説明

チタニア被覆粒子の製造方法

【課題】本発明の課題は、品質の高いチタニア被覆粒子を簡便かつ生産性高く、提供することができる製造方法を確立することである。
【解決手段】粒子(P)が分散したチタンアルコキシドの有機溶剤(E)溶液(A)中で、該チタンアルコキシドをゾルゲル反応により該粒子(P)の表面においてチタニアを生成させてチタニア被覆粒子を製造する製造方法であって、該溶液(A)にβ−ジケトンを含有させた状態で、好ましくはβ−ジケトンをチタンアルコキシド1モルに対して、1.5〜4モル含有させて、マイクロ波を照射してチタニア被覆粒子の分散液を得ることを特徴とするチタニア被覆粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタニア被覆粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタニア粒子は、その化学的特性を利用した用途が広く、たとえば酸素と適当な結合力を有するとともに耐酸性を有するため、酸化還元触媒あるいは担体、紫外線の遮蔽力を利用した化粧材料またはプラスチックの表面コート剤、さらには高屈折を利用した反射防止コート材、導電性を利用した帯電防止材として用いられたり、これらの効果を組み合わせて機能性ハードコート材に用いられたり、さらに光触媒作用を使用した防菌剤、防汚剤、超親水性被膜などに用いられている。その使用方法としては、チタニア粒子そのものを用いる方法や、あるいは、基体粒子上にチタニア膜を形成し、この膜によりチタニアの持つ遮蔽性や紫外線吸収性を保持させるものである。後者の例としては、チタニア被覆層付球状粒子や、チタニア被覆粉体などが知られている。
【0003】
チタニア被覆粒子の製造方法として従来から知られている方法としては、チタンアルコキシドを使用してのチタニア膜の形成方法(特許文献1)や、硫酸チタニル溶液を使用してのチタニア膜の形成方法(特許文献2)などがある。さらに、これらチタニア膜形成方法を利用し、黒色磁性粉体上にシリカ・チタニアによる干渉膜を被覆し、黒色の磁性粉体を着色する方法(特許文献3)が挙げられる。
【0004】
一方、チタニア膜を形成する方法としては、上記チタン原料のほかに塩化チタン(IV)溶液を使用したものが知られており、これらについては(特許文献4)や(特許文献5)など、多数の文献や特許が公開されている。さらには、(特許文献6)では、塩化チタン(IV)溶液からペルオキソチタン溶液を作成し、該ペルオキソチタン溶液を基材粉体共存下で加熱することにより該基材粉体表面上にチタニア膜を形成させる方法が公開されている。
また、(特許文献7)では、塩化チタン(IV)溶液などのチタン含有液体にアンモニア水などの塩基性物質を添加して水チタニアゲルを沈殿させ、沈殿物を濾過洗浄後に分散液とし、そこに過酸化水素水を添加することによりペルオキソチタン溶液を生成させ、該ペルオキソチタン溶液により粉体の表面処理を施す方法が公開されている。
【0005】
【特許文献1】特開平06−228604号公報
【特許文献2】特開2000−345072号公報
【特許文献3】特開平10−330644号公報
【特許文献4】特開2000−86292号公報
【特許文献5】特開平5−286738号公報
【特許文献6】特開平01−224220号公報
【特許文献7】特開平09−71418号公報
【0006】
しかし、上述したような、これまで知られていたチタニア膜の形成方法にはいろいろな問題がある。まず、チタンアルコキシドをチタニア膜被覆原料として使用した場合では、チタンアルコキシドが非常に反応性が高く、チタニアの生成速度が速いため、粒子表面へのチタニア層の形成以外に、チタニア成分のみの微小粒子、粗大粒子が発生する。これらの改善のために反応速度を下げるため、非常に低濃度での反応になること、反応系を恒温・恒湿度下で厳密に管理して行わなければならないことなどから、改善の余地が多く残されている。
【0007】
また、硫酸チタニル溶液をチタニア膜被覆原料として使用した場合の問題点としては、硫酸チタニルの反応が遅いために製膜操作に時間がかかること、1回の製膜操作で形成できるチタニア膜厚に限界のあること、そのためにチタニア膜を厚くする必要がある場合にはチタニア膜被覆操作を複数回に分ける必要があること、強酸性下条件で行う必要があり、易腐食性である基材には適用不可である。
