説明

チタン含有溶液、ポリエステル製造用触媒、ポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステルからなる中空成形体

本発明は、溶液の保存安定性に優れるとともに、高濃度でチタン成分を含有するチタン含有溶液を提供すること、また、均一供給性に優れ高い触媒性能を示すとともに、回収されて再使用される脂肪族ジオールの品質に悪影響を及ぼさないポリエステル製造用触媒を提供すること、および高い触媒活性を示すとともに、成型時の安定性が高いポリエステル製造用触媒を提供することを目的とする。さらに、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形体を提供することを目的とする。本発明の第1の形態は、チタン、脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを含有することを特徴とするチタン含有溶液からなる。本発明の第2の形態は、溶液中のチタン粒子径が特定の範囲にあるチタン含有溶液からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、チタン含有溶液、この溶液の調製方法、この溶液からなるポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形体に関する。詳しくは、保存安定性に優れるとともに高濃度でチタン成分を含有するチタン含有溶液、このチタン含有溶液からなり、均一供給性に優れ、高い触媒性能を示すとともに、回収して再使用される脂肪族ジオールの品質に悪影響を及ぼさないポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形体に関する。
【背景技術】
ポリエステル樹脂、たとえばポリエチレンテレフタレートは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリア性に優れており、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填容器の素材をはじめとして、フィルム、シート、繊維などの素材としても好適に使用されている。
このようなポリエステル樹脂は、通常、テレフタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコールなどの脂肪族ジオールとを原料として、エステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下に、この低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて高分子量化して製造される。
チタンは、低次縮合物の重縮合反応を促進する作用を有する元素であることが知られており、チタン化合物を重縮合触媒の材料として利用するために、多くの検討が行われている。特にアルコキシチタン化合物は、価格および入手の容易さなどから重縮合触媒の材料として好適である。
触媒としてチタン化合物をポリエステルの重合反応工程に供給するに際しては、均一な分散を実現し、局所的な反応を防止するために、通常、チタン化合物を適当な溶媒、たとえばポリエステル製造原料の一成分である脂肪族ジオールに予め混合させたチタン触媒溶液として供給する。
しかしながら、チタン触媒溶液の問題点として、チタン化合物と脂肪族ジオールとが接触することにより、不溶性の化合物が形成される場合がある。たとえば、チタンテトラアルコキシドを、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールなどに混合すると、チタン濃度によっては沈殿を生じることが知られている(F.Mizukami et al.,Stud.Surf.Sci.Catal.,1987,31,p45)。沈殿の生成は、チタン原子および脂肪族ジオールがネットワーク状に結合して高重合物になるためと考えられる。このように触媒溶液に沈殿が含まれると、触媒が固液分離するため、重合反応工程への供給が不均一となって安定操業が困難になるだけでなく、得られるポリエステル中に異物が生じて美観および強度などの樹脂性能を損なう原因となる。
一方、沈殿の生成を防ぐために触媒溶液中のチタン濃度を低くすると、必要量のチタン触媒を重合反応工程に供給する際に、触媒に同伴して供給される溶媒の脂肪族ジオール量が増大するため、重合反応に悪影響を及ぼす可能性がある。また、触媒溶液中のチタン濃度を低くすることによって、触媒の調製直後には均一で透明な溶液が得られたとしても、触媒溶液の保存中に時間の経過とともに沈殿を生ずる場合がある。
以上の理由から、チタン触媒を調製するにあたり、触媒溶液の均一性を実現し、かつそのチタン濃度をできるだけ高くする技術が求められ、種々の検討が行われてきた。
アルコキシチタン化合物と脂肪族ジオールとを混合してポリエステル製造用触媒を調製するに際し、沈殿生成を防ぎ、均一な溶液を得るために、種々の化合物を溶解助剤として添加する手法が知られている。
溶解助剤としては、たとえば、有機ケイ素化合物または有機ジルコニウム化合物(国際特許WO99/54039号公報)、アルカリ金属化合物(特開平7−207010号公報)、水(特公平3−72653号公報)、有機カルボン酸(特開昭56−129220号公報)、二官能有機酸(特表2002−543227号公報)、ジエチレングリコール(特開昭58−118824号公報)、ヒンダードフェノール化合物(特許第2987853号公報)、リン化合物(特公昭61−25738号公報)、キレート配位子化合物とリン化合物との組み合わせ(特開平10−81646号公報)、塩基化合物とリン化合物との組み合わせ(特表2001−524536号公報)などが提案されている。
しかしながら、これらのチタン触媒において、溶解助剤として添加された化合物が、チタン化合物の溶解を補助する作用を示す以外に、チタン触媒の活性点と好ましくない相互作用をすることにより、しばしば触媒性能の悪化を招くことがある。また、溶解助剤が、通常、高減圧条件で運転される重合工程において、脂肪族ジオールとともに揮発して軽沸分回収精製工程に混入し、その結果、回収して再使用される脂肪族ジオールの品質に悪影響を及ぼすことがある。
したがって、チタン触媒の性能に悪影響を及ぼさず、かつ回収して再使用される脂肪族ジオールの品質に悪影響を及ぼさないチタン触媒溶液が求められている。
また、チタン化合物の第2の問題点として、金属重量あたりの重縮合活性は高い反面、好ましくないポリエステル分解反応を起こす傾向も強く、重縮合反応工程での樹脂の着色や、溶融成形工程における低分子化合物の副生あるいは分子量の低下等による樹脂品質の悪化を引き起こす傾向も強い。
その結果、これらのチタン化合物を重縮合触媒に使用して製造したポリエステル樹脂は安定性が低く、溶融成形時の熱分解によるアセトアルデヒドの生成や分子量の低下が従来のアンチモン化合物やゲルマニウム化合物等を重縮合触媒に使用して製造したポリエステル樹脂と比較して大きいため、飲料充填容器の素材としての使用が困難であるのが現状である。
チタン触媒のこのような問題点に対して、好ましくないポリエステル分解反応を低減しながら高活性を保持するように改良されたチタン化合物が提案されている。たとえば、チタン化合物として、平均一次粒子径が100nm以下である二酸化チタンを使用すると高活性なポリエステル重縮合触媒となることが述べられている(特開2000−119383号公報)。
しかしながら、本発明者らの追試実験によると、その活性は、公知のチタン系触媒であるチタンアルコキシド、四塩化チタン、シュウ酸チタニル、オルソチタン酸等と比較して非常に低いものであった。
また、チタン化合物として、主たる成分が酸化チタンであり、分子量が500〜100000(g/mol)であるチタン化合物を使用すると、成型加工性および耐熱性に優れたポリエステル樹脂を与えるポリエステル重合用触媒となることが特開2001−200045号公報に述べられている。しかしながら、本発明者らの追試実験によると、同文献において述べられているチタン化合物はエチレングリコールへの溶解性が低く、一般的に触媒をエチレングリコール溶液の形態で添加するポリエチレンテレフタレート製造プロセスには適用困難であることが判明した。
本発明の第1の目的は、溶液の保存安定性に優れるとともに、高濃度でチタン成分を含有するチタン含有溶液を提供することである。また本発明は、このチタン含有溶液からなり、均一供給性に優れ、高い触媒性能を示すとともに、回収され再使用される脂肪族ジオールの品質に悪影響を及ぼさないポリエステル製造用触媒を提供することをとしている。
さらに本発明は、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形体を提供することを目的としている。
本発明の第2の目的は、チタン含有溶液よりなり、従来のチタン含有溶液よりも高活性なポリエステル製造用触媒を提供すること、さらにこの触媒を用いる生産性の高いポリエステル樹脂の製造方法、および製造法により得られるポリエステル樹脂よりなる高品質な中空成形体を提供することにある。
【発明の開示】
本発明者らは、上記のような技術的背景に鑑み、チタン含有溶液およびポリエステル製造用触媒について鋭意検討したところ、チタン、脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを含有することを特徴とするチタン含有溶液を用いることにより、溶液の保存安定性に優れるとともに、高濃度でチタン成分を含有するチタン含有溶液を得ることができ、さらに、均一供給性に優れ、高い触媒性能を示すとともに、回収され再使用される脂肪族ジオールの品質に悪影響を及ぼさないポリエステル製造用触媒を得ることができることを見出して、本発明を完成するに至った。また、触媒溶液の均一性ならびに安定性が高いようなチタン原料として、100量体以下の多量体であるチタン化合物、より好ましくは、単量体または20量体以下の多量体であるチタン化合物、特に好ましくは、単量体であるチタン化合物が好適であることを見出した。
本発明の第1の形態は、
(1)チタン、脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを含有する溶液であって、(A)チタン化合物を0.05〜20重量%、(B)脂肪族ジオールを4〜99重量%、(C)3価以上の多価アルコールを0.1〜95重量%の割合で含むことを特徴とするチタン含有溶液、である。
さらに本発明の好ましい態様を次に示す。
(2)(1)に記載のチタン含有溶液であって、該溶液を調製する際に用いられるチタン化合物が、100量体以下の多量体であることを特徴とするチタン含有溶液。
(3)さらに水および/または塩基化合物を含有することを特徴とする(1)および(2)に記載のチタン含有溶液。
(4)チタン化合物、脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを用いるチタン含有溶液の調製方法であって、チタン含有溶液の総量に対して、(A)チタン化合物を0.05〜20重量%、(B)脂肪族ジオールを4〜99重量%、(C)3価以上の多価アルコールを0.1〜95重量%の割合で用いることを特徴とするチタン含有溶液の調製方法。
(5)(4)に記載の調製方法であって、水および/または塩基化合物を合計で50重量%以下の割合で用いることを特徴とするチタン含有溶液の調製方法。
また本発明の第2の形態を以下に示す。
本発明者らは、ポリエステル製造原料の一成分である脂肪族ジオール溶媒中においてチタン化合物の粒子直径が特定範囲内となるチタン含有溶液を用いると、優れた重合活性でポリエステル樹脂を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、
(6)チタン含有溶液であって、溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が主として0.4nm以上5nm以下であることを特徴とするチタン含有溶液、
が本発明に係る第2の形態である。
ここで粒子直径が主として0.4nm以上5nm以下とは、粒子直径が0.4nm以上5nm以下であるものの割合が、チタン含有化合物の体積分率として50%以上、より好ましくは80%以上であることを指す。さらに、本発明の好ましい態様として次が挙げられる。
(7)脂肪族ジオールを含有し、該ジオール成分とチタンのモル比(脂肪族ジオール/チタン原子比)が10以上であることを特徴とする(6)に記載のチタン含有溶液。
さらに本発明は、(8)に示すポリエステル製造用触媒、(9)に示すポリエステル樹脂の製造方法ならびに(10)に示すポリエステル製中空成形体を提供する。
(8)(1),(2),(3),(6),(7)のいずれかに記載のチタン含有溶液からなるポリエステル製造用触媒、および(4),(5)のいずれかに記載の調製方法で得られるチタン含有溶液からなるポリエステル製造用触媒。
(9)(8)に記載のポリエステル製造用触媒の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させてポリエステル樹脂を製造することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
(10)(9)に記載の方法で得られたポリエステル樹脂からなることを特徴とする中空成形体。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の環状三量体量測定用試料として用いる段付角板状成形物を示す図である。
第2図は実施例28の触媒の粒径分布測定結果を示すグラフ図である。横軸は粒子径(単位:nm)を、縦軸は度数(任意単位)を示す。
第3図は実施例30の触媒を溶媒除去したものの透過電子顕微鏡写真である。
第4図は実施例30の触媒を溶媒除去後、10分間電子照射したものの透過電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
