説明

チタン化合物およびイミンの不斉シアノ化方法

本発明は、水とチタンアルコキシドを接触させて得られる反応混合物を、下記一般式(a)(式中、R、R、R、およびRは、独立して水素原子、アルキル基などであり、Aは、不斉炭素原子または軸不斉を有する2つ以上の炭素原子を有する基を表す)で表わされる光学活性配位子と接触させることによって生成される、不斉合成反応のチタン触媒に関する。本発明はさらに、イミン類を不斉シアノ化する方法に関し、該方法はチタン触媒の存在下、イミンをシアノ化剤と反応させることを含む。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン化合物、およびそのようなチタン化合物を用いるイミンの不斉シアノ化反応によって光学活性α−アミノニトリルを生成する方法に関する。光学活性α−アミノニトリルは、医薬品およびファインケミカルの合成において中間体として有用である。
【背景技術】
【0002】
α−アミノ酸を合成する最も古く、効率的で経済的な方法の1つは、シアン化物源の存在下、アルデヒドまたはケトンとアンモニア(または等価物)との3成分ストレッカー反応を使用する方法である。図1Aの反応に示されるとおり、結果として生じるアミノニトリルを続いて加水分解することにより、対応するα−アミノ酸が生じる。図1Bは、一般に普及し広く用いられているα−アミノ酸合成の代替経路である改変ストレッカー反応を示すものであり、ここではアンモニアの代わりにアミンが用いられ、イミンの前形成の後にヒドロシアノ化が続く。
【0003】
ストレッカー反応の効率性および汎用性にもかかわらず、1990年代半ばまで、この反応の非触媒不斉型もイミンの触媒不斉ヒドロシアノ化も報告されていなかった。その後、光学活性α−アミノ酸、特に非タンパク質構成α−アミノ酸を合成するための効率的な不斉方法の開発にはかなりの進歩があった。適切なシアン化物源の存在下、対応する不斉α−アミノニトリルを生成するためのイミンの不斉ヒドロシアノ化において、有機金属触媒および有機触媒も共に用いられてきた。良好ないし優れた結果が報告されているが、これらの触媒系の多くは、多段階合成、ならびに低温などの厳密な条件を経て調製される、高価な配位子および触媒を利用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、化合物および方法の改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水とチタンアルコキシドとを接触させて得られる反応混合物を、下記一般式(a)で表わされる光学活性配位子と接触させることによって生成される、不斉合成反応に用いるチタン触媒を提供する。
【0006】
【化1】

【0007】
上記式中、R、R、R、およびRは、独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基であり、それぞれ置換基を有してもよく、あるいはR、R、R、およびRの2つ以上は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、Aは、不斉炭素原子または軸不斉を有する2つ以上の炭素原子を有する基を表す。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記一般式(a)で表わされる光学活性配位子は、下記一般式(b)で表わすことができる。
【0009】
【化2】

【0010】
上記式中、R、R、R、およびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、またはアミノカルボニル基であり、それぞれ置換基を有してもよく、あるいはR、R、R、およびRの2つ以上は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、R、R、R、およびRの少なくとも1つは異なる基であり、と示される炭素原子の両方または少なくとも1つは不斉中心となり、(NH)および(OH)と表わされる部分はAに属さず、それぞれ前記一般式(a)においてAが結合している基に対応するアミノ基およびヒドロキシル基を表し、R、R、R、およびRは、独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基であり、それらは置換基を有してもよく、それぞれ共に結合して環を形成してもよい。
【0011】
本発明はまた、本発明のチタン触媒の存在下、イミンをシアノ化剤と反応させることを含む、イミンを不斉シアノ化する方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、イミンは、下記一般式(c)で表わされる。
【0013】
【化3】

