チゲサイクリンでの胃腸管感染症の治療法
少なくとも1つの感染症、例えば、下部胃腸感染症を治療する方法であって、チゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む方法が開示されている。組成物は固体または液体形態、例えば、溶液、分散液、または少なくとも1つの腸溶コーティングを有するチゲサイクリンを含む固体形態をとることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月22日に出願された米国出願番号60/753,161(本発明の一部として参照される)の優先権を主張する。
一つの実施形態において、本発明は、チゲサイクリンを含む経口製剤で胃腸管感染症を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チゲサイクリンはグリシルサイクリン抗生物質、即ち、t−ブチルグリシル置換ナフタセンカルボキサミド遊離塩基、および半合成テトラサイクリン、ミノマイシンの類似体である。
【化1】
チゲサイクリン
【0003】
テトラサイクリン、例えば、クロルテトラサイクリン塩酸塩(オーレオマイシン)およびオキシテトラサイクリン(テラマイシン)は安全であり、1948年から広範囲の抗生物質として使用されてきた。しかしながら、これらの抗生物質に対する耐性の出現により、これらの継続した広範囲に及ぶ使用が制限された。チゲサイクリンはしたがってテトラサイクリン耐性メカニズムを克服することにより、テトラサイクリンに対して治療的有用性を潜在的に回復する薬剤として開発された。チゲサイクリンは新生多剤耐性病原体に対する活性も提供する。チゲサイクリンをはじめとするグリシルサイクリンは、多くの抗生物質耐性グラム陽性病原菌、例えば、メシチリン耐性Staphylococcus aureus、ペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae、およびバンコマイシン耐性腸球菌に対して活性である(Weissら、1995; Fraiseら、1995)。チゲサイクリンはテトラサイクリン耐性の2つの主な形態、細胞からの汲み出しおよびリボソーム保護を有する細菌株に対しても活性である(SchnappingerおよびHillen、1995)。
【0004】
胃腸管における感染症の治療が研究されている。例えば、Vancocin(登録商標)は、さらに一般的な抗生物質に対して反応しないStaphylococcus菌またはClostridium Difficileの菌株により引き起こされるものを包含する、結腸および腸の感染症を治療するために使用される、IV薬剤バンコマイシンの経口カプセル形態である。C.difficileは、ある状況下で、典型的は抗生物質治療後、結腸の炎症および下痢、おそらくは関連する疾患の合併症を引き起こし得る、下部胃腸管においてコロニーを形成できる細菌である。高齢、胃腸手術/処置、医療現場における長期滞在、内在する疾患、および免疫欠陥のある状態は、疾患のリスクの増加と関連する。CDCによると、年に3000000の抗生物質に関連する下痢の症例があり、その15から25パーセントは、C. difficileが原因である。
【0005】
バンコマイシンは、経口投与される場合、G.I.管において吸収されない。さらに、Vancocin(登録商標)はClostridium Difficileに対して比較的低い活性(M.I.C.)を有し、その結果、高用量の経口バンコマイシン(125mgまたは250mg)が必要とされる。高用量は望ましくない副作用をもたらす可能性も有する。
【0006】
チゲサイクリンの静脈内製剤が調製されているが、チゲサイクリンを含有する簡単な経口即時放出型プロトタイプは動物において不十分なバイオアベイラビリティーをもたらす。(Petersenら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、April 1999、第43巻、第4号 738−744ページ)しかしながら、かかる経口製剤の有効性は、Clostridium Difficile疾患に対して試験されていない。
【0007】
チゲサイクリンは水中に非常に可溶性であり、溶解度は1から14の全pH範囲にわたって295mg/mLを超える。しかしながら、チゲサイクリンの細胞単層透過性研究は(エタノールおよび緩衝液中1mM、pH6から6.4)は0.4nm・s−1の値を示し、これは低GI透過性を示唆し、このことは動物において見られる低い経口バイオアベイラビリティーと一致する。
【特許文献1】米国出願番号60/753,161
【非特許文献1】Weissら、1995
【非特許文献2】Fraiseら、1995
【非特許文献3】SchnappingerおよびHillen、1995
【非特許文献4】Petersenら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、April 1999、第43巻、第4号 738−744ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、チゲサイクリンでの胃腸管感染症を治療する方法の開発が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの実施形態は、少なくとも1つの細菌感染症を治療する方法であって:
これを必要とする対象に治療上有効量のチゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む方法を提供する。
【0010】
一つの実施形態において、少なくとも1つの細菌感染症は胃腸(GI)感染症である。即ち、感染症は胃腸管において起こる。胃腸管は、上部および下部GI管を包含する。上部GI管は胃および食道を包含する。一つの実施形態において、本明細書において用いられる「下部胃腸管」は、回腸および大腸を意味する。本明細書において用いられる「回腸」は、十二指腸および空腸に続く小腸の第三の部分を意味する。本明細書において用いられる「大腸」は、盲腸、結腸および直腸を含む。「盲腸」は、大腸からはじまり、その一端において回腸が始まっている出口のない袋(盲管)を言う。
【0011】
一つの実施形態において、少なくとも1つの細菌感染症は嫌気性細菌が原因である。
【0012】
一つの実施形態において、少なくとも1つの細菌感染症は、Clostridium difficileが原因である。C. difficileは、ある状況下で下部胃腸管においてコロニー形成することができ、下部胃腸管で結腸の炎症および下痢を引き起こす毒素を産生し得る。一つの実施形態において、治療の結果感染症および/または関連する疾患が治療され得る。さらに、C.difficileの新生遺伝子型は、従来特定された株よりも16−23倍高い毒素量を産生する。
【0013】
従来の研究(Petersenら)は、単純な経口即時放出型プロトタイプが投与された場合のチゲサイクリンの低血液バイオアベイラビリティーを証明しているが、チゲサイクリンの、例えば、C.difficileなどの細菌感染症に対する高い生物活性(例えば、バンコマイシンと比較した場合)は、それでも有効な治療をもたらし得る。一つの実施形態において、胃腸管感染症を治療する場合、低血液バイオアベイラビリティーは、GI管におけるバイオアベイラビリティーが高いこと、即ち、製剤の大部分が胃中に存在することを示す。
【0014】
もう一つ別の実施形態は、C.difficileが原因である抗生物質に関連する偽膜性結腸炎ならびにS.aureusおよび関連するメシチリン耐性株が原因である全腸炎を治療する方法であって:これを必要とする対象に治療上有効量のチゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む方法を提供する。
【0015】
一つの実施形態において、「経口投与」は、患者に医薬組成物を飲み込ませることを含む。もう一つ別の実施形態において、経口投与は、大腸への送達のための経鼻胃管を通して行われる。
【0016】
本明細書において用いられる「医薬組成物」は、固体または液体形態における医薬組成物を意味する。医薬組成物は少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含有し得る。
【0017】
一つの実施形態において、組成物は少なくとも1つの不活性な医薬的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。本明細書において用いられる「医薬的に許容される賦形剤」は、経口投与に適していることが当業者に公知である任意の担体を包含するチゲサイクリンの経口投与に適した医薬担体またはビヒクルを意味する。
【0018】
一つの実施形態において、経口製剤は実質的な量のチゲサイクリンを胃中で放出せず、実質的な放出は、製剤が胃腸管、例えば、下部胃腸管に到達した際に起こる。一つの実施形態において、医薬組成物は、腸溶コーティングを有するチゲサイクリンを含む。一つの実施形態において、「腸溶コーティングを有する」とは、チゲサイクリンの塊を取り囲むことを指す。もう一つ別の実施形態において、腸溶コーティングは各チゲサイクリン粒子を実質的に取り囲む。「コーティング」はコーティングまたはサブコーティングのいずれかを含むことができる。本明細書において用いられる「コーティング」、または「取り囲む」とは例えば、少なくとも部分的にコーティングするかまたは取り囲むことから、完全にコーティングするかまたは取り囲むことである。一つの実施形態において、コーティングまたは取り囲むとは、実質的に、例えば、90重量%、95%、および99%コーティングすることを意味する。一つの実施形態において、腸溶コーティングは、例えば、本明細書において開示される任意の方法により分解を防止することにより、チゲサイクリンに物理的な安定性を付与するために十分均一である。
【0019】
一つの実施形態において、「腸溶コーティング」は、処方の少なくとも実質的な部分が胃を通過し、腸において崩壊することを可能にすることができる。腸溶コーティングの調製用物質の例としては、これに限定されないが、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルアクリレート酸エステルコポリマー、アニオン性アクリル樹脂、例えば、メタクリル酸/メチルアクリレートコポリマーおよびメタクリル酸/エチルアクリレートコポリマー、エチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、カルボキシメチルセルロースアセテートフタレート(CMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、シェラック、メチルセルロース、およびエチルセルロース、ならびにそのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0020】
一つの実施形態において、腸溶コーティングはポリマーフィルムの形成の分野において公知の方法により形成することができる。
【0021】
一つの実施形態において、組成物はシールコートをさらに含む。一つの実施形態において、シールコートは腸溶コートの下に位置する。もう一つ別の実施形態において、組成物は、第一シールコートをオーバーコートする少なくとも1つのさらなるシールコートを含有することができる。一つの実施形態において、シールコートは、腸溶コーティングを形成するために適した任意の物質、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒプロメロース、または本明細書において開示される任意の他の腸溶コーティングを含む。
【0022】
一つの実施形態において、少なくとも1つの腸溶コーティングは、チゲサイクリンを実質的な崩壊から保護することができる。チゲサイクリンは少なくとも2つの崩壊メカニズムを有する。低いpHで、エピマー化が主要な崩壊経路として特定されている。7.4より高いpHで、フェノール基が脱保護されるようになり得るために、崩壊メカニズムは酸化にシフトする。チゲサイクリンは、例えば、固体および溶液状態の両方において、酸素の除去により可溶化され得る。酸素が除去されると、最適安定性は、4.5からエピマー化がである8までシフトする。
【0023】
一つの実施形態において、組成物はさらに少なくとも1つのキレート剤をさらに含む。カルシウムは、その水への溶解度を減少させるテトラサイクリンと結合する。pH7.4でのカルシウム錯体の沈殿のために、30〜40%のチゲサイクリンの損失があり得る。したがって、カルシウム結合およびその後のカルシウム/チゲサイクリン塩の沈殿は、少なくとも一つには低い経口バイオアベイラビリティーが原因である。キレート剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)、クエン酸塩、および酒石酸塩が挙げられる。
【0024】
一つの実施形態において、組成物は少なくとも1つの塩基をさらに含む。一つの実施形態において、少なくとも1つの塩基は、例えば、放出される場合に、7.8から8.5の範囲のpHで放出されると、4から8.5の範囲のpHを有するミクロ環境を有する組成物を提供する。一つの実施形態において、ミクロ環境のpHとは、組成物を直接取り巻く部分のpHをさす。もう一つ別の実施形態において、ミクロ環境とは、シールコート内部の部分をさす。塩基の例としては、これに限定されないが、リン酸塩、例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム、炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウムおよびカリウム、重炭酸塩、例えば、重炭酸ナトリウムおよびカリウム、クエン酸塩、例えば、クエン酸ナトリウム、および酒石酸塩が挙げられる。
【0025】
さらに、いくつかの実施形態において、緩衝液種はチゲサイクリンの安定性に悪影響を及ぼし得る。一つの実施形態において、少なくとも1つの塩基はかかる緩衝液種に対抗できる。
【0026】
一つの実施形態において、組成物は少なくとも1つのバイオポリマーをさらに含む。例えば、組成物がGI管、例えば、内部または下部GI管における感染症を治療するために使用される実施形態において、少なくとも1つのバイオポリマーは内部GI管に対する接着剤としての働きをすることができ、従って、チゲサイクリンの向上した吸収を可能にする。バイオポリマーの例としては、これに限定されないが、ヒプロメロースおよびキサンタンガム、およびカーボマーが挙げられる。
【0027】
