説明

チップチップ型電子部品

【課題】チップ素体にクラックが発生するのを抑制し、耐衝撃性に極めて優れたチップ型電子部品を提供すること。
【解決手段】グランド端子電極18aは、第3の側面12eの中央部分に設けられている。グランド端子電極18bは、第4の側面12fの中央部分に設けられている。接続電極18cは、端子電極14a〜14dの第2の主面12bに位置している端部と端子電極16a〜16dの第2の主面12bに位置している端部との間を第3及び第4の側面12e,12fの対向方向に伸びた形状を呈している。接続電極18cの一端はグランド端子電極18aの他方の端部に連続すると共に、接続電極18cの他端はグランド端子電極18aの他方の端部に連続しており、接続電極18cは、一対のグランド端子電極18a,18b同士をつないでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型電子部品として、内部回路要素を含む直方体状のチップ素体と、前記内部回路要素に電気的に接続されると共に前記チップ素体の外表面に配置された複数の外部電極と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されているチップ型電子部品では、チップ素体の下面の短辺から伸びる外部電極の長さが、当該下面の長辺から伸びる外部電極の長さよりも長く設定することにより、外部電極の破損を防止して、チップ型電子部品の耐衝撃性の向上を図っている。
【特許文献1】特開2008−147349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本発明者等の調査研究の結果、特許文献1に開示されているチップ型電子部品では、耐衝撃性を充分に向上することができない懼れがある、特に、チップ素体にクラックが発生するということが判明した。
【0004】
本発明は、チップ素体にクラックが発生するのを防ぎ、耐衝撃性に極めて優れたチップ型電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、内部回路要素を含む直方体状のチップ素体と、内部回路要素に電気的に接続されると共にチップ素体の外表面に配置された複数の外部電極と、を備えたチップ型電子部品を用意し、当該チップ型電子部品を回路基板に実装し、回路基板を撓ませる耐基板曲げ性試験、いわゆるたわみ試験を行なった。用意したチップ型電子部品では、チップ素体は、互いに対向する長方形状の第1及び第2の主面と、第1及び第2の主面間を連結するように第1及び第2の主面の長辺方向に伸び且つ互いに対向する第1及び第2の側面と、第1及び第2の主面を連結するように第1及び第2の主面の短辺方向に伸び且つ互いに対向する第3及び第4の側面と、を有しており、複数の外部電極は、端部が第1及び第2の主面に回り込むように第1及び第2の側面にそれぞれ形成される第1の外部電極と、端部が第1及び第2の主面に回り込むように第3及び第4の側面にそれぞれ形成される第2の外部電極と、を含んでいる。また、たわみ試験では、第2の主面を実装面として、回路基板に対向させてチップ型電子部品を実装した。
【0006】
たわみ試験の結果、チップ素体にクラックが発生していることが分かった。チップ素体にクラックが発生すると、内部回路要素が断線する、クラックから水分が滲入して短絡が発生するといったように電気的特性に悪影響を及ぼすこととなる。
【0007】
本発明者等は、クラック発生の要因を調べた。その結果、回路基板を撓ませた際に、第3及び第4の側面に形成されている第2の外部電極の第2の主面(実装面)に回り込んでいる部分の端部に応力が集中し、この端部を起点としてチップ素体にクラックが発生することが分かった。第3及び第4の側面が第1及び第2の主面の長辺方向に対向しており、第2の外部電極はチップ素体の長手方向の端部に位置していることから、回路基板を撓ませた際に第2の外部電極が回路基板から受ける力は大きくなる。回路基板から受けた力は、応力として、第2の主面(実装面)に回り込んでいる部分の端部、特に、第3及び第4の側面の対向方向での縁近傍に集中する。したがって、回路基板を撓ませた際に、応力が特定の箇所に集中するのを抑制することができれば、クラックの発生を防止することが可能となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記事象に鑑みてなされたものであり、内部回路要素を含む直方体状のチップ素体と、内部回路要素に電気的に接続されると共にチップ素体の外表面に配置された複数の外部電極と、を備えたチップ型電子部品であって、チップ素体は、外表面として、互いに対向する長方形状の第1及び第2の主面と、第1及び第2の主面間を連結するように第1及び第2の主面の長辺方向に伸び且つ互いに対向する第1及び第2の側面と、第1及び第2の主面を連結するように第1及び第2の主面の短辺方向に伸び且つ互いに対向する第3及び第4の側面と、を有し、複数の外部電極は、第1及び第2の側面にそれぞれ形成される第1の外部電極と、第3及び第4の側面にそれぞれ形成される第2の外部電極と、第2の主面に形成されると共に第3及び第4の側面の対向方向に伸びて第2の外部電極同士をつなぐ第3の外部電極と、を含んでいる。