【0014】
上記式中、RおよびR10は、独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、または非芳香族複素環基であり、それぞれ置換基を有してもよく、RはR10と異なり、RおよびR10は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、または非芳香族複素環基、ホスホナート、ホスフィノイル、ホスフィンオキシド、アルコキシカルボニル、スルフィニル、またはスルホキシ基であり、それぞれ置換基を有してもよく、R11は、RまたはR10と結合して炭素鎖を介して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよい。
【0015】
イミンを不斉シアノ化する方法は、触媒の存在下、イミンとシアノ化剤とを反応させて光学活性α−アミノニトリルを形成することを含んでもよく、ここで触媒はイミンに対して約0.5から30mol%の量で存在し、チタンアルコキシド前触媒(たとえば、水をチタンアルコキシドモノマーと接触させることによって調製される部分加水分解チタンアルコキシド前触媒)とチタンをライゲートする能力を有する光学活性化合物との相互作用による生成物を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、触媒はイミンに対して約1から30mol%の量で存在する。いくつかの実施形態において、触媒はイミンに対して10mol%未満(たとえば、2.5から5.0mol%)の量で存在する。この方法は、特定の適用例に適した任意の温度および任意の反応時間で行ってもよい。いくつかの実施形態において、この方法は、−78℃から80℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、この方法は、温度0℃より高くおよび/または反応時間6時間未満または2時間未満で、触媒の存在下、イミンとシアノ化剤を反応させることを含んでもよく、収率が少なくとも50%、あるいは一部の例では、高収率ないし定量的収率であり、光学活性α−アミノニトリルは、良好ないし優れた鏡像体過剰率(たとえば、少なくとも90%)で得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】ストレッカー反応、および結果として生じるアミノニトリルを続いて加水分解することによる、α−アミノ酸の合成を示す図である。
【図1B】改変ストレッカー反応、および結果として生じるアミノニトリルを続いて加水分解することによる、α−アミノ酸の合成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による、本発明の光学活性チタン触媒およびトリメチルシリルシアニドの存在下でのN−ベンジルベンジリジンアミンの不斉シアノ化を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による、光学活性α−アミノニトリルのワンポット合成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による、光学活性チアン触媒、トリメチルシリルシアニドおよび、シアン化水素の存在下、ベンジルイミンの不斉シアノ化を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による、光学活性チアン触媒および、トリメチルシリルシアニドとシアン化水素との混合物の存在下、ベンジルイミンの不斉シアノ化を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による、光学活性チアン触媒、トリメチルシリルシアニドおよび、シアン化水素の存在下、ベンジルイミンの不斉シアノ化を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による、光学活性チアン触媒、トリメチルシリルシアニドおよび、シアン化水素の存在下、ベンゾフェノンイミンの不斉シアノ化を示す図である。
【0018】
本発明の他の態様、実施形態、および特徴は、添付の図面を併せて考慮することにより、以下の詳細な説明から明らかとなる。添付の図は図式的なものであり、一定の縮尺で描くことを意図していない。明確にするために、すべての図においてすべての成分が表示されているわけではなく、当業者が本発明を理解するために図解が必要とされない場合、本発明の各実施形態のすべての成分を示しているわけではない。本明細書に参照により組み入れられるすべての特許出願および特許は、その全体を参照により組み入れる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書に従うことになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、チタン化合物、およびそのようなチタン化合物を用いるイミンの不斉シアノ化反応によって光学活性α−アミノニトリルを生成する方法に関する。
【0020】
本発明の化合物(たとえば、触媒)および方法は、炭素−炭素結合形成反応を含む不斉合成反応に有用なチタン触媒を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、光学活性α−アミノニトリルを合成するためのイミンの不斉シアノ化などの、不斉ストレッカー型反応の触媒および関連する方法を提供する。本発明は、容易に入手できる構成成分から誘導される安価で安定な配位子をベースとする効率的な触媒を提供する。本発明の触媒および方法は、高収率(たとえば、>99%)および優れたエナンチオ選択性(たとえば、>90%、>95%、>98%)を達成するために、室温などの穏やかな反応条件下および/または周囲条件下で用いてもよい。
【0021】
本発明は、効率的な触媒、ならびに従来の方法に比べて少量の触媒および短い反応時間を伴う関連する方法を用いて、光学活性α−アミノニトリルを高収率および高光学純度で生成する可能性があるという発見に関する。光学活性α−アミノニトリルは、医薬品、ファインケミカルなどの合成において有用な中間体である。いくつかの実施形態において、光学活性α−アミノニトリルは、α−アミノ酸の合成において有用な中間体である。特定の一連の実施形態において、本発明は、たとえば、3座N−サリチル−β−アミノアルコールなどの光学活性配位子の存在下、部分加水分解チタンアルコキシド触媒系を用いて光学活性α−アミノニトリルを合成するためのイミンの不斉シアノ化に関する。本明細書に記載のとおり、本発明は、不斉合成反応に用いるチタン触媒を提供する。チタン触媒は、水または水源をチタンアルコキシドと化合して反応混合物を形成することによって生成してもよく、それを次いで光学活性配位子と接触させてもよい。
【0022】
以下の用語は、別段の指示のないかぎり、本発明に言及される任意の基を指す。
用語「アルキル基」は、1から20個の炭素原子を有する、直鎖状、分岐状、または環状アルキル基を指す。本発明の一実施形態において、アルキル基は、1から15個の炭素原子、たとえば1から10個の炭素原子を有してもよい。直鎖状のアルキル基の例には、これに限定されるものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。分岐状のアルキル基の例には、これに限定されるものではないが、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、アミル基などが挙げられる。環状アルキル基の例は、これに限定されるものではないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などであってもよい。
【0023】
用語「アルケニル基」は、2から20個の炭素原子、たとえば1から10個の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素−炭素2重結合が存在する、直鎖状、分岐状、または環状アルケニル基を指す。アルケニル基の例には、これに限定されるものではないが、ビニル基、アリル基、クロチル基、シクロヘキセニル基、イソプロペニル基などが挙げられる。
用語「アルキニル基」は、2から20個の炭素原子、たとえば2から10個の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素−炭素3重結合が存在する、アルキニル基を指す。例には、これに限定されるものではないが、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基などが挙げられる。
【0024】
用語「アルコキシ」は、1から20個の炭素原子、たとえば1から10個の炭素原子を有し、アルキル基が負電荷酸素原子に結合している、直鎖状、分岐状、または環状アルコキシ基を指す。例には、これに限定されるものではないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基などが挙げられる。
【0025】
用語「アリール基」は、6から20個の炭素原子を有する単純芳香環から誘導された任意の官能基または置換基に関連するアリール基を指す。本発明の一実施形態において、アリール基は6から10個の炭素原子を有してもよい。例には、これに限定されるものではないが、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などが挙げられる。
【0026】
用語「アリールオキシ基」は、6から20個の炭素原子、たとえば6から10個の炭素原子を有し、アリール基が負電荷酸素原子に結合しているアリールオキシ基を指す。例には、これに限定されるものではないが、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0027】
用語「芳香族複素環基」は、3から20個の炭素原子、たとえば1から10個の炭素原子を有し、芳香族基の少なくとも1つの炭素原子が窒素、酸素、または硫黄などのヘテロ原子で置き換えられている芳香族複素環基を指す。例には、これに限定されるものではないが、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基などが挙げられる。
【0028】
用語「非芳香族複素環基」は、4から20個の炭素原子、たとえば4から10個の炭素原子を有し、非芳香族基の少なくとも1つの炭素原子が窒素、酸素、または硫黄などのヘテロ原子で置き換えられている非芳香族複素環基を指す。例には、これに限定されるものではないが、ピロリジル基、ピペリジル基、テトラヒドロフリル基などが挙げられる。
【0029】
用語「アシル基」は、2から20個の炭素原子、たとえば1から10個の炭素原子を有するアルキルカルボニル基、および6から20個の炭素原子、たとえば1から10個の炭素原子を有するアリールカルボニル基を指す。
【0030】
用語「アルキルカルボニル基」は、これに限定されるものではないが、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基などを指す。
用語「アリールカルボニル基」は、これに限定されるものではないが、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントリルカルボニル基などを指す。
【0031】
用語「アルコキシカルボニル基」は、2から20個の炭素原子、たとえば2から10個の炭素原子を有する、直鎖状、分岐状、または環状アルコキシカルボニル基を指す。例には、これに限定されるものではないが、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、L−メンチルオキシカルボニル基、D−メンチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0032】
用語「アリールオキシカルボニル基」は、7から20個の炭素原子、たとえば7から15個の炭素原子を有するアリールオキシカルボニル基を指す。例には、これに限定されるものではないが、フェノキシカルボニル基、α−ナフチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0033】
用語「アミノカルボニル基」は、水素原子、アルキル基、アリール基を有するアミノカルボニル基を指し、窒素原子に結合するカルボニル基以外の2つの置換基は共に結合して環を形成してもよい。例には、これに限定されるものではないが、イソプロピルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、t−ブチルアミノカルボニル基、t−アミルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジイソプロピルアミノカルボニル基、ジイソブチルアミノカルボニル基、ジシクロヘキシルアミノカルボニル基、t−ブチルイソプロピルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ピロリジルカルボニル基、ピペリジルカルボニル基、インドールカルボニル基などが挙げられる。
【0034】
用語「アミノ基」は、重要な原子として窒素を含有する有機化合物およびある種の官能基を指す。この用語は、水素原子、直鎖状、分岐状、または環状アルキル基を有するアミノ基、あるいはアリール基を有するアミノ基を指す。窒素原子に結合する2つの置換基は共に結合して環を形成することができる。アルキル基またはアリール基を有するアミノ基の例には、これに限定されるものではないが、イソプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、t−ブチルアミノ基、t−アミルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、t−ブチルイソプロピルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、インドール基などが挙げられる。
【0035】
用語「ハロゲン原子」は、F、Cl、Br、Iなどを指す。
【0036】
用語「シリル基」は、2から20個の炭素原子を有するシリル基を指し、シリル基はアルキルのケイ素類似体とみなすことができる。例には、これに限定されるものではないが、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0037】
用語「シロキシ基」は、2から20個の炭素原子を有するシロキシ基を指す。例には、これに限定されるものではないが、トリメチルシロキシ基、t−ブチルジメチルシロキシ基、t−ブチルジフェニルシロキシ基などが挙げられる。
【0038】
上述の基はすべて1つまたは複数の置換基を場合により有することができる。本発明において「1つまたは複数の置換基を有する」とは、上記化合物の少なくとも1つの水素原子がF、Cl、Br、I、OH、CN、NO、NH、SO、アルキル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、酸素含有基、窒素含有基、ケイ素含有基などで置き換えられていてもよいことを意味する。
【0039】
酸素含有基の例には、これに限定されるものではないが、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基などの1から20個の炭素原子を有する基が挙げられる。窒素含有基の例には、これに限定されるものではないが、1から20個の炭素原子を有するアミノ基、1から20個の炭素原子を有するアミド基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。ケイ素含有基の例には、これに限定されるものではないが、シリル基、シリルオキシ基などの1から20個の炭素原子を有する基が挙げられる。
【0040】
置換アルキル基の例には、これに限定されるものではないが、クロロメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロヘキシル、置換または非置換アラルキル基、たとえばベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、4−メトキシベンジル基、2−フェニルエチル基、クミル基、α−ナフチルメチル、2−ピリジルメチル基、2−フルフリル基、3−フルフリル基、2−チエニルメチル基、2−テトラヒドロフルフリル基、3−テトラヒドロフルフリル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、フェノキシエチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、L−メンチルオキシメチル基、D−メンチルオキシメチル基、フェノキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、2,4,6−トリメチルベンゾイルオキシメチル、2−(ジメチルアミノ)エチル基、3−(ジフェニルアミノ)プロピル基、2−(トリメチルシロキシ)エチル基などが挙げられる。
【0041】
置換アルケニル基の例には、これに限定されるものではないが、2−クロロビニル基、2,2−ジクロロビニル基、3−クロロイソプロペニル基などが挙げられる。
【0042】
置換アルキニル基の例には、これに限定されるものではないが、3−クロロ−1−プロピニル基、2−フェニルエチニル基、3−フェニル−2−プロピニル基、2−(2−ピリジルエチニル)基、2−テトラヒドロフリルエチニル基、2−メトキシエチニル基、2−フェノキシエチニル基、2−(ジメチルアミノ)エチニル基、3−(ジフェニルアミノ)プロピニル基、2−(トリメチルシロキシ)エチニル基などが挙げられる。
【0043】
置換アルコキシ基の例には、これに限定されるものではないが、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、2−ピリジルメトキシ基、フルフリルオキシ基、2−チエニルメトキシ基、テトラヒドロフルフリルオキシ基などが挙げられる。
【0044】
置換アリール基の例には、これに限定されるものではないが、4−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、たとえば3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、2,6−ジ−t−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジイソプロポキシフェニル基、2,4,6−トリイソプロポキシフェニル基、2,6−ジフェノキシフェニル基、4−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−ニトロフェニル基、3,5−ビス(トリメチルシリル)フェニル基、3,5−ビス(トリメチルシロキシ)フェニル基などが挙げられる。
【0045】
置換アリールオキシ基の例には、これに限定されるものではないが、ペンタフルオロフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、2,6−ジメトキシフェノキシ基、2,6−ジイソプロポキシフェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、4−シアノフェノキシ基、2,6ビス(トリメチルシリル)フェノキシ基、2,6−ビス(トリメチルシロキシ)フェノキシ基などが挙げられる。
【0046】
置換芳香族複素環基の例には、これに限定されるものではないが、N−メチルイミダゾリル基、4,5−ジメチル−2−フリル基、5−ブトキシカルボニル−2−フリル基、5−ブチルアミノカルボニル−2−フリル基などが挙げられる。
【0047】
置換非芳香族複素環基の例には、これに限定されるものではないが、3−メチル−2−テトラヒドロフラニル基、N−フェニル−4−ピペリジル基、3−メトキシ−2−ピロリジル基などが挙げられる。
【0048】
置換アルキルカルボニル基の例には、これに限定されるものではないが、トリフルオロアセチル基などを含むことができるが挙げられる。
【0049】
置換アリールカルボニル基の例には、これに限定されるものではないが、ペンタフルオロベンゾイル基、3,5−ジメチルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,6−ジイソプロポキシベンゾイル基、4−(ジメチルアミノ)ベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、2,6−ビス(トリメチルシリル)ベンゾイル基、2,6−ビス(トリメチルシロキシ)ベンゾイル基などが挙げられる。
ハロゲン原子を有するアルコキシカルボニル基の例には、2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエトキシカルボニル基、クミルオキシカルボニル基、α−ナフチルメトキシカルボニル基、2−ピリジルメトキシカルボニル基、フルフリルオキシカルボニル基、2−チエニルメトキシカルボニル基、テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル基などが含まれる。
【0050】
置換アリールオキシカルボニル基の例には、これに限定されるものではないが、ペンタフルオロフェノキシカルボニル基、2,6−ジメチルフェノキシカルボニル基、2,4,6−トリメチルフェノキシカルボニル基、2,6−ジメトキシフェノキシカルボニル基、2,6−ジイソプロポキシフェノキシカルボニル基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシカルボニル基、4−シアノフェノキシカルボニル基、2,6−ビス(トリメチルシリル)フェノキシカルボニル基、2,6−ビス(トリメチルシロキシ)フェノキシカルボニル基などが挙げられる。
【0051】
置換アミノカルボニル基の例には、これに限定されるものではないが、2−クロロエチルアミノカルボニル基、ペルフルオロエチルアミノカルボニル基、4−クロロフェニルアミノカルボニル基、ペンタフルオロフェニルアミノカルボニル基、ベンジルアミノカルボニル基、2−フェニルエチルアミノカルボニル基、α−ナフチルメチルアミノカルボニル、および2,4,6−トリメチルフェニルアミノカルボニル基などが挙げられる。
【0052】
置換アミノ基の例には、これに限定されるものではないが、2,2,2−トリクロロエチルアミノ基、ペルフルオロエチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、α−ナフチルメチルアミノ、および2,4,6−トリメチルフェニルアミノ基などが挙げられる。
【0053】
一態様において、本発明は、イミン類の不斉シアノ化などの不斉合成反応のチタン触媒に関する。チタン触媒は、チタンアルコキシドを含む反応混合物を光学活性配位子と接触させることによって生成してもよい。チタンアルコキシドを含む反応混合物は、水、チタンアルコキシド、場合により追加成分、たとえば溶媒、加水分解剤、添加剤などを化合することによって得てもよい。いくつかの実施形態において、チタンアルコキシドは、水の不在下でモノマー形態であってよく、水との接触により、部分加水分解チタンアルコキシド種、すなわち「前触媒」を生成してもよい。本明細書では、「前触媒」は、活性化によって反応において活性触媒種を生成することのできる化学種を指してもよい。たとえば、部分加水分解チタンアルコキシド前触媒は、光学活性配位子と結合して触媒を形成してもよい。本明細書では、用語「触媒」は、反応に関与する触媒の活性形態、ならびにin situで触媒の活性形態に変換される可能性のある触媒前駆体(たとえば、前触媒)を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、チタン触媒の調製に用いられるチタンアルコキシドは、下記一般式(d)で表わされる化合物であってもよい。
【0055】
【化4】