第1図A 段付角板状成形物の最も厚い部分
B 段付角板状成形物の中間部分
C 段付角板状成形物の最も薄い部分
【発明を実施するための最良の形態】
(第1の発明)
以下、本発明の第1の形態について具体的に説明する。
本発明の第1の形態は、チタン、脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを含有することを特徴とするチタン含有溶液に係る。さらに、チタン含有溶液組成物からなるポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法、この触媒により得られるポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形体に係る。
本発明に係るチタン含有溶液中のチタン含有量は、特に制限はないが、チタン原子として、好ましくは0.05〜20重量%であり、より好ましくは0.1〜10重量%である。チタン原子の含有量は、たとえばICP分析法により測定できる。チタン原子の含有量が0.05重量%より低い場合には、添加される溶媒(脂肪族ジオール)の量が増大し、重合反応に悪影響を及ぼすことがある。一方、チタン原子の含有量が20重量%より高い場合には、チタン含有溶液中に沈殿が生成し、均一溶液が得られないことがある。
本発明に係るチタン含有溶液中の脂肪族ジオールの含有量は、特に制限はないが、好ましくは4〜99重量%であり,より好ましくは19〜94重量%であり、さらに好ましくは50〜85重量%である。脂肪族ジオールの含有量は、たとえばガスクロマトグラフなどの分析法により測定できる。
本発明に係るチタン含有溶液中の3価以上の多価アルコールの含有量は、特に制限はないが、好ましくは0.1〜95重量%であり、より好ましくは5〜80重量%であり、さらに好ましくは15〜50重量%である。3価以上の多価アルコールの含有量は、たとえばガスクロマトグラフなどの分析法により測定できる。3価以上の多価アルコールの含有量が0.1重量%より低い場合には、溶解助剤としての効果が得られないことがある。3価以上の多価アルコールの含有量が95重量%より高い場合には、溶解助剤としての効果が逆に小さくなり、チタン含有溶液中に沈殿が生成し、均一溶液が得られないことがある。
また、本発明に係るチタン含有溶液を後述のようにポリエステル重合用触媒として用いる場合において、チタン含有溶液中の3価以上の多価アルコールの含有量が0.1重量%より低い場合には、重合活性の優位性が得られないことがある。3価以上の多価アルコールの含有量が95重量%より高い場合には、重合活性は高くなるものの、得られるポリエステル樹脂の性能に悪影響を与えることがある。
本発明に係るチタン含有溶液は、必要に応じて、さらに水および/または塩基化合物を含有してもよい。
本発明に係るチタン含有溶液中の水の含有量は、特に制限はないが、調製後のチタン含有溶液の総量に対する重量比で、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは50ppm〜30重量%であり、さらに好ましくは100ppm〜10重量%である。水の含有量が50重量%を超えると、チタン含有溶液中に沈殿を生成し、均一溶液が得られないことがある。
本発明に係るチタン含有溶液中の塩基化合物の含有量は、特に制限はないが、調製後のチタン含有溶液の総量に対する重量比で、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは50ppm〜30重量%であり、さらに好ましくは100ppm〜10重量%である。塩基化合物の添加量が50重量%を超えると、溶解助剤としての効果が小さくなり、チタン含有溶液中に沈殿が生成し、均一溶液が得られないことがある。
本発明に係るチタン含有溶液は、チタン化合物、脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを原料として用いて調製される。
本発明に係るチタン含有溶液を調製する際に用いられるチタン化合物は、好ましくは、単量体または100量体以下の多量体であるチタン化合物、より好ましくは、単量体または20量体以下の多量体であるチタン化合物、特に好ましくは、単量体であるチタン化合物が望ましい。
なお、チタン含有溶液を調製する際に用いられるチタン化合物とは、該溶液を最終的に調製する際に用いるチタン原料をいう。固体Aを溶解後に再度乾燥して固体Bとし、これを再び溶解して調製する場合は、固体Bのことを指す。
用いられるチタン化合物が何量体かを示す重合度は、そのチタン化合物の分子量とチタン含有量とから計算することができる。具体的には、チタン化合物の分子量をWとし、チタン化合物中のチタン原子の含有量をS(重量%)とすると、チタン化合物の重合度Pは下式で求められる。
[式1]
P = (S×W)/(100×47.2)
ここで、チタン化合物の分子量は質量分析法、浸透圧法、凝固点降下法などの手法で測定することができ、またチタン原子の含有量はICPなどの手法で測定することができる。
本発明に係るチタン含有溶液を調製する際に、100量体より大きな多量体であるチタン化合物を用いると、脂肪族ジオールへの溶解性が十分でないことがある。また一般に、単量体より大きな多量体であるチタン化合物を高純度で製造するためには、特殊な手法を用いる必要があるため、入手の容易性の点からも単量体であるチタン化合物を用いることが好ましい。
また、本発明に係るチタン含有溶液を後述のようにポリエステル重合用触媒として用いる場合において、100量体より大きな多量体であるチタン化合物を原料に用いて調製されたチタン含有溶液は、100量体以下の多量体であるチタン化合物を原料に用いて調製されたチタン含有溶液と比較して、重合活性が低くなることがある。
ここで、単量体であるチタン化合物とは、ある一つの分子中に含まれるチタン原子が、他のチタン原子と共有結合を介して配位子により架橋されることのないチタン化合物を指す。
また、多量体であるチタン化合物とは、ある一つの分子中に含まれるチタン原子が、他のチタン原子と共有結合を介して配位子により架橋されている化合物を指す。したがって、チタン原子とチタン原子とが、共有結合ではなく配位結合を通じて配位子により架橋されている配位高分子(coordination polymer)型のチタン化合物は、本発明においては多量体であるチタン化合物としては扱わず、単量体であるチタン化合物として扱う。たとえばチタンテトラエトキシドは純品としては単量体であるのに対して、非極性溶媒中では配位結合により結合された三量体として存在するが、本発明ではいずれも単量体であるチタン化合物として扱う。
上記チタン化合物としては、たとえば、
四フッ化チタン、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、ヘキサフロロチタン酸などのハロゲン化チタン化合物;
α−チタン酸、β−チタン酸、チタン酸アンモニウム、チタン酸ナトリウムなどのチタン酸化合物;
硫酸チタン、硝酸チタンなどの無機酸チタン塩化合物;
テトラメチルチタン、テトラエチルチタン、テトラベンジルチタン、テトラフェニルチタン、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライドなどのチタン有機金属化合物;
テトラフェノキシチタンなどのアリーロキシチタン化合物;
テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、テトラキス(トリフェニルシロキシ)チタンなどのシロキシチタン化合物;
酢酸チタン、プロピオン酸チタン、乳酸チタン、クエン酸チタン、酒石酸チタンなどの有機酸チタン塩化合物;
テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、チタンテトラピロリドなどのチタンアミド化合物;および
下記に詳述されるアルコキシチタン化合物などが挙げられる。これらの中ではアルコキシチタン化合物が好ましい。
アルコキシチタン化合物としては、たとえば、
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシドなどのチタンテトラアルコキシド類;
ポリ(ジブチルチタネート)、Ti(OC20、Ti1616(OC32などの縮合チタンアルコキシド類;
クロロチタントリイソプロポキシド、ジクロロチタンジエトキシドなどのハロゲン置換チタンアルコキシド類;
チタンアセテートトリイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシドなどのカルボン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ジオクチルピロホスフェート)イソプロポキシドなどのホスホン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキシドなどのスルホン酸基置換チタンアルコキシド類;
アンモニウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサエトキシチタネート、カリウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサ−n−プロポキシチタネートなどのアルコキシチタネート類;
チタンビス(2,4−ペンタンジオナート)ジイソプロポキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシドなどのβ−ジケトネート置換チタンアルコキシド類;
チタンビス(アンモニウムラクテート)ジイソプロポキシドなどのα−ヒドロキシカルボン酸置換チタンアルコキシド類;および
チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、2−アミノエトキシチタントリイソプロポキシドなどのアミノアルコール置換チタンアルコキシド類などが挙げられる。これらの中ではチタンテトラアルコキシド類が好ましい。
これらのチタン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのチタン化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえばアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
本発明に係るチタン含有溶液を調製する際に用いられる脂肪族ジオールとしては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらの中では、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。これらの脂肪族ジオールは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明に係るチタン含有溶液を調製する際に用いられる3価以上の多価アルコールとしては、たとえば、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、プルラン、シクロデキストリンなどが挙げられる。これらの中では、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが好ましく、グリセリンがより好ましい。これらの3価以上の多価アルコールは、1種単独で、または2種以上以上組み合わせて用いることができる。
本発明に係るチタン含有溶液は、必要に応じて、さらに水および/または塩基化合物を原料として用いて調製してもよい。
水は、チタン化合物を脂肪族ジオールに溶解させる際の溶解助剤として有効であることが知られているが、本発明者らの検討によれば3価以上の多価アルコールと併用することにより、さらに溶解補助効果を向上させることができる。
塩基化合物は、チタン化合物を脂肪族ジオールに溶解させる際の溶解助剤として有効であることが知られているが、本発明者らの検討によれば3価以上の多価アルコールと併用することにより、さらに溶解補助効果を向上させることができる。
本発明に係るチタン含有溶液を調製する際に用いられる塩基化合物とは、脂肪族ジオール溶媒中でプロトン受容体(ブレンステッド塩基)または電子供与体(ルイス塩基)を生成する化合物を指す。
上記塩基化合物としては、たとえば、
アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、モルホリン、1,4,7−トリアザシクロノナン、アミノエタノール、アニリン、ピリジンなどのアミン化合物;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム化合物;
テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシドなどの4級ホスホニウム化合物;
水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、酢酸マグネシウム、マグネシウムエトキシド、ジメチルマグネシウムなどのアルカリ土類金属化合物;および
下記に詳述されるアルカリ金属化合物などが挙げられる。これらの中ではアルカリ金属化合物が好ましい。
アルカリ金属化合物としては、たとえば、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属単体;
水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ルビジウム、水素化セシウムなどのアルカリ金属水素化物;
メチルリチウム、n−ブチルリチウム、シクロペンタジエニルナトリウム、シクロペンタジエニルカリウムなどのアルカリ金属有機金属化合物;
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物;
リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ルビジウムエトキシド、セシウムエトキシド、ナトリウムグリコキシド、ナトリウムフェノキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;
炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。これらの中ではアルカリ金属水酸化物が好ましい。
これらの塩基化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの塩基化合物は、必要に応じて、水、アルコール類などの溶媒で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
本発明に係るチタン含有溶液は、必要に応じて、上記以外の種々の無機化合物、有機化合物をさらに用いて調製してもよい。たとえば、前記した公知の溶解助剤をさらに添加すると、チタンの溶解補助効果をより向上させうる場合があるため、より高濃度のチタン含有溶液を必要とする場合には好ましい。
本発明に係るチタン含有溶液の原料である、チタン化合物と、脂肪族ジオールと、3価以上の多価アルコールと、必要に応じて水および/または塩基化合物とからチタン含有溶液を調製する方法については特に限定されない。気相、液相または固相状態の各原料を、同時にまたは時間間隔をおいて接触させた後、静置による自然混合または物理的手段による撹拌混合を行えばよい。なお、あらかじめ脂肪族ジオールと3価以上の多価アルコールとを混合した後に、チタン化合物を混合するのが好ましい。
また、チタン含有溶液を調製するに際し、水を50ppm以上含有する溶媒にチタン化合物を混合することが好ましい。溶媒に含有される水分量は、好ましくは100ppm以上であり、より好ましくは1000ppm以上であり、さらに好ましくは5000ppm以上である。溶媒中の含水量が前記範囲以上であると、チタン含有溶液の調製時に不溶物の析出を抑制でき、あるいは、チタン含有溶液の保存時に不溶物の析出を抑制できるなど、チタン含有溶液の均一性あるいは安定性を向上できることがある。
この混合操作は減圧下、常圧下または加圧下で行うことができ、また、窒素などの不活性ガス雰囲気下または空気雰囲気下で行うことができる。なお、吸湿性の大きな原料を使用する場合もあることから、水分量の厳密管理を必要とする場合には乾燥ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明に係るチタン含有溶液の調製における、各原料を混合する温度は、通常200℃以下、好ましくは室温〜70℃の範囲である。
本発明に係るチタン含有溶液を調製する際には、上記の混合操作終了後、そのまま調製を終えてもよいが、通常は加熱操作を行う。
加熱操作を行う温度は、通常は室温以上、好ましくは60〜200℃の範囲である。加熱操作中に溶液から揮発する水、アルコールなどの低沸点化合物については、還流冷却器などの還流手段を用いて溶液中に還流してもよく、系外に除去してもよい。加熱操作を行う時間は、通常0.05〜16時間、好ましくは0.1〜4時間である。
本発明に係るチタン含有溶液は、調製後、調製温度より低温にすると増粘することがあり、場合によってはガラス状の固体となることがある。その場合には、必要に応じて加熱して融解することにより、再び均一な溶液として目的とする種々の用途に用いればよい。
なお、このチタン含有溶液は、原料の混合開始時から調製完了時まで一貫して溶液状態であることが好ましい。
本発明に係るチタン含有溶液は、均一な透明溶液であることが好ましい。すなわち、溶液のHAZE値が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であることが望ましい。溶液のHAZE値は、たとえば日本電色工業(株)製ND−1001DPなどの装置を用いて測定することができる。しかしながら、本発明に係るチタン含有溶液は、用途によっては、未溶解のチタン成分を含有するスラリー、または顔料などの不溶性微粒子が添加されたスラリーなどの不均一溶液の形態でも使用することが可能である。
本発明に係るチタン含有溶液は、ゲル成分を含有しないことが好ましい。本発明に係るチタン含有溶液を後述のようにポリエステル重合用触媒として用いる場合において、チタン含有溶液中にゲル成分が含有されていると、重合活性が低くなる、あるいは得られるポリエステル樹脂の性能に悪影響が生じる、などの不都合が起こる場合がある。
本発明のチタン含有溶液は、ハロゲン原子含有量が100ppm以下であることが好ましい。ハロゲン原子含有量が前記範囲を超えると、チタン含有溶液をポリエステル重縮合触媒として用いた際に、ポリエステル重縮合反応装置の腐食が大きくなることがある。
(第2の発明)
次に、本発明の第2の形態について具体的に説明する。
本発明の第2の形態は、溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が主として0.4nm以上5nm以下であることを特徴とするチタン含有溶液である。
本発明のチタン含有溶液は、好ましくは、溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が主として0.4nm以上2nm以下であることが望ましい。
本発明のチタン含有溶液は、さらに好ましくは、溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が主として0.4nm以上1nm以下であることが望ましい。
チタン含有溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が前記範囲未満であると、このチタン含有溶液をポリエステル重合用触媒として用いた場合に、ポリエステル重縮合時あるいは得られたポリエステル樹脂の溶融成形時の着色や副生物の生成が大きく、樹脂性能を悪化させる傾向がある。この原因は明らかでないが、粒子径が小さいことにより粒子表面に存在するチタン原子の割合が多く、活性が過度に高いためと推定される。
一方、チタン含有溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が前記範囲を超えると、このチタン含有溶液をポリエステル重合用触媒として用いた場合に、チタン重量あたりの重合活性が低下することがある。これは、粒子径の増大により拡散性が低下することが一つの原因であると思われる。
本発明のチタン含有溶液中のチタン含有化合物の粒子直径は主として粒子直径が0.4nm以上5nm以下であるが、本発明のチタン含有溶液には、粒子直径がこの範囲を外れるチタン含有化合物が含有されていてもよい。
本発明のチタン含有溶液中のチタン含有化合物のうち、粒子直径が0.4nm以上5nm以下であるものの割合は、チタン含有化合物の体積分率として好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上である。
主として粒子直径が0.4nm以上5nm以下とは、本発明のチタン含有溶液中のチタン含有化合物のうち、粒子直径が0.4nm以上5nm以下であるものの割合が、チタン含有化合物の体積分率として50%以上であることをいう。好ましくは体積分率が80%以上であることが望ましい。
より好ましくは、本発明のチタン含有溶液中のチタン含有化合物のうち、粒子直径が0.4nm以上2nm以下であるものの割合が、チタン含有化合物の体積分率として好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上であることが望ましい。
さらに好ましくは、本発明のチタン含有溶液中のチタン含有化合物のうち、粒子直径が0.4nm以上1nm以下であるものの割合が、チタン含有化合物の体積分率として好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上であることが望ましい。
チタン含有溶液中のチタン含有化合物の粒子直径は、例えば、レーザー動的光散乱法、レーザー静的光散乱法、X線小角散乱法、電子顕微鏡などの方法で測定することができる。
本発明のチタン含有溶液は、溶媒または溶媒の1成分として、脂肪族ジオールを含有することが好ましい。
本発明のチタン含有溶液に含有される脂肪族ジオールとしては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらの中では、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。これらの脂肪族ジオールは、1種単独で、または2種以上含有されていてもよい。
本発明のチタン含有溶液中の脂肪族ジオールの含有量は、特に制限はないが、好ましくは4〜99重量%であり,より好ましくは19〜94重量%であり、さらに好ましくは50〜85重量%である。脂肪族ジオールの含有量は、たとえばガスクロマトグラフなどの分析法により測定できる。脂肪族ジオールの含有量を前記範囲内とすると、チタン含有溶液をポリエステル重縮合触媒として用いた際に、重合活性が向上できることがある。
また、脂肪族ジオールとチタンのモル比(脂肪族ジオール/チタン原子比)が10以上であることが好ましい。脂肪族ジオール/チタン原子比が10未満であると、チタン含有溶液の保存安定性が低くなることがある。
本発明のチタン含有溶液は、3価以上の多価アルコールを含有していてもよい。
本発明のチタン含有溶液に含有される3価以上の多価アルコールとしては、たとえば、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、プルラン、シクロデキストリンなどが挙げられる。これらの中では、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが好ましく、グリセリンがより好ましい。これらの3価以上の多価アルコールは、1種単独で、または2種以上含有されていてもよい。
本発明のチタン含有溶液中の3価以上の多価アルコールの含有量は、特に制限はないが、好ましくは0.1〜95重量%であり、より好ましくは5〜80重量%であり、さらに好ましくは15〜50重量%である。3価以上の多価アルコールの含有量は、たとえばガスクロマトグラフなどの分析法により測定できる。3価以上の多価アルコールの含有量を前記範囲内とすると、チタン含有溶液をポリエステル重縮合触媒として用いた際に、重合活性が向上できることがある。
本発明のチタン含有溶液は、塩基化合物および/または水を含有していてもよい。
本発明のチタン含有溶液に含有される塩基化合物とは、脂肪族ジオール溶媒中でプロトン受容体(ブレンステッド塩基)または電子供与体(ルイス塩基)を生成する化合物を指す。
上記塩基化合物としては、たとえば、
アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、モルホリン、1,4,7−トリアザシクロノナン、アミノエタノール、アニリン、ピリジンなどのアミン化合物;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム化合物;
テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシドなどの4級ホスホニウム化合物;
水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、酢酸マグネシウム、マグネシウムエトキシド、ジメチルマグネシウムなどのアルカリ土類金属化合物;および
下記に詳述されるアルカリ金属化合物などが挙げられる。これらの中ではアルカリ金属化合物が好ましい。
アルカリ金属化合物としては、たとえば、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属単体;
水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ルビジウム、水素化セシウムなどのアルカリ金属水素化物;
メチルリチウム、n−ブチルリチウム、シクロペンタジエニルナトリウム、シクロペンタジエニルカリウムなどのアルカリ金属有機金属化合物;
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物;
リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ルビジウムエトキシド、セシウムエトキシド、ナトリウムグリコキシド、ナトリウムフェノキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;
炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。これらの中ではアルカリ金属水酸化物が好ましい。
これらの塩基化合物は、1種単独で、または2種以上含有されていてもよい。
本発明のチタン含有溶液中の水の含有量は、特に制限はないが、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは50ppm〜30重量%であり、さらに好ましくは100ppm〜10重量%である。水の含有量を前記範囲内とすると、チタン含有溶液をポリエステル重縮合触媒として用いた際に、重合活性が向上できることがある。
本発明のチタン含有溶液中の塩基化合物の含有量は、特に制限はないが、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは50ppm〜30重量%であり、さらに好ましくは100ppm〜10重量%である。塩基化合物の添加量を前記範囲内とすると、チタン含有溶液をポリエステル重縮合触媒として用いた際に、重合活性が向上できることがある。
本発明のチタン含有溶液に含有されるチタン含有化合物粒子は、実質的に非晶質であることが好ましい。
