説明

チップ型電子部品収納台紙

【課題】
カバーテープ剥離時に静電気によるトラブルがなく、更に紙粉が原因のトラブルが極めて少ないためクリーンルームでの使用が可能であるチップ型電子部品収納台紙の提供。
【解決手段】
叩解処理を施した溶融複合紡糸により製造した導電性繊維を内添して抄造した用紙に、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)から選択される樹脂エマルジョンを含浸し、23℃、50%RHの環境条件下での紙の表面電気抵抗値が1×10Ω以下にしたチップ型電子部品収納台紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性があり、さらにはクリーンルームでの使用が可能であるチップ型電子部品収納台紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チップ型電子部品収納台紙は、通常、次のように加工処理をしてチップ型電子部品のキャリアとして使用される。
(1)所定の幅にスリットする。
(2)所定大きさの角穴と丸穴を開ける。角穴はチップ型電子部品収納用で、丸穴は充填機内送り用である。
(3)台紙の裏面(ボトム側)にカバーテープを接着する。なお、角穴を開けないで、所定の大きさの角状エンボンス加工をすることもあり、この場合、この工程は省かれる。台紙とカバーテープを接着する方法は、台紙とカバーテープを重ね、カバーテープ上から熱と圧力を加えて接着する、いわゆるヒートシール法で行われる。
(4)チップ型電子部品を充填する。
(5)台紙の表面(トップ側)にヒートシール法によってカバーテープを接着する。
(6)所定の大きさのカセットリールに巻き付け、チップ型電子部品と共に出荷する。
(7)最終ユーザーでトップ側カバーテープを剥がし、チップ型電子部品を取り出す。
【0003】
以上のように使用されることから、収納台紙に求められる品質には充填したチップ部品に悪影響を及ぼさないこと、更に、カバーテープが良好に接着されるよう紙の表面に平滑性を有すること、紙に対する各種処理に耐え得る強度を有すること、チップ部品を挿入する角穴(以下キャビティと記す)の寸法が正確であること等が挙げられる。
【0004】
近年になり、チップ型電子部品が順次小型化されており、長さと幅が1.6×0.8mmから1.0×0.5mmが主流になると共に、0.6×0.3mm以下のサイズが実用化されてきたため、マウンターによる実装時の静電気によるトラブルが多くなってきた。また、チップ型電子部品が極小サイズになるほど、収納台紙から脱落した紙粉が限りなく少ないことが要求されており、更には基盤の精密化に伴って、電子機器への実装工程がクリーンルームで行われる場合もあり、収納台紙の無塵化が望まれていた。
【0005】
これまで、チップ型電子部品収納台紙の帯電防止方法としては、特開平9−188385号公報(特許文献1参照)には表面にカーボンブラックなどの導電剤を塗布あるいは導電紙を貼合する方法、特開平9−216659号公報(特許文献2参照)には1本の導電体をキャビティに沿って敷設する方法、特開平2000−203521号公報(特許文献3参照)と特許第3383935号(特許文献4参照)では全層あるいは中層に導電性物質を内添し表面に導電性物質を塗布する方法が提案されているが、工程が増えたり、過剰な導電剤が必要であるなどコストアップが大きく採用が困難であった。
一方、キャビティ内のヒゲやケバと称するパルプ繊維の飛び出しを防ぐ方法としては、特開平6−127566号公報(特許文献5参照)、特開平10−218281号公報(特許文献6参照)、特開平11−165786号公報(特許文献7参照)のようにキャビティ内壁にバインダー樹脂を塗布する方法、特開平9−221192号公報(特許文献8参照)のようにキャビティ内壁にフィルム層を形成する、あるいは特開2001−315846号公報(特許文献9参照)には合成樹脂又は金属からなるカップをキャビティにはめ込むといった方法が提案されているが、全てがキャビティからの紙粉発生を抑制できても、収納台紙の表裏面や側面からの紙粉は抑制できない。
【0006】
他方、クリーンルーム内で使用される無塵紙や低発塵紙は、特公平6−11959号公報(特許文献10参照)にあるように公知の方法として、紙に低ガラス転移点の樹脂エマルジョンを含浸して製造されている板紙からなるチップ型電子部品収納台紙では導電性と無塵化を両立したものは存在せず、チップが微小で0603(0.6×0.3mm)と呼ばれる極小チップ型電子部品の実装においては、台紙厚が薄く、収納部分が微小となるため特に導電性が求められるようになっている。現状では導電性と無塵化の両者を満足するチップ型電子部品収納台紙が得られていないのが状況である。
