説明

チタン含有PETコポリエステル及びそれからなる肉厚のプリフォーム及び再充填可能な大容量容器

【課題】チタン含有PETコポリエステルを提供する。
【解決手段】本チタン含有PETコポリエステルは0.72〜0.90dl/gの固有粘度を有し、DSC分析により、20℃/分の所定加熱率での結晶化転移時の放出熱の最大量は10ジュール/グラム未満である。本チタン含有PETコポリエステルはポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、全コポリエステル重量に対して2〜25ppmの濃度のチタン成分と、該コポリエステルに対してXモル%のイソフタル酸と、該コポリエステルに対してYモル%のジエチレングリコールと、該コポリエステルに対してZモル%の2,6‐ナフタレンジカルボン酸と
を含み、ここでX、Y、Zは
0≦X≦2.5;
1.0≦Y≦2.5;
0≦Z≦2.5;
2.5≦X+Y+Z≦7.5
を満たし、該PETコポリエステルは、10リットルを超える内部容量を有し20回まで返却され再充填が可能な射出延伸ブロー成形された再充填可能容器を製造するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び透明性に優れたチタン含有PETコポリエステル、特に600グラムを超える重量と7.0ミリメートルを超える厚みを有する射出成形ボトルプリフォームと、10リットルを超える内部容量を有し20回まで返却され再充填が可能な射出延伸ブロー成形容器とを製造するのに適したチタン含有PETコポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般大衆が飲料水の質により注意を払う一方、人が集まる多くの公共の場所に、飲料用に5ガロン容器に入った蒸留水が通常用意されるようになっている。従って、バルク水市場が徐々に拡大している。
【0003】
現在、この種のバルク水容器は主にポリカーボネート(PC)でできている。しかし、PC容器は人の健康に害があるビスフェノールAを含み、また製造コストが通常高いので徐々に使用が減っている。
【0004】
ポリエチレンテレフタレート(PET)により代表されるポリエステルは機械強度、化学安定性、ガス障壁性、衛生性等に優れ、相対的に低コストで入手可能で、重量が軽いので、ボトル、フィルム、又はファイバー等の様々なパッケージ材料として広く使用されてきた。このようなポリエステルは主にアンチモン化合物を重縮合触媒として使用することで製造されてきた。
【0005】
通常、コポリエステルに対して0〜3モル%のイソフタル酸、又はコポリエステルに対して1.5〜4.0モル%のジエチレングリコールを含むコポリエステルは、射出延伸ブロー成形プロセスにおいて結晶化し易いことを特徴とし、そのため、このコポリエステルは約3〜4ミリメートルの厚みとたった約100〜120グラムの最大重量を有する肉厚のPETボトルプリフォームと、5リットル未満の内部容量を有する肉厚のPETボトル又は容器とを製造するのに適しているだけである。しかし、同じコポリエステルを約7ミリメートルを超える厚みと600グラムを超える重量を有する肉厚のPETボトルプリフォームを製造するために成形処理した場合、結晶性曇りが製造されたボトルに必ず発生する。
【0006】
その結果、結晶性曇りが発生したPETボトルプリフォームは、肉厚のPETボトルを製造するための引き続く射出吹込みプロセスを不安定にする。一方、製造されたボトルプリフォームを冷却するのに必要な冷却時間は、ボトルに結晶性曇りが発生するのを防ぐために長くしなければならないが、長い冷却時間はPETボトル製造の生産性を下げ経済的に不適正にする。
【0007】
上記の問題を解決するために、特許文献1は、約200グラムを超える重量と数ガロンの内部容量を有する大きな成形ポリエステル容器を製造するためのポリエステル組成物を開示している。このポリエステル組成物は4〜10モル%のシクロヘキサンジメタノール、又は6〜17モル%のイソフタル酸又は両方の化合物の組合せを含み、最大50モル%の濃度のナフタレン‐2,6‐ジカルボン酸等のジカルボン酸化合物をポリエステル組成物の成分として更に加える。コポリエステルの固有粘度は0.75〜0.85dl/gである。
【0008】
上記のポリエステル又はコポリエステルを改善したことで、本出願人は特許文献2の特許を付与された。この特許は、600グラムを超える重量と7.0ミリメートルを超える厚みを有する肉厚のボトルプリフォームと、10リットルを超える内部容量を有する肉厚の容器とを製造するのに適したポリエチレンテレフタレート(PET)を含むコポリエステル組成物を発明し開示している。このコポリエステル組成物の主成分はポリエチレンテレフタレート樹脂であり、このコポリエステル組成物はコポリエステルに対してXモル%のイソフタル酸と、コポリエステルに対してYモル%のジエチレングリコールと、コポリエステルに対してZモル%の2,6‐ナフタレンジカルボン酸とを更に含む。ここでX、Y、Zは下記の条件を満たす。該コポリエステルの固有粘度は0.75と0.85dl/gの間である。