好適な賦形剤としては、例えば、(a)フィラーまたはエキステンダー、例えば、デンプン、ラクトース、シュークロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸;(b)バインダー、例えば、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース)、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、シュークロース、およびアカシア;(c)保湿剤、例えば、グリセロール;(d)崩壊剤、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、あるケイ酸塩、および炭酸ナトリウム;(e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(f)吸収促進剤、例えば、第四アンモニウム化合物;(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポロキサマー、およびポリエチレングリコール;(h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレー;(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物;ならびに(j)流動促進剤(粘着防止剤)、例えば、タルク、および二酸化ケイ素が挙げられる。他の好適な賦形剤としては、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムが挙げられる。投与形態は緩衝剤も含むことができる。
【0028】
経口製剤は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いたソフトまたはハードゼラチンカプセルにおいてフィラーも用いることができる。
【0029】
一つの実施形態において、医薬組成物は液体形態である。かかる組成物は、医薬的に許容される水性または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョンならびに使用直前に無菌溶液または分散液に復元される無菌粉末および/または凍結乾燥粉末を含むことができる。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール)、およびその好適な混合物、植物性油(例えば、オリーブ油)、および有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合においては要求される粒子サイズの維持により、また界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。
【0030】
一つの実施形態において、液体形態は、7.5より低いpHを有する溶液または懸濁液である。
【0031】
一つの実施形態において、液体形態は、バイアルまたは他の好適な容器において提供される。
【0032】
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤も含有することができる。これらはタガントまたは他の偽造防止剤であって、当該分野において周知のものも含有することができる。微生物の作用の防止は、様々な殺菌剤および殺真菌剤、例えば、パラベン、クロルブタノール、およびフェノールソルビン酸を含めることにより保証され得る。等張剤、例えば、糖、および塩化ナトリウムを含むのも望ましい。液体医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることにより、液体医薬形態の吸収が延長される。
【0033】
液体投与形態としては、医薬的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルがあげられる。活性化合物に加えて、液体投与形態は当該分野において一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、シクロデキストリン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびその混合物が挙げられる。
【0034】
懸濁液は、活性化合物に加えて、少なくとも1つの懸濁化剤、例えば、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、セルロースまたはセルロース誘導体(たとえば、微結晶セルロース)、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天、およびトラガカント、およびその混合物を含有することができる。
【0035】
医薬組成物は任意に、乳白剤および着色剤を含有することができる。これらは、制御放出または持続放出が可能な形態でもある。かかる目的に使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0036】
組成物が粉末チゲサイクリンを含有する懸濁液である場合、懸濁液は、例えば、約0.05重量%〜5重量%の懸濁化剤、約10重量%〜50重量%の糖を含有するシロップ、および例えば、約20重量%〜50重量%のエタノールを含有するエリキシルをさらに含むことができる。
【0037】
本明細書において開示される医薬組成物は、組成物の合計重量に対して、例えば、約25〜約90重量%、または約5重量%から約60重量%の範囲の量の活性成分を含有することができる。
【0038】
チゲサイクリンは医薬的に許容される塩として提供することができる。「医薬的に許容される塩」なる用語は、本開示における化合物の酸付加塩または塩基付加塩をさす。医薬的に許容される塩は、本発明の化合物の活性を保持し、これが投与される対象に対して、投与されるという点に関して有害または望ましくない影響を及ぼさない。医薬的に許容されるとしては、無機および有機酸両方の金属錯体および塩が挙げられる。医薬的に許容される塩としては、金属塩、例えば、アルミニウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガンおよび錯塩が挙げられる。医薬的に許容されるとしては、酸塩、例えば、酢酸、アスパラギン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アクセチル、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、重硫酸、重酒石酸、酪酸、エデト酸カルシウム、カンシル酸、炭酸、クロロ安息香酸、シレキセチル、クエン酸、エデト酸、エジシル酸、エストル酸、エシル、エシル酸、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキサミン酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硝酸、メチル硫酸、粘液酸、ムコン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、p−ニトロメタンスルホン酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、フタル酸、ポリガラクトウロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、スルホン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸、トルエンスルホン酸等が挙げられる。医薬的に許容される塩は、これに限定されないが、システインをはじめとするアミノ酸から誘導することができる。他の許容される塩は、例えば、Stahlら、Pharmaceutical Salts:Properties、Selection、and Use、Wiley−VCH;第1版(2002年6月15日)において見出すことができる。
【0039】
もう一つの実施形態は、チゲサイクリンを少なくとも1つの腸溶コーティングでコーティングすることを含む医薬組成物の調製法を提供する。コーティングは、当該分野において公知の方法、例えば、チゲサイクリンを、腸溶コーティング材料を含有する流動床プロセッサー(または他のコーティング装置、例えば、パンコーター)中に導入することにより行うことができる。そのコーティング装置中への導入前に、チゲサイクリンを少なくとも1つの塩基/緩衝液、少なくとも1つのキレート剤、少なくとも1つのバイオポリマー、および経口製剤に適した他の成分の1以上と組み合わせることができる。
【0040】
一つの実施形態において、「治療上有効な量」とは、患者において症状の予防または改善あるいは望ましい生物学的結果、例えば、改善された臨床的兆候、疾患の開始の遅延、リンパ球および/または抗体の減少/増加したレベルなどをもたらす化合物の量をさす。有効な量は、当業者により決定され得る。選択された投与レベルは、治療される状態の重さ、および治療される患者の状態および事前の病歴に依存し得る。しかしながら、所望の治療効果を達成するために必要であるよりも少ないレベルで化合物の投薬を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、当業者の技能範囲内である。
【0041】
一つの実施形態において、治療される対象は哺乳動物、例えば、ヒトである。一つの実施形態において、対象は細菌感染症に罹っていると疑われる、例えば、感染症と関連する少なくとも1つの症状を示す。もう一つ別の実施形態において、対象は細菌感染症に罹りやすい者、例えば、疾患に罹りやすい遺伝的傾向を有する者である。
【0042】
本明細書において用いられる「治療する」とは、治療的処置および予防的手段の両方をさす。治療を必要とする者は、特定の内科疾患にすでに罹っている個体ならびに疾患のリスクがある者(即ち、最終的に障害に罹りやすい者)を包含する。治療法の結果、症状の予防または改善あるいは所望の生物学的結果がもたらされ、前記治療法は、改善された臨床的兆候、疾患の開始の遅延、リンパ球および/または抗体の減少/増加したレベルなどにより評価することができる。
【0043】
本発明の医薬組成物中のチゲサイクリンの投与レベルは、特定の患者についての望ましい治療反応を達成するために必要な治療上有効な量を得るように変えることができる。
【0044】
一般的に、約0.1μg/kgから約50mg/kgの投与レベル、例えば、1日につき体重1キログラムあたり約5から約20mgの活性成分の範囲のレベルを哺乳動物患者に局所、経口または静脈内投与することができる。他の投与量は、1日あたり約1μg/kgから約20mg/kg、約1μg/kgから約10mg/kg、約1μg/kgから約1mg/kg、10μg/kgから1mg/kg、10μg/kgから100μg/kg、100μgから1mg/kg、および約500μg/kgから約5mg/kgの範囲である。所望により、有効な1日量を投与の目的で複数の用量、例えば、1日あたり2から4の独立した用量に分割することができる。一つの実施形態において、医薬組成物を1日1回または2回投与することができる。
【0045】
一つの実施形態において、チゲサイクリンは多粒子である。本明細書において用いられるように、「多粒子チゲサイクリン」とはチゲサイクリン粒子の集団をさす。一つの実施形態において、多粒子チゲサイクリンは0.3mmから1.5mmの範囲の平均粒子サイズを有する。多粒子チゲサイクリンは、シェル内に包まれたカプセル、または本明細書において記載される任意の他の投与形態として提供することができる。
【0046】
一つの実施形態において、経口投与用投与形態は、これに限定されないが、カプセル、錠剤、丸薬、粉末(例えば、分散性粉末、かかる粉末を含有する懸濁液)、糖衣錠、顆粒剤、および凍結乾燥ケーキおよび粉末を包含する。かかる形態は、口腔環境において迅速に溶解または崩壊する形態を包含する。もう一つ別の実施形態において、経口投与形態は経口投与直後の薬剤の溶解を遅らせ、溶解の実質的な部分をGI管、例えば、下部GI管で起こるようにする。一つの実施形態において、投与形態(例えば、粉末、ケーキ)はバイアルまたは他の好適な容器中で提供される。
【0047】
一つの実施形態において、医薬組成物はチゲサイクリンを含有する塩溶液である。
【0048】
もう一つ別の実施形態において、組成物はチゲサイクリンを含有する分散液である。
【0049】
一つの実施形態において、医薬組成物はチゲサイクリンを100mgから300mgの範囲の量で含有する圧縮錠を含む。
【0050】
一つの実施形態において、医薬組成物は、ハードゼラチンカプセル中に組み入れら得た、腸溶コートされた多粒子ペレットを含み、各ペレットは、チゲサイクリンおよび微結晶セルロース、および次のものの1以上の組み合わせを含む:少なくとも1つの塩基/緩衝液(例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム)、少なくとも1つのキレート剤(例えば、EDTA)、および少なくとも1つのバイオポリマー(例えば、キサンタンガム)。
【0051】
一つの実施形態において、医薬組成物は、チゲサイクリンおよび微結晶セルロースを含み、次のものの1以上をさらに含む腸溶性錠剤を含む:少なくとも1つの塩基/緩衝液(例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム)、少なくとも1つのキレート剤(例えば、EDTA)、および少なくとも1つのバイオポリマー(例えば、キサンタンガム)。
【0052】
一つの実施形態において、医薬組成物はチゲサイクリンおよび微結晶セルロースを含む腸溶性錠剤を含み、次のものの1以上をさらに含む:少なくとも1つの塩基/緩衝液(例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム)、少なくとも1つのキレート剤(例えば、EDTA)、および少なくとも1つのバイオポリマー(例えば、キサンタンガム)。
【0053】
一つの実施形態において、医薬組成物は腸溶コートされたソフト液体ゲルカプセルを含み、チゲサイクリンの非水性溶液、および次のものの1以上をさらに含む:少なくとも1つの塩基/緩衝液(例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム)、少なくとも1つのキレート剤(例えば、EDTA)、および少なくとも1つのバイオポリマー(例えば、キサンタンガム)。
【0054】
一つの実施形態において、医薬組成物は、カプセルまたは即時放出部分および「持続放出」部分の両方を含む二層錠を含む。一つの実施形態において、「持続放出」は、実質的に全てのチゲサイクリンを少なくとも4時間、例えば、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、または少なくとも48時間にわたって放出することを含む。
【0055】
一つの実施形態において、医薬組成物は固体形態におけるチゲサイクリンを含み、組成物はラクトースおよび少なくとも1つの酸性化剤をさらに含む。少なくとも1つの酸性化剤は、本明細書において開示される任意の有機または無機酸を含むことができる。一つの実施形態において、少なくとも1つの酸性化剤はHClである。
【0056】
一つの実施形態において、医薬組成物は懸濁液を含み、懸濁液は、顆粒および少なくとも1つの懸濁化剤を含む。懸濁化剤の例は、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに本明細書において開示される任意の他の懸濁化剤から選択される。
【0057】
