説明

チップの使用方法及び検査チップ

本発明は、分離及び秤量を効率的かつ簡便に行うことができる検査チップを提供することを目的とする。第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を分離・秤量する秤量チップであって、前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、前記遠心分離管の一方の端部に接続され、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する秤量部とを含む秤量チップを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、対象成分を含む試料が導入されたチップの使用方法及び対象成分を検査するための検査チップに関する。
【背景技術】
肝臓・胆道系疾患やアルコール性肝障害を診断し、その治療経過を観察するため、肝臓、腎臓、膵臓などで活動している酵素やその生成物を血液中から採取して濃度測定する生化学検査が広く実施されている。このような生化学検査を行うための装置として、特開2003−83958号公報には、遠心力を利用して血漿を遠心分離する血液分析装置が開示されている。この血液分析装置では、1つの回転軸を中心として採取した血液が導入されたチップを回転することにより血液から血清または血漿を遠心分離し、遠心分離された血漿をさらにポンプ手段によりチップ外部に取り出して分析手段に導入し分析を行う。同様に、米国特許第4883763号明細書には、2つの回転軸を中心とする回転による遠心力によりキャピラリを介して試料測定手段に試料を導入し、秤量された試料を試薬と混合する試料処理カードが開示されている。さらに、米国特許第6399361号明細書には、1つの回転軸を中心とする回転による遠心力を利用して生体試料等の正確な秤量ができるマイクロ分析装置が開示されている。
しかし、特開2003−83958号公報に記載の血液分析装置では、1つの回転軸を中心とする回転による遠心力を利用して対象成分である血漿などを分離しているが、分離後の血漿を秤量する手段を有していない。よって、分離後はポンプ手段により対象成分を取り出して分析装置に導入しなければならず、対象成分の分離、正確な秤量などの作業が同一のチップ内において一連に行われず煩雑となっている。また、米国特許第4883763号明細書に記載の試料処理カードでは、2つの回転軸を中心とする回転による遠心力を利用して、遠心分離された試料のうち上澄みを取り出し、対象成分を抽出している。このとき、遠心力により底部に溜まった非対象成分が混入しないように対象成分を含む上澄みを取り出す必要があり、試料中から対象成分を効率的に抽出することができない。また、対象成分と非対象成分とを分離するためのAを中心とする回転、対象成分を秤量するためのB及びAを中心とする回転、さらに対象成分と試薬とを混合するためのBを中心とする回転を行っている。よって、A→Bの切換、B→Aの切換、及びA→Bの切換の少なくとも3回の回転の切換を行う必要があり煩雑である。さらに、米国特許第6399361号明細書に記載のマイクロ分析装置においては、遠心分離された流体を、所定位置に設けられたWAXバルブを除去して流出させることにより秤量する。そのため、米国特許第6399361号明細書に記載のマイクロ分析装置には、WAXバルブを設ける必要がある。また、このWAXバルブを除去するために、赤外線などの熱を加える必要があるため、温度制御が必要となり煩雑である。さらに、WAXバルブが溶融、溶解して試料と混合された場合には、試料や対象成分が汚染され、対象成分の正確な秤量や定量ができなくなる。
そこで、本発明は、分離及び秤量を効率的かつ簡便に行うことができる検査チップを提供することを目的とする。
また、対象成分を含む試料が導入されたチップにおいて、分離及び秤量を効率的かつ簡便に行うことができるチップの使用方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
上記課題を解決するために、本願第1発明は、第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を分離・秤量する秤量チップであって、前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、前記遠心分離管の一方の端部に接続され、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する秤量部とを含む秤量チップを提供する。
遠心分離管に試料を導入し、第1回転軸を中心としてチップを回転させることにより遠心分離管において試料中から対象成分を遠心分離する。このとき、試料中の対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)は、遠心分離管の底部に設けられた第1保持部に導入される。次に、第2回転軸を中心とする回転により分離された対象成分を秤量部に導入し、秤量する。この第2回転軸を中心とする回転時において、第1保持部に導入された非対象成分は、そのまま第1保持部に保持される。上記の秤量チップを用いることにより、試料中の対象成分の分離、秤量を2つの第1回転軸及び第2回転軸を利用して一括に行うことができる。また、非対象成分は第1保持部に保持されているため、対象成分を秤量部に取り出す際において、非対象成分の対象成分への混入が抑制され、遠心分離管内に分離された対象成分を有効に秤量部に取り出すことができる。よって、対象成分の分離、秤量を効率よく行うことができる。さらに、上述のように、第1回転軸→第2回転軸の切換により試料を分離、秤量することができるので、分離、秤量工程が簡便である。
このとき、秤量部は所望の容積を有しており、遠心分離管から導入された対象物質を正確に秤量することができる。前述のように分離、秤量をチップの回転のみにより行うため、分離、秤量のために秤量チップをポンプ等の装置に接続する必要がなく、秤量チップが載置される装置全体の構成を単純化することができる。また、分離、秤量を1チップ内において一括で行うことができるので、秤量チップの小型化を図ることができる。
ここで、秤量部に接続され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記秤量部の容積を超える対象成分が導入される廃液溜をさらに含み、前記廃液溜は、廃液溜本体と、前記廃液溜本体及び前記秤量部を接続する廃液溜接続部とを有し、前記廃液溜本体は、前記第1回転軸側に開口を有するコの字状に形成されていると好ましい。秤量部に接続された廃液溜には、第2回転軸を中心とする回転により秤量部の容積を超える対象成分が導入される。よって、秤量部により正確に対象成分を秤量することができる。具体的には、対象成分を遠心分離管から秤量部に導入する際の第2回転軸を中心とする回転により、秤量部から廃液溜本体に秤量部からあふれ出た過剰の対象成分が導入される。次に、秤量部から対象成分を取り出す際の第1回転軸を中心とする回転により、廃液溜本体の対象成分は、第1回転軸側に開口を有するコの字状の廃液溜本体にそのまま保持される。よって、廃液溜から秤量部への対象成分の逆流を防ぎ、正確に秤量された対象成分を得ることができる。
本願第2発明は、本願第1発明において、前記遠心分離管はU字管である秤量チップを提供する。
第1回転軸を中心とする回転時において、非対象成分がU字管の底部の第1保持部に保持され、対象成分がU字管内部に位置することで、対象成分と非対象成分とが分離される。次に、第2回転軸を中心とする回転時において、非対象成分はそのまま第1保持部に保持されるため、U字管の底部に対して秤量部側の端部ともう一方の端部とに至るU字管内部に位置する対象成分は、有効に秤量部に導入される。よって、試料中の対象成分を効率よく分離可能である。
本願第3発明は、本願第1発明において、前記遠心分離管のU字の開口は、90度以内である秤量チップを提供する。
U字の開きが90度以内であるので、秤量チップ上での遠心分離管の占有面積を小さくすることができる。
本願第4発明は、本願第1発明において、前記秤量部に接続される前記遠心分離管の第1端部から他方の第2端部へ向かうほど前記第2回転軸との距離が狭まる秤量チップを提供する。
遠心分離管は、その底部から第2端部へ向かうほど第2回転軸との距離が狭まるように形成されている。よって、第2回転軸を中心とする回転により、遠心分離管の第2端部から底部に向かう方向に対象成分が送液される。また、遠心分離管は、その底部から秤量部に接続された第1端部へ向かうほど第2回転軸との距離が広がるように形成されている。よって、第2回転軸を中心とする回転により、遠心分離管の底部から第1端部に向かう方向に対象成分が送液される。よって、第2回転軸を中心とする回転により、分離された対象成分を効率よく秤量部に移動させることができる。
本願第5発明は、本願第1発明において、前記秤量部に接続される前記遠心分離管の第1端部と前記第1回転軸との距離が、前記遠心分離管の他方の第2端部と前記第1回転軸との距離よりも小さい秤量チップを提供する。
第1端部の方が、第2端部よりも第1回転軸に近いため、第1回転軸を中心とする回転により遠心分離管において試料を遠心分離する場合、試料が秤量部へ導入されるのを防止することができる。
本願第6発明は、本願第1発明において、前記第1保持部は、保持部本体と、前記保持部本体及び前記遠心分離管を接続する保持部連結管と、を有しており、前記保持部連結管の断面積は、前記遠心分離管の断面積よりも大きく形成されている秤量チップを提供する。
保持部連結管の断面積が遠心分離管の断面積よりも大きく形成されていると、第1保持部内に試料が導入された場合に、保持部本体内に存在する空気を保持部連結管から遠心分離管へ効率良く逃がすことができる。
本願第7発明は、本願第1発明において、前記第1保持部は、保持部本体と、前記保持部本体及び前記遠心分離管を接続する保持部連結管と、を有しており、前記保持部連結管は管状に形成され、前記保持部連結管の管軸の延長線が前記第1回転軸と交差する秤量チップを提供する。
第1回転軸を中心とする回転による遠心力の方向と、保持部連結管の管軸の方向とが概ね一致するため、非対象成分が遠心分離管から第1保持部へと効率良く導入される。よって、対象成分と非対象成分の分離を効率よく行うことができる。
本願第8発明は、本願第1発明において、前記第1保持部は、保持部本体と、前記保持部本体及び前記遠心分離管を接続する保持部連結管と、を有しており、前記保持部本体と前記第1回転軸との距離は、前記保持部連結管と前記第1回転軸との距離よりも長く、かつ前記保持部本体と前記第2回転軸との距離は、前記保持部連結管と前記第2回転軸との距離よりも長い秤量チップを提供する。
保持部本体が保持部連結管よりも第1回転軸からの距離が長いため、第1回転軸を中心とする回転により第1回転軸からの距離が保持部連結管より遠い保持部本体の方向に遠心力が働く。よって、非対象成分が保持部本体に効率よく導入される。また、保持部本体は、保持部連結管よりも第2回転軸からの距離が長いため、第2回転軸を中心とする回転により第2回転軸からの距離が保持部連結管より遠い保持部本体の方向に遠心力が働く。よって、第1回転軸の回転により導入されている非対象成分が保持部本体にそのまま保持される。そのため、非対象成分が保持部連結管から遠心分離管に逆流し難く、対象成分と非対象成分の分離が確実に行われる。以上より、対象成分のみを効率よく秤量部へ導入することができる。
本願第9発明は、本願第7または第8発明において、前記保持部本体が前記第2回転軸から離れる程、前記保持部本体の深さは深くなる秤量チップを提供する。
保持部本体の入口である保持部連結管での深さが浅く、保持部連結管からの距離が遠い程保持部本体の深さが深くなるため、第2回転軸を中心とする回転時において、保持部連結管を介した保持部本体からの非対象成分の逆流を防止することができる。また、深さ方向に深くすることで、秤量チップの面積を大きくすることなく保持部本体の容量を大きくすることができる。よって、対象成分の分離効率を高めつつ秤量チップの小型化を図ることができる。
本願第10発明は、本願第7または第8発明において、前記保持部本体が前記第2回転軸から離れる程、前記保持部本体の断面積が広がる秤量チップを提供する。
保持部本体の入口である保持部連結管での断面積が小さく、保持部連結管からの距離が遠い程保持部本体の断面積が大きくなるため、第2回転軸を中心とする回転時において、保持部連結管を介した保持部本体からの非対象成分の逆流を防止することができる。
本願第11発明は、本願第1発明において、前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記非対象成分が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第2保持部をさらに含む秤量チップを提供する。
第2保持部をさらに設けることで、第1保持部だけでは保持しきれない非対象成分を第2保持部に保持することができる。例えば、遠心分離管に多量の試料が導入され、非対象成分が多量に分離される場合であっても、第1及び第2保持部に多量の非対象成分を導入することで、遠心分離管内に対象成分を分離することができる。
本願第12発明は、本願第1発明において、前記遠心分離管は、前記秤量部に接続される前記遠心分離管の第1端部から前記遠心分離管の底部に向かう第1管と、前記底部から他方の第2端部へ向かう第2管とを有しており、前記遠心分離管の前記第1管と前記第2管とを接続するバイパス管と、前記バイパス管に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記非対象成分が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第3保持部と、をさらに含む秤量チップを提供する。
例えば、遠心分離管及びバイパス管を満たすような多量の試料が導入された場合、第1回転軸を中心とする回転時において、非対象成分が遠心分離管の底部の第1保持部に保持されるとともに、バイパス管に接続された第3保持部に保持される。よって、試料中の対象成分は、遠心分離管及びバイパス管内に分離される。一方、バイパス管を満たすほどではない少量の試料が遠心分離管のみに導入された場合、第1回転軸を中心とする回転時において、非対象成分が遠心分離管の底部の第1保持部のみに分離、保持される。ところで、多量の試料から生じる多量の非対象成分を保持するために、単に第1保持部を大きくした場合には、少量の試料を分離する際に非対象成分だけでなく対象成分も第1保持部に分離されてしまい、分離後の対象成分が減少してしまう。上記のように、バイパス管に第3保持部をもうけることで、試料の多い少ないに応じて効率的に対象成分及び非対象成分を分離することができる。