そして、塩化チタン(IV)溶液を使用してのチタニア膜の形成方法では、硫酸チタニル溶液を使用する場合よりも反応時間を大幅に短縮でき、しかも1回のチタニア膜被覆操作にてかなり厚くチタニア膜を形成させることができるようになるが、上記硫酸チタニル溶液や塩化チタン(IV)溶液を使用する従来のチタニア膜形成方法は、反応液のpHが7以下の酸性であったり、塩化物イオンを含むため、鉄粉など耐酸性が弱いものや塩化物に対して腐食する基材粉体とした場合には、その基材粉体が変質されるなどの影響があり、適用することが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、品質の高いチタニア被覆粒子を簡便かつ生産性高く、提供することができる製造方法を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、粒子(P)が分散したチタンアルコキシドの有機溶剤(E)溶液(A)中で、該チタンアルコキシドをゾルゲル反応により該粒子(P)の表面においてチタニアを生成させてチタニア被覆粒子を製造する製造方法であって、該溶液(A)にβ−ジケトンを含有させた状態でマイクロ波を照射してチタニア被覆粒子の分散液を得ることを特徴とするチタニア被覆粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法を用いれば、品質の高いチタニア被覆粒子を簡便かつ生産性高く、提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のチタニア被覆粒子の製造方法としては、粒子(P)が分散したチタンアルコキシドの有機溶剤(E)溶液(A)中で、該チタンアルコキシドをゾルゲル反応により該粒子(P)の表面においてチタニアを生成させてチタニア被覆粒子を製造する製造方法であって、該溶液(A)にβ−ジケトンを含有させた状態でマイクロ波を照射してチタニア被覆粒子の分散液を得ることを特徴とする。
粒子(P)の分散方法としては、1次粒子のレベルまで分散可能な方法であれば、特に限定しないが、超音波照射による方法が、特に好ましい。
粒子(P)を有機溶剤(E)中に分散させた後、β−ジケトン、チタンアルコキシド、水の順で、粒子(P)が分散した有機溶剤(E)中に添加することで溶液(A)を作製する。この順で添加することは、有機溶剤(E)中に含まれる微量の水分によるチタンアルコキシドの加水分解が抑えられるため好ましい。
【0012】
粒子(P)、有機溶剤(E)、溶液(A)、チタンアルコキシド、水、β−ジケトンの量的な関係としては、粒子(P)に対する、チタンアルコキシドの量は、目標とするチタニア被膜の厚さに依存するが、好ましくは重量で0.1倍〜50倍であり、1倍から10倍がさらに好ましい。β−ジケトンはチタンアルコキシド1モルに対して、マイクロ波照射前のチタンアルコキシドの加水分解阻害とマイクロ波照射時の反応性の観点から1.5〜4モル含有させることが好ましく,2〜3.5モルがさらに好ましい。
【0013】
本発明の製造法において使用されるチタンアルコキシドとしては、チタンアルコキシドの有機部が炭素数8以下が好ましく、4以下がさらに好ましい。具体的にはn−ブトキシド、t−ブトキシド、エトキシド、2−エチルヘキサオキシド、イソブトキシド、イソプロポキシド、メトキシド、n−プロポキシドが挙げられる。好ましいチタンアルコキシドの例としてはチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラエトキシドがあげられ、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドが、反応性、汎用性の観点から特に好ましい。
【0014】
本発明の製造法において使用されるβ−ジケトンとしては、アセチルアセトン、プロピオニルアセトン、ブチリルアセトン、イソブチリルアセトン、カプロイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、テノイルトリフルオロアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、デカリン−1,8−ジオン、または、これらを1種以上含む混合物が挙げられる。これらの中でも、アセチルアセトンがマイクロ波照射時の反応性の観点から特に好ましい。
【0015】
