説明

チップペーパの裁断装置

【目的】 裁断性能を安定させ、且つ、長寿命化を図ることができるチップペーパの裁断装置を提供する。
【構成】 チップペーパの裁断装置は、チップペーパPを案内するコークドラム19と、コークドラム19の外周面に対して接離する方向に揺動自在にして設けられた一対の揺動アーム31,32と、これら揺動アームにその両端が回転自在に支持されたドラム軸36と、このドラム軸36と一体にしてコークドラム19とは逆向きに回転駆動される複数の裁断刃を設けた刃付きドラムと、コークドラム19と裁断刃との間に所定のギャップを確保する一対のフリーローラ42と、ギャップを維持する押圧ばね52と備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、フィルタ付きシガレットの製造システムにおいて、そのフィルタアタッチメントに組み込まれるチップペーパの裁断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】フィルタアタッチメントは、シガレットとフィルタとにチップペーパ片を巻付けて、フィルタ付きシガレットを製造する装置であり、それ故、フィルタアタッチメントには、チップペーパ片を得るために、長尺なチップペーパからチップペーパ片を裁断して形成する裁断装置が組み込まれている。
【0003】この種の裁断装置の1つに、例えば特公昭61−54559号公報に開示されている非接触型の裁断装置が知られており、この公知の裁断装置は、受けドラムに刃付きドラムの両側に一対のフリーローラを設けて、これらフリーローラを受けドラムに転接させ、これにより、刃付きドラムの各裁断刃と受けドラムの外周面とを常時非接触の状態に維持している。従って、これらドラムが互いに逆向きに回転駆動され、そして、チップペーパの供給を受けて、このチップペーパが裁断刃により裁断されても、受けドラムに対して刃付きドラムの各裁断刃が衝突することはない。この結果、その裁断時、衝突による裁断音を大幅に低減できるばかりでなく、受けドラムや裁断刃の摩耗をも低減できる等の利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した非接触型の裁断装置にあっては、チップペーパの裁断性能が前述したギャップ即ち受けドラムの外周面と裁断刃との間で規定されるギャップの大小に大きく左右されるから、所望の裁断性能を確保するには、受けドラムと刃付きドラムとの間の相対位置を高精度に位置決めする必要がある。それ故、刃付きドラムのドラム軸を押付ねじにより受けドラム側に押し付けるようにして、一対のフリーローラを受けドラムに対し一定の力で押圧付勢している。
【0005】しかしながら、近年、前述したフィルタアタッチメントの高速化に伴い、受けドラムや刃付きドラム、また、フリーローラが益々大形化する傾向にあり、これらドラムやローラが大形化すると、その組付精度を維持するのが非常に困難となる。このようなことから、例えば受けドラムの回転に振れが発生すると、前記ギャップが拡大してチップペーパの裁断が不能になり、逆に、ギャップが縮小すると、このギャップ自体が本来微小なものであるから、受けドラムに対して刃付きドラムの裁断刃が衝突してしまう虞がある。
【0006】また、上述したギャップの変動は、各ドラムのドラム軸を支持する軸受を無理矢理に変形させてしまい、これらの軸受の過熱劣化を招き易い不具合がある。この発明は、上述した事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、受けドラムと刃付きドラム側の裁断刃との間のギャップを簡単な構造で高精度に維持し、チップペーパの裁断性能を長期間に亘って確保すると同時に、各部の損傷や摩耗を低減し、その長寿命化を図ったチップペーパの裁断装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、回転駆動可能な受けドラムと、その外周面に周方向に等間隔を存して複数の裁断刃を有する一方、両端に受けドラムの外周面に転接する一対のフリーローラを有し、これらフリーローラにより、受けドラムの外周面と前記裁断刃の刃先との間に所定のギャップを存した状態で、受けドラムとは逆向きにして回転駆動可能な刃付きドラムとを備えた非接触型のチップペーパの裁断装置において、この裁断装置は、前記刃付きドラムのドラム軸の両端を回転自在に支持する揺動アームと、この揺動アームを受けドラムに向けて回動付勢し、一対のフリーローラを受けドラムに押圧する付勢手段とを更に備えている。
