説明

チタニルポルフィラジン誘導体混合物及びその製造法

【課題】可視域から近赤外域での感度や、繰り返し疲労における帯電安定性、温湿度変動に対して安定性に優れた電子写真感光体に用いられる有機光導電体として有用な新規チタニルポルフィラジン誘導体混合物、その製造法を提供する。
【解決手段】フタロニトリル、ジシアノピリジン、ヒドロキシ置換フタロニトリル、及びチタン化合物を反応させることにより得られた、下記一般式(1)で表される複数のチタニルポルフィラジン誘導体からなるチタニルポルフィラジン誘導体混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なチタニルポルフィラジン誘導体混合物、およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式において使用される感光体の光導電体としては大きく分けて種々の無機及び有機光導電体が知られている。ここにいう「電子写真方式」とは一般に、光導電性の感光体をまず暗所で、例えばコロナ放電によって帯電させ、次いで像露光し、露光部のみの電荷を選択的に逸散させて静電潜像を得、この潜像部を染料、顔料などの着色剤と高分子材料などで構成されるトナーで現像し、可視化して画像を形成するようにした、いわゆるカールソンプロセスとよばれる画像形成プロセスである。有機の光導電体を用いた感光体は無機光導電体のものに比べ、感光波長域の自由度、成膜性、可撓性、膜の透明性、量産性、毒性やコスト面等において利点を持つため、現在ではほとんどの感光体には有機光導電体が用いられている。またこの電子写真方式および類似プロセスにおいてくり返し使用される感光体には、感度、受容電位、電位保持性、電位安定性、残留電位、分光感度特性に代表される静電特性が優れていることが要求される。
【0003】
近年ではこの電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。
特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うデジタル記録方式を用いたプリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。またこのデジタル記録方式はプリンターのみならず通常の複写機にも応用され、所謂デジタル複写機が開発されている。さらに、このデジタル複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため今後その需要性が益々高まっていくと予想される。
【0004】
このようなデジタル記録方式に対応させる感光体には従来からあるアナログ方式とは異なった特性が要求されている。例えば光源としては現在のところ小型かつ安価で信頼性の高い半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が多く使われている。現在よく使われているLDの発光波長域は近赤外光領域にあり、LEDの発光波長は650nmより長波長である。このため前記電子写真用感光体への要求事項に加え、可視光領域から近赤外光領域に高い感度を有することが望まれる。
【0005】
この観点から、スクエアリリウム染料(特許文献1(特開昭49−105536号公報)、及び特許文献2(特開昭58−21416号公報))、トリフェニルアミン系トリスアゾ顔料(特許文献3(特開昭61−151659号公報))、フタロシアニン顔料(特許文献4(特開昭48−34189号公報)、及び特許文献5(特開昭57−14874号公報))等が、デジタル記録用の光導電体として提案されている。特にテトラアザポルフィリン誘導体であるフタロシアニン顔料は、長波長域まで感光波長域を持つと共に高い光感度を有し、また中心金属や結晶形の種類によって様々な特性のバリエーションが得られることからデジタル記録用の光導電体として盛んに研究が行われている。これまで知られている良好な感度を示すフタロシアニン顔料としては、ε型銅フタロシアニン、X型無金属フタロシアニン、τ型無金属フタロシアニン、バナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等が挙げられる。
【0006】
中でも特許文献6(特開昭64−17066号公報)、特許文献7(特開平3−128973号公報)、特許文献8(特開平5−98182号公報)によって高感度のチタニルフタロシアニン顔料が提案されている。これらのチタニルフタロシアニン顔料の分光波長域は700〜860nmに最大吸収を示しており、半導体レーザー光に対して極めて高感度を示すものである。しかしながら、上述の特許公報に示されるチタニルフタロシアニン顔料を電子写真感光体に用いた場合、感度的には充分であるものの、繰り返し疲労による帯電性の低下や、温湿度による感度変動が大きいなどの実用上の多くの問題を残している(非特許文献1[Y. Fujimaki, Proc. IS&T’s 7th International Congress on Advances in Non-Impact Printing Technologies, 1, 269 (1991)]参照)。
【0007】
更には、特許文献9(特許第3123185号公報)には光電変換材料用クロロガリウムフタロシアニン顔料が、特許文献10(特許第3166293号公報)にはX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強い回折ピークを有する光電変換材料用の高感度なV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が開示されている。これらガリウムフタロシアニン顔料も近赤外領域まで実用的な感度を示し、上述のチタニルフタロシアニン顔料に比べ光感度は低いものの、光感度の湿度依存性がこれに比べて小さいことがいわれている(非特許文献2[K. Daimon, et al. : J. Imaging Sci. Technol., 40, 249 (1996)]参照)。しかしながらこのガリウムフタロシアニン顔料も繰り返し疲労による帯電性の低下や残留電位上昇という問題を残している。
【0008】
また、特許文献11(特許第2637487号公報)、特許文献12(特許第2637485号公報)にはピリジンもしくはピラジンなどのヘテロ環を有するポルフィラジン系顔料について開示されている。更には、特許文献13(特公平3−27111号公報)、特許文献14(特許第4293694号公報)、特許文献15(特許第4419873号公報)にはフタロシアニンと他のポルフィラジン系顔料の混合物が光導電体として有用であることが開示されているが、これらを用いた電子写真感光体も同様に可視域および近赤外域における感度、繰り返し疲労による帯電性の低下や残留電位上昇、温湿度による感度変動が大きい等の点で前記電子写真用感光体の要求事項を充分満足するものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の電子写真用感光体における光導電体の持つ欠点を除去した、更に詳しくは可視域から近赤外域での感度や、繰り返し疲労における帯電安定性、温湿度変動に対して安定性に優れた電子写真感光体に用いられる有機光導電体として有用な新規チタニルポルフィラジン誘導体混合物、およびその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される種々の新規チタニルポルフィラジン誘導体混合物、及び、それらの新規製造方法を見出すに至り、本発明を完成させた。
【0011】
【化1】