本願第13発明は、本願第12発明において、前記バイパス管及び前記第1管の接続部分と前記第1回転軸との距離が、前記バイパス管及び前記第2管の接続部分と前記第1回転軸との距離よりも短い秤量チップを提供する。
第1回転軸を回転して遠心分離管の第2管に接続された取込口から試料を取り込む場合、遠心分離管内が満たされた後にバイパス管が満たされる。よって、試料が少ない場合はバイパス管は作用せず、試料が多いときのみバイパス管は作用する。
本願第14発明は、本願第12発明において、前記バイパス管と前記第2管の接続部分とがなす角度は、90度未満である秤量チップを提供する。
バイパス管が上記のように遠心分離管の底部に対して傾斜しているため、遠心分離管の第2管に接続された取込口から試料を取り込む場合、遠心分離管内が満たされた後にバイパス管が満たされる。よって、試料が少ない場合はバイパス管は作用せず、試料が多いときのみバイパス管は作用する。
本願第15発明は、本願第1発明において、前記秤量部は、前記遠心分離管と前記秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、前記秤量部接続管の延長線が前記第2回転軸と交差する秤量チップを提供する。
第2回転軸を中心とする回転と、秤量部接続管の方向とが概ね一致するため、対象成分を遠心分離管から秤量部へ効率良く導入することができる。
本願第16発明は、本願第1発明において、前記秤量部は、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する秤量部本体をさらに有し、前記秤量部本体には、構造物が形成されている秤量チップを提供する。
第2回転軸を中心とした回転により対象成分が導入されると、対象成分と構造物表面との間に表面張力が働く。そのため、対象成分が遠心分離管へ逆流するのを防ぐことができる。
本願第17発明は、本願第1発明において、前記遠心分離管及び前記秤量部に接続され、前記遠心分離管で遠心分離される試料の量を調整する調整管をさらに含む秤量チップを提供する。
遠心分離を行う前に、遠心分離管及び遠心分離管に接続された調整管に試料を導入することで、遠心分離管を試料で満たす。遠心分離管が試料に満たされた状態で第1回転軸を中心として回転すると、遠心分離管を満たした試料、つまり遠心分離管の容積分の試料から対象成分が遠心分離される。このように、調整管により遠心分離管内を満たすように試料を導入できるため、導入される試料の量を試料の導入時毎に一定量にすることができる。そのため、一定量の試料が遠心分離管により遠心分離され、ほぼ一定量の対象成分を得ることができる。
本願第18発明は、本願第17発明において、前記調整管は、前記調整管内の第1地点と第2地点を有しており、前記第1地点と前記第1回転軸との距離が、前記第2地点と前記第1回転軸との距離よりも短い秤量チップを提供する。
対象成分を得るために遠心分離管及び遠心分離管に接続された調整管に試料が導入される。このとき、遠心分離管及び調整管には試料が満たされている。この状態で第1回転軸を中心として回転すると、調整管内の第2地点は、第1回転軸との距離が遠いため、調整管の第1地点よりも大きな遠心力が働く。よって、第1地点を境にして試料が分離される。つまり、第1地点より遠心分離管側の試料は、遠心分離管に導入されて遠心分離される。一方、第1地点より調整管側の試料は、調整管に導入される。よって、遠心分離管内を満たす一定量の試料から概ね一定量の対象成分を得ることができる。
本願第19発明は、第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を分離・秤量する秤量チップであって、前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する複数の秤量部とを含み、前記複数の秤量部のうち初段の秤量部は、前記遠心分離管の一方の端部に接続され、前記初段以降の秤量部は、前段の秤量部から次段の秤量部に対象物質が導入されるように前段の秤量部に接続され、かつ次段の秤量部の容積は前記前段の秤量部の容積よりも小さい、秤量チップを提供する。
試料中の対象成分の分離、秤量を2つの第1回転軸及び第2回転軸を利用して一括に行うことができる。非対象成分は第1保持部に保持されているため、対象成分を複数段の秤量部に取り出す際において、非対象成分の対象成分への混入が抑制され、遠心分離管内に分離された対象成分を有効に秤量部に取り出すことができる。また、上述のように、第1回転軸→第2回転軸の切換により試料を分離、秤量することができるので、分離、秤量工程が簡便である。さらに、秤量部は複数段から構成されており、前段の秤量部に導入され秤量された対象成分の残りが、次段の秤量部に導入され秤量される。よって、複数段から構成される秤量部のそれぞれから所望の量の対象成分を得ることができる。このとき、前段の秤量部が次段の秤量部の容積より大きく形成されているため、前段の秤量部に導入された対象成分が次段の秤量部から遠心分離管側または前段の秤量部側に溢れ出るのを低減することができる。
本願第20発明は、本願第19発明において、前記秤量部それぞれに接続される取出管をさらに含み、各取出管のそれぞれの延長線は、前記第1回転軸において交差する秤量チップを提供する。
第1回転軸を中心とする回転の遠心力の方向と、それぞれの取出管の延長方向とが概ね一致するため、秤量部それぞれで秤量された対象成分を、第1回転軸を中心とする回転によって取出管から効率良く取り出すことができる。
本願第21発明は、本願第19発明において、前記初段の秤量部は、前記遠心分離管と前記秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、前記次段以降の秤量部それぞれは、前記前段の秤量部と前記次段の秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、前記初段の秤量部の秤量部接続管の延長線及び前記次段以降の秤量部それぞれの秤量部接続管の延長線は、前記第2回転軸において交差する秤量チップを提供する。
第2回転軸を中心とする回転の遠心力の方向と、ぞれぞれの秤量部接続管の延長方向とが概ね一致するため、第2回転軸を中心とする回転によって各秤量部に効率よく対象成分を導入することができる。
本願第22発明は、第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を定量する検査チップであって、前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、前記遠心分離管の一方の端部に接続され、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する秤量部と、試薬が貯蔵される少なくとも1つの試薬溜と、前記試薬溜及び前記秤量部に接続されており、前記第1回転軸を中心とした再度の回転により前記秤量部から導入される前記対象成分と、前記第1回転軸及び/または前記第2回転軸を中心とした回転により前記試薬溜から導入される試薬とを混合する混合部と、前記混合部に接続され、前記試薬及び前記対象成分が混合された混合物質を通過させる光検出路と、前記光検出路に接続され、前記光検出路に光を導入するための光導入口と、前記光検出路に接続され、前記光検出路内を通過後の光を取り出すための光導出口と、を有する検査チップを提供する。
遠心分離管に試料を導入し、第1回転軸を中心としてチップを回転させることにより遠心分離管において試料中から対象成分を遠心分離する。このとき、試料中の対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)は、遠心分離管の底部に設けられた第1保持部に導入される。次に、第2回転軸を中心とする回転により分離された対象成分を秤量部に導入し、秤量する。この第2回転軸を中心とする回転時において、第1保持部に導入された非対象成分は、第1保持部にそのまま保持される。さらに第1回転軸を中心とする回転により対象成分を秤量部から混合部に導入し、試薬と混合する。ここで、試薬は第1回転軸及び/または第2回転軸を中心とする回転により試薬溜から混合部に導入される。混合された混合物質を光検出路内に導入し、光検出路内を通過した光を検出することにより対象成分の定量を行う。上記の検査チップを用いることにより、試料中の対象成分の分離、秤量、試薬との混合及び定量を2つの第1回転軸及び第2回転軸を利用して一括に行うことができる。また、非対象成分は第1保持部に保持されているため、対象成分を秤量部に取り出す際において、非対象成分の対象成分への混入が抑制され、遠心分離管内に分離された対象成分を有効に秤量部に取り出すことができる。よって、対象成分の分離、秤量を効率よく行うことができる。さらに、上述のように、第1回転軸→第2回転軸、及び第2回転軸→第1回転軸の切換により試料を分離、秤量、定量することができるので、これらの工程が簡便である。
このとき、秤量部は所望の容積を有しており、遠心分離管から導入された対象物質を正確に秤量することができる。前述のように分離、秤量をチップの回転のみにより行うため、分離、秤量のために検査チップをポンプ等の装置に接続する必要がなく、検査チップが載置される装置全体の構成を単純化することができる。また、試料が導入されてから定量されるまで、試料が検査チップの外に取り出されることがないため、対象成分の汚染を低減し、対象成分を正確に定量することができる。さらに、分離、秤量、混合及び定量を1チップ内において行うことができるので、チップの小型化を図ることができる。
ここで、前記試薬溜と前記混合部との接続部分は、前記混合部の底部よりも前記第2回転軸側に位置しており、前記混合部の底部の容積は、前記試薬溜の容積よりも大きく形成されていると好ましい。第1回転軸を中心とする回転により試薬溜から混合部に導入されている試薬が、第2回転軸を中心とする回転により混合部から試薬溜に逆流しない。
本願第23発明は、第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を定量する検査チップであって、前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する複数の定量部とを含む。
前記複数の定量部のそれぞれは、秤量部と、試薬が貯蔵される少なくとも1つの試薬溜と、前記試薬溜及び前記秤量部に接続されており、前記第1回転軸を中心とした再度の回転により前記秤量部から導入される前記対象成分と、前記第1回転軸及び/または前記第2回転軸を中心とした回転により前記試薬溜から導入される試薬とを混合する混合部と、前記混合部に接続され、前記試薬及び前記対象成分が混合された混合物質を通過させる光検出路と、前記光検出路に接続され、前記光検出路に光を導入するための光導入口と、前記光検出路に接続され、前記光検出路内を通過後の光を取り出すための光導出口とを有し、前記複数の定量部のうち初段の定量部の秤量部は、前記遠心分離管の一方の端部に接続されるとともに、前記初段以降の定量部の秤量部は、前段の定量部の秤量部から次段の定量部の秤量部に対象物質が導入されるように前段の定量部の秤量部に接続され、かつ後段の定量部の秤量部の容積は前記前段の定量部の秤量部の容積よりも小さい、検査チップを提供する。
試料中の対象成分の分離、秤量、定量を2つの第1回転軸及び第2回転軸を利用して一括に行うことができる。非対象成分は第1保持部に保持されているため、対象成分を複数段の秤量部に取り出す際において、非対象成分の対象成分への混入が抑制され、遠心分離管内に分離された対象成分を有効に秤量部に取り出すことができる。また、上述のように、第1回転軸→第2回転軸、及び第2回転軸→第1回転軸の切換により試料を分離、秤量することができるので、分離、秤量工程が簡便である。さらに、定量部は複数段から構成されており、前段の定量部の秤量部に導入され秤量された対象成分の残りが、次段の定量部の秤量部に導入され秤量される。よって、複数段の定量部のそれぞれにおいて、所望の量の対象成分を秤量、定量することができる。このとき、前段の定量部の秤量部が次段の定量部の秤量部の容積より大きく形成されているため、前段の定量部の秤量部に導入された対象成分が次段の定量部の秤量部から遠心分離管側または前段の定量部の秤量部側に溢れ出るのを低減することができる。
本願第24発明は、本願第23発明において、前記定量部の各秤量部と各混合部とを接続する取出管をさらに含み、各取出管のそれぞれの延長線は、前記第1回転軸において交差する検査チップを提供する。
第1回転軸を中心とする回転の遠心力の方向と、それぞれの取出管の延長方向とが概ね一致するため、秤量部それぞれで秤量された対象成分を、第1回転軸を中心とする回転によって取出管から効率良く取り出すことができる。
本願第25発明は、本願第23発明において、前記初段の定量部の秤量部は、前記遠心分離管と前記定量部の秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、前記次段以降の定量部それぞれの秤量部は、前記前段の定量部の秤量部と前記次段の定量部の秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、前記初段の定量部の秤量部の秤量部接続管の延長線及び前記次段以降の定量部の秤量部それぞれの秤量部接続管の延長線は、前記第2回転軸において交差する検査チップを提供する。
第2回転軸を中心とする回転の遠心力の方向と、ぞれぞれの秤量部接続管の延長方向とが概ね一致するため、第2回転軸を中心とする回転によって各秤量部に効率よく対象成分を導入することができる。
本願第26発明は、本願第22または23発明において、前記遠心分離管に接続され、前記試料を採取するための採取針をさらに含む、検査チップを提供する。
検査チップに採取針が接続されているため、試料の採取・分離・秤量・定量を一括に行うことができる。よって、試料の汚染を低減し、正確に定量を行うことができる。
本願第27発明は、対象成分を含む試料が導入されるチップの使用方法であって、前記チップを第1回転軸を中心に回転させて前記試料から対象成分を遠心分離し、前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)を保持する分離ステップと、前記チップを第2回転軸を中心に回転させて前記非対象成分をそのまま保持し、前記対象成分を秤量する秤量ステップとを含むチップの使用方法を提供する。