【0008】
【作用】上述した裁断装置によれば、揺動アームが付勢手段により受けドラムに向けて回動付勢されていることから、刃付きドラム側の一対のフリーローラは受けドラムに常時所定の力で押圧された状態にあるばかりでなく、揺動アームを介して揺動可能な状態にある。従って、常時、刃付きドラムの裁断刃と受けドラムとの間には所定のギャップが規定されており、このギャップを通過するようにしてチップペーパが供給されると、このチップペーパは、各ドラムが互いに逆向きに回転駆動されることで、刃付きドラムの各裁断刃により個々のチップペーパに裁断される。
【0009】
【実施例】図1を参照すると、フィルタ付きシガレットを製造するフィルタアタッチメントが概略的に示されている。このフィルタアタッチメントは基台フレーム1を備えており、この基台フレーム1の右側部分にはドラム列2が配置されている。このドラム列2は図1でみて右側から左側に延び、その左端はチップペーパ片の巻付け部に3に連なっている。ドラム列2は多数のドラムからなり、各ドラムの外周面には等間隔を存して多数の溝が設けられている。ドラム列2の右端に位置する溝付きドラムには、図示しない巻上機にて製造された紙巻たばこ2本分のたばこロッドが供給されるようになっている。
【0010】ドラム列2に供給されたたばこロッドは、ドラム列2の各溝付きドラムの回転により、順次左側に位置する溝付きドラムの溝に移し変えられ、そして、巻付け部3に向けて搬送される。ここで、ドラム列2の途中にある溝付きドラムには回転ナイフ4が備えられており、この回転ナイフ4は、その溝付きドラムの回転により、搬送されてくるたばこロッドを個々の紙巻たばこに切断する。更に、この後、切断して得た2本の紙巻たばこ間には、これらが前述した巻付け部3に向けて搬送される過程で、所定の間隔が確保されるようになっている。
【0011】図2を参照すると、たばこロッドから個々の紙巻たばこを形成し、そして、これら紙巻たばこ間に所定の間隔を形成するまでの処理の流れが図2中A1領域で示されている。図2中、TR,TSはたばこロッド、紙巻たばこを夫々示している。一方、図1に示されているように、ドラム列2の上方にはホッパ5が配置されており、このホッパ5には図示されていないけれども多数のフィルタロッドが収容されている。ホッパ5とドラム列2との間は、ドラム列2と同様なドラム列6によって接続されており、ドラム列6はホッパ5内のフィルタロッドを1本ずつ取り出し、そして、個々のフィルタロッドを所定長さのフィルタプラグに等分して切断した後、これらフィルタプラグをドラム列2上の紙巻たばこ間に供給可能となっている。具体的には、ホッパ5の直下にあるドラム列6の溝付きドラムには例えば2枚の回転ナイフ7が備えられており、これら回転ナイフ7はその溝付きドラムの回転に伴いフィルタロッドが搬送されてきたとき、フィルタロッドを3個に等分して切断する。
【0012】また、回転ナイフ7を備えた溝付きドラムによりも下流側にある1つの溝付きドラムは、いわゆるグレーディングドラムとして構成されている。このグレーディングドラムは1本のフィルタロッドから得た3個のフィルタプラグをその搬送方向に順次整列させる機能を有しており、これにより、ドラム列6の下流端からは1個ずつのフィルタプラグがドラム列2に供給されることになる。ここで、ドラム列2に供給されるフィルタプラグは、2本の紙巻たばこ間に既に確保されている間隔の部位に配置され、この後、フィルタプラグは2本の紙巻たばこと共に巻付け部3に向けて搬送される。
【0013】図2中A2領域は、フィルロッドから個々のフィルタプラグを得て、そして、1個のフィルタプラグを2本の紙巻たばこTS間に配置するまでの処理の流れを示している。なお、図2中、FR,FPはフィルタロッド、フィルタプラグを夫々示しており、フィルタプラグFPは紙巻たばこTSに装着されるべきフィルタチップ2本分の長さを有している。
