チタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料、その製造方法及び使用
本発明は、擬立方結晶構造を有するチタン系有機−無機ハイブリッド型固体材料、ソルボサーマル法を使用した該材料の製造方法及び該材料のその生物医学分野(薬剤の制御放出)、美容分野などにおける特にH2、CO2又はCH4などのガスの貯蔵、液体の吸着、液体又は気体の分離、光学部品又は触媒への適用のための使用に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド結晶三次元格子の状態の材料、特にチタンをベースとする材料、その製造方法、また、その生物医学分野(薬剤の制御放出)、美容分野などにおける特にH2、CO2又はCH4などのガスの貯蔵、液体の吸着、液体又は気体の分離、光学部品又は触媒への適用のための使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機金属格子又は金属−有機構造体(MOF)は、金属イオンとこの金属に配位した有機配位子とを含む無機−有機ハイブリッド構造を有する配位高分子である。これらの材料は、スペーサー配位子によって一定の間隔を開けて結合した一次元、二次元又は三次元格子に組織化される。これらの固形物の構造は有機部分と無機部分の両方を有し、それらの空隙は、水分子や、骨格を損傷させることなく容易に引き抜かれる有機分子によって占められている場合もある。それでも、これは、従来の無機多孔質固体(典型的には300℃)よりも低い熱安定性をもたらす。その代償として、ハイブリッド相の密度が、典型的には0.2〜1g.cm-3に大きく減少し、その結果、4500m2.g-1までの(BET)比表面積及び有意に増加した細孔容積(<2cm3.g-1)となる。
【0003】
所定のハイブリッド固体の別の顕著な特徴は、純粋な無機相について見られるよりも大きい格子の柔軟性の存在である。通常、これは、柔軟な有機配位子(脂肪族鎖)を使用するため、又は細孔内に封入された分子の脱離に関わる細孔の収縮のためである。
【0004】
これらの材料は、結晶構造を有し、通常は多孔質であり、しかも気体の貯蔵、液体の吸着、液体又は気体の分離、触媒作用、薬剤の制御放出などのような産業上用途の可能性を多数与える。例えば、亜鉛系MOF材料を含む触媒系を伴う反応過程について記載する米国特許第7,279,517号が挙げられる。また、米国特許第6,929,679号では、同じ材料が気体の貯蔵のためにも使用されている。
【0005】
MOFは、アルカリ土類元素(Ca、Mg)から遷移金属(Sc、Fe、V、Cr、Co、Ni、Zn)、3p元素(Al、Ga、In)から希土類元素(La、Ce、Eu…Y)及びアクチニド(U)まで、周期律表の元素のほとんど全てが存在するが、チタンをベースとする多孔質MOFの数は、依然として非常に限定的である。
【0006】
これまでに合成されたチタン系MOFの全てのなかでは、特に、いくつかの種類の開骨格チタンジホスホネートが挙げられる。
【0007】
このようなジホスホネートのうち、TiO2及びジ−N,N’−ピペラジンビスメチレンホスフィン酸(MIL−91(Ti):Serre C外,Chem.Mater.,2006,18,1451−1457)から熱水作用により得られたチタンのMOFのみが、(BET)比表面積が300m2.g-1に近く、かつ、細孔径が約4Åの窒素接触可能多孔度を有する。また、近年、大きな比表面積や多孔度を有する格子のない、1,4−ブタンジオール又はフタロシアニンをベースとするMOFも同定された。
【0008】
近年、第一ポリカルボン酸ジルコニウム(IV)について、特にJ.Hafizovic Cavka外による論文,J.A.C.S.,2008,130,13850−13851に記載されたが、今日に至るまで、この文献に記載された結晶化ポリカルボン酸チタン(IV)は存在していない。
【0009】
国際公開第WO2007/118888号には、チタン又はジルコニウムをベースとするカルボン酸塩MOFを、ソルボサーマル経路により、例えばTiOSO4などのチタンの先駆物質、H2O及びテレフタル酸を使用して純粋なDMF中において130℃の温度で18時間にわたり合成することが記載されている。しかしながら、この方法では、申し分のない結晶構造及び多孔度を有するチタン系ポリカルボン酸塩MOFを獲得することができない。
【0010】
しかし、多孔質固体材料内部にチタン原子が存在することは、光学部品や触媒に有利なレドックス特性を取り入れたMOF材料を与えることができれば、有益である。
【0011】
例えば、フォトクロミックMOFは、チタンMOFと光との反応により得ることができるであろう。実際に、光照射作用下で、Ti4+種はTi3+に還元される。これらの還元種が存在することで、着色特性を示す混合原子価を有する化合物が形成されることになる。
【0012】
さらに、その認められている非毒性(DL50>12g/kg)により、チタンは、化粧品又は生物学において使用可能である。
【0013】
したがって、気体の貯蔵/分離、触媒の分野での用途又はさらに生物学的若しくは美容用途のために高い比表面積を有するチタン系MOFを得ることが有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,279,517号明細書
【特許文献2】米国特許第6,929,679号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/118888号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】J.Hafizovic Cavka外,J.A.C.S.,2008,130,13850−13851
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、高い比表面積(窒素接触可能多孔度)を有するチタンMOFを提供することであり、また、このタイプの材料を得ることを可能にする、単純で信頼のできる安価な合成方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の主題の一つは、チタン系有機−無機ハイブリッド型固体材料であって、擬立方結晶構造を有し、しかも、専ら以下の式(I)の単位から構成されることを特徴とする、チタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料である:
TiaOb(OH)c[(-OOC)−X−#]d (I)
式中:
・Xは有機スペーサーであり、2〜12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、直鎖又は分岐の脂肪族鎖;非置換の、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rによって置換された単環式、二環式又は三環式炭化水素系芳香族基;ベンゾフェノン基;単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が5又は6員環であり、該基が、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ、非置換であり、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rで置換されたものを表し;
・a及びbは同一のもの又は異なるものであり、1〜16の範囲の整数であり;
・c及びdは同一のもの又は異なるものであり、1〜32の範囲の整数であり;
・指数a、b、c及びdは、4a=2b+c+dの関係を満たし;
・該チタン原子は、チタンオキソ錯体から構成される純粋に無機の元素構成要素を形成し;
・#は、式(I)の2個の単位が互いに結合する点であり;#は、該スペーサーXに属する炭素原子と、式(I)の別の単位のカルボキシレート基COO-の炭素原子(ここで、該カルボキシレート基の2個の炭素原子は、それぞれ、該式(I)の別の単位の元素構成要素である2個の隣接する八面体チタンオキソ錯体に属する)との間の共有結合を表し;
該式(I)の単位は、共に三次元構造を形成し、かつ、約4〜15Åの寸法三角形の孔を介して接近可能な約4〜40Åの自由直径を有する空隙(細孔又はケージ)を画定する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図2】図2は、本発明の材料の結晶構造の概略図である。
【図3】図3は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図4】図4は、本発明の材料の結晶構造の概略図である。
【図5】図5は、本発明の材料の熱重量分析の結果を示す図である。
【図6】図6は、TiBDC及びTi−NH2BDC材料のIRスペクトル図である。
【図7】図7は、得られた粉末のXRD回折図である。
【図8】図8は、オキソ錯体の結晶構造の概略図である。
【図9】図9は、オキソ錯体の結晶構造の概略図である。
【図10】図10は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図11】図11は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図12】図12は、本発明の材料の熱重量分析の結果である。
【図13】図13は、本発明の材料の二酸化炭素に対する吸着/脱離能力を示す図である。
【図14】図14は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図15】図15は、ベンジルアルコールによる含浸及びUV照射後の本発明の材料の写真である。
【図16】図16は、含浸及びUV照射後のTiBDC材料のUVスペクトル(図16a:nmで表す波長に応じた吸光度)及び75Kでの電子常磁性共鳴(EPR)スペクトル(図16b:磁場(G)に応じた誘導吸着)を示す図である。
【図17】ベンジルアルコールによる浸漬及びUV照射後のTiBDC(上の曲線)及びTiO2(下の曲線)のUV/可視吸着スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によれば、表現「三次元構造」とは、MOF材料の分野において従来から理解されているとおり、式(I)の三次元の配列又は反復を意味するものと介され、また「有機金属高分子」ともみなされる。
【0020】
本発明に従う固体材料(以下、チタンMOFという。)には、チタンを主成分とするという利点と、特定の技術及びこの材料に特定の特性を付与する特定の位相により結晶構造が制御され、かつ、極めて組織化されるという利点とがある。
【0021】
本発明の固体材料の結晶空間的構造は、この材料の特定の特徴及び特性の基礎であり、、特に、該材料の比表面積と、例えば気体の貯蔵能力や液体の吸着能力とに影響を与える空隙(又は細孔)のサイズを決める。そのため、細孔のサイズを有機スペーサーXの選択によって調節することができる。
【0022】
Xについて定義される脂肪族鎖のなかでは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル鎖などの線状アルキル鎖;エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン及びドデシレンなどの線状アルキレン鎖;エチン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニン、デシン、ウンデシン及びドデシンなどのアルキン鎖が挙げられる。このような鎖のなかでは、C1〜C4アルキル鎖及びC2〜C4アルキレン又はアルキン鎖が好ましい。
【0023】
Xについて定義される炭化水素系芳香族基のなかでは、特に、フェニレン;クロルフェニレン;ブロムフェニレン;アミノフェニレン;ニトロフェニレン;モノ、ジ又はテトラメチルフェニレン;モノ又はジエテニルフェニレン;モノ又はジヒドロキシフェニレン;ビフェニレン;ジフェニルジアゼン;ナフタリン及びアントラセン基が挙げられる。
【0024】
Xについて定義される複素環のなかでは、チオフェン、ビチオフェン、ピリジン、ビピリジン及びピラジン環が挙げられる。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態によれば、サブユニット[-OOC−X−#]は、以下の式(II−1)〜(II−13)の基から選択される:
【化1】
式中:
・Rは、ハロゲン原子、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル又はC1〜C4アルキル基であり;
・mは、0〜4の範囲の整数であり;
・nは、0〜8の範囲の整数であり;
・pは、0〜6の範囲の整数であり;
・qは、0〜2の範囲の整数であり;そして
・rは、0〜3の範囲の整数である。
【0026】
式(II−1)のサブユニットのなかでは、フェニル−1−カルボキシレート、フェニル−2−アミノ−1−カルボキシレート、フェニル−2,5−ジヒドロキシ−1−カルボキシレート及びフェニル−2−クロル−1−カルボキシレートが特に好ましい。
【0027】
式(II−4)のサブユニットのなかでは、特に、アゾベンゼン−4−カルボキシレート、アゾベンゼン−3,3'−ジクロル−4−カルボキシレート及びアゾベンゼン−3,3'−ジヒドロキシ−4−カルボキシレートが挙げられる。
【0028】
式(II−8)のサブユニットのなかでは、チオフェン−2−カルボキシレート及び3,4−ジヒドロキシチオフェン−2−カルボキシレートが挙げられる。
【0029】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、サブユニット[-OOC−X−#]は、フェニル−1−カルボキシレート、フェニル−2−アミノ−1−カルボキシレート及びチオフェン−2−カルボキシレートから選択される。
【0030】
先に定義した式(I)のサブユニットのなかでは、特に以下の式(I−1)のサブユニットが挙げられる:
Ti8O8(OH)4[(-OOC)−X−#]12 (I−1)
式中:
・X及び#は先に定義したとおりであり;
・チタン原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれた中心チタン原子をそれぞれ含む8個の八面体チタンオキソ錯体から構成される純粋に無機の元素構成要素を形成し、ここで、該八面体チタンオキソ錯体は、共通接線又は共通頂点のいずれかにより、いずれの場合にもオキソ−O−又はヒドロキソ−OH−架橋により互いに結合し;該構成要素は、有機スペーサーXによって空間の三次元で互いに結合し;該構成要素のいずれかは、2個の酸素原子のいずれかが2個の隣接するチタンオキソ錯体の一体部分であるカルボキシレート基COO-により12個の有機スペーサーに結合しているものとする。
【0031】
したがって、式(I−1)のサブユニットにおいて、元素構成要素(又は八面体オキソチタン錯体の輪)は、2個のオキソ又はヒドロキソ架橋を伴う共通接線により、或いは単一のオキソ又はヒドロキソ架橋を伴う共通頂点により、或いはカルボキシレート基により8個のチタン原子に結合した36個の酸素原子を含有する。
【0032】
上記のように、本発明に従う固体材料は、約4〜40Åの自由直径を有する空隙を含む。好ましくは、この空隙は約5〜12.6Åの自由直径を有する。
【0033】
本発明に従う固体材料は、約200〜6000m2/gの(BET)比表面積、好ましくは200〜1800m2/gの(BET)比表面積を有する。
【0034】
本発明において、細孔容積とは、気体及び/又は液体分子に接近可能な気体の容積を意味し、そしてこれは、本願において「空隙」、「ケージ」又は「細孔」と呼ぶものの内部の容積に相当する。
【0035】
本発明に従う固体材料は、約0.1〜3cm3/g、特に約0.5〜0.7cm3/gの細孔容積を有することができる。
【0036】
これらの特性のため、本発明に従う固体材料は、不均一触媒化学反応を実施するための触媒担体として、又は気体の貯蔵/分離材料として、又は有効成分(薬剤、化粧品)をカプセル化するためのマトリックスとして、又はさらに情報貯蓄、レーザー印刷用のフォトクロミック材料として、又はさらに酸素インジケーター材料として使用できる。
【0037】
非限定的な例として、本発明に従う固体材料は、特に、次の目的又は用途で使用される:
・工場(製鋼所、セメント工場、火力発電所など)からの燃焼排ガス、バイオマスの燃焼や石炭のガス化によりメタン又は水素を生成させるための設備からの燃焼排ガスを捕捉するためのプロセスにおいて、様々な汚染物質(水、N2、CO、H2Sなど)の存在下で温室効果ガス(CO2、CH4)を吸着させるために使用される。これらの材料の低い生産コストは、それらの非毒性及び良好な安定性(熱安定性、耐湿性又は硫化二水素に対する抵抗性)と相まって、このタイプの大規模用途のための最適な候補にする;
・芳香族化合物(キシレンの異性体)、分岐アルカン(オクタン価)の分離などの流体(気体、蒸気、液体)の分離、燃料の精製などのために使用される;
・生物学的用途/美容用途において、興味のある有効(医薬又は化粧品の)成分を、好適な期間にわたって治療に有効なレベルの投与量を与えるために制御された態様で放出する目的又はこれらの成分を外部環境に対して保護する(例えば湿気から)目的で吸着又はカプセル化するために使用される。そして、チタンは、概してカルボン酸類と同じようにさほど毒性ではない(致死量(DL50)は5g/kgを超える)金属であるため、これらの固体(カルボン酸チタン)に、このタイプの用途にとって極めて有利な低い毒性を先験的に付与する。チタンの紫外線吸収特性は、特にこの波長範囲で吸収する有機スペーサーを好適に選択することにより、化粧品に使用される紫外線遮断物質の分野に応用できる。また、本発明に従う固体材料は、毒素のカプセル封入、解毒(体内の毒素を帰納的に除去する)又は体液(尿、血液など)を浄化するためにも使用できる。
【0038】
本発明に従う固体材料は、チタンアルコキシド型のチタン先駆物質及び少なくとも1種のジカルボン酸から直接出発して、或いはチタンのオキソ錯体などの前もって形成された種及び少なくとも1種のジカルボン酸から間接的に出発して、少なくとも2種の溶媒の混合物中においてソルボサーマル条件下で製造できる。
【0039】
しかして、本発明の別の主題は、先に定義したチタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料の製造方法であって、次の工程:
(1)第1工程において、次のものを含む反応混合物を調製し:
(i)次式(III)のチタンアルコキシドから選択される少なくとも1種のチタン先駆物質:
Ti(OR1)4 (III)
(式中、R1は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基である。)又は次式(IV)の少なくとも1種のチタンオキソ錯体:
TixOy(OR2)z(OOCR3)w (IV)
(式中:
・R2は、水素原子、直鎖若しくは分岐C1〜C6アルキル基、又はハロゲン原子、C1〜C4アルキル及びC2〜C3アルケン基から選択される1個以上の基で置換されていてよいフェニル環を表し;
・R3は、直鎖又は分岐C1〜C4アルキル基、C1〜C4トリハロアルキル基又はフェニル環を表し;
・xは、2〜18の範囲の整数であり;
・yは、1〜27の範囲の整数であり;
・zは、0〜32の範囲の整数であり;
・wは、0〜16の範囲の整数である。)
また、該チタン原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれた中心チタン原子をそれぞれ含む、チタンオキソ錯体の完全に無機のコアから構成される元素構成要素を八面体の配位で形成し、ここで、該八面体チタンオキソ錯体は、共通接線又は共通頂点のいずれかにより、いずれの場合にもオキソ−O−又はヒドロキソ−OH−架橋により互いに結合し;該構成要素は、アルコレート(OR2)及び/又はカルボキシレート(OOCR3)型の有機配位子で取り囲まれている;
(ii)次式(V)の少なくとも1種のジカルボン酸:
HOOC−X’−COOH (V)