【0009】
本発明に係るチップ型電子部品では、第3及び第4の側面にそれぞれ形成される第2の外部電極同士が、第2の主面に形成されると共に第3及び第4の側面の対向方向に伸びる第3の外部電極によりつながっている。このため、本発明に係るチップ型電子部品を第2の主面を実装面として回路基板に実装した場合でも、第2の主面において、第2及び第3の外部電極には、第3及び第4の側面の対向方向で見て、縁に相当する箇所が存在していない。したがって、本発明によれば、第2及び第3の外部電極には応力が集中する箇所が存在し得ず、チップ素体にクラックが発生するのを防ぐことができる。
【0010】
好ましくは、第3の外部電極の幅は、第2の外部電極の幅よりも狭く設定されている。この場合、第3の外部電極と第1の外部電極との間隔が比較的大きくなり、第3の外部電極と第1の外部電極との間での短絡の発生を防ぐことができる。
【0011】
好ましくは、第3の外部電極の幅は、第2の外部電極の幅よりも広く設定されている。この場合、第3の外部電極を回路基板上の電極に接続することにより、実装強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チップ素体にクラックが発生するのを抑制し、耐衝撃性に極めて優れたチップ型電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
図1〜図4を参照して、本実施形態に係るチップ型電子部品について説明する。本実施形態では、チップ型電子部品として積層型フィルタ10を例示している。図1及び図2は、本実施形態に係る積層型フィルタを示す斜視図である。図3は、図1及び図2に示すチップ素体を層ごとに分解して示す分解斜視図である。図4は、本実施形態に係る積層型フィルタを示す回路図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、積層型フィルタ10は、インダクタとコンデンサとからそれぞれ構成された4個のL型フィルタ素子が並列に設けられた積層型フィルタアレイ部品である。積層型フィルタ10は、略直方体状のチップ素体12を備えている。また、積層型フィルタ10は、複数の外部電極として、四対の端子電極14a〜14d,16a〜16d、一対のグランド端子電極18a,18b、及び、一つの接続電極18cを備えている。
【0016】
チップ素体12は、第1及び第2の主面12a,12b並びに第1〜第4の側面12c〜12fを有している。第1及び第2の主面12a,12bは、互いに対向しており、長方形状を呈している。第1及び第2の側面12c,12dは、第1及び第2の主面12a,12bを連結するように第1及び第2の主面12a,12bの長辺方向に伸び且つ互いに対向している。第3及び第4の側面12e,12fは、第1及び第2の主面12a,12bを連結するように第1及び第2の主面12a,12bの短辺方向に伸び且つ互いに対向している。第2の主面12bが、他の部品(例えば、回路基板や電子部品等)に対する実装面となる。
【0017】
端子電極14a,14b,14c,14dは、第1の側面12cに順に設けられており、それぞれチップ素体12の積層方向に伸びた形状を呈している。同様に、端子電極16a,16b,16c,16dは、第2の側面12dに順に設けられており、それぞれチップ素体12の積層方向に伸びた形状を呈している。すなわち、端子電極14a,14b,14c,14dと端子電極16a,16b,16c,16dとは、それぞれ一対の端子電極をなしており、互いに対向するようにチップ素体12の外表面に形成されている。端子電極14a〜14d,16a〜16dは、その一部が、第1及び第2の主面12a,12bに回り込むように形成されており、端部が第1及び第2の主面12a,12bに位置している。
【0018】