2.5≦X≦6.0;
2.5≦Y≦5.0;
0≦Z≦5.0
【0009】
市場で販売されている10リットルを超える内部容量を有する市販のPETボトルは、通常、返却され洗浄された後、再充填が可能なある種類の返却再充填可能容器である。返却され洗浄され再充填が可能な市販のPETボトルの美観及び機能上の適正を維持できる最大返却回数は約15回であり、15回を超える返却再充填後、PETボトルは壊れるか、ひびが入るか、又は変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6309718号明細書
【特許文献2】米国特許第6913806号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ひびが入るか又は変形した市販PETボトルは小さなフレーク状の破片に切断され、高温で溶融されてリサイクルされる。しかし、地球温暖化と気候変化が日々悪化しているので、エネルギーを節約し炭素を減らすための環境グリーンエネルギー技術を効果的に開発することが非常に緊急な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の改変コポリエステル組成物は、重縮合段で重縮合触媒としてチタン含有化合物を使用するチタン含有コポリエステル樹脂であり、ポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、全コポリエステル重量に対して2〜25ppmの濃度のチタン成分と、該コポリエステルに対してXモル%のイソフタル酸と、該コポリエステルに対してYモル%のジエチレングリコールと、該コポリエステルに対してZモル%の2,6‐ナフタレンジカルボン酸とを含み、ここでX、Y、Zは
0≦X≦2.5;
1.0≦Y≦2.5;
0≦Z≦2.5;
2.5≦X+Y+Z≦7.5
を満たし、該コポリエステルの固有粘度は0.72〜0.90dl/gである。
【発明の効果】
【0013】
上記に鑑みて、エネルギー節約と炭素排出削減とを早急に達成して地球温暖化を効果的に止め環境保護を促進するために、本発明の目的は、上記米国特許第6913806号に開示されたコポリエステル組成物に改善を加えること、特にチタン含有化合物を重縮合触媒として従来のアンチモン含有成分を置き換えるために使用することで得られる改変されたコポリエステル組成物を提供することである。本発明の得られたコポリエステル組成物は下記の利点を有する。
【0014】
1.ポリエチレンテレフタレートを含む本発明のコポリエステル組成物は、600グラムを超える重量と7ミリメートルを超える厚みを有する肉厚のボトルプリフォームと、10リットルを超える内部容量を有する肉厚の容器とを製造するのに適している。
2.本発明のコポリエステル組成物でできた肉厚の容器は、厚みの均一性、透明性、及び機械的強度に優れ、10リットルを超える水、5ガロンの水さえも収容するのに十分強い。
3.本発明の肉厚の容器は20回まで返却され再充填が可能であり、ひびも変形も発生することなく美観及び機能上の適正を維持する。
4.本発明の容器は容易に積み重ねられ、輸送中に変形することがなく、配達中にボトルが壊れる問題がない。
5.本発明の容器は人の健康に害があるアンチモン化合物もビスフェノールAも含んでいない。
6.ポリエチレンテレフタレートを含み、ポリカーボネート(PC)容器よりコストが低くなる本発明の容器は、PC容器を徐々に置き換えると期待される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、射出機で600グラムを超える重量と7ミリメートルを超える厚みを有するボトルプリフォームと、延伸ブロー成形法を使用して10リットルを超える内部容量を有する容器とを製造するのに適しポリエチレンテレフタレートを含むチタン含有コポリエステル樹脂(以下、PETコポリエステルと略称する)に関する。アンチモン化合物を含まない本発明の容器は人の健康に害がなく、特に、20回まで返却され再充填が可能であり、ひびも変形も発生することなく美観及び機能上の適正を維持する。従って、本発明はエネルギーを節約し炭素を減らす目的に合致する。
【0016】