(式中、X’は、2〜12個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐の脂肪族鎖、ベンゾフェノン基又は単環式、二環式若しくは三環式炭化水素系芳香族基であって、非置換のもの又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立に選択される1個以上の置換基R'で置換されたものを表す。);
(iii)C1〜C4アルコール、ベンジルアルコール及びクロルベンジルアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒S1と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン及びN−メチルピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒S2とを含む少なくとも2種の有機溶媒の混合物;
(2)第2工程において、前記のようにして得られた反応混合物を、所期の固体材料に相当する沈殿物が得られるまで約4〜72時間にわたって約70〜200℃の温度にし;次いで
(3)第3工程において、該反応混合物を周囲温度にまで冷却し;
(4)第4工程において、該固体材料を該有機溶媒の混合物から分離すること
を含み、ここで、該固体材料が、Xが窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が置換されていてよい5又は6員環であるものである式(I)の単位から構成される場合には、該方法は、次の追加工程も含むものとする:
(5)次式(VI)の少なくとも1種のジカルボン酸の存在下で、該第4工程から得られた固体材料の少なくとも1種の極性有機溶媒への分散液を調製する第5工程:
HOOC−X”−COOH (VI)
(式中、X”は、単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が5又は6員環であり、該基が、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ、非置換であり、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rで置換されたものを表す。);
(6)前記のようにして得られた分散液を4時間〜4日間にわたって100〜150℃の温度にし、それによって所期の固体材料に相当する沈殿物を形成させる第6工程;続いて
(7)該温度を周囲温度に戻す第7工程;及び
(8)このようにして得られた固体材料を該有機溶媒から分離する第8工程。
【0040】
この方法の好ましい実施形態の一つによれば、式(III)の先駆物質は、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−プロポキシド及びチタンブトキシドから選択される。このような先駆物質のなかでは、チタンイソプロポキシドが特に好ましい。
【0041】
本発明の方法に従って使用できる式(IV)のチタンオキソ錯体は、例えば、Rozes L外による論文,Monatshefte fur Chemie,2006,137,501−528に記載されている。上記式(IV)のチタンオキソ錯体のなかでは、特に、Ti16O16(OCH2CH3)32及びTi8O8(OOCR3)16(ここで、R3は先に定義したとおりである(C1〜C4直鎖又は分岐アルキル基、C1〜C4トリハロアルキル基又はフェニル環))が挙げられる。
【0042】
式(V)のジカルボン酸は、固体材料のサブユニット[-OOC−X−#]に相当するジカルボン酸から選択されることは明らかであるが、ただし、上記X’について与えた定義の範囲内で製造することが望ましい。実際に、第1工程を通して、Xが5又は6員の複素環である材料を直接的に得るのは、先験的に可能ではない。この場合には、本発明に従う方法は、スペーサーX’を上で定義したスペーサーX”と交換する工程5〜8を含まなければならない。
【0043】
したがって、式(V)のジカルボン酸は、特に、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、2−アミノベンゼン−1,4−ジカルボン酸(アミノテレフタル酸)、2−ニトロベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−クロルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−ブロムベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−メチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジメチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニル−3,3'−ジカルボン酸、4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)二安息香酸、3,3’−(ジアゼン−1,2−ジイル)二安息香酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、ナフタリン−1,5−ジカルボン酸、1,4−フェニレン二酢酸、1,4−フェニレンジアクリル酸及び4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸から選択できる。
【0044】
このような酸のなかでは、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸及び2−アミノベンゼン−1,4−ジカルボン酸が特に好ましい。
【0045】
反応混合物の式(III)のチタンアルコキシド又は式(IV)のチタンオキソ錯体/式(V)のジカルボン酸において、モル比は、好ましくはおよそ0.1〜2まで、より好ましくはおよそ0.5から1まで変化する。
【0046】
該方法の第1工程の間に使用するC1〜C4アルコール(S1)のなかでは、メタノールが特に好ましい。
【0047】
該方法の第1工程の間に使用される有機溶媒の混合物において、S1/S2容積比は、好ましくは約0.05〜0.95の範囲、より好ましくは約0.10〜0.90の範囲にある。
【0048】
随意に、該第1工程の間に使用される反応混合物は、例えば酢酸などのモノカルボン酸及び例えばアルキルアミン(例えばトリエチルアミン)などの有機塩基から選択される1種以上の添加剤も含有することができる。本発明者は、特に、酢酸などのモノカルボン酸が存在することにより、本発明に従う固体材料の結晶性及び/又は反応収率が改善することが可能になることを見出した。また、このような添加剤を存在させることで、合成時間を短縮することも可能になると考えられる。
【0049】
これらの添加剤を使用する場合、これらの添加剤は、好ましくは、反応混合物の総重量に対して1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%を占める。
【0050】
好ましい一実施形態によれば、該方法の第2工程は、約100〜150℃の温度で実施される。
【0051】
第2工程の継続期間は、使用する温度に応じて変わってくる。温度が高ければ高いほどこの継続期間は短くなると解される。好ましくは、第2工程の継続期間は、約8〜15時間の範囲である。
【0052】
本発明に従う方法の特定の実施形態の一つによれば、工程(2)は、電子レンジを使用して実施される。この場合には、第2工程の継続期間を減らすことができ、1分から60分まで変更することができる。この反応混合物を加熱する方法は、さらに、加熱を従来のオーブン内で実施した場合に得られる材料の粒子よりもかなり小さなサイズを有する材料を得るのを可能にする。
【0053】
第3工程の間に、好ましくは反応混合物の周囲温度までの冷却をおよそ1℃/時間〜40℃/時間の冷却速度で実施する。
【0054】
第5工程の間に使用できる極性溶媒は、特に、C1〜C4アルコール、ベンジルアルコール及びクロルベンジルアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒S1と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン及びN−メチルピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒S2とを含む少なくとも2種の有機溶媒S1及びS2の混合物から選択できる。
【0055】
上記のとおり、本発明に従う固体材料が、Xが窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する5又は6員の芳香族複素環である式(I)の単位から構成される場合には、スペーサーX’を先に定義したスペーサーX”と交換する上で定義した工程(5)〜(8)を実施することが必須である。
【0056】
第5工程の間に、第4工程から得られる固体材料は、約50〜75%の収率で得られる。
【0057】
式(VI)のジカルボン酸のなかでは、特に、チオフェン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピラジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸及びピラジン−2,6−ジカルボン酸が挙げられる。これらの酸の中では、チオフェン−2,5−ジカルボン酸が特に好ましい。
【0058】
第5工程の間の、第4工程から得られる固体材料/式(VI)のジカルボン酸のモル比は、好ましくは約1〜20、より好ましくは約5〜10の範囲にある。
【0059】
本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、第6工程は、約8〜15時間にわたって実施される。
【0060】
有機溶媒の混合物から固体材料を分離する第4工程及び第8工程は、当業者に知られている任意の分離方法によって実施できるところ、当該分離方法のなかでは、ろ過が好ましい。
【0061】
合成が完了したら、固体材料を、好ましくは、例えばDMFなどの有機溶媒で、非常に迅速に静的に洗浄し、又は周囲温度で撹拌しながら溶媒に再懸濁することによって洗浄し、続いて当業者に知られている任意の好適な乾燥技術により乾燥させる。この乾燥工程は、微量の溶媒及び/又は酸を除去するのを可能にする。これは、特に、100〜275℃の温度で3〜48時間、好ましくは10〜15時間にわたって空気中又は真空下で固体材料を焼成することによって実施できる。
【0062】
本発明を次の代表的な実施形態により例示するが、これらは限定ではない。
【実施例】
【0063】
例
次の例において、得られた材料の構造は、Bruker D5000器に基づくそれらのX線粉末回折図(リートフェルト法に従うXRD回折図)から決定した。
【0064】
結晶格子は、Dicvolソフトウェアを使用して得られ(A.Boultif外,J.Appl.Crystallogr.,1991,24,987)、また、格子歪による精密化は、Fullprofソフトウェア(Rodriguez−Carvajal,J.の「Collected Abstracts of Powder Diffraction Meeting」,Toulouse,France 1990,127)及びそのグラフィカル・インターフェースWinPLOTR(Roisnel,T外,「Abstracts of the 7th European Powder Diffraction Conference」,Barcelona,Spain 2000,71)により実施した。得られた材料の構造を構成する原子のほとんどの原子配置は、Expoプログラムによる直説法によって決定した(Altomare,A外,J.Appl.Crystallogr.,1999,32,339)。残りの原子及び遊離水分子の配置は、SHELXL−97プログラムにより決定した(ゲッティンゲン大学、ドイツ国,1997)。次いで、原子配置を、WinPLOTRグラフィカル・インターフェースをまた使用してFullprofで改良した。この改良中に、原子間の距離及び角度の歪み(距離:Ti−O、C−C及びC−O;角度O−Ti−O及びO−C−O、C−C−C)を加えた。
【0065】
熱重量分析は、TAインストルメンツ社がTA2050の商品名で販売する熱重量分析器又はパーキンエルマー社製のSTA6000分析器を使用して、気流(80cm-3.分-1)下で3℃/分の加熱速度及び約5mgの材料を使用して実施した。
【0066】
赤外分光分析は、Nicolet750という商品名で販売されている分光計で、分析される微量の材料を含有するKBrペレットを使用して実施した。
【0067】
比表面積の測定は、Micromeritics ASAP 2010という商品名で販売されている機械を使用して、予備真空(10-3Torr)下で15時間にわたり200℃で予め活性化された約50mgの材料について窒素吸着−脱離技術により実施した。この分析は、ラングミュア又はBET計算方法により実施した。
【0068】
熱安定性は、Anton Paar高温チャンバーを備えたBruker D5000回折計を使用して評価した。
【0069】
例1
組成Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のTiBDC相の合成
1.5mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(250mg)(オールドリッチ、98%)、次いで1mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.3mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、4.5mLの無水ジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス)及び0.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)から構成される混合物5mLを含有するテフロン(商標)体に導入した。この反応混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。
次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブンに15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、固体状態の所期材料をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。細孔内に含まれる溶媒を、該固体を空気中200℃で12時間にわたり焼成することによって除去した。
得られた材料の結晶学的データ及び組織微細化パラメーターを以下の表1に与える。
【0070】
【表1】
【0071】
XRD回折図を図1に与えており、図中、強度(任意単位で表す)は、回折角の程度に応じる。この図では、黒点は実験点に相当し;灰色の点は計算点に相当し;黒線はブラッグピークに相当し;一番下の黒曲線は、実験点と計算点との差の線図に相当する。
【0072】
得られた材料の結晶構造を添付した図2に概略的に示しており、図中、軸a(又はb)に沿った材料の結晶構造(図2a)及びチタン八面体の輪の図(図2b、チタン八面体、炭素原子:黒点)を示している。該材料は、斜方晶系空間群I4/mmm(No.139)において次のパラメーターで結晶化する:
− a=18.654(1)Å,
− c=18.144(1)Å
− 格子容積:6313.9(6)Å3。
【0073】
この材料は、チタンTiO5(OH)の八面体から構成され、テレフタル酸陰イオンによって互いに結合した8個の八面体の集合体(又は輪)になる。この集合体の全体は、細孔の三次元ネットワークを有する擬立方多孔質体を画定する。また、この構造は、各八面体の各頂点に、8個のチタン多面体から構成される輪を有するハイブリッド八面体の集合体であると説明することもできる。細孔にアクセスするための開口は、5〜7オングストロームに近い自由寸法を有し、それぞれ6及び13オングストロームに近い寸法を有する2タイプのケージが存在する。
【0074】
得られた材料の原子座標を以下の表2に与える(水和相):
【0075】
【表2】
[a]:この表において、水分子は、Owi(i=1〜10)で表しており、かつ、厳密に言えば、これらは、細孔が周囲の空気にさらされたときにその細孔を満たすに過ぎないため、材料の構造の一部分ではない。
【0076】
主原子間距離(オングストロームで表す)を以下の表3に与える:
【0077】
【表3】
【0078】
例2
Ti8O8(OH)4[O2C−C6H3(NH2)−CO2]6組成のTi−NH2BDC相の合成
Ti−NH2BDCを、出発材料の1.5mmolの2−アミノテレフタル酸(270mg)(オールドリッチ、98%)、0.67mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.2mL)(アクロス・オーガニクス、98%)、2.5mLの無水ジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス)及び2.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)から構成される混合物5mLを使用して例1で示した方法に従って製造した。
次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで100℃のオーブン内に15時間にわたり置いた。周囲温度にまで戻した後に、所期の材料を固体の状態で得、これをろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。細孔内に含まれる溶媒を、該固体を空気中200℃で12時間にわたり焼成することによって除去した。
得られた材料の結晶学的データ及び組織微細化パラメーターを以下の表4に与える:
【0079】
【表4】
【0080】
得られた材料のXRD回折図を図3に与えており、そこでは、強度(任意単位で表す)は、回折角(度で表す)に応じたものである。この図では、黒点は実験点に相当し;灰色の点は計算点に相当し;黒線はブラッグピークに相当し;一番下の黒曲線は、実験点と計算点との差の線図に相当する。
【0081】
得られた材料の結晶構造を添付した図4に概略的に示しており、そこでは、軸a(又はb)に沿った材料の結晶構造(図4a)及びチタン八面体(炭素原子:黒点;窒素原子:灰色の点)の輪の図が示されている。該材料は、斜方晶系空間群I4/mmm(No.139)において次のパラメーターで結晶化する:
・a=18.673(1)Å、
・c=18.139(1)Å、
・格子容積:6324.5(1)Å3。
【0082】
この材料は、2−アミノテレフタル酸陰イオンにより互いに結合した8個の八面体の集合体(又は輪)に集合する酸化チタンTiO5(OH)の八面体から構成される(図4a及び4b)。この集合体の全体は、細孔の三次元ネットワークを有する擬立方多孔質体を画定する。また、この構造は、各八面体の各頂点に、8個のチタン多面体から構成される輪を有するハイブリッド八面体の集合体であると説明することもできる。細孔にアクセスするための開口は、5〜6オングストロームに近い自由寸法を有し、それぞれ6〜13オングストロームに近い寸法を有する2タイプのケージが存在する。アミノ基は、4箇所の結晶学的位置にわたって秩序を乱し、そして25%の占有がアミノ基の窒素原子に起因していた。
【0083】
この材料の原子座標を以下の表5に与える(水和相):
【0084】
【表5】
[a]:この表において、水分子は、Owi(i=1〜10)で表しており、かつ、厳密に言えば、これらは、細孔が周囲の空気にさらされたときにその細孔を満たすに過ぎないため、材料の構造の一部分ではない。
【0085】
主原子間距離(オングストロームで表す)を以下の表6に与える:
【0086】
【表6】
【0087】
