説明

チップカード

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
本発明は、少なくとも1つのメモリを含んでいる半導体チップを備え、チップのエネルギー供給のためにまたチップからおよびチップへの双方向のデータ伝送のために接触部及び無接触データ伝送手段が設けられ、チップに駆動可能なスイツチング手段が設けられ、このスイツチング手段が少なくとも供給電圧接触部に接続されている論理回路の出力信号の状態に関係してメモリを接触部または無接触データ伝送手段に接続するチップカードに関する。
【0002】
【背景技術】
このようなチップカードは既にヨーロッパ特許出願公開第0424726号明細書(=対応米国特許第5206495号明細書、対応特開平3−209592号公報)から公知である。このチップカードでは論理回路がコンパレータにより形成され、その一方の入力端は供給電圧接触部に接続されている。コンパレータの他方の入力端は整流器および平滑回路網を介して無接触のエネルギーおよびデータ伝送のためのコイルに接続されている。コンパレータの出力はその両入力端に与えられている電圧に関係してマルチプレクサを駆動する。このマルチプレクサは、コンパレータの出力信号の状態に関係して、供給電圧および接触部からの信号、もしくは供給電圧およびコイルにより受信された信号から導出された信号を、同じくマルチプレクサに接続され付設のメモリを有するマイクロプロセッサに通過接続する。
【0003】
公知のチップカードにおいて、接触部もしくはコイルへの自動的な切換は、チップカードがそのどちらから供給電圧を与えられるかに応じて行なわれる。しかしこの方式の場合、メモリは常に、より高い供給電圧を供給する入力/出力インタフェースに接続されるという欠点がある。それにより、チップカードが有接触の読取り装置に挿入されている場合でも、強い電磁界を印加することによってマルチプレクサを切換え、こうして悪用が可能にされるおそれがある。このことはなかんずく、エネルギーおよびデータ伝送が接触部を介してもまた無接触式にコイルを介しても可能でありかつデビットカードとして使用されるこのような複合カードでは、カードからの支払い金額の引落としは通常無接触の伝送路を介して行われ、一方カードに記憶されている使用可能な金額を新たに増額することは有接触の伝送路を介して行われるので、問題をはらんでいる。ここに、カードを不正操作し、他方においてそれをローディングのために有接触の読取り装置に挿入する詐取者に対する誘因がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の課題は、冒頭に記載した種類のチップカードをこのような悪用が可能でないように改良することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この課題は、本発明によれば、冒頭に記載した種類のチップカードにおいて、スイツチング手段は、このスイツチング手段が駆動されていないときには休止位置を取りこの休止位置においてメモリを処理回路を介して無接触データ伝送手段に接続し、供給電圧接触部に電圧が与えられている際にのみ、論理回路により駆動されて、接触部を論理回路を介してメモリに接続することにより解決される。
【0006】
こうして本発明によるチップカードではいつでも有接触または無接触作動の一義的な回路が存在する。それによって有接触作動の際の電磁界を介しての同時の供給による擾乱は排除される。安全性のもう1つの向上は、接触部を介するメモリ範囲へのアクセスを獲得し、その後に通常は無接触作動では可能でなかった操作を無接触作動により行うことができないことにより与えられる。有接触作動から再び無接触作動に戻すための切換信号は存在しない。これは接触部における供給電圧の遮断によってのみ可能である。
【0007】
悪用に対する安全性をさらに向上するため、本発明の有利な実施態様では、論理回路がクロック信号接触部とも接続されている。論理回路はその際に、供給電圧もクロック信号も接触部に与えられるときにのみ論理回路がスイツチング手段を駆動するように構成されている。
【0008】
特に有利なことは、論理回路に対してマイクロプロセッサが使用されることである。それにより別の安全性機能が導入される。
【0009】
供給電圧およびクロック信号に追加してデータ信号もマイクロプロセッサに伝送し、これらの3つの条件が同時に満たされているときに初めて、マイクロプロセッサがスイッチを休止位置から切換えるように構成すると特に有利である。データ信号はその際に例えば、マイクロプロセッサにスイッチを切換えさせる命令であってよい。しかしデータ信号は、マイクロプロセッサにおいてそこに記憶されている数と比較される個人識別番号(いわゆるPIN)であってもよい。その場合スイッチの切換は肯定的な比較が行われたときに初めて可能である。マイクロプロセッサの使用によりもちろん他の真正証明の可能性も考えられる。