本発明のPETコポリエステルはポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、全PETコポリエステル重量に対して2〜25ppmの濃度のチタン成分と、PETコポリエステルに対してXモル%のイソフタル酸と、PETコポリエステルに対してYモル%のジエチレングリコールと、PETコポリエステルに対してZモル%の2,6‐ナフタレンジカルボン酸とを含む。ここでX、Y、Zは下記の条件を満たす。
0≦X≦2.5;
1.0≦Y≦2.5;
0≦Z≦2.5;
2.5≦X+Y+Z≦7.5
【0017】
本発明のPETコポリエステルを製造するためのプロセスは、チタン含有化合物を重縮合触媒として選択して使用することを特徴とする。
【0018】
本発明のPETコポリエステルを製造するためのプロセスは、精製されたテレフタル酸(PTA)を主なジカルボン酸成分として、エチレングリコール(EG)を主なグリコール成分として、他の重要な成分を原材料として使用し、エステル化段でのエステル化と重縮合段でのチタン含有触媒の存在下での重縮合とにより実行される。
【0019】
具体的には、精製されたテレフタル酸(PTA)とエチレングリコール(EG)とを含むスラリーを先ず調製し、次に下記の成分をこのスラリーに更に加えて混合する。
(A)最終のPETコポリエステルに対して0.1〜2.5モル%の濃度のイソフタル酸と、
(B)溶融重合において自発的に生成されるジエチレングリコールの量を含むジエチレンイソフタル酸の累積総量が最終のPETコポリエステルに対して1.0〜2.5モル%に達するよう補足量のジエチレングリコール(DEG)と、
(C)最終のPETコポリエステルに対して2.5モル%以下の濃度の2,6‐ナフタレンジカルボン酸。
【0020】
従って、調製されたスラリーが含むイソフタル酸、ジエチレングリコール、及び2,6‐ナフタレンジカルボン酸の総量は、PETコポリエステルに対して2.5モル%〜7.5モル%である。精製されたテレフタル酸(PTA)とエチレングリコール(EG)とから調製されたスラリーにイソフタル酸と2,6‐ナフタレンジカルボン酸とを加える方法は、所望の濃度で直接加える方法である。一方、スラリーにジエチレングリコールを加える方法は補足量だけ加える方法である。これは、ジエチレングリコールの補足量と、反応中に自発的に生成されるジエチレングリコールの生成量とを加えると、ジエチレングリコールの総量は所望の目標量に達するからである。
【0021】
上記のスラリーはエステル化段に供給されて、250℃〜260℃の範囲の反応温度で、0kg/cm2〜2.0kg/cm2の範囲の処理圧力下で、エステル化反応が行われる。触媒、熱安定剤、トナー、及び他の添加物、例えば酸化防止剤、光安定剤、及び潤滑剤をエステル化反応完了前に加える。エステル化段を経ることで、エステル化生成物が得られる。
【0022】
エステル化段で得られた生成物は液相重縮合段に供給されて、265℃〜275℃の範囲の反応温度で、真空中で、プレ重合反応が行われる。プレ重合反応の完了後、引き続き、プレ重合反応で得られた生成物に重縮合反応を行う。この反応では、該生成物を1トルの真空減圧下で重縮合触媒としてのチタン成分の存在下で275℃〜285℃の範囲の反応温度に加熱し重縮合を行う。重縮合反応において加えられたチタン成分の濃度は全PETコポリエステル重量に対して2〜25ppmであるのが好ましい。重縮合反応で得られるPETコポリエステルの固有粘度(IV)は0.55dl/g以上であるのが望ましい。引き続き、得られたPETコポリエステルは、取り出され冷却されて切断機で柱状ポリエステルチップに切断される。
【0023】
上記の重縮合で得られたPETコポリエステルに、その固有粘度を0.72〜0.90dl/gまで上げるために固相重合を行わせる。固相重合中、PETコポリエステルを重合させる連続プロセスが、固相重合タンク内で結晶化、乾燥、及び205〜220℃まで予熱により実行される。この反応により生成されるエチレングリコールと水とを除去するために、窒素ガスが該タンク内に連続して導入される。
【0024】
本発明の生成されたPETコポリエステルの色相と透明性の両方が優れているので、重縮合触媒としてチタン触媒を使用することが好ましい。
【0025】
示差走査熱量計(DSC)は、物質内の温度と、温度遷移に伴う熱流とを測定するための熱分析手法である。
【0026】
本発明はパーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC)を使用して本発明の最終のPETコポリエステルを分析する。試験手順を下記に示す。
1.約3mgの固相重合するPETコポリエステルを取り出す;
2.300℃まで加熱しPETコポリエステルを溶融する;
3.溶融したPETコポリエステルを300℃に5分間維持する;
4.溶融したPETコポリエステルを室温まで急速に冷却する;
5.20℃/分の所定加熱率で再加熱してPETコポリエステルにガラス転移、結晶化、及び溶融を含む相転移を経させる。これらの転移はDSCにより高感度で検出されるエネルギー変化又は熱容量変化を含む。