【0056】
上記式中、R'は、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ置換基を有してもよい。Yは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基を示し、Xは、0から4の整数を示す。
【0057】
いくつかの実施形態において、R'は、エチル、n−ブチル、n−プロピル、イソプロピルなどのアルキル基である。いくつかの実施形態において、Yは、ハロゲン原子、アセチルアセトンなどのアシル基である。たとえば、用いられるチタンアルコキシドは、Ti(OMe)、Ti(OEt)、Ti(On−Pr)、Ti(Oi−Pr)、Ti(On−Bu)、TiCl(Oi−Pr)、または[EtOCCH=C(O)Me]Ti(Oi−Pr)であってもよい。いくつかの実施形態において、R'はアリール基である。
【0058】
本発明のチタン化合物(たとえば、触媒)は、水をチタンアルコキシドモノマーと接触させることによって得られる部分加水分解チタンアルコキシドの反応混合物、および下記一般式(a)で表わされる光学活性配位子から生成されてもよい。
【0059】
【化5】

【0060】
上記式中、R、R、R、およびRは、独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基であり、それぞれ置換基を有してもよく、あるいはR、R、R、およびRの2つ以上は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、Aは、不斉炭素原子または軸不斉を有する2つ以上の炭素原子を有する基を表す。
【0061】
いくつかの例において、R、R、R、またはRは、場合により1つまたは複数の置換基を有するアルキル基であってもよい。さらに、R、R、R、およびRの2つ以上は共に結合して環を形成してもよい。環は、脂肪族または芳香族炭化水素環であってもよい。形成された環は、それぞれ縮合して環を形成してもよい。いくつかの実施形態において、脂肪族炭化水素環は、10員以下の環、たとえば3から7員環、あるいは5または6員環である。脂肪族炭化水素環は、不飽和結合を有してもよい。芳香族炭化水素環は、フェニル環などの6員環であってもよい。たとえば、R、R、R、およびRの2つが共に結合して−(CH−または−CH=CH−CH=CH−を形成する場合、それぞれシクロヘキセン環(脂肪族炭化水素環に含まれる)またはフェニル環(芳香族炭化水素環に含まれる)を形成してもよい。この環は1つまたは複数の置換基を有してもよく、これにはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、およびシリルオキシ基などが含まれる。
【0062】
一連の実施形態において、RおよびRは水素原子であり、RおよびRは共に結合してフェニル環を形成し、フェニル環は1つまたは複数の置換基を有してもよい。
【0063】
前述の一般式(a)において、Aは、置換基を有してもよい不斉炭素原子または軸不斉を有する、2つ以上の炭素原子、好ましくは2から40個の炭素原子を有する光学活性基を表す。Aの例には、下記の化学式に示す構造が含まれる。
【0064】
【化6】

【0065】
上記式中、(N)および(OH)と示される部分はAに属さず、それぞれ上記一般式(a)においてAが結合している基に対応するアミノ基およびヒドロキシル基を表す。
【0066】
いくつかの例において、光学活性配位子は、下記一般式(b)で表わされる。
【0067】
【化7】

【0068】
上記式中、R、R、R、およびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、またはアミノカルボニル基であり、それぞれ置換基を有してもよく、あるいはR、R、R、およびRの2つ以上は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、R、R、R、およびRの少なくとも1つは異なる基であり、と示される炭素原子の両方または少なくとも1つは不斉中心となり、(NH)および(OH)と表わされる部分はAに属さず、それぞれ上記一般式(a)においてAが結合している基に対応するアミノ基およびヒドロキシル基を表し、R、R、R、およびRは、独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基であり、それらは置換基を有してもよく、それぞれ共に結合して環を形成してもよい。
【0069】
いくつかの例において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、またはベンジルであり、R、R、およびRは水素原子である。
【0070】
光学活性配位子の例には、これに限定されるものではないが、下記化学式が挙げられる。
【0071】
【化8】