【0010】
特に高い安全性は、メモリがこのメモリと接触部との間でデータ伝送を行なうためにマイクロプロセッサを介してのみ接触部に接続可能であることにより与えられている。
【0011】
安全性の別の向上は、メモリが論理回路により駆動可能なスイッチを介してのみ供給電圧接触部に接続可能であることにより行われる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示されている実施例により本発明を一層詳細に説明する。
【0013】
図1に示されている原理回路ではメモリ1がコイル2と接続されている。コイル2からは受信された高周波の信号が第1の導線6を経て処理回路7に供給され、この処理回路7はそれからクロックおよびデータを取得し、またメモリ1にスイツチング手段9を介して供給する。スイツチング手段9は休止位置を取り、この休止位置においてスイツチング手段9のスイッチ91がメモリ1を常に処理回路7を介してコイル2に接続する。
【0014】
コイル2から整流器および平滑回路3ならびに調節回路4により供給電圧が導出され、この供給電圧が導線5を経て処理回路7にもメモリ1にも与えられている。
【0015】
スイツチング手段9の制御部92は、有利にはマイクロプロセッサにより形成されている論理回路8により、スイッチ91がメモリ1を、マイクロプロセッサにより形成されている論理回路8を介して接触部20に接続するように、駆動される。しかしこの切換は、供給電圧VDDが接触部20の供給電圧接触部21に与えられ、マイクロプロセッサにより形成されている論理回路8に電圧を供給するときにのみ行われる。
【0016】
スイツチング手段9は、コイル2における信号により、メモリ1が再びコイル2に接続されるようにスイッチ91を再びその休止位置にもたらすことが可能でないように、マイクロプロセッサにより形成されている論理回路8によってのみ駆動され得る。スイッチ91を再びその休止位置にもたらすことは、供給電圧VDDがもはやマイクロプロセッサにより形成されている論理回路8に与えられていないときにのみ可能である。
【0017】
マイクロプロセッサにより形成されている論理回路8は、供給電圧VDDのほかにクロック信号接触部23にクロック信号が与えられているときにのみスイツチング手段9の駆動が行われるように構成することができる。
【0018】
本発明の他の有利な実施態様では、マイクロプロセッサにより形成されている論理回路8は、予めデータ信号がデータ接触部22を介して伝送されたときに初めて制御信号をスイツチング手段9に与える。この措置により、メモリ1に記憶されているデータの変更がマイクロプロセッサにより形成されている論理回路8を介して、特別なデータ信号がデータ接触部22を介してマイクロプロセッサにより形成されている論理回路8に伝送された後に初めて可能であるように考慮されている。
【0019】
さらに、供給電圧接触部21に与えられている供給電圧VDDを、マイクロプロセッサにより形成されている論理回路8からの相応の信号により駆動されたときに初めてメモリに与えるスイッチ10が設けられている。この制御信号はもちろんスイツチング手段9の制御部92に対する制御信号と等しくてよい。
【0020】
この制御信号は他の目的にも使用される。すなわち調節装置4は、カードが送信コイルに過度に近づくときに起こり得るメモリ1および処理回路7に対する供給電圧の過度の上昇を防止する必要がある。この調節回路における電圧制限器は例えば4.5〜5.5Vのばらつき範囲を有する。特定の電圧制限器が4.5Vにあり、カードが有接触読取り装置で作動させられる場合、この4.5Vよりも大きい供給電圧が供給電圧接触部21を介して与えられ、それによって電圧調節器が熱的に危険にさらされることが起こる。制御信号により電圧制限器を切換または遮断することができる。
【0021】
スイッチ10は確かに一方では、メモリ1を有接触作動の際にマイクロプロセッサにより形成されている論理回路8からの制御信号の後に初めて供給電圧VDDに接続する役割をする。しかしスイッチは他方では、無接触作動の際に導線5を経てコイル2からメモリ1および処理回路7に与えられる供給電圧がマイクロプロセッサにより形成されている論理回路8に到達しないようにする役割をする。このことは、一方ではマイクロプロセッサにより形成されている論理回路8がコイル2を介して作動させられ得ないという利点を有するが、他方では無接触作動の際にわずかなエネルギー消費が保証されるという別の利点を有する。しかし集積半導体チップ上の供給電圧導線にスイッチを必要としないことは常に望ましいことである。なぜならば、このスイッチは常に電圧降下を、従って供給電圧範囲の制約を意味するからである。整流器3または調節回路4の出力端を導線5を経て供給電圧接触部21に接続することも考えられる。回路の電流消費はしばしばクロック周波数に関係するので、必要とされない部分がクロックされないことにより、電流を節減することができる。無接触作動の際にはクロック信号が接触部に与えれていないので、有接触作動のための回路部分、特にマイクロプロセッサにより形成されている論理回路8は供給電圧に接続されていてよく、それにより殆ど電流を消費することはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の説明するための原理回路図