グランド端子電極18aは、第3の側面12eの中央部分に設けられており、チップ素体12の積層方向に伸びた形状を呈している。同様に、グランド端子電極18bは、第4の側面12fの中央部分に設けられており、チップ素体12の積層方向に伸びた形状を呈している。すなわち、グランド端子電極18aとグランド端子電極18bとは、それぞれ一対のグランド端子電極をなしており、互いに対向するようにチップ素体12の外表面に形成されている。グランド端子電極18a,18bは、その一部が、第1の主面12aに回り込むように形成されており、一方の端部が第1の主面12aに位置している。
【0019】
接続電極18cは、第2の主面12bにおける第1及び第2の側面12c,12dの対向方向での中央部分に設けられており、端子電極14a〜14dの第2の主面12bに位置している端部と端子電極16a〜16dの第2の主面12bに位置している端部との間を第3及び第4の側面12e,12fの対向方向、すなわち第1及び第2の主面12a,12bの長辺方向に伸びた形状を呈している。本実施形態では、接続電極18cは、第1及び第2の主面12a,12bの長辺方向に直線状に伸びた形状を呈している。接続電極18cは、一対のグランド端子電極18a,18bと一体的に形成されている。
【0020】
接続電極18cの一端はグランド端子電極18aの他方の端部に連続すると共に、接続電極18cの他端はグランド端子電極18aの他方の端部に連続しており、接続電極18cは、一対のグランド端子電極18a,18b同士をつないでいる。グランド端子電極18a,18bの幅(第1及び第2の側面12c,12dの対向方向での長さ)と接続電極18cの幅(同じく、第1及び第2の側面12c,12dの対向方向での長さ)とは、ほぼ同じに設定されている。グランド端子電極18a,18bの他方の端部は、第1の主面12aに回り込んで第1の主面12aに位置していてもよい。
【0021】
チップ素体12には複数の機能層が積層されており、チップ素体12は、これら複数の機能層の積層方向に沿って第1の領域Aと第2の領域Bとを有している。チップ素体12における第1の領域A(インダクタ部)と第2の領域B(バリスタ部)とには、それぞれ異なる機能を有する機能層が積層されている。以下では、チップ素体12の構成を詳細に説明する。
【0022】
図2に示すように、チップ素体12の第1の領域Aには、複数の機能層20,21,22,23,24,25,22,23,26が順に積層されている。機能層20〜26はZnOを主成分とするセラミック材料からなる。機能層を構成するセラミック材料は、主成分としてのZnOのほか、添加物としてPr、K、Na、Cs、Rb等の金属元素を含有している。
【0023】
チップ素体12の第2の領域Bには、複数の機能層27,28,29,30が順に積層されている。機能層27〜30は誘電性を有する材料からなる。本実施形態では、機能層27〜30はZnOを主成分とすると共に電圧非直線特性を発現する誘電性セラミック材料からなっている。このセラミック材料中には、添加物として、Pr及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、CoおよびAlが更に含まれている。
【0024】
機能層27〜30は、Prに加えてCoを含むことから、優れた電圧非直線特性、高い誘電率(ε)を有するものとなる。また、Alを更に含むことから、低抵抗となる。機能層27〜30は、更なる特性の向上を目的として、添加物として上述したもの以外の金属元素等(例えば、Cr、Ca、Si、K等)を更に含有していてもよい。
【0025】
実際のチップ素体12では、機能層20〜26と機能層27〜30とは、互いの間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0026】
次に、チップ素体12の第1の領域Aの構成を詳細に説明する。複数の機能層21,22,23,24,25,22,23,26の一方の主面上には、それぞれ、導体パターン41,42,43,44,45,42,43,46が4体ずつ設けられている。4体の導体パターン41は、それぞれ、機能層20〜26の積層方向に直交する方向であって第3及び第4の側面12e,12fの対向方向に併置されている。同様に、導体パターン42〜46も、それぞれ4体ずつ、第3及び第4の側面12e,12fの対向方向に併置されている。
【0027】
導体パターン41,46は端子電極引き出しのために設けられており、導体パターン42〜45はインダクタンスを大きくするためにコイル状をなしている。換言すれば、導体パターン42〜45は、略長方形の辺に沿って形成されたコの字状をなしている。
【0028】