【0072】
本発明のチタン触媒は、水とチタンアルコキシドを接触させて得られる反応混合物を、上記の一般式(a)で表わされる光学活性配位子と接触させることによって生成することができる。チタン触媒の調製は、さらに有機溶媒などの溶媒の使用を含んでもよい。たとえば、反応混合物は、水と有機溶媒の混合物中、チタンアルコキシドを光学活性配位子と結合することによって得てもよい。
【0073】
いくつかの例において、有機溶媒は、ある量の水を含んでもよい。チタンアルコキシド、水、および一般式(a)で表わされる光学活性配位子のモル比は、1.0:0.1:0.1から1.0:2.0:3.0の範囲とすることができる。この範囲内の任意のモル比が本発明での使用に適している可能性がある。
【0074】
いくつかの実施形態において、光学活性チタン触媒は、最初にチタンアルコキシド(たとえば、チタンテトラアルコキシド)化合物を有機溶媒中加水分解剤と反応させて、部分加水分解チタンアルコキシド種を形成することによって調製される。いくつかの例において、加水分解剤は、水または水源である。水源(本明細書では「水」と称する)は、たとえば無機水和物(たとえば、水分子を含む無機塩)であってもよい。
【0075】
無機水和物の例には、これに限定されるものではないが、Na・10HO、NaSO・10HO、NaPO・12HO、MgSO・7HO、CuSO・5HO、FeSO・7HO、AlNa(SO・12HO、AlK(SO・12HOなどが含まれる。
【0076】
吸湿モレキュラーシーブを用いる場合、外気に暴露したモレキュラーシーブ3A、4Aなどの市販製品を用いてもよく、任意の粉末モレキュラーシーブおよびペレットモレキュラーシーブを用いることができる。加えて、未脱水シリカゲルまたはゼオライトを水源として用いてもよい。さらに、無機水和物またはモレキュラーシーブを用いる場合、配位子(たとえば、光学活性配位子)との反応前に濾過することによって、反応混合物から容易に除去できる。そのとき、水はチタンアルコキシド化合物1モルに対して、約0.1から2.0モル、または約0.2から1.5モル、または約1モルの量で含有されていてよい。その量の水を添加し、撹拌する。そのとき、チタンアルコキシド化合物を予め溶媒に溶解してもよく、水は添加前に溶媒に希釈されてもよい。霧の形態で水を添加することを含む方法、効率の高い攪拌機などを備えた反応容器を用いることを含む方法などによって、水を直接添加することもできる。
【0077】
本発明での使用に適した有機溶媒の例には、ジクロロメタン、クロロホルム、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチルなどのエステル溶媒、およびテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル溶媒が含まれる。いくつかの実施形態において、ハロゲン化溶媒または芳香族炭化水素溶媒が用いられる。
【0078】
水を添加する場合、用いられる溶媒の総量は、チタンアルコキシド化合物1ミリモルに対して、約1から500mL、または約10から50mLであってもよい。部分加水分解チタン前駆体を用いることにより、イミンの不斉シアノ化において全体として変換率およびエナンチオ選択性を増大できることに留意されたい。
【0079】
チタニウムアルコキシドを水と反応させる温度は、溶媒が凍結しない任意の温度であってもよい。たとえば、反応はほぼ室温、たとえば15から30℃で行ってもよい。反応は用いる溶媒の沸点に応じて、より高い温度(たとえば、加熱による)で行ってもよい。反応に必要とされる時間は、添加する水の量、反応温度などの全体的な条件によって異なる。いくつかの実施形態において、チタン触媒の形成を達成するために攪拌に必要とされる時間は約30分である。
【0080】
次に、光学活性配位子を添加し、攪拌できる。光学活性配位子は、チタンと光学活性配位子のモル比が約0.5:1から1:4、またはこの範囲内の任意のモル比となるように、水を含むチタンアルコキシド化合物に対してある量で添加してもよい。いくつかの実施形態において、Ti:光学活性配位子のモル比は、約1:1から1:3であってもよい。いくつかの実施形態において、Ti:光学活性配位子のモル比は1:1である。
【0081】
いくつかの実施形態において、光学活性配位子は溶媒に溶解してもよく、または溶解せずにそのまま添加してもよい。溶媒を用いる場合、溶媒は上記の水を添加する段階で用いた溶媒と同一または異なる溶媒とすることができる。溶媒を新しく添加する場合、その量は、チタン原子1ミリモルに対して、約1から約5.000mL、または約1から約500mLであってもよい。このとき、反応温度は特に限定されないが、化合物は通常、ほぼ室温、たとえば15から30℃で約5分から約1時間、または約30分から約1時間攪拌することによって生成できる。
【0082】
いくつかの例において、本発明のチタン化合物の生成は、周囲条件下で有利に行ってもよい。しかしながら、本発明のチタン化合物の生成は、乾燥および/または不活性ガス雰囲気下で、あるいは乾燥および不活性条件に厳密に従わずに行ってよいことも理解されるべきである。不活性ガスの例には、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが含まれる。
【0083】
反応混合物を攪拌した後、本発明のチタン化合物(たとえば、チタン触媒)を得ることができる。
【0084】
本明細書に記載のとおり、光学活性チタン触媒の調製において、1種または複数の溶媒を用いてもよい。いくつかの例において、溶媒の使用は、チタン化合物の形成を促進する可能性がある。溶媒は、チタンアルコキシド、光学活性配位子、他の成分のいずれか1つ、またはそれらの組み合わせを溶解して、触媒の形成を促進するように選択してもよい。溶媒の例には、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチルなどのエステル溶媒、およびテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル溶媒が含まれる。いくつかの実施形態において、ハロゲン化炭化水素溶媒または芳香族炭化水素溶媒を用いてもよい。いくつかの実施形態において、上記溶媒の混合物を用いてもよい。
【0085】
光学活性チタン触媒の調製に用いられる溶媒の総量は、チタンアルコキシド化合物のチタン原子1ミリモルに対して、約1から約5.000mL、または約10から約500mLであってもよい。このとき反応温度は特に限定されないが、反応は通常のように約15から30℃で行ってもよい。チタン触媒の調製に必要とされる反応時間は、約5分から1時間、または約30分から約1時間の範囲であってもよい。いくつかの例において、チタン触媒の調製に必要とされる反応時間は30分である。
【0086】
本発明の有利な一特徴は、上記のとおり生成されるチタン化合物をさらに精製する必要なく、不斉触媒反応に用いることができる点にある。すなわち、チタン化合物を調製し、場合によってチタン化合物を調製した同じ反応容器内で、続く不斉反応に直接用いてもよい。これにより精製段階または追加の合成段階不要とし、溶媒および不純物などの廃棄材料を低減することができる可能性がある。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態は、光学活性α−アミノニトリルを生成する方法を提供する。本発明の方法において、イミン基質を出発材料として用いてもよい。この方法は、本明細書に記載のチタン触媒の存在下、場合により溶媒、添加剤などの存在下、イミン基質をシアノ化剤と反応させることを含んでもよい。いくつかの例において、イミンは非対称イミンであり、すなわちイミンはC=N結合の炭素に少なくとも2つの異なる置換基を有する。いくつかの例において、イミンはプロキラル化合物であり、イミンの不斉シアノ化による所望の光学活性α−アミノニトリル生成物に対応するように適切に選択できる。
【0088】
いくつかの例において、本発明の方法は、下記一般式(c)で表わされるイミンの使用を含んでもよい。
【0089】
【化9】