分離ステップにおいて、第1回転軸を中心とする回転により試料から対象成分を遠心分離する。このとき、対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が保持される。次の秤量ステップにおいて、第2回転軸を中心とする回転により対象成分を秤量する。ここで、分離ステップで保持された非対象成分はそのまま保持される。上記の使用方法を用いることにより、試料中の対象成分の分離、秤量を2つの第1回転軸及び第2回転軸を利用して一括に行うことができる。非対象成分は保持されているため、対象成分を秤量する際において、非対象成分の対象成分への混入が抑制され、対象成分を有効に秤量することができる。また、上述のように、第1回転軸→第2回転軸の切換により試料を分離、秤量することができるので、分離、秤量工程が簡便である。さらに、分離、秤量をチップの回転のみにより行うため、分離、秤量のためにチップをポンプ等の装置に接続する必要がなく、チップが載置される装置全体の構成を単純化することができる。
本願第28発明は、本願第27発明において、前記チップは、試薬を保持する試薬溜と、前記試薬溜に連結する混合部とを有し、前記チップを前記第1回転軸及び/または前記第2回転軸を中心に回転させて前記試薬溜から前記混合部に試薬を導入する試薬導入ステップと、前記チップを前記第1回転軸を中心に回転させて、前記秤量ステップにおいて秤量された対象成分を前記混合部に導入し、前記試薬と混合する混合ステップとをさらに含む、チップの使用方法を提供する。
分離ステップ及び/または秤量ステップと同一の回転軸を中心とする回転により試薬を混合部に導入する。また、分離、秤量された対象成分を、第1回転軸を中心とする回転により混合部に導入し、試薬と混合する。上記の使用方法を用いることにより、試料中の対象成分の分離、秤量及び試薬との混合を2つの第1回転軸及び第2回転軸を利用して一括に行うことができる。また、第1回転軸→第2回転軸、及び第2回転軸→第2回転軸の切換により試料を分離、秤量、試薬との混合を行うことができるので、これらの工程が簡便である。
このとき、対象成分は正確に秤量されているため、試薬と対象成分とが所望の混合比の混合物質を得ることができる。前述のように分離、秤量、混合をチップの回転のみにより行うため、チップが載置される装置全体の構成をさらに単純化することができる。また、試料が導入され試薬と混合されるまでのステップにおいて、試料や対象成分がチップの外に取り出されることがないため、試料や対象成分の汚染を低減することができる。また、分離、秤量を1チップ内において行うことができるので、チップの小型化を図ることができる。
ここで、前記試薬導入ステップは、分離ステップ、秤量ステップまたは混合ステップと同時であると好ましい。混合部への試薬の導入が、分離ステップ、秤量ステップまたは混合ステップにおけるチップの回転時に行われる。よって、混合物質を迅速に得ることができる。
また、前記対象成分と前記試薬との混合物質に光を照射する光照射ステップと、前記混合物質内を通過後の光を取りだし、前記対象成分の定量を行う定量ステップとをさらに含むと好ましい。試薬と対象成分とが混合された混合物質に光を照射し、通過後の光を取り出すことにより対象成分の定量を行う。よって、上記の使用方法を用いることにより、試料中の対象成分の分離、秤量、試薬との混合及び定量を2つの第1回転軸及び第2回転軸を利用して一括に行うことができる。さらに、分離、秤量、混合及び定量を1チップ内において行うことができるので、チップの小型化を図ることができる。また、対象成分は正確に秤量されているため、試薬と対象成分とが所望の混合比の混合物質により対象成分を正確に定量することができる。さらに、対象成分がチップの外に取り出されることがないため、対象成分の汚染を低減し、正確に定量することができる。
【図面の簡単な説明】
第1A図は、本発明に係る検査チップの斜視図である。
第1B図は、本発明に係る別の検査チップの斜視図である。
第2図は、図1Aの拡大平面図である。
第3図は、検査チップ1の使用方法の一例(1)である。
第4図は、検査チップ1の使用方法の一例(2)である。
第5図は、検査チップ1の使用方法の一例(3)である。
第6図は、検査チップ1の使用方法の一例(4)である。
第7図は、本発明に係る別の検査チップの平面図である。
第8A図は、本発明の第1実施形態例に係る検査チップの斜視図である。
第8B図は、本発明の第1実施形態例に係る別の検査チップの斜視図である。
第9A図は、検査チップが載置される回転装置と検査チップとの関係図である。
第9B図は、図9Aの状態から検査チップを回転した時の回転装置と検査チップとの関係図である。
第10図は、検出装置の概略図である。
第11図は、図8Aの検査チップの各部と2つの回転軸との関係図である。
第12図は、第1保持部と2つの回転軸との関係図である。
第13A図は、未使用状態における取込口の断面図である。
第13B図は、使用状態における取込口の断面図である。
第14A図は、第1秤量部内の構造物の概略図(1)である。
第14B図は、第1秤量部内の構造物の概略図(2)である。
第14C図は、第1秤量部内の構造物の概略図(3)である。
第14D図は、第1秤量部内の構造物の概略図(4)である。
第14E図は、第1秤量部内の構造物の概略図(5)である。
第15A図は、カプセル内に封入された試薬が試薬溜におかれている様子である。
第15B図は、試薬溜から試薬が流れ出す様子を示す模式図(1)である。
第15C図は、試薬溜から試薬が流れ出す様子を示す模式図(2)である。
第16A図は、試薬溜の断面図の一例(1)である。
第16B図は、試薬溜の断面図の一例(2)である。
第17図は、ミキサ部の拡大図である。
第18A図は、光検出路への光の照射方法の一例(1)である。
第18B図は、検出路への光の照射方法の一例(2である)。
第19図は、検査チップの使用方法の一例(1)である。
第20図は、検査チップの使用方法の一例(2)である。
第21図は、検査チップの使用方法の一例(3)である。
第22図は、検査チップの使用方法の一例(4)である。
第23図は、検査チップの使用方法の一例(5)である。
第24図は、検査チップの使用方法の一例(6)である。
第25A図は、検査チップが載置される回転装置と検査チップとの関係図である。
第25B図は、図25Aの状態から検査チップを回転した時の回転装置と検査チップとの関係図である。
第25C図は、図25Bの状態から検査チップを回転した時の回転装置と検査チップとの関係図である。
第26図は、アルミバルブを有する検査チップの斜視図である。
第27図は、本発明の第2実施形態例に係る検査チップの斜視図である。
第28図は、図27の要部を説明する説明図である。
第29図は、第2実施形態例に係る別の検査チップの斜視図である。
第30図は、図29の要部を説明する説明図である。
第31図は、本発明の第3実施形態例に係る検査チップの斜視図である。
第32図は、図31の平面図である。
第33図は、図31の検査チップが載置される検出装置である。
第34図は、本発明の第3実施形態例に係る別の検査チップの平面図である。
第35図は、光検出路への光の照射方法の一例である。
第36図は、その他の実施形態の検査チップである。
第37図は、複数の保持部が設けられた検査チップ100の斜視図である。
第38図は、バイパス管366及び第3保持部364が設けられた検査チップ100の斜視図である。
第39図は、複数のバイパス管及び第3保持部が設けられた検査チップ100の斜視図である。
第40図は、深さ方向に傾斜を有する第1保持部の拡大斜視図である。
第41図は、断面積が変化する第1保持部の拡大斜視図である。
第42図は、実験例1の検査チップである。
第43図は、実験例1の結果である。
第44A図は、比較例1の結果(1)である。
第44B図は、比較例1の結果(2)である。
第44C図は、比較例1の結果(3)である。
第45A図は、実験例2の検査チップである。
第45B図は、第1秤量部の拡大図である。
第46A図は、実験例2の結果(1)である。
第46B図は、実験例2の結果(2)である。
第46C図は、実験例2の結果(3)である。
【発明を実施するための最良の形態】
[基本構成]
図1A、図1Bは本発明に係る検査チップの斜視図、図2は図1Aの拡大平面図である。
(1)検査チップの構成
検査チップ1は、板状基板である第1基板3と第2基板5とを有する。第1基板3には、取込口7a及び取出口15aが形成されている。また、第2基板5には、取込口7aに対応する取込口7b、遠心分離管9、第1秤量部11、廃液溜13、取出管17、取出口15aに対応する取出口15b及び第1保持部19が形成されている。この検査チップ1は、後述する2つの第1回転軸21及び第2回転軸22を有する。
検査チップ1の取込口(7a、7b)7には、検査対象である試料40が検査チップ1に取り込まれる。遠心分離管9は取込口7に接続されており、取込口7から遠心分離管9に試料40が導入される。遠心分離管9は概ねU字形をしており、一方の開口した端部は秤量部11に接続されており、他方の開口した端部は取込口7に接続されている。また、U字形の底部には第1保持部19が接続されており、遠心分離管9のU字の開口が概ね第1回転軸21側に向くように載置される。そして、第1回転軸21を中心に検査チップ1を回転した場合、遠心分離管9において、試料40から対象成分41が遠心分離される。この第1回転軸21による回転と同時に、試料40中の対象成分41以外の非対象成分43が遠心分離管9の底部の第1保持部19に導入される。
また、第1秤量部11には、第2回転軸22を中心とする回転により対象成分41が遠心分離管9から導入される。具体的には、第2回転軸22を中心とする回転による遠心力により第1秤量部11の遠心分離管9との接続部分である秤量部接続管11’から第1秤量部11の底部11’’に対象成分41が導入される。ここで、第1回転軸21を中心とする回転により第1保持部19に導入された非対象成分41は、第2回転軸22を中心とする回転時は、第1保持部19にそのまま保持される。つまり、第2回転軸22を中心とする回転によっても第1保持部19に導入された非対象成分43は、第1保持部19から遠心分離管9に導入され難いため、対象成分41のみを第1秤量部11に導入することができる。さらに、第1秤量部11には廃液溜13が接続されており、第1秤量部11の所望の容積を超える対象成分41が廃液溜13に導入される。そのため、所望の対象成分41を秤量することができる。さらに、第1回転軸21を中心とした回転により、第1秤量部11に接続された取出管17を介して、第1秤量部11から秤量された対象成分41が取出口15に導入される。
ここで、遠心分離管9はU字形に限定されず、例えば図1Bに示すように例えばコップ状を有するように形成されていれば良い。このとき、第1保持部19と遠心分離管9とは一体に形成されており、第1保持部19は、第2回転軸22を中心とする回転により非対象成分43が、第1秤量部11に導入されないように第2回転軸方向に開口を有するように形成されている。そして、遠心分離管9及び遠心分離管9と一体の第1保持部19に導入された試料40は、第1回転軸21を中心とする回転により試料40中の非対象成分43が第1保持部19に導入される。そして、遠心分離管9の上澄みの対象成分41を、第2回転軸22を中心とする回転により第1秤量部11に導入し、上述と同様に秤量を行う。
(2)検査チップの使用方法
次に、図3〜図6を用いて、対象成分41を分離・秤量するときの検査チップ1の使用方法の一例を説明する。
予め対象成分41を含む試料40を検査チップ1内の取込口7から遠心分離管9(図3の実線で示されたU字管)に導入し、検査チップ1を回転装置(図示せず)に固定する。そして、次のように対象成分41の分離・秤量を行う。
ステップ1:所定の第1回転軸21を中心にして検査チップ1を回転し、遠心分離管9を図3中矢印のように回転させる。この回転により遠心分離管9に導入された試料40から対象成分41を遠心分離する。このとき、第1回転軸21を中心とする回転によりU字形の遠心分離管9には、遠心分離管9の開口から底部方向に遠心力が働く。よって、試料40中の対象成分41以外の非対象成分43が遠心分離管9の底部の第1保持部19(図4の実線で示された部分)に移動し保持される。よって、対象成分41が試料40から分離される(図4参照)。
ステップ2:次に、所定の第2回転軸22を中心にして図5中矢印のように検査チップ1を回転させる。そして、遠心分離された対象成分41を、遠心分離管9から第1秤量部11(図5の実線で示された部分)に導入し秤量する。この第2回転軸22を中心とする回転時において、第1保持部19に導入された非対象成分43は、そのまま第1保持部19に保持されるため、対象成分41のみが第1秤量部11に導入される。このとき、第1秤量部11の所望の容積を超える対象成分41は、第1秤量部11に接続された廃液溜13に導入される(図5参照)。
ステップ3:さらに、第1回転軸21を中心に検査チップ1を回転させ、第1秤量部11に導入された対象成分41を取出管17及び取出口15(図6の実線で示された部分)から取り出す(図6参照)。このとき、第1回転軸21を中心とする回転により第1秤量部11には、第1秤量部11から取出管17及び取出口15の方向に遠心力が働く。よって、対象成分41が取出管17及び取出口15に移動する。
(3)検査チップの製造方法
上記の検査チップ1は、インプリント法または射出成型法によって作成することができる。基板材料としては基板を製造する方法に応じて、PET(ポリエチレンテレフタレート)、Si、Si酸化物、石英、ガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PC(ポリカーボネイト)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリシロキサン、アリルエステル樹脂、シクロオレフィンポリマー、シリコーン樹脂などを用いることができる。
(4)効果
上記の検査チップ1を用いることにより、試料40中の対象成分41の分離、秤量を2つの第1回転軸21及び第2回転軸22を利用して一括に行うことができる。また、非対象成分は第1保持部に保持されているため、対象成分を第1秤量部に取り出す際において、非対象成分の対象成分への混入が抑制され、遠心分離管内に分離された対象成分を有効に第1秤量部に取り出すことができる。よって、対象成分の分離、秤量を効率よく行うことができる。さらに、上述のように、第1回転軸→第2回転軸の切換により試料を分離、秤量することができるので、分離、秤量工程が簡便である。
このとき、第1秤量部11は所望の容積を有しており、遠心分離管9から導入された対象成分41を正確に秤量することができる。さらに、分離・秤量のために熱等を加える必要がないため、試料40が熱等により影響を受けない。よって、試料40の汚染や変成を低減し、試料40に含まれる対象成分41を正確に秤量することができる。また、前述のように対象成分41の分離、秤量を検査チップ1の回転のみにより行うため、分離、秤量のために検査チップ1をポンプ等の装置に接続する必要がなく、検査チップ1が載置される装置全体の構成を単純化することができる。また、分離、秤量を1チップ内において行うことができるので、検査チップ1の小型化を図ることができる。