(式中、A,B(nは1〜4の整数を表す)は、各々独立に、水素と結合した炭素原子、または窒素原子を表す。ただし、nが同じA,Bからなる群の中では、いずれも水素と結合した炭素原子であるか、もしくはいずれか1つのみが窒素原子を表す。また、nが同じA,Bからなる群の中で、いずれも水素と結合した炭素原子である場合、mは0もしくは1の整数を表し、いずれか1つのみが窒素原子を表す場合、mは0の整数である。)
【0012】
而して、本発明は、次の(1)のチタニルポルフィラジン誘導体混合物、およびその製造法を提供する。
(1) フタロニトリル、ジシアノピリジン、ヒドロキシ置換フタロニトリル、及びチタン化合物を反応させることにより得られた、下記一般式(1)で表される複数のチタニルポルフィラジン誘導体からなることを特徴とするチタニルポルフィラジン誘導体混合物。
【化1】

(式中、A,B(nは1〜4の整数を表す)は、各々独立に、水素と結合した炭素原子、または窒素原子を表す。ただし、nが同じA,Bからなる群の中では、いずれも水素と結合した炭素原子であるか、もしくはいずれか1つのみが窒素原子を表す。また、nが同じA,Bからなる群の中で、いずれも水素と結合した炭素原子である場合、mは0もしくは1の整数を表し、いずれか1つのみが窒素原子を表す場合、mは0の整数である。)
(2) CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、13.2°、20.7°、26.2°に強い回折ピークを有することを特徴とする前記(1)に記載のチタニルポルフィラジン誘導体混合物。
(3) CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、9.6°、14.9°、24.0°、27.2°に強い回折ピークを有することを特徴とする前記(1)に記載のチタニルポルフィラジン誘導体混合物。
(4) フタロニトリル、ジシアノピリジン、ヒドロキシ置換フタロニトリル、及びチタン化合物を反応させることを特徴とする、下記一般式(1)で表される複数のチタニルポルフィラジン誘導体からなるチタニルポルフィラジン誘導体混合物の製造方法。
【化1】

(式中、A,B(nは1〜4の整数を表す)は、各々独立に、水素と結合した炭素原子、または窒素原子を表す。ただし、nが同じA,Bからなる群の中では、いずれも水素と結合した炭素原子であるか、もしくはいずれか1つのみが窒素原子を表す。また、nが同じA,Bからなる群の中で、いずれも水素と結合した炭素原子である場合、mは0もしくは1の整数を表し、いずれか1つのみが窒素原子を表す場合、mは0の整数である。)
【発明の効果】
【0013】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明のチタニルポルフィラジン誘導体混合物を用いた電子写真感光体は、可視域から近赤外域での感度、帯電性に優れ、かつ繰返し疲労特性においても耐久性に優れたものであることから、本発明のチタニルポルフィラジン誘導体混合物は、高速複写機やレーザープリンター等の電子写真感光体用の有機光導電体、特に電荷発生材料として有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の[実施例1]によるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.1)の粉末X線回折スペクトル図である。
【図2】本発明の[実施例1]によるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.1)の赤外線吸収スペクトル図である。
【図3】本発明の[実施例2]によるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.2)の粉末X線回折スペクトル図である。
【図4】本発明の[実施例2]によるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.2)の赤外線吸収スペクトル図である
【図5】本発明の[実施例3]によるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.3)の粉末X線回折スペクトル図である。
【図6】本発明の[実施例3]によるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.3)の赤外線吸収スペクトル図である。
【図7】本発明の[実施例4]によるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.4)の粉末X線回折スペクトル図である。
【図8】本発明の[実施例4]によるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.4)の赤外線吸収スペクトル図である。
【図9】従来のY型チタニルフタロシアニンの粉末X線回折スペクトル図である。
【図10】本発明のチタニルポルフィラジン誘導体混合物を用いた[応用例1]、[応用例2]及び従来のY型チタニルフタロシアニンを用いた[比較例1]それぞれの電子写真用感光体の静電疲労特性(繰返し光照射使用によるV劣化)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
一般式(1)で表される複数のチタニルポルフィラジン誘導体からなるチタニルポルフィラジン誘導体混合物は、式(2)で示されるフタロニトリルと式(3)で示されるジシアノピリジン、および式(4)で示されるヒドロキシ置換フタロニトリルの混合物とを、四塩化チタン、オルトチタン酸テトラ−n−ブチルなどのチタン化合物と共に、無溶媒か、α−クロロナフタレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ペンタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、キノリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、ジオキサン等の存在下で反応させる事により得ることができる。また該反応は必要に応じて尿素、ホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、アンモニア等の存在下反応を行っても良い。
反応温度は通常室温〜300℃で行い、好ましくは130℃〜250℃である。
【0016】
【化2】