【0090】
上記式中、RまたはR10は、独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、または非芳香族複素環基であり、それぞれ置換基を有してもよく、RはR10と異なり、RおよびR10は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、または非芳香族複素環基、ホスホナート、ホスフィノイル、ホスフィンオキシド、アルコキシカルボニル、スルフィニル、またはスルホキシ基であり、それぞれ置換基を有してもよく、R11は、RまたはR10と結合して炭素鎖を介して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、Rはアルキル基またはアリール基であり、R10は水素原子であり、R11はアルキル基またはアリール基である。いくつかの実施形態において、Rは水素原子であり、R10およびR11は、独立してアルキル基またはアリール基である。
【0092】
およびR10の例には、これに限定されるものではないが、フェニル、2−クロロフェニル、2−ブロモフェニル、2−フルオロフェニル、2−メチルフェニル、2−メトキシフェニル、4−クロロフェニル、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−ニトロフェニル、フラニル、ピリジル、シンナミル、2−フェニルエチル、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが含まれる。
【0093】
11の例には、ベンジル、ベンズヒドリル、9−フルオレニル、2−ヒドロキシフェニル、4−メトキシフェニル、アリル、t−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ジフェニルホスフィノイル、p−トリルスルフィニル、p−トルエンスルホニル、メシチレンスルホニルなどが含まれる。R11は、3,4−ジヒドロイソキノリンなどのように環の一部であってもよい。
【0094】
本明細書に記載のイミン基質は、当分野で知られている方法によって、たとえば、アルデヒドまたはケトンをアミンと縮合して対応するイミン基質を生成することによって合成してもよい。
【0095】
この方法は、不斉シアノ化反応においてシアン化物イオン源としてシアノ化剤を用いることを含む。本発明での使用に適したシアノ化剤の例には、これに限定されるものではないが、シアン化水素、トリアルキルシリルシアニド、アセトンシアノヒドリン、シアノギ酸エステル、シアン化カリウム−酢酸、シアン化カリウム−無水酢酸、トリブチルスズシアニドなどが含まれる。いくつかの実施形態において、シアノ化剤はトリアルキルシリルシアニドである。シアノ化剤は、単独または他のシアノ化剤と併用してもよい(例えば、シアノ化剤の混合物)。いくつかの実施形態において、シアノ化剤は、トリアルキルシリルシアニドとシアン化水素との混合物であってもよい。例えば、シアン化水素ガスを溶剤とともに反応器に添加してもよい(すなわち、溶剤に溶解したガスとしてもよい)。いくつかの例において、シアノ化剤は、イミン基質1モルに対して、0.1から3モル、0.5から3モル(例えば0.5から2.5モル)、1から3モル、またはいくつかの例では1.05から2.5モル、または1.5から2.5モルの量で反応に用いられる。いくつかの実施形態において、イミン基質に対して1.1当量のシアノ化剤を用いてもよい。いくつかの実施形態において、イミン基質に対して1.5当量のシアノ化剤を用いてもよい。
シアノ化剤は、例えば、5分〜10時間、10分〜5時間、あるいは30分〜1時間にわたって、反応器に添加してもよい。
いくつかの実施形態において、シアン化水素などのシアノ化剤は、安価で扱いやすいので、本製造方法に有効に利用することができる。例えば、本製造工程においては、TMSCN等のトリアルキルシリルシアニドの触媒量存在下、シアノ化剤としてシアン化水素を用いることができる。
【0096】
本明細書に記載のとおり、1種または複数の溶媒をイミンの不斉シアノ化に用いてもよい。溶媒の例には、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチルなどのエステル溶媒、酢酸エチルなどのエステル溶媒、およびテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル溶媒が含まれる。いくつかの実施形態において、溶媒はハロゲン化炭化水素溶媒または芳香族炭化水素溶媒である。溶媒は単独で、または溶媒の混合物として組み合わせて用いることができる。いくつかの実施形態において、用いられる溶媒の総量は、基質としてイミン1mmolに対して、約0.1〜5mL、またはいくつかの例において0.2〜1mLであってもよい。
【0097】
本明細書に記載の反応は、本明細書に記載の方法を用いて光学活性チタン触媒を調製し、次いでイミン基質およびシアノ化剤をチタン触媒に添加することによって実行してもよい。結果として生じる混合物を、任意の反応温度、たとえば−78〜80℃、またはそれを超える温度で、約15分から6時間攪拌して、光学活性α−アミノニトリル生成物を生成してもよい。いくつかの実施形態において、混合物は約0〜30℃の反応温度で攪拌される。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、チタン原子換算でイミン1モルに対して、0.01から30モル%、0.25から10モル%、2.5から10モル%、または2.5から5.0モル%の量で不斉反応にチタン触媒を使用することを含む。
【0099】
不斉シアノ化反応が起こる温度は、触媒、イミン基質、シアノ化剤、または溶媒および添加剤を含む他の任意の成分を含む反応成分が凍結しない任意の温度であってもよい。いくつかの例において、反応はほぼ室温、たとえば15から30℃で行ってもよい。反応は用いる溶媒の沸点に応じて、より高い温度(たとえば、加熱による)で行ってもよい。反応に必要とされる時間は、反応温度などの全体的な条件によって異なる。いくつかの例において、反応時間は、6時間以下、4時間以下、2時間以下、1時間以下、45分以下、30分以下、またはいくつかの例では15分以下である。いくつかの実施形態において、高収率および高エナンチオ選択性で光学活性α−アミノニトリル生成物の形成を達成するために攪拌に必要とされる時間は約15〜60分である。
【0100】
いくつかの例において、不斉シアノ化反応は、周囲条件下で行ってもよい。しかしながら、本発明のチタン化合物の生成は、乾燥および/または不活性ガス雰囲気下で、あるいは乾燥および不活性条件に厳密に従わずに行ってよいことも理解されるべきである。不活性ガスの例には、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが含まれる。反応混合物を攪拌した後、光学活性α−アミノニトリル生成物を得ることができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、イミンの不斉シアノ化に添加剤を用いてもよい。たとえば、添加剤は、チタン触媒、イミン基質、シアノ化剤、および/または溶媒を含む混合物に添加してもよい。添加剤は、反応中、すなわちチタン触媒の調製中および/またはイミン基質のシアノ化中の任意の時点で添加してもよい。添加剤は、たとえば、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む種(たとえば、水、アルコール、ジオール、ポリオールなど)であってもよい。いくつかの実施形態において、添加剤は水である。いくつかの実施形態において、添加剤はアルコールである。添加剤として用いるのに適したアルコール類の例には、それぞれ置換基を有してもよい脂肪族アルコールおよび芳香族アルコール、および/またはそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの例において、アルコールは、10個以下の炭素原子を有する直鎖状、分岐状、または環状アルキルアルコールを含むアルキルアルコールである。アルキルアルコールのいくつかの例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコールなどが含まれる。アルキルアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を含む、1つまたは複数の置換基を有してもよい。ハロゲン原子を有するアルキルアルコールの例には、クロロメタノール、2−クロロエタノール、トリフルオロメタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ペルフルオロエタノール、ペルフルオロヘキシルアルコールなどの10個以下の炭素原子を有するハロゲン化アルキルアルコールが含まれる。
【0102】
いくつかの例において、アルコールは、6から20個の炭素原子を有するアリールアルコールを含む芳香族アルコールであってもよい。アリールアルコールのいくつかの例には、フェノール、ナフトールなどが含まれる。アリールアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、または20個以下の炭素原子を有するアルキル基を含む、1つまたは複数の置換基をアリール基に有してもよい。ハロゲン原子を有するアリールアルコールの例には、ペンタフルオロフェノールなどの6から20個の炭素原子を有するハロゲン化アリールアルコールが含まれる。アルキル基を有するアリールアルコールの例には、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、イソプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノールなどが含まれる。
【0103】
いくつかの例において、添加剤は、複数のヒドロキシル基を含んでもよい。たとえば、添加剤はジオールまたはポリオールであってもよい。
【0104】
いくつかの例において、添加剤は、イミン基質の量に対して、0.25当量、0.5当量、1.0当量、1.5当量、2.0当量、またはそれを超える量で添加してもよい。
【0105】
いくつかの例において、添加剤は、ニート試薬として、または溶媒中の溶液として添加してもよい。
【0106】
いくつかの例において、添加剤は、1種または複数の化合物であってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、不斉シアノ化反応で添加剤として水が用いられる場合、チタン触媒は加水分解剤として無機水和物を用いて調製してもよい。いくつかの実施形態において、不斉シアノ化反応で添加剤としてアルコールが用いられる場合、チタン触媒は加水分解剤としてトルエン中の残留水(たとえば、200〜400ppm)を用いて調製することができる。
【0108】
一連の実施形態において、本明細書に記載のチタン触媒を用いるイミンの不斉シアノ化において添加剤として水またはn−ブタノールなどのアルコールが用いられる場合、高い触媒活性およびエナンチオ選択性が認められる可能性がある。いくつかの実施形態において、イミン基質から所望の光学活性α−アミノニトリルへの実質的に完全な変換が、0.5当量の水または1.0当量のn−ブタノールの添加によって15分で達成できる。いくつかの例において、少なくとも80%ee、少なくとも85%ee、少なくとも90%ee、少なくとも95%ee、少なくとも98%eeのエナンチオ選択性を認めることができる。特定の実施形態において、2.5から5モル%の本明細書に記載のチタン触媒を用いて室温でイミンの不斉シアノ化を行い、15分で、収率>99%および少なくとも98%eeを有する生成物を生成される可能性がある。
【0109】
いくつかの例において、本発明の方法は「ワンポット」合成を含んでもよい。すなわち、本発明は、(少なくとも)3成分のα−アミノニトリルのワンポット合成を含んでもよい。用語「ワンポット」反応は当分野で知られており、別の方法では多段階合成を必要とする可能性のある生成物を一段階で生成できる化学反応、および/または単一の反応容器で行う可能性のある一連の段階を含む化学反応を指す。ワンポット手順は、廃棄材料(たとえば、溶媒、不純物)の生成を低減すると同時に、中間体の単離(たとえば、精製)および追加の合成段階を不要とすることができる。さらに、そのような化合物の合成に必要な時間およびコストが低減される可能性がある。一実施形態において、「ワンポット」合成は、少なくともいくつかの反応成分を単一の反応チャンバに同時に添加することを含んでもよい。一実施形態において、「ワンポット」合成は、種々の試薬を単一の反応チャンバに連続的に添加することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、イミンの不斉シアノ化はワンポット反応として行ってもよく、反応中、アルデヒドおよびアミンを基質として用いて、イミン基質をin situで形成する。たとえば、いくつかの例において、イミンは、第1級アミンの存在下、カルボニル化合物を反応させることによってin situで生成してもよい。図3は、本発明の一実施形態による、α−アミノニトリルの「ワンポット」合成を示す。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書に記載および例示したが、当業者は本明細書に記載の機能を果たし、かつ/または結果および/または1つまたは複数の利点を得るために他の様々な手段および/または構造を容易に構想するであろうし、そのような変形および/または修正はそれぞれ本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および/または形状は例示を意図しており、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または形状は本発明の教示が用いられる1つまたは複数の特定の適用例によって決まることを、当業者は容易に理解するであろう。本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を、当業者は認識するか、または通常の実験を用いて確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例としてのみ提示されるものであり、添付の請求の範囲およびその等価物の範囲内で、具体的に記載され請求されているものとは別の方法で本発明を実行してもよいことが理解される。本発明は、本明細書に記載したそれぞれ個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の2つ以上の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾していない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0111】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書および請求の範囲では、明らかに反対のことが示されていないかぎり、「少なくとも1つ」を意味するものであると理解されるべきである。
【0112】
句「および/または」は、本明細書および請求の範囲では、そのように連結された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には接続的に存在し、ある場合には離接的に存在する要素を意味するものであると理解されるべきである。「および/または」の節によって具体的に特定されている要素以外の他の要素は、明らかに反対のことが示されていないかぎり、具体的に特定されている要素に関連しても関連しなくても、場合により存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの開放語と併せて用いられる場合、一実施形態においてはBを伴わないA(場合によりB以外の要素を含む)、他の実施形態においてはAを伴わないB(場合によりA以外の要素を含む)、さらに他の実施形態においてはAおよびBの両方(場合により他の要素を含む)などを指すことができる。
【0113】
本明細書および請求の範囲では、「または」は、上に定義した「および/または」と同じ意味を有するものであると理解されるべきである。たとえば、リストの項目を区別する場合、「または」または「および/または」は両立的なもの、すなわちいくつかの要素またはリストの要素の少なくとも1つを包含するが、1つを超える要素、および場合によりリストに挙げられていない項目も包含するものであると解釈される。「その1つのみ」または「厳密にその1つ」、あるいは請求の範囲で用いられている場合、「からなる」など、明らかに反対のことが示されている用語のみ、いくつかの要素またはリストの要素の厳密に1つの要素を包含することを指す。一般的に本明細書では、用語「または」は、「いずれか」、「その1つ」、「その1つのみ」、または「厳密にその1つ」などの排他的な用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方で、両方ではない」)を示すものであるとのみ解釈される。「から本質的になる」は、請求の範囲で用いられる場合、特許分野の法律で用いられている通常の意味を有する。
【0114】
本明細書および請求の範囲では、1つまたは複数の要素のリストに関して「少なくとも1つ」という句は、リストの要素のいずれか1つまたは複数の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、いずれか1つを含み且つ全ての要素が要素のリストに具体的に含まれている必要はなく、要素のリストにある要素の任意の組み合わせを排除するものではないことが理解されるべきである。この定義は、「少なくとも1つ」という句が言及する要素リストに具体的に特定されている要素以外の要素が、具体的に特定されている要素に関連しても関連しなくても、場合により存在してもよいことを容認する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態においては、少なくとも1つの(場合により1つより多い)AでBは存在しない(場合によりB以外の要素を含む)、他の実施形態においては、少なくとも1つ(場合により1つより多い)BでAは存在しない(場合によりA以外の要素を含む)、さらに他の実施形態においては、少なくとも1つの(場合により1つより多い)Aおよび少なくとも1つの(場合により1つより多い)B(場合により他の要素を含む)などを指すことができる。
【0115】
請求の範囲、ならびに上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「含む(involving)」「保持する」などのすべての移行句は、開放句である、すなわち包含するが限定されないことを意味するものであると理解される。「からなる」および「から本質的になる」という移行句のみ、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、Section2111.03に記載のとおり、それぞれクローズドまたはセミクローズド移行句であるものとする。
【0116】
本発明を実施例に関して以下により具体的に例示する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0117】
(実施例1)
以下の実施例は、本明細書に記載のとおり、チタン化合物(たとえば、触媒)を調製する基本手順を説明するものである。Ti(On−Bu)(0.5mmol)および0.1当量のNa・10HOをグローブボックス内で反応バイアルに入れ、乾燥トルエン(水10〜30ppm)3mLを添加した。この溶液を窒素雰囲気下、室温で18時間攪拌した。次いで、溶液を濾過し、乾燥トルエン(水10〜30ppm)を添加して10mL溶液とし、それをさらに24〜72時間攪拌して、部分加水分解Ti(On−Bu)前触媒の0.05Mトルエン溶液を得た。
別法として、100〜400ppmの水を含むトルエンを用いて、部分加水分解Ti−アルコキシド前触媒を調製した。Ti(On−Bu)(0.5mmol)をグローブボックス内で反応バイアルに入れ、水100〜400ppmを含むトルエン10mLを添加した。この溶液を室温で1〜18時間攪拌して、部分加水分解Ti(On−Bu)前触媒の0.05Mトルエン溶液を得た。
両方の方法は、グローブボックスの外でトルエンを添加し、所望の時間攪拌するなど、厳密な不活性条件を維持せずに行うこともできる。
最後に、部分加水分解Ti(On−Bu)の0.05Mトルエン溶液(200マイクロリットル)をトルエン100〜500マイクロリットル中の表1に示した光学活性配位子と共に5〜30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
【0118】
(実施例2)
以下の実施例は、本明細書に記載のとおり、イミンの不斉シアノ化においてチタン化合物を使用する基本手順を説明するものである。実施例1に記載の方法に従って調製した不斉チタン触媒を図2に示した不斉シアノ化反応に用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して10mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジルベンジリジンアミン(0.2mmol)およびトリメチルシリルシアニド(イミン基質に対して0.1〜2当量)を添加した。得られた材料を室温で20時間攪拌し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表1に示す。
【0119】
(実施例3)
表1に示した光学活性配位子を用いたことを除いて、実施例2と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
表1に示した光学活性配位子を用いたことを除いて、実施例2と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
表1に示した光学活性配位子を用い、反応物を室温で47時間攪拌したことを除いて、実施例2と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
表1に示した光学活性配位子を用いたことを除いて、実施例2と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
(実施例7)
以下の実施例では、アルコールを添加剤として用いて不斉シアノ化反応を行った。表2に示した含水量および部分加水分解時Ti:水mmol比を用い、必要量の部分加水分解Ti(On−Bu)をトルエン中、実施例4に示した光学活性配位子と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
次いで、以下の基本手順に従って、不斉チタン触媒をイミン類の不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して10mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジルベンジリジンアミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(イミン基質に対して2当量)、および添加剤としてブタノール(イミン基質に対して1.0当量)を順に添加した。得られた材料を室温で2時間攪拌し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表2に示す。
【0122】
(実施例8)
反応物を室温で4時間攪拌したことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例9)
イミン基質に対して1.5当量のブタノールを用い、反応物を室温で1時間攪拌したことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例10)
イミン基質に対して0.5当量のブタノールを用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例11)
表2に示した含水量および部分加水分解時Ti:水mmol比で、残留水を加水分解剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例12)
表2に示した含水量および部分加水分解時Ti:水mmol比で、残留水を加水分解剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。反応物を室温で15分間攪拌した。結果を表2に示す。
(実施例13)
水(イミン基質に対して0.5当量)を添加剤として用い、反応物を室温で15分間攪拌したことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例14)
水(イミン基質に対して0.5当量)を添加剤として用い、反応物を室温で30分間攪拌したことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例15)
水(イミン基質に対して0.5当量)を添加剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例16)
水(イミン基質に対して1.0当量)を添加剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例17)
水(イミン基質に対して1.5当量)を添加剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例18)
水(イミン基質に対して0.5当量)を添加剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例19)
水(イミン基質に対して0.25当量)を添加剤として用い、反応物を室温で15分間攪拌したことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例20)
水(イミン基質に対して0.25当量)を添加剤として用い、反応物を室温で1時間攪拌したことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表2に示す。
(実施例21)
表2に示した含水量および部分加水分解時Ti:水mmol比で、残留水を加水分解剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。水(イミン基質に対して0.5当量)を添加剤として用い、反応物を室温で15分間攪拌した。結果を表2に示す。
(実施例22)
表2に示した含水量および部分加水分解時Ti:水mmol比で、残留水を加水分解剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。水(イミン基質に対して0.5当量)を添加剤として用い、反応物を室温で45分間攪拌した。結果を表2に示す。
(実施例23)
表2に示した含水量および部分加水分解時Ti:水mmol比で、残留水を加水分解剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。水(イミン基質に対して0.25当量)を添加剤として用い、反応物を室温で15分間攪拌した。結果を表2に示す。
(実施例24)
表2に示した含水量および部分加水分解時Ti:水mmol比で、残留水を加水分解剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。水(イミン基質に対して0.25当量)を添加剤として用い、反応物を室温で30分間攪拌した。結果を表2に示す。
(実施例25)
表2に示した含水量および部分加水分解時Ti:水mmol比で、残留水を加水分解剤として用いたことを除いて、実施例7と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。水(イミン基質に対して0.25当量)を添加剤として用い、反応物を室温で1時間攪拌した。結果を表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
(実施例26)
以下の実施例では、アルコールを添加剤として用いて不斉シアノ化反応を行った。必要量の部分加水分解Ti(On−Bu)をトルエン中、実施例4に示した光学活性配位子および部分加水分解時残留水(200ppm)と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
次いで、以下の基本手順に従って、不斉チタン触媒をイミン類の不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して10mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジルベンジリジンアミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(イミン基質に対して1.5当量)、および添加剤としてブタノール(イミン基質に対して1.0当量)を順に添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表3に示す。
【0125】
(実施例27)
Ti(OEt)を用いて不斉チタン触媒を調製したことを除いて、実施例26と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表3に示す。
(実施例28)
Ti(OiPr)を用いて不斉チタン触媒を調製したことを除いて、実施例26と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表3に示す。
【0126】
【表3】