さらに、上記の検査チップ1は、分離・秤量の際に除去の必要なバルブを設けることなく、対象成分41を分離・秤量できる簡単な構成であるため、製造が容易である。また、図1に示すように第1回転軸21及び第2回転軸22を中心とした円の半径方向に沿う2次元方向に広がりを有するように形成されていると好ましい。検査チップ1がこのような板状基板であると、上述した射出成型法またはインプリント法などを用いて、遠心分離管9、第1秤量部11などを検査チップ1内に容易に作製することができる。また、1枚の基板上に遠心分離管9、第1秤量部11などを作製し、もう1枚の基板を貼り合わせることにより検査チップ1を容易に作製することができるため、検査チップ1の薄型化・小型化を図ることができる。
また、図7に示すように検査チップ1に採取針50及びシリンジ51を設けると、試料40の採取、分離及び秤量を一括かつ簡便にすることができる。よって、別の手段により採取した試料40を検査チップ1に導入する手間を省き、また検査チップ1に導入する際の試料40の汚染を低減することができる。さらに、採取針50により直接静脈から採血することも可能であるので、ほぼ純粋な対象成分を正確に秤量することができる。また、この採取針50やシリンジ51は、検査チップ1を装置20に取り付ける時に取り外しても良い。さらに、シリンジ51の代わりにスポイトを設け、スポイトにより試料40を採取するようにしても良い。
[第1実施形態例]
図8A、図8Bは本発明の第1実施形態例に係る検査チップの斜視図である。
(1)検査チップの全体構成
第1実施形態例の検査チップ100は、対象成分を含む試料の取込口105、遠心分離管201、保持部(203a、203b)203、第1秤量部(205a、205b)205、廃液溜(207a、207b)207、取出管209、1次混合部217、試薬が貯蔵される試薬溜(219a、219b)219、ミキサ部220aからなる2次混合部220、光検出路230、光導入口233、光導出口235、取出口240及び調整管(241a、241b)241を有している。この検査チップ1は、図10に示すように、後述する第1回転軸310及び第2回転軸320を中心する回転により対象成分を分離、秤量及び試薬との混合を行う。
取込口105は、検査対象である試料500を取り込む。遠心分離管201は概ねU字形をしており、一方の開口した端部は第1秤量部205及び調整管241に、他方の開口した端部は取込口105に接続されている。また、遠心分離管201のU字形の底部には第1保持部203が接続されている。対象成分510が導入される第1秤量部205は、廃液溜207及び取出管209と接続されている。1次混合部217は取出管209と接続されており、第1秤量部205から対象成分510が導入される。さらに、1次混合部217は、試薬550が蓄積された試薬溜219と接続されており、試薬550が導入される。そのため、1次混合部217では対象成分510及び試薬550が合流、混合される。そして、1次混合部217内の対象成分510及び試薬550が、1次混合部217に接続された2次混合部220に導入されてさらに混合される。混合された混合物質560が、2次混合部220に接続された光検出路230に導入される。
(2)回転装置及び検出装置の全体構成
次に、検査チップ100を回転するための回転装置300及び検査チップ109への光の照射及び光の取り出しを行うための検出装置302の概略を説明する。図9A、図9Bは検査チップが載置される回転装置と検査チップとの関係図、図10は検出装置の概略図である。
回転装置300は、検査チップ100を回転装置300に固定し、回転するための回転台301及び回転台301を回転するための2つの第1回転軸310、第2回転軸311を有する。ここで、図9A、図9Bに示す回転装置300では、第1回転軸310及び第2回転軸311は、回転台301の中心位置と一致する。これは、載置される検査チップ100の向きを変えることにより、検査チップ100に対する第1回転軸310及び第2回転軸311が回転台301の回転中心に一致する構成となっているためである。回転装置300は、さらに試薬溜219への試薬の供給、検査チップ100内での試料500や対象成分510の送液を行うポンプ部333(図示しない)等を有していても良い。
検査チップ100は、第1回転軸310または第2回転軸311が回転台301の回転中心と一致するように固定される。つまり、検査チップ100が第1回転軸310を中心にして回転される場合は、検査チップ100は、図9Aに示すように回転台301の回転中心と第1回転軸310とが一致するように固定される。一方、検査チップ100が第2回転軸311を中心にして回転される場合は、検査チップ100は、図9Aの状態から回転され、図9Bに示すように回転台301の回転中心と第2回転軸311とが一致するように固定される。ここでは、第1回転軸310または第2回転軸311が、回転台301の回転中心に一致するように検査チップ100を回転させたが、2つの回転中心を有する回転台301に検査チップ100を固定するようにしても良い。この場合、回転台301の回転中心が変更されるため、検査チップ100を回転させる必要はない。
さらに、回転装置300において試薬550と混合された対象成分510について定量を行うため、検出装置302に検査チップ100を固定する。この検出装置302は、温度制御を行うペルチェ素子熱電対などからなる支持部331、光ファイバ332及び制御部320(図示しない)を有している。この制御部320は、例えば遠心分離器制御部321、ポンプ制御部323、温度制御部325、光制御部327、電流電位増幅部329等を有しており、装置302の各部の制御を行う。
(3)検査チップの各部の構成
次に、検査チップの各部の構成を詳細に説明する。図11は図8Aの検査チップの各部と2つの回転軸との関係図、図12は第1保持部203と2つの回転軸との関係図、図13A及び図13Bは取込口の断面図の一例、図14A〜図14Eは第1秤量部内の構造物の概略図、図15A〜図15C及び図16A、図16Bは試薬溜の断面図の一例、図17はミキサ部の拡大図、図18A、図18Bは光検出路への光の照射方法の一例である。
(3−1)取込口
取込口105には、例えば図13A及び図13Bに示すように試料を採取する採取針250がバネ255に接続されて内蔵されている。この採取針250により検査対象である試料500が検査チップ100に取り込まれる。採取針250による取込口105への試料500の採取は次のように行われる。ここで、試料500の採取時以外は、図13Aに示すように、採取針250が取込口105内部に内蔵されるようにバネ255が収縮している。試料500の採取時には、図13Bに示すようにバネ255が伸張し、採取針250が取込口105から突出し、採取針250から試料500を採取する。このように採取針250により試料500を採取すると、採取した試料500を検査チップ100に導入する手間を省くことができる。また、検査チップ100に導入する際の試料500の汚染を低減することができる。また、取込口105は、注射針と接続されていても良い。さらに、後述する調整管241の溜部241bにポンプ機能をもたせ、取込口105を介して遠心分離管201及び調整管241に試料500を導入するようにしても良い。
(3−2)調整管
調整管241は、第1秤量部205と共に、概ねU字形の遠心分離管201の一方の開口した端部に接続されている。また、遠心分離管201の他方の開口した端部には取込口105が接続されている。ここで、調整管241は、調整管241内の第1地点と第2地点を有しており、第1地点と第1回転軸310との距離が、第2地点と第1回転軸310との距離よりも短くなるように形成されている。このとき、まず
対象成分510を得るために遠心分離管201及び遠心分離管201に接続された調整管241に試料500が導入され、遠心分離管201及び調整管241には試料500が満たされている。この状態で第1回転軸310を中心として回転すると、調整管241内の第2地点は、第1回転軸310との距離が遠いため、調整管241の第1地点よりも大きな遠心力が働く。よって、第1地点を境にして試料500が分離される。つまり、第1地点より遠心分離管201側の試料は、遠心分離管201に導入されて遠心分離される。一方、第1地点より調整管241側の試料は、調整管241に導入される。よって、遠心分離管201内を満たす一定量の試料500から概ね一定量の対象成分510を得ることができる。
より好ましくは、次のように設計される。調整管241は、調整管241と遠心分離管201とを接続する調整管接続部241a(図8Aの太線で示す241a)と溜部241bとを含んでいる。調整管接続部241aの端部241a’(図8A参照)、つまり遠心分離管201と調整管接続部241aとの接続部分は、溜部241bより第1回転軸310側に位置するように設計される(図8A参照)。
ここで、遠心分離を行う前に、遠心分離管201及び調整管接続部241aを満たすように調整管241に試料500を導入する。この状態で第1回転軸310を中心として回転すると、調整管接続部241aの端部241a’を境にして試料が分離される。つまり、後述する図20に示すように、調整管接続部241aの端部241a’より遠心分離管201側の試料500は、遠心分離管201に導入されて遠心分離される。一方、端部241a’より調整管241側の試料は、溜部241bに導入されて遠心分離される。よって、調整管241により遠心分離管201内を満たすように試料500を導入できるため、導入される試料500の量を試料500の導入時毎に一定量にすることができる。そのため遠心分離管201内において、一定量の試料500が遠心分離される。が遠心分離管により遠心分離される。以上より、一定量の試料500から概ね一定量の対象成分510を得ることができる。
調整管接続部241aは、第1回転軸310と反対側に開口を有するようなU字形に形成されていると、調整管241内の試料500と遠心分離管201内の試料500との分離が容易であり好ましい。
(3−3)遠心分離管
遠心分離管201は取込口105に接続されており、取込口105から試料500が導入される。遠心分離管201は概ねU字形をしており、一方の開口した第1端部2011は所定の容積を有する第1秤量部205に、他方の開口した第2端部2012は取込口105に接続されている。
このように遠心分離管201がU字形に形成されていると、第1回転軸310を中心とする回転時において、非対象成分520がU字管の底部の第1保持部203に保持され、対象成分510がU字管内部に位置することで、対象成分510と非対象成分520とが分離される。次に、第2回転軸311を中心とする回転時において、非対象成分520はそのまま第1保持部203に保持されるため、U字管の底部に対して第1秤量部205側の第1端部2011ともう一方の第2端部2012とに至るU字管内部に位置する対象成分は、有効に第1秤量部205に導入される。よって、試料中の対象成分510を効率よく分離可能である。
ここで、図11に示すように、U字の遠心分離管201の一方の管軸を通る線253と他方の管軸を通る線251を次のように設定する。遠心分離管201の管軸が一方の線253と一致する方が第1秤量部205と接続され、管軸が他方の線251と一致する方が取込口105と接続される。
線251は、U字の遠心分離管201の底部から開口に向かうほど第2回転軸311との距離が狭まる。例えば、図11中の線251と第2回転軸311との距離を表すL1とL2とでは、より遠心分離管201の底部から遠い、線251上の点と第2回転軸311との距離L1の方が、L2よりも短く設定されている。逆に、線253は、U字の遠心分離管201の底部から開口に向かうほど第2回転軸311との距離が広がる。つまり、遠心分離管201は、その底部から第2端部2012へ向かうほど第2回転軸311との距離が狭まるように形成されている。よって、第2回転軸311を中心とする回転により、遠心分離管201の第2端部2012から底部に向かう方向に対象成分510が送液される。一方、遠心分離管201は、その底部から第1秤量部205に接続された一方の第1端部2011へ向かうほど第2回転軸311との距離が広がるように形成されている。よって、第2回転軸311を中心とする回転により、遠心分離管201の底部から第1端部2011に向かう方向に対象成分510が送液され、第1秤量部205に対象成分510が送液される。上記のように遠心分離管201を形成することで、第1回転軸310を中心とする回転により対象成分510を効率よく遠心分離しつつ、第2回転軸311を中心とする回転により、分離された対象成分510を効率よく第1秤量部205に移動させることができる。
さらに、線251及び線253により構成される遠心分離管201の開口は、第1回転軸310側に向かうほど広がりを有していると好ましい。遠心分離管201の開口が第1回転軸310側にあるため、その底部が第1回転軸310を中心とする円の半径方向外周側に位置している。つまり、遠心分離管201の開口部分と第1回転軸310との距離が、遠心分離管201の底部と第1回転軸310との距離よりも短い。このとき、第1回転軸310を中心として回転させた場合の遠心力と、U字形の遠心分離管201の開口から底部への方向とが概ね一致する。よって、第1回転軸310を中心とする回転により遠心分離管201の底部に最も遠心力が働く。そのため、試料500中から対象成分510以外の非対象成分520を遠心分離管201の底部に効率良く移動し、試料500から対象成分510を効率よく分離することができる。
また、図11に示すように、線251と線253とのなす角θが90度以内となるように設計すると、遠心分離管201のU字の開きが90度以内となるため、秤量チップ100上での遠心分離管201の占有面積を小さくすることができ、秤量チップを小型化することができ好ましい。
また、図11に示すように、遠心分離管201及び第1秤量部205の接続部分である第1端部2011と第1回転軸310との距離が、遠心分離管201の第2端部2012と第1回転軸310との距離よりも小さいと好ましい。このようにすると、第2端部2012よりも第1端部2011の方が第1回転軸310よりも近いため、第1回転軸310を中心として回転した場合、試料500が第1秤量部205へ導入されるのを防止することができる。同様の理由により、取込口105との関係においては、第1端部2011と第1回転軸310との距離が、取込口105の中心部と第1回転軸310との距離よりも小さいと好ましい。ここで、図11中、円弧257は、第1回転軸310から取込口105の中心部までが半径である、第1回転軸310を中心とする円弧である。このとき、第1端部2011は、第1回転軸310に対して円弧257の内側に位置する。つまり、取込口105よりも第1端部2011の方が第1回転軸310に近いため、第1回転軸310を中心として回転した場合、試料500が第1秤量部205へ導入されるのを防止することができる。