【化3】

(式中、A,B(nは1〜4の整数を表す)は、各々独立に、水素と結合した炭素原子、または窒素原子を表す。ただし、nが同じA,Bからなる群の中では、いずれも水素と結合した炭素原子であるか、もしくはいずれか1つのみが窒素原子を表す。また、nが同じA,Bからなる群の中で、いずれも水素と結合した炭素原子である場合、mは0もしくは1の整数を表し、いずれか1つのみが窒素原子を表す場合、mは0の整数である。)
【0017】
ここで式(2)と、(3)と(4)の合計との混合割合(モル比)[(2):((3)+(4))]は、1:99999〜99999:1、好適には1:1〜399:1、更に好ましくは1:1〜100:1である。更に(3)と(4)の混合割合(モル比)は、1:99999〜99999:1、好適には1:39〜39:1、更に好ましくは1:1〜10:1である。(2)が前述の混合割合より少ない場合、本発明のチタニルポルフィラジン誘導体混合物を用いた電子写真感光体の電子写真特性においては帯電性や感度が低くなる。逆に(3)の混合割合が少ない場合、繰り返し疲労等による帯電低下の変化率が大きくなる。また(4)の混合割合が少ない場合は温湿度変動に対して安定性が悪くなる。
反応時に仕込むチタン化合物はチタニルポルフィラジン誘導体混合物の理論モル収量に対して1.0〜2.0倍モル量が好ましく、1.0〜1.5倍モル量が好適である。
【0018】
上記一般式(1)で表されるチタニルポルフィラジン誘導体混合物としては、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、13.2°、20.7°、26.2°に強い回折ピークを有する結晶型、もしくは少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、9.6°、14.9°、24.0°、27.2°に強い回折ピークを有する結晶型にあることが好ましい。
これらの結晶型のチタニルポルフィラジン誘導体混合物は、前記の製造方法により得ることができるが、結晶変換処理を行い目的の結晶型を得ることもできる。
例えば、前記少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、13.2°、20.7°、26.2°に強い回折ピークを有する結晶型の一般式(1)で表されるチタニルポルフィラジン誘導体混合物は、加熱しながら溶媒中で分散することにより得ることができるので、フタロニトリル、ジシアノピリジン、ヒドロキシ置換フタロニトリル、及びチタン化合物を加熱反応させることにより得ることができる。
また、前記少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、9.6°、14.9°、24.0°、27.2°に強い回折ピークを有する結晶型の一般式(1)で表されるチタニルポルフィラジン誘導体混合物は、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、13.2°、20.7°、26.2°に強い回折ピークを有する結晶型の一般式(1)で表されるチタニルポルフィラジン誘導体混合物を酸処理し、結晶変換して得ることができる。
さらに製造にあたっては酸処理を行った後、溶媒を用いて処理することも好ましい。
【0019】
酸処理とは、硫酸、塩酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などの酸中に−5℃〜室温で顔料を溶解させた後、これを氷、水、氷水、もしくは水と有機溶媒の混合液中に滴下して顔料の結晶を析出させ、濾過等の手段により顔料を得る事を示す。酸の中でも濃硫酸はチタニルポルフィラジン誘導体混合物の溶解度が高く、発煙性もなく、取り扱いやすいため好ましい。また、このように析出させたチタニルポルフィラジン誘導体混合物は、水、または必要に応じて塩基性水溶液で洗浄し、酸および水溶性有機溶剤や加水分解において生じる不純物などを除去、中和することが好ましい。
【0020】
水と混合させる有機溶媒としてはメタノール、エタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類、ジエチルエーテル、メチルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの水溶性有機溶媒があげられる。
【0021】
また、塩基性水溶液の塩基としては塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ、水酸化マグネシウム、アンモニア、各種の水酸化第四級アンモニウムなどを用いることができる。
塩基の使用量は、酸に対して0.5〜1.5モル当量の範囲が適当であり、好ましくは0.8〜1.2モル当量である。
【0022】
このように酸処理により得られたチタニルポルフィラジン誘導体混合物は溶媒を用いて処理すると、一層、光感度と、分散性、耐久性に優れた結晶に転移させることができる。
特にCuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、明確な回折ピークを有しないチタニルポルフィラジン誘導体混合物が良好な酸処理結晶である。
【0023】
次に、溶媒を用いて処理するとは、室温下あるいは加熱下での溶媒中におけるチタニルポルフィラジン誘導体混合物の懸濁処理を示し、溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、n−ブチルエ−テル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、キノリン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、水等があり、またこれらの溶媒を混合しておこなっても良い。
【0024】
このような溶媒処理方法としては、例えば、湿式粉砕、浸漬、懸濁撹拌する等の処理操作が挙げられる。処理条件としては、チタニルポルフィラジン誘導体混合物1部に対する溶媒の使用量は1〜200部、好ましくは10〜100部の範囲が適当であり、処理温度は0〜150℃、好ましくは室温〜100℃である。
また、溶媒処理は適当な容器中で放置または撹拌しながら行ってもよい。
さらには、所定の溶剤を用いてボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー、アトライター等により湿式粉砕してもよく、粉砕の際に、食塩、ぼう硝等の無機化合物や、ガラスビーズ、スチールビーズ、アルミナビーズ等の磨砕メディアを用いてもよい。
【0025】
以上のような溶媒処理により、さらに結晶が安定で、光感度と分散性、耐久性に優れたチタニルポルフィラジン誘導体混合物の好ましい新規な結晶を製造することができる。
中でも、電子写真感光体用の光導電体として、チタニルポルフィラジン誘導体混合物は、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、13.2°、20.7°、26.2°に強い回折ピーク、もしくは少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、9.6°、14.9°、24.0°、27.2°に強い回折ピークを有する結晶型にあることが好ましい。
【0026】
また、感光体の要求特性に応じて、混合比率の異なる2種以上のチタニルポルフィラジン誘導体混合物、あるいはフタロシアニン系顔料とヒドロキシガリウムピリドポルフィラジン誘導体混合物を混合してもよい。この場合フタロシアニン顔料としては銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、鉄フタロシアニン、コバルトフタロシアニン等が挙げられる。
【0027】
