶が溶液に添加された。溶液は次いで5+/−5度に冷却され、15時間および2分間の間攪拌された。固体および液体両方からなる反応器内の内容物は、不活性環境下においてオーロラろ紙を用いて濾過された。母源の水溶液は反応器の壁から固体を洗い流すために用いられた。固体は乾燥した皿上に載せられ、35℃で8時間の間、窒素流を用いた完全真空下の乾燥器内に静置された。乾燥は8時間後、工程中の試験において物質の水分含量(乾燥による消失)が34.0から36.8%の間になっていることが確認されるまで続いた。乾燥された固体は最終重量が112.5キログラムであった。(収率36%)。
【0191】
精製方法から本実施例1までで得られるチオ硫酸ナトリウム五水和物の解析は表1にまとめられている。
【0192】
【表1】

【0193】
〔実施例2:チオ硫酸ナトリウム五水和物の全ての除去し得ない有機炭素の決定方法〕
全ての除去し得ない有機炭素(NPOC)はInnovOx研究用TOC解析装置(GE Analytical Instruments社、Boulder株式会社)を用いて決定された。標準液として水が用いられ、試薬および調製サンプルは全ての有機炭素(TOC)は0.10ppm以下であった。リン酸はACS試薬等級であった。過硫酸ナトリウムはGeneral Electric社(GE Part # APK68050−01、フェアフィールド、コネチカット)より入手した。スクロースUSPは標準試料として用いられた。圧縮された窒素は1ppm以下のCOおよび1ppm以下のTMCを有している。
【0194】
酸性化溶液として用いられるリン酸(6N)はおよそ100mLの水を250mLのメスフラスコに添加し、次いで100mLのリン酸をゆっくり添加し、最終的な体積が250mLとなるように追加の水を添加することにより調製された。リン酸(6%)溶液は120mLの6Nリン酸を2,000mLのメスフラスコに添加し、室温において100mLの体積となるように水を添加することにより調製された。
【0195】
酸化剤として用いられる過硫酸ナトリウム溶液(30%)は150 0.1gの過硫酸ナトリウムを500mLのメスフラスコに添加し、過硫酸ナトリウムが溶解された後、最終体積が500mLとなるように追加の水を添加することにより調製された。溶液は使用前の3日間は置いておくことができ、14日間の調製中に用いられた。
【0196】
スクロースストック標準液(0.50mg炭素/1.2mgスクロースを基準にした250ppm炭素)は15mLの水に9mgのスクロースを溶解することにより調製された。TOC標準(10ppm)は100mLのメスフラウコに4mLのスクロースストック標準液を添加し、次いで室温で体積を100mLとするように水を添加することにより調製された。TOC標準(2ppm)は10ppmのTOC標準液を50mLのメスフラスコに添加し、次いで室温で体積を50mLとするように水を添加することにより調製された。TOC標準液(0.5ppm)は5mLの10ppmTOC標準液を100mLのメスフラスコに添加し、次いで室温で体積を100mLとするように水を添加することにより調製された。
【0197】
チオ硫酸ナトリウム五水和物サンプル溶液は5.0gのサンプルを100mLのメスフラスコに添加し、次いで6%のリン酸溶液を室温で体積を100mLとするように添加することにより調製された。サンプル溶液は15分間遠心され、沈殿を沈ませるために一晩静置させた。
【0198】
InnovOx装置は表2に示されている装置のパラメーターを用いて、6%のリン酸溶液(ブランク)および、0.5ppm、2ppm、および10ppmTOC標準液で校正された。
【0199】
【表2】

【0200】
校正曲線要求性は、i)再現の平均の相関係数(r)は0.99以上でならなければならず;ii)2および10ppmTOC標準液に対するRSDは15%以下でなければならず;iii)下記で計算されているように定量限界(LOQ)は3ppm以下でなければならない:
LOQ=(10)(A)(B)/(C−D)
およびiv)検出限界(LOD)は下記のように計算された、1ppm以下でなければならない:
LOD=(3)(A)(B)/(C−D)
ここで:
Aは0.5ppmTOC標準液中の炭素濃度であって;
Bはブランク調製物において決定されるTOC濃度の標準偏差であって;
Cは0.5ppmTOC標準液において決定されるTOC濃度の平均であって;さらに
Dはブランク調製物において決定される平均のTOC濃度である。
【0201】
サンプルは表3に示されている下記の装置のパラメーターを用いて解析された。
【0202】
【表3】

【0203】
2ppmTOC標準はサンプル解析の前後で実行された。
【0204】
システム適合性要求性はi)2ppmTOC標準に対するRSDが15%以下であり;ii)2ppmTOC標準決定に対する理論的な反応%(%T)が下記のように計算された、80%以上および120%以下でなければならない:
%T=100xA/B;
ここで:
Aは解析装置により決定された結果(ppm)であって;さらに
Bは2ppmTOC標準(ppm)であって;
iii)LOQの、またはLOQ以上〜5倍のLOQのサンプル反応をした全てのサンプルに対し、RSDは25%以下でなければならず;または5倍のLOQ以上のサンプルの反応であった全てのサンプルに対しRSDは15%以下でなければならない。
【0205】
それぞれのサンプル中の全ての除去し得ない有機炭素は下記のように計算された:
NPOC=AxB/C;
ここで:
Aは解析装置により決定された結果(ppm)であって;