【0027】
上記のDSC分析により、本発明のPETコポリエステルが発熱プロセスを経るか又は結晶化転移時、放出熱(又は発熱エネルギー)の最大量が感度よく測定される。
【0028】
本発明のPETコポリエステルは、結晶化転移時の放出熱の最大量は明らかに10ジュール/グラム未満であるという優れた特性を有する。この値は、より小さい内部容量のポリエステルボトルを製造するのに適した一般的なコポリエステルよりかなり少ない。通常、結晶化転移時に放出される熱の最大量は、一般的なコポリエステルの場合、15ジュール/グラムより多く、25ジュール/グラムよりさえも多い。
【0029】
上記の固相重合で得られた本発明のPETコポリエステルから、乾燥後、射出機により600グラムを超える重量と7ミリメートルを超える厚みを有するボトルプリフォームが作られる。実際の実施形態では、ボトルプリフォームの重量はより好ましくは600〜800グラムであり、ボトルプリフォームの厚みはより好ましくは7.5〜9.5ミリメートルであり、ボトルプリフォームの長さはより好ましくは36〜42cmであり、ボトルプリフォームの射出サイクル時間は好ましくは90〜130秒である。本発明のPETコポリエステルでできたボトルプリフォームは、優れた透明性を有し結晶性曇りがない。
【0030】
本発明のボトルプリフォームから当分野でよく知られた延伸ブロー成形法により10リットル〜20リットルの範囲の内部容量を有する容器が製造される。この方法は近赤外光を使用してボトルプリフォームをガラス転移温度を超える温度に加熱する。延伸ブロー成形は温度がガラス転移温度より20〜40℃高い時に最も良好に行われる。本発明のPETコポリエステルでできた容器は、大きな内部容量と優れた透明性と強度とを有し、20回超、返却再充填が可能であり、本発明の容器は環境上非常に価値がある。
【0031】
下記の実施例と比較例とで得られたPETコポリエステルを本発明の効果を例示し実証するために提供する。本発明の範囲はこれらの実施例に限定されないことに注意されたい。
【0032】
各PETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の最大量は、上記パーキンエルマー社製のDSCを使用して測定することが出来る。
【0033】
PETコポリマーの固有粘度(IV)は3:2の比率で混合されたフェノールとテトラクロロエタンとの混合溶剤中で25℃で、Ubbelohde粘度計により解析した。
【実施例】
【0034】
実施例1
79.54kgの精製されたテレフタル酸(PTA)と、2.04kgのイソフタル酸(IPA)、1.38kgのジエチレングリコール(DEG)と、2.98kgの2,6‐ナフタレンジカルボン酸(2,6‐NDC)と、37.78kgのエチレングリコール(EG)とを計量し、混合してよく混ざったスラリーを形成し、このスラリーを260℃まで加熱し、エステル化圧を1.5〜2.0kg/cm2に維持してエステル化反応を行った。エステル化率は95%より高かった。
【0035】
エステル化反応後、チタン酸テトラブチル(TBT)を重縮合触媒として加えた。チタンの添加量はPETコポリエステルの6.0ppmであった。更に、6グラムのリン酸を熱安定剤として加え、blue 104等の青色染料もPETコポリエステルの1.0ppmの濃度で加えた。引き続き、温度を270℃まで上げ反応圧を760〜20トルに制御してプレ重合反応を行った。
【0036】
1時間の反応後、温度を280℃まで更に上げ、真空度を1トル未満に下げて、生成された重合体の固有粘度が0.60dl/gに達するまで重縮合反応を行った。次に、生成された重合体はダイヘッドを通して押し出され、急速に冷却され、柱状コポリエステルチップに切断される。
【0037】
コポリエステルチップを内部が温度200〜220℃で真空度1トル未満の双錐回転真空乾燥タンクに入れて固相重合反応を更に行い、コポリエステルチップの固有粘度を0.72dl/gまで上げた。
【0038】
得られたPETコポリエステルの組成を分析した結果、IPAの含有量はPETコポリエステルに対して2.5モル%であり、DEGの含有量はPETコポリエステルに対して2.5モル%であり、2,6‐NDCの含有量はPETコポリエステルに対して2.5モル%であった。
【0039】
固相重合中のPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の量を分析するために、300℃まで急速に加熱してPETコポリエステルを溶融し、次に室温まで急速に冷却し、冷却されたPETコポリエステルを20℃/分の所定加熱率で再加熱してPETコポリエステルに完全に相転移をさせる。