本発明の前記一般式(1)で示されるチタニルポルフィラジン誘導体混合物を、単独もしくは電荷輸送物質と組み合わせて単層型あるいは積層型(機能分離型)の電子写真用感光体が作成できる。層構成としては単層型の場合、導電性基体の上に、結着剤中にチタニルポルフィラジン誘導体混合物単独、もしくは電荷輸送物質を組み合わせ分散させた感光層を設ける。機能分離型の場合は、基体上にチタニルポルフィラジン誘導体混合物を含有する電荷発生層、その上に電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を形成するものであるが、電荷発生層、電荷輸送層を逆に積層しても良い。
【0028】
また、接着性、電荷ブロッキング性を向上させるために、感光層と基体との間に中間層を設けても良い。さらに、耐摩擦性など、機械的耐久性を向上させるために、感光層上に保護層を設けても良い。
【0029】
チタニルポルフィラジン誘導体混合物分散感光層は、適当な溶媒に、必要に応じてバインダー樹脂を加え溶解もしくは分散せしめ、塗布し乾燥させることにより設けることができる。
チタニルポルフィラジン誘導体混合物の分散方法としては、例えば、ボールミル、超音波、ホモミキサー等が挙げられ、また塗布手段としては、ディッピング塗工法、ブレード塗工法、スプレー塗工法等が挙げられる。
【0030】
チタニルポルフィラジン誘導体混合物を分散せしめて感光層を形成する場合、層中への分散性を良くするために、そのチタニルポルフィラジン誘導体混合物は2μm以下、好ましくは1μm以下の平均粒径のものが好ましい。ただし、上記の粒径があまりに小さいとかえって凝集しやすく、層の抵抗が上昇したり、結晶欠陥が増えて感度及び繰り返し特性が低下したり、或いは微細化する上で限界があるから、平均粒径の下限を0.01μmとするのが好ましい。
【0031】
感光層の分散液或いは溶液を調整する際に使用する溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、1、2−ジクロルエタン、1、1、1−トリクロルエタン、ジクロルメタン、1、1、2−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン等を挙げることができる。
【0032】
感光層形成時に用いる結着剤としては、絶縁性がよい従来から知られている電子写真感光体用結着剤であれば何でも使用でき、特に限定はない。例えば、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂、ならびにこれらの樹脂の繰り返し単位のうち2つ以上を含む共重合体樹脂、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂等の絶縁性樹脂のほか、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらのバインダーは単独または2種類以上の混合物として用いることができる。
【0033】
また、本発明のチタニルポルフィラジン誘導体混合物は、例えば以下に示すような顔料と混合、分散して使用しても良い。有機顔料としては、例えば、シーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI 21180)、シーアイピグメントレッド41(CI 21200)、シーアイアシッドレッド52(CI 45100)、シーアイベーシックレッド3(CI 45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)などのアゾ顔料、例えば、シーアイピグメントブルー16(CI 74100)、チタニルフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、例えば、シーアイバットブラウン5(CI 73410)、シーアイバットダイ(CI 73030)などのインジコ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インタンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン顔料などが挙げられる。なお、これらの有機顔料は単独あるいは2種類以上が併用されても良い。
【0034】
以上のような層構成、物質を用いて感光体を作成する場合には、膜厚、物質の割合に好ましい範囲がある。機能分離型(基体/電荷発生層/電荷輸送層)の場合、電荷発生層において、必要に応じて結着剤が使用され、その場合結着剤に対するチタニルポルフィラジン誘導体混合物の割合は20重量%以上、膜厚は0.01〜5μmが好ましい。電荷輸送層においては、結着剤に対する電荷輸送物質の割合は20〜200重量%、膜厚は5〜100μmとするのが好ましい。また高分子型電荷輸送物質を用いる場合はそれ単独で電荷輸送層を形成しても良い。
【0035】
さらに、電荷発生層中には電荷輸送物質を含有することが好ましく、含有させることにより残留電位の抑制、感度の向上に対し効果を持つ。この場合の電荷輸送物質は、結着剤に対し20〜200重量%含有させることが好ましい。
【0036】
また、単層型の感光体の場合は、その感光層中に結着剤に対するチタニルポルフィラジン誘導体混合物の割合は5〜95重量%、膜厚は10〜100μmとするのが好ましい。また電荷輸送物質と組み合わせる場合、電荷輸送物質の結着剤に対する割合は30〜200重量%が好ましい。また高分子型電荷輸送物質とチタニルポルフィラジン誘導体混合物で感光層を形成しても良く、高分子型電荷輸送材料に対するチタニルポルフィラジン誘導体混合物の割合は5〜95重量%、膜厚は10〜100μmとするのが好ましい。
さらに上記感光層中には、帯電性の向上等を目的に、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードアミンとヒンダードフェノールが、同一分子中に存在する化合物などを添加することができる。
【0037】
導電性基体としては、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、金、ステンレス等の金属板、金属ドラムまたは金属箔、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、金酸化錫、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックフィルム或いは導電性物質を塗布した紙、プラスチックなどのフィルムまたはドラム等が挙げられる。
【0038】
また、必要に応じて導電性基体上に下引き層が使用され、下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。これらの下引き層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。
この他、下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜25μmが適当である。
【0039】
更に、感光層保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることがある。保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。
【0040】
保護層の形成法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の従来方法を用いることができるが、特に塗膜の均一性の面からスプレーコートがより好ましい。なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
【0041】
電荷輸送物質には電荷輸送物質は、正孔輸送物質と電子輸送物質、及び高分子電荷輸送物質に分け、以下に説明する。
正孔輸送物質としては、例えば、ポリ−N−カルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、及び以下の一般式(11)乃至(34)で示される化合物がある。
【0042】
【化4】