【特許文献1】特開平9−188385号公報
【特許文献2】特開平9−216659号公報
【特許文献3】特開平2000−203521号公報
【特許文献4】特許第3383935号
【特許文献5】特開平6−127566号公報
【特許文献6】特開平10−218281号公報
【特許文献7】特開平11−165786号公報
【特許文献8】特開平9−221192号公報
【特許文献9】特開2001−315846号公報
【特許文献10】特公平6−11959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紙製のチップ型電子部品収納台紙に関するものであり、詳しくは、カバーテープ剥離時に静電気によるトラブルがなく、更に紙粉が原因のトラブルが極めて少ないクリーンルームでの使用が可能であるチップ型電子部品収納台紙に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、マウンターによる実装時の静電気によるトラブルと帯電状態及びキャリアテープに必要な導電性レベルを把握し、更に紙粉の発生を抑える方法について鋭意検討することにより、溶融複合紡糸により製造した導電性繊維に叩解処理を施して内添し、更に樹脂エマルジョンを含浸することによって、導電性と無塵化を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の各発明を包含する。
チップ型電子部品を収納するチップ型電子部品収納台紙用紙であって、溶融複合紡糸により製造した導電性繊維に叩解処理を施して内添し、かつ抄造した用紙に、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)から選択される樹脂エマルジョンを含浸し、23℃、50%RHの環境条件下での紙の表面電気抵抗値が1×10Ω以下であるチップ型電子部品収納台紙。
(2)前記導電性繊維は含有される層の全パルプ繊維中に5〜30質量%含有する(1)記載のチップ型電子部品収納台紙。
(3)前記樹脂エマルジョンの含浸量が含浸後の台紙の3〜20質量%である(1)記載のチップ型電子部品収納台紙。
(4)前記導電性繊維の叩解処理はパルプと混合して行いCSF250〜550mlの範囲に処理する(1)記載のチップ型電子部品収納台紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、マウンターでの実装時に静電気によるトラブルが発生せず、塵の発生が極めて少ないためクリーンルーム内で使用可能なチップ型電子部品収納台紙に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
チップ型電子部品収納台紙に導電性を付与する方法として、従来から金属繊維や導電繊維、金属粉体などを内添する方法は知られている。導電性繊維としては、カーボン繊維や金属繊維が知られているが、これらの繊維を表層に配合すると、ワイヤーやフィルト、カンバスなどにつきささり、抄紙性が悪化してしまう。さらに、カーボン繊維や金属繊維を使用した場合は、キャビティ形成のためのパンチ加工が極めて悪化するという問題がある。また導電体がパルプ繊維と結合しないため、パルプ繊維のネットワークから離脱しやすいという欠点があり、チップ型電子部品収納台紙には使用できなかった。
【0011】
一方、本発明で使用する、溶融複合紡糸により製造された導電性繊維は、繊維自体が柔軟であり抄紙性が良いだけでなく、本発明で重要である叩解処理により、繊維にカールやキンクを付与することができ、パンチ加工性もパルプ単独の場合と比較して悪くなることはない。チップ型電子部品収納台紙においては、特にカバーテープ剥離時の剥離帯電が大きいことから、用紙表面の電気抵抗値を下げることが重要であり、導電体を脱離しないように表面の配するために溶融複合紡糸により製造した導電性繊維に叩解処理を施して内添する。
【0012】
本発明者らは、溶融複合紡糸により製造した導電性繊維に叩解処理を施して内添することによりパルプ繊維のネットワークを強化し、更に無塵化のために樹脂エマルジョンを含浸することにより、導電性繊維の離脱をなくすことができることを見出した。
【0013】