一つの実施形態において、医薬組成物は、薬剤耐性菌に対する治療薬として使用できる。例えば、メシチリン耐性Staphylococcus aureus、ペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae、バンコマイシン−耐性腸球菌(D.J. Beidenbachら、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 40:173−177(2001);H.W.Boucherら、Antimicrobial Agents & Chemotherapy 44:2225−2229(2000);P.A.Bradford Clin. Microbiol. Newslett. 26:163−168(2004); D. Milatovic et. al.、Antimicrob.Agents Chemother. 47:400−404(2003);R. Patelら、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 38:177−179(2000);P.J.Petersenら、Antimicrob.Agents Chemother.46:2595−2601(2002);およびP.J.Petersenら、Antimicrob.Agents Chemother. 43:738−744(1999))、およびテトラサイクリン耐性の2つの主な形態:細胞からの汲み出しおよびリボソーム保護のいずれかを有する生体(C.Betriuら、Antimicrob.Agents Chemother.48:323−325(2004);T.Hirataら、Antimicrob.Agents Chemother.48:2179−2184(2004);およびP.J.Petersenら、Antimicrob.Agents Chemother.43:738−744(1999))に対して活性である。
【0058】
一つの実施形態において、医薬組成物は多くの細菌感染症、例えば、複雑性腹腔内感染症(cIAI)、複雑性皮膚・皮膚構造感染症(cSSSI)、市中肺炎(CAP)、および院内感染性肺炎(HAP)適応症であって、グラム陰性およびグラム陽性病原体、嫌気性生物、ならびにスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のメシチリン感受性株およびメシチリン耐性株(MSSAおよびMRSA)の両方により引き起こされるものの治療において用いることができる。さらに、医薬組成物は温血動物において、TetMおよびTetK耐性決定因子を有する細菌により引き起こされる細菌感染症を治療または制御するために使用できる。さらに、医薬組成物は骨関節感染症、カテーテル関連好中球減少症、産婦人科感染症を治療するため、または他の耐性病原体、例えば、VRE、ESBL、腸内の急速に成長するマイコバクテリアなどを治療するためにも使用できる。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
【0060】
この実施例において、カプセル中の腸溶コートされたチゲサイクリン顆粒を0.1N HClの溶液中、次いでリン酸塩緩衝液(pH6.8)中37℃で調査した。これらの条件は胃系(0.1N)および下部腸管(ph6.8)を再現する。
【0061】
使用される製剤は下記の実施例3において記載される。
【0062】
100mgチゲサイクリンの腸溶コートされた顆粒のゼラチンカプセルを3つの別個の容器(カプセル1、2、および3)に添加した。カプセルを、USP Apparatus 2(パドル)を用い、100rpmで750mLの0.1N HCl中37℃で溶解させた。2時間溶解させ、続いて250mLの0.2M Na3PO4を添加した。この混合物のpHを6.8に調節した。下記の表Iは溶解データを記載する。
【表1】
【0063】
図1は、表Iの放出率(x軸)対時間(分)のデータのプロットである。AUCのmg/mlに対する比は式y=16279x−58.773による。
【0064】
この実施例により、製剤はほとんどのチゲサイクリンを高いpHで、例えば2時間後に放出することが示される。
(実施例2)
【0065】
この実施例は、経口製剤(強制飼養)として投与された場合のカニクイザルにおけるチゲサイクリンの経口バイオアベイラビリティーを示す。1回の経口および静脈内投与後のチゲサイクリンの薬物動態もこの実施例において提示される。
【0066】
オスサルにまず15mg/kgのチゲサイクリンを経口(強制飼養)投与し、次いで1週間のウォッシュアウト期間の後に5mg/kgのチゲサイクリンを静脈内投与した。
【0067】
材料および方法
研究計画
4匹のオスカニクイザルを研究において使用した。第一投薬期間において、それぞれのサルに0.9%塩溶液中1回量15mg/kgチゲサイクリンを経口(強制飼養)投与した。投与体積は10mL/kgであった。血液サンプル(1サンプルあたり2mL)を投薬前(0時)、ならびに経口投与後0.5、1、2、4、6、8、12、24、32および時間に採取した。1週間のウォッシュアウト期間後、それぞれのサルに0.9%塩溶液中1回量5mg/kgのチゲサイクリンを静脈内投与した。血液サンプル(2mL)を投薬前(0時)並びに投薬後5分、0.5、1、2、4、6、8、12、24、32および48時間に採取した。血液サンプルは、スチール製針および抗凝固剤としてヘパリンナトリウムを含有する真空採血管を用いて採取した。採血後、血液サンプルを氷上に置き、約4℃で遠心分離した。血漿サンプルを分離し、凍結し、分析前に約−70℃で保存した。
サル血漿中のチゲサイクリンの定量
【0068】
ラットおよびイヌ血漿においてあらかじめ確認されたHPLC法を用いてチゲサイクリン濃度を決定したが、この方法はサル血漿において用いるために変更された。この方法において、0.2mLのサル血漿サンプル中チゲサイクリンをアセトニトリルでのタンパク質沈降により抽出し、沈殿したタンパク質を遠心分離により分離した。上清をHPLC分析のために0.05N HCl中再構成した。1/(濃度)2の重み係数を用いた二次適合を用いて較正曲線の回帰分析を行った。0.2mLのサル血漿サンプルを用いることにより、分析の定量限界(LOQ)は100ng/mLであり、曲線範囲は100から6400ng/mLの間であった。
薬物動態計算
【0069】
薬物動態分析プログラムWinNonlin、バージョン2.1(Scientific Consulting Inc.)を用いて、個々の動物濃度対時間データから薬物動態パラメータを計算した。このプログラムはモデルに依存しない方法ならびにGibaldiおよびPerrierにより記載されている標準法(Gibaldi M、Perrier D.、Pharmacokinetics、第2版、Marcel Dekker、Inc.、NY、1982)を用いてデータを分析される。この分析の目的で、IVボーラス投与直後の濃度を逆外挿する試みはなされておらず、むしろ0時での濃度(C0、投与直後)は初回測定濃度(5分、C5min)と等しいと推定された。平均血漿薬物濃度を決定するために、定量下限(LOQ=100ng/mL)より低い値をゼロとして熱かった。終末半減期(t1/2)を0.693/λ(式中、λは終末速度定数であり、濃度−時間曲線の終末部分の対数線形適合により決定される)により決定した。AUC0−4をAUC0−t+Ct/λ(式中、AUC0−tは0時から最後の定量時点であるt時までのAUCであり、Ctは最後の定量可能な濃度である)により計算した。血漿濃度−時間曲線の0時からt時までの下の面積(AUC0−t)を、線形台形法を用いて計算した。iv投与後の全身クリアランス(CLT)を、式:用量/AUC0−4を用いて計算した。定常状態での分布の体積(Vdss)を、MRTivxCLT(式中、MRTivはiv投与後の平均滞留時間であり、AUMC0−4/AUC0−4に等しい)を用いて計算した。経口投与に関して、Cmaxおよびtmax値は、濃度対時間曲線の検討により得られた。経口投与後の定量可能な濃度が不十分であるために、AUC0−4は計算できなかった。
サル血漿中のチゲサイクリンについてのHPLC法の分析性能
【0070】
サンプルの分析のために5回の分析を行った。較正曲線の逆外挿値を表IIに示す。チゲサイクリン較正基準のCVは2.1から6.3%の間であり、バイアス値は−5.4から3.8%の範囲であった。
【表2】
【0071】
較正曲線パラメータを表IIIに示す。
表III サル血漿におけるチゲサイクリン分析の分析性能:較正曲線パラメータ
【表3】
【0072】
回帰分析は次の式を用いて行った:
y=ax2+bx+c
(式中、
a=二次回帰線定数
b=一次回帰線定数
c=切片
y=チゲサイクリンの内部標準ピーク高さ
x=チゲサイクリン濃度(ng/mL))。
【0073】
全ての分析実施において、決定係数(R2)は>0.99であった。全ての分析実施において、低、中間および高QCサンプル(2反復試験)を研究サンプルとともに分析した。低QCおよび高QCはそれぞれ300および3000ng/mLの公称濃度を有する。中間QCについて、目標公称濃度は900ng/mLであった。中間QCの2つの別個のバッチを調製し、どちらも目標より低い濃度(約600ng/mL)を有していた。各中間QCバッチの4(バッチA)または8(バッチB)複製の分析により、中間QCバッチの目標濃度を決定した。中間QCバッチA(濃度測定値663ng/mL)を曲線1および2に関して分析した。中間QCバッチB(濃度測定値556ng/mL)を曲線3、4および6に関して分析した。全ての分析実施から得られたQCサンプルの結果を表IVに示す。
【表4】
NA:非適用;このQCバッチはこの実施に関しては分析しなかった。
【0074】
QCサンプルのCVは5.9から13.1%の間であり、バイアスは−1.0から7.7%の間であった。QC結果もQCチャートに表し、図2〜5に示す。
カニクイザルにおけるチゲサイクリンの薬物動態
【0075】
1回15mg/kg経口投与後のサルにおけるチゲサイクリンの濃度を表Vに示す。
【表5】
【0076】
1回量5mg/kgのiv投与後のチゲサイクリンの濃度を表VIに示す。
【表6】
【0077】
サルにおいて1回量(iv)のチゲサイクリン投与後の血漿濃度対時間データを図6に示す。個々の動物から得られる薬物動態パラメータを表VIIに一覧にする。
【表7】
【0078】
1回量15mg/kg経口(強制飼養)投与後に、チゲサイクリンは投与後2時間までサンプル中で検出された。平均(±SD)Cmax値は163±27.1ng/mLであり、tmax値は1から2時の間であった。経口投与後の濃度対時間曲線の終末期における定量可能な濃度が低いために、AUC0−4、およびt1/2値は経口投与後に評価しなかった。また、定量可能なチゲサイクリン濃度および評価した部分AUC値に関する時点数が限定されているために、経口投与後のチゲサイクリンの絶対的バイオアベイラビリティーは決定できなかった。
【0079】
所望の作用部位がGI管であり、血液中でないので、0.5%血液バイオアベイラビリティーはGI管感染症を治療するために適している。従って、0.5%血液バイオアベイラビリティーはGI管において約99%バイオアベイラビリティーと表現できる。
【0080】
サルにおいて1回量5mg/kg静脈内投与後、チゲサイクリンの血漿濃度は指数関数的に減少した。血漿濃度対時間曲線の終末期から推定される平均t1/2値は14.1±3.4時間であり、これは、MRTivの12.8±5.4時間と類似していた。チゲサイクリンの平均(±SD)AUC0−4値は、18267±3030 nghr/mLであった。平均チゲサイクリンClTは0.280±0.053L/kg/時であり、平均Vdssは3.47±1.09L/kgであった。
考察
【0081】
この研究の結果は、チゲサイクリンの血液バイオアベイラビリティーが経口投与後に低いことを示した。薬物はGI管中の生物に対する局所作用のために胃内に保持されるので、低い血液バイオアベイラビリティーは望ましい。AUC0−4値の評価に関して終末期におけるデータが不十分であるために、絶対的バイオアベイラビリティーを1回量15mg/kgの経口投与後に評価しなかった。サルにおける1回量iv投与後に、チゲサイクリンの血漿濃度は指数関数的に減少した。血漿濃度対時間曲線の終末期から推定される終末半減期は11.4から19.1(平均14.1)時間の間であり、MRTiv(平均12.8時間)と類似していた。サルにおけるGAR−93 6の全身クリアランス(ClT)は比較的低かったが(平均0.280L/kg/時)、イヌにおけるものと類似していた(1回量5mg/kg投与後に約0.26L/kg/時)。サルにおけるチゲサイクリンの分布(Vdss)の定常状態体積は大きく(3.47L/kg)、この種における全体内水分の体積を超過し(Davies B、Morris T. “Physiological Parameters in laboratory animals and humans.,” Pharm. Res. 1993; 10:1093−95参照)、このことは、チゲサイクリンが様々な組織および器官に分布していることを示唆する。
(実施例3)
【0082】
この実施例は、絶食オスカニクイザルにおいて、単一の腸溶コートされた経口製剤として投与されたカプセル型微粒子(100mg)製剤からの経口バイオアベイラビリティーを示す。チゲサイクリン血漿濃度をLC/MS/MS法により製剤種類について決定した。
物質および方法
処方
【0083】
チゲサイクリン製剤は、下記表VIIIに示される成分を有する100mgのカプセル型多粒子製剤であった:
【表8】
【0084】
腸溶コーティングはSeal Coat、YS−1−7006、およびEnteric Coat(Acryl−EZE)を含んでいた。腸溶コートされたチゲサイクリンの最終効力は209mg/gであった。各100mgカプセルは478.5mgの腸溶コートされた顆粒を含んでいた。
実験計画およびサンプル採取
【0085】
チゲサイクリンのバイオアベイラビリティーを4匹のオスカニクイザル(それぞれ体重5.5から7.1kg)に関して調査した。サルをBioresources生態動物園で水および食物を自由に摂取できるようにして飼育した。4匹のサルに前記経口製剤(1x100mg多粒子カプセル)を投与した。製剤は10mLの水とともに投与された。全てのサルを投与前に一夜絶食させ(水は自由に摂取させた)、投与後4時間に餌を与えた。
【0086】
血液サンプルを伏在静脈から、0(投薬前)、投薬後0.5、1、2、3、4、8、12および24時間で採取した。約3mLの血液を、ヘパリンナトリウムを抗凝固剤として含有するVacutainer(登録商標)管中に採取した。血漿を冷蔵した遠心管中で分離し、−70℃で保存した。血漿サンプルをドライアイス上でパックされた分析部位へ送達した。
【0087】
血漿チゲサイクリン濃度を前述のLC/MS/MS法により決定した。0.5mLサンプル体積に基づいて、方法は10ng/mLの定量限界を有する。
サル血漿中のチゲサイクリン濃度の決定
【0088】