(式中、R1はメチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基または2−クロルエチル基を表し、R2はメチル基、エチル基、ベンジル基またはフェニル基を表し、R3は水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基またはニトロ基を表す。)
一般式(11)で表される化合物には、例えば、9−エチルカルバゾール−3−カルボアルデヒド−1−メチル−1−フェニルヒドラゾン、9−エチルカルバゾール−3−カルボアルデヒド−1−ベンジル−1−フェニルヒドラゾン、9−エチルカルバゾール−3−カルボアルデヒド−1、1−ジフェニルヒドラゾンなどがある。
【0043】
【化5】

(式中、Arはナフタレン環、アントラセン環、ピレン環及びそれらの置換体あるいはピリジン環、フラン環、チオフェン環を表し、Rはアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す。)
一般式(12)で表される化合物には、例えば、4−ジエチルアミノスチリル−β−カルボアルデヒド−1−メチル−1−フェニルヒドラゾン、4−メトキシナフタレン−1−カルボアルデヒド−1−ベンジル−1−フェニルヒドラゾンなどがある。
【0044】
【化6】

(式中、R1はアルキル基、ベンジル基、フェニル基またはナフチル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアラルキルアミノ基またはジアリールアミノ基を表し、nは1〜4の整数を表し、nが2以上のときはR2は同じでも異なっていても良い。R3は水素原子またはメトキシ基を表す。)
一般式(13)で表される化合物には、例えば、4−メトキシベンズアルデヒド−1−メチル−1−フェニルヒドラゾン、2、4−ジメトキシベンズアルデヒド−1−ベンジル−1−フェニルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1、1−ジフェニルヒドラゾン、4−メトキシベンズアルデヒド−1−(4−メトキシ)フェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1−ベンジル−1−フェニルヒドラゾン、4−ジベンジルアミノベンズアルデヒド−1、1−ジフェニルヒドラゾンなどがある。
【0045】
【化7】

(式中、R1は炭素数1〜11のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基または複素環基を表し、R2、R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、クロルアルキル基または置換もしくは無置換のアラルキル基を表し、また、R2とR3は互いに結合し窒素を含む複素環を形成していても良い。R4は同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。)
一般式(14)で表される化合物には、例えば、1、1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、トリス(4−ジエチルアミノフェニル)メタン、1、1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、2,2’−ジメチル−4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−トリフェニルメタンなどがある。
【0046】
【化8】

(式中、Rは水素原子またはハロゲン原子を表し、Arは置換もしくは無置換のフェニル基、ナフチル基、アントリル基またはカルバゾリル基を表す。)
一般式(15)で表される化合物には、例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、9−ブロム−10−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなどがある。
【0047】
【化9】

(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Arは下記一般式(17)、一般式(18)を表す。
【0048】
【化10】

2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはジアルキルアミノ基を表し、nは1または2であって、nが2のとき、R3は同一でも異なっていてもよく、R4、R5は水素原子、炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のベンジル基を表す。)
一般式(16)で表される化合物には、例えば、9−(4−ジメチルアミノベンジリデン)フルオレン、3−(9−フルオレニリデン)−9−エチルカルバゾールなどがある。
【0049】
【化11】

(式中、Rはカルバゾリル基、ピリジル基、チエニル基、インドリル基、フリル基あるいはそれぞれ置換もしくは非置換のフェニル基、スチリル基、ナフチル基、またはアントリル基であって、これらの置換基がジアルキルアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基またはそのエステル、ハロゲン原子、シアノ基、アラルキルアミノ基、N−アルキル−N−アラルキルアミノ基、アミノ基、ニトロ基及びアセチルアミノ基からなる群から選ばれた基を表す。)
一般式(19)で表される化合物には、例えば、1、2−ビス(4−ジエチルアミノスチリル)ベンゼン、1、2−ビス(2、4−ジメトキシスチリル)ベンゼンなどがある。
【0050】
【化12】

(式中、R1は低級アルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、またはベンジル基を表し、R2、R3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基あるいは低級アルキル基またはベンジル基で置換されたアミノ基を表し、nは1または2の整数を表す。)
一般式(20)で表される化合物には、例えば、3−スチリル−9−エチルカルバゾール、3−(4−メトキシスチリル)−9−エチルカルバゾールなどがある。
【0051】
【化13】

(式中、R1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、R2およびR3は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R4は水素原子、低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を表し、また、Arは置換もしくは無置換のフェニル基またはナフチル基を表す。)
一般式(21)で表される化合物には、例えば、4−ジフェニルアミノスチルベン、4−ジベンジルアミノスチルベン、4−ジトリルアミノスチルベン、1−(4−ジフェニルアミノスチリル)ナフタレン、1−(4−ジフェニルアミノスチリル)ナフタレンなどがある。
【0052】
【化14】

(式中、nは0または1の整数、R1は水素原子、アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を表し、Ar1は置換もしくは未置換のアリール基を表し、R5は置換アルキル基を含むアルキル基、あるいは置換もしくは無置換のアリール基を表し、Aは下記一般式(23)、一般式(24)、9−アントリル基または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。
【0053】
【化15】