Bはサンプルの希釈体積(mL)であって;さらに、
Cはサンプルの質量(g)であった。
【0206】
全ての除去し得ない有機炭素の計算において、AがLOD未満の場合、組成物のAは全ての除去し得ない有機炭素の値の上限を得るための計算のためにLODで置き換えられた。AがLOQ未満であるがLODより大きい場合、計算される全ての除去し得ない有機炭素の値はおよその値を得、LOQは全ての除去し得ない有機炭素の上限値を設定した。
【0207】
〔実施例3:チオ硫酸ナトリウム五水和物薬剤物質中の硫化不純物の決定方法〕
この手順はチオ硫酸ナトリウム五水和物薬剤物質および薬剤生成物サンプル中の不純硫化物の検出のための湿式化学試験条件の手順を記載している。硫化不純物は、サンプル中に存在する場合、灰色の沈殿を生じる硫化鉛(II)として検出される。方法検出限界は、溶液中の250mg/mLのチオ硫酸ナトリウム五水和物の薬剤生成物濃度、および試験に1mLの薬剤生成物の使用に基づいて10ppmまたは10μg/gの硫化物に設定されている。
【0208】
<a.手順>
NaOH(0.01N)試薬は、約4.0gの水酸化ナトリウム(ACS試薬等級)を1,000mLの脱イオン水に溶解することにより調製された。溶液はさらに、0.01Nの水酸化ナトリウム溶液を得るために、10mLから100mLに体積測定的に希釈された。または、市販の0.01N水酸化ナトリウムも使用されてもよい。
【0209】
窒化鉛試薬(1mg/mL)は40±2mgの窒化鉛(ACS試薬等級)を精密に測定し、窒化鉛を25mLの脱イオン水に溶解することにより調製された。
【0210】
硫化ナトリウム標準液(50mg/L硫化物)は37±2mgの硫化ナトリウムを100mLメスフラスコ中へ精密に測り取ることにより調製された。硫化物は溶解され、0.01N水酸化ナトリウムを用いてその体積に希釈された。
【0211】
例えば、250mg/mLの脱イオン水溶液が調製された。サンプルは特に、10‐mLの試験管またはテフロン(登録商標)引きの蓋つきの4‐mLのガラス製の薬瓶中で試験された。同時に、試験薬瓶は表4に示されているように準備された。
【0212】
【表4】

【0213】
品質のコントロールとして、4回の試験は下記の要求性を満たさなければならない:i)ブランクの薬瓶は明らかに透明および無色でなければならず;i)標準液の瓶はブランクとは明らかに異なる暗灰色または沈殿を有していなければならず;iii)硫酸塩、亜硫酸塩、および塩化物を含む特異性溶液は標準液の薬瓶よりも明るい灰色でなければならず、白色の沈殿が予想され;iv)硫酸塩、亜硫酸塩、塩化物を含む特異性溶液の硫化物−添加物は相当する非添加溶液よりも暗い灰色を有していなければならない。
【0214】
<b.方法特異性>
特異性に対する要求性は、i)ブランクの薬瓶は明らかに透明および無色でなければならず;ii)標準液の薬瓶はブランクとは明らかに異なる暗灰色または沈殿を有していなければならず;iii)硫酸塩、亜硫酸塩、塩化物を含む特異性溶液は標準液の薬瓶よりも明るい灰色でなければならず、白色の沈殿が予想され、;iv)硫酸塩、亜硫酸塩、塩化物を含む特異性溶液の硫化物−添加物は相当する非添加溶液よりも暗い灰色を有していなければならない。手順に記載の全ての要求性が満たされた。
【0215】
試験溶液はそれぞれ1mg/mLの硫酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを含み調製された。これらの溶液の2連の薬瓶は潜在的な干渉を求めるために試験された。さらに、これらの試験は、硫化物検出の干渉性を求めるために、硫化物添加物を用いてそれぞれ試験された。結果は表5にまとめられている。硫化物標準液は50mg/mL硫化物の濃度で調製され、硫化鉛試薬は1g/L(Pb(II)の濃度で調製された。灰色または黄褐色の試験溶液が認められる。
【0216】
【表5】

【0217】
試験方法は硫酸塩、亜流酸塩、および塩化物に特定されることが示された。
【0218】
<c.検出限界>
表6および表7に示されているように、ブランク(水)中または薬剤生成物サンプル(チオ硫酸ナトリウム五水和物)中の硫化物の存在は、4ppm以上の黄褐色の検出により測定された。手順によると、チオ硫酸ナトリウム五水和物の薬剤サンプル生成物中の硫化物の検出限界は4ppmであると測定された。
【0219】
検出限界は、限界値(10ppm)を十分に下回る4ppmであることが測定された。
【0220】
【表6】

【0221】
【表7】

【0222】
〔実施例4:チオ硫酸ナトリウム五水和物中のチオ硫酸塩の測定方法〕
薬剤生成物中のチオ硫酸ナトリウム五水和物の濃度は、50μS〜15分間の検出範囲において1.5mL/minで脱イオン水中に13.5mMの炭酸ナトリウム(ACS試薬等級)および1.5mMの重炭酸ナトリウム(ACS試薬等級)を用いて溶出される、Dionex IonPac AS12A解析カラム(P/N 046034、Dionex株式会社、サニーベール、CA)における電気化学的抵抗性検出によるイオンクロマトグラフィーを用いて測定された。イオン交換カラムは100mAの抑圧電圧を用いて室温で泳動された。
【0223】