チゲサイクリン濃度をLC/MS/MS法により決定した。0.50mLのヘパリンナトリウムサル血漿を用いて、定量下限(LLOQ)は10.0ng/mLであり、分析範囲は10.0から1000ng/mLであった。分析性能をモニターするために、全分析を低、中間、および高濃度(30、300、および800ng/mL公称濃度)品質サンプル(QC)において5重複試験で分析した。
サル血漿におけるチゲサイクリンLC/MS/MS分析の分析性能
【0089】
この研究から得られるサル血漿サンプルの定量化のための分析を行った。サル血漿から調製されたチゲサイクリン較正基準の逆算値および較正曲線回帰定数を表IXに示す。
【表9】
【0090】
1/(濃度)2の重み係数を用いて、線形回帰を行った。逆較正基準の平均バイアスは−11.6%から13.0%の範囲であった。較正曲線のR2値は0.9895であった。
【0091】
サル血漿において調製され、研究サンプルに関して分析されたチゲサイクリン品質管理(QC)サンプルの結果を表Xにまとめる。
【表10】
【0092】
QCサンプルのCVは1.9%から6.1%の範囲であり、平均バイアスは−14.3%から−2.7%の範囲であった。QC結果も図7〜9においてグラフで表す。
サルにおけるチゲサイクリンの血漿濃度
【0093】
カプセル型微粒子製剤から得られる、1回量(100mgカプセル)のチゲサイクリン投与後の絶食サルにおけるチゲサイクリン血漿濃度(ng/mL)を表XIに示し、図10においてグラフで示す。
【表11】
【0094】
WinNonlin、Model 200を用いて、個々のサル血漿チゲサイクリン濃度−時間データの無隔壁分析を行った。血漿チゲサイクリン濃度−時間曲線下の面積(AUC)を対数/線形台形公式により計算した。ピーク血漿チゲサイクリン濃度(Cmax)およびCmaxに達するまでの時間(tmax)を血漿チゲサイクリン濃度−時間データから直接記録した。
【0095】
製剤のAUC(ng hr/mL、平均±SD)値は2830±1111であった。製剤のCmax値(ng/mL、平均±SD)は225±92.4であった。
薬物動態
【0096】
個別および平均サル薬物動態パラメータを表XIIに記載する。
【表12】
【0097】
表XIIIはカプセル型多粒子製剤におけるチゲサイクリンの平均薬物動態パラメータならびに絶対的および相対的バイオアベイラビリティーを、前記実施例2において記載されるようにIVおよび経口(強制飼養)投与された0.8%塩溶液チゲサイクリン溶液に対して比較する。
【表13】
【0098】
製剤のAUC(ng 時/mL、平均±SD)値は2830±1111であった。製剤のCmax値(ng/mL、平均±SD)は225±92.4であった。
【0099】
改善されたカプセル型微粒子経口投与製剤のバイオアベイラビリティーを評価するために、チゲサイクリン製剤のバイオアベイラビリティー研究をカニクイザルにおいて行った。
【0100】
この研究の結果は、経口投与後の血液中チゲサイクリンの絶対的バイオアベイラビリティーは5%であることを示した。カプセル製剤(16mg/kg)は、15mg/kgで行われた事前の研究と比較して、有意に高い経口暴露(AUC)値を示した。従って、薬剤の95%はGI管中に存在する。
(実施例4)
【0101】
この実施例は、経口製剤の調製のための乾燥粉末層化プロセスを説明する。表XIVは処方成分を記載する。
【表14】
【0102】
この実施例において、チゲサイクリン、ラクトース、リン酸ナトリウムおよびEDTAをブレンドし、スクリューフィードにより、シュークロースまたは微結晶回転楕円体を含有する流動床ローター造粒機中に供給した。ヒプロメロースの5−10%バインダー溶液を同時に回転楕円体の回転床中に噴霧しつつ、チゲサイクリンブレンドをゆっくりと添加した。所望の量のチゲサイクリンブレンドが球体に添加された後、これらを乾燥し、腸溶コーティングのために排出した。腸溶コーティングを、ポリメタクリレートを用いて流動床プロセッサーにより適用した。産業界において通常用いられる他の腸溶ポリマーも使用できる。
【0103】
本発明の他の実施形態は、本明細書において開示されている詳細および実施の考察から当業者には明らかになるであろう。明細書および実施例は例示のみとして見なされ、本発明の真の範囲および精神は以下の請求項により示されることが意図される。
【0104】
特に記載しない限り、本明細書および請求の範囲において、成分の量、反応条件などを表す全ての数字は「約」なる用語により全ての場合において修飾されると理解される。従って、特に反対の記載がない限り、以下の明細書および添付の請求の範囲において記載される数値パラメータは、本発明により得ることが求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】チゲサイクリンの放出(%)(y軸)対時間(x軸、分)のプロットである;
【図2】チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットとしての、サル血漿(低QC(品質対照)−300ng/mL)におけるチゲサイクリンの分析的性能;
【図3】チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットとしてのサル血漿(中間QC A−663ng/mL)におけるチゲサイクリンの分析的性能を示す;
【図4】チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットとしてのサル血漿(中QC B−566ng/mL)におけるチゲサイクリンの分析性能を示す;
【図5】チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットとしてのサル血漿(高QC−3000ng/mL)におけるチゲサイクリンの分析性能を示す;
【図6】1回量の5mg/kg静脈投与後のサルにおけるチゲサイクリンの血漿濃度(y軸)対時間(x軸)のプロットである;
【図7】サル血漿におけるチゲサイクリン分析の分析性能を示す、チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットである(低QC(品質管理)−30ng/mL);
【図8】サル血漿におけるチゲサイクリン分析の分析性能を示す、チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットである(中QC−300ng/mL);
【図9】サル血漿におけるチゲサイクリン分析の分析性能を示す、チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットである(高QC−300ng/mL);および
【図10】絶食オスカニクイザルにおける1回の経口投与(100mg、カプセル型微粒子カプセル)後のチゲサイクリンの血漿濃度(ng/ml、y軸)対時間(時、x軸)のプロットである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月22日に出願された米国出願番号60/753,161(本発明の一部として参照される)の優先権を主張する。
一つの実施形態において、本発明は、チゲサイクリンを含む経口製剤で胃腸管感染症を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チゲサイクリンはグリシルサイクリン抗生物質、即ち、t−ブチルグリシル置換ナフタセンカルボキサミド遊離塩基、および半合成テトラサイクリン、ミノマイシンの類似体である。
【化1】
チゲサイクリン
【0003】
テトラサイクリン、例えば、クロルテトラサイクリン塩酸塩(オーレオマイシン)およびオキシテトラサイクリン(テラマイシン)は安全であり、1948年から広範囲の抗生物質として使用されてきた。しかしながら、これらの抗生物質に対する耐性の出現により、これらの継続した広範囲に及ぶ使用が制限された。チゲサイクリンはしたがってテトラサイクリン耐性メカニズムを克服することにより、テトラサイクリンに対して治療的有用性を潜在的に回復する薬剤として開発された。チゲサイクリンは新生多剤耐性病原体に対する活性も提供する。チゲサイクリンをはじめとするグリシルサイクリンは、多くの抗生物質耐性グラム陽性病原菌、例えば、メシチリン耐性Staphylococcus aureus、ペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae、およびバンコマイシン耐性腸球菌に対して活性である(Weissら、1995; Fraiseら、1995)。チゲサイクリンはテトラサイクリン耐性の2つの主な形態、細胞からの汲み出しおよびリボソーム保護を有する細菌株に対しても活性である(SchnappingerおよびHillen、1995)。
【0004】
胃腸管における感染症の治療が研究されている。例えば、Vancocin(登録商標)は、さらに一般的な抗生物質に対して反応しないStaphylococcus菌またはClostridium Difficileの菌株により引き起こされるものを包含する、結腸および腸の感染症を治療するために使用される、IV薬剤バンコマイシンの経口カプセル形態である。C.difficileは、ある状況下で、典型的は抗生物質治療後、結腸の炎症および下痢、おそらくは関連する疾患の合併症を引き起こし得る、下部胃腸管においてコロニーを形成できる細菌である。高齢、胃腸手術/処置、医療現場における長期滞在、内在する疾患、および免疫欠陥のある状態は、疾患のリスクの増加と関連する。CDCによると、年に3000000の抗生物質に関連する下痢の症例があり、その15から25パーセントは、C. difficileが原因である。
【0005】
バンコマイシンは、経口投与される場合、G.I.管において吸収されない。さらに、Vancocin(登録商標)はClostridium Difficileに対して比較的低い活性(M.I.C.)を有し、その結果、高用量の経口バンコマイシン(125mgまたは250mg)が必要とされる。高用量は望ましくない副作用をもたらす可能性も有する。
【0006】
チゲサイクリンの静脈内製剤が調製されているが、チゲサイクリンを含有する簡単な経口即時放出型プロトタイプは動物において不十分なバイオアベイラビリティーをもたらす。(Petersenら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、April 1999、第43巻、第4号 738−744ページ)しかしながら、かかる経口製剤の有効性は、Clostridium Difficile疾患に対して試験されていない。
【0007】
チゲサイクリンは水中に非常に可溶性であり、溶解度は1から14の全pH範囲にわたって295mg/mLを超える。しかしながら、チゲサイクリンの細胞単層透過性研究は(エタノールおよび緩衝液中1mM、pH6から6.4)は0.4nm・s−1の値を示し、これは低GI透過性を示唆し、このことは動物において見られる低い経口バイオアベイラビリティーと一致する。
【特許文献1】米国出願番号60/753,161
【非特許文献1】Weissら、1995
【非特許文献2】Fraiseら、1995
【非特許文献3】SchnappingerおよびHillen、1995
【非特許文献4】Petersenら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、April 1999、第43巻、第4号 738−744ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、チゲサイクリンでの胃腸管感染症を治療する方法の開発が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの実施形態は、少なくとも1つの細菌感染症を治療する方法であって:
これを必要とする対象に治療上有効量のチゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む方法を提供する。
【0010】
一つの実施形態において、少なくとも1つの細菌感染症は胃腸(GI)感染症である。即ち、感染症は胃腸管において起こる。胃腸管は、上部および下部GI管を包含する。上部GI管は胃および食道を包含する。一つの実施形態において、本明細書において用いられる「下部胃腸管」は、回腸および大腸を意味する。本明細書において用いられる「回腸」は、十二指腸および空腸に続く小腸の第三の部分を意味する。本明細書において用いられる「大腸」は、盲腸、結腸および直腸を含む。「盲腸」は、大腸からはじまり、その一端において回腸が始まっている出口のない袋(盲管)を言う。
【0011】
一つの実施形態において、少なくとも1つの細菌感染症は嫌気性細菌が原因である。
【0012】
一つの実施形態において、少なくとも1つの細菌感染症は、Clostridium difficileが原因である。C. difficileは、ある状況下で下部胃腸管においてコロニー形成することができ、下部胃腸管で結腸の炎症および下痢を引き起こす毒素を産生し得る。一つの実施形態において、治療の結果感染症および/または関連する疾患が治療され得る。さらに、C.difficileの新生遺伝子型は、従来特定された株よりも16−23倍高い毒素量を産生する。
【0013】
従来の研究(Petersenら)は、単純な経口即時放出型プロトタイプが投与された場合のチゲサイクリンの低血液バイオアベイラビリティーを証明しているが、チゲサイクリンの、例えば、C.difficileなどの細菌感染症に対する高い生物活性(例えば、バンコマイシンと比較した場合)は、それでも有効な治療をもたらし得る。一つの実施形態において、胃腸管感染症を治療する場合、低血液バイオアベイラビリティーは、GI管におけるバイオアベイラビリティーが高いこと、即ち、製剤の大部分が胃中に存在することを示す。
【0014】
もう一つ別の実施形態は、C.difficileが原因である抗生物質に関連する偽膜性結腸炎ならびにS.aureusおよび関連するメシチリン耐性株が原因である全腸炎を治療する方法であって:これを必要とする対象に治療上有効量のチゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む方法を提供する。
【0015】
一つの実施形態において、「経口投与」は、患者に医薬組成物を飲み込ませることを含む。もう一つ別の実施形態において、経口投与は、大腸への送達のための経鼻胃管を通して行われる。
【0016】
本明細書において用いられる「医薬組成物」は、固体または液体形態における医薬組成物を意味する。医薬組成物は少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含有し得る。
【0017】
一つの実施形態において、組成物は少なくとも1つの不活性な医薬的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。本明細書において用いられる「医薬的に許容される賦形剤」は、経口投与に適していることが当業者に公知である任意の担体を包含するチゲサイクリンの経口投与に適した医薬担体またはビヒクルを意味する。