チタン含有化合物粒子が結晶質であると、チタン含有溶液をポリエステル重縮合触媒として用いた際に、重合活性が低くなることがある。
チタン含有化合物粒子が実質的に非晶質であることは、X線回折法により明瞭な回折ピークが観測されないことや、透過電子顕微鏡の観察で明瞭な結晶格子が視認されないことなどにより確認することができる。
本発明のチタン含有溶液は、チタン含有量がチタン原子として0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましい。
チタン含有量が前記範囲未満であると、チタン含有溶液をポリエステル重縮合触媒として用いた際に、ポリエステル重縮合反応系中に添加されるチタン触媒成分以外の成分が多くなり、重縮合反応に悪影響を及ぼすことがある。
本発明のチタン含有溶液は、ハロゲン原子含有量が100ppm以下であることが好ましい。ハロゲン原子含有量が前記範囲を超えると、チタン含有溶液をポリエステル重縮合触媒として用いた際に、ポリエステル重縮合反応装置の腐食が大きくなることがある。
本発明のチタン含有溶液を製造する方法は特に限定されないが、たとえば、チタン化合物と、必要に応じて脂肪族ジオールと、さらに必要に応じて3価以上の多価アルコールと、さらに必要に応じて水および/または塩基化合物とからチタン含有溶液を調製する方法により得られる。
具体的には、気相、液相または固相状態の各原料を、同時にまたは時間間隔をおいて接触させた後、静置による自然混合または物理的手段による撹拌混合を行えばよい。なお、あらかじめ脂肪族ジオールと3価以上の多価アルコールとを混合した後に、チタン化合物を混合するのが好ましい。
また、チタン含有溶液を調製するに際し、水を50ppm以上含有する溶媒にチタン化合物を混合することが好ましい。溶媒に含有される水分量は、好ましくは100ppm以上であり、より好ましくは1000ppm以上であり、さらに好ましくは5000ppm以上である。溶媒中の含水量が前記範囲以上であると、チタン含有溶液の調製時に不溶物の析出を抑制でき、あるいは、チタン含有溶液の保存時に不溶物が析出を抑制できるなど、チタン含有溶液の均一性あるいは安定性を向上できることがある。
この混合操作は減圧下、常圧下または加圧下で行うことができ、また、窒素などの不活性ガス雰囲気下または空気雰囲気下で行うことができる。なお、吸湿性の大きな原料を使用する場合もあることから、水分量の厳密管理を必要とする場合には乾燥ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
チタン含有溶液の調製における、各原料を混合する温度は、通常200℃以下、好ましくは室温〜70℃の範囲である。
チタン含有溶液を調製する際には、上記の混合操作終了後、そのまま調製を終えてもよいが、通常は加熱操作を行う。
加熱操作を行う温度は、通常は室温以上、好ましくは60〜200℃の範囲である。加熱操作中に溶液から揮発する水、アルコールなどの低沸点化合物については、還流冷却器などの還流手段を用いて溶液中に還流してもよく、系外に除去してもよい。加熱操作を行う時間は、通常0.05〜16時間、好ましくは0.1〜4時間である。
このチタン含有溶液は、調製後、調製温度より低温にすると増粘することがあり、場合によってはゲルまたはガラス状の固体となることがある。その場合には、必要に応じて加熱して融解することにより、再び均一な溶液として用いればよい。
なお、このチタン含有溶液は、原料の混合開始時から調製完了時まで一貫して溶液状態であることが好ましい。
このチタン含有溶液は、均一な透明溶液であることが好ましい。すなわち、溶液のHAZE値が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であることが望ましい。溶液のHAZE値は、たとえば日本電色工業(株)製ND−1001DPなどの装置を用いて測定することができる。しかしながら、このチタン含有溶液は、目的によっては、未溶解のチタン成分を含有するスラリー、または顔料などの不溶性微粒子が添加されたスラリーなどの不均一溶液の形態でも使用することが可能である。
本発明に係るチタン含有溶液は、ゲル成分を含有しないことが好ましい。本発明に係るチタン含有溶液を後述のようにポリエステル重合用触媒として用いる場合において、チタン含有溶液中にゲル成分が含有されていると、重合活性が低くなる、あるいは得られるポリエステル樹脂の性能に悪影響が生じる、などの不都合が起こる場合がある。
本発明のチタン含有溶液の製造に用いるチタン化合物としては、たとえば、
四フッ化チタン、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、ヘキサフロロチタン酸などのハロゲン化チタン化合物;
α−チタン酸、β−チタン酸、チタン酸アンモニウム、チタン酸ナトリウムなどのチタン酸化合物;
硫酸チタン、硝酸チタンなどの無機酸チタン塩化合物;
テトラメチルチタン、テトラエチルチタン、テトラベンジルチタン、テトラフェニルチタン、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライドなどのチタン有機金属化合物;
テトラフェノキシチタンなどのアリーロキシチタン化合物;
テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、テトラキス(トリフェニルシロキシ)チタンなどのシロキシチタン化合物;
酢酸チタン、プロピオン酸チタン、乳酸チタン、クエン酸チタン、酒石酸チタンなどの有機酸チタン塩化合物;
テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、チタンテトラピロリドなどのチタンアミド化合物;および
下記に詳述されるアルコキシチタン化合物などが挙げられる。これらの中ではアルコキシチタン化合物が好ましい。
アルコキシチタン化合物としては、たとえば、
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシドなどのチタンテトラアルコキシド類;
ポリ(ジブチルチタネート)、Ti(OC20、Ti1616(OC32などの縮合チタンアルコキシド類;
クロロチタントリイソプロポキシド、ジクロロチタンジエトキシドなどのハロゲン置換チタンアルコキシド類;
チタンアセテートトリイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシドなどのカルボン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ジオクチルピロホスフェート)イソプロポキシドなどのホスホン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキシドなどのスルホン酸基置換チタンアルコキシド類;
アンモニウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサエトキシチタネート、カリウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサ−n−プロポキシチタネートなどのアルコキシチタネート類;
チタンビス(2,4−ペンタンジオナート)ジイソプロポキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシドなどのβ−ジケトネート置換チタンアルコキシド類;
チタンビス(アンモニウムラクテート)ジイソプロポキシドなどのα−ヒドロキシカルボン酸置換チタンアルコキシド類;および
チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、2−アミノエトキシチタントリイソプロポキシドなどのアミノアルコール置換チタンアルコキシド類などが挙げられる。これらの中ではチタンテトラアルコキシド類が好ましい。
これらのチタン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのチタン化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえばアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
[ポリエステル製造用触媒]
本発明のポリエステル製造用触媒は、本発明のチタン含有溶液よりなることを特徴とする。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、本発明のチタン含有溶液の存在下に重縮合させることを特徴とする。
ここで、芳香族ジカルボン酸としては、たとえば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などを使用することができる。
また、脂肪族ジオールとしては、たとえば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを使用することができる。
また、本発明では、芳香族ジカルボン酸とともに、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を原料として使用することができる。また、脂肪族ジオールとともに、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類等の芳香族ジオール等を原料として使用することができる。
さらに本発明では、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール等の多官能性化合物を原料として使用することができる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、チタン含有溶液の添加量は、チタン原子として1〜100ppmとなることが好ましく、1〜50ppmとなることがより好ましい。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、必要に応じて、上述のチタン含有溶液のほかに、上述した塩基化合物を用いてもよい。
上述した塩基化合物の添加量は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および窒素の含有量が、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子および窒素原子の総量として1ppm以上となることが好ましく、1〜500ppmとなることがより好ましく、2〜200ppmとなることがさらに好ましい。
アルカリ金属、アルカリ土類金属および窒素の含有量が前記範囲内であると、得られるポリエステル樹脂の色調やアセトアルデヒド含有量などの樹脂品質が向上できることがある。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、必要に応じて、上述のチタン含有溶液のほかに、リン化合物を用いてもよい。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において用いられるリン化合物としては、たとえば、
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;
トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;
メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等の酸性リン酸エステル類;
メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸などの有機ホスホン酸およびそのエステル類;および
リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン化合物およびそれらの塩などが挙げられる。
これらの中では、トリ−n−ブチルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、フェニルホスホン酸、リン酸、ピロリン酸などが好ましい。
これらのリン化合物の添加量は、通常、得られるポリエステル樹脂に対して、リン原子として1〜300ppmとなる量で用いられる。
これらのリン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのリン化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、必要に応じて硫黄化合物を用いることができる。硫黄化合物を用いると、ポリエステル樹脂の生産性が向上するとともに色調などの品質が向上できることがある。
上述した、必要に応じて用いられる硫黄化合物としては、
硫黄単体;
硫化アンモニウム、硫化ナトリウムなどのサルファイド化合物;
亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウムなどのスルフィン酸化合物;
硫酸、硫酸水素ナトリウム、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸化合物;および
三酸化硫黄、過硫酸、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウムなどその他の無機硫黄化合物などが挙げられる。
これらの中では、硫酸、p−トルエンスルホン酸などが好ましい。
上記の硫黄化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの化合物は、必要に応じて、水、アルコール類などの溶媒で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法においては、さらに必要に応じてその他の化合物を用いることができる。
上述した、必要に応じて用いられるその他化合物は、
ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ジルコニウム、ニッケル、銅、ケイ素、スズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である。
ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ジルコニウム、ニッケル、銅、ケイ素、スズからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物としては、これらの元素の酢酸塩などの脂肪酸塩、これらの元素の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などのハロゲン化物、これらの元素のアセチルアセトナート塩、これらの元素の酸化物などが挙げられるが、酢酸塩または炭酸塩が好ましい。
本発明で必要に応じて用いられるその他化合物の好ましい具体的化合物として以下のものが挙げられる。
ホウ素化合物としては、酸化ホウ素、臭化ホウ素、フッ化ホウ素などが挙げられ、特に酸化ホウ素が好ましい。
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムトリ−sec−ブトキシドなどが挙げられ、特にアルミン酸ナトリウムが好ましい。
ガリウム化合物としては、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウムなどが挙げられ、特に酸化ガリウムが好ましい。
マンガン化合物としては、酢酸マンガンなどの脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸マンガンまたは炭酸マンガンが好ましい。
鉄化合物としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、乳酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、ナフテン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、シュウ酸三カリウム鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、フマル酸鉄(III)、四酸化三鉄などが挙げられ、特に鉄(III)アセチルアセトナートが好ましい。
コバルト化合物としては、酢酸コバルトなどの脂肪酸コバルト塩、炭酸コバルト、塩化コバルト、コバルトのアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸コバルトまたは炭酸コバルトが好ましい。
亜鉛化合物としては、酢酸亜鉛などの脂肪酸亜鉛塩、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛のアセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸亜鉛または炭酸亜鉛が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド、炭酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどが挙げられ、特にジルコニウムブトキシドが好ましい。
ニッケル化合物としては、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、ギ酸ニッケル、水酸化ニッケル、硫化ニッケル、ステアリン酸ニッケルなどが挙げられ、特に酢酸ニッケルが好ましい。
銅化合物としては、酢酸銅、臭化銅、炭酸銅、塩化銅、クエン酸銅、2−エチルヘキサン銅、フッ化銅、ギ酸銅、グルコン酸銅、水酸化銅、銅メトキシド、ナフテン酸銅、硝酸銅、酸化銅、フタル酸銅、硫化銅などが挙げられ、特に酢酸銅が好ましい。
ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、特にテトラエトキシシランが好ましい。
スズ化合物としては、酢酸スズ、塩化スズ、酸化スズ、シュウ酸スズ、硫酸スズなどが挙げられ、特に酢酸スズが好ましい。
これらのその他化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物を用いることも可能であるが、アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物は用いないことが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法により得られるポリエステル樹脂中に含有される金属量に制限はないが、好ましくは全金属原子の合計量として40ppm未満であることが望ましく、30ppm以下であることがより望ましい。金属含有量が前記範囲を超えると、使用後のポリエステル樹脂の廃棄処分や再資源化の際にその設備の負担が大きくなることがある。
特に、重金属の含有量は10ppm以下であることが好ましく、4ppm以下であることがさらに好ましい。
ここで、重金属としては、土屋健三郎編「金属中毒学」、医歯薬出版(1983)に分類されているように、ラジウム、スカンジウムとイットリウムを除く3族元素、チタンを除く4族元素、5族から12族の全元素、ホウ素とアルミニウムを除く13族元素、炭素とケイ素を除く14族元素、窒素とリンとヒ素を除く15族元素、酸素と硫黄とセレンを除く16族元素を指す。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法により得られるポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂中に含有されるアセトアルデヒド量[AA]が4ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることがより好ましく、2ppm以下であることがさらに好ましい。[AA]が上記範囲外であると、得られたポリエステルから成形された容器の内容物の味やにおいに悪影響を与えることがある。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法により得られるポリエステル樹脂は、所定の方法で射出成形機を用いて成形して得られる成形体に含有されるアセトアルデヒド量[AA]と、成形前のポリエステル樹脂に含有されるアセトアルデヒド量[AA]との差ΔAAが15ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましい。ΔAAが上記範囲外であると、得られたポリエステルから成形された容器の内容物の味やにおいに悪影響を与えることがある。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法により得られるポリエステル樹脂は、ポリエステル中に含有される環状三量体量[CT]が0.50重量%以下であることが好ましく、0.40重量%以下であることがより好ましい。[CT]が上記範囲外であると、中空成形体等の成形時に金型汚れが起こりやすくなる。
また、本発明のポリエステル樹脂の製造方法により得られるポリエステル樹脂は、所定の方法で射出成形機を用いて成形して得られる成形体に含有される環状三量体量[CT]と、成形前のポリエステル樹脂に含有される環状三量体量[CT]との差ΔCTが0.1重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以下であることがより好ましい。ΔCTが上記範囲外であると、中空成形体等の成形時に金型汚れが起こりやすくなる。
ここで、射出成形機を用いてポリエステル樹脂を成形して成形体を得る方法、および、環状三量体含有量の測定方法は以下のとおりとする。
成形時の成形温度は290±10℃、成形サイクルは約65±10秒とする。
さらに具体的には、粒状ポリエステル樹脂2kgを温度140℃、圧力10torrの条件で16時間以上棚段式の乾燥機を用いて乾燥して、粒状ポリエステル樹脂の水分を50ppm以下にする。
次に、乾燥された粒状ポリエステル樹脂を名機製作所(株)製M−70B射出成形機により、成形時には露点が−70℃の窒素をホッパー上部、スクリューフィーダーシュート部に各5ノルマル立方メートル/時間の割合でフィードし、バレル設定温度290℃、また成形機のC/C/C/ノズル先の温度を260℃/290℃/290℃/300℃の各温度にして、金型冷却温度15℃の条件下で射出成形して、段付角板状の成形物を得る。
段付角板状成形物の射出成形は、計量15秒、射出3秒前後となるようにして、乾燥された粒状ポリエステル樹脂をホッパーより射出成形機に供給して行う。また成形サイクルは約65秒前後とする。なお段付角板状成形物1個あたりの重量は72グラムであり、環状三量体量測定用資料は、射出成形開始後11個〜15個目のいずれか1個を用いて行う。
段付角板状成形物は、図1に示すような形状を有しており、7mmから2mmまで段差1mmの6段階の厚みを有する。この段付角板状成形物の4mm部分を切り取り、チップ状に切断し、環状三量体量測定用試料として用いる。
所定量の環状三量体量測定用試料をo−クロロフェノールに加熱溶解した後、テトラヒドロフランで再析出してろ過して線状ポリエステルを除いた後、得られたろ液を液体クロマトグラフィー(島津製作所製LC7A)に供給してポリエステル樹脂中に含まれる環状三量体の量を求め、この値を測定に用いたポリエステル樹脂の量で割って、ポリエステル樹脂中に含まれる環状三量体含有量(重量%)とする。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法により得られるポリエステル樹脂は、カラーb値が10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂のカラーb値が上記範囲外であると、ボトル等の中空成形体の黄色味が強くなる傾向がある。
また、本発明のポリエステル樹脂の製造方法により得られるポリエステル樹脂は、所定の方法で射出成形機を用いて成形して得られる成形体のカラーb値と、成形前のポリエステル樹脂のカラーb値との差Δbが10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。Δbが上記範囲外であると、ボトル等の中空成形体の黄色味が強くなる傾向がある。
本発明のポリエステル樹脂は、カラーL値が75以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、85以上であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂のカラーL値が上記範囲外であると、ボトル等の中空成形体の色調が暗くなる傾向がある。
なお、カラーL値はポリエステル樹脂を加熱結晶化させた後、45°拡散方式色差計(日本電色工業(株)製SQ−300H)などを用いて測定される。
[ポリエステル樹脂の製造方法]
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させてポリエステル樹脂を製造する。以下その一例について説明する。
(エステル化工程)
まず、ポリエステル樹脂を製造するに際して、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化させる。
具体的には、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。
このようなスラリーには芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して、通常1.005〜1.5モル、好ましくは1.01〜1.2モルの脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
エステル化反応は好ましくは2個以上のエステル化反応基を直列に連結した装置を用いて脂肪族ジオールが還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら行う。
エステル化反応工程は通常多段で実施され、第1段目のエステル化反応は、通常、反応温度が240〜270℃、好ましくは245〜265℃であり、圧力が0.02〜0.3MPaG(0.2〜3kg/cmG)、好ましくは0.05〜0.2MPaG(0.5〜2kg/cmG)の条件下で行われ、また最終段目のエステル化反応は、通常、反応温度が250〜280℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が0〜0.15MPaG(0〜1.5kg/cmG)、好ましくは0〜0.13MPaG(0〜1.3kg/cmG)の条件下で行われる。
エステル化反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件であればよい。
例えば、エステル化反応が3段階で実施される場合には、第2段目のエステル化反応の反応温度は通常245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は通常0〜0.2MPaG(0〜2kg/cmG)、好ましくは0.02〜0.15MPaG(0.2〜1.5kg/cmG)であればよい。
これらの各段におけるエステル化反応率は、特に制限はされないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
このエステル化工程により、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応物である低次縮合物(エステル低重合体)が得られ、この低次縮合物の数平均分子量が500〜5,000程度である。
上記のようなエステル化工程で得られた低次縮合物は、次いで重縮合(液相重縮合)工程に供給される。