この例で製造された材料の熱重量分析、また、例1で製造されたTiBDC材料の熱重量分析をTA2050機で実施した。これらの結果を添付した図5に与える。この図では、質量(パーセントで表す)は、温度(℃で表す)に応じたものである。黒の曲線は、例1からのTiBDCに相当し、灰色の曲線は、例2からのTi−NH2BDCに相当する。
【0088】
この図から、TiBDC材料が、まず25℃〜100℃でメタノールが脱離し、次いで100〜200℃でDMFが脱離するという、細孔内に含まれる溶媒の連続的な脱離に相当する2つの特徴的な質量損失を有することが分かる。
【0089】
材料の分解は、その骨格を構成するカルボン酸の脱離の間に400℃付近で生じる。残留固体は、アナターゼTiO2である。
【0090】
同じ熱挙動が、唯一の有意差として、より低い温度(300℃)で骨格が分解するTi−NH2BDC材料についても観察される。残留固体もアナターゼTiO2である。
【0091】
TiBDC及びTi−NH2BDC材料のIRスペクトルが添付図6に示されており、そこでは、強度(任意単位で表す)は、波長(cm-1で表す)に応じたものである。この図では、黒の曲線は例1からのTiBDCのスペクトルに相当し、灰色の曲線は、例2からのTi−NH2BDCのスペクトルに相当する。2つの材料のぞれぞれについて観察されるのは、金属−カルボキシレート結合の特徴的なバンド(1380及び1600cm-1付近のバンド)、細孔内に存在する遊離溶媒分子に相当する3400cm-1付近の広いバンド、また低い波数(400〜800cm-1)での無機部分(O−Ti−O)の構造バンドである。
【0092】
TiBDC及びTi−NH2BDC材料の比表面積測定の結果を以下の表7にまとめる。
【0093】
【表7】
(*):t−プロット法に従って算出。
【0094】
例3
溶媒混合物の選択の重要性に関する実証
この例では、チタンイソプロポキシド及び1,4−ベンゼンジカルボン酸から合成された材料の性質に及ぼす溶剤の選択の影響を比較した。
これらの合成を純溶剤(メタノール、DMF若しくはイソプロパノール)又はメタノール/DMF混合物中で実施した。
【0095】
(a)純メタノール媒体中での合成(本発明の一部ではない比較例)
0.4mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(60mg)(オールドリッチ、98%)、続いて0.35mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.1mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、3mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)を含むテフロン(商標)体に導入した。この混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブン内に15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、得られた固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
【0096】
(b)純ジメチルホルムアミド媒体中での合成(本発明の一部ではない比較例):
1.0mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(166mg)(オールドリッチ、98%)、次いで1mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.2mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、5mLの無水DMF(アクロス・オーガニクス)を含有するテフロン(商標)体に導入した。この混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブン内に15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
【0097】
(c)純イソプロパノール媒体中での合成(本発明の一部ではない比較例):
0.35mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(60mg)(オールドリッチ、98%)、続いて0.5mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.1mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、5mLのイソプロパノール(オールドリッチ、99%)を含有するテフロン(商標)体に導入した。この混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブン内に12時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
【0098】
(d)DMF/メタノール混合物中での合成(本発明に従う実施例):
1.5mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(250mg)(オールドリッチ、98%)、次いで1mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.3mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、4.5mLの無水DMF(アクロス・オーガニクス)及び0.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)を含有するテフロン(商標)体に導入した。この混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブン内に15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
【0099】
このようにして溶剤のぞれぞれで得られた粉末のXRD回折図(λCu=1.5406Å)を添付図7に示しており、そこでは、強度(任意単位で表す)は、回折角(度で表す)に応じたものである。この図において、最も上の曲線は純メタノールで実施された合成に相当し、次の曲線は純イソプロパノールで実施された合成に相当し、最も下の曲線は純DMFで実施された合成に相当する。最も下の曲線のすぐ上に位置した曲線は、これら3つの別の曲線とは著しく相違しているが、これはメタノール/DMF混合物で実施された合成に相当する。純溶剤で得られた材料は結晶化が極めて不十分であり、それらのXRD回折図は、例1で得られたTiBDC材料(添付した図1参照)及び合成をメタノール/DMF混合物中で実施した場合に得られたものとは完全に異なることが分かる。また、それらの回折ピークは、より大きな角度に位置しているが、これは、ネットワークの密度が大きく、そのため多孔度が低いことを示している。
【0100】
そうでなくても全ての条件は等しいので(先駆物質の性質、合成時間及び温度)、これらの試験は、形成された相の性質が溶媒の選択に強く依存していることを示している。例えば国際公開第WO2007/118888号に記載されるような単一の溶媒から構成される反応媒体を使用しても、本発明に従う材料を得るのは可能ではない。本発明の方法に従って少なくとも2種の溶媒から構成される混合物、例えばメタノールとジメチルホルムアミドとの混合物を使用した場合にのみ、非常によく結晶化した正方晶系多孔質相の状態で完全に組織化されたTiBDC材料を得るのが可能になる。
【0101】
例4
チタン先駆物質の選択の重要性に関する実証
この例では、合成された材料の構造に及ぼすチタン先駆物質の選択の影響を検討した。合成は、四塩化チタン(本発明によるものではないチタン先駆物質)及び1,4−ベンゼンジカルボン酸から出発して、純DMF媒体又はメタノール/DMF混合物中で実施した。
【0102】
(a)純DMF媒体中での合成
この合成は、国際出願WO2007/118888号の例4に記載されたプロトコールに従って実施した。
52mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(8.72g)(オールドリッチ、98%)、続いて52mmolの四塩化チタンTiCl4(10g)を、300mLの無水DMF(アクロス・オーガニクス)を含有する500mL丸底フラスコに導入した。この反応混合物を、沈殿が得られるまで18時間にわたって130℃で撹拌した。この沈殿物を遠心分離により回収し、続いて50mLのDMFで3回洗浄し、続いて50mLのメタノールで3回洗浄した。続いて、この沈殿物を160℃で16時間にわたり乾燥させた。
実施した分析から、得られた粉末の粒子は、さほど多孔質ではなく(BET比表面積:107m2/g)しかも非晶質である(XRD)ことが分かる。
【0103】
(b)DMF/メタノール媒体中での合成
上記(a)で詳しく説明した合成を再現したが、ただし、溶媒として、240mLの無水DMF及び60mLのメタノールから構成される混合物を使用した。
また、実施した分析から得られた粉末の粒子は、さほど多孔質ではなく、しかも非晶質である(XRD)ことが分かった。
これらの試験は、合成中に使用される溶媒(純DMF溶媒又はDMFとメタノールとの混合物)にかかわらず、チタン先駆物質として式(I)のチタンアルコキシドの代わりに四塩化チタンを使用すると、本発明に従う擬立方結晶構造を有する材料を得ることができないことを実証するものである。
【0104】
例5
予め形成されたチタンオキソ錯体から出発するチタンMOFの製造
この例では、式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のハイブリッド材料を、チタン先駆物質として式Ti16O16(OEt)32のチタンオキソクラスターを使用して合成した。
【0105】
(1)第1工程:式Ti16O16(OEt)32のチタンオキソ錯体の合成
Ti16O16(OEt)32オキソ錯体を、半化学量論的条件下で、無水エタノール中チタンアルコキシドTi(OEt)4の水[H2O/Ti=0.5]で制御加水分解を行うことにより得た。7mLのTi(OEt)4、7mLの無水エタノール及び300μLの水からなる反応混合物をソルボサーマル媒体中において15日間にわたり100℃で処理した。チタンオキソ錯体の結晶化を反応混合物の徐冷(冷却速度:1℃/時間)によって開始した。続いて、結晶化された状態のチタンオキソ錯体をろ過後に70%の収率で回収した。
このオキソ錯体の結晶構造を単結晶X線回折により決定した。これを添付図8に概略的に示している。この構造の決定から、それぞれ−4逆回転の擬軸だと認められる8個のチタンオキソ錯体の2個の直交ブロックから形成される格子が形成されていることを実証することができた。16個のチタン原子は、3つの異なるタイプのオキソ架橋によって結合し、4個の酸素が金属中心に対して2倍結合し[μ2−O]、8個がチタンに対して3倍結合し[μ3−O]、そして4個がチタンに対して4倍結合する[μ4−O]。オキソコアの表面には、32個のエトキシドのクラウンがあり、そのうちの16個は末端基であり、他の16個は架橋基である。この構造は、A.Mosset外,C.R.Acad.Sci.Paris,t.307,Series II、1988,p.1747−1750及びJ.Galy外,Chem.Soc.Dalton Trans.,1991,p.1999の論文に詳しく記載されている。
【0106】
(2)第2工程:式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のハイブリッド材料の合成
前工程で得られた0.17gのチタンオキソ錯体Ti16O16(OEt)32と、0.27gのテレフタル酸を4mLのDMFと1mLのメタノールとの混合物に導入した。この反応混合物をオートクレーブ中に150℃で20時間にわたり置いた。得られた沈殿物をろ過し、DMFで3回洗浄し、続いて20時間にわたり150℃で乾燥させた。反応収率は74%であった。
例1からのハイブリッド材料にことごとく等しいハイブリッド材料が得られた。
【0107】
例6
予め形成されたチタンオキソ錯体からチタンMOFの製造
この例では、式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のハイブリッド材料を、チタン先駆物質として式Ti8O8(OOC(CH3)3)16のチタンオキソクラスターを使用して合成した。
【0108】
(1)第2工程:式Ti8O8(OOC(CH3)3)16のチタンオキソ錯体の合成
式Ti8O8(OOCC(CH3)3)16の分子錯体を、ソルボサーマル条件(オートクレーブ中において100〜110℃で24時間)下において、50mLのアセトニトリル中で2mLのTi(OiPr)4と7gのピバル酸(HOOCC(CH3)3)とを反応させることによって得た。続いて、このようにして形成された結晶化状態のチタンオキソ錯体をろ過後に94%の収率で得た。
このオキソ錯体の結晶構造を単結晶X線回折により決定した。これを添付図9に概略的に示している。この構造の決定から、頂点で結合した8個の八面体チタンオキソ錯体と、16個の二座架橋性カルボキシレート基とのクラウンを形成していることを実証することができた。8個のカルボキシレート基がエクアトリアル位に位置し、他の8個がアキシアル位に位置している(オキソコアのクラウンによって形成される平面の各面上に4個)。
【0109】
(2)第2工程:式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のハイブリッド材料の合成
前工程で得られた0.6gのチタンオキソ錯体Ti8O8(OOCC(CH3)3)16と、1.55gのテレフタル酸を18mLのDMFと4.5mLのメタノールとの混合物に導入した。この反応混合物をオートクレーブ中に110℃で4日間にわたり置いた。得られた沈殿物をろ過し、DMFで3回洗浄し続いて、20時間にわたり150℃で乾燥させた。反応収率は97%であった。
例1からのハイブリッド材料にことごとく等しいハイブリッド材料が得られた。
【0110】
例7
式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6の材料からの式Ti8O8(OH)4[O2C−C4H2S−CO2]6のハイブリッド材料の製造
この例では、式Ti8O8(OH)4[O2C−C4H2S−CO2]6のハイブリッド材料、すなわち、本発明に従う式(I)(式中、Xはチオフェン環を表す。)のサブユニットから構成されるハイブリッド材料を、上記例1で製造した材料、すなわち式(I)(式中、Xはベンゼン環である。)のサブユニットから構成されるハイブリッド材料から出発する有機スペーサーの交換により合成した。
上記例1で得られた1gの式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6の材料と、5gのチオフェンジカルボキシレートとを40mLのDMFと10mLのメタノールとの混合物に分散させた。この分散液をソルボサーマル条件下において150℃で16時間にわたり放置した。冷却後、所期の結晶化材料の得られた粉末をろ過し、DMFで3回洗浄し、6時間にわたり150℃で乾燥させた。この交換反応の収率は93%であった。
この例は、有機スペーサーの単純な交換により結晶化ハイブリッド材料を得ることが可能であることを示している。
【0111】
例8
TiO[O2C−C6H4−CO2]組成のTiO−BDC相の合成
1.5mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(250mg)(オールドリッチ、98%)、次いで1mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.3mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、2.5mLの無水ジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス)と2.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)から構成される混合物を5mL含有するテフロン(商標)体に導入した。この反応混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。
次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブンに15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、白色固体の状態の所期材料をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。結晶化相をTiO−BDCという。
XRD回折図を添付図10に示しており、図中、強度(任意単位で表す)は、回折角の程度に応じる。
一次真空(10-3Torr)下で15時間にわたり150℃で予め活性化された20mgの試料について実施された、この材料の比表面積の測定から、250(15)m2.g-1のBET比表面積を算出することが可能である。
この固体の熱安定性を評価した。XRD回折図を空気中20℃ごとのダイアグラムで集めた(図示しない)TiO−BDC固体は、300℃の温度までは安定であることが分かった。
【0112】
例9
TiO[O2C−C6H2(OH)2−CO2]組成のTi−BDC(2OH)相の合成
0.67mmolの2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボン酸(150mg)(オールドリッチ、98%)、続いて0.33mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.1mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、2.5mLのジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス、特別の乾燥)及び2.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)を含有する溶液に導入する。この混合物を周囲温度で5分間撹拌した。
続いて、このテフロン体をPAAR金属体に導入し、次いで200℃のオーブン内に15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、鮮やかなオレンジ色の固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。オレンジ色の結晶化相(Ti−BDC(2OH)という。)が得られた。そのXRD回折図を添付図11に示しており、図中、強度(任意単位で表す)は、回折角(度で表す)の関数である。
一次真空(10-3Torr)下で15時間にわたり200℃で予め活性化された20mgの試料について実施された、この材料の比表面積の測定から、980(15)m2.g-1のBET比表面積を算出することができた。
STA6000機で実施された、この例で製造された材料の熱重量分析の結果を添付図12に与えている。この図では、質量(パーセントで表す)は、温度(℃で表す)に応じたものである。式TiO[O2C−C6H2(OH)2−CO2].H2Oから出発して推定される損失は、それぞれ6.8%(遊離水)及び62.7%であり、これは、実験上の損失と非常によく一致する(それぞれ約7及び63%)。また、この実験は、Ti−BDC(2OH)材料が205℃までは空気中で安定であることも示した。
【0113】
例10
Ti−NH2BDC相の二酸化炭素を保存するための使用
この例では、上記例2で製造されたTi−NH2BDC相の二酸化炭素に対する吸着/脱離能力を試験した。
Ti−NH2BDC相のCO2吸着特性を、Hiden Isochema IGA重量測定器を使用して試験した。