流動層の調製として、ストックの炭酸ナトリウム溶液(500mM)は、26.5gの炭酸ナトリウム(ACS試薬等級)を500mLのメスフラスコに添加し、次いて室温で500mLとなるように脱イオン水を添加することにより調製され、ストックの重炭酸ナトリウム溶液(500mM)は、10.5gの重炭酸ナトリウム(ACS試薬等級)を500mLのメスフラスコに添加し、次いて室温で体積を500mLとするように脱イオン水を添加することにより調製された。流動層は54mLのストックの炭酸ナトリウム溶液および6mLのストックの重炭酸ナトリウム溶液を2Lのメスフラスコに添加し、次いで室温で体積を2Lとする脱イオン水の添加により調製された。
【0224】
ストックのチオ硫酸ナトリウム標準液(1g/L)は、0.1gのチオ硫酸ナトリウム五水和物を100mLメスフラスコに添加し、次いで脱イオン水を室温で体積を100mLとするように添加することにより調製された。チオ硫酸ナトリウム標準試料は、10.0mLのストックのチオ硫酸ナトリウム溶液を100mLのメスフラスコに添加し、次いで、体積を室温で100mLとする脱イオン水の添加により調製された。直線性標準液はチオ硫酸ナトリウム標準試料(12.5mL)を脱イオン水で25.0mLに希釈することにより調製された。
【0225】
チオ硫酸塩含有サンプルは2連で準備された。最初に、ストックのサンプル溶液が、2.0mLのサンプルを100mLのメスフラスコに添加され、次いで、室温で体積を100mLとする脱イオン水の添加により調製された。
【0226】
方法の適性は、解析を妨げうる前のものからの影響がないことを確実にするため、最初のチオ硫酸ナトリウム標準試料の注入、次いで、脱イオン水の注入により測定された。チオ硫酸ナトリウムの標準試料は続いて6回注入された。チオ硫酸塩のピークの面積のパーセント相対標準偏差が(%RSD)が計算された。最初の注入はテーリング係数および方法621USP XXXII(2009)による理論的なプレートの数値を計算するために用いられた。チオ硫酸塩のピークの最初の6回の注入に対するピーク面積の%RSDはNMT2.0%でなければならない。チオ硫酸塩の理論的なプレートの数値(N)はNLT 3,000でなければならない。6回の注入およびそれぞれ継続する校正用の注入に対する%RSD面積はNMT3.0%でなければならない。
【0227】
チオ硫酸ナトリウム標準試料は、2回注入され、2連の注入間の面積の違い(%)が決定された。2連の注入間の面積の違い(%)はNMT2%でなければならず、解析値の誤差はNMT2.0%でなければならない。したがって決定された反応の平均面積は前の6回の注入の濃度を計算するために用いられ、それにより実際の濃度から計算された濃度のパーセンテージの違いは決定された。
【0228】
サンプル溶液希釈剤は、前のものからの影響および、希釈剤から生ずる他のピークを確認するために1回注入された。チオ硫酸塩の保持時間における反応のピーク面積はチオ硫酸塩標準試料に対する反応面積のNMT1%でなければならない。
【0229】
直線性標準液のサンプルは2回注入された。直線性標準液に対し、平均のピーク面積は、方法適性の注入に対する平均のピーク面積の47%および53%でなければならない。直線性標準液に対し、2連の注入の間の%の違いはNMT2%でなければならない。
【0230】
それぞれのサンプル溶液は2連で注入された。2連の間の%の違いは計算された。2連の調製物の間のチオ硫酸ナトリウムアッセイ濃度間の%の違いも計算された。
【0231】
装置は、6回の注入毎および最後のサンプル注入の後、2連でチオ硫酸ナトリウムの標準試料を再解析することにより正しいことを確認された。それぞれのサンプルに対し、2連の注入の間の%の違いはNMT2.0%でなければならず、2連の調製物のチオ硫酸塩のアッセイ濃度間の%の違いはNMT2%でなければならない。チオ硫酸ナトリウム五水和物サンプルの濃度はチオ硫酸塩標準液の濃度との比較におけるピーク面積に基づき計算された。
【0232】
〔実施例5:微量レベルのチオ硫酸ナトリウム五水和物の炭酸塩の測定〕
全てのガラス器具を少なくとも3回脱イオン水で完全に洗浄した。重量測定に用いられるガラス器具は乾燥機で乾燥され得、極端な場合にはガラス器具を有機物で汚染しないように扱われる。希釈のみに用いるガラス器具は、およそ1〜2mLの濃リン酸を4,000mLの脱イオン水に添加することにより調製された酸化剤水溶液で少なくとも3回事前洗浄され、次いで脱イオン水を用いて使用直前に完全に洗浄された。重量測定時は、潜在的な汚染を減らすために、金属のへらの代わりに滅菌したプラスチックのへらが用いられた。
【0233】
炭酸塩標準液調製のための炭酸ナトリウムのストック溶液は0.177gの炭酸ナトリウム(ACS試薬等級)を100.0mLの脱イオン水に溶解することにより調製された。
微量の炭酸塩の濃度は1,000mg/Lであり、200mg/Lの炭素濃度と同等である。1連の炭酸塩の校正標準液は100、200、400、800、および1,000μLの炭酸ナトリウムストック溶液を別々の200mLメスフラスコにピペッティングし、次いで、室温で体積を200mLとするように脱イオン水を添加することにより調製された。微量濃度はそれぞれ0.5、1.0、2.0、4.0、および5.0mg/mLの炭酸塩であった。全ての炭酸塩溶液が確実に堅く密閉され、過剰な熱から離れた冷所に貯蔵されるように注意が払われた。
【0234】
サンプルは、ほぼ0.01mgまで正確に秤量し、炭素として1.0mg/L(5.0mg/L炭酸塩)未満と同等な量の当該サンプルを100mLメスフラスコに移すことにより調製された。含まれる炭酸塩の臨界値が≦0.01%のチオ硫酸ナトリウム五水和物薬剤物質を目的とする場合、上記サンプル中に炭酸塩が0.01%の割合で存在すれば、100mL水中の1.00gのサンプルは0.2mg/Lの炭素と同等である1mg/Lの炭酸塩を生じる。続いて、20mLの脱イオンはサンプルを溶解するために100mLのメスフラスコに添加された。サンプル溶液は持続性の黄色が観察されるまで、0.1Nヨウ化物VS(約40mL)で滴定された(cat. # 318981、Sigma−Aldrich、セントルイス、MO)。脱イオン水は室温で体積を100mLとするように添加された。