(液相重縮合工程)
液相重縮合工程においては、エステル化工程で得られた低次縮合物を、減圧下で、かつポリエステル樹脂の融点以上の温度(通常250〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族ジオールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
重縮合反応は、1段階で行ってもよく、複数段階に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が複数段階で行われる場合には、第1段目の重縮合反応は、反応温度が250〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が0.07〜0.003MPaG(500〜20Torr)、好ましくは0.03〜0.004MPaG(200〜30Torr)の条件下で行われ、最終段の重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜295℃、圧力が1〜0.01kPaG(10〜0.1Torr)、好ましくは0.7〜0.07kPaG(5〜0.5Torr)の条件下で行われる。
重縮合反応を3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段目の1段前間での重縮合反応は、上記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件で行われる。例えば、重縮合工程が3段階で行われる場合には、第2段目の重縮合反応は通常、反応温度が260〜295℃、好ましくは270〜285℃で、圧力が7〜0.3kPaG(50〜2Torr)、好ましくは5〜0.7kPaG(40〜5Torr)の条件下で行われる。
触媒として、チタン含有溶液、および必要に応じて塩基化合物、リン化合物およびその他の化合物は、重縮合反応時に存在していればよい。このためこれらの化合物の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
以上のような液相重縮合工程で得られる液相重縮合ポリエステル樹脂の固有粘度[IV]は0.40〜1.0dl/g、好ましくは0.50〜0.90dl/gであることが望ましい。なお、この液相重縮合工程の最終段目を除く各段階において達成される固有粘度は特に制限されないが、各段階における固有粘度の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましい。
この重縮合工程で得られる液相重縮合ポリエステル樹脂は、通常、溶融押し出し成形されて粒状(チップ状)に成形される。
この液相重縮合工程においては、得られる液相重縮合ポリエステル樹脂のCOOH基濃度を好ましくは60当量/トン以下、より好ましくは55〜10当量/トン、さらに好ましくは50〜15当量/トンとする。液相重縮合ポリエステル樹脂中のCOOH基濃度を上記範囲にすると、固相重合後のポリエステル樹脂の透明性が高くなる。
液相重縮合工程において、例えば脂肪族ジオールと芳香族ジカルボン酸のモル比を0.98〜1.3、好ましくは1.0〜1.2とすることにより、液相重合温度を275〜295℃としたときに液相重縮合ポリエステル樹脂中のCOOH基濃度を60当量/トン以下とすることができる。
(固相重縮合工程)
この液相重縮合工程で得られるポリエステル樹脂は、所望によりさらに固相重縮合することができる。
固相重縮合工程に供給される粒状ポリエステル樹脂は、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエステル樹脂を乾燥状態で通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分から4時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、粒状ポリエステル樹脂を水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、または水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。
予備結晶化されたポリエステル樹脂は、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。
なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエステル樹脂の固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度は、液相重縮合後のポリエステル樹脂の固有粘度とほぼ同じであり、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度と予備結晶化される前のポリエステル樹脂の固有粘度との差は、通常0.06dl/g以下である。
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、温度が190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が120〜0.001kPa、好ましくは98〜0.01kPaの条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
ポリエステル樹脂と不活性ガスの流量はバッチ式の場合、ポリエステル樹脂1kgに対し、0.1〜50Nm3/hrであり、連続式の場合、ポリエステル樹脂1kg/hrに対し、0.01〜2Nm3/hrである。
固相重合の雰囲気として使用される不活性ガスは常に純粋な不活性ガスを使用してもよく、また固相重合工程から排出される不活性ガスを循環再使用してもよい。固相重合工程から排出された不活性ガスには、水、エチレングリコール、アセトアルデヒドなどの縮合物、分解物が含有されている。循環再使用の際には縮合物、分解物を含んだ不活性ガスでもよく、また縮合物、分解物を除去、精製した不活性ガスでもよい。
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエステル樹脂には、例えば特公平7−64920号公報記載の方法で水処理を行ってもよく、この水処理は、粒状ポリエステル樹脂を水、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス、水蒸気含有空気などと接触させることにより行われる。
このようにして得られたポリエステル樹脂の固有粘度は、通常0.70dl/g以上、好ましくは0.75〜1.0dl/gであることが望ましい。
このようにして得られたポリエステル樹脂のCOOH基濃度は好ましくは10〜35当量/トン、より好ましくは12〜30当量/トンである。
このようにして得られたポリエステル樹脂を275℃で成形して得られる段付き角板状成形体の5mm厚のヘイズは好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
このようにして得られたポリエステル樹脂を275℃で成形して得られる段付き角板状成形体の4mm厚のヘイズは好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
上記のようなエステル化工程と重縮合工程とを含むポリエステル樹脂の製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
このようなポリエステル樹脂は、特に色相に優れ、透明性に優れ、ボトル用途に用いることが特に好ましい。
このようにして製造されたポリエステル樹脂は、従来から公知の添加剤、例えば、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、核剤、染顔料等の着色剤などが添加されていてもよく、これらの添加剤はポリエステル樹脂製造時のいずれかの段階で添加してもよく、成形加工前、マスターバッチにより添加したものであってもよい。
これに伴い、上記の添加剤は、粒状ポリエステル樹脂の粒子内部に一様の濃度で含有されていてもよいし、粒状ポリエステル樹脂の粒子表面近傍に濃縮されて含有されていてもよいし、また粒状ポリエステル樹脂の一部の粒子に他の粒子より高濃度で含有されていてもよい。
本発明によって得られるポリエステル樹脂は各種成形体の素材として使用することができ、例えば、溶融成形してボトルなどの中空成形体、シート、フィルム、繊維等に使用されるが、ボトルに使用することが好ましい。
本発明によって得られるポリエステル樹脂からボトル、シート、フィルム、繊維などを成型する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、ボトルを成形する場合には、上記ポリエステル樹脂を溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法、上記ポリエステル樹脂から射出成形によりプリフォームを製造し、該プリフォームを延伸適性温度まで加熱し、次いでプリフォームを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法などがある。
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂の固有粘度は、ポリエステル樹脂0.1gをテトラクロロエタン/フェノール混合液(混合比:1/1(重量比))20cc中に加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から算出される。
また、本発明において、チタン含有溶液中のチタン化合物の粒子直径は、MALVERN社製レーザー動的光散乱式粒子径測定装置(MALVERN HPPS)を用いて90℃で測定した。
本実施例においてチタン含有溶液の調製に使用するエチレングリコールは、特に断りがない限り、試薬特級品(水分含有量200ppm)を使用した。
【実施例1】
すべての操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))99.00gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取し、水酸化ナトリウム1.00g(25.00mmol)を添加した。次いで、室温で撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド123.81g(435.61mmol)を添加し、チタン濃度を9重量%とした。フラスコをオイルバスに浸漬し、120℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は淡黄色透明の均一溶液であった。ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、ND−1001DP)を用いて測定したこの溶液のHAZE値は1.8%であった。
(実施例2および3)
実施例1の方法において、チタン濃度を、表1に示すように変化させて同様の実験を行った。その際、チタン濃度は、チタンテトライソプロポキシド添加量により調整した。得られたチタン含有溶液の外観評価を表1に示した。
(比較例1〜3)
実施例1の方法において、エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))の代わりにエチレングリコールを用い、チタン濃度を、表1に示すように変化させて同様の実験を行った。その際、チタン濃度は、チタンテトライソプロポキシド添加量により調整した。得られたチタン含有溶液の外観評価を表1に示した。
【表1】

表1に示すように、溶媒にグリセリンを添加することによりチタン成分の均一溶解性が向上する。また同時に、溶媒にグリセリンを添加することにより、チタン成分の最大溶解度が向上し、よりチタン濃度の高いチタン含有溶液を調製することができる。
【実施例4】
すべての操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:93/7(重量比))87.75gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取し、水0.376g(20.89mmol)を添加した。次いで、室温で撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド11.875g(41.78mmol)を添加し、チタン濃度を2重量%、水/チタン比を0.19/1(重量比)とした。フラスコをオイルバスに浸漬し、120℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.1%であった。この溶液は調製時に一貫して無色透明な均一溶液であった。
この溶液を4週間室温で保管したところ、溶液に変色や沈殿生成は観察されず、無色透明の均一溶液のままであった。
(比較例4)
実施例4の方法において、エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:93/7(重量比))の代わりにエチレングリコールを用いたこと以外は実施例4と同様に行った。得られたチタン含有溶液は、沈殿を含有する白濁した溶液であった。
(参考例1)
実施例4の方法において、脱水エチレングリコールおよび脱水グリセリンを用い、エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:93/7(重量比))87.75gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取した。エチレングリコール/グリセリン混合液中の水分は30ppmであった。次いで、室温で撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド11.875g(41.78mmol)を添加した。チタンテトライソプロポキシドの添加中に白色沈殿の生成が観察された。ついで直ちに、この溶液に水0.376g(20.89mmol)を添加した。チタン濃度は2重量%、水/チタン比は0.19/1(重量比)となる。フラスコをオイルバスに浸漬し、120℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.2%であった。