4体の導体パターン41の一端41aは、それぞれ、図2に示す第1の側面12cの一部を形成する機能層21の一縁に沿って設けられており、図2に示す端子電極14a,14b,14c,14dにそれぞれ接続されている。4体の導体パターン41の他端41bは、スルーホール導体を介して4体の導体パターン42の一端42aにそれぞれ接続されている。4体の導体パターン42の他端42bは、スルーホール導体を介して4体の導体パターン43の一端43aにそれぞれ接続されており、4体の導体パターン43の他端43bは、スルーホール導体を介して4体の導体パターン44の一端44aにそれぞれ接続されている。また、4体の導体パターン44の他端44bは、スルーホール導体を介して4体の導体パターン45の一端45aにそれぞれ接続されており、4体の導体パターン45の他端45bは、スルーホール導体を介して4体の導体パターン42の一端42aにそれぞれ接続されている。
【0029】
同様に、4体の導体パターン42の他端42bは、スルーホール導体を介して4体の導体パターン43の一端43aにそれぞれ接続されており、4体の導体パターン43の他端43bは、スルーホール導体を介して4体の導体パターン46の一端46aにそれぞれ接続されている。4体の導体パターン46の他端46bは、それぞれ、図1に示す第2の側面12dの一部を形成する機能層26の一縁に沿って設けられており、図1に示す端子電極16a,16b,16c,16dにそれぞれ接続されている。
【0030】
このように、チップ素体12の積層方向に隣り合う導体パターン42〜46同士がそれぞれ直列に接続されて、4体のインダクタ導体48a,48b,48c,48dを形成している。
【0031】
次に、チップ素体12の第2の領域Bの構成を詳細に説明する。機能層27〜30の間には、機能層27〜30の積層方向に対向するように複数の内部電極51,52,53,54,55が配されている。具体的には、機能層29の一方の主面上には4体の第1の電極導体51,52,53,54が設けられており、機能層28の一方の主面上には第2の電極導体55が設けられている。
【0032】
4体の第1の電極導体51〜54は、機能層27〜30の積層方向に直交する方向であって第3及び第4の側面12e,12fの対向方向に併置されている。4体の第1の電極導体51〜54の一端51a,52a,53a,54aは、それぞれ、図1に示す第2の側面12dの一部を形成する機能層29の一縁に沿って設けられており、図1に示す端子電極16a,16b,16c,16dにそれぞれ接続されている。すなわち、4体の第1の電極導体51〜54の一端51a〜54aは、それぞれ異なる4体のインダクタ導体48a〜48dの一端に接続されている。
【0033】
第1の電極導体51〜54の他端部51b〜54bは、機能層27〜30の積層方向に第2の電極導体55と対向している。換言すれば、第2の電極導体55は、第1の電極導体51〜54に対して配されており、第1の電極導体51,52の他端部51b,52bと、第1の電極導体53,54の他端部53b,54bと、にそれぞれ対向するように一対のグランド端子電極18a,18bの対向方向に伸びている。
【0034】
第2の電極導体55の一端55aは、図1に示す第3の側面12eの一部を形成する機能層28の一縁に沿って設けられており、図1に示すグランド端子電極18aに接続されている。第2の電極導体55の他端55bは、図2に示す第4の側面12fの一部を形成する機能層28の一縁に沿って設けられており、図2に示すグランド端子電極18bに接続されている。
【0035】
第1の電極導体51の一端部51b、第2の電極導体55の一部(一端部51bに対向する部分)55c、及びこれらの間の機能層28によってサージ吸収素子58aが形成されており、第1の電極導体52の一端部52b、第2の電極導体55の一部(一端部52bに対向する部分)55d、及びこれらの間の機能層28によってサージ吸収素子58bが形成されている。同様に、第1の電極導体53の一端部53b、第2の電極導体55の一部(一端部53bに対向する部分)55e、及びこれらの間の機能層28によってサージ吸収素子58cが形成されており、第1の電極導体54の一端部54b、第2の電極導体55の一部(一端部54bに対向する部分)55f、及びこれらの間の機能層28によってサージ吸収素子58dが形成されている。
【0036】
以上のような積層型フィルタ10において、チップ素体12の機能層20側の表面には、積層型フィルタ10の上下方向を識別するための方向識別マークMkが設けられている。方向識別マークMkは、矩形形状(本実施形態では、長方形状)を呈しており、チップ素体12の機能層20側の表面の略中央に位置している。ここでは、チップ素体12において方向識別マークMkが付されている表面が、実装すべき回路基板(図示せず)に対して上面となる。方向識別マークMkは、ZnOとZrOとからなっている。このZnOとZrOとからなる方向識別マークMkは、チップ素体12との同時焼成(後述)によって形成されている。