【0127】
(実施例29)
以下の実施例では、厳密に不活性条件に従うことなく不斉シアノ化反応を行った。必要量の部分加水分解Ti(On−Bu)をトルエン中、実施例4に示した光学活性配位子および部分加水分解時残留水(200ppm)と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
次いで、以下の一般的な手順に従って、不斉チタン触媒をイミンの不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して10mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジルベンジリジンアミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(イミン基質に対して2.0当量)、および添加剤としてブタノール(イミン基質に対して1.0当量)を順に添加した。得られた材料を室温で15分間攪拌し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表4に示す。
【0128】
(実施例30)
イミン基質に対して5mol%の不斉チタン触媒を用いたことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
(実施例31)
イミン基質に対して2.5mol%の不斉チタン触媒を用いたことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
(実施例32)
イミン基質に対して2.5mol%の不斉チタン触媒を用い、反応物を室温で30分間攪拌したことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
(実施例33)
イミン基質に対して1.0mol%の不斉チタン触媒を用いたことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
(実施例34)
イミン基質に対して1.0mol%の不斉チタン触媒を用い、反応物を室温で30分間攪拌したことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
(実施例35)
イミン基質に対して5.0mol%の不斉チタン触媒および1.5当量のTMSCNを用いたことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
(実施例36)
イミン基質に対して5.0mol%の不斉チタン触媒および1.5当量のTMSCNを用い、反応物を室温で30分間攪拌したことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
(実施例37)
イミン基質に対して5.0mol%の不斉チタン触媒および1.0当量のTMSCNを用い、反応物を室温で30分間攪拌したことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
(実施例38)
イミン基質に対して5.0mol%の不斉チタン触媒および1.05当量のTMSCNを用い、反応物を室温で1時間攪拌したことを除いて、実施例29と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表4に示す。
【0129】
【表4】