本発明で使用する導電性繊維としては、溶融複合紡糸により製造された導電性繊維が使用できるが、パルプ繊維のネットワークの中で少ない量で効率良く導電性を付与するためには、芯鞘複合型の複合繊維が好ましい。
【0014】
芯成分を形成するポリマーとしては、公知の繊維形成性能を有するポリマー、即ちポリアミド、ポリエステル等が有用である。ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11及びこれらを主成分とする共重合ポリアミドがよく知られている。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシベンゾエート及びこれらを主成分とする共重合ポリエステル等がよく知られている。前期記載外のポリマーであっても、繊維形成性能があるポリマーであれば、本発明の芯成分を形成するポリマーとして使用することができ、何等制限を受けるものではない。更に、目的に応じて、二酸化チタン等の無機粒子を含んでいても良い。鞘成分を形成するポリマーとしては、芯成分を形成するポリマーと同様の種類のポリマーを使用することができるが、芯成分形成ポリマーと同一のポリマーを使用すると、芯鞘の界面での結合が強固であり、叩解しても繊維が内部で崩壊することなく導電性に有効に働くため好ましい。
【0015】
繊維への導電性付与は、鞘成分に公知の導電性粉体、即ち導電性カーボンブラックや二酸化チタン等を配合して溶融複合紡糸することにより達成される。導電性粉体の含有量は10〜60質量%、好ましくは15〜40質量%である。導電性粉体の含有量が10質量%未満では十分な導電性が得られず、60質量%を超えると繊維形成が困難になる。
【0016】
導電性繊維の長さについては、叩解処理により切断されて短くなるため、特に制約はないが、パルプ繊維への均一な混合のために30mm以内にする。30mmよりも長いと、パルプ配管、チェストなどの系内のデッドゾーンで堆積しやすく、汚れの原因となる。叩解後、内添された状態では2mm〜10mm、好ましくは3〜7mmで存在することが好ましい。2mm未満になると導電性繊維の存在状態により繊維同士の接点が減少し、導電性が低下するため好ましくない。10mmを超えて長くなるとケバになることがあるためこのましくない。
【0017】
導電性繊維の太さについては、一般的にはデシテックスで表現されるが、あえて太さを算出すると、10〜50μm程度が良い、10μmよりも細いと叩解時に破壊されやすく、導電性効果が低減する。一方、50μmを越えると、叩解でカールしにくいという欠点があるだけでなく、プレスポケット形成のためのパンチ加工性の悪化や平滑悪化によるカバーテープ接着不良などの問題が生じるので好ましくない。
【0018】
導電性繊維の含有量は含有される層中の全パルプの5質量%〜30質量%、好ましくは5〜20質量%含有する。5質量%未満だと導電性が不十分であり、30質量%よりも多くしても導電性効果は頭打ちでコストアップにつながるため好ましくない。導電性繊維を含有する層としては、単層抄きの用紙の場合はもちろん全層に含有されることになるが、多層抄きの用紙の場合は、表、裏、中のどこに入れても導電性効果を付与することはできるが、好ましくは、カバーテープの剥離帯電防止のため、及び効率よく低コストで導電性を付与するためには表層へ含有させることが好ましい。
【0019】
本発明で使用される原料パルプは各種のものが使用でき、例えば、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ、非木材繊維パルプ等を単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよいが繊維形態が均一なパルプを使用するのが好ましい。
【0020】
本発明では、溶融複合紡糸により製造した導電性繊維に叩解処理を施すことが重要である。叩解処理は導電性繊維単独で行ってもよいし、パルプと混合したものを叩解してもよい。叩解処理を施すことによって、導電性繊維の表面に起伏ができ、又、適度なカールやキンクが発生することから、パルプ繊維と絡み合い、パルプ繊維のネットワークからの離脱を防ぐことができる。叩解を行わない場合は、溶融複合紡糸により製造した導電性繊維は一般的にまっすぐな直線状の繊維であり、溶融複合紡糸特有のなめらかな表面を持っているため、紙表面を軽くこすっただけで離脱してしまう。
【0021】