ここでR2は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子または一般式(25)
【化16】

(ただし、R3およびR4は置換もしくは無置換のアリール基を示し、R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R4は環を形成しても良い)
を表し、mが2以上の時R2は同一でも異なっても良い。また、nが0の時、AとR1は共同で環を形成しても良い。)
一般式(22)で表される化合物には、例えば、4‘−ジフェニルアミノ−α−フェニルスチルベン、4‘−ビス(4−メチルフェニル)アミノ−α−フェニルスチルベンなどがある。
【0054】
【化17】

(式中、R1、R2およびR3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはジアルキルアミノ基を表し、nは0または1を表す。)
一般式(26)で表される化合物には、例えば、1−フェニル−3−(4−ジエチルアミノスチリル)−5−(4−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリンなどがある。
【0055】
【化18】

(式中、R1およびR2は置換アルキル基を含むアルキル基、または置換もしくは未置換のアリール基を表し、Aは置換アミノ基、置換もしくは未置換のアリール基またはアリル基を表す。)
一般式(27)で表される化合物には、例えば、2、5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−N、N−ジフェニルアミノ−5−(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4−ジメチルアミノフェニル)−5−(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどがある。
【0056】
【化19】

(式中、Xは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子を表し、Rは置換アルキル基を含むアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、Aは置換アミノ基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
一般式(28)で表される化合物には、例えば、2−N、N−ジフェニルアミノ−5−(N−エチルカルバゾール−3−イル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4−ジエチルアミノフェニル)−5−(N−エチルカルバゾール−3−イル)−1,3,4−オキサジアゾールなどがある。
【0057】
【化20】

(式中、R1は低級アルキル基、低級アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、R2、R3は同じでも異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、l、m、nは0〜4の整数を表す。)
一般式(29)で表されるベンジジン化合物には、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、3,3’−ジメチル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどがある。
【0058】
【化21】

(式中、R1、R3およびR4は水素原子、アミノ基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、メチレンジオキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、ハロゲン原子または置換もしくは無置換のアリール基を、R2は水素原子、アルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基またはハロゲン原子を表す。ただし、R1、R2、R3およびR4はすべて水素原子である場合は除く。また、k,l,mおよびnは1、2、3または4の整数であり、それぞれが2、3または4の整数の時は、前記R1、R2、R3およびR4は同じでも異なっていても良い。)
一般式(30)で表されるビフェニリルアミン化合物には、例えば、4’−メトキシ−N,N−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4−アミン、4’−メチル−N,N−ビス(4−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4−アミン、4’−メトキシ−N,N−ビス(4−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4−アミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−[1,1‘−ビフェニル]−4−アミンなどがある。
【0059】
【化22】

(式中、Arは置換基を有してもよい炭素数18個以下の縮合多環式炭化水素基を表し、また、R1およびR2は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、置換もしくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良い。nは1もしくは2の整数を表す。)
一般式(31)で表されるトリアリールアミン化合物には、例えば、N,N−ジフェニル−ピレン−1−アミン、N,N−ジ−p−トリル−ピレン−1−アミン、N,N−ジ−p−トリル−1−ナフチルアミン、N,N−ジ(p−トリル)−1−フェナントリルアミン、9,9−ジメチル−2−(ジ−p−トリルアミノ)フルオレン、N,N,N‘,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3−メチルフェニル)−m−フェニレンジアミンなどがある。
【0060】
【化23】

(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表し、Aは一般式(33)を表す。
【0061】
【化24】

ただし、Ar’は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表し、R1およびR2は置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基である。)
一般式(32)で表されるジオレフィン芳香族化合物には、例えば、1、4−ビス(4−ジフェニルアミノスチリル)ベンゼン、1、4−ビス[4−ジ(p−トリル)アミノスチリル]ベンゼンなどがある。
【0062】
【化25】

(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を、Rは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。nは0または1、mは1または2であって、n=0、m=1の場合、ArとRは共同で環を形成しても良い。)
一般式(34)で表されるスチリルピレン化合物には、例えば、1−(4−ジフェニルアミノスチリル)ピレン、1−(N,N−ジ−p−トリル−4−アミノスチリル)ピレンなどがある。
【0063】
なお、電子輸送材料としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−インデノ4H−インデノ[1、2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどを挙げることができ、さらに下記一般式(35)、(36)、(37)及び(38)に挙げる電子輸送物質を好適に使用することができる。
これらの電荷輸送物質は単独または2種類以上混合して用いられる。
【0064】
【化26】

(式中R1、R2およびR3は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、置換もしくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良い。)
【0065】
【化27】

(式中R1、R2は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良い。)
【0066】
【化28】

(式中R1、R2およびR3は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、置換もしくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良い。)
【0067】
【化29】

〔式中、R1は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を示し、R2は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または下記式一般式(39)で表される基を示す。
【化30】

3は、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を示す。〕
【0068】
高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、下記構造式(I)〜(XIII)式で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。これらを以下に例示し、具体例を示す。
【0069】
【化31】

式中、R1,R2,R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5,R6は置換もしくは無置換のアリール基、o,p,qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k,jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記構造式(II)で表される2価基を表す。
【0070】
【化32】

式中、R101,R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−,−S−,−SO−,−SO2−,−CO−,−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)または、下記構造式(III)を表す。
【0071】
【化33】

(式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す。)ここで、R101とR102,R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0072】
【化34】

式中、R7,R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1,Ar2,Ar3は同一あるいは異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0073】
【化35】