【0014】ドラム列2上で、その中央にフィルタプラグFPが配置された2本の紙巻たばこTSは、そのドラム列の終端部分の溝付きドラム上において、フィルタプラグFPの両端に密着するように移動されるようになっており、その処理は図2中A3領域で示されている。従って、ドラム列2から巻付け部3へは2本の紙巻たばこTS間に1個のフィルタプラグFPが位置した状態で、これらが供給されることになる。
【0015】一方、巻付け部3には、糊付けされたチップペーパ片もまた供給されるようになっており、その供給装置は図1中、基台フレーム1の左端上部から巻付け部3に亘って配置されている。先ず、供給装置の上流側から説明すると、上流には一対のロール7,8が備えられており、これらロール7,8は、長尺なチップペーパPを巻回したものである。なお、チップペーパPの幅はフィルタプラグFPの長さよりも十分に長く設定されている。
【0016】図1に示した状態では、ロール7からチップペーパPが繰り出されており、繰り出されたチップペーパPは供給経路を規定する多数のガイドローラ9により案内されながら、巻付け部3に向けて導かれている。供給経路の途中には、ロール7,8側に位置してチップペーパPの蓄積部10が配置されており、この蓄積部10は、フィルタアタッチメントの運転停止時などにおいて、巻付け部3側でのチップペーパPつまりチップペーパ片の供給速度と、ロール側でのチップペーパPの繰り出し速度との間の差を吸収したり、また、チップペーパPの接続時などにおいて、予めチップペーパPを一時的に蓄えておくために設けられている。
【0017】ここで、チップペーパPの接続に関して説明すると、蓄積部10の上流側に位置して接続部11が配置されており、この接続部11には他方のロール8から繰り出されたチップペーパPの先端が予め導かれている。従って、蓄積部10にある程度の量のチップペーパPが蓄えてあれば、一方のロール7のチップペーパPが無くなって、その終端が接続部11に達したとき、終端側の供給を止めた状態で、この終端に他方のロール8から繰り出されているチップペーパPの先端を接続でき、この接続の際にも蓄積部10からチップペーパPの供給を継続することができる。
【0018】チップペーパPの供給経路において、巻付け部3側には糊付け装置12が配置されており、この糊付け装置12は、図示しない糊容器内の糊にその一部が浸かりながら回転する糊供給ローラ13と、一方において糊供給ローラ13に転接され、他方においてはチップペーパPの一方の面に転接されている糊転写ローラ14から構成されている。従って、糊容器から糊供給ローラ13に付着した糊は、糊供給ローラ13と糊転写ローラ14とが互いに転接していることから、所定の厚みとなって糊転写ローラ14に移し変えられ、そして、この糊転写ローラ14からチップペーパPの一方の面に転写されることになる。なお、糊付け装置12は、特公昭63−43077号公報に記載のものであってもよい。
【0019】更に、糊付け装置12の直上流及び直下流側にはプレヒータ15及びポストヒータ16が夫々配置されており、これらプレヒータ15及びポストヒータ16は、チップペーパPの搬送面を規定するガイドプレートの表面に発熱シートを張り付けて構成されている。従って、図1から明らかなように、プレヒータ15はチップペーパPの糊付けされるべき面を加熱し、これに対し、ポストヒータ16はチップペーパPの糊付け面とは反対側の面を加熱するものとなっている。更に、この実施例の場合、ポストヒータ16は、温風ヒータ17と組み合わされており、この温風ヒータ17はチップペーパPの糊付け面に温風を吹き付けるもので、これにより、その糊付け面を効果的に予備乾燥させることができる。
【0020】そして、チップペーパPの供給経路には、その終端に位置して裁断装置18が配置されており、この裁断装置18は、糊付け後のチップペーパPを所定長さずつのチップペーパ片に裁断可能となっている。即ち、裁断装置18は主として、その外周面が負圧による吸引面として形成された受けドラムとしてのコークドラム19と、このコークドラム19の近傍に位置した刃付きドラムユニット20とから構成されており、これらは互いに逆向きに同一の周速で回転駆動可能となっている。従って、糊付けされたチップペーパPがコークドラム19に達すると、チップペーパPはその糊付け面とは反対側の面がコークドラム19の吸引面に吸い付けられ、そして、コークドラム19の回転とともに巻付け部3に向けて供給される。一方、図1には図示されていないけれども、刃付きドラムユニット20の外周面には周方向に等間隔を存して裁断刃が設けられており、従って、コークドラム19の吸引面上を搬送されるチップペーパPは刃付きドラムユニット20の各裁断刃により裁断されて、チップペーパ片となり、この後、チップペーパ片はコークドラム19の回転に伴い、巻付け部3に向けて供給される。刃付きドラムユニット20に関しては後述する。