ここで、遠心分離管201を構成する左右の管に対する各接線が上記の線251及び253と同様の関係を満たすように設定しても良い。
さらに、遠心分離管201はU字形に限定されず、例えば図8Bに示すように例えばコップ状を有するように形成されていれば良い。このとき、第1保持部203と及び遠心分離管201は一体に形成、さらに具体的には、後述する保持部本体203a、保持部連結管203b及び遠心分離管201とは一体に形成されており、第1保持部203は、第2回転軸311を中心とする回転により非対象成分520が、第1秤量部205に導入されないように第2回転軸311方向に開口を有するように形成されている。そして、遠心分離管201及び遠心分離管201と一体の第1保持部203に導入された試料500は、第1回転軸311を中心とする回転により試料500中の非対象成分520が第1保持部203に導入される。そして、遠心分離管201の上澄みの対象成分510を、第2回転軸311を中心とする回転により第1秤量部11に導入し、上述と同様に秤量を行う。また、調整管241は、図8Bに示すように図中の遠心分離管201の左に設けることもできる。
(3−4)第1保持部
また、遠心分離管201のU字の底部には第1保持部203が設けられているため、遠心分離管201での遠心分離によりU字の底部に移動した非対象成分520が第1保持部203に導入される。ここで、図12は、第1保持部の拡大図であり、第1保持部203は、例えば破線269を境にして保持部本体203aと、保持部本体203a及び遠心分離管201を接続する保持部連結管203bとから構成される。第1保持部203の各部は、以下のように設計される。
管状の保持部連結管203bは、保持部連結管203bの管軸259の延長線が第1回転軸310と交差するように設計する。このように設計すると、第1回転軸310を中心とする回転による遠心力の方向(図12中、管軸259に沿う太矢印)と、保持部連結管203bの管軸の方向とが概ね一致する。よって、非対象成分520が遠心分離管201から第1保持部203へと効率良く導入される。そのため、対象成分510と非対象成分520の分離を効率よく行うことができる。
また、第1保持部203と遠心分離管201との接続部分である保持部連結管203bの断面積は、遠心分離管201の断面積よりも大きくなるように形成されていると好ましい。ここで、断面積は、検査チップ100の平面方向の断面積のみならずあらゆる方向での断面積を含む。保持部連結管203bの断面積が大きく形成されていると、第1保持部203に試料500や非対象成分520が導入されてきた場合に、第1保持部203内に存在する空気を第1保持部203から遠心分離管201へ効率よく逃すことができる。
さらに、保持部本体203aは、保持部連結管203bよりも第1回転軸310を中心とする円及び第2回転軸311を中心とする円の半径方向の外周側に形成されていると好ましい。つまり、次のように設計すると好ましい。図12中、円弧265は、保持部本体203aの底部263から第1回転軸310までが半径である、第1回転軸310を中心とする円弧である。また、円弧267は、底部263から第2回転軸311までが半径である、第2回転軸311を中心とする円弧である。このとき、保持部本体203aは、保持部連結管203bより第1回転軸310及び第2回転軸311を中心とする円の半径方向の外周側に位置している。言い換えれば、保持部本体203aと第1回転軸310との距離は、保持部連結管203bと第1回転軸310との距離よりも長く、かつ保持部本体203aと第2回転軸311との距離は、保持部連結管203bと第2回転軸311との距離よりも長い。このように設計することで、第1回転軸310を中心とする回転により、第1回転軸310からの距離が保持部連結管203bより遠い保持部本体203aの方向に遠心力が働く(図12中、管軸259に沿う太矢印を参照)。よって、非対象成分520が保持部本体に効率よく導入される。また、第2回転軸311を中心とする回転により、第2回転軸311からの距離が保持部連結管203bより遠い保持部本体203aの方向に遠心力が働く(図12中、第2回転軸311から底部263方向に沿う太矢印を参照)。よって、導入されている非対象成分520が保持部本体203aにそのまま保持され、非対象成分520が保持部連結管203bから遠心分離管201に逆流し難い。そのため、対象成分510及び非対象成分520の分離が確実に行われ、対象成分510のみを効率よく第1秤量部205へ導入することができる。
ここで、検査チップ100に導入する試料500が血液であり、対象成分510が血漿である場合、一定量の血漿を得るために遠心分離管201及び第1保持部203を次のように設計すると好ましい。血液中の血球の割合は約30〜40%であるため、遠心分離管201に対する第1保持部203の容積の比は、遠心分離管201及び第1保持部203を合計した容積を100%とすると、遠心分離管201:第1保持部203=50%:50%となるように設計する。容積比が遠心分離管201:第1保持部203=60%:40%であると、概ね血球成分のみが第1保持部203内に導入されるため、血漿を無駄なく遠心分離することができ好ましい。例えば、第1保持部203の容積が50%以上であると、血液中の多くの血漿が第1保持部203に導入されてしまうため、血漿成分が無駄になってしまう。一方、第1保持部203の容積が40%以下であると、血球成分が第1保持部203から溢れ出てしまうため、血漿成分の分離がし難い。
(3−5)第1秤量部、廃液溜
第1秤量部205は、遠心分離管201、廃液溜207及び取出管209と接続されている。遠心分離管201のU字の開口した端部の一方に接続された第1秤量部205は、第1秤量部205及び遠心分離管201の接続部分である秤量部接続管205bと、秤量部接続管205bに接続される秤量部本体205aとから構成されている。また、廃液溜207は、廃液溜207及び第1秤量部205を接続する廃液溜接続部207bと、廃液溜接続部207bに接続される廃液溜本体207aとから構成されている。ここで、第1秤量部205は、秤量部接続管205bが第2回転軸311側に、秤量部本体205aが秤量部接続管205bより第2回転軸311を中心とする円の半径方向外周側に概ね位置するように配置する。さらに、第1秤量部205の底部205a’(図8A参照)よりも第2回転軸311側の秤量部本体205aから分岐するように廃液溜207の廃液溜接続部207bが接続される。また、廃液溜接続部207bよりも第2回転軸311を中心とする円の半径方向外周側に位置するように廃液溜本体207aを接続する。この廃液溜本体207aは、さらに、廃液溜接続部207bよりも第1回転軸310を中心とする円の半径方向外周側に位置するように配置する。
そして、第2回転軸311を中心として検査チップ100を回転することにより、遠心分離管201で遠心分離された対象成分510は、第1秤量部205に導入される。このとき、第1秤量部205には廃液溜207が接続されているため、第1秤量部205の所望の容積を超える対象成分510が廃液溜207に導入される。そのため、第1秤量部205に対象成分510を導入することにより、所望の対象成分510を正確に秤量することができる。また、第2回転軸311を中心とする回転により廃液溜本体207aに導入された対象成分510は、廃液溜接続部207bよりも第1回転軸310を中心とする円の半径方向外周側に位置しているため、第1回転軸310を中心とする回転によっても第1秤量部205に逆流しない。よって、第1回転軸310を中心とする回転により第1秤量部205から正確に秤量された対象成分510を1次混合部217に導入することができる。
さらに、図11に示すように、秤量部接続管205bの管軸を通る延長線271が第2回転軸311と交差すると、第2回転軸311を中心とする回転と、秤量部接続管205bの管軸の方向とが概ね一致するため、第2回転軸311を中心とする回転により対象成分510を遠心分離管201から第1秤量部205へ効率良く導入することができ好ましい。
また、対象成分510が接触する流路壁や各部の基板と、対象成分510との接触角が90度より小さい場合は、図14Aに示すように、第1秤量部205の秤量部本体205aに構造物206を設けると好ましい。このように構造物206を設けることで、遠心分離管201から導入された対象成分510の遠心分離管201への逆流を防ぐことができる。これは、構造物206が設けられた秤量部本体205aに導入された対象成分510と、構造物206表面との間に表面張力が働くためである。第1秤量部205内の構造物206としては、図14Aに示すような円柱状のポール206に限定されず、図14B〜図14Eに示すような構造物も考えられる。このとき、隣接する構造物206間の距離が検査チップ100内の流路幅よりも小さくなるように設計する。つまり、第1秤量部205に接続する秤量部接続管205b、廃液溜接続部207b及び取出管209の流路幅よりも、隣接する構造物206間の距離が小さくなるように設計する。
また、例えば図8A及び図8Bに示すように、廃液溜207の廃液溜本体207aは、第1回転軸310側に開口を有するコの字状に形成されていると好ましい。このとき、対象成分510を遠心分離管201から第1秤量部205に導入する際の第2回転軸311を中心とする回転により、第1秤量部205から廃液溜本体207aに第1秤量部205からあふれ出た過剰の対象成分510が導入される。次に、第1回転軸310を中心とする回転により第1秤量部205から対象成分510を取り出す場合、廃液溜本体207aに導入された対象成分510は、コの字状の廃液溜本体207aにそのまま保持される。これは、廃液溜本体207aが第1回転軸310に対して概ねコップ状に形成されているため、廃液溜本体207aから第1秤量部205への対象成分510の逆流が防止されるからである。よって、正確に秤量された対象成分510を第1秤量部205から取出管209を介して取り出すことができる。
(3−6)取出管、試薬溜、1次混合部
取出管209は、第1秤量部205に接続されている。1次混合部217は、取出管209、試薬溜219a、219bと接続されている。また、第1秤量部205、取出管209及び1次混合部217は、第1回転軸310を中心とする円の半径方向外周側に順に位置している。ここで、第1秤量部205に接続されている取出管209は、第1回転軸310を中心とする円の半径方向に概ね沿うように配置される(図11参照)。よって、第1秤量部205に導入された対象成分510は、第1回転軸310を中心とする回転により取出管209を介して1次混合部217に導入される。
また、試薬溜(219a、219b)219は、1次混合部217に接続されており、試薬550が貯蔵されている。試薬溜219内の試薬550は、第1回転軸310を中心とする回転により1次混合部217に導入される。試薬溜219から1次混合部217への試薬550の導入は、遠心分離時の回転または第1秤量部205から1次混合部217への対象成分510の導入時の回転と同時に行われると、工程を単純化及び迅速化でき好ましい。ここで、試薬溜219は、1つである必要はなく検査項目に応じて複数設けることができる。
また、試薬溜219から1次混合部217への試薬の導入が第1回転軸310を中心とする回転により主に行われる場合は、試薬溜219を次のように設計すると好ましい。図8A,図8B、図11等に示すように、試薬溜219a及び219bの各々と1次混合部217との接続部分である試薬溜接続管219a’及び219b’は、第1回転軸310を中心とする円の半径方向に概ね沿うように配置される。また、試薬550が導入される部分は、試薬溜接続管219a’及び219b’よりも第1回転軸310側に形成されている。このように設計することで、第1回転軸310を中心とする回転により試薬溜219から1次混合部217方向への遠心力が働くため、試薬溜接続管219a’及び219b’を介して試薬550を効率良く1次混合部217へ導入することができる。さらに、試薬溜接続管219a’及び219bが、1次混合部217の第2回転軸311に対する底部217’(図11中、1次混合部217の斜線部分)よりも第2回転軸311側に位置しているとする。このとき、1次混合部217の底部217’の容積が、試薬溜219a及び219bの容積の合計よりも大きく形成されていると好ましい。このように設計すると、第1回転軸310を中心とする回転により試薬溜219から1次混合部217に導入されている試薬が、第2回転軸311を中心とする回転により1次混合部217から試薬溜219に逆流しない。このとき、1次混合部217の底部217’の容積が、試薬溜219a及び219bの容積の合計の1.5倍以上あると、逆流を有効に防止でき好ましい。
また、試薬溜219において、試薬550を次のようにカプセル内に入れておくこともできる。図15Aは、カプセル内に封入された試薬が試薬溜におかれている様子を示す平面図、図15B、図15Cは試薬溜から試薬が流れ出す様子を示す摸式図である。
検査チップ100の試薬溜219部分には、試薬550が封入されたカプセル600を載置するための空間605、試薬550を1次混合部217へ導入するための試薬導入部607、蓋部610及び蓋部610に圧力を加えるための吸引口630が設けられている。また、空間605を形成する検査チップ100内の試薬550に対向する位置には、突起609が設けられている。また、空間605の上部には、試薬溜219を覆う蓋部610が設けられている。蓋部610は、突起609に対向する位置に押出部615を有している。蓋部610にカプセル600を押す方向の圧力が加わっていない場合は、図15Bに示すように、カプセル600は突起609により突き破られていない。一方、例えば、蓋部610と検査チップ100との間の空気を吸引する力が吸引口630を介して働き、試薬溜219にカプセル600方向の圧力が加わると、押出部615により突起609が押される。そして、図15Cに示すように突起609がカプセル600を突き破り、試薬550をカプセル600から流出させる。流出した試薬550は、1次混合部217に接続される試薬導入部607から1次混合部217に導入される。このような構成であると、試薬550をカプセル600内に保持することができるので、試薬550と外部との接触を避けることができる。よって、空気中の二酸化炭素の溶解によるpH変化、光による酵素や色素の劣化を防止することができる。蓋部610を外から押圧してカプセル600を押し破っても良い。さらに、図16A、図16Bに示すように、突起609が設けられた試薬溜219上を検査チップ100上部から押圧し、カプセル600を押し破っても良い。図16Bに示すように突起609が設けられた部分が検査チップ100表面より突出していると、押圧箇所が明確であり好ましい。カプセル600の材質としては、アルミ・プラスティック複合体が好ましい。