(実施例39)
以下の実施例では、以下の基本手順に従って不斉シアノ化反応を行った。必要量の200ppmの水を含むトルエン中の部分加水分解Ti(On−Bu)を、表5に示した(200ppmの水を含むトルエン中の)光学活性配位子と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
次いで、不斉チタン触媒をイミンの不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して5mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジルベンジリジンアミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(イミン基質に対して1.5当量)、および添加剤としてブタノール(イミン基質に対して1.0当量)を順に添加した。得られた材料を室温で15〜60分間攪拌し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表5に示す。
【0130】
(実施例40)
表5に示した光学活性配位子を用いることを除いて、実施例39と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表5に示す。
(実施例41)
表5に示した光学活性配位子を用いることを除いて、実施例39と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表5に示す。
(実施例42)
表5に示した光学活性配位子を用いることを除いて、実施例39と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表5に示す。
(実施例43)
表5に示した光学活性配位子を用いることを除いて、実施例39と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表5に示す。
(実施例44)
表5に示した光学活性配位子を用いることを除いて、実施例39と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表5に示す。
【0131】
【表5】

【0132】
(実施例45)
以下の実施例では、以下の基本手順に従って不斉シアノ化反応を行った。必要量の200ppmの水を含むトルエン中の部分加水分解Ti(On−Bu)を、実施例4に示した(200ppmの水を含むトルエン中の)光学活性配位子と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
次いで、不斉チタン触媒をイミンの不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して5mol%)をフラスコに入れ、表6に示したイミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(イミン基質に対して1.5当量)、および添加剤としてブタノール(イミン基質に対して1.0当量)を順に添加した。得られた材料を室温で15〜60分間攪拌し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表6に示す。
【0133】
(実施例46)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例47)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例48)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例49)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例50)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例51)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例52)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例53)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例54)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例55)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
【0134】
(実施例56)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例57)
表6に示したイミン基質を用いたことを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例58)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例59)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例60)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例61)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例62)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例63)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例64)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例65)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例66)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例67)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
【0135】
(実施例68)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。反応後、トリフルオロ酢酸無水物を添加して、分析のためにアミノニトリルをトリフルオロアセトアミド誘導体に変換した。結果を表6に示す。
(実施例69)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。反応後、トリフルオロ酢酸無水物を添加して、分析のためにアミノニトリルをトリフルオロアセトアミド誘導体に変換した。結果を表6に示す。
(実施例70)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。反応後、トリフルオロ酢酸無水物を添加して、分析のためにアミノニトリルをトリフルオロアセトアミド誘導体に変換した。結果を表6に示す。
(実施例71)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。反応後、トリフルオロ酢酸無水物を添加して、分析のためにアミノニトリルをトリフルオロアセトアミド誘導体に変換した。結果を表6に示す。
(実施例72)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。反応後、トリフルオロ酢酸無水物を添加して、分析のためにアミノニトリルをトリフルオロアセトアミド誘導体に変換した。結果を表6に示す。
(実施例73)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。反応後、トリフルオロ酢酸無水物を添加して、分析のためにアミノニトリルをトリフルオロアセトアミド誘導体に変換した。結果を表6に示す。
(実施例74)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
(実施例75)
表6に示したイミン基質を用いることを除いて、実施例45と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表6に示す。
【0136】
【表6】