式中、R9,R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4,Ar5,Ar6は同一あるいは異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0074】
【化36】

式中、R11,R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7,Ar8,Ar9は同一あるいは異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0075】
【化37】

式中、R13,R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10,Ar11,Ar12は同一あるいは異なるアリレン基、X1,X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0076】
【化38】

式中、R15,R16,R17,R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13,Ar14,Ar15,Ar16は同一あるいは異なるアリレン基、Y1,Y2,Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0077】
【化39】

式中、R19,R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し,R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17,Ar18,Ar19は同一あるいは異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0078】
【化40】

式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20,Ar21,Ar22,Ar23は同一あるいは異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0079】
【化41】

式中、R22,R23,R24,R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24,Ar25,Ar26,Ar27,Ar28は同一あるいは又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0080】
【化42】

式中、R26,R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29,Ar30,Ar31は同一あるいは異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0081】
【化43】

式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5は置換もしくは無置換の芳香環基、Zは芳香環基または―Ar6―Za―Ar6―を表し、Ar6は置換もしくは無置換の芳香環基、ZaはO、Sまたはアルキレン基、RおよびR’は直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。mは0または1を表す。k、j、n及びXは上記構造式(I)式の場合と同じである。
【0082】
また、本発明の一般式(1)で示されるチタニルポルフィラジン誘導体混合物は、電子写真感光体の光導電体として有用であるばかりでなく、太陽電池、光ディスク等のエレクトロニクス分野での電子デバイス用材料として好適に使用することが可能である。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例により説明するが、これにより本発明の実施例の態様が限定されるものではない。尚、「部」は「質量部」を示す。
【0084】
[実施例1]
チタニルポルフィラジン誘導体混合物の製造1
フタロニトリル25.11g(196mmol)、2,3−ジシアノピリジン258.2mg(2mmol)、4−ヒドロキシフタロニトリル288.3mg(2mmol)及び1−オクタノール65.12gにオルトチタン酸テトラ−n−ブチル18.72g(55mmol)、尿素6.01g(100mmol)を加え、アルゴン気流下155〜160℃で24時間加熱撹拌をおこなった。70℃まで放冷後、メタノール80mlを加え30分間還流撹拌をおこなった。室温まで放冷し、濾過して得られた青色粉末をN,N−ジメチルホルムアミド250mlを用いて100℃にて1時間撹拌、濾過を3回、ついでメタノール250mlにて1時間還流撹拌、濾過を3回の溶媒処理をおこなった。最後に減圧加熱乾燥をおこなって青紫色結晶のチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.1)23.76gを得た。
得られたチタニルポルフィラジン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトルを図1に示すが、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、13.2°、20.7°、26.2°に強い回折ピークを示した。また赤外線吸収スペクトル図を図2に示す。
【0085】
[実施例2]
チタニルポルフィラジン誘導体混合物の製造2
実施例1におけるフタロニトリルを23.06g(190mmol)、2,3−ジシアノピリジンを2.06g(16mmol)、4−ヒドロキシフタロニトリルを576.5mg(4mmol)にかえた以外は同様に操作して、青紫色結晶のチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.2)23.25gを得た。
得られたチタニルポルフィラジン誘導体混合物の粉末X線回折スペクトルを図3に示すが、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、13.2°、20.7°、26.2°に強い回折ピークを示した。また赤外線吸収スペクトル図を図4に示す。
【0086】
[実施例3]
チタニルポルフィラジン誘導体混合物の製造3
濃硫酸300gを氷水浴で撹拌冷却し、これに実施例1で得られたチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.1)15.00gを少量ずつ15分かけ添加し溶解させた。1時間撹拌の後、内容物を撹拌している1.5kgの氷水に滴下し、1時間撹拌の後、濾過をおこない、更にイオン交換水にて濾液が中性になるまで撹拌濾過洗浄し、チタニルポルフィラジン誘導体混合物の湿ケーキを得た。この湿ケーキにテトラヒドロフラン600gを加え、室温にて6時間撹拌、濾過して減圧加熱乾燥をおこなって青色結晶のチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.3)13.45gを得た。
これの粉末X線回折図を図5に示すがブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、9.6°、14.9°、24.0°、27.2°に強い回折ピークを示した。また赤外線吸収スペクトル図を図6に示す。
【0087】
[実施例4]
チタニルポルフィラジン誘導体混合物の製造4
実施例3におけるチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.1)を実施例2で得られたチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.2)にかえた以外は同様に操作して、青色結晶のチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.4)13.40gを得た。
これの粉末X線回折図を図7に示すがブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、9.6°、14.9°、24.0°、27.2°に強い回折ピークを示した。また赤外線吸収スペクトル図を図8に示す。
【0088】
[応用例1]
下記組成の混合物をボールミルポットに取り、10mmφのアルミナボールを使用し、48時間ボールミリングして下引層塗布液を調製した。
オイルフリーアルキッド樹脂
(大日本インキ化学製:ベッコライトM6401) 1.5部
メラミン樹脂(大日本インキ化学製:スーパーベッカミンG−821) 1部
二酸化チタン〔石原産業(株)製:タイペークCR−EL〕〕 5部
2−ブタノン 22.5部
この塗布液をアルミ板支持体上に塗布後、130℃で20分間乾燥し、厚さ約2.5μmの下引き層を形成した。
【0089】
次に、チタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.2)3部、ポリビニルブチラール樹脂2部(BX−1:積水化学工業製)、テトラヒドロフラン495部からなる分散液をボールミルポットに取り、2mmφのPSZボールを使用し、3時間ボールミリングし電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を下引層上に塗布後100℃で20分間乾燥し、厚さ約0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0090】
続いて下記構造式化で示される電荷輸送物質(1)を7部、ポリカーボネート樹脂(PCX−5;帝人化成社製)10部、ジクロロメタン83部、シリコーンオイル(KF−50;信越化学社製)0.0002部の電荷輸送層塗布液を調製し、前記電荷発生層上に塗布後110℃で20分間乾燥し、厚さ約25μmの電荷輸送層を形成し、電子写真用感光体を作製した。
【0091】
【化44】

