説明

チタン−シリコン分子ふるいの製造方法とその分子ふるいを用いたシクロヘキサノンオキシムの製造方法

【課題】チタン−シリコン分子ふるいの製造方法とその分子ふるいを用いたシクロヘキサノンオキシムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法は、チタン源、シリコン源、テンプレート剤及び水を有する混合物を加熱して、ゲル混合物を形成する工程と、次に、水をそのゲル混合物中に混入する工程と、更に、水を混入したゲル混合物に対して水熱処理を行う工程と、シリコンゲルを混有するゲル混合物を焼成する工程と、を含み、その中、チタン源は、下記式(I)の構造を有することを特徴とする。
【化1】


本発明の分子ふるいを触媒として、シクロヘキサノンオキシムの製造に用いた場合、高い転化率と選択率が得られる利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン−シリコン分子ふるいの製造方法に関し、特に、高反応性を有するチタン−シリコン分子ふるいの製造方法と、その分子ふるいを使用したシクロヘキサノンオキシムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶チタン−シリコン分子ふるいの合成においては、主としてチタン原子をシリカの網状構造内に導入し、MFI構造の結晶形を有するようにし、これをTS-1分子ふるいとも称する。この分子ふるいは、過酸化水素を酸化剤とした酸化反応において触媒として多く利用されている。その製造方法は、特許文献1(米国特許第4410501号)にすでに開示されている。然し、この方法において、最もよく見られる問題は、チタン源の水解速度が速すぎるために、シリコン源の水解速度との不一致が生じ、水の存在する環境下では、この二つの原料を混合して重合化する際に不均一な状態を引き起こし、材料の秩序性を低下させ、ひいてはチタンから鋭錐石(Octahedrite)が形成されやすくなり、最終的には、触媒特性を退化させ、触媒の効能を低下させることである。その中、最も重要な問題は、合成工程中如何にして原料を均一に混合するかにあり、できる限りチタン源とシリコン源との水解速度を同様にし、鋭錐石の形成を回避することである。
【0003】
文献中、例えば、非特許文献1〜4(Chemical Engineering Journal 156(2010)562−570, Journal of Materials Science 37(2002)1959−1965, J.Phys. Chem. A 2009, 113, 15006−15015, Ind. Eng. Chem. Res. 48, 4334−4339, 2009)等において、Ts−1の紫外線スペクトル図の散乱光特性について説明しているが、その中、220nmの吸収ピークは、チタン−酸素−シリコンの結合構造の形成を示し、330nmの吸収ピークは、チタン−酸素−チタンの結合構造の形成を示し、チタン含有量が多いほど、330nmの吸収ピークはより顕著になる。しかるに、Ts−1触媒のMFI構造は主にチタン−酸素−シリコンの結合構造であるので、過去の文献においては、如何にしてチタン−酸素−チタン結合を低減させるかという論議に留まり、その解決策は、いずれもチタン含有量の添加比率を低く調整する方法であった。然し、チタン添加量を低減させた場合に合成されたTs−1分子ふるいは、触媒活性中心となるところが少なくなり、触媒の反応性の低下を引き起こす問題がある。
【0004】
特許文献2(英国特許第2071071号)において、チタン源としてチタンテトラエトキシド(titanium tetraethoxide、以下TEOTと略称する)を用いてTs−1触媒を合成した場合、TEOTの水解速度がシリコン源のシリコンテトラエトキシド(silicon tetraethoxide、以下TEOSと略称する)に比べて速いため、難溶性の酸化チタン構造(即ち、チタン−酸素−チタン結合構造)が形成されやすくなり、実際に分子ふるい構造中に導入されるチタン量を減少させてしまうことが開示されている。又、特許文献1において、前もって過酸化水素により水解し易いチタン源のTEOTを酸化して過酸化チタン溶液とすることにより、難溶性の酸化チタン構造が形成され難くした後、Ts−1触媒の合成工程を続行することが開示されている。しかし、特許文献3(米国特許第6991678B2号)において、アルカリ性条件下では、過酸化チタン溶液は不安定であることから、製造工程中アルカリ性のテンプレート剤と接触すると再度分解してしまい、この問題は依然解決できないと説明されている。
【0005】
又、特許文献4(米国特許第5885546号)において、Ts−1触媒を製造する場合、さらにアセチルアセトンを添加することで、キレート剤の作用によりチタン源の水解速度を緩やかにすることが開示されている。優れたチタン−酸素−シリコン構造のTs−1触媒を形成するためには、特に、チタン源とシリコン源との水解速度をできる限り近づける必要があることが、上記各研究によって取り組まれた方法から明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4410501号
【特許文献2】英国特許第2071071号
【特許文献3】米国特許第6991678B2号
【特許文献4】米国特許第5885546号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chemical Engineering Journal 156(2010)562−570
【非特許文献2】Journal of Materials Science 37(2002)1959−1965
【非特許文献3】J.Phys. Chem. A 2009, 113, 15006−15015
【非特許文献4】Ind. Eng. Chem. Res. 48, 4334−4339, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上記の欠点を克服することが望まれている。又、業界においても活性の高いチタン−シリコン分子ふるいを製造する方法が必要とされ、これにより過酸化水素の使用効率を改善し、業界に利用できることが期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の従来技術の欠点にかんがみ、本発明は、チタン−シリコン分子ふるいの製造方法を提供するものであり、その方法として、下記式(I)で表される構造を有するチタン源、シリコン源、テンプレート剤及び水を有する混合物を準備する工程と、前記混合物を加熱して、ゲル混合物を形成する工程と、前記ゲル混合物中に水を混入する工程と、前記水を混入したゲル混合物に対して水熱処理を行う工程と、前記水熱処理を経たゲル混合物を焼成する工程と、を含む。
【化1】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立してC−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、
【化2】