本発明で使用される叩解機には特に限定はなく、ビーター、ジョルダン、デラックス・ファイナー(DF)、ダブル・ディスク・レファイナー(DDR)等、種々の叩解機が使用される。叩解は、パルプと混合しても、導電性繊維単独のどちらでも良いが、導電性繊維の形態保持のためにはパルプと混合して行う方が好ましい。また、叩解の程度についても特に限定されないが、パルプと混合した場合ではカナディアン・スタンダード・フリーネスで250〜550ml程度の処理が好ましい。560mlよりも高いと導電性繊維の表面性やカールに十分な変化がなく、用紙から離脱しやすい。一方、250mlよりも叩解を進めると、導電性繊維の長さが極端に短くなり、歩留の低下、導電性への効率悪化などの問題が生じる。
【0022】
抄紙に際して、必要に応じて種々の内添薬品を使用できる。例えば、ロジン系サイズ剤、スチレン・マレイン酸、スチレン・アクリル、スチレン・オレフィン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸など、天然および合成の製紙用の内添サイズ剤、各種紙力増強剤、濾水歩留り向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、タルク等の填料、染料等を使用することができるが、樹脂エマルジョンの浸透性を妨げないために、サイズ剤は極力使用しない。
【0023】
また、帯電防止剤として、リチウム化合物、アルミン酸ソーダ、塩化マグネシウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩、ギ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム等の有機塩類、分子中にカルボキシル基、スルホン基、硫酸基等を有するアニオン性高分子、またはアミノ基、第4級アンモニウム基等の塩基を有するカチオン性高分子を使用することができる。
【0024】
導電性繊維の離脱防止のためには、抄紙機のウェットプレスを強化して用紙の密度を高める方法があるが、樹脂エマルジョンの浸透性を考慮して、密度は高くしない方が良い。本発明では、密度を0.75〜0.95g/cm程度に調整した。密度が0.75g/cmよりも低いと、プレス成形性が悪化しプレスポケットの形状が悪くなる。密度が0.95g/cmよりも高いと、樹脂エマルジョンの浸透性が極端に悪化し、無塵化が困難になる。
【0025】
本発明において含浸に使用する樹脂エマルジョンはアクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)から選択して使用する。これらはエマルジョン化が可能で、含浸したときの無塵効果が高いため好ましい。樹脂エマルジョンには消泡剤、導電剤、帯電防止剤などを配合することもできる。
【0026】
樹脂エマルジョンの含浸量は含浸後の台紙用紙に対して乾燥固形分換算で3〜20質量%であり、好ましくは5〜15質量%である。含浸量が3%未満では発塵を抑える効果が十分ではなく、20%を超えて含浸しても発塵を抑える効果は変わらない。樹脂の含浸方法は、オンマシンでのサイズプレス、スプレーによる塗工やオフマシンでのキスコート、ディッピング含浸、各種コーティングマシンなどがあり、これらに限定されるものではないが、多層抄きの板紙の紙層内部へ樹脂エマルジョンを十分に浸透させるためには、オフマシンでのキスコートとディッピング含浸の組合せが好ましい。
【0027】
本発明ではボトムテープ、カバーテープとの接着性およびケバ防止効果を向上させるために収納台紙の表面、裏面に、ポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミド、アクリル系樹脂、スチレンーブタジエン系樹脂、スチレンーイソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−ビニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂など必要な薬品を適宜塗布させることも可能である。また、更に接着性を高めるために、ポリエチレンワックスエマルジョンを塗布することもできる。さらに塗布手段についても、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーターやサイズプレスやキャレンダーコーター等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパコーター等がある。
【0028】