【符号の説明】
1 メモリ
2 コイル
4 調節回路
5、6 導線
7 処理回路
8 論理回路
9 スイッチング手段
10 スイッチ
20 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのメモリ(1)を含んでいる半導体チップを備え、チップのエネルギー供給のためにまたチップからおよびチップへの双方向のデータ伝送のために接触部(20)及び無接触データ伝送手段(2)が設けられ、チップに駆動可能なスイツチング手段(9)が設けられ、このスイツチング手段が少なくとも供給電圧接触部(21)に接続されている論理回路(8)の出力信号の状態に関係してメモり(1)を接触部(20)または無接触データ伝送手段(2)に接続するチップカードにおいて、
スイツチング手段(9)は、このスイツチング手段(9)が駆動されていないときには休止位置を取りこの休止位置においてメモリ(1)を処理回路(7)を介して無接触データ伝送手段(2)に接続し、供給電圧接触部(21)に電圧(VDD)が与えられている際にのみ、論理回路(8)により駆動されて、接触部(20)を論理回路(8)を介してメモリ(1)に接続する
ことを特徴とするチップカード。
【請求項2】
論理回路(8)がクロック信号接触部(23)に接続され、スイツチング手段(9)を、供給電圧(VDD)及びクロック信号が存在するときにのみ、駆動することを特徴とする請求項1記載のチップカード。
【請求項3】
論理回路(8)がマイクロプロセッサにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のチップカード。
【請求項4】
マイクロプロセッサに接続されている接触部(20)に供給電圧(VDD)、クロック信号およびデータ信号が存在するときにのみ、スイツチング手段(9)がマイクロプロセッサにより駆動され、接触部(20)をメモリ(1)に接続することを特徴とする請求項3記載のチップカード。
【請求項5】
メモリ(1)がこのメモリ(1)と接触部(20)との間でデータ伝送を行なうためにマイクロプロセッサを介してのみ接触部(20)に接続可能であることを特徴とする請求項3又は4記載のチップカード。
【請求項6】
メモリ(1)が論理回路(8)により駆動可能なスイッチ(10)を介してのみ供給電圧接触部(21)に接続可能であることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載のチップカード。

【図1】
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【特許番号】特許第3544671号(P3544671)
【登録日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【発行日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−509841
【出願日】平成8年8月23日(1996.8.23)
【公表番号】特表平11−500554
【公表日】平成11年1月12日(1999.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP1996/003745
【国際公開番号】WO1997/008651
【国際公開日】平成9年3月6日(1997.3.6)
【審査請求日】平成10年2月23日(1998.2.23)
【審判番号】不服2003−4621(P2003−4621/J1)
【審判請求日】平成15年3月20日(2003.3.20)
【特許権者】
【識別番号】         
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【特許権者】
【識別番号】         
【氏名又は名称】フイリツプス エレクトロニクス エヌ ベー
【復代理人】
【識別番号】         
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開平3−209592(JP,A)
【文献】特開昭61−198387(JP,A)
【文献】特開昭60−179891(JP,A)
【文献】特開平4−23092(JP,A)