【0018】
一つの実施形態において、経口製剤は実質的な量のチゲサイクリンを胃中で放出せず、実質的な放出は、製剤が胃腸管、例えば、下部胃腸管に到達した際に起こる。一つの実施形態において、医薬組成物は、腸溶コーティングを有するチゲサイクリンを含む。一つの実施形態において、「腸溶コーティングを有する」とは、チゲサイクリンの塊を取り囲むことを指す。もう一つ別の実施形態において、腸溶コーティングは各チゲサイクリン粒子を実質的に取り囲む。「コーティング」はコーティングまたはサブコーティングのいずれかを含むことができる。本明細書において用いられる「コーティング」、または「取り囲む」とは例えば、少なくとも部分的にコーティングするかまたは取り囲むことから、完全にコーティングするかまたは取り囲むことである。一つの実施形態において、コーティングまたは取り囲むとは、実質的に、例えば、90重量%、95%、および99%コーティングすることを意味する。一つの実施形態において、腸溶コーティングは、例えば、本明細書において開示される任意の方法により分解を防止することにより、チゲサイクリンに物理的な安定性を付与するために十分均一である。
【0019】
一つの実施形態において、「腸溶コーティング」は、処方の少なくとも実質的な部分が胃を通過し、腸において崩壊することを可能にすることができる。腸溶コーティングの調製用物質の例としては、これに限定されないが、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルアクリレート酸エステルコポリマー、アニオン性アクリル樹脂、例えば、メタクリル酸/メチルアクリレートコポリマーおよびメタクリル酸/エチルアクリレートコポリマー、エチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、カルボキシメチルセルロースアセテートフタレート(CMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、シェラック、メチルセルロース、およびエチルセルロース、ならびにそのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0020】
一つの実施形態において、腸溶コーティングはポリマーフィルムの形成の分野において公知の方法により形成することができる。
【0021】
一つの実施形態において、組成物はシールコートをさらに含む。一つの実施形態において、シールコートは腸溶コートの下に位置する。もう一つ別の実施形態において、組成物は、第一シールコートをオーバーコートする少なくとも1つのさらなるシールコートを含有することができる。一つの実施形態において、シールコートは、腸溶コーティングを形成するために適した任意の物質、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒプロメロース、または本明細書において開示される任意の他の腸溶コーティングを含む。
【0022】
一つの実施形態において、少なくとも1つの腸溶コーティングは、チゲサイクリンを実質的な崩壊から保護することができる。チゲサイクリンは少なくとも2つの崩壊メカニズムを有する。低いpHで、エピマー化が主要な崩壊経路として特定されている。7.4より高いpHで、フェノール基が脱保護されるようになり得るために、崩壊メカニズムは酸化にシフトする。チゲサイクリンは、例えば、固体および溶液状態の両方において、酸素の除去により可溶化され得る。酸素が除去されると、最適安定性は、4.5からエピマー化がである8までシフトする。
【0023】
一つの実施形態において、組成物はさらに少なくとも1つのキレート剤をさらに含む。カルシウムは、その水への溶解度を減少させるテトラサイクリンと結合する。pH7.4でのカルシウム錯体の沈殿のために、30〜40%のチゲサイクリンの損失があり得る。したがって、カルシウム結合およびその後のカルシウム/チゲサイクリン塩の沈殿は、少なくとも一つには低い経口バイオアベイラビリティーが原因である。キレート剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)、クエン酸塩、および酒石酸塩が挙げられる。
【0024】
一つの実施形態において、組成物は少なくとも1つの塩基をさらに含む。一つの実施形態において、少なくとも1つの塩基は、例えば、放出される場合に、7.8から8.5の範囲のpHで放出されると、4から8.5の範囲のpHを有するミクロ環境を有する組成物を提供する。一つの実施形態において、ミクロ環境のpHとは、組成物を直接取り巻く部分のpHをさす。もう一つ別の実施形態において、ミクロ環境とは、シールコート内部の部分をさす。塩基の例としては、これに限定されないが、リン酸塩、例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム、炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウムおよびカリウム、重炭酸塩、例えば、重炭酸ナトリウムおよびカリウム、クエン酸塩、例えば、クエン酸ナトリウム、および酒石酸塩が挙げられる。
【0025】
さらに、いくつかの実施形態において、緩衝液種はチゲサイクリンの安定性に悪影響を及ぼし得る。一つの実施形態において、少なくとも1つの塩基はかかる緩衝液種に対抗できる。
【0026】
一つの実施形態において、組成物は少なくとも1つのバイオポリマーをさらに含む。例えば、組成物がGI管、例えば、内部または下部GI管における感染症を治療するために使用される実施形態において、少なくとも1つのバイオポリマーは内部GI管に対する接着剤としての働きをすることができ、従って、チゲサイクリンの向上した吸収を可能にする。バイオポリマーの例としては、これに限定されないが、ヒプロメロースおよびキサンタンガム、およびカーボマーが挙げられる。
【0027】
好適な賦形剤としては、例えば、(a)フィラーまたはエキステンダー、例えば、デンプン、ラクトース、シュークロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸;(b)バインダー、例えば、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース)、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、シュークロース、およびアカシア;(c)保湿剤、例えば、グリセロール;(d)崩壊剤、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、あるケイ酸塩、および炭酸ナトリウム;(e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(f)吸収促進剤、例えば、第四アンモニウム化合物;(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポロキサマー、およびポリエチレングリコール;(h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレー;(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物;ならびに(j)流動促進剤(粘着防止剤)、例えば、タルク、および二酸化ケイ素が挙げられる。他の好適な賦形剤としては、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムが挙げられる。投与形態は緩衝剤も含むことができる。
【0028】
経口製剤は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いたソフトまたはハードゼラチンカプセルにおいてフィラーも用いることができる。
【0029】
一つの実施形態において、医薬組成物は液体形態である。かかる組成物は、医薬的に許容される水性または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョンならびに使用直前に無菌溶液または分散液に復元される無菌粉末および/または凍結乾燥粉末を含むことができる。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール)、およびその好適な混合物、植物性油(例えば、オリーブ油)、および有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合においては要求される粒子サイズの維持により、また界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。
【0030】
一つの実施形態において、液体形態は、7.5より低いpHを有する溶液または懸濁液である。
【0031】
一つの実施形態において、液体形態は、バイアルまたは他の好適な容器において提供される。
【0032】
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤も含有することができる。これらはタガントまたは他の偽造防止剤であって、当該分野において周知のものも含有することができる。微生物の作用の防止は、様々な殺菌剤および殺真菌剤、例えば、パラベン、クロルブタノール、およびフェノールソルビン酸を含めることにより保証され得る。等張剤、例えば、糖、および塩化ナトリウムを含むのも望ましい。液体医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることにより、液体医薬形態の吸収が延長される。
【0033】
液体投与形態としては、医薬的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルがあげられる。活性化合物に加えて、液体投与形態は当該分野において一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、シクロデキストリン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびその混合物が挙げられる。
【0034】
懸濁液は、活性化合物に加えて、少なくとも1つの懸濁化剤、例えば、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、セルロースまたはセルロース誘導体(たとえば、微結晶セルロース)、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天、およびトラガカント、およびその混合物を含有することができる。
【0035】
医薬組成物は任意に、乳白剤および着色剤を含有することができる。これらは、制御放出または持続放出が可能な形態でもある。かかる目的に使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0036】
組成物が粉末チゲサイクリンを含有する懸濁液である場合、懸濁液は、例えば、約0.05重量%〜5重量%の懸濁化剤、約10重量%〜50重量%の糖を含有するシロップ、および例えば、約20重量%〜50重量%のエタノールを含有するエリキシルをさらに含むことができる。
【0037】
本明細書において開示される医薬組成物は、組成物の合計重量に対して、例えば、約25〜約90重量%、または約5重量%から約60重量%の範囲の量の活性成分を含有することができる。
【0038】
チゲサイクリンは医薬的に許容される塩として提供することができる。「医薬的に許容される塩」なる用語は、本開示における化合物の酸付加塩または塩基付加塩をさす。医薬的に許容される塩は、本発明の化合物の活性を保持し、これが投与される対象に対して、投与されるという点に関して有害または望ましくない影響を及ぼさない。医薬的に許容されるとしては、無機および有機酸両方の金属錯体および塩が挙げられる。医薬的に許容される塩としては、金属塩、例えば、アルミニウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、マンガンおよび錯塩が挙げられる。医薬的に許容されるとしては、酸塩、例えば、酢酸、アスパラギン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アクセチル、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、重硫酸、重酒石酸、酪酸、エデト酸カルシウム、カンシル酸、炭酸、クロロ安息香酸、シレキセチル、クエン酸、エデト酸、エジシル酸、エストル酸、エシル、エシル酸、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキサミン酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硝酸、メチル硫酸、粘液酸、ムコン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、p−ニトロメタンスルホン酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、フタル酸、ポリガラクトウロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、スルホン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸、トルエンスルホン酸等が挙げられる。医薬的に許容される塩は、これに限定されないが、システインをはじめとするアミノ酸から誘導することができる。他の許容される塩は、例えば、Stahlら、Pharmaceutical Salts:Properties、Selection、and Use、Wiley−VCH;第1版(2002年6月15日)において見出すことができる。
【0039】
もう一つの実施形態は、チゲサイクリンを少なくとも1つの腸溶コーティングでコーティングすることを含む医薬組成物の調製法を提供する。コーティングは、当該分野において公知の方法、例えば、チゲサイクリンを、腸溶コーティング材料を含有する流動床プロセッサー(または他のコーティング装置、例えば、パンコーター)中に導入することにより行うことができる。そのコーティング装置中への導入前に、チゲサイクリンを少なくとも1つの塩基/緩衝液、少なくとも1つのキレート剤、少なくとも1つのバイオポリマー、および経口製剤に適した他の成分の1以上と組み合わせることができる。
【0040】
一つの実施形態において、「治療上有効な量」とは、患者において症状の予防または改善あるいは望ましい生物学的結果、例えば、改善された臨床的兆候、疾患の開始の遅延、リンパ球および/または抗体の減少/増加したレベルなどをもたらす化合物の量をさす。有効な量は、当業者により決定され得る。選択された投与レベルは、治療される状態の重さ、および治療される患者の状態および事前の病歴に依存し得る。しかしながら、所望の治療効果を達成するために必要であるよりも少ないレベルで化合物の投薬を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、当業者の技能範囲内である。