(3−7)2次混合部
2次混合部220は、1次混合部217と接続されており、1次混合部217において対象成分510と試薬550とが混合された混合物資560をさらに混合する。2次混合部220は、複数段に接続されたミキサ部220aを有している。ミキサ部220aは、例えば図17に示すように構成されている。ミキサ部220aは、H型壁225を有しており、H型壁225を取り囲むようにマイクロ流路227が形成されている。このような微細なマイクロ流路227により2次混合部220の集積率を高め、検査チップ100の面積を小さくすることができる。
(3−8)光検出路、光導入口、光導出口及び取出口
2次混合部220において試薬550及び対象成分510が混合された混合物質560が光検出路230に導入される。光導入口233から光検出路230に光が導入され、光導出口235から光検出路230内を通過後の光が取り出される。そして、光の透過量を測定することで、対象成分510の定量を行う。光検出路230は、Al等の光反射率が高い物質によりコーティングされていると好ましい。また、光導入口233及び光導出口235は光導波路であり、これらの材料としては、上部及び下部基板よりも屈折率が高く光を集めやすい材料を用いる。また、紫外光測定を行う場合は、上部及び下部基板よりも紫外光透過率の高い材料を用いる。光導入口233及び光導出口235は、例えば上部及び下部基板に光導入口233及び光導出口235の光導波路以外の各部を形成した後、射出成型により上部及び下部基板を成型することにより作成する。
第1実施形態例では、図8A、図8B及び図10に示すように、基板の側面から光検出路230に光を照射しているが、基板の上下方向から光を照射することも可能である。また、図18Aに示すように、光ファイバやLEDからの光を平行光として、光導波路である光導入口233に導入することもできる。図18Aは、検査チップ100に設けられた光検出路230と光ファイバ332からの入射光との関係図である。光ファイバ332からの光は、レンズ335により平行光となっている。このように平行光により光の進行方向を光検出路230と沿う方向とし、一定の光束を確保することで、光導入口233全体に効率よく光を入射することができる。
さらに、図18Bに示すように、光を受光する受光部337に検査チップ100外部からの光が侵入しないように検出装置302に遮光体339を設けると良い。検出装置302に設けられた遮光体339は、例えば検査チップ100上面に位置し、光ファイバ332からの光や光ファイバ332の光がレンズ335により平行光となった光が光検出路230にのみに照射するようにする。
(4)検査チップの使用方法
次に、図19〜図25A、図25B、図25Cを用いて、試料500から対象成分510を定量するときの検査チップ100の使用方法の一例を説明する。
ステップ1:まず、図25Aに示すように、装置300上の回転台301の回転中心と第1回転軸310とが一致するように検査チップ100を回転台301に固定する。そして、バネ255付きの採取針250を利用して、血液などの試料500を採取する。次に、以下のようにして試料500の定量を行う。
ステップ2:次に、遠心分離管201と、調整管241の調整管接続部241aとが、満たされるように試料500を導入する(図19参照)。
ステップ3:そして、回転台301を回転させる。このとき、検査チップ100は図25(a)に示すように回転台301の回転中心と第1回転軸310とが一致するように、回転台301上に載置されている。よって、この状態で回転台301を回転させると、検査チップ100は第1回転軸310を中心にして回転する。この第1回転軸310を中心とする回転により、図20に示すように調整管接続部241aと遠心分離管201との境界B−B’、つまり端部241’を境にして遠心分離が行われる。つまり、境界B−B’より遠心分離管201側の試料500は、遠心分離管201に導入されて遠心分離される。一方、境界B−B’より調整管241側の試料は、溜部241bに導入される。ここで、第1回転軸310を中心とする回転により、遠心分離管201の開口から底部方向に遠心力が働く。よって、試料500中の対象成分510以外の非対象成分520が遠心分離管201の底部に移動して第1保持部203に導入され保持される。そして、試料500から対象成分510が遠心分離される(図20参照)。
ステップ4:さらに、第1回転軸310を中心にして検査チップ100を回転することにより、試薬溜219から1次混合部217に試薬550を導入する(図20参照)。
ステップ5:次に、図25Bに示すように検査チップ100を所定の角度回転させ、回転台301の回転中心と第2回転軸311とを一致させる。所定の角度とは、第1回転軸310と第2回転軸311とがなす角である。そして、回転台301を回転し、検査チップ100を第2回転軸311を中心に回転させる。この第2回転軸311を中心とする回転によって、ステップ3により遠心分離された対象成分510を、遠心分離管201から第1秤量部205に導入する(図21参照)。ここで、第1秤量部205に接続された廃液溜207から、第1秤量部205の所望の容積を超える対象成分510が廃液溜207に導入される。また、ステップ3において第1保持部203に導入された非対象成分520は、そのまま第1保持部203に保持される。そのため、対象成分510を第1秤量部205に取り出す際において、非対隊成分520の対象成分510への混入が抑制される。よって、遠心分離管内に分離された対象成分を有効に第1秤量部205に取り出し、第1秤量部205において所望の対象成分510のみを正確に秤量することができる。
ステップ6:次に、図25Cに示すように検査チップ100を所定の角度回転させ、回転台301の回転中心と第1回転軸310とを一致させる。そして、第1回転軸310を中心として検査チップ100を回転させ、第1秤量部205内の対象成分510を1次混合部217に導入する。さらに第1回転軸310を中心とする回転により1次混合部217において、対象成分510と試薬550とを混合して混合物質560を得る(図22参照)。
上記の対象成分510の第1秤量部205から1次混合部217への導入と、1次混合部217での対象成分510と試薬550との混合とを同じ回転時に行うと、検査チップ100の取り扱いが容易であり、また迅速に混合物質560を得ることができ好ましい。
ステップ7:1次混合部217において対象成分510と試薬550とが混合された混合物資560を2次混合部220に導入し、さらに混合する(図23参照)。
ステップ8:混合物質560を光検出路230に導入する。そして、光導入口233から光検出路230に光を導入し、光導出口235から光検出路230内を通過後の光を取り出す。この光の透過量を測定することで、対象成分510の定量を行う(図24参照)。
上記のステップ4の試薬550を導入するステップは、ステップ3の遠心分離管201における対象成分510の分離時、ステップ5における対象成分510の第1秤量部205への導入時及びステップ6における対象成分510の1次混合部217への導入時に同時に行うようにしても良い。試薬550の導入を同時に行うことで、混合物質560を迅速に得ることができる。
(5)効果
試料500が導入された検査チップ100を上記のように取り扱うことで、試料500中の対象成分510の分離、秤量、試薬との混合及び定量を2つの第1回転軸310及び第2回転軸311を利用して一括に行うことができる。また、非対象成分520は第1保持部230に保持されているため、対象成分510を第1秤量部205に取り出す際において、非対象成分520の対象成分510への混入が抑制され、遠心分離管201内に分離された対象成分510を、有効に第1秤量部205に取り出すことができる。よって、対象成分510の分離、秤量を効率よく行うことができる。さらに、上述のように、第1回転軸310→第2回転軸311、及び第2回転軸311→第1回転軸310の切換により試料500を分離、秤量及び定量することができるので、これらの工程を簡便に行うことができる。
このとき、第1秤量部205は所望の容積を有しており、遠心分離管201から導入された対象成分510を正確に秤量することができる。よって、試薬550と対象成分510とが所望の混合比の混合物質560を得ることができる。前述のように分離、秤量を検査チップ100の回転のみにより行うため、分離、秤量のために検査チップ100をポンプ等の装置に接続する必要がなく、検査チップ100が載置される装置全体の構成を単純化することができる。また、試料500が導入されてから定量されるまで、検査チップ100の外に取り出されることがないため、対象成分510の汚染を低減し、対象成分510を正確に定量することができる。さらに、分離、秤量、混合及び定量を1チップ内において行うことができるので、検査チップ100の小型化を図ることができる。
さらに、図26に示すように、アルミバルブ350及び351を取出管209に設けると好ましい。アルミバルブ350及び351は、取出管209よりも流路幅が広くなるように設計する。アルミバルブ350は第1秤量部205に隣接し、アルミバルブ351は1次混合部217に隣接する。そしてアルミバルブ350は、第1秤量部205に導入された対象成分510が第1秤量部205から漏れでるのを防止する。これは、第1秤量部205内の対象成分510が、第1秤量部205より流路幅の大きいアルミバルブ350と接することで、対象成分510の表面積を小さくし、自由エネルギーを小さく保とうとするためである。また、アルミバルブ351は、1次混合部217に導入された対象成分510が、1次混合部217から第1秤量部205に上述と同様の理由により逆流するのを防止する。このアルミバルブは、前記の位置に限定されず、1次混合部217及び2次混合部220間や2次混合部220及び光検出路230間に毛管現象を防止するために設けることもできる。このアルミバルブは、光検出路230内のAlコーティングと同じ工程で作ることができる。
[第2実施形態例]
図27は本発明の第2実施形態例に係る検査チップの斜視図、図28は図27の要部を説明する説明図、図29は第2実施形態例に係る別の検査チップの斜視図、図30は図29の要部を説明する説明図である。第2実施形態例は、試薬秤量部670、試薬廃棄溜675、試薬取出管677及び試薬導入部679を用いて、導入する試薬を秤量することができる点以外の構成は第1実施形態例と同様の構成であり、同一の符号番号は同一の構成要素を表す。
図27の検査チップ400は、対象成分を含む試料の取込口105、遠心分離管201、第1保持部(203a、203b)203、第1秤量部(205a、205b)205、廃液溜(207a、207b)207、取出管209、1次混合部217、試薬が貯蔵される試薬溜219、試薬秤量部670、試薬廃棄溜675、試薬取出管677、ミキサ部220aからなる2次混合部220、光検出路230、光導入口233、光導出口235、取出口240及び調整管(241a、241b)241を有している。
試薬秤量部670は、試薬溜219、試薬廃棄溜675及び試薬取出管677に接続されている。試薬秤量部670は、試薬秤量部670及び試薬溜219の接続部分670bと、接続部分670bに接続される試薬秤量部本体670aとから構成されている。また、試薬秤量部670は、接続部分670bが第2回転軸311側に、試薬秤量部本体670aが接続部分670bより第2回転軸311を中心とする円の半径方向外周側に概ね位置するように配置する。さらに、試薬秤量部670の底部670a’よりも第2回転軸311側の試薬秤量部本体670aから分岐するように、試薬廃棄溜675の廃棄溜接続部675bを接続する。また、廃棄溜接続部675bよりも第2回転軸311を中心とする円の半径方向外周側に位置するように廃棄溜本体675aを接続する。この廃棄溜本体675aは、さらに、廃棄溜接続部675bよりも第1回転軸310を中心とする円の半径方向外周側に位置するように配置する。
上記の検査チップ400は、次の手順により使用される。まず、第1回転軸310を中心とする回転により、遠心分離管201において試料500から対象成分510が分離された後、例えばカプセル600を破ることにより試薬550を試薬溜219に導入する。次に、第2回転軸311を中心として検査チップ100を回転し、遠心分離管201から第1秤量部205に対象成分510を導入すると同時に、試薬溜219内の試薬550を試薬秤量部670に導入する。このとき、試薬秤量部670には試薬廃棄溜675が接続されているため、試薬秤量部670の所望の容積を超える試薬550が試薬廃棄溜675に導入される。そのため、試薬秤量部670に試薬550を導入することにより、所望の試薬550を正確に秤量することができる。また、第2回転軸311を中心とする回転により廃棄溜本体675aに導入された試薬550は、廃棄溜本体675aが廃棄溜接続部675bよりも第1回転軸310を中心とする円の半径方向外周側に位置しているため、第1回転軸310を中心とする回転によっても試薬秤量部670に逆流しない。よって、試薬秤量部670において、正確に試薬550を秤量することができる。最後に第1回転軸310を中心とする回転により、この正確に秤量された試薬550を試薬秤量部670から試薬取出管677を介して1次混合部217に導入する。このとき、第1秤量部205から1次混合部217に正確に秤量された対象成分510が導入されている。よって、1次混合部217において、正確に秤量された対象成分510と正確に秤量された試薬550を導入し、所望の混合比の混合物質560を得ることができる。
図29の検査チップ400は、図27の検査チップ400よりもさらに、試薬溜219と試薬秤量部670との間に試薬導入部679、接続管679’を有している。
まず、例えばカプセル600を破ることにより試薬550を試薬溜219に導入しておく。そして、第1回転軸310を中心とする回転により、遠心分離管201において試料500から対象成分510が分離されると同時に、試薬溜219から接続管679’を介して試薬導入部679に試薬550が導入される。次に、第2回転軸311を中心として検査チップ100を回転し、遠心分離管201から第1秤量部205に対象成分510を導入すると同時に、試薬溜219内の試薬550を試薬秤量部670に導入する。さらに、第1回転軸310を中心とする回転により、正確に秤量された対象成分510及び正確に秤量された試薬550を1次混合部217に導入し、所望の混合比の混合物質560を得ることができる。この図29の検査チップ400の場合、検査チップ400を回転する前に、試薬550を試薬溜219に導入しておくことができる。