この溶液を室温で保管したところ、3週間経過時点までは溶液に変色や沈殿生成は観察されず無色透明の均一溶液のままであったが、4週間経過時点では溶液に白色沈殿が生成していた。
実施例4と参考例1より、均一なチタン含有溶液の保存安定性を高めるためには、チタン化合物を溶媒に添加する際の溶媒中の含水量の制御が重要であることがわかる。
(実施例5〜11)および(比較例5〜7)
実施例4の方法において、水/チタン比(重量比)およびエチレングリコール/グリセリン混合液の混合比(重量比)を、表2に示すように変化させて同様の実験を行った。その際、溶液の総量が100gとなるようにエチレングリコール/グリセリン混合液の添加量を調整した。得られたチタン含有溶液の外観評価を表2に示した。
【表2】

表2に示すように、水/チタン比(重量比)の大小に関わらず、溶媒にグリセリンを添加することにより、チタン成分の均一溶解性が向上するが、溶媒中のグリセリン濃度が過度に高くなると、チタン成分の均一溶解性が低くなる。
【実施例12】
すべての操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))81.63gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取し、水3.011g(167.12mmol)を添加し、さらに、水酸化ナトリウム3.480g(87.01mmol)を添加した後、撹拌して水酸化ナトリウムを完全に溶解させた。次いで、室温で撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド11.875g(41.78mmol)を添加し、チタン濃度を2重量%、ナトリウム/チタン比を1/1(重量比)、水/チタン比を1.51/1(重量比)とした。フラスコをオイルバスに浸漬し、120℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は、無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.0%であった。
(比較例8)
実施例12の方法において、エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))の代わりにエチレングリコールを用いたこと以外は実施例12と同様に行った。得られたチタン含有溶液は、沈殿を含有する白濁した溶液であった。
(実施例13〜19)および(比較例9)
実施例12の方法において、チタン濃度およびエチレングリコール/グリセリン混合液の混合比(重量比)を、表3に示すように変化させて同様の実験を行った。その際、ナトリウム/チタン比は1/1(重量比)に、また水/チタン比は1.51/1(重量比)に保つように、チタンテトライソプロポキシド添加量、水添加量、水酸化ナトリウム添加量を調整した。また、溶液の総量が100gとなるようにエチレングリコール/グリセリン混合液の添加量を調整した。得られたチタン含有溶液の外観評価を表3に示した。
【表3】

表3に示すように、溶媒にグリセリンを添加することにより、チタン成分の最大溶解度が向上し、よりチタン濃度の高いチタン含有溶液を調製することができる。
【実施例20】
実施例12において、エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))81.63gの代わりにエチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))79.72gを用い、かつ水酸化ナトリウム3.480g(87.01mmol)の代わりに炭酸ナトリウム一水和物5.395g(87.01mmol)を用いたこと以外は、実施例12と同様に実験を行った。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.0%であった。
【実施例21】
実施例12において、エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))81.63gの代わりにエチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))80.23gを用い、かつ水酸化ナトリウム3.480g(87.01mmol)の代わりに水酸化カリウム4.882g(87.01mmol)を用いたこと以外は、実施例12と同様に実験を行った。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.1%であった。
【実施例22】
実施例12において、加熱撹拌時の温度を室温、60℃、180℃とそれぞれ変えて実験を行った。得られたチタン含有溶液は、それぞれ無色透明の均一溶液であった。
【実施例23】
実施例12において得られたチタン含有溶液を、窒素雰囲気下80℃、あるいは大気下室温でそれぞれ30日間保管した。いずれのチタン含有溶液にも、濁り、沈殿生成または溶液の変色が見られなかったことから、保存安定性に優れていることが確認された。
【実施例24】
実施例12において、加熱撹拌時に還流コンデンサを取り外し、反応中に生成するイソプロパノールを主とする軽沸分を揮発除去しながら加熱撹拌を行った。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であり、チタン含有溶液に含有されるイソプロパノールは0.10重量%であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.0%であった。
【実施例25】
Ti1616(OC32の分子式で表される白色粉末状の16量体のチタン化合物を、文献(J.Chem.Soc.Dalton Trans.,1991,p1999)に従って合成した。
以下すべての操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))76.19gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取し、水3.011g(167.12mmol)を添加し、さらに、水酸化ナトリウム3.480g(87.01mmol)を添加した後、撹拌して水酸化ナトリウムを完全に溶解させた。次いで、室温で撹拌しながら、上記で合成したTi1616(OC326.434g(チタン原子として41.78mmol)を添加し、チタン濃度を2重量%、ナトリウム/チタン比を1/1(重量比)、水/チタン比を1.51/1(重量比)とした。フラスコをオイルバスに浸漬し、120℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.3%であった。
【実施例26】
すべての操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))90.82gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取し、水1.505g(80.27mmol)を添加し、さらに、水酸化ナトリウム1.740g(43.50mmol)を添加した後、撹拌して水酸化ナトリウムを完全に溶解させた。次いで、室温で撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド5.938g(20.89mmol)を添加し、チタン濃度を1重量%、ナトリウム/チタン比を1/1(重量比)、水/チタン比を1.51/1(重量比)とした。フラスコをオイルバスに浸漬し、120℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.0%であった。
6,458重量部/時の高純度テレフタル酸と、2615重量部/時のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを、撹拌下、窒素雰囲気で260℃、90kPaGに維持された条件下で、流通系反応器内に連続的に供給してエステル化反応を行った。反応器内には、スラリーとエステル化生成物からなる反応液が33,500重量部滞留するように定常運転を行った。このエステル化反応では、水とエチレングリコールとの混合液が留去された。
エステル化反応物(低次縮合物)は、平均滞留時間が3.5時間になるように制御して、連続的に系外に抜き出した。
上記で得られたエチレングリコールとテレフタル酸との低次縮合物の数平均分子量は、600〜1,300(3〜5量体)であった。
上記において得られたチタン含有溶液を重縮合触媒として用い、上記で得られた低次縮合物の重縮合反応を行った。触媒添加量としては、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、チタン原子に換算して18ppmとなるように上記のチタン含有溶液を添加し、さらにリン酸を、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、リン原子に換算して6ppmとなるように加え、285℃、0.1kPaの条件下で重縮合を行い、固有粘度が0.64dl/gの液重品ポリエチレンテレフタレートを得た。重合時間は1.4時間であった。
次に得られた液重品ポリエチレンテレフタレートを170℃で2時間、予備結晶化を行った後、予備結晶化されたポリエステル樹脂を窒素ガス雰囲気下で220℃に加熱し、固有粘度が0.64dl/gから0.84dl/gになるまで固相重合で分子量を上昇させた。この際に要する固相重縮合時間は6.2時間であった。
(比較例10)
実施例26のチタン含有溶液の調製方法において、エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))の代わりにエチレングリコールを用いたこと以外は、実施例26と同様にチタン含有溶液の調製を行った。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。
上記で得られたチタン含有溶液を用い、実施例26のポリエチレンテレフタレートの重合方法と同様にポリエチレンテレフタレートの重合を行った。重合時間は1.8時間であった。
次に得られた液重品ポリエチレンテレフタレートを170℃で2時間、予備結晶化を行った後、予備結晶化したポリエステル樹脂を窒素ガス雰囲気下で220℃に加熱し、固有粘度が0.64dl/gから0.84dl/gになるまで固相重合で分子量を上昇させた。この際に要する固相重縮合時間は7.8時間であった。
実施例26と比較例11とを比較することにより、チタン含有溶液を調製する際にグリセリンを共存させることにより、得られたチタン含有溶液がポリエステル重合触媒としてより高活性を有するようになることがわかる。
【実施例27】
エステル化反応槽2缶および重縮合反応槽3缶からなるポリエステル連続重縮合装置を用いて、約60t/日の生産量で運転した。エステル化反応槽の運転条件は、第1エステル化反応槽が260〜270℃、100〜110kPa、0.5〜5時間、第2エステル化反応槽が260〜270℃、100〜110kPa、0.5〜3時間であった。
重縮合触媒として、実施例12で得られたチタン含有溶液を第2エステル化反応槽に添加した。
その際触媒の添加量としては、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、チタン原子に換算して18ppmとなるように、実施例12のチタン含有溶液を、定流量フィードポンプを用いて連続的に添加し、さらにリン酸を、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、リン原子に換算して6ppmとなるように連続的に添加した。
第2エステル化反応槽で得られた所定の重合度の低次縮合物を重縮合反応槽に移した。この時の重縮合条件は、第1重縮合反応槽が260〜270℃、5〜12kPa、約1時間、第2重縮合反応槽が265〜275℃、0.7kPa、約1時間、第3重縮合反応槽が275〜285℃、0.3kPa、約1時間であった。得られたポリエチレンテレフタレートを冷水で冷却し、カッティングした。固有粘度が0.64dl/gのポリエチレンテレフタレートが得られた。
10日間の連続運転の後、チタン含有溶液の供給ラインに閉塞や固形物の沈着は見られず、またチタン含有溶液貯留槽の底部に残留する固形物も見られなかった。チタン含有溶液がきわめて均一的、安定的に供給されたことがわかる。
また、各エステル化反応槽および各重縮合反応槽からの留出物より回収されたエチレングリコールを分析したところ、グリセリンは検出されなかった。グリセリンは、チタン含有ポリエステル重合触媒のチタン溶解助剤として、回収エチレングリコールの品質に悪影響を及ぼさない利点を有することがわかる。
【実施例28】
すべての操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))59.2gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取し、水1.50gを添加し、次いで、室温で撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド5.94gを添加した。フラスコをオイルバスに浸漬し、120℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.3%であった。
エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))31.6gを200mlガラス製フラスコに採取し、水酸化ナトリウム1.74gを添加した後、撹拌して水酸化ナトリウムを完全に溶解させた。
上記のチタン含有溶液とナトリウム混合溶液を室温で混合した。ICP分析法により測定したこの溶液中のチタン含量は1.0重量%であり、ナトリウム含量は1.0重量%であった。
このチタン含有溶液中のチタン化合物の粒子直径の分布を表4に示した。
以下のようにしてテレフタル酸とエチレングリコールのとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸13kg、エチレングリコール4.93kg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液6.88gをオートクレーブに仕込み、圧力1.7kg/cm、260℃の窒素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させた。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
こうして得られた低次縮合物の固有粘度は0.28dl/gであった。
こうして得られた低次縮合物に、触媒としてチタン含有溶液を添加し、液相重縮合反応を行なった。
その際各触媒の添加量としては、チタン原子に換算して、生成ポリエチレンテレフタレートに対し18ppmとなるようにチタン含有溶液を添加し、さらにリン酸をリン原子に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し6ppmとなるように加え、280℃、0.1kPa(1Torr)の条件下で重縮合を行なった。固有粘度が0.61dl/gの液重品ポリエチレンテレフタレートが得られる時間を測定し、それより液相重合速度を算出した。結果を表4に示した。
次に得られた液重品ポリエチレンテレフタレートを170℃で2時間予備結晶化を行った後、215℃で9時間窒素ガス雰囲気下で加熱した。得られた固重品ポリエチレンテレフタレートの固有粘度を測定し、それより固相重縮合速度を算出した。結果を表4に示した。
また、得られたポリエチレンテレフタレートのチップの色調を45°拡散方式色差計(日本電色工業(株)製SQ−300H)で測定した。結果を表4に示した。
また、得られたポリエチレンテレフタレートをo−クレゾールに加熱溶解し、クロロホルムを加え電位差滴定装置を用いてNaOH水溶液を標準溶液として滴定し、COOH基濃度を測定した。結果を表4に示した。
得られたポリエチレンテレフタレートを、除湿エア乾燥機を用いて、170℃、4時間乾燥し、乾燥後の樹脂中の水分含量を40ppm以下とする。乾燥したポリエチレンテレフタレートを射出成形機 M−70B(商品名、(株)名機製作所製)にて、275℃で成形し、段付き角板状成形体を得た。段付き角板状成形体は、図1に示すような形状をして有しており、A部の厚さは、約6.5mmであり、B部の厚さは約5mmであり、C部の厚さは約4mmである。
得られた角板状成形体の5mm厚の部分をヘイズメーター NDH−20D(商品名、日本電色工業(株)製)を用いて3回測定し、その平均値によりヘイズを評価した。結果を表4に示した。
【実施例29】
すべての操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))90.8gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取し、水1.50gを添加し、さらに、水酸化ナトリウム1.74gを添加した後、撹拌して水酸化ナトリウムを完全に溶解させた。次いで、室温で撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド5.94gを添加した。フラスコをオイルバスに浸漬し、120℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.0%であった。ICP分析法により測定したこの溶液中のチタン含量は1.0重量%であり、ナトリウム含量は1.0重量%であった。
このチタン含有溶液中のチタン化合物の粒子直径の分布を表4に示した。
実施例28において、触媒として本実施例で得られたチタン含有溶液を使用した以外は実施例28と同様にポリエステルの重合を行なった。結果を表4に示した。
【実施例30】
すべての操作は乾燥窒素雰囲気下で行った。エチレングリコール/グリセリン混合液(混合比:85/15(重量比))94.1gを還流コンデンサ付き200mlガラス製フラスコに採取し、水0.75gを添加した。次いで、室温で撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド5.94gを添加した。フラスコをオイルバスに浸漬し、90℃で4時間加熱撹拌した。得られたチタン含有溶液は無色透明の均一溶液であった。実施例1と同様にして測定したこの溶液のHAZE値は1.1%であった。ICP分析法により測定したこの溶液中のチタン含量は1.0重量%であった。
このチタン含有溶液中のチタン化合物の粒子直径の分布を表4に示した。
実施例28において、触媒として本実施例で得られたチタン含有溶液を使用した以外は実施例28と同様にポリエステルの重合を行なった。結果を表4に示した。
(比較例11)
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを9にした。これに、室温下で攪拌しながら15%酢酸水溶液を滴下し、液のpHを5にした。生成した沈殿物を濾過により、分離した。洗浄後の沈殿物を、30重量%エチレングリコール含有水でスラリー濃度2.0重量%のスラリーとして30分間保持した後、二流体ノズル式のスプレードライヤーを用いて温度90℃で造粒乾燥を行い、固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。
得られた固体状含チタン化合物の粒径分布は、0.5〜20μmであり、平均粒径は1.8μmであった。
ICP分析法により測定した固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は、34.8重量%であった。
ESI−TOF/MS法により固体状含チタン化合物の分子量を測定したが、測定可能範囲である分子量15000までの領域ではわずかなピークしか観測されず、分子量15000以上と推定された。式1によりチタン化合物の重合度は109以上と計算される。
次に、300mlガラス製フラスコにエチレングリコール170gとグリセリン30gを秤取し、これに水酸化ナトリウム3.48gと、上記固体状含チタン化合物を5.75g添加し、130℃で2時間加熱して溶解させてチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したこの溶液中のチタンの含有量は1.0重量%であり、ナトリウム含量は1.0重量%であった。
このチタン含有溶液中のチタン化合物の粒子直径の分布を表4に示した。
実施例28において、触媒として本比較例で得られたチタン含有溶液を使用した以外は実施例28と同様にポリエステルの重合を行なった。結果を表4に示した。
(比較例12)
300mlガラス製フラスコにエチレングリコール168.3gとグリセリン29.7gを秤取し、これに水2.0gと、調製例4で調製した固体状含チタン化合物を5.75g添加し、170℃で2時間加熱して溶解させてチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したこの溶液中のチタンの含有量は1.0重量%であった。
このチタン含有溶液中のチタン化合物の粒子直径の分布を表4に示した。
実施例28において、触媒として本比較例で得られたチタン含有溶液を使用した以外は実施例28と同様にポリエステルの重合を行なった。結果を表4に示した。
(比較例13)
市販の超微粒子二酸化チタンスラリー(触媒化成(株)、HPA−15R)をそのまま用いた。このチタン含有溶液中のチタン化合物の粒子直径の分布を表4に示した。
実施例28において、触媒として本比較例で得られたチタン含有溶液を使用した以外は実施例28と同様にポリエステルの重合を行なった。結果を表4に示した。
【実施例31】
実施例28において、触媒を添加する際に、触媒とともに色相調整剤としてSolvent blue 104を生成ポリエチレンテレフタレートに対し2.3ppm、Pigment Red 263を2.3ppm添加した以外は実施例1と同様にポリエステルの重合を行なった。得られた固重品ポリエチレンテレフタレートのチップの色調を45°拡散方式色差計(日本電色工業(株)製SQ−300H)で測定したところ、L値:79.4、a値:0.4、b値:−4.0であった。
【実施例32】
実施例30で得られたチタン含有溶液をエチレングリコールで10倍に希釈し、コロジオン膜貼付け銅メッシュに滴下し、真空下室温で1時間溶媒を除去した後、透過型電子顕微鏡JEM−2010(JEOL社製、加速電圧120kV)で観察した。図3に写真を示した。視野内に規則的な構造は観察されなかった。
この後引き続き電子線照射を10分間続けた。図4に同視野の写真を示した。層間隔約0.4nmの規則的な層状構造が数多く観察され、結晶が生成していることが確認された。これは電子線エネルギー照射によるチタン原子の再配列によるものである。
図3と図4の比較より、実施例30で得られた触媒中のチタン化合物は実質的に非晶質であることがわかる。
なお、表4で、各Ti化合物の結晶性は上記と同様の方法で確認したものである。

【産業上の利用可能性】
本発明によれば、溶液の保存安定性に優れるとともに高濃度でチタン成分を含有するチタン含有溶液を提供することができる。
本発明のチタン含有溶液は、均一供給性に優れ、高い触媒性能を示すとともに、回収され再使用される脂肪族ジオールの品質に悪影響を及ぼさないポリエステル製造用触媒として用いることができる。
本発明のポリエステル製造用触媒を用いることにより、生産性に優れたポリエステル樹脂の製造方法、この触媒により得られる高品質なポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形体を提供することができる。
本発明のチタン含有溶液は、高濃度でチタンを含有し、かつ均一性および保存安定性に優れるという特性を活かして、ポリエステル製造用触媒としての用途のほかに、各種触媒およびその原料、粘度調整剤、架橋剤、樹脂改質剤、塗料改質剤、インク改質剤、表面処理剤、硬化促進剤、薄膜コーティング材料の原料、光触媒材料の原料、ゾルゲル法による各種チタン含有セラミックスの原料などの種々の用途に用いることができる。
また本発明により、特にポリエステル製造用触媒として有用なチタン含有溶液を提供することができる。さらにこの触媒を用いる生産性の高いポリエステル樹脂の製造方法、さらにはその製造法により得られるポリエステル樹脂よりなる高品質な中空成形体が提供される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを含有する溶液であって、(A)チタン化合物を0.05〜20重量%、(B)脂肪族ジオールを4〜99重量%、(C)3価以上の多価アルコールを0.1〜95重量%の割合で含むことを特徴とするチタン含有溶液。
【請求項2】
請求の範囲1に記載のチタン含有溶液であって、該溶液を調製する際に用いられるチタン化合物が、100量体以下の多量体であることを特徴とするチタン含有溶液。
【請求項3】
請求の範囲1に記載の溶液であって、水および/または塩基化合物を合計で50重量%以下の割合で含むことを特徴とするチタン含有溶液。
【請求項4】
チタン化合物、脂肪族ジオールおよび3価以上の多価アルコールを用いるチタン含有溶液の調製方法であって、チタン含有溶液の総量に対して、(A)チタン化合物を0.05〜20重量%、(B)脂肪族ジオールを4〜99重量%、(C)3価以上の多価アルコールを0.1〜95重量%の割合で用いることを特徴とするチタン含有溶液の調製方法。
【請求項5】
請求の範囲4に記載の調製方法であって、水および/または塩基化合物を合計で50重量%以下の割合で用いることを特徴とするチタン含有溶液の調製方法。
【請求項6】
溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が主として0.4nm以上5nm以下であることを特徴とするチタン含有溶液。
【請求項7】
脂肪族ジオールを含有し、該ジオール成分とチタンのモル比(脂肪族ジオール/チタン原子比)が10以上であることを特徴とする請求の範囲6に記載のチタン含有溶液。
【請求項8】
請求の範囲1,2,3,6,7のいずれかに記載のチタン含有溶液からなるポリエステル製造用触媒、および請求の範囲4,5のいずれかに記載の調製方法で得られるチタン含有溶液からなるポリエステル製造用触媒。
【請求項9】
請求の範囲8に記載のポリエステル製造用触媒の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させてポリエステル樹脂を製造することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項10】
請求の範囲9に記載の方法で得られたポリエステル樹脂からなることを特徴とする中空成形体。

【国際公開番号】WO2004/111105
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507029(P2005−507029)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008818
【国際出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】