【0041】
一つの実施形態において、治療される対象は哺乳動物、例えば、ヒトである。一つの実施形態において、対象は細菌感染症に罹っていると疑われる、例えば、感染症と関連する少なくとも1つの症状を示す。もう一つ別の実施形態において、対象は細菌感染症に罹りやすい者、例えば、疾患に罹りやすい遺伝的傾向を有する者である。
【0042】
本明細書において用いられる「治療する」とは、治療的処置および予防的手段の両方をさす。治療を必要とする者は、特定の内科疾患にすでに罹っている個体ならびに疾患のリスクがある者(即ち、最終的に障害に罹りやすい者)を包含する。治療法の結果、症状の予防または改善あるいは所望の生物学的結果がもたらされ、前記治療法は、改善された臨床的兆候、疾患の開始の遅延、リンパ球および/または抗体の減少/増加したレベルなどにより評価することができる。
【0043】
本発明の医薬組成物中のチゲサイクリンの投与レベルは、特定の患者についての望ましい治療反応を達成するために必要な治療上有効な量を得るように変えることができる。
【0044】
一般的に、約0.1μg/kgから約50mg/kgの投与レベル、例えば、1日につき体重1キログラムあたり約5から約20mgの活性成分の範囲のレベルを哺乳動物患者に局所、経口または静脈内投与することができる。他の投与量は、1日あたり約1μg/kgから約20mg/kg、約1μg/kgから約10mg/kg、約1μg/kgから約1mg/kg、10μg/kgから1mg/kg、10μg/kgから100μg/kg、100μgから1mg/kg、および約500μg/kgから約5mg/kgの範囲である。所望により、有効な1日量を投与の目的で複数の用量、例えば、1日あたり2から4の独立した用量に分割することができる。一つの実施形態において、医薬組成物を1日1回または2回投与することができる。
【0045】
一つの実施形態において、チゲサイクリンは多粒子である。本明細書において用いられるように、「多粒子チゲサイクリン」とはチゲサイクリン粒子の集団をさす。一つの実施形態において、多粒子チゲサイクリンは0.3mmから1.5mmの範囲の平均粒子サイズを有する。多粒子チゲサイクリンは、シェル内に包まれたカプセル、または本明細書において記載される任意の他の投与形態として提供することができる。
【0046】
一つの実施形態において、経口投与用投与形態は、これに限定されないが、カプセル、錠剤、丸薬、粉末(例えば、分散性粉末、かかる粉末を含有する懸濁液)、糖衣錠、顆粒剤、および凍結乾燥ケーキおよび粉末を包含する。かかる形態は、口腔環境において迅速に溶解または崩壊する形態を包含する。もう一つ別の実施形態において、経口投与形態は経口投与直後の薬剤の溶解を遅らせ、溶解の実質的な部分をGI管、例えば、下部GI管で起こるようにする。一つの実施形態において、投与形態(例えば、粉末、ケーキ)はバイアルまたは他の好適な容器中で提供される。
【0047】
一つの実施形態において、医薬組成物はチゲサイクリンを含有する塩溶液である。
【0048】
もう一つ別の実施形態において、組成物はチゲサイクリンを含有する分散液である。
【0049】
一つの実施形態において、医薬組成物はチゲサイクリンを100mgから300mgの範囲の量で含有する圧縮錠を含む。
【0050】
一つの実施形態において、医薬組成物は、ハードゼラチンカプセル中に組み入れら得た、腸溶コートされた多粒子ペレットを含み、各ペレットは、チゲサイクリンおよび微結晶セルロース、および次のものの1以上の組み合わせを含む:少なくとも1つの塩基/緩衝液(例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム)、少なくとも1つのキレート剤(例えば、EDTA)、および少なくとも1つのバイオポリマー(例えば、キサンタンガム)。
【0051】
一つの実施形態において、医薬組成物は、チゲサイクリンおよび微結晶セルロースを含み、次のものの1以上をさらに含む腸溶性錠剤を含む:少なくとも1つの塩基/緩衝液(例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム)、少なくとも1つのキレート剤(例えば、EDTA)、および少なくとも1つのバイオポリマー(例えば、キサンタンガム)。
【0052】
一つの実施形態において、医薬組成物はチゲサイクリンおよび微結晶セルロースを含む腸溶性錠剤を含み、次のものの1以上をさらに含む:少なくとも1つの塩基/緩衝液(例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム)、少なくとも1つのキレート剤(例えば、EDTA)、および少なくとも1つのバイオポリマー(例えば、キサンタンガム)。
【0053】
一つの実施形態において、医薬組成物は腸溶コートされたソフト液体ゲルカプセルを含み、チゲサイクリンの非水性溶液、および次のものの1以上をさらに含む:少なくとも1つの塩基/緩衝液(例えば、少なくとも1つのリン酸ナトリウム)、少なくとも1つのキレート剤(例えば、EDTA)、および少なくとも1つのバイオポリマー(例えば、キサンタンガム)。
【0054】
一つの実施形態において、医薬組成物は、カプセルまたは即時放出部分および「持続放出」部分の両方を含む二層錠を含む。一つの実施形態において、「持続放出」は、実質的に全てのチゲサイクリンを少なくとも4時間、例えば、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、または少なくとも48時間にわたって放出することを含む。
【0055】
一つの実施形態において、医薬組成物は固体形態におけるチゲサイクリンを含み、組成物はラクトースおよび少なくとも1つの酸性化剤をさらに含む。少なくとも1つの酸性化剤は、本明細書において開示される任意の有機または無機酸を含むことができる。一つの実施形態において、少なくとも1つの酸性化剤はHClである。
【0056】
一つの実施形態において、医薬組成物は懸濁液を含み、懸濁液は、顆粒および少なくとも1つの懸濁化剤を含む。懸濁化剤の例は、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに本明細書において開示される任意の他の懸濁化剤から選択される。
【0057】
一つの実施形態において、医薬組成物は、薬剤耐性菌に対する治療薬として使用できる。例えば、メシチリン耐性Staphylococcus aureus、ペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae、バンコマイシン−耐性腸球菌(D.J. Beidenbachら、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 40:173−177(2001);H.W.Boucherら、Antimicrobial Agents & Chemotherapy 44:2225−2229(2000);P.A.Bradford Clin. Microbiol. Newslett. 26:163−168(2004); D. Milatovic et. al.、Antimicrob.Agents Chemother. 47:400−404(2003);R. Patelら、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 38:177−179(2000);P.J.Petersenら、Antimicrob.Agents Chemother.46:2595−2601(2002);およびP.J.Petersenら、Antimicrob.Agents Chemother. 43:738−744(1999))、およびテトラサイクリン耐性の2つの主な形態:細胞からの汲み出しおよびリボソーム保護のいずれかを有する生体(C.Betriuら、Antimicrob.Agents Chemother.48:323−325(2004);T.Hirataら、Antimicrob.Agents Chemother.48:2179−2184(2004);およびP.J.Petersenら、Antimicrob.Agents Chemother.43:738−744(1999))に対して活性である。
【0058】
一つの実施形態において、医薬組成物は多くの細菌感染症、例えば、複雑性腹腔内感染症(cIAI)、複雑性皮膚・皮膚構造感染症(cSSSI)、市中肺炎(CAP)、および院内感染性肺炎(HAP)適応症であって、グラム陰性およびグラム陽性病原体、嫌気性生物、ならびにスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のメシチリン感受性株およびメシチリン耐性株(MSSAおよびMRSA)の両方により引き起こされるものの治療において用いることができる。さらに、医薬組成物は温血動物において、TetMおよびTetK耐性決定因子を有する細菌により引き起こされる細菌感染症を治療または制御するために使用できる。さらに、医薬組成物は骨関節感染症、カテーテル関連好中球減少症、産婦人科感染症を治療するため、または他の耐性病原体、例えば、VRE、ESBL、腸内の急速に成長するマイコバクテリアなどを治療するためにも使用できる。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
【0060】
この実施例において、カプセル中の腸溶コートされたチゲサイクリン顆粒を0.1N HClの溶液中、次いでリン酸塩緩衝液(pH6.8)中37℃で調査した。これらの条件は胃系(0.1N)および下部腸管(ph6.8)を再現する。
【0061】
使用される製剤は下記の実施例3において記載される。
【0062】
100mgチゲサイクリンの腸溶コートされた顆粒のゼラチンカプセルを3つの別個の容器(カプセル1、2、および3)に添加した。カプセルを、USP Apparatus 2(パドル)を用い、100rpmで750mLの0.1N HCl中37℃で溶解させた。2時間溶解させ、続いて250mLの0.2M Na3PO4を添加した。この混合物のpHを6.8に調節した。下記の表Iは溶解データを記載する。
【表1】
【0063】
図1は、表Iの放出率(x軸)対時間(分)のデータのプロットである。AUCのmg/mlに対する比は式y=16279x−58.773による。
【0064】
この実施例により、製剤はほとんどのチゲサイクリンを高いpHで、例えば2時間後に放出することが示される。
(実施例2)
【0065】
この実施例は、経口製剤(強制飼養)として投与された場合のカニクイザルにおけるチゲサイクリンの経口バイオアベイラビリティーを示す。1回の経口および静脈内投与後のチゲサイクリンの薬物動態もこの実施例において提示される。
【0066】
オスサルにまず15mg/kgのチゲサイクリンを経口(強制飼養)投与し、次いで1週間のウォッシュアウト期間の後に5mg/kgのチゲサイクリンを静脈内投与した。
【0067】
材料および方法
研究計画
4匹のオスカニクイザルを研究において使用した。第一投薬期間において、それぞれのサルに0.9%塩溶液中1回量15mg/kgチゲサイクリンを経口(強制飼養)投与した。投与体積は10mL/kgであった。血液サンプル(1サンプルあたり2mL)を投薬前(0時)、ならびに経口投与後0.5、1、2、4、6、8、12、24、32および時間に採取した。1週間のウォッシュアウト期間後、それぞれのサルに0.9%塩溶液中1回量5mg/kgのチゲサイクリンを静脈内投与した。血液サンプル(2mL)を投薬前(0時)並びに投薬後5分、0.5、1、2、4、6、8、12、24、32および48時間に採取した。血液サンプルは、スチール製針および抗凝固剤としてヘパリンナトリウムを含有する真空採血管を用いて採取した。採血後、血液サンプルを氷上に置き、約4℃で遠心分離した。血漿サンプルを分離し、凍結し、分析前に約−70℃で保存した。
サル血漿中のチゲサイクリンの定量
【0068】
ラットおよびイヌ血漿においてあらかじめ確認されたHPLC法を用いてチゲサイクリン濃度を決定したが、この方法はサル血漿において用いるために変更された。この方法において、0.2mLのサル血漿サンプル中チゲサイクリンをアセトニトリルでのタンパク質沈降により抽出し、沈殿したタンパク質を遠心分離により分離した。上清をHPLC分析のために0.05N HCl中再構成した。1/(濃度)2の重み係数を用いた二次適合を用いて較正曲線の回帰分析を行った。0.2mLのサル血漿サンプルを用いることにより、分析の定量限界(LOQ)は100ng/mLであり、曲線範囲は100から6400ng/mLの間であった。
薬物動態計算
【0069】
薬物動態分析プログラムWinNonlin、バージョン2.1(Scientific Consulting Inc.)を用いて、個々の動物濃度対時間データから薬物動態パラメータを計算した。このプログラムはモデルに依存しない方法ならびにGibaldiおよびPerrierにより記載されている標準法(Gibaldi M、Perrier D.、Pharmacokinetics、第2版、Marcel Dekker、Inc.、NY、1982)を用いてデータを分析される。この分析の目的で、IVボーラス投与直後の濃度を逆外挿する試みはなされておらず、むしろ0時での濃度(C0、投与直後)は初回測定濃度(5分、C5min)と等しいと推定された。平均血漿薬物濃度を決定するために、定量下限(LOQ=100ng/mL)より低い値をゼロとして熱かった。終末半減期(t1/2)を0.693/λ(式中、λは終末速度定数であり、濃度−時間曲線の終末部分の対数線形適合により決定される)により決定した。AUC0−4をAUC0−t+Ct/λ(式中、AUC0−tは0時から最後の定量時点であるt時までのAUCであり、Ctは最後の定量可能な濃度である)により計算した。血漿濃度−時間曲線の0時からt時までの下の面積(AUC0−t)を、線形台形法を用いて計算した。iv投与後の全身クリアランス(CLT)を、式:用量/AUC0−4を用いて計算した。定常状態での分布の体積(Vdss)を、MRTivxCLT(式中、MRTivはiv投与後の平均滞留時間であり、AUMC0−4/AUC0−4に等しい)を用いて計算した。経口投与に関して、Cmaxおよびtmax値は、濃度対時間曲線の検討により得られた。経口投与後の定量可能な濃度が不十分であるために、AUC0−4は計算できなかった。
サル血漿中のチゲサイクリンについてのHPLC法の分析性能
【0070】
サンプルの分析のために5回の分析を行った。較正曲線の逆外挿値を表IIに示す。チゲサイクリン較正基準のCVは2.1から6.3%の間であり、バイアス値は−5.4から3.8%の範囲であった。
【表2】
【0071】
較正曲線パラメータを表IIIに示す。
表III サル血漿におけるチゲサイクリン分析の分析性能:較正曲線パラメータ
【表3】
【0072】
回帰分析は次の式を用いて行った:
y=ax2+bx+c
(式中、
a=二次回帰線定数
b=一次回帰線定数
c=切片
y=チゲサイクリンの内部標準ピーク高さ
x=チゲサイクリン濃度(ng/mL))。