本発明のチップ型電子部品収納台紙用紙は、23℃、50%RHの環境条件下での紙の表面電気抵抗値および体積電気抵抗値が1×10Ω以下である。1×10Ωよりも高いと、カバーテープ剥離時の剥離帯電に対して除電が不十分になる。尚、導電性繊維は導電性繊維同士が接点を持つことにより導電性を発現し、完全な導電化になると1×10Ωを示した。
【0029】
本発明のチップ型電子部品収納台紙の坪量は、中に収納するチップ型電子部品の大きさにより決ってくるが、一般に200〜1000g/m程度である。このような坪量範囲であるため、台紙基材の抄造方法としては、地合いの取り易い多層抄きが好ましい。
【0030】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合、濃度等を示す数値は、固型分または有効成分の質量基準の数値である。また、特に記載の無い場合については抄造した紙はJIS P8111に準じて前処理を行った後、測定やテストに供した。尚、導電性、発塵性、実装テストの詳細は下記の通りである。
【0031】
<導電性>
温度23℃、相対湿度50%の環境下で、JIS K 6911に準拠して、三菱油化(株)製表面電気抵抗計Hiresta IP MCP−HT260を使用して、印加電圧100V、時間10秒間で表面電気抵抗を測定した。
【0032】
<発塵性>
温度23℃、相対湿度45%の環境下で、試料を8mm幅のテープ状にスリットして、JIS C 0806−3に準拠し、4mm間隔で直径1.54mmの丸穴を開けると同時に、2mm間隔でCD方向0.66mm、MD方向0.36mm、Z軸方向0.35mmのキャビティをもつチップ型電子部品収納台紙を作成した。次に、この台紙を、東京ウェルズ(株)製の「TWA6601」で、カバーテープ貼り付けと部品挿入を行わずに、速度2400タクト/min、1000m運転し、アンリール、部品挿入部の紙粉発生量と導電性繊維離脱量を目視で評価を行った。紙粉は全く発生しない場合を○、若干だが発生した場合を×とした。
【0033】
<実装テスト>
温度23℃、相対湿度45%の環境下で、試料を8mm幅のテープ状にスリットして、JIS C 0806−3に準拠し、4mm間隔で直径1.54mmの丸穴を開けると同時に、2mm間隔でCD方向0.66mm、MD方向0.36mm、Z軸方向0.35mmのキャビティを作成し、縦0.6mm、横0.3mm、高さ0.30mmのコンデンサーチップを充填し、次いで、表面にカバーテープを貼る操作は、東京ウェルズ(株)製の「TWA6601」を使用して行った。表面にカバーテープを貼る条件は、ヒートシール温度190℃、ヒートシール圧力3.5kg、テーピング速度2400タクト/minであった。次に、温度27℃、相対湿度65%の環境下で松下電器産業(株)製の「Panasert MSR」を使用し、600個/minの実装速度で2万個を実装して、その間にコンデンサーチップの飛び出しによる実装ミスの回数をカウントした。次の式に従って不良率を算出した。
不良率(%)=実装ミスのカウント/20,000×100
【0034】
実施例1〜3
表層、中層、裏層でパルプを使い分け、表層用には針葉樹クラフトパルプA30%、広葉樹晒クラフトパルプB70%の配合比率である混合パルプに、溶融複合紡糸により製造された導電性繊維(KBセーレン製Belltron/TYPE9R1、導電性カーボンブラック含有)のカット品(長さ30mm)を対絶乾パルプ5%(実施例1)、10%(実施例2)、15%(実施例3)の比率になるように配合して100質量%とし、ダブル・ディスク・リファイナーで混合叩解し、CSF(カナダスタンダード フリーネス)450mlに調製し、中層用には針葉樹クラフトパルプA10質量%、広葉樹晒クラフトパルプB90質量%をダブル・ディスク・リファイナーで混合叩解し、CSF(カナダスタンダード フリーネス)410mlに調製し、裏層用には広葉樹晒クラフトパルプBを単独でダブル・ディスク・リファイナーでCSF(カナダスタンダード フリーネス)470mlまで叩解し、調製した。それぞれのパルプスラリーに硫酸バンドを対パルプ2.0質量%添加し、紙力剤としてポリストロン117(荒川化学工業社製、ポリアクリルアミド系紙力剤)を1.0質量%添加した。以上の条件のパルプスラリーを3層抄合わせ抄造機でそれぞれ表層90g/m、中層135g/m、裏層90g/mで抄合わせて含浸前の原紙を製造した。さらにオフマシン含浸機でアクリル酸エステル樹脂(昭和高分子製AM−280)を乾燥塗布量として35g/m塗布し、厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。
【0035】
実施例4〜5