【0021】ここで、巻付け部3は、前述したドラム列2の終端に位置する溝付きドラムに連なるようにして配置され、ドラム列2から供給される2本の紙巻たばこTS及びその中央に位置したフィルタプラグFPを受け取り、そして、これらをコークドラム19との間で転動させながら、巻付け部3から図1中左方に延びるドラム列21に供給する機能を有している。
【0022】従って、巻付け部3に2本の紙巻たばこTS及びフィルタプラグFPが供給されると同時に、コークドラム19からチップペーパ片が2本の紙巻たばこTSに跨るようにして供給されると、チップペーパ片はフィルタプラグFP及びこのフィルタプラグFP側に位置する2本の紙巻たばこの端部に接着され、そして、これら紙巻たばこ及びフィルタプラグが前述したようにして転動する際、これらにチップペーパ片が巻付けられて、2本の紙巻たばこ及びフィルタプラグは相互に接続され、この結果、連続した2本分のフィルタ付きシガレットが得られることとなる。
【0023】なお、チップペーパ片が紙巻たばこ及びフィルタプラグに接着される際、コークドラム19側の吸引力は解除されるようになっている。また、図2中、A4領域は、巻付け部3へのチップペーパ片の供給から、このチップペーパ片の巻付けまでの処理の流れを示しており、PCはチップペーパ片を示し、そして、このチップペーパ片PCの糊付け面は斜線を施して示してある。
【0024】この後、連続した2本分のフィルタ付きシガレットは、ドラム列21の各溝付きドラム上を搬送される過程において、1つの溝付きドラムに備えられている回転ナイフ22により、そのフィルタプラグの中央から切断されて、個々のフィルタ付きシガレットとなり、そして、フィルタ付きシガレットは、その向きが揃えられて、搬送コンベアに移し変えられ、この搬送コンベアにより後段の包装機に向けて供給される。このような処理の流れは、図2中A5領域で示されている。なお、図2R>2中、FCはフィルタプラグFPを切断して得たフィルタチップを示している。
【0025】次に、図3乃至図5を参照すると、前述した裁断装置18が詳図されており、以下に裁断装置18の構成について詳細に説明する。先ず、図3を参照すると、コークドラム19のドラム軸23は、その一端が基台フレーム1に回転自在に支持されているのは勿論のこと、その他端は支持プレート24の下端部に回動自在に支持されている。図示しないけれども、ドラム軸23の一端は、駆動機構(図示しない)に連結されており、この駆動機構により、コークドラム19は所定の方向に回転駆動可能となっている。
【0026】支持プレート24は図3に示されているように時計方向に約90度回転したような略L字形をなして、基台フレーム1と平行に延びており、その上端部は支持ブロック25を介して基台フレーム1に固定されている。即ち、支持ブロック25は、図4から明かなように基台フレーム1に沿ったプレート部26と、このプレート部26から突出したスペーサ部27とからなっており、支持プレート24の上端部はスペーサ部27の突出端に複数の連結ボルト28を介して連結されている。一方、支持ブロック25のプレート部26は、複数の連結ボルト29を介して基台フレーム1に連結されているが、図3から明かなようにプレート部26の一方の端部は、支持プレート24の中央部と対向するようにして延びている。
【0027】そして、支持プレート24の中央部と支持ブロック25のプレート部26との間には、揺動軸30がコークドラム19のドラム軸23と平行にして架け渡されており、この揺動軸30の両端は支持プレート24及びプレート部26の夫々に支持されている。揺動軸30には、一対の揺動アーム31,32の上端が図5に示されているように滑り軸受33を介して回動自在に支持されている。また、揺動軸30において、揺動アーム31,32の上端間にはスペーサスリーブ34が取り付けられており、更に、揺動アーム31の上端と支持プレート24との間にもスペーサリング35が取り付けられている。従って、揺動アーム31,32は、揺動軸30の軸方向に位置決めされた状態で、揺動軸30に取り付けられている。