Ti−NH2BDC固体30mgを天秤に導入し、そしてまず二次真空(10-6Torr)下において周囲温度で1時間、続いて200℃で15時間にわたり活性化した。吸着/脱離能力を様々な温度:10、20、30及び40℃で試験した。それぞれの温度について、CO2を50mbar〜20barまでの可変圧力で導入し、そしてCO2をチャージした固体の質量を、平衡に達したら(30分の最大時間)すぐに測定した。乾燥固体の初期質量を差し引くことによって、この材料の細孔に吸着したCO2の量を算出することができる。異なる温度での2回の測定の間に、この固形物を二次真空下において150℃で一晩脱気した。
得られた結果を添付図13に示しており、図中、二酸化炭素の吸着量(mmol.g-1)は、圧力(mbar)の関数である。この図では、最も上の曲線から最も下の曲線まで様々な曲線のペアは、それぞれ、10、20、30及び40℃でのCO2の吸着(三角)及び脱離(丸)を示している。この図に与えられている結果は、例2からの材料が、1barの圧力下において20℃で3.8mmol.g-1のCO2に近い吸着によって象徴される、低い圧力で大量のCO2を顕著な親和性で吸着させることができることを示している。
【0114】
例11
加熱工程を電子レンジで実施する方法に従うTi−NH2BDC相の合成
この例では、Ti−NH2BDC相を、第2工程を電子レンジでの加熱によって実施する方法に従って合成した。
1.66mmolの2−アミノテレフタル酸(300mg)(オールドリッチ、98%)、続いて273mgのチタンオキソクラスターTi8O8(OOC(CH3)3)16を、5mLのジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス、99%)及び1mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)を含有する溶液に導入した。この反応混合物を1分間にわたり周囲温度で撹拌した。
続いて、テフロン体(100mL容量)を電子レンジ(14−リアクターカルーセルを備えたCEM,Mars300)に導入し、400Wの電力を2分の温度上昇で150℃まで加えた。この温度及びこの電力で15分間観察した。周囲温度にまで戻した後に、このようにして得られた黄色の固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
得られた材料のXRD回折図を添付図14に示しており、図中、強度(任意単位)は、回折角(度)の関数である(一番上の曲線)。また、比較のため、上記例2で得られたTi−NH2BDC材料のスペクトルも図14に示している(一番下の曲線)。
回折線の有意な広がりは、マイクロ波法で得られた生成物が、ソルボサーマル経路によって得られた固体よりも非常に小さい粒度を有することを示している。
【0115】
例12
TiBDC相のフォトクロミック及び光触媒特性の実証
0.025gのTiBDCを0.015mLのベンジルアルコールに浸漬させ、続いて窒素流れ下で15分にわたり350nmの波長のUV照射にさらした。
同じ実験をデグッサ社がP25の商品名で販売する市販のTiO2粉末でも実施した。
添付した図15は、ベンジルアルコールによる含浸及びUV照射後のこれら2つの材料の写真を示している。濃い灰色/青色のTiBDC材料の自発的で強い着色が観察される。この迅速に観察されるフォトクロミック効果は、チタン(IV)中心のチタン(III)への還元によるものである。
これに対し、TiO2粉末では、非常に僅かな着色しか観察されなかった。
ベンジルアルコールに浸漬されたTiBDC材料の着色強度は、Ti(III)の形態で安定化できる多数の光活性部位により説明される。
添付した図16は、含浸及びUV照射後のTiBDC材料のUVスペクトル(図16a:nmで表す波長に応じた吸光度)及び75Kでの電子常磁性共鳴(EPR)スペクトル(図16b:磁場(G)に応じた誘導吸着)を示している。このEPRスペクトルは、光還元常磁性チタン(III)部位の存在を実証することを可能にする。
これらの試料の着色は、酸素の不存在下では強くかつ安定である。
【0116】
TiBDC材料の着色の安定性を酸素の不存在下で数週間にわたって観察したところ、従来の緻密なTiO2粉末の着色よりも非常に大きかった。この安定性は、光誘起ホールを捕らえ、アルコール官能基をアルデヒド官能基に酸化させる光還元中心の近くにある多数のアルコール分子の存在により説明される。
【0117】
このフォトクロミック挙動は可逆的であり、この粉末を酸素中に置くと、試料の脱色が徐々に生じる。
【0118】
これら2つの現象は両立する:フォトクロミック特性はTiIVからTiIIIへの還元によるものであり、光触媒特性は吸収された分子の酸化(例えばアルコールからアルデヒドへの)によるものである。
【0119】
図17は、ベンジルアルコールによる浸漬及びUV照射後のTiBDC(上の曲線)及びTiO2(下の曲線)のUV/可視吸着スペクトルを示している。この図では、吸光度は波長(nm)の関数である。
【0120】
したがって、この例は、TiBDC材料の高くかつ接近しやすい比表面積により、三次元構造内の有機分子の吸着を容易にすることが可能になることを実証する。
【0121】
以上のことから、本発明に従う材料は、レーザーマーキングの分野や、不均一触媒作用の分野において、或いは酸素インジケーター材料として応用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド結晶三次元格子の状態の材料、特にチタンをベースとする材料、その製造方法、また、その生物医学分野(薬剤の制御放出)、美容分野などにおける特にH2、CO2又はCH4などのガスの貯蔵、液体の吸着、液体又は気体の分離、光学部品又は触媒への適用のための使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機金属格子又は金属−有機構造体(MOF)は、金属イオンとこの金属に配位した有機配位子とを含む無機−有機ハイブリッド構造を有する配位高分子である。これらの材料は、スペーサー配位子によって一定の間隔を開けて結合した一次元、二次元又は三次元格子に組織化される。これらの固形物の構造は有機部分と無機部分の両方を有し、それらの空隙は、水分子や、骨格を損傷させることなく容易に引き抜かれる有機分子によって占められている場合もある。それでも、これは、従来の無機多孔質固体(典型的には300℃)よりも低い熱安定性をもたらす。その代償として、ハイブリッド相の密度が、典型的には0.2〜1g.cm-3に大きく減少し、その結果、4500m2.g-1までの(BET)比表面積及び有意に増加した細孔容積(<2cm3.g-1)となる。
【0003】
所定のハイブリッド固体の別の顕著な特徴は、純粋な無機相について見られるよりも大きい格子の柔軟性の存在である。通常、これは、柔軟な有機配位子(脂肪族鎖)を使用するため、又は細孔内に封入された分子の脱離に関わる細孔の収縮のためである。
【0004】
これらの材料は、結晶構造を有し、通常は多孔質であり、しかも気体の貯蔵、液体の吸着、液体又は気体の分離、触媒作用、薬剤の制御放出などのような産業上用途の可能性を多数与える。例えば、亜鉛系MOF材料を含む触媒系を伴う反応過程について記載する米国特許第7,279,517号が挙げられる。また、米国特許第6,929,679号では、同じ材料が気体の貯蔵のためにも使用されている。
【0005】
MOFは、アルカリ土類元素(Ca、Mg)から遷移金属(Sc、Fe、V、Cr、Co、Ni、Zn)、3p元素(Al、Ga、In)から希土類元素(La、Ce、Eu…Y)及びアクチニド(U)まで、周期律表の元素のほとんど全てが存在するが、チタンをベースとする多孔質MOFの数は、依然として非常に限定的である。
【0006】
これまでに合成されたチタン系MOFの全てのなかでは、特に、いくつかの種類の開骨格チタンジホスホネートが挙げられる。
【0007】
このようなジホスホネートのうち、TiO2及びジ−N,N’−ピペラジンビスメチレンホスフィン酸(MIL−91(Ti):Serre C外,Chem.Mater.,2006,18,1451−1457)から熱水作用により得られたチタンのMOFのみが、(BET)比表面積が300m2.g-1に近く、かつ、細孔径が約4Åの窒素接触可能多孔度を有する。また、近年、大きな比表面積や多孔度を有する格子のない、1,4−ブタンジオール又はフタロシアニンをベースとするMOFも同定された。
【0008】
近年、第一ポリカルボン酸ジルコニウム(IV)について、特にJ.Hafizovic Cavka外による論文,J.A.C.S.,2008,130,13850−13851に記載されたが、今日に至るまで、この文献に記載された結晶化ポリカルボン酸チタン(IV)は存在していない。
【0009】
国際公開第WO2007/118888号には、チタン又はジルコニウムをベースとするカルボン酸塩MOFを、ソルボサーマル経路により、例えばTiOSO4などのチタンの先駆物質、H2O及びテレフタル酸を使用して純粋なDMF中において130℃の温度で18時間にわたり合成することが記載されている。しかしながら、この方法では、申し分のない結晶構造及び多孔度を有するチタン系ポリカルボン酸塩MOFを獲得することができない。
【0010】
しかし、多孔質固体材料内部にチタン原子が存在することは、光学部品や触媒に有利なレドックス特性を取り入れたMOF材料を与えることができれば、有益である。
【0011】
例えば、フォトクロミックMOFは、チタンMOFと光との反応により得ることができるであろう。実際に、光照射作用下で、Ti4+種はTi3+に還元される。これらの還元種が存在することで、着色特性を示す混合原子価を有する化合物が形成されることになる。
【0012】
さらに、その認められている非毒性(DL50>12g/kg)により、チタンは、化粧品又は生物学において使用可能である。
【0013】
したがって、気体の貯蔵/分離、触媒の分野での用途又はさらに生物学的若しくは美容用途のために高い比表面積を有するチタン系MOFを得ることが有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,279,517号明細書
【特許文献2】米国特許第6,929,679号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/118888号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】J.Hafizovic Cavka外,J.A.C.S.,2008,130,13850−13851
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、高い比表面積(窒素接触可能多孔度)を有するチタンMOFを提供することであり、また、このタイプの材料を得ることを可能にする、単純で信頼のできる安価な合成方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の主題の一つは、チタン系有機−無機ハイブリッド型固体材料であって、擬立方結晶構造を有し、しかも、専ら以下の式(I)の単位から構成されることを特徴とする、チタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料である:
TiaOb(OH)c[(-OOC)−X−#]d (I)
式中:
・Xは有機スペーサーであり、2〜12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、直鎖又は分岐の脂肪族鎖;非置換の、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rによって置換された単環式、二環式又は三環式炭化水素系芳香族基;ベンゾフェノン基;単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が5又は6員環であり、該基が、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ、非置換であり、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rで置換されたものを表し;
・a及びbは同一のもの又は異なるものであり、1〜16の範囲の整数であり;
・c及びdは同一のもの又は異なるものであり、1〜32の範囲の整数であり;
・指数a、b、c及びdは、4a=2b+c+dの関係を満たし;
・該チタン原子は、チタンオキソ錯体から構成される純粋に無機の元素構成要素を形成し;
・#は、式(I)の2個の単位が互いに結合する点であり;#は、該スペーサーXに属する炭素原子と、式(I)の別の単位のカルボキシレート基COO-の炭素原子(ここで、該カルボキシレート基の2個の炭素原子は、それぞれ、該式(I)の別の単位の元素構成要素である2個の隣接する八面体チタンオキソ錯体に属する)との間の共有結合を表し;
該式(I)の単位は、共に三次元構造を形成し、かつ、約4〜15Åの寸法三角形の孔を介して接近可能な約4〜40Åの自由直径を有する空隙(細孔又はケージ)を画定する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図2】図2は、本発明の材料の結晶構造の概略図である。
【図3】図3は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図4】図4は、本発明の材料の結晶構造の概略図である。
【図5】図5は、本発明の材料の熱重量分析の結果を示す図である。
【図6】図6は、TiBDC及びTi−NH2BDC材料のIRスペクトル図である。
【図7】図7は、得られた粉末のXRD回折図である。
【図8】図8は、オキソ錯体の結晶構造の概略図である。
【図9】図9は、オキソ錯体の結晶構造の概略図である。
【図10】図10は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図11】図11は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図12】図12は、本発明の材料の熱重量分析の結果である。
【図13】図13は、本発明の材料の二酸化炭素に対する吸着/脱離能力を示す図である。
【図14】図14は、本発明の材料のXRD回折図である。
【図15】図15は、ベンジルアルコールによる含浸及びUV照射後の本発明の材料の写真である。
【図16】図16は、含浸及びUV照射後のTiBDC材料のUVスペクトル(図16a:nmで表す波長に応じた吸光度)及び75Kでの電子常磁性共鳴(EPR)スペクトル(図16b:磁場(G)に応じた誘導吸着)を示す図である。
【図17】ベンジルアルコールによる浸漬及びUV照射後のTiBDC(上の曲線)及びTiO2(下の曲線)のUV/可視吸着スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によれば、表現「三次元構造」とは、MOF材料の分野において従来から理解されているとおり、式(I)の三次元の配列又は反復を意味するものと介され、また「有機金属高分子」ともみなされる。
【0020】
本発明に従う固体材料(以下、チタンMOFという。)には、チタンを主成分とするという利点と、特定の技術及びこの材料に特定の特性を付与する特定の位相により結晶構造が制御され、かつ、極めて組織化されるという利点とがある。
【0021】
本発明の固体材料の結晶空間的構造は、この材料の特定の特徴及び特性の基礎であり、、特に、該材料の比表面積と、例えば気体の貯蔵能力や液体の吸着能力とに影響を与える空隙(又は細孔)のサイズを決める。そのため、細孔のサイズを有機スペーサーXの選択によって調節することができる。
【0022】
Xについて定義される脂肪族鎖のなかでは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル鎖などの線状アルキル鎖;エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン及びドデシレンなどの線状アルキレン鎖;エチン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニン、デシン、ウンデシン及びドデシンなどのアルキン鎖が挙げられる。このような鎖のなかでは、C1〜C4アルキル鎖及びC2〜C4アルキレン又はアルキン鎖が好ましい。
【0023】
Xについて定義される炭化水素系芳香族基のなかでは、特に、フェニレン;クロルフェニレン;ブロムフェニレン;アミノフェニレン;ニトロフェニレン;モノ、ジ又はテトラメチルフェニレン;モノ又はジエテニルフェニレン;モノ又はジヒドロキシフェニレン;ビフェニレン;ジフェニルジアゼン;ナフタリン及びアントラセン基が挙げられる。
【0024】
Xについて定義される複素環のなかでは、チオフェン、ビチオフェン、ピリジン、ビピリジン及びピラジン環が挙げられる。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態によれば、サブユニット[-OOC−X−#]は、以下の式(II−1)〜(II−13)の基から選択される:
【化1】
式中:
・Rは、ハロゲン原子、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル又はC1〜C4アルキル基であり;
・mは、0〜4の範囲の整数であり;
・nは、0〜8の範囲の整数であり;
・pは、0〜6の範囲の整数であり;
・qは、0〜2の範囲の整数であり;そして
・rは、0〜3の範囲の整数である。
【0026】
式(II−1)のサブユニットのなかでは、フェニル−1−カルボキシレート、フェニル−2−アミノ−1−カルボキシレート、フェニル−2,5−ジヒドロキシ−1−カルボキシレート及びフェニル−2−クロル−1−カルボキシレートが特に好ましい。
【0027】
式(II−4)のサブユニットのなかでは、特に、アゾベンゼン−4−カルボキシレート、アゾベンゼン−3,3'−ジクロル−4−カルボキシレート及びアゾベンゼン−3,3'−ジヒドロキシ−4−カルボキシレートが挙げられる。
【0028】
式(II−8)のサブユニットのなかでは、チオフェン−2−カルボキシレート及び3,4−ジヒドロキシチオフェン−2−カルボキシレートが挙げられる。
【0029】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、サブユニット[-OOC−X−#]は、フェニル−1−カルボキシレート、フェニル−2−アミノ−1−カルボキシレート及びチオフェン−2−カルボキシレートから選択される。
【0030】
先に定義した式(I)のサブユニットのなかでは、特に以下の式(I−1)のサブユニットが挙げられる:
Ti8O8(OH)4[(-OOC)−X−#]12 (I−1)
式中:
・X及び#は先に定義したとおりであり;
・チタン原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれた中心チタン原子をそれぞれ含む8個の八面体チタンオキソ錯体から構成される純粋に無機の元素構成要素を形成し、ここで、該八面体チタンオキソ錯体は、共通接線又は共通頂点のいずれかにより、いずれの場合にもオキソ−O−又はヒドロキソ−OH−架橋により互いに結合し;該構成要素は、有機スペーサーXによって空間の三次元で互いに結合し;該構成要素のいずれかは、2個の酸素原子のいずれかが2個の隣接するチタンオキソ錯体の一体部分であるカルボキシレート基COO-により12個の有機スペーサーに結合しているものとする。
【0031】
したがって、式(I−1)のサブユニットにおいて、元素構成要素(又は八面体オキソチタン錯体の輪)は、2個のオキソ又はヒドロキソ架橋を伴う共通接線により、或いは単一のオキソ又はヒドロキソ架橋を伴う共通頂点により、或いはカルボキシレート基により8個のチタン原子に結合した36個の酸素原子を含有する。
【0032】
上記のように、本発明に従う固体材料は、約4〜40Åの自由直径を有する空隙を含む。好ましくは、この空隙は約5〜12.6Åの自由直径を有する。
【0033】
本発明に従う固体材料は、約200〜6000m2/gの(BET)比表面積、好ましくは200〜1800m2/gの(BET)比表面積を有する。
【0034】