有機溶剤(E)は水を0.5重量%以上の濃度で溶解させることが可能な溶剤である。(E)の誘電率は、2〜40であることがさらに好ましい。(E)の沸点は100℃以上であるものが層厚さの精度の観点から好ましい。誘電率が2〜40であり、沸点が100℃以上である溶媒としては、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ニトロメタン、N−メチルピロリドン、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−ブタノール、イソブタノール、酢酸、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどがあげられる。これらを用いることで、より層界面が平坦な、均一な層を形成させることができる。誘電率が低い溶媒(2〜40)は、一般的にマイクロ波により、加熱されにくく、コア粒子の表面が、特異的に加熱されるため、層形成反応が粒子表面で優先的に起こるので、溶媒中での反応が起こりにくくなるため、新たに粒子が生成することが極めて起こりにくい。また沸点が高い(100℃以上)と、沸騰による系の自己攪拌が起こりにくくなるため、先述の粒子表面での特異的加熱が維持される。
【0016】
また、金属アルコキシドを添加し、マイクロ波を照射して、中心層(P)又は多層粒子の表面に金属酸化物層を形成させる際に、必要により触媒を添加すると好ましい。触媒としては金属触媒[スズ系(ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエートなど)、鉛系(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛など)など]、アミン系触媒[メチルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミンなど]、酸[三フッ化ホウ素、塩酸など]、塩基[アミン、アルカリ土類金属水酸化物など]、塩[第4級オニウム塩など]、有機金属触媒[塩化第一スズ、テトラブチルジルコネートなど]、有機酸[パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸など]などが挙げられる。触媒の添加量は分散液に対して0〜5.0%が好ましく、0.5〜1%がさらに好ましい。
分散液中の粒子の濃度は分散液の体積に対して0.01〜30体積%が好ましく、1〜10体積%が生産性と粒子の分散性の観点からさらに好ましい。
【0017】
本発明の製造方法に用いられる粒子(P)は、粒子であれば、特に限定されず、真球状粒子、紡錘状粒子、針状粒子、板状粒子、キューブ状粒子のいずれにも適用できるものである。材質はポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのビニル系高分子、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドなどの重縮合系高分子などの有機高分子、シリカ、ジルコニア、アルミナ、酸化鉄、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化マグネシウムなどの金属酸化物、これらを含有してなる天然物などが挙げられる。天然物としては具体的には、タルク、カオリンクレー、モンモリロナイト、マイカ、ベントナイト、ロー石クレー、クリソタイル等が挙げられる。
それらの中で、製造し易さと屈折率の観点から、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種であるものが好ましい。さらに、シリカ、アルミナが好ましい。
【0018】
また、金、銀、銅、白金、パラジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、タングステン、バナジウム、タンタル、ジルコニウムなどの金属、及びこれらの混合物が挙げられる。それらの中でも、製造し易さの観点から、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、白金が特に好ましい。コア粒子の数平均粒径としては、5nm〜1000μmの範囲のものが好ましく、50nm〜100μmのものがさらに好ましい。
また粒子(P)は、表面に金属、チタニア以外の金属酸化物、樹脂等の層で被覆されている粒子であってもよいし、上記材質の複数のものからなる多層構造の粒子であってもよい。この場合は、得られるチタニア被覆粒子はチタニア層を有する多層(2層以上)粒子となる。
その場合の、各層の厚さは、1nm〜10μmが好ましく、30nm〜400nmがさらに好ましい。
【0019】
本発明の製造方法で得られるチタニア被覆粒子は、チタニアの層が一層以上あれば、チタニア以外の層を有していてもよく、その層はチタニア層より、内側の層、外側の層でもよく、粒子がチタニア粒子であってもよい。チタニア以外の層の成分としては、粒子表面を被覆できるものであれば特に限定はしない。チタニア以外の層成分としては、具体的には、金属酸化物では、シリカ、ジルコニア、アルミナ、酸化鉄、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、酸化インジウムなどが挙げられ、それらの中でも製造し易さの観点から、シリカ、ジルコニア、アルミナ、酸化鉄などが好ましい。さらに、シリカ、アルミナが好ましい。