【0037】
図4に示すように、積層型フィルタ10には、インダクタ導体48a,48b,48c,48dとサージ吸収素子58a,58b,58c,58dとからそれぞれ構成された4個のL型フィルタ素子が形成される。
【0038】
次に、上述した積層型フィルタ10の製造方法について説明する。まず、チップ素体12の第1の領域Aにおける機能層20〜26となる複数のインダクタグリーンシートを用意する。これらのインダクタグリーンシートは、例えば、ZnO、Pr11、Cr、CaCO、SiO及びKCOの混合粉を原料としたスラリーを、例えば厚さが20μm程度となるようにドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。
【0039】
また、チップ素体12の第2の領域Bにおける機能層27〜30となる複数のバリスタグリーンシートを用意する。これらのバリスタグリーンシートは、例えば、ZnO、Pr11、CoO、Cr、CaCO、SiO、KCO及びAlの混合粉を原料としたスラリーを、例えば厚さが30μm程度となるようにドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。
【0040】
続いて、機能層21〜25となるインダクタグリーンシートの所定の位置(すなわち、導体パターン41〜46に対してスルーホールを形成すべき位置)に、レーザー加工等によってスルーホールを形成する。
【0041】
続いて、機能層21〜26となるインダクタグリーンシート上に、インダクタ導体48a〜48dのための導体パターン41〜46を形成する。この導体パターン41〜46は、Ag及びPdを主成分とする導体ペーストをインダクタグリーンシート上にスクリーン印刷することで、例えば、焼成後の厚さが14μm程度となるように形成される。なお、機能層21〜25となるインダクタグリーンシートに形成されたスルーホール内には、インダクタグリーンシート上への導体ペーストのスクリーン印刷によって、スルーホール導体のための導体ペーストが充填される。
【0042】
また、機能層28,29となるバリスタグリーンシート上に、第2の電極導体55および第1の電極導体51〜54に対応する導体パターンを形成する。この導体パターンは、Ag及びPdを主成分とする導体ペーストをバリスタグリーンシート上にスクリーン印刷することで、例えば、焼成後の厚さが3μm程度となるように形成される。
【0043】
また、上記の方向識別マークMkを形成するためのマーク用ペーストを用意し、このマーク用ペーストを機能層20となるインダクタグリーンシート上の所定位置にスクリーン印刷する。マーク用ペーストは、ZnOとZrOとの混合粉、バインダ、及び溶剤等からなる。このとき、インダクタグリーンシートは、ZnOを主成分とする材料からなるグリーンシートであるため、白っぽくなっている。また、マーク用ペーストも、ZnOを多く含んでいるため、白っぽくなっている。このため、白いマーク用ペーストをそのままインダクタグリーンシート上に印刷すると、マーク用ペーストの画像認識が行いにくくなる。そこで、マーク用ペーストにカーボンブラックや有機色素(例えばアマランス)を微量に混合させることで、マーク用ペーストを着色するのが望ましい。カーボンブラックや有機色素は、後述する焼成によって飛散するため、焼成後に残ることはない。このため、焼成後には、方向識別マークMkは白い状態になる。
【0044】
続いて、機能層20〜26となるインダクタグリーンシートと、機能層27〜30となるバリスタグリーンシートとを所定の順序で積層して圧着し、グリーンシート積層体を得る。各バリスタグリーンシートを積層する際には、マーク用ペーストが印刷されたインダクタグリーンシート(機能層20〜26となるインダクタグリーンシート)がマーク用ペーストが印刷された面側を下向きとした状態で最下層となるように各グリーンシートを積層する。
【0045】
続いて、得られたグリーンシート積層体を所望のサイズとなるようにチップ単位に切断した後、所定の温度(例えば、1100〜1200℃程度の温度)で焼成して、チップ素体12を得る。
【0046】