【0028】揺動アーム31,32の下端部には、軸受37を介してドラム軸36が回転自在に支持されている。このドラム軸36は、前述したコークドラム19のドラム軸23と平行に延び、その両端は縮径した小径部として形成されて、対応する揺動アーム31,32を貫通している。ドラム軸36の基台フレーム1側に位置する一端は、基台フレーム1に取り付けられたオルダム継手38を介して入力軸39に連結されており、この入力軸39には入力ギヤ40が取り付けられている。この入力ギヤ40には図示しないギヤ列を介して回転駆動力が伝達されるようになっており、これにより、ドラム軸36は、入力ギヤ40とともに回転駆動されることになる。また、オルダム継手38は、例え揺動アーム31,32が揺動しても、入力軸39とドラム軸36との軸線間の間のずれを吸収するために設けられている。
【0029】ドラム軸36の小径部には軸受41を介して、一対のフリーローラ42が回転自在に取り付けられており、これらフリーローラ42は、揺動アーム31,32の内側に位置付けられている。各フリーローラ42は、超硬合金からなる本体の両面にホルダリングを取り付けたものとなっており、これらホルダリングは、本体を貫通するねじを介して本体に連結され、また、各ホルダリングもまたドラム軸36側に軸受を介して支持されている。
【0030】フリーローラ42間に位置するドラム軸36の中央部は大径部として形成されており、この大径部には刃付きドラム43が取り付けられている。この刃付きドラム36は、フリーローラ42と同様な超硬合金からなる本体の外周面に複数の裁断刃44を設けて構成されている。これら裁断刃44は、刃付きドラム43の周方向に等間隔を存して配置されており、その刃先はドラム軸36の軸線方向に延びている。更に、各裁断刃44の刃先は、図示しないけれども、その横断面が台形形状をなしており、この形状は、コークドラム19とは非接触にしてチップペーパPを裁断する上で好適したものとなっている。
【0031】そして、前述した支持ブロック25のスペーサ部27には、揺動アーム31,32即ち一対のフリーローラ42をコークドラム19の外周面に押圧する一対の付勢機構が設けられているが、ここで、各付勢機構は同一の構成であるから、以下には、一方の付勢機構についてのみ説明する。スペーサ部27は、刃付きドラム43と対向する面に有底のばね装着孔58を有しており、このばね装着孔58には、押圧スライダ45が摺動自在に嵌合されている。この押圧スライダ45の一端面からは、ねじ軸46が同軸にして延びており、このねじ軸46はばね装着孔58の底部にねじ込まれ、そしてスペーサ部27の外側に突出されている。ねじ軸46の突出部にはナット47が取り付けられており、このナット47はねじ軸46即ち押圧スライダ45の軸方向の位置決めをなしている。
【0032】一方、押圧スライダ45の他端面からは、ガイド軸48が突出されており、このガイド軸48の先端はプッシャ49の軸部50に摺動自在にして嵌合れている。プッシャ49のフランジ51と押圧スライダ45との間には、ガイド軸48及び軸部50を囲むようにして圧縮コイルばねからなる押圧ばね52が装着されており、この押圧ばね52は、対応する揺動アーム31にプッシャ49を所定の押圧力で押し付けている。この押圧力は、ナット47を弛め、ねじ軸46の軸方向位置を可変して調整することができる。
【0033】なお、他方の付勢機構は図4にその一部しか図示していないが、この付勢機構は、そのプッシャ49により対応する揺動アーム32を所定の押圧力で付勢している。上述したようにして各付勢機構のプッシャ49により、揺動アーム31,32が押し付けられた状態にあると、これら揺動アーム31,32はコークドラム19に向けて回動付勢されることになり、この結果、前述した一対のフリーローラ42がコークドラム19の外周面に所定の押圧力で転接された状態となる。
【0034】ここで、一対のフリーローラ42は、刃付きドラム43における裁断刃44の刃先が描く回転軌跡の外径よりも僅かに大きな外径を有しており、それ故、一対のフリーローラ42とコークドラム19とが相互に転接された状態で、コークドラム19及び刃付きドラム43が互いに逆向きに回転されても、各裁断刃44はコークドラム19の周面に接触することはなく、これらの回転中、裁断刃44の刃先とコークドラム19の外周面との間には、チップペーパPの厚みよりも十分に小さい僅かなギャップ(図示しない)が確保されるようになっている。