【0073】
全ての分析実施において、決定係数(R2)は>0.99であった。全ての分析実施において、低、中間および高QCサンプル(2反復試験)を研究サンプルとともに分析した。低QCおよび高QCはそれぞれ300および3000ng/mLの公称濃度を有する。中間QCについて、目標公称濃度は900ng/mLであった。中間QCの2つの別個のバッチを調製し、どちらも目標より低い濃度(約600ng/mL)を有していた。各中間QCバッチの4(バッチA)または8(バッチB)複製の分析により、中間QCバッチの目標濃度を決定した。中間QCバッチA(濃度測定値663ng/mL)を曲線1および2に関して分析した。中間QCバッチB(濃度測定値556ng/mL)を曲線3、4および6に関して分析した。全ての分析実施から得られたQCサンプルの結果を表IVに示す。
【表4】
NA:非適用;このQCバッチはこの実施に関しては分析しなかった。
【0074】
QCサンプルのCVは5.9から13.1%の間であり、バイアスは−1.0から7.7%の間であった。QC結果もQCチャートに表し、図2〜5に示す。
カニクイザルにおけるチゲサイクリンの薬物動態
【0075】
1回15mg/kg経口投与後のサルにおけるチゲサイクリンの濃度を表Vに示す。
【表5】
【0076】
1回量5mg/kgのiv投与後のチゲサイクリンの濃度を表VIに示す。
【表6】
【0077】
サルにおいて1回量(iv)のチゲサイクリン投与後の血漿濃度対時間データを図6に示す。個々の動物から得られる薬物動態パラメータを表VIIに一覧にする。
【表7】
【0078】
1回量15mg/kg経口(強制飼養)投与後に、チゲサイクリンは投与後2時間までサンプル中で検出された。平均(±SD)Cmax値は163±27.1ng/mLであり、tmax値は1から2時の間であった。経口投与後の濃度対時間曲線の終末期における定量可能な濃度が低いために、AUC0−4、およびt1/2値は経口投与後に評価しなかった。また、定量可能なチゲサイクリン濃度および評価した部分AUC値に関する時点数が限定されているために、経口投与後のチゲサイクリンの絶対的バイオアベイラビリティーは決定できなかった。
【0079】
所望の作用部位がGI管であり、血液中でないので、0.5%血液バイオアベイラビリティーはGI管感染症を治療するために適している。従って、0.5%血液バイオアベイラビリティーはGI管において約99%バイオアベイラビリティーと表現できる。
【0080】
サルにおいて1回量5mg/kg静脈内投与後、チゲサイクリンの血漿濃度は指数関数的に減少した。血漿濃度対時間曲線の終末期から推定される平均t1/2値は14.1±3.4時間であり、これは、MRTivの12.8±5.4時間と類似していた。チゲサイクリンの平均(±SD)AUC0−4値は、18267±3030 nghr/mLであった。平均チゲサイクリンClTは0.280±0.053L/kg/時であり、平均Vdssは3.47±1.09L/kgであった。
考察
【0081】
この研究の結果は、チゲサイクリンの血液バイオアベイラビリティーが経口投与後に低いことを示した。薬物はGI管中の生物に対する局所作用のために胃内に保持されるので、低い血液バイオアベイラビリティーは望ましい。AUC0−4値の評価に関して終末期におけるデータが不十分であるために、絶対的バイオアベイラビリティーを1回量15mg/kgの経口投与後に評価しなかった。サルにおける1回量iv投与後に、チゲサイクリンの血漿濃度は指数関数的に減少した。血漿濃度対時間曲線の終末期から推定される終末半減期は11.4から19.1(平均14.1)時間の間であり、MRTiv(平均12.8時間)と類似していた。サルにおけるGAR−93 6の全身クリアランス(ClT)は比較的低かったが(平均0.280L/kg/時)、イヌにおけるものと類似していた(1回量5mg/kg投与後に約0.26L/kg/時)。サルにおけるチゲサイクリンの分布(Vdss)の定常状態体積は大きく(3.47L/kg)、この種における全体内水分の体積を超過し(Davies B、Morris T. “Physiological Parameters in laboratory animals and humans.,” Pharm. Res. 1993; 10:1093−95参照)、このことは、チゲサイクリンが様々な組織および器官に分布していることを示唆する。
(実施例3)
【0082】
この実施例は、絶食オスカニクイザルにおいて、単一の腸溶コートされた経口製剤として投与されたカプセル型微粒子(100mg)製剤からの経口バイオアベイラビリティーを示す。チゲサイクリン血漿濃度をLC/MS/MS法により製剤種類について決定した。
物質および方法
処方
【0083】
チゲサイクリン製剤は、下記表VIIIに示される成分を有する100mgのカプセル型多粒子製剤であった:
【表8】
【0084】
腸溶コーティングはSeal Coat、YS−1−7006、およびEnteric Coat(Acryl−EZE)を含んでいた。腸溶コートされたチゲサイクリンの最終効力は209mg/gであった。各100mgカプセルは478.5mgの腸溶コートされた顆粒を含んでいた。
実験計画およびサンプル採取
【0085】
チゲサイクリンのバイオアベイラビリティーを4匹のオスカニクイザル(それぞれ体重5.5から7.1kg)に関して調査した。サルをBioresources生態動物園で水および食物を自由に摂取できるようにして飼育した。4匹のサルに前記経口製剤(1x100mg多粒子カプセル)を投与した。製剤は10mLの水とともに投与された。全てのサルを投与前に一夜絶食させ(水は自由に摂取させた)、投与後4時間に餌を与えた。
【0086】
血液サンプルを伏在静脈から、0(投薬前)、投薬後0.5、1、2、3、4、8、12および24時間で採取した。約3mLの血液を、ヘパリンナトリウムを抗凝固剤として含有するVacutainer(登録商標)管中に採取した。血漿を冷蔵した遠心管中で分離し、−70℃で保存した。血漿サンプルをドライアイス上でパックされた分析部位へ送達した。
【0087】
血漿チゲサイクリン濃度を前述のLC/MS/MS法により決定した。0.5mLサンプル体積に基づいて、方法は10ng/mLの定量限界を有する。
サル血漿中のチゲサイクリン濃度の決定
【0088】
チゲサイクリン濃度をLC/MS/MS法により決定した。0.50mLのヘパリンナトリウムサル血漿を用いて、定量下限(LLOQ)は10.0ng/mLであり、分析範囲は10.0から1000ng/mLであった。分析性能をモニターするために、全分析を低、中間、および高濃度(30、300、および800ng/mL公称濃度)品質サンプル(QC)において5重複試験で分析した。
サル血漿におけるチゲサイクリンLC/MS/MS分析の分析性能
【0089】
この研究から得られるサル血漿サンプルの定量化のための分析を行った。サル血漿から調製されたチゲサイクリン較正基準の逆算値および較正曲線回帰定数を表IXに示す。
【表9】
【0090】
1/(濃度)2の重み係数を用いて、線形回帰を行った。逆較正基準の平均バイアスは−11.6%から13.0%の範囲であった。較正曲線のR2値は0.9895であった。
【0091】
サル血漿において調製され、研究サンプルに関して分析されたチゲサイクリン品質管理(QC)サンプルの結果を表Xにまとめる。
【表10】
【0092】
QCサンプルのCVは1.9%から6.1%の範囲であり、平均バイアスは−14.3%から−2.7%の範囲であった。QC結果も図7〜9においてグラフで表す。
サルにおけるチゲサイクリンの血漿濃度
【0093】
カプセル型微粒子製剤から得られる、1回量(100mgカプセル)のチゲサイクリン投与後の絶食サルにおけるチゲサイクリン血漿濃度(ng/mL)を表XIに示し、図10においてグラフで示す。
【表11】
【0094】
WinNonlin、Model 200を用いて、個々のサル血漿チゲサイクリン濃度−時間データの無隔壁分析を行った。血漿チゲサイクリン濃度−時間曲線下の面積(AUC)を対数/線形台形公式により計算した。ピーク血漿チゲサイクリン濃度(Cmax)およびCmaxに達するまでの時間(tmax)を血漿チゲサイクリン濃度−時間データから直接記録した。
【0095】
製剤のAUC(ng hr/mL、平均±SD)値は2830±1111であった。製剤のCmax値(ng/mL、平均±SD)は225±92.4であった。
薬物動態
【0096】
個別および平均サル薬物動態パラメータを表XIIに記載する。
【表12】
【0097】
表XIIIはカプセル型多粒子製剤におけるチゲサイクリンの平均薬物動態パラメータならびに絶対的および相対的バイオアベイラビリティーを、前記実施例2において記載されるようにIVおよび経口(強制飼養)投与された0.8%塩溶液チゲサイクリン溶液に対して比較する。
【表13】
【0098】
製剤のAUC(ng 時/mL、平均±SD)値は2830±1111であった。製剤のCmax値(ng/mL、平均±SD)は225±92.4であった。
【0099】
改善されたカプセル型微粒子経口投与製剤のバイオアベイラビリティーを評価するために、チゲサイクリン製剤のバイオアベイラビリティー研究をカニクイザルにおいて行った。
【0100】
この研究の結果は、経口投与後の血液中チゲサイクリンの絶対的バイオアベイラビリティーは5%であることを示した。カプセル製剤(16mg/kg)は、15mg/kgで行われた事前の研究と比較して、有意に高い経口暴露(AUC)値を示した。従って、薬剤の95%はGI管中に存在する。
(実施例4)
【0101】
この実施例は、経口製剤の調製のための乾燥粉末層化プロセスを説明する。表XIVは処方成分を記載する。
【表14】
【0102】
この実施例において、チゲサイクリン、ラクトース、リン酸ナトリウムおよびEDTAをブレンドし、スクリューフィードにより、シュークロースまたは微結晶回転楕円体を含有する流動床ローター造粒機中に供給した。ヒプロメロースの5−10%バインダー溶液を同時に回転楕円体の回転床中に噴霧しつつ、チゲサイクリンブレンドをゆっくりと添加した。所望の量のチゲサイクリンブレンドが球体に添加された後、これらを乾燥し、腸溶コーティングのために排出した。腸溶コーティングを、ポリメタクリレートを用いて流動床プロセッサーにより適用した。産業界において通常用いられる他の腸溶ポリマーも使用できる。
【0103】
本発明の他の実施形態は、本明細書において開示されている詳細および実施の考察から当業者には明らかになるであろう。明細書および実施例は例示のみとして見なされ、本発明の真の範囲および精神は以下の請求項により示されることが意図される。
【0104】
特に記載しない限り、本明細書および請求の範囲において、成分の量、反応条件などを表す全ての数字は「約」なる用語により全ての場合において修飾されると理解される。従って、特に反対の記載がない限り、以下の明細書および添付の請求の範囲において記載される数値パラメータは、本発明により得ることが求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】チゲサイクリンの放出(%)(y軸)対時間(x軸、分)のプロットである;
【図2】チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットとしての、サル血漿(低QC(品質対照)−300ng/mL)におけるチゲサイクリンの分析的性能;
【図3】チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットとしてのサル血漿(中間QC A−663ng/mL)におけるチゲサイクリンの分析的性能を示す;
【図4】チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットとしてのサル血漿(中QC B−566ng/mL)におけるチゲサイクリンの分析性能を示す;
【図5】チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットとしてのサル血漿(高QC−3000ng/mL)におけるチゲサイクリンの分析性能を示す;
【図6】1回量の5mg/kg静脈投与後のサルにおけるチゲサイクリンの血漿濃度(y軸)対時間(x軸)のプロットである;
【図7】サル血漿におけるチゲサイクリン分析の分析性能を示す、チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットである(低QC(品質管理)−30ng/mL);
【図8】サル血漿におけるチゲサイクリン分析の分析性能を示す、チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットである(中QC−300ng/mL);
【図9】サル血漿におけるチゲサイクリン分析の分析性能を示す、チゲサイクリン血漿濃度(y軸)対曲線数(x軸)のプロットである(高QC−300ng/mL);および
【図10】絶食オスカニクイザルにおける1回の経口投与(100mg、カプセル型微粒子カプセル)後のチゲサイクリンの血漿濃度(ng/ml、y軸)対時間(時、x軸)のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの細菌感染症を治療する方法であって:
これを必要とする対象に治療上有効量のチゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つの細菌感染症が胃腸感染症である請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの細菌感染症が下部胃腸管感染症である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの細菌感染症が嫌気性細菌により引き起こされる前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの感染症がClostridium difficileにより引き起こされる前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物が液体形態である前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
液体形態が溶液または懸濁液を含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
溶液または懸濁液が7.5より低いpHを有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
医薬組成物がチゲサイクリンを含有する塩溶液である請求項6〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
医薬組成物がチゲサイクリンを含む懸濁液である請求項6〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
医薬組成物が固体形態である請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