実施例2と同様にして含浸前原紙を製造した。さらにオフマシン含浸機でアクリル酸エステル樹脂(昭和高分子製AM−280)を乾燥塗布量として18g/m(実施例4)、50g/m(実施例5)塗布し、厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。実施例4の場合の各層の坪量は表層90g/m、中層152g/m、裏層90g/m、実施例5の各層の坪量は表層90g/m、中層120g/m、裏層90g/mとした。
【0036】
実施例6
導電性繊維をKBセーレン製Belltron/TYPE638(導電性二酸化チタン含有)のカット品(長さ30mm)に変えた以外は実施例3と同様にして、厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。
【0037】
実施例7
樹脂エマルジョンとしてエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂(住友化学製スミカフレックス−500)を使用した以外は実施例3と同様にして厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。
【0038】
実施例8
樹脂エマルジョンとしてスチレン/ブタジエン共重合体樹脂(JSR製0623A)を使用した以外は実施例3と同様にして厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。
【0039】
比較例1
導電性繊維を配合せず、樹脂を含浸せず、坪量を表層90g/m2、中層170、裏層90g/m2とした以外は実施例1と同様にして厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。
【0040】
比較例2〜3
導電性繊維(KBセーレン製Belltron/TYPE9R1、導電性カーボンブラック含有)のカット品(長さ30mm)を未配合(比較例2)、対絶乾パルプ3%配合(比較例3)した以外は実施例1と同様にして、厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。
【0041】
比較例4
アクリル酸エステル樹脂を含浸せずに、表層90g/m、中層170g/m、裏層90g/mとした以外は実施例3と同様にして、厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。
【0042】
比較例5
導電性繊維(KBセーレン製Belltron/TYPE9R1、導電性カーボンブラック含有)のカット品(長さ30mm)を叩解せずに、叩解したパルプに配合した以外は、実施例2と同様にして、厚さ0.43mmのチップ型子部品収納台紙を製造した。
【0043】
得られた試料の導電性、発塵性、実装テストを前述の方法で評価した。評価結果を表1に示す。実施例1〜8は比較例1〜5と比較して、表面電気抵抗値が10Ω以下であり、発塵がなく、実装テストにおいても不良率が低いという結果を得た。
【0044】
実施例と比較例との対比から明らかなように、本発明の要件を満たすチップ型電子部品収納台紙は、カバーテープ剥離時の帯電が少ない上に、発塵もなく、極小チップ対応の包装材として優れている。
【0045】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ型電子部品を収納するチップ型電子部品収納台紙用紙であって、叩解処理を施した溶融複合紡糸により製造した導電性繊維を内添し、抄造した用紙に、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)から選択される樹脂エマルジョンを含浸し、23℃、50%RHの環境条件下での紙の表面電気抵抗値が1×10Ω以下であることを特徴とするチップ型電子部品収納台紙。
【請求項2】
前記導電性繊維は含有される層の全パルプ繊維中5〜30質量%含有することを特徴とする請求項1記載のチップ型電子部品収納台紙。
【請求項3】
前記樹脂エマルジョンの含浸量が含浸後の台紙の3〜20質量%であることを特徴とする請求項1記載のチップ型電子部品収納台紙。



【公開番号】特開2007−91260(P2007−91260A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281637(P2005−281637)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】