パーキンエルマー社製のDSCで測定したPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱量の値は、表1に示すように7.1ジュール/グラムであった。
【0040】
引き続き、射出吹込み機を使用して最終の得られたPETコポリエステルを溶融温度275〜280℃で重量685グラム、ボトル胴体厚み8.5〜9.0ミリメートル、長さ410ミリメートルのボトルプリフォームに射出成形した。このボトルプリフォームを延伸ブロー成形機に入れ、ボトルプリフォームの温度110℃でボトルプリフォームを内部容量5ガロンの容器にブロー成形した。延伸ブロー成形プロセスは安定であった。
【0041】
ボトルプリフォームと容器との物理的特性を分析した結果を表1に示す。本PETコポリエステルでできたボトルプリフォームは優れた透明性を有し結晶性曇りがなかった。また、5ガロン容器の透明性と強度の両方が良好であり、特に、返却、洗浄、再充填のプロセスにおいて、20回まで返却され再充填が可能であり、ひびも変形も発生することなく美観及び機能上の適正を維持した。
【0042】
実施例2
プロセスは実施例1と同じであるが、得られたPETコポリエステルの組成は、PETコポリエステルに対して2.5モル%のIPAと、2.5モル%のDEGとを含んでいた。固相重合後、PETコポリエステルの固有粘度は0.81dl/gであった。
表1に示すように、得られたPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の量は、8.9ジュール/グラムであった。このコポリエステルでできたボトルプリフォームは良好な透明性を有し結晶性曇りがなかった。このボトルプリフォームからブロー成形された5ガロン容器は良好な透明性と良好な強度とを有し、また、20回の返却後、ひびも変形もなくまだ返却再充填が可能であった。
【0043】
実施例3
プロセスは実施例1と同じであるが、得られたPETコポリエステルの組成は、IPAと2,6‐NDCとを含まず、PETコポリエステルに対して2.5モル%のDEGを含んでいた。固相重合後、PETコポリエステルの固有粘度は0.9dl/gであった。
表1に示すように、得られたPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の量は、10.0ジュール/グラムであった。このコポリエステルでできたボトルプリフォームは良好な透明性を有し結晶性曇りがなかった。このボトルプリフォームからブロー成形された5ガロン容器は良好な透明性と良好な強度とを有し、また、20回の返却後、ひびも変形もなくまだ返却再充填が可能であった。
【0044】
実施例4
プロセスは実施例1と同じであるが、得られたPETコポリエステルの組成は、PETコポリエステルに対して1.5モル%のIPAと、2.0モル%のDEGとを含んでいた。固相重合後、PETコポリエステルの固有粘度は0.84dl/gであった。
表1に示すように、得られたPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の量は、8.0ジュール/グラムであった。このコポリエステルでできたボトルプリフォームは良好な透明性を有し結晶性曇りがなかった。このボトルプリフォームからブロー成形された5ガロン容器は良好な透明性と良好な強度とを有し、また、20回の返却後、ひびも変形もなくまだ返却再充填が可能であった。
【0045】
実施例5
プロセスは実施例1と同じであるが、得られたPETコポリエステルの組成は、IPAを含まず、PETコポリエステルに対して2.0モル%のDEGと、2.5モル%の2,6‐NDCとを含んでいた。固相重合後、PETコポリエステルの固有粘度は0.76dl/gであった。
表1に示すように、得られたPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の量は、9.0ジュール/グラムであった。このコポリエステルでできたボトルプリフォームは良好な透明性を有し結晶性曇りがなかった。このボトルプリフォームからブロー成形された5ガロン容器は良好な透明性と良好な強度とを有し、また、20回の返却後、ひびも変形もなくまだ返却再充填が可能であった。
【0046】
比較例1
プロセスは実施例1と同じであるが、アンチモン(Sb)を重縮合触媒として選択し加えた、アンチモンの添加量はPETコポリエステルの6.0ppmであった。得られたPETコポリエステルの組成は、PETコポリエステルに対して5.0モル%のIPAと、2.5モル%のDEGとを含んでいた。固相重合後、PETコポリエステルの固有粘度は0.83dl/gであった。