[第3実施形態例]
図31は本発明の第3実施形態例に係る検査チップの斜視図、図32は図31の平面図、図33は図31の検査チップが載置される検出装置である。第3実施形態例は、複数の検査が実行できるように秤量部や混合部等を含む複数の定量部(200a、200b、200c)200が設けられている点、光導入口233及び光導出口235付近の基板の構成が第1実施形態例と異なるのみでその他の構成は同様であり、同一の符号番号は同一の構成要素を表す。
第3実施形態例の検査チップ100は、対象成分を含む試料の取込口105、遠心分離管201、第1保持部203、複数の定量部(200a、200b、200c)200、廃液溜207及び調整管241を有している。定量部200のそれぞれは、取出管209、1次混合部217、試薬が貯蔵される試薬溜(219a、219b)219、ミキサ部220aからなる2次混合部220、光検出路230、光導入口233、光導出口235、取出口240を有している。さらに、定量部200a、200b、200cのそれぞれは、第1秤量部205、第2秤量部700及び第3秤量部705を有している。第1秤量部205は、秤量部接続管700’を介して第2秤量部700と接続されており、第2秤量部700は、秤量部接続管705’を介して第3秤量部705と接続されている。また、第3秤量部705は、廃液溜207に接続されている。ここで、各秤量部の容積は、次式(1)に示すように遠心分離管201から遠ざかるに連れて順に小さくなるように形成されている。
第1秤量部205>第2秤量部700>第3秤量部705 …(1)
さらに、各定量部200のそれぞれの取出管209からの延長線は、図32に示すように第1回転軸310において交差する。また、第1秤量部205と遠心分離管201との接続部分である秤量部接続管205b、秤量部接続管700’、秤量部接続管705’、及び廃液溜207と第3秤量部705との接続部分である廃液溜接続部207bの延長線は、図32に示すように第2回転軸311において交差する。このように設計することで、第1回転軸310を中心とする回転により、各定量部200内のそれぞれの取出管209から1次混合部217に秤量された対象成分510を効率よく導入することができる。これは、第1回転軸310を中心とする回転の遠心力の方向と取出管209との延長方向が概ね一致するためである。また、第2回転軸311を中心とする回転により、各定量部200内の第1秤量部205、第2秤量部700及び第3秤量部705に対象成分510を効率よく導入することができる。これは、第2回転軸311を中心とする回転の遠心力の方向が、秤量部接続管205b、秤量部接続管700’、秤量部接続管705’及び廃液溜接続部207bの延長方向と概ね一致するためである。
この第3実施形態例では、遠心分離管201において対象成分510が分離された後、第2回転軸311を中心とする回転により遠心分離管201から第1秤量部205の方へ対象成分510が導入される。ここで、第1秤量部205からあふれた対象成分510は、第2秤量部700へ導入される。また、第2秤量部700からあふれた対象成分510は、第3秤量部705へ導入される。さらに第3秤量部705からあふれた対象成分510は、廃液溜207へ導入される。このように各秤量部に対象成分510が導入されることにより、第1秤量部205、第2秤量部700及び第3秤量部705それぞれから所望の量の対象成分510を得ることができる。このとき、各秤量部は、遠心分離管201に近いほど容積が大きくなる。よって、第1秤量部205に導入された対象成分510が第1秤量部205から遠心分離管201側に溢れ出るのを低減することができる。
また、定量部200毎に所望の量の対象成分510を秤量して定量することができるので、多項目の検査を一度に行うことができる。
さらに、検査チップ700の基板には、光検出路230に光を導入する光導入口233及び光を取り出す光導出口235が露出されるような開口部690が設けられている。ここで、光導入口233及び光導出口235は、光が通過する光導波路である。この検査チップ700は図33に示すように検出装置800上に載置される。そして、各定量部200の光導入口233に光ファイバ703が接続され、検査チップ700の開口部690に検出装置800上のフォトダイオードなどの光検出部701が嵌め込まれて、対象成分510の定量が行われる。また、光の検出は、図34に示すように光導出口235に隣接する基板内に設けられた孔部910に、フォトダイオードなどの光検出部を嵌め込むようにしても良い。
さらに、図35に示すように光ファイバ703からの光をレンズ713により平行光とし、光束を広げて各光導入口233に導入するようにしても良い。
[その他の実施形態例]
(a)上記の実施形態例の検査チップを人工透析装置と組み合わせて利用することができる。図36は、上記の実施形態の検査チップを人工透析装置に接続したときの概略図である。検査チップの取込口は、血液送液管805及びシャント又は針820を介して皮膚から採血を行う。また、血液送液管805は、中空視膜815を有する人工透析装置810と接続されている。さらに、検査チップへの送液を調整するために取込口付近にバルブZが設けられている。人工透析装置810は、腎機能低下に伴う血液中の尿素窒素やクレアチニン等の不要物質の除去機能低下を補助するために行う。このような血液中の不要物質の濃度をリアルタイムに測定することは難しいが、上記の実施形態の検査チップを人工透析装置と組み合わせて用いると、リアルタイムに測定することが可能である。そして、その測定結果をフィードバックすることでより正確に血液中の不要物質の濃度を調整することができる。
(b)上記の実施形態例の遠心分離管9、201には第1保持部19、203が設けられているが、さらに第2保持部360、第3保持部362…のように複数の保持部を設けても良い。図37は、複数の保持部が設けられた検査チップ100の斜視図である。第2保持部360、第3保持部362…は、第1保持部と同様に、遠心分離管201の底部に設けられている。そして、第2保持部360、第3保持部362…には、第1回転軸310を中心とした回転により非対象成分520が導入され、第2回転軸311を中心とした回転において非対象物貿520を保持する。このように、複数の保持部をさらに設けることで、第1保持部だけでは保持しきれない非対象成分520を第2保持部に保持することができる。例えば、遠心分離管209に多量の試料500が導入され、非対象成分520が多量に分離される場合であっても、第1及び第2保持部に多量の非対象成分520を導入することで、遠心分離管209内に対象成分510を分離することができる。
なお、図37においては、調整管を設けていないが、調整管を設けても良い。
(c)上記の実施形態例の遠心分離管9、201には第1保持部19、203が設けられているが、さらに遠心分離管の両辺を連結するバイパス管366を設け、そのバイパス管366に第3保持部364を設けても良い。図38は、バイパス管366及び第3保持部364が設けられた検査チップ100の斜視図である。
遠心分離管201は、遠心分離管201の底部から第1秤量部205に接続される遠心分離管201の一方の第1端部2011へ向かう第1管201aと、底部から他方の第2端部2012へ向かう第2管201bとを有している。バイパス管366は、この遠心分離管201の第1管201aと第2管201bとを接続する。第3保持部264は、バイパス管266に設けられており、第1回転軸310を中心とした回転により非対象成分520が導入され、第2回転軸311を中心とした回転において非対象物質520を保持する。
上記のような構成の検査チップ100に対して、例えば、遠心分離管201及びバイパス管366を満たすような多量の試料500が導入された場合、第1回転軸310を中心とする回転時において、非対象成分520が遠心分離管201の底部の第1保持部203に保持されるとともに、バイパス管366に接続された第3保持部364に保持される。よって、試料500中の対象成分510は、遠心分離管201及びバイパス管366内に分離される。一方、バイパス管366を満たすほどではない少量の試料500が遠心分離管201のみに導入された場合、第1回転軸310を中心とする回転時において、非対象成分520が遠心分離管201の底部の第1保持部203のみに分離、保持される。ところで、多量の試料から生じる多量の非対象成分を保持するために、単に第1保持部203を大きくした場合には、少量の試料を分離する際に非対象成分520だけでなく対象成分510も第1保持部203に分離されてしまい、分離後の対象成分510が減少してしまう。上記のように、バイパス管366に第3保持部364を設けることで、試料500の多い少ないに応じて効率的に対象成分510及び非対象成分520を分離することができる。
さらに、バイパス管366及び第1管201aの接続部分である第1端部2011と第1回転軸310との距離が、バイパス管366及び第2管201bの接続部分である第2端部2012と第1回転軸310との距離よりも短いと好ましい。第1回転軸310を回転して遠心分離管201の第2管201bに接続された取込口から試料を取り込む場合、遠心分離管201内が満たされた後にバイパス管366が満たされる。よって、試料500が少ない場合はバイパス管366は作用せず、試料が多いときのみバイパス管366は作用する。また、バイパス管366と第2管201bの接続部分とがなす角度は、90度未満であると好ましい。バイパス管366がこのように遠心分離管201の底部に対して傾斜しているため、取込口から試料500を取り込む場合、遠心分離管201内が満たされた後にバイパス管366が満たされる。
さらに、図39に示すように、バイパス管及び第3保持部を複数設けても良い。図39では、バイパス管366及び第3保持部364と、バイパス管370及び第4保持部368とを設けている。
(d)上記実施形態例における第1保持部19、203の保持部本体について、深さ方向に傾斜を付けると好ましい。図40は、深さ方向に傾斜を有する第1保持部の拡大斜視図である。第1保持部は、保持部本体203及び保持部連結管203bを有している。保持部本体203aの深さは、保持部本体203a内部の地点と第2回転軸との距離が長い程深くなる。ここで、保持部本体203aの深さとは、検査チップの主面と概ね垂直に交わる方向を意味する。
このように保持部本体203aの入口である保持部連結管203bでの深さが浅く、保持部連結管203bからの距離が遠い程保持部本体230aの深さが深くなるため、第2回転軸311を中心とする回転時において、保持部連結管203bを介した保持部本体203aからの非対象成分520の逆流を防止することができる。また、深さ方向に深くすることで、検査チップの面積を大きくすることなく保持部本体203aの容量を大きくすることができる。よって、対象成分510の分離効率を高めつつ検査チップの小型化を図ることができる。
なお、その他の実施形態例で前述した第2保持部、第3保持部…についても同様に、深さ方向に傾斜を付けると分離効率を高めつつ検査チップの小型化を図ることができるので好ましい。
同様に、上記実施形態例における第1保持部19、203の保持部本体について、時41に示すように保持部本体が第2回転軸311から離れる程、保持部本体の断面積が広がると好ましい。例えば、検査チップ100の主面方向に沿う断面積が第2回転軸から離れる程広がると好ましい。保持部本体の入口である保持部連結管203bでの断面積が小さく、保持部連結管203bからの距離が遠い程保持部本体の断面積が大きくなるため、第2回転軸311を中心とする回転時において、保持部連結管203bを介した保持部本体からの非対象成分の逆流を防止することができる。
[実験例1]
実験例1では、2つの第1及び第2回転軸を用いて対象成分の秤量が正確に行われたかを検証する実験を行った。図42に示す検査チップは、試料を取り込む取込口920、遠心分離管921、第1秤量部923、取出口925及び廃液溜926を有している。この検査チップは、前記実施形態例に示した検査チップ1と同様の構成であり、検査チップ1の各部と第1回転軸930及び第2回転軸931との関係も前記実施形態例の検査チップ1と同様である。
検証チップの各部の最小流路幅は200μm、第1秤量部923の体積は0.25μl、液溜の流路幅は1mm及び全ての流路深さは200μmである。この検査チップにインクで着色した純水を導入した。第1回転軸930及び第2回転軸931による回転は、回転半径1.3cm、回転数3000rpmの条件において実施された。
ステップ1:まず第1回転軸930による回転により検査チップを10秒間回転させた。
ステップ2:次に、第2回転軸931による回転により検査チップを10秒間回転させて純水を遠心分離管921から第1秤量部923に導入した。このとき、第1秤量部923の所定の体積を超える純水は、廃液溜926に導入される。
ステップ3:さらに、第1回転軸930による回転により検査チップを10秒間回転させて、第1秤量部923において秤量された純水を取出口925に導入した。
この操作を5回行い、その結果を図43に示した。図44A〜図44Cの結果より、ほぼ同量の溶液を秤量できている。よって、2つの回転軸を用いて実験例1に示す検査チップを回転することで、正確に溶液を秤量できることが分かった。
[比較例1]
実験例1の検査チップの取込口920、遠心分離管921、第1秤量部923、取出口925及び廃液溜926等の全ての流路に、生体適合性向上のために、エタノール溶液に溶解した、濃度3wt%のMPCポリマー(2−methacryroyloxyethyl−phosphoryl−choline polymer)を2回コートした。この検査チップを用いて、標準血清940の状態を観察した。実験方法は、実験例1と同様であり、その結果を図44A〜図44Cに示した。図44Aはステップ1であり、第1回転軸930を中心として比較例1の検査チップを回転させた時の結果である。図44Bは、ステップ2であり、標準血清940が、第2回転軸931を中心とする回転により、遠心分離管921から第1秤量部923に導入されている。このとき、第1秤量部923の容積が、第1秤量部923と遠心分離管921とを接続する接続部分の容積よりも大きいため、毛管現象によりα部分において標準血清940が遠心分離管921の方へ逆流している。また、図44Cはステップ3であり、第1回転軸930を中心とする回転により第1秤量部923から取出口925に標準血清940が導入されている。このとき、取出口925の容積が、取出口925と第1秤量部923とを接続する接続部分の容積よりも大きいため、毛管現象によりβ部分にわいて標準血清940が第1秤量部923の方へ逆流してしまい、正確な秤量が行うことができなかった。MPCは、血液中の蛋白質等を流路内に付着させないようにする効果があるが、一方で上記のように接触角の低下により逆流を招いてしまうと分かった。