本発明において、細孔容積とは、気体及び/又は液体分子に接近可能な気体の容積を意味し、そしてこれは、本願において「空隙」、「ケージ」又は「細孔」と呼ぶものの内部の容積に相当する。
【0035】
本発明に従う固体材料は、約0.1〜3cm3/g、特に約0.5〜0.7cm3/gの細孔容積を有することができる。
【0036】
これらの特性のため、本発明に従う固体材料は、不均一触媒化学反応を実施するための触媒担体として、又は気体の貯蔵/分離材料として、又は有効成分(薬剤、化粧品)をカプセル化するためのマトリックスとして、又はさらに情報貯蓄、レーザー印刷用のフォトクロミック材料として、又はさらに酸素インジケーター材料として使用できる。
【0037】
非限定的な例として、本発明に従う固体材料は、特に、次の目的又は用途で使用される:
・工場(製鋼所、セメント工場、火力発電所など)からの燃焼排ガス、バイオマスの燃焼や石炭のガス化によりメタン又は水素を生成させるための設備からの燃焼排ガスを捕捉するためのプロセスにおいて、様々な汚染物質(水、N2、CO、H2Sなど)の存在下で温室効果ガス(CO2、CH4)を吸着させるために使用される。これらの材料の低い生産コストは、それらの非毒性及び良好な安定性(熱安定性、耐湿性又は硫化二水素に対する抵抗性)と相まって、このタイプの大規模用途のための最適な候補にする;
・芳香族化合物(キシレンの異性体)、分岐アルカン(オクタン価)の分離などの流体(気体、蒸気、液体)の分離、燃料の精製などのために使用される;
・生物学的用途/美容用途において、興味のある有効(医薬又は化粧品の)成分を、好適な期間にわたって治療に有効なレベルの投与量を与えるために制御された態様で放出する目的又はこれらの成分を外部環境に対して保護する(例えば湿気から)目的で吸着又はカプセル化するために使用される。そして、チタンは、概してカルボン酸類と同じようにさほど毒性ではない(致死量(DL50)は5g/kgを超える)金属であるため、これらの固体(カルボン酸チタン)に、このタイプの用途にとって極めて有利な低い毒性を先験的に付与する。チタンの紫外線吸収特性は、特にこの波長範囲で吸収する有機スペーサーを好適に選択することにより、化粧品に使用される紫外線遮断物質の分野に応用できる。また、本発明に従う固体材料は、毒素のカプセル封入、解毒(体内の毒素を帰納的に除去する)又は体液(尿、血液など)を浄化するためにも使用できる。
【0038】
本発明に従う固体材料は、チタンアルコキシド型のチタン先駆物質及び少なくとも1種のジカルボン酸から直接出発して、或いはチタンのオキソ錯体などの前もって形成された種及び少なくとも1種のジカルボン酸から間接的に出発して、少なくとも2種の溶媒の混合物中においてソルボサーマル条件下で製造できる。
【0039】
しかして、本発明の別の主題は、先に定義したチタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料の製造方法であって、次の工程:
(1)第1工程において、次のものを含む反応混合物を調製し:
(i)次式(III)のチタンアルコキシドから選択される少なくとも1種のチタン先駆物質:
Ti(OR1)4 (III)
(式中、R1は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基である。)又は次式(IV)の少なくとも1種のチタンオキソ錯体:
TixOy(OR2)z(OOCR3)w (IV)
(式中:
・R2は、水素原子、直鎖若しくは分岐C1〜C6アルキル基、又はハロゲン原子、C1〜C4アルキル及びC2〜C3アルケン基から選択される1個以上の基で置換されていてよいフェニル環を表し;
・R3は、直鎖又は分岐C1〜C4アルキル基、C1〜C4トリハロアルキル基又はフェニル環を表し;
・xは、2〜18の範囲の整数であり;
・yは、1〜27の範囲の整数であり;
・zは、0〜32の範囲の整数であり;
・wは、0〜16の範囲の整数である。)
また、該チタン原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれた中心チタン原子をそれぞれ含む、チタンオキソ錯体の完全に無機のコアから構成される元素構成要素を八面体の配位で形成し、ここで、該八面体チタンオキソ錯体は、共通接線又は共通頂点のいずれかにより、いずれの場合にもオキソ−O−又はヒドロキソ−OH−架橋により互いに結合し;該構成要素は、アルコレート(OR2)及び/又はカルボキシレート(OOCR3)型の有機配位子で取り囲まれている;
(ii)次式(V)の少なくとも1種のジカルボン酸:
HOOC−X’−COOH (V)
(式中、X’は、2〜12個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐の脂肪族鎖、ベンゾフェノン基又は単環式、二環式若しくは三環式炭化水素系芳香族基であって、非置換のもの又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立に選択される1個以上の置換基R'で置換されたものを表す。);
(iii)C1〜C4アルコール、ベンジルアルコール及びクロルベンジルアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒S1と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン及びN−メチルピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒S2とを含む少なくとも2種の有機溶媒の混合物;
(2)第2工程において、前記のようにして得られた反応混合物を、所期の固体材料に相当する沈殿物が得られるまで約4〜72時間にわたって約70〜200℃の温度にし;次いで
(3)第3工程において、該反応混合物を周囲温度にまで冷却し;
(4)第4工程において、該固体材料を該有機溶媒の混合物から分離すること
を含み、ここで、該固体材料が、Xが窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が置換されていてよい5又は6員環であるものである式(I)の単位から構成される場合には、該方法は、次の追加工程も含むものとする:
(5)次式(VI)の少なくとも1種のジカルボン酸の存在下で、該第4工程から得られた固体材料の少なくとも1種の極性有機溶媒への分散液を調製する第5工程:
HOOC−X”−COOH (VI)
(式中、X”は、単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が5又は6員環であり、該基が、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ、非置換であり、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rで置換されたものを表す。);
(6)前記のようにして得られた分散液を4時間〜4日間にわたって100〜150℃の温度にし、それによって所期の固体材料に相当する沈殿物を形成させる第6工程;続いて
(7)該温度を周囲温度に戻す第7工程;及び
(8)このようにして得られた固体材料を該有機溶媒から分離する第8工程。
【0040】
この方法の好ましい実施形態の一つによれば、式(III)の先駆物質は、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−プロポキシド及びチタンブトキシドから選択される。このような先駆物質のなかでは、チタンイソプロポキシドが特に好ましい。
【0041】
本発明の方法に従って使用できる式(IV)のチタンオキソ錯体は、例えば、Rozes L外による論文,Monatshefte fur Chemie,2006,137,501−528に記載されている。上記式(IV)のチタンオキソ錯体のなかでは、特に、Ti16O16(OCH2CH3)32及びTi8O8(OOCR3)16(ここで、R3は先に定義したとおりである(C1〜C4直鎖又は分岐アルキル基、C1〜C4トリハロアルキル基又はフェニル環))が挙げられる。
【0042】
式(V)のジカルボン酸は、固体材料のサブユニット[-OOC−X−#]に相当するジカルボン酸から選択されることは明らかであるが、ただし、上記X’について与えた定義の範囲内で製造することが望ましい。実際に、第1工程を通して、Xが5又は6員の複素環である材料を直接的に得るのは、先験的に可能ではない。この場合には、本発明に従う方法は、スペーサーX’を上で定義したスペーサーX”と交換する工程5〜8を含まなければならない。
【0043】
したがって、式(V)のジカルボン酸は、特に、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、2−アミノベンゼン−1,4−ジカルボン酸(アミノテレフタル酸)、2−ニトロベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−クロルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−ブロムベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−メチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジメチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニル−3,3'−ジカルボン酸、4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)二安息香酸、3,3’−(ジアゼン−1,2−ジイル)二安息香酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、ナフタリン−1,5−ジカルボン酸、1,4−フェニレン二酢酸、1,4−フェニレンジアクリル酸及び4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸から選択できる。
【0044】
このような酸のなかでは、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸及び2−アミノベンゼン−1,4−ジカルボン酸が特に好ましい。
【0045】
反応混合物の式(III)のチタンアルコキシド又は式(IV)のチタンオキソ錯体/式(V)のジカルボン酸において、モル比は、好ましくはおよそ0.1〜2まで、より好ましくはおよそ0.5から1まで変化する。
【0046】
該方法の第1工程の間に使用するC1〜C4アルコール(S1)のなかでは、メタノールが特に好ましい。
【0047】
該方法の第1工程の間に使用される有機溶媒の混合物において、S1/S2容積比は、好ましくは約0.05〜0.95の範囲、より好ましくは約0.10〜0.90の範囲にある。
【0048】
随意に、該第1工程の間に使用される反応混合物は、例えば酢酸などのモノカルボン酸及び例えばアルキルアミン(例えばトリエチルアミン)などの有機塩基から選択される1種以上の添加剤も含有することができる。本発明者は、特に、酢酸などのモノカルボン酸が存在することにより、本発明に従う固体材料の結晶性及び/又は反応収率が改善することが可能になることを見出した。また、このような添加剤を存在させることで、合成時間を短縮することも可能になると考えられる。
【0049】
これらの添加剤を使用する場合、これらの添加剤は、好ましくは、反応混合物の総重量に対して1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%を占める。
【0050】
好ましい一実施形態によれば、該方法の第2工程は、約100〜150℃の温度で実施される。
【0051】
第2工程の継続期間は、使用する温度に応じて変わってくる。温度が高ければ高いほどこの継続期間は短くなると解される。好ましくは、第2工程の継続期間は、約8〜15時間の範囲である。
【0052】
本発明に従う方法の特定の実施形態の一つによれば、工程(2)は、電子レンジを使用して実施される。この場合には、第2工程の継続期間を減らすことができ、1分から60分まで変更することができる。この反応混合物を加熱する方法は、さらに、加熱を従来のオーブン内で実施した場合に得られる材料の粒子よりもかなり小さなサイズを有する材料を得るのを可能にする。
【0053】
第3工程の間に、好ましくは反応混合物の周囲温度までの冷却をおよそ1℃/時間〜40℃/時間の冷却速度で実施する。
【0054】
第5工程の間に使用できる極性溶媒は、特に、C1〜C4アルコール、ベンジルアルコール及びクロルベンジルアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒S1と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン及びN−メチルピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒S2とを含む少なくとも2種の有機溶媒S1及びS2の混合物から選択できる。
【0055】
上記のとおり、本発明に従う固体材料が、Xが窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する5又は6員の芳香族複素環である式(I)の単位から構成される場合には、スペーサーX’を先に定義したスペーサーX”と交換する上で定義した工程(5)〜(8)を実施することが必須である。
【0056】
第5工程の間に、第4工程から得られる固体材料は、約50〜75%の収率で得られる。
【0057】
式(VI)のジカルボン酸のなかでは、特に、チオフェン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピラジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸及びピラジン−2,6−ジカルボン酸が挙げられる。これらの酸の中では、チオフェン−2,5−ジカルボン酸が特に好ましい。
【0058】
第5工程の間の、第4工程から得られる固体材料/式(VI)のジカルボン酸のモル比は、好ましくは約1〜20、より好ましくは約5〜10の範囲にある。
【0059】
本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、第6工程は、約8〜15時間にわたって実施される。
【0060】
有機溶媒の混合物から固体材料を分離する第4工程及び第8工程は、当業者に知られている任意の分離方法によって実施できるところ、当該分離方法のなかでは、ろ過が好ましい。
【0061】
合成が完了したら、固体材料を、好ましくは、例えばDMFなどの有機溶媒で、非常に迅速に静的に洗浄し、又は周囲温度で撹拌しながら溶媒に再懸濁することによって洗浄し、続いて当業者に知られている任意の好適な乾燥技術により乾燥させる。この乾燥工程は、微量の溶媒及び/又は酸を除去するのを可能にする。これは、特に、100〜275℃の温度で3〜48時間、好ましくは10〜15時間にわたって空気中又は真空下で固体材料を焼成することによって実施できる。
【0062】
本発明を次の代表的な実施形態により例示するが、これらは限定ではない。
【実施例】
【0063】
例
次の例において、得られた材料の構造は、Bruker D5000器に基づくそれらのX線粉末回折図(リートフェルト法に従うXRD回折図)から決定した。
【0064】
結晶格子は、Dicvolソフトウェアを使用して得られ(A.Boultif外,J.Appl.Crystallogr.,1991,24,987)、また、格子歪による精密化は、Fullprofソフトウェア(Rodriguez−Carvajal,J.の「Collected Abstracts of Powder Diffraction Meeting」,Toulouse,France 1990,127)及びそのグラフィカル・インターフェースWinPLOTR(Roisnel,T外,「Abstracts of the 7th European Powder Diffraction Conference」,Barcelona,Spain 2000,71)により実施した。得られた材料の構造を構成する原子のほとんどの原子配置は、Expoプログラムによる直説法によって決定した(Altomare,A外,J.Appl.Crystallogr.,1999,32,339)。残りの原子及び遊離水分子の配置は、SHELXL−97プログラムにより決定した(ゲッティンゲン大学、ドイツ国,1997)。次いで、原子配置を、WinPLOTRグラフィカル・インターフェースをまた使用してFullprofで改良した。この改良中に、原子間の距離及び角度の歪み(距離:Ti−O、C−C及びC−O;角度O−Ti−O及びO−C−O、C−C−C)を加えた。
【0065】
熱重量分析は、TAインストルメンツ社がTA2050の商品名で販売する熱重量分析器又はパーキンエルマー社製のSTA6000分析器を使用して、気流(80cm-3.分-1)下で3℃/分の加熱速度及び約5mgの材料を使用して実施した。
【0066】
赤外分光分析は、Nicolet750という商品名で販売されている分光計で、分析される微量の材料を含有するKBrペレットを使用して実施した。
【0067】
比表面積の測定は、Micromeritics ASAP 2010という商品名で販売されている機械を使用して、予備真空(10-3Torr)下で15時間にわたり200℃で予め活性化された約50mgの材料について窒素吸着−脱離技術により実施した。この分析は、ラングミュア又はBET計算方法により実施した。
【0068】
熱安定性は、Anton Paar高温チャンバーを備えたBruker D5000回折計を使用して評価した。
【0069】
例1
組成Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のTiBDC相の合成
1.5mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(250mg)(オールドリッチ、98%)、次いで1mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.3mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、4.5mLの無水ジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス)及び0.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)から構成される混合物5mLを含有するテフロン(商標)体に導入した。この反応混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。
次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブンに15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、固体状態の所期材料をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。細孔内に含まれる溶媒を、該固体を空気中200℃で12時間にわたり焼成することによって除去した。
得られた材料の結晶学的データ及び組織微細化パラメーターを以下の表1に与える。
【0070】
【表1】
【0071】
XRD回折図を図1に与えており、図中、強度(任意単位で表す)は、回折角の程度に応じる。この図では、黒点は実験点に相当し;灰色の点は計算点に相当し;黒線はブラッグピークに相当し;一番下の黒曲線は、実験点と計算点との差の線図に相当する。
【0072】
得られた材料の結晶構造を添付した図2に概略的に示しており、図中、軸a(又はb)に沿った材料の結晶構造(図2a)及びチタン八面体の輪の図(図2b、チタン八面体、炭素原子:黒点)を示している。該材料は、斜方晶系空間群I4/mmm(No.139)において次のパラメーターで結晶化する:
− a=18.654(1)Å,
− c=18.144(1)Å
− 格子容積:6313.9(6)Å3。
【0073】
この材料は、チタンTiO5(OH)の八面体から構成され、テレフタル酸陰イオンによって互いに結合した8個の八面体の集合体(又は輪)になる。この集合体の全体は、細孔の三次元ネットワークを有する擬立方多孔質体を画定する。また、この構造は、各八面体の各頂点に、8個のチタン多面体から構成される輪を有するハイブリッド八面体の集合体であると説明することもできる。細孔にアクセスするための開口は、5〜7オングストロームに近い自由寸法を有し、それぞれ6及び13オングストロームに近い寸法を有する2タイプのケージが存在する。
【0074】
得られた材料の原子座標を以下の表2に与える(水和相):
【0075】
【表2】
[a]:この表において、水分子は、Owi(i=1〜10)で表しており、かつ、厳密に言えば、これらは、細孔が周囲の空気にさらされたときにその細孔を満たすに過ぎないため、材料の構造の一部分ではない。
【0076】
主原子間距離(オングストロームで表す)を以下の表3に与える:
【0077】
【表3】
【0078】
例2
Ti8O8(OH)4[O2C−C6H3(NH2)−CO2]6組成のTi−NH2BDC相の合成
Ti−NH2BDCを、出発材料の1.5mmolの2−アミノテレフタル酸(270mg)(オールドリッチ、98%)、0.67mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.2mL)(アクロス・オーガニクス、98%)、2.5mLの無水ジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス)及び2.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)から構成される混合物5mLを使用して例1で示した方法に従って製造した。
次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで100℃のオーブン内に15時間にわたり置いた。周囲温度にまで戻した後に、所期の材料を固体の状態で得、これをろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。細孔内に含まれる溶媒を、該固体を空気中200℃で12時間にわたり焼成することによって除去した。
得られた材料の結晶学的データ及び組織微細化パラメーターを以下の表4に与える:
【0079】
【表4】
【0080】
得られた材料のXRD回折図を図3に与えており、そこでは、強度(任意単位で表す)は、回折角(度で表す)に応じたものである。この図では、黒点は実験点に相当し;灰色の点は計算点に相当し;黒線はブラッグピークに相当し;一番下の黒曲線は、実験点と計算点との差の線図に相当する。
【0081】
得られた材料の結晶構造を添付した図4に概略的に示しており、そこでは、軸a(又はb)に沿った材料の結晶構造(図4a)及びチタン八面体(炭素原子:黒点;窒素原子:灰色の点)の輪の図が示されている。該材料は、斜方晶系空間群I4/mmm(No.139)において次のパラメーターで結晶化する:
・a=18.673(1)Å、
・c=18.139(1)Å、
・格子容積:6324.5(1)Å3。
【0082】
この材料は、2−アミノテレフタル酸陰イオンにより互いに結合した8個の八面体の集合体(又は輪)に集合する酸化チタンTiO5(OH)の八面体から構成される(図4a及び4b)。この集合体の全体は、細孔の三次元ネットワークを有する擬立方多孔質体を画定する。また、この構造は、各八面体の各頂点に、8個のチタン多面体から構成される輪を有するハイブリッド八面体の集合体であると説明することもできる。細孔にアクセスするための開口は、5〜6オングストロームに近い自由寸法を有し、それぞれ6〜13オングストロームに近い寸法を有する2タイプのケージが存在する。アミノ基は、4箇所の結晶学的位置にわたって秩序を乱し、そして25%の占有がアミノ基の窒素原子に起因していた。
【0083】
この材料の原子座標を以下の表5に与える(水和相):
【0084】
【表5】
[a]:この表において、水分子は、Owi(i=1〜10)で表しており、かつ、厳密に言えば、これらは、細孔が周囲の空気にさらされたときにその細孔を満たすに過ぎないため、材料の構造の一部分ではない。
【0085】
主原子間距離(オングストロームで表す)を以下の表6に与える:
【0086】
【表6】
【0087】
この例で製造された材料の熱重量分析、また、例1で製造されたTiBDC材料の熱重量分析をTA2050機で実施した。これらの結果を添付した図5に与える。この図では、質量(パーセントで表す)は、温度(℃で表す)に応じたものである。黒の曲線は、例1からのTiBDCに相当し、灰色の曲線は、例2からのTi−NH2BDCに相当する。
【0088】
この図から、TiBDC材料が、まず25℃〜100℃でメタノールが脱離し、次いで100〜200℃でDMFが脱離するという、細孔内に含まれる溶媒の連続的な脱離に相当する2つの特徴的な質量損失を有することが分かる。
【0089】
材料の分解は、その骨格を構成するカルボン酸の脱離の間に400℃付近で生じる。残留固体は、アナターゼTiO2である。
【0090】
同じ熱挙動が、唯一の有意差として、より低い温度(300℃)で骨格が分解するTi−NH2BDC材料についても観察される。残留固体もアナターゼTiO2である。
【0091】
TiBDC及びTi−NH2BDC材料のIRスペクトルが添付図6に示されており、そこでは、強度(任意単位で表す)は、波長(cm-1で表す)に応じたものである。この図では、黒の曲線は例1からのTiBDCのスペクトルに相当し、灰色の曲線は、例2からのTi−NH2BDCのスペクトルに相当する。2つの材料のぞれぞれについて観察されるのは、金属−カルボキシレート結合の特徴的なバンド(1380及び1600cm-1付近のバンド)、細孔内に存在する遊離溶媒分子に相当する3400cm-1付近の広いバンド、また低い波数(400〜800cm-1)での無機部分(O−Ti−O)の構造バンドである。
【0092】
TiBDC及びTi−NH2BDC材料の比表面積測定の結果を以下の表7にまとめる。
【0093】
【表7】
(*):t−プロット法に従って算出。
【0094】
例3
溶媒混合物の選択の重要性に関する実証
この例では、チタンイソプロポキシド及び1,4−ベンゼンジカルボン酸から合成された材料の性質に及ぼす溶剤の選択の影響を比較した。
これらの合成を純溶剤(メタノール、DMF若しくはイソプロパノール)又はメタノール/DMF混合物中で実施した。
【0095】
(a)純メタノール媒体中での合成(本発明の一部ではない比較例)
0.4mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(60mg)(オールドリッチ、98%)、続いて0.35mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.1mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、3mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)を含むテフロン(商標)体に導入した。この混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブン内に15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、得られた固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
【0096】
(b)純ジメチルホルムアミド媒体中での合成(本発明の一部ではない比較例):
1.0mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(166mg)(オールドリッチ、98%)、次いで1mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.2mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、5mLの無水DMF(アクロス・オーガニクス)を含有するテフロン(商標)体に導入した。この混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブン内に15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
【0097】
(c)純イソプロパノール媒体中での合成(本発明の一部ではない比較例):
0.35mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(60mg)(オールドリッチ、98%)、続いて0.5mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.1mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、5mLのイソプロパノール(オールドリッチ、99%)を含有するテフロン(商標)体に導入した。この混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブン内に12時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
【0098】
(d)DMF/メタノール混合物中での合成(本発明に従う実施例):
1.5mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(250mg)(オールドリッチ、98%)、次いで1mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.3mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、4.5mLの無水DMF(アクロス・オーガニクス)及び0.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)を含有するテフロン(商標)体に導入した。この混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブン内に15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
【0099】
このようにして溶剤のぞれぞれで得られた粉末のXRD回折図(λCu=1.5406Å)を添付図7に示しており、そこでは、強度(任意単位で表す)は、回折角(度で表す)に応じたものである。この図において、最も上の曲線は純メタノールで実施された合成に相当し、次の曲線は純イソプロパノールで実施された合成に相当し、最も下の曲線は純DMFで実施された合成に相当する。最も下の曲線のすぐ上に位置した曲線は、これら3つの別の曲線とは著しく相違しているが、これはメタノール/DMF混合物で実施された合成に相当する。純溶剤で得られた材料は結晶化が極めて不十分であり、それらのXRD回折図は、例1で得られたTiBDC材料(添付した図1参照)及び合成をメタノール/DMF混合物中で実施した場合に得られたものとは完全に異なることが分かる。また、それらの回折ピークは、より大きな角度に位置しているが、これは、ネットワークの密度が大きく、そのため多孔度が低いことを示している。
【0100】
そうでなくても全ての条件は等しいので(先駆物質の性質、合成時間及び温度)、これらの試験は、形成された相の性質が溶媒の選択に強く依存していることを示している。例えば国際公開第WO2007/118888号に記載されるような単一の溶媒から構成される反応媒体を使用しても、本発明に従う材料を得るのは可能ではない。本発明の方法に従って少なくとも2種の溶媒から構成される混合物、例えばメタノールとジメチルホルムアミドとの混合物を使用した場合にのみ、非常によく結晶化した正方晶系多孔質相の状態で完全に組織化されたTiBDC材料を得るのが可能になる。
【0101】
例4
チタン先駆物質の選択の重要性に関する実証
この例では、合成された材料の構造に及ぼすチタン先駆物質の選択の影響を検討した。合成は、四塩化チタン(本発明によるものではないチタン先駆物質)及び1,4−ベンゼンジカルボン酸から出発して、純DMF媒体又はメタノール/DMF混合物中で実施した。
【0102】
(a)純DMF媒体中での合成
この合成は、国際出願WO2007/118888号の例4に記載されたプロトコールに従って実施した。
52mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(8.72g)(オールドリッチ、98%)、続いて52mmolの四塩化チタンTiCl4(10g)を、300mLの無水DMF(アクロス・オーガニクス)を含有する500mL丸底フラスコに導入した。この反応混合物を、沈殿が得られるまで18時間にわたって130℃で撹拌した。この沈殿物を遠心分離により回収し、続いて50mLのDMFで3回洗浄し、続いて50mLのメタノールで3回洗浄した。続いて、この沈殿物を160℃で16時間にわたり乾燥させた。
実施した分析から、得られた粉末の粒子は、さほど多孔質ではなく(BET比表面積:107m2/g)しかも非晶質である(XRD)ことが分かる。
【0103】
(b)DMF/メタノール媒体中での合成
上記(a)で詳しく説明した合成を再現したが、ただし、溶媒として、240mLの無水DMF及び60mLのメタノールから構成される混合物を使用した。
また、実施した分析から得られた粉末の粒子は、さほど多孔質ではなく、しかも非晶質である(XRD)ことが分かった。
これらの試験は、合成中に使用される溶媒(純DMF溶媒又はDMFとメタノールとの混合物)にかかわらず、チタン先駆物質として式(I)のチタンアルコキシドの代わりに四塩化チタンを使用すると、本発明に従う擬立方結晶構造を有する材料を得ることができないことを実証するものである。
【0104】
例5
予め形成されたチタンオキソ錯体から出発するチタンMOFの製造
この例では、式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のハイブリッド材料を、チタン先駆物質として式Ti16O16(OEt)32のチタンオキソクラスターを使用して合成した。
【0105】
(1)第1工程:式Ti16O16(OEt)32のチタンオキソ錯体の合成
Ti16O16(OEt)32オキソ錯体を、半化学量論的条件下で、無水エタノール中チタンアルコキシドTi(OEt)4の水[H2O/Ti=0.5]で制御加水分解を行うことにより得た。7mLのTi(OEt)4、7mLの無水エタノール及び300μLの水からなる反応混合物をソルボサーマル媒体中において15日間にわたり100℃で処理した。チタンオキソ錯体の結晶化を反応混合物の徐冷(冷却速度:1℃/時間)によって開始した。続いて、結晶化された状態のチタンオキソ錯体をろ過後に70%の収率で回収した。
このオキソ錯体の結晶構造を単結晶X線回折により決定した。これを添付図8に概略的に示している。この構造の決定から、それぞれ−4逆回転の擬軸だと認められる8個のチタンオキソ錯体の2個の直交ブロックから形成される格子が形成されていることを実証することができた。16個のチタン原子は、3つの異なるタイプのオキソ架橋によって結合し、4個の酸素が金属中心に対して2倍結合し[μ2−O]、8個がチタンに対して3倍結合し[μ3−O]、そして4個がチタンに対して4倍結合する[μ4−O]。オキソコアの表面には、32個のエトキシドのクラウンがあり、そのうちの16個は末端基であり、他の16個は架橋基である。この構造は、A.Mosset外,C.R.Acad.Sci.Paris,t.307,Series II、1988,p.1747−1750及びJ.Galy外,Chem.Soc.Dalton Trans.,1991,p.1999の論文に詳しく記載されている。
【0106】
(2)第2工程:式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のハイブリッド材料の合成
前工程で得られた0.17gのチタンオキソ錯体Ti16O16(OEt)32と、0.27gのテレフタル酸を4mLのDMFと1mLのメタノールとの混合物に導入した。この反応混合物をオートクレーブ中に150℃で20時間にわたり置いた。得られた沈殿物をろ過し、DMFで3回洗浄し、続いて20時間にわたり150℃で乾燥させた。反応収率は74%であった。
例1からのハイブリッド材料にことごとく等しいハイブリッド材料が得られた。
【0107】
例6
予め形成されたチタンオキソ錯体からチタンMOFの製造
この例では、式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のハイブリッド材料を、チタン先駆物質として式Ti8O8(OOC(CH3)3)16のチタンオキソクラスターを使用して合成した。
【0108】
(1)第2工程:式Ti8O8(OOC(CH3)3)16のチタンオキソ錯体の合成
式Ti8O8(OOCC(CH3)3)16の分子錯体を、ソルボサーマル条件(オートクレーブ中において100〜110℃で24時間)下において、50mLのアセトニトリル中で2mLのTi(OiPr)4と7gのピバル酸(HOOCC(CH3)3)とを反応させることによって得た。続いて、このようにして形成された結晶化状態のチタンオキソ錯体をろ過後に94%の収率で得た。
このオキソ錯体の結晶構造を単結晶X線回折により決定した。これを添付図9に概略的に示している。この構造の決定から、頂点で結合した8個の八面体チタンオキソ錯体と、16個の二座架橋性カルボキシレート基とのクラウンを形成していることを実証することができた。8個のカルボキシレート基がエクアトリアル位に位置し、他の8個がアキシアル位に位置している(オキソコアのクラウンによって形成される平面の各面上に4個)。
【0109】
(2)第2工程:式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6のハイブリッド材料の合成
前工程で得られた0.6gのチタンオキソ錯体Ti8O8(OOCC(CH3)3)16と、1.55gのテレフタル酸を18mLのDMFと4.5mLのメタノールとの混合物に導入した。この反応混合物をオートクレーブ中に110℃で4日間にわたり置いた。得られた沈殿物をろ過し、DMFで3回洗浄し続いて、20時間にわたり150℃で乾燥させた。反応収率は97%であった。
例1からのハイブリッド材料にことごとく等しいハイブリッド材料が得られた。
【0110】
例7
式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6の材料からの式Ti8O8(OH)4[O2C−C4H2S−CO2]6のハイブリッド材料の製造
この例では、式Ti8O8(OH)4[O2C−C4H2S−CO2]6のハイブリッド材料、すなわち、本発明に従う式(I)(式中、Xはチオフェン環を表す。)のサブユニットから構成されるハイブリッド材料を、上記例1で製造した材料、すなわち式(I)(式中、Xはベンゼン環である。)のサブユニットから構成されるハイブリッド材料から出発する有機スペーサーの交換により合成した。
上記例1で得られた1gの式Ti8O8(OH)4[O2C−C6H4−CO2]6の材料と、5gのチオフェンジカルボキシレートとを40mLのDMFと10mLのメタノールとの混合物に分散させた。この分散液をソルボサーマル条件下において150℃で16時間にわたり放置した。冷却後、所期の結晶化材料の得られた粉末をろ過し、DMFで3回洗浄し、6時間にわたり150℃で乾燥させた。この交換反応の収率は93%であった。
この例は、有機スペーサーの単純な交換により結晶化ハイブリッド材料を得ることが可能であることを示している。
【0111】
例8
TiO[O2C−C6H4−CO2]組成のTiO−BDC相の合成