又は
【化3】

より選択され、その中、RとRは、それぞれ独立してC−Cアルキル基から選択され、且つ、R、R、R及びRの少なくとも二つは、炭素原子数が4より大きい。)
【0010】
又、本発明は、更にシクロヘキサノンオキシムの製造方法をも提供する。その方法としては、上記の方法により製造したチタン−シリコン分子ふるいを触媒に用い、溶剤の存在下で、シクロヘキサノン、アンモニア、過酸化水素を反応させて、シクロヘキサノンオキシムを製造する。
【0011】
具体的には、本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法において、主に、窒素封入中、低温下でシリコン源とチタン源とを攪拌混合し、次に、テンプレート剤溶液(本発明においては、アルコール溶液、又は水溶液である)を反応系に添加し、その後、一滴ずつ水を加え、アルコールを除去して、水を加える工程の後、水を混入したゲル混合物をテフロン内張りを施したステンレス製のオートクレーブに密封して水熱処理を行い、その後固体と液体とを分離し、水熱処理したゲル混合物を焼成する。
【0012】
本発明の一つの具体的な実施例において、上記式(I)の構造中、RはC−C10アルコキシ基を表し、R、R及びRは、すべてC−C10アルキル基を表す。或いは、RがC−C10アルキル基を表す場合、RとRはそれぞれ独立してC−C10ヒドロキシアルキル基から選択され、且つ、RはC−C10アルキル基を表す。
【0013】
本発明の他の具体的な実施例において、上記式(I)の構造中、RがC−Cアルコキシ基を表す場合、RとRはそれぞれ独立して
【化4】