樹脂では、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのビニル系高分子、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドなどの重縮合系高分子などが挙げられ、これらの中でもポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。
【0020】
金属では、金、銀、銅、白金、パラジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、ニッケルタングステン、バナジウム、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられ、金、銀、銅、白金、パラジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄がさらに好ましい。
チタニア層を含め、層中には、層を構成する主成分(金属酸化物、樹脂、金属)以外にも、添加剤を加えることも可能である。これら添加剤の層中に占める重量は50重量%以下であり、10重量%以下がさらに好ましい。
各層の厚さは、1nm〜10μmが好ましく、製造が容易な点と、反応時間が短時間ですむという観点から、30nm〜400nmがさらに好ましい。
【0021】
本発明におけるチタニア以外の層の形成方法は、従来より知られている次の反応を使用することができる。具体的には粒子の存在下、液相中に金属アルコキシドと水を溶解させ、常温でゾルゲル反応を行うことにより、ゾルゲル反応により生成した微小粒子が粒子表面に吸着し、金属酸化物層を形成する層形成反応、または、粒子存在下、液相中で高分子の熱重合反応により微小粒子を生成させ、生成した微小粒子を粒子表面に吸着し、樹脂層を形成させる層形成反応、または粒子存在下、液相中で加熱により金属塩の還元析出反応を行い、析出したナノ粒子が粒子表面に吸着することで、金属層を形成する層形成反応等である。
【0022】
マイクロ波 の照射強度は、0.005〜2W/cm3 が好ましく、0.01〜1W/cm3がさらに好ましい。この範囲内であれば、副反応などが起きることなく、短時間で層形成を完結させることができる。
【0023】
マイクロ波 の照射時間は、0.1〜10分が好ましく、0.5〜5分がさらに好ましい。この範囲であれば、目的の層厚さまで層を成長させるには十分な時間であり、かつ、工業的な観点からも、層形成工程を短時間に完了できることから、有利である。
マイクロ波照射中の攪拌は、粒子表面での特異的加熱効果が低くなる観点から、無攪拌状態であることが好ましい。また、連続式の反応装置を用いてもよいが、乱流の起こりにくさ、マイクロ波透過性の観点から、管の内径が6cm以下のものが好ましい。
マイクロ波を照射する装置は、簡易なものとしては、家庭用の電子レンジなどが挙げられるが、反応温度、照射強度を任意にコントロールできるマイクロ波照射装置がさらに好ましい。このようなマイクロ波照射装置としては、四国計測工業社製のμリアクターなどがあげられる。
【0024】
マイクロ波を照射される液の温度は、粒子を分散させた分散液が液状であれば特に限定されないが、反応装置が簡略ですむ観点から、マイクロ波照射装置以外の加熱、冷却装置の必要のない温度、具体的には10〜35℃であることが好ましい。マイクロ波を照射中の、反応途中の液温は、分散液の沸点より30℃高い温度以下であればよいが、分散液の沸点以下であることが、より好ましい。マイクロ波照射による加熱の場合、分散液の過昇温が起こり、沸点に達しても沸騰が起こらず、沸点以上に液温が上がることが起こり得るので、注意が必要である。
【0025】
本発明の製造方法により作製されるチタニア被覆粒子のチタニア層の膜厚は、1nm〜100μmであることが好ましく、10〜500nmがさらに好ましい。また1個の粒子の膜厚のばらつきは、変動係数で20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
粒径分散度が単分散であるチタニア被覆粒子をガラス、金属、高分子フィルム上に、自己組織的に配列させることができ、チタニア被覆粒子としてではなく、集積体としての新たな機能も発現させることができる。
【0026】