表1に示すように、得られたPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の量は、6.5ジュール/グラムであった。このコポリエステルでできたボトルプリフォームは良好な透明性を有していたが、射出工程で発生したボトルプリフォームの不均一な厚みによって結晶性曇りも有していた。このボトルプリフォームからブロー成形された5ガロン容器は、15回の返却後、ひび又は変形が発生し返却再充填ができなかった。
【0047】
比較例2
プロセスは比較例1と同じであるが、得られたPETコポリエステルの組成は、PETコポリエステルに対して2.4モル%のIPAと、2.4モル%のDEGとを含んでいた。固相重合後、PETコポリエステルの固有粘度は0.84dl/gであった。
表1に示すように、得られたPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の量は、15.5ジュール/グラムであった。このコポリエステルでできたボトルプリフォームは結晶性曇りを有し透明性が悪かった。このボトルプリフォームからブロー成形された5ガロン容器は、近赤外光により更に加熱する必要があり、その結果、5ガロン容器は曇り、ブロー成形工程において容易に壊れ、返却再充填ができなかった。
【0048】
比較例3
プロセスは比較例1と同じであるが、得られたPETコポリエステルの組成は、IPAと2,6‐NDCとを含まず、PETコポリエステルに対して2.5モル%のDEGを含んでいた。固相重合後、PETコポリエステルの固有粘度は0.9dl/gであった。
表1に示すように、得られたPETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の量は、29.0ジュール/グラムであった。このコポリエステルでできたボトルプリフォームは結晶性曇りを有し透明性が悪かった。このボトルプリフォームからブロー成形された5ガロン容器は、近赤外光により更に加熱する必要があり、その結果、5ガロン容器は曇り、ブロー成形工程において容易に壊れ、返却再充填ができなかった。
【0049】
結果
1.実施例1〜5で得られたPETコポリエステルは、DSC分析で測定した20℃/分の所定加熱率での結晶化転移時の放出熱の最大量は10ジュール/グラム未満であるという優れた特性を有する。
2.実施例1〜5で得られたPETコポリエステルから製造された5ガロン容器は、良好な透明性と強度とを有し、20回まで返却再充填が可能である。
3.実施例1〜5で製造された5ガロン容器は、人の健康に害のあるアンチモン化合物を含まない。各5ガロン容器は環境上非常に価値がある。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
600グラムを超える重量と7ミリメートルを超える厚みを有するボトルプリフォームと、10リットルを超える内部容量を有する再充填可能容器とを製造するためのチタン含有PETコポリエステルであって、
ポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、
全PETコポリエステル重量に対して2〜25ppmの濃度のチタン成分と、
該PETコポリエステルに対してXモル%のイソフタル酸と、
該PETコポリエステルに対してYモル%のジエチレングリコールと、
該PETコポリエステルに対してZモル%の2,6‐ナフタレンジカルボン酸と
を含み、ここでX、Y、Zは
0≦X≦2.5;
1.0≦Y≦2.5;
0≦Z≦2.5;
2.5≦X+Y+Z≦7.5
を満たし、
該PETコポリエステルは0.72〜0.90dl/gの固有粘度を有し、示差走査熱量計分析により、20℃/分の所定加熱率での該PETコポリエステルの結晶化転移時の放出熱の最大量は10ジュール/グラム未満であるチタン含有PETコポリエステル。
【請求項2】
請求項1に記載のチタン含有PETコポリエステルでできた、600グラムを超える重量と7ミリメートルを超える厚みを有する射出成形ボトルプリフォーム。
【請求項3】
600〜800グラムの重量と7.5〜9.5ミリメートルの厚みと36〜42cmの長さとを有する請求項2に記載のボトルプリフォーム。
【請求項4】
請求項1に記載のチタン含有PETコポリエステルでできた、10リットルを超える内部容量を有し20回まで返却され再充填が可能な射出延伸ブロー成形された再充填可能容器。

【公開番号】特開2011−127099(P2011−127099A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255034(P2010−255034)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(599011296)南亜塑膠工業股▲ふん▼有限公司 (10)
【Fターム(参考)】