又は
【化5】

より選択され、且つ、RはC−Cアルキル基を表す。
【0014】
例えば、RはC−Cアルコキシ基を表し、RとRはいずれも
【化6】

を表し、且つ、RはC−Cアルキル基を表す。或いは、RはC−Cアルコキシ基を表し、RとRはいずれも
【化7】

を表し、且つ、RはC−Cアルキル基を表す。
【0015】
更に、例を挙げて説明すると、チタン源の実例としては、例えば、チタン(IV)テトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)(Titanium ethylhexoxide)、ジ(2−エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン(Titanium di(2−ethylhexoxy)bis(2−ethyl−1,3−hexanediolate))、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン(Titanium di−isopropoxide bis(acetylacetonate))、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド)(Titanium bis(tri−ethanolamine)di−isopropoxide)、又は上記の二つ以上の混合物が挙げられる。
【0016】
本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造においては、シリコン源としてテトラアルキルシリケート、ポリエトキシシラン、又はそれらの混合物が使用される。テトラアルキルシリケートとして、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラプロピルシリケート、テトラブチルシリケートなどが挙げられる。ポリエトキシシランとしては、例えば、ES−28(n=1〜2)、ES−32(n=3〜4)及びES−40(n=4〜5)(Colcoat(株)社製品)が挙げられる。
【0017】
又、チタン源とシリコン源とのモル比は0.005:1〜0.06:1の範囲であり、テンプレート剤とシリコンとのモル比は0.1:1〜0.5:1の範囲である。
【0018】
本発明において、チタン−シリコン分子ふるいの製造に使用されるテンプレート剤は、テトラプロピルアンモニウム水酸化物を含み、例えば、アルコール系溶剤又は水中に溶解した形態により提供される。例を挙げると、テトラプロピルアンモニウム水酸化物をアルコール又は水中に溶かし、アニオン交換樹脂を通過させて製造し、そのアルコール系溶剤としては、炭素原子数1〜8個の直鎖又は分岐鎖のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、第三ブタノールなどのアルコールであってもよく、或いはこれらからなる群の1種又は2種以上であってもよく、そのテンプレート剤のアルコール溶液の濃度は5〜50重量%である。
【0019】
本発明の製造方法において、上記の溶剤は混合物を加熱して除去される。且つ、そのゲル混合物中に混入する水の中にシリカを含んでもよく、そのシリカは水とそれ自体の0.1〜50重量%を占める。又、シリカを含有する水とゲル混合物との重量比は0.001:1〜0.5:1の範囲である。
【0020】
具体的には、シリカを含有する水は、例えばシリカゲル水溶液(シリコンゾルとも称する)であり、例えばLudox AS−40、Ludox AS−30、Ludox TM−40、Ludox TM−50、Ludox AM−30、Ludox HS−30、Ludox HS−40(Dupont(株)社製品)、又は、SNOWTEX−40、SNOWTEX−50、SNOWTEX−C、SNOWTEX−N、SNOWTEX−20L、SNOWTEX−ZL、SNOWTEX−UP(日産化学(株)社製品)、又はその他の類似製品が使用されるが、上記に限定されるものではない。
【0021】
本発明に係るシクロヘキサノンオキシムの製造方法は、主に、1気圧下又は更に高い気圧下、40〜110℃の範囲の温度で、好ましくは50〜90℃の温度で、反応が行われる。その反応中、使用される分子ふるい触媒は反応物(シクロヘキサノン、アンモニア及び過酸化水素)総重量の0.1〜10重量%を占め、好ましくは1〜5重量%を占める。アンモニアとシクロヘキサンとのモル比は1.2:1〜2:1の範囲であり、好ましくは1.4:1〜1.8:1の範囲であり、過酸化水素とシクロヘキサノンとのモル比は0.7:1〜2.0:1の範囲であり、好ましくは1.0:1〜1.5:1の範囲である。使用される過酸化水素の濃度は30〜50重量%の範囲であり、この過酸化水素の供与は反応時間の増加にともない、徐々に上記反応系中に添加される。本発明のシクロヘキサノンオキシムを製造する反応は、溶剤の存在下で行われ、一般には極性溶剤が使用され、例えば、アルコール類、ケトン類及び水などからなる群の1種又は2種以上が使用され、その中、アルコール系、特に、第三ブタノールが好ましい。
【0022】
本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法によって得られた分子ふるいを触媒として、シクロヘキサノンオキシムを製造した場合、高い転化率と選択率が得られ、特に、高いシクロヘキサノンオキシムと過酸化水素の選択率が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、特定の具体的実例により本発明の実施形態について説明する。これらの技術を熟知する者は、本発明の明細書の開示内容により容易に本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、その他の異なる形態によっても実施可能であり、本発明の主旨を逸脱しない限り、更に異なる修正と変更を施すことができる。
【0024】
比較例1
容量500mlの丸底フラスコに、真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中に、テトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gをチタン源として加え、温度を5℃に冷却し、温度が均衡になった後、テトラエチルシリケート30gを一滴ずつ丸底フラスコ内に加え、完了後1時間攪拌した。次に、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%)56gを一滴ずつ丸底フラスコ内に加え、完了後、更に1時間攪拌を続けた。次に、等圧原料仕込み管を経由して水44.8gを徐々に丸底フラスコ内に添加し、1時間攪拌を続けた。反応系が室温に戻った後、更に1時間攪拌し、最後に85℃で2時間かけてアルコールを除去し、ゲル混合物を形成した。次に、水80gを加えて、1時間攪拌して混合溶液を得た。この得られた混合液をオートクレーブに封入し、180℃で120時間水熱処理を行い、固体と液体とを分離した後、中性になるまで固体部分を純水で洗浄した。100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して、対照例となる触媒サンプル1を得た。
【0025】
実施例1
先ず、容量500mlの丸底フラスコに、真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ内に、チタン(IV)テトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)3.24gをチタン源として加え、温度を5℃に冷却し、温度が均衡になった後、テトラエチルシリケート30gを一滴ずつ丸底フラスコ内に加え、完了後1時間攪拌した。テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%)56gを一滴ずつ丸底フラスコ内に加え、完了後、更に1時間攪拌を続けた。次に、等圧原料仕込み管を経由して水44.8gを徐々に丸底フラスコ内に添加し、1時間攪拌を続けた。反応系が室温に戻った後、更に1時間攪拌し、最後に85℃で2時間かけてアルコールを除去し、ゲル混合物を形成した。次に、水80gを加えて、1時間攪拌して混合溶液を得た。この得られた混合溶液をオートクレーブに封入し、180℃で120時間水熱処理を行い、固体と液体とを分離した後、中性になるまで固体部分を純水で洗浄した。100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して、実施例の触媒サンプル1を得た。