【0035】従って、上述した裁断装置によれば、コークドラム19及び刃付きドラム43の回転中、チップペーパPがコークドラム19と刃付きドラム43との間を通過するようにして供給されると、このチップペーパPは刃付きドラム43の各裁断刃44の刃先によるくさび効果によって、所定長さずつのチップペーパ片に裁断され、裁断されたチップペーパ片は、この後、前述したように巻付け部3に向けて供給される。
【0036】チップペーパPの裁断中、刃付きドラム43の各裁断刃44は、コークドラム19の外周面との間に前述したギャップを存して回転されるから、裁断刃44がコークドラム19に当接することはなく、よって、裁断に伴う騒音や裁断刃44の摩耗を大きく低減することができる。また、前述したように一対の揺動アーム31,32は、各付勢機構の押圧ばね52により、コークドラム19側に向けて常時回動付勢された状態にあるので、チップペーパPの裁断中、例えコークドラム19の回転に振れが発生しても、一対のフリーローラ42がコークドラム19の外周面から離れるようなことはない。即ち、コークドラム19に回転振れが発生しても、この回転振れに追従して揺動アーム31,32が揺動することから、一対のフリーローラ42はコークドラム19の外周面に確実に転接した状態に維持される。従って、フリーローラ42と共軸の刃付きドラム43の裁断刃44とコークドラム19の外周面との間のギャップもまた常時一定に維持されることになり、チップペーパPの裁断は確実且つ安定して実施可能となる。まり、ギャップを確実に確保できるから、刃付きドラム43の裁断刃44がコークドラム19に衝突して、これら裁断刃44の刃先が損傷することもない。
【0037】更に、上述したように揺動アーム31,32が揺動可能であると、コークドラム19やフリーローラ42の各軸受に無理な力が加わって、これら軸受が変形したりするようなこともなく、その過熱劣化を防止することができる。この発明は、上述した一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、図6を参照すると、裁断装置の変形例が示されている。この変形例の裁断装置は、一実施例の裁断装置と実質的に同一の構造を有しており、それ故、ここでは、一実施例と同一の機能を有する部材や部位には同一の参照符号を付して、その説明を省略し、以下には相違する点のみを説明する。
【0038】変形例の裁断装置において、その付勢機構は、押圧ばね52の代わりにエアシリンダ53を使用しており、プッシャ49は、エアシリンダ53のピストンロッド54の先端に取り付けられている。この変形例の場合、プッシャ49は対応する揺動アーム31に対し、受け金55を介して当接されている。このように押圧ばね52に代えて、エアシリンダ53を使用しても、揺動アーム31,32を同様にしてコークドラム19側に向けて回動付勢可能であるから、変形例の裁断装置もまた、一実施例の裁断装置と同様な利点を有する。
【0039】また、図7を参照すれば、更に別の変形例が示されている。この変形例では、各フリーローラ42の軸受41は、ドラム軸36の小径部に直接装着されておらず、偏心ホルダ56を介して装着されている。この偏心ホルダ56は、軸受41の装着面57をドラム軸36に対して偏心させたリング部材からなっており、偏心ホルダ56とドラム軸36との間には環状の間隙が確保されている。この間隙は、ドラム軸36が回転されても、この回転により、偏心ホルダ56が引きずられて回転するのを防止している。
【0040】そして、図示されていないけれども、偏心ホルダ56は、ドラム軸36に対する取付回転角を可変可能にして揺動アーム31、32に取り付けられており、従って、各フリーローラ42は偏心ホルダ56及び軸受41を介して揺動アーム31、32に回転自在にして支持されている。なお、図6中、揺動アーム31には、4本の取付ボルト60が備えられているが、これら取付ボルト60により、揺動アーム31に対する偏心ホルダ56の取り付けがなされている。また、各取付ボルト60は、揺動アーム31に形成した円弧形状の長孔61を貫通して偏心ホルダ56にねじ込まれるものとなっており、これら長孔1により、偏心ホルダ56の取付回転角が可変可能となっている。