本発明の製造方法により作製されるチタニア被覆粒子は、マイクロ波照射によるチタニア被膜を形成後、さらに、得られたチタニア被覆粒子を水中に分散させてマイクロ波を照射することにより、形成されたチタニア被膜中に含まれる微量の未反応チタンアルコキシドをほぼ完全にチタニアにすることができる。チタニア被膜中にはチタンアルコキシドがβ−ジケトンとの錯体化合物を形成して微量が残存しているが、この微量のチタンアルコキシドは、本工程を追加で行うことで、これらはほぼ完全に除去することができる。
【実施例】
【0027】
実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、部は重量部とする。
【0028】
<平均粒径、粒径の変動係数の測定方法>
走査型電子顕微鏡(日本電子製、S−4800)を用いて、30000倍の倍率で500個の粒子の粒径を測定し、数平均粒径、及び数平均粒径のばらつきである粒径の変動係数について計算により求めた。粒径の変動係数は式(1)から求めた。
【0029】
【数1】

【0030】
<層数、1個の粒子の膜厚のばらつき確認方法>
粒子を市販のエポキシ樹脂で固め、マイクロカッターで切断し、その断面を透過電子顕微鏡(日本電子製、TEM)で観察し、層数の確認と、1個の粒子の膜厚のばらつき確認を行った。1個の粒子の膜厚の変動係数は、1個の粒子について、同一層の異なる部位で、層の膜厚を20個測定し、式(2)から求めた。
【0031】
【数2】

【0032】
<白色度>
2枚の透明フィルム間に厚さ30μmのスペーサーを設置し、そのフィルム間に均一に粒子を封入した。粒子 を封入したフィルムを、白度計(日本電色社製)を用いて測定した。得られた白色度の数値が大きいほど、白色の度合いが大きいことを示す。
【0033】
<実施例1>
20mlサイズのスクリュー管にシリカ粒子粉体(数平均粒径:300nm、粒径分散度:3%)(日本触媒製、シーホスター)0.1部を、ビス(2−メトキシエチル)エーテル(和光純薬製)8部に超音波をかけて均一分散後、アセチルアセトン(和光純薬製)0.11部、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬製)0.15部、イオン交換水0.04部をこの順番で添加し、均一混合した。この混合液をテフロン製の100mlビーカーに全量移送後、すぐに電子レンジ(型番CMO−522BL500W、クリスタル電器製)に入れ、1分間マイクロ波(照射強度 0.03W/cm3)照射を行なった。照射開始時の液温は25℃、1分間加熱後の液温は123℃まで上昇した。反応液を30℃まで冷却後、恒温冷却小型遠心機を用いて(5000回転×3分間)の条件で固液分離を行い、シリカ粒子の表面がチタニア層で被覆された、2層構造チタニア被覆粒子(P−1)を得た。数平均粒径は498nm、粒径の変動係数は6.5%であった。
【0034】
<実施例2>
20mlサイズのスクリュー管に2層構造チタニア被覆球状粒子(P−1)0.1部を、エタノール(和光純薬製)40部に超音波をかけて均一分散後、0.1%アンモニア水溶液0.5部を混合し、均一化した後、テトラエトキシシラン(信越化学製)の10重量%エタノール溶液10部を全量添加し、26℃で1分間攪拌混合し、ゾルゲル反応を行った。恒温冷却小型遠心機を用いて(5000回転×3分間)の条件で固液分離を行い、シリカ粒子の表面がチタニア層、ついでシリカ層で被覆された3層構造球状粒子(P−2)を得た。数平均粒径は568nm、粒径の変動係数は7.5%であった。さらに20mlサイズのスクリュー管に3層構造粒子(P−2)0.1部を入れ、実施例1と同様の操作を行なうことにより、4層構造チタニア被覆粒子(P−3)を得た。数平均粒径は712nm、粒径の変動係数は8.6%であった。
【0035】
<実施例3>
チタンアルコキシドに対してアセチルアセトンの量がモル比で1.5倍になるように、アセチルアセトンの量を0.08部にした以外は実施例1と同様の操作を行い、シリカ粒子の表面がチタニア層で被覆された、2層構造チタニア被覆粒子(P−4)を得た。数平均粒径は501nm、粒径の変動係数は9.3%であった。
【0036】
<実施例4>
チタンアルコキシドに対してアセチルアセトンの量がモル比で4倍になるように、アセチルアセトンの量を0.21部にした以外は実施例と同様の操作を行い、シリカ粒子の表面がチタニア層で被覆された、2層構造チタニア被覆粒子(P−5)を得た。数平均粒径は465nm、粒径の変動係数は5.9%であった。
【0037】
<実施例5>