【0235】
すべての無機炭素は、ICモードのShimadzu TOC−V 解析装置で測定された。ICモードでは、サンプルは、無機炭素(炭酸塩および重炭酸塩)を二酸化炭素に変換するため、同時にリン酸で酸性化され、続いて定量のために非分散赤外線検出器に送られた。事前洗浄されたTOC薬瓶は、解析装置で用いられ、それぞれの薬瓶はそれぞれの標準液で完全に満たされ、薬瓶の上部に空間は設けられなかった。瓶は蓋で保護された。
【0236】
標準の立ち上げにおいて、3回の測定がそれぞれの薬瓶(標準、サンプルまたはブランク)に対して行われた。3回の測定が1回の実行を構成した。ブランク(脱イオン水)の3回のラム(rum)は解析装置が平衡化されており、結果が一致していることを確実にするために行われた。
【0237】
それぞれの校正標準が1回実行された。それぞれの標準の3回の注入から%RSDおよび平均反応面積が決定された。標準濃度に対する平均面積の線形回帰が校正標準に対し、傾き、切片、および相関係数を決定するために行われた。ブランクは線形回帰分析に含まれたが、ゼロに矯正されなかった。1回の実行がそれぞれのサンプルに対し行われた。3回の注入の%RSDおよび平均ピーク面積が決定され、そこから炭酸塩濃度が校正標準を基にして計算された。
【0238】
解析装置は6回のサンプル測定毎および1回のブランクの測定を行うことによる最後のサンプル注入後に校正され、続いて2.0mg/Lの校正標準の1回の実行が行われた。両方の%RSDおよび校正標準曲線から炭酸塩の回収が計算された。
【0239】
品質コントロールとして、それぞれの標準に対する3回の注入の面積(反応)%RSDは(NMT)10%以下でなければならない、炭酸塩に対する校正曲線は、(NLT)0.995以上の相関係数を持たなければならない。最初のブランクおよび連続する校正ブランク注入の面積%RSDは(NMT)15%以下でなければならない。続く校正標準(2.0mg/L)注入に対する面積%RSDは(NMT)10%以下でなければならない。2.0mg/Lの連続する校正標準の%の回復は85%〜115%でなければならない。
【0240】
パーセント相関標準偏差(%RSD)は期待値100で割った標準偏差である。
【0241】
〔実施例6:チオ硫酸ナトリウム五水和物を含む薬学的な調合物〕
実施例の薬学的な等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を含む注入、溶液が表8に記載されている。
【0242】
【表8】

【0243】
略語:NF、国際処方;qs、品質十分性;USP、アメリカ国際薬局方;WFI注入に対する水。
【0244】
上記に記載されている実施例は、本請求の実施形態の作製方法および使用方法の全ての開示内容および記載内容を当業者に与えるものであり、本明細書に開示されているものの範囲に限定されるものではない。当業者にとって明らかな変更は下記の請求の範囲内でなされるものとする。本明細書中で引用される全ての刊行物、特許および特許出願書は、それらの刊行物、特許または特許出願書が明確にかつそれぞれに本明細書において引用により示されているように、本明細書中に引用として含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10ppm以下の、除去し得ない有機炭素を含んでいる、薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項2】
約0.01重量%以下の炭酸を含んでいる、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項3】
約0.05ppm以下の水銀を含んでいる、請求項2に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項4】
約2ppm以下のアルミニウムを含んでいる、請求項3に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項5】
約0.003重量%のセレンを含んでいる、請求項4に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項6】
比色分析によって測定した無水ベースで約99重量%以上、約100.5重量%以下のチオ硫酸ナトリウムを含んでいる、請求項5に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項7】
イオンクロマトグラフィによって測定した無水ベースで約98重量%以上、約102重量%以下のチオ硫酸ナトリウムを含んでいる、請求項5に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項8】
32%重量%〜37重量%の含水量を有している、請求項7に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項9】
約10ppm以下の重金属含量を有している、請求項8に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項10】