[実験例2]
図45Aは実験例2の検査チップであり、図45Bは第1秤量部の拡大図である。実験例1の検査チップの第1秤量部927内にポール927を設けた。また、第1秤量部923に接続された接続部分923’と取出口925との間にアルミバルブ929を設けた。その他の構成は比較例1と同様であり、流路全体にMPCが塗布されている。実験方法も比較例1と同様である。ポール927は円柱であり直径が200μm、ポール間の距離が200μmである。また、取出口929の流路幅は0.8mmである。実験例2の結果を図46A〜図46Cに示した。
図46Aはステップ1であり、第1回転軸930を中心として比較例1の検査チップを回転させた時の結果である。図46Bは、ステップ2であり、標準血清940が、第2回転軸931を中心とする回転により、遠心分離管201から第1秤量部923に導入されている。このとき、標準血清940が第1秤量部923から遠心分離管921の方への逆流が防止されている。また、図46Cはステップ3であり、第1回転軸930を中心とする回転により第1秤量部923から接続部分923’を介して取出口925に標準血清940が導入されている。このとき、標準血清940が取出口925から第1秤量部923の方への逆流が防止されている。
よって、毛管現象が生じる部分にポールまたはアルミバルブを設けることにより、導入された溶液の逆流防止ができることが実証された。
【産業上の利用可能性】
本発明では、試料中の対象成分の分離、秤量をチップの回転のみにより行うため、分離、秤量のために検査チップをポンプ等の装置に接続する必要がなく、検査チップが載置される装置全体の構成を単純化することができる。また、分離、秤量を1チップ内において行うことができるので、チップの小型化を図ることができる。よって、携帯可能な検査チップなどに利用することができる。


【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】




【図10】

【図11】

【図12】





【図17】


【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】


【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を分離・秤量する秤量チップであって、
前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、
前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、
前記遠心分離管の一方の端部に接続され、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する秤量部と、
を含む秤量チップ。
【請求項2】
前記遠心分離管はU字管である、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項3】
前記遠心分離管のU字の開口は、90度以内である、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項4】
前記秤量部に接続される前記遠心分離管の第1端部から他方の第2端部へ向かうほど前記第2回転軸との距離が狭まる、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項5】
前記秤量部に接続される前記遠心分離管の第1端部と前記第1回転軸との距離が、前記遠心分離管の他方の第2端部と前記第1回転軸との距離よりも小さい、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項6】
前記第1保持部は、保持部本体と、前記保持部本体及び前記遠心分離管を接続する保持部連結管と、を有しており、
前記保持部連結管の断面積は、前記遠心分離管の断面積よりも大きく形成されている、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項7】
前記第1保持部は、保持部本体と、前記保持部本体及び前記遠心分離管を接続する保持部連結管と、を有しており、
前記保持部連結管は管状に形成され、前記保持部連結管の管軸の延長線が前記第1回転軸と交差する、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項8】
前記第1保持部は、保持部本体と、前記保持部本体及び前記遠心分離管を接続する保持部連結管と、を有しており、
前記保持部本体と前記第1回転軸との距離は、前記保持部連結管と前記第1回転軸との距離よりも長く、かつ前記保持部本体と前記第2回転軸との距離は、前記保持部連結管と前記第2回転軸との距離よりも長い、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項9】
前記保持部本体が前記第2回転軸から離れる程、前記保持部本体の深さは深くなる、請求項7または8に記載の秤量チップ。
【請求項10】
前記保持部本体が前記第2回転軸から離れる程、前記保持部本体の断面積が広がる、請求項7または8に記載の秤量チップ。
【請求項11】
前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記非対象成分が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第2保持部をさらに含む、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項12】
前記遠心分離管は、前記秤量部に接続される前記遠心分離管の第1端部から前記遠心分離管の底部に向かう第1管と、前記底部から他方の第2端部へ向かう第2管とを有しており、
前記遠心分離管の前記第1管と前記第2管とを接続するバイパス管と、
前記バイパス管に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記非対象成分が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第3保持部と、
をさらに含む請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項13】
前記バイパス管及び前記第1管の接続部分と前記第1回転軸との距離が、前記バイパス管及び前記第2管の接続部分と前記第1回転軸との距離よりも短い、請求項12に記載の秤量チップ。
【請求項14】
前記バイパス管と前記第2管の接続部分とがなす角度は、90度未満である、請求項12に記載の秤量チップ。
【請求項15】
前記秤量部は、前記遠心分離管と前記秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、
前記秤量部接続管の延長線が前記第2回転軸と交差する、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項16】
前記秤量部は、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する秤量部本体をさらに有し、
前記秤量部本体には、構造物が形成されている、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項17】
前記遠心分離管及び前記秤量部に接続され、前記遠心分離管で遠心分離される試料の量を調整する調整管をさらに含む、請求項1に記載の秤量チップ。
【請求項18】
前記調整管は、前記調整管内の第1地点と第2地点を有しており、
前記第1地点と前記第1回転軸との距離が、前記第2地点と前記第1回転軸との距離よりも短い、請求項17に記載の秤量チップ。
【請求項19】
第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を分離・秤量する秤量チップであって、
前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、
前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、
前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する複数の秤量部とを含み、
前記複数の秤量部のうち初段の秤量部は、前記遠心分離管の一方の端部に接続され、前記初段以降の秤量部は、前段の秤量部から次段の秤量部に対象物質が導入されるように前段の秤量部に接続され、かつ次段の秤量部の容積は前記前段の秤量部の容積よりも小さい、秤量チップ。
【請求項20】
前記秤量部それぞれに接続される取出管をさらに含み、
各取出管のそれぞれの延長線は、前記第1回転軸において交差する、請求項19に記載の秤量チップ。
【請求項21】
前記初段の秤量部は、前記遠心分離管と前記秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、
前記次段以降の秤量部それぞれは、前記前段の秤量部と前記次段の秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、
前記初段の秤量部の秤量部接続管の延長線及び前記次段以降の秤量部それぞれの秤量部接続管の延長線は、前記第2回転軸において交差する、請求項19に記載の秤量チップ。
【請求項22】
第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を定量する検査チップであって、
前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、
前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、
前記遠心分離管の一方の端部に接続され、前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する秤量部と、
試薬が貯蔵される少なくとも1つの試薬溜と、
前記試薬溜及び前記秤量部に接続されており、前記第1回転軸を中心とした再度の回転により前記秤量部から導入される前記対象成分と、前記第1回転軸及び/または前記第2回転軸を中心とした回転により前記試薬溜から導入される試薬とを混合する混合部と
前記混合部に接続され、前記試薬及び前記対象成分が混合された混合物質を通過させる光検出路と、
前記光検出路に接続され、前記光検出路に光を導入するための光導入口と、
前記光検出路に接続され、前記光検出路内を通過後の光を取り出すための光導出口と、を有する検査チップ。
【請求項23】
第1及び第2回転軸を中心とする回転により試料中の対象成分を定量する検査チップであって、
前記秤量チップを前記第1回転軸を中心として回転させることにより、前記試料から前記対象成分を遠心分離する遠心分離管と、
前記遠心分離管の底部に設けられており、前記第1回転軸を中心とした回転により前記試料中の前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)が導入され、前記第2回転軸を中心とした回転において前記非対象物質を保持する第1保持部と、
前記第2回転軸を中心とした回転により前記遠心分離管から導入される前記対象成分を秤量する複数の定量部とを含み、
前記複数の定量部のそれぞれは、
秤量部と、
試薬が貯蔵される少なくとも1つの試薬溜と、
前記試薬溜及び前記秤量部に接続されており、前記第1回転軸を中心とした再度の回転により前記秤量部から導入される前記対象成分と、前記第1回転軸及び/または前記第2回転軸を中心とした回転により前記試薬溜から導入される試薬とを混合する混合部と、
前記混合部に接続され、前記試薬及び前記対象成分が混合された混合物質を通過させる光検出路と、
前記光検出路に接続され、前記光検出路に光を導入するための光導入口と、
前記光検出路に接続され、前記光検出路内を通過後の光を取り出すための光導出口とを有し、
前記複数の定量部のうち初段の定量部の秤量部は、前記遠心分離管の一方の端部に接続されるとともに、前記初段以降の定量部の秤量部は、前段の定量部の秤量部から次段の定量部の秤量部に対象物質が導入されるように前段の定量部の秤量部に接続され、かつ後段の定量部の秤量部の容積は前記前段の定量部の秤量部の容積よりも小さい、検査チップ。
【請求項24】
前記定量部の各秤量部と各混合部とを接続する取出管をさらに含み、
各取出管のそれぞれの延長線は、前記第1回転軸において交差する、請求項23に記載の検査チップ。
【請求項25】
前記初段の定量部の秤量部は、前記遠心分離管と前記定量部の秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、
前記次段以降の定量部それぞれの秤量部は、前記前段の定量部の秤量部と前記次段の定量部の秤量部とを連結する秤量部接続管を有し、
前記初段の定量部の秤量部の秤量部接続管の延長線及び前記次段以降の定量部の秤量部それぞれの秤量部接続管の延長線は、前記第2回転軸において交差する、請求項23に記載の検査チップ。
【請求項26】
前記遠心分離管に接続され、前記試料を採取するための採取針をさらに含む、請求項22または23に記載の検査チップ。
【請求項27】
対象成分を含む試料が導入されるチップの使用方法であって、
前記チップを第1回転軸を中心に回転させて前記試料から対象成分を遠心分離し、前記対象成分以外の成分(以下、非対象成分という)を保持する分離ステップと、
前記チップを第2回転軸を中心に回転させて前記非対象成分をそのまま保持し、前記対象成分を秤量する秤量ステップと、
を含むチップの使用方法。
【請求項28】
前記チップは、試薬を保持する試薬溜と、前記試薬溜に連結する混合部とを有し、
前記チップを前記第1回転軸及び/または前記第2回転軸を中心に回転させて前記試薬溜から前記混合部に試薬を導入する試薬導入ステップと、
前記チップを前記第1回転軸を中心に回転させて、前記秤量ステップにおいて秤量された対象成分を前記混合部に導入し、前記試薬と混合する混合ステップと、
をさらに含む、請求項27に記載のチップの使用方法。

【国際公開番号】WO2005/033666
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514516(P2005−514516)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014988
【国際出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】