続いて、チップ素体12の外表面に、4対の端子電極14a〜14d,16a〜16d、一対のグランド端子電極18a,18b、及び接続電極18cを形成して、積層型フィルタ10を完成させる。端子電極14a〜14d、端子電極16a〜16d、グランド端子電極18a,18b、及び接続電極18cは、チップ素体12の外表面に、Agを主成分とする導体ペーストを付与して所定の温度(例えば、700℃〜800℃の温度)で焼付けを行い、更に、Ni/Sn、Cu/Ni/Sn、Ni/Au、Ni/Pd/Au、Ni/Pd/Ag、又はNi/Agを用いた電気めっきを施すことで、形成される。導体ペーストの付与は、印刷法や転写法(ディップ法)等を用いることができる。積層型フィルタ10の完成寸法は、長さ2.0mm、幅1.0mm、厚さ0.8mmである(2010タイプ)。
【0047】
続いて、図5及び図6を参照して、上述した構成の積層型フィルタ10を用いた実装構造について説明する。図5及び図6は、本実施形態の積層型フィルタを用いた実装構造を説明するための斜視図である。
【0048】
図5及び図6に示されるように、積層型フィルタ10は、第2の主面12bが実装面として回路基板60に対向するように配置されている。回路基板60には、間隔を有して複数対(本実施形態では、4対)の信号用ランド部61,62とグランド用ランド部63とが配置されている。信号用ランド部61,62は、対応する信号用導体パターン64の端部に位置している。グランド用ランド部63は、対応するグランド用導体パターン65の端部に位置している。
【0049】
各ランド部61,62,63と当該ランド部61,62,63に対応する端子電極14a〜14d,16a〜16d、一対のグランド端子電極18a,18bとは、はんだ付け(はんだフィレットは不図示)により物理的且つ電気的に接続されている。接続電極18cの第3及び第4の側面12e,12fの対向方向での端部も、グランド用ランド部63にはんだ付けにより物理的且つ電気的に接続されている。これにより、積層型フィルタ10が、回路基板60に実装されることとなる。
【0050】
以上のように、本実施形態では、一対のグランド端子電極18a,18b同士が、第2の主面12bにおいて、接続電極18cによりつながっている。このため、積層型フィルタ10を第2の主面12bを実装面として回路基板60に実装した場合でも、第2の主面12bにおいて、グランド端子電極18a,18b及び接続電極18cには、第3及び第4の側面12e,12fの対向方向で見て、縁に相当する箇所が存在しない。このため、グランド端子電極18a,18b及び接続電極18cには、応力が集中する箇所が存在し得ず、チップ素体12にクラックが発生するのを防ぐことができる。
【0051】
ところで、端子電極14a〜14d,16a〜16dの端部は、第2の主面12bに回り込んで第2の主面12bに位置している。このため、回路基板60が撓んだ際に端子電極14a〜14d,16a〜16dの端部も回路基板60から力を受けることとなる。しかしながら、端子電極14a〜14d,16a〜16dはチップ素体の短手方向に位置していることから、回路基板60から受ける力は小さく、この力が応力として端子電極14a〜14d,16a〜16dの端部に集中した場合でも、チップ素体12にクラックが生じることはない。
【0052】
次に、図7及び図8を参照して、本実施形態に係る積層型フィルタ10を用いた実装構造の変形例を説明する。図7及び図8は、本実施形態に係る積層型フィルタの各変形例を示す斜視図である。
【0053】
図7に示された変形例では、グランド端子電極18a,18bは、その一部が、第1及び第2の主面12a,12bに回り込むように形成されており、端部が第1及び第2の主面12a,12bに位置している。接続電極18cの一端はグランド端子電極18aの他方の端部に連続すると共に、接続電極18cの他端はグランド端子電極18aの他方の端部に連続しており、接続電極18cは、一対のグランド端子電極18a,18b同士をつないでいる。接続電極18cの幅(第1及び第2の側面12c,12dの対向方向での長さ)が、グランド端子電極18a,18bの幅(同じく、第1及び第2の側面12c,12dの対向方向での長さ)よりも狭く設定されている。
【0054】
この場合、端子電極14a〜14d,16a〜16dの第2の主面12bに位置している端部と、接続電極18cとの間隔(第1及び第2の側面12c,12dの対向方向での間隔)は比較的大きく、端子電極14a〜14d,16a〜16dと接続電極18c(グランド端子電極18a,18b)との間での短絡の発生を防ぐことができる。
【0055】
図7に示された変形例における端子電極14a〜14d,16a〜16dと接続電極18cとの間隔を図2に示された積層型フィルタ10における端子電極14a〜14d,16a〜16dと接続電極18cとの間隔と同じ大きさに設定する場合には、接続電極18cの幅が狭い分、端子電極14a〜14d,16a〜16dの第2の主面12bに回り込む長さを長く設定できる。この場合、端子電極14a〜14d,16a〜16dの実装面積が広くなり、積層型フィルタ10の実装強度が向上する。