約200ppm以下の塩化物を有している、請求項9に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項11】
約0.001重量%以下の硫化物を有している、請求項10に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項12】
約0.002重量%以下の鉄を有している、請求項11に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項13】
約0.01重量%以下のカルシウムを有している、請求項12に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項14】
約0.005重量%以下のカリウムを有している、請求項13に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項15】
約0.1%以下の硫化物を含んでいる、請求項14に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項16】
約0.05%以下の硫化物を含んでいる、請求項15に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項17】
約3ppm以下の砒素を有している、請求項16に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項18】
約0.001重量%以下の鉛を有している、請求項17に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項19】
微生物負荷の総菌数が約100CFU/g以下である、請求項18に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項20】
酵母および菌の総数が約20CFU/g以下である、請求項19に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項21】
約0.02EU/mg以下の細菌性外毒素を含んでいる、請求項20に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項22】
約0.002重量%以下の窒素化合物を含んでいる、請求項21に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項23】
約0.005重量%以下の不溶物を含んでいる、請求項22に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項24】
ナトリウムの同定試験が陽性である、請求項23に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項25】
チオ硫酸の同定試験が陽性である、請求項24に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項26】
シュウ酸アンモニウムに曝露した際に濁りを生じない、請求項25に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項27】
0.01重量%以下の固化防止剤の残余を含んでいる、請求項21に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項28】
ICH Q3Cの制限値以下の揮発性有機不純物を含んでいる、請求項22に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項29】
25℃での10%溶液が無色でありかつpH6.0〜8.0である、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項30】
無臭の結晶である、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項31】
外観が無色の結晶である、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物。
【請求項32】
請求項1に記載のチオ硫酸ナトリウム五水和物、および、1つ以上の、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含んでいる、薬学的組成物。
【請求項33】
経口投与、非経口投与、吸入、経鼻投与、膀胱内投与、経膣投与、直腸内投与、舌下投与、眼内投与または局所投与のために処方されている、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
単回投薬形態に処方されている、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記薬学的に受容可能な賦形剤が水である、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
等張剤および1つ以上のpH調整剤をさらに含んでいる、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記等張剤が塩化カリウムであり、前記pH調整剤がホウ酸および水酸化ナトリウムである、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