固体形態が、錠剤、カプセル、粉末、ならびに凍結乾燥ケーキおよび粉末から選択される請求項11記載の方法。
【請求項13】
医薬組成物が、少なくとも1つの腸溶コーティングを有するチゲサイクリンを含む請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの腸溶コーティングが、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルアクリレート酸エステルコポリマー、アニオン性アクリル樹脂、例えば、メタクリル酸/メチルアクリレートコポリマーおよびメタクリル酸/エチルアクリレートコポリマー、エチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、カルボキシメチルセルロースアセテートフタレート(CMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、シェラック、メチルセルロース、およびエチルセルロース、ならびにそのブレンドおよびコポリマーから選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
チゲサイクリンが多粒子である請求項1〜8および10〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
経口投与形態が、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、および顆粒剤から選択される前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの塩基をさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの塩基が、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、および酒石酸塩から選択される請求項17記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのキレート剤をさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのキレート剤が、EDTA、EGTA、酒石酸塩、およびクエン酸塩から選択される請求項19記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのバイオポリマーをさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのバイオポリマーが、ヒプロメロース、キサンタンガム、およびカーボマーから選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
医薬組成物が、ハードゼラチンカプセル中に組み入れられた腸溶コートされた多粒子ペレットを含み、各ペレットが、チゲサイクリンおよび微結晶セルロース、ならびに少なくとも1つの少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーから選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜5および11〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
医薬組成物が、チゲサイクリンおよび微結晶セルロースを含み、少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーから選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
医薬組成物が、腸溶コートされたソフトゼラチンカプセル中に組み入れられた多粒子ペレットを含み、各ペレットが、チゲサイクリンおよび微結晶セルロース、ならびに少なくとも1つの少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーから選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1〜5および11〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
医薬組成物が、腸溶コートされたソフト液体ゲルカプセルを含み、チゲサイクリンならびに少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーから選択される少なくとも1つの成分の非水性溶液をさらに含む、請求項1〜5および11〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーをさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
チゲサイクリンが固体形態であり、医薬組成物がラクトースおよび少なくとも1つの酸性化剤をさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
酸性化剤がHClである請求項28記載の方法。
【請求項30】
経口投与が、経鼻胃管を通した投与を含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
医薬組成物が懸濁液を含み、懸濁液が顆粒および少なくとも1つの懸濁化剤を含む、請求項1〜8および10のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの懸濁化剤が、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される請求項31記載の方法。
【請求項33】
これを必要とする対象に治療上有効量のチゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む、C.difficileにより引き起こされる抗生物質に関連する偽膜性結腸炎およびエス・アウレウスおよび関連するメチシリン耐性株により引き起こされる全腸炎の治療法。
【請求項1】
少なくとも1つの細菌感染症を治療する方法であって:
これを必要とする対象に治療上有効量のチゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つの細菌感染症が胃腸感染症である請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの細菌感染症が下部胃腸管感染症である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの細菌感染症が嫌気性細菌により引き起こされる前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの感染症がClostridium difficileにより引き起こされる前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
医薬組成物が液体形態である前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
液体形態が溶液または懸濁液を含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
溶液または懸濁液が7.5より低いpHを有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
医薬組成物がチゲサイクリンを含有する塩溶液である請求項6〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
医薬組成物がチゲサイクリンを含む懸濁液である請求項6〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
医薬組成物が固体形態である請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
固体形態が、錠剤、カプセル、粉末、ならびに凍結乾燥ケーキおよび粉末から選択される請求項11記載の方法。
【請求項13】
医薬組成物が、少なくとも1つの腸溶コーティングを有するチゲサイクリンを含む請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの腸溶コーティングが、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルアクリレート酸エステルコポリマー、アニオン性アクリル樹脂、例えば、メタクリル酸/メチルアクリレートコポリマーおよびメタクリル酸/エチルアクリレートコポリマー、エチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、カルボキシメチルセルロースアセテートフタレート(CMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、シェラック、メチルセルロース、およびエチルセルロース、ならびにそのブレンドおよびコポリマーから選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
チゲサイクリンが多粒子である請求項1〜8および10〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
経口投与形態が、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、および顆粒剤から選択される前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの塩基をさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの塩基が、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、および酒石酸塩から選択される請求項17記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのキレート剤をさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのキレート剤が、EDTA、EGTA、酒石酸塩、およびクエン酸塩から選択される請求項19記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのバイオポリマーをさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのバイオポリマーが、ヒプロメロース、キサンタンガム、およびカーボマーから選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
医薬組成物が、ハードゼラチンカプセル中に組み入れられた腸溶コートされた多粒子ペレットを含み、各ペレットが、チゲサイクリンおよび微結晶セルロース、ならびに少なくとも1つの少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーから選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜5および11〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
医薬組成物が、チゲサイクリンおよび微結晶セルロースを含み、少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーから選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
医薬組成物が、腸溶コートされたソフトゼラチンカプセル中に組み入れられた多粒子ペレットを含み、各ペレットが、チゲサイクリンおよび微結晶セルロース、ならびに少なくとも1つの少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーから選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1〜5および11〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
医薬組成物が、腸溶コートされたソフト液体ゲルカプセルを含み、チゲサイクリンならびに少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーから選択される少なくとも1つの成分の非水性溶液をさらに含む、請求項1〜5および11〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの塩基、少なくとも1つのキレート剤、および少なくとも1つのバイオポリマーをさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
チゲサイクリンが固体形態であり、医薬組成物がラクトースおよび少なくとも1つの酸性化剤をさらに含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
酸性化剤がHClである請求項28記載の方法。
【請求項30】
経口投与が、経鼻胃管を通した投与を含む前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
医薬組成物が懸濁液を含み、懸濁液が顆粒および少なくとも1つの懸濁化剤を含む、請求項1〜8および10のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの懸濁化剤が、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される請求項31記載の方法。
【請求項33】
これを必要とする対象に治療上有効量のチゲサイクリンを含む医薬組成物を経口投与することを含む、C.difficileにより引き起こされる抗生物質に関連する偽膜性結腸炎およびエス・アウレウスおよび関連するメチシリン耐性株により引き起こされる全腸炎の治療法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−521456(P2009−521456A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547492(P2008−547492)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/048617
【国際公開番号】WO2007/075792
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/048617
【国際公開番号】WO2007/075792
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
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