【0137】
(実施例76)
以下の実施例では、図3に示したとおり、以下の手順に従ってワンポット不斉シアノ化反応を行った。必要量の200ppmの水を含むトルエン中の部分加水分解Ti(On−Bu)を、図3に示した(200ppmの水を含むトルエン中の)不斉配位子と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
別のフラスコで、ベンズアルデヒド(0.2mmol)およびベンジルアミン(0.2mmol)を10〜30分間攪拌してイミンをin situで形成した。次いで、不斉チタン触媒(アルデヒドまたはアミン基質に対して5mol%)およびトリメチルシリルシアニド(0.4mmol)をフラスコに加えた。得られた材料を室温で15分間攪拌し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。収率>99および鏡像体過剰率74%で生成物を得た。
【0138】
(実施例77)
以下の実施例では、HCNの存在下、下記の通常の手順に従って、図4に示す不斉シアノ化反応を行った。必要量の200ppmの水を含むトルエン中の部分加水分解Ti(On−Bu)を、実施例4に示した(200ppmの水を含むトルエン中の)光学活性配位子と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。次いで、以下の基本手順に従って、不斉チタン触媒をイミン類の不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して5mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジルベンジリジンアミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(イミン基質に対して1.5当量)、および0.8Mのトルエン溶液(イミン基質に対して1.0当量)としてHCN(0.02mmol)を、この順に添加した。得られた材料を室温で攪拌した。中間サンプルを60分後と15時間後に回収し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表7に示す。
【0139】
(実施例78)
0.04mmolのHCNを用いることを除いて、実施例77と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表7に示す。
(実施例79)
0.10mmolのHCNを用いることを除いて、実施例77と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表7に示す。
(実施例80)
0.15mmolのHCNを用いることを除いて、実施例77と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表7に示す。
(実施例81)
0.2mmolのHCNを用いることを除いて、実施例77と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表7に示す。
【0140】
【表7】

【0141】
(実施例82)
以下の実施例では、HCNの存在下、下記の通常の手順に従って、図5に示す不斉シアノ化反応を行った。この実施例においては、イミン基質に対して1.1当量と一定になるように、CNの全濃度を調製した。必要量の200ppmの水を含むトルエン中の部分加水分解Ti(On−Bu)を、実施例4に示した(200ppmの水を含むトルエン中の)光学活性配位子と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
次いで、以下の基本手順に従って、不斉チタン触媒をイミン類の不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して5mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジルベンジリジンアミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(0.17mmol)、および0.8Mのトルエン溶液としてHCN(0.06mmol)を、この順に添加した。得られた材料を室温で攪拌した。サンプルを60分後に回収し、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表8に示す。
【0142】
(実施例83)
0.11mmolのTMSCNおよび0.11mmolのHCNを用いることを除いて、実施例77と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表8に示す。
(実施例84)
0.06mmolのTMSCNおよび0.17mmolのHCNを用いることを除いて、実施例77と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表8に示す。
【0143】
【表8】

【0144】
(実施例85)
以下の実施例では、少量のトリメチルシリルシアニド(TMSCN)の存在下、シアノ化剤の主剤としてHCNを用いて、下記の通常の手順に従って、図6に示す不斉シアノ化反応を行った。この実施例においては、イミン基質に対して1.1当量と一定になるように、CNの全濃度を調製した。必要量の200ppmの水を含むトルエン中の部分加水分解Ti(On−Bu)を、実施例4に示した(200ppmの水を含むトルエン中の)光学活性配位子と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
次いで、不斉チタン触媒をイミン類の不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して5mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジルベンジリジンアミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(0.11mmol)を添加した。この攪拌物に、0.8Mのトルエン溶液としてHCN(0.11mmol)を、シリンジポンプを用いて室温で1時間かけてゆっくり添加した。添加後、反応混合物を15分間攪拌し、サンプルを回収した。そして、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果を表9に示す。
【0145】
(実施例86)
0.05mmolのTMSCNおよび0.17mmolのHCNを用いることを除いて、実施例85と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表9に示す。
(実施例87)
0.02mmolのTMSCNおよび0.20mmolのHCNを用いることを除いて、実施例85と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表9に示す。
(実施例88)
0.01mmolのTMSCNおよび0.21mmolのHCNを用いることを除いて、実施例85と同じ様式で不斉シアノ化反応を行った。結果を表9に示す。
【表9】

【0146】
(実施例89)
以下の実施例では、少量のトリメチルシリルシアニド(TMSCN)の存在下、シアノ化剤の主剤としてHCNを用いて、下記の通常の手順に従って、図7に示す不斉シアノ化反応を行った。この実施例においては、イミン基質に対して1.1当量と一定になるように、CNの全濃度を調製した。必要量の200ppmの水を含むトルエン中の部分加水分解Ti(On−Bu)を、実施例4に示した(200ppmの水を含むトルエン中の)光学活性配位子と共に30分間攪拌することによって、不斉チタン触媒をin situで調製した。
次いで、不斉チタン触媒をイミン類の不斉シアノ化に直接用いた。不斉チタン触媒(イミン基質に対して5mol%)をフラスコに入れ、N−ベンジリジン−1,1−ジフェニルメタンアミン(0.2mmol)、トリメチルシリルシアニド(0.11mmol)を添加した。この攪拌物に、0.8Mのトルエン溶液としてHCN(0.11mmol)を、シリンジポンプを用いて室温で45分間かけてゆっくり添加した。添加後、反応混合物を15分間攪拌し、サンプルを回収した。そして、NMRおよびHPLC分析を実行して、生成物の収率および鏡像体過剰率(ee)を求めた。結果としては、転化率および鏡像体過剰率はそれぞれ、95%、97%であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とチタンアルコキシドとを接触させて得られる反応混合物を、下記一般式(a)で表わされる光学活性配位子と接触させることによって生成される、不斉合成反応に用いるチタン触媒。
【化1】

(式中、R、R、R、およびRは、独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基であり、それぞれ置換基を有してもよく、あるいはR、R、R、およびRの2つ以上は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、
は、不斉炭素原子または軸不斉を有する2つ以上の炭素原子を有する基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(a)で表わされる光学活性配位子が、下記一般式(b)で表わされる、請求項1に記載のチタン触媒。
【化2】

(式中、R、R、R、およびRは、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、またはアミノカルボニル基であり、それぞれ置換基を有してもよく、あるいはR、R、R、およびRの2つ以上は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、R、R、R、およびRの少なくとも1つは異なる基であり、と示される炭素原子の両方または少なくとも1つは不斉中心となり、(NH)および(OH)と表わされる部分はAに属さず、それぞれ前記一般式(a)においてAが結合している基に対応するアミノ基およびヒドロキシル基を表し、
、R、R、およびRは、独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはシロキシ基であり、それらは置換基を有してもよく、それぞれ共に結合して環を形成してもよい。)
【請求項3】
前記Rが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、またはベンジルであり、前記R、前記R、および前記Rは水素原子である、請求項2に記載のチタン触媒。
【請求項4】
前記光学活性配位子が下記化学式に示す構造を有する、請求項2または3に記載のチタン触媒。
【化3】

【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のチタン触媒の存在下、イミンをシアノ化剤と反応させる工程を含む、イミンの不斉シアノ化方法。
【請求項6】
前記方法が少なくとも1つのヒドロキシル基を有する添加剤の存在下で行われる、請求項5に記載のイミンの不斉シアノ化方法。
【請求項7】
前記イミンが、下記一般式(c)で表わされる、請求項5または6に記載のイミンの不斉シアノ化方法。
【化4】

(式中、RおよびR10は、独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、または非芳香族複素環基であり、それぞれ置換基を有してもよく、RはR10と異なり、
およびR10は共に結合して環を形成してもよく、環は置換基を有してもよく、
11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、芳香族複素環基、または非芳香族複素環基、ホスホナート、ホスフィノイル、ホスフィンオキシド、アルコキシカルボニル、スルフィニル、またはスルホキシ基であり、それぞれ置換基を有してもよく、
11は、RまたはR10と結合して炭素鎖を介して環を形成してもよく、環は置換基を有することができる。)
【請求項8】
前記シアノ化剤が、シアン化水素、トリアルキルシリルシアニド、アセトンシアノヒドリン、シアノギ酸エステル、シアン化カリウム−酢酸、シアン化カリウム−無水酢酸、またはトリブチルスズシアニドである、請求項5または6に記載のイミンの不斉シアノ化方法。
【請求項9】
前記シアノ化剤がトリアルキルシリルシアニドである、請求項5または6に記載のイミンの不斉シアノ化方法。
【請求項10】
前記シアノ化剤が、トリアルキルシリルシアニドとシアン化水素との混合物である、請求項5に記載のイミンの不斉シアノ化方法。
【請求項11】
前記添加剤が、アルコール、ジオール、ポリオール、フェノール、または水である、請求項6に記載のイミンの不斉シアノ化方法。
【請求項12】
前記イミンが、第1級アミンの存在下、カルボニル化合物を反応させることによってin situで生成される、請求項5から11のいずれか1項に記載のイミンの不斉シアノ化方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−501688(P2011−501688A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526856(P2010−526856)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000367
【国際公開番号】WO2009/041919
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】