チオ硫酸ナトリウムを含有するサンプル中の、除去し得ない全有機炭素を測定するための方法であって、
a)上記サンプルを、無機酸を含有する所定量の水性溶液と接触させて水性サンプル溶液を形成する工程;
b)上記水性サンプル溶液から沈殿を除去する工程;
c)上記サンプル溶液を所定量の酸化剤と接触させる工程;および
d)超臨界水酸化条件下にて上記サンプル溶液中の有機炭素を二酸化炭素に変換する工程
を包含する、方法。
【請求項39】
前記無機酸がリン酸である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記無機酸が6N リン酸である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記無機酸が、前記サンプル溶液の最終容量の約6%である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記酸化剤が過硫化ナトリウムである、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記酸化剤が30%過硫化ナトリウム溶液である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記酸化剤の最終容量が前記サンプル溶液の最終容量の約45%である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を調製するための方法であって、
a)亜硫化ナトリウムを硫黄と接触させて反応混合物を得る工程;
b)上記反応混合物を濾過して溶液を得る工程;
c)上記溶液を濃縮する工程;
d)上記溶液を、活性化された炭素に曝露する工程;
e)上記溶液を、活性化された炭素とともに濾過する工程;および
f)上記溶液からチオ硫酸ナトリウム五水和物を結晶化する工程
を包含する、方法。
【請求項46】
前記工程a)が不活性雰囲気下にて行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記工程a)における溶媒が水である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記反応混合物のpHが約7以上である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記工程f)の前に、前記溶液が比重約1.40〜約1.50に濃縮される、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
チオ硫酸五水和物の結晶核が、前記工程f)にて前記溶液に添加される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
白金誘導性の中毒性内耳障害を有する被験体に、治療学的に有効量の、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を投与する工程を包含する、白金誘導性の中毒性内耳障害を治療する方法。
【請求項52】
白金誘導性の腎毒性を有する被験体に、治療学的に有効量の、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を投与する工程を包含する、白金誘導性の腎毒性を治療する方法。
【請求項53】
青酸中毒を有する被験体に、治療学的に有効量の、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を投与する工程を包含する、青酸中毒を治療する方法。
【請求項54】
皮膚、爪床および/または爪の真菌感染を有する被験体に、治療学的に有効量の、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を投与する工程を包含する、皮膚、爪床および/または爪の真菌感染を治療する方法。
【請求項55】
カルシフィラキシーを有する被験体に、治療学的に有効量の、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を投与する工程を包含する、カルシフィラキシーを治療する方法。
【請求項56】
アテローム性動脈硬化症に関連する血管石灰化を有する被験体に、治療学的に有効量の、請求項1に記載の薬学的等級のチオ硫酸ナトリウム五水和物を投与する工程を包含する、アテローム性動脈硬化症に関連する血管石灰化を治療する方法。

【公表番号】特表2012−532824(P2012−532824A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519695(P2012−519695)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/041182
【国際公開番号】WO2011/005841
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512006169)ホープ メディカル エンタープライゼズ,インコーポレイテッド ディービーエー ホープ ファーマシュティカルズ (1)
【氏名又は名称原語表記】HOPE MEDICAL ENTERPRISES,INC.DBA HOPE PHARMACEUTICALS
【住所又は居所原語表記】16416 N.92nd STREET #125,SCOTTSDALE,ARIZONA 85260 UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】