1.5mmolの1,4−ベンゼンジカルボン酸(250mg)(オールドリッチ、98%)、次いで1mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.3mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、2.5mLの無水ジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス)と2.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)から構成される混合物を5mL含有するテフロン(商標)体に導入した。この反応混合物を5分間にわたり周囲温度で撹拌した。
次いで、このテフロン(商標)体をPAAR金属体に導入し、次いで150℃のオーブンに15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、白色固体の状態の所期材料をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。結晶化相をTiO−BDCという。
XRD回折図を添付図10に示しており、図中、強度(任意単位で表す)は、回折角の程度に応じる。
一次真空(10-3Torr)下で15時間にわたり150℃で予め活性化された20mgの試料について実施された、この材料の比表面積の測定から、250(15)m2.g-1のBET比表面積を算出することが可能である。
この固体の熱安定性を評価した。XRD回折図を空気中20℃ごとのダイアグラムで集めた(図示しない)TiO−BDC固体は、300℃の温度までは安定であることが分かった。
【0112】
例9
TiO[O2C−C6H2(OH)2−CO2]組成のTi−BDC(2OH)相の合成
0.67mmolの2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボン酸(150mg)(オールドリッチ、98%)、続いて0.33mmolのチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4(0.1mL)(アクロス・オーガニクス、98%)を、2.5mLのジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス、特別の乾燥)及び2.5mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)を含有する溶液に導入する。この混合物を周囲温度で5分間撹拌した。
続いて、このテフロン体をPAAR金属体に導入し、次いで200℃のオーブン内に15時間にわたって置いた。周囲温度にまで戻した後に、鮮やかなオレンジ色の固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。オレンジ色の結晶化相(Ti−BDC(2OH)という。)が得られた。そのXRD回折図を添付図11に示しており、図中、強度(任意単位で表す)は、回折角(度で表す)の関数である。
一次真空(10-3Torr)下で15時間にわたり200℃で予め活性化された20mgの試料について実施された、この材料の比表面積の測定から、980(15)m2.g-1のBET比表面積を算出することができた。
STA6000機で実施された、この例で製造された材料の熱重量分析の結果を添付図12に与えている。この図では、質量(パーセントで表す)は、温度(℃で表す)に応じたものである。式TiO[O2C−C6H2(OH)2−CO2].H2Oから出発して推定される損失は、それぞれ6.8%(遊離水)及び62.7%であり、これは、実験上の損失と非常によく一致する(それぞれ約7及び63%)。また、この実験は、Ti−BDC(2OH)材料が205℃までは空気中で安定であることも示した。
【0113】
例10
Ti−NH2BDC相の二酸化炭素を保存するための使用
この例では、上記例2で製造されたTi−NH2BDC相の二酸化炭素に対する吸着/脱離能力を試験した。
Ti−NH2BDC相のCO2吸着特性を、Hiden Isochema IGA重量測定器を使用して試験した。
Ti−NH2BDC固体30mgを天秤に導入し、そしてまず二次真空(10-6Torr)下において周囲温度で1時間、続いて200℃で15時間にわたり活性化した。吸着/脱離能力を様々な温度:10、20、30及び40℃で試験した。それぞれの温度について、CO2を50mbar〜20barまでの可変圧力で導入し、そしてCO2をチャージした固体の質量を、平衡に達したら(30分の最大時間)すぐに測定した。乾燥固体の初期質量を差し引くことによって、この材料の細孔に吸着したCO2の量を算出することができる。異なる温度での2回の測定の間に、この固形物を二次真空下において150℃で一晩脱気した。
得られた結果を添付図13に示しており、図中、二酸化炭素の吸着量(mmol.g-1)は、圧力(mbar)の関数である。この図では、最も上の曲線から最も下の曲線まで様々な曲線のペアは、それぞれ、10、20、30及び40℃でのCO2の吸着(三角)及び脱離(丸)を示している。この図に与えられている結果は、例2からの材料が、1barの圧力下において20℃で3.8mmol.g-1のCO2に近い吸着によって象徴される、低い圧力で大量のCO2を顕著な親和性で吸着させることができることを示している。
【0114】
例11
加熱工程を電子レンジで実施する方法に従うTi−NH2BDC相の合成
この例では、Ti−NH2BDC相を、第2工程を電子レンジでの加熱によって実施する方法に従って合成した。
1.66mmolの2−アミノテレフタル酸(300mg)(オールドリッチ、98%)、続いて273mgのチタンオキソクラスターTi8O8(OOC(CH3)3)16を、5mLのジメチルホルムアミド(アクロス・オーガニクス、99%)及び1mLのメタノール(オールドリッチ、99.9%)を含有する溶液に導入した。この反応混合物を1分間にわたり周囲温度で撹拌した。
続いて、テフロン体(100mL容量)を電子レンジ(14−リアクターカルーセルを備えたCEM,Mars300)に導入し、400Wの電力を2分の温度上昇で150℃まで加えた。この温度及びこの電力で15分間観察した。周囲温度にまで戻した後に、このようにして得られた黄色の固体をろ過により回収し、アセトンで2回洗浄し、そして空気中で乾燥させた。
得られた材料のXRD回折図を添付図14に示しており、図中、強度(任意単位)は、回折角(度)の関数である(一番上の曲線)。また、比較のため、上記例2で得られたTi−NH2BDC材料のスペクトルも図14に示している(一番下の曲線)。
回折線の有意な広がりは、マイクロ波法で得られた生成物が、ソルボサーマル経路によって得られた固体よりも非常に小さい粒度を有することを示している。
【0115】
例12
TiBDC相のフォトクロミック及び光触媒特性の実証
0.025gのTiBDCを0.015mLのベンジルアルコールに浸漬させ、続いて窒素流れ下で15分にわたり350nmの波長のUV照射にさらした。
同じ実験をデグッサ社がP25の商品名で販売する市販のTiO2粉末でも実施した。
添付した図15は、ベンジルアルコールによる含浸及びUV照射後のこれら2つの材料の写真を示している。濃い灰色/青色のTiBDC材料の自発的で強い着色が観察される。この迅速に観察されるフォトクロミック効果は、チタン(IV)中心のチタン(III)への還元によるものである。
これに対し、TiO2粉末では、非常に僅かな着色しか観察されなかった。
ベンジルアルコールに浸漬されたTiBDC材料の着色強度は、Ti(III)の形態で安定化できる多数の光活性部位により説明される。
添付した図16は、含浸及びUV照射後のTiBDC材料のUVスペクトル(図16a:nmで表す波長に応じた吸光度)及び75Kでの電子常磁性共鳴(EPR)スペクトル(図16b:磁場(G)に応じた誘導吸着)を示している。このEPRスペクトルは、光還元常磁性チタン(III)部位の存在を実証することを可能にする。
これらの試料の着色は、酸素の不存在下では強くかつ安定である。
【0116】
TiBDC材料の着色の安定性を酸素の不存在下で数週間にわたって観察したところ、従来の緻密なTiO2粉末の着色よりも非常に大きかった。この安定性は、光誘起ホールを捕らえ、アルコール官能基をアルデヒド官能基に酸化させる光還元中心の近くにある多数のアルコール分子の存在により説明される。
【0117】
このフォトクロミック挙動は可逆的であり、この粉末を酸素中に置くと、試料の脱色が徐々に生じる。
【0118】
これら2つの現象は両立する:フォトクロミック特性はTiIVからTiIIIへの還元によるものであり、光触媒特性は吸収された分子の酸化(例えばアルコールからアルデヒドへの)によるものである。
【0119】
図17は、ベンジルアルコールによる浸漬及びUV照射後のTiBDC(上の曲線)及びTiO2(下の曲線)のUV/可視吸着スペクトルを示している。この図では、吸光度は波長(nm)の関数である。
【0120】
したがって、この例は、TiBDC材料の高くかつ接近しやすい比表面積により、三次元構造内の有機分子の吸着を容易にすることが可能になることを実証する。
【0121】
以上のことから、本発明に従う材料は、レーザーマーキングの分野や、不均一触媒作用の分野において、或いは酸素インジケーター材料として応用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系有機−無機ハイブリッド型固体材料であって、擬立方結晶構造を有し、しかも、専ら以下の式(I)の単位から構成されることを特徴とする、チタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料:
TiaOb(OH)c[(-OOC)−X−#]d (I)
式中:
・Xは有機スペーサーであり、そして、2〜12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、直鎖又は分岐の脂肪族鎖;非置換の、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rによって置換された単環式、二環式又は三環式炭化水素系芳香族基;ベンゾフェノン基;単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が5又は6員環であり、該基が、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ、非置換であり、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rで置換されたものを表し;
・a及びbは同一のもの又は異なるものであり、1〜16の範囲の整数であり;
・c及びdは同一のもの又は異なるものであり、1〜32の範囲の整数であり;
・指数a、b、c及びdは、4a=2b+c+dの関係を満たし;
・該チタン原子は、チタンオキソ錯体から構成される純粋に無機の元素構成要素を形成し;
・#は、式(I)の2個の単位が互いに結合する点であり;#は、該スペーサーXに属する炭素原子と、式(I)の別の単位のカルボキシレート基COO-の炭素原子(ここで、該カルボキシレート基の2個の炭素原子は、それぞれ、該式(I)の別の単位の元素構成要素である2個の隣接する八面体チタンオキソ錯体に属する)との間の共有結合を表し;
該式(I)の単位は、共に三次元構造を形成し、かつ、4〜15Åの寸法を有する三角形の孔を介して接近可能な4〜40Åの自由直径を有する空隙を画定する。
【請求項2】
Xについて定義した脂肪族鎖がC1〜C4アルキル鎖及びC2〜C4アルキレン又はアルキン鎖から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
Xについて定義した炭化水素系基が、フェニレン;クロルフェニレン;ブロムフェニレン;アミノフェニレン;ニトロフェニレン;モノメチルフェニレン、ジメチルフェニレン又はテトラメチルフェニレン;モノエテニルフェニレン又はジエテニルフェニレン;モノヒドロキシフェニレン又はジヒドロキシフェニレン;ビフェニレン;ジフェニルジアゼン;ナフタリン及びアントラセン基から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
Xについて定義した複素環がチオフェン、ビチオフェン、ピリジン、ビピリジン及びピラジン環から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項5】
前記サブユニット[-OOC−X−#]が以下の式(II−1)〜(II−13)の基から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料:
【化1】
式中:
・Rは、ハロゲン原子、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル又はC1〜C4アルキル基であり;
・mは、0〜4の範囲の整数であり;
・nは、0〜8の範囲の整数であり;
・pは、0〜6の範囲の整数であり;
・qは、0〜2の範囲の整数であり;
・rは、0〜3の範囲の整数である。
【請求項6】
前記サブユニット[-OOC−X−#]がフェニル−1−カルボキシレート、フェニル−2−アミノ−1−カルボキシレート、フェニル−2,5−ジヒドロキシ−1−カルボキシレート及びチオフェン−2−カルボキシレートから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
前記式(I)の単位が以下の式(I−1)のサブユニットから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の材料:
Ti8O8(OH)4[(-OOC)−X−#]12 (I−1)
式中:
・X及び#は、請求項1で定義したとおりであり;
・チタン原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれた中心チタン原子をそれぞれ含む8個の八面体チタンオキソ錯体から構成される純粋に無機の元素構成要素を形成し、ここで、該八面体チタンオキソ錯体は、共通接線又は共通頂点のいずれかにより、いずれの場合にもオキソ−O−又はヒドロキソ−OH−架橋により互いに結合し;該構成要素は、有機スペーサーXによって空間の三次元で互いに結合し;該構成要素のいずれかは、2個の酸素原子のいずれかが2個の隣接するチタンオキソ錯体の一体部分であるカルボキシレート基COO-により12個の有機スペーサーに結合しているものとする。
【請求項8】
前記空隙が5〜12.6Åの自由直径を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の材料。
【請求項9】
200〜6000m2/gのBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の材料。
【請求項10】
0.1〜3cm3/gの細孔容積を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の材料の、不均一触媒化学反応を実施するための触媒担体又は気体の貯蔵/分離/精製材料又は有効成分(薬剤、化粧品)をカプセル化するためのマトリックス又は情報貯蓄、レーザー印刷用のフォトクロミック材料又は酸素インジケーターとしての使用。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のチタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料の製造方法であって、次の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(1)第1工程において、次の(i)〜(iii)を含む反応混合物を調製し:
(i)次式(III)のチタンアルコキシドから選択される少なくとも1種のチタン先駆物質:
Ti(OR1)4 (III)
(式中、R1は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基である。)又は次式(IV)の少なくとも1種のチタンオキソ錯体:
TixOy(OR2)z(OOCR3)w (IV)
(式中:
・R2は、水素原子、直鎖若しくは分岐C1〜C6アルキル基又はフェニル環であって、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル及びC2〜C3アルケン基から選択される1個以上の基により置換されていてよいものを表し;
・R3は、直鎖又は分岐C1〜C4アルキル基、C1〜C4トリハロアルキル基又はフェニル環を表し;
・xは、2〜18の範囲の整数であり;
・yは、1〜27の範囲の整数であり;
・zは、0〜32の範囲の整数であり;
・wは、0〜16の範囲の整数であり;
また、該チタン原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれた中心チタン原子をそれぞれ含む、チタンオキソ錯体の完全に無機のコアから構成される元素構成要素を八面体の配位で形成し、ここで、該八面体チタンオキソ錯体は、共通接線又は共通頂点のいずれかにより、いずれの場合にもオキソ−O−又はヒドロキソ−OH−架橋により互いに結合し;該構成要素は、アルコレート(OR2)及び/又はカルボキシレート(OOCR3)型の有機配位子で取り囲まれている。);
(ii)次式(V)の少なくとも1種のジカルボン酸:
HOOC−X’−COOH (V)
(式中、X’は、2〜12個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐の脂肪族鎖、ベンゾフェノン基又は単環式、二環式若しくは三環式炭化水素系芳香族基であって、非置換のもの又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立に選択される1個以上の置換基R'で置換されたものを表す。);
(iii)C1〜C4アルコール、ベンジルアルコール及びクロルベンジルアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒S1と、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン及びN−メチルピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒S2とを含む少なくとも2種の有機溶媒の混合物;
(2)第2工程において、前記のようにして得られた反応混合物を、所期の固体材料に相当する沈殿物が得られるまで、4〜72時間にわたって70〜200℃の温度にし;続いて
(3)第3工程において、該反応混合物を周囲温度にまで冷却し;
(4)第4工程において、該固体材料を該有機溶媒の混合物から分離し;
ここで、該固体材料が、Xが窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が置換されていてよい5又は6員環であるものである式(I)の単位から構成される場合には、該方法は、次の追加工程も含むものとする:
(5)次式(VI)の少なくとも1種のジカルボン酸の存在下で、該第4工程から得られる固体材料の少なくとも1種の極性有機溶媒への分散液を調製する第5工程:
HOOC−X”−COOH (VI)
(式中、X”は、単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が5又は6員環であり、該基が、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ、非置換であり、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rで置換されたものを表す。);
(6)前記のようにして得られた分散液を4時間〜4日間にわたって100〜150℃の温度にし、それによって所期の固体材料に相当する沈殿物を形成させる第6工程;続いて
(7)該温度を周囲温度に戻す第7工程;及び
(8)このようにして得られた固体材料を該有機溶媒から分離する第8工程。
【請求項13】