【0056】
図8に示された変形例では、接続電極18cの幅が、グランド端子電極18a,18bの幅よりも広く設定されている。この場合、グランド端子電極18a,18bだけでなく接続電極18cを回路基板60のグランド用導体パターン65に接続することにより、積層型フィルタ10の実装強度を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0058】
本実施形態及び各変形例では、接続電極18cは、第3及び第4の側面12e,12fの対向方向に直線状に伸びた形状を呈しているが、必ずしも直線状に伸びた形状を呈している必要はない。例えば、接続電極18cは、全体的に第3及び第4の側面12e,12fの対向方向に伸びた形状であれば、湾曲あるいは蛇行している形状を呈していてもよい。短絡等を考慮して、端子電極14a〜14d,16a〜16dと接続電極18cとの間隔を確保するという点では、接続電極18cは直線状に伸びた形状を呈していることが好ましい。
【0059】
本実施形態では、本発明をインダクタとサージ吸収素子とを有する積層型フィルタ10に適用しているが、本発明は、特にこれには限られず、積層型インダクタ(アレイ)、積層型コンデンサ(アレイ)、積層型バリスタ(アレイ)等のその他のチップ型電子部品に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る積層型フィルタを示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る積層型フィルタを示す斜視図である。
【図3】チップ素体を層ごとに分解して示す分解斜視図である。
【図4】本実施形態に係る積層型フィルタを示す回路図である。
【図5】本実施形態の積層型フィルタを用いた実装構造を説明するための斜視図である。
【図6】本実施形態の積層型フィルタを用いた実装構造を説明するための斜視図である。
【図7】本実施形態に係る積層型フィルタの変形例を示す斜視図である。
【図8】本実施形態に係る積層型フィルタの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
10…積層型フィルタ、12…チップ素体、12a…第1の主面、12b…第2の主面、12c…第1の側面、12d…第2の側面、12e…第3の側面、12f…第4の側面、14a〜14d,16a〜16d…端子電極、18a,18b…グランド端子電極、18c…接続電極。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部回路要素を含む直方体状のチップ素体と、前記内部回路要素に電気的に接続されると共に前記チップ素体の外表面に配置された複数の外部電極と、を備えたチップ型電子部品であって、
前記チップ素体は、前記外表面として、互いに対向する長方形状の第1及び第2の主面と、前記第1及び第2の主面間を連結するように前記第1及び第2の主面の長辺方向に伸び且つ互いに対向する第1及び第2の側面と、前記第1及び第2の主面を連結するように前記第1及び第2の主面の短辺方向に伸び且つ互いに対向する第3及び第4の側面と、を有し、
前記複数の外部電極は、前記第1及び第2の側面にそれぞれ形成される第1の外部電極と、前記第3及び第4の側面にそれぞれ形成される第2の外部電極と、前記第2の主面に形成されると共に前記第3及び第4の側面の対向方向に伸びて前記第2の外部電極同士をつなぐ第3の外部電極と、を含んでいることを特徴とするチップ型電子部品。
【請求項2】
前記第3の外部電極の幅は、前記第2の外部電極の幅よりも狭く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のチップ型電子部品。
【請求項3】
前記第3の外部電極の幅は、前記第2の外部電極の幅よりも広く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のチップ型電子部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−80751(P2010−80751A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248683(P2008−248683)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】