【0026】
実施例2〜4
チタン源として、それぞれジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンのイソプロパノール溶液(75重量%)2.84g、ジ(2−エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタンのノルマルブタノール溶液(67重量%)5.26g、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイドのイソプロパノール溶液(80重量%)3.40gを使用した以外は、実施例1と同様の製造工程により、実施例のサンプル2〜4を得た。
【0027】
実施例5
先ず、容量500mlの丸底フラスコに、真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中に、チタン(IV)テトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)3.24gをチタン源として加え、温度を5℃に冷却し、温度が均衡になった後、テトラエチルシリケート30gを一滴ずつ丸底フラスコ内に加え、完了後1時間攪拌した。テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%)56gを一滴ずつ丸底フラスコ内に加え、完了後、更に1時間攪拌した。次に、等圧原料仕込み管を経由して水44.8gを徐々に丸底フラスコ内に添加し、1時間攪拌を続けた。反応系が室温に戻った後、更に1時間攪拌し、最後に85℃で2時間かけてアルコールを除去し、ゲル混合物を形成した。次に、Ludox AS−40のシリコンゾル10.8gを73.5gの水中に分散させ、シリコンゾル溶液を形成し、更にアルコールを除去した丸底フラスコ内のゲル混合物とシリコンゾル溶液とを混合し、1時間攪拌して混合液を得た。この得られた混合液をオートクレーブに封入し、180℃で120時間水熱処理を行い、固体と液体とを分離した後、中性になるまで固体部分を純水で洗浄した。100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して、実施例の触媒サンプル5を得た。
【0028】
実施例6〜8
チタン源として、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンのイソプロパノール溶液(75重量%)2.84g、ジ(2−エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタンのノルマルブタノール溶液(67重量%)5.26g、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイドのイソプロパノール溶液(80重量%)3.40gをそれぞれ使用した以外は、実施例5と同様の製造工程により、実施例の触媒サンプル6〜8を得た。
【0029】
実施例9
先ず、500ml容量の丸底フラスコに、真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中に、ジ(2−エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン(67重量%)5.26gをチタン源として加え、温度を5℃に冷却し、温度が均衡になった後、ポリエトキシシランのES−28(30.9g)を一滴ずつ丸底フラスコ内に加え、完了後1時間攪拌した。テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%)56gを一滴ずつ丸底フラスコ内に加え、完了後、更に1時間攪拌した。次に、等圧原料仕込み管を経由して水44.8gを丸底フラスコ内に添加し、1時間攪拌を続けた。反応系が室温に戻った後、更に1時間攪拌し、最後に85℃で2時間かけてアルコールを除去し、ゲル混合物を形成した。次に、Ludox AS−40のシリコンゾル10.8gを73.5gの水中に分散させ、シリコンゾル溶液を形成し、更にアルコールを除去した丸底フラスコ内のゲル混合物とシリコンゾル溶液とを混合し、1時間攪拌して混合液を得た。この得られた混合液をオートクレーブに封入し、180℃で120時間水熱処理を行い、固体と液体とを分離した後、中性になるまで固体部分を純水で洗浄した。次に100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して、実施例の触媒サンプル9を得た。
【0030】
実施例10
チタン源として、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイドのイソプロパノール溶液(80重量%)3.40gを使用した以外は、実施例9と同様の製造工程により、実施例の触媒サンプル10を得た。
【0031】
実施例11
本実施例は、上記の比較例1と実施例1〜10において製造されたチタン−シリコン分子ふるいのサンプルを触媒として、シクロヘキサノンオキシムを製造し、その活性を評価したものである。
【0032】
先ず、三口フラスコ中に触媒サンプル0.55gを入れ、シクロヘキサノン5g、アンモニア水(28重量%)5.43gを加え、三口フラスコに冷却管と攪拌装置を取り付けた。反応温度を60℃まで上昇させた後、反応時間が進むに従い、過酸化水素の水溶液(35重量%)5.43gを加え、シクロヘキサノンオキシムの製造反応を行った。過酸化水素水溶液の仕込み時間は5時間であり、完了後、更に反応を1時間続けた。最後に反応が完了した後、それぞれの触媒を反応液から分離し、この分離後に得たそれぞれの反応液についてガスクロマトグラフィと滴定分析を行い、その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記をまとめると、本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法は確かに活性の高いチタン−シリコン分子ふるい触媒を製造することができる。本発明の製造方法により製造された分子ふるいは、例えば、シクロヘキサノンオキシムの製造において、触媒として適用され、高い転化率と選択率、特に、高いシクロヘキサノンオキシムと過酸化水素の選択率を示す利点を有する。
【0035】
上記の明細書と実施例は、本発明の原理と効果を例示的に説明するに過ぎないものであり、本発明を制限するものではない。本発明の特許権の保護範囲は、特許請求の範囲に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構造を有するチタン源と、シリコン源と、テンプレート剤と、水とを有する混合物を準備する工程と、
前記混合物を加熱して、ゲル混合物を形成する工程と、
前記ゲル混合物中に水を混入する工程と、
前記水を混入したゲル混合物に対して水熱処理を行う工程と、
前記水熱処理を経たゲル混合物を焼成する工程と、
を含むチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【化1】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立してC−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、
【化2】