【0041】偏心ホルダ56の取付回転角が可変されると、コークドラム19とフリーローラ42との間の転接点とドラム軸36の軸線との間の距離が変化することから、フリーローラ42の摩耗に起因して、前述したギャップが小さくなっても、このギャップをドラム軸36に対する偏心ホルダ56の取付回転角を調整するだけで、所望のギャップに再調整可能となる。また、刃付きドラム43の各裁断刃44が研削されて、ギャップが拡大するような場合にも、偏心ホルダ56の取付回転角を調整して、そのギャップを一定に維持可能となる。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の裁断装置によれば、刃付きドラムのドラム軸を揺動アームに回転自在に支持する一方、この揺動アームを付勢手段により、受けドラム側に向けて回動付勢するようにしたから、ドラム軸の一対のフリーローラは所定の押圧力でもって、受けドラムに常時転接した状態に維持される。従って、チップペーパの裁断中、例え、受けドラム側に回転の振れが発生しても、フリーローラは、揺動アームを介して受けドラムの回転振れに追従可能であるから、刃付きドラムの裁断刃と受けドラムとの間のギャップを確実に維持可能となる。この結果、チップペーパの安定した裁断が長期に亘って可能となるばかりでなく、裁断刃が受けドラムに衝突して損傷されることもなく、また、各ドラムの軸受に無理な力がかかって、これら軸受を変形させることもないので、裁断装置の長寿命化をも図れるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルタアタッチメントの概略正面図である。
【図2】フィルタアタッチメント内での紙巻たばこ及びフィルタロッドの処理の流れを示した図である。
【図3】フィルタアタッチメントに組み込まれたチップペーパの裁断装置を一部破断して示した正面図である。
【図4】図3の裁断装置を一部破断して示した平面図である。
【図5】図3中、V−V線に沿う裁断装置の断面図である。
【図6】変形例の裁断装置を示した正面図である。
【図7】フリーローラの軸受とドラム軸との間に偏心ホルダを介在させた更に別の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基台フレーム
19 コークドラム(受けドラム)
31,32 揺動アーム
36 ドラム軸
41 軸受
42 フリーローラ
43 刃付きドラム
44 裁断刃
45 押圧スライダ
49 プッシャ
52 押圧ばね
53 エアシリンダ
56 偏心ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転駆動可能な受けドラムと、その外周面に周方向に等間隔を存して複数の裁断刃を有する一方、両端側に受けドラムの外周面に転接する一対のフリーローラを有し、これらフリーローラにより、受けドラムの外周面と前記裁断刃の刃先との間に所定のギャップを存した状態で、受けドラムとは逆向きにして回転駆動可能な刃付きドラムとを備え、これら受けドラムと刃付きドラムとの間の前記ギャップを通過して供給されるチップペーパを、受けドラムとは非接触の前記裁断刃により一定の長さずつのチップペーパ片に裁断するチップペーパの裁断装置において、前記刃付きドラムのドラム軸の両端を回転自在に支持する揺動アームと、この揺動アームを受けドラムに向けて回動付勢し、一対のフリーローラを受けドラムに押圧する付勢手段とを具備したことを特徴とするチップペーパの裁断装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図7】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】特開平6−7140
【公開日】平成6年(1994)1月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−165877
【出願日】平成4年(1992)6月24日
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)