前記式(III)の先駆物質がチタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−プロポキシド及びチタンブトキシドから選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(IV)のチタンオキソ錯体がTi16O16(OCH2CH3)32及びTi8O8(OOCR3)16(式中、R3は請求項12で定義したとおりである。)から選択されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(V)のジカルボン酸が、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−アミノベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−ニトロベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−クロルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−ブロムベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−メチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジメチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニル−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)二安息香酸、3,3'−(ジアゼン−1,2−ジイル)二安息香酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、ナフタリン−1,5−ジカルボン酸、1,4−フェニレン二酢酸、1,4−フェニレンジアクリル酸及び4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記式(V)のジカルボン酸がベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸及び2−アミノベンゼン−1,4−ジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物内において、前記式(III)のチタンアルコキシド又は前記式(IV)のチタンオキソ錯体/式(V)のジカルボン酸のモル比が0.1〜2の範囲にあることを特徴とする、請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第5工程の間に使用する前記極性溶媒が、C1〜C4アルコール、ベンジルアルコール及びクロルベンジルアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒S1と、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン及びN−メチルピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒S2とを含む少なくとも2種の有機溶媒S1及びS2の混合物から選択されることを特徴とする、請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記式(VI)のジカルボン酸がチオフェン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸及びピラジン−2,6−ジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第5工程における、前記第4工程から得られる固体材料/式(VI)のジカルボン酸のモル比が1〜20の範囲にあることを特徴とする、請求項11〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
チタン系有機−無機ハイブリッド型固体材料であって、擬立方結晶構造を有し、しかも、専ら以下の式(I)の単位から構成されることを特徴とする、チタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料:
TiaOb(OH)c[(-OOC)−X−#]d (I)
式中:
・Xは有機スペーサーであり、そして、2〜12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、直鎖又は分岐の脂肪族鎖;非置換の、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rによって置換された単環式、二環式又は三環式炭化水素系芳香族基;ベンゾフェノン基;単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が5又は6員環であり、該基が、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ、非置換であり、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rで置換されたものを表し;
・a及びbは同一のもの又は異なるものであり、1〜16の範囲の整数であり;
・c及びdは同一のもの又は異なるものであり、1〜32の範囲の整数であり;
・指数a、b、c及びdは、4a=2b+c+dの関係を満たし;
・該チタン原子は、チタンオキソ錯体から構成される純粋に無機の元素構成要素を形成し;
・#は、式(I)の2個の単位が互いに結合する点であり;#は、該スペーサーXに属する炭素原子と、式(I)の別の単位のカルボキシレート基COO-の炭素原子(ここで、該カルボキシレート基の2個の炭素原子は、それぞれ、該式(I)の別の単位の元素構成要素である2個の隣接する八面体チタンオキソ錯体に属する)との間の共有結合を表し;
該式(I)の単位は、共に三次元構造を形成し、かつ、4〜15Åの寸法を有する三角形の孔を介して接近可能な4〜40Åの自由直径を有する空隙を画定する。
【請求項2】
Xについて定義した脂肪族鎖がC1〜C4アルキル鎖及びC2〜C4アルキレン又はアルキン鎖から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
Xについて定義した炭化水素系基が、フェニレン;クロルフェニレン;ブロムフェニレン;アミノフェニレン;ニトロフェニレン;モノメチルフェニレン、ジメチルフェニレン又はテトラメチルフェニレン;モノエテニルフェニレン又はジエテニルフェニレン;モノヒドロキシフェニレン又はジヒドロキシフェニレン;ビフェニレン;ジフェニルジアゼン;ナフタリン及びアントラセン基から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
Xについて定義した複素環がチオフェン、ビチオフェン、ピリジン、ビピリジン及びピラジン環から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項5】
前記サブユニット[-OOC−X−#]が以下の式(II−1)〜(II−13)の基から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の材料:
【化1】
式中:
・Rは、ハロゲン原子、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル又はC1〜C4アルキル基であり;
・mは、0〜4の範囲の整数であり;
・nは、0〜8の範囲の整数であり;
・pは、0〜6の範囲の整数であり;
・qは、0〜2の範囲の整数であり;
・rは、0〜3の範囲の整数である。
【請求項6】
前記サブユニット[-OOC−X−#]がフェニル−1−カルボキシレート、フェニル−2−アミノ−1−カルボキシレート、フェニル−2,5−ジヒドロキシ−1−カルボキシレート及びチオフェン−2−カルボキシレートから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
前記式(I)の単位が以下の式(I−1)のサブユニットから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の材料:
Ti8O8(OH)4[(-OOC)−X−#]12 (I−1)
式中:
・X及び#は、請求項1で定義したとおりであり;
・チタン原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれた中心チタン原子をそれぞれ含む8個の八面体チタンオキソ錯体から構成される純粋に無機の元素構成要素を形成し、ここで、該八面体チタンオキソ錯体は、共通接線又は共通頂点のいずれかにより、いずれの場合にもオキソ−O−又はヒドロキソ−OH−架橋により互いに結合し;該構成要素は、有機スペーサーXによって空間の三次元で互いに結合し;該構成要素のいずれかは、2個の酸素原子のいずれかが2個の隣接するチタンオキソ錯体の一体部分であるカルボキシレート基COO-により12個の有機スペーサーに結合しているものとする。
【請求項8】
前記空隙が5〜12.6Åの自由直径を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の材料。
【請求項9】
200〜6000m2/gのBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の材料。
【請求項10】
0.1〜3cm3/gの細孔容積を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の材料の、不均一触媒化学反応を実施するための触媒担体又は気体の貯蔵/分離/精製材料又は有効成分(薬剤、化粧品)をカプセル化するためのマトリックス又は情報貯蓄、レーザー印刷用のフォトクロミック材料又は酸素インジケーターとしての使用。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のチタン系無機−有機ハイブリッド型固体材料の製造方法であって、次の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(1)第1工程において、次の(i)〜(iii)を含む反応混合物を調製し:
(i)次式(III)のチタンアルコキシドから選択される少なくとも1種のチタン先駆物質:
Ti(OR1)4 (III)
(式中、R1は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基である。)又は次式(IV)の少なくとも1種のチタンオキソ錯体:
TixOy(OR2)z(OOCR3)w (IV)
(式中:
・R2は、水素原子、直鎖若しくは分岐C1〜C6アルキル基又はフェニル環であって、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル及びC2〜C3アルケン基から選択される1個以上の基により置換されていてよいものを表し;
・R3は、直鎖又は分岐C1〜C4アルキル基、C1〜C4トリハロアルキル基又はフェニル環を表し;
・xは、2〜18の範囲の整数であり;
・yは、1〜27の範囲の整数であり;
・zは、0〜32の範囲の整数であり;
・wは、0〜16の範囲の整数であり;
また、該チタン原子は、6個の酸素原子によって取り囲まれた中心チタン原子をそれぞれ含む、チタンオキソ錯体の完全に無機のコアから構成される元素構成要素を八面体の配位で形成し、ここで、該八面体チタンオキソ錯体は、共通接線又は共通頂点のいずれかにより、いずれの場合にもオキソ−O−又はヒドロキソ−OH−架橋により互いに結合し;該構成要素は、アルコレート(OR2)及び/又はカルボキシレート(OOCR3)型の有機配位子で取り囲まれている。);
(ii)次式(V)の少なくとも1種のジカルボン酸:
HOOC−X’−COOH (V)
(式中、X’は、2〜12個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分岐の脂肪族鎖、ベンゾフェノン基又は単環式、二環式若しくは三環式炭化水素系芳香族基であって、非置換のもの又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立に選択される1個以上の置換基R'で置換されたものを表す。);
(iii)C1〜C4アルコール、ベンジルアルコール及びクロルベンジルアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒S1と、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン及びN−メチルピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒S2とを含む少なくとも2種の有機溶媒の混合物;
(2)第2工程において、前記のようにして得られた反応混合物を、所期の固体材料に相当する沈殿物が得られるまで、4〜72時間にわたって70〜200℃の温度にし;続いて
(3)第3工程において、該反応混合物を周囲温度にまで冷却し;
(4)第4工程において、該固体材料を該有機溶媒の混合物から分離し;
ここで、該固体材料が、Xが窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が置換されていてよい5又は6員環であるものである式(I)の単位から構成される場合には、該方法は、次の追加工程も含むものとする:
(5)次式(VI)の少なくとも1種のジカルボン酸の存在下で、該第4工程から得られる固体材料の少なくとも1種の極性有機溶媒への分散液を調製する第5工程:
HOOC−X”−COOH (VI)
(式中、X”は、単環式又は二環式の複素環式芳香族基であって、その(それらの)環が5又は6員環であり、該基が、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、かつ、非置換であり、又はハロゲン原子並びにアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、C1〜C4トリフルオルアルキル及びC1〜C4アルキル基から独立して選択される1個以上の置換基Rで置換されたものを表す。);
(6)前記のようにして得られた分散液を4時間〜4日間にわたって100〜150℃の温度にし、それによって所期の固体材料に相当する沈殿物を形成させる第6工程;続いて
(7)該温度を周囲温度に戻す第7工程;及び
(8)このようにして得られた固体材料を該有機溶媒から分離する第8工程。
【請求項13】
前記式(III)の先駆物質がチタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−プロポキシド及びチタンブトキシドから選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(IV)のチタンオキソ錯体がTi16O16(OCH2CH3)32及びTi8O8(OOCR3)16(式中、R3は請求項12で定義したとおりである。)から選択されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(V)のジカルボン酸が、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−アミノベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−ニトロベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−クロルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−ブロムベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−メチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジメチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニル−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)二安息香酸、3,3'−(ジアゼン−1,2−ジイル)二安息香酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、ナフタリン−1,5−ジカルボン酸、1,4−フェニレン二酢酸、1,4−フェニレンジアクリル酸及び4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記式(V)のジカルボン酸がベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸及び2−アミノベンゼン−1,4−ジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物内において、前記式(III)のチタンアルコキシド又は前記式(IV)のチタンオキソ錯体/式(V)のジカルボン酸のモル比が0.1〜2の範囲にあることを特徴とする、請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第5工程の間に使用する前記極性溶媒が、C1〜C4アルコール、ベンジルアルコール及びクロルベンジルアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒S1と、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン及びN−メチルピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒S2とを含む少なくとも2種の有機溶媒S1及びS2の混合物から選択されることを特徴とする、請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記式(VI)のジカルボン酸がチオフェン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸及びピラジン−2,6−ジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第5工程における、前記第4工程から得られる固体材料/式(VI)のジカルボン酸のモル比が1〜20の範囲にあることを特徴とする、請求項11〜19のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−518032(P2012−518032A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550629(P2011−550629)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050271
【国際公開番号】WO2010/094889
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(507018539)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー (パリ6) (10)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE (PARIS 6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050271
【国際公開番号】WO2010/094889
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(507018539)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー (パリ6) (10)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE (PARIS 6)
【Fターム(参考)】
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