又は
【化3】

から選択され、その中、RとRは、それぞれ独立してC−Cアルキル基から選択され、且つ、R、R、R及びRの少なくとも二つは炭素原子数が4より大きい。)。
【請求項2】
前記Rは、C−C10アルコキシ基を表し、前記R、R及びRは、すべてC−C10アルキル基を表す請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項3】
前記Rは、C−C10アルキル基を表し、前記R及びRは、それぞれ独立してC−C10ヒドロキシアルキル基より選択され、且つ、RはC−C10アルキル基を表す請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項4】
前記Rは、C−Cアルコキシ基を表し、前記R及びRは、それぞれ独立して
【化4】

又は
【化5】

から選択され、且つ、前記RはC−Cアルキル基を表す請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項5】
前記Rは、C−Cアルコキシ基を表し、前記R及びRは、すべて
【化6】

を表し、且つ、前記RはC−Cアルキル基を表す請求項4に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項6】
前記Rは、C−Cアルコキシ基を表し、前記R及びRは、すべて
【化7】

を表し、前記R4はC−Cアルキル基を表す請求項4に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項7】
前記シリコン源は、テトラアルキルシリケート、ポリエトキシシラン又はそれらの混合物である請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項8】
前記テンプレート剤は、テトラプロピルアンモニウム水酸化物である請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項9】
前記テンプレート剤は、溶剤を含有し、且つ、前記溶剤はアルコール系溶剤である請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項10】
前記アルコール系溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、第三ブタノールからなる群より選択された一種又は二種以上であり、且つ、前記テンプレート剤の濃度は5〜50重量%の範囲である請求項9に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項11】
前記溶剤は、前記混合物を加熱することで除去される請求項9に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項12】
前記ゲル混合物に混入された水にはシリカが含まれており、且つ、前記シリカは、水とそれ自体の0.1〜50重量%を占める請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項13】
前記シリカを含有する水と前記ゲル混合物との重量比は0.001:1〜0.5:1の範囲である請求項12に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項14】
前記チタン源と前記シリコン源とのモル比は0.005:1〜0.06:1の範囲であり、前記テンプレート剤とシリコンとのモル比は、0.1:1〜0.5:1の範囲である請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の製造方法により製造したチタン−シリコン分子ふるいを触媒として、溶剤の共存下で、シクロヘキサノン、アンモニア及び過酸化水素を反応させてシクロヘキサノンオキシムを製造するシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項16】
前記アンモニアと前記シクロヘキサノンとのモル比は1.2:1〜2:1の範囲である請求項15に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項17】
前記過酸化水素と前記シクロヘキサノンとのモル比は0.7:1〜2.0:1の範囲である請求項15に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項18】
前記溶剤は極性溶剤であり、且つ、前記極性溶剤は、アルコール、ケトン及び水からなる群より選択された一種又は二種以上である請求項15に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項19】
前記溶剤は、第三ブタノールである請求項15に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項20】
前記触媒の使用量は、前記シクロヘキサノン、アンモニア及び過酸化水素の総重量の0.1〜10重量%を占める請求項15に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。

【公開番号】特開2012−224538(P2012−224538A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89508(P2012−89508)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(599004841)中國石油化學工業開發股▲分▼有限公司 (7)
【Fターム(参考)】