実施例1で得られた粒子(P−1)をイオン交換水8部に超音波をかけて均一分散後、電子レンジに入れ、30秒間マイクロ波(照射強度 0.03W/cm3)照射を行なった。照射開始時の液温は25℃、30秒間加熱後の液温は100℃まで上昇した。液を30℃まで冷却後、恒温冷却小型遠心機を用いて(5000回転×3分間)の条件で固液分離を行い、2層構造チタニア被覆粒子(P−5)を得た。数平均粒径は495nm、粒径の変動係数は6.4%であった。
【0038】
<比較例1>
数平均粒径300nmのシリカ粒子(日本触媒製、シーホスター)0.6部(平均粒径6.0μm)を脱水エタノール8部に入れ、高速攪拌機で充分攪拌し、これに、脱水エタノール8部に対しオルトチタン酸テトラエチル0.083部を混合して得た溶液を一気に投入して加え、充分高速攪拌混合後、これに0.65重量%の水を含むエタノール溶液1部を加えた溶液を1.0(部/min)滴下、混合する。滴下終了後、攪拌を8時間続け、静置した後、恒温冷却小型遠心機を用いて(5000回転×3分間)の条件で固液分離を行い、チタニア被覆粒子(P−1’)を得た。数平均粒径は467nm、粒径の変動係数は34%であった。
【0039】
<比較例2>
数平均粒径300nmのシリカ粒子(日本触媒製、シーホスター)4.0部を、1リットルの脱イオン水に対し、0.3Mの酢酸、0.9Mの酢酸ナトリウムを溶解して得られた緩衡溶液400部に超音波分散し、十分に分散後、液の温度を50℃〜55℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた、12g/リットル硫酸チタン水溶液1.8部を0.5(部/min)で徐々に滴下した。滴下後、3時間反応を継続することで、チタニアの固相微粒子をシリカ粒子表面に固定した。その後、恒温冷却小型遠心機を用いて(5000回転×3分間)の条件で固液分離を行い、2層構造チタニア被覆粒子(P−3’)を得た。数平均粒径は370nm、粒径の変動係数は9.6%であった。
【0040】
<比較例3>
数平均粒径300nmのシリカ粒子(日本触媒製、シーホスター)1部を、塩化チタン0.029モル/リットル及び塩酸0.056モル/リットルの濃度で含む水溶液100部に添加して均質に分散させたのち、この懸濁液を室温下でかきまぜながら、これに1モル/リットル濃度の炭酸水素アンモニウム水溶液を塩化チタンが加水分解する当量となるように、5時間で滴下した。その後、恒温冷却小型遠心機を用いて(5000回転×3分間)の条件で固液分離を行い、2層構造チタニア被覆粒子(P−3’)を得た。数平均粒径は469nm、粒径の変動係数は18%であった。
【0041】
表1に各反応条件で合成した本発明のチタニア被覆粒子(P−1)〜(P−5)、比較例のチタニア被覆粒子(P−1’)〜(P−3’)の反応時間、数平均粒径、粒径の変動係数、層界面状態を示した。層形成をマイクロ波で行なうことで、チタニア被覆粒子の合成時間を飛躍的に短縮することができた。
また、得られたチタニア被覆粒子をさらに、水中に再分散させてマイクロ波を照射すると白色度の高いチタニア被覆粒子が得られた。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本製造方法により作成されたチタニア被膜粒子は、酸化還元触媒あるいは担体、紫外線の遮蔽力を利用した化粧材料またはプラスチックの表面コート剤、さらには高屈折を利用した反射防止コート材、導電性を利用した帯電防止材、機能性ハードコート材、さらに光触媒作用を使用した防菌剤、防汚剤、超親水性被膜などへの添加剤として極めて有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子(P)が分散したチタンアルコキシドの有機溶剤(E)溶液(A)中で、該チタンアルコキシドをゾルゲル反応により該粒子(P)の表面においてチタニアを生成させてチタニア被覆粒子を製造する製造方法であって、該溶液(A)にβ−ジケトンを含有させた状態でマイクロ波を照射してチタニア被覆粒子の分散液を得ることを特徴とするチタニア被覆粒子の製造方法。
【請求項2】
β−ジケトンをチタンアルコキシド1モルに対して、1.5〜4モル含有させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
さらに、得られたチタニア被覆粒子を水中に再分散させてマイクロ波を照射する請求項1又は2に記載の製造方法。




【公開番号】特開2009−91203(P2009−91203A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263936(P2007−263936)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】