【0092】
以上のようにして得られた電子写真用感光体の静電特性をEPA−8100(川口電気製作所製)を用い、ダイナミック方式(回転速度1000rpm)にて測定した。まず、印加電圧−6KVで20秒間帯電した後、20秒間減衰させた時の表面電位Vo(V)を測定し、ついでハロゲンランプによる白色光を表面照度5.3luxになるようにして露光を行った。感度は、露光時の表面電位が−800(V)から−400(V)までに要する時間を求め、半減露光量Ew1/2(lux・sec)を算出した。また同じ装置にて780nmの単色光を感光体表面での照度が1μW/cm2になるように照射して、感光体の表面電位が−800Vから−400Vまでに要する半減露光量Em1/2(μJ/cm2)をLD光源域(近赤外域)の感度として測定した。Vo、Ew1/2、Em1/2を表1に示す。
【0093】
[応用例2]
応用例1で用いたチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.2)の代わりに実施例3で得られたチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.3)を用いたこと以外は応用例1と同様に操作して感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
[比較例1]
応用例1で用いたチタニルポルフィラジン誘導体混合物(化合物No.2)の代わりに図9の粉末X線回折スペクトルをしめすY型チタニルフタロシアニンを用いたこと以外は応用例1と同様に操作して感光体を作製した。この電子写真用感光体の静電疲労特性をEPA−8100(川口電気製作所製)を用い、ダイナミック方式(回転速度1000rpm)にて測定した。感光体に対して印加電圧約−6KVにて帯電、ハロゲンランプによる白色光露光を繰り返し、通過電流約5.6μA、帯電電位−800(V)に保持しながら60分間(30分間+30分間)おこなった。また応用例1及び2で得られた感光体も同様な条件にて静電疲労特性を測定した。これらの表面電位Vo(V)の変化を図10に示す。
図10より本発明の応用例の感光体は比較例の感光体に比べ、疲労特性における帯電電位の安定性が優れていることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【特許文献1】特開昭49−105536号公報
【特許文献2】特開昭58−21416号公報
【特許文献3】特開昭61−151659号公報
【特許文献4】特開昭48−34189号公報
【特許文献5】特開昭57−14874号公報
【特許文献6】特開昭64−17066号公報
【特許文献7】特開平3−128973号公報
【特許文献8】特開平5−98182号公報
【特許文献9】特許第3123185号公報
【特許文献10】特許第3166293号公報
【特許文献11】特許第2637487号公報
【特許文献12】特許第2637485号公報
【特許文献13】特公平3−27111号公報
【特許文献14】特許第4293694号公報
【特許文献15】特許第4419873号公報
【非特許文献】
【0097】
【非特許文献1】Y. Fujimaki, Proc. IS&T’s 7th International Congress on Advances in Non-Impact Printing Technologies, 1, 269 (1991)
【非特許文献2】K. Daimon, et al. : J. Imaging Sci. Technol., 40, 249 (1996)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタロニトリル、ジシアノピリジン、ヒドロキシ置換フタロニトリル、及びチタン化合物を反応させることにより得られた、下記一般式(1)で表される複数のチタニルポルフィラジン誘導体からなることを特徴とするチタニルポルフィラジン誘導体混合物。
【化1】

(式中、A,B(nは1〜4の整数を表す)は、各々独立に、水素と結合した炭素原子、または窒素原子を表す。ただし、nが同じA,Bからなる群の中では、いずれも水素と結合した炭素原子であるか、もしくはいずれか1つのみが窒素原子を表す。また、nが同じA,Bからなる群の中で、いずれも水素と結合した炭素原子である場合、mは0もしくは1の整数を表し、いずれか1つのみが窒素原子を表す場合、mは0の整数である。)
【請求項2】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、13.2°、20.7°、26.2°に強い回折ピークを有することを特徴とする請求項1に記載のチタニルポルフィラジン誘導体混合物。
【請求項3】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、9.6°、14.9°、24.0°、27.2°に強い回折ピークを有することを特徴とする請求項1記載のチタニルポルフィラジン誘導体混合物。
【請求項4】
フタロニトリル、ジシアノピリジン、ヒドロキシ置換フタロニトリル、及びチタン化合物を反応させることを特徴とする、下記一般式(1)で表される複数のチタニルポルフィラジン誘導体からなるチタニルポルフィラジン誘導体混合物の製造方法。
【化1】

(式中、A,B(nは1〜4の整数を表す)は、各々独立に、水素と結合した炭素原子、または窒素原子を表す。ただし、nが同じA,Bからなる群の中では、いずれも水素と結合した炭素原子であるか、もしくはいずれか1つのみが窒素原子を表す。また、nが同じA,Bからなる群の中で、いずれも水素と結合した炭素原子である場合、mは0もしくは1の整数を表し、いずれか1つのみが窒素原子を表す場合、mは0の整数である。)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−82653(P2013−82653A